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【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 七冊目【SS】

1ルイーダ★:2008/05/03(土) 01:08:47 ID:???0
【重要】以下の項目を読み、しっかり頭に入れておきましょう。
※このスレッドはsage進行です。
※下げ方:E-mail欄に半角英数で「sage」と入れて本文を書き込む。
※上げる際には時間帯等を考慮のこと。むやみに上げるのは荒れの原因となります。
※激しくSな鞭叩きは厳禁!
※煽り・荒らしはもの凄い勢いで放置!
※煽り・荒らしを放置できない人は同類!
※職人さんたちを直接的に急かすような書き込みはなるべく控えること。
※どうしてもageなければならないようなときには、時間帯などを考えてageること。
※sageの方法が分からない初心者の方は↓へ。
http://jbbs.livedoor.jp/game/19634/storage/1117795323.html#562


【職人の皆さんへ】
※当スレはあくまで赤石好きの作者・読者が楽しむ場です。
 「自分の下手な文章なんか……」と躊躇している方もどしどし投稿してください。
 ここでは技術よりも「書きたい!」という気持ちを尊重します。
※短編/長編/ジャンルは問いません。改編やRS内で本当に起こったネタ話なども可。
※マジなエロ・グロは自重のこと。そっち系は別スレをご利用ください。(過去ログ参照)


【読者の皆さんへ】
※激しくSな鞭叩きは厳禁です。
※煽りや荒らしは徹底放置のこと。反応した時点で同類と見なされます。
※職人さんたちを直接的に急かすような書き込みはなるべく控えること。


【過去のスレッド】
一冊目 【ノベール】REDSTONE小説うpスレッド【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/game/19634/storage/1117795323.html

二冊目 【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 二冊目【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/game/19634/storage/1127802779.html

三冊目 【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 三冊目【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/game/19634/storage/1139745351.html

四冊目 【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 四冊目【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/19634/1170256068/

五冊目【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 五冊目【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/19634/1182873433/

六冊目【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 六冊目【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/19634/1200393277/

【小説まとめサイト】
RED STONE 小説upスレッド まとめ
ttp://www27.atwiki.jp/rsnovel/

391国道310号線:2008/08/02(土) 01:06:54 ID:Wq6z33060
・小説スレ六冊目
 第一話 〜 ミニペットがやってきた! 〜
 前編 >>487-490 後編 >>563-569

 第二話 〜 狼男と魔女 〜
 1 >>784-787 2 >>817-820 3 >>871-874 4 >>910-913

--------------------
・小説スレ七冊目
 第三話 〜 赤き呼び声(4) 〜
 1 >>228-232 2 >>254-257 3 >>366-370


前回のあらすじ:アラクノイドのことがバレて村人に殺されちゃった


アラクノイドが死んでから一週間が過ぎた。
あの日洞穴に行った村人の半数が亡くなり、アラクノイドの子もすべて燃やされたと耳にした。
私は村の中心で、重傷を負い倒れているのを発見されたそうだ。
どうやって村までたどり着いたのか、私は全く憶えていなかった。


緑が揺れるグレートフォレストにミモザは一人立っていた。
彼女は両耳に手をかざすと瞳を閉じる。
聞こえてくるのは風にざわめく木々の葉音、様々な種類の鳥の鳴き声… それだけだった。
彼女に話しかけていた樹木もおしゃべりした動物も花の歌い声も、もう何も聞こえない。

賑やかだった森は灯が消えたように黙り込み、彼女一人だけ別の世界に取り残されたような感覚に陥る。
連れ立っていた召喚獣も一切彼女に応えることはなかった。
どうしようもない孤独感に少女は涙を流す。
たくさんの命を死なせたから、皆に嫌われてしまったのだとミモザは思った。
あれから彼女はアラクノイドがいた洞穴へ行っていない、思い出すと辛くて近づくことすら出来なかった。

村人達のミモザへの態度もよそよそしくなっていた。
見えない何かと会話する彼女は以前から村から浮いた存在ではあったが、より一層それは顕著にあらわれた。
当たり前だ、村人を巻き込み殺してしまったのは自分なのだから。
数年後、遠方で働いていた父が亡くなったという知らせを受け、身寄りがいなくなった彼女は村から出ることにした。
年端もいかないミモザを気遣い引き止める者もいたが、彼女はそれを断ると逃げるように村を後にした。

それからは町から町へ身一つで流れ、行く当てもなく彷徨い歩いた。
心休まる安住の地を探しての旅路であったが、彼女の心に落ちた暗い影を拭い去ることは出来なかった。


雨が降りしきる街角、古びた集合住宅路地裏の雨がしのげる僅かなスペースにミモザは座り込んでいた。
その日は仕事が取れず空いている宿もなかったため、この場所で夜を明かすことになりそうだ。
裏口に続く階段上に膝を抱え身を縮こませる。
一向に止む気配のない雨空をボンヤリ見つめながら、彼女は洞穴での惨劇の事を考えていた。

もし、アラクノイドを治療しなければ、彼女は卵を産む事無く息絶えていただろう。
それならば、村人は誰一人傷つかずに済んだはずだ。
けれども彼女は聞いてしまった、アラクノイドの助けを求める声を、生きたいという切なる願いを。
ミモザが差し伸べた手をアラクノイドは受け取り命を繋げたが、その結果村を護るために人が死んだ。

例え彼女達のことが村に悟られなかったとしても、村人に犠牲者が出る可能性は高い。
我が子の為にアラクノイドは自らの肉を捧げ、その子等によって村人が襲われていただろうから。
村人達が護ろうとした大切なものや、今度こそ自分の命を失うことになったかもしれない。
やはり、あの時アラクノイドを助けずに放っておくのが最良の道だったのだろうか。
そうなのだろう、しかし、見知らぬ土地で人間に深い恨みを抱いたまま朽ち果てていく彼女が不憫でならない。
何度も何度も自問するが、ミモザはいまだ答えを出せないでいた。

(こんな力、無くなって良かったんだ)

彼女の声が聞き、気持ちを知ってしまったから助けようと思った。
しかし、自分は誰一人助けられていない、紅蓮に燃える洞穴の中で泣き叫ぶことしか出来なかった。
(ごめんなさい、アラクノイド、ケルビー、村長さん… ごめんなさい…)
「寒いよ…。」
雨に冷やされた空気はしだいに彼女の体温を奪っていった。


ふいに、胸元に熱を感じ、ミモザはハッと胸元を探る。
熱の正体は彼女が愛用している笛だった。
数少ない荷物の中持ってきたそれは、紅蓮の光を淡く纏っている。
「ケルビー …なの?」
笛から発される炎のごときオーラに、彼女は火の神獣の息吹を感じた。
ミモザは笛をそっと胸元に寄せると強く抱きしめた。
「ごめん… ごめんね、ケルビー… ずっとそばにいてくれたのに…。」

392国道310号線:2008/08/02(土) 01:09:35 ID:Wq6z33060
私はいつも逃げていた。
母が亡くなったことが受け入れられず、森へ入り母が残した治療術で生き物達を治すことに明け暮れた。
そうしている間は、まるで母が近くにいるように感じられたからだ。
そして、声に押し潰されてしまいそうになり自分の持つ力を拒絶し、村人からの冷たい視線に耐え切れず逃げた。

誰からも見捨てられ、一人ぼっちになったのだと思っていた。
でも、本当は違っていたのだ。
自分をいつも見守ってくれていたケルビーにも、引き止めてくれた村人の優しさにも気が付かなかった。
いや、気付こうとしなかった、心を閉ざしていたのは私自身だったのだから。
今はケルビーの言葉は分からなくとも、ただその温もりが嬉しかった。
彼女の頬を伝い涙が流れる、何故かその雫さえも温かく感じた。

自分はケルビーに何をしてあげられるだろう、どうすればアラクノイドや村人に罪滅ぼしが出来るだろう。
少なくともアラクノイドのような魔物を増やしたくなかった。
しかし、自分は人間だ、時には人と魔物の命を天秤にかけなければならぬ時があるだろう。
それならば、私は両者が出来るだけ衝突せず共存していけるよう知恵を磨いていこう。
もう彼等の声は聞こえなくとも、ケルビー達と共に歩んでいきたいと心に決めた。


「君、どうしたんだい?」
突然話しかけられ、ミモザは伏せていた顔を上げる。
そこにいたのは鈍い青髪の体格の良い少年だった。
雨具を持っていないのか、彼は両腕に抱えた大きな荷物の入った紙袋と同じくずぶ濡れになっている。

彼女が泣いていることに些か少年は驚いたようだが、すぐに優しい口調で続けた。
「すぐそこの宿屋に泊まっているんだけど、よかったら来ないか? あっ、別に変な意味じゃないから!」
他のギルメンもいるし、と慌てて付け加えると彼はニッと笑って見せた。
「それに、ここよりは温かいと思うよ。」
ミモザは屈託ない彼の笑顔がとても眩しく思えた。

それが、ブルーノさんとギルド「セレスト・クルセイダーズ」との出会いでした。


―東バベル 大河沿いの村

バベル台地と東バベル川上流地域を繋ぐ小さい村は、樹木の伐採を生業としている。
村の傍を流れる川を上っていくと、ファウンティンス・ハイランドへ至る。
この地域はエルフやオーガといった独自の文化を持つ魔物が多く住み、人間社会との境界線が近いことを物語っ
ていた。
小さい村の宿屋の一部屋、ベットの上でミモザは目を覚ました。
白い壁紙の天井は年月によるシミや汚れが目立ったが、小奇麗に掃除が行き届いている。

ここはどこだろうと働かない頭で考えていると、視界に赤と青の物体が現れた。
「ミモザ!」
「おんどりゃ、どんなけ心配したと思っとんねん!」
罵声と共にミモザに抱きついたのは、犬とつむじ風の姿をした彼女の召喚獣ケルビーとウィンディだった。
いきなりの事に彼女は目を白黒していたが、軋む上半身を起こし愛しそうに彼等をなでる。
「大丈夫。もう本当に大丈夫だから…。」

「良かったわ〜。 具合はどう?」
ベッドの横に備え付けられた椅子に座ったテラコッタが微笑みかける。
彼女の隣には金太郎、その後ろのドアにはブルーノが部屋の外に向かって、目を覚ましたぞーと声をかけていた。

二人と一匹の姿を見て、ミモザは自分が助かったのだとようやく気が付いた。
「はい、平気です。 …すみませんでした。」
「いーよ、謝らなくて、無事だったんだからさ。」
体を小さく縮こませている彼女にブルーノは明るく笑いかける。
夢で見た雨の日の彼の笑顔を思い出したミモザは頬を染めるとうつむいた。

初々しい彼女の様子をテラコッタは微笑ましげに見ていたが、けたたましく廊下を走る音に振り向く。
部屋の入り口には、扉の柱に手を掛け少し息の上がったアッシュが立っていた。
彼はミモザを見据えたままドカドカ部屋に入ると、ベッドのすぐ脇まで来る。
「バカヤロウ! 何だってこんな無茶をした!?」
「ごっ、ごめんなさい。 私、早く紋章品を集めたくて…。」

393国道310号線:2008/08/02(土) 01:11:05 ID:Wq6z33060
「これのことですか?」
この場にいなかった者の声がした、アッシュに遅れて入ってきたエムロードとグロウだ。
エムロードは茶髪の長身のウィザードで、グロウは色黒のガッシリした男性でギルドマスターである。
黒々とした動物の毛束が入った小さな皮袋をエムロードは見せると再び口を開く。
「紋章品コンプリート間近で気が急くのは分かりますが、あまり心配かけさせないでください。」
彼は皮袋をミモザに返すと彼女の肩を叩いた。

「ミモザ頑張っていたもんな。」
そう言うブルーノに対し、アッシュはふんっと鼻を鳴らした。
「弱いくせに、調子に乗るからこんな目に遭うんだ。」
「おんどりゃ、そこまで言うことないやろ!」
身も蓋もない言葉で主人を責める彼に、ウィンディは反発する。
「黙れ、紙。」
ウィンディにアッシュは一瞥もせず言い放った。
この場合の『紙』とは文をしたためる物ではなく、防御力が低すぎて紙の様に頼りないという意味だ。
「…このガキャ、張っ倒す!」
気にしていることを言われウィンディの頭に血が上る。
「落ち着けウィンディ!」
アッシュに殴りかかろうとするウィンディをブルーノとケルビーは二人がかりで止めた。

「でもさ、アッシュが一番ミモザのこと心配していたんだぜ。」
見た目より力がある風の神獣を押さえつけながらブルーノは苦笑する。
「なんたってスト「余計な事を言うなっ!」
フォローのつもりが失言しかけたブルーノにアッシュの肘撃が炸裂した。
クリティカルヒットを出した一撃をアゴに受け、彼は綺麗な弧を描いて昏倒する。

「スト… 何やて?」
「事と次第によっちゃぁ、生かしておかねぇぜ。」
ブルーノが言いかけた言葉を聞き逃さなかった召喚獣達はアッシュに睨みをきかせる。
一人と2匹の間に殺伐とした空気がながれ始めた。
「ケンカするなら外でやりなさいよ!」
テラコッタは怪我人がいるのに騒ぎ立てる彼等とついでに気絶しているブルーノを部屋から押し出す。
バタンとドアを閉めると、騒音の元を断たれた部屋は静かさを取り戻した。

当のミモザはその様子を目をパチクリ見つめていたが、表情を曇らせる。
「でも、私、これくらいのことしか出来ませんから。」
両手で握った皮袋を見つめたまま、彼女はポツリと漏らした。
完全に神獣や精霊と心が通じなくなってから、ケルビー達を喚べるまでに回復したのはこのギルドのおかげだ。
流れ者だった自分を受け入れてくれた彼等がいなかったら、今頃どうなっていたか想像がつかない。

沢山のものをこのギルドから貰ったのに、自分は何一つ返せていないのだ。
「皆さんに比べて私は弱いですし、ギルド戦だって…。」
そこまで言いかけてミモザは黙ってしまった。
うつむいているので彼女の表情を窺い知ることは出来ないが、酷く落ち込んでいるのが分かる。
「そんなこと、気にしなくてもいいのに。」
皮袋を強く握っている彼女の手にテラコッタは包むように自身の手を重ねた。

「人にはそれぞれ向き不向きがある、お前に出来ることを役割をこなせばいい。」
グロウは静かに語り出す、その言葉はどこか自分に言い聞かせているようだった。
「その役割が重い時は、お前の苦しみを分けてくれ、そのために我々はいる。」
皮袋から視線を移しグロウを見ると目が合った、彼は穏やかに微笑んでいた。

「はい…。」
ミモザは目を手で拭うと笑顔を向けた。
いつもの彼女に戻ったようで一同は安心する。
「マスターさん、洞窟でも助けていただいてありがとうございます。」
彼女の言葉に三人は揃いも揃って怪訝そうな顔をした。

「洞窟ってハイランダー洞窟のことですか?」
聞きなおすエムロード、彼の疑問もそのはずだ、そんなことはありえないのだから。
ミモザが遭難したハイランダー洞窟へ向かう途中、ウィンディと合流した彼等は彼女の危機的状態を知った。
ウィンディの話では彼女は洞窟の奥深くに落ちたとの事だったが、彼女を発見したのは洞窟の入り口だったのだ。
すなわち、ギルドメンバーは洞窟内へ入っていない。

「マスターはずっとあたし達といたから、人違いじゃない?」
テラコッタの言葉にグロウ本人もうなづいた。
「そう言えば、雰囲気が違っていたような気がします。」
ミモザは自信なさげに首をかしげた。
通路から落ちてからの記憶は夢の中の出来事のようにいまいちハッキリしない。
頭が混濁していて赤の他人を知り合いと見間違えてしまったのだろうか。
(私を助けてくれたあの人は、誰だったんだろう。)

394国道310号線:2008/08/02(土) 01:11:47 ID:Wq6z33060
「この石も洞窟で見つけたのか?」
物思いにふけっているミモザにグロウは手のひらに乗せた赤い石を見せた。
不規則にカッティングされている石は、それ自体が単体というよりも何かの一部のようだ。
「それ、なかなか離さなくて苦労したんだから。」
気を失っていてもミモザは石をガッシリ掴んでいた。
グロウが直接触ると良くない言うので無理やりテラコッタが引き剥がしたのだ。
「そうだったと思います。 赤い光に呼ばれて行ったら、その石があって…。」

赤い石を注意深く観察していたエムロードは何かに気付いたようにグロウの顔を見やる。
「グロウ、まさかこれは・・・。」
「あぁ、『RED STONE』だ。」
石から迸る炎の煌めきに、グロウはそれが伝説の魔石だと確信した。


テラコッタに締め出しを食らった二人と三匹はケルビーから今回の冒険談を聞いていた。
彼等は廊下に一列に並ぶことで通行人の邪魔にならないようにしていたが、
金太郎が幅を取ってしまうのであまり意味をなしていない。
「やはり『RED STONE』か…。 あんな場所にあったとはな。」
部屋から微かに聞こえてきた単語にアッシュは敏感に反応した。
「『RED STONE』って伝説のすっごい石なんだろ? そこらへんに転がっているものなのか?」

風の噂では古都の議員が無差別に冒険者を募ったり、復活した秘密組織がやっきになって探しているらしい。
子供の頃に赤い石の伝説を聞いたことがあったが、ブルーノは御伽話だと思っており興味は湧かなかった。
「あれは欠片だ、あの大きさだと一つ完成させるのに何十個も探さないといけない。」
「へー。 詳しいんだな。」
いつになく真剣な態度のアッシュをブルーノは意外に思った。
『RED STONE』は美しい宝石だという話もある。
こういう類の話はバカらしいと言って一蹴しそうな彼だが、やはりシーフは宝物に心惹かれるのかもしれない。


「そうか、呼ばれたのか…。」
そう呟いたグロウは、片手にすっぽり収まっている石を憮然とした表情で握り締めた。
「これは私が預かっておく。 慎重に管理しなければならない危険な代物だ。」
洞窟で聞いた苦しげな声は、もう石から聞こえない。
それにマスターになら安心して預けられるだろうとミモザは思った。
「そうなんですか、それならお願いします。」

洞窟にいた時は絶対手放したくなかったのに、不思議とすんなり渡せられた。
赤い石は内に眠る強大な力を示すようにキラリと瞬く。
そこには邪悪さは感じられず、石本来の輝きを取り戻したかのように清らかな光を放っていた。

話の区切りを見計らって、テラコッタはミモザに寄り添うと二人には聞こえないように囁いた。
「ところで、いつの間にアッシュとラブラブチャットするようになったのよっ?」
楽しそうにテラコッタ冷やかしを入れると、肘でミモザを軽く突っつく。
「え? 誰がですか?」
「やーね、ミモザに決まっているじゃない。」
とぼけるミモザに彼女は尚も追及するが、ミモザは眉をハの字にした。
「チャットはよくして頂いてますが、アッシュさんに怒られてばかりで…。」

395国道310号線:2008/08/02(土) 01:12:25 ID:Wq6z33060
**********

【from アッシュ】おい。
【to   アッシュ】こんにちは、アッシュさん。
【from アッシュ】…。
【to   アッシュ】…。
【from アッシュ】……。
【to   アッシュ】あの…、アッシュさん?
【from アッシュ】…また耳する。

**********

【from アッシュ】おい、ハイランドには着いたのか?
【to   アッシュ】いいえ、今ケルビーに乗せてもらっていて東バベルの村辺りです。
【from アッシュ】遅い、オレの絨毯だともっと早く着く。
【to   アッシュ】あ、ごめんなさい。
【from アッシュ】…また耳する。

**********

【from アッシュ】おい、紋章品は集まったのか?
【to   アッシュ】まだです…。 なかなか集まらなくって。
【from アッシュ】なんだ、まだなのか。
【to   アッシュ】ご、ごめんなさい。
【from アッシュ】オレはもう集めた。
【to   アッシュ】アッシュさん、凄いですね。
【from アッシュ】お前が遅いんだ。
【to   アッシュ】そうですね…、ごめんなさい。
【from アッシュ】…。
【to   アッシュ】…。
【from アッシュ】…おい。
【to   アッシュ】はい。
【from アッシュ】…お前だけだと遅いから、その…。
【to   アッシュ】?
【from アッシュ】だから…!

【Gチャ ブルーノ】ミモザ、もうしっぽ集まった?
【Gチャ ミ モ ザ 】ごめんなさい、まだなんです。
【Gチャ ブルーノ】俺達の方は終ったからさ、手伝いに行くよ!
【Gチャ ミ モ ザ 】そんな悪いですよ、私の担当ですし。
【Gチャ テラコッタ 】遠慮することないわ、あなたの割り当ては他のメンバーより多いんだから。
【Gチャ ブルーノ】そういうことっ。
【Gチャ ミ モ ザ 】ブルーノさん、テラコッタさん…。 ありがとうございます、すごく嬉しいです。

【from アッシュ】……。
【to   アッシュ】アッシュさん、どうしたんですか?
【from アッシュ】もういい、なんでもない。

**********

「…チャットの内容って全部こんな感じだったの?」
「はい。」
事無く肯定するミモザにテラコッタは唖然とした。
聞いているこちらが恥ずかしくなるような惚気話を期待していたのだが、嫌がらせとも取れる内容の数々だ。
こんなものを2時間おきだなんて、自分なら彼の脳天に矢を射ち込んでいるだろう。

「アッシュさん、最近ずっと何か言い出したそうだったんですけど、悩み事でもあるんでしょうか…?」
ミモザは心配げにテラコッタの手を握り返した。
そんなチャットに嫌な顔するでもなく秘められた恋心に気付くわけでもない、彼女は優しいのだか鈍いのだか。
「さぁ、恋煩いでもしているんじゃないの?」
適当に答えた言葉とは裏腹に、テラコッタは二人の間を取持とうと決心した。


後日、材料を集めたセレスト・クルセイダーズは無事に紋章を完成させるのだが、それはまた別のお話。



おわり

396国道310号線:2008/08/02(土) 01:13:07 ID:Wq6z33060
目に見えない存在がずっと見守ってくれていた! ネタが黒頭巾さんの話と似てしまいました。
被った部分が話の根源にあたっていたので、私の構成力では軌道修正することもできず…orz
我がままな申し出でありましたが、投下の許可いただきありがとうございました。

話が変わりますが、AAエディターって便利ですね、テキストだと文字揃えるのが難しくてかないません。
例の赤い石が登場して、少しはレッドストーン小説らしくなってきたらいいな。


>黒頭巾さん
離れられないほど深く愛し合っているのに、信じあえない切なさがたまりません、
短編の中に込められている廃退的恋愛話に魅せられました。
ご察しの通りアラクノイドはミズナをイメージしています。
なるほど! いっその事ミズナの洞窟まで行った方が因縁めいていておもしろかt …アイデア力が欲しいよママン。

>68hJrjtYさん
>能力 ミモザは魔物に肩入れしましたが、ロマ達はどう折り合いをつけているのか気になるところです。
謎の宝石といえば、公式に行ってみたらロゴとレッドストーンのデザインが変わっていました。
これから多少赤石が本編に絡んでくる予定だったので、影響のない程度の変更に胸をなでおろしております。

>ESCADA a.ka. DIWALI
コラボ小説の続きが!
マスターもといいけめんさんへの誤解がとけて良かったです。(笑
キャラクター達がお茶目で可愛いらしく、見ていて楽しい気分になりました。

>ドワーフさん
トラップバイトの説明文に残る疑問形の不気味さ…。 そこからの話の膨らませ方が素敵です。
U武器に秘められた物語性を再発見させられます。 次回楽しみにしています。

>之神さん
木精霊から呪いを受けても、そのギャグを言われれば許せるような気がしました。
叫びにちゃんと<!>が付いていて笑いました、ネタが細かくて好きです。
ミカ参戦にワクワクしつつ、続き楽しみにしています。

397名無しさん:2008/08/02(土) 19:14:32 ID:OnMpHZjE0
クソスレage^^;
            ゙'.    '.;`i  i、 ノ  .、″
             ゙'.     ,ト `i、  `i、    .、″
                |    .,.:/""  ゙‐,. `    /
             `  .,-''ヽ"`    ヽ,,,、   !
                、,、‐'゙l‐、      .丿 : ':、
               、/ヽヽ‐ヽ、;,,,,,,,,,-.ッ:''`  .,"-、
              ,r"ツぃ丶  ``````   ../  `i、
          ,.イ:、ヽ/ー`-、-ヽヽヽ、−´    .l゙`-、
         _,,l゙-:ヽ,;、、             、、丶  ゙i、,,、
        ,<_ l_ヽ冫`'`-、;,,,、、、、.............,,,,、.-`":    │ `i、
      、、::|、、、ヽ,、、.    ```: : : ```      、.、'`  .|丶、
     .l","ヽ、,"、,"'、ぃ、、,、、、、.、、、.、、、_、.,,.ヽ´    l゙  ゙).._
    ,、':゙l:、、`:ヽ、`:、  : `"```¬――'''"`゙^`     : ..、丶  .l゙ `ヽ
   ,i´.、ヽ".、".、"'ヽヽ;,:、........、           、、...,,,、−‘`   、‐   |゙゙:‐,
  ,.-l,i´.、".`ヽ,,,.".`   `゙゙'"`'-ー"``"``r-ー`'":      _.‐′  丿  ,!
 j".、'ヽ,".、".、"`''`ー、._、、、           、._,、..-‐:'''′   .、,:"  丿
 ゙l,"`"`''ヽヽ"`"`  ```゙'''"ヽ∠、、、、ぃ-`''''": `      、._./`  ._/`
  `'i`ヽヽヽ`''ーi、、、: :                   、.,-‐'`   、/`
   ``ヽン'`"`  : `~``―ヽ::,,,,,,,,,,.....................,,,,.ー'``^    ,、‐'"`
      `"'゙―-、,,,,..、、               : ..,、ー'"'`
           : `‘"`―---------‐ヽ``"''''''""

398◇68hJrjtY:2008/08/08(金) 13:41:09 ID:tQPoZmM.0
毎日暑いですね(;´Д`A

>国道310号線さん
ミモザ編、そしてレッドストーンの欠片発見のお話完結!
レッドストーンが10個でひとつ…という事は今後またレッドストーン欠片が登場するんでしょうか(0゚・∀・)
短編で区切られていたセレスト・クルセイダーズのお話がついに長編になりそうな兆しに喜んでおります!
そしてアッシュとミモザの耳内容に笑…って笑っちゃいけませんが。意外とアッシュって奥手なんですねぇ(*´д`*)
素直なミモザと素直になれないアッシュの今後の恋模様の方も楽しみにしております。
セレスト・クルセイダーズの紋章はどんななんだろうなぁ…想像しつつ、続きお待ちしています!

