[
板情報
|
カテゴリランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
|
1-
101-
201-
301-
401-
501-
601-
701-
801-
901-
この機能を使うにはJavaScriptを有効にしてください
|
レス数が900を超えています。1000を超えると投稿できなくなるよ。
( ^ω^)百物語のようです2013( ω )
1
:
◆Rsp62tAaew
:2013/06/28(金) 14:17:25 ID:PjQGMrTo0
( ^ω^)おいすー。ここは夏の祭り、百物語専用スレだお!
祭り開催まではルールの確認等自由に使ってほしいお!
( ^ω^)とりあえず今決まっているルールは
以下の通りだお!
・開催日は八月九日(金)から十八日(日)まで
※ただし投下できるのは金土日のみ。投下期間以外の本スレは作品の感想などご自由に使用してください
・作品はホラーでなくても幽霊、妖怪、人外などが出るならギャグでもなんでも可
・レス制限は一作品30レスまで。それ以上は個別スレ建てをお願いします。
・ながらはNG。個別スレを建ててそこでやるのは可。
※個別スレ参加の場合
レス制限無し。
スレ立て
↓
百物語スレにて投下開始報告、URLを貼る
↓
投下終了後、百物語スレにて投下終了報告(その際、前の人の数字を引き継いで話数宣言)
・1人何話でも投下可!
※連続投下→次に投下する人がいないか確認を取り、無ければOK
※作品の投下間隔についてはルールはありませんが少し間を開けることを推奨します
・イラストでの参加も可!一話としてカウントします。
※ただし作品への支援絵は作品としてカウントしない
・開催時間は18時から翌朝7時まで
・話が終わったら本スレ(自分でスレを立てた人はそのスレでも可)で蝋燭のAAを貼る
前回百物語のスレ
( ^ω^)百物語のようです2012 in創作板( ω )
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/13029/1344607128/
( ^ω^)百物語のようです2012 in創作板( ω )
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/13029/1345353530/
( ^ω^)他に変更点、疑問点ある方はなんでもいってほしいお!
501
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 22:38:50 ID:ld6kgv1U0
ξ; ゚⊿゚)ξ「う、うん……、本題はここからなんだけどね」
そうしてツンは先週起きた事をクールに話し始めた。
1人暮らしの狭い部屋にはシャワーの音が響きやすい。一人である事を認識させるかのようだ。
502
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 22:39:37 ID:ld6kgv1U0
しかしツンは後ろに何者かの気配を感じていた。
ξ; ゚⊿゚)ξ「………だれ?」
振り向いても勿論誰もいない。
よくある話だ。
ξ ゚⊿゚)ξ「…早く寝よ」
シャワーから上がって、着替えていたらまた気配を感じた。
ξ; ゚⊿゚)ξ「………」
今度は無言で振り返る。
誰もいない。
ξ; ゚⊿゚)ξ「……疲れてるのよね」
そう自分に言い聞かせる事にした。
503
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 22:41:24 ID:ld6kgv1U0
TVを見ながら、ドライヤーで髪を乾かしていると
バヅンッ
ξ; ゚⊿゚)ξ「うあ〝っ!?何々?ブレーカー!!?」
ツンは真っ暗な部屋の中を、テレビの明かりを頼りにブレーカーを上げに行った。
ξ; ゚⊿゚)ξ「ドライヤー使ってるときは、他の電気を使わないようにしなきゃね…」
ブレーカーの下に椅子を立て、そこに上がり、ブレーカーに手を伸ばした。
ξ; ゚⊿゚)ξ「………なに…これ…」
髪の毛だ。
ブレーカーには大量の髪の毛が絡みついている。
504
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 22:42:34 ID:ld6kgv1U0
ゴリュッ、ガリガリ…ゴリュッ…
ξ; ゚⊿゚)ξ「ひっ!?」
シャワールームの方から骨と骨がこすれ合っているような音が聞こえる。
シャワールームを見ても誰もいない。
しかし音は止まない。
ぼどっ
なにかおちてきた
「ひぁ…あ……いやぁあああああああああああああああっっ」
ツンはその場で腰が抜けてしまった。
505
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 22:43:50 ID:ld6kgv1U0
首だ。
手もある。
まるで体はあるのに、首と手だけが姿を現しているかのような動きで、タイルを這って近づいてくる。
『ぎ…ぁが………』
ξ; ⊿ )ξ「ひぃ〝っ…!」
両手が前に出たら、今度は首がごきゃり、という音を発しながら前進してくる。
逃げなきゃ。
でも足が震えて…
腰も…
506
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 22:44:38 ID:ld6kgv1U0
水に濡れた手がツンの顔を乱暴に掴む。
大きく裂けた口が目の前でぱっくり開いたとき。
目の前が真っ暗になった。
507
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 22:45:56 ID:ld6kgv1U0
川 ゚ -゚)「んで…そこで気絶しちゃって、気が付いたらベットの上で、夢だったってオチ?」
ξ; ゚⊿゚)ξ「うん、まぁ、ただの夢なんだけどね…怖くて……。」
ただの夢だと今でも本気で思っている。
自分に言い聞かしているだけかもしれないが、自分が気を失ったのは脱衣所だ。ベットの上じゃない。夢でしかありえないのだ。
508
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 22:46:38 ID:ld6kgv1U0
ξ ゚⊿゚)ξ「クーはどう思う?」
川 ゚ -゚)「うーん…本当に起きたことなんじゃないかな?」
ξ ゚⊿゚)ξ「え」
川 ゚ -゚)「首と手だけの幽霊なら、ツンの後ろにずっといるじゃないか。」
509
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 22:48:56 ID:ld6kgv1U0
おわり
(
)
i フッ
|_|
一応補足、テレビがついてるのはわざとです。
最初のろうそくのAAずれてすまなんだ・・・
510
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 22:52:07 ID:h.GZwhnY0
単純だけど怖い……乙
511
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 23:13:53 ID:d3t9MV8U0
19本目をいただきます。
.,、
(i,)
|_|
512
:
( ´_ゝ`)ゾンビがいるようです(´<_` )1/16
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 23:15:35 ID:d3t9MV8U0
自室の布団の上で目を覚ました。
暑そうな夏の日差しが部屋に入り込んでいたが、特に何も感じなかった。
私は身体を起こして部屋を見回した。
物が散乱しているのが見受けられる。長いこと放置していたのだろうか。
久しぶりに来たのだっけなと思い、記憶を辿ろうとしても何も思いだせなかった。
身体の動きは頗る鈍い。自分の身体が老体なので仕方ない面もあるが、それにしても辛い。
まるで外から糸か何かで操っているようだ。
ふと思い立って、自分の左腕を右手でつねってみた。やはり痛みは感じない。
暑さも痛みも感じない。なんということだ、これでは生きている心地がしない。
ひょっとしたら私の身体は既に死んでいるのではないか。
何かの拍子で霊魂だけが残り、腐った身体を操っているだけなのではないか。
だとしたら、さしずめ私はゾンビのようだ。
しかしいったいどうしてこのような状態で、私の霊魂はここに残ってしまったのだろう。
突然、手に何か触れた。
しかし見てみても何も無かった。
513
:
( ´_ゝ`)ゾンビがいるようです(´<_` )2/16
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 23:17:06 ID:d3t9MV8U0
幸い部屋の中で杖を見つけたので、それを支えにドアまで向い、階下へと向かった。
家の間取りはなんとなく憶えていた。ずっと昔に来たかのような遠い記憶として残っている。
そして私には妻と双子の息子がいたことも、徐々に思いだしてきていた。
階下には双子がいた。二人ともいる。
(;´_ゝ`)「……!」
兄者の方が私をみて目を見開いていた。なんだ、何をそんなに驚いているのだ。
私が死んでいることに気付いているのか。
もし何か知っているなら詳しく話を聞こうと思い、私は兄者の反応を待った。
(;´_ゝ`)「あ、あんた歩けたのか」
私は眉を顰めた。何を言っているのだろう。歩けなくなった覚えなどない。
だいたい歩けないならなんで二階で寝ていたんだ。降りれないだろう。
それに目の前でそんなことを言うなんて失礼じゃないか。
私は兄者がこれから何を言うのかを待った。
しかし結局兄者はそれっきり、台所の方へと帰って行ってしまった。
拍子抜けした私は次に弟者の方に顔を向けた。
彼はこちらを見ずに雑誌を読んでいる。
私は声を掛けてみようと思った。
514
:
( ´_ゝ`)ゾンビがいるようです(´<_` )3/16
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 23:18:28 ID:d3t9MV8U0
しかし、うまくいかない。
言葉にもならない音を出したところで、私は話すことの難しさに気付いた。
いったいどうしたというのだろう。身体の構造的に問題があるのか。
そういえば死体は内部から腐っていくと聞いたことがある。声帯がもう使い物にならないのかもしれない。
(´<_` )「……兄者、どうやらだめだったみたいだな」
弟者は雑誌を読みながらそう言っていた。台所の方から大きなため息が聞こえてくる。
私には意味のわからない会話であった。
食事の席へは弟者が案内してくれた。介護慣れした人の手つきだ。どこかで実践しているのかも知れない。
私もこう動きが悪いと要介護者と変わらないのだろう。とにかく援助があるのは助かる。
(´<_` )スンスン
弟者がしきりに鼻をひくつかせているのに気付いた。
私は顔をしかめた。匂いでも気になるのだろうか。嗅がれる側は決していい気持ではない。
しかし身体が腐っていれば当然か。
今は夏場だし、私がゾンビであることに双子が気付くのもそう遠い話ではないだろう。
椅子に座っていたら兄者の作った食事が運ばれてきた。
弟者と自分には質素な朝食が、そして私の前にはおかゆが運ばれてきた。
515
:
( ´_ゝ`)ゾンビがいるようです(´<_` )4/16
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 23:20:05 ID:d3t9MV8U0
私には食欲が無くなっていた。それにもし身体の内部が機能していないならば消化もできないだろう。
だからスプーンにさえも手をつけずにいた。
(´<_` )「さすがに食べないみたいだな」
( ´_ゝ`)チッ
舌打ち?
