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【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 七冊目【SS】

1ルイーダ★:2008/05/03(土) 01:08:47 ID:???0
【重要】以下の項目を読み、しっかり頭に入れておきましょう。
※このスレッドはsage進行です。
※下げ方:E-mail欄に半角英数で「sage」と入れて本文を書き込む。
※上げる際には時間帯等を考慮のこと。むやみに上げるのは荒れの原因となります。
※激しくSな鞭叩きは厳禁!
※煽り・荒らしはもの凄い勢いで放置!
※煽り・荒らしを放置できない人は同類!
※職人さんたちを直接的に急かすような書き込みはなるべく控えること。
※どうしてもageなければならないようなときには、時間帯などを考えてageること。
※sageの方法が分からない初心者の方は↓へ。
http://jbbs.livedoor.jp/game/19634/storage/1117795323.html#562


【職人の皆さんへ】
※当スレはあくまで赤石好きの作者・読者が楽しむ場です。
 「自分の下手な文章なんか……」と躊躇している方もどしどし投稿してください。
 ここでは技術よりも「書きたい!」という気持ちを尊重します。
※短編/長編/ジャンルは問いません。改編やRS内で本当に起こったネタ話なども可。
※マジなエロ・グロは自重のこと。そっち系は別スレをご利用ください。(過去ログ参照)


【読者の皆さんへ】
※激しくSな鞭叩きは厳禁です。
※煽りや荒らしは徹底放置のこと。反応した時点で同類と見なされます。
※職人さんたちを直接的に急かすような書き込みはなるべく控えること。


【過去のスレッド】
一冊目 【ノベール】REDSTONE小説うpスレッド【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/game/19634/storage/1117795323.html

二冊目 【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 二冊目【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/game/19634/storage/1127802779.html

三冊目 【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 三冊目【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/game/19634/storage/1139745351.html

四冊目 【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 四冊目【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/19634/1170256068/

五冊目【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 五冊目【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/19634/1182873433/

六冊目【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 六冊目【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/19634/1200393277/

【小説まとめサイト】
RED STONE 小説upスレッド まとめ
ttp://www27.atwiki.jp/rsnovel/

343黒頭巾:2008/07/12(土) 02:00:11 ID:fou9k2gM0
>白猫さん
わちょーい、完結編きたーよ!(´∀`)ノ
お会いする度に100KBいっちゃえいっちゃえと唆していた自分ですが、本当にお疲れ様でしたと声を大にして言いたいです←
読み応えたっぷりすぎてハァハァしました…読み込みが足りない部分がありそうなので、何度かじっくり読み込ませて頂きます(ΦωΦ)フフフ
マペットの契約者を護るのがワルキューレかと思いきや、契約者のルフィエ自身もまたワルキューレとは…!
と言うか、セシュアとアネットぉぉぉ!orzorzorz
やっぱりセシュアの現れたり消えたりの不可思議な動きは傀儡だったからなんですね(ノд;)
うぅ、コレから姉弟仲良く暮らせると思ったのに…アネット…orz
そして、一緒にいた筈のカリアスの空気具合がもうたまらんとです…好きだけど、可哀想なカリアスもまたイイy(ry
最近、彼は不幸担当なんじゃないかって思い始めてきました(今更)
しかし、万年病人とはナイスな呼び名です(待って)
そして、潜伏していたリレッタのPTへの帰還…あのドジっ子リレッタがしっかりさんになった!←
詳しく言わなくても相手の望む行動が取れるネルフィエコンビのツーカー振りに萌えるのは私だけでしょうか(死語)
そしてそして…ルヴィラィとルフィエ、最期にお母さんと娘に戻れてよかったです(´;ω;`)ウッ
最期の最期だってのが激しく切ないですが…最期だからこそ、言えた事もあるのかなぁと。
で、三年経ってもタイミングが悪くすれ違いな彼ら…本当にトラブルが絶えない!笑
本当にお疲れ様でした…まとめページで補足されたものを読んで新しい発見が出来る日を楽しみにしております(*´∀`*)ノ
…てか、番外編のリクいいの?(自重)
私的には、ルフィエのパパの“彼”とルヴィライの番外編を期待したいです(待って)

隠しキャラ入手条件に盛大に笑いましたから!笑
例のアレとかアレとかは、コチラもお付き合い頂けて嬉しかったのですよ!(*ノノ)
いつも突飛でアレなコレとかで申し訳ない!(どれ)
無茶振りの件は、未だに如何したモノかと←
はんらさんはお互いにナイトさんを目指しましょう…っても、ウチのはんらさんは突撃勇者になりそうですが(ソレはぶらっくはんらさんだ←)
てか、白猫さんが何故にそげにごしゅじんさまを大プッシュするのか不思議でなりません…普通のコなのに!笑
タガは外す為にあるのです…限界点なんて超えてみせるんだ!(色々駄目だろう)
ハロウィンは(,,゚Д゚)ガンガルます…白い子は取り敢えず不幸にすればイイんですよね?(ちょ)
むしろ、そちらのネタが楽しみで楽しみで仕方がありません(*´д`*)ハァハァ


>復讐の女神さん
Σ確かに車を突き破ったとかそんな話は聞きますが、雹恐い!Σ(゚д゚|||)
そして、魔術の属性のお話…火と水は確かに相反する属性ですよね。
RSではただの難易度としか分類されませんが、この設定は素敵です(*ノノ)
だから浮かぶレビテイトで地属性上がるんですな…風っぽいから!(待って)
そして、ラディルのモテモテ振りに(・∀・)ニヨニヨです。
賞金システム、あれば便利だろうなぁ…クエが世界中に散らばってて、面倒だったらありゃしn(ry
テルがそれだけ確認を促す依頼の内容が…あの変態魔術師絡みじゃないかとwktkしながら続きを待っております(*´∀`)ウフフ


>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
わーい、ちまミリアー!ヽ(´Д`)人(´д`)人(´Д`)人(´д`)ノ〜♪
…よりも、ミカエルおにーちゃんに萌々した私は駄目なのでしょうか(ぇー)
こんなおにーちゃん( ゚д゚)ホスィよ!←
ミリアとの絡みも、保父さんみたい(ぇー)
しっかし、野外でお昼ご飯がチョコフォンデュとか、おにーちゃん素敵すぎますから!爆笑
フィナ姉は相変わらずです…って、更にパワーアップしちゃうんですか!?Σ(゚д゚|||)

344黒頭巾:2008/07/12(土) 02:01:23 ID:fou9k2gM0
>之神さん
定員一名のエレベーターとか小さな遊園地じゃないんだから!_| ̄|○ノシ べしべし
順調だった筈のライトがトバッチリ受けてますが…折れたドアノブにGJと言いたいです←
もしかして、コレで合流出来るのかなとwktk!
木妖精、恐い見た目に反して可愛いと最近思い始めました…この野郎、お前達が!(ちょ)
ラッキーナザくんですから、きっと何かイイ事に結びつくんだろうなぁと楽しみに!
今まで「あなたとどなた」がタイトルだと思ってました…どんなタイトルが付くのか楽しみにしております(ノ∀`)ペチン

七夕で復活されると期待しておりました…SSスレの季節感担当のがたん!(ちょ)
せっかく書かれたのですから、うpして下さいよぅ…気になるなら、8月に旧暦の七夕とか!(ぁ)


>21Rさん
きゃぁぁぁ、続きお待ちしておりましたぁぁぁ!!!。・゚・(ノд`)・゚・。
蟹とクラゲはスバインビーチかな?
期待を裏切らないアデル…そうさ、そんな君が大好きさ!ヽ(´д`)ノ
一人で重圧に耐えるアレンくんが心配ですorz
TOPに立つってそんな事だってのは嫌と言う程わかってはいても切ない(´;ω;`)ウッ
せめて、少しでもイイ方向に向かうのを祈っております。
ご多忙みたいですが、如何かご自愛下さいませ(゚д゚)ノシ


>21R(仮)さん
おぉ、お疲れ様で御座います、スネーク!(`・ω・´)ゝ
先に読んでおいでるのに若干嫉妬するのはお約束(笑)として、橋渡しありがたいです(*´∀`*)
そうか、そんな手があったのかと目から鱗です←
如何ぞ宜しくお伝え下さいませ(*ノノ)


>自称支援BISさん
わーい、いけめんさんがヘタレだー!(喜んだ←)
いけめんさんは時々壊れるので全然おっけーですよ!(*´∀`*)(満面の笑顔/ちょ)
ドタバタ珍道中、とても楽しく拝見させて頂きました(*ノノ)
物理火力が二人に支援とサマナが一人ずつとは…うほっ、イイPT!(自重)
掛け合い漫才が面白かったです…ブルーノ正直!爆笑
今では普通に通れる藪森も、適正当時はかなり苦戦したものです…いけめんさんでガー君に何度殺されたか(嗚呼)
クエ対象MOBとの戦闘よりも辿り着くまでが大変とは、ケルビー最強伝説(?)ですね…何と便利な子d(ry
おっと危ない…帰還の魔石を破壊しようとして使って以下略←
またの投稿をお待ちしておりますにょろ(*´∀`)ウフフ(とか圧力をかけてみるテスト)


嗚呼、めがっさ疲れた…溜め込むんじゃなかった!orz

345◇68hJrjtY:2008/07/12(土) 16:14:34 ID:SaqKH4OA0
>憔悴さん
だんだんとUP量とスピードの増える続き、ありがとうございます!
ロンサム、やはり異種職でしたか…本人に思うところあったのでしょうが、無事に4人揃ったと思いきやまたも事件が。
「あえて知識職で行った」ロンサムのF&Iとドラツイ。恐ろしいながらそのエフェクトを見てみたいとか(ノ∀`*)
突然消えてしまった遺跡も気になりながらもボニーにとっては悲しすぎるプーさんとの戦い。
鬼能という存在設定も面白いと思いました。鬼とは地下界から来ているのが分かってきましたね。
サリアや他の鬼たちとの戦いをさらに予感させつつ、続きお待ちしています。

>自称支援BISさん
お久しぶりです〜!そして武道×サマナキタ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(*´д`*)゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!
しかし、今回はそれ以上にいけめんさんとブルーノが大変なことに(笑)
一時的な狩り(クエスト?)PTの奮闘といったノリでコメディ風味にニヤニヤしながら読ませていただきました。
才色兼備ないけめんさん、意外にもギルメン以外の人たちの前ではドジっ子(子!?)だったりして…。
そして逆にギルメンたちの前では天真爛漫なブルーノはしっかり者とか(笑)
サマナたん視点の物語でしたが、折に触れて武道君に見とれる彼女は私の分身ですね!(*´д`*)
またの作品お待ちしています!

346防災頭巾★:削除
削除

347防災頭巾★:削除
削除

348名無しさん:2008/07/13(日) 18:42:28 ID:OnMpHZjE0
クソスレage

              )
             (
         ,,        )      )
         ゙ミ;;;;;,_           (
          ミ;;;;;;;;、;:..,,.,,,,,
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       /;i;i; '',',;;;_~⌒¨;;;;;;;;ヾ.ミ゙´゙^′..ヽ 
       ゙{y、、;:...:,:.:.、;、;:.:,:.:. ._  .、)  、}
       ".¨ー=v ''‐ .:v、冫_._ .、,_,,、_,,r_,ノ′
      /i;i; '',',;;;_~υ⌒¨;;;;;;;;ヾ.ミ゙´゙^′.ソ.ヽ
      ゙{y、、;:..ゞ.:,:.:.、;:.ミ.:,:.:. ._υ゚o,,'.、)  、}
      ヾ,,..;::;;;::,;,::;):;:;:; .:v、冫_._ .、,_,,、_,,r_,ノ′

349名無しさん:2008/07/15(火) 00:23:58 ID:ddy6MTJU0
懐かしい夢を見た。
それは私の一番古い記憶。

人通りの多い通りの片隅で、雨に打たれながら座り込み、ただ行き交う人を眺め続けるだけの日々。
私は、気が付いたときにはここに居た。
道行く人は私を生ゴミなどを見るような眼で見ていく。
場合によっては人に罵声を浴びせられ、なじられ、理不尽な暴力に膝をついた。
ここでは子供が生きていくのは非常に過酷で、それは私自身とて例外ではない。
その為、生きていく為には何でもやった。

スリ・強盗

時には、人体実験の実験台にすらなって金を得、生活していた。
当時は、子供に殺しをさせるような暗殺集団があった時代だ、私がやっている程度は子供が一人で生きていく上では、日常茶飯事だった。
そして気が付いたときには同じ身の上の子供が集まり一つの集団を作って
、私はその集団の中心人物になっていた。

だがその時の私にはそんなモノはどうでも良かった。
所詮大人になろうとこの生活に変化はなく何れは誰かに恨まれ殺されるだろうと本気で考えていた。
しかし自分は生きている。
生きていく為に人から物を奪い、生きていく為に食っている。

何故?

答えが出ないまま悶々とした何かを胸に抱え日々を送っていく。
だが、そんな私に生きる意味を与えてくれた人がいた。

雨の日だった。
今日も【仕事】を終えて、自分達のねぐらに戻った時だ。
ねぐらへの出入り口に一人の男が立っている。
暗くてよく見えないが、顔から歳は40代といったところか。
男は背中まで伸びた白髪混じりの髪を後ろで結い、
白く古ぼけた武道家特有の武道着を纏っていた。

突然現れた男は、こう叫んだ。
「君達には一切の私怨はない。だが君達がやっている事は間違いなく悪いことだ。だから今、この場でお前達を成敗しなければならない!今なら俺から何とかしてやれる、だから君たちの頭と話をさせてくれ!」

仲間は私へ視線を送り、仕方なく男の前に顔を出す。
「……オレだ」
「なぁ、今すぐ解散できないか?」
「オレ達に死ねって言うのか?」
「そうは言ってない。ただ他のやり方もあったんじゃないのか?」
「ないね。……話は終わりだ、帰れ」
「そうもいかん。俺はこれでも仕事で来てるんでな」
その一言で周りの仲間が殺気立ち、

「今なら俺が何とかしてやれる!もう止めるんだ!」
この一言で一斉に各々の得物を携えて飛びかかっていった。

が、相手が悪すぎた。
あの人は、拳一つ、しかも右腕一本で仲間達を成敗していった。
当然、私も立ち向かっていったが一太刀浴びせる間もなく呆気なく打ちのめされた。
しかし当の本人は相当手加減したのだろう、まだ痛みを伴いながらだが動くことは出来た。
周りを見やると、そこには自分と同じように打ち倒されて呻き声をあげる仲間が所々に転がっている。
そしてその中心にあの人が立っていた。
その表情は酷く悲しいものだった。

しばらくの沈黙。

そしてあの人が口を開いた。
「すまない、これも仕事なんだ」
すると何処からともなく聞こえてくるかすれた声
「はっ、謝ってどうなるんだよ。
てめぇが、何してくれるって言うんだ?
俺達はただ生きていく為に、仕事してるだけじゃねぇか!
お前ら大人の勝手な都合で、つぶされてたまるか!」
まだ体にダメージが残っているのだろう、声量は無かった。
しかしその紡がれた言葉は、力強く私たちの気持ちを良く伝えていた。
すると周りからも罵声が飛び交う。
その言葉に対してあの人はたった一言。
「本当にすまない……」
と深く頭を下げた。
その行為に私はとても驚いた事は今でも覚えている。

何か間違った事をした訳じゃない。
何か悪い事をした訳でもない。
むしろいくら生きていく為とは言え、悪行を働いているのは私達であり、彼はそれで迷惑をしているその他大勢の為にこうして止めにきたのだ。
それも力づくではなく『説得』と言うカタチで。

それなのに彼は謝る。
今まで会ってきた大人は何奴も口ばかりで、決して心の底から言葉を紡ぐことはなかった。
だが彼の口から紡がれるのは誠心誠意の言葉。

ーこいつはどこまで人の事を考えているんだ?
内容はともかく、そんな疑問がふっと湧いた瞬間、この男に興味を持った。
生きること以外に、何の興味も沸かない自分がだ。
気が付いたときには、私の口から意外な言葉がついて出てきた。
「…分かった、従うよ」
「本当か!?」
当然仲間からは反対する怒号が飛び交うが私はそれを遮り、
「ただし!仲間が食っていける場所を与えてやってくれ」
「それなら任せておけ!」
と、即答に近いカタチで、拳を自分の胸にドンと押し当てながら、自信満々に言い放った。

350スメスメ:2008/07/15(火) 00:24:51 ID:ddy6MTJU0
「……眩しい」
朝日が部屋に差し込み私の顔に当たり、窓からの少し冷気を帯びた風が顔を撫でていく。
ここは古都ブルンネンシュティグのとある社員寮。
ここで自分は寝食を仲間と共にしています。
寝食を共にと申しましても各部屋には調理場がありますので大概の住人は自炊したりしています。


「それにしても懐かしい夢でしたね」
「んー、何が?」
「いえ、久しぶりに子供の頃の夢を視たものですから、少し感慨深くなっていたのですよ」

…ん?
ここは私の部屋。
ですから自分以外の人間が居る事などあり得ない訳でして…。

ふと自室のテーブルに目を向けると、側にある椅子にややもたれながら座りガツガツと忙しなくテーブルの上にある皿の食事をかき込んでいる二人組が…。
一人は白いポニーテールにカッターシャツを着ている少年、もう一人は金髪の綺麗なミニドレスを着ている少女だ。


「……何をしているんですか、アル?」
そう問いかけると少年の方が、事も無げに答える。
「朝飯食ってる」
そう、悪びれもなく答え腕をピッと上げ軽く挨拶すると彼はまた口の中にモノをいれモグモグと動かしだした。

「いや、あのですね。私はどうして私の部屋に勝手に入り込んで食事をしているのかと聞いているのですが?」
「腹が減ったから」

……もういいです。

大体彼はいつもこうだ。
突然ふらりと勝手に部屋へ入ってきて「泊めて」だとか「何か食べさせて」だとか勝手気ままなことを言い出す。
それもまだ許可を求めてくるだけマシで、酷いときは今回のように許可無く居座ってしまう。
しかも必ずと言っていいほど問題事を抱えてくるのですからこっちとしては迷惑千万ですよ。

「分かりました、では朝食を取ったら出ていって下さいね。私は仕事なんですから」
「そんなツレない事言うなよぉ、『お兄ちゃ〜ん』♪」と言う猫なで声が耳に障る。

「都合の良いときだけ弟面しないで下さい」

……申し遅れました。
私の名は、クニヒト=エヴァーソンと申します。
非常に、不本意ではありますが、この愚弟の兄です。

「いや、今日はマジで相談に来たんだよっ」
「ほぅ、勝手に人の部屋にあがり朝食をとっている事が『相談』ですか?」
「こ、これは……。あの子がお腹空いたって言うからさ、今のオレで連れていける所なんてここ位だったんだよ」
少し詰まって出た言葉からはいつもの様なフザケ口調では無く何処か力がなかった。
どうも少し様子がおかしいようですね。
まぁ、変なのは今に始まったことではないですけど。
「朝食の件は今に始まった事ではないにしても、そちらのお嬢さんについても、勿論教えていただけますよね?」とアルの対面の椅子に座り口一杯に食べ物を頬張っている少女の方を見た。
アルは少し黙り、そして珍しく神妙な面もちで先日起こった出来事を話し始めた。
どうやら核心を突いたみたいだ。

フローテック氏の依頼を受け、地下墓地へバインダーの討伐に向かった事。
バインダーの祭壇で襲われそうになっていた少女、キリエを助けた事。
バインダー討伐中に彼の友人であるアイナーと出会い、襲われた事。
キリエが剣に変身できる特殊な力がある事。
何とか助けようとあの『技』まで使ってアイナーを止めようとした事。
結果としてアイナーに太刀打ちできず、殺されると思ったが通りすがりの旅人に助けられた事。




「……大体は理解しましたが一つだけ腑に落ちませんね」
話を聞きながら淹れた紅茶を自分のカップに注ぎ、食い散らかされたテーブルに浅めに腰を下ろしアルを見る。
すると何で?と言わんばかりな顔で首を傾げた。
「その旅人ですよ。恐らくアナタの負っていた傷を治したのは魔術以外には考えられない。よく考えてみて下さい、今のご時世に、魔法を使える人なんて、そうそう居ません。仮に使えたとしても、『自分は魔術師だぞ』と正体を明かす人間は居るはずがない」
「あ……」

351スメスメ:2008/07/15(火) 00:25:30 ID:ddy6MTJU0
今から丁度40年前、それは起きた。
突如スマグ地方を拠点としたウィザード協会が当時スマグ地下道や各施設を占拠していたレッドアイを壊滅・吸収し、フランデル大陸の全都市国家に対してアウグスタを中心としたグリーク教の根絶を訴えたのだ。
突然の事態に各都市は、当然拒否もしくは相手にしなかった。
しかし事態はそれだけで終わるわけもなくウィザードギルドはブルンネンシュティグ、アリアン、ブリッジヘッドなどの主要な大都市で抗議デモを行い、グリーク教が如何に不適切な教団かと言う事を説いていきます。
その中で宗教どころか天使や天上界までも非難した抗議まであったと言う噂も出てくる程、講義内容は過激なものだったそうです。
当然、グリーク教の総本山であるアウグスタが黙っている訳もなく。ウィザードギルドへ3名の名のある僧侶を使者として出し、彼等に講義内容の全面撤廃を求めた。

しかしその後、ウィザードギルドから何の返事もなく、
月日だけが過ぎ第2陣の使者を送ろうかと協議していた頃です。
アウグスタヘ3つのちょうど頭がすっぽり入るサイズの木箱が送られてきました。
その丁寧に装飾されさらに立派な衣に包まれた木箱から出てきたのは……

元高名な僧侶達の姿です。

これに激怒したアウグスタ側は兵を集め、ウィザードギルドに対して宣戦布告する事になります。
これが後の歴史に名を残す『元素戦争』です。
初めはウィザードギルドvsアウグスタ(グリーク教)の大陸東部での争いでした。
しかしブルンネンシュティグ、シュトラセラトなどの中東部の都市国家が武力介入し、
更にそこへアリアンなどの内陸部の都市国家が、その隙を突いて各都市国家へと攻め入るという泥沼化の情勢になっていきました。
また、この戦争では様々な元素を用いた強力な大量殺人兵器や身体に元素を取り込んで戦闘力を増大させる技術などが開発・導入されるなど、益々戦況は混迷へと突き進んでいくことになります。

その泥沼と化した戦況が7年の月日が経ち、小規模な村などは殆どは焼け落ち、田畑は廃れ、人々の心は荒んでいった頃でした。
どこから現れたか今でも不明ですが、7人の傭兵や冒険家が各都市にて人々に停戦を呼びかけ、戦争を収めようと努める人たちが現れました。
彼等は自らを『Tierraーティエラー』と呼び、次々と各都市に停戦する様に呼びかけ実行していったのです。
そして遂にはアウグスタまでも武装放棄させ、ウィザードギルドにも停戦を呼びかけましたが決して応じることは無くやむを得ず僅か7人だけで彼らを追い込み遂には最後の砦であったスウェブタワーにて壊滅させたのです。
この時の戦争がきっかけで、アウグスタを除く殆どの各都市は同盟を組み、現在の様な統一国家としての一歩を踏み出したと言う訳です。
この立役者である『Tierra』の面々は英雄視され今でも語りぐさになっています。
アウグスタはと言うと戦争終了後から途端に大きな壁を都市周辺に建設し、現在に至るまで一切の交流を絶っている状態です。

そしてこの戦争が元素戦争と呼ばれるようになったか、これは判りますね?
そうです。
この戦争の後、徐々にではありますが空気中の元素の濃度が薄くなっていったのです。
初めは微々たるものでしたが、現在では元素を用いた機関はほとんど作動せず、魔術も余程の実力がある者でない限り扱うことが出来なくなってしまいました。
しかも、大体の家庭には、元素魔法を用いた生活必需品が多々あり、生活の面においても少なからずの支障が出てきていた、と言う事です。
しかし、これも未だに原因は分からず、解明が急がれている案件の一つです。

「よって今のご時世で魔法はおろか、それを行使する魔術師なんていうのは、ごく一部を除いて存在するはずがないのですよ。わかりましたか?」

「ぶっちゃけた話、要はウィザードがアウグスタに喧嘩を売ってぼろ負けして何故か魔法が使えなくなったって事だろ?」

……ぶっちゃけすぎです。

「とにかく、魔法使えることも自分が魔術師だと正体を明かすようなことをすると言うのはおかしいですね」
「まぁ、助けて貰ったんだしそれで良いじゃん」
椅子の背もたれに目一杯もたれながらそう答える。

どうして彼は、こうも楽観的と言うかここまで物事を軽く考えられるのでしょうか?

