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( ^ω^)は悪の教団に立ち向かうようです
1
:
◆RwfHkdJwVg
:2012/11/08(木) 21:09:53 ID:afzt7yaQ0
自分の身長の半分くらいはあるビニール袋を引っさげて、
事務所に着くまでにツンは三回は同じような文句を言っていた。
一度目は商店街を出てすぐの信号機の前で。
二度目は中間地点の踏切で。
ξ#゚⊿゚)ξ「もう! 重いー! 買い物袋が手に食い込んで痛いー! 」
( ´ ω`)「だから、雪の日に買い出しなんてやめようって言ったんだお。」
控え目に反論を試みる。
金銭的にゆとりのない、我が探偵事務所では倹約はなにをおいても重きを置くべきだ。
しかしながら、何も気象庁がご親切に豪雪警報を出しているときにわざわざ出掛けなくたって良いだろうと思う。
2
:
◆RwfHkdJwVg
:2012/11/08(木) 21:11:57 ID:afzt7yaQ0
ξ#゚⊿゚)ξ「今日は商店街の特売日なの! こんなチャンスを逃す手はないじゃない。特売は待っちゃくれないのよ! 」
( ^ω^)「僕がついてきたから良いものの、こんな重たいもの持って雪道を歩いたら、転んでしまうお。」
ξ#゚⊿゚)ξ「一人で大丈夫だったもん! 雪の日セールなんか急にやるから、予想外に荷物が増えちゃっただけだし……」
出掛けた時に降り出していた霙雨は、いつしか粉雪に変わっていた。
彼女は恨みがましげに宙を睨んでいたが、やがて早足で歩き出した。
道端で怒ることより、いち早く暖かい我が家に帰ることを優先したらしい。
ここから事務所のある古ビルまでもう幾分も距離はない。
異存はないので、僕も家に向かった。
3
:
◆RwfHkdJwVg
:2012/11/08(木) 21:13:39 ID:afzt7yaQ0
***
ξ;゚⊿゚)ξ「やれやれ、やっと着いた。手が痛いったらありゃしな……ん? 」
ツンが三度目の文句を言おうと口を開きかけていたので、とっさに身構えたがその言葉が僕に向けて放たれることはなかった。
(;´∀`)「恐れ入りますが、ここは内藤探偵事務所で間違いありませんでしょうか? 」
一人の青年が扉の前に佇んでいた。
年頃は二十代後半くらい。
きっちりスーツを着こなし、一見すれば人の良い営業マンのような風貌をしていた。
4
:
◆RwfHkdJwVg
:2012/11/08(木) 21:15:42 ID:afzt7yaQ0
( ^ω^)「そうですお。何かうちにご用ですかお? 」
(;´∀`)「あぁ、良かった! 場所を間違えたかと思って、不安だったんです。」
青年はほっと息を洩らすと、安堵した表情を浮かべた。
うちは看板も提げていないし、電話帳にも載っていないのだから、ここへ来るのに随分苦心したことだろう。
ξ゚⊿゚)ξ「寒いし、話は部屋の中でしましょ。ねぇ、おじさん唇が真っ青よ。」
おじさん、と呼ばれるにはまだ早いであろう青年は、ツンに指摘されて初めて身体が冷え切っていることに気付いたようだった。
慌ててコートの前を抱き合わせると、縮こまる。
コートを握る指先はわずかに震えていた。
5
:
◆RwfHkdJwVg
:2012/11/08(木) 21:17:28 ID:afzt7yaQ0
(;^ω^)「これはとんだ失礼を。どうぞ中へお入り下さいお。」
(;´∀`)「いやはや、余計な気を使わせてしまって申し訳ない。」
ξ゚⊿゚)ξ「ごめんね。うちのオジサン気が利かなくて。すぐに温かいお茶入れてきてあげる。」
( ´∀`)「ありがとう、お嬢さん。」
ツンは青年を顧みながら言った。
扉を開けて、ソファーへ促す。
ゆっくりしていってね、声を掛けると台所へさっさと引っ込んだ。