なんで舌打ちなどされなきゃならんのだ。
( ´_ゝ`)「……なあ弟者、母さんの命日って明日だよな」
(´<_` )「ああそうだ。ちゃんとお供えしないとな」
母さん、つまり私の妻のことだろう。
しかしいつの間に死んだというのか、私は全く知らなかった。
あれほど私のために尽くしてくれた良妻にはなかなか出会えないと思っていたのに、なんと惜しい。
それにしても、そんな妻の死のことも忘れているなんて。
私はよほどひどい記憶障害に陥っているのかもしれない。
(´<_` )「しかし兄者、父さんの前であんまり母さんの話はしてくれるな」
(;´_ゝ`)「ああ……悪い」
それは私に気を使ってということだろうか。
それにしては妙に違和感が残った。
516
:
( ´_ゝ`)ゾンビがいるようです(´<_` )5/16
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 23:21:17 ID:d3t9MV8U0
ややあって、兄者が新聞を広げてくれた。
私は目を細めて日付を確認した。
私の憶えている時とどれほどのずれがあるのか検証したかったのである。
そして驚愕した。
そこにある年号は、私の記憶にあるものより五年は先のものであった。
どうやら私にはここ五年の記憶がすっぽりと抜け落ちているみたいだ。
( ´_ゝ`)「それじゃあ弟者、じいさんの世話は頼んだ」
それから兄者は仕事へ向かった。
弟者は家に残っている。はて、二人とも職についていたはずだが。
妻が死んでから私の介護のため、会社を休んでいるのか。
弟者は私を自室へと案内した。
私は既に弟者の心の内が冷え切っていることを感じていた。
介護の腕はあってもこの態度ではあまり好ましく思えない。
いつからこんな子になってしまったのだろう。
昔は弟者も兄者ももっと快活で騒がしいほどの兄弟だったのに。
自室で私は横になった。
どうにも疲れる。本来動くべきでない身体を動かしているのだから当然か。
517
:
( ´_ゝ`)ゾンビがいるようです(´<_` )6/16
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 23:23:08 ID:d3t9MV8U0
双子のことが気にかかった。
あの二人は私が死体だと気付いていはいない。
しかし私の家族であるのだから、何かしら私について知っているはずだ。
五年間という長期の記憶が無い私だが、あの双子はその期間についても知っているだろう。
口でそれを聞きだすことができないのがもどかしい。紙に書こうともしたが、思うように手が動かなかった。
そのうち、視界がぶれ、全てが真っ暗になった。
気がつけば寝ていたらしい。すでに日が暮れていた。
私はゆっくりと起きた。身体の鈍さは変わらない。
昼食も省いてしまったが、特に問題はないだろう。
どうも視野が不安定だ。右目が開いていない気がする。
身体が不自由なのはしかたない。このままで耐えよう。
それにしても、弟者は昼食のために私を呼ばなかったのだろうか。
それに他の、排泄とか着替えとかもなされた様子はない。記憶もない。
これではあまりにも淡白じゃないか。老人に対してこの仕打ちはいかがなものか。
私の憤りは募っていった。
そのときまた腕に何か触れた。
できる限り急いで振り返ってもやはり何も見受けられなかった。
518
:
( ´_ゝ`)ゾンビがいるようです(´<_` )7/16
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 23:24:27 ID:d3t9MV8U0
私は再び階下に降りた。
すると、なんと弟者と兄者がそろって夕食を食べていた。
二人とも私を見て呆然としている。
(;´_ゝ`)「う、うわああああああ!!!!」
兄者が弾けるように叫んで立ちあがる。
そのまま台所まで行ってしまう。
壁の隅からこっそりとこちらの様子を伺っていた。
弟者も冷や汗を流しながら身構えている。
座りながら、その右手には強く橋が握られていた。
(´<_`;)「どうしてだ……」
弟者が恐ろしく低い声で呟いた。
どうしてだと?
食事のために決まっているだろう。自分たちだけで食べておいて私に出し忘れたなどとは言えまい。
519
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 23:25:37 ID:68AY/e1M0
橋握る弟者
ゾンビものか…
支援
520
:
( ´_ゝ`)ゾンビがいるようです(´<_` )8/16
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 23:26:04 ID:d3t9MV8U0
(;´_ゝ`)「……ど、どうやら危害はないみたいだな」
兄者がほっとした様子で言った。
(´<_`;)「ああ、やっぱり普通じゃないみたいだけど」
弟者は私を見つめながら苦々しそうな顔をしていた。
私がゾンビであることにようやく気付いたということだろうか。
それならそれで好都合だ。私の身に何があったのかわかるかもしれない。
それにしても、先程の態度はなんだ。
およそ親に向けていいものではないだろう。
人を珍獣か何かのように扱いおって。
(´<_`;)「まああの身体じゃどうせ動いたところで大したことないさ」
弟者の冷たい言葉。なんでこんなこと言われなくちゃならないんだ。
二人ともどうしてこんなになってしまったのだろう。育て方に不備でもあったのか。
私は沸々とした怒りのままに、弟者の頭部を睨みつけた。
521
:
( ´_ゝ`)ゾンビがいるようです(´<_` )9/16
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 23:27:44 ID:d3t9MV8U0
(;´_ゝ`)「弟者、父さん怒ってるみたいだぞ」
兄者がおずおずと言った。
弟者が鼻で笑う。
(´<_`;)「そんなはずあるか。もう何年も前からボケてるんだぜ?」
(;´_ゝ`)「確かに五年前からそうだけど……怒ったりは普通にするんじゃないのか」
(´<_`;)「そんな怒ったりする動機なんて、その場限りしか持ち合わせていられないさ」
ボケてる? 痴呆症ということか。
五年前からということは、私の記憶が無い時期と一致している。
なるほど、私は病気のために記憶を保持できない身体になっていたのだな。
だからゾンビとなった今思い返しても、思いだすことができずにいたのか。
合点がいくと同時に、兄弟への不信感が募っていった。
冷めた口調に対する苛立ちばかりではない。
522
:
( ´_ゝ`)ゾンビがいるようです(´<_` )10/16
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 23:29:07 ID:d3t9MV8U0
きっと私は生前痴呆症で、足腰も悪くなっていたのだろう。
それにもかかわらず部屋は二階である。私は閉じ込められていたんじゃないか。
階下にも降りれず、一緒に食事をとることもせず、いやひょっとしたら何日も放置されていたのかもしれない。
朝弟者が言っていたことを思い出す。
何かに失敗した。ひょっとして私を餓死にでもさせようとしたのか。
そして私の魂が双子を憎み、恨むためのこの世に留まったと。
あいにくその恨みを私がすっかり忘れていたから何をする気にもなれなかった。
しかし今なら気持が形成されてきている。
自然と杖を持つ手が震えてくる。
腕が何かに握られる感触があった。
先程から私に触れてくるやつか。
私は苛立って手を振り拒んだ。
なんださっきから、うっとおしい。
何かは知らないが私の邪魔はしてくれるな。
そう念じると感触は消えた。それっきり。
523
:
( ´_ゝ`)ゾンビがいるようです(´<_` )11/16
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 23:30:34 ID:d3t9MV8U0
(;´_ゝ`)「弟者、俺仏壇の方へ行ってくるよ」
(´<_`;)「命日は明日だぞ?」
(;´_ゝ`)「なんかいやな予感がするからさ」
それから兄者は席を立ち、食器を片付け始めた。終わってから仏壇へ行くということなのだろう。
私はふっと怒りが抜けた。そうだ、妻の仏壇をまだ見ていない。
この双子をどうにかしてやる前に挨拶くらいしておきたいものだ。そう思うと怒りは一応おさまった。
兄者が片づけを終え、奥座敷へと歩んでいく。
私もそれについていこうとした。