「それよかキリエの事なんだけどさ……」
「あぁ、それでしたら私の方で何とかしましょう」
「ホントか!?」
「知り合いの孤児院に話を付けておきます。話が付くまでの間は私の部屋で預かることにしましょう」
「え……」
アルの顔が予想外と言わんばかりに驚く。
「何か不具合でも?」
「いや、そう言う訳じゃないんだけどさ」

352スメスメ:2008/07/15(火) 00:25:53 ID:ddy6MTJU0
「まさか、一緒に連れて行くなんて言うのではないのでしょうね?」
そう言うと彼は黙り込んでしまった。
まさか本当に考えていたとは。
全く、何を考えているのでしょうか?
「で、でもさ。」
「『でも』も何もありません。仮に連れて行ってアナタはあの子にもしもの事が起きたとしたらどう責任を取ると言うのですか?」
「じゃあ、アンタは初めから見捨てればいいって言うのか!?」
「そうは言ってません。今のアナタでは彼女は守れないと言っているのです」
「守ってみせるさっ!」
そう、彼の眼と同様に強く言い放ちスッと立ち上がった。
「キリエ、行こうか」
そうして、キリエの手を取り入ってきた窓から出ていこうとする。

「何処に行くのですか?」
そう問いかけるとアルは私の方を見ずに
「じっちゃんの所。相談する人間違えたっ!」
まさか……
「今からすぐにブリッジヘッドまで行くつもりですか!?第一、行くとしてもどうやって行くつもりなんですか?」
「鉄の道沿いに歩いていけばそのうちたどり着くだろ」
「アウグスタの関所はどうするのです!?」
「なんとかなるっ!」
馬鹿げてる。
無計画もいいところではないか。

「……アナタの一度言い出したら一歩も譲らないところは、本当に『あの人』と一緒ですね。もう何も言いません。ですが、路上強盗団の動きが最近活発ですから気を付けて下さいね。あと…」
「分かったから、もう良いっ…」
もはやうんざりしている様子の言葉を遮り
「いえ、これだけは言わせて下さい。非常に大切なことですので」
「…何?」
「せめて玄関から出ていってくれませんか?」


すると、軽く舌打ちをして玄関から出て行くアル。
その後ろをトコトコとついていくキリエちゃん。




……ふぅ、やっと出ていきましたよ。
きっと、寮監にまた叱られることでしょうね。


それにしてもあのキリエと言う娘、不思議な雰囲気を持つ方でしたね。
何故でしょうか昔に同じ様な雰囲気を持つ人と会った事あった気が…。
ふぅむ、どなたでしたか?妙に引っかかる。

……おっと、こんな感慨に耽っている場合ではありませんでした。
私もそろそろ支度をしないと仕事に間に合わな…。

不意に時計を見やるのと同時に、私は眉を軽くしかめる。
もう出勤しなければ、遅刻が確定な時間だ。

「これは…、ちょっとマズいですね…」
そう呟くと軽く頭を掻いて、急いで支度を始めた。

353スメスメ:2008/07/15(火) 00:29:54 ID:ddy6MTJU0
小説スレ5 >>750
小説スレ6 >>6-7 >>119-121 >>380-381 >>945-949
小説スレ7 >>30-34

ぎゃー!sageれてない!?


……気を取り直してコメ返しだけでもしたいと思います。

>国道310号線さん
いやっ、そんな勉強になるような箇所があれば、むしろ教えていただきたいくらいでして……。
自分自身、アイナーはもっと掘り下げたかった所ですが、技量が追いつかずあの様なモノになりました。
もっと各キャラクターを生かせるように書きたいです。

>ESCADA a.k.a DIWALIさん
確かに萌えますな〜♪
しかし、自分自身が【萌え】より【燃え】体質なので熱い話が来るとさらに悶えます。
しかも、変に武に関わっていた分、「この格好でこの動きって動きやすいか?」などと考えてしまうのでちょっと楽しさ半減してしまう体質?です。
茶会ではお話があまり聞けなかったのでまたの機会にでもお話しませう。

>黒頭巾さん
スタダじゃなかったのね……orz
サバイバルで生かさず殺さず無限地獄……、えぇのぉ。
自分の趣味が入ってる?それがどうしたっ!
そんな黒頭巾の作品が大好きだっ!!(←こう言うところが【燃え】なんだろうな)

今回から別キャラクター中心の視点になります。
ややこしいかもしれませんがどうか生暖かい目で付き合ってやってください。

354拙作失礼します@初:2008/07/18(金) 06:21:08 ID:JxIMEokA0
 まぶたの裏側に赤い光を感じた。
六時起床、本日も晴天なり。
アルコールに犯された頭を二、三度振り、上半身をゆっくりと起こす。早起きは良い事だけど、褒めてくれる人物など私の周りには一人も居ない。
ベッドの脇にある机へ首を向け、机の上に鎮座する、鈍く青白い光を放つパソコンに視線を移す。最近はまり始めたネットゲームの資金廻りの一つである、「露店」を確認するが、私が出品していた商品は寝る前と変わらず画面の上に浮かんでいた。
ため息を一つ、気だるい意識と一緒に吐き出す。会社もやめ、怠惰で自堕落な生活にまみれたこの私を心配するものは、親兄弟、友人どこに矛先を向けてもどこにも存在しなかった。
立ち上がり、牛乳でも一つ飲もうかと思うが、それでも無気力的な思考に脳を支配され、その計画は直ぐに頓挫する。そのまま私は敷布団に体を預け、気が付けば二度寝の体制に入っていた。

――――――――

「あなた、大丈夫?」
 一人暮らしの私に有るはずの無い声が鼓膜を揺らす。開いた眼球に飛び込んで来たのは、雪のように白い華奢な腕。次に飛び込んできたのは手を伸ばした少女の隣に立つ緑色の生物だった。
「……へ?」 
 自分でも間抜けな声を出してしまったと思う。それでも私の脳は今の状況を解することを。その緑色の生物が振り上げた槍のような物――否、あれは「槍そのもの」だ――が次の六十五の刹那、その腕に突き立てられたその状況を、一体何なのか思考することを拒み続けていた。
 少女は苦痛に顔を歪ませながら、それでも私に笑いかけようと必死に笑顔を繕っていた。彼女の伸ばした指先から垂れた血が私の顔にぽたりと垂れ、視界を赤く染める。そこで初めて、体が動いた。
 声にならない声を上げ、全力で後ずさる。手の平に感じるごつごつとした感触、今まで味わったことの無い極上の恐怖。まるで夢とは思えなかった。
 私が避難したことにより少女は臨戦態勢に入ることが出来たらしい。金色のイヤリングを揺らしながら大きく後ろに跳び距離を取り、その背の丈もある大きな弓に、光り輝く矢をゆっくりと番えた。その光に、緑色の生物のぬめぬめとした鱗が七色に光る。牙とその口角から涎を滴らせ、距離を詰めるために少女に飛び掛った。
 瞬間、少女の細い腕から光の粒が舞った。目を覆わずにはいられないほどの圧倒的な明。二、三秒後、瞼を開いたときには怪物の姿は無く、緑色の血だまりに立つ少女だけが残されていた。
 少女は私のほうへ顔を向け、ゆっくりと微笑む。安堵から全身の筋肉が融解したように弛緩し、私の意識はまたも闇へと落ちていった。

――――――

 ぶぅん、と静かな音を立てる冷蔵庫。そこはいつもの私の部屋だった。夏の暑さのせいだけではない汗が全身を包んでいて、酷く不快だった。夢、にしてはリアルだった。心臓の鼓動が自分にも聞こえるほど高鳴っている。
 とりあえずシャワーを浴びるため、体を起こす。壁に掛けられた時計に目をやると、時刻は正午過ぎを刻んでいた。深く寝入りすぎた、と反省をする。
 熱を帯びた頭と体をぬるめのシャワーで流し、バスタオルに身を包み。そこで、冷静な思考回路をやっと取り戻す。
 一日の大半をネットゲームで費やすという病的な生活のせいで、おかしな夢を見てしまった。壊れているんだろうな、と自分自身の評価を下す。
 パソコンに向かう。変化の無い画面に心の中で悪態を吐きながらも、私は操作のためのマウスを探す。
 クリック、操作、クリック。ゲームへ本格的に熱が入り始めたその時、マウスを動かす私の右手に何かが当たり、床へと滑り落ちた。
 屈み込み、机の下を見ると。錆びたイヤリングが落ちていた。脳裏に少女の穏やかで優しい笑みが浮かび上がる。自分のような人間を身を挺して守ってくれた、あの少女。

 十八時過ぎ、とあるコンビニ店員は目を丸くした。毎日この時間にやってくる一人の客。同じコンビニ弁当とパックに入ったミルクティーを買い続ける客が、今日はアルバイト情報誌を手にレジへ向かってきたのだ。
 何かあったのだろうか。勿論店員には分かることは無い。ただその表情は晴れやかで、それを見るコンビニ店員の心も少しだけ嬉しくなる。もう顔なじみとなった二人に、いつもより少しだけ、明るく取引が交わされる。
一人の少女の笑いかける声が、どこかから聞こえた気がした。

355354:2008/07/18(金) 06:25:59 ID:JxIMEokA0
 勢いだけで書かせてもらったので言葉の重複が多々有ったり、言い回しがおかしかったり
改行がきちんとされていなかっりと、不備だらけで申し訳ないです……。
 スレ汚し失礼しました。

356◇68hJrjtY:2008/07/18(金) 09:10:04 ID:hUbuaNDM0
>スメスメさん
なにやら新展開を予感させつつ登場のアルの兄、クニヒト。理知的な仕事人っぽさが感じられますね(*´д`*)
それよりなにより、この小説の世界観がだんだん浮上してきた事も特筆できますね。
「ウィザードギルドがアウグスタにケンカを売った後なぜか元素が薄くなった」分かりやすい解説までありがとう、アル(笑)
つくづく今のRS世界が戦争状態になったらと思うと…しかし、「ティエラ」という英雄集団もキーワード的に気になります。
アルとキリエが無事にブリッジヘッドまで辿り着けるかどうか、見守らせてもらいますね。

>354さん
初めまして!投稿ありがとうございます!
リアルとネットの境目がつかなくなる…まさかとは思いながらも誰もが恐怖する(?)、千夜一夜物語風小説ですね。
それが夢だったのかまた現実だったのかは分りませんが、彼(彼女?)が前に向かって一歩進めたのが何より。
画面の中のキャラが警告を、そして祝福をしてくれたみたいなように捉えつつ読ませていただきました(*´д`*)
もしまた気が向いた時の投稿などお待ちしています♪

357憔悴:2008/07/20(日) 01:35:01 ID:Wv5HCA4E0
お前は人間じゃないな!
出て行け!この村から!
この村を破滅に導く悪魔だ!!!

…もうやめてください…
どうしたら、この悪夢から逃れられるのでしょうか…
こんな力のために、こんなに辛い奴隷の毎日
救世主なんているのでしょうか
いたら、今すぐ私を助けてください…

「…ロンサムさん?」
チェルがロンサムの顔を覗き込む。
「どうかされましたの、顔色が、悪いようですわ」
「いや…なんでも、ないですよ」
自分が異種職ということが知られてからもう1週間程たった。
彼女たちは自分のことを仲間だと思ってくれている。
…判ってる、判ってるさ。
それは彼女たち自身も異種職であるから…
自分のことを同じ人材だと思っているのだろうな…
「…あんまり無理しないでくださいね、心配になりますから…」
しかし、この心を通る暖かい気持ちは何なんだろう
彼女はやっぱり、私の…
「ぼにいいいいちゃん!!!!!!!!!!」
「ん?」
台所にいたリーネが叫ぶ。
それはボニーに対してだった。
「あ、あたしのはちみつぷりんたべたでしょ…!!」
「嗚呼、うまかったぞ」
「うぐー!今日こそ息の根を止めてやるううううッ」
リーネがスリングを構える。
それにあわせてボニーも拳を握って戦闘態勢になった。
思わず笑みが零れてしまう。
幸せすぎる、こんな、ただ総帥様とリバーシをしたり、ボニーとリーネさんの戦闘を見てるだけのような、平凡な毎日でも。
このまま、この毎日が続けばいいと、誰もが思うだろう。
いままでなかった幸せが、いま降りかかってきている気がする。
それも、長くはないのだろうが。

358憔悴:2008/07/20(日) 01:35:38 ID:Wv5HCA4E0
「あの…」
数時間たち、ボニーとリーネが疲れて一緒に昼寝をしているころ。
B棟に珍しい来客が訪れた。
珍しいのは、2点あった。
まず、依頼ならばA棟にいくか、もしくは手紙で伝えるからだ。
もう1点は、彼女はサマナーのようだったのだが…
「あ、はい。わたくし、サマナーの格好をしていますが、悪魔なのです」
確かに、彼女はサマナーなのに髪が赤色であった。
チェルとは違う意味で、目立つサマナーだった。
「それで、今日頼みたいことなのですが…」
彼女は、鞄から、ルビーともとれる宝石を出した。
それが、魔石と形が同じくらいなのはいうまでもないだろう。
「あなたはいったい…?」
「元々、地下界にいた悪魔の頭でございます」
追放された悪魔のトップ。
つまり、悪魔の姫君ということだった。
「記憶はあるのですね、珍しく」
「はい、それで、この魔石を預かってもらいたいのです」
「ふむ…また、それはどうしてですの?」
「それは…」
地下界は元々、この"ライシュ"さんの父上がまとめていたものらしい。
だが、お人よしだった父上は別の者に王の証を渡してしまった…
悪魔、ネクロマンサーと鬼能、鬼たちは互いにいい関係ではなかったため、
王の証を握った元鬼能の頭は悪魔たちを出て行かせた。
しかし、失敗はここだった。
悪魔たちは魔石を持っていたのだ。
それも、2つも…
「わたくしがもっています、ルビー…それと」
またもや鞄を漁る。
そして、今度は紫色の宝石をとりだす。
「元は鬼能の姫がもっていたものを、わたくしたちのネクロマンサーが拾ったらしく…アメシストです」
「そのネクロさんも色が紫だったり?」
「はい、その通りです。しかし、彼は元々は普通の青いネクロマンサーでしたの。だけど、このアメシストを拾ってきたときに変色し…」
紫色にかわった、ということだろう。
しかし…鬼能の姫、ということはサリアがもっていたのだろうか。
彼女は紫色ではなかったが…
「推測ですが、魔石を手放すと力がなくなる、と考えられています」
「では、ライシュさんも力を…?」
「わたくしは、この魔石をもつ相応しい人物じゃなかったため、力はうまれませんでした。いっておきます。サリアは手ごわいです。本体は何度引き裂いても死にません…それと、戦うなら、この2つの魔石に相応しい人物を探してください。そして、仲間を増やすべきです」
魔石は人物を選ぶ。推測に、ゆっくりと…
相応しい人物が見つかったら、きっとなにか魔石に異変があるはずです。
4人じゃ無理です…鬼能はサリア一人じゃない。
覚えておいてください…

359憔悴:2008/07/20(日) 01:36:06 ID:Wv5HCA4E0
そう言われても、全くと言って検討がつかないわけだが。
「だけど、これであと6個になったね、魔石」
「…魔石は、格それぞれの頭がもってるんじゃないかしら…その人が異種職と限られるわけじゃないみたいだけど」
4人はなんらかで最初に選ばれた異種職。
残りの8個…まず1個目のルビーは悪魔の姫君。2個目のアメシストは鬼能の姫君。
そして、実際、チェルはテイマーの中でも有能な総帥をしている。
こう考えると、残りの6つも、シーフ、武道の頭、ウィザード、ウルフマンの頭…と
持っているのではないか…
「シーフの頭ならしってるぜ」
ルビーを見ていたボニーが地図で、スウェブタワーを指差す。
「ここのいっちばん地下の階にいるといわれてる。俺のにーちゃんだけどな!」
「貴方のお兄さんはシーフの頭ですの?」
「いや、そうじゃねーけど、あいつは強いぞ、とにかく」
まあスウェブの地下にいる時点で強いのはわかるが。
「…まあ、他に当てもないしいってみましょうか」

「おい…お前…」
何とかぼろぼろになりつつ(リーネは無傷)
スウェブの最下階につく。
そこにいた黒い人物にボニーは…
「老けたなあ兄貴い!!」
「おお、ボニーか!おめーかわんねーなぁー!」
ボニーと瓜二つ。
少し違うといえば帽子とマントの色だろうか。
「なー兄貴ぃ、魔石っつーのもってねーか?」
「ませきぃ?しらねーなぁ…だが、このどこかのモンスターが妙な石を持ってる、ということは聞いたことがあるぜ!」
誰にも倒せない、紅色のオーガ。
聞いた話から察すると、魔石を持っていることは明らかだった。
「そいつはどこにいるんですの?」
「おんやぁ…ボニーのこれか!」
小指を立てる。
その瞬間ボニーとロンサムからの拳でノックアウトされたのは言うまでもない。
「なんでロンサムまで?」
「ただむかついただけですよ」
こき、と指を鳴らす。
まあそんなことで死ぬシーフの頭じゃなさそうなんだが。
「あっちの方でみたっていうな。俺はしらねーけど…」
「ありがとうございます」
丁寧にお礼を言い、指がしめした方向へ進む。
「…ッなんか…怖いよ…」
今まで珍しく黙っていたリーネが、ウサギの姿でボニーにすがりつく。
「すごい、邪気と…痛みや、苦しみを感じるの…まるで、あのキングベアーの時みたい…」
紅色のオーガ…一筋縄ではいきそうになかった。

360憔悴:2008/07/20(日) 01:36:37 ID:Wv5HCA4E0
「おっ…よくあうねぇ。もしかして、あたいのストーカーかい?」
サリアがにやにやしながらオーガを尻に引いていた。
そして、手にもっていた骸にあの時と同じ、黒い結晶を入れ込む。
「またあの時みたいに…ッ」
「いんや、そんなヘマするもんか。そんなことしたらあんときみたいに浄化されちまうんだろ?あたいは王に新しい力を授かったんだよ!」
声を張り上げて叫んだ瞬間、黒い結晶はロンサムにむかった。
「そいつが心に闇をもってると思ったんだね…さあ、仲間と死の舞を踊りな!」
地に手を着くと、ビシビシと音を立てて地面が裂けた。
それはチェルを狙ったものだった。
「ッ!?」
がくん、と力が抜け、気を失ってしまう。
「ふふ…さあ、いくんだ!」
心が宿っていない目で、矢を取る。
「ロンサム、やめ…ッ」
確実にボニーの足を狙う。
そして、今度は5本まとめて矢を取る。
今度狙っているのはボニーの横にいるリーネだろうか。
「どーして…なんで、ロンサムさんはそんな…」
操られちゃったの…?
泣き始めるリーネに、さすがのロンサムも手が出せないのか、またボニーの方に弓を向ける。
「…くそ…とりあえず、その弓と矢は没収だな!」
分身を作り、ロンサムへ向かう。
その途中何度か矢を受けたが、分身が消えるだけ。
そして、弓と矢を奪いとるが…
「!!ボニーちゃん、逃げて、それは罠…ッ」
後ろから出した槍で、大きな二つの竜巻を起こす。
「てめー…いいかげんに…」
「やめて!!」
鞭を取り出そうとしたボニーをとめる。
「だめ、だよ。傷つけちゃ!ただ、ただ、操られているだけなのに…仲間なんだよ!?だめ…だよ?」
泣きながらリーネが叫ぶ。
頬から流れた雫は、ぽた、と地に落ちる。
「かはっ…はぁ…はぁ…」
その声を聞き、チェルが立ち上がる。
手足には無数の傷。
しかし、しっかり握った笛を精一杯吹く…
その音は、あの時奏でた浄化の音源だった。
「………ごめ…なさい…」
ロンサムは槍を落とす。
その声を聞き、チェルはそっと傍による。
そして、子供を慰めるように、ぎゅっと、抱きしめる。
「…総帥…」
「大丈夫、貴方が思っているほど、辛い人生じゃない。私たちがいる。だから…」
そっと耳元に顔を寄せ、
苦しまないで…
と囁いた。

361憔悴:2008/07/20(日) 01:38:02 ID:Wv5HCA4E0
その後、オーガからガーネットを貰うと、B棟へ帰還した。
チェルの傷は思ったより深く、1ヶ月は動けないという。
そんな体で歩き、ロンサムを抱きしめたのは…
「やーっぱり愛の力!だよねー!」
「なー!」
リーネとボニーがにやにやしながら笑いあう。
「…うるさいですわ」
ベットで横になっていたチェルは、低くどすの効いた声でつぶやく。
ばたばたと二人は総帥の部屋をでる。
たまには着替えも必要、と服を脱ぐ。
「総帥ー、あの件なのです…がっ!?」
白い肌に、大事なところだけを隠すようにした下着姿のチェルをみたとたん、時が止まる。
「し、失礼…」
ロンサムは鼻を抑えながら、開きかけていた扉を閉める。
「…なん…ですの」
チェルもまた、布団を被ってつぶやいた。
心の中の何かが、動いた気がした。

ドアの向こう、総帥部屋の前でかくん、と体を落とすロンサム。
(み…みてしまった…)
白くて、光る肌。
それに、何時間もかけて合わせた様な純白の下着。
遠くからみたら…まるで、裸のような…。
ぶはっ、と思いっきり血を吹きだす。
(な、なにを考えてるんですか、私は…)
鼻を抑えつつ、その場を後にする。

「チェルちゃんが動けない間に、1人異種職見つけるよぅ!」
「情報は集めてきました。さあ、見てください」
ロンサムが5枚ほど、紙を並べる。
「んー?ロマ娘シュリア…ああ、あの連続暗殺事件を解いた女か」
「スカイアーチャーズのGMライリア…ギルド戦争では勝ち続きのあのGですね」
「…ッ!!ぷ、ぷりんせすのねお…こ、このこにはまだ会いにいきたくないなぁーなんて…あはは」
「後は有名な剣士のホクスと…ネクロマンサーのウリン…ふむ」
何処からいこうか?