(;^ω^)「ぼ、僕の出る幕がないお……」
ξ゚⊿゚)ξ「ブーンはおじさんのコートをハンガーに掛ける! 暖房を速やかにつける! 」
(;^ω^)そ「これ、ツン! さっきからおじさん、おじさんってお客様に失礼だお! せめて、お兄さんと呼びなさいお。」
慌ててツンをたしなめるが、そんなことはおかまいなしに指示がとんでくる。
最初青年はきょとんとした顔をしていたが、笑顔になるとぷっと、吹き出した。
ようやく強張った表情がほどけ、人好きのする顔がのぞいた。
6
:
◆RwfHkdJwVg
:2012/11/08(木) 21:18:50 ID:afzt7yaQ0
(* ´∀`)「しっかりしたお嬢さんですね。」
(;^ω^)「情けない所をお見せして、お恥ずかしい限りですお。」
( ^ω^)「……ところで【柏木】さん、そろそろお話を伺いますお。今日は一体何のご依頼でいらっしゃったんですかお? こちらへはギコさんからのご紹介で? 」
(;´∀`)そ「どうして私の名前を? ギコさんから連絡があったんですか? 」
彼は心底不思議そうな顔をして、僕を見つめた。
格好悪いところを見せてしまった分は、どうやら取り返せたらしい。
これで少しは探偵としての信用を得られれば良いのだが。
( ^ω^)「おっお。種も仕掛けもありませんお。お名前は今、あなたが首から下げている社員証から。紹介の件は、うちにはギコさんの他にコネらしいものがないからですお。」
胸元を指して言う。
長いストラップ付きのカード入れには、『ワタナベ製薬営業課・柏木茂成』と顔写真付きの社員証が入っていた。
おそらく帰りがけにそのまま着けて帰ってきてしまったのだろう。
7
:
◆RwfHkdJwVg
:2012/11/08(木) 21:20:18 ID:afzt7yaQ0
( *´∀`)「そういうことでしたか! 私はてっきり神通力か何かかと……」
( ´∀`)「……」
――神通力。
その言葉を口に出したとたん、青年は俯いてしまった。
いまだ指先は、細かに震えていた。
震えの原因は、きっと寒さのせいだけではないのだろう。
ξ゚⊿゚)ξ「手品のうちにも入らない子供騙しだけどね。」
盆を抱えて入ってくるなり、ツンはばっさり切り捨てた。
( ^ω^)「酷すぎやしませんか、ツンさん。」
ξ゚⊿゚)ξ「はい、お茶。温かいもの飲むと、落ち着くよ? 」
( ´∀`)「はは、ありがとう。さっきから君には気を使わせすぎてばかりだね。」
8
:
◆RwfHkdJwVg
:2012/11/08(木) 21:21:41 ID:afzt7yaQ0
自分の込み入った事情を他人に話すのは、なかなか勇気のいることだ。
決心がつかず、結局依頼を取り下げたいと言う客は、たくさんいた。
こういった時、ツンは誰が教えたわけでもないのに、依頼人の緊張が解けるようさりげなく気を配ることができた。
青年はカップを受け取ると、温もりを確かめるように両手で包み込んだ。
( ´∀`)「自己紹介もきちんとしていませんでしたね。私は柏木茂成と申します。今日ご相談にあがったのは、私の抱える問題を解決して頂きたいからです。長い話になるとは思いますが、どうか聞いてやって下さい。」
青年は僕を見据えると意を決したように話し出した。
9
:
◆RwfHkdJwVg
:2012/11/08(木) 21:25:30 ID:afzt7yaQ0
――今私は柏木姓を名乗っておりますが、以前は持南茂成という名前でした。
ええ、お察しの通り私は養子です。
柏木家に引き取られるまでの十年間、『おおかみ園』という児童養護施設で育ちました。
ギコさんにはその頃から面倒を見てもらいましたから、随分世話になりました。
今でもこうしてこちらを紹介して頂いたり、面倒の掛け通しですね。
