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('A`)百物語、のようです

1名も無きAAのようです:2013/08/17(土) 00:13:40 ID:adaBwzoE0



最初に言い出したのは、誰だっただろうか?


――今となっては、もうはっきりと思い出せない。
でも、確かに誰かがそれを言い出して、俺たちはこうして集まっている。


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2名も無きAAのようです:2013/08/17(土) 00:27:16 ID:adaBwzoE0


百物語。


蝋燭を百個用意して灯し、怖い話を一つするごとにその蝋燭を一つずつ消していく。
江戸時代にはもう既にあったとかいう、超定番の怪談スタイル。
――俺たちは、まさに百物語の真っ最中だった。


(    )「おっおー、次はダレが話すお?」

(    )「僕はパスだからな」

(    )「えーと、僕は……もう少し考えてからで」


新月の夜。
ミルナの爺さんの家を借りさせてもらって用意した、三つ続きの和室。
その一番奥の部屋には、百本の蝋燭を並べた馬鹿でっかい火鉢が用意してある。
しかし、俺達のいる手前の部屋。……明かりを落としたここは、同じ部屋にいる相手の顔が見えないほどに暗い。


川   )「じゃあ、私が話でもしようか」


部屋の中に横たわった闇を切り裂くように、凛とした声が響いた。
顔が見えなくても、その声を聞けば誰かすぐわかる。
この声は、クーのものだ。


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3名も無きAAのようです:2013/08/17(土) 00:28:24 ID:adaBwzoE0

……ブーンの野郎。人を呼ぶって言ってあちこちに連絡してたのは知っていたが、まさかクーまで呼んでるとは思わなかった。
年頃の男と女がこんなに暗い一室に一緒って、すげぇ問題があるんじゃないか?
しかも、クーは美人。間違いを起こすなという方が難しいぞ、これ。


(;'A`)「クー、お前。ここは野郎どもの巣窟だぞ」

川  - )「大丈夫だ問題ない。
     なぜならば、ここにはツンもいるからな。女は私だけじゃないぞ」

ξ;  )ξ「……あたし達、けっこう前からいたつもりなんだけど気づいてなかったの?!」


知らなったというのも癪なので、俺は手近にあった菓子にかじりつく。
暗くてよく見えなかったが、この硬さはきっとせんべいだ。
バリバリとそのまま噛み砕く。暗い中で食う菓子は、その美味さを半減させているような気がした。


( ゚д゚ )「俺は出迎えたから知っているが、これだけ人の出入りが多いと仕方がないな」

('A`)「ブーンのせいだぞ。一体、何人呼んだんだよ」


暗い闇の向こうから、「おー」という声が上がる。
この個性丸出しの声は、ブーンだな。


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4名も無きAAのようです:2013/08/17(土) 00:30:05 ID:adaBwzoE0


(    )ノ「お、おー? えっと、覚えてないお!!」


ブーンはいつも通りの、のんびりとした口調で声を上げた。
普段ならば、誰かしらブーンの声に笑いを上げるのだが、さすがに今日はそうというわけにはいかなかった。


(;    )「え、嘘。本当にわからないの?」

(;   )「おー。だって、たくさん人がいないと、100話なんてムリだと思って」

ξ;  )ξ「本当にアンタらしいというか、何と言うか……」


周囲を見回してみるが、暗い部屋の中では誰がいるのかどころか、何人いるのかさえわからない。
点呼でもとればはっきりするだろうが、実行するのは気が引けた。
せっかくの百物語なのだ。わざわざ、水を差す必要はない。


(;'A`)「……」


――嘘、だ。
本当は、そうじゃない。


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5名も無きAAのようです:2013/08/17(土) 00:31:32 ID:adaBwzoE0

もし、この中に得体のしれないナニカが紛れ込んでいたら……と、思うと、怖かったのだ。
百物語で、百の話を終えると、暗闇の中に何か恐ろしいものが現れる。
それは、百物語をしようとする奴なら誰もが知っている、言い伝えだ。