(1,チェルがいない間にロマっ子に話を聞いておく
2,格好良いおねーさまとお話をする
3,リーネが嫌がるプリンセスのところへいく
4,おにーさんと遊ぶ。(話す
5,ネクロちゃんに飴をあげる(話す…)

さあ、どれがいいかは小説スレの方が決めてください〜。
ちなみに今回、ひぐらしの鳴く頃に で使われている奈落の花を聞きながら書きました。あの曲は大好きです。
時間がないためコメント省き。

362◇68hJrjtY:2008/07/20(日) 04:17:30 ID:hUbuaNDM0
>憔悴さん
流れるような筆遣いとはまさに。たった5レスでかなーりな話の展開に驚きです。
宝石の残りも気になりますが、まずはやっぱり他の異職種…3人の候補が挙がっているようですね。
仲間を見つけて悪魔を倒す!なんだかオラ、わくわくしてきたぞ!っていうのは置いといて(笑)
さりげなくボニーの兄貴なども登場してますが、チェルの下着姿とそれに鼻血ブーなロンサムの両方に萌え萌え(*´д`)
次回は選択式ですか!(笑) ゲームブック風なノリに吹きました。うーん、では私は5で…旦~

363名無しさん:2008/07/20(日) 13:27:01 ID:XedeNcNE0
m

364ワイト:2008/07/20(日) 19:01:01 ID:bygiWkDM0
完全に自分の存在、皆無になってるかも?それは置いといて本題なんですが、
前スレの小説の続き、まだ完成に至ってないっていうか…難しい状況です。
完成するのも、何時になるやも知れませんが、ご了承くださいますよう…
まったく小説自体とは無関係な無駄レスですので、スルーしてくださいな。

365◇68hJrjtY:2008/07/21(月) 12:36:53 ID:Dh9WYsnM0
>ワイトさん
ワイトさんの小説、ちゃんと覚えてますよ!スルーしろなんて寂しいことは言わずに(´・ω・)
もし続きの構想があるというならばいくら時間がかかっても構いません、お願いします。
ただワイトさんが書ける状態でない等の理由があるならば止むを得ませんが…。
でも文面からは続きを書く方向(?)のようですし、ともあれお待ちしています!

366国道310号線:2008/07/21(月) 20:12:37 ID:Wq6z33060
・小説スレ六冊目
 第一話 〜 ミニペットがやってきた! 〜
 前編 >>487-490 後編 >>563-569

 第二話 〜 狼男と魔女 〜
 1 >>784-787 2 >>817-820 3 >>871-874 4 >>910-913

--------------------
・小説スレ七冊目
 第三話 〜 赤き呼び声(2) 〜
 1 >>228-232 2 >>254-257


前回のあらすじ:ミモザの回想、ストーカーアッシュ、ケルビと金太郎合流の三本でお送りしました


アラクノイドと出会ったあの日、幼い色だった新芽も大きくなり深みを増していた。
あれから程なくして卵を産み母親となった彼女に、私は亡くなった母の面影を求めていたのかもしれない。


アラクノイドが身を潜めているグレートフォレストの洞穴。
ミモザはアラクノイドの体に巻いた古い包帯を新しいものに変えていた。
彼女の全身を覆っていた包帯はほとんど取れ、歩くには支障が無いほど回復していた。
「もうすぐ包帯いらなくなりそうだよ。」

−そうであるか−

治療のために洞穴へ通っているうちに、言葉少なかったアラクノイドも彼女に答えるようになっていた。
包帯を巻き終わるとミモザはアラクノイドに弾ける笑顔を向ける。
「ねぇ、卵見てもいい?」
触ろうとするとアラクノイドが嫌がるためしないが、近くで眺める分には何も言ってこない。
彼女の回復していく姿を見るのも嬉しかったが、ミモザは彼女の子供達の誕生も心待ちにしていた。

アラクノイドの了解を得、白い蜘蛛の糸に覆われたたくさんの卵を見やる。
心なしか、前に見た時より大きくなっているように思えた。
「早くかえるといいね。」
笑顔でそう見上げれば、アラクノイドも顔をほこらばせ穏やかな表情をしている。
だが、ふと真面目な雰囲気でミモザに向き直った。

−ミモザ、おぬしは二度と此処へは来るな−
突き放すような言葉にミモザは驚き瞳を瞬かせる。
小声で「え?」としか聞き返せない彼女にアラクノイドは視線を外すと顔を背けた。

−この子達が孵ったら、わらわはこの洞穴からいなくなる。 会いに来ても無駄ということじゃ−

「そんな…。遠くへ行っちゃうの? もう会えないの? 」
ミモザはアラクノイドの太い脚をぎゅっと握ると揺さぶる。
仲良くなれた彼女から突然告げられた離別の言葉に、ミモザは泣き出しそうな顔をした。
「こいつぁ、元々この森の者じゃねぇだろ。 元気になったら帰るだけでぇ。」
アラクノイドの脚に抱きついたままの彼女にケルビーはぶっきら棒ながらも諭す。
嗚咽に変わりそうな吐息と零れそうな涙を懸命にこらえ、ミモザはごわごわした体毛に身をうずめる。
アラクノイドは何も答えなかった、沈黙した洞穴の中、外の木々のざわめきがやけに耳についた。

−来るよ 人間 人間だ たくさんいる 恐い顔 人間来るよ いっぱい来る 火と鉄持ってる こっち来る
 人間いるよ ほらすぐそこ 来る来る来るよ  ……来た −

バッと顔を上げるとミモザはアラクノイドを通り越して洞穴の外へ走った。
聞こえてきた声は木のものだけではない、風も鳥も騒いでいる。
注意深く耳を澄ましていると、いくつもの足音が近づいてくるのが分かった。
囁かれた単語に嫌なものを感じていたミモザだが、森から現れた群衆に息を呑む。
「何でぇ、これは…!」
彼女の後を追ってきたケルビーも驚きを隠せないでいた。

十数人の男達が手に武器や農具、松明を持ち行進してきたのだ。
それもいずれも見知った顔ばかり、ミモザの村の住人達であった。
「ミモザ! 怪我は無いか?」
ミモザに気付いた村人の先頭を歩いている壮年の男性が彼女に歩み寄る。
「…村長さん。」
ミモザは戸惑い気味に彼を見つめた。

村長の手には無骨な長槍が握られており、なめし皮の鎧を身に着けている。
彼は彼女の無事な姿を見て安堵の表情をしていたが、まるでこれから戦場に赴くような緊張感がうかがえた。

367国道310号線:2008/07/21(月) 20:14:23 ID:Wq6z33060

見つかった…? なんで? だれにも言わなかったのに。

アラクノイドと出合ったあの日以来、ミモザは彼女の事を誰にも他言したことは無かった。
村人達には自然の声は聞こえないというのに、彼等に口止めをしていたほどだ。
お前の様子がおかしい事を心配した村人の一人がお前の後をつけていき、大蜘蛛を見つけたのだと村長は言った。
「絶対中には入るな。」
ミモザが愕然としていると村長は村人を引き連れ洞穴に入ろうとする。
「っ… ダメ!」
ミモザは素早く村人の前に回りこむと両手を広げ立ち塞がった。

アラクノイドが殺される、そう感じた彼女は必死に彼の行く手を阻む。
だが、村人達に押しのけられ、彼女の小さな体は道を開けてしまった。
よろめきながらも再び彼等を止めようとするが、彼女は誰かに腕をつかまれつんのめる。
「お前はここにいなさい。」
腕をつかんだのは隣のおじさんだった。
「やだ! はなして!」
懇願し腕を引っ張るが、繋がれた手は固くビクリともしない。

そうこうしていると、洞穴の奥から布を裂くような動物の鳴き声と人々の喚き声があがった。
大きな奇声に驚いたおじさんの力が緩む。
その隙を逃さずミモザは彼の手を振り払い、一目散に洞窟の中へと駆け出していった。
「あの、バカッ。 戻りやがったっ。」
この場にいればミモザは安全だと思い傍観していたケルビーは舌打ちする。

あの物々しさから見て村人達はアラクノイドを本気で退治するつもりだ。
対するアラクノイドもそう安々と村人にやられるとは思えない。
それに彼女は卵を守るために容赦なく村人を襲うだろう。
激戦となることは想像に容易い、その渦中にミモザは舞い戻ったのだ。

通い慣れた洞穴を息を切らしながらミモザは進む。
「お願い無事でいて!」
祈るような気持ちで彼女はアラクノイドのもとへ急いだ。


アラクノイドは侵入者達に威嚇の声をあげ、前脚を大きく振り上げる。
蜘蛛の中でもとりわけ大きいアラクノイドであるが、今は小屋ほどあろうかと思えるほどだった。
その迫力に気圧されて動けないでいた村人達に村長のゲキが飛ぶ。
「怯むな! 取り囲むぞ!」
彼は長槍を下段に構えるとアラクノイドへ突進した。

槍を頭上で旋回させ蜘蛛を牽制し、一気に距離を詰めた勢いを乗せ顔面を突き刺す。
眉間を狙った攻撃はアラクノイドが避けたため急所を外したが、彼女の前肢に深々と突き刺さった。
耳をつんざくような悲鳴がアラクノイドからあがる。
「お前はあっちに回れ!」
「うっ…、こいつ卵まで産んでるぞ!」
接戦する村長に続き、村人達も各々動き出した。


ミモザとケルビーが洞穴の奥に辿り着いた時には、すでに戦闘は激化していた。
奥にアラクノイドを囲んでいる村人達、手前には彼女にやられたのだろう頭から血を流し倒れている人。
アラクノイドも背中に数本の槍などが刺さり、右前脚は無くなっていた。
その光景を見た瞬間、ミモザの体にも激痛が走り身悶える。
苦痛や恐怖といった感情が彼女の中に流れ込み、その身を切り刻んでいった。
「ミモザ…。」
我が身を抱きしゃがみ込んだ彼女をケルビーは心配そうに見やる。

「なぜ、戻ってきた!?」
すぐ近くで怒鳴られ、ミモザはゆるゆると顔を上げる。
目の前にいたのは村長だった、彼も肩から胸にかけて裂傷を負い荒い息をしている。
「お願い…やめて……。」
涙にかすむ視界の中、痛みを訴える心身を堪えて彼女は叫ぶ。
「どうして、こんなことするの?! アラクノイド、ケガしているのに! ここでじっとしていただけなのに!!
 …もうすぐ、もうすぐここから出て行くって言っているのに! お願い… やめてよ!!」
洞穴中に彼女の声は響いたが、村人と蜘蛛の戦闘は止まることはなかった。

泣き崩れそうになるミモザの両肩を村長は掴むと、彼女にいきり立った顔を向けた。
「直に卵が孵化すると子蜘蛛は母蜘蛛を食い殺し、次は人間も襲う…! 村のこんな近くに巣があるのは危険すぎ
 る!」
彼女の目を見すえながら彼は続ける。
「こんな時まで魔物の声が聞こえるというのか!? いい加減にしろ!!」
ミモザは零す涙さえ忘れ、ただ茫然と彼を見つめた。

368国道310号線:2008/07/21(月) 20:16:38 ID:Wq6z33060
激しい衝撃音がしたかと思うと、二人の足元に人が吹き飛ばされてきた。
村長は彼が吹き飛んできた方向に視線を戻し、厳しい顔をした。
お互い一歩も譲っていなかった戦況は一転、アラクノイドの猛攻に一人また一人と村人は倒れていっている。
−我が子には一遍たりとも触れさせぬ!−
彼女は血に塗れたアゴを大きく広げ雄叫びを上げた。

「ちっ。」
長槍を持ち直すと、村長は再びアラクノイドに攻撃を仕掛ける。
ミモザの瞳は村人とアラクノイドの激戦を映していたが、心ここにあらず只々立ち尽くしていた。


訳が分からなかった。

村長はアラクノイドがいるこの場所を危険だと言う。
アラクノイドは優しい蜘蛛だ、だって人間の自分を襲った事など一度もなかった。
村長はアラクノイドの子供が彼女と人間を襲うと言う。
あの優しいアラクノイドの子供が襲うというのか?
どうして?

思考は堂々巡りを続け、当ても無い出口を求めて意識の深淵を彷徨う。


アラクノイドが受けているダメージは大きく満身創痍ながらも倒れる気配は無い。
最初は数で押していた村人達だが、ほとんどが負傷し重傷者も出始めている。
「火を使う。 可燃剤を撒け!」
このまま手をこまねいていては不利と、一気にかたをつけるべく村長は最終手段に出た。


村人の一人がアラクノイドに火矢を射ると、瞬く間に炎が彼女の全身に燃え広がる。
次に放たれた矢は彼女の足元付近に刺さり、燃料の道をたどって卵にも発火した。
洞穴内を揺るがす凄まじいアラクノイドの叫びに、ミモザはハッと我に返る。
「アラクノイド!」
卵を見守るアラクノイドの優しい顔が頭を過ぎる。
このままでは母子共々焼かれてしまう、そんなことは堪えられなかった。

走り寄ろうとするミモザ、しかし、ケルビーは彼女のスカートを咥え行かせない。
「ケルビー! 放して!」
「バカヤロウ! おめぇまで燃えちまうだろうが!」
水の神獣をミモザが喚び出せれば何とかなったかもしれないが、まだ一番簡単な火の神獣しか彼女は喚べない。
今行っても無駄死にさせるだけだ。
そうなってしまっては、彼女の母親に顔向けできないではないか。

−あぁ、わらわの卵…−
炎に包まれ悶えながら、アラクノイドは卵の火を消そうとその身を覆い被せる。
その時だった、命の危機を感じたのだろう、まだ孵化の時期には早いというのに幼虫が卵から飛び出してきた。
裏返ったような甲高い悲鳴をあげる半透明の白い幼虫は、燃え盛る火を避けるとアラクノイドの腹に取り付き、
生命の行動原理に基づくままその体液を吸った。
だが、すぐに炎にまかれ、子蜘蛛は親に貼り付いたまま絶命してゆく。

辺りにはすえたような嫌な臭いがして、黒煙が立ち込める。
生に対する壮絶な蜘蛛の姿を見た村人達の中には吐き気をもよおす者もいた。
幼虫は次から次へと卵から孵り、村人にも襲い掛かる。
卵の一番近くにいた男性は握り拳大の幼虫に全身にまとわり付かれ、絶叫をあげ転がり回った。
「くそ…!」
彼に取り付いた幼虫を村長は槍で払うが、深く吸い付いているので中々離れない。
矛先を村長に向けてきた幼虫を槍で裂き、村長は猛然と子蜘蛛郡へ立ち向かった。
「村へは行かさん、全てここで潰すっ!」


襲い掛かってくる幼虫達を、ケルビーは体と同じくらいの長さのある尻尾をしならせ叩きつけた。
殻さえ固まっていない幼虫は地面に激突すると、体液を撒き散らしベシャリと潰れた。
「洒落にならねぇって!」
ぼやく暇も無く幼虫は襲い掛かってくる。
彼は体を反転させ、勢いを付けた尻尾でそれを薙ぎ払う。

逃げ出す村人もいたが、ほとんどは村長と幼虫相手に戦っていた。
いつの間に追いついたのか、隣のおじさんも農具を振るっている。
一匹一匹は大した事無い幼虫だが数は何十匹といる。
ケルビーは周囲に目を配らせたまま、背に守っている主に呼びかけた。
「ミモザ! 逃げるぜ!」
「……ゃ…」
震えるかすれた声で何かを言った彼女にケルビーは振り返る。

ミモザの見開かれた瞳からボロボロと大粒の涙が零れ落ちる。
「…い…や……」
後ずさり首を左右に振る彼女は、両手で耳を塞ぐ。
しかし、彼女の心に直接届く声は容赦なく彼女の心を切り刻んでいった。

−痛い 助けて 死にたくない 熱い熱いよ… 守らなければ 死ね 苦しい お母ちゃん…−

苦痛を訴える声、助けを求める声、何かを護ろうとする声、それらはもう誰の言葉かすら分からない。
轟音のごとく響き渡る声は止め処なく、今は自分の鼓動でさえ耳障りだった。

369国道310号線:2008/07/21(月) 20:18:30 ID:Wq6z33060
彼女の様子を見てケルビーは血の気が引いた。
心が重圧に耐え切れず外界との接触を遮断しようとしている?
術者と心が通わなくなれば、神獣は呼び出せなくなるばかりか具現化すら出来ない。
混戦となっている今、自分を召喚解除することは正に自殺行為。

「しっかりしろ! 気をちゃんと持たねぇか!!」
「いや! もうなにも聞きたくない! 聞きたくないよぅ!!」
激しく被りを振り、目をきつく閉じたミモザはその場にうずくまる。
キィィンと耳鳴りがして、一瞬だけ彼女の世界は無音となった。
消えゆく体でケルビーはせめてもと、ミモザに抱きつき身を挺しようとした。
しかし、彼は彼女の体に後一歩のところで姿を消してしまった。


死骸から死骸に火は燃え移っていく、炎に照らされた岩壁に揺らめく影は不気味なダンスを踊っているようだ。
動いている者が少なくなった洞穴に村長は長槍を杖のようにして、酸素の薄くなった空気を貪る。
最初にアラクノイドから受けた傷が響き、目は霞み立つのがやっとの状態だ。
彼は目の前にいる弱った子蜘蛛を突き刺そうと槍を振り下ろす。
だが、上げた右腕に別の幼虫が噛み付き、とっさに腕を振り払うが、その痛みに彼は槍を手放してしまった。
思わぬ方向に飛んでゆく槍の軌道の先には、うずくまっている金髪の少女。

「しまった…。」
青ざめる村長、しかし次の瞬間、黒い巨大な影が槍と少女の間に割り込んだ。

ドスッ と鈍い音が頭上でする。
暗くなった視界に何かの気配を感じ、ミモザは顔を上げた。
「…アラクノイ・・・ド・・・?」
黒く焼き焦げた蜘蛛の横腹が長槍で貫かれているのが、彼女の泣きはらした目に入った。

−…ゎ…らわ……の……こ……−

力尽き、アラクノイドはゆっくりと地に倒れる。
アラクノイドの最期の言葉は、ミモザにはもう伝わらなかった。
「…あ……ああぁ… ぅああぁあああああぁぁ!!!」
言葉にならない声をあげ絶叫するミモザ、彼女は変わり果てた姿の蜘蛛にすがりついた。
「危ない!」
村長の声に彼女は振り返ると、幼虫が自分目がけて牙を剥き飛んでくるのが見えた。
首筋に鋭い痛みを感じたかと思うと、突然視界は真っ赤に染まる。


そこで、私の記憶は途絶えた。


―ハイランド洞窟B2

崩れやすい足場の坂道をケルビーと金太郎は慎重かつ黙々と登っていた。
ケルビーの背中には眠ったままのミモザが乗せられている。
「おい、本当にこっちで合ってるのけぇ?」
のそのそと後ろを歩く金太郎にケルビーは何度目かの同じ問いをかけた。

落下音も無く崖下にやって来た金太郎にどうやって来たのか問いただすと、彼は降りやすい場所があったと言う。
彼の案内でかなり長い間崖を登り続けると、ようやく頂上が見えてきた。
「やっと着いたぜ。」
ケルビーは石造りの通路に足を付くとふぅと一息ついた。
しばらく犬の姿になっていなかったためか、彼女を運ぶのはいつもより大変に感じられた。
金太郎も重い甲羅を引きずり、通路に這い上がってくる。
彼の歩みに合わせていたので歩く速度は遅くなってしまったが、道を切り開いてくれた功績者にケルビーは感謝
した。

「しかし、ここはどこいら辺でぇ?」
石畳の道に魔力の燭台、自分達が落ちたあの通路に違いないようだが、こんな狭い道があっただろうか。
ケルビーは首をかしげながら辺りを見回した、不気味なほど静まり返った通路は生き物の気配を感じさせない。
「…ん…。」
背中にいる人物が身をよじらせたのを感じ、ケルビーは急いで振り返る。
「気がついたのか?」
ずっと意識が無かった主人の目覚めに彼等はホッとする。
ふらつきながらもケルビーの背から彼女は起き上がると、ボンヤリとした表情で呟いた。
「…呼んでる。」
「はぁ?」
意味が分からず召喚獣とペットは顔を見合わせた。

誰かが助けに来てくれたというのか、だが彼等には声らしきものは聞こえない。
やがて彼女は通路の奥へと進んでいった。
「おいっ、下手に動くと危ねぇぜっ。」
努めて小声で注意を促すが彼女は歩みを止めない。
マントを引っ張ってみたが、少女のものとは思えないほど強い力で引きずられる。

明らかにミモザの様子が変だ、一体何に呼ばれているというのか。
昔は自然の声を聞いた彼女が声に引かれてどこかへ行くという事がよくあり、ケルビーもそれに付き添っていた。
(だが、あの日以来、こいつは『声』が聞こえなくなった。)
どのような人や魔物と接していても、それらの感情を読み取っていた様子はなかったはずだ。

370国道310号線:2008/07/21(月) 20:19:11 ID:Wq6z33060
いや、最近一度だけあった。
金太郎の飼い主でもあるギルドメンバーの剣士が連れていた土のミニペットが活性力を失った時。
ミモザは消えゆくミニペットの心と深く共感し、かの者の想いを紡いでみせた。
(まさか、あの時から?!)
ミニペットのギルメンに対する想いは強かった、それは我が身を省みず尽くすほどに。
その姿と彼女の無理をしてまでギルメンのために紋章品を集めようとする姿が重なる。
失った力が戻ったのは必ずしも喜ばしい事ではない、なぜなら、それが原因で彼女は一度命を落したのだから。


暗闇の中、小さな赤い光が弱々しく瞬く。
その光は苦しんでいた、深い闇に飲み込まれそうになりながら足掻いていた。
−ここから出して−
ハッキリとした声が彼女に届いてくる。
助けなきゃ、その一心で彼女は光へ向かって歩いていった。


曲がりくねった通路を迷う事無く進むと小さい部屋に出た。
部屋の奥は祭壇の様になっており、赤い石の欠片がキラリと輝きを放っている。
これまで敵に遭遇しなかったためケルビーは胸を撫で下ろしたが、その石を見た瞬間、彼の全身は粟立った。
一見、何の変哲も無い原石のようだが、とてつもなく邪悪な光を放っていたのだ。
金太郎もそれを感じたのか、大きな体を僅かに震わせている。

「…見つけた。」
ミモザは呼び声に引き寄せられるまま、赤い石へと近づいていく。
「そいつぁ、ヤバすぎる! 行くんじゃねぇ!」
必死に声を張り上げるが、ケルビーの体は金縛りにあったかのように動かない。
虚ろな表情のまま台座の上に置かれた石を手に取る。
妖しく輝く石は彼女が触れたことで、より一層禍々しさを増したように見えた。

動かぬ体と格闘しているケルビーは遠くから足音が響いているのに気付いた。
ドスドスドスという激しい音は自分たちの後方、通路の先から物凄いスピードで近づいてくる。
同時にキツイ腐臭が漂ってきた。
「今度は何でぇ!」
正体不明の存在にケルビーは更なる危機を感じた。

大地を揺らさんばかりの足音の正体が姿を現す。
ピンク色のガッシリとした肉体、大きさは人間をゆうに超え3メートル近くある。
うめき声交じりの荒い呼吸、目は完全に血走っており、口からはおびただしい涎が垂れ落ちていた。
亜人の魔物ハイランダー、だが、完全に正気を失っているようだ。
「おでの…イシ…。 おでのイジだああああーーー!」
空気をビリビリ震わすほどの大音量で叫び、ハイランダーはミモザへと突進した。

「渡さない。」
石を握り締めると、ミモザは普段見たことも無いような形相でハイランダーを睨みつける。
笛を腰のホルスターから取り出し、魔物へと振り上げ指し示す。
「突撃!」
ハイランダーの登場に驚いていたケルビーと金太郎だったが、彼女の命令にはじかれる様に飛び出す。
今まで体が動かなかったのが嘘みたいだった。

ミモザは命令後すぐに召喚獣を第三形態にへパワーアップさせる。
鎧を纏った犬の姿を経て、炎の魔人となったケルビーは弾丸のように向かってくる魔物につかみかかった。
続いて金太郎もハイランダーへ体当たりを食らわす。

(なんて力だ…!)
こちらは二体がかりだというのに、ずるずると魔物に押されている。
「おでのだあああああああぁあ!!!」
「のあああ!」
咆哮と共にハイランダーの筋肉が盛り上がりグンと力が増す。
両手を合わした状態からケルビーは投げ飛ばされた。

金太郎もはね飛ばしたハイランダーは、ケルビー達には目もくれずミモザへと向かう。
テイルスピアーでケルビーはハイランダーに追撃するが、狂戦士の蹴りが彼女を捕らえる方が若干速い。
間に合わないとケルビーが思った瞬間、目が眩むほどの閃光が小部屋中に溢れかえった。
「グオオオオォーー!」
ハイランダーの断絶魔にミモザはつぶっていた瞳を開き目を凝らす。
純白の世界に無数の十字架型の光に貫かれたハイランダーが身を焼かれていたのが見えた。

ふと、彼女の体を柔らかい何かが包み込む。
光に慣れぬ目で見やると、それは鳥のものに似た白い翼だった。
「マスターさん…?」
視線を上へ辿っていくと、馴染みのある彼女のギルドマスターの壮厳な顔があった。


つづく

371国道310号線:2008/07/21(月) 20:20:53 ID:Wq6z33060
やったぜ! 今回はギャグないぜ!
土のミニペットの件は第一話『ミニペットがやってきた!』とリンクさせています。
第三話は次でラストですが、段々と短くまとめられなくなってきましたorz

以下人並み以下な感想しか書けませんが、レス返しです。

>白猫さん
Puppet完結お疲れ様です!!
大人数の目まぐるしい戦闘を飽きさせず回す力量は流石といいましょうか、もう尊敬します。
各人の戦いに始まり、ネリエル兄弟の決着、ルフィエ親子の戦い、
そして、「マペットと友達になる」など怒涛展開ながらもそれぞれ演出がカッコ良かったです。
ラストのルフィエの回想に今までの物語が込められていて感慨深いものがありました。
すれ違いな落し方もイイ!
四人唱や西、北、南の四強など残された伏線にワクワクしていたりしています。
密かにお気に入りキャラだったムームライトの冥福を祈りつつ、次回作いつでもお待ちしています!