ギコさんと私がどうして知り合ったかも、ついでにお話しします。
私がどうして施設育ちなのかも関わって参りますので。
ここまで一気に喋ると、茂成はふぅと息を吐いた。
迷いがなくなったからだろう、営業課に所属しているだけあって淀みなく口は動いた。
10
:
◆RwfHkdJwVg
:2012/11/08(木) 21:27:29 ID:afzt7yaQ0
( ´∀`)「内藤さん、私達は本当に初対面でしょうか? 」
(;^ω^)「は? 」
茂成の顔をまじまじと見つめた。
一度受けた依頼人の顔は、大抵覚えているという自負があったが、これといって心当たりがない。
(;^ω^)「……恐らく初対面ですお? 」
( ´∀`)「これを見ても、思い出せそうにありませんか? 」
胸元のポケットから折り畳んだ紙片を取り出すと、こちらへ寄越す。
広げてみれば、それは新聞記事の切り抜きのコピーだった。
黄色く劣化した記事の見出しには『F市母子殺傷事件』と書かれていた。
――F市母子殺傷事件。
今からおよそ十年前の1996年9月10日、S県F市の閑静な住宅街で起きた殺傷事件である。
被害者の女性と長男は、自宅アパートで鋭利な刃物で刺されていたところを、騒ぎを聞きつけた大家が発見した。
翌朝11日、女性は死亡。長男も重傷をおっていた。
犯行を行ったと思われる被害者の夫も首を吊った状態で発見された。
当時捜査にあたっていたF署は、男性が無理心中を図ったとみて捜査を打ち切った。
忘れもしない、僕がかつて勤務していたF署の管轄内で起きた事件だった。
11
:
◆RwfHkdJwVg
:2012/11/08(木) 21:28:45 ID:afzt7yaQ0
( ^ω^)「……君は“モナー君”なのかお? 」
( ´∀`)「やっと思い出して下さいましたね。お久しぶりです内藤さん。いや、ブーン刑事。」
懐かしそうにこちらを見て笑う。そこには僕を咎めるような色はなかった。
笑うとできるえくぼは、幼い頃と何も変わらなかった。
男子三日会わざれば刮目して見よ、とはよく言ったものだ。
あんなにも小さく頼りなかった少年は、見違えるほど立派になっていた。
自分もそれだけ年をとったのだ、とふと思った。
なぜ彼を一目見たときに、ぴんとこなかったのか。いや違う、僕はあえて思い出そうとしなかったのだ。
僕は彼を一度見捨てたのだから。
12
:
◆RwfHkdJwVg
:2012/11/08(木) 21:33:07 ID:afzt7yaQ0
ここで区切りたいと思います。
何か気になる点がありましたら、教えて下さいますと幸いです。
13
:
名も無きAAのようです
:2012/11/08(木) 21:46:19 ID:7JueRr.QO
もうちょっと先まで読みたい!
14
:
名も無きAAのようです
:2012/11/08(木) 21:48:51 ID:tdoBNY6gO
気になるのは続きです
15
:
◆RwfHkdJwVg
:2012/11/09(金) 07:22:52 ID:6J0S4Yog0
>>13-14
短くなってしまい、すみません。
初投下の為、いまいち配分が掴みきれてないです。
今日の夜、もう少し長めのものを投下します。
16
:
名も無きAAのようです
:2012/11/09(金) 18:47:17 ID:/1xcq3mw0
乙乙
ゆっくり頑張れーー
17
:
◆RwfHkdJwVg
:2012/11/09(金) 20:17:20 ID:OJnTl9O.0
――1996年8月5日。
国内各地は30度を越える猛暑に見舞われた。都心に近いS県F署に勤務する僕――内藤武運は、尋常ではない暑さに職務を投げ出しかけていた。
(;´ ω`)「あぢー。このクソ暑いのに、何で署内の冷房ついてないんだお。」