(´<_`#)「おい!」
弟者が突然叫ぶ。
驚いて弟者を見ると、これまで見たことないほど鋭い目で私を睨みつけていた。
524
:
( ´_ゝ`)ゾンビがいるようです(´<_` )12/16
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 23:32:07 ID:d3t9MV8U0
私は訝しんだ。弟者は私を止めようとしているのか。
なんでそんなことをする必要がある。私はただ妻の位牌を見たいだけだ。
それが夫と言うものだろう。どうして邪魔をする。
抑えていた怒りが瞬時に湧いてきた。
杖を握る手に力が込められる。
(´<_`;)「……っ、うう」
私の顔に恐れをなしたのか、弟者が呻いた。
心の隅に優越感が現れた。所詮わが子だ、父親には逆らえまい。
遠い昔に置いてきた純粋な支配欲。
時代錯誤と言われようとも私はその気持ちを根源に抱えて育ってきていた。
世の中を渡る上でひた隠しにしてきたが、もう限界が近い。
このように虐げられる現状があれば、その気持ちが湧いてくるのも無理はない。
私は杖をゆっくりと持ち上げようとした。
525
:
( ´_ゝ`)ゾンビがいるようです(´<_` )13/16
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 23:33:29 ID:d3t9MV8U0
( ´_ゝ`)「やめろ、弟者」
兄者が静かに言う。
私は腕を動かすのをやめた。杖の先だけが宙に浮く。
(´<_`;)「け、けど兄者!」
弟者は必死の形相で兄者に訴えかけていた。
兄者は首を横に振る。
( ´_ゝ`)「いいじゃないか。母さんくらいみせてやろう。
何かあったら弟者、お前が止めてくれ。俺も手伝うから」
弟者は何事か言いたそうに口を震わせていたが、反論はしなかった。
結局そのままテーブルに向き直った。食器を片づけるためだ。
私の杖を持つ手と背中を支える。介護の姿勢だ。
そのまま三人は奥座敷へと向かっていった。
526
:
( ´_ゝ`)ゾンビがいるようです(´<_` )14/16
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 23:35:13 ID:d3t9MV8U0
仏間に黒檀の仏壇があった。私も憶えている。先祖の位牌はそこに置かれていた。
そして記憶にない新しい位牌があった。それが妻のものなのだろう。
兄者が先頭に立ち、鈴を鳴らして、手を合わせる。
( ´_ゝ`)「……母さんが死んでから、もう一年になるよ。
母さんが服毒自殺したって連絡を受けて、急いでこの家に来た。
介護をまかせっきりにしていたのが悪かったんだと反省して、弟者と協力してじいさんを支えようと思った」
( ´_ゝ`)「でもすぐに、母さんが自殺した理由は別のところにあるとわかった。
父さんはすっかり変わってた。ボケが始まってて、いつも何かに憤ってて、ものすごくわがままな人になってた。
俺らは大人になってからの父さんしか知らなかったからさ、父さんがそうなっちゃうのを見ててショックだった。
そしてそんな父さんと結婚した母さんの受けたショックはもっとひどかったと思う」
( ´_ゝ`)「一年間耐えてみて、やっぱり俺らも限界が来た。
何を言っても父さんはすぐに忘れてしまうんだ、どんなに恨み事を言ってもけろっとしちまう。
それが一番つらかった。母さんが死んでいることさえ覚えてられないなんて」
527
:
( ´_ゝ`)ゾンビがいるようです(´<_` )15/16
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 23:36:16 ID:d3t9MV8U0
( ´_ゝ`)「だからかつて母さんが使った毒を食事に混ぜたんだ。それが昨日の話。
そしたらさ……なんでかわかんないけど、父さん元気になってやんの。もう意味分かんなくてさ。
急に歩けるようにもなってるし、毒なんて全然意味無かったし。嫌になるよ」
( ´_ゝ`)「でさ、昼間弟者が油断しているところを鈍器で殴って殺そうとしたらしい。
でもまだ生きてる。いや、たぶんあれはもう普通じゃない。だって、頭の右側が抉れてるんだもの。
きっと呪いとかそういう、人知の及ばないものだよ。俺たちじゃどうしようもない」
間をおいてから、兄者は嗚咽を漏らしだした。
苦しみに満ちた声が少しずつ発せられていく。
悲しみも怒りも、全てが混ぜ合わさった、ひどく聴き取りづらい声だった。
(#´_ゝ`)「どうして……どうして俺らはこんな目にあわなくちゃならないんだ!
俺らや母さんが何をしたっていうんだ! どうしてあいつを殺せない!!
どうして……どうして……ああ、せめてあいつにわかってほしい。忘れないように、その魂に、俺ら家族の恨みを刻みつけたい」
528
:
( ´_ゝ`)ゾンビがいるようです(´<_` )16/16
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 23:38:05 ID:d3t9MV8U0
兄者は仏壇の前に崩れ落ちた。
大人げない嘆きが仏間に響き渡っている。
その声が嗄れ、喉が腐り落ちようとも、彼は泣き続けるだろう。
私は腕が掴まれるのを感じた。
今までにないほどはっきりとした感触だった。
私はようやく理解した。
この光景を見ることこそが私の今いる理由なのだと。
そしてこの触れてくる者が誰なのかも、わかった。
私はもう、触れてくる手に刃向おうとはしなかった。
〜〜おわり〜〜
529
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 23:40:46 ID:d3t9MV8U0
(
)
i フッ
|_|
>>518
の13行目の弟者さんが橋握っちゃってる……指摘されて気付きました。
握ったのは箸でした。
530
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 23:42:39 ID:h.GZwhnY0
乙乙。可哀想なのは母か父か兄弟か……
しかし自殺したのが母者だと思うと違和感が拭いされないwwww
531
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 23:48:44 ID:NE1qcFrg0
おつ
ゾンビになったのが一番あかんかったのかな…
>>530
同じこと考えたわww母者と思ってしまうとどうしてもなww
532
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 23:51:02 ID:4ajtcZlE0
父者の腕を握ったのは死神かなんかか?
うちの婆様もそうなっちまうんかなあ…
つ!
533
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 23:55:07 ID:d3t9MV8U0
>>532
書いてるときは妻を想定していたけど、受け手次第かなとも思ってみたり。
母者のAAなんて使ってたらそれこそ別の意味での恐怖になりますね……ww
534
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 00:11:56 ID:AdtwW4/A0
二十本目いきます
.,、
(i,)
|_|
535
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 00:12:53 ID:AdtwW4/A0
lw´‐ _‐ノv「やぁ、ひさしぶりだね」
( ФωФ)「全くであるな」
白いワンピース、大きい麦わら帽子。
風になびく豊かな黒髪と、赤いリボン。
彼女に足は、ない。向日葵畑が彼女を透けて見えて、彼女は輪郭を取り戻す。
自分が目を細めると、彼女も目を細め唇で弧を描いた。
lw´‐ _‐ノv「こうしてまともに君と話せるようになって嬉しいよ」
( ФωФ)「それは吾輩の台詞である」
自分が言うと彼女は鈴を転がすような声で笑った。
そうだね、そうだねとひとしきり笑って空を仰ぐ。
lw´‐ _‐ノv「私は結局自分の足で立つことなく逝ってしまったね」
( ФωФ)「……致し方なかろう」
lw´‐ _‐ノv「今更身体について文句をいうつもりはないさ、こうして立つという視界を手に入れたことだし」
( ФωФ)「立っていると言っていいものかわからないが」
lw´‐ _‐ノv「浮いている、と言う方が正しいかな?