399名無しさん:2008/08/09(土) 10:00:32 ID:MRV9NKQc0
かなり厳しい意見なので、心に余裕のある方以外はスルーして下さい。

一から順番に眺めさせてもらった。


感嘆符のあとは一マス開ける
三点リーダは二つ重ねる(二点リーダや中点は論外)
「 」の最後に読点は付かない

基礎の基礎すら守れてない物なんてまず読む気にすらならない。

ぶわーっと眺めてみて
最低限のラインを守れているのが白猫さん、みやびさん、ドワーフさんあたりかな
みやびさんは書き出しも一マス下げていて、改行もきちんとされていて
ネット小説の世界では珍しく非常に丁寧な印象を受けた。

ということで個人的に目に付いた作者さんの作品をじっくり再読。以下感想。

400名無しさん:2008/08/09(土) 10:01:06 ID:MRV9NKQc0
――白猫さん

多く作品を投下してますね。
文章力が圧倒的に不足していてるように感じます。
書く量は多いけど読書をしない物書きさんにありがちです。
味のある文章や流暢な組み立ては小説を書くだけでは身につかず、
たくさんの本を読まないと得られないです。
指示語(その そう それ etc)が多く、癖になってはいませんか?
また技名をセリフで言うのは人にも因りますが、多く使われると私は醒めます。
上手い人ならば必殺技は地の文と情景描写できちんと書き上げるので。
はっきり感想を言うならばどれも『つまらなくはないが別段面白くもない』作品。

内容のある物語は書かれていると思います。
伴う技術を身につけないと
物語を創り上げる力は十分あると思うので、頑張ってください。
音楽を聴かないで曲作りは出来ないのと同じことです。

――みやびさん

文章力、技術はこのスレでも頭が抜けていますね。
私は三点リーダ、ダッシュが多いように感じました。とはいっても、
西尾維新さんや舞城王太郎さんなどの例もあるので
こればっかりは作者の味としてそこまで気にしなくてもいいかな。
リレーのトップバッターとしての作品として要素がきちんと盛り込まれていて
他の人に気を使える方だなあ、と思いました。

――ドワーフさん

書きなれてる印象を受けました。
短い中でも起承転結がきちんと描かれていて、センスを感じます。
きちんとショートショート(掌編小説かな?)として作品が成り立っていて
さらりと読むだけでも十分面白いです。
レッドストーンのエッセンスも上手に盛り込まれており、
非常に好印象です。
これからも楽しみにしています。


――354さん

個人的に気になったので。
初めてのようで粗が多いですが、
文章力、また語彙力がこのスレでは一番光っています。
基本的に仲間内でしか楽しめない二次創作の作品ですが、
読者の事を考えて敷居を下げようとする努力が見受けられました。
内容自体もただの自己満脳内ファンタジーではなく
面白い設定で、起承転結もつけられています。
あえて突っ込むならばラストのくだりがちょっと上手くいってない印象。
ともあれ、この作品群の中でも異彩を放つほどの実力です。


最後に独り言。

感想が馴れ合いにしか見えない。気を使ったおためごかしの羅列。
歯に衣着せた感想を言うだけじゃ誰も成長しない。
良かった点、悪かった点。
面白かった。つまらなかった。
はっきり言って批評をして初めて質が上がるんじゃないの?

あと、ここに名前の上がってない人達へ。
ttp://www.raitonoveru.jp/
ここ行って勉強して出直してきて下さい。

401自称支援BIS:2008/08/09(土) 20:43:33 ID:QyNOkFrU0
>>399-400さん

私のように基礎が守れてない人が言うのも何ですが、少し気になった点を

>>1はお読みになられましたか?
読んでいるのでしたら、1に書かれている以下の文をどう思われますか?

「※当スレはあくまで赤石好きの作者・読者が楽しむ場です。
 「自分の下手な文章なんか……」と躊躇している方もどしどし投稿してください。
 ここでは技術よりも「書きたい!」という気持ちを尊重します。」

また、最後のサイトの紹介ですが、「勉強して出直してこい」と言うよりは
「こういうサイトがあるので、参考にするといいですよ」ぐらいの文章の方が
いいと思います

技術が無くても、文章についての知識が無くても、
一生懸命考えて作った文章がこのスレには載っているんです
作家の方々のために厳しい意見を言って下さるのはありがたい事ですが、
もう少しだけ言葉を選んで書き込みされてはどうでしょうか?
確かに文章の問題点を指摘する事は大事ですが、「読む気にすらならない」等といった
初心者を蹴落とすような言葉は控えた方がいいと思います


とはいえ、書かれている事が正確なのも事実
今まで厳しい意見を言って下さる方は居なかった(と思う)ので、
今後も感想や指摘を下さると、作家の方々もありがたいと思います


それにしても……「三点リーダは二つ重ねて使う」って初めて知りました orz
紹介されてたサイト行って勉強してきます〜

402名無しさん:2008/08/09(土) 23:28:05 ID:MRV9NKQc0
>>自称支援BISさん

 もっと言葉を選んで発言すべきでしたね。最後の文章については
不愉快な思いをされて当然な言い回しでした。返す言葉もありません。

 やはりどこからどう見ても全体的に悪意の感じられる書き方でしたね。
 それでも読書に慣れ親しんでいる身としてはやっぱり基礎が守られていないと
読むのが辛い、というのが私の正直な気持ちです。感想についての私の考えも
正直に思ったことです。これは本当に面白いと感じて言ってるのかな、と。
感想と馴れ合いは違うんだけどなあ、と。
 あくまで一個人の正直な感想ですので、「ああ、こう思う人も居るんだ。ふーん」
程度に捕らえていただければ幸いです。色々な考え方があって当然の世界なので
私自身絶対に正しい事を言っている、とは考えていません。
 また少しでも考えてくれて血と肉にしていただけたならばこれ以上に嬉しいことはないです。


>>1については書き込む際に少々考えました。
 大体「小説を書く」ということのスタンスは個人に依るもので、
「趣味でやってるので楽しく書ければいい」という方も居れば
「もっと上手になりたい」という方も居ます。
 そこに私の気持ちを持ち出せばこのスレの雰囲気を壊してしまうことも
予想してました。それでも「お互いが正直に批評しあって上達しよう」ことは
誰も考えていないのかな、と思い、書き込んだ次第です。
 敷居を下げるためのせっかく言葉を台無しにしてしまったこと、
もう一度この場を借りて深く謝罪させてもらいます。失礼な文章で
皆さんを不愉快な思いにしてしまったこと、大変申し訳ありませんでした。

403名無しさん:2008/08/10(日) 00:38:27 ID:xEl075rY0
私は読書が好きです、だからこんなことも知ってます。ある意味評論家です
そんなのが出てきましたね。

21Rさんからの伝言を承りましたので投下させていただきます。

スレ住人の皆申し訳、時間とか色々と問題が出てきたので今後は掲載サイトの方にのみうpって事にしました。
詳しくは前スレとかに乗ってるまとめWikiからどうぞ。
>>399-400
>>1

との事でした、因みに新作はまだのようです。

404自称支援BIS:2008/08/10(日) 04:20:50 ID:QyNOkFrU0
>>402さん
1を読んで、かつそういった考えを持って書き込みされていたなら、
399-400のような書き込みになっても仕方無いとは思います
ただ、その場合は冒頭に「文章力を鍛えたい人以外はスルーを〜」といった言葉があれば良かったと思いました

私自身は401でも書いたように、三点リーダの使い方や感嘆符の後は一マス空ける、
といった事を学べましたし、紹介されたサイトも参考になるサイトでしたので、402さんには感謝もしています

402さんは、このスレの主旨は分かって下さっているようですし、
謝罪もして下さったので、これ以上は何も言いません


>>403さん
399-400では確かにキツイ言い方をされていましたが、402で謝罪されています
これ以上402さんを煽ったりする事は、止めた方がいいと思います


さて……ここは小説スレです
私も402さんも403さんも、このスレの繁栄を願いつつ作者や読者に戻りましょう

私もサイトで勉強しつつ、また小説を投稿したいと思います〜

405黒頭巾:2008/08/10(日) 06:56:25 ID:vDgoXW.E0
>>399-400 >>402 さん

言いたい事は殆ど自称支援BISさんが仰って下さったんですよね。
それでも、貴方の“疑問”に対する私なりの考えを書かせて頂きますね。
基礎の基礎すら守っていない文章で読み辛いでしょうし、内容も不快に思われるかもしれません。
私の配慮が足りず、お気を悪くされたらごめんなさいね。


・最低限の基礎について

私もそれなりに活字中毒ですので、多少なりとも存じ上げております。
それでも、色々考えた上でこちらでは敢えて守っておりませんし、今後も守るつもりは御座いません。
読み飛ばすお手間を取らせるのも何ですので、どうぞNGIDにして下さいませ。
個人的には、最初に貴方の書き込みを拝見した際、“正しい日本語”にお詳しいと仰りながら紛れていた「い抜き言葉」が気になりました。
尤も、「い抜き言葉」に関しては一概に間違った日本語とは言えないとの考え方もありますが。


・「感想と馴れ合いは違う」について

1を読んだ上であの文章を書かれたのですから、疑問を抱かれるのはご尤もだと思います。

>ここでは技術よりも「書きたい!」という気持ちを尊重します。

私は1のこの部分を念頭に置いて感想を書かせて頂いております。
確かに時々言葉に困る場合もありますが、その時は私とその文章の“相性”が悪かったのだと考えます。
それでも、「どの部分が書きたかったのかな」「何か私の心に触れる部分はないかな」と考えて感想として書いておりますので、批判的な目で見えれば馴れ合いに見えるのかもしれません。

>当スレはあくまで赤石好きの作者・読者が楽しむ場です。

私なりの「楽しむ」の結果として、投下させて頂いた文章と感想があります。
私の文章は総ての人に受けるとは思っておりませんし、批判なんていらないとも思っておりません。
勢いだけの部分も拙い部分も目立つのは自覚しておりますし。
但し、他人の文章に関しては、批判するより少しでも良かった部分を述べたいと思っております。
悪い部分も良い部分も総てひっくるめて、“その人の味”だと考えておりますので。
「正直に批評して貰って上達しよう」と考えておいでの方は、投稿される前にその旨仰っておいでますしね。


貴方の書き込みを拝見させて頂いて、私と貴方の根本的な考え方の違いを感じましたので長々と書かせて頂きました。
私の考えを貴方に押し付けるつもりは御座いませんし、こんな考え方もあるのだと思って下されば幸いです。

************************************************************

うっかり読んでしまった方、長々と顔真っ赤なレスごめんなさいね(ノ∀`)ペチン
徹夜で眠くて頭が沸いてるようなので、皆様への感想やレス返しは後程改めて書かせて頂きます。
お休みなさい(-д-)ノシ

406名無しさん:2008/08/10(日) 08:49:23 ID:pSkhMINw0
面白い流れなのでちょっとだけ書き込みを。
普段はROM専で仕事前にスレをちょこちょこ眺めてるものです。

確かに辛辣な口調で思うところはあるけれど、そう間違ったことも言ってはいない。
参考サイトも上げてくれてるし、
ただの上から目線で掃いて捨てるものと捕らえるのは勿体無いかと。
厳しい目で批評してくれる人も貴重な存在なんじゃないかなあ。
結構的も得てる部分があると。

支援BISさんが非常に大人だと感じました。普通はあんな風に書かれたら
むっと来て否定的になっちゃうのが当たり前だと思うけど、
しっかり意思を汲み取っていられて、丁寧な物腰で答えているのが
単純に凄いなあと感じました。
どっかのえらい作家さんが「柔軟に他人の意見を受け入れられる人は必ず上達する」
とかなんとか言っていたのを思い出しました。

いつも感想を沢山書かれている黒頭巾さんの考えもとっても素敵なものだと思う。
万人に受けるものなんてそうそうないのは当たり前なのに、
きちんと作家さん感想を上げてくれるのはきっと皆さん嬉しいんじゃないかな?
それを馴れ合いと思うのはちょっと違うよね、やっぱり。

>>403さん
代理ということだからきっと作者さんの一人か、もしくは21Rさん本人のような気もするけどね。邪推だけど。
“一個人の意見”と言ってるのに
ただ単にあおるように揶揄するのはどうかと思うよ。402さんよりずっと悪意を感じた。
感じ方は人それぞれなんだから気に入らないのなら書いてあるようにスルーすればいいんじゃない?


なんだか大学時代のサークルを思い出したわw
基礎とは言ってるけど、実際に書いてみると読んでるだけじゃ中々気付かない所沢山あるんだよね。

作者の皆さん まともな感想が言えないので基本的にROM専の人間ですが
皆様の作品をいつも楽しみに読ませてもらってます。
これからも頑張って下さい。スレ汚し失礼しました。
っていうか遅刻だorz

407◇68hJrjtY:2008/08/10(日) 13:25:24 ID:tQPoZmM.0
うーん、このタイミングで私までもなんか意見するのはアレかもしれませんが…

「馴れ合いのような感想」というのはおそらく私の感想にも対してのご意見かと思いますが
前々から言っておりましたように、批判、指摘といったレスは私はできません(笑)
理由はやはりどんな小説でも良いところを評価したい、ということからですが
私自身がUPできる小説を最後まで書き上げたことがない事から、尊敬の意味も込めております。

「お互いの欠点を指摘し合って文章力の向上を目指したい」書き手さんにとっては
はっきり言って私の存在は無意味ですしある意味邪魔かもしれません。
黒頭巾さんではないですが、それこそNGワード扱いしてくださって構わないです。
そういったこともあり個人的には批判、指摘をされる方は歓迎したいところです。

ただリレー小説やチャットなどの企画を見ていただければ分かるかと思いますが
ある程度の馴れ合いの要素がこのスレにはある事は事実ですし、今後もこうした流れを個人的には望みたいです。
1スレ目の頃から今ではだいぶスレの空気も変わっていますが、スレの性質上「馴れ合い」要素は排除できるとは思えません。
「馴れ合い」を悪いことと考えずに、お互いが気軽に小説をUPして感想したり批判・指摘したりできる。
そんな空気がこのスレに流れたら良いな、と私は思っています。

408ドワーフ:2008/08/10(日) 18:30:55 ID:AepyIIHk0
薪割伝説

古都ブルンネンシュティグには数多くの英雄の伝説が残されている。
誰も彼もが戦争で多くの敵兵を殺したり、強大な魔物に戦いを挑んでいった強者ばかりだ。
だがそんな中に混じって異彩を放つ英雄がいる。
彼の名はボスク・チェルス。一日に五十株の巨木を倒したという伝説を持つ木こりである。
「だからどうした?」という感想は至極当然のことだろう。
たった一振りの斧で一日に五十株は確かに驚異的ではあるが、
動かない木を切り倒す事などその気になれば誰にだって出来る事なのだから。
しかし、ボスクの成し遂げた偉業は決してそんな誰にでも出来る事などではなかった。

当時のグレートフォレストの様子は現在のそれとは全く別物と考えてよい。
グレートを冠するに値するほどに広大で、あの森全体がエルフの王宮を囲む外郭であった。
森の中はエルフ達の魔法によって迷路になっており、
一度迷い込めば同じ場所を延々とさ迷わされた挙句にエルフに射殺されてしまう。
そんな怖ろしい場所だったのだ。
人々は決して森には近づかず、エルフを恐れていた。
その様子を聞いたブルンの王様は騎士団を編成し、エルフの討伐を命じた。
若く血の気の多かったアラドン王は、人間がエルフごときを恐れる事が気に入らなかったのだ。
しかし結果は無残なものだった。騎士団の誰一人として帰って来なかったのだ。
アラドン王は怒り狂い、今度は森を焼き払ってしまえと命じた。
その噂を聞きつけたボスクは、一介の木こりでありながら王様に謁見を申し立てた。
当時のブルン王国では貧民でも王様に目通りすることが出来た。
ただ、それは意見が気に入られなければただちに処刑されるという命懸けのものだった。
ボスクは王様に深々と頭を下げて懇願した。
どうか森を燃やさないでくれと。
王様はたった一言、ならぬと言い捨てて兵にボスクの首を刎ねるよう命じた。
引き立てられながら、ボスクは王様に苦し紛れに叫んだ。
自分が何とかする。誰も森で迷わないようにするから、どうか森を燃やさないでくれ、と。
その言葉を聞いた王様は、何を思ったのかボスクの処刑を中止させた。
王様はボスクに向かって出来るものならやってみろと言って彼を解放した。
ただし、誰の助けも借りてはならないという条件を付け加えた上に、
彼の妻を人質にしてしまった。
ボスクは必ずやり遂げると王様に誓い、愛用の斧を携えて単身グレートフォレストへと向かっていった。

ボスクのとった方法は、全く以って賢さに欠けるものだった。
いや、愚者であるが故に思いつくことの出来た実に単純明快な方法なのかもしれない。
その方法とは、
“森に入るから迷ってしまう。森の端から順に木を切り倒していけば迷ったりはしない”
それは何よりも困難で、危険を伴うものだった。
うっかり森に踏み込んでしまわぬように常に気を張り詰めさせながら木を切り倒し、
根を掘り起こし、子株を見つけては引き抜いた。
エルフたちは度々ボスクの作業を妨害するために現れたが、
彼はエルフたちの攻撃をものともせず、彼らとの戦いに常に勝利してきた。
何故ただの木こりに過ぎないはずの彼が戦いに慣れていたのかというと、
それは最初にも語ったように彼が日に五十株の巨木を切り倒すほどの猛者だったからだ。
これだけではまだ説明不足か。彼の切り倒してきた巨木は、動いていた。
現在でもグレートフォレストに行けば、ボスクが相手をしていた巨木ほどではないが、
子株程度なら少しは見つけられるだろう。そう、凶暴なトランクマンやトレントたちだ。

409ドワーフ:2008/08/10(日) 18:32:04 ID:AepyIIHk0
しかし、いくらボスクといえども彼の目指す目標は達成不可能と思えるほどに遠かった。
半年かけて彼は森を東西に二分する中間地点まで切り拓いていたが、
彼自身にはどこまで作業が進んでいたのか全くわからなかった。
焦れたアラドン王はボスクを牽きたてて再び自身の前に呼び出した。
いつになったら終わるのかと王はボスクに尋ねた。
わからない、とボスクは正直に答えた。
ボスクの言葉に王は怒り、彼の首を刎ねるよう兵士に命じた。
王様は約束を守る者を裏切るのかとボスクは叫んだ。
自分は約束どおりずっと一人で森と戦い続けている。それなのに王様はボスクを殺すのかと。
ボスクの言葉に王様は戸惑った。平民ごときに意見されるなど思いもよらないことだった。
だが納得したのか、もう半年だけ待ってやると言ってボスクを再び解放した。

王様に与えられた残りの半年、ボスクは必死で戦い抜いた。
大熊との戦いに傷ついても、冬の寒さに凍えても、疲労の果てに骨身が軋んで悲鳴を上げても、
ボスクはオーガの如く戦い、グレートフォレストの木々を切り倒し続けた。
彼の鬼気迫る働きぶりにエルフたちも彼を恐れるようになっていった。
次第に彼を襲う事も無くなり、遂には森の奥で怯えながら彼を見守るのみとなった。
そうしてようやく、ボスクは森を抜けて西の砂漠へと辿りついた。
兵士の報告を受けてやってきた王様は森を真っ二つに割って延々と続く道を見て、言葉を無くした。
石畳を敷いてきちんと整備し続ければ森に飲み込まれることもなく、
安全に迷うことなく渡る事が出来るでしょうと、ボスクは王様に言った。
王様は馬を降り、傷だらけの彼に敬意を表し、
私は当代の英雄を殺してしまうところだったと、彼に対してのこれまでの無礼を詫びた。
王様はボスクにチェルスという名を贈り、彼を称えるとともに彼を召抱えたいと言った。
しかしボスクは自分は木こりしか出来ないからとこれを断った。
彼が切り開いたこの道はプラトン街道として現在も西の砂漠と古都とを結んでいる。
ボスクの残した恐怖の跡にはエルフはおろか動物すらも近づこうとしない。
やがてボスクの英名は旅の安全を願う商人や冒険者に崇められるようになり、
彼が愛用していたのと同じ斧が旅の安全を祈願するお守りとして今も愛されている。

さて、伝説の締めくくりには英雄の最後が相応しい。
ボスクはグレートフォレストでの一件の後に体調を崩して故郷のブレンティルに帰った。
そこで足から木の根が生える病を患い、数年後には枯木の如く朽ち果ててしまったという。
エルフの呪いだとも言われているが、定かではない。
ただ、グレートフォレストの中では今だにエルフの魔法が残っているということを忘れてはいけない。
あの森は今も彼らの領域なのだ。

410ドワーフ:2008/08/10(日) 18:44:47 ID:AepyIIHk0
あとがき
暑い日が続きますね。
今回は割りとメジャーなものを選んでみました。
書きながら走れメロスを思い出してしまいましたが、
やはり小さく短くまとめさせて貰います。

まあ、気楽に楽しみましょう。
感想はおろか返事レスすらろくに書けないでいる自分が言うのもなんですが…、
どんなものであれ意見や感想を頂けるのはありがたいです。

411◇68hJrjtY:2008/08/15(金) 21:54:51 ID:tQPoZmM.0
>ドワーフさん
今回は剣士の武器と考えるとちょっと異色な薪割斧。
昔の王様は残酷なんだなぁと思いつつも、彼が立派に事を成し遂げた時の称えぶりに少し安心でした(笑)
なるほどメロスというのはあとがきを読んでから思いつきましたが死ぬ気で頑張ったボスク、メロスと同じ雰囲気がありますね。
薪割斧だけでなく今のグレートフォレストとプラトン街道の起源についても分かるお話でしたね。
次回作もお待ちしています。

私信ですが。
改めて>>400さんの紹介されているサイト、「ライトノベル作法研究所」をいろいろ見回ってました(笑)
いやでも凄く参考になることばかりですね。
きちんとした評価をし合うことでお互いを高めるといったことを主旨とされているサイトのリンクもありますし。
お暇な方はちょこっと訪問してみてはいかがでしょうか〜。

412名無しさん:2008/08/19(火) 17:50:47 ID:yYV8stV.0
俺は今はやりのREDSTONEを友人に勧められたのでやってみる事にした。
ダウンロードとインストールを済まして…サーバーは左上だったっけな。パスワードを入力して入る。


フヒヒwwwwwwやっとついたぜ。それにしても最近のゲームはリアルだな…こいつ上半身全裸なのか…お、あれは
殺風景な部屋で待っていたのはロリ巨乳とでも言うべきであろうか、ボインで童顔な笛を持った女だった。
友人…お前なんだってそんなそそるグラフィックを。笛貸してくれよ、間接キスだなフヒヒ…
やあん、もぉ、あらあらうふふ 取りあえずクエストを受けて外に出ましょう。
俺は友人に教えられながらついにクエストを達成する事が出来た。
ここから先は古都よ。変な事言うと運営に牢屋に入れられちゃうから、くれぐれも注意してね
了解、フヒヒ。そして俺はマウスをクリックする。
ここが…古都か!ボインなお姉ちゃんに何やら鞭を持った熟女が居るぜ、ナンパしてくる
やあ可愛いね、お話でもしませんか…フヒヒ、つれないぜ。やあお姉さん、お茶でもどう、え、お前男かよ。
ちくしょう、ちくしょう。どうなってんだよ、俺は出会いが欲しいのに
いつもまにか俺はハイになっていた。ここはどこだ、どうやら噴水の前、古都の中心辺りなようだ。そしていつのまにか横には友人のロリ巨乳がいた。
馬鹿じゃないの、それじゃマジキチな出会い厨じゃない、ほら。街から出てレベルを上げるわよ
・・ざけんなよ。
え? ロリ巨乳は面食らったようだった。
ざけんな!俺は敵を倒してレベルを上げるなんてしたい訳じゃない!出会い、そうだよ。出会いが欲しかったんだよ!
ちくしょう面白くない!俺は落ちる!!
貴重な時間を無駄にして、友人との関係もぎこちなくなった。
俺は一生ここに戻る事は無かった。俺は気が付いてしまったのだ。こんなゲーム、時間の無駄だという事に。

413黒頭巾:2008/08/27(水) 20:15:43 ID:0WLFocA20
サボりすぎで溜まってるので短めにレスレス。


>之神さん
色塗りお疲れ様っす!(`・ω・´)
想像していた色と違ったり思い通りだったり…イメージって面白いですねー笑
色鉛筆はアタイには難しすぎて苦手だよ、ママン(ノ∀`)

ミカ参戦キター、楽しみー(´∀`)
ナザくん、運極で要求足りなくて抵抗装備出来ないんだろうなぁと笑いました。
そして、ライトが洗濯機で回されている洗濯物のようにwww


>68hさん
ネクロマンサーという職業上、如何しても生死が絡む発想が多くなってしまいます(ノд`)
コラボが好きと仰って下さって嬉しいです…いつも偽者になりすぎないよう必死です!笑
ようぢょも萌えますが、やっぱりネクロはショタっ子ですよネー(*´・д・)(・д・`*)ネー


>ESCADAさん
わーい、続き書いて貰えたー(´∀`)
いけめんさんのヘタレ具合と弄られぶりに盛大に爆笑しました、はい。
同じキャラでも書き手によって特色出て面白いですよね(*´∀`)ウフフ


>ドワーフさん
トラップバイトは諸刃の剣!((((・д・;))))ガクブル
罠は罠でも、自らも巻き込まれる罠…ちょっと違うけど「人を呪わば穴二つ」を思い出しました。
ここぞと言う所で大きな仕事を果たす、漢コーザに敬意を(`・ω・´)ゝ

薪割り斧ってトワー剣士用のUだとばかり思っていたのですが、こんな猛者の斧だったのですね!Σ(・д・;)
英雄の最期に因果応報という言葉が浮かびましたが…命がけで作ったボスクが今も護っているから、街道は安全なのかもしれませんね(´;ω;`)ウッ
ドワーフさんの作品の登場人物達は、何処にでもいそうで何処にでもいない感じが大好きです。


>国道さん
ミモザかわゆす、ブルーノかこよす、アッシュストーカーキテマス!(*´д`)
愛すべきおバカ、いつも一生懸命で暖かいブルーノ、やっぱりお兄さんってイメージですねー!
アッシュのツンデレ振りに大爆笑です…嗚呼、テラコッタが応援したくなる気持ちわかる!笑

被りに関しては本当にお気になさらず…国道さんファンとしてはむしろ光栄でs(ry
退廃的恋愛話との評価は嬉しいですよー、耽美な物語が書けるようになり隊(*´∀`)ウフフ
横ですが、レッドストーンのロゴデザインは前のが完成体、今のが欠片と思ってました←


>406さん
顔真っ赤な文章読まれたようで申し訳ないです…後で読み返したら煽ってる煽ってる(ノ∀`)ペチン
それでも考えて賛同して下さった部分、嬉しかったです。
前から思ってましたが、ROM専の方は沢山おいでるみたいですね…笑
隠れ住人多くて嬉しいです…このシャイボーイどもめ!(褒めてる/ぇー)
遅刻大丈夫だったでしょうか…ソレだけが心配です(´・ω・`)