(,,゚Д゚)「署長がフィルター掃除したのが運の尽きだったな。まさか冷房がお釈迦になるとは、思ってもみなかったぜ。」
直属の上司であるF署刑事課強行犯係、義古(よしこ)栄一巡査――通称ギコさんはそう言いながら、缶コーヒーを僕に投げて寄越した。
(,,^Д^)「ほら、へばってんじゃねぇよ。情けねぇ面しやがって。それ飲んだら出掛けるぞ。」
( ´ ω`)「暑さに弱いのはデブの宿命なんですお。僕は署長を末代まで祟ると、今決めましたお。」
(;,,゚Д゚)「恐ろしい宣言してんじゃねぇよ。」
半分本気の冗談を彼は本気と受けとめたらしい。
目が据わってるぞ、と言って横に腰掛けた。
18
:
◆RwfHkdJwVg
:2012/11/09(金) 20:21:56 ID:OJnTl9O.0
( ^ω^)「ところで今日はどこへ行きますかお? 例の空き巣事件、めぼしいところは大体聞き込みしてしたように思いますが。もう一度、近隣住民に聞き込みしに行くんですかお? 」
F市良雲寺町の住民は、ここ数日頻繁に起きている空き巣事件に頭を悩ませていた。
昼間の人気のない時間を狙い、金銭を盗み出していることから、窃盗団の可能性も視野に入れて捜査をしていた。
住民の目撃証言はゼロ、ほぼ八方塞がりというのが現状だ。
(,,゚Д゚)「いや、今日は別のところに行こうと思う。」
白髪混じりのごま塩頭を掻いて、何気ない口調で呟いた。
( ^ω^)「わかりましたお。車を回してきますお。」
半分ほど残っていたコーヒーを一気に飲み干す。
車のキーをポケットから探り当て、玄関の方へ駆け出した。
こういうときのギコさんは冴えている。
まだコンビを組んで日は浅いが、僕はギコさんのこの単なる思いつきにしか見えない発言が、幾度も事件を解決へ導いたことを知っている。
ギコさんの“ベテラン刑事のカン”が曇ることがないよう、僕は足早に歩き出した。
19
:
◆RwfHkdJwVg
:2012/11/09(金) 20:24:54 ID:OJnTl9O.0
車をわざわざ移動させるまでもなく、まもなくギコさんが後ろからやってきた。
慣れた様子で助手席に乗り込む。
( ^ω^)「どこ方面へ向かいますかお? 」
(,,゚Д゚)「住宅街を抜けた先に廃ビルがあったろ。あそこへ行こう。」
( ^ω^)「あぁ、あの姦しいオバチャンが言ってた……」
(,,゚Д゚)「ガキの溜まり場になってるっていうのも気になるしな。」
先日行われた聞き込みで有力な手掛かりはなかったが、近所に住む女性から苦情をたっぷり賜ったところだった。
オバチャンは格好の獲物を見つけたといわんばかりに僕達を捕まえると、近くにある廃ビルが子ども達の遊び場になっている、危ないから注意してやって、とまくしたてた。
正直、窃盗団がそこに潜伏している可能性はゼロに近いのだから、わざわざ律儀に出向く必要はないが、行く宛もないのだから仕方がない。
( ^ω^)「了解しましたお。」
20
:
◆RwfHkdJwVg
:2012/11/09(金) 20:29:43 ID:OJnTl9O.0
新速通りを抜けて脇道に入ると、件のビルが見えてきた。
廃ビルは都市開発から取り残されたようにぽつんと裏路地に立っていた。
放置されてかなりの時間がたっているらしく、窓は埃で白く曇っていた。
良雲寺がニュータウンとして開発されてから二十数年が経過しているが、ここだけは昔のままの風景を保っているように思えた。
( ^ω^)「こんな不気味なビルでよく遊ぼうなんて思うもんですお。」
(,,゚Д゚)「不気味だからこそだろ。冒険心がそそられるってもんさ。」
廃ビルの横には手入れされなくなって久しいであろう駐車場があった。
雑草がぼうぼうと生い茂っており、ここなら子供達が遊ぶのに丁度良いスペースになりそうだった。
21