どちらでもいいだろう、私は今こうしているのだから」
彼女が生前こうして清々しい笑みを浮かべたことはあったのだろうか。
自身の記憶に問いかけるが思い当たらない。
記憶にある彼女は白い顔で俯いて、諦めの表情を浮かべているばかりだった。
唯一、双子の姉といる時は薄く笑っていたけれど。
536
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 00:13:58 ID:AdtwW4/A0
lw´‐ _‐ノv「……謝っておいてくれたかい?」
脳内に赤髪の、健康的な女性の姿が映る。
目の前の彼女が同じ顔を思い浮かべたのだと悟って、何をだと聞いた。
lw´‐ _‐ノv「これ、借りっぱなしだから。もう返せないけど」
帽子のつばを右手で握って、眉を下げる。
赤いリボンはお前の姉によく似合っていた。
そう言うとわかってるよ、と少し頬を膨らませた。
lw´‐ _‐ノv「すこし、憧れてただけ」
( ФωФ)「健康な姉に?」
lw´‐ _‐ノv「なんで私だけ、って思ったよ。
私が寝てても彼女は立って、走って、私が見れない景色を見てた。君もね」
( ФωФ)「……」
lw´‐ _‐ノv「ああ、恨み言を言いたいわけじゃないんだ。
私の身体がどうしようもないことなんてわかってたし。
君達は動けない私に世界を見せようとしてくれた。だから嫌いになんてなれなかった」
( ФωФ)「嫌いになっていた方がよかった、とでも言いたげだな」
lw´‐ _‐ノv「……その方が、楽だったのかもしれないと思わないでもないよ。
でも君達を羨ましいと思いこそすれ、憎めはしなかった。やっぱり、好きだったんだよ」
( +ω+)「……そうか」
お前の姉は、お前を亡くして以来泣いているのだと。
自分がお前の分の健康をうばってしまったのだと。
恨んでいるに違いないと、自責の念に駆られていることをお前は知らない。
知らせてどうなる。自分だから彼女に会えるのであって、彼女は姉には会えないというのに。
537
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 00:15:17 ID:AdtwW4/A0
lw´‐ _‐ノv「ねぇ、ここは綺麗なままだね」
彼女は振り返って言う。
向日葵が風に揺れて、黄色い花びらが舞った。
帽子のつばを抑えたまま、彼女は笑う。
lw´‐ _‐ノv「ここが好きだったんだ、ずっと来てみたかった」
( ФωФ)「綺麗だろう、吾輩が埋めたのだ」
lw´‐ _‐ノv「彼女と、でしょう。妙に見栄っ張りだね君は」
( ФωФ)「実質吾輩は手伝っただけなのだがな」
lw´‐ _‐ノv「だろうね。でも、綺麗だよここは」
彼女の人生の大半を過ごした部屋が見えた。
たった数メートル、彼女が移動しただけでとても珍しく見えるのはなぜなのだろう。
今そこでは姉が泣いているのだろう。白いシーツを握りしめて、肩を震わせているのだろう。
lw´‐ _‐ノv「向日葵が好きなんだ、彼女が初めてくれた花だから」
( ФωФ)「吾輩も渡したはずだが?」
lw´‐ _‐ノv「彼女の方がはやかった。初めて咲いたんだって、笑顔で持ってきてくれた。
私の髪に挿して似合うと言ってくれたよ」
( ФωФ)「結局二人で髪に飾ったまま寝たのだったか」
lw´‐ _‐ノv「そうそう、起きたら花びらが落ちちゃってて泣いたんだ」
彼女の手は向日葵を通り過ぎた。触れることが叶わなくなった身体に、溜息を吐いた。
これが見れるから夏は好きだったんだけどな。呟いた言葉は地に落ちた。
自分の方を向いて、彼女は笑う。
538
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 00:16:27 ID:AdtwW4/A0
lw´‐ _‐ノv「彼女は元気かい?」
本題に入ったと、思った。
彼女の癖は知っていた。言いにくい話題に入るとき、妙に話を変える。
そして自分は本題から逃げてはいけないともわかっていた。
( ФωФ)「……沈んでいる。お前が逝ってから、ずっと」
lw´‐ _‐ノv「笑っては、いないのかい?」
( ФωФ)「笑えるはずなかろう。彼女はお前に逝ってほしくなかった」
lw´‐ _‐ノv「無理だとも知っていたろうに」
( ФωФ)「……わかっていても、心が追いつかないのだろう。
吾輩は寄り添うことしかできん」
lw´‐ _‐ノv「笑顔が好きなんだけどね。沈んでいる顔なんて似合わないよ」
( ФωФ)「……そこには、同意しよう」
lw´‐ _‐ノv「……ああそうだ、この手があるじゃないか」
ひらめいた、という顔をして彼女は麦わら帽子からリボンを外す。
姉の髪に似た赤布を吾輩の首にかけて、よし、と笑った。
lw´‐ _‐ノv「伝えておいてよ、私は恨んでなんかないって。
これ持って行っちゃってごめんって。返すね、」
( ФωФ)「……名を、呼ばないのか?」
lw´‐ _‐ノv「嫌だなぁ、呼んだらこっちに来ちゃうかもしれないよ?
それに、そろそろ時間切れだ」
彼女が吾輩の頭を撫でて、感触が消えた。
目を開けると既に彼女の姿はなかった。首にかかる布だけが彼女のいた印だった。
向日葵畑に背を向けて、室内にはいる。
目指すは彼女のいた部屋、姉のいる部屋。
539
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 00:17:12 ID:AdtwW4/A0
:ノハ ⊿ ):
やはり泣いているのだな。
でも泣いてほしくなどないのだ。お前には笑顔が似合うと、妹の願いなのだ。
吾輩も、そうなのだ。寄り添うしかできない吾輩でもお前に笑ってほしいのだ。
呼びかける。少しの間を置いて彼女が振り返る。
泣きはらした目が吾輩を見る。見つめる。目を見開く。
少し痩せた手が伸びる。赤いリボンに触れる。握りしめる。
声にならない声が、喉から漏れる。嗚咽。また新たな涙が浮かんで落ちる。
不器用な刺繍を指でたどる。白糸のそれは、彼女の置き土産なんだろう。
それを読んで、また泣くのだ。それが後悔ではなく懺悔でなく、救われた涙であればいいと思う。
そしていつか、またお前と向日葵を笑って見ることができたのなら。
流れるはずのない涙が、流れた気がした。
( ФωФ)君へ、のようですlw´‐ _‐ノv
540
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 00:17:54 ID:AdtwW4/A0
(
)
i フッ
|_|
自分で思ったんだがこんなのシュールじゃねぇ
541
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 00:19:54 ID:ldzJ7e1g0
乙
悲しいな…
542
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 00:24:08 ID:q3OOcQ860
乙!
哀愁のあるかんじがシューさん似合うよねえ
543
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 00:25:24 ID:qi5H0aiEO
乙乙
テンポいい文章で読みやすくて切なくていいな
21本目いきまっす
.,、
(i,)
|_|
(´・ω・`)滴るようです
544
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 00:26:57 ID:qi5H0aiEO
ヴィップ川には子供の幽霊がいるんだよ──
ショボンの通う小学校で、そんな噂が流行った。
(´・ω・`)「幽霊?」
( ・∀・)「おう。20年……30年だったっけ?
そんぐらい昔に、あの川で死んじゃった子がいるんだって」
(´・ω・`)「溺れたの」
( ・∀・)「そうだろうね。それ以来、その子の霊がヴィップ川に出るとか何とか」
昼休み。5年生の教室。
ショボンは友人から、件の噂話を聞かされた。
5時間目の算数の宿題をすっかり忘れてきてしまったショボンとしては、
休み時間の内に宿題をでかしてしまいたい。
だから本当は、友人の話を聞いている暇もないのだけれど。
身を乗り出させ、友人はにんまり笑った。
面白いのはここからだ、と言わんばかりに。
545
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 00:27:54 ID:qi5H0aiEO
( ・∀・)「でさ、でさ、その幽霊な、たまに『ついてくる』んだって」
(´・ω・`)「?」
ショボンは、鉛筆を走らせる手を止めた。
嫌いな算数のプリントよりは、やはり、怖い話の方が気になる。
( ・∀・)「えっとな、ほら、ヴィップ川ってすぐそこじゃん。
だから登下校で川の前を通るやつ多いだろ?」
(´・ω・`)「うん」
( ・∀・)「夕方、1人で下校してる奴の後をな、幽霊がついてくるんだってさ」
(´・ω・`)「……うん?」
( ・∀・)「このとき、振り返っちゃいけないらしい」
(´・ω・`)「なんで?」
( ・∀・)「振り返らずに歩いてれば、家に着くまでの間に幽霊はいなくなる。
でも途中で振り返れば──」
546
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 00:28:33 ID:qi5H0aiEO
( ・∀・)「……わーっ!!」
(;´・ω・`)「わあっ!!」
突然大声で掴みかかられ、ショボンは後ろへ倒れそうになってしまった。
友人がげらげら笑う。
睨むショボンに、友人は笑いながら謝った。
と、そのとき。
( ・∀・)「あ」
(´・ω・`)「あ……」
予鈴が鳴り響き、午後の授業開始の5分前を告げた。
*****
547
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 00:29:56 ID:qi5H0aiEO
5分で宿題は完成させられず。
しかも他の授業で提出しなければならなかった漢字ドリルも忘れていたため、
罰として、居残りでプリントをやる羽目になってしまった。
(;´・ω・`)(うう……モララーのせい……じゃないか……。自分が悪い……)
ショボンはあまり頭が良くない。
プリント3枚を解くのにもだいぶ時間が掛かってしまい、
ようやく帰れるようになったのは、生徒のほとんどが下校した後であった。
夕日が照らす通学路。
ショボンは1人、とぼとぼと歩いた。
たまに自転車に乗った大人などとはすれ違うが、
ショボン以外の子供は見当たらない。
(´・ω・`)(……川)
ヴィップ川の前に差し掛かる。
昼休みに聞いた話を思い出し、自然と足が速まった。
──噂は噂。信じる必要はない。
そう自分に言い聞かせても、怖いものは怖い。
背中のランドセルがずっしり重くなったような心持ちに、溜め息が漏れる。
早く帰ろう。
俯きながら歩く。
548
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 00:31:13 ID:qi5H0aiEO
さらさら。川の流れる音。
かたかた。ランドセルが揺れる音。
ごとごと。線路を踏みつける電車の音。
──ひたり。
水が地面を叩くような音が混じった。
ショボンの足が止まる。
ひた、ひた。
背後から聞こえる。
ショボンの脳裏に過ぎるのは、やはり怪談。
( ・∀・)『夕方、1人で下校してる奴の後をな、幽霊がついてくるんだってさ』
ショボンはそろそろと歩いてみた。
それに合わせて背後の音も近付く。
鼓動が激しくなり、勝手に呼吸が乱れた。
顔を後ろに傾けかけて、何とか思い留まる。
549
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 00:32:38 ID:qi5H0aiEO
( ・∀・)『振り返らずに歩いてれば、家に着くまでの間に幽霊はいなくなる。
でも途中で振り返れば──』
振り返ってはならない。
ランドセルの肩ベルトを握りしめ、ショボンは歩き続けた。
音はついてくる。
徐々に、徐々にではあるが、近付いてきているようにも思えた。
ひたひた。
ぺた。ぺた。
まだ消えない。
どこまでだ。
どこまで歩けば消える?