>412さん
ゲームクリアおめ^^


書きかけのSSは内容がヤバイ方向に動いております…このままじゃ此処にうp出来ないよ!
仕方がないので放置して別の話に取り掛かります^p^

414◇68hJrjtY:2008/08/30(土) 18:46:39 ID:XypuDbDA0
生きておりますヾ(;´∀`)ノ

>412さん
ちょっと羨ましい……なんて思いながらゲームクリアおめでとうございます(笑)

>黒頭巾さん
ヤバすぎでUPできないとは…!はやる気持ちを抑えながら新たな小説の方楽しみにしています。
やっぱりしたらばではなくて普通の掲示板に小説UP用スペースみたいなの欲しいかもですよね〜。
エログロは隔離したりして完全なRS小説UP専用サイト!みたいな(・∀・)
いやいや、私は作りませんけど!(無責任

415名無しさん:2008/09/01(月) 16:42:11 ID:N37CdrJo0
>>414
なるほど、言いだしっぺの法則ですね、わかります。

最近は投稿が少ないので、飢えております。
……が、せっついているわけではございません。

読める日を楽しみにしているROM専ですた。

416名無しさん:2008/09/01(月) 19:00:38 ID:OnMpHZjE0
ESCADA文才無さすぎキモスwww

417ドワーフ:2008/09/02(火) 23:32:21 ID:AepyIIHk0
マルチェドと血まみれ男

 ひと気のない街道を異様な出で立ちの二人の人物が並んで歩いている。一人は真っ赤な血に染まった服を着た、
荷物を何一つ持たない手ぶらの男。もう一人は暑い日差しにも関わらず全身を長いコートで覆い、顔までも鉄の兜
で隠している小柄な人物。この二人の人物の不気味さはその外見もさることながら、その和気藹々とした雰囲気だ
ろう。
「いやあ、助かったよ。君が通りがかっていなかったら今頃どうなっていたことか」
「いえ、何も大したことはしていませんから」
 小さいコートの何者かは謙遜したように首を振った。
「俺はジェスターっていうんだ」
「マルチェドです」
 ジェスターは手を差し出したが、苦い顔ですぐに引っ込めた。ジェスターの手は真っ赤な血でべっとりと汚れて
いて、とても握手に適した状態ではなかったからだ。マルチェドのコートにも既にジェスターのものと思われる血
が付着している。
「後で洗わなきゃな」
「どこか水のあるところを知ってるんですか?」
 ジェスターは街道の先の方を指差した。真っ赤な手はまるでペンキ塗りの標識のようだ。
「この先を脇に逸れてしばらく行ったところに村があるんだ。かなり小さいけどね。そこで水が手に入るし、君に
お礼も出来るだろう」
「お礼なんて、そんな」
 マルチェドは遠慮するようにそう言ったが、ジェスターはどうしても彼をそこに連れて行きたいらしい。
「君は俺の命の恩人だ。恩を返さずに『はい、さよなら』じゃあ俺の気が治まらない。それにその村は俺の生まれ
故郷なんだ。大したことは出来ないかもしれないが、実家で持て成させてくれ」
 両手を広げて熱心に説得しようとするジェスターに、マルチェドは少し俯き加減に答えた。
「分かりました。でも、僕はあなたの命の恩人なんかではないです」
 承諾したマルチェドに、ジェスターは笑みを浮かべた。
「そいつは良かった。それにしても、君はどこまでも謙虚な人なんだな」
「そういう訳では…」
 何か言いたそうなマルチェドに、ジェスターは苦笑した。

418ドワーフ:2008/09/02(火) 23:37:00 ID:AepyIIHk0
 日は傾き始めていたが、遠くの景色はまだ暑さに揺れていて、蜃気楼でも見えそうなほどだった。遠くの木陰で
野犬が小さくうずくまっている。
 血が乾いてジェスターの服をパリパリに固めてしまっている。ジェスターは腹に固くへばり付く布を引き剥がし
た。そしてため息混じりにつぶやいた。
「不恰好だけど、もうしばらくこのままで居るしかないな」
 乾いた血が黒く変色し、ジェスターの姿をより不気味に見せていた。
「荷物、全部盗られちゃいましたね」
「ああ、鞄ごと持ってかれてしまった」
 同情するように言ったマルチェドに、ジェスターは少し落ち込んだ様子で答えた。
「まあいいさ。金は惜しいが、他は必要なくなるものばかりだったし」
 ジェスターが諦めたようにそう言うと、マルチェドは気になったのか彼に尋ねた。
「どうしてですか?」
「冒険をやめようと思ってたんだ」
「冒険者だったんですか」
 マルチェドが意外そうに言うと、ジェスターはハハハっと笑った。
「行商人か何かだと思ったかい?野盗にやられて剣も盗られるようじゃ、それも無理ないか」
「すいません」
 謝るマルチェドにジェスターは手を振った。
「いいんだよ。あそこは賊が出るって昔から知ってたのに、油断した俺が悪いんだから」
 ジェスターは笑いながらそう言うと、マルチェドの姿をじろじろと眺めた。冒険者ならマルチェドがどういう存
在か知っているだろう。
「君も冒険者だね。街で君に似た人たちを見た事があるよ」
「ええ、最近増えてきましたね」
「うん、こう言っては何だけど、実は気味が悪くてずっと敬遠してたんだ。でもこうして話してみると意外といい
人だったんだね。勿体無いな。こんな事ならもっと早く君のような人と知り合っておけば良かった」
 マルチェドは自分の胸に手をやって俯いた。何か考えているのだろうか、ジェスターはマルチェドの気分を害し
たと思い慌てた。
「ああ、ごめん。気を悪くしたかい」
「あ、いえ、そういう訳ではないんです。ただ、懐かしい人のことを思い出したんです」
 マルチェドの言葉に安心したのか、ジェスターは今度はにやりと笑った。
「初恋の人とか?」
「あはは、まあ、そんなところです」
 ジェスターは驚いたようだったが、すぐに元の笑顔に戻った。
「君のような人との出会いがあると、冒険をやめてしまうのが惜しくなるな」
「どうしてやめるんですか」
 ジェスターは顎に手をやった。考える時の癖なのだろうか。

419ドワーフ:2008/09/02(火) 23:38:30 ID:AepyIIHk0
「理由は色々だな。月並みなことを言えば、夢を追ってばかりも居られなくなったてところか。楽しい事ばかりじ
ゃないし、モンスターを相手に命のやり取りをするのにも疲れたし、お宝って奴はロクに見つからなかったし。ま
あ、今までずっと我侭を通してきたんだ。そろそろ真っ当な生き方をしなくっちゃな」
「そうですか」
 マルチェドはまた俯いた。ジェスターのような人はそう珍しくない。
「もしレッドストーンが見つかったら訪ねてくれよ。自分の追いかけていたものを一目でも拝んでみたい」
「え?ええ…」
 マルチェドは暗い調子で答えた。だが、ジェスターはマルチェドの様子に気づかずに話を先に進めた。どうやら
一度感情が傾くと止まらなくなるらしい。
「本当は帰るかどうか迷っていたんだ。弟や妹に苦労を押し付けて、勝手に家を飛び出してしまったからね。今更
どんな顔して帰ればいいか分からなくて、このまま街で何か職に就こうかとも考えた。そうやって悩みながら過ご
しているときに、弟とばったり会っちゃってね。あいつ商人に買われてて、随分と修行したらしくって、新しく立
てる店を任されるほどになってた。今まで何をしてたんだって散々責められたよ。当然だよな。馬鹿野郎だの、ろ
くでなしだの、言うだけ言った挙句、妹が結婚するから早く帰れって言うんだ。驚いたよ、本当に。家を出た時は
こんなに小さかったのに、それが結婚するっていうんだから。でもさ、それなら尚更帰れないじゃないか。おめで
たい席に俺みたいなのが居ちゃ駄目だよ。そしたら弟の奴、俺みたいな自分勝手なろくでなしでも、肉親が祝って
やれなくてどうすんだって言うんだ。それに、妹はずっと俺の事を心配してたって。おかげで、ようやく帰る決心
がついたんだ」
「…………」
 マルチェドは黙ったままだった。
「他人の結婚式はちょっと肩身が狭いかもしれないが、出来れば君にも居て欲しい。俺一人じゃ心細いんだ。きっ
と知り合いはもうほとんど居ないだろうから。あ、それほど大きな式じゃないよ。近所の親戚が集まってやる、小
ぢんまりとしたものらしい」
「…………」
 ジェスターは黙ったままのマルチェドの様子を不審に思ったようで、心配そうに尋ねた。
「気分が悪いのかい?」
「いえ、そうじゃないんです…」
「じゃあ、やっぱり、他人の結婚式に出るのは嫌なのかい?」
「いえ…」
 ジェスターは首を傾げた。すると、マルチェドは腕を前に出して遠くを指差した。
「あの…、あそこに見えるのがジェスターさんの村ですか?」
 マルチェドが指差した先には、いかにも農村という風情の、木柵に囲まれた家々が小さく見えていた。
「ああ、そうだ。やっと着いた」
「止まってください」
 嬉しそうに早足に歩き出そうとするジェスターを、マルチェドは立ち止まって呼び止めた。
「どうしてだい?ほら、すぐそこだよ」
「ここまでです」
「何が?もしかして、寄っていってくれないのかい?」
 マルチェドは首を左右に振った。
「いいえ、あなたがここまでなんです」
「何を言ってるんだい?」
 ジェスターにはマルチェドが突然言い出したことの意味が全く分からなかった。
「気づきませんか?そのおびただしい出血の跡。僕一人の治療でどうにかなるように見えますか?それにあの暑い
日差しにも関わらず汗一つかいていないという事も」
「何を…」
「あなたは、とっくに死んでるんです」

420ドワーフ:2008/09/02(火) 23:40:38 ID:AepyIIHk0
 日は西の山の上に静かに乗り、もう間もなく空を朱に染める事を告げていた。
「ははは、何を言ってるんだ。俺はこうして生きてるじゃないか。死体が歩いたり喋ったりする訳ないだろ」
「ごめんなさい。僕のせいなんです」
 マルチェドは謝った。
「何で謝るんだよ。さっきから君はおかしいよ。黙り込んだり、話し始めたかと思えば人を死人扱いするし」
「混乱するのも無理ないと思います。ですが受け入れてください。あなたは死んでるんです。僕がさ迷っていたあ
なたの魂を見つけ、再び近くにあったあなたの肉体に戻した」
 ジェスターは唖然としていた。俄かには信じられない事実だろう。ジェスターはハッとすると、服を捲り上げ、
身体に幾重にも巻きつけられている包帯を乱暴にほどき始めた。
「僕があなたを見つけたとき、あなたは既に殺されていた。即死状態で、ビショップが居たとしてもどうにもなら
ない状態だった」
 話しているマルチェドの目の前で、ジェスターは包帯を全て取り払った。その下から覗いたのは、胸の辺りを鋭
利な刃物で何度も貫いたような、無残な傷跡だった。
 自分の胸を見下ろして、ジェスターは足に力を失ったのか、そのままその場で座り込んでしまった。
「俺は、死んだのか」
「はい」
 沈黙。二人の人物が、黙祷を捧げるように俯いたまま黙っていた。
「…何が目的だ?」
 顔を伏せたまま、ジェスターは問いかけた。
「何か目的があるんだろう。でなければ、ここまで来て止まれなんて言えるはずがない!」
 ジェスターは顔を上げて、マルチェドに向かって怒鳴るように声を張り上げた。
「目的なんてないです」
「嘘をつけ、なら何故俺を蘇らせた。何故俺をここで止めるんだ。何で、放っておいてくれなかったんだ」
 責めるようにまくし立てるジェスターに、マルチェドは俯いて答えた。
「僕はただ、帰りたいと泣いている魂を見つけて、それで…」
「なら、行かせてくれ。せめて、妹に会わせてくれ」
 懇願するジェスターにマルチェドは首を振った。
「それが駄目なんです」
「なぜ!?」
 ジェスターの声は怒気をはらんでいたが、その目は死んだ魚のように黒かった。
「あなたはそれでいいかもしれない。でも、あなたの家族にとってそれが良いことだとは僕には思えない」
 マルチェドは顔を上げて、ジェスターを説得し始めた。
「あなたはきっとこう考えている。妹さんに会って、話して、そして去ろうと」
「それの何がいけないんだ」
「何処に居るのか、生きているのかどうかすら分からない。きっと生きていると信じても、不安は消えない。そん
な苦しみよりも『そこに居る』という悲しみが生きている人には重要なんです。話したりすれば、その苦しみと悲
しみが余計に増すだけです」
 ジェスターは頭を両手で抱えると、首を左右に振った。
「死体に、道案内をさせた訳か」
「…………」
「俺に君のような力があったとして、果たして同じ事が出来ただろうか」
「…………」
「君は…、いや…」
 ジェスターは何か言いかけると、立ち上がった。
「それで、これから俺をどうするんだ」
「僕があの村まで行って、村の人にあなたを運んで貰います。僕にあなたの身体を担ぐのは無理ですから」
「そうか」
 そう言って、ジェスターはふと気づいたように言った。
「でも、それだと君は…」
「いいんです。慣れてますから」
 ジェスターはマルチェドの目を見た。その兜の奥に輝く光を。
「すまない」
「謝るのは僕の方です。あなたにまた辛い思いをさせようとしている」
 ジェスターは目を下に落とすと、ぽつりと呟いた。
「…怖いな」
「空を見てください」
 ジェスターはマルチェドに言われるままに天を仰いだ。日は西に沈み始め、朱に染まった空がゆっくりと夜の帳
を下ろし始めた。帳には、薄っすらと星の瞬きが見えている。
「死んだ人の魂は天に昇って星になるそうです。あなたも、あそこに行くんですよ」
「そうか。案外、レッドストーンはあそこにあるのかも知れないな」
 強がるように、ジェスターは笑って答えた。
「かも知れませんね」
 マルチェドも一緒に空を見上げ、そう答えた。
「死んだ後も冒険か、嬉しいやら悲しいやら」
「見つけたら教えてくださいね」
「はは、どうやって」
 ジェスターはマルチェドの目の前に近づくと、しゃがんで目線を同じ高さに合わせた。
「君とは生きている間に知り合いたかった。嘘じゃない」
「僕もです」

 一つの魂が天に昇る。拭いきれなかった心残りのためか、重々しくゆっくりと、しかし着実に夜空を目指してい
た。

421ドワーフ:2008/09/02(火) 23:47:20 ID:AepyIIHk0
あとがき
久々にユニークネタから離れて書いてみようと思いまして、
台風みたいな大雨や雷にビクビクしながら書きあげました。
かなり前に書いたマルチェドの話の続きみたいなものです。
でも、ただ単に名前を考えるのが面倒臭かったというのもあります。

昔のB級ホラーみたいなタイトルにただ今反省中です。

422◇68hJrjtY:2008/09/03(水) 16:54:42 ID:XypuDbDA0
>415さん
うわぁ…法則発動っすかorz
415さんが協力してくれるなら喜んで!(こら

>ドワーフさん
おぉ、マルチェドカムバック!
性格が大人しいネクロマンサー君ですが、どことなく儚いみたいなイメージの彼。私は大好きですよ。
お話はホラーというかなんというか。前回の「マルチェドと貴婦人」も同様ですが、霊を扱った悲しくも優しいお話。
ジェスターの「案外、レッドストーンはあそこにあるのかも知れないな」というセリフはちょっとホロリと来ました。
「死んでいる」事を明かしながらも悲劇というだけで終わらない締めくくり方に、変な言い方ですが嬉しかったです。
次回作もお待ちしております。

423名無しさん:2008/09/03(水) 19:24:12 ID:fCs6564.0
ROM専です、こんにちは。
私としても新しい別の形で掲示板があるといいなと思い、借りてきました。

このスレッドですと、長編が多く、読みたい作品を探すときにスクロールするのが大変です。
そこで、各書き手さんのシリーズごとにまとめて読みやすくなれば、探しやすくなればと、そういった表示が出来るものを採用してみました。
また、イラストなども同時に投稿出来ます。
ttp://p1.avi.jp/ohuyu/
いかがでしょうか。
こうしたほうが良いなどの意見がありましたらお聞かせください。

424防災頭巾★:削除
削除

425◇68hJrjtY:2008/09/07(日) 22:51:19 ID:PVbAzmXE0
>>423さんの作ってくれた掲示板にも書きましたが、まとめWikiを新たに作ってみました。

http://wikiwiki.jp/rsnovell/

まだトップページしか編集しておらずメニュー内容とかも全然触ってないのですが
かなり簡単に編集できるのでちょっとだけヘルプを見ながら是非編集やまとめの助力お願いしたいです<(_ _)>
意見があれば>>423さんの小説スレ避難所かWiki内にあるフォームから書いてくれると嬉しいです(*´д`*)
宣伝みたいですが報告まで〜。

426ワイト:2008/09/08(月) 12:28:42 ID:1tNOqf2o0
前RS小説6冊目>>895⇒6冊目>>901⇒6冊目>>975⇒続編

「ご…ご主人様ぁ……!」「え?あ…?」
主人は声を発した、一体のデスナイトの崩れゆく姿を、振り向き様に視界に捉える。
そして、主人は…声を掛ける猶予すら無く、デスナイトが塵と化し散っていく光景を目に焼き付けた。

「他に敵意を感じる気配は無いな…後は亡骸に寄り添う一人の男を倒せば、終わりだ。」
ラータは主人に視線を移すと同時に、両者の瞳と瞳の行く先は重なり合い、互いの想いを乗せている。

「黙れ…!私の、私の…さ、最高傑作を…殺って、くれたな!ラァタアァ!!!」
「何言ってる?先に仕掛けたのは誰だ?元を辿りゃ、諸悪の根源はてめぇの方だろ?無駄死にだな!!」

「…る…い…!」
「うる…さ…だ…れ!」
主人は、細々と静かに何かを口に呟いている。

「何だ?聞こえねぇよ。」
「うるさい…!うるさい!!うるさあぁぁい!!!黙れ黙れ黙れえぇ!!!
それ以上の冒涜は許さない!私の心境を共感出来るのは、やはりあの方だけ…!」

「ちっ!辺り構わず怒鳴り散らしてんじゃねぇよ!!俺の聞きたい事は二つだ。
戦闘意欲はまだあるのか?そして…あの方ってのは誰何だ?答えろ!」

「(落ち着け、平常心を忘れるな…このままでは、ラータの思う壺に成りかねない。
ヘルズゴート(物語序盤のウェアゴートの正式名称)の二の舞になってしまう…!)」

主人は、我を見失い掛けていた…しかし、自らの器量を持って見事、己を取り戻す。

「押し黙ってるのもいい加減にしろよ?早く答えろ!!」
「いやはや…私としても質問、いや尋問したい。ラータ…お前は何故私達、組織に刃向う?
何故同胞を殺す?何故…この誉れ高い私に対して牙を向くのかな?ラータ?」

「何?質問しているのは俺の方何だがな?そして、てめぇは一つ勘違いしてるぞ?
突然、俺と見るや殺気立てる奴…俺を牢獄に閉じ込め、化け物を投入するわ…!
罪を犯したから何だ?些細な出来事から、事を荒げたのはてめぇらの方だろうが!!」

「ふふふ…私と貴方では、話し合っては収拾は付かない、か…!あ、そうそう…
私に対する貴方の質問の返答を、知りたければ!力尽く!全力を尽くして、挑んで下さいよ!!」
「そうか、結局そうなるのか。でもよ…言い難いが、てめぇ自身の手下は全て消し飛んだ。
それでも闘うのか?いや…それとも既に敗北する覚悟を決心したってのか?」

「いやぁ…先立ってそれは無いですよ?無論、私は貴方に敗北する可能性は微塵も有りませんし?
更に逆を言えば、私の勝利する確率…いや可能性は、計算上90%を上回っているんですし…
勿論、私の得意分野は手下の指揮等関係だけでは有りませんよ?見せて差し上げましょう!!!」

「ふん!闘いってのは…計算尽くしじゃ、計れねぇんだぜ!?御託並べてねぇで、さっさと掛っ…て!!?」
「言われなあぁぁくてもぉぉお…ゆっっくりとぉぉお!時間を掛けぇぇてえぇ…!思い知れえぇえ!!」

               ゴオオォォォオオオオ!!!!!

ラータは畏怖する…!まるで瞬く間に血を凍りつかせ、存在する生命の流れを断ち切る様な…
身体全体に痛感する嫌悪感。そして、心臓を張り裂けそうになる痛みに、ラータは畏怖していた…!

「あは!あはっはははっ!あははは!何ていうかぁ…!貴方誰なの?私の敵かしら?…あぁ!そうよ!
あっ!私ったらイケないわ…つい、殺っちゃうのよねぇ…大丈夫だと良いんだけど?」

ラータは素直に驚愕した。変身?進化?した主人の口調、言動は激変している。
更には、男性→女性の姿形に変化?覚醒?した主人の不可思議な現象に自身の目を疑った。
しかし、更に有り得ない変化と言えば、ラータの下腹部に風穴一つ空いている事だろうか。

「な!!?ウッ!ゲホッ!はぁはぁ…い、何時の間…ゴホッ!に、俺の身体を、ウッ!…つ、貫いたんだ!」
「それは知らないけどぉ…確かなのはね?今、貴方は私の手によって死ぬの。それだけよ。」

真相を知り得ないまま、ラータの意識は薄れ、視界は暗転し、次第に身体は朦朧と崩れ落ち…て?

427ワイト:2008/09/08(月) 12:42:57 ID:1tNOqf2o0
あ、sage忘れてました…申し訳無いです。久し振りに続編を書き込み致しました。
現時点では、既に自分の名前を忘れている人は…多数いると思います。
そして今回は、前回の話を忘れてしまい、思い出して考えるのに時間掛りました。
次回の続編は、いつ書き込むのか見当付いていないです…ご了承下さい。

428名無しさん:2008/09/08(月) 16:40:14 ID:N402UAoM0
RSの実写版ってできねえか
メテオど〜んして東京タワーが吹っ飛ぶとか

429◇68hJrjtY:2008/09/10(水) 07:03:33 ID:nj1vQZFI0
>ワイトさん
朝っぱらから失礼!いやいや、ちゃんと覚えておりますよ♪
ラータが最初に牢獄に捕らわれてバフォメットと戦ったり、ヘルアサシンの罠に捕らわれたり。
アリアンでの戦いもそれに続くものかと思いきや、全ての首謀者が現れそうなところですね。
頭脳タイプのような主人の口調の変化、もしかして女性…!?うーん、まだ正体は分からないですけどね。
一対一の決闘にもつれ込んだ戦い、結末まで続きお待ちしております!

>428さん
漫画化をされているサイト&ブログは結構あるようですが、実写版となるとなかなか想像が膨らみますね。
メテオもそうですがランサのF&Iやアチャやシフのスキルなんかも見てみたかったり。
高画質ムービーなんかで再現できそうな気配はしますが…誰か知識と技術のある人に作ってもらいたいですね(笑)

430名無しさん:2008/09/13(土) 00:07:47 ID:QKFSg0Tk0


序幕 


普段なら冒険者達の喧騒で溢れかえっている古都の街が、しんと静まり返っている。
いつも冒険者にアイテムを提供しているドロシーも、『その時』が来たのを確認してそっと肩の力を抜いた。

瞬間、今まで根が生えたように棒立ちしていた店の主人や街角の住人、いわゆるNPCが一斉に動き始めた。
ドロシーの叔母であるクリムスンものんびりと店先に出てきて久々の日の光に目を細める。

今日は彼らの唯一の定休日。プレイヤー達でいう所の、定期メンテナンスの日であった。

・・・・・・・

古都の北西にある、巨大な地底迷路。
階層が浅いうちは迷うことも無く探索できるその場所も、
深入りすればその広大さと複雑に枝分かれした通路によって方向感覚を狂わされる。

冒険者達によって『オーガの巣窟』と呼ばれている場所だ。


洞窟の一角。
僅かに含まれる鉱石によって小さくきらめいていたその壁が、ぐらりと揺れる。
空間が歪んでいるかのように捻れた壁に、裂け目が生まれた。
その裂け目は瞬く間に大きくなっていき、ついには人が悠々通れる程の巨大な口を開いた。

その巨大な穴から、なお体を屈めながらそこを通る巨大な影。
異常なまでに発達した全身の筋肉は大きく膨れ上がり、
その体には幾つもの傷跡が窺える。

巨大な身体のわりに小さめの頭をぶつけないようにして潜り抜けてきたのは、この洞窟の主、オフィサーグ。

「あ、頭! お疲れさまです!!」
「「「お疲れ様です!!」」」

彼の部下であるオーガ達の敬礼に堂々と手を挙げて応えていた彼は、
自分の巨躯によって後ろが詰まっている事に気付き、その図体からは思いがけないほど身軽な動きで道を開ける。

彼に続いて秘密の通路を抜けてきたのは、柔らかな光を放つ金の髪を後ろに垂らした女性。
傭兵独特の紅の瞳を細めて伸びをしている彼女に、オフィサーグの部下が再び頭を下げる。

「ハンナの姐御もご苦労様です!!」
「「「ご苦労様です!!!」」」

オーガ達の巨躯から発せられる気合の入った声に、彼女もオフィサーグ同様手を振って応える。

「・・・・行こうか」

オフィサーグがぼそりと言って歩き始め、ハンナはふわりと微笑んでその後に続いた。


「お頭! どちらへ!?」

まだ年若いであろうオーガの青年が話しかけてくる。
その目は自らの敬愛する主人の雄姿を見ているというだけできらきらと輝いていた。

「湖の方に行く」

対する主人はそっけなく返す。
青年はめげない。それどころか主人が自分に返事をしたという事実だけで嬉しそうに顔を崩している。

「湖の方ですか!?あちらは統治下に無い連中がたくさんいますよ! 自分もお供致します!!」
「いらん」
「そうですか!? 自分最近新しい技を編み出したんでそれを試しg・・ふごっ」

なおも食い下がる青年に、年配のオーガが彼の首を極めて動きを封じる。

「コイツの面倒はこっちで見ておきますんで。ごゆっくりどうぞ」
「・・・・」

431七掬:2008/09/13(土) 00:08:37 ID:QKFSg0Tk0
意味深なニヤつき顔で見送られるオフィサーグは平然を装っていたが、その足は心なしか速くなった。
主人が視界から消えるまで抑え付けられた青年は解放された後、恨めしそうな顔で先輩を見やる。
その表情を見て年配のオーガは諭すように口を開いた。

「頭がハンナの姐御と一緒にいる時は、頭に近づかねぇ方がいい」
「・・・・どうしてですか」
「お前、オーガの王窟がどうやって作られたか、知らねえのか」
「・・・・?」

青年の不思議そうな顔を見て年配のオーガは真剣な表情を崩して笑みを浮かべた。
誰かをからかう様な色を帯びた表情に、しかし何処か畏怖が刻まれている。
そんな不思議な顔をしている先輩に、青年はますます首を傾げる。

「頭はな、とんでもない照れ屋なんだが、それを上手く表現出来ないっていうか・・・
 まぁ、照れてるってことを知られるのが照れくさいみたいな感じで、とにかく照れると身体が動くんだ」
「・・・・」