>憔悴さん
前回のスレで尊称を付け忘れてしまい、本当に申し訳ありませんでした!
なるほど魔石は誕生石がモチーフでしたか、登場する異種職の組み合わせが楽しみで目が離せません!
ロンサムのキャラが好きですハナヂバンザーイ。

>68hさん
幼女と筋肉は芸術です。(爆
サマナ・テイマの魅力の一つが人間と自然(魔物)の橋渡し的存在だと思うのです。
立場が違えば意見や思いも違うと思うので、その葛藤を描きたかったのですがゴチャゴチャしすぎた感がorz

>黒頭巾さん
あわわ、そんなにてるみつくんを好いて頂けるとは嬉しいやら恐縮やら!!
本文中に書き忘れてしまった余談ですが、金太郎の名付け親はブルーノです。
七夕の精霊は姫々さんのスピカでしょうか?(違っていたらごめんなさい
黒頭巾さんのほのぼの作品は顔のほころびを超えてニヤニヤして読ませていただいています。

>復讐の女神さん
よくよく考えると相反する系統の魔法を扱うなんて難しそうですものね。
霧散しやすく集まりやすい魔力の性質、なるほどと思いました。こういう細々した設定は大好きです。
謎多き賞金首の正体が気になりつつ、次回楽しみにしています!

>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
幼女ミリアキタワーー!
そして、ミカエルがキレたと思ったら、フィナーアに某銀様が降臨したー!(笑
波乱極まる兄弟劇に魔物凸凹コンビはどう絡むのか楽しみにしています!

372国道310号線:2008/07/21(月) 20:21:30 ID:Wq6z33060
>ドワーフさん
本当は恐い良い子のレッドストーン童話。ガクガク(((( ;゚Д゚))))ブルブル
ゼーレクランに最強伝説が! たしかに心を操るなんて凄まじいです…
次の作品もお待ちしています!

>之神さん
季節もの小説は機会があれば是非…!
なんという流れるプール… 素人にはオススメできな(ry
次回エンティングvsナザルドの予感、楽しみにしています!

>21Rさん&代理人の21R(仮)さん
戦い前の緊迫感ただよう空気の描写が素敵です。
アデルさんが居る浜辺が気になったので適当に調べてみました。
現在RED STONE MAP に上がっている海があるマップ数は12ほど、その内蟹とクラゲが一緒にいるのは
スパインビーチと半島の海辺! ほとんどマップの端と端ですね… アデルさん恐るべし!

>自称支援BISさん
おおお! 復活お待ちしておりました!!
そして、コラボ作品にブルーノを参加させていただきありがとうございます。
ノロケ満載妄想爆走のサマナたん可愛いよサマナたん。
暴走いけめんさんやブルーノのツッコミも面白かったです!
リレー小説やコラボ小説やら、皆さんキャラ掴むの上手すぎますよ…

>スメスメさん
最近アイテムどころか、元素すらまともにドロップしなくなった背景はそうだったのか! と
意味不明な納得をしてしまいました。
一人称の心理描写と流れるような戦闘。 つまりは、兄ちゃんカッコイイ!! 所が尊敬いたします!

>354さん
初投稿ありがとうございます! はじめまして、異世界もの大好きな国道と申します。
倦怠感ある日常に訪れた不思議な出会い、そして、主人公の小さくてとても大きい変化。
文章上手くまとまっていると思いました。 またの投稿もお待ちしております!

>ワイトさん
お久しぶりです、もちろん忘れていませんよ。
小説はいつでもお待ちしています!

373黒頭巾:2008/07/25(金) 17:47:42 ID:fou9k2gM0
白猫さんの最終章を読んで、狂気愛に妄想広がりまくりんぐで書き上げましたモノを投下していきます。
ネクロは若葉までしか育てた事が○ございません、なので…若干怪しい部分はお見逃し下さいませ。


**************************************************


……君は、金色の綺麗な鳥。
僕が君をどれだけ汚しても、その心は綺麗なままで。
ねぇ、綺麗な鳥は此処から逃げない様に、綺麗な鳥籠に閉じ込めてしまおうか。
でも、やがてはそれだけでは安心出来なくなって。
蓋が開いても飛び去ってしまわない様に……その羽を、折った。
嗚呼、やはり……輝く君には、瞳と同じ血の紅が、とてもよく似合う。


【トリカゴ】


――安心して、貴方を置いて何処にも行かないわ。

訪れる人も少ない地下墓地に響く声。
父親と恋人の仇だった悪魔の亡骸の前で、僕の目線に合わせて膝をつく君が囁いた言葉。
目標を達成してしまった君が、僕を裏切り、離れていってしまうのでは?
そう怯える僕の目の前で、宥める様に繰り返す君。

――私の帰る場所は、もう貴方の傍しかないの。

ただ、ただ、幼い子どもに言い聞かせる様に囁く君の言葉。
そんな君の言葉への僕の返事は、地下墓地の空気の様に冷たい響きで。

「君まで僕に嘘をつくの?」

その一言だけで、僕は君の言葉も気持ちも一蹴する。
だって、僕は不安で不安で仕方がなかったんだ。
最初の言葉と共に笑った君の笑顔はとても儚く、今にも消えてしまいそうだったのだから。
仇討ちを果たす為に永遠の命をあげると偽り、君が離れていかない様に君の命の燭をそっと消して、君を偽りの永遠に囚われしアンデットにしたのは……他でもない、僕自身だというのに。

――如何したら、信じてくれるのかしら?

哀しそうに苦笑した君。
嗚呼、本当は君にそんな顔をさせたい訳じゃない。
それなのに実際は、君の心を傷つけて、また傷つけて。
その傷を時には舐めて、時には爪を立てる。
願わくば……僕の存在を、君が忘れてしまわない様に。
辛く甘い痛みを伴う消えない傷を……身体に、心に、刻み込む。
不器用な僕は、それ以外の方法なんて知らなかったし、出来なかった。
君は“優しい”から、そんな僕を振り払えない。
甘やかすだけが、本当の優しさではないのに。
僕達の関係は、お互いの傷を嘗め合い、刳り合う関係。
それでも……君と離れたら、他の誰が僕を理解ってくれると言うのだろう?
だから、僕は君を離さない、離せない。

「……おいで」

言葉と共に手を差し延べると、安心した様に微笑んで手を延ばす君。
その手を引き、君を優しく抱きしめる。

「綺麗な君に、僕の永遠の愛を贈ろう……」

でも、その言動とは裏腹に、僕の口から続けて紡がれたのは……“君の心を牢獄に閉じ込める呪文”だった。

「《マリオネット》」

絶望に見開かれた君の瞳から、意思の光が消える。
その頬を伝った一筋の滴は……涙である筈などない。
だって、そうだろう?
アンデットが泣くなんて、僕は聞いた事がない。
そう雑念を振り払おうとする僕の前に傅いた君が、今までと違った無機質な声音で言葉を紡ぐ。

――ご命令を、マスター。

綺麗な綺麗な君は、ずっとずっと僕の傍にいて、僕だけを見続ければいい。
君の頬を撫でながらそう命令した僕は、これで君と永遠に共にいれる安堵感を得た。
それでも……大切な何かが掌から零れ落ちてしまった様な喪失感を、拭い去る事が出来なかったけれど。


そう、これは……とあるネクロマンサーの従える魔物が、朽ち果て骸骨になる前の……昔々の、物語。


トリカゴ.....fin.


**************************************************


うっかりダーク分だけが暴走した黒頭巾による、♂ネクロ×ランサ短編(待って)
マリオネット、本当は時間制限スキルだけど気にしない^p^
あの頭の上のピコピコ棒とちっちゃい骸骨が動くのが可愛くて可愛くて堪らんとです(じゅるり)

374黒頭巾:2008/07/25(金) 17:48:33 ID:fou9k2gM0
↓以下、コメコメ書き書き。


>スメさん
出だしを読んでいる時の脳内BGMはカルマの坂でした!笑
カルマの坂で音楽で以下略をやりたくなってしまいしt(自重)

この間も言いましたが、クニヒトさんカッコいいよクニヒトさん(*´д`)ハァハァ
夢の中の『あの人』が噂の『じぃちゃん』なのかなぁとwktk!
元素戦争の切っ掛けといい、謎の集団といい…設定やキーワードが明かされてきて心が躍ります、うふふ。
支援職がいないって事は、フル支援ブーンの横殴りのない素敵な世界なんだろうなぁ(遠い目)
てか、アルとキリエちゃんの関係が凄く…カルガモの親子みたいで可愛いです(*ノノ)キュン

趣味じゃない文章を書く程、やる気の出ないモノはありません(駄目なコ)
ふふふ、そんなスメさんの燃え萌え作品も熱くて大好きです!(`・ω・´)キリリ


>354のお初さん
辛い現実から逃げて逃避した先の世界からの警告と言うか後押しと言うか。
自分の認識する“世界”が本人の“現実”な以上、夢と現実の境界なんて結構曖昧ですよね。
錆びたイヤリングが、主人公のモノなのか昔の大切な人のモノなのか、はたまた助けてくれた彼女のモノなのか。
何処か自分の中でもこのままじゃいけないと思っていたのだろう、主人公。
夢の彼女のお影で一歩を踏み出せたようでよかったです。
1レスという短い文字数の中で完結にまとめる能力、羨ましいです…笑
読みやすかったですし、考えさせられました…気が向かれましたら、また是非。
このスレで再びお会い出来る日を楽しみにしております(*´∀`)


>憔悴さん
ロンサムさんの辛い過去!(´;ω;)ウッ
確かに奈落の花の切ない歌詞にピッタリですね…今度からロンサムは私の中で花の君と呼b(ry
ひぐらし系は言われてみたら結構RSSSにハマりそうかもとか思いました(*´∀`)
youでアチャランサとか(パラレルワールドかよ←)
この4人組、ダブルデートしてるカップルみたいで可愛いです(*ノノ)
あ、鼻血には盛大に噴きましたよ!笑
私も選択肢は5で…仮面を取って食べるのか如何か気になって!(ソコか)


>ワイトさん
おー、お元気そうで何よりです。
気長にまったり如何ぞですよー(*´∀`)


>国道さん
じゃんけんぽーん、うふふふh(ry
アラクノイド!(´;ω;)ウッ
蜘蛛の一種は確かに親を食べちゃいますからね…動物界恐ろしい(((´д`;))))ガクブル
ミモザを庇ったアラクノイドの最期の言葉、ミモザの事も子どものように愛していたのでしょうか。・゚・(ノД`)・゚・。
そのアラクノイドの子どもに因って、命を落としたミモザ…切なすぎて!orz

ハイランドだったので辿り着く先は、アラクノイドの言う北の地ミズナかなとか思っていたら…違った(ノ∀`)ペチン
そして何やら怪しい赤い石が!
ナイスタイミングなGMさんの登場で、この先如何動くのか楽しみにしております(*ノノ)

て、やっぱりブルーノの命名センスが素敵すぎる件!爆笑
本人さんの了承を取ってないのでぼかしましたが…ご想像通り、イメージは姫々さんのスピカです(´∀`)

375◇68hJrjtY:2008/07/25(金) 19:15:43 ID:Dh9WYsnM0
>国道310号線さん
オールシリアス路線でのミモザの過去。幼い少女には正気では耐えられない事件…。
魔物や動物、自然と会話する能力、心優しいロマたちには大事な特技であり欠く事のできない能力ですが
その能力のためにこのような惨事が起きてしまうというのは悲しいことですね。
どちらが悪いとか善いといった区別ができない人々同士の葛藤ともどかしさ、上手く表現できていたと思います。
一方本筋の方では謎の宝石を手に入れてしまった(?)ミモザ。この石の正体は何なのか…。
続きお待ちしています。

>黒頭巾さん
ネクロ、つまりは生死を題材にした小説の物悲しさは異常です(´;ω;`)
彼の下した決定(スキル)が正しかったのかどうかは神のみぞ知る…そしてその後の彼と彼女の行方も。
ある意味なコラボ小説、堪能させていただきました!黒頭巾さんのコラボ好きです( 。・_・。)人(。・_・。 )
そしてやっぱりネクロは♀より♂設定に一票。仮面の下は幼女っていうのもある意味萌えますけど!
FF9のビ○みたいな奴をイメージしております(*´д`*) しどろもどろで内気な少年イエーイ。

376之神:2008/07/26(土) 14:23:17 ID:pzHHOHEc0
ttp://www1.axfc.net/uploader/Img/view.pl?dr=5197438815&file=Img_16801.jpg 徹

ttp://www1.axfc.net/uploader/Img/view.pl?dr=7976338515&file=Img_16802.jpg ミカ

ttp://www1.axfc.net/uploader/Img/view.pl?dr=584280473&file=Img_16803.jpg ライト

ttp://www1.axfc.net/uploader/Img/view.pl?dr=564229870&file=Img_16807.jpg シリウス

ttp://www1.axfc.net/uploader/Img/view.pl?dr=9180487745&file=Img_16808.jpg シルヴィー

ttp://www1.axfc.net/uploader/Img/view.pl?dr=8063126709&file=Img_16810.jpg ナザルド

ttp://www1.axfc.net/uploader/Img/view.pl?dr=6123705991&file=Img_16811.jpg フィアレス

ttp://www1.axfc.net/uploader/Img/view.pl?dr=9222183278&file=Img_16812.jpg アルシェ

ttp://www1.axfc.net/uploader/Img/view.pl?dr=9635156102&file=Img_16813.jpg エトナ

http://www1.axfc.net/uploader/Img/search.pl?search_str=%E4%B9%8B%E7%A5%9E&id_start=&id_end=&extv=&size_min=&size_min_si=2&size_max=&size_max_si=2&dl_min=&dl_max=&date_start=&date_end=&num=50&sort=id&sort_m=DESC&md5=&sha1= まとめ


絵です。といっても、前回の絵に色つけただけです。
諸事情でうp遅れましたが、載せておきます。

まとめ から、全部の絵へ飛べる…はず。

頭にhをつけて、どうぞ。

377之神:2008/07/26(土) 14:25:16 ID:pzHHOHEc0
あーっ、まとめだけ直になってる…orz

スイマセン;

378◇68hJrjtY:2008/07/27(日) 04:07:40 ID:Dh9WYsnM0
>之神さん
空白の時間を破って之神絵がキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
深夜に騒いで申し訳ない…しかしじっくりしっかり見させてもらいましたよ(*´д`*)
でも過去にUPされた絵は消滅してますね(´・ω・`) まあ、流用されるのを考えたら消えた方がいいかもですね。
さてさて…色がついただけでだいぶイメージ変わってきますね。色鉛筆塗りで全体的にパステル調なのが( ´∀`)bグッ!
徹、ライト、エトナ、アルシェあたりは想像通りでご満悦状態ですが
ナザ君ってかなりのブルーブルーだったのですね!さわやか青年ナイス。フィアレスも真っ白でかわええ。
シリウスもあれで街中メテオとかやらなければ普通にインテリ美形なのにっ…!ρ(´ε`*)
シルヴィーもテイマサマナというよりか子悪魔といったノリで、ちょっとリトルウィッチが入ってるようなのもまたイイ。
いやー深夜にいいもん見せてもらいました。本編の方もお待ちしてますよ!

379ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/07/29(火) 16:14:10 ID:OhTl4zsk0
ESCADA a.ka. DIWALI feat. 黒頭巾

ふぁみりあいーえっくす番外編「未知との遭遇〜Remixed by DIWALI〜」

ある日のこと・・・そこは古都ブルンネンシュティグの住宅街にある、とあるギルドが所有するホール。
リビングでは一人の魔術師がギルドの仲間に囲まれて何かを揉めている様子である・・・

「ファミリアが喋るなんて有り得ないー!」「いや、僕はちゃんとそのファミリアが喋るのを見t・・・」
「真昼間から寝てるんじゃないのー?」「寝ていないっ!!僕は寝てなんかいないぞッ!!!」
「これだからマスタは……立ったまま夢を見るなんて危ないじゃない」「だから僕は本当のことを言ってるだけで・・・!!!」

四方八方から飛び交う仲間達の非難の声、声、声・・・そしてついに、トドメの一言を赤髪の美女が放ってしまう。

「まったく、マスターも妄想が過ぎるわよ?何なら知り合いの精神科医に診断の依頼でもしておくけど・・・」
「ちが・・・僕は、僕はぁ〜・・・・うあぁあぁあぁぁあぁああぁぁぁあんっ!!!皆ひどいッ、お前ら嫌いっ!!
 うわぁああぁぁああぁぁああぁああぁああぁぁあああぁぁぁああぁぁああぁぁあぁぁああぁああぁぁああぁぁんんっ!!!」

最後のリミッターが外れてしまったのか、魔術師の青年は年甲斐もなく大泣きしてギルドホールを飛び出した。
残されたのは後味の悪い気持ちで一杯のギルドの仲間達。ひそひそと耳打ちで会話をすると、彼らもまたマスターの後を追うべく
ギルドホールから足を踏み出すのであった・・・


・・・―――古都の繁華街、昼下がりの今はオープンカフェが軒を連ねる時間帯だ。
雑踏の中、魔術師はトボトボとうつむきながら歩いていた。しかも「ええどうせ僕は鬱ですよ」と言わんばかりの溜息を吐いている。
「うぅ〜・・・何だって皆はああも現実的過ぎるんだ、事実一部のモンスターは言語能力を習得しているのに・・・ブツブツ」
一人文句を垂れながら彼は歩を進める・・・だが、うつむきっ放しということは誰かにぶつかる危険性もある。
ドスン!!!と何か硬いものにぶつかり、魔術師はが間抜けた表情で見上げてみると・・・青筋の浮かんだ怖い顔。
「おぅコラてめぇ、このミカエル様にぶつかるたァいい度胸してんじゃぁねぇか・・・あぁゴルァ!?」「・・・・は、ハァ。」
相手のならず者はというと、青筋ビッシリな見苦しい不細工面に時代遅れ極まりないモヒカンをしていた。そして腕には
髑髏と炎をあしらった刺青。そして『ミカエル』という名前・・・どうもおかしい。魔術師の脳裏をその一言がよぎる。
「んだァ〜?そのやる気のねぇ返事は!?オレぁ大陸4大冒険者の一人のミカエル様だ、気にいらねぇ真似すっと燃やすぜ!?」
「はいはいそうですか〜」「だから何なんだよそのテンションの低さはァ!!?!」「・・・・」「・・・・!!!」
そんなこんなでやりとりをするゴロツキと魔術師、だがその二人を囲む野次馬の中から一人の男が踊り出た・・・!!