そろそろ家が近い。
このまま家に着いたらどうなる?
550
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 00:34:40 ID:qi5H0aiEO
(;´・ω・`)(──本当に……)
本当に、いずれ消えるのだろうか。
放っておいて、いいのだろうか。
ひたり。
ぴちゃん。
ああ、また近付いた。
もし、家に到着するまでに、すぐ後ろにまで迫ってきたら。
呼吸が一層荒くなる。苦しい。
怖い。
怖い。
そうだ。
勘違いかもしれない。
幽霊ではないのかもしれない。
幽霊かもしれない。
見れば分かる。
見てはいけない。見なければいけない。
怖い。どうしよう。振り返ろうか。駄目だ。けれども。
足を止める。
一呼吸。
ショボンは、体ごと後ろを向いた。
551
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 00:35:42 ID:qi5H0aiEO
子供が立っている。
夕日を背にしているため、シルエットしか分からない。ショボンよりは背が低い。
そのシルエットから、ぽたぽたと水が滴り落ちていく。
〈……おにいちゃん……〉
声。
ごぽり、あぶくが立つような音と共に、小さな子供の声がした。
その瞬間だけ、滴る水の量が増えた。
すぐさまショボンは駆け出した。
必死に走っていたため、例の音が後をついてきていたかどうかは覚えていない。
丁度帰宅したところだった父と玄関先で顔を合わせたとき、安堵で少し涙が出た。
*****
552
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 00:36:40 ID:qi5H0aiEO
夜になり、日付が変わってもショボンは眠れなかった。
夕方に見たものの正体を考えては、全身が恐怖に包まれ、足元と背中が冷える。
(;´・ω・`)(振り返ったら……どうなるんだろう……)
振り返ってしまった。
何が起きるのだろう。
しかし、もしかしたら、逃げたおかげで助かったかもしれない。
そう。きっと自分は逃げられたのだ。
大丈夫。怖くない。大丈夫。大丈夫。
布団の中で丸まり、自身に言い聞かせる。
それでも胸はどきどきするし、眠気も来ない。
しばらくして、尿意を覚えた。
迷う。そうこうする内に我慢出来なくなり、ショボンはベッドから下りた。
部屋を出て、廊下や階段の明かりを全て灯しながら1階のトイレへ向かう。
両親は既に眠っているようだった。
553
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 00:37:46 ID:qi5H0aiEO
(;´・ω・`)(早く戻ろう)
さっと用を済ませたショボンは、手を軽く洗い、水気を拭いもせずに廊下へ出た。
1階の廊下の電気を消す。
階段を上ろうとしたとき、ひたり、音がした。
体が固まる。
それは背後──玄関から聞こえた。
〈……おにいちゃん……おうち入れて……〉
ドアを挟んだ向こうから、か細い声。
ショボンは階段を駆け上り、明かりを消さないまま部屋に飛び込んだ。
布団に包まり、がたがた震える体を抱き締める。
〈おにいちゃん、おにいちゃん……〉
部屋の窓の外から声がしても、窓を叩く音がしても、ショボンは動かなかった。
窓の外に、人が立てるような足場など無いと分かっていた。
*****
554
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 00:39:39 ID:qi5H0aiEO
朝、母が起こしに来るまでショボンは眠らなかった。
急かされるまま服を着替え、ランドセルに教科書を詰め、1階のリビングで朝食をとった。
昨夜のことを母に話すかどうか悩み、諦めた。
夢だと一蹴されて終わるだろう。
トーストを齧りながら、ショボンは何気なく庭へ続く掃き出し窓を見た。
口からトーストが落ちる。
庭の片隅に少年がいた。
全身ずぶ濡れで、水気をたっぷり含んだ青白い体は一部が崩れている。
膨れた瞼で半分隠れた目が、ショボンを見つめていた。
悲鳴をあげ、ショボンは台所の母のもとへ駆け寄った。
('、`*川「どうしたの」
問い掛ける母に答える余裕もない。
窓の方を指差しても、母は「外に何かあった?」と訊ねるだけ。
恐る恐るショボンも見てみたが、あの少年はいなくなっていた。
ごみを出しに行くという母と共に家を出て、ごみ捨て場で母と別れたショボンは
近所に住むクラスメートと登校した。
びくびくしながら何度も振り返ったが、少年はついてきていなかった。
555
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 00:40:55 ID:qi5H0aiEO
(´・ω・`)「──モララー」
( ・∀・)「おはようショボン。どうした?」
学校に着き、ショボンはいの一番に友人へ声をかけた。
逡巡し、自分の身に起きたことは隠して「噂」の話題を振る。
(´・ω・`)「昨日の……ヴィップ川の幽霊の話。
あれって、振り返っちゃったらどうなるの?」
( ・∀・)「あれか? ううん……ごめん、分かんない。
俺は、振り返っちゃいけないとしか聞いてないや。──貞子!」
友人が、少し離れた席に座る女子生徒の名を呼んだ。
女子生徒は立ち上がり、ショボン達の方へやって来る。
川д川「なあに?」
( ・∀・)「おまえ怖い話好きだろ?