「ハンナの姉御と同居が決まった時にな、頭はもうデレッデレなんだが、
 部下にそれを知られたくないってんで王窟に篭ってたんだな。
 ていってもその時はまだ地下室くらいの小さな部屋だったんだが。
 でーよ、俺達も放って置いたんだが、突然地下から轟音が響き渡る訳さ。しかも何回も何回も。
 慌てて俺らが見に行ったら頭が大暴れしてんだよ。壁相手に、しかも変に歪んだ顔で。
 何しているか聞こうと思っても暴れまわる頭と飛び散る岩盤が怖くてだーれも近づけねぇ。
 で、二時間近く大暴れしてやっと頭が落ち着いた頃には・・・・・」

「王窟が、出来ていたんですか・・・?」
「まあそんなところだ。その後俺らが調整して形を整えたんだけどな」

青年の顔が強張っている。
照れ隠しの二時間で巨大な迷宮を作り上げる主人の圧倒的力への畏怖に顔の筋肉が負けてしまっているのだ。
老練されたオーガは苦笑いして青年の肩を元気付けるように叩く。

「例えそういうことが無かったとしてもだ。お前、普通他人のデェトは見てみぬふりが基本だろうが。
 新技とやらは俺が相手になってやるから、頭とハンナ姐さんに水さすなよ・・・・」

・・・・・・


中幕


「オフィ! ・・・ちょっと待って」

かけられた声に応じて立ち止まり、振り返ったオフィサーグはそこで初めてハンナが息を切らしていることに気付く。
ヒトの身長を大きく超えるオーガ族。
その中でもさらに大きいオフィサーグとヒトの女性であるハンナとでは歩く速度がまるで違った。

「あ・・・すまん」

申し訳なさそうに頭を掻いているオフィサーグ。
彼に追いついて呼気を整えたハンナは少女のように笑ってオフィサーグの手を取った。

「別に謝らなくていいけど。でも手、繋ぎたいから」
「・・・・」

オフィサーグは応えずに再び歩き始める。
褐色の顔が、分かりにくいが僅かに染まる。
照れて無口になったオフィサーグと合わせるように、ハンナも僅かに顔を俯けて口を閉ざす。


柔らかな風が肌を撫で、通り過ぎていく感覚

梢が揺れ、さわさわと静かな音の奏で

バベル大河が流れる、遠い水の響き

のんびりとうららかな、優しい春の匂い

太陽の光を浴びながら街道を歩く、二人の間に流れる沈黙


オフィサーグはそっとハンナの表情を伺う。
鋭く燃え盛るような紅の瞳とは対照的な、白く澄んだ肌が僅かに赤らんで見えるのは気のせいだろうか。
後ろに垂らした長い金の髪が風に揺れ、眩いほど輝いて見える。
僅かに俯いた彼女の横顔に魅入られそうになり、なぜかそのことが悪いことのような気がして、
オフィサーグは再び目を前に向ける。

静かな、でもとても居心地の良い沈黙。
繋いだ手の中の温かさを感じながら、黙した二人は歩き続ける。

奥手で、ちぐはぐなオフィサーグとハンナ。
そんな二人なりの、どこかもどかしい逢瀬。

432七掬:2008/09/13(土) 00:09:48 ID:QKFSg0Tk0


異変は、西のバヘル橋を過ぎたあたりからだった。
先に異変に気付いたオフィサーグが、繋いだままのハンナの手を軽く引っ張る。
不思議そうな顔でオフィサーグを見上げた彼女は、
これまでと打って変わって剣呑な光を浮かべたオフィサーグの目を見て事情を察する。

さり気無く、腰に提げられた護身用の細剣に手を添えた直後。

ビンッと弓弦の弾ける音。
正確にハンナの首筋を狙って放たれた矢は、抜き放たれた彼女の細剣によって弾き返される。
オフィサーグの巌のような巨躯が駆ける。
時間差を付けて矢を放とうとしていた男達は、振りかぶられた鉄槌の前に、弓矢を捨てて距離を置く。

轟、と空気が叩き潰され、接触してすらいない地面がめくれ上がる。
襲撃者達の隠れ蓑となっていた巨木ごと空間を打ち払った鉄槌の威力に、襲撃者達は二の足を踏む。

「・・・こいつらは」
「この前警告された、『ハッカー』って連中、だと思う」

まだメンテナンスの終わっていないこの時間に、一般の冒険者達がいるはずが無い。
加えてフランデル大陸では見かけない井出達。
『ハッカー』と呼ばれる、不正に空間を超えて侵入してくる流浪の戦闘民族に間違いなかった。
彼らは侵入した世界のプログラムを壊し、混乱を招くことを生業とする暗殺者集団。

それが十人、彼らを囲むようにして武器を構えている。
脅しの意味も込めたオフィサーグの一撃に怯みはしたものの、その戦闘意欲は失われていないようだった。
多くの冒険者達が利用するオーガ巣窟の秘密ダンジョンの主を失うことは、間違いなく大きな混乱を生む。
手で触れられそうな錯覚すらする程、強烈な殺気と闘気が、包囲されている二人を包み込む。

オフィサーグが、背中を預けているハンナを気遣うようにちらりと見やった瞬間、
隙を突いた『ハッカー』達が一斉に飛びかかってくる。

オフィサーグはその動きを見切っていた。
彼らの動きを見もせずに、後ろにいたハンナを包み込むように抱きかかえると脚に力を込めて一気に飛び出す。
二人を包み込む網に、かわして突破するほどの隙は無い。
ならばとオフィサーグは敢えて正面の、曲刀を構えている『ハッカー』へと突進する。
強力に発達した脚の筋肉が、ハンナを抱えたオフィサーグの身体を加速させる。

正面の『ハッカー』は、横に曲刀を振りかざしていたが、
予想外に速いオフィサーグの動きに、斬撃の速度が追いつかない。

辛うじて刃が肩口に傷をつけるが、十分に力を込められなかった刀では、
鍛え上げられたオフィサーグの皮膚に深く食い込むことは出来ない。
浅く斬られた肩に、さらに刀が食い込むのを無視して、オフィサーグはそのまま正面の男に体当たりを喰らわす。

「が・・・っ」

オフィサーグが繰り出した超重量のタックルをもろに受けた『ハッカー』が吹き飛ばされて地面に激突する。
あっさりと包囲を抜け出したオフィサーグは、抱えていたハンナを降ろし、再び『ハッカー』達と対峙した。
敵の数は一人減っただけの二対九だったが、囲みを突破したことで形勢は大きく変わった。

無造作に、肩に刺さったままだった刀を抜くオフィサーグ。
次の瞬間、ほとんど予備動作なしにその刀が投げつけられた。
風を裂いて飛来する刀をぎりぎりでかわす『ハッカー』達。

二人は既に動いていた。
オフィサーグは左へ、ハンナは右へ。

体勢を立て直す暇を与えず、オフィサーグは目の前の集団へと横殴りに鉄槌を叩きつける。
かわし切れなかった一人が吹き飛び、木に叩きつけられて絶命する。

這いつくばって何とかかわした一人に襲い掛かる、凄まじい踵落とし。
『ハッカー』の着ていた鎧がひしゃげ、下の地面が強烈な圧力を受けて沈む。

鉄槌をバックステップでかわしていた『ハッカー』達が武器を構えて突進してくる。
前方から四人、右から二人。
右の二人が間合いに入る前に、槍を持った影が高速で両者の間に割ってはいる。

433七掬:2008/09/13(土) 00:10:33 ID:QKFSg0Tk0
敵の中央で動きを止めた影は、敵から短槍を奪い取ったハンナ。
彼女の紅の瞳が燃え、高密度の魔力が槍に注がれているのを見て取ると同時に、オフィサーグは高く上へと跳躍する。
襲撃者達はそれの意味するところを気付かない。
無防備に棒立ちしているように見えるハンナへと一斉に斬りかかる。

半眼にされていた彼女の瞳がキッと見開かれ、押さえつけていた魔力を一気に解き放つ。

「―――っ!」

気合一閃と共に振りかざされた槍に続く、相反する属性の牙。
血を凍らせるほど冷え切った魔力の渦に、『ハッカー』の動きが鈍った次の瞬間、
超高温の熱風が叩きつけられる。

魔法抵抗があるはずの特殊な衣が、余りの熱量に耐え切れずに燃え始める。
重傷を負った『ハッカー』達は空間転移による逃走を図る。
彼らの輪郭がぼやけ始め、影が薄くなる。

空間転移術を発動させてしまえば、もはやハンナ達に『ハッカー』達を捕らえることは出来ない。
空間の壁という圧倒的な隔たりが、『ハッカー』の身を保護する、筈だった。

空中へと逃れていたオフィサーグの持つ鉄槌が、眩いばかりの白い光を纏う。
古の雷神、トールの槌が如き、鮮烈な白の輝き。
人々によって『ゴッドハンド』と称される技。
しかしオフィサーグの使ったそれは、決して御神の力の賜物などではない。

限界まで高められた闘志。
形を持たないそれを武器に纏わりつかせ、攻撃力を最大まで高める、究極の極意。
むしろ武道家の烈風撃に近いものを感じさせる、純一な、激しい闘志の塊。

落下の勢いと合わせて凄まじい勢いで振りぬかれる鉄槌。
白く輝く光の闘志が、厚い次元の断層を隔てた『ハッカー』へと殺到した。

・・・・・・・


終幕


「・・・仕留めた?」
「さあ、どうだろうな」

オフィサーグの最後の攻撃のあと、槌を媒介に集まっていた光は離散した。
しかしそれでも力は失われず、今もわずかに吹きつけてきた南風に乗ってきらきらと光り輝いていた。
日の光を弾く硝子の乱舞にも見えるその光景が
徐々に薄れていくのを名残惜しげに見つめていたハンナがそっと溜息をつき、オフィサーグを振り返った。

「どうする?」
「ん?」
「洞窟に帰るか、それとも湖行っちゃう? もうあんまり時間無いと思うんだけど・・・」
「ふむ・・・」

少し思案する風をして、彼はクエスプリング湖のある方角を見つめる。
今日はメンテナンスが長引くだろうか。
最近追加された新要素関連とやらで不具合が生じているならば、延長される可能性は高い。
どちらにしても、メンテナンス終了間際には放送が入るはずだから、間に合わなければ引き返せばいいのではないか。

そこまで考えて、自分が湖に行く理由を見つけようとしていることに気付き、彼はわずかに苦い表情になる。
その表情から何を悟ったのか、励ますような微笑みを浮かべたハンナがオフィサーグの手を取る。

「ダメそうだったら引き返せばいいから・・・行こう?」

その健気な笑みに、迷いを流されたオフィサーグが軽く頷く。
降り注ぐ日が、わずかに西に逸れはじめる空の下を、二人は並んで駆け始めた。

434七掬:2008/09/13(土) 00:11:43 ID:QKFSg0Tk0

目的の湖に着いたとき、さすがのオフィサーグも少し息を切らしていた。
ハンナはといえばへたり込んで肩で息をしている。

「・・・それ、で・・・見せたい、もの・・って?」
「ん・・・ちょっとそこの、穴の近くで待っててくれ」
「穴・・・?」

あたりを見回すが、座ったままの低い姿勢のせいか、彼の言う『穴』らしきものは見当たらなかった。

「あー・・・ふむ」
「え・・・きゃっ」

口で案内するのが面倒だったのか、オフィサーグはハンナを抱えあげてその場所へ連れて行く。
疲労している彼女への心遣いのつもりで、彼としては特に他意はなかったのだが、
俗に『お姫様抱っこ』と呼ばれる抱え方をされ、ハンナは少し顔を赤らめて彼の腕の中で丸まっていた。

彼女の緊張はほんの数秒。
割れ物を扱うかのような優しい動きでゆっくりと降ろされる。
少しあたりを探せば、人間が一人入れそうなほどの大きさの孔が、水辺から離れた場所ににぽっかりと空いている。
わずかながらそこから水の音がしているのを聞く限り、どうやら湖と繋がっているようだ。

「ここで待っていてくれ。 あ、あんまり近づきすぎると危ないぞ」
「え? 危ないって・・・」

オフィサーグからは、『見せたいものがある』としか説明を受けていない彼女は、
彼が何を見せようとしているのか図りきれず、不安そうな目をしている。

そんな彼女を敢えて無視して、オフィサーグは湖の中へと入っていく。
雪解け水が流れ込んでいる湖の水はかなり冷たい。
暑さを帯び始めた西日の差す中でも、ヒトならまず凍えるであろう冷たい湖の中を、
オフィサーグは構わずずんずん進む。
やがて、水が彼の胸にまで届くほどまで進むと、彼は目を閉じて瞑想を始めた。

普段彼が秘密の巣窟内で、冒険者達相手に見せている力は、ほんの一部でしかない。
数多やってくる冒険者たちと立ち向かう為には、彼らと同等程度の力ではすぐに殺されてしまう。
冒険者達相手に、『負けたふり』をするには、
当然冒険者たちよりも圧倒的に強くなければならないのだ。

先の『ハッカー』達との戦いのときは、ある程度力を発揮していたが、それすらも全力とは言えない。
彼の真の力は、自らの意思によって封じてある。
今彼が瞑想しているのは、自ら封じた、力に至る扉の鍵を開けようとしているからだった。

一瞬の静寂の後。
ドクン、と全身が鼓動する。
目には見えない力の波動を受けて水面がざわめく。

槌を持つ右手を挙げる。
そこに込められる力の強さを確認して一つ頷くと、左手も加えて大上段に振りかぶった。
構えられた槌は、蛍火をまとって燐光を発する。
見かけは美しい装飾だが、その実とんでもない力を秘めた破壊の光。

台風の目に集まるように、風が渦を巻いてその槌へと向かい、
水面も力の流れに従って複雑な波紋を描く。
なにか物騒な気配を悟ったハンナが、佇むオフィサーグへと声をかけようとしたその時、


『ドオオオオオォォォォォ・・・・・ン!!!!!!!』


落雷のような音を立てて、オフィサーグの鉄槌が振り下ろされた。
彼の周囲にあった水が一斉に高さ十数メートルまで盛立ち、津波のような勢いで全方位に向かって流れ出す。
当然、ハンナの立つ方向にも、加速した水が迫る。

驚いて後退りしたハンナだったが、
彼女に向かって加速していた水は急激に力を失い、彼女にまで到達することは無かった。

彼女に向かうはずだった水は別の場所から姿を見せた。
オフィサーグが示した孔。そこから水柱が宙に向かって打ち出される。
打ち出された水は遠く弧を描き、彼方へと吸い込まれていく。

その孔は湖底とつながっており、湖底にはそれよりずっと大きな孔が空いている。
そこへ津波と化した水が大量に流れ込んだため、ハンナの方へと向かう水は少なくなった。
そして、先へ進むにつれ細くなっていく孔を進んでいく水は圧縮されて凄まじい勢いで宙に放たれた為だった。

空に創られた橋は、少し経つとその力を弱め、違う姿へと変わる。
宙に浮く力の無くなった水が、細かな粒子となって辺りに降り注ぎ始めた。
霧雨の様に降る水たちは、傾き始めた太陽の光と、オフィサーグの攻撃の余韻である光の欠片を浴びる。

「あ・・・・」

そして再び、橋が現れた。
先ほどの水の橋とは違う、七色に輝く、光の帯。
空中を横切って、純粋を感じさせるほど美しい光を放つ虹。
少し儚げなそれの向こうに映った空は、何故かいつもよりまっすぐで、澄んだ蒼色に見えた。

435七掬:2008/09/13(土) 00:12:21 ID:QKFSg0Tk0
「暗い洞窟の中じゃ、見れない景色だろ」
「オフィ・・・」

いつの間にかハンナの傍らに、巨大な影が佇んでいた。
少し眩しそうに目を細めながら、自らが創った虹を見つめている。
ずっと洞窟の中で暮らしているハンナへの、彼なりの粋な気遣いだったのだろう。

「・・・・うん。ありがとう」

笑ってそういったハンナの顔は、辺りできらめく水の粒子に照らされているかのように輝いて見え、
つられたオフィサーグも照れくさそうに笑みを浮かべる。

いつもなら、お互いの目が合っても、必ずどちらかが恥ずかしそうに視線を逸らす二人だったが、
今日は二人ともが、視線を逸らすタイミングを逃してしまった。

「・・・・・・」
「・・・・・・」

無言で見つめ合った二人。
やがて、オフィサーグの手がそっと、ハンナの頬に触れた。
緊張からか、ハンナは僅かに怯えるような表情を見せていたが、
それでもオフィサーグを拒絶するようなことはしなかった。
そのままゆっくりと、手が頭の後ろに回った頃には、二人の距離は既にかなり近づいていた。
ハンナがそっと潤んだ目を閉じる。
オフィサーグは慎重に、彼女の唇に自らのそれを重ねる・・・




寸前、

辺りに奇妙な雑音が響き渡った。

『・・・・・・・・間も無くメンテナンスが終了します。諸員は所定の位置で待機して下さい。繰り返します・・・』


声が聞こえた瞬間、彼らは小動物のような機敏な反応でお互いの距離を空けていた。
オフィサーグはげんなりして、何処か中空から聞こえてくる放送を聞きながら、

「・・・台無しだな」

一言、呟いた。
ぺたんと地面に座り込んだハンナも疲れたような笑いを浮かべて空を見上げている。
 微かに虹の名残が残る空を二人はしばらく眺めていたが、やがて

「帰るか」

オフィサーグが諦めたように言ってハンナを促した。

「わたし・・・なんだか疲れちゃった」
「そうだな」
「疲れて、歩きたくないなぁ・・・」
「ハンナ?」

オフィサーグが心配そうに、座ったまま立ち上がろうとしないハンナの顔を覗き込む。
その目を悪戯っ子のような笑みで見返しながら、オフィサーグに向けて両腕を差し出す。

「お姫様だっこ、して」

言いながら、自分の提案に頬を染め、言葉も尻すぼみになる。

「・・・っ」

完全に不意打ちだった。
普段ゆかしい彼女からの言葉だっただけに、オフィサーグも目を見開いて固まる。
一瞬流れた静寂の後、

「ああ」

巌のような厳しい表情ばかり浮かべていた顔が、驚くほど優しい笑顔を見せる。
そのまま、軽々とハンナの身体を抱き上げ、疲れなど知らないかのように走り出す。

これからまた、彼らは秘密の巣窟の役者とならなければならない。
恋人同士ではなく、囚われの姫と魔人にならなければならなかった。
それでも、彼らはお互い、穏やかな微笑を浮かべて巣窟へと駆ける。

黄昏に紅く染まっていた空が、闇など知らんとばかりに再び明るい蒼へと移り変わっていく。



常昼の世界の下、冒険者達の喧騒が、遠くかすかに響いてきていた。




とある木曜日の風景   fin

436七掬:2008/09/13(土) 00:18:17 ID:QKFSg0Tk0
本当にごめんなさい。下げ忘れましたorz

ほとんどの方が始めましての方になってしまっていて、
今更出てくるのもどうかと思ったのですが、一時期速さについていけなくなった
小説スレにやっと追いつけた嬉しさからつい投稿してしまいました。

なんかいろいろと残念な文章になっています。ブランクって怖い。
しかも下げ忘れてるし。本当になにやってんだ自分。

職人様方への感想は、また後日余裕があれば書き込ませていただきます。
引き続き、小説スレをお楽しみください。

437ナツル:2008/09/13(土) 22:44:31 ID:.512Jk2k0
今俺は夜空を見ている。
そんな俺の隣には一人の少女。
俺が俺じゃなくなった原因の少女。
俺が好きになった少女。
そんな彼女にあった日のことを今から話そう。

俺はいつもと同じように敵を倒していた頃だった。
ギルドの皆で雑談でもしながら頑張っていたあの日俺は彼女と合ったんだ。
彼女は俺の前を通り、下の階に急いでいた。
そんな彼女を見、俺は彼女を手伝おうと思った。
ギルドの仲間に抜けることを伝え、俺は彼女の向かったほうに向かった。
彼女は途中で敵と戦い傷を負っていた。
彼女は意識がほとんどないらしく重傷みたいだった。
「俺が今助けるからここで待ってて」
俺はそういうと彼女はびっくりした顔でこちらを向いた。
俺は敵の下に行き敵を切り殴り飛ばした。
敵を倒したらいそいで彼女のもとに戻り薬を与え回復してもらった。
「君、名前は?」
「私はテララっていいます。あなたは?」
「俺はカグロ。しがない武道家だよ。」
彼女はにっこり笑って眠った。
俺はそんな彼女を自分の家のベッドで寝かせ、自分は床で寝た。

朝、そこには元気に回復したテララの姿があった。
彼女はキッチンで俺と自分の朝食を作っていてくれた。
「あ、起きたカグロ?もうちょっと待ってね。もう少しで出来るから。」
テララは鼻歌を歌いながら朝食をつくっていた。
テララが朝食を作り終えると机の上に並べた。
「はい。できましたよ。」
「今行くよテララ。」
俺はそう言いながら席についた。
「いただきます。」
俺とテララの声が部屋に響いた。
そこからはテララと雑談を少しした。
「テララそろそろ街に行かないか?俺のおごりでよければ何か買うよ。」
俺はそう言うと彼女は目を輝かせた。
「いいの?行く行く。」
そんなテララをみているときにはもう彼女のことが好きだったんだと思う。

街にでてみるとテララはずっとキョロキョロしながら露天を見回っていた。
「どうしたテララ。珍しいか?」
「えっとね・・・私って田舎の方の出身だから。」
そう言う彼女は恥ずかしがって頬が赤く染まっている。
俺はそんなテララがとても可愛く見えた。
「ねえ、カグロあれ買ってくれない?」
そうテララが指差したものはケーキだった。
結構豪華なケーキで値段もそれ相応だったがテララのうれしそうな顔が見たくて
かなり高かったが了承してしまった。
「あぁ、いいよテララ。クッキーも買おうか?」
「いいの?ヤッター。」
テララの無邪気な顔を見ているとこのくらいならいいかとかも思ってしまう。
そんなこんなしているうちに夕暮れになってきた。
「テララ、そろそろ帰ろうか。」
そう言うとテララは少し名残惜しそうに街を見てから
「いいよ」
と、言った。
「また明日もあるよ。」
「そうだねカグロ。じゃあまた明日もこようね。」
微笑まれながら言われ
「ああまた明日こよう。」
と言ってしまう俺。
デートみたいで頬が赤くなったが夕日のおかげでばれずにすみそうだ。




すいませんが今日はこれまでで。

438◇68hJrjtY:2008/09/14(日) 05:07:50 ID:nj1vQZFI0
>七掬さん
お久しぶり、そしてほんのりあったまる「美女と野獣」的なお話ありがとうございました!
メンテ中のNPCたちを想像する事はあれど、秘密ダンジョンの、それもオフィサーグというモンスターと
ハンナという女性のラブストーリーなんて考えた事もありませんでした(ノ∀`*)
いつもは「メンテ延長」と言われるとイライラするものですが、こんな舞台裏があると思うと延長も許せる気がします(笑)
私事ながら先日オガ秘密に行ってきたのでなんだか親身になれました。しかしハッカー、怖いなぁ…(笑)
またの投稿お待ちしております♪

>ナツルさん
初めまして〜投稿ありがとうございます!
さてさて恒例の、武道キタ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(*゚∀゚*)゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*
こちらもほんのりラブストーリーですね。やっぱり武道はピンチを救うヒーローみたいな役回りがなんとなく似合います(笑)
テララの仕草のひとつひとつが愛しそうなカグロ…この平和なデート日和が毎日続けばいいなぁ(*´ -`)(´- `*)
約束を交わして別れた二人。これから二人がどうなるのか、続き楽しみにしております♪

439名無しさん:2008/09/14(日) 14:22:05 ID:cGjU7c0k0
去年もそうだったけど夏になると減速するね
もう昔みたいな賑やかさは無理だろうけどちょっとずつでも書き手さんが戻ってくれると嬉しいです

440白猫:2008/09/16(火) 22:12:17 ID:I1WQQh5o0

血の盟約。
悪魔が魔物を従える、或いは人間を惑わすとき用いる、血液を用いた儀式。
相手と一方的に契約を交わし下僕とする代償に、自らの血を捧げるという儀式。
悪魔に遭遇したら、この儀式には絶対に気をつけなければならない。
この儀式は、呪文と血液、そして魔力さえあれば瞬時に完了してしまう。
そして契約を万が一結ばれた場合、

・契約者に攻撃を加えてはならない

・契約者の身を護らねばならない

・契約者に不利となる情報を洩らしてはならない

・契約者に絶対の忠誠を誓わねばならない

この4つの、理不尽とも言える誓いを護らねばならなくなる。
悪魔は血の盟約を駆使し、遥か古代に人々を下僕として酷使した。
二度とそんな愚行を繰り返させてはならない。
この世で最も忌むべき存在である悪魔を――許してはならない。








古都ブルンネンシュティング。
東西の経済が集結する都であり、フランデル大陸内でも指折りの大都市である。
アリアンのように実力者の集う故に発展した冒険者の都とも違う、[古くから都として機能していた街]――それが、古都。
この都市へとついさっき到着した馬車から、一人の少年が顔を出した。
 「ふぅ――ついた。ブルンネシュティング」
その、まだ幼さの残る声の茶髪・碧眼の少年。少年は辺りを見回し顔を輝かせた。
両親から聞かされていたが、とにかく広い。そして、彼が見たこともない様々なもので満ち溢れていた。
少年の表情に笑う御者は、しかし心配そうに少年へと言う。
 「気ィ付けろよ。人が多いだけ治安も結構悪い。まァアリアンよかよっぽどマシだが」
 「はい。ありがとう、ウォンさん」
ウォン、と呼ばれた御者は手を振り、すぐに手綱を取って走り去っていってしまう。
それを「がんばれ」というサインだと分かっていた少年は、少しだけ頭を下げ、改めて古都の景観を眺める。
本当にこの辺りは広い――というか、人が多い。
今まで自分の村で生きてきた人生で見た人の数と同じだけは、もう見てしまっただろう。
見渡す限り人、人、人。気持ち悪いとしか形容できない。
 「えーっと……まずはどうしよう、かな」
ある程度の金銭は親から貰って――否、借りている。だが、この程度の金額は十日もすれば無くなってしまうだろう。
そこからは、本当に自分で稼がなければならない。

師匠の言葉、「乞食みたいに西口で飴拾えば生きてはいける」。

これをしばらくは実践することになりそうである。
とりあえずは師匠の言っていたその「西口」へ向かうことになりそうだ。
西口――ということは、西なのだろう。西。
 「西、西……西ってどっち? 左?」
少年は平面での左しか知らない。
お昼だから太陽なんて使えない。
しばらくゴソゴソとカバンをいじくりまわし、小さく溜息を吐いた。
 「コンパス忘れた……」
幸先の悪いスタートで、少年の冒険が始まろうとしていた。





