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( ´_ゝ`)デザート×キャラバンのようです(´<_` )
1
:
名も無きAAのようです
:2012/11/23(金) 19:46:34 ID:tFLjG.4M0
ラノベ祭り参加作品
2
:
名も無きAAのようです
:2012/11/23(金) 19:47:25 ID:tFLjG.4M0
(*´_ゝ`)「旅に出るぞ!」
――と、兄者は言った。
.
3
:
名も無きAAのようです
:2012/11/23(金) 19:48:37 ID:tFLjG.4M0
( ´_ゝ`)デザート×キャラバンのようです(´<_` )
.
4
:
名も無きAAのようです
:2012/11/23(金) 19:49:27 ID:tFLjG.4M0
そのいち。 旅に出るぞと、兄者は言った
.
5
:
名も無きAAのようです
:2012/11/23(金) 19:50:19 ID:tFLjG.4M0
世界とは、一面に広がる砂の大地だ。
東の果ての大国や、西にあるという国々ではまた違うという話だが、少なくとも彼の知る世界はそうだった。
一部の季節だけを除いて暑く乾燥する大地は、植物が生えることを邪魔し、人々が足を踏み入れることも許さない。
そんな環境の中でも人々は、限られた水場に集落や街を作り、家畜や農作物を育てて暮らしてきた。
( <_ )「――ああ」
彼が今いるのも、そんな街の一つ。
数十年前に彼の母親らによって開拓された、水辺の街。
流れるのは石くらいと言われた不毛の土地は、今では“流石”という名で呼ばれる交易の要となっている。
(´<_` )「平和だな」
そんな流石の街。その中でも一際大きく豪勢な屋敷の一角に、彼は横になっていた。
薄い緑の体に、猫のような獣の耳。丸い尾は衣服の影に隠れてその姿を見ることはできない。
このあたり独特のゆったりとした衣服は、ひと目で金がかかっているとわかる高級なもの。
吹き寄せるかすかな風にあわせて、青年の耳がぴくりと動く。
6
:
名も無きAAのようです
:2012/11/23(金) 19:52:02 ID:tFLjG.4M0
年の頃は十代後半から二十代前半。
細いながらも、がっしりとした体格をしたこの青年の名前は、弟者=流石。
街と同じ名をした彼は、この街を切り開き実質的に支配する女傑、母者=流石の二人目の息子であった。
(´<_`*)「何事も起こらないというのは、いいものだな」
息を吸うのも苦しいくらい乾いた空気も、見渡す限りの砂も、この場所からは感じられない。
そんな場所で横になっていると、ここがどこなのか忘れてしまうようだ。
夕暮れまでここでこのまま一眠りしようか……
l从・∀・ノ!リ人「ちっちゃい兄者、みっけなのじゃ!」
(´<_` ;)「――ぐぇ」
……そんな彼の願いは長続きしなかった。
どこからか現れた彼の小さな妹が、青色の髪をたなびかせながら彼の体へと飛び込んできたからだ。
いくら体を鍛えようとも、人間一人の体重が不意にかけられればたまったものではない。
平静を装おうとするも失敗し、彼がうめき声をあげるのは仕方のない話であった。
l从・∀・*ノ!リ人「兄者ーちっちゃい兄者ー、今日こそはあそぶのじゃー!」
(´<_` ;)「だがしかし、こっちは久々の休日……」
l从・∀・#ノ!リ人「まえもそういって、あそんでくれなかったのじゃー。
ちっちゃい兄者は妹者にイジワルなのじゃー」
7
:
名も無きAAのようです
:2012/11/23(金) 19:54:04 ID:tFLjG.4M0
小さな妹――妹者の言葉に、弟者は小さくため息をついた。
確かにここ最近は、年に三度の大きな商隊が到着したところで、誰も彼もが忙しそうにしていた。
そんな中で一人取り残された、妹者が寂しい思いをするのは仕方のないことだった。
(´<_` )「……夕方までだぞ」
l从・∀・*ノ!リ人「ちっちゃい兄者だいすきー!!」
一人で取り残された時の寂しさを、弟者は誰よりも知っている。
だから、弟者は年の近い兄弟も、遊んでくれる子供もいないこの小さな妹に、思いの外甘かった。
(´<_` )「どうする?」
l从・∀・ノ!リ人「お庭がみたいのじゃー」
彼らの住む屋敷における庭といえば、屋敷の中心にある中庭一つしかない。
しかし、弟者とその双子の兄――兄者がイタズラに使って以来、彼らの父は子どもたちが庭に立ち入ることを禁止していた。
(´<_` ;)「いくら子どもだったとはいえ、貴重な泉に染料をばらまいたのはまずかったな」
l从・∀・ノ!リ人「?」
8
:
名も無きAAのようです
:2012/11/23(金) 19:56:04 ID:tFLjG.4M0
少し迷った末に弟者は、露台に腰を据えることに決めた。
屋敷の二階にあたるこの場所からならば、中庭を見渡すこともできるし、何よりも風の通り道で涼しい。
l从・∀・*ノ!リ人「お花が咲いてるのじゃー」
(´<_` )「ふむ、あれはなんだろうな。父者ならば知っているのだろうが……」
露台に備え付けられていた椅子に腰を下ろす。
妹者はそんな弟者の様子を見ると、隣にある椅子……ではなく、彼の膝の上にちょこんと座りこんだ。
l从・∀・*ノ!リ人「えへへー」
(´<_` )「少しだけだぞ」
l从^∀^ノ!リ人「はーい」
いくら十に満たないとはいえ、街を背負って立つ家の娘にふさわしい行動ではない。
しかし、弟者は何事もなかったかのように妹者を見つめると、その頭をなではじめる。
堅苦しいのは母や姉に任せておけばいい。流石家の男は基本的にそんな脳天気なところがあった。
l从・∀・ノ!リ人「ちっちゃい兄者ー。もうすぐ何があるか知ってる?」
(´<_` )「ふむ。そうだな……。もうすぐといえば、豊穣祭だな」
9
:
名も無きAAのようです
:2012/11/23(金) 19:58:04 ID:tFLjG.4M0
l从・へ・ノ!リ人「むー、そうじゃないのじゃー」
(´<_` )「そうか?」
l从・∀・ノ!リ人「ヒントは明日なのじゃー」
(´<_` )「明日。明日なら……」
妹者から出された問いに答えようとした瞬間、弟者よりもはるかに脳天気な声が辺りに響き渡った。
弟者によく似た――しかし、それよりもほんの少し高い声。
わざわざ確かめるまでもなく、弟者はその声の主を知っていた。
( ´_ゝ`)「弟者ぁあ、いるかぁぁぁぁあ!!!」
(´<_` )「ふむ、兄者か」
兄の姿を探して、弟者は周囲を見回す。
彼らが今いる露台にも、その奥に続く部屋の暗がりにも人の姿は見えない。
はて、どこにいるのだろう? と、思ったところで、手すりから身を乗り出し地上を覗きこんでいた妹者がうれしそうな声を上げた。
l从・∀・*ノ!リ人「おっきー兄者ぁー! こっちなのじゃー!」
(*´_ゝ`)ノシ「おお、愛しの妹者たんではないか。そっちに、弟者はいるか?」
l从・∀・*ノ!リ人「いるのじゃー」
10
:
名も無きAAのようです
:2012/11/23(金) 19:58:18 ID:RtBXo7hM0
やたら壮大そうなのが来た
支援だ
11
:
名も無きAAのようです
:2012/11/23(金) 19:59:32 ID:tFLjG.4M0
ちっちゃい兄者もはやくはやくーという妹の声に答え、地上を覗きこむ。
そこにあるのは、先程から二人が眺めていた中庭だ。
東方や西方から無節操に集めてきた植物が自由を謳歌し、花が咲き乱れ、中央には大きくはないものの泉がある。
(´<_` ;)「あ、兄者。そこは俺らや妹者は立入禁止……」
(*´_ゝ`)「よく聞こえんなー。どうしたー、弟者ぁー?」
彼らの父が丹精を込めて手入れしているこの庭は、実のところこの街で最高の贅を尽くした空間である。
水が金に勝ることもあるこの一帯で、食うのにもつかえない植物を育てようと思えば、そうなるのは当然のこと。
脳天気な二人の兄は、よりにもよって最高の金のかかった植物たちを踏み潰しそうな位置で堂々と立っていた。
(´<_`#)「そこからとっとと出ろ! この馬鹿兄者!!!」
(; ´_ゝ`)「え?」
(´<_`#)「母者に殺されたいのか!」
(; ´_ゝ`)「ちょ、おま」
( <_ ♯)「いいから、早く!」
弟者の言葉に兄者はきょときょとと辺りを見回す。
しばしの間、腑に落ちないという顔をしていたが、弟者の形相に不穏な事態を感じたのか徐々にその顔が曇り出す。
12
:
名も無きAAのようです
:2012/11/23(金) 20:01:08 ID:tFLjG.4M0
(; ´_ゝ`)「ひょっとして、俺って今やばい?」
(´<_`#)「やばいも何も、お仕置きを覚悟するレベルな件」
うぇぇ、と情けない声を上げて後ずさった瞬間、兄者の足は不運にも白い可憐な花を踏みつけていた。
それに気づくと同時に、今度こそ兄者の顔は真っ青になった。
l从・∀・;ノ!リ人「あぁぁぁあああ」(´<_`; )
ヾ(; ゚_ゝ゚)ノシ「ひぃぃ、どうしよう。どうしよう、俺」
l从・∀・;ノ!リ人「とりあえず、こっちに来るのじゃー」
(; ゚_ゝ゚))「わ、わかった。そっちだなー」
兄者はそう言った後、不意に後ろを見て何事か呟いた後。
弟者と妹者の姿を見上げ、地面を蹴るとそのまま、
――飛んだ。
.