あのヴィップ川のやつってさあ、何で振り返っちゃ駄目なの?」
顎に手をやり、女子生徒が唸る。
「たしか」、と前置きをして、口を開いた。
川д川「振り向けば、家にまでついてきちゃうんだったかな……」
( ・∀・)「そんだけ?」
556
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 00:42:41 ID:qi5H0aiEO
川д川「幽霊を連れ帰っちゃった子は、自分で家の窓や玄関を開けちゃいけないんだって。
幽霊を招き入れちゃうから。
家族が開けてくれるなら大丈夫らしいよ」
( ・∀・)「幽霊が家に入ったらどうなるんだ? そのあと殺されちゃったり?」
川д川「さあ。でも良くないことは起きるんじゃない?」
はっきりしねえなあ。友人が口を尖らせる。
女子生徒は僅かに楽しそうな顔をして、「そもそも」と話を続けた。
川д川「昔ね、この学校に通う兄弟が
大雨の日、下校のときに喧嘩しちゃったんだって」
川д川「それでお兄さんが弟を河川敷に置いて『絶対ついてくるな』って言って、
お兄さんだけ1人で帰ろうとしたんだけど……」
川д川「何度も弟がついてくるから、その度にお兄さんが弟を河原に戻して、
またついてきたら怒って河原に戻すっていうのを繰り返して──」
川д川「ついにお兄さんが弟を川に突き飛ばして、走って家に帰っちゃったの」
( ・∀・)「ひでえなあ。俺は弟にそこまで出来ないや」
557
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 00:44:13 ID:qi5H0aiEO
川д川「それから夜になっても弟が帰ってこなくて……
結局、川をずっと下ったところで弟の死体が見付かったんだって」
川д川「大雨だったから、川の水が増えて流れも速くなってたみたい」
( ・∀・)「それから幽霊が出るようになったのか?」
川д川「って聞いた。
だから幽霊は、お兄さんを追ってるつもりでついてくるんじゃないかなあ」
( ・∀・)「ふうん……。でも何で振り返ったときだけ、家までついてくるんだろ」
川д川「私はお姉ちゃんからこの話を聞いたんだけど、お姉ちゃんが言うには──
弟がついてくる度にお兄さんは怒って河原に戻してたってことだから、
『ついていく→振り返る』っていうのが、幽霊にとっては『お兄さん』の行動にあたるんじゃないかって」
( ・∀・)「あ、じゃあ、振り返らずに無視し続けてりゃ、幽霊は
これは兄ちゃんじゃないなって思って諦めるわけだ! なるほどな」
558
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 00:44:45 ID:qi5H0aiEO
川д川「本当だか分かんないけどね……。
……ショボン君、顔色悪いよ? 具合悪い?」
(;´・ω・`)「え……。……う、ううん、何でもない……」
始業のベルが鳴り、各自が席に着く。
ショボンは机の上を見つめたまま、ぐちゃぐちゃに絡まる思考を整理した。
整っていく度に、背筋が凍る。
少年は「おにいちゃん」と言った。
「おうちに入れて」と言った。
昨日は父、今朝は母がたまたま玄関のドアを開けてくれたが、
もしもショボンが開けていたら──
*****
559
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 00:46:26 ID:qi5H0aiEO
その日帰宅したショボンは、玄関のチャイムを鳴らして母にドアを開けてもらった。
家に入る間際、庭の隅で何かが動いたのが見えた。
そうして、夜。
部屋の電気をつけたままベッドに入ったショボンは、
ぎゅっと目を閉じ眠りにつくのを待った。
昨夜寝られなかった分、眠気は充分にあった。
それでも、どうしても意識が深いところまで落ちていかない。
やがて、また水音が聞こえ始めた。
ひた。
ひたひた。ぴち。ぴちゃ。
ぽたり。
滴る音は家の周りを回っている。
布団を頭まで被っても、しっかり聞こえてくる。
〈おにいちゃん〉
ああ。声が。
布団の端を握り締めるショボンの手に、いっそう力が篭る。
指先が痛むほどだった。
560
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 00:47:49 ID:qi5H0aiEO
〈おにいちゃん……おうち入れて……〉
枕カバーを噛み、耐える。
あちこちで聞く怖い話だと、みんな、気絶して朝を迎える。
なのにどうして自分は気絶出来ないのだろう。こんなに怖いのに。ずるい。酷い。
〈……おにいちゃん……〉
(´;ω;`)「──あっち行け!!」
布団の中から、ショボンは叫んだ。
窓の外の声が止む。
(´;ω;`)「か、か、川に戻れよお!! ついてくるな! 家に入るな!
お前なんかずっと川にいろ!!」
それが精一杯だった。
もう威勢のいい言葉が出てこなくて、声を殺して泣いた。
外からは、声も音もしない。
そうして──いつの間にか眠っていたショボンは、母によって目を覚ました。
561
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 00:48:52 ID:qi5H0aiEO
以来、少年を見たり、音を聞いたりすることはなかった。
本当に川へ戻ったのかもしれない。
それでもショボンは用心して、自分でドアや窓を開けないようにした。
帰宅が遅れたときにはヴィップ川の傍を通らないようにも心掛ける。
そうして1ヶ月ほども経てば、恐怖心は薄らいでいった。
562
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 00:51:13 ID:qi5H0aiEO
ある休日。
1人で留守番をしていたショボンに、母から電話があった。
『雨が降ってきたから、庭の洗濯物、取り込んでおいてくれる?』
(´・ω・`)「はーい」
掃き出し窓から庭に出て、物干し竿から衣類を外して籠に入れる。
全て取り終えたショボンは、ふと、怪談を思い出した。
窓を開けてしまった。
慌てて辺りを見渡す。誰も、何もいない。
ほっとしながらリビングに上がった。
窓を閉めると同時に、雨の勢いが増した。
ざあざあと激しく降る雨。
庇から滴る水が、ぽたぽた落ちて弾けていく。
ひたり。
背後から、雨とは違う音がした。
563
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 00:52:19 ID:qi5H0aiEO
〈オニイチャン〉
.
564
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 00:52:20 ID:O97Yz4QY0
うぎゃぁぁぁぁ
565
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 00:53:37 ID:qi5H0aiEO
おわり
(
)
i フッ
|_|
まぜこぜブーンの以下略その3
566
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 00:55:53 ID:pkNmYIL60
幽霊相手に気を抜くのはもう死亡フラグだな
567
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 00:56:28 ID:NHi49Axs0
あぁ
568
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 00:57:48 ID:ldzJ7e1g0
乙
振り返るなと言われたら振り返りたくなるよね
.,、
(i,)
|_|
22本目行きます
569
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 00:59:23 ID:ldzJ7e1g0
今は昔、今より400年くらい前の昔。
日本によく似た国の
江戸時代によく似た江江時代。
小さな村の小さな家の話。
(´<_` )「おはよう妹者、兄者は?」
l从う∀・ノ!リ人「…うーん、お布団にはいなかったのじゃ」
(´<_` )「また書庫に篭ってんのか…あんな古書ばかりのところに何故…」
l从・∀・ノ!リ人「きっと涼しいからなのじゃ」
妹者は寺子屋へ行く準備をする。
(´<_` )「さ、今朝は豪華だぞ、妹者。港町に嫁いだ姉者から新鮮な魚を届けてもらったからな」
l从・∀・*ノ!リ人「わーい!」
妹者が魚の乗ったちゃぶ台の前に座る。
見たことも無い珍しい魚、イカ、ウナギ…たくさんの海の幸が並んでいた。
570
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 01:00:29 ID:ldzJ7e1g0
(´<_` )「あ、妹者。起きてたら兄者呼んで来い」
l从・∀・ノ!リ人「寝てたら?」
(´<_` )「…あいつ人に起こされると機嫌悪くなるからいいや、寝てたらほっとけ」
l从・∀・ノ!リ人「りょーかいなのじゃ!」
妹者は土間の床の扉を開き、書庫へ向かう。
l从・∀・ノ!リ人「兄者ー」
妹者は慎重に書庫への梯子を降りる。
書庫の中心に兄者はいた。
( -_ゝ-)zzz
l从・∀・;ノ!リ人「……ありゃりゃなのじゃ」
l从・∀・ノ!リ人o0(確かに書庫は涼しいのじゃ…)
妹者は周囲を見回し古びた猫の毛まみれの着物を見つける。