その青年は小麦色の肌に銀色のミディアムヘア、タンクトップから覗かせる筋肉質な腕には炎を象るトライバル調の刺青。
ゴロツキの首根っこを掴むと、彼は怒りを含んだ語気で話しかける・・・!!!
「よォてめぇ・・・いま"ミカエル様"が何だって・・・?」「いでぇっ!!?!何だテメェ、一体誰でぇ!?」
「教えてやんよ・・・そのミカエル様ご本人だっつーの!!!!ヴォルカニックアッパあぁぁああぁぁああぁぁああぁぁ!!!」
相手に問答する間も与えず、突如乱入したミカエルという名の青年は拳に炎を纏い、綺麗なアッパーカットで男を殴り飛ばした。
「覚えてろよ〜!!!つーかごめんなさ〜いっ!!!」という断末魔が山彦し、空には星がキラリ☆と輝く・・・

380ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/07/29(火) 16:53:30 ID:OhTl4zsk0
「ったくよォ、オレ様の名を騙ろうなんざ100年早いっつーの。ところで魔術師の兄ちゃん、ケガぁ無いか?」
「えぇ、大丈夫ですよ・・・ところで、あなたもしかしてあの、あの・・・ミカエル・ウォンさんですか!?」
「あったりめぇよ、じゃなきゃあの紛いモンをぶっ飛ばしたりなんかしねぇよ!カハハハハハっ・・・
 まァ、奴さんにオレの名を騙らせちまってすまねぇな、オレの名前のせいで迷惑しちまったようなもんだし
 何か奢らせてくれねぇかな?妹達もすぐそこのカフェでデザート食ってるしさ。」
「え、いいんですか!?では、お言葉に甘えてそうさせてもらいましょうか。」

気さくでフレンドリーなミカエルの人柄に好感を覚える魔術師。ミカエルに誘われるまま、すぐ側のカフェテラスへと移動した。
「(ちょっとちょっと、あれって"炎帝"ミカエルじゃないの!?)」「(マスターってばなんちゅー人と・・・あの人嗾けてこないよね?)」
「(そんな訳ないでしょ、マスターも子供じゃないんだから。でも・・・もうちょっと近づいてみるわよ!?)」
一部始終を見守っていた魔術師のギルド仲間ら3人、テイマ、ランサ、悪魔らはカフェへと入店する・・・

昼下がりのカフェは大勢の客でごった返していた。野外テーブル席の一角から、少女の甘く可愛い声が聞こえてきた。
「ふみゅっ、お兄ちゃ〜ん!!こっちなのよ〜!」「ミカエル〜、こっち来るさ〜!」ビーストテイマーの少女とファミリアが
手を振りながらミカエルを呼んでいた。彼は「こっちだぜ」と手招きし、魔術師を誘導する・・・席に着くと少女が首をかしげた。
「うにゅ〜・・・ねぇねぇお兄ちゃん、この人だぁれ?お友達なの?」「ん〜?まァそんな感じだ、つーか今知り合った!」
「あはは、ミカエルさんてば・・・ん、あれ?ねぇ君、人違いかもしれないけど、さっき道路で僕にぶつかった娘じゃないかい?」
「ふゃ!?あっ、そうなのよ〜!さっきはごめんなさいなのっ!!今度から気を付けるなのぅ〜・・・」「はは、よしよし。」
少しシュンとしょげるミリアを、兄ミカエルがその頭をポンポンと撫でて慰めた。その穏やかな様子に魔術師も微笑を漏らす。
「ふふふ・・・ん、ということは・・・ねぇミリアちゃん、君のファミリアって喋れるんだよね?お話してみてもいいかな?」
「うぃ、ファミィはちゃんとお話できるのよっ!ね、ファミィ?」「うん、オイラちゃんと喋れるよ〜、よろしくさ〜」
「おぉ〜、これは・・・やはりファミリアも話せるんだなァ、よろしくねファミィ君。」「えへへ、今日からにーにーもうちなーさ〜」
「あ、今ね今ね、ファミィは『お兄さんも仲間だよ』って言ったのよ〜」「すごいねミリアちゃん!!」「やぅ、恥ずかしいの〜////」

一方、カフェの店内から窓越しに一行を覗く者たちが・・・
「(ちょっと、マジでファミリアが喋ってるんだけど!?てゆうかあの、ゆるゆるな口調が可愛いっ//////)」
「(いいなァ〜、わたしのファミリアちゃんも頑張ればお話できるかな?)」「(飼い主の女の子もめっちゃ可愛いんだけどっ!?)」
興奮気味なヒソヒソ声で、テイマとランサ、それに悪魔たち女性3人は、クリームソーダを片手に驚愕と歓喜に包まれていた。

381ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/07/29(火) 17:07:47 ID:OhTl4zsk0
・・・その日の晩のこと。
夕食を前に食材の買出しに出かけていた魔術師がホールへ帰ってきた。ニンジンにジャガイモに肉・・・今夜はカレーライスだ。
眼鏡をクイっと上げながら、ホールに足を踏み入れた魔術師は「ただいま〜」と第一声を発する。両手に買い物袋をぶら下げて
ホールのリビングルームへと歩いてゆく・・・大きな広間に出ると、いきなりパァン!!とクラッカーが。

「マスター、おかえり〜!!」ギルドのメンバーたちが笑顔と共に魔術師を迎え入れた。

「え?え?ちょっと皆どうしたんですか!?今日は僕の誕生日でもないのに・・・」
「違うの、お昼の時に好き放題言っちゃって・・・その、ごめんねマスター?」「ごめんなさ〜い」「ごめんねっ?」
「あぁ何だ、そんなことか。いいですよ、気にしていませんから・・・ん、あそこの部屋は何だろう、何で扉を閉めてるんだい?」
魔術師が気付いたその視線の先には、普段は空いているはずの物置の扉が閉じていたから・・・しかもデコレーションを施して。
「えへへ〜、それはね〜・・・ミリアちゃん、ミカエルさんっ、そしてファミィちゃんっ!!!おいでませ〜!!」
ランサーが陽気な声で名前を呼ぶと、勢い良く物置の扉を開いてミカエル、ミリア、そしてファミィが出てきた。
「えぇ!?ミカエルさん、ミリアちゃん・・・それにファミィ君も!?どうしてここに・・・・」
「実はカフェで別れたあとによ、ここにいるあんたの仲間に呼び止められてね。聞くところによると、マスターをファミリアが
 喋るかどうかって話で泣かせちまったもんだから、ちょうどオレたちを見ていたこいつらにGHに来てくれって頼まれて・・・」
「そーゆーことなのっ!!ミリアとっても嬉しいのよ〜!!」「オイラも嬉しいさ〜、皆ありがと〜!!」

「そうゆうことだし、早く晩ご飯つくって食べようよ!!ミカエルさんたちも一緒に食事しよ!!」「おうよ、もりもり食うぜ!?」
「うにゅ〜、ミリアもいっぱい食べるなの〜!!うにゅにゅ〜♪」「ちょっ、ミリアちゃん可愛いんだけど!!萌え〜!!!」
「あははははは・・・ん、じゃァ皆!!今日はカレーですよ!?」「やったァァァァァァァ!!!!マスター大好き!!!」

その夜はとてもとても楽しい時間を過ごしたそうな・・・ゲストの来訪もあり、掛け替えのないほどだったと
このギルドホールの長である魔術師は語っている。

fin.

382ドワーフ:2008/07/29(火) 19:49:07 ID:AepyIIHk0
トラップバイト

狼男のコーザは一度も噛み付いた事がない。
その理由は彼の仲間でさえ知らなかった。
単に得意でないのかもしれないし、
もしかしたら人としての誇りが獣のような振る舞いを許さないのかもしれない。
それ以前に、大抵の相手は彼の鋼鉄のように硬い爪に掛かれば簡単に倒せたというのもあるだろう。
だが彼は顔に凶悪なまでに鋭い牙を被っていた。
使わないのに何故そんなものを着けているのか、彼の仲間はいつも不思議がっていた。
彼はたびたび浴びせられる質問に辟易し、ようやく理由らしいことを口にした。
この牙は必要に迫られる時が来たら使うのだと、彼は言った。
彼の言葉に仲間達は首を傾げ、余計に不思議がっていた。

やがて時は過ぎ、皆がコーザの言葉を忘れた頃にその時はやってきた。
敵はたった一人の剣士。しかし仲間のうち誰一人として敵わなかった。
傷ついた仲間たちを庇うようにコーザは剣士の前に立ちはだかった。
かなわない。逃げろと言う仲間の声を無視してコーザは剣士に飛び掛っていった。
彼の振るう爪を掻い潜り、剣士の突き出した剣が彼の胸を貫いた。
コーザは返り血を浴びて笑みを浮かべている剣士に対して、構わず自ら前に出て刃を自身の中に埋めていった。
そして剣士に抱きつくと、驚愕の表情を浮かべている剣士の肩口に噛み付いた。
鋭い牙を突きたて、彼は剣士の血を啜り飲み始めた。
苦痛の表情を浮かべながら、剣士は凶刃をえぐり上げた。
だがコーザは決して意識を失わなかった。それどころかより強く深く剣士を噛み絞めた。
恐怖に駆られた剣士はコーザに対して提案した。
見逃してやるから離れろ。このままでは互いに死んでしまう、と。
しかしコーザにはもう引き返す事は出来なかった。

トラップバイト――。
一度噛み付けば逃れられない。相手も自分も…。

383ドワーフ:2008/07/29(火) 19:51:20 ID:AepyIIHk0
あとがき
トラップバイトの説明文を自分なりに解釈してみました。

384◇68hJrjtY:2008/07/30(水) 18:25:06 ID:CDoX0rSc0
>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
黒頭巾&ESCADA a.k.a. DIWALIプレゼンツ。コラボ小説ありがとうございました!(笑)
ESCADA a.k.a. DIWALIさんが書くとほんとドタバタ調になって面白いです。
いけめんさんの壮絶な欝モードを垣間見てしまいましたが、最後は丸く収まって思わず笑ってしまいました。
フィナ姉が居ないところではミカエルも相当怖い兄ちゃんなんですねえ(*´д`*)
次回はファミィ&ふぁみりあいーえっくすたんの絡みコラボ小説、なるか!?(笑)

>ドワーフさん
トラップバイト。罠という名前とは裏腹に最後の最後の切り札としての牙。
このお話を読んだ時に「狼は死んでも首だけで相手に噛み付く」という言葉を思い出しました。
短編だからこそその後を想像したり思いを馳せる事が楽しいドワーフさんのUアイテム逸話。
次回作もお待ちしています。

385之神:2008/07/30(水) 19:33:49 ID:h5TkBgt20
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◇――――――――――――――――5冊目完―――――――――――――――――◇
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◇――――――――――――――――6冊目完―――――――――――――――――◇
   >>122 >>321-322
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――番外
>>796-799 クリスマス   キャラ画>>376(7冊目
>>894-901 年末旅行
   -5冊目完-
>>226-230 節分
>>358-360 >>365-369 バレンタインデー
>>510-513 雛祭
>>634-637 ホワイトデー@シリウス
   -6冊目完-

386之神:2008/07/30(水) 19:35:33 ID:h5TkBgt20
β

「くうっ…」

傷はだいぶ治ったものの、まだ痛む。
ベッドの上で、私はどうするか迷っていた。
その時。
点けっ放しのテレビから、ニュースが流れた。


-------速報です。
-------大手飲料メーカー、ミュリエ・ジュール本社ビルにて…


徹が向かった企業…何があったのしr…


-------大きな爆発が起きました。



…ッ!?

-------既に警察が包囲しており、周囲に避難命令、厳重な警備が――


気がつくと、私は普段着に着替え玄関へと向かっていた。


――やっぱり、ゆっくりしてる場合じゃなかった…。

――私が助けないと。


ψ


「わわわわっ、わーっ!」




謎の平野に、体育会系と精霊。



「装備が、全部外れちゃったじゃん!」

「気のせいだろう…」エンティングというその大きな精霊は、渋みのある声で語らう。

「木の精だけに?ちょっと巧いこと言ったね!」


――――。


「外れたとて…剣と、その服に隠した左手剣だけだろう…?」

だらだらと会話の後、重い拳が飛んでくる。


「これしか武器無いんだよぉ…おおっと!」


ヒョイ、という音が聞こえたかと思うほど、軽くナザルドは攻撃をかわした。

エンティングの攻撃は、腕を振り回す度にブウン、と、バッティングの素振りの様な音がする。

387之神:2008/07/30(水) 19:37:04 ID:h5TkBgt20
ψ

「だいたいさぁ!」

ブウン…ヒョイ

「まだ会ったばかりだよ?人間ってだけで、攻撃」

ブウーン…ヒョイ

「してくるなんて、おかしな話だよ!」

ブウン! ヒョイッ!



…。 ヒョ…

「ちょっとちょっと!攻めと避けのテンポ狂うんだから、止めないでよ!」

黙って腕を振っていたエンティングは、急に攻撃を止めた。


「お前が攻撃してこないのは分かった」 その場にピタリと止まり、エンティングは話す。

「正確には、攻撃したくてもできないんだよっ…で」ブーブーと、ナザルドは文句を垂らす。

「なんか話、あるんでしょ?」

「…。」

「じゃなきゃ、こんな無防備にならないしねっ!」 ナザルドは、一瞬でエンティングの後ろへ回り込んだ。

「…。」首だけを、エンティングはこちらへ向けた。


「しないよ、攻撃は」ナザルドは笑ってその場に座り、武器を放り投げた。

「でーっ、何かあるんでしょ?ここにいる理由とかさぁ、いきなり攻撃してきたワケがさぁ?」

まるで友達に話かけるような雰囲気で、ナザルドはエンティングに言った。


「ここのビルのな」

ゆっくりと、エンティングは話し始めた。

「ガゼットという男がいるのだが、奴に連れてこられたのだ」

「ふんふん」

「奴は今、薬を作っているのだが…そのために、我々のエネルギーが必要らしくてな…」

「我々…?」 そう、ナザルドが聞いた瞬間、今まで風景と同化していた木々達が動き始めた。

「なるほどお…、こんなにいっぱいいたんだねぇー」しみじみと周りを見回す。

「エネルギーとは、これのことだ」

エンティングは立ち上がり、ナザルドの捨てた剣を拾った。
そして…その剣で、人間でいう腕の当たりを浅く切りつけた。


「ああ!それは俺もお世話になってる!」

「お前ら人間がポーションと呼ぶ、治癒能力のある液体だ…。本来、我々のような種族が大地から力を貰い
 さまざまな元素の力を元に…そうして完成するのがこれだ」


「えっ、原料って君たちだったの!?」

「知らずに服用していたとは、やはり愚かな人間よ…」剣をナザルドに放り投げ、エンティングは直立不動となった。

「我々は死んでも蘇る。…いや、正しくは、土に還り、また芽を出し枝を伸ばし…」

「だが、ここでは不可能だ。人工的な光、無いに等しい元素、薬の通った水…」


「ここから出してもらえないか、って?」ナザルドは、核心に迫った。

「…ああ、そういうことだ」少し悔しそうな顔をして、エンティングは答えた。


「ふっ、まったく…」ナザルドは剣と盾を再び拾う。



「任せてもらおうじゃーないのっ!」
ポーズを決め、大声で答えた。

388之神:2008/07/30(水) 19:37:49 ID:h5TkBgt20
α

ザザザザザザザザザザ…


ブクブクブクブク……


『ぶはっ!!』

し、死ぬかと思った…。

「この魚!水出しすぎだっ!」

「スェルファーですって…」

シルヴィーは相変わらず、俺に抱きついたままだった…苦しい。

滝のように、魚の体からは水があふれ続ける。

「とりあえず、助かりましたね…」

「ですね…で、シルヴィーさん」


「はい?」



「そろそろ、水を止めてくれませんか…」


「ああ、そうでしたね!失礼しましt…



<!> うわあああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁァァ…


『!?』

叫び声が、救急車の通り過ぎるような感じで聞こえてきた。今、まさに。


「な、なんか聞いたことあるような声でしたね…」

シルヴィーは俺の首に腕を巻きつけたまま、キョトン顔をしていた。

「ん…そうかなぁ…?」



γ

「うわあああああああああああああああああああああああああああああああアアアアアッ!」


かなりのスピードで流される。服が濡れて思うように動けない。

「あ、ここさっきも見たな…?」

ドアノブの外れた扉が、ライトの目に入った。

「んん…ということはっ…?」


…俺はグルグルと回っているのか。



α


「なんだったんでしょうね…ハハハ」

俺はシルヴィーの腕を首から外しにかかる。

「で、ですねぇ…あっ」

「?」

「も、もうちょっとこのままで…」

プルプルと震え、シルヴィーは離れなかった。

ああ、冷静な感じだったけど、やっぱ女の子だわな…。

389之神:2008/07/30(水) 19:47:08 ID:h5TkBgt20
どうも、こんばんわ。

「よぉ〜しうpするぞー!」とPCのテキストを調べるも

「あれ?どこやったっけなぁ…」となっていて遅れました。


自分は週刊誌のマンガのように小刻みに進めていくのがコンセプトなので、進むのダラダラでもあきらめてください。
珍しくψパートが長いんですね、後からそんなこと思ったり。

ゆっくりしていた彼女も動き出し、ある意味オールスター的になりそうです。

そしてドワーフさん、U品ネタ大好きです。いつもその構成に感動します。
公式設定ではないもののネタは、書いてて楽しいですねー。
自分もポット原料とか勝手に決めてて…売り子ドロシーの笑顔の奥には殺戮g(ry

では、ゆっくりストーリーを進めていくことにします。

引き続き小説スレをお楽しみください。之神でした。

390◇68hJrjtY:2008/07/31(木) 22:39:30 ID:sR5SGDPQ0
>之神さん
ミカも加勢でミュリエ・ジュール編いよいよ佳境といったところですね。
ナザ君の無邪気さにはエンティングさんも何もできませんね(ノ∀`*) そしてまたPOTの原材料in之神設定が…。
ドロシー、可愛い顔してどっからPOTを調達してるんだー(笑) という事は青POTは…うーん、考えない方がいいですね。
魚…じゃなくてスウェルファーの出した水でライトは迷い、徹たちは窮地脱出…なるか?
続きお待ちしております。
---
>「あれ?どこやったっけなぁ…」となっていて遅れました。
うんうん、分かります(´;ω;`)
私も最近はメモ帳だけでなくアウトラインプロセッサの小説書き用ソフトのようなものを試用してみたんですが
どうやら保存形式や場所が変わってしまうようで結局相当なデータ(小説以外のテキスト含)が行方不明にorz
サルベージ次第のUPもお待ちしています♪

391国道310号線:2008/08/02(土) 01:06:54 ID:Wq6z33060
・小説スレ六冊目
 第一話 〜 ミニペットがやってきた! 〜
 前編 >>487-490 後編 >>563-569

 第二話 〜 狼男と魔女 〜
 1 >>784-787 2 >>817-820 3 >>871-874 4 >>910-913

--------------------
・小説スレ七冊目
 第三話 〜 赤き呼び声(4) 〜
 1 >>228-232 2 >>254-257 3 >>366-370


前回のあらすじ:アラクノイドのことがバレて村人に殺されちゃった


アラクノイドが死んでから一週間が過ぎた。
あの日洞穴に行った村人の半数が亡くなり、アラクノイドの子もすべて燃やされたと耳にした。
私は村の中心で、重傷を負い倒れているのを発見されたそうだ。
どうやって村までたどり着いたのか、私は全く憶えていなかった。


緑が揺れるグレートフォレストにミモザは一人立っていた。
彼女は両耳に手をかざすと瞳を閉じる。
聞こえてくるのは風にざわめく木々の葉音、様々な種類の鳥の鳴き声… それだけだった。
彼女に話しかけていた樹木もおしゃべりした動物も花の歌い声も、もう何も聞こえない。

賑やかだった森は灯が消えたように黙り込み、彼女一人だけ別の世界に取り残されたような感覚に陥る。
連れ立っていた召喚獣も一切彼女に応えることはなかった。
どうしようもない孤独感に少女は涙を流す。
たくさんの命を死なせたから、皆に嫌われてしまったのだとミモザは思った。
あれから彼女はアラクノイドがいた洞穴へ行っていない、思い出すと辛くて近づくことすら出来なかった。

村人達のミモザへの態度もよそよそしくなっていた。
見えない何かと会話する彼女は以前から村から浮いた存在ではあったが、より一層それは顕著にあらわれた。
当たり前だ、村人を巻き込み殺してしまったのは自分なのだから。
数年後、遠方で働いていた父が亡くなったという知らせを受け、身寄りがいなくなった彼女は村から出ることにした。
年端もいかないミモザを気遣い引き止める者もいたが、彼女はそれを断ると逃げるように村を後にした。

それからは町から町へ身一つで流れ、行く当てもなく彷徨い歩いた。
心休まる安住の地を探しての旅路であったが、彼女の心に落ちた暗い影を拭い去ることは出来なかった。


雨が降りしきる街角、古びた集合住宅路地裏の雨がしのげる僅かなスペースにミモザは座り込んでいた。
その日は仕事が取れず空いている宿もなかったため、この場所で夜を明かすことになりそうだ。
裏口に続く階段上に膝を抱え身を縮こませる。
一向に止む気配のない雨空をボンヤリ見つめながら、彼女は洞穴での惨劇の事を考えていた。

もし、アラクノイドを治療しなければ、彼女は卵を産む事無く息絶えていただろう。
それならば、村人は誰一人傷つかずに済んだはずだ。
けれども彼女は聞いてしまった、アラクノイドの助けを求める声を、生きたいという切なる願いを。
ミモザが差し伸べた手をアラクノイドは受け取り命を繋げたが、その結果村を護るために人が死んだ。

例え彼女達のことが村に悟られなかったとしても、村人に犠牲者が出る可能性は高い。
我が子の為にアラクノイドは自らの肉を捧げ、その子等によって村人が襲われていただろうから。
村人達が護ろうとした大切なものや、今度こそ自分の命を失うことになったかもしれない。
やはり、あの時アラクノイドを助けずに放っておくのが最良の道だったのだろうか。
そうなのだろう、しかし、見知らぬ土地で人間に深い恨みを抱いたまま朽ち果てていく彼女が不憫でならない。
何度も何度も自問するが、ミモザはいまだ答えを出せないでいた。

(こんな力、無くなって良かったんだ)

彼女の声が聞き、気持ちを知ってしまったから助けようと思った。
しかし、自分は誰一人助けられていない、紅蓮に燃える洞穴の中で泣き叫ぶことしか出来なかった。
(ごめんなさい、アラクノイド、ケルビー、村長さん… ごめんなさい…)
「寒いよ…。」
雨に冷やされた空気はしだいに彼女の体温を奪っていった。


ふいに、胸元に熱を感じ、ミモザはハッと胸元を探る。
熱の正体は彼女が愛用している笛だった。
数少ない荷物の中持ってきたそれは、紅蓮の光を淡く纏っている。
「ケルビー …なの?」
笛から発される炎のごときオーラに、彼女は火の神獣の息吹を感じた。
ミモザは笛をそっと胸元に寄せると強く抱きしめた。
「ごめん… ごめんね、ケルビー… ずっとそばにいてくれたのに…。」

392国道310号線:2008/08/02(土) 01:09:35 ID:Wq6z33060
私はいつも逃げていた。
母が亡くなったことが受け入れられず、森へ入り母が残した治療術で生き物達を治すことに明け暮れた。
そうしている間は、まるで母が近くにいるように感じられたからだ。
そして、声に押し潰されてしまいそうになり自分の持つ力を拒絶し、村人からの冷たい視線に耐え切れず逃げた。

誰からも見捨てられ、一人ぼっちになったのだと思っていた。
でも、本当は違っていたのだ。
自分をいつも見守ってくれていたケルビーにも、引き止めてくれた村人の優しさにも気が付かなかった。
いや、気付こうとしなかった、心を閉ざしていたのは私自身だったのだから。
今はケルビーの言葉は分からなくとも、ただその温もりが嬉しかった。
彼女の頬を伝い涙が流れる、何故かその雫さえも温かく感じた。

自分はケルビーに何をしてあげられるだろう、どうすればアラクノイドや村人に罪滅ぼしが出来るだろう。
少なくともアラクノイドのような魔物を増やしたくなかった。
しかし、自分は人間だ、時には人と魔物の命を天秤にかけなければならぬ時があるだろう。
それならば、私は両者が出来るだけ衝突せず共存していけるよう知恵を磨いていこう。
もう彼等の声は聞こえなくとも、ケルビー達と共に歩んでいきたいと心に決めた。


「君、どうしたんだい?」
突然話しかけられ、ミモザは伏せていた顔を上げる。
そこにいたのは鈍い青髪の体格の良い少年だった。
雨具を持っていないのか、彼は両腕に抱えた大きな荷物の入った紙袋と同じくずぶ濡れになっている。

彼女が泣いていることに些か少年は驚いたようだが、すぐに優しい口調で続けた。
「すぐそこの宿屋に泊まっているんだけど、よかったら来ないか? あっ、別に変な意味じゃないから!」
他のギルメンもいるし、と慌てて付け加えると彼はニッと笑って見せた。
「それに、ここよりは温かいと思うよ。」
ミモザは屈託ない彼の笑顔がとても眩しく思えた。

それが、ブルーノさんとギルド「セレスト・クルセイダーズ」との出会いでした。


―東バベル 大河沿いの村

バベル台地と東バベル川上流地域を繋ぐ小さい村は、樹木の伐採を生業としている。
村の傍を流れる川を上っていくと、ファウンティンス・ハイランドへ至る。
この地域はエルフやオーガといった独自の文化を持つ魔物が多く住み、人間社会との境界線が近いことを物語っ
ていた。
小さい村の宿屋の一部屋、ベットの上でミモザは目を覚ました。
白い壁紙の天井は年月によるシミや汚れが目立ったが、小奇麗に掃除が行き届いている。

ここはどこだろうと働かない頭で考えていると、視界に赤と青の物体が現れた。
「ミモザ!」
「おんどりゃ、どんなけ心配したと思っとんねん!」
罵声と共にミモザに抱きついたのは、犬とつむじ風の姿をした彼女の召喚獣ケルビーとウィンディだった。
いきなりの事に彼女は目を白黒していたが、軋む上半身を起こし愛しそうに彼等をなでる。
「大丈夫。もう本当に大丈夫だから…。」