13
:
名も無きAAのようです
:2012/11/23(金) 20:03:07 ID:tFLjG.4M0
当然の話だが、人は飛べない。
昔はそれが可能な魔法使いが多くいたというが、今では数えるほどしか存在しない。
道具があれば可能だとも言うが、それが可能な道具といえば魔法使い以上に貴重だった。
(; ´_ゝ`)「よし、と」
l从・∀・;ノ!リ人「お、おっきい兄者……」
建物の二階。
その場での跳躍では到底届かないはずの距離を“飛んだ”兄者は、手すりの上に足を置いた。
流れる冷や汗を拭いながら、何事もないかのように露台に降り立つと、兄者はようやくため息を付いた。
l从>∀<*ノ!リ人「すっごいのじゃー! 今のどうやってやったのじゃ?」
( *´_ゝ`)「いや、これか? 実はだなぁ」
( <_ )「……この」
( ´_ゝ`)「んー? 弟者、どうし」
バキッ(゚く_゚(#⊂(´<_`#)「くそ虫がぁぁぁぁ―――!!!」
14
:
名も無きAAのようです
:2012/11/23(金) 20:05:03 ID:tFLjG.4M0
弟者の渾身の拳が、兄者の頬にめり込んだ。
手に伝わる感触に弟者は舌打ちをし――己の拳を避けた、真の相手を睨みつけた。
( ^ω^)
まるまると膨れた東方のまんじゅうのような頭。
兄者の頭と同じくらいか、それよりも少し小さいくらいの体躯。
白い体の背からは、硝子のような透明の羽がきらめいている。
( ^ω^)「……危ないところだったお」
人は空を飛べない。
それでも、人が空を飛ぼうとするならば、空を飛ぶことができる貴重な存在の手を借りるしかない。
そして、その貴重な存在は兄者の服の首元を掴んだまま、にへらと笑った。
(´<_`#)「……」
(#);_ゝ;)「弟者、お兄ちゃんは今とぉーっても痛いのだが」
⊂l从・∀・;ノ!リ人「い、いたいのいたいのとんでけーなのじゃ!」
15
:
名も無きAAのようです
:2012/11/23(金) 20:06:12 ID:4uS7bkxE0
あの絵か支援
16
:
名も無きAAのようです
:2012/11/23(金) 20:07:02 ID:tFLjG.4M0
(;^ω^)「アニジャぁー。毎度のことながら、この弟どうにかならないかお?
ブーンは今、100年くらいごぶさただった命の危険を感じたお」
(#)´_ゝ`)「ああ、それはだなー」
(´<_` )「いいか、兄者。
人間は普通、 空 を 飛 べ な い」
兄者が口を開き何か言うよりも早く、弟者は兄者に向けて口早に言い放った。
その言葉に兄者は眉をひそめると、自分の首元にいる生物ではなく弟に向けて不満気な声を上げる。
(;´_ゝ`)「うぇー、人を殴っといてつっこむのそっち? そっちなの?
何かお兄ちゃん、イロイロとおどろきだわー」
(´<_` )「俺はそういうのは嫌いなんだ」
(;^ω^)「? そういうの?」
ブーンの問いかけに、弟者は答えなかった。
しまったと表情を歪め。それでも、次の瞬間には、何事もなかったかのようにもとの落ち着いた表情に戻った。
l从・∀・#ノ!リ人「もー、おっきい兄者もちっちゃい兄者もケンカしちゃめーなのじゃ!」
ヾ('A`)ノシ「そうだーそうだー!」
17
:
名も無きAAのようです
:2012/11/23(金) 20:09:02 ID:tFLjG.4M0
(´<_` ;)「――くっ」
ヾ('A`)ノシ「とっとと謝れ、鬼畜弟ー!」
( ^ω^)「えっとおに……ちく……? 弟ー!
ブーンたちだって生きてるんだおー!!!」
('A`)「このシスコン! ロリコン! ろくでなしぃー!!
お前の母ちゃんゴリマッチョぉ!!」
(*^ω^)ノシ「そうだそうだぁー!!!」
ここぞとばかりに飛び回る、謎の生き物二匹。
白いほうの名前はブーン。新たに現れた、紫色でブーンよりさらに小柄なのはドクオ。
二匹はとある事情から黙りこむ弟者に向かって、せっせと暴言をあびせはじめた。
( ´_ゝ`)「確かに、母者はゴリマッチョだな」
l从・∀・;ノ!リ人「おっきい兄者……?」
一方、殴られた兄者といえばけろりとした顔で、弟と二匹の攻防を眺めている。
そんな、兄の姿を妹者は首をかしげながら見つめた。
18
:
名も無きAAのようです
:2012/11/23(金) 20:11:02 ID:tFLjG.4M0
(*'A`)「弟者ちゃんの根性悪ぅー!! 冷血ぅー! ひとでなしぃー!!」
(*^ω^)「性格が曲がっていてよー」
(´<_`;)「……っ」
(*'A`)「お前の兄ちゃん〜」
二匹の悪口攻勢は止まらない。
普段からの鬱憤を晴らそうとばかりに、弟者の周りを飛び回りはやしたてる。
(;^ω^)「お?」
(*'∀`)「鏡に落ちやんのぉぉお!!!