:
◆RwfHkdJwVg
:2012/11/09(金) 20:31:28 ID:OJnTl9O.0
(* ^ω^)ノ”「おっ丁度良いところに子供がいますお。おーい。」
(;^Д^)「やべえ! 大人だ! 怒られるぞ! 」
(;´∀`)「隠れるモナ! 」
( ^ω^)「いやいやいや、見えてるからね? お兄さん、隠れる様子ばっちり見てますからね? 」
(,,^Д^)「はっはっは。別に怒りに来たんじゃねぇよ。オジサン達は刑事でな、ちょっと捜査にご協力願いたくてな。」
普段は厳めしい顔付きのギコさんが優しく話し掛ける。
意外なことに彼は子供好きだった。
扱いも心得たものである。
22
:
◆RwfHkdJwVg
:2012/11/09(金) 20:39:08 ID:OJnTl9O.0
(* ^Д^)(* ´∀`)「捜査ー!? 」
案の定少年達は目を輝かせて食いついてきた。自尊心をくすぐられたのだろう。
背の高い活発そうな男の子はプギャー、小柄でおとなしそうな男の子はモナーと自分から名乗った。
共に良雲寺小学校に通う四年生だった。
(* ^Д^)「俺達がわかることなら何でも聞いてくれよな! 」
(,,゚Д゚)「よし、プギャー。それじゃあ最近誰か怪しい人を見かけたりしなかったか? 」
( ^Д^)「うーん、ここいら一体は俺の縄張りなんだけどなぁ。特に怪しい奴なんかいなかったぜ。」
プギャーは少し考ると首を横に振る。
やはり、無駄足だったのか――期待してないとはいえ、落胆は大きかった。
(,,゚Д゚)「それなら何よりだ。プギャー、最近よからぬ奴がこの辺をうろついてるって、学校の先生やお母さんから聞いてないか? 」
( ^Д^)「あ!この辺のマンションで起きてるドロボーのこと?」
(,,゚Д゚)「そうだ。オジサン達は今そいつらを探してる。今でも奴らはこの辺を堂々と歩いてるかもしれん。」
(;^Д^)「お、脅かすなよー。」
(,,゚Д゚)「実際安全とは言い切れねぇ。」
だからな、日が暮れる前に早く帰んな、ギコさんは二人の頭をがしがし撫でて言った。
(;´∀`)「……。」
モナー君は、どこか不安そうに頭を撫でられている。
表情を読まれまいと爪先を見つめていた。
それは子供特有の、隠し事をして抱えきれなくなったような仕草だった。
23
:
◆RwfHkdJwVg
:2012/11/09(金) 20:42:27 ID:OJnTl9O.0
( ^ω^)「? モナー君、何か言いたいことでもあるのかお? 」
( ´∀`)「絶対に怒らないって約束してくれるモナ? 」
(;^ω^)「うーん、絶対にかぁ……」
( ^Д^)「何だよ、ケチくせぇオッサンだな。」
( ;ω;)そ「おーん! 僕はまだ、ピチピチの二十代だお! それに内藤武運っていう立派な名前があるお! 」
( ^Д^)「ブーン? 」
(#^ω^)「ぶ・う・ん! 」
( ^Д^)「ま、何でも良いじゃねぇか。ブーン、コイツ約束しなきゃ絶対言わないぜ。」
24
:
◆RwfHkdJwVg
:2012/11/09(金) 20:49:59 ID:OJnTl9O.0
(,,゚Д゚)「怒ったりしねぇよ。モナー、何か知ってることがあるなら教えてくれねぇか。」
僕達のやり取りでは埒があかないと判断したのだろう。
ギコさんは僕とプギャーの間に割って入る。
(,,゚Д゚)「指切りだ。」
(;´∀`)「……僕見たモナ。怪しいオジサン。」
(;^ω^)「いつ!? どこで!? 」
( ´∀`)「一昨日の二時頃、この廃ビルで……」
僕は小さく頷いて、ちらりとギコさんを見やった。
事件の犯行時刻と一致している。
(,,゚Д゚)「どんな奴だったか覚えているか?」
( ´∀`)「黒い帽子をかぶってたモナ。多分男の人だと思う。」