俺はもちろん、そんな言い伝えなんて信じていない。
信じていないのだが、部屋の中に漂う闇と空気は、言い伝えをそのまま信じ込ませてしまうような凄みがある。


(    )「まあまあ、別にいいと思うんだからな!」

(;    )「でも、人の家を借りてるわけだからマズイと思うよ」

(    )「おー…」


今はまだ、蝋燭を立てた火鉢のある部屋から、かすかに明かりが届いている。
その光のお陰で、辛うじて目の前にいるミルナの姿や、人影が見えている。
しかし、その明かりがなくなったら、どうなるのか……。


(;'A`)「……」


背筋を汗が伝っていく。
わけもなく心臓が早く動き出し、口の中が乾く。
指先で近くに置いたペットボトルを探り、口をつける。

……冷やしておいたはずのジュースは生温く、ただ気持ち悪かった。

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6名も無きAAのようです:2013/08/17(土) 00:34:19 ID:adaBwzoE0


川   )「盛り上がっている所悪いが、話を始めてもいいかな?」


――俺の思考を、現実に引き戻したのはクーだった。

彼女の声に、ざわざわと騒いでいたブーンやショボンの言葉が止まる。
それから少し時間が経つ頃には、辺りは完全に静かになった。
痛いくらいの沈黙の中で、クーは再び口を開いた。


川  - )「この場所で話すのにふさわしいかどうかはわからないが、せっかくの機会だ」


そう告げるクーの声には、迷いが感じられた。
俺の知っているクーはいつも、はっきりとした口調で理路整然と話す。
だからだろう、彼女の様子を珍しいと思ってしまった。


川  - )「私にはあれが何だったのか、わかっていない。
     単なる偶然だったのか、それとも何かの力が働いたのか……」


でも、自分の中で整理をつけるためにも話させてくれと、クーは告げる。
その言葉に、答えるものは誰もいなかった。
いや、誰も彼女の声を邪魔をしようとしなかった、と言い換えた方がいいか。

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7名も無きAAのようです:2013/08/17(土) 00:35:55 ID:adaBwzoE0


これから語られるのは、恐怖や怪しさに満ちた、不思議な話だ。

この場にいる誰もが、クーの話す声に耳をそばだてている。
彼女のやや低いけれど、よく通る美しい声が、どのような怪を語るのか。
ごくり、と息を呑んだのは俺か、それとも他の誰かか。



川 ゚ -゚)「これからするのは、おまじないのはなしだ」



蝋燭の光の具合か、闇が動きクーの姿が一瞬だけ、はっきりと見えた。
長い黒髪を背に垂らした、白いブラウス姿の女。
素直 クール。
俺たちがクーと呼ぶ彼女は、得体の知れないこの闇の中でもキレイだった。




――そして、暗い部屋の中で、クーは話しはじめる。



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8名も無きAAのようです:2013/08/17(土) 00:36:51 ID:adaBwzoE0




              ('A`)百物語、のようです


                おまじないのはなし


                      .,、
                     (i,)
                      |_|



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9名も無きAAのようです:2013/08/17(土) 00:37:31 ID:adaBwzoE0

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私には、少し年の離れた従姉妹がいる。



o川*゚ー゚)o



名前は、素直 キュート。
薄茶色のまっすぐな髪をした、かわいらしい女の子だ。
いつでもフワフワとしていて、いつか王子様と出会うんだなんて夢みたいなことを本気で信じているような子だった。


川 ゚ -゚)  o(^ー^*川o


キュートは私のことを、「クーお姉ちゃん」と呼んで、懐いていてな。
私はクーお姉ちゃんと呼ばれるたびに、少し恥ずかしくて、それ以上に誇らしい気持ちになった。


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10名も無きAAのようです:2013/08/17(土) 00:38:59 ID:adaBwzoE0