ほんとに人かよぉwwwwwwwww」
( ;゚_ゝ゚)「それ、俺ぇぇぇぇぇぇえええええええええ!!!!」
Σl从・∀・;ノ!リ人「 ! 」
19
:
名も無きAAのようです
:2012/11/23(金) 20:13:02 ID:tFLjG.4M0
「逆鱗に触れる」という言葉を、ご存知だろうか。
東方のことわざなのだが、知らなかったら「堪忍袋の緒が切れる」や、「腹に据えかねる」という言葉に変えてもいい。
(´<_` )
――要するに、弟者は激怒していた。
表情にはこれっぽっちも出ていないが、そういう時の人間とは大概恐ろしいものだ。
(;´_ゝ`)「えーと、弟者さん?」
(´<_` )「……」
弟者の腕が翻ったのが、ほんの一瞬の出来事。
人にできる限界をはるかに超えた速度で拳はうなり、ドクオの背に広がる二対の羽のうち一枚をむしりとった。
バランスを崩したドクオの首らしき箇所を、弟者は渾身の力で握る。
(゚A゚)「ひっ」
(´<_` )「前言を撤回するか、このまま消滅するか。好きな方を選べ。
忌々しいことだが、お前たちは兄者のお気に入りだからな。猶予くらいは与えてやる」
20
:
名も無きAAのようです
:2012/11/23(金) 20:15:01 ID:tFLjG.4M0
(;´_ゝ`)「ドクオぉぉーー!!! 死ぬなぁぁぁ!!!!」
( ;゚ω゚)「謝るお!!! もうめっちゃ謝るしかないぉおおお!!!」
(;゚A゚)「ごごご、ごめご、ご、ごめんなさ」
弟者の行動により、一気に張り詰めた空気。
誰もが息を呑む、緊迫した一瞬。
(´<_` )「お前らみたいな存在は、全て死ねばいい」
その空気は――
l从・∀・;ノ!リ人「えーと、兄者たちはダレとお話してるのじゃ?」
――わりと、あっさり壊れた。
21
:
名も無きAAのようです
:2012/11/23(金) 20:17:01 ID:tFLjG.4M0
l从・∀・ノ!リ人「えーと、妹者には見えないけど、ここにはせーれいさんってやつがいてー。
おっきい兄者と、ちっちゃい兄者は、そのせーれいさんとケンカしてるのじゃ?」
(;´_ゝ`)「……はい、そうです」
それからしばらく後。兄者と弟者それに、二匹の精霊だった生き物たちは、妹者の前に正座をさせられていた。
たとえ小さくても妹者はこの街では絶対的な力を持つ母者の娘。脳天気なところのある男二人が叶うはずもない。
(;'A`)「なあ、ブーン。ちゃんと羽ひっついてるか?」
( ^ω^)「おー、もう大丈夫だお!」
(;'A`)「なんかもう、50年ぶりくらいにこれは死ぬって思ったわ」
(;^ω^)「本当にヒヤヒヤするおねー。
これ精霊じゃなきゃ死んでたわー的なアレだお」
ちなみにこれは余談だが、精霊――ジンとも呼ばれるこの生き物たちは、人や動物とは異なる超自然的な生き物たちのことだ。
兄者や弟者のように見える人もいるし、妹者のように見えない人もいる。そんな魔法や、神秘に近い存在である。
l从・∀・ノ!リ人「ちっちゃい兄者はせーれいさんにごめんなさいするのじゃー」
(´<_` )「やだ」
22
:
名も無きAAのようです
:2012/11/23(金) 20:19:19 ID:tFLjG.4M0
l从・∀・;ノ!リ人「えーと、じゃあせーれいさんがゴメンナサイしたなら、ちっちゃい兄者もあやまるのじゃ」
(´<_` )「謝罪をする必要が微塵も感じられない」
l从・〜・;ノ!リ人「むー!」
一方、妹者は二人の兄を正座させたところまではよかったものの、ケンカの仲裁に苦心していた。
それというのもこの下の兄が、かたくなに精霊たちに謝罪することを拒否していたからだ。
実際に何があったかは見えなかったけれど、下の兄は「しょーめつ」とか「ころす」とかひどいことを言っていたのだから、謝ったほうがいいのではないか。
彼女は幼いなりに真剣に考え、一生懸命事態に収拾をつけようと頑張っていた。
( ;´_ゝ`)「あー、ごめんなさい! そもそも不用意にブーンの力を借りた俺が、悪かった。
……ほら、俺が謝ったから妹者も、弟者も、ドクオも、ブーンも、もういいだろ?
っていうか、もういいってことにしてください、お願いします!」
そんな状況に流石にいたたまれなくなったのか、口を挟んだのは兄者だった。
年長者だからしっかりしようということらしいが、口調や態度に威厳がないことだけが少々残念だった。
l从・へ・ノ!リ人「……」(´<_`#)
( ´_ゝ`)「ほれー、そんな顔しないー」
(´<_` )「……」
( ´_ゝ`)「弟者」
(´<_` )「……すまなかった、兄者。それに、妹者も」
23
:
名も無きAAのようです
:2012/11/23(金) 20:21:45 ID:tFLjG.4M0
( ´_ゝ`)「はい。よくできました〜」
弟者が一応謝罪の姿勢を見せたことで、場の空気が少し和らかくなる。
とはいえ、事態をややこしくしないために黙ってはいるものの兄者の内心は複雑ではあった。
(;´_ゝ`).。oO(肝心のドクオたちにこれっぽっちも謝ってないのガナー。
まあ、そもそもやりすぎてたのはアイツらだったんだけどなー)
l从・−・ノ!リ人「みんなは、本当にそれでいいのじゃ?」
(;'A`)「正直やりすぎたと思ってるので、これで勘弁してほしい。スマンカッタ」
(;^ω^)「う〜、ブーンも調子にのりすぎてたお。ごめんなさい」
一方、妹者は弟者の言葉に「むむむ」と眉を寄せていた。
なんだか納得行かないが、下の兄は謝っているらしい。では、「せーれいさん」はどうなのだろうか?
怒っている? それとも、泣いている? いろいろと妹者は考えるが、精霊を見ることが出来ない彼女にはよくわからない。
( ´_ゝ`)「二人ともそれでいいとさ。あいつらも謝ってる」
l从・∀・ノ!リ人「なら、それでいいのじゃー」
――妹者の言葉によって、弟者と精霊たちの小競り合いはなんとか幕を下ろした。
というよりも、無理やり幕を下ろすことにした。
彼らにとって平和というものは何よりも大切なものである。
24
:
名も無きAAのようです
:2012/11/23(金) 20:24:00 ID:tFLjG.4M0
――――――――――――――――
―――――――――――――――
――――――――――――――
――――――――――――
流石の街では、建物の中のほうが過ごしやすい。
それは、一歩でも外に出れば、とてもではないがやっていけないほど暑いという意味でもある。
というわけで、彼ら一同は移動するわけでもなく、ダラダラと過ごしていた。
ちなみに、先ほど兄者が踏みつけた花の件については、皆あえて考えないことにしている。
l从・∀・ノ!リ人「そういえば、おっきい兄者は何でちっちゃい兄者をさがしてたのじゃー?」
そんな一時の中で、妹者はふと気づいた。
先ほどまでいろいろありすぎて忘れていたが、そもそも上の兄は、下の兄に話したいことがあったのではないかと。
(´<_` )「そういえば、そうだな」
(*´_ゝ`)「おお、そうだったそうだった」
兄者は妹者のその言葉に、もったいぶった様子で腕を組み、うんうんと頷いた。
それから、妹者、ブーン、ドクオの姿を見回し、弟者の顔をじっと見つめる。
困惑の表情を浮かべはじめた弟者に向かって、指を突きつけ――
(*´_ゝ`)「旅に出るぞ!」
――と、兄者は言った。
.