モナー君は、ゆっくりと記憶を探るように一つ一つ言葉にしていく。
焦るなーー自分に言い聞かせても、逸る気持ちを抑えきれない。
(;゚ω゚)「年齢は!? 何か特徴とか覚えてないかお!? 」
(;´∀`)そ「ごめんなさい……遠くてそこまではよくわからなかったモナ。でも、多分ブーンさんより年上モナ。」
僕の迫力に気圧されて、少し仰け反りながら申し訳なさそうに答えた。
( ´ ω`)「急に大きな声を出してゴメンだお。びっくりしたおね。」
( ´∀`)「ううん、大丈夫モナ。」
25
:
◆RwfHkdJwVg
:2012/11/09(金) 20:52:27 ID:OJnTl9O.0
ところで――そう切り出して、ギコさんはゆっくりとした調子でモナー君に言った。
(,,゚Д゚)「この廃ビルの駐車場からだと向こうのマンションは見えないよな。どうやって怪しい男を見つけたんだ? 」
( ´∀`)「それは……」
言い淀んだ後、ちらちらとプギャーを見る。
( ^Д^)「何だよ? 」
( ´∀`)「プギャー、ごめんモナ。プギャーには黙ってたけど、このビル入れるんだモナ。」
(;^Д^)「え! だけど二人で試したとき玄関鍵かかってたろ!? 」
( ´∀`)「ううん、そっちから入ったんじゃないモナ。」
あっち、ビルの壁面の方へ指を指した。
ひび割れた灰色の壁にはたくさんのパイプが伝っていた。
その上には小さな窓が一つ。
( ´∀`)「あれをよじ登って中に入ったモナ。プギャーにも教えようと思ったけど、窓が小さいし、危ないから言うのやめたモナ。」
( ^Д^)「うーん、そんな裏技があったのかぁ。」
プギャーは壁の方を見上げて、感心したように頷いている。
確かにあの大きさの窓なら、大きなプギャーはうっかりはまって出られなくなりそうだった。
( ^ω^)「真似しちゃだめだお? 」
(;^Д^)「わかってらい! 」
一応釘を刺しておく。
プギャーのような子供はたとえ駄目だとわかっていても、一回は挑戦しそうな気がした。
26
:
◆RwfHkdJwVg
:2012/11/09(金) 20:55:15 ID:OJnTl9O.0
(,,゚Д゚)「よく言ってくれたな。今日はもう遅い。さぁ、うちへ帰んな。」
ギコさんはお開きだ、という感じでぽんとモナー君の肩を叩く。
その時、彼が一瞬痛そうに顔をしかめたのに違和感を感じた。
ギコさんはそんなに力を込めて叩いてはいない。
( ^ω^)「モナー君肩、怪我してるのかお? 」
(;´∀`)「な、何でもないモナ! 行こうプギャー! さよさら、オジサン。ブーンさん。」
モナー君は僕の問いには答えずに駆け出した。
二人を見送って姿が見えなくなった頃、僕は肺の中にあるありったけの空気を吐き出した。
かなり頼りないが、手掛かりを一つ掴んだ。
(,,゚Д゚)「一歩前進、だな。」
( ^ω^)「お見事ですお。さすが“落としのギコ”さん。」
(,,-Д -)「言ってろ。」
明日からはきっと忙しくなる、そう思いなが署へ車を走らせた。
先ほど感じたモナー君に対する違和感も、ようやく得た目撃証言に消えていってしまった。
27
:
◆RwfHkdJwVg
:2012/11/09(金) 20:58:14 ID:OJnTl9O.0
廃ビルに行ってから数日――
僕達は相変わらず例の空き巣事件の捜査に明け暮れていた。
だた、状況は以前とは少し変わっていた。
あれだけ駆けずり回って探しても見つからなかった目撃証言が、モナー君達に出会った日を境にぽつりぽつりと得られるようになってきたのだ。
だから、聞き込みを終えて帰路に向かう先で入った無線連絡を聞いたときも、僕達はモナー君のことなど、ちらりとも頭に浮かぶことはなかった。
「良雲寺町VIP荘にて男性からの通報がありました。近くの署員は至急現場へ向かって下さい。」