そんな彼女が、中学校に進学した。

言い方は悪いが、キュートには人にすぐ甘えたり、頼るところがあってな。
彼女の両親は、あの子が中学校に上がっても大丈夫なのかと、とても心配していた。


o川*゚ワ゚)o 〜♪


――結論から言えば、キュートは中学校でもうまくやっていた様だった。

どうやら中学にも世話焼きな子がいたようで、その子があれやこれやと彼女の世話を焼いてくれたらしい。
持つべきものは、心の友というやつだな。

キュートが、中学に入学して一ヶ月。
彼女の学生生活は充実しているようだった。
友人も出来たし、部活にも入った。勉強は苦手だけれども、英語だけはちょっと得意。
ごわごわとした制服や、履きなれない革靴、鞄の重さにも大分慣れてきたのだそうだ。


o川*゚−゚)o「あのね、どーしよう。
       キューちゃんはどうやら、恋というものをしちゃったらしいのです」


――そんな彼女が私にそう打ち明けたのは、ちょうど五月の頭。
私が連休を使って、キュートの家に泊まりに来ていた時のことだった。

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11名も無きAAのようです:2013/08/17(土) 00:40:58 ID:adaBwzoE0

――キュートは恋をした、らしい。
正確には「恋をしちゃったらしい」ではなくて、「恋をした」のだったがな。

           ∧_∧
川 ゚ -゚)つ/⌒ (・ω・  )


川;゚ -゚)「……なん、だと」


猫じゃらしを片手に彼女の家の猫と戯れていた私にとって、それは衝撃的な言葉だった。
驚きのあまり言葉を失った私に向けて、キュートは雑誌に視線を向けながら告げた。


o川*゚−゚)o「キューちゃんは、気になる男の子ができてしまったのです」


何気ない風を装った言葉。
しかし、彼女の顔は真っ赤だったし、開いている雑誌のページも明らかに読んでないとわかる広告だ。
……キュートが緊張しているというのは、私でもすぐにわかったよ。


川 ゚ -゚)「ふむ」


緊張するほど真剣に言われてしまえば、私としても相談に乗らないわけにはいかない。
……それに、私も女だ。
恋話というやつには、それなりに興味がある。


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12名も無きAAのようです:2013/08/17(土) 00:41:49 ID:adaBwzoE0


川 ゚ -゚)「……恋とは、あの甘酸っぱかったりする恋のことだろうか」

o川*゚−゚)o「……うん、そう。それ」


念の為に問いかけた言葉に、キュートはそう答えると、近くにいた猫の体を引き寄せた。
さっきまで私と遊んでいた猫は不機嫌そうに暴れるが、キュートは慣れた様子でその体を捕まえる。


o川*゚−゚)o「キューちゃん、おかしくなっちゃったんだ。こうね、ずっと胸がぐるぐるしてるもん。
       ……くんのことを思うだけでね、キューちゃんがキューちゃんじゃなくなっちゃうみたいなの」

川 ゚ -゚)「そう、か」

o川///)o「ねぇ、クーお姉ちゃん。こういうのがきっと、恋なんだよね?」


猫をギュッと抱きしめながら言うキュートの顔は真っ赤でな。
――ああ。いいなぁと思ったのを覚えている。
キュートがこんなにも赤くなって、真剣に話すなんて、相手の男はどんな幸せものなんだろうと思ったよ。


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13名も無きAAのようです:2013/08/17(土) 00:43:07 ID:adaBwzoE0


川 ゚ -゚)「胸がぐるぐるか」

o川//./)o「うん、ばくばくのぐるぐる」


私はキュートの言葉を聞きながら、彼女の部屋を見渡す。


川 ゚ ー゚)「……そうか」


部屋の床や本棚には、ピンクやキラキラやハートが乱れ飛ぶ雑誌。
彼女が小学生の頃には、勧めてみてもあまり興味を示さなかったものだ。
ファッションやら恋愛やらを取り上げたその雑誌は、もう何度も読み返したのか線やシールがいっぱい貼ってある。
机の上には小物や、キラキラのペンや、漫画。そして、私の伯父さん――父親が買ったらしい分厚い辞書。
棚には、ぬいぐるみや、大きなゴテゴテしたビーズのおもちゃに混じって、リップクリームや鏡が置かれている。