l从・∀・ノ!リ人o0(風邪ひかないように…)
妹者は寝てる間に布団を蹴飛ばした時に弟者がしてくれたように兄者に着物をかけた。
l从^∀^ノ!リ人「よし!」
( -_ゝ-)zzz
571
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 01:01:21 ID:ldzJ7e1g0
(´<_`;)「やっぱ寝てたか、じゃあ後で用意するか」
l从・∀・ノ!リ人「お先にいただきます、なのじゃ!」
(´<_` )「そうだ、姉者から手紙もあったぞ。向こうで嫁姑問題も無く、夫婦仲良くしてるから心配ないってさ。後で返事書こうな」
l从・∀・ノ!リ人「はーいなのじゃ!!」
l从・∀・ノ!リ人「…久々に姉者に…会いたいのじゃ…」
(´<_` )「……」
(´<_` )「…あ、あと…掲示板によるとまた化け猫が現れたそうだ」
572
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 01:01:57 ID:KqyVfKiY0
どんどん本数増えるな…どれも面白くてF5連打が止まらんぜ
573
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 01:03:27 ID:ldzJ7e1g0
化け猫。
それは長く生きた猫がなると言われ、この村の家に勝手に忍び込み、魚を食い荒らし、鼠の死骸を置いて行く害獣。
被害者の一部は障子に影に猫の耳や尻尾が写り込むのを見ているので発覚した。
最近そんな事件が村の唯一の情報源である掲示板を毎日のように賑わせた。
(´<_` )「化け猫が出てから長く生きた猫は殺生する村のおきてが出来たのは覚えてるか?」
l从・∀・ノ!リ人「…覚えているのじゃ…しぃちゃんとこのでぃちゃんも…」
(´<_` )「特にうちみたいに拾ってきた猫は拾う前にもう長く生きてるかもしれないってことで問答無用で殺されるからな。
あんまりうちが猫飼ってることは外で言うなよ」
l从・∀・ノ!リ人「わかってるのじゃー!!」
l从・へ・ノ!リ人「でも酷い話なのじゃ!流石家の躾を受けた猫がそんな悪さなんかするわけないのじゃ!!」
(´<_` )「ははは、そうだな」
(´<_` )「じゃ、食い終わったらすぐ寺子屋行けよ、遅刻するぞ」
l从・∀・;ノ!リ人「あ!!」
574
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 01:04:26 ID:ldzJ7e1g0
寺子屋にて。
( ^Д^) 「皆さんおはようございます」
(*゚ー゚) l从・∀・ノ!リ人*(‘‘)*「「「おはようございます!!」」」
( ^Д^) 「早速、教科書を読みましょう、流石さん」
l从・∀・ノ!リ人「はーい!!」
575
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 01:05:05 ID:qi5H0aiEO
妹者かわいい支援
576
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 01:05:19 ID:ldzJ7e1g0
( ^Д^) 「今日は以上です。あ、流石さんは残ってください」
l从・∀・ノ!リ人「?はーい!!」
(*゚ー゚) 「……」
577
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 01:06:15 ID:ldzJ7e1g0
l从・∀・ノ!リ人「先生まだかなー?」
(*゚ー゚) 「妹者ちゃん?」
l从・∀・ノ!リ人「あれ?しぃちゃんどうしたのじゃ?今日は居残りだから一緒に帰れないのじゃよ?」
(*゚ー゚) 「……タカラ先生には気をつけてね」
l从・∀・ノ!リ人「へ?」
(*゚ー゚) 「じゃあね」
l从・∀・ノ!リ人「???」
( ^Д^) 「さあ、妹者ちゃん行こうか」
l从・∀・ノ!リ人「あ、はい!なのじゃ!!」
578
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 01:07:12 ID:ldzJ7e1g0
l从・∀・ノ!リ人「先生、いいのじゃ?妹者だけ特別にあんみつなんか奢っちゃって」
( ^Д^) 「いいんだよ、別に…それより妹者ちゃん、先生の家に来ないかい?」
l从・∀・ノ!リ人「あ、ごめんなさいなのじゃ。弟者に知らない人の家に行かないって言われてるのじゃ」
( ^Д^) 「先生は知らない人かい?」
l从・∀・ノ!リ人「…あ!知ってる人なのじゃ!」
( ^Д^) 「じゃ、行くよ?」
579
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 01:08:21 ID:ldzJ7e1g0
l从・∀・ノ!リ人「お邪魔しまーすなのじゃ…」
( ^Д^) 「じゃ、お茶淹れてくるね」
l从・∀・ノ!リ人o0(お布団とタンスと襖だけなのじゃ…)
l从・∀・ノ!リ人o0(今朝見たイカと同じ匂いがするのじゃ…)
l从・∀・ノ!リ人「…座布団無いからお布団に座らせてもらうのじゃ」
ぽふん
l从・∀・ノ!リ人「?布団の下が固いのじゃ?」
l从・∀・ノ!リ人「布団の下に何かあるのじゃ!」
l从・∀・ノ!リ人「…本?」
ペラリ
l从・∀・;ノ!リ人「!?」
さっ
l从・∀・;ノ!リ人o0(とりあえず元に戻して…)
l从>へ<;ノ!リ人o0(早く帰るのじゃ!!)タッ
ドン
580
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 01:09:12 ID:ldzJ7e1g0
(;^Д^) 「あれ、妹者ちゃん?!」
l从・へ・;ノ!リ人「ごめんなさいなのじゃ!!やっぱり早く帰らなきゃなのじゃ!!」
( ^Д^) 「……」
チッ
581
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 01:10:02 ID:ldzJ7e1g0
l从・∀・;ノ!リ人「ハァ、ハァ、ハァ…」
l从>へ<;ノ!リ人「ただいまなのじゃ!!」
(´<_`;)「お、おかえり…どうしたんだよ…そんなに急いで…」
( ´_ゝ`)モグモグ
妹者が家に帰ると弟者が洗濯、兄者が遅い朝食を食べていた。
l从・∀・;ノ!リ人「な、なんでもないのじゃ!!」
l从・∀・;ノ!リ人「ちょ、ちょっと走ったら疲れたから夕ご飯まで寝てるのじゃ…夕ご飯に起こして欲しいのじゃ…」
(´<_` )「わかった。お勉強疲れたのか?ゆっくり休めよ。布団敷くか?」
l从・∀・;ノ!リ人「そ、それくらい自分でできるのじゃー!!じゃ、おやすみなさいなのじゃ!!」
妹者が寝室の障子を閉め、布団を敷く。
l从-∀-;ノ!リ人「…はぁ」
そして眠りについた。
582
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 01:10:14 ID:AdtwW4/A0
タカラてめぇってやつは
583
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 01:11:05 ID:ldzJ7e1g0
夜。
l从・∀・ノ!リ人o0(……昼間寝ちゃったから眠れないのじゃ)
l从-∀-;ノ!リ人o0(しかも…暑くて寝苦しいのじゃ…)
l从・∀・ノ!リ人チラリ(-<_- )zzz
妹者は弟者が寝ているのを確認するとこっそり部屋を出た。
584
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 01:11:59 ID:ldzJ7e1g0
l从・∀・ノ!リ人「…やっぱりここは涼しいのじゃ」
妹者は書庫に来た。
( -_ゝ-)zzz
l从・∀・ノ!リ人=3「……もー、しょーがないのじゃ!」
妹者は朝の様に兄者に着物をかける。
l从・∀・ノ!リ人「…眠っている兄者になら…話してもいいはずなのじゃ…」
l从・∀・ノ!リ人「あのね、兄者。今日タカラ先生の家に行ったのじゃ」
l从・∀・ノ!リ人「行ったら…先生の布団の下に本があったから開いてみたら…」
l从 ∀ ノ!リ人「…小さな女の子の裸の…浮世絵があって…」
l从;∀;ノ!リ人「そ、それが…グスッ…しぃちゃんに似てて……グスッ」
( -_ゝ-)zzz
l从;へ;ノ!リ人「ヒック…ヒック…」
暫く妹者は人の居ない書庫で静かに泣いた。
585
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 01:13:12 ID:ldzJ7e1g0
l从・∀・。ノ!リ人「…泣いたら…少し楽になったのじゃ……グスッ」
l从-∀-ノ!リ人「…疲れた…のじゃ…」
l从-∀-ノ!リ人「……スー…スー…」
妹者が泣き疲れて書庫で寝てしまった。
( -_ゝ-)
( ´_ゝ`)パチッ
( ´_ゝ`)「フーン、なるほど。タカラ先生、ねぇ」
( ´_ゝ`)「よいしょ」
兄者は妹者を抱きかかえ、書庫の梯子に向かう。
586
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 01:14:13 ID:ldzJ7e1g0
l从-∀-ノ!リ人zzz
「妹者、起きなさい」
l从う∀・ノ!リ人「ん…んーん?」
l从・∀・ノ!リ人o0(あれ…妹者…いつ布団に戻ったっけ…?)