25
:
名も無きAAのようです
:2012/11/23(金) 20:27:32 ID:tFLjG.4M0
(´<_` )「は?」
ヽ(*´_ゝ`)ノ「だーかーらー、旅に出るぞぉー弟者ぁー」
兄者の唐突な発言に、弟者は一瞬言葉を失った。
街の中ならいいが、周囲は一面の砂が広がる世界。
砂漠をこえようとするならばそれなりの準備が必要だというのに、近所に買い物に出かけるような気楽さで兄者は言い切った。
l从・∀・*ノ!リ人「たのしそうなのじゃ。妹者もいっしょにいくのじゃ!」
( ´_ゝ`)「これはだな男同士の危険な旅。
妹者たんを危険に晒すことなど俺には出来ないっ……というわけで、妹者はお留守番なー」
( ^ω^)タビ デスッテヨ、オクサン マア、ステキ('A`)
l从・д・ノ!リ人「じゃあ、ダメなのじゃー。
ちっちゃい兄者は夕方まで妹者と遊ぶって言ってくれたのじゃ!」
( ´_ゝ`)「明日、俺と弟者で遊んでやるから、今日は我慢してくれ」
その言葉に、妹者は少しの間首をかしげた。
それから「むー」と小さく唸り声を上げ、その後ぱっと笑顔を浮かべた。
l从・∀・*ノ!リ人「ほんとなのじゃ? 約束はぜったいやぶっちゃダメなのじゃよ!」
( *´_ゝ`)「この兄に任せろ」
l从^ー^ノ!リ人「じゃあ、今日はガマンするのじゃ」
.
26
:
名も無きAAのようです
:2012/11/23(金) 20:29:01 ID:tFLjG.4M0
(´<_`; )「おい。時に兄者よ落ち着け」
兄者と妹者の話はまとまった。
そうなると、焦り出すのが弟者である。
そもそも旅に出るというのが唐突だし、それに兄者の話では翌日には屋敷に帰り着いていることになっている。
(´<_` )「旅に出るとは、そもそもどこにだ?」
(*´_ゝ`)「よくぞ聞いてくれたな、弟者たん。
我らが向かうのはここから西、神秘あふれるソーサク遺跡だ!」
兄者が告げたのは、流石の街から西へと向かった先にある遺跡の名前である。
街からも見る事のできるこの遺跡は、よほど天候が悪くない限り半日もあれば確かに行き来できる場所にあった。
(´<_` )「ふむ、なるほど。それで、その遺跡には何をしに?」
(;´_ゝ`)「――えっ?」
(´<_`;)「――えっ?」
l从・∀・;ノ!リ人「――えっ?」
.
27
:
名も無きAAのようです
:2012/11/23(金) 20:31:11 ID:tFLjG.4M0
('A`)「なんていうか兄妹だな。反応が全員同じだ」
( ^ω^)「うーん、遺跡かぁ。ドクオは暇かお?」
(;'A`)「――えっ?」
同じ反応で驚きを示す一同の中で、一番最初に我に返ったのは弟者だった。
自分とほぼ同じ顔の兄の顔を見上げ、やがて何を言っても無駄だと思ったのか小さくため息をついた。
(´<_`;)「……流石だな、兄者」
(;´_ゝ`)て「ちょ、おま、今すごく俺のこと馬鹿にしただろ。
それは俺がかっこいいことした時にだけ使っていい言葉で、馬鹿にする時には使うなとあれほど」
(´<_` )「だがしかし、あれだけ旅に出るとはしゃいでいて、何も考えてないとは」
(;´_ゝ`)「いや、ちゃんと考えてるぞ!」
(´<_` )「……」
弟者の疑わしげな視線に、兄者は視線をさまよわせる。
それを妹者は興味津々といった様子で眺め、弟者は冷たい表情で兄を見つめた。
(;´_ゝ`)「そうだ、魔法石板だ!
あそこの遺跡には魔法石板にぴったりの材質の石が転がっていると、ギコ者が言っていたぞ!」
.
28
:
名も無きAAのようです
:2012/11/23(金) 20:33:16 ID:tFLjG.4M0
石板魔法と言うものがある。
それは今より魔法がはるかに発達していた時代に作られた、石板を媒介とした魔法の一種のことである。
この魔法が優れているのは、魔法が使えない人間でも石板に刻まれた文字列をなぞるだけで効果を発揮できるという点である。
魔力を込められた石板は魔法石板と呼ばれ、便利な道具として日常生活にも使われることも多かった。
(´<_` )「魔法……石板……」
(;´_ゝ`)「そ、そう! 人によってはかなりの高値で買ってくれるんだぞ。
決して、俺が興味津々というわけではなくてだな……」
(´<_`#)「兄者は、俺が……」
l从・∀・*ノ!リ人「わー、妹者も見たいのじゃ!
それをつかえば新しいまほーせきばんとかも作れちゃうのじゃ?」
弟者が言おうとした言葉を遮って、妹者がはしゃいだ声を上げる。
魔法に触れることがほとんどない彼女にとって、魔法という言葉や不思議な現象は興味を惹かれるものだった。
一方、話を邪魔された弟者は顔をしかめ、不機嫌な表情になっている。
(;´_ゝ`)「そそそ、そう。魔法使いにお願いすれば、なんかすっごーい魔法とかも刻んでもらえるぞ。
でも、あくまでも売るんだからな。魔法石板にぴったりっていっても、魔力こめなきゃただの石だし」
(´<_` )「その言葉は確かか?」
(;´_ゝ`)「……はい」
兄者の言葉に、弟者は黙り込んだ。
その場にいた妹者が飽きてあくびをはじめるほど長い時間沈黙した後で、弟者はようやく口を開く。
.
29
:
名も無きAAのようです
:2012/11/23(金) 20:35:07 ID:tFLjG.4M0
(´<_` )「まったく。兄者のことだから、俺が行かないって言っても一人で行くだろう。
それなら、俺がついていったほうがまだマシということじゃないか」
( ´_ゝ`)「……ということは」
これ以上ないくらいに眉をしかめて、弟者はうなずく。
その反応に、兄者と妹者と、なぜかブーンが歓声をあげた。
l从・∀・*ノ!リ人「兄者、やったのじゃ!」
(*^ω^)「おめでとうだお、アニジャ!」
(*´_ゝ`)「よーし、弟者も妹者もブーンもみんな愛してる!
そういうことなら、お兄ちゃんはりきっちゃうぞー!」
兄者はその場でくるくると回り彼なりに喜びを表現すると、露台の石造りの手すりによいしょっとよじ登った。
そこから、屋敷の壁に囲まれ、四角く見える空を見上げた。
( ´_ゝ`)∩「よーし、ちょっと待ってろよぉ」
そう言うないなや、兄者は指を口元に当てる。
そのままおもいっきり息を吸うと、指笛を吹き鳴らした。
.
30
:
名も無きAAのようです
:2012/11/23(金) 20:37:01 ID:tFLjG.4M0
甲高い音が空へと流れていく。
音は辺りに響き、そして消えるだけの――はずだった。
(*^ω^)「おお、ひさびさに見たお」
('A`;)「でもなー、あれって人に懐くもんか?」
はじめに反応したのは、人とは感覚の違う精霊二匹。
これから起こる何かをすっかり理解した様子で、二匹は空を眺めてはじめた。
( ´_ゝ`)「ふむ。来たようだな」
(´<_`; )「――おい、ちょっと待て」
次に反応したのは双子の兄弟。
二人の見上げる空には何者かの影が落ち、その影の姿はだんだんと近づきはじめた。
やがて、唸るような羽音が聞こえるようになり、その影の姿がはっきりと見て取れるようになる。
l从・∀・ノ!リ人「わー」
l从・∀・*ノ!リ人「――竜なのじゃ!」
彼らの前に降り立った巨大な影。
それは神話の時代から存在するといわれる巨大な生物。竜――ドラゴンであった。
.