川 - -)「キュートも、恋をする年か」


――ああ、この子も大きくなったんだなぁと、妙に切ない気持ちになったのを覚えている。

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14名も無きAAのようです:2013/08/17(土) 00:44:58 ID:adaBwzoE0


o川*゚ー゚)o「ネーノくんがね、好きなの」


キュートは、しばらく迷ったそぶりをしてから、そう告げた。
私は「ネーノくん」のことを知らなかったから、そうかとだけ答えた。
名前の後ろに「くん」をつけて呼ぶのだから、きっと同級生か年下の誰かなのだろう。
……中学に入ったばかりの彼女がまだ先輩後輩の区分がついていなければ話は別だが、キュートもそこまで失礼ではないだろう。


o川*^ー^)o「ネーノくんはね、いつもニコニコしてるんだけどね。
       猫とか犬とか見ると笑い方がね、こうふにゃーってなるの」


キュートは恋する彼について、語った。
彼女の話は具体性に欠けていて、キュートとの関係や、フルネーム、年といった肝心な話はなかなか出て来なかった。
だけど、彼女の話を聞いているだけで、なんとなく彼の人となりはわかるような気がした。


o川*゚ワ゚)o「すっごくやさしい目でね。
       キューちゃん、ネーノくんのあの目がねすっごく好きなんだー」


ネーノくんが好きな教科、テレビ番組、水泳部に入っていること。
よく語尾に「ねーの」とつける、おかしな口癖があること。
とっても面倒見が良くて、誰かが困ってるとさりげなく助けてくれること。
給食では牛乳を真っ先に飲むだとか、カレーの福神漬は嫌いみたいだとか、キュートは彼のことをとても嬉しそうに話した。


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15名も無きAAのようです:2013/08/17(土) 00:46:43 ID:adaBwzoE0


川 ゚ ー゚)「ふむ。ところで、さっきから言っているネーノというのが、彼の名前ということでいいのかな?
     ちなみに苗字は、なんというのかな?」

o川;゚д゚)oて「言ってなかった?!
        ええ、ウソ、どーして、もっと前に教えてくれなかったの、クーお姉ちゃん!」


私が笑い声を上げると、キュートは「しんじらんなーい」と声を上げた。
それがまた、心の底からそう思っているような声と表情で、それがなかなか愉快だったのを覚えている。
キュートはひとしきり騒ぎ立てた後で、彼のことを教えてくれたよ。


o川*゚ o゚)o「根野くんって言うの。
       根野 ネーノくん。ちょっと変わった名前でしょ」

川 ゚ -゚)「ネーノ少年と、キュートは同じクラスなのか?」

o川 ゚ワ゚)o「クーお姉ちゃんすごい! 何で分かったの!?」


キラキラとしたキュートの笑顔に、苦笑いを返す。
私が彼がクラスメイトだとわかったのは、キュートがネーノ少年の給食の時の様子まで話していたからだ。
それだけで、英雄のような扱いを受けてしまうのだから、困ったものだ。


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16名も無きAAのようです:2013/08/17(土) 00:48:00 ID:adaBwzoE0


川 ゚ -゚)「……なんとなくだ。
     それよりも、どうしてネーノ少年を好きに?」

o川///)o「それは……」


キュートは言葉を切り――私の顔を見上げた。
目の少し潤んだ、真っ赤な顔。
こんな表情で見つめられて、動揺しない人間はそうはいない。
思春期真っ盛りの青少年などイチコロじゃないかと思うのだが、現実はそういう風にはいかないらしい。


川 ゚ -゚)「……どうした、キュート?」

o川*゚ー゚)o「聞いてくれる? クーお姉ちゃん」

川*゚ -゚)「ああ、もちろんさ」


私の返答に、キュートは嬉しそうに笑った。
中学に入りいろいろと変わった彼女だけれども、その笑顔だけは小さな頃から何一つ変わらない。


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17名も無きAAのようです:2013/08/17(土) 00:49:39 ID:adaBwzoE0


o川*゚ー゚)o「あのね、あのね!」

川;゚ -゚)「ちゃんと聞くから、焦るな」

o川 ゚ー゚)o「キューちゃんね、この前ね、びっくりすることにネーノくんと二人っきりになっちゃったの。
       その話すれば、クーお姉ちゃんにもわかると思うから。だから、聞いて」