「良かったわ〜。 具合はどう?」
ベッドの横に備え付けられた椅子に座ったテラコッタが微笑みかける。
彼女の隣には金太郎、その後ろのドアにはブルーノが部屋の外に向かって、目を覚ましたぞーと声をかけていた。

二人と一匹の姿を見て、ミモザは自分が助かったのだとようやく気が付いた。
「はい、平気です。 …すみませんでした。」
「いーよ、謝らなくて、無事だったんだからさ。」
体を小さく縮こませている彼女にブルーノは明るく笑いかける。
夢で見た雨の日の彼の笑顔を思い出したミモザは頬を染めるとうつむいた。

初々しい彼女の様子をテラコッタは微笑ましげに見ていたが、けたたましく廊下を走る音に振り向く。
部屋の入り口には、扉の柱に手を掛け少し息の上がったアッシュが立っていた。
彼はミモザを見据えたままドカドカ部屋に入ると、ベッドのすぐ脇まで来る。
「バカヤロウ! 何だってこんな無茶をした!?」
「ごっ、ごめんなさい。 私、早く紋章品を集めたくて…。」

393国道310号線:2008/08/02(土) 01:11:05 ID:Wq6z33060
「これのことですか?」
この場にいなかった者の声がした、アッシュに遅れて入ってきたエムロードとグロウだ。
エムロードは茶髪の長身のウィザードで、グロウは色黒のガッシリした男性でギルドマスターである。
黒々とした動物の毛束が入った小さな皮袋をエムロードは見せると再び口を開く。
「紋章品コンプリート間近で気が急くのは分かりますが、あまり心配かけさせないでください。」
彼は皮袋をミモザに返すと彼女の肩を叩いた。

「ミモザ頑張っていたもんな。」
そう言うブルーノに対し、アッシュはふんっと鼻を鳴らした。
「弱いくせに、調子に乗るからこんな目に遭うんだ。」
「おんどりゃ、そこまで言うことないやろ!」
身も蓋もない言葉で主人を責める彼に、ウィンディは反発する。
「黙れ、紙。」
ウィンディにアッシュは一瞥もせず言い放った。
この場合の『紙』とは文をしたためる物ではなく、防御力が低すぎて紙の様に頼りないという意味だ。
「…このガキャ、張っ倒す!」
気にしていることを言われウィンディの頭に血が上る。
「落ち着けウィンディ!」
アッシュに殴りかかろうとするウィンディをブルーノとケルビーは二人がかりで止めた。

「でもさ、アッシュが一番ミモザのこと心配していたんだぜ。」
見た目より力がある風の神獣を押さえつけながらブルーノは苦笑する。
「なんたってスト「余計な事を言うなっ!」
フォローのつもりが失言しかけたブルーノにアッシュの肘撃が炸裂した。
クリティカルヒットを出した一撃をアゴに受け、彼は綺麗な弧を描いて昏倒する。

「スト… 何やて?」
「事と次第によっちゃぁ、生かしておかねぇぜ。」
ブルーノが言いかけた言葉を聞き逃さなかった召喚獣達はアッシュに睨みをきかせる。
一人と2匹の間に殺伐とした空気がながれ始めた。
「ケンカするなら外でやりなさいよ!」
テラコッタは怪我人がいるのに騒ぎ立てる彼等とついでに気絶しているブルーノを部屋から押し出す。
バタンとドアを閉めると、騒音の元を断たれた部屋は静かさを取り戻した。

当のミモザはその様子を目をパチクリ見つめていたが、表情を曇らせる。
「でも、私、これくらいのことしか出来ませんから。」
両手で握った皮袋を見つめたまま、彼女はポツリと漏らした。
完全に神獣や精霊と心が通じなくなってから、ケルビー達を喚べるまでに回復したのはこのギルドのおかげだ。
流れ者だった自分を受け入れてくれた彼等がいなかったら、今頃どうなっていたか想像がつかない。

沢山のものをこのギルドから貰ったのに、自分は何一つ返せていないのだ。
「皆さんに比べて私は弱いですし、ギルド戦だって…。」
そこまで言いかけてミモザは黙ってしまった。
うつむいているので彼女の表情を窺い知ることは出来ないが、酷く落ち込んでいるのが分かる。
「そんなこと、気にしなくてもいいのに。」
皮袋を強く握っている彼女の手にテラコッタは包むように自身の手を重ねた。

「人にはそれぞれ向き不向きがある、お前に出来ることを役割をこなせばいい。」
グロウは静かに語り出す、その言葉はどこか自分に言い聞かせているようだった。
「その役割が重い時は、お前の苦しみを分けてくれ、そのために我々はいる。」
皮袋から視線を移しグロウを見ると目が合った、彼は穏やかに微笑んでいた。

「はい…。」
ミモザは目を手で拭うと笑顔を向けた。
いつもの彼女に戻ったようで一同は安心する。
「マスターさん、洞窟でも助けていただいてありがとうございます。」
彼女の言葉に三人は揃いも揃って怪訝そうな顔をした。

「洞窟ってハイランダー洞窟のことですか?」
聞きなおすエムロード、彼の疑問もそのはずだ、そんなことはありえないのだから。
ミモザが遭難したハイランダー洞窟へ向かう途中、ウィンディと合流した彼等は彼女の危機的状態を知った。
ウィンディの話では彼女は洞窟の奥深くに落ちたとの事だったが、彼女を発見したのは洞窟の入り口だったのだ。
すなわち、ギルドメンバーは洞窟内へ入っていない。

「マスターはずっとあたし達といたから、人違いじゃない?」
テラコッタの言葉にグロウ本人もうなづいた。
「そう言えば、雰囲気が違っていたような気がします。」
ミモザは自信なさげに首をかしげた。
通路から落ちてからの記憶は夢の中の出来事のようにいまいちハッキリしない。
頭が混濁していて赤の他人を知り合いと見間違えてしまったのだろうか。
(私を助けてくれたあの人は、誰だったんだろう。)

394国道310号線:2008/08/02(土) 01:11:47 ID:Wq6z33060
「この石も洞窟で見つけたのか?」
物思いにふけっているミモザにグロウは手のひらに乗せた赤い石を見せた。
不規則にカッティングされている石は、それ自体が単体というよりも何かの一部のようだ。
「それ、なかなか離さなくて苦労したんだから。」
気を失っていてもミモザは石をガッシリ掴んでいた。
グロウが直接触ると良くない言うので無理やりテラコッタが引き剥がしたのだ。
「そうだったと思います。 赤い光に呼ばれて行ったら、その石があって…。」

赤い石を注意深く観察していたエムロードは何かに気付いたようにグロウの顔を見やる。
「グロウ、まさかこれは・・・。」
「あぁ、『RED STONE』だ。」
石から迸る炎の煌めきに、グロウはそれが伝説の魔石だと確信した。


テラコッタに締め出しを食らった二人と三匹はケルビーから今回の冒険談を聞いていた。
彼等は廊下に一列に並ぶことで通行人の邪魔にならないようにしていたが、
金太郎が幅を取ってしまうのであまり意味をなしていない。
「やはり『RED STONE』か…。 あんな場所にあったとはな。」
部屋から微かに聞こえてきた単語にアッシュは敏感に反応した。
「『RED STONE』って伝説のすっごい石なんだろ? そこらへんに転がっているものなのか?」

風の噂では古都の議員が無差別に冒険者を募ったり、復活した秘密組織がやっきになって探しているらしい。
子供の頃に赤い石の伝説を聞いたことがあったが、ブルーノは御伽話だと思っており興味は湧かなかった。
「あれは欠片だ、あの大きさだと一つ完成させるのに何十個も探さないといけない。」
「へー。 詳しいんだな。」
いつになく真剣な態度のアッシュをブルーノは意外に思った。
『RED STONE』は美しい宝石だという話もある。
こういう類の話はバカらしいと言って一蹴しそうな彼だが、やはりシーフは宝物に心惹かれるのかもしれない。


「そうか、呼ばれたのか…。」
そう呟いたグロウは、片手にすっぽり収まっている石を憮然とした表情で握り締めた。
「これは私が預かっておく。 慎重に管理しなければならない危険な代物だ。」
洞窟で聞いた苦しげな声は、もう石から聞こえない。
それにマスターになら安心して預けられるだろうとミモザは思った。
「そうなんですか、それならお願いします。」

洞窟にいた時は絶対手放したくなかったのに、不思議とすんなり渡せられた。
赤い石は内に眠る強大な力を示すようにキラリと瞬く。
そこには邪悪さは感じられず、石本来の輝きを取り戻したかのように清らかな光を放っていた。

話の区切りを見計らって、テラコッタはミモザに寄り添うと二人には聞こえないように囁いた。
「ところで、いつの間にアッシュとラブラブチャットするようになったのよっ?」
楽しそうにテラコッタ冷やかしを入れると、肘でミモザを軽く突っつく。
「え? 誰がですか?」
「やーね、ミモザに決まっているじゃない。」
とぼけるミモザに彼女は尚も追及するが、ミモザは眉をハの字にした。
「チャットはよくして頂いてますが、アッシュさんに怒られてばかりで…。」

395国道310号線:2008/08/02(土) 01:12:25 ID:Wq6z33060
**********

【from アッシュ】おい。
【to   アッシュ】こんにちは、アッシュさん。
【from アッシュ】…。
【to   アッシュ】…。
【from アッシュ】……。
【to   アッシュ】あの…、アッシュさん?
【from アッシュ】…また耳する。

**********

【from アッシュ】おい、ハイランドには着いたのか?
【to   アッシュ】いいえ、今ケルビーに乗せてもらっていて東バベルの村辺りです。
【from アッシュ】遅い、オレの絨毯だともっと早く着く。
【to   アッシュ】あ、ごめんなさい。
【from アッシュ】…また耳する。

**********

【from アッシュ】おい、紋章品は集まったのか?
【to   アッシュ】まだです…。 なかなか集まらなくって。
【from アッシュ】なんだ、まだなのか。
【to   アッシュ】ご、ごめんなさい。
【from アッシュ】オレはもう集めた。
【to   アッシュ】アッシュさん、凄いですね。
【from アッシュ】お前が遅いんだ。
【to   アッシュ】そうですね…、ごめんなさい。
【from アッシュ】…。
【to   アッシュ】…。
【from アッシュ】…おい。
【to   アッシュ】はい。
【from アッシュ】…お前だけだと遅いから、その…。
【to   アッシュ】?
【from アッシュ】だから…!

【Gチャ ブルーノ】ミモザ、もうしっぽ集まった?
【Gチャ ミ モ ザ 】ごめんなさい、まだなんです。
【Gチャ ブルーノ】俺達の方は終ったからさ、手伝いに行くよ!
【Gチャ ミ モ ザ 】そんな悪いですよ、私の担当ですし。
【Gチャ テラコッタ 】遠慮することないわ、あなたの割り当ては他のメンバーより多いんだから。
【Gチャ ブルーノ】そういうことっ。
【Gチャ ミ モ ザ 】ブルーノさん、テラコッタさん…。 ありがとうございます、すごく嬉しいです。

【from アッシュ】……。
【to   アッシュ】アッシュさん、どうしたんですか?
【from アッシュ】もういい、なんでもない。

**********

「…チャットの内容って全部こんな感じだったの?」
「はい。」
事無く肯定するミモザにテラコッタは唖然とした。
聞いているこちらが恥ずかしくなるような惚気話を期待していたのだが、嫌がらせとも取れる内容の数々だ。
こんなものを2時間おきだなんて、自分なら彼の脳天に矢を射ち込んでいるだろう。

「アッシュさん、最近ずっと何か言い出したそうだったんですけど、悩み事でもあるんでしょうか…?」
ミモザは心配げにテラコッタの手を握り返した。
そんなチャットに嫌な顔するでもなく秘められた恋心に気付くわけでもない、彼女は優しいのだか鈍いのだか。
「さぁ、恋煩いでもしているんじゃないの?」
適当に答えた言葉とは裏腹に、テラコッタは二人の間を取持とうと決心した。


後日、材料を集めたセレスト・クルセイダーズは無事に紋章を完成させるのだが、それはまた別のお話。



おわり

396国道310号線:2008/08/02(土) 01:13:07 ID:Wq6z33060
目に見えない存在がずっと見守ってくれていた! ネタが黒頭巾さんの話と似てしまいました。
被った部分が話の根源にあたっていたので、私の構成力では軌道修正することもできず…orz
我がままな申し出でありましたが、投下の許可いただきありがとうございました。

話が変わりますが、AAエディターって便利ですね、テキストだと文字揃えるのが難しくてかないません。
例の赤い石が登場して、少しはレッドストーン小説らしくなってきたらいいな。


>黒頭巾さん
離れられないほど深く愛し合っているのに、信じあえない切なさがたまりません、
短編の中に込められている廃退的恋愛話に魅せられました。
ご察しの通りアラクノイドはミズナをイメージしています。
なるほど! いっその事ミズナの洞窟まで行った方が因縁めいていておもしろかt …アイデア力が欲しいよママン。

>68hJrjtYさん
>能力 ミモザは魔物に肩入れしましたが、ロマ達はどう折り合いをつけているのか気になるところです。
謎の宝石といえば、公式に行ってみたらロゴとレッドストーンのデザインが変わっていました。
これから多少赤石が本編に絡んでくる予定だったので、影響のない程度の変更に胸をなでおろしております。

>ESCADA a.ka. DIWALI
コラボ小説の続きが!
マスターもといいけめんさんへの誤解がとけて良かったです。(笑
キャラクター達がお茶目で可愛いらしく、見ていて楽しい気分になりました。

>ドワーフさん
トラップバイトの説明文に残る疑問形の不気味さ…。 そこからの話の膨らませ方が素敵です。
U武器に秘められた物語性を再発見させられます。 次回楽しみにしています。

>之神さん
木精霊から呪いを受けても、そのギャグを言われれば許せるような気がしました。
叫びにちゃんと<!>が付いていて笑いました、ネタが細かくて好きです。
ミカ参戦にワクワクしつつ、続き楽しみにしています。

397名無しさん:2008/08/02(土) 19:14:32 ID:OnMpHZjE0
クソスレage^^;
            ゙'.    '.;`i  i、 ノ  .、″
             ゙'.     ,ト `i、  `i、    .、″
                |    .,.:/""  ゙‐,. `    /
             `  .,-''ヽ"`    ヽ,,,、   !
                、,、‐'゙l‐、      .丿 : ':、
               、/ヽヽ‐ヽ、;,,,,,,,,,-.ッ:''`  .,"-、
              ,r"ツぃ丶  ``````   ../  `i、
          ,.イ:、ヽ/ー`-、-ヽヽヽ、−´    .l゙`-、
         _,,l゙-:ヽ,;、、             、、丶  ゙i、,,、
        ,<_ l_ヽ冫`'`-、;,,,、、、、.............,,,,、.-`":    │ `i、
      、、::|、、、ヽ,、、.    ```: : : ```      、.、'`  .|丶、
     .l","ヽ、,"、,"'、ぃ、、,、、、、.、、、.、、、_、.,,.ヽ´    l゙  ゙).._
    ,、':゙l:、、`:ヽ、`:、  : `"```¬――'''"`゙^`     : ..、丶  .l゙ `ヽ
   ,i´.、ヽ".、".、"'ヽヽ;,:、........、           、、...,,,、−‘`   、‐   |゙゙:‐,
  ,.-l,i´.、".`ヽ,,,.".`   `゙゙'"`'-ー"``"``r-ー`'":      _.‐′  丿  ,!
 j".、'ヽ,".、".、"`''`ー、._、、、           、._,、..-‐:'''′   .、,:"  丿
 ゙l,"`"`''ヽヽ"`"`  ```゙'''"ヽ∠、、、、ぃ-`''''": `      、._./`  ._/`
  `'i`ヽヽヽ`''ーi、、、: :                   、.,-‐'`   、/`
   ``ヽン'`"`  : `~``―ヽ::,,,,,,,,,,.....................,,,,.ー'``^    ,、‐'"`
      `"'゙―-、,,,,..、、               : ..,、ー'"'`
           : `‘"`―---------‐ヽ``"''''''""

398◇68hJrjtY:2008/08/08(金) 13:41:09 ID:tQPoZmM.0
毎日暑いですね(;´Д`A

>国道310号線さん
ミモザ編、そしてレッドストーンの欠片発見のお話完結!
レッドストーンが10個でひとつ…という事は今後またレッドストーン欠片が登場するんでしょうか(0゚・∀・)
短編で区切られていたセレスト・クルセイダーズのお話がついに長編になりそうな兆しに喜んでおります!
そしてアッシュとミモザの耳内容に笑…って笑っちゃいけませんが。意外とアッシュって奥手なんですねぇ(*´д`*)
素直なミモザと素直になれないアッシュの今後の恋模様の方も楽しみにしております。
セレスト・クルセイダーズの紋章はどんななんだろうなぁ…想像しつつ、続きお待ちしています!

399名無しさん:2008/08/09(土) 10:00:32 ID:MRV9NKQc0
かなり厳しい意見なので、心に余裕のある方以外はスルーして下さい。

一から順番に眺めさせてもらった。


感嘆符のあとは一マス開ける
三点リーダは二つ重ねる(二点リーダや中点は論外)
「 」の最後に読点は付かない

基礎の基礎すら守れてない物なんてまず読む気にすらならない。

ぶわーっと眺めてみて
最低限のラインを守れているのが白猫さん、みやびさん、ドワーフさんあたりかな
みやびさんは書き出しも一マス下げていて、改行もきちんとされていて
ネット小説の世界では珍しく非常に丁寧な印象を受けた。

ということで個人的に目に付いた作者さんの作品をじっくり再読。以下感想。

400名無しさん:2008/08/09(土) 10:01:06 ID:MRV9NKQc0
――白猫さん

多く作品を投下してますね。
文章力が圧倒的に不足していてるように感じます。
書く量は多いけど読書をしない物書きさんにありがちです。
味のある文章や流暢な組み立ては小説を書くだけでは身につかず、
たくさんの本を読まないと得られないです。
指示語(その そう それ etc)が多く、癖になってはいませんか?
また技名をセリフで言うのは人にも因りますが、多く使われると私は醒めます。
上手い人ならば必殺技は地の文と情景描写できちんと書き上げるので。
はっきり感想を言うならばどれも『つまらなくはないが別段面白くもない』作品。

内容のある物語は書かれていると思います。
伴う技術を身につけないと
物語を創り上げる力は十分あると思うので、頑張ってください。
音楽を聴かないで曲作りは出来ないのと同じことです。

――みやびさん

文章力、技術はこのスレでも頭が抜けていますね。
私は三点リーダ、ダッシュが多いように感じました。とはいっても、
西尾維新さんや舞城王太郎さんなどの例もあるので
こればっかりは作者の味としてそこまで気にしなくてもいいかな。
リレーのトップバッターとしての作品として要素がきちんと盛り込まれていて
他の人に気を使える方だなあ、と思いました。

――ドワーフさん

書きなれてる印象を受けました。
短い中でも起承転結がきちんと描かれていて、センスを感じます。
きちんとショートショート(掌編小説かな?)として作品が成り立っていて
さらりと読むだけでも十分面白いです。
レッドストーンのエッセンスも上手に盛り込まれており、
非常に好印象です。
これからも楽しみにしています。


――354さん

個人的に気になったので。
初めてのようで粗が多いですが、
文章力、また語彙力がこのスレでは一番光っています。
基本的に仲間内でしか楽しめない二次創作の作品ですが、
読者の事を考えて敷居を下げようとする努力が見受けられました。
内容自体もただの自己満脳内ファンタジーではなく
面白い設定で、起承転結もつけられています。
あえて突っ込むならばラストのくだりがちょっと上手くいってない印象。
ともあれ、この作品群の中でも異彩を放つほどの実力です。


最後に独り言。

感想が馴れ合いにしか見えない。気を使ったおためごかしの羅列。
歯に衣着せた感想を言うだけじゃ誰も成長しない。
良かった点、悪かった点。
面白かった。つまらなかった。
はっきり言って批評をして初めて質が上がるんじゃないの?

あと、ここに名前の上がってない人達へ。
ttp://www.raitonoveru.jp/
ここ行って勉強して出直してきて下さい。

401自称支援BIS:2008/08/09(土) 20:43:33 ID:QyNOkFrU0
>>399-400さん

私のように基礎が守れてない人が言うのも何ですが、少し気になった点を

>>1はお読みになられましたか?
読んでいるのでしたら、1に書かれている以下の文をどう思われますか?