31
:
名も無きAAのようです
:2012/11/23(金) 20:39:34 ID:tFLjG.4M0
夕暮れ時の雲のように桃色に色づく鱗。
その体躯は蜥蜴に似ているが、背に広がる翼と、どっしりとした下半身が違う生物であることを告げている。
強く猛々しい体の中で、黄金色の瞳はだけは大きく愛嬌のあるものであった。
( *´_ゝ`)「よしよーし、ピンクたんはかわいいでちゅねー」
(Σ*Οw)⊂(´く_`* )ナデナデ
災いをもたらす凶暴な生き物とも、神に近い神聖な生き物とも言われる竜。
そんな生物に対し、兄者は慣れた様子で話しかけると、鱗におおわれた頭をなで回す。
(*^ω^)「すっげーお」
(;'∀`)「竜相手でも平然としてるとかw あいつ、ホント人間かよ」
(Σ Οw) ⊂l从・∀・;ノ!リ人 ソー
(Σ*Οw)⊂l从・∀・*ノ!リ人カワイイ ノジャー
妹者も兄に続いて、竜におそるおそる手を触れた。
ゴツゴツとした鱗の感触に、彼女は顔を赤く染めて笑顔を見せた。
_,
(´<_`;)「……」
.
32
:
名も無きAAのようです
:2012/11/23(金) 20:41:18 ID:tFLjG.4M0
( ´_ゝ`)「よし、じゃあ頼むわ。妹者もお留守番よろしくなー」
(Σ Οw))コクコク
Σl从・∀・;ノ!リ人「わ、わかったのじゃー!」
妹者が竜を撫でるのをしばし見守った後、兄者はその巨大な生物の背に「よっ」と掛け声をかけ、乗り移った。
人間が一生のうちに一度見れるかどうかといわれる竜。そして、その上にのり笑う兄の姿。
弟者は体が震えが走るのを必死で隠しながら、じっと兄の姿を見上げる。
(*^ω^)「せっかくだから、ブーンたちもついてくお!」
(;'A`)「ちょw オレも強制参加かよ」
兄者を乗せて今にも羽ばたこうとする竜。ついでにブンブンと飛び回る精霊二匹。
目の前に広がるのは、これ以上ないくらいの非日常。
( ´_ゝ`)「弟者、お前もはやく来い」
( <_ ; )「俺は……」
.
33
:
名も無きAAのようです
:2012/11/23(金) 20:43:29 ID:tFLjG.4M0
( <_ ; )「……」
( ´_ゝ`)「――母者曰く、『人よ旅に出よ。まずはそれからだ』とさ」
( ^ω^)「お?」
黙りこみ微動だにしなくなった弟に向けて、兄者は言った。
その言葉に弟者は顔をあげ、しばしの沈黙のあとにようやく口を開いた。
(´<_`; )「……正確には、『ゴロゴロするくらいならどっか行ってこい。そこにいたら邪魔だよ!』だ」
l从・∀・ノ!リ人「あー! おっきい兄者、まちがってるのじゃー」
(;´_ゝ`)「あるぇー?!」
おかしいなーと、首をひねる兄者。その姿は、なんてことはない、いつもの兄者だ。
それを見ているうちに、弟者は自然に笑い出していた。
(´<_` )「まったく、兄者は」
(*´_ゝ`)「ふっふっふっ。流石だろ?」
(´<_` )「どこがだ、ド阿呆」
.
34
:
名も無きAAのようです
:2012/11/23(金) 20:45:29 ID:tFLjG.4M0
夏の出歩くことすら出来ない季節も過ぎ去り、それでも暑さを失わない秋。
天気は土埃がわずかに舞っているものの、晴天。
穏やかな風が吹くこの日――。
( ´_ゝ`)「まあ、いろいろあったが……」
砂漠の一角。
オアシスの麓にひろがる、流れる石の名を持つ街。
夕焼け雲色の竜の上には一人の青年と、精霊二匹の姿。
(*´_ゝ`)つ 「さあ、行こう」
そして、兄者は双子の片割れに向かって、手を差し伸べた――。
.
35
:
名も無きAAのようです
:2012/11/23(金) 20:46:19 ID:tFLjG.4M0
http://boonrest.web.fc2.com/maturi/2012_ranobe/e/11.jpg
.
36
:
名も無きAAのようです
:2012/11/23(金) 20:47:03 ID:tFLjG.4M0
そのいち。 旅に出るぞと、兄者は言った
おしまい
.
37
:
名も無きAAのようです
:2012/11/23(金) 20:49:12 ID:tFLjG.4M0
短いけど、投下ここまで。
本当は最後まで書きたかったけど、とてもじゃないけど書き終わらなかったので、連載という形にさせていただきました。
どうしても一目惚れしたイラストを使いたかった。第一話だけでもお祭りに参加できて、とても満足している。
絵師さん。すごく綺麗で魅力的なイラストをありがとうございました!
38
:
名も無きAAのようです
:2012/11/23(金) 21:05:53 ID:dZrc75jo0
おつ
39
:
名も無きAAのようです
:2012/11/23(金) 22:13:04 ID:rNdU5biMO
楽しそう おつ
40
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 00:03:03 ID:hliUgFqA0
絵使ってくださってありがとうございますううう!!
今後兄弟がどうなっていくのかとても楽しみな…!
そしてピンクたんの顔文字かわいいw
真顔でぶちぎれ弟者が大好きなので、一部漫画にしてみましたありがとうございました…!!
http://vippic.mine.nu/up/img/vp99701.jpg
41
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 00:16:06 ID:M9WoOtSM0
うわわわ、ありがとうございました!
続きはちょっと時間がかかりますが、無事完成させます
42
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 01:08:27 ID:OarO2FXUO
乙!
兄弟がわちゃわちゃしてる作品っていいな
続き楽しみにしてるよー!
>>18
のドクオの一言で弟者がなんで切れてるのかわからない…
読解力なくてすまん……
43
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 01:10:22 ID:mrJ1IDpQ0
>>42
伏線かブラコンか好きな方を選んで待ってればいいよ
44
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 21:19:56 ID:gq2xLt0M0
旅に出ないってずっと言ってたやつだなwww
続き待ってるよ!
45
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 22:12:18 ID:M9WoOtSM0
たくさんの乙ありがとうございました
あと質問があったので少しお返事
>>42
>>43
さんの言うとおり、伏線・ブラコン・ついカッとなったなどお好きなものを選んで下さい
>>44
なぜわかったし
46
:
名も無きAAのようです
:2013/01/01(火) 16:27:21 ID:J2WA92hQ0
完成までに時間がかかりそうなので、gdgdな感じで第二話を投下していきたいと思います。
55レスくらい
47
:
名も無きAAのようです
:2013/01/01(火) 16:30:33 ID:J2WA92hQ0
( ´_ゝ`)「……と、楽しく旅立つつもりだったんだけどな」
視界に広がるのは一面の乾いた大地。
その中で見えるものといったらところどころに転がっている大岩か、元は何だったかわからない白骨ぐらい。
植物の姿なんてものは、街を出てからはほとんど見ることができなかった。
('A`)「ですよねー」
( ^ω^)「お? ブーンはこれはこれで楽しいお」
そのような大地を進むのは竜ではなく――二匹のラクダであった。
(´<_`#)「何を言う、あんなもんに乗るなんて死んでもゴメンだ。
よりにもよって竜だぞ。ドラゴンだ! まったく、油断も隙もない」
( ;´_ゝ`)「うん。弟者たんのことだから、正直こうなる気はしてた」
.