一時間後。
 「……ここどこーっ!?」
いつの間にか真っ暗な水路に到着してしまった少年は、水路全体に響きかねない声で叫んだ。
引き返そうにも、マンホールから落ちてきてしまったために引き返しようがない。
とりあえず歩こう、と思い、ふと足元を見たところで、
固まった。

自分の足元に、黄色く美味しそうなキャンディーが落ちている。

本当に美味しそうな、子供が喜びそうなキャンディーが、ひとつ。
ラッキー、と拾おうとかがんだ少年は、途中でふと、止まった。
どうしてこんなところに、キャンディーが落ちている?
そもそも食べられるのだろうか。此処は地下水路――古都の住民たちの生活排水の流れ込んでいる場所である。
食べられる――とは思えない。食べたら腹を下すかもしれない。
が、
少年は何の躊躇もなく、そのキャンディーを拾い上げた。

   《食中毒になるかのたれ死ぬかなら――食中毒の方がいいだろ?》

師匠の言葉を思い、少年はとりあえず、とそのキャンディーを保留にする。
いざとなれば、洗って食べるか犬にあげるかすればいい。

少年はキャンディー[1]を手に入れた。
少年はちょっぴり悲しくなった。

441白猫:2008/09/16(火) 22:12:44 ID:I1WQQh5o0


 「あれー? キャンディー落としちゃったかも」
 「ん、どした?」
ゴソゴソとベルトのポケットに手を突っ込む少女に、少年が首を傾げる。
しばらくポケットを引っ張り回していた少女は、しかし諦めて手をポケットから抜いた。
 「キャンディー落としちゃった……折角ペットにあげようと思ったのに」
 「ああ……ペット用キャンディーだっけ? あれくらい新しいの買ってやるって」
 「ホント? ホントだよ?」
 「はいはい」
そんな会話を交わしながら、少年と少女は古都の喧騒の中に消えていった。






所変わって、地下水路。

 「わ、わわ、わ――――――ッッ!!!!」
凄まじい量の野良犬に追われ、少年は叫びながら地下水路中を駆け巡っていた。
ビスルで暮らしていたときから魔物に懐かれるタチではあった。だがまさか野良犬の群れに追いかけられるとは。
サマナーらしからぬその光景に剣士がポカンとそれを眺めているが、必死な少年はそんなものを見る余裕はない。
召喚獣の一体でも召喚出来ればなんとかなるのだろうが、生憎と少年は"出来そこない"のサマナーだった。
今まで召喚どころか、テイムの一つも成功したことが無い。
だが今は四の五の言っている場合ではない。なんとかひねり出さなければ。

 「火の精霊よ。総てを焼き払う獄炎の使いよ、我が声に応え、我が求めに応えよ――ケルビー!!」

・ ・ ・ 。


 「やっぱり無理かーッ!?」
詠唱は完璧。魔力の使い方も、式の組み立ても全て完璧のはず。
しかしやはり、発動しない。
やり方に問題がないのなら……才能の問題、なのだろうか。
自分にはサマナーの才能がないのか? ――いや、そんなことはない、と思いたい。
血だけを見れば彼は指折りのサマナー。のはずである。現に両親は、ビスルの村を護り続けた[守人]。実力はビスルでもトップクラスである。
なのに彼は。たったの一匹……小妖精の一匹ですら、召喚できたことがない。
そして今も。この、色んな意味でヤバい状況においてもやはり、召喚獣を卸すことができない。
 (何が足りないんだ、何がー!?)
と、少年が走る前方に。
 「げっ」
と少年が唸ってしまうほど大量の「コボルト」が屯っていた。
優に5体を超える群。一匹一匹相手ならば笛による音色で幻惑し、倒すこともできるだろうが如何せん数が多い。
前にコボルト、後ろに野良犬。
行くも帰るも地獄である。残る選択肢は――いや、無理だ。
自分の未熟な体術では絶対に切り抜けられない。相手は弱くとも魔物である。
それに、両親の血を継いだ純粋なサマナーが体術なんてできるわけが――

そこまで考え、少年はふと思う。
 (……血?)
血。
自分の血は、間違いなくサマナーの血。それは間違いない。
ならばどうして召喚を使えない? それは、もしかして必要なものを満たしていないからではないのか?
少年はここにきて、昔読んだ書物に記されていた儀式を思い出した。
 「――火の聖霊よ、総てを焼き払う豪炎の使いよ。我が血の元に盟約を結べ。我が求めに応え――我の前に馳せ参ぜよ」
書物に記されていた儀式。それに倣い、少しだけ呪文を変える。
腕の皮を歯で強引に裂き、洩れる血を少しだけ、ほんの少しだけ、捧げる。
この間、最初の詠唱が失敗してから、僅か十数秒。
土壇場になって、ようやく彼の記憶のピースが繋がった。

一週間前ならば、絶対にこんな"痛い"マネはしなかっただろう。
彼はまだ、手を一度も汚したことのないただの少年なのだから。
だがようやく、彼は気付いた。
自分の持てる力の大きさは、恐らく並ではない。両親にも匹敵する――あるいは、それ以上のもの。
だが、だからこそ。自然と共感するだけでは、足りなかったのだ。
もっと深く。もっと強く、自然と結び付く。故に彼は使った。
[血の盟約]――通常は悪魔が下等魔物に対して結ぶ盟約を、"自然に対して"。

呪文を唱えた瞬間、彼は体全体が燃え上がるような感覚に陥った。
まるで全身を流れる血が突如燃え滾った様な、沸騰してしまった様な。
初めての感覚に、少年は興奮ではち切れそうになっていた。
今まで学友たちは、こんな感覚の中にいたのか。こんな、これほど"素晴らしい"感覚の中に。

そして、凄まじい熱量を辺りに撒き散らしながら、

"それ"は、舞い降りた。

442白猫:2008/09/16(火) 22:13:13 ID:I1WQQh5o0


 「…………ぇ」
目の前に召喚された"それ"を見、少年は瞠目した。
有り得ない。
どうして、"こんなもの"が召喚されたのだ。
今まで少年が見てきた――否、歴代のサマナーたちが見てきた召喚獣は。
そう、[獣]の形をしていたはずなのに。
それなのに、目の前に舞い降りた"一人"の召喚獣は。


燃え上がるような赤い髪を靡かせ、

小柄な身体の全身に、はち切れそうな力を漲らせ、

どう見ても書物上の悪魔にしか見えない翼と尻尾を持ち、

つり上がった自信たっぷりな金色の瞳で、少年を見ていた。


 「あんたが、私を召喚したのね――マスター」
 「……召、喚?」
野良犬たちやコボルトは、突如現れた謎の少女に困惑していた。
困惑し、しかし一歩も動くことができなかった。
無理もないだろう。目の前の少女は全身を炎で包み、その熱で辺りは凄まじい熱風が吹き荒れていたのだから。
並の魔物では指一本動かせない。それほど彼女が巻き起こした熱風には力があった。
少年はだが熱風の嵐の中、完全な無風状態の中にあった。
少女を中心として渦巻く熱風の嵐は、どういうわけか少年だけを"避けて"吹き荒れていたのだ。
 「[血の盟約]を交わして私を冥界から引っ張り出せるなんて……とんだ当たりクジを引いたみたいね、私」
 「……え? えっ?」
冥界? 当たりクジ? ていうかそもそも君誰?
全く状況を掴めていない様子の少年を見、ようやく少女は疑問符を浮かべた。
 (あれ? ガキンチョ? 4000年くらい前からずっと塞がれてた冥界への入口開けたのがガキ? マジでっ!?)
ひょっとして実体化の場所を誤ったのか? いや、それはない。
現に、彼女の熱風は少年を襲ってはいない。「召喚獣は召喚者を攻撃することはできない」という盟約が成立している証である。
もしかして――ほんとうに、ほんとうにこの少年が、召喚したのか? この[煉獄悪魔]を?
冥界でも自分と対等に戦えた悪魔など、あの忌々しい三人の小娘だけだったというのに。
 (……まぁ、召喚されたものは仕様がないし)
今頃冥界では大騒ぎになっているだろう。何しろ、自分が護っていた大釜の火が消えたわけだし。
いざとなったらほかの悪魔があの炎もなんとかできるだろう。今は冥界のことを気にする必要はない。
 「ねぇ、あんた」
 「ふぇっ?」
今さっきまで思考をフル回転させ少女の正体を探っていた少年は、突如話しかけられ声が裏返る。
この一挙手一投足に溜息を吐きたくなる少女は、しかし彼がマスターなのだからと心を静めた。
 「一応名乗っておくわ。私はベガル。あんたが呼ぼうとしてたケルビーの上の上の上のずーーーっと上の位である炎の魔人よ。まぁみんなケルビーの上だからケルって呼ぶけど」
 「……え、と」
 「ほら、マスター。あんたも名乗りなさいよ。この私が名乗るなんて数百年ぶりのことなのよ?」
少女――ケルの言葉に何か言おうとした少年は、しかしケルに一蹴され頭を掻いた。
とりあえず自分が彼女を召喚したことは間違いないらしい。彼女が自分を「マスター」と呼んでいるから、という根拠でしかないが。
だが相手が名乗ってきたのだから、こちらも名乗るべきだろう。悪魔にしか見えない容姿と数百年ぶり、という言葉はとりあえず隅へ寄せておく。
 「僕は――フェレス。ビスル出身のサマナーだ」





その、半年後。
四人の悪魔を引き連れた一人のサマナーの武勇伝は、古都のちょっとした話題となった。








---
どうも、白猫です。久々(?)の投稿となりました。
ハロウィンのイベントまでダンマリを決め込もうと思っていましたが、過疎を感じてきたので燃料投下になればと。
今回はちょっと短いお話になっています。もしかすると連載ものになるかもしれません。
悪魔を召喚しちゃった元ダメサマナーと召喚されちゃった冥界出身悪魔。
本当は鳥とか魚とか土竜とか書きたかったです。しかしそれをやるともう完全に連載になるわけで(ry
勘のいい人だと気づくかもしれませんが、一度目の召喚の前後で書き方がすこしだけ違います。
399さんがなかなか興味深いアドバイスを下さってので、微妙に書き方を変えてみました。たぶん気づいた方はいないでしょう。
それでは再度沈ませていただきます。
白猫の提供でお送りしました。

443◇68hJrjtY:2008/09/17(水) 17:20:22 ID:nddKm6kw0
>白猫さん
おぉ、白猫さんが投下してくれてた(*´д`*)
これは、うーむ、短編で終わらせるのが勿体無いような物語。
サマナーやテイマは少女での描写が多い現在、少年という描写は面白いものを感じました。
それというのもこの「煉獄悪魔」の少女との対比を意識されての事でしょうか。ともかくも名コンビ風味。
フェレス君がサマナーとしての力を血によって解放した時の心境が緻密に書かれていて思わずわくわく。
長編化の際には他の悪魔三人や「あの忌々しい小娘三人」の背景なんかも楽しみにしてます(笑)

444名無しさん:2008/09/17(水) 19:11:55 ID:OnMpHZjE0
クソスレage(笑)

445防災頭巾★:削除
削除

446ナツル:2008/09/17(水) 21:34:59 ID:l/zuISVA0
俺は昨日テララと約束した噴水にいる。
30分も前に来たのだがそこにはテララがいた。
「テララ早いな。」
「ちょっとドキドキして…」
そんなテララの言葉に俺の心臓は破裂寸前だ。
「じゃ、じゃあそろそろ行こうか。」
そう言って俺はテララの方を見ずに先に歩き出す。
テララは後ろから慌てて追ってくる。
「もうっ!行くならもっとゆっくり行ってよ。」
テララは頬を膨らませ怖い顔をしようとするが怖さはなく、可愛さがいっぱいだ。
そんな俺たちは昨日と同じように色々な店に行ったり、買い物をしたりして楽しんでいた。
「ねえカグロそろそろお昼だよね。もしよかったら家に来ない?
 私の手料理でよかったらご馳走するよ。昨日のお礼だと思って。」
「テララの作った料理なら何でも食べるよ。」
俺はテララの料理が食べれると思い気が付いた時にはそんなことを言っていた。
俺はパニックになりあたふたするが、テララは笑っていた。
「美味しいから期待してね。」
ウインクをしながら言ってくるテララに俺は見惚れて、思考が停止してしまった。
「カグロ、行こう。」
テララはそう何回も言っていたらしいが俺はポーっとしているだけだった。
その後テララの部屋に着くまでずっとポーッとしていて、
テララが俺と手をつないだらしいが全く感触が思い出せなかった。

俺が気づいたら俺は部屋に入っていて料理をしているテララを見ていた。
料理を食べている最中に
「カグロがボーってしてるからつれてくるの大変だったんだからね。」
と冗談めかして言ってくれるが俺にはそのときの記憶がない。
そのほかにも手をつないだこととかその間の俺のことを言ってくるが
全く身に覚えのないものしかなく、そんなことがあったのにと思うやつが出てくる。
俺は次は覚えてようと心に誓った。
そんな感じでテララの手料理を食べ終えた。
その後俺たちはサーカス団が街のはずれに来ているらしくそこに行くことにした。

俺はテララと自分の分を払いテントの中に入る。
「カグロこれからどんなことするんだろうね。」
目を輝かせながらそう言うテララはまだ始まってないのにテンションが高い。
そんなテララを俺はサーカスが始まるまで飽きもなく見ていた。
そしたら奥からハゲのピエロがでてきた。
「レディース&ジェントルメンそれに子供たち。今から楽しいサーカスの時間だよ。
 今日の注目はナイフ投げに宙に浮く物体、人が消える――――」
など長いピエロの司会が終りいろいろな出し物が行われた。
テララはその一つ一つに歓声をあげ、俺はサーカスの出し物そっちのけでテララを見ていた。
そうしていたらナイフ投げのパートナーが客から選ばれるらしかった。
テララは手を振り上げ背伸びまでしている。
そうしたらテララが選ばれ、ナイフの的の中に置かれた。
俺はびっくりして声を上げたらピエロが
「お客様には絶対あてませんので見ていてください。」
と、俺や俺と同じ事をしている人に向けて言った。
俺は祈る思いで手を合わせテララを見ていたが近くにナイフは刺さるが
テララには一回も刺さらなかった。
俺は全身の力を抜いて大きい溜息をついた。
そうしていたらテララが戻ってきた。
「カグロ、どうだった。私は怖かったけど楽しかったよ。」
「俺は怖くて楽しむところじゃなかったよ。」
俺はそう返し、今度はテララと一緒に出し物をみていた。

帰り道、テララとさっきのサーカスの話をしながらテララを部屋まで送った。
今日も昨日と同じように約束して別れる時にお休みと言って自分の部屋に向かって歩き出した。





ずいぶん待たせてすいませんでした。
俺のところはPCは共有なので時間の都合が付かないことがあるんです。
そんなテララとカグロの物語はまだ続きますので見守っていてくれたらうれしいです。
次はもっと早く出せるようにします。

447◇68hJrjtY:2008/09/20(土) 19:13:27 ID:ObAysfG20
>ナツルさん
ほんのりまったりラブストーリーの続き。ありがとうございます。
RS世界は確かに戦闘や狩りが背景として多いですが、その裏にこういうラブストーリーがあると思うとうれしいですね。
カグロ君はまったく周囲が見えてないほどテララに一目ぼれしちゃいましたが、うーん、どうなる(笑)
暖かく見守りたい、そんなお話ですね。続きお待ちしています。

448ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/09/22(月) 16:14:44 ID:OhTl4zsk0
>>314からの続きです〜

Episode 09:煉獄の王者〜炎帝、怒る〜

トラン森のとある場所、ミカエルは突如年齢が逆行し幼児化してしまった、妹のミリアを抱いていた。
ミリアは親指を口にくわえてしゃぶり、「うみゅぅ〜・・・」と愚図るような声を出す・・・・・・
そんな小さな彼女を兄は強く、しかし聖母のように優しく抱き上げている。時折腕を震わせてミリアをあやしたりもしている。
ミリアのペットでもあるファミリアEXのファミィも一緒に彼女の様子を見守っている。

「ふぅ、よ〜しよしよし。兄ちゃんが付いてるからなっ、お前は絶対・・・・・・俺が守ってやるからな。」「ふみゅっ、やぅ〜♪」
兄の言葉が伝わったのか、とびっきりの笑顔と甘くキュートな声で彼女は応えた。ミカエルもそれを見て微笑んでいる。
木漏れ日が包み込むように差し込んでくる・・・・・・兄と妹だけの時間が過ぎているように思えるが、その場を何かがフッと横切る。

ドゴォオォォォオォンっ!!!バキバキッ、ガララっ・・・・・・ガシャァン!!!

影が一瞬見えたかと思うと、その次の瞬間には爆発と衝撃音、そして木々の折れる音が二人の背後に響き渡る・・・!!!
「うにゃぁっ!!?!ふぇ、ふゃや・・・ふやぁあぁぁああぁぁああぁぁんっ!!?!」突然の事態にミリアが驚き、泣き出した。
「おっとと、よしよ〜し・・・っ、一体何なんでェ?姉貴め、さっきシカトした報復に爆弾テロってか?いっぺんガチで対決し・・・ん!?」
ミリアをあやしながら爆発が起きた場所へと歩み寄るミカエル。だが、煙の晴れた場所で彼はある人物を発見した・・・・・・!!
褐色の肌に銀色の長いポニーテール、そして露出度の高い民族衣装に希少な槍『ホースキラー』を握った女性が倒れていた。
「あぃたたたたぁ〜・・・あ〜、ちと遊びすぎたかな〜こりゃ?あのオッサン無茶苦茶に強えわ・・・このアタシとしたことが。」
ブツクサと何かを呟きながら起き上がる彼女、しかしすぐ側にいるミカエルに気が付くと、立ち上がってお互い声を挙げた。
「うっそ、ミカっち!?」「げっ、ティエラぁ!!?!」

『おめぇ(アンタ)何してるんだよ(のよォ)!!?!』

「いや、こっちはちょいとな?妹がいきなり子供に戻っちまってよ〜・・・・・・」いかにも困った表情で、頭をボリボリとミカエルが言う。
「ありゃま、この娘が妹のミリアちゃん?何か変なモンでも食べさせられたんだねぇ〜・・・まァ、アタシの方は何でここにいるかと言うと」
腕を組んで説明しようとする彼女の前に現われたのは・・・薙刀状の巨大な槍を持った、これまた巨漢で髭を長く伸ばした豪傑の様な親父。
そんなあからさまに普通とは言い切れないような男が、3人と1匹の前で仁王立ちしていた・・・・・・!!!
「アタシはこのオッサンtheジャイアントに『たった一突き』でここまで吹き飛ばされたんだよ。こいつ、生半可な力じゃ倒せない!!」
「フン、ティエラとか名乗っていたな小娘・・・噂に聞く大陸十三大冒険者もこのザマとは!!むはははは・・・・・・笑止、片腹痛いわァ!!!」
獅子の咆哮のような雄叫びを挙げて、男はその場に振動が起こるほどのパワーで、槍の石突を力強く地面に叩き付けた。
だがその一方、ミカエルの表情が変化した・・・・・・自身がそれでもある『大陸十三大冒険者』の肩書きを男はあしらったのだ。
それが許せず、彼は怒りの相を顕わに眉間にしわを寄せ、ミリアをティエラに預けると男の下へと歩み寄った・・・・・・
「おぅコラ・・・テメェ今『大陸十三大冒険者』が何だって?もう一辺言ってみろや・・・・・・!?」ドスの効いた鋭い声で胸倉を掴む。
「何だ貴様ァ?まさかお前のような若造がその一人とでも?フンっ、つくづくこの大陸の者の軟弱そうな体裁には笑わせられる!!」
普通の者なら小便ちびって跪きそうなミカエルの啖呵を、男は吼える犬を見るような目と共に鼻で笑う・・・刺々しい雰囲気が漂っていた。

449ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/09/22(月) 17:35:02 ID:OhTl4zsk0
文才がゼロとか言われても、無けりゃ無いで伸ばせばいいじゃないの。お久しぶりですDIWALIです。
レス返し、やっちゃうぞコノヤロー!!!

>68hさん
まとめwikiの設立感謝andお疲れ様です〜。
こうやって作者ごとの作品が見やすくなるのはとてもありがたい限りです。
自身の作品もストーリーの世界はそのままに、大幅にリニューアルして第一話から掲載していきたいですね〜
週刊誌みたいなノリでおいしく切りながらやっていきたいと思います^^;

>黒頭巾さん
ミカエルに萌えちゃったんですかwwまぁ男性キャラにも好印象与えられるキャラがいればいいかもな〜と思って^^;
ちなみにミカエル君はチャットでお話したとおりに甘党です、チョコとか好物なんです。ハイw
またキャラ同士でコラボ小説やってみたいですねぇ〜

>白猫さん
どうやらミリアとフィナの姉妹がお好きなようですねぇw
でもハードルなんて上げすぎたらオレ、ここにいられなくなっちゃいますよ;;
フィナーアのお色気サービスはR-15以上R-18未満で行かせてもらいます。
これからもフィナ嬢のエロデレぶりにこうご期待(待てやコラ

>スメスメさん
前回は萌えテイストでしたが、次回は文字通りに『熱い』バトルが楽しめるかもです。
どの作品でも炎を使う戦闘シーンは迫力があるので、それらに負けないように頑張りたい!!

>国道さん
フフフ・・・隙あらばパロディを混ぜ込んでキャラを立たせるのがオレのやり方なのです☆
おかげで文章やストーリーの流れはしっちゃかめっちゃか支離滅裂のヘタレ作品になってますけど;;
引き続き見守って頂ければこれ幸いですv

450◇68hJrjtY:2008/09/24(水) 17:18:08 ID:75zsJGa.0
>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
お久しぶりです♪続きお待ちしてましたよ!
幼児化ミリアをゆっくりしっかり堪能しようとした矢先に飛び出したラティナ&燈道。
雰囲気的には戦いは免れないといったところですね…決着はどうなるのか( ̄ー ̄;
しかしなるほど、ミカエルが居たからこそミリアはエロエロにならずに成長できたんですねぇ(笑)
つくづく三人姉弟がまだ小さい頃のミカエルの苦労が偲ばれます。がんばれお兄ちゃん(*´д`*)
燈道vsミカエルと相成るのか、続きお待ちしてます。


私事ながらPCがぶっ壊れましてリカバリかけました(;´Д`A ```
いつか投稿しようしようとか言いながらずっとそのままだった小説、SSなんかもあぼーんしましたorz
ま、まあ、小説UPの夢がついえた今、感想屋として今後よりいっそう感想書いていくつもりです。
何卒よろしくお願いします <(_ _)>

451◇68hJrjtY:2008/09/26(金) 17:56:24 ID:75zsJGa.0
レスを無駄に消費しつつ訂正orz
ラティナ→ティエラ で脳内変換のほどを。申し訳ない、ESCADAさん,,,(つω・`)。o.゚。

452ワイト:2008/10/01(水) 23:01:58 ID:z7TV/gK20
前RS小説6冊目>>895⇒6冊目>>901⇒6冊目>>975⇒今7冊目>>426⇒続編

真相を知り得ないまま、ラータの意識は薄れ、視界は暗転し、間も無く身体ごと崩れ落ち…て?

             キイイイィィイインッ―――――――――!!!!

「(俺は、このまま死ぬのか?嫌だ…!ま、だ!死ぬ訳には…逝かない…!っぁぁあああ!!!!)」
以前の頭痛とは比較にならない程の苦痛に伴う著しい変化。心の奥底に鎮めた、微弱な邪心が覚醒する予兆―――!


「あぁぁああああぁ!!!っ!ぁぁぁああああああああぁぁ!!!!」
耳を閉じなければ、鼓膜ごと耳の中を貫通しそうな雄叫びを前に、主人は反射的に耳を覆う。


「あぐ、ぐくっ!何で!大声張り上げちゃってるのよ!!!五月蠅い以前に、貴方狂ってるわ!!」
「ヒャヒャッ!ハヒャハッハハハハッッ!!!おっといけねぇ…!
様子は窺ってたぜぇ?んで、てめぇは相当な強者と見受けたけどよ!
いやぁ…俺を楽しませてくれるか、否か――――?論点は其処なんだよ。」

「貴方は既に致命傷なのよねぇ…?だから、勝負以前に勝敗は決してるわ。」
「あ?あぁ…この傷ね?そうだなぁ、よぉし再戦の前に、この分のハンデやるよ。」
「ハンデねぇ…その傷を負ったまま戦うの?なら、私は手以外使わないわ。」

「てめぇの、苦痛に歪んだ表情を見るまでは、俺はぁ攻撃の手を緩めないぜぇ?
後悔しても遅いってのはぁ…お互いのハンデに共通してるかもしれねぇよなぁ?」
「あらあら、私を挑発してるのかしら?後悔して、許しを乞う貴方を見るのも一興ね!」
「言ってくれるじゃねぇか…!上等!!即効、チェックメイトだ!!!」

グッ!グググッッ!!!身体全体に力を注ぐ。同時に脚力に長ける足を活かし…!
ググッ…!ダンッッ!!この一瞬に全身全霊の力を込め、主人の傍を駆け抜ける!!!

ヒュンッ!駆け抜けたのは、ほんの一瞬。主人は捕捉出来無いまま、その姿を目前に呆けていた。
ハッ!気配を察知し、後ろを振り返ると、ラータは得物を懐に収めている…!更に主人を監視するかの様に凝視している。

「え…?な、何よ!勝負は、まだ終わってないわ!!構え直して!私を舐めないで!!」
「いや?舐めてねぇぞ?俺は、終わってねぇけど、てめぇは…、試しに動いてみな。」
「わ、私を脅してるの?な、何かあるのかしら?いいわよ!敢えて、踏み込んで上げるわ!」

              カチッ…!ヒュウウウゥゥン―――!!

「(成程ね!あの間に地雷――!罠を仕掛けたって言うのね…!耐えてやるわ!!)」

             ズッ!オッッ!!ドッゴオオオォォン!!!!
                 シュウウウゥゥ―――!