彼女は真っ赤な顔のまま、興奮した様子で話しはじめた。
そういうのは普通、私のような従姉妹じゃなくて、友人にでも話すものじゃないか?
――とは思ったが、私はおとなしく聞いていたよ。
なんだか、信用されているみたいで、私にはそれが無性にくすぐったかった。


o川*゚ー゚)o「この前のことなんだけどね……」


キュートは一度、瞳を閉じて深呼吸をする。
猫を抱く腕にぎゅっと力を入れると、再び目を開いた。


o川*゚ー゚)o「キューちゃんは……」



キュートが話し始めるのを、私はずっと聞いていた――、

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18名も無きAAのようです:2013/08/17(土) 00:50:23 ID:adaBwzoE0
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19名も無きAAのようです:2013/08/17(土) 00:51:36 ID:adaBwzoE0


ざあざあと雨が降っていた、そうだ。
どうして傘を持って来なかったんだろう?
その時のキュートの頭をよぎったのは、そんなことばかりだったと言う。

早く止まないか。ここから傘をささずに走ったら、どれだけ濡れるだろうか。


o川;゚ー゚)o「……どうしよ」


友達は帰ってしまった。
誰かに傘に入れてくださいと頼もうにも、昇降口の周りには誰も人がいない。
キュートはため息を付いて、雨宿りをしていた。


(; `ー´)「わ、すげー雨じゃねーの!」

o川;゚ o ゚)o「わ」

( `ー´)「ん、素直?」


偶然というものはあるもので、その時、昇降口に現れたのは彼女の想い人だった。
キュート本人に言わせれば、「ウンメーだと思ったの」とのこと。
彼は少し前のキュートと同じように、空を見上げると小さくため息を付いた。


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20名も無きAAのようです:2013/08/17(土) 00:52:23 ID:adaBwzoE0


( `ー´)「素直は帰らないの?」


ネーノという少年は、気さくな人物なようだ。
普通、中学生となると女の子に話しかけるのはなかなかためらわれるものだが、彼の場合はそうでもなかった。
彼は帰るに帰れなくなったキュートに向けて、話しかけはじめた。


o川;゚−゚)o「……う、う」

( `―´)「ひょっとして、傘持ってない?」


想い人と二人っきりという状況と、彼に話しかけられたという衝撃に、キュートの頭は真っ白になったそうだ。
キュートは、人懐っこくて甘えん坊だ。
だけど、それは親しい人や友人に対してだけで、それ以外の相手には意外なほど恥ずかしがり屋だ。
人見知りの軽いもの、とでもいえばいいのかな。

……とにかくそんな性格だから、ネーノ少年を前にしたキュートはろくに話せなくなってしまった。


o川 ゚−゚)o )) コクリ

( `ワ´)「じゃあ、オレといっしょだ」


しかし、一方のネーノ少年はといえば、キュートの態度に気を悪くした様子は無い様だった。


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21名も無きAAのようです:2013/08/17(土) 00:53:32 ID:adaBwzoE0

雨は止む気配を見せない。
キュートとネーノは帰ることも出来ずに、昇降口に立ち尽くしていた。


o川*゚ー゚)o「……」

( `ー´)「……」


キュートは、ネーノの姿を見る。
この天気じゃ帰れないのはわかっているのに、ネーノはキュートの近くから動こうとはしない。

教室とか、どこか別の場所に行かないのかな?
キューちゃんと一緒じゃ、つまらないんじゃないかな?
――キュートはいろいろと考えたそうだが、ネーノはいつもと変わらない表情で外を見上げていた。


( `ー´)「あー、どうしたん?」

o川;゚ー゚)o ビクッ

( `ー´)「こっち見てるからどうしたのかなぁって思ったんじゃねーの」


キュートがネーノの姿を見ていることに気づいたのか、ネーノが声を上げる。
しかし、せっかく話しかけられたというのにキュートは、何も話せないままだった。


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