「※当スレはあくまで赤石好きの作者・読者が楽しむ場です。
 「自分の下手な文章なんか……」と躊躇している方もどしどし投稿してください。
 ここでは技術よりも「書きたい!」という気持ちを尊重します。」

また、最後のサイトの紹介ですが、「勉強して出直してこい」と言うよりは
「こういうサイトがあるので、参考にするといいですよ」ぐらいの文章の方が
いいと思います

技術が無くても、文章についての知識が無くても、
一生懸命考えて作った文章がこのスレには載っているんです
作家の方々のために厳しい意見を言って下さるのはありがたい事ですが、
もう少しだけ言葉を選んで書き込みされてはどうでしょうか?
確かに文章の問題点を指摘する事は大事ですが、「読む気にすらならない」等といった
初心者を蹴落とすような言葉は控えた方がいいと思います


とはいえ、書かれている事が正確なのも事実
今まで厳しい意見を言って下さる方は居なかった(と思う)ので、
今後も感想や指摘を下さると、作家の方々もありがたいと思います


それにしても……「三点リーダは二つ重ねて使う」って初めて知りました orz
紹介されてたサイト行って勉強してきます〜

402名無しさん:2008/08/09(土) 23:28:05 ID:MRV9NKQc0
>>自称支援BISさん

 もっと言葉を選んで発言すべきでしたね。最後の文章については
不愉快な思いをされて当然な言い回しでした。返す言葉もありません。

 やはりどこからどう見ても全体的に悪意の感じられる書き方でしたね。
 それでも読書に慣れ親しんでいる身としてはやっぱり基礎が守られていないと
読むのが辛い、というのが私の正直な気持ちです。感想についての私の考えも
正直に思ったことです。これは本当に面白いと感じて言ってるのかな、と。
感想と馴れ合いは違うんだけどなあ、と。
 あくまで一個人の正直な感想ですので、「ああ、こう思う人も居るんだ。ふーん」
程度に捕らえていただければ幸いです。色々な考え方があって当然の世界なので
私自身絶対に正しい事を言っている、とは考えていません。
 また少しでも考えてくれて血と肉にしていただけたならばこれ以上に嬉しいことはないです。


>>1については書き込む際に少々考えました。
 大体「小説を書く」ということのスタンスは個人に依るもので、
「趣味でやってるので楽しく書ければいい」という方も居れば
「もっと上手になりたい」という方も居ます。
 そこに私の気持ちを持ち出せばこのスレの雰囲気を壊してしまうことも
予想してました。それでも「お互いが正直に批評しあって上達しよう」ことは
誰も考えていないのかな、と思い、書き込んだ次第です。
 敷居を下げるためのせっかく言葉を台無しにしてしまったこと、
もう一度この場を借りて深く謝罪させてもらいます。失礼な文章で
皆さんを不愉快な思いにしてしまったこと、大変申し訳ありませんでした。

403名無しさん:2008/08/10(日) 00:38:27 ID:xEl075rY0
私は読書が好きです、だからこんなことも知ってます。ある意味評論家です
そんなのが出てきましたね。

21Rさんからの伝言を承りましたので投下させていただきます。

スレ住人の皆申し訳、時間とか色々と問題が出てきたので今後は掲載サイトの方にのみうpって事にしました。
詳しくは前スレとかに乗ってるまとめWikiからどうぞ。
>>399-400
>>1

との事でした、因みに新作はまだのようです。

404自称支援BIS:2008/08/10(日) 04:20:50 ID:QyNOkFrU0
>>402さん
1を読んで、かつそういった考えを持って書き込みされていたなら、
399-400のような書き込みになっても仕方無いとは思います
ただ、その場合は冒頭に「文章力を鍛えたい人以外はスルーを〜」といった言葉があれば良かったと思いました

私自身は401でも書いたように、三点リーダの使い方や感嘆符の後は一マス空ける、
といった事を学べましたし、紹介されたサイトも参考になるサイトでしたので、402さんには感謝もしています

402さんは、このスレの主旨は分かって下さっているようですし、
謝罪もして下さったので、これ以上は何も言いません


>>403さん
399-400では確かにキツイ言い方をされていましたが、402で謝罪されています
これ以上402さんを煽ったりする事は、止めた方がいいと思います


さて……ここは小説スレです
私も402さんも403さんも、このスレの繁栄を願いつつ作者や読者に戻りましょう

私もサイトで勉強しつつ、また小説を投稿したいと思います〜

405黒頭巾:2008/08/10(日) 06:56:25 ID:vDgoXW.E0
>>399-400 >>402 さん

言いたい事は殆ど自称支援BISさんが仰って下さったんですよね。
それでも、貴方の“疑問”に対する私なりの考えを書かせて頂きますね。
基礎の基礎すら守っていない文章で読み辛いでしょうし、内容も不快に思われるかもしれません。
私の配慮が足りず、お気を悪くされたらごめんなさいね。


・最低限の基礎について

私もそれなりに活字中毒ですので、多少なりとも存じ上げております。
それでも、色々考えた上でこちらでは敢えて守っておりませんし、今後も守るつもりは御座いません。
読み飛ばすお手間を取らせるのも何ですので、どうぞNGIDにして下さいませ。
個人的には、最初に貴方の書き込みを拝見した際、“正しい日本語”にお詳しいと仰りながら紛れていた「い抜き言葉」が気になりました。
尤も、「い抜き言葉」に関しては一概に間違った日本語とは言えないとの考え方もありますが。


・「感想と馴れ合いは違う」について

1を読んだ上であの文章を書かれたのですから、疑問を抱かれるのはご尤もだと思います。

>ここでは技術よりも「書きたい!」という気持ちを尊重します。

私は1のこの部分を念頭に置いて感想を書かせて頂いております。
確かに時々言葉に困る場合もありますが、その時は私とその文章の“相性”が悪かったのだと考えます。
それでも、「どの部分が書きたかったのかな」「何か私の心に触れる部分はないかな」と考えて感想として書いておりますので、批判的な目で見えれば馴れ合いに見えるのかもしれません。

>当スレはあくまで赤石好きの作者・読者が楽しむ場です。

私なりの「楽しむ」の結果として、投下させて頂いた文章と感想があります。
私の文章は総ての人に受けるとは思っておりませんし、批判なんていらないとも思っておりません。
勢いだけの部分も拙い部分も目立つのは自覚しておりますし。
但し、他人の文章に関しては、批判するより少しでも良かった部分を述べたいと思っております。
悪い部分も良い部分も総てひっくるめて、“その人の味”だと考えておりますので。
「正直に批評して貰って上達しよう」と考えておいでの方は、投稿される前にその旨仰っておいでますしね。


貴方の書き込みを拝見させて頂いて、私と貴方の根本的な考え方の違いを感じましたので長々と書かせて頂きました。
私の考えを貴方に押し付けるつもりは御座いませんし、こんな考え方もあるのだと思って下されば幸いです。

************************************************************

うっかり読んでしまった方、長々と顔真っ赤なレスごめんなさいね(ノ∀`)ペチン
徹夜で眠くて頭が沸いてるようなので、皆様への感想やレス返しは後程改めて書かせて頂きます。
お休みなさい(-д-)ノシ

406名無しさん:2008/08/10(日) 08:49:23 ID:pSkhMINw0
面白い流れなのでちょっとだけ書き込みを。
普段はROM専で仕事前にスレをちょこちょこ眺めてるものです。

確かに辛辣な口調で思うところはあるけれど、そう間違ったことも言ってはいない。
参考サイトも上げてくれてるし、
ただの上から目線で掃いて捨てるものと捕らえるのは勿体無いかと。
厳しい目で批評してくれる人も貴重な存在なんじゃないかなあ。
結構的も得てる部分があると。

支援BISさんが非常に大人だと感じました。普通はあんな風に書かれたら
むっと来て否定的になっちゃうのが当たり前だと思うけど、
しっかり意思を汲み取っていられて、丁寧な物腰で答えているのが
単純に凄いなあと感じました。
どっかのえらい作家さんが「柔軟に他人の意見を受け入れられる人は必ず上達する」
とかなんとか言っていたのを思い出しました。

いつも感想を沢山書かれている黒頭巾さんの考えもとっても素敵なものだと思う。
万人に受けるものなんてそうそうないのは当たり前なのに、
きちんと作家さん感想を上げてくれるのはきっと皆さん嬉しいんじゃないかな?
それを馴れ合いと思うのはちょっと違うよね、やっぱり。

>>403さん
代理ということだからきっと作者さんの一人か、もしくは21Rさん本人のような気もするけどね。邪推だけど。
“一個人の意見”と言ってるのに
ただ単にあおるように揶揄するのはどうかと思うよ。402さんよりずっと悪意を感じた。
感じ方は人それぞれなんだから気に入らないのなら書いてあるようにスルーすればいいんじゃない?


なんだか大学時代のサークルを思い出したわw
基礎とは言ってるけど、実際に書いてみると読んでるだけじゃ中々気付かない所沢山あるんだよね。

作者の皆さん まともな感想が言えないので基本的にROM専の人間ですが
皆様の作品をいつも楽しみに読ませてもらってます。
これからも頑張って下さい。スレ汚し失礼しました。
っていうか遅刻だorz

407◇68hJrjtY:2008/08/10(日) 13:25:24 ID:tQPoZmM.0
うーん、このタイミングで私までもなんか意見するのはアレかもしれませんが…

「馴れ合いのような感想」というのはおそらく私の感想にも対してのご意見かと思いますが
前々から言っておりましたように、批判、指摘といったレスは私はできません(笑)
理由はやはりどんな小説でも良いところを評価したい、ということからですが
私自身がUPできる小説を最後まで書き上げたことがない事から、尊敬の意味も込めております。

「お互いの欠点を指摘し合って文章力の向上を目指したい」書き手さんにとっては
はっきり言って私の存在は無意味ですしある意味邪魔かもしれません。
黒頭巾さんではないですが、それこそNGワード扱いしてくださって構わないです。
そういったこともあり個人的には批判、指摘をされる方は歓迎したいところです。

ただリレー小説やチャットなどの企画を見ていただければ分かるかと思いますが
ある程度の馴れ合いの要素がこのスレにはある事は事実ですし、今後もこうした流れを個人的には望みたいです。
1スレ目の頃から今ではだいぶスレの空気も変わっていますが、スレの性質上「馴れ合い」要素は排除できるとは思えません。
「馴れ合い」を悪いことと考えずに、お互いが気軽に小説をUPして感想したり批判・指摘したりできる。
そんな空気がこのスレに流れたら良いな、と私は思っています。

408ドワーフ:2008/08/10(日) 18:30:55 ID:AepyIIHk0
薪割伝説

古都ブルンネンシュティグには数多くの英雄の伝説が残されている。
誰も彼もが戦争で多くの敵兵を殺したり、強大な魔物に戦いを挑んでいった強者ばかりだ。
だがそんな中に混じって異彩を放つ英雄がいる。
彼の名はボスク・チェルス。一日に五十株の巨木を倒したという伝説を持つ木こりである。
「だからどうした?」という感想は至極当然のことだろう。
たった一振りの斧で一日に五十株は確かに驚異的ではあるが、
動かない木を切り倒す事などその気になれば誰にだって出来る事なのだから。
しかし、ボスクの成し遂げた偉業は決してそんな誰にでも出来る事などではなかった。

当時のグレートフォレストの様子は現在のそれとは全く別物と考えてよい。
グレートを冠するに値するほどに広大で、あの森全体がエルフの王宮を囲む外郭であった。
森の中はエルフ達の魔法によって迷路になっており、
一度迷い込めば同じ場所を延々とさ迷わされた挙句にエルフに射殺されてしまう。
そんな怖ろしい場所だったのだ。
人々は決して森には近づかず、エルフを恐れていた。
その様子を聞いたブルンの王様は騎士団を編成し、エルフの討伐を命じた。
若く血の気の多かったアラドン王は、人間がエルフごときを恐れる事が気に入らなかったのだ。
しかし結果は無残なものだった。騎士団の誰一人として帰って来なかったのだ。
アラドン王は怒り狂い、今度は森を焼き払ってしまえと命じた。
その噂を聞きつけたボスクは、一介の木こりでありながら王様に謁見を申し立てた。
当時のブルン王国では貧民でも王様に目通りすることが出来た。
ただ、それは意見が気に入られなければただちに処刑されるという命懸けのものだった。
ボスクは王様に深々と頭を下げて懇願した。
どうか森を燃やさないでくれと。
王様はたった一言、ならぬと言い捨てて兵にボスクの首を刎ねるよう命じた。
引き立てられながら、ボスクは王様に苦し紛れに叫んだ。
自分が何とかする。誰も森で迷わないようにするから、どうか森を燃やさないでくれ、と。
その言葉を聞いた王様は、何を思ったのかボスクの処刑を中止させた。
王様はボスクに向かって出来るものならやってみろと言って彼を解放した。
ただし、誰の助けも借りてはならないという条件を付け加えた上に、
彼の妻を人質にしてしまった。
ボスクは必ずやり遂げると王様に誓い、愛用の斧を携えて単身グレートフォレストへと向かっていった。

ボスクのとった方法は、全く以って賢さに欠けるものだった。
いや、愚者であるが故に思いつくことの出来た実に単純明快な方法なのかもしれない。
その方法とは、
“森に入るから迷ってしまう。森の端から順に木を切り倒していけば迷ったりはしない”
それは何よりも困難で、危険を伴うものだった。
うっかり森に踏み込んでしまわぬように常に気を張り詰めさせながら木を切り倒し、
根を掘り起こし、子株を見つけては引き抜いた。
エルフたちは度々ボスクの作業を妨害するために現れたが、
彼はエルフたちの攻撃をものともせず、彼らとの戦いに常に勝利してきた。
何故ただの木こりに過ぎないはずの彼が戦いに慣れていたのかというと、
それは最初にも語ったように彼が日に五十株の巨木を切り倒すほどの猛者だったからだ。
これだけではまだ説明不足か。彼の切り倒してきた巨木は、動いていた。
現在でもグレートフォレストに行けば、ボスクが相手をしていた巨木ほどではないが、
子株程度なら少しは見つけられるだろう。そう、凶暴なトランクマンやトレントたちだ。

409ドワーフ:2008/08/10(日) 18:32:04 ID:AepyIIHk0
しかし、いくらボスクといえども彼の目指す目標は達成不可能と思えるほどに遠かった。
半年かけて彼は森を東西に二分する中間地点まで切り拓いていたが、
彼自身にはどこまで作業が進んでいたのか全くわからなかった。
焦れたアラドン王はボスクを牽きたてて再び自身の前に呼び出した。
いつになったら終わるのかと王はボスクに尋ねた。
わからない、とボスクは正直に答えた。
ボスクの言葉に王は怒り、彼の首を刎ねるよう兵士に命じた。
王様は約束を守る者を裏切るのかとボスクは叫んだ。
自分は約束どおりずっと一人で森と戦い続けている。それなのに王様はボスクを殺すのかと。
ボスクの言葉に王様は戸惑った。平民ごときに意見されるなど思いもよらないことだった。
だが納得したのか、もう半年だけ待ってやると言ってボスクを再び解放した。

王様に与えられた残りの半年、ボスクは必死で戦い抜いた。
大熊との戦いに傷ついても、冬の寒さに凍えても、疲労の果てに骨身が軋んで悲鳴を上げても、
ボスクはオーガの如く戦い、グレートフォレストの木々を切り倒し続けた。
彼の鬼気迫る働きぶりにエルフたちも彼を恐れるようになっていった。
次第に彼を襲う事も無くなり、遂には森の奥で怯えながら彼を見守るのみとなった。
そうしてようやく、ボスクは森を抜けて西の砂漠へと辿りついた。
兵士の報告を受けてやってきた王様は森を真っ二つに割って延々と続く道を見て、言葉を無くした。
石畳を敷いてきちんと整備し続ければ森に飲み込まれることもなく、
安全に迷うことなく渡る事が出来るでしょうと、ボスクは王様に言った。
王様は馬を降り、傷だらけの彼に敬意を表し、
私は当代の英雄を殺してしまうところだったと、彼に対してのこれまでの無礼を詫びた。
王様はボスクにチェルスという名を贈り、彼を称えるとともに彼を召抱えたいと言った。
しかしボスクは自分は木こりしか出来ないからとこれを断った。
彼が切り開いたこの道はプラトン街道として現在も西の砂漠と古都とを結んでいる。
ボスクの残した恐怖の跡にはエルフはおろか動物すらも近づこうとしない。
やがてボスクの英名は旅の安全を願う商人や冒険者に崇められるようになり、
彼が愛用していたのと同じ斧が旅の安全を祈願するお守りとして今も愛されている。

さて、伝説の締めくくりには英雄の最後が相応しい。
ボスクはグレートフォレストでの一件の後に体調を崩して故郷のブレンティルに帰った。
そこで足から木の根が生える病を患い、数年後には枯木の如く朽ち果ててしまったという。
エルフの呪いだとも言われているが、定かではない。
ただ、グレートフォレストの中では今だにエルフの魔法が残っているということを忘れてはいけない。
あの森は今も彼らの領域なのだ。

410ドワーフ:2008/08/10(日) 18:44:47 ID:AepyIIHk0
あとがき
暑い日が続きますね。
今回は割りとメジャーなものを選んでみました。
書きながら走れメロスを思い出してしまいましたが、
やはり小さく短くまとめさせて貰います。

まあ、気楽に楽しみましょう。
感想はおろか返事レスすらろくに書けないでいる自分が言うのもなんですが…、
どんなものであれ意見や感想を頂けるのはありがたいです。

411◇68hJrjtY:2008/08/15(金) 21:54:51 ID:tQPoZmM.0
>ドワーフさん
今回は剣士の武器と考えるとちょっと異色な薪割斧。
昔の王様は残酷なんだなぁと思いつつも、彼が立派に事を成し遂げた時の称えぶりに少し安心でした(笑)
なるほどメロスというのはあとがきを読んでから思いつきましたが死ぬ気で頑張ったボスク、メロスと同じ雰囲気がありますね。
薪割斧だけでなく今のグレートフォレストとプラトン街道の起源についても分かるお話でしたね。
次回作もお待ちしています。

私信ですが。
改めて>>400さんの紹介されているサイト、「ライトノベル作法研究所」をいろいろ見回ってました(笑)
いやでも凄く参考になることばかりですね。
きちんとした評価をし合うことでお互いを高めるといったことを主旨とされているサイトのリンクもありますし。
お暇な方はちょこっと訪問してみてはいかがでしょうか〜。

412名無しさん:2008/08/19(火) 17:50:47 ID:yYV8stV.0
俺は今はやりのREDSTONEを友人に勧められたのでやってみる事にした。
ダウンロードとインストールを済まして…サーバーは左上だったっけな。パスワードを入力して入る。


フヒヒwwwwwwやっとついたぜ。それにしても最近のゲームはリアルだな…こいつ上半身全裸なのか…お、あれは
殺風景な部屋で待っていたのはロリ巨乳とでも言うべきであろうか、ボインで童顔な笛を持った女だった。
友人…お前なんだってそんなそそるグラフィックを。笛貸してくれよ、間接キスだなフヒヒ…
やあん、もぉ、あらあらうふふ 取りあえずクエストを受けて外に出ましょう。
俺は友人に教えられながらついにクエストを達成する事が出来た。
ここから先は古都よ。変な事言うと運営に牢屋に入れられちゃうから、くれぐれも注意してね
了解、フヒヒ。そして俺はマウスをクリックする。
ここが…古都か!ボインなお姉ちゃんに何やら鞭を持った熟女が居るぜ、ナンパしてくる
やあ可愛いね、お話でもしませんか…フヒヒ、つれないぜ。やあお姉さん、お茶でもどう、え、お前男かよ。
ちくしょう、ちくしょう。どうなってんだよ、俺は出会いが欲しいのに
いつもまにか俺はハイになっていた。ここはどこだ、どうやら噴水の前、古都の中心辺りなようだ。そしていつのまにか横には友人のロリ巨乳がいた。
馬鹿じゃないの、それじゃマジキチな出会い厨じゃない、ほら。街から出てレベルを上げるわよ
・・ざけんなよ。
え? ロリ巨乳は面食らったようだった。
ざけんな!俺は敵を倒してレベルを上げるなんてしたい訳じゃない!出会い、そうだよ。出会いが欲しかったんだよ!
ちくしょう面白くない!俺は落ちる!!
貴重な時間を無駄にして、友人との関係もぎこちなくなった。
俺は一生ここに戻る事は無かった。俺は気が付いてしまったのだ。こんなゲーム、時間の無駄だという事に。

413黒頭巾:2008/08/27(水) 20:15:43 ID:0WLFocA20
サボりすぎで溜まってるので短めにレスレス。


>之神さん
色塗りお疲れ様っす!(`・ω・´)
想像していた色と違ったり思い通りだったり…イメージって面白いですねー笑
色鉛筆はアタイには難しすぎて苦手だよ、ママン(ノ∀`)

ミカ参戦キター、楽しみー(´∀`)
ナザくん、運極で要求足りなくて抵抗装備出来ないんだろうなぁと笑いました。
そして、ライトが洗濯機で回されている洗濯物のようにwww


>68hさん
ネクロマンサーという職業上、如何しても生死が絡む発想が多くなってしまいます(ノд`)
コラボが好きと仰って下さって嬉しいです…いつも偽者になりすぎないよう必死です!笑
ようぢょも萌えますが、やっぱりネクロはショタっ子ですよネー(*´・д・)(・д・`*)ネー


>ESCADAさん
わーい、続き書いて貰えたー(´∀`)
いけめんさんのヘタレ具合と弄られぶりに盛大に爆笑しました、はい。
同じキャラでも書き手によって特色出て面白いですよね(*´∀`)ウフフ


>ドワーフさん
トラップバイトは諸刃の剣!((((・д・;))))ガクブル
罠は罠でも、自らも巻き込まれる罠…ちょっと違うけど「人を呪わば穴二つ」を思い出しました。
ここぞと言う所で大きな仕事を果たす、漢コーザに敬意を(`・ω・´)ゝ

薪割り斧ってトワー剣士用のUだとばかり思っていたのですが、こんな猛者の斧だったのですね!Σ(・д・;)
英雄の最期に因果応報という言葉が浮かびましたが…命がけで作ったボスクが今も護っているから、街道は安全なのかもしれませんね(´;ω;`)ウッ
ドワーフさんの作品の登場人物達は、何処にでもいそうで何処にでもいない感じが大好きです。


>国道さん
ミモザかわゆす、ブルーノかこよす、アッシュストーカーキテマス!(*´д`)
愛すべきおバカ、いつも一生懸命で暖かいブルーノ、やっぱりお兄さんってイメージですねー!
アッシュのツンデレ振りに大爆笑です…嗚呼、テラコッタが応援したくなる気持ちわかる!笑

被りに関しては本当にお気になさらず…国道さんファンとしてはむしろ光栄でs(ry
退廃的恋愛話との評価は嬉しいですよー、耽美な物語が書けるようになり隊(*´∀`)ウフフ
横ですが、レッドストーンのロゴデザインは前のが完成体、今のが欠片と思ってました←


>406さん
顔真っ赤な文章読まれたようで申し訳ないです…後で読み返したら煽ってる煽ってる(ノ∀`)ペチン
それでも考えて賛同して下さった部分、嬉しかったです。
前から思ってましたが、ROM専の方は沢山おいでるみたいですね…笑
隠れ住人多くて嬉しいです…このシャイボーイどもめ!(褒めてる/ぇー)
遅刻大丈夫だったでしょうか…ソレだけが心配です(´・ω・`)


>412さん
ゲームクリアおめ^^


書きかけのSSは内容がヤバイ方向に動いております…このままじゃ此処にうp出来ないよ!
仕方がないので放置して別の話に取り掛かります^p^

414◇68hJrjtY:2008/08/30(土) 18:46:39 ID:XypuDbDA0
生きておりますヾ(;´∀`)ノ

>412さん
ちょっと羨ましい……なんて思いながらゲームクリアおめでとうございます(笑)

>黒頭巾さん
ヤバすぎでUPできないとは…!はやる気持ちを抑えながら新たな小説の方楽しみにしています。
やっぱりしたらばではなくて普通の掲示板に小説UP用スペースみたいなの欲しいかもですよね〜。
エログロは隔離したりして完全なRS小説UP専用サイト!みたいな(・∀・)
いやいや、私は作りませんけど!(無責任

415名無しさん:2008/09/01(月) 16:42:11 ID:N37CdrJo0
>>414
なるほど、言いだしっぺの法則ですね、わかります。

最近は投稿が少ないので、飢えております。
……が、せっついているわけではございません。

読める日を楽しみにしているROM専ですた。

416名無しさん:2008/09/01(月) 19:00:38 ID:OnMpHZjE0
ESCADA文才無さすぎキモスwww

417ドワーフ:2008/09/02(火) 23:32:21 ID:AepyIIHk0
マルチェドと血まみれ男

 ひと気のない街道を異様な出で立ちの二人の人物が並んで歩いている。一人は真っ赤な血に染まった服を着た、
荷物を何一つ持たない手ぶらの男。もう一人は暑い日差しにも関わらず全身を長いコートで覆い、顔までも鉄の兜
で隠している小柄な人物。この二人の人物の不気味さはその外見もさることながら、その和気藹々とした雰囲気だ
ろう。
「いやあ、助かったよ。君が通りがかっていなかったら今頃どうなっていたことか」
「いえ、何も大したことはしていませんから」
 小さいコートの何者かは謙遜したように首を振った。
「俺はジェスターっていうんだ」
「マルチェドです」
 ジェスターは手を差し出したが、苦い顔ですぐに引っ込めた。ジェスターの手は真っ赤な血でべっとりと汚れて
いて、とても握手に適した状態ではなかったからだ。マルチェドのコートにも既にジェスターのものと思われる血
が付着している。
「後で洗わなきゃな」
「どこか水のあるところを知ってるんですか?」
 ジェスターは街道の先の方を指差した。真っ赤な手はまるでペンキ塗りの標識のようだ。
「この先を脇に逸れてしばらく行ったところに村があるんだ。かなり小さいけどね。そこで水が手に入るし、君に
お礼も出来るだろう」
「お礼なんて、そんな」
 マルチェドは遠慮するようにそう言ったが、ジェスターはどうしても彼をそこに連れて行きたいらしい。
「君は俺の命の恩人だ。恩を返さずに『はい、さよなら』じゃあ俺の気が治まらない。それにその村は俺の生まれ
故郷なんだ。大したことは出来ないかもしれないが、実家で持て成させてくれ」
 両手を広げて熱心に説得しようとするジェスターに、マルチェドは少し俯き加減に答えた。
「分かりました。でも、僕はあなたの命の恩人なんかではないです」
 承諾したマルチェドに、ジェスターは笑みを浮かべた。
「そいつは良かった。それにしても、君はどこまでも謙虚な人なんだな」
「そういう訳では…」
 何か言いたそうなマルチェドに、ジェスターは苦笑した。