48
:
名も無きAAのようです
:2013/01/01(火) 16:31:17 ID:J2WA92hQ0
( ´_ゝ`)デザート×キャラバンのようです(´<_` )
.
49
:
名も無きAAのようです
:2013/01/01(火) 16:31:58 ID:J2WA92hQ0
そのに。 旅をするには準備が必要である
.
50
:
名も無きAAのようです
:2013/01/01(火) 16:32:57 ID:J2WA92hQ0
(*´_ゝ`)つ 「さあ、行こう」
流石邸の一角。
双子の片割れに向かってさしだされた、兄者の手。
それは、
バキッ(゚く_゚(#⊂(´<_`#)「――って、そんなことで誤魔化されるか!」
Σl从・∀・;ノ!リ人「お、おっきい兄者ぁぁぁぁ!!!」
(Σ Οw)て !
弟者の鉄拳によって、見事になかったことになった。
竜の背を足場にした、まさに電光石火の一撃。
そのまま休むこと無く兄者の襟首を掴むと、弟者は兄者を竜の上から露台へと強引に引きずり下ろす。
(´<_`#)「そもそも、竜なんてどこで拾ってきたんだ! さっさと捨ててきなさい!!」
(#)´_ゝ`)「き、今日だけで二度も殴られた件について」
(;^ω^)「ど、どんまいだお!」
+('∀`)b
.
51
:
名も無きAAのようです
:2013/01/01(火) 16:34:09 ID:J2WA92hQ0
(Σ;Οw) ……
(´<_`#)「いい加減みょうちくりんな生物やら、バケモンやらを拾ってくるのをやめろ。
兄者が変なもん連れてくるたびに追い払らわなきゃならない、こっちの身にもなってみろ!」
(#)´_ゝ`)「そんなに変なものをひろってきた覚えは……」
兄者の言葉に、弟者はまずブーン、次にドクオ、最後に竜に向かって指を突きつけた。
弟者の表情は鬼気迫るものがあり、兄者の顔からは冷や汗が伝った。
(´<_` )「そこにいる羽虫二匹。それに、さっきまで兄者が乗っていた竜。」
( ´ω`)「羽虫……」('A`)
(´<_`#)「それから、魚人や、ランプの魔人なんてのもあったな。
勝手に動き回る黒い影。翼の生えた獣。頭と体と足がいろんな生物のつぎはぎなんてやつもいた」
l从・∀・ノ!リ人「お空をとぶ犬さんなら見たことがあるのじゃー」
(-<_-#)「小人に、半透明の人間に、しゃべる植物だの蛇だの。
鶏と蛇が合体した化物に連れさらわれそうになったこともあったよな」
ひたすら並び立てられる過去の悪行やら偉業やら思い出に、流石の兄者も黙り込んだ。
それでも、弟者の言葉は止まる勢いを見せない。
.
52
:
名も無きAAのようです
:2013/01/01(火) 16:37:25 ID:J2WA92hQ0
(;'A`)「お前さんはどんな人生を歩んでるんだ……」
(*´_ゝ`)「えへっ☆彡」
( ^ω^)「ないわー」
(´<_`#)「おい、兄者。俺の話は終わってないぞ」
というか、そもそも黙らないと弟者がすごい剣幕で怒るのだ。
こうなっては兄者も下手なことを口を出せない。
(´<_`#)「そもそも、生態すらよくわかってない生物に乗って砂漠を越えようという発想が理解できない。
こいつの餌は何か知ってるのか? 一日に飲む水の量は? そもそも、ちゃんと遺跡まで飛べるのか?
途中で逃げられたり、食われでもしたらどうするつもりなんだ、兄者は」
( ;´_ゝ`)「……まあ、そのあたりは勘?
ほら、ピンクたんは人の言葉もわかるお利口さんだからきっとなんとか」
(Σ`Οw) エッヘン
兄者の返答に、弟者の眉が不機嫌そうに吊り上がる。
一方、兄者の言葉を理解したのか、竜はどこか誇らしげに唸り声をあげた。
.
53
:
名も無きAAのようです
:2013/01/01(火) 16:40:08 ID:J2WA92hQ0
(´<_`#)「勘でどうにかなってたまるか。そんなもん却下だ、却下!!!」
(;´_ゝ`)「ぅぇー」
そして、その勢いのままに弟者は竜へと向き直る。
相手は人一人は軽く飲み込めてしまいそうな巨大な生物。それなのに、弟者の表情に怯む様子はこれっぽっちもない。
(´<_`#)「ピンクたんだか何だかしらないが、お前もさっさと帰れ!」
(Σ Οw) エー
(´<_`#)「言うことを聞きなさい!」
不満そうに唸る竜に向けて、弟者は一喝する。
その子どもを怒る保護者さながらの態度に、竜の首がしょんぼりと下る。
λ(Σ´Οw)λ ハーイ
(´<_` )「ふむ。わかればいいのだ」
(;´_ゝ`)て「おおぅ、なぜかピンクたんが説得されてるぅー!!」
l从・∀・;ノ!リ人「ちっちゃい兄者。すごいのじゃー」
(;'A`)「奴はバケモノか……」
.
54
:
名も無きAAのようです
:2013/01/01(火) 16:41:05 ID:J2WA92hQ0
・
・
・
λ(Σ*Οw)λ バイバーイ
l从・∀・*ノ!リ人「またくるのじゃー」
( ^ω^)ノシ「ばいばーいだお」
青い空に浮かぶ、夕焼け色の鱗をした竜。
災いをもたらす凶暴な生き物とも、神に近い神聖な生き物とも言われる生物が空へと帰っていく。
その背に兄弟たちの姿はない。
それでも文句をいう事もなく帰っていく竜の姿は、まさに人が言葉もわかるお利口さんというにふさわしいものだった。
(;´_ゝ`)「ああ、俺のピンクたん……」
('A`)「……こうして、全てが終わった……か」
(;´_ゝ`)「そもそも、始まってすらいなかったというのに……」
兄者は、飛び去っていく竜を「あーあ」と見送る。
しかし、いまさらどうにもならないことを悟り、やけになったのか兄者は露台の床にごろんと寝転んだ。
( ´_ゝ`)「弟者のアホー、馬鹿、おたんこなす」
.
55
:
名も無きAAのようです
:2013/01/01(火) 16:42:12 ID:J2WA92hQ0
.
.
.
( ´_ゝ`)「弟のくせに生意気だぞー」
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.
( ´_ゝ`)「アホ者ー!!」
:
:
:
:
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56
:
名も無きAAのようです
:2013/01/01(火) 16:43:02 ID:0B4fuHtA0
おお!待ってたぞ!!
支援!!
57
:
名も無きAAのようです
:2013/01/01(火) 16:43:18 ID:J2WA92hQ0
( -_ゝ-)「それか……ら……」
いくら声を上げても、弟者から反論の声は聞こえてこない。
そのことに調子に乗って弟者のイジワル―などと文句を並び立てるうちに、兄者の瞼は徐々に重くなっていく。
そういえば、昨日は何時に寝たっけ? なんてことを考える間もなく、兄者の意識はどんどんと薄れていく。
(;^ω^)「おーい、アニジャー! ブーンたちを放置して寝るなおー」
('A`)「こりゃ、何言っても無駄だぞ」
耳元でなにやら声が聞こえるが、今の兄者には何と言っているのか聞き取ることができない。
今度こそ完全に意識が消え……兄者はそのまま眠りに落ちる。
( -_ゝ-)「……」
……それから少しして、何かがバサリと掛けられる感触に、兄者は目を覚ました。
一体何だ? と手にとって見ると、それは縁に細やかな刺繍がされた薄紫の飾り布である。
( ´_ゝ`)「――ん?」
首をひねりながら視線を上へと向けると、弟者が呆れたような表情をしていた。
そして、その横では色とりどりの何かを抱えた妹者がじっと兄者の表情を見つめている。
.