( ^ω^)「了解しましたお。内藤、義古の両名はすぐに現場へ向かいますお。」
(;^ω^)「ふぃー。何だか今日はバタバタしてますおね。」
(,,゚Д゚)「ま、こういう日もあるさ。もうひと頑張りだ。」
28
:
◆RwfHkdJwVg
:2012/11/09(金) 21:00:31 ID:OJnTl9O.0
時刻は午後八時になろうとしていた。
日はとっぷりと暮れ、居酒屋の明かりが煌々と輝いていた。
新速通りを抜けて細い道に入ると現場のVIP荘が遠目からでもすぐにわかった。
アパートの前には黄色いビニールテープが巻かれ、制服警官が入り口に集まる野次馬達を整理していた。
(;=゚ω゚)ノ「はい、はい、押さないで下さいょぅ。」
( ^ω^)「ぃょぅ、お疲れ様だお。」
野次馬に揉みくちゃにされかかっている年若い警官に声を掛ける。
(=*゚ω゚)ノ”「あっブーン!お疲れ様なんだょぅ。」
制服姿の彼、伊葉洋輔は手を挙げて答える。
同い年ということもあってかお互い気安い所作で話す。
( ^ω^)「中の様子は? 」
(=´ ω`)ノ「一面血の海だょぅ。無理心中じゃないかって言われてるょぅ。」
(;^ω^)「ありがとだお。大体把握した。」
29
:
◆RwfHkdJwVg
:2012/11/09(金) 21:02:52 ID:OJnTl9O.0
黄色いビニールテープをくぐり、中に入る。周りには野次馬からの視線をさけるため、青いビニールシートが張られていた。
ミ,,゚Д゚彡「二人とも遅かったじゃねぇか。」
厳つい中年の男が出迎える。
後ろにいるギコさんが手だけですまん、とポーズをとった。
(;^ω^)「申し訳ありませんお、吹西警部補。道が存外に混んでたんですお。」
(,,゚Д゚)「ガイシャの身元と被害状況は? 」
ミ,,゚Д゚彡「被害者は持南弓都、24才女性。包丁で頸動脈を刺され、我々が到着した頃には死亡していた。死因は出血多量と思われる。」
ミ,,-Д-彡「それと被害者の息子が腹部を刺されていた。重傷をおって今救急搬送された。全く、嫌んなっちまう。」
30
:
◆RwfHkdJwVg
:2012/11/09(金) 21:09:26 ID:OJnTl9O.0
(;゚ω゚)「モナー!? まさか! 」
(,,゚Д゚)「被害者少年の意識は? 」
モナーと聞いて取り乱す僕の肩を掴んで冷静に質問する。
僕はこの時初めてギコさんをぶん殴ってやろうかと思った。
ミ,,゚Д゚彡「出血は多かったが意識はあった。おそらく命に別状ないと思う。」
(;゚ω゚)「こうしちゃいられないお。早く病院へ……」
(,,゚Д゚)「内藤。」
(#゚ω゚)「ギコさん! 」
肩を掴む指先に力が込められる。ギコさんの目は冷静になれ、と言っていた。
その手を無言で振り払う。
(#゚ω゚)「これが冷静でいられっかお! 」
気付いているのは僕だけではないはずだ。
終始冷静な態度を貫くギコさんを、信じられない思いで睨む。
31
:
◆RwfHkdJwVg
:2012/11/09(金) 21:11:44 ID:OJnTl9O.0
(,,゚Д゚)「すまん、フサ。ちょっとこいつと話つけるわ。」
ミ,,゚Д゚彡「おう。」
ギコさんが強引に玄関へ押しやる。
掴まれた腕はひりつくぼとに痛かった。
(,,゚Д゚)「落ち着け内藤。被害者はモナー君かもしれん。だか、命は助かってるんだよ。」
(,,゚Д゚)「内藤巡査、俺達の職務はなんだ? 俺達は刑事なんだよ。まだやるべき仕事は残ってる。」
(;゚ω゚)「お……」
( ´ ω`)「すいませんお。少し取り乱しましたお。」
(,,゚Д゚)「よし。」
32
:
◆RwfHkdJwVg
:2012/11/09(金) 21:13:21 ID:OJnTl9O.0
( ,,゚Д ))「フサ、ホシは? 」