(´<_` )「仕事休みとれたから妹者も寺子屋休むぞ」
l从・∀・ノ!リ人「え、ど、どうして休みなんかとったんじゃ?」
(´<_` )「…姉者に会いたいんだろ?」
l从・∀・*ノ!リ人「!!うん!!」
(´<_` )「さ、お返事のお手紙持って行くぞ」
l从・∀・ノ!リ人「はーいなのじゃ!!!」
587
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 01:15:16 ID:ldzJ7e1g0
l从・∀・ノ!リ人「あれ、兄者はー?」
(´<_` )「寝てるからいいよ、どうせ顔見たらすぐ帰るし。ご飯置いとけば大丈夫」
l从・∀・ノ!リ人「じゃ、兄者が起きてる時にまた行くのじゃ!」
(´<_` )「ああ、そうだな」
l从・∀・ノ!リ人「兄者ー、お家ー、いってきますなのじゃー!」
(´<_` )「いってきます」
二人が家と兄者に出発の挨拶をする。
588
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 01:16:11 ID:ldzJ7e1g0
( ^Д^) 「…行ったか」
その様子を一人の男が影で見ていたのを知らずに。
589
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 01:17:21 ID:ldzJ7e1g0
( ^Д^) 「こんな村外れに住んでて良かったよ、あの子が。一々夜に身を潜めて忍び込むの辛いんだよなぁ」
タカラが鍵をこじ開ける。
( ^Д^) 「開いた、開いた」
膨らんだ風呂敷を慎重に持ち、忍び込む。
( ^Д^) 「よし、入口に早速ばら撒くか」
風呂敷の中には鼠の死骸で溢れていた。
タカラはそれを入口に撒く。
( ^Д^) 「よし」
そしてタカラは台所を物色する。
( *^Д^) 「お!ウナギみっけ!!イカもあるぜ…なんだ?!この魚!!めっちゃ高級そう…台所にあるくらいだから食えるよな…貰おう」
タカラは先程とは別の風呂敷を広げ、海の幸を包む。
すると、
シャン
(;^Д^) 「!?す、鈴の音?!誰かいるのか?」
( ´_ゝ`)「はい、おりますが」
(;^Д^) そ「うわあああ?!」
( ´_ゝ`)「うっさ…」
590
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 01:18:19 ID:ldzJ7e1g0
(;^Д^) 「あ、失礼しました…妹者ちゃんの保護者様でしたか…」
(;^Д^) o0(しかし…足音が一切しなかった…いつの間に…)
( ´_ゝ`)「…逆かな」
( ^Д^) 「しかし…先程出かけたのでは?」
( ´_ゝ`)「よく知ってんな」
(;^Д^) ドキッ
( ´_ゝ`)「俺は留守番だから」
( ^Д^) 「はぁ…そうですか…滅多に妹者ちゃんが休むことなんて無いので驚きました」
( ´_ゝ`)「タカラせーんせ、今日はお仕事は?」
( ^Д^) 「あ、うちの寺子屋はうちの寺の僧が交代で先生やってるんで今日はボク、休みで…」
( ^Д^)
( ^Д^) 「なんで俺がタカラってわかった?」
兄者がにいっと笑う。
( ´,_ゝ`)
591
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 01:19:18 ID:ldzJ7e1g0
( ´,_ゝ`)「昨日、慌てて帰ってきた妹者の汗の匂いに混じってあんたのイカくさい匂いがしたんでね」
( *^Д^) 「い、妹者ちゃんの汗の匂い…」
( ´_ゝ`)シラー (^Д^;) ハッ
( #^Д^) 「ち、あの娘話しやがったな…折角俺が見染めてやったのに!!」
( ´_ゝ`)「ま、いらないお世話ってことだな」
( #^Д^) 「クソ!!見られたからには殺…」
「え?なんだって?!」
(;^Д^) 「?!」
目の前にいた男が、消えた。
タカラはそう感じた。
しかし兄者にしてみれば普通に動いたつもりだったらしい。
( ´_ゝ`)もぐもぐ
(;^Д^) 「は?!お前何食ってんだよ」
( ´_ゝ`)「え、何ってお前の置き土産だけど…」
(;^Д^) 「…なんだよ…お前…なんだよ…お前…」
タカラは腰を抜かす。
592
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 01:20:45 ID:ldzJ7e1g0
ゴクリと最後の一口を飲み込んだ兄者はタカラを見て言う。
( ´_ゝ`)「お前は俺が許すには罪を犯しすぎたな」
兄者はタカラに拳を突き出す。
( ´_ゝ`)「ひとつ、俺の臨界距離内にふみこんだ」
人差し指を伸ばす。
( ´_ゝ`)「ふたつ、俺の飯候補を盗むつもりだった」
中指を伸ばす。
( ´_ゝ`)「みっつ、我が家の可愛い姫君、妹者を傷つけた」
薬指を伸ばす。
( ´_ゝ`)「よっつ、俺の少ない友達が死んだ原因である」
小指を伸ばす。
( ´_ゝ`)「いつつ、ウチに悪戯したな。お前」
親指を伸ばした。
( ´_ゝ`)「残念だったな。ウチにイタズラする権利は俺にしかないんだ」
( ,,^Д^;) 「だ、だからなんなんだよ?!」
タカラは開き直ったように兄者の顔に近づき大声で言う。
( ´_ゝ`)「こんなんで人騙そうってのがまず可笑しいよな…ま、騙されるのもどうかとも思うけどさ……人助けるべき僧が、魚まで食ってよ」
兄者は伸ばした手でタカラの頭の猫耳を取る。
和紙を固めた様なちゃちなものだった。
593
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 01:22:12 ID:ldzJ7e1g0
( #^Д^) 「うるせぇ!お前だって似たような格好じゃねぇか!!この野郎!!目ん玉緑ってこたぁ野蛮人じゃねぇか!!
国に帰れ!!オンボロ服着てだっせーの!!」
( ´_ゝ`)「むっつ」
兄者は人差し指でタカラの頬を引っ掻く。
( ,^Д^;) 「?!!っつ!!」
( ´_ゝ`)「主人とウチの姫君が好きだと言った俺の目をバカにした」
( ´_ゝ`)「ななつ、」
そのまま中指でまた頬を引っ掻く。
( ´_ゝ`)「俺の嫌いな場所に行く様に勧めた」
( ,,;Д;) 「ひいっ!!」
( ´_ゝ`)「やっつ、」
ついでに腰についた猫の尾を取る。
( ´_ゝ`)「主人のくれた着物をボロだとバカにした」
こちらも針金に麻を巻きつけた様なボロだった。
タカラは這って逃げようとする。
594
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 01:23:10 ID:ldzJ7e1g0
( ,,;Д;) 「た、だれか…」
しかし兄者はタカラの頭をぐいと床に押さえつける。
( ´_ゝ`)「酷いよな。こんな高級そうな僧衣ただでもらっといて悪いことするわ俺の服バカにするわ」
兄者はタカラの僧衣をペラペラと弄りながら言う。
( ´_ゝ`)「覚悟は出来てるかな?」
( ,,;Д;) 「!!」
595
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 01:26:13 ID:ldzJ7e1g0
翌日の掲示板。
主な記事は昨日の騒動。
それは、犯人の傷ついた似顔絵と共にあった。
『化け猫の正体見ればバカ坊主』
『昨日、被害者の流石弟者氏、妹者ちゃんが帰宅すると僧のタカラが流石兄者君に引っ掻かれているのを発見した』
『床に散らばる鼠の死骸とタカラ氏の風呂敷に流石氏の魚が入っていること、
こじ開けられた鍵と落ちている猫耳を思わせる和紙や猫の尾を連想させる麻の巻かれた針金から
昨今の「化け猫騒動」の真犯人と気づき弟者氏が取り押さえ、妹者ちゃんの同心への通報により事件が発覚した』
『タカラ氏は「化け物」と連呼し、精神に異常を来たしてると判断され遠方の山の頂上にある寺で療養することとなった』
隅にあるのは、兄者のお手柄。
それは掲示板の脇に怠そうな兄者と笑顔の妹者、弟者の絵と共にあった。
『お手柄、流石兄者君。連日の「化け猫騒動」の真犯人を見事成敗!』
『横の記事にもあるように犯人に見事一矢報いた流石兄者君。
同居人の流石弟者氏によると「いつも寝てばっかりいるので驚きました。でも、やる時はやるって信じてましたよ?」と笑顔で答えてくれた。
同じく同居人の流石妹者ちゃんは「流石兄者!我が流石家の立派な自宅警備員なのじゃ!!」とのことで取材陣は失笑した』
そして最後に総評として一記事。
『今回の「化け猫騒動」により大変な数の無実の猫が殺された。
この惨劇を決して風化させない為にも、タカラ氏の悪行を忘れぬ為にも、
犯人確保とこの惨劇の繰り返しを止めてくれた流石家の感謝の為に関係者の名前をここに記す』
…そしてこの記事の後には殺された猫と飼い主一家、タカラ氏や流石家の似顔絵と名前が記されていた。
そして彼らの顔と名前はこの事件を風化させぬ為に現在もどこかの掲示板の隅に残っているとかどうとか。
596
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 01:27:17 ID:ldzJ7e1g0
(´<_` )「おーい、妹者。起きてたら兄者呼んでくれ。夕飯だ」
l从・∀・ノ!リ人「寝てたら?」
(´<_` )「あー、寝てたらそのままにしとけ。あいつ人に起こされるの嫌いだし、昨日も表彰式やら村の名誉賞の受賞だので疲れてるだろうしな」
l从・∀・ノ!リ人「はーいなのじゃ!!!」
597
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 01:28:39 ID:ldzJ7e1g0
妹者は梯子を降りて古書室を見る。
見れば珍しく兄者が起きているだけでなく、いつもの着物を体にかけていた。
妹者は体にかかった着物を見て少し前を思い出す。
自分の古くなった着物を捨てようとした弟者から無理矢理奪い取って新しいのを買ってやるという声も聞かずに自分の物にした兄者を。
( ´_ゝ`)ペラペラ
よく見れば本をパラパラと捲っている、と妹者は気づいた。
l从・∀・ノ!リ人「…クスクス」
妹者は、寺子屋にも行ったことがない兄者に本なんて読めるはずないのに、と笑った。
598
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 01:29:57 ID:ldzJ7e1g0
すると兄者が妹者の方を見た。
l从・∀・ノ!リ人「あーにじゃ、ご飯なーのじゃ!」
( ´_ゝ`)「ニャー」
兄者は梯子を駆け上った。
兄者は梯子の下から「呼んであげたのに先に行くとは無礼なのじゃ!!」と妹者が言っているのを聞いてにぃっと笑った。
バケネコアーカイブのようです
おわり
599
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 01:31:05 ID:ldzJ7e1g0
(
)
i フッ
|_|
600
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 01:31:16 ID:NHi49Axs0
化け猫だからかぁ
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板