「(あぁあっ、く!た、耐えて見せたわよ…!こ、この程度の罠じゃ私は倒れな、い!!?)」
「ヒャハッ!ハハハッ!確かにそうだろうよぉ?この間際!いつも相手を仕留め損なってる…!
しかぁし!俺は攻撃の手を緩めない!!戦る前に忠告はしたけどなぁ…!?もう遅せぇ!!!」

                   「死にな。」

未だ黒煙の舞う中、発端の引鉄の大爆発は、主人の行動を制限するのに十分な成果を上げているのだ。
頭を!手足を!身体を!行動に移る猶予は無い。振り返ると、焼かれた腕の痛みは未だ続いている。

ガシィイッ!主人は、ラータの振り上げ、打ち下ろすその動作を見上げ、ほぼ無意識に首元に掌を向け、得物を受け止める―

453ワイト:2008/10/01(水) 23:18:39 ID:z7TV/gK20
約1ヵ月、久し振りに続編を今し方、書き込み致しました。
最近では、続編を考える時間は乏しく、限りある時間の確保難しい。
…多忙な生活に嫌気を刺し始めるorzすいません、愚痴でした。
次回の続編は何時になるやも知れませんので、ご了承ください。

454◇68hJrjtY:2008/10/04(土) 03:08:51 ID:PHOBf6zE0
>ワイトさん
恐ろしい展開になってしまいましたね((((;゚Д゚))))
前々からワイトさんの狂気系、不良系の描写は並々ならぬものがあるとは思っていましたが、まさかラータが。
ラータの豹変と同時に勝機も見えてきたのは良いのですが…主人も一筋縄ではいかず。
ラータが本気の時に見せる(?)罠すら耐えた主人、一騎打ちの勝敗はいかに。
時間のある時にゆっくりとで構いません、続きお待ちしています。

455ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/10/06(月) 17:25:50 ID:OhTl4zsk0
Skit:一球入魂〜鬼と霊長類は牙を研ぐ〜

フランデル大陸の北東部・・・灰色の大地が延々と続くその場所には濁った水が流れる。
ハンヒ山脈はドレム河エリア。勾配のきついその複雑な地形は、冒険者たちのスタミナを奪い
まばらに生息しているオーガの群れ達が追い討ちをかけるように襲い掛かる過酷な地でもある。
そんな荒れたエリアのとあるくぼ地・・・数人のオーガと、複数の獅子のような謎の生物が何かをやっていた。

「お〜し、そんじゃ今度は球速150km/h投げてくれや〜!!」一人の鉄製のキャップを被ったオーガが、向こうの生物に声を掛ける。
彼の後ろにはこれまた獅子のようなゴリラのような謎の生物が、何かを待ち構えるようにどっしりと構えを取っていた・・・
「ウンバボ〜!!(訳:じゃぁスゴいのいっちゃうお☆)」オーガから数メートル離れた側の生き物が、雄叫びと共に何かを放り投げた。
・・・石だ。いや、むしろ丸く研磨された『岩石』を投げたというのが正しいのか、とにかくそれはものすごい速度で回転しながら
棍棒を手に身を捻るオーガへと向かっていく。岩石が近づいてくる・・・その次の瞬間、オーガが棍棒を振り回して岩石にヒットさせた。

ボゴォオォォオォォン!!!

・・・と豪快な爆発音、そして爆炎がオーガの周りを包む。だが煙の中から岩石が勢い良く跳ね返って来た・・・!!
「ダッシャぁ―――――――ッ!!!!!」と野太い声と共に、岩石は投げられたままの勢いで天高く上昇していく。
岩を投げた生物の遥か後方にも同じ生物が待機していたが、自分の上空に岩が接近すると・・・ジャンプした。
「バンボボ〜!!!(訳:よっしゃ、キャッチしちゃうお(`・ω・)b)」これまた雄叫びと同時に岩石を綺麗にキャッチ。
ズシンと重い音を響かせて着地すると、さっき最初に投げた生物と同様に、剛速球で岩を投げた!!!
その先にいるのは一人のオーガ。「オーライ、オーラ〜イ!!」と両手を広げている・・・まさかあれを素手で?
だがその不安もオーガの圧倒的なパワーの前では必要ないのだ、またも接触と同時に爆発するも当人は焦げただけ。
「ゲホッ・・・おぉ〜、いい球ぁ投げるじゃねぇかパンドド!!4日後の試合が楽しみだな〜!!!」
「ボ!!(訳:いやホント楽しみだよね。このスポーツさ、ヤキューっていうの?めっちゃ楽しいんだけど[以下略])」
手を振りながらのオーガに、たった一文字で応える獅子ゴリラ。一体彼らは何をしているのか・・・・

「おう野郎共!!バナナ片手にミーテすっぞ、ミーテ!!」「う〜っす!」「ボボバンボボ!!(訳:バナナ?好物ですが何か?)」
一人のリーダー格と思わしきオーガが、野太い声で仲間や謎の獅子ゴリラ、もといホワイトゴルゴたちを集める。
バナナをほお張りながら一行は談笑し合い、皮をむいてないバナナを片手に三三七拍子。そして叫んだ・・・

『エルフ共を今度こそブチのめすっ!!!いくぞオーガゴルゴ連合!!!』『ボンババンボ〜!!(訳:バナナおかわりw)』
オーガとホワイトゴルゴ、両雄の雄叫びが荒地に木霊する・・・・・・

ミリアやミカエル達がおつかいを頼まれたその2日前のことだった。そして今・・・オーガ達はエルフの暮らす森へと向かいつつあった。

to be continued...

456ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/10/06(月) 17:28:29 ID:OhTl4zsk0
あとがき

ちょっと続きを構想中なので、ここでスキットを入れてみたりw
ミリアやトレスヴァントとラティナの騒動が終わったら・・・・何かが発声するかもしれませぬ。
オレのことなので十中八九アホ丸出しのドタバタ劇になる可能性大でしょうけれども^^;
ついでに新モンスターの一種、ホワイトゴルゴzinも出しちゃいました、ではでは!!;

457七掬 ◆ar5t6.213M:2008/10/07(火) 18:51:11 ID:1mcTHbgM0

◇―― リレー企画 ――――――――――――――――――Red stone novel[1/5P]

 ―――もし、私が世界を恐れなければ、運命は変えられたのだろうか。

バフォメットと闘う、少年と少女を見つめながら思う。

気付いていた。
途方もない時間をかけて塞いだ傷が、ルフィエと呼ばれていた少女の唄を聞いた時から再び痛み出している。

 ―――もし、私が運命を恐れなければ、

ネルと呼ばれた少年が放った、避け様のない立体的な剣のドーム。
その中で切り刻まれ、ズタぼろにされるバフォメットは、
逃れられない運命の剣に串刺しにされ、もがきながら堕ちて行ったかつての自分なのか。

耳障りな音を立てて、バフォメットの巨大な鎌が、地面を滑る。
その鎌の主であったバフォメットも、四肢の力を失い、血を噴出しながら倒れていく。

「倒した? ネルくん」
「ええ。もう大丈夫ですよ」

軽く乱れた呼吸を整えながら、少年が少女に微笑む。
そのまま、負傷者の看護に向かおうと、二人が振り返った瞬間、
空間に、僅かな歪みが生まれ、

(―――あ、)

蘇生したバフォメットが、二人に斬りかかっていた。

神速の横薙ぎ。
常識ではあり得ないバフォメットの蘇生。
常人なら気付く間も無く、その一撃で身体を真っ二つにされる。
それを、

「ッ!!!」

二人は辛うじてかわしていた。

だが、それでも初撃のみ。
無理な体勢では二撃目は避けられない。

「ルフィエ・・・!!」

少年が少女を庇おうと身を投げる。
二人目掛けて繰り出されたバフォメットの鎌は、

「・・・・・・ふっ」

そのまま、空を薙いでいた。

458七掬 ◆ar5t6.213M:2008/10/07(火) 18:51:51 ID:1mcTHbgM0
◇―― リレー企画 ――――――――――――――――――Red stone novel[2/5P]

「・・・え? え、あれ?」
「なんですか、これ・・・」

困惑する二人を地面に下ろす。
少女はともかく、少年の方は子猫の様に抱えられた事が微妙に不満だったらしい。
もっとも、今はそんなことを言っている場合でないことぐらい、彼も承知しているだろうが。

・・・バフォメットの鎌が振り降りる前に、二人を引っ掴んで、そのまま離脱した。
ただそれだけの行為が、どれほど異常なことか。
事前に準備しておかなければ、ルフィエの全力支援を受けたネルでも叶わない。

 つまり、この女性は
 まるでこうなることが分かっていたかのように動いたのだ。

奇妙な話だが、今はそれを問いただしている場合ではない。
突然の離脱に目標を見失ったバフォメットは、当たり構わずの破壊活動を始めている。
その一撃は、今までよりずっと重く、そして速い。
何らかの支援が掛かって、身体能力が格段に向上しているようだった。
だが生憎、術者の姿が見えない。
感知できないほど遠くからの支援なのか、あるいはバフォメット自身の魔術なのか。
いずれにせよ、彼らは非常に強力になったバフォメットと対峙しなければならない。

「・・・三人唱を使えば、倒せる、かな」
「ですがルフィエ、それは・・・」
「でも、このままじゃ街が壊れちゃう。せっかく、復興したのに」

禁じ手、なのだろうか。
少年と少女の葛藤。僅かなそれを乗り越え、二人が腹を決めたとき、

「・・・奥の手を出すのは、もう少し後でもいいんじゃない?」

あさっての空を見つめながら、プリナスが声をかける。
二人が、怪訝そうな顔で彼女を見る中、
彼女が見つめていた空から、バフォメット目掛けて無数の矢が降り注いできた。

十人以上の射手から成る矢の大群は、ほとんどが魔法矢で構成されている。
着弾と共に傷痍。ところ構わず辺りを焼き払いながら、バフォメットに襲い掛かる。

続けて、次弾。間をおかずに放たれた魔法矢は氷。
先ほどの攻撃で蒸発した全てを、一気に凍りつかせていく。
その中を、

「っだあああぁぁぁぁぁ!!!」

二羽の鷹が舞う。
実体を持った残像と共に、槍と薙刀が一撃の下にバフォメットの首を狙うが、

「――バオオォォォオオオ・・・・!!!」

一声の咆哮と共に、力任せに振られた鎌が、二人を弾き飛ばしていた。
何故か鎧を身に着けていない二人は高々と宙を舞い、上手く衝撃を受け流しながら、破壊された地面に着地した。

「さすが。魔法抵抗の高いバフォメット相手じゃ、アマゾネスの魔弓兵も形無しって訳」
「物理矢に切り替えて! 弾幕で一気に仕留めるわよ!!」

檄を飛ばす二人の傭兵。
太陽光を受けて白々と輝く銀の髪の女性と、独特の形状が目を引く薙刀使いの少女。

「成る程、あれがアマゾネスですか」

少年が目を細めながら呟く。

「・・・確かに強そうな連中ですが、恐らくそれでも足りない。
 ルフィエの唄で彼女たちと僕を強化してようやくってところですか。行きますよ、ルフィエ」
「あ、うん」

少年に促され、少女も走り出す。その時に、

「せっかく、復興したのに」

焼き払われた一帯を見て、拗ねたように小さく呟いていた。

459七掬 ◆ar5t6.213M:2008/10/07(火) 18:52:33 ID:1mcTHbgM0
◇―― リレー企画 ――――――――――――――――――Red stone novel[3/5P]

ザクリ、と。
音がしそうな程の勢いを付けて、ラティナの青龍偃月刀がバフォメットの首に食らいつく。
一瞬の静寂の後、強大な力を誇っていたバフォメットが絶命し、倒れこんでいった。

戦いは、あっけなく幕を引いた。
いかに強化されたバフォメットと言えども、
十人を超える歴戦の戦士たちに囲まれては倒れるのは時間の問題と言えた。

一同が戦いを終えた脱力感を感じた時、

(・・・・・また)

再び、空間が捻れバフォメットが蘇生する。

「ゴアアアアァァァァァアアァァァアア!!!!」

猛る声は、剣士のウォークライなど軽く凌駕するだろう。
余りの音圧に、爆心地の最も近くにいたラティナが膝を折る。
例え音が止んでも、三半規管を完全に潰されれば立つこともままならない。
ラティナは完全に動きを封じられていた。

彼女に迫る死の鎌。強化された先より、更に強く速い。
その一瞬で、薙刀使いの娘は死ぬ、筈だった。

ギャリリイイイィィィィ・・・ン!!!

鉄同士が交錯する耳障りな音。
一瞬にしてラティナとバフォメットの間に割り込んだ影に続いて、深い紅色の外套が翻る。
ネルのエルアダーク(闇封じの盾)が、バフォメットのデスサイズを押し留めていた。

彼が鍔迫り合いをしている間に、クリーム色のローブを纏った少女が、ラティナを戦闘領域から連れ去る。
誰も動けない、筈だった。
あれほどの風と音の力を受けて、動ける人間がいる筈がない。
いるとするならば、それは、

(やっぱり、あの子達はもう、"最後までいった"のね)

凡百の人間の中において、時に飛びぬけた才能を示す者達がいる。
そういった、世界から『英雄』を運命付けられた者たちは、他を圧倒する何らかの能力を持つ。
ただし、それは開花するとも限らないし、開花したとしても環境によっては意味をなさないこともある。
魔王のいない平和な世界では、幾ら勇者がいても意味がないからだ。

そして、いくら生まれながらに『英雄』を運命付けられていたとしても、辿り着けない場合だってある。
志半ばにして命を落としたり、道を外れた『英雄』もいるのだ。

物語に出てくる英雄は、いつだって物事を最後までやり遂げる。
それは、英雄だからではない。最後まで辿り着いた者たちだけが、物語として後世まで伝えられるからである。

恐らく、ネルと呼ばれる少年とルフィエと呼ばれる少女の物語は、既に終わっている。
彼らの強さは、既に完成してしまった者だけが持ちえる強さだった。

460七掬 ◆ar5t6.213M:2008/10/07(火) 18:53:08 ID:1mcTHbgM0
◇―― リレー企画 ――――――――――――――――――Red stone novel[4/5P]

ぼんやりと、プリナスはネルとルフィエを見つめる。
ネルの仮面に隠された双眸が、バフォメットを見据えていた。
ルフィエの唇から紡ぎだされる唄が、ネルに力を与えていた。

彼らなら、バフォメットに打ち勝つことくらい造作も無いだろう。
だが、恐らくアレは無限に強化されて生き返る。
彼らは、それを止める方法を知らない。
自分が、やるしかないのか。

(・・・ごめんね、ノア)

心の中で、この星の管理者である少年に謝る。
続いて、その秀麗な顔に憂いを湛えながら傍らの仮面の少年に声をかける。

「こいつは、私が始末するわ」
「出来るのなら構いませんが・・・どうするんですか」
「消すの。再生なんて出来なくなるくらい完全に、ね」

言った瞬間、プリナスの姿が消える。
目の端に映った残像を追ってネルが顔を向けたときには、既にバフォメットの頭上に飛んでいた。

次に起こった一瞬は、英雄であるルフィエとネルでさえ信じられないものだった。
プリナスが手を翳した瞬間、バフォメットを覆うかのように巨大な光の繭が編まれた。
その繭の中に込められていたのは、とんでもない量の光と熱の魔力。
空気すら溶かすほどの、圧倒的過ぎる熱量。
生物である以上、あれほどの熱を受けて生きて入られない。
否、どのような物質であれ、あれほどの熱量を受ければ全てが気化するだろう。
悲鳴すらあげる間も無く、バフォメットは消失していた。

・・・たった一瞬で、戦いが終わってしまった。
ネルは、あれほど大規模な術を行いながら、
周囲に全く被害を及ぼさなかったプリナスの術の制御力に驚いていた。

「取り敢えず、怪我人の手当てをしましょうか。・・・ルフィエ?」
「あれ、あれネルくん、あの人は?」
「え・・・」

いない。
まるで、初めから居なかったかのように。
自分が消したバフォメットと同じように、その場から消え去っていた。

「術の反動で消えちゃった、って訳じゃなさそう、だったけど・・・」
「お礼が言いたかったのですが・・・仕方ないですね。ルフィエ、怪我人の手当てをしますよ」
「・・・・・・うん」

少女は、ついさっきまでバフォメットとプリナスが居た場所をしばらく見つめていたが、
やがて背をむけ、少年に続いて走り出した。
バフォメットに飛び掛る前にプリナスが浮かべていた表情が、まぶたの裏に映って離れなかった。

461七掬 ◆ar5t6.213M:2008/10/07(火) 18:53:42 ID:1mcTHbgM0
◇―― リレー企画 ――――――――――――――――――Red stone novel[5/5P]

 ―――もし、私が運命を恐れなければ、

自己嫌悪で死にたくなる。
果てしない時間の間、守り続けてきた誓約を、あんな事の為に破った自分が、殺したいほど憎らしかった。
なぜ破ったのか、と問うても、自分自身にすら答えが分からなかった。
ただ、あの少年と少女に何かを感じたのだろうということだけは分かる。

物語を最後まで貫いた彼らに、嫉妬したのだろうか。
物語を最後までやり遂げた彼らが、羨ましかったのだろうか。
物語を最後まで演じ切れなかった自分を、それでも誇りたかったのだろうか。

何千年を夜を過ごしてなお、自分自身のことすら分からない自分が苛立たしかった。
何百年の朝を迎えてなお、物語を閉じられなかった痛みを引きずっている自分が悲しかった。

世界に英雄を運命付けられていても、最後まで辿り着けない者もいる。
プリナスは、辿り着けなかった。
多くの犠牲を払い、多くの涙を飲んで進み続けた道を、最後の最後で、果たせなかった。
討ち果たすべき最後の敵を打倒することが、出来なかった。

以来、敵の目を逃れる為にノアと共にこの星で過ごしている。
彼は上手く隠れ続けている。
だが、それもいつまでもは続かないだろう。

彼はこの一帯の管理者だ。この星と、この星の周りの空間であれば、全てを支配し、意のままに操れる。
そしてそれは、彼自身すら例外ではない。
この星の周囲にいる限り、彼は絶対無敵なのだ。
ただしそれは裏を返せば、この星から離れれば、彼の力は通常通りということだ。

彼も英雄だ。並みの人間などとは比べ物にならないくらいの実力を持っている。
だが、だからといって何になるだろう。彼女たちが敵対している敵と比べれば、その力は余りにも小さい。

 ―――もし、私が世界を恐れなければ、

それも当然。彼らが相対している敵は、この宇宙全ての管理者。
全ての者の運命を定めている、この世界そのもの。

 ―――打倒し得たのだろうか、全世界の管理者、ホサナ・クリストファーを。

462七掬 ◆ar5t6.213M:2008/10/07(火) 19:02:37 ID:1mcTHbgM0
やってしまいました・・・。

なんだかスレが停滞しているので、リレー企画の続きを書いてみました。
出せる自キャラのいない私が勝手に話を進めちゃっています。
誰かが向かう先を決めなきゃ先に進めないだろうと思いつつ、
私が勝手に進める先を決めて良かったのか不安です。
都合の悪いところは総スルーでお願いします。
あと、誰かが戦闘力に枷を付けないとドラゴンボ○ルになります。

前の投稿で感想書くとかいっといて全然書いてないです。ごめんなさい。
感想は書いてないですが、一言だけ。

>>◇68hJrjtY
 パソコン、ドンマイです。

463七掬 ◆ar5t6.213M:2008/10/08(水) 07:37:10 ID:8QgIM70.0
>>462
 >>◇68hJrjtYさんに敬称付け忘れてるー!
本当すみませんでした。スレの無駄消費もすみませんでしたorz

464◇68hJrjtY:2008/10/08(水) 16:38:52 ID:XV4C78Xo0
>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
またも何かの横道イベントの予感が…というわけで野球開催(?)なるかっ(笑)
むむむ、RS半引退の身にはサッパリですがこれが新モンスターのホワイトゴルゴですか!
ちょこっと画像とスキルを見た感じでは確かに、属性はオガに通じるものを感じます(笑)
でも喋ってる内容は実は可愛い系というなんともいえないギャップが。ってか言語短っ!
エルフに対して宣戦布告の様相ですね。本編共に続きお待ちしています。

>七掬さん
久々のリレー小説&コラボ小説、ありがとうございました!
今回の見所はネル&ルフィエですがなるほど、白猫さんが完結させたパペットの物語を据えて
「最後まで行った英雄」として比喩しているのはうまい描写だと思いました。
プリナスの心象も今回始めて出てきたように思いますが、やはり壮大な世界観を感じます。
敬称なんてお気になさらず。私も結構そのままエンターしちゃう事ありますし(笑)

465蟻人形:2008/10/09(木) 17:35:07 ID:0GQy6Gk20
お久しぶりです…と言っていいのか…。
前スレ823(本編824-827)です。
前回から半年も時間が空いてしまいました。一話書くのに半年ペースです。
うう……、正直ありえないですね…。本当にすみません…。

スレを再読し、399さんの書き込みを見ました。400で紹介されたサイトにも行きました。
今まで自分なりに丁寧に書こうと意識していましたが、間違っていたことも沢山ありました。
その続きを読んで、感想を書くことは非常に難しいことだと感じました。
どうすれば自分の感じたことを書き手の方に伝えられるのか。そのことを考え、自分で書いた文章と同じように更正しながら書いています。
過ぎた話題で申し訳ありません。

今回、変更点を二つ。

一つ目。
一話の中で「天使の視点」と「戦士&青年の視点」の両面を書いていこうと思います。
今回は前回の「戦士&青年の視点」と対になった「天使の視点」です。
ただ、片方ずつアップしていこうと思います。二つ同時ということになると、準備期間が(少なく見積もっても)三倍は延びてしまいそうなのでorz

二つ目。
しばらく名無しさんの状態で書き込ませてもらっていましたが、読む側の方々が判別し難いことに気付き、HNを付けることにしました。
蟻人形です。改めてよろしくお願いします。

今回は天使からの視点です。
説明的な文章が多い今回ですが、情報を一度整理して確認するために書きました。
話の内容自体はあまり進んでおらず…orz
段落や改行等、細かい部分を変えてみましたが、読み辛い部分があると思われます。ご了承ください。

466蟻人形:2008/10/09(木) 17:37:20 ID:0GQy6Gk20
  赤に満ちた夜

 前話 >>824-827(六冊目)

 4: Avengers Ⅱ (Side White)


 冷静になれ、私よ。最大の危機は去った。

 それについて考える必要は無いのだ。結果が全てであり、原因を知る必要は無い。

 重要なのは、これからどうするかということ。

 後で良い。二の次だ。なぜ私が……。

 ……まだ森の中にいるのか、なんてことは……。


 何をするよりも先に翼をしまい込んだ。
 数年来の敵を追い詰めたかのような危機が無念そうに後退しても、油断することはない。その警戒心はもはや習慣、生活の一部でもある。
 両翼が蕩けるように崩れ消える感覚の訪れと共に――気付いた。周囲に対しての違和感を。

 ……あのとき。私は詠唱を無視したが、それでも避難術は成功していた。
 勿論(今回はウィザードだったが)、道中で私の指名手配所を鼻先にぶら下げた追放天使達に出くわすことも考慮に入れた。
 だからこそアリアンを過ぎてから立ち寄った砂漠村で目立たない場所、隠れられる場所のチェックや避難術の終着点のイメージ記憶も行ったのだ。今頃は砂漠村――それも人気のない、裏道ともとれる街路――に降り立っているはずだった。
 そう、正確に移動先の場所をイメージすることができなければ、この術は失敗する。
 だがあの瞬間、私は自分のイメージに過不足は感じなかった。実際に術は成功して、あの場所からは移動している。
 しかし……頭の中に描いた風景とこの場所はあまりに違いすぎる。こんなことは今までになかった。

 自分を足場に駆け抜ける風がやや強くなっている上、空模様は相変わらず悪い。朝の晴天と比べると酷く陰気な空ではあるが、雨の礫はまだ雲の上から降りてくる様子はない。
 心が、緊張から動揺へと傾きかける。
 平常心を引き戻したのは左半身の痛み。魔法戦士との戦闘で負った火傷の痛みだった。口から少し固い、しかしどこか余裕をもった息が漏れた。

 今、私が考えるべきは二つ……! この場所は安全なのか? そして、どうやってここから脱出するのか?
 他の問題は後回し、今知る必要のある情報だけを選択すればいい。

 ゆっくりと辺りを見渡す。先ほどのような、人間が通る道ではないことは確かだ。
 背後には森。数え切れないほどの金網が延々と列を成して並んでいる様子を思い浮かべて欲しい。彼が見ているのはそれに大分近いはずだ。まるで生き物の通行を阻むかのように木々が複雑に入り組み、更に蔦が彼らの役割を援けている。押し通ることはまず無理だろう。
 彼の目の前、正面も森。ただし背後の森に比べると規模も密度も小さく、見上げれば空が見えるような隙間まである。
 植生は先ほどの場所と大きくは違わない。あまり遠くまでは飛んでいないか。

 ここまで確認すれば、残るはあと一つ。鋭く、神経を研ぎ澄ます。

467蟻人形:2008/10/09(木) 17:38:41 ID:0GQy6Gk20

 火傷の痛みはむしろ余計な思考を排除するのに役立っていた。雄大な、しかし不可思議なこの森に自分の魔力を注ぎ、任せ、一体となる。
 言うまでもなく、青年には完全に自然と一体化できるような莫大な魔力を持ち合わせてはいない。彼がやっていることは言わば模倣、自ら探り当てた自然との調和ではない。しかし、かといって土足で踏み込むような無礼さは感じさせない。
 その技術は幼い頃、彼自身は良かれと思ったのだろうが、誰かの技術を真似た。だが長い年月をかけ、彼はそれを自分の技とした。
 こういった例は少なからず存在するが、本来これは極力避けるべきである。特に自然と魔力の調和は自分の感覚で行うものであり、他人の模倣は時として自然の怒りを買うことさえあるからだ。
 そうした災厄もなく、青年から発せられた魔力は自然に溶け込みながらある程度の範囲まで行き渡り、役目を終えたそれらは完全に自然のものとなる。代償として、その間に起こったあらゆる事象が魔力を通して伝達され、術者へと伝わる。これが『探査』と呼ばれる技術。
 ちなみに魔力との相性は人工物と比較して圧倒的に良く、少量の魔力で広い範囲の情報を得ることができる。彼はその性質を利用し、自らの魔力を限界まで割きつつ、できる限り無駄を省きながら探査を行っていた。

 自分を取り囲む木々や植物の他に生き物はいない。少なくとも、自分に敵意を向ける者は。それを確信したとき、彼は自分が深呼吸をすることを許した。
 しかし警戒を解くことは許されない。行為の最中にも新たな訪問者がやってくる、その可能性は決してゼロにはならないのだから。

 幾度かの深呼吸――。
 そうしている間にも、二人の男は自分を探しているのだろうかという思いに囚われる。明らかなのは……男たちがまだ近くまで来ていないこと。それだけだった。

 最後の呼気を吐き終えてから一瞬間を空け、彼の体は動く。
 ただし、それは重力に対して比較的友好的な動作だった。青年の体は年取った逞しい立ち木に凭れかかり、そのまま力なく崩れ落ちた。広くも温かい年配者の背中は彼を優しく支え座らせた。彼の腰が地に着いた、次の瞬間――

「イダッ!!」

 大きくはないが、決して小さくない声が森に響く。己への呆れと怒りも痛みの前にはなす術がない。すでに彼の忍耐力を超えていた。
 砂漠での生活による肉体的な疲労、魔力の枯渇による精神の消耗。更には一刻も早く目的を果たさなければという焦燥感。何より自身への甘え。原因は挙げようと思えばいくらでも浮かび上がってくる。
 顔を伏せ、歯を食いしばる青年。直接的な恐怖からは逃れることができた一方で、今度は逃げ場のない追撃に蝕まれつつあった。見慣れていたはずの敵。今までは耐えてきた相手。しかし、今回のものはこれまでとは比べ物にならない『大きさ』だった。彼の心は自分自身に説き伏せられ、意外なほどあっさりと折れてしまった。