58
:
名も無きAAのようです
:2013/01/01(火) 16:45:11 ID:J2WA92hQ0
(´<_` )「おい。兄者は旅に出るんだろう?
まさか、そのまま寝てしまうつもりではあるまいな」
l从・∀・ノ!リ人「というか、もう寝てたのじゃー」
弟者は薄紫のフードつきのマントを羽織り、腰には日頃から愛用している曲刀を下げている。
よく見れば、いつの間にやら身につけているのも部屋着ではなく、外出用のものになっている。
一方、妹者の服装は先ほどまでと変わらなかったが、その手に飾り布や金の留め具などを抱えていた。
(´<_` )「ほれ、出かける気なら日除けの準備くらいはしろ。外は暑いぞ」
ol从・∀・ノ!リ人o「おっきい兄者のお出かけ用の荷物を持ってきたのじゃー」
(*´_ゝ`)「なんと! 持つべきは家族だな」
先程まで文句を言って寝こけていたのが嘘のように、兄者はあわてて身支度を整えはじめる。
先ほど掛けられた飾り布は耳を出せるようにして被り、妹者が持ってきてくれた金具で止める。
腰に飾り布をいくつも巻き、ついでに他人の目から見えない位置に財布やら、いざという時の薬の入った袋やらを固定する。
l从・∀・*ノ!リ人「できたのじゃー」
( ´_ゝ`)b「よし、我ながらかっこいい」
愛らしい妹の言葉に、薄い水色の耳をぴくりと動かしながら兄者は満足そうに頷く。
本当は弟者くらい身長があればもう少しは格好がつくのにと思っているのだが、兄のプライド故にそれは口にしなかった。
.
59
:
名も無きAAのようです
:2013/01/01(火) 16:46:05 ID:J2WA92hQ0
(´<_` )「どこがだ」
( ´_ゝ`)「弟者。その発言は鏡を見てから言おうか」
兄者と弟者は双子の兄弟である。
体の色や、身長、体つきなど違うところはあるものの、彼ら二人の容姿は驚くほど似ている。
今でこそ間違える人間はほぼいなくなったものの。体つきがほとんど同じだった幼い頃は、家族でも間違えるほどであった。
(´<_` )「生憎、鏡と名のつくものは嫌いなんでな」
(;´_ゝ`)「えー、あー、そういう意味で言ったわけじゃないんだけどなー」
l从>∀<ノ!リ人「おっきい兄者とちっちゃい兄者はにてるから、おっきい兄者がかっこよくないならちっちゃい兄者も」
l从・∀・;ノ!リ人「……って、あれ? おっきい兄者にそっくりなちっちゃい兄者は、でもちっちゃい兄者でー」
( ´_ゝ`)「時に妹者よ、落ち着け」(´<_` )
おきっきい兄者とちっちゃい兄者がという言葉が混ざって混乱し始めた妹に向かって、兄弟は同じタイミングで言い放つ。
その内容も一字一句まるっきりそのままで、妹者はその場でクスクスと笑い始めた。
l从・∀・*ノ!リ人「はーい! ちゃんとおちつくのじゃー」
(*´_ゝ`)「うむ。妹者たんは流石だなー」
dl从>∀<*ノ!リ人「流石なのじゃー!」
60
:
名も無きAAのようです
:2013/01/01(火) 16:48:11 ID:J2WA92hQ0
(´<_` )「――そろそろ、行くか」
兄妹たちがひとしきり笑い終えた後、弟者はふと話を切り出した。
それを聞いた兄者は、身支度を確認するとふむと頷く。
( ´_ゝ`)「そうだな。早いこと出発しないと、明日までに帰れるかどうかわからんしな。
時に弟者、西の遺跡までは、歩くとどれだけかかったかな」
l从・∀・ノ!リ人「けっこうかかりそうなのじゃー」
(;´_ゝ`)「やっぱ、歩きだと大変そうだな。
あれぐらいの距離なら、流石に遭難しないと信じたいところだが」
ソーサク遺跡までの距離を頭の中で考える。
遺跡にいる知り合い――ギコの話では、軽装でもわりあいなんとかなるという話ではあった。
砂嵐に遭遇したり、盗賊や魔物に出会うなんてよほど不運でない限り、体力のある男なら困ることはないはずだ。
(´<_` )「二人とも何を言っている? まずは乗り物と、水の調達だろ」
(;´_ゝ`)「いや、乗り物って。ピンクたん、もう帰っちゃったし」
兄者の言葉に弟者は表情を崩すと、笑い出す。
「本気で歩くつもりだったのか」とひとしきり笑い終わった後に、弟者は当然の様に言ってのけた。
(´<_` )「――砂漠といえば、ラクダだろう?」
l从・ワ・ノ!リ人「なるほど、なのじゃー」
.
61
:
名も無きAAのようです
:2013/01/01(火) 16:49:32 ID:J2WA92hQ0
――――――――――――――――
―――――――――――――――
――――――――――――――
――――――――――――
屋敷から二人が足を向けた先は、街の外れにある広場だった。
l从・∀・*ノ!リ人「いってらっしゃいなのじゃー」
妹者は先ほどの約束通り、屋敷で留守番をしている。
兄者が中庭の植物を踏んだ件については妹者に口止めしたが。それがバレるのは残念ながら時間の問題だろう。
そんな不安はさておいて、兄者と弟者は広場へと向かっていた。
(;´_ゝ`)「やっぱ、暑いなー」
(´<_` )「砂漠はこんなものじゃない件。
とりあえずは、ツンのところか。あそこならいろいろと用立てしてもらえるはず……」
砂漠の位置するこの街では、早朝と夕暮れからが人の動き出す時間である。
太陽に照らされる昼間は暑すぎて、外を出歩く人間自体が少ない。
だから、広場であったとしても露天が立ち並ぶのは普通、早朝や夕暮れだ。
( ´_ゝ`)「というか、そもそも店なんて開いてるのか?」
.
62
:
名も無きAAのようです
:2013/01/01(火) 16:50:44 ID:J2WA92hQ0
朝の涼しさも薄れ、夕暮れの訪れを今か今かと待ちわびる昼前。
普段ならばこの時間は夕暮れからの商いに備えてほとんどの露天が店を閉めている。
しかし、閑散としているはずの広場は、今日に限っては多くの露天と喧騒で満ち溢れていた。
(;^ω^)「うぉ、ニンゲンがいっぱいいるおー。暑くないのかお?」
('A`)「あー、妙に異国のやつの姿が多いな」
金の髪に白い薄衣をまとった女。黒い髪に黄色い肌をして東方独特の衣装をまとった男。
ターバンをまとった髭面の男や。長い尾に動物の耳を生やした猫のような姿の人。
見た目も、服装も全く違う男女が思い思いに品物をひろげ、それを見るために多くの人が集まっていた。
( `ハ´)「東の果ての大国。大都で使われる香辛料アルよー
西の方では金一粒と同じ価値のある一品。早いもの勝ちアルねー」
J( 'ー`)し「カーチャン手作りの焼きたて小麦粉パンだよー」
( ゚∋゚)「ヤキトリ クエ」
広場は太陽だけでなく、人の発する熱気に満ちている。
パンや肉の焼ける臭いや、花や香水。それに香辛料や家畜の香りが混ざり合う。
誰も彼もが酔っ払ったかのように辺りを歩き、売り買いの声をあげる。
……そんな人ごみの中を、どこかで見たことがある生物が二匹飛び回っていた。
.