ミ,,゚Д゚彡「犯行を行ったのは世帯主の持南見哉、38才男性。発見時そこのドアノブにロープを掛け首を吊って、死亡していた。十中八九無理心中だな。」
(,,-Д-)「そうか……」
視線をわずかにそらし、絞り出すような声でギコさんは言った。
握りしめた指はわななき、赤く染まっていた。
33
:
◆RwfHkdJwVg
:2012/11/09(金) 21:14:57 ID:OJnTl9O.0
ミ,,゚Д゚彡「てな訳で実はそんなに仕事は残ってないんだ。俺達だけでも良いくらいだよ。」
二人は解散、あがって良い――そう言った後吹西警部補は僕達にぞんざいに手を振って、犬をあしらうような仕草をした。
(,,゚Д゚)「すまんな。」
ミ,,゚Д゚彡「かまわねぇよ。ガイシャはお前らの知り合いなんだろ? 病院に行ってやれ。事情は後日報告するように。」
( ´ ω`)「はいお。お心遣い傷み入りますお。」
病院に着くまで、僕達は一言も口をきかずにいた。
お互いに黙り込んだまま、ただただ、病院への道を急いだ。
34
:
◆RwfHkdJwVg
:2012/11/09(金) 21:22:23 ID:OJnTl9O.0
以上で区切りたいと思います。
また、書き溜めましたら投下します。
感想を下さった方々、ありがとうございました。
すごくモチベーションに繋がりました。
何かアドバイスや、気になる点があれば教えて下さい。
35
:
名も無きAAのようです
:2012/11/09(金) 23:22:34 ID:Z8Hm/SOY0
キャラの特徴が分かりやすいな
ひたすら続きが気になるわ
乙でした
36
:
名も無きAAのようです
:2012/11/09(金) 23:26:42 ID:NGw3O7LQ0
1996年が十年前なのはミスだよね
細かくすまん
面白いので頑張って
37
:
名も無きAAのようです
:2012/11/09(金) 23:54:33 ID:Rf41EpIEO
文章が読みやすくていいよ
それから、次の分の書き溜め早く終わらせてほしい
38
:
名も無きAAのようです
:2012/11/09(金) 23:55:27 ID:WweB2ox60
>>36
現代の設定を2006年と仮定して考えればなんの違和感もないと思います
39
:
◆RwfHkdJwVg
:2012/11/10(土) 07:31:39 ID:2rBWJaK.0
>>36
、38
大変失礼しました。正しくは
十年前→十六年前
です。
温かいお言葉、ありがとうございます。
これを励みに、できるだけ早く投下できるよう頑張ります。
40
:
◆RwfHkdJwVg
:2012/11/11(日) 23:57:32 ID:aDSQagpU0
ようやく病院に着いた頃には、ぐったりとくたびれ果ていた。
強張った身体をぎくしゃくと動かす。
( ^ω^)「ギコさんはここで待っていて下さいお。面会が可能か聞いてきますお。」
ギコさんを車内に残して、夜間受付へ向かった。
車内でじっとしているよりは、何かしてる方が気が紛れるような気がした。
41
:
◆RwfHkdJwVg
:2012/11/11(日) 23:58:51 ID:aDSQagpU0
ナースステーションの看護婦達は、ばたばたと忙しそうに動き回っていた。
対象的に院内は静かで、薄暗い廊下の先でそこだけがぽっかりと浮かんでみえた。
本来なら受付に向かうべきだか、直接看護婦に聞いた方が早いだろう、そう思って歩を進める。
歩くにしたがって病院特有の、鼻を突くような薬品臭い香りが強くなっていく。
気は滅入るばかりだった。
それを振り払うかのように少し大きめの声で呼び掛けた。
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