468蟻人形:2008/10/09(木) 17:39:37 ID:0GQy6Gk20

 もはや役目を果たさないローブとロングコート、特にダメージがなかったスカーフをそれぞれ取り去り、ワイシャツのボタンを痛んでいない右手でゆっくりと外していく。それを脱ぎ、上半身を包む最後のシャツも同じように脱ぎ捨て、傷に何も触れていないことを確認する。
 私はアリアンで必需品の補給を怠ったことを今になって後悔していた。次に街に着いたら、何よりも先に買い物をしようと心に決める。
 痛みを気にかけつつ恐る恐る、焼け残ったコートの右側の内ポケットから試験管のような小ビンを取り出す。透明な、恐らくガラス製のありふれたビンの中には血のように赤い液体がたっぷりと入っている。所謂ポーションという薬品の一種で、赤色のポーションは体力の回復や損傷の治癒に絶大な効果を発揮する優れものだ。飲み薬ではあるが患部に直接かけても効果があり、その手軽さが冒険者人気の一番の理由となっている。
 まず一本目の蓋を開け、中の液体を静かに左肩から背中へ伝わせた。初めは激しく沁みて顔を顰めたが、すぐに表情を和らげ、安堵の息が漏れた。更にもう一本、内ポケットから小ビンを取り出した。二本目はジンジンと傷み始めた左脚へと注いでいく。太股から脹脛へと流れていく液体。その末に訪れる足の裏の感覚で、私は靴が焼けずに残っていることを知った。

 痛みが消えていくにつれて、あの場の記憶が入れ替わりに戻ってきた。詠唱を行う戦士。自分に襲い掛かる隕石。直に触れたわけではない。隕石を取り巻く熱風が私の左半身に掴み掛かったのだ。
「くそっ……、あいつ……」
 余波が僅かに掠っただけでこの火傷。もし直撃していたのなら――影の欠片も残らず消し炭になっていただろう。
 恐怖はそれほど強くなかった。寧ろ、肥大していくのは生温い感触と溢れんばかりの憎悪だった。


 一番古い記憶の中の人物。私はそれを思い出していた。そして残念なことに、その人物は私を想ってはくれなかった。


 あまりに幼く抵抗する術を持たない私に対し、奴は自分の力を抑えることなく見せ付けた。
 一体、奴は何を考えていたのか。心から忌んでいた幼稚で自己中心的な男の思考など、他人を感じることのできる年齢に達した私は考えようともしなかった。それは今も変わらない。

 しかし、ただ一つ……。ただ一つだけ、私が奴を認めるモノがあるとすれば、それは奴の手で生み出される魔力の結晶。すなわち四種の相反する色を扱うウィザードの魔法! これだけは十数年経った今でも褪せることなく私の心に刻み込まれている。
 奴の魔法は血の色を知る者でさえ戦慄を覚えるような凶悪さを持っていた。いや、それだけなら有するものは山ほどいる。
 しかし奴の力はそれで終わらない。奴が生み出したもの。そこからは血と屍のキャンパスの様子からは全く想像できない、創造できるはずがない、引き込まれる『美』が感じられた。そう、完成した一級の色彩画のような――。……冷たく、近寄りがたいものだった。
 一人のウィザードの全盛期の力。
 さっきの男にも。
 奴に及ぶべくも無いが、重なるものはあった。

469蟻人形:2008/10/09(木) 17:40:31 ID:0GQy6Gk20

「っつつ……」
 肩に痛みを覚え、現実の世界に引き戻される。眼前にはいくつもの空ビンが転がっていた。予想以上に薬を消費している。意識が過去を歩む間、肉体は己に必要な行為を続けていたらしい。
 さて、生憎着替えは鞄の中。その鞄は先ほど逃げ込んだ草陰の中。濡れた体に突撃する風は容赦なく体温を奪っていく。いくら六月の半ばであっても、太陽が身を潜めれば強く冷え込むこともある。今はまさにそれであり、背中のないシャツで過ごすには多少厳しい環境だ。
 火傷となった足を気遣い、老木を背にゆっくりと立ち上がる。
(……大丈夫だ)
 短い距離を歩み感覚を確かめると、足の痛みは徒歩に支障が出ない程度に和らいでいた。

 私は足元に脱ぎ捨ててあるコートを引っつかみ、今度は左側の内ポケットから折りたたんだナイフを取り出した。いざという時の武器というよりは便利な小道具の一つであり、すぐに利き腕で取り出せるような場所に忍ばせているという訳だ。
 ナイフは右手の慣れた一振りで内部に収められた刃を見せる。また左手はコートを離し、ローブを取る。それを地に広げ、まずは完成後の形を大まかに決める。刃を目印程度に押し当てて傷を付け、型を取る。次は少し力を入れて布地を切断する。
 ボロボロの布はものの数分で形を変え、少々短いが立派な包帯となった。どうせ一時的な処置だ。むしろ出来過ぎたくらいのものだろう。
 早速、私は包帯で傷口を覆った。左腕、左肩から背中、そして左脚。巻き終えたとき、私の左半身は薄汚れたピンク色に染まっていた。
 シャツ、ワイシャツ、ロングコートと順番に着直す。それを終えるとローブの残骸を丸めてコートの外ポケットに入れ、ちらかったビンを拾い、ナイフと共に元通り内ポケットに収める。未使用のポーションが生命の色を魅力的に映し出していた。

 この場所に来た痕跡や使用した物品を全て始末し、森を抜けるため出発を決意する、そんな時だった。
 切っ掛けは微かな音。地に根を下ろす草の小さな悲鳴。だが、風の成すものではない。テンポの良い、駆け抜けるような調べは恐らく生き物の足音。それも一種類ではない。姿を隠すには感付くのが遅すぎた。此方は手負い、相手は複数。
 それらの姿を捉えたとき、私の心に一瞬の隙が生まれた。原因は、現れたのが先刻の二人ではなかったこと。そして、現れた二人が森の長であるエルフだったこと。
 彼らのことは――あの人のことはよく理解していると思い、僅かに油断を見せた。

 軽率だった。

 いくらハンディがあるとはいえ、まるで捉えることができなかった。
 気づいたときには左足の膝に痛みがあり、私の身体は地面に突っ伏していた。一人は私の背に乗り手首を取って、もう一人は私の首筋に剣を当てていた。
「く……っ!」
 まるで力が出ない。抵抗するどころか、首を持ち上げることさえままならない。上にいるエルフの膝が丁度背中の傷に当たっていた。余りの痛みに声が漏れそうになるが、それを懸命に噛み殺し、剣を持つ方のエルフを睨み付ける。そのエルフもブラウンの暗い瞳で私を見下ろす。
 永遠の数秒間はそうして過ぎた。頭の上からの低く機械的な声が時間を引き戻した。
 声の主はゆっくりと、ブルン語――いや、人語でこう言った。
「質問に答えて頂く。返答によっては、御命頂戴する」

 巨大な黒雲が我物顔で天を覆っていた。恐らく、残り少ないこの日の内に取り払われることはないだろう。

 六月の中旬、重苦しい天気の下で、物語は確実に進行していく。

470スイコ:2008/10/11(土) 03:27:14 ID:zu6t.gY60
拙い作品ですが、>>1にある言葉に甘えて初投稿です。

RSをプレイする人たちのお話です。

4711/3:2008/10/11(土) 03:27:41 ID:zu6t.gY60
『君と握手を』

ふたりに初めて会ったのは古都だった。

デスペナ中の退屈を潰すために、古都の片隅でギルドメンバー募集の叫びを流していた。
テレビを見ながら数分置きにログを流す。

 ! ギルドメンバー募集中 ステ上げギルドです。Gvも有り。

ふいにチャットウィンドウにピンク色の文字が浮かんだ。

 月華:すみません。
 :はいはい。
 月華:ギルドを体験したいのですが
 :はい〜。耳打ちありがとう。聞きたいこととかありますか?
 月華:特にないですが、ふたり一緒に入れるでしょうか?
 :大歓迎ですよ!

市民権のクエストは終わっているというので向かえに行くと
耳打ちをしてきた月華は剣士で、すぐ傍にはマルボロという名前のビショップのがいた。
いつものように、人柄を見るために世間話をする。面接などというにはおこがましい。
滝レベルのふたりはレッドストーンを始めて数ヶ月のファーストキャラで
ギルドに入るのも初めてのようだった。ふたりは仲が良く、好感の持てる雰囲気を持っていた。
軽くギルドの説明をしたあと私はふたりを快く迎え入れた。

月華とマルボロが野良PTに参加することはなかった。
いつもふたりで狩りをしていた。秘密にいくにもふたりで行っていた。
一緒に遊んだことがあったが、不思議な方法で狩りをしていた。

「200」「b」「s」などという、ふたりの狩りにはいろんな単語が飛び交った。
それぞれ「CP維持が辛い」「ブレエビ更新して」「先に行かないで」などという意味らしい。
狩り中の行動はマルボロのCP管理を第一としていて、マルボロは青ポットをほとんど使わず、
その代わり、マルボロのインベントリは月華の速度石や青ポットで埋められ
火力を最大限に発揮させながら狩り場に長く篭る方法をふたりで考えたという。
それが効率のいい方法かと言えば疑問はあったが、ふたりは本当に楽しそうで何の意見も
不要のようだった。
マルボロの調子のいいおしゃべりに、月華がぽつぽつと歯切れの良い返しを入れるのが
おもしろくて一緒に話しているだけでも私は楽しかった。
他にもこんなこともあった。
マルボロは飽き性ですぐにサブキャラを作りたがるクセがあった。
知らない名前から「ギルドに入れて欲しい」という耳打ちがくれば、それはマルボロで
テイマやネクロなどに浮気をしては月華に怒られていた。
しかし、そうすると今度は月華がウィザードを作ってきてマルボロの後ろを付いて回り
またふたりで新しい遊び方を考えるのだ。
"剣士の月華"と"ビショップのマルボロ"ではなく、"月華とマルボロ"の"ふたつのキャラ"という
表現が合っていた。私はふたりの存在が本当に愛おしく、まぶしく感じていた。

 :月ちゃんとマルさんは付き合ってるの?

無神経な私は、月華に不躾な質問をした事があった。

 月華:会ったこともないよ。
 :そうなんだ。逆にびっくりだよ。すごい仲良しじゃない。
 月華:偶然、同じ日に始めて。最初の家で話してからずっと一緒。
 :それってすごいね。電話で話したこともないんだ?
 月華:そんなの考えたこともなかったなぁ。
 :会ってみたら?これだけ一緒にいるんだし、きっと楽しいよ。

4722/3:2008/10/11(土) 03:28:38 ID:zu6t.gY60
おもしろ半分でからかってしまったことを反省したのは翌日の夜のことだ。

 マルボロ:月に会いたいって言われた・・・。
 :ごめん、それけしかけたの私かも。
 マルボロ:なるほどね、そういうわけだったのか
 :ごめんごめん。で、会わないの?
 マルボロ:いや・・・
 マルボロ:俺、結婚してるしな。会うことはないな。
 :え!そうだったんだ
 マルボロ:子供もいるぞー。すんげーかわいい。

私は悪戯に月華の気持ちを刺激してしまったことを後悔した。
しかし、すでに吐いてしまった言葉は戻ってはこない。

私の心配をよそに、ふたりの関係は何も変わらないようだった。
でも、これがきっかけで何か運命が変わってしまった気がした。
マルボロの転勤が決まったのだ。
転居先ではネット環境がないらしい。1、2年で帰って来ると言っていても
ネットでしか話したことがない人との数年の別離は、もう二度と会えない覚悟をさせるには
十分の期間だった。
引越しの準備が忙しいといって、最後の1週間はほとんどインしなかった。
それでも引越しの前夜、マルボロは最後に顔を出し皆に少しの別れを伝えに来た。
月華とマルボロが最後にどんな言葉を交わしたのかはわからなかった。

月華はマルボロがいなくても、以前に比べると時間は減ったがよく顔を見せた。
私はできるだけ月華と一緒にいて、秘密PTや狩りPTに誘ったけれども、誘われれば付き合う
程度で、自らPTに入っていくことはなかった。
人気のない狩り場の秘密を今日もふたりでマイペースにクリアした後、おしゃべりをしていると
月華が取り引きを申し込んできた。

 月華:マルにこれをもらったよ。

そう言って月華がトレードウィンドウに乗せて見せたのは"タートクラフトの婚約指輪"だった。


それから時間が過ぎて、1年と少し後のこと。


早く帰ってこれた夕方、早速パソコンを起動しレッドストーンにログインすると途端に耳打ちが来た。

 マルボロ:よぅ。
 :マルさん!帰ってきたの?
 マルボロ:いや、今会社よ。

聞けば、会社では半個室を与えられ自前のパソコンで仕事をしているらしい。
昼や夕方の休憩時間に、最近はこうしてログインしているようだ。
いろいろな仕事があるのだな、と思う。

 マルボロ:月は?
 :最近、来なくなっちゃったんだ…。
 マルボロ:そっか。

月華がインしなくなってから1年近く経っていた。
皮肉なことに何も代わり映えのないレッドストーンだったが、勘を取り戻すには時間がかかり
しかしマルボロその作業がとても楽しいと言って、イン時間が合えばよく様子を伝えてきてくれた。

4733/3:2008/10/11(土) 03:29:32 ID:zu6t.gY60
まるでマルボロの復帰を知ったかのように、月華からの耳打ちが来たのはその数日後だった。

 月華:こんばんは。
 :月ちゃん!久しぶり!
 月華:久しぶり。連絡しなくてごめんね。
 :ううん。また話せて嬉しいよ。

月華のほうは留学していたらしい。学生だったことすら私は知らなかった。
マルボロも最近復帰して、昼や夕方にはインしていることを伝えると月華は嬉しそうにしていた。

しかし、マルボロは昼と夕方、月華は深夜と、ふたりはすれ違っているようだった。
ふたりが帰って来てから1ヶ月が経っていたが、月華に聞いたところ1度だけしか話せていないらしい。
不安感が首をもたげてくる。時間は人と人の距離を変える。
それは、コーヒーを淹れるために台所に立っていた数分間の間だった。
パソコン画面を覗くとピンク色の文字が一行、チャットウィンドウに残っていた。
月華:もう赤石にはきません。今までありがとう。
急いで返事を返したが、チャット欄は赤文字のメッセージしか返してこなかった。

 ! 月華の別キャラいたら耳ください
 ! 月華のことを知っている人がいたら耳ください

古都とアリアンで数度叫んだが、耳打ちが来たのは切羽詰った様子の私を心配する友から
だけだった。

その後、マルボロを捕まえることができて月華のことを聞いたが、マルボロには何の連絡も
なかったらしい。連絡の取りようがないのだから仕方がない。

 :もう来ないのかな・・・
 マルボロ:さぁ、わからん
 :一言くらい、お疲れ様って言いたかった

マルボロは、返事を返さなかった。


会社帰り。
帰宅ラッシュで混雑する地下鉄の駅は、ほんの少し気を抜くだけで人の流れに置いていかれる。
誰かのバッグが勢い良く肩に当たって、心の中で悪態をついた。
憧れで上京してきた田舎者の私が夢見ていたのは、こんなに無機質な街ではなかった。
沢山の人で溢れかえっているのに感じるのは孤独だけだった。毎日、大勢の人とすれ違っているのに
誰一人知っている顔はない。皆が皆、同じ顔をしている。
東京の生活の中で、私はいつの間にか雑踏の音を無視する方法を覚えていて、こんなに煩い人混み
なのに耳には何の音も届かなかった。
ここは、孤独と無音の街だった。

あれからずいぶんと経ったが、友録の月華の名前が灯ることはなかった。
マルボロはたまに見かけたが、お互い声を掛け合うことはしなかった。
月華を失ったマルボロは違う人のように思えて、何を話せばいいのかわからなかった。
ただ一度だけ、ハイテンションなマルボロから耳打ちが来て
『月みたいな変な奴と知り合って、秘密が楽しい』
そんな会話をしたことがあった。

月華。マルボロ。そして、私。

もしかしたら私たち、この駅ですれ違ったことがあるかもしれないね。
この街の血脈のように広がる地下鉄と同じで、目には見えないところで
きっと私たちは手を繋げていたよね。

顔を上げると雑踏の音が戻ってくる。灰色の景色がほんの少し色付いた気がした。

474◇68hJrjtY:2008/10/12(日) 21:08:20 ID:R01kG/fg0
>蟻人形さん
お久しぶりです!天使の青年と魔法戦士&後輩君のお話、お待ちしておりました。
主軸となる青年の視点…実際私も追放天使の職をじっくりとプレイした事はなく、知らない事も多いのですが
探査、いわゆる「ディティクティングエビル」でしょうか、その描写の動きの細かさにこちらも息を呑みました(汗)
一挙手一投足が目に見える、詳細な文章に知らず見入ってしまいました。
憎悪の対象でありつつもある意味尊敬(?)すら覚えた魔法戦士との邂逅を望む前にしてエルフにその運命は委ねられる。
続きお待ちしています!
---
私も過ぎた話ながら、>>400さんのサイトは書き手側としてとても有益ですし
小説家として階段を登って行きたいと思われる人にはぜひとも見て欲しいと思います。
ですが、小説書きから「楽しさ」が失われてしまうのは個人的には本末転倒というか、悲しい事だと思います。
私もサイトを見て書き方を変えようと思ってる一人ですが、どうか書き手さんの「書く楽しさ」が損なわれませんよう。
出しゃばった無遠慮な発言をお許しください(o_ _)o))

>スイコさん
初投稿、ありがとうございます!
ネトゲに身を置き、そして何年かを過ごした間柄ができた者なら誰もが思い、そして体験すらしそうなお話。
しかし改めて考えれば、ネトゲに限らずネットという世界は無機質な反面、とても暖かい居場所のようにも感じます。
リアルとネットの境目、目に見えないながらも誰もが越える事をどこかで望んでいながら恐れているのかもしれませんね。
同じ時間と同じ「場所」に存在した、バラバラな三人。ちょっと悲しさを覚えながらも、心に残る物語でした。
またの投稿お待ちしています。

475名無しさん:2008/10/13(月) 09:27:17 ID:sPiPKwSg0
途中で投げ出す作者が多すぎる。
書いたのなら最後まで書き切って欲しい。

……とか偉そうに書いたけど寂しいだけです。
イベントでもしてまた昔みたいに賑やかにならないものでしょうかね。

476名無しさん:2008/10/16(木) 00:15:33 ID:1DaUDvac0
俺だってROM専だけどたまには書き込みするんだぜ!
久しぶりにぶわーっとスレを読んできたので
感想を少し。

>>ドワーフさん
うおお、相変わらず面白え。
毎回名前を見るたびにwktkしてしまうぜ。

>>スイコさん 文章の表現力が良いね。色んな話を見てみたい。
初投稿お疲れ様です。また機会があれば読ませてね。楽しみにしてる。

>>354の人 何このちょっと通りますよ、的な野良物書きさん……。
普通にライトノベルであってもおかしく無さそうな文章、語彙力……。
話も純粋に楽しめた。
まだこのスレ見てるかどうか分からないけど、他の作品も見てみたい。

>>白猫さん
別段読解力がある訳でもない俺には具体的な変化にあまり気付けなかったんだぜ
でも文章の流れとか、なんとなく読みやすくなってる気がした。
というか、話自体が面白かった。
個人的には続き物よりも数レスでさっくりまとめてくれた方が読みやすかったり。
だから今度は別のサマナさんでの話を読ませておくれ。なんて上から目線の私緑鯖サマナ。

とかく、もっと盛り上がるといいね。

そんな感想日和。

あと>>399はツンデレ。

477黒頭巾:2008/10/16(木) 18:32:15 ID:JLWm9YSQ0
SSスレをご覧の皆様、御機嫌麗しゅう。
毎日チェックしていても、こまめに書き込むのが苦手で読み逃げ…溜め込むのは悪い癖、黒頭巾です。
68hさんはこまめに感想書いてて本当に尊敬…よーし、パパ、頑張って三行感想書いちゃうぞー!


>68hさん
思ったより救いようのないグロ話になってしまいましたので絶賛放置中です(ぅゎぁ)
こうして書きかけの話が大量に溜まっていきます…投稿数少ない訳だ/(^0^)\
wiki設置お疲れ様で御座いました…嗚呼、消えたSSは成仏して生まれ変わってきて!(´;ω;`)


>ドワーフさん
確かに、アメリカの恐怖映画にありそうなタイトル…!笑
マルチェド、強くなりましたね…その成長が嬉しくもあり、哀しくもあり(´;ω;`)
彼と出会わなければずっと彷徨い続けていた魂が成仏出来てよかったです…今回も考えさせられる深いお話でした。


>ワイトさん
「五月蝿い以前に狂ってる」って言葉は、そのまま主人に返してぇぇぇ!爆笑
主人のキャラがナイスすぎます…笑うトコじゃないのに、ネカマみたいな言葉遣いがツボって(ちょ)
ラータ(裏)の怒涛の強さと渡り合った主人…勝者はどっちだとwktk!


>428の東京タワーをメテオでド―(・д・)―ンさん
想像して噴きますたw


>七掬さん
NPCが役者さんという設定が面白かったです…オフィとハンナのカップリングは予想外でした!笑
描写がとても綺麗で細かく、その光景が脳裏に浮かんできます…オフィの贈り物はいなせだねぃ。
そして、秘密の中でのオフィからハンナへの煩い女扱いはツンだったんですね、ツン!(*ノノ)(違)

Σおぉ、埋もれていたリレーを救い上げて下さって嬉しいです!
凄く壮大に広がる世界にwktkしながら読ませて…て、最終ボスはホナサぁぁぁ!?Σ(´д`|||)
大きな方向性を決めて下さって感謝です…戦闘力たったの5のゴミな自分は正座しながら続きを見守りたい(お前)


>ナツルさん
一目惚れ武道家さんの甘酸っぱい青春物語!(*ノノ)
おなごをベットに寝かせて自分は床で寝たカグロに萌えました←
無邪気なテララ可愛いなぁ…しかし、カグロを翻弄する小悪魔に見えてきましたよ!笑


>白猫さん
契約は契約でも悪魔に対して契約してしまった男サマナとは逆転の発想!(*´д`)ハァハァ
ケルの言う三人の小娘ってきっと他のスウェたんとかですよね…続きに期待しちゃいますよ!笑
ケル姐さん、きっと少年をスパルタ教育するんだろうなぁ…(´・ω・)カワイソス(ちょ)


>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
熱い男ミカエル、売られた喧嘩は例え高くても即買いですか(何)
一方、野球の面々はまた個性的な新キャラで…てか、バナナ自重www
まだ野生のゴルゴ見た事ないんですよね…今度観察しにいってみようかな!笑


>蟻人形さん
わー、灰色さんの続きお待ちしておりました!(*´д`)
退避時に何か大きな力が働いたようで…背後で糸を引いているのは一体何者なのか!
スキルの描写や設定は、書き手さんの味が出るので大好物です…探査の描写素敵でした(*ノノ)


>スイコさん
RSで、他のコミュニティで…今まで経験してきた出会いと別れが脳裏を過ぎりました(´;ω;`)ブワッ
もの寂しさはありましたが、最後の独白で昇華されたような…オンとオフの境は明確なようで曖昧で、距離はとても遠くて近い
心に染みて、そのまま心の隅っこに落ち着いた、そんな共感出来る作品でした。


>普段はROM専の方々
シャイボーイさん達め、書き込みの扉へようこそです!
今のまったりしたスレの流れはROM専さんを炙り出していく焦らしプレイなのかもしれませんよ!←
また気が向かれましたら是非出てきて下さい…隠れ住人の生存確認出来るのは嬉しいです(´∀`)ノ


>476さん
最後の一行、その発想はなかった!

478黒頭巾:2008/10/16(木) 18:33:04 ID:JLWm9YSQ0

…さて。
今の時期、皆さん忙しい方が多いのかな。
社会人なら繁忙期の会社多いし、学生なら試験に実習に大会に体育祭に文化祭n(ry
理由は一杯あるでしょう。
多忙だから、ブランクだから、ROM専だから...etc...