63
:
名も無きAAのようです
:2013/01/01(火) 16:52:04 ID:J2WA92hQ0
(;´_ゝ`)⊂(´<_`#)「兄者。 な ぜ あ い つ ら が い る」
兄者の薄水色の耳をおもいっきり引っ張りながら、弟者は言った。
人目を気にしてかその声はひそめられていたが、その視線は思いっきりブーンとドクオを向いている。
(;´_ゝ`)「いや、俺に言われても……」
(´<_`#)「ピンクたん?とやらと一緒に帰ったんじゃなかったのか」
(;´_ゝ`)「確かに、気づいたらいつの間にかいなくなってたけどさー」
そして、そんな双子の姿を二匹の生物。もとい、精霊は見逃すはずがなかった。
ブーンは両手を広げた姿勢で。ドクオはフラフラと上下に飛びながら、兄弟たちの元へと飛んできた。
⊂二( ^ω^)二⊃「さっきぶりだおー」
('A`)ノシ
(*´_ゝ`)ノシ 「……」(´<_`#)
.
64
:
名も無きAAのようです
:2013/01/01(火) 16:52:49 ID:J2WA92hQ0
( ´_ゝ`)「お前ら、さっきは何で消えたん?」
ブーンたちが現れるなり不機嫌になる弟者をとりあえず置いておいて、兄者は二匹の精霊に話しかける。
宙にむけて突然話し始めた兄者の姿に、通行人の何人かがぎょっとした顔つきになるがそれもすぐに止んだ。
( ^ω^)「おー、それはつまんなさそうだったからだお」
( ´_ゝ`)「なんで?」
(;'A`)「こいつ……こっちを無視して、いきなり寝だしたこと忘れてるぞ」
_,
( ^ω^)「オトジャは話しかけても相手してくれないから、つまらんかったお」
('A`)「竜も帰っちまったしな」
兄者はちらりと弟者の姿を見る。
彼は先ほどまでと同じ不機嫌そのものの表情でそっぽを向き、一言もしゃべる気配がない。
話しかけてきたブーンやドクオたちに対しても、こんな態度だったのだろう。
――確かに、いくら話しかけてもこれでは、確かにつまらんよなと兄者は苦笑いを浮かべる。
( ´_ゝ`)「いやー、正直スマンカッタ。
弟者たんはあれでも寂しがりやで甘えんぼさんな、いいやつなのだ。
お前さんたちも傷ついたり、イラついたり、腹が立ったりしたと思うが、許してやってくれ」
.
65
:
名も無きAAのようです
:2013/01/01(火) 16:56:28 ID:J2WA92hQ0
兄者が言い放った言葉は、周囲に沈黙を落とした。
ドクオは羽を動かすことを忘れ地面に落ちかけ、ブーンは笑顔のまま首をひねる。
弟者はというとぎょっとした顔をして、兄者たち一同に視線を戻していた。
(;'A`)て「寂しがりやで甘えんぼって誰だよ! 妹か? あのかわいい妹ちゃんのことだよな?!
――っていうか、弟はない、マジでない。真剣にない!!!
お前、頭は大丈夫か? 目はいかれてないか?」
(´<_`#)
(;゚A゚)て「って、めっちや睨まれてる。俺ら絶対、睨まれてるー!!
お前があることないこと適当に言うから、あの弟絶対怒ってるぅ」
(;´_ゝ`)「お、弟者よ。時に、落ちつけ!」
( ^ω^)「……ドクオ。イラついたり、腹が立つってなんだったかお?」
('A`)「へ?」
大はしゃぎする一同の中で、ブーンは首をひねったまま不思議そうに言った。
ふざけたところの一切ない。純粋な声で、ブーンは疑問を口にしていく。
(;^ω^)「んー。寂しいは、まだ何となくわかるんだけど。
もうそのへんのやつはすっかり、わかんねーですお」
('A`)「あー、弟の方の顔見とけ。多分、それだ」
(*^ω^)「おっおっ。なるほどだおー」
.
66
:
名も無きAAのようです
:2013/01/01(火) 16:57:34 ID:J2WA92hQ0
(;´_ゝ`)「?」
(´<_` )「アレは俺たちとは全く違う生き物だ。
俺たちにわかることが、あいつらにもわかるとは限らない。いい加減理解しろ」
ブーンとドクオのやり取りを前にして、今度は兄者が首をひねる。
兄者の無言の疑問に答えたのは、ずっと黙り込んでいた弟者だった。
( ´_ゝ`)「そうかなぁ。おんなじだと思うんだがな〜」
( ^ω^)「まあ、オトジャのいうことも正しいと思うお」
小さい体で腕を広げながらブーンは言う。
ブーンが飛び回るたびに、羽がキラキラと光りを放つ。
それを見えているものがいるのか、「あれ、見ろよ」という声がどこかから聞こえる。
( ^ω^)「寿命ってのがないと、娯楽ぐらいしか楽しみがなくなってくるっていうか。
それ以外の感情なんてもんは、だんだん磨耗してくるもんだお」
精霊の姿を見ることができるものは、限られる。
その精霊が見える人間の中においても、精霊たちの声まで聞くことができる者というのは、そう多くないらしい。
先程からブーンやドクオが騒ぎ立てているのに、それほど大騒ぎにならないのはそのためだ。
.
67
:
名も無きAAのようです
:2013/01/01(火) 16:59:11 ID:J2WA92hQ0
( ^ω^)「ぶっちゃけ。楽しいか楽しくないかくらいしか感情残ってないですおー」
( ´_ゝ`)「そう、なのか?」
ブーンの言葉に兄者の耳がしょんぼりと垂れ下がるのを、弟者は見た。
弟者はこれまでの経験から、このような時の兄者はろくでもないことを考えていると判断する。
それこそ兄者のことだから、「ブーンに感情を思い出させてあげよう」などと言い出しかねないと、弟者は考え、
(´<_` )「おい、兄者」
⊂二二(*^ω^))二⊃「だから、早く遊びに行くおー!」
(;'A`)て「これはひどい」
(;´_ゝ`)て「俺の心配を返せ!」
(´<_`#)「……」
余計なことなんて考えなければよかったと後悔した。
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68
:
名も無きAAのようです
:2013/01/01(火) 17:00:02 ID:J2WA92hQ0
('A`)「それで、どうしてここはこんなに賑やかなんだ?」
少し早い昼飯とばかりに屋台に並べられた肉の串や、香辛料を利かせた汁物。
それから、いたるところに積み上げられた果物の数々を物珍しそうに眺めながら、ドクオは呟いた。
屋台の食料の数々に兄者の腹がなるが、腹が減るという感情に疎いドクオは気づかなかった
(;´_ゝ`)「え? よりにもよって俺に聞いちゃう、それ?
いつもならこの時間だと、このへんはなんもないんだが」
J( 'ー`)し「はい。ありがとうねぇ」
空腹を我慢できなかったのだろう。
目についた屋台でパンを買っていた兄者は、マヌケな声を上げながら傍らの弟者の姿を見る。
( ´_ゝ`)「時に弟者。どうして、こんなお祭り騒ぎなのか三行で頼む。
あと、このパンうまいぞ。弟者も食え」
(´<_` )「年に三度の大商隊到来
大市
なぜ、兄者が知らないか小一時間問いたい」
( ´_ゝ`)「ふむ。実質、二言で説明されたが問題ない」
モグモグ(´<_` )
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