ソレでも、何かテーマがあれば書きやすいかな…って、事で。

**************************************************

  SSスレ企画【皆でお題SS〜南瓜祭編〜】

     今回のテーマ:ハロウィン

    合言葉は「Trick or treat!」

**************************************************

とか開催してみようと思います。

えぇ、475さんの発言に乗っかりました。
チャットイベントの時にスメさんがハロウィン書くって仰ってたので、スメさんにも期待(お前)
尤も、言いだしっぺの自分からして遅刻しそうですよ、ごめんなs(ry
現行作家さんも、お初さんも、是非是非如何ぞ!
遅刻なんて気にしないで書き上げて投稿すればイイんだぜ!(自分が間に合わなかった時の保険←)

479ドワーフ:2008/10/19(日) 11:57:40 ID:AepyIIHk0
偽りの伝説

 世に伝説の武器は数あれど、その真なる物は数少ない。出回っている物の多くは贋物であったりするのだが、
本物であるとしても油断はできない。伝説そのものが贋物である物も存在するからだ。
 例を挙げるとすれば、ザウバモルダーと呼ばれる大剣。
 この剣は本来廃棄されるはずの粗悪品だったのだが、どういう訳か僅かに魔法の力を付与されて世に出回るこ
とになってしまった。
 流通させていたのはシーフギルドだ。魔法に対してコンプレックスを抱いている剣闘士が多いのを狙ってザウ
バモルダー(魔封じの剣)などとそれらしい名前をつけて、ご丁寧にもそれらしい魔法と装飾まで施して高値で売
り捌いていた。
 騙されたと気づいたときはもう後の祭りである。相手がシーフギルドでは金を取り戻すのは不可能に近い。騙
された者は仕方なく、自分がされたときのように他の者を騙して高値で売りつけていた。おかげでしばらくはこ
の剣の値が下がる事はなかった。
 ちなみに、この剣を製造していたのは魔法都市スマグのウィザードたちである。誰にも読めないルーン文字を
それらしく書くのも、それらしい魔法をかけるのもあの土地の人間でなければ不可能だ。
 さて、前置きが長くなってしまったが本題に入ろうと思う。一週間ほど前に私は崩れた王宮の調査依頼を受け
たのだが、そこで発見した本の間に数枚のメモが挟まれているのを発見した。それはメビントンという人物によ
って書かれたもので、教会の威厳を大きく揺るがす驚愕の事実が記されていた。
 グリーク教の聖物とされる聖なる槍の伝説が、なんと教会によってでっち上げられたものだったというのだ。

 時はアラドン王の御世――。
 アラドン王は残虐を好み、流血を悦び、権力を愛する人物であった。歴史を振り返れば王は愚かな指導者だっ
たと言える。だが決して無能者ではなかった。ただ時代に必要とされなかっただけであった。西のエリプトは遥
か昔に滅び、北東のソルンドも先王の代に壊滅しており、王国は脅威を無くし平和を謳歌していた。そんな時代
に即位してしまった覇王がアラドン王であった。
 王は無敵の王国に敵を求めていた。それは自ら兵を率いて悪魔討伐に向かうほどだったが、王国の周りに住ま
う悪魔達は拍子抜けするほど弱かったり、あるいは存在すらしなかった。それらのほとんどが王の機嫌を伺う家
臣達が誇大な報告をしていたせいだった。為政に疎く、全てに情熱を失いかけていた王がレッドストーン探索に
のめり込んでいったのも仕方の無い事だったのかもしれない。
 専門の直属機関レッドアイを組織し、巨額の資金を投入して世界のどこかにあるというレッドストーンを求め
た。その姿をかつて滅び去ったエリプト帝国の皇帝に重ね合わせる者も少なくなく、王国はエリプトと同じ轍を
踏み始めたと王宮内にも不安が広がっていた。
 国内の情勢はこの頃から変わり始めた。家臣がいくら諌めようとアラドン王の暴走はとどまらず、平和になっ
たにも関わらず増え続ける重税に民は不満を募らせていた。王国の威勢にも翳りが見え始め、この機を狙ってあ
る勢力が台頭し始めた。グリーク教急進派と呼ばれる彼らは王国による教会の支配に抵抗し、当時6代目だった
教皇を立てて各地で武装蜂起した。
 アラドン王はすぐさま鎮圧に乗り出し、同時に国内に居るであろう彼らに資金提供している協力者の摘発を始
めた。教会側にスパイを送り込み、都市の教会に居る僧侶まで捕らえて容赦なく拷問にかけ、協力者を徹底的に
暴き出していった。その際摘発された人物の中に、王家との繋がりも深いシュトラディバリ家の当主までいたこ
とが王宮内に波紋を呼んだ。
 王はシュトラディバリ家の邸宅に隠されていた、教皇から賜ったとされる聖水撒きを証拠として押収し、それ
によって自らの手で罪人の頭を割って処刑したという。聖物を信者の血で汚すその行為に恐怖しない者はいなか
った。
 名家の断絶に対して周囲からの反対もあってか、シュトラディバリ家の長男だけは処刑されずに済んだ。しか
し、過酷な環境で知られるアルパス地下監獄へと投獄されてしまった。
 後ろ盾となっていた人物を次々と失い、急進派が期待していた民衆の蜂起も王に対する恐怖が勝ったせいで思
うように進まず、戦況は王国の圧倒的有利となった。
 王国に追い詰められた急進派はアウグスタに立てこもり最後の抵抗を試みようとしていた。

480ドワーフ:2008/10/19(日) 12:12:04 ID:AepyIIHk0
 そこにある人物が単身でアウグスタに乗り込んだ。彼はアジェノーと名乗り、自らが属している傭兵部隊を売
り込みに来たと言って急進派と接触した。
 追い詰められていた急進派にとってはまさに渡りに船とも言えたこの申し出だが、追い詰められていたがため
に逆に慎重にもなっていた。アジェノーが王国からの回し者でないという保証はどこにもない。だが、アジェノ
ーは王国軍が迫っている事を理由に契約を迫り、受け入れなければ王国側につくと言いだした。
 余計な敵を増やす事になりかねない状況に急進派の上層部はさぞかし狼狽したことだろう。そこで急進派の幹
部の一人であるアルビーノ司教は傭兵部隊を街に入れないことを条件に契約交渉を開始した。が、アジェノーは
劣勢になった時の退路の確保を理由にそれを突っぱねた。
 こうなるといよいよ交渉は難航し、急進派内でも分裂が始まっていた。危険を承知で傭兵達を受け入れるか、
傭兵達まで敵に回してでも自分達だけで戦うか。傭兵達に金を握らせてどちらにも協力しない事を約束させると
いう意見もあったが、彼らがそんな約束を守るわけがないという見方が圧倒的だった。
 そんな折に、大聖堂の見取り図が王国側に渡るという事件が起こった。急進派内部の裏切り者の仕業である可
能性が高かったが、アジェノーに対する疑いが最も強かった。これによって交渉打ち切り派が増え始めた。アル
ビーノ司教もアジェノーを疑い、彼を拘束しようとしたがそこで彼は自らの疑いを晴らすために犯人を見つけ出
すと言い出した。既に犯人の目星もついているとも言い出し、司教は彼を拘束せず監視する事にした。
 アジェノーが睨んでいた人物は当のアルビーノ司教の下で働く一人の修道士だった。アジェノーは自身の監視
と共にその修道士を張り込み、丁度その時に修道士が王国の間者と接触しているところを取り押さえた。その際
アジェノーはその修道士を殺害し、間者に逃げられている。しかしアジェノーを監視していた二人が証人となっ
て彼に対する疑いは晴らされた。
 不当な疑いを抱いていたという罪悪感は転じて信頼へと成り得る。アルビーノ司教はアジェノーとの交渉に譲
歩の姿勢を見せ始め、ついには教皇に傭兵達を受け入れるよう進言し始めた。教皇も交渉に前向きな意見を述べ
るようになり、交渉は成立したかのように見えた。
 だが傭兵受け入れに反対する者達はグリーク教の教義において槍が忌むべきものとされているのを根拠に、槍
を扱う傭兵との交渉を直ちに打ち切るよう教皇に申し立てた。
 この事態に困惑したアルビーノ司教はアジェノーにこの件について相談を持ちかけた。アジェノーはこれを受
けて司教にある提案をした。禁じられていると言うのなら、例外を作ってしまえば良いと。
 こうしてアルビーノ司教は教皇を説得し、聖なる槍の伝説を作り上げた。神代の伝説ならば紙に記せばそれが
事実となり、新たに見つかったと教皇が言えば誰にも文句は言えない。全ては神の教えを守るため、ときには道
理を曲げる事も必要なのだ。
 ついに反対派は沈黙し、将来を悲観した者はアウグスタから去った。だが代わりに急進派は戦いに長けた傭兵
部隊という頼もしい味方を得ることが出来た。交渉は無事に成立し、アジェノーは仲間たちをアウグスタに召集
した。
 伝説の聖なる槍に似せて作ったという槍を傭兵達に配備し、いよいよ王国軍を迎え撃つ準備は整った。その晩
、アジェノーと傭兵部隊の隊長は教皇に目通りすることを許された。
 そして、教皇は傭兵部隊に捕らえられグリーク教急進派は日が昇る前に殲滅されることになる。

481ドワーフ:2008/10/19(日) 12:13:38 ID:AepyIIHk0
 全てアラドン王の仕掛けた罠であった。反乱を企てた者達の総本山と言えどもアウグスタは王国の一部、つま
り王の所有物なのだ。王はアウグスタを戦火に曝さないためにアジェノー……恐らく偽名であろうが、配下の将
校を身分を偽らせて送り込み、敢えて回りくどい方法を取って教皇を押さえたのだ。その気になれば一気に叩き
潰せただろうが、軍の侵攻を遅らせたのもそういった意図があってのことだった。
 傭兵達は最初から王国軍に雇われており、グリーク教の教えを知らぬ彼らはためらうことなく抵抗する僧侶を
殺していったという。その際心臓をえぐるのに使われたのは、急進派が作った聖なる槍だ。
 アジェノーが大聖堂の見取り図を盗んだのではないかという疑惑はもちろん仕向けられたもの、裏切り者の修道士は恐らくアジェノーが王国の者だとは知らされて居なかったのだろう。罪を被せろと言いくるめられて見取り図を盗んだに違いない。だがその後再び間者に呼び出され、そこをアジェノーによって口封じに殺されてしまったのだろう。
 さらに教会に聖なる槍の伝説をでっち上げさせたおかげで、王国の卑劣な策略を教会は表沙汰にすることが出
来ない。(ただし成り行きで偶然そうなったという可能性も捨てきれない。王の人物像を鑑みると、卑劣と言わ
れようと気にしないのではないかとも思われる)
 余談ではあるが、アラドン王が罪人の頭を割ったとされるあの聖水撒きはこの事件の後も王の愛用として手元
に残され、王による教会の支配を象徴するものとされた。人々はこの恐怖の産物をシュトラディバリの悲劇と名
づけ怖れたという。
 またアルパス地下監獄に幽閉されたシュトラディバリ家最後の生き残りであるバヘルリは、後に貴族たちによ
って救出され彼らの指導者として王国に反旗を翻す事になる。有名なシュトラディバリ家の反乱である。

 メモを書き残したメビントンなる人物がこの事件にどのように関わっていたのかは不明である。私はこのメビ
ントンなる人物こそアジェノーなのではないかと睨んでいる。当の本人でなければここまで細密に事件の全容を
語ることは出来ないだろう。
 私はこれを公表すべきか迷った。アラドン王は王宮と共に過去に埋もれ、教会はかつてとはうって変わって保
守的な姿勢になっている。わざわざ世界に混乱をもたらす必要はあるまい。
 私はこのメモを再び王宮跡に埋もれさせておくことにする。私に続いてこのメモを見つけた者がどのような判
断を下すかは分からない。ただその人物が過去の亡霊を呼び覚ます事のないことを祈るばかりだ。
 過去の事実を破り捨てるだけの勇気が私にないのが残念でならない。

                         ―――瓦礫の下より見つかった遺体、その魂の記憶より

482ドワーフ:2008/10/19(日) 12:31:07 ID:AepyIIHk0
あとがき

ようやく、何とか書き上げる事が出来ました。
頭の中に筋書きはあるのに、それをいざ文章に起こそうとすると中々進まないものですね。
この聖なる槍の話も、こんな筋書きをそのまま書き起こしたようなものにする気はなかったのですが、
どうにも進まなくてついに妥協してしまいました。
悪あがきに他に考えていたユニークネタを少し強引に関連付けて、語り調にしてみました。
いつか気力が続けば、書き直したいものです。

>黒頭巾さん
ハロウィンですか。
前のイベントには参加できなかったので、頑張ってみようかな。
間に合うかどうか分かりませんが…。

483◇68hJrjtY:2008/10/20(月) 13:55:46 ID:FmYkKq520
>黒頭巾さん
おぉ、イベント企画お疲れ様です!
突発的に思いつくネタはいくつかあれど、やはり文章化が難しいorz
PC復旧と同時にもう少し練ってみます。ともかく何かひと作品書き上げたいですね(´;ω;`)

>ドワーフさん
歴史家の書き残した重厚な書物か巻物のような文章に驚きです。
3レスという短さの中に政治的な闘争、直接的な戦闘、駆け引き、策略が見事に表現されていますね。
その中で作り出された二つの武器、今に残るユニーク武器のいわれがまた二つ明らかに。
個人的にも歴史や史実を紐解く話は好きなので、ユニーク武器と絡めさせているのもまた面白く読めました。
書き直しの構想もあるようですし、新作含めて次回作お待ちしています!

484スイコ:2008/10/22(水) 23:19:28 ID:3cDl8yaQ0
>>474 ◇68hJrjtYさん
>>476さん
>>477 黒頭巾さん

感想ありがとうございます。
参加することに意義がある、と思いながら書き込みましたが
やはりこうして感想をいただけるとやる気がでますね!
実は避難所の方に作品を投下しています。
興味がありましたらそちらもご覧くださいませ。

485ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/10/23(木) 17:50:21 ID:OhTl4zsk0
Halloween Limited Extra Episode:My name is Jack〜僕の名前はジャック〜

 そこは古都から離れた場所にある、人すら訪れない納骨堂。
 そこに一体の案山子がひっそりと暮らしているのをご存知だろうか・・・?
 はるか昔、納骨堂になるその前のこと・・・この場所に住んでいた農家たちは彼を作った。
 藁を束ねて造られた身体、カボチャをくり貫いた頭をした案山子はジャックと名付けられ、いつも畑を見守ってきた。
 自分を作ってくれた農家が死んで、時は経ち・・・気が付けばジャックは意志を持ち、動いていた。
 自由な意志を獲得した人形は、日々生きることを楽しく感じていた。でもいつしか、ある感情も覚える・・・

「・・・寂しい。一人は、イヤだ。」

 納骨堂に散乱する瓦礫を削って彫刻を造ったりもした・・・それでもこの心の渇きは潤されることは無い。
「これじゃあの頃と変わらない・・・ただ畑にぼんやり立っているだけのあの頃と・・・誰かとお話がしたいなァ、友達が欲しいなァ」
 ジャックは日を追うごとに、誰でもいい・・・本音で分かち合える友達を臨む気持ちを強めていった。


 ・・・ある日のことだった。
 今日も寂しく一人で過ごしているジャックの元に、意外な者が訪れたのだった。
「ひっく・・・えぅ、ふぇえ・・・えぇ〜んっ」
 それは、一人の『人間』の小さな女の子だった・・・ジャックは人間を見慣れていたので、それは驚くことでもない。
 しかし、こんな小さな女の子がこんな寂れた場所にいるのもどこか変だ。ジャックはそう思うと、女の子に声を掛けた。

「やぁ、こんなところでどうしたの?どうして泣いているんだい?」
「ふぇ・・・?だぁれ?カボチャのおじさん??」

 あどけない声で少女が尋ねた。

「僕の名前はジャック、ここに住んでる案山子だよ。君の名前は?」
「リタのなまえはね、リタっていうの。パパにおこられちゃって、ないていたらここにきちゃったんだ。」
「リタちゃんか・・・パパに叱られたのか〜。リタちゃんはパパのこと好き?」
「ううん、いまはだいきらいだもんっ・・・リタおこられるのイヤ。リタをおこるパパなんてだいっきらい。」
「ははっ・・・リタちゃん、僕と一緒に歌おうよ。歌えば悲しい気持ちも吹き飛んじゃうんだよ、だから歌おう?」
「うんっ!!リタ、ジャックといっしょにおうたをうたう〜!!」

 その日のわずかな時間、ジャックはリタと一緒に歌を唄ったり、昔話を聞かせてあげたり・・・はじめてジャックに『友達』ができた時だった。
 彼は無邪気で自分を恐がることの無いリタと仲良くなった。リタも一緒に遊んでくれるジャックのことが大好きになった。
 その日を境に、リタは度々、その小さな足で納骨堂へとやってきてはジャックと遊ぶ日々を過ごしていた。

486ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/10/23(木) 18:25:38 ID:OhTl4zsk0

 その日もまた、リタはジャックの元を訪れて彼と遊んでいた。
「ねぇジャック、こんどはどんなおはなしをきかせてくれるの?リタたのしみ〜」
「そうだなァ・・・こんなのはどうかな?むか〜しむかし、あるところに・・・・」
 彼女はジャックの語る昔話を真剣に聞き、ジャックはそんな彼女を優しい眼差しで見つめている。

 しかし、リタとジャックの楽しい日々も、いずれは終わりを告げるときが来ることを忘れてはいけない・・・

 最近ではリタの家の近所ではある噂で持ちきりだった・・・『カボチャ頭の怪物が納骨堂にいる、そいつは子供を食い殺す悪党だ』と。
 近頃、納骨堂へファミリア亜種を捕獲しに行ったビーストテイマーが、そこの奥隅にてカボチャ頭の奇妙な怪物が女の子に何かしているのを
 見たとのことで誰もが戦慄しきっていた・・・・

「ねぇあなた、そういえば最近リタが遊びに行くことが多くなったんだけど・・・どこに行っているのかしら。」
「むぅ・・・確かに、最近夕暮れになるまで帰ってこないことが多くなったな。どこに行ったのやら・・・」
 リタの両親と思われる男と女が話している中、近くを通りかかった冒険者の言葉が耳に入った・・・!!

「そういやさっき、納骨堂に女の子が入っていったよなァ・・・オレぁどうも不安で仕方がない、戻るか?」
「うん、私も不安に思っていたところだ、それに彼女・・・ジャックと遊ぶって言いながら入っていったし・・・」
 剣士と魔術師の会話が耳に入った父親は、二人を引きとめた。胸倉を掴み、焦燥に駆られた顔で問い詰める。
「おいアンタたちっ!!今のどういうことだ!?女の子が入っていった・・・?お礼はする、一緒に納骨堂へ連れて行ってくれないか!?」
 父親と冒険者2人を合わせた3人は、急ぎ足で納骨堂へと急行する・・・!!!



 同じ頃、やはりリタはジャックの元を訪れて遊んでいた。
「えへへっ、あそびにきたよ、ジャック♪」
「あははっ、いつもありがとうリタ。僕もとっても嬉しいよ!」
 談笑する二人だが、そこへ乱入者が現われる・・・リタの父親と冒険者たちだ。
「貴様っ・・・リタに何をしているんだァっ!!?!この化け物がァっ!!!」

487ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/10/23(木) 18:56:22 ID:OhTl4zsk0
「パパ、ちがうよっ!!ジャックはわるいひとじゃないもんっ、とってもやさしいかかしさんなんだよ?」
「うるさいっ!!化け物め、私の娘に何をしていた・・・!?返答次第じゃぁお前を殺してやるぞ!!?」

 父親はもはや理性のかけらすら残っていなかった。化け物が愛しい娘と共にいるという事実を認めたくなかったがために。
 魔術師は杖の先に火球を宿し、剣士は既に剣を抜いていた・・・・もはや一触即発の事態と化している。

「ちがうよっ、ジャックはリタといっしょにあそんでくれたんだよ!?ジャックはわるくないもんっ!!」
「うううううるさぁあぁいっ!!!二人とも、何をグズグズしているんだ!?早く奴を殺せっ、殺してしまえっ!!」
 完全に正気を失っている・・・二人はそう感じ取っていた。彼と違い、剣士と魔術師は見抜いていた。
 リタが庇うその案山子には邪念など一切無い、優しい心を持った案山子なのだと・・・

「悪いけど旦那・・・オレにはあいつを斬るなんて真似、とてもできやしねぇ。あいつ、あの子の言うとおりイイ奴だぜ。」
「右に同じくです。私にもわかります・・・彼は邪悪な者ではない。純粋なオーラが見えま・・・あっ!?」
 話す魔術師から杖を強奪し、父親はその場で呪文を唱えた!!火球を生み出すと、狙いをジャックへと向ける・・・!!
「何が純粋だっ・・・案山子が生きてる時点でおかしいんだ、お前は化け物でしかないんだよぉおぉぉぉっ!!!」

 父親の叫びと共に火の玉は放たれた!!!しかしその火球は軌道が安定せず、リタの方へと飛んでゆく!!!!
「なんてバカなことをっ!!!魔術の知識も無い者がそんなことしたら暴走するに決まっているではないか!」
「くそっ、間に合わねぇっ―――――――っ!!!!」

ドゴォンっ!!!

 火球が炸裂する音がした・・・・そこには・・・・・

「ジャック・・・・ジャックうぅうぅぅっ!!?!へんじして!?ねぇジャックぅぅぅっ!!!」
 リタは泣いていた。父親が誤って放った火の玉から彼女を救おうと身代わりになったジャックが倒れたのを見て・・・
「うぅ・・・また・・・・泣いてるの?・・・僕はっ、大丈夫・・・だから、ね?泣かないで、リタ・・・・」
「えっく・・・ジャック、しんじゃいやだよ?リタといっしょにこれからもず〜っとあそぼう?ずっと、ずっとずっといっしょだよ!?」
 彼女の目からは大粒の涙が零れ落ちる・・・雫はポツポツと、ジャックのカボチャ頭に降り注ぐ。


「リタ・・・僕から、最後のお願い・・・僕の頭のカボチャ、大切にして欲しいんだ。そして、その頭と藁の束を使って、僕の身体を造ってね。
 身体はなくなっても、僕の魂は残り続ける。君を見守っているから・・・いつの日か、またボクと楽しく過ごせる日が来るまで・・・・・
 これはお別れじゃないんだよ・・・少し、眠るだけだから・・・・また目が覚めるのを楽しみにしているから、リタ・・・泣かないでね?」

 自らの願いを伝えたジャックの手が、静かに地面に落ちた。リタの泣く声は納骨堂に力強く響いた・・・
 剣士は虫の居所が悪そうに地面を蹴り、魔術師は頭を下げてうなだれている・・・しかし一人だけは変わっていない。
「ハハっ・・・ファハハハハッハハハっ、ざざ、ざまァ見ろ怪物め!!!お前なんか死ねばいいんだゲブゥっ!!?!」
 歯に衣着せず、父親は暴言を吐き続けていたが、堪忍袋の緒が切れた剣士が彼の腹を殴って気絶させる。
「テメェはっ・・・モンスターの優しい心もわからねぇのかよっ、バカヤローがぁっ!!!!!ちくしょぉぉおぉぉっ!!」
 抑えていた感情を爆発させて、涙を流しながら彼は叫んだ・・・・

 奇しくもその日は10月31日のこと・・・悲しみのハロウィンだった。

488ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/10/23(木) 19:09:40 ID:OhTl4zsk0
 あの日から12年の時が経った・・・リタももう16歳とになった。
 今彼女は、ロマの村にホームステイしてビーストテイマーとして修行を積んでいる。
 それでも彼女は約束を忘れていない。ジャックとの、身体を造って残しておくようにという約束を。
 ジャックの身体は既に完成しており、ホームステイ先の家族の許可を得て、納屋に保存させてもらっている。

 12年目のハロウィンが来た・・・。

 リタもすっかり成長し、モンスターの身体能力を操るための旋律や、天気を操る魔法も習得するほどになったのだ。
 今日もまた、彼女は笛を吹き、自然を感じ・・・のどかなロマの村での生活を送っている。
「ふぁ〜ぁ・・・ん〜っ、おはようございますっ、お義母さん!!よ〜し、今日も頑張らないとっ」
「うふふふ、リタちゃんも元気だねぇ〜・・・あぁ、そうそう!実は昨日ね、納屋からガサゴソ音がしたのよ〜・・・
 もしかして・・・リタちゃんが大事にしていた案山子に魂が宿ったんじゃないかしら!?見に行ってごらんなさいな。」

 ホームステイ先の義母から教えてもらうと、リタは一直線に納屋へと向かった・・・
 納屋の扉を開ける。朝の日差しが差し込む納屋の中に、案山子は動いていた。
 案山子は振り向き、納屋を戸を開けた人物を目にすると、12年前と変わらない懐かしい声で言った。

「・・・久しぶりだね、リタ。おはよう・・・そして、ただいま。」

「うんっ・・・・おかえり、ジャック!!」

 目に涙を浮かべて、リタは長い眠りから覚めた友達を抱きしめて、泣いた。

〜fin〜



はい、ハロウィンネタということで・・・新Mob『ジャックランタン』を題材に心温まるお話を目指してみました。
いつもはハッチャけ過ぎだな〜ということで、たまには気分も切り替えて・・・気に入って頂けると嬉しいですv
それでは皆様、楽しいハロウィンを・・・Trick or Treat!!!

489名無しさん:2008/10/23(木) 19:24:07 ID:5U25oKC20
しまった。もうハロウィンの時期か!
見様見まねで書いてみたはいいが、時期ネタおかまいなしだぜ\(^o^)/
っていうか1レス50行縛りってことだけど、皆どうやって1レスを区切ってるんだろう

>>488
剣士がデュエリングを覚えていれば(ry
「カボチャ頭の奇妙な怪物が女の子に何かしているのを見た」だけ聞いたらそりゃ父親は心配するよな・・・

490白頭巾:2008/10/25(土) 20:00:32 ID:CRd8ZrdY0
ハロウィンコラボ企画

ふぁみりあいーえっくすシリーズ×Puppet―歌姫と絡繰人形―



ブルンネンシュティングにも、ようやく秋が来た。
夏の鬱陶しい暑さからもようやく解放され、比較的日々を過ごしやすい気候になるこの季節。
自然と足が外へと向くこの季節にも、そろそろ「アレ」がやってくる。


 「はろうぃん?」
 「そう、ハロウィン♪」

ブルンの中央部――いわゆる「商業区」のとある一角。
ブルンでも最も賑やかなこの区……その隅にひっそりと立つ、小さな喫茶店。
人通りの多いこの地区に立っているにしてはあまりに小さなその喫茶店の中に、二人の姿はあった。
目を瞬かせながらケーキにフォークを刺す栗色の髪の少女と、ニコニコと笑いながらティーカップを持つ亜麻色の髪の少女。
椅子に座っているだけで絵になりそうなほどの可憐さの少女二人だったが、不思議と軽い男たちから声をかけられることはない。
何故? ――それは、彼女らのテーブルに山のように積まれた皿で容易に説明できるであろう。
皿のほとんどは栗色の髪の少女が平らげたものである。亜麻色の髪の少女も少々は食べているが、食欲がそれこそ桁で違った。
――言う間に、また空高く積み上げられた皿の塔が、また一段高くなる。

 「ルフィエちゃん、ほんとにケーキが好きなんだねぇ」

とニコニコする少女。少々、というかかなり着眼点がズレている。もちろん本人に自覚はない。

 「えへ、だって食欲の秋って言うじゃない? メリィも食べれるときに食べないと!」

と言う間にショートケーキの1/3を食べ終えてしまったもう一人の少女ルフィエを、紅茶を啜りながら少女はじっと見やる。
メリィ、とは彼女の本名ではない。彼女の本名を聞いた時に、ルフィエは即興でつけたあだ名である。
当初こそ響きに難色を示していた彼女も、じきに慣れてしまっていた。あだ名とはそういうものである。
ちなみに、彼女が連れているファミリアからは「ごしゅじんさま」という通称をありがたく頂戴していることを彼女は知らない。


相変わらず物凄い食欲である。自分では考えられないくらい量を平然と平らげている。
そう言えば、以前開かれたブルン大食い選手権でも、常人では考えられない量である食事の数々を物凄いスピードで胃に収め、見事準優勝を叩き出したんだとか。
優勝者は確か……マイ、というブリッジヘッドのウィッチらしいが、当時の大会を見た者曰く「上位二名だけで参加者全員分は食った」とかなんとか。
自分より小さい(微々たる差だけど)この体のどこに蓄積されているのか、一度検査してみたいと思う少女、ごしゅじんさまであった。

 「で、ハロウィンって何なの? 聞いたことないけど……」
 「……うーん、なんて言ったらいいんだろう…?」

首を傾げるルフィエに、ごしゅじんさまももう一度「ハロウィン」について考える。
ハロウィンのことを知らないというのも珍しいことだが、ここにはいない少年と共に大陸中を旅する身では無理はないか、とも思う。そもそもハロウィンとは、具体的にどんな催しなのか?
仮装しあちこちの民家やギルドホールを回るくらいにしか捉えていないが――

 「……みんなで仮装して、一晩騒いで遊ぶお祭り、かな?」

実際は「万聖節」の前日に行われる北国を起源とする祭りなのだが、
最近はそれを知る者も少ない。某貴族家の当主や方向音痴なウィザードあたりなら知っているだろうが。
祭りの概要を聞き目を輝かせたルフィエは、

 「お祭り!? てことは、歌ったり踊ったりできるの!?」

と、今にも掴みかかりそうな勢いで立ち上がった。
元々祭事は大好きな性格である。最近退屈を持て余していただけに、これは騒がずにいられない。

 「いつ!?」
 「えと、……今日?」
 「ウソ!? 急いで準備しないと!」
 「え? 準備?」


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