418ドワーフ:2008/09/02(火) 23:37:00 ID:AepyIIHk0
 日は傾き始めていたが、遠くの景色はまだ暑さに揺れていて、蜃気楼でも見えそうなほどだった。遠くの木陰で
野犬が小さくうずくまっている。
 血が乾いてジェスターの服をパリパリに固めてしまっている。ジェスターは腹に固くへばり付く布を引き剥がし
た。そしてため息混じりにつぶやいた。
「不恰好だけど、もうしばらくこのままで居るしかないな」
 乾いた血が黒く変色し、ジェスターの姿をより不気味に見せていた。
「荷物、全部盗られちゃいましたね」
「ああ、鞄ごと持ってかれてしまった」
 同情するように言ったマルチェドに、ジェスターは少し落ち込んだ様子で答えた。
「まあいいさ。金は惜しいが、他は必要なくなるものばかりだったし」
 ジェスターが諦めたようにそう言うと、マルチェドは気になったのか彼に尋ねた。
「どうしてですか?」
「冒険をやめようと思ってたんだ」
「冒険者だったんですか」
 マルチェドが意外そうに言うと、ジェスターはハハハっと笑った。
「行商人か何かだと思ったかい?野盗にやられて剣も盗られるようじゃ、それも無理ないか」
「すいません」
 謝るマルチェドにジェスターは手を振った。
「いいんだよ。あそこは賊が出るって昔から知ってたのに、油断した俺が悪いんだから」
 ジェスターは笑いながらそう言うと、マルチェドの姿をじろじろと眺めた。冒険者ならマルチェドがどういう存
在か知っているだろう。
「君も冒険者だね。街で君に似た人たちを見た事があるよ」
「ええ、最近増えてきましたね」
「うん、こう言っては何だけど、実は気味が悪くてずっと敬遠してたんだ。でもこうして話してみると意外といい
人だったんだね。勿体無いな。こんな事ならもっと早く君のような人と知り合っておけば良かった」
 マルチェドは自分の胸に手をやって俯いた。何か考えているのだろうか、ジェスターはマルチェドの気分を害し
たと思い慌てた。
「ああ、ごめん。気を悪くしたかい」
「あ、いえ、そういう訳ではないんです。ただ、懐かしい人のことを思い出したんです」
 マルチェドの言葉に安心したのか、ジェスターは今度はにやりと笑った。
「初恋の人とか?」
「あはは、まあ、そんなところです」
 ジェスターは驚いたようだったが、すぐに元の笑顔に戻った。
「君のような人との出会いがあると、冒険をやめてしまうのが惜しくなるな」
「どうしてやめるんですか」
 ジェスターは顎に手をやった。考える時の癖なのだろうか。

419ドワーフ:2008/09/02(火) 23:38:30 ID:AepyIIHk0
「理由は色々だな。月並みなことを言えば、夢を追ってばかりも居られなくなったてところか。楽しい事ばかりじ
ゃないし、モンスターを相手に命のやり取りをするのにも疲れたし、お宝って奴はロクに見つからなかったし。ま
あ、今までずっと我侭を通してきたんだ。そろそろ真っ当な生き方をしなくっちゃな」
「そうですか」
 マルチェドはまた俯いた。ジェスターのような人はそう珍しくない。
「もしレッドストーンが見つかったら訪ねてくれよ。自分の追いかけていたものを一目でも拝んでみたい」
「え?ええ…」
 マルチェドは暗い調子で答えた。だが、ジェスターはマルチェドの様子に気づかずに話を先に進めた。どうやら
一度感情が傾くと止まらなくなるらしい。
「本当は帰るかどうか迷っていたんだ。弟や妹に苦労を押し付けて、勝手に家を飛び出してしまったからね。今更
どんな顔して帰ればいいか分からなくて、このまま街で何か職に就こうかとも考えた。そうやって悩みながら過ご
しているときに、弟とばったり会っちゃってね。あいつ商人に買われてて、随分と修行したらしくって、新しく立
てる店を任されるほどになってた。今まで何をしてたんだって散々責められたよ。当然だよな。馬鹿野郎だの、ろ
くでなしだの、言うだけ言った挙句、妹が結婚するから早く帰れって言うんだ。驚いたよ、本当に。家を出た時は
こんなに小さかったのに、それが結婚するっていうんだから。でもさ、それなら尚更帰れないじゃないか。おめで
たい席に俺みたいなのが居ちゃ駄目だよ。そしたら弟の奴、俺みたいな自分勝手なろくでなしでも、肉親が祝って
やれなくてどうすんだって言うんだ。それに、妹はずっと俺の事を心配してたって。おかげで、ようやく帰る決心
がついたんだ」
「…………」
 マルチェドは黙ったままだった。
「他人の結婚式はちょっと肩身が狭いかもしれないが、出来れば君にも居て欲しい。俺一人じゃ心細いんだ。きっ
と知り合いはもうほとんど居ないだろうから。あ、それほど大きな式じゃないよ。近所の親戚が集まってやる、小
ぢんまりとしたものらしい」
「…………」
 ジェスターは黙ったままのマルチェドの様子を不審に思ったようで、心配そうに尋ねた。
「気分が悪いのかい?」
「いえ、そうじゃないんです…」
「じゃあ、やっぱり、他人の結婚式に出るのは嫌なのかい?」
「いえ…」
 ジェスターは首を傾げた。すると、マルチェドは腕を前に出して遠くを指差した。
「あの…、あそこに見えるのがジェスターさんの村ですか?」
 マルチェドが指差した先には、いかにも農村という風情の、木柵に囲まれた家々が小さく見えていた。
「ああ、そうだ。やっと着いた」
「止まってください」
 嬉しそうに早足に歩き出そうとするジェスターを、マルチェドは立ち止まって呼び止めた。
「どうしてだい?ほら、すぐそこだよ」
「ここまでです」
「何が?もしかして、寄っていってくれないのかい?」
 マルチェドは首を左右に振った。
「いいえ、あなたがここまでなんです」
「何を言ってるんだい?」
 ジェスターにはマルチェドが突然言い出したことの意味が全く分からなかった。
「気づきませんか?そのおびただしい出血の跡。僕一人の治療でどうにかなるように見えますか?それにあの暑い
日差しにも関わらず汗一つかいていないという事も」
「何を…」
「あなたは、とっくに死んでるんです」

420ドワーフ:2008/09/02(火) 23:40:38 ID:AepyIIHk0
 日は西の山の上に静かに乗り、もう間もなく空を朱に染める事を告げていた。
「ははは、何を言ってるんだ。俺はこうして生きてるじゃないか。死体が歩いたり喋ったりする訳ないだろ」
「ごめんなさい。僕のせいなんです」
 マルチェドは謝った。
「何で謝るんだよ。さっきから君はおかしいよ。黙り込んだり、話し始めたかと思えば人を死人扱いするし」
「混乱するのも無理ないと思います。ですが受け入れてください。あなたは死んでるんです。僕がさ迷っていたあ
なたの魂を見つけ、再び近くにあったあなたの肉体に戻した」
 ジェスターは唖然としていた。俄かには信じられない事実だろう。ジェスターはハッとすると、服を捲り上げ、
身体に幾重にも巻きつけられている包帯を乱暴にほどき始めた。
「僕があなたを見つけたとき、あなたは既に殺されていた。即死状態で、ビショップが居たとしてもどうにもなら
ない状態だった」
 話しているマルチェドの目の前で、ジェスターは包帯を全て取り払った。その下から覗いたのは、胸の辺りを鋭
利な刃物で何度も貫いたような、無残な傷跡だった。
 自分の胸を見下ろして、ジェスターは足に力を失ったのか、そのままその場で座り込んでしまった。
「俺は、死んだのか」
「はい」
 沈黙。二人の人物が、黙祷を捧げるように俯いたまま黙っていた。
「…何が目的だ?」
 顔を伏せたまま、ジェスターは問いかけた。
「何か目的があるんだろう。でなければ、ここまで来て止まれなんて言えるはずがない!」
 ジェスターは顔を上げて、マルチェドに向かって怒鳴るように声を張り上げた。
「目的なんてないです」
「嘘をつけ、なら何故俺を蘇らせた。何故俺をここで止めるんだ。何で、放っておいてくれなかったんだ」
 責めるようにまくし立てるジェスターに、マルチェドは俯いて答えた。
「僕はただ、帰りたいと泣いている魂を見つけて、それで…」
「なら、行かせてくれ。せめて、妹に会わせてくれ」
 懇願するジェスターにマルチェドは首を振った。
「それが駄目なんです」
「なぜ!?」
 ジェスターの声は怒気をはらんでいたが、その目は死んだ魚のように黒かった。
「あなたはそれでいいかもしれない。でも、あなたの家族にとってそれが良いことだとは僕には思えない」
 マルチェドは顔を上げて、ジェスターを説得し始めた。
「あなたはきっとこう考えている。妹さんに会って、話して、そして去ろうと」
「それの何がいけないんだ」
「何処に居るのか、生きているのかどうかすら分からない。きっと生きていると信じても、不安は消えない。そん
な苦しみよりも『そこに居る』という悲しみが生きている人には重要なんです。話したりすれば、その苦しみと悲
しみが余計に増すだけです」
 ジェスターは頭を両手で抱えると、首を左右に振った。
「死体に、道案内をさせた訳か」
「…………」
「俺に君のような力があったとして、果たして同じ事が出来ただろうか」
「…………」
「君は…、いや…」
 ジェスターは何か言いかけると、立ち上がった。
「それで、これから俺をどうするんだ」
「僕があの村まで行って、村の人にあなたを運んで貰います。僕にあなたの身体を担ぐのは無理ですから」
「そうか」
 そう言って、ジェスターはふと気づいたように言った。
「でも、それだと君は…」
「いいんです。慣れてますから」
 ジェスターはマルチェドの目を見た。その兜の奥に輝く光を。
「すまない」
「謝るのは僕の方です。あなたにまた辛い思いをさせようとしている」
 ジェスターは目を下に落とすと、ぽつりと呟いた。
「…怖いな」
「空を見てください」
 ジェスターはマルチェドに言われるままに天を仰いだ。日は西に沈み始め、朱に染まった空がゆっくりと夜の帳
を下ろし始めた。帳には、薄っすらと星の瞬きが見えている。
「死んだ人の魂は天に昇って星になるそうです。あなたも、あそこに行くんですよ」
「そうか。案外、レッドストーンはあそこにあるのかも知れないな」
 強がるように、ジェスターは笑って答えた。
「かも知れませんね」
 マルチェドも一緒に空を見上げ、そう答えた。
「死んだ後も冒険か、嬉しいやら悲しいやら」
「見つけたら教えてくださいね」
「はは、どうやって」
 ジェスターはマルチェドの目の前に近づくと、しゃがんで目線を同じ高さに合わせた。
「君とは生きている間に知り合いたかった。嘘じゃない」
「僕もです」

 一つの魂が天に昇る。拭いきれなかった心残りのためか、重々しくゆっくりと、しかし着実に夜空を目指してい
た。

421ドワーフ:2008/09/02(火) 23:47:20 ID:AepyIIHk0
あとがき
久々にユニークネタから離れて書いてみようと思いまして、
台風みたいな大雨や雷にビクビクしながら書きあげました。
かなり前に書いたマルチェドの話の続きみたいなものです。
でも、ただ単に名前を考えるのが面倒臭かったというのもあります。

昔のB級ホラーみたいなタイトルにただ今反省中です。

422◇68hJrjtY:2008/09/03(水) 16:54:42 ID:XypuDbDA0
>415さん
うわぁ…法則発動っすかorz
415さんが協力してくれるなら喜んで!(こら

>ドワーフさん
おぉ、マルチェドカムバック!
性格が大人しいネクロマンサー君ですが、どことなく儚いみたいなイメージの彼。私は大好きですよ。
お話はホラーというかなんというか。前回の「マルチェドと貴婦人」も同様ですが、霊を扱った悲しくも優しいお話。
ジェスターの「案外、レッドストーンはあそこにあるのかも知れないな」というセリフはちょっとホロリと来ました。
「死んでいる」事を明かしながらも悲劇というだけで終わらない締めくくり方に、変な言い方ですが嬉しかったです。
次回作もお待ちしております。

423名無しさん:2008/09/03(水) 19:24:12 ID:fCs6564.0
ROM専です、こんにちは。
私としても新しい別の形で掲示板があるといいなと思い、借りてきました。

このスレッドですと、長編が多く、読みたい作品を探すときにスクロールするのが大変です。
そこで、各書き手さんのシリーズごとにまとめて読みやすくなれば、探しやすくなればと、そういった表示が出来るものを採用してみました。
また、イラストなども同時に投稿出来ます。
ttp://p1.avi.jp/ohuyu/
いかがでしょうか。
こうしたほうが良いなどの意見がありましたらお聞かせください。

424防災頭巾★:削除
削除

425◇68hJrjtY:2008/09/07(日) 22:51:19 ID:PVbAzmXE0
>>423さんの作ってくれた掲示板にも書きましたが、まとめWikiを新たに作ってみました。

http://wikiwiki.jp/rsnovell/

まだトップページしか編集しておらずメニュー内容とかも全然触ってないのですが
かなり簡単に編集できるのでちょっとだけヘルプを見ながら是非編集やまとめの助力お願いしたいです<(_ _)>
意見があれば>>423さんの小説スレ避難所かWiki内にあるフォームから書いてくれると嬉しいです(*´д`*)
宣伝みたいですが報告まで〜。

426ワイト:2008/09/08(月) 12:28:42 ID:1tNOqf2o0
前RS小説6冊目>>895⇒6冊目>>901⇒6冊目>>975⇒続編

「ご…ご主人様ぁ……!」「え?あ…?」
主人は声を発した、一体のデスナイトの崩れゆく姿を、振り向き様に視界に捉える。
そして、主人は…声を掛ける猶予すら無く、デスナイトが塵と化し散っていく光景を目に焼き付けた。

「他に敵意を感じる気配は無いな…後は亡骸に寄り添う一人の男を倒せば、終わりだ。」
ラータは主人に視線を移すと同時に、両者の瞳と瞳の行く先は重なり合い、互いの想いを乗せている。

「黙れ…!私の、私の…さ、最高傑作を…殺って、くれたな!ラァタアァ!!!」
「何言ってる?先に仕掛けたのは誰だ?元を辿りゃ、諸悪の根源はてめぇの方だろ?無駄死にだな!!」

「…る…い…!」
「うる…さ…だ…れ!」
主人は、細々と静かに何かを口に呟いている。

「何だ?聞こえねぇよ。」
「うるさい…!うるさい!!うるさあぁぁい!!!黙れ黙れ黙れえぇ!!!
それ以上の冒涜は許さない!私の心境を共感出来るのは、やはりあの方だけ…!」

「ちっ!辺り構わず怒鳴り散らしてんじゃねぇよ!!俺の聞きたい事は二つだ。
戦闘意欲はまだあるのか?そして…あの方ってのは誰何だ?答えろ!」

「(落ち着け、平常心を忘れるな…このままでは、ラータの思う壺に成りかねない。
ヘルズゴート(物語序盤のウェアゴートの正式名称)の二の舞になってしまう…!)」

主人は、我を見失い掛けていた…しかし、自らの器量を持って見事、己を取り戻す。

「押し黙ってるのもいい加減にしろよ?早く答えろ!!」
「いやはや…私としても質問、いや尋問したい。ラータ…お前は何故私達、組織に刃向う?
何故同胞を殺す?何故…この誉れ高い私に対して牙を向くのかな?ラータ?」

「何?質問しているのは俺の方何だがな?そして、てめぇは一つ勘違いしてるぞ?
突然、俺と見るや殺気立てる奴…俺を牢獄に閉じ込め、化け物を投入するわ…!
罪を犯したから何だ?些細な出来事から、事を荒げたのはてめぇらの方だろうが!!」

「ふふふ…私と貴方では、話し合っては収拾は付かない、か…!あ、そうそう…
私に対する貴方の質問の返答を、知りたければ!力尽く!全力を尽くして、挑んで下さいよ!!」
「そうか、結局そうなるのか。でもよ…言い難いが、てめぇ自身の手下は全て消し飛んだ。
それでも闘うのか?いや…それとも既に敗北する覚悟を決心したってのか?」

「いやぁ…先立ってそれは無いですよ?無論、私は貴方に敗北する可能性は微塵も有りませんし?
更に逆を言えば、私の勝利する確率…いや可能性は、計算上90%を上回っているんですし…
勿論、私の得意分野は手下の指揮等関係だけでは有りませんよ?見せて差し上げましょう!!!」

「ふん!闘いってのは…計算尽くしじゃ、計れねぇんだぜ!?御託並べてねぇで、さっさと掛っ…て!!?」
「言われなあぁぁくてもぉぉお…ゆっっくりとぉぉお!時間を掛けぇぇてえぇ…!思い知れえぇえ!!」

               ゴオオォォォオオオオ!!!!!

ラータは畏怖する…!まるで瞬く間に血を凍りつかせ、存在する生命の流れを断ち切る様な…
身体全体に痛感する嫌悪感。そして、心臓を張り裂けそうになる痛みに、ラータは畏怖していた…!

「あは!あはっはははっ!あははは!何ていうかぁ…!貴方誰なの?私の敵かしら?…あぁ!そうよ!
あっ!私ったらイケないわ…つい、殺っちゃうのよねぇ…大丈夫だと良いんだけど?」

ラータは素直に驚愕した。変身?進化?した主人の口調、言動は激変している。
更には、男性→女性の姿形に変化?覚醒?した主人の不可思議な現象に自身の目を疑った。
しかし、更に有り得ない変化と言えば、ラータの下腹部に風穴一つ空いている事だろうか。

「な!!?ウッ!ゲホッ!はぁはぁ…い、何時の間…ゴホッ!に、俺の身体を、ウッ!…つ、貫いたんだ!」
「それは知らないけどぉ…確かなのはね?今、貴方は私の手によって死ぬの。それだけよ。」

真相を知り得ないまま、ラータの意識は薄れ、視界は暗転し、次第に身体は朦朧と崩れ落ち…て?

427ワイト:2008/09/08(月) 12:42:57 ID:1tNOqf2o0
あ、sage忘れてました…申し訳無いです。久し振りに続編を書き込み致しました。
現時点では、既に自分の名前を忘れている人は…多数いると思います。
そして今回は、前回の話を忘れてしまい、思い出して考えるのに時間掛りました。
次回の続編は、いつ書き込むのか見当付いていないです…ご了承下さい。

428名無しさん:2008/09/08(月) 16:40:14 ID:N402UAoM0
RSの実写版ってできねえか
メテオど〜んして東京タワーが吹っ飛ぶとか

429◇68hJrjtY:2008/09/10(水) 07:03:33 ID:nj1vQZFI0
>ワイトさん
朝っぱらから失礼!いやいや、ちゃんと覚えておりますよ♪
ラータが最初に牢獄に捕らわれてバフォメットと戦ったり、ヘルアサシンの罠に捕らわれたり。
アリアンでの戦いもそれに続くものかと思いきや、全ての首謀者が現れそうなところですね。
頭脳タイプのような主人の口調の変化、もしかして女性…!?うーん、まだ正体は分からないですけどね。
一対一の決闘にもつれ込んだ戦い、結末まで続きお待ちしております!

>428さん
漫画化をされているサイト&ブログは結構あるようですが、実写版となるとなかなか想像が膨らみますね。
メテオもそうですがランサのF&Iやアチャやシフのスキルなんかも見てみたかったり。
高画質ムービーなんかで再現できそうな気配はしますが…誰か知識と技術のある人に作ってもらいたいですね(笑)

430名無しさん:2008/09/13(土) 00:07:47 ID:QKFSg0Tk0


序幕 


普段なら冒険者達の喧騒で溢れかえっている古都の街が、しんと静まり返っている。
いつも冒険者にアイテムを提供しているドロシーも、『その時』が来たのを確認してそっと肩の力を抜いた。

瞬間、今まで根が生えたように棒立ちしていた店の主人や街角の住人、いわゆるNPCが一斉に動き始めた。
ドロシーの叔母であるクリムスンものんびりと店先に出てきて久々の日の光に目を細める。

今日は彼らの唯一の定休日。プレイヤー達でいう所の、定期メンテナンスの日であった。

・・・・・・・

古都の北西にある、巨大な地底迷路。
階層が浅いうちは迷うことも無く探索できるその場所も、
深入りすればその広大さと複雑に枝分かれした通路によって方向感覚を狂わされる。

冒険者達によって『オーガの巣窟』と呼ばれている場所だ。


洞窟の一角。
僅かに含まれる鉱石によって小さくきらめいていたその壁が、ぐらりと揺れる。
空間が歪んでいるかのように捻れた壁に、裂け目が生まれた。
その裂け目は瞬く間に大きくなっていき、ついには人が悠々通れる程の巨大な口を開いた。

その巨大な穴から、なお体を屈めながらそこを通る巨大な影。
異常なまでに発達した全身の筋肉は大きく膨れ上がり、
その体には幾つもの傷跡が窺える。

巨大な身体のわりに小さめの頭をぶつけないようにして潜り抜けてきたのは、この洞窟の主、オフィサーグ。

「あ、頭! お疲れさまです!!」
「「「お疲れ様です!!」」」

彼の部下であるオーガ達の敬礼に堂々と手を挙げて応えていた彼は、
自分の巨躯によって後ろが詰まっている事に気付き、その図体からは思いがけないほど身軽な動きで道を開ける。

彼に続いて秘密の通路を抜けてきたのは、柔らかな光を放つ金の髪を後ろに垂らした女性。
傭兵独特の紅の瞳を細めて伸びをしている彼女に、オフィサーグの部下が再び頭を下げる。

「ハンナの姐御もご苦労様です!!」
「「「ご苦労様です!!!」」」

オーガ達の巨躯から発せられる気合の入った声に、彼女もオフィサーグ同様手を振って応える。

「・・・・行こうか」

オフィサーグがぼそりと言って歩き始め、ハンナはふわりと微笑んでその後に続いた。


「お頭! どちらへ!?」

まだ年若いであろうオーガの青年が話しかけてくる。
その目は自らの敬愛する主人の雄姿を見ているというだけできらきらと輝いていた。

「湖の方に行く」

対する主人はそっけなく返す。
青年はめげない。それどころか主人が自分に返事をしたという事実だけで嬉しそうに顔を崩している。

「湖の方ですか!?あちらは統治下に無い連中がたくさんいますよ! 自分もお供致します!!」
「いらん」
「そうですか!? 自分最近新しい技を編み出したんでそれを試しg・・ふごっ」

なおも食い下がる青年に、年配のオーガが彼の首を極めて動きを封じる。

「コイツの面倒はこっちで見ておきますんで。ごゆっくりどうぞ」
「・・・・」

431七掬:2008/09/13(土) 00:08:37 ID:QKFSg0Tk0
意味深なニヤつき顔で見送られるオフィサーグは平然を装っていたが、その足は心なしか速くなった。
主人が視界から消えるまで抑え付けられた青年は解放された後、恨めしそうな顔で先輩を見やる。
その表情を見て年配のオーガは諭すように口を開いた。

「頭がハンナの姐御と一緒にいる時は、頭に近づかねぇ方がいい」
「・・・・どうしてですか」
「お前、オーガの王窟がどうやって作られたか、知らねえのか」
「・・・・?」

青年の不思議そうな顔を見て年配のオーガは真剣な表情を崩して笑みを浮かべた。
誰かをからかう様な色を帯びた表情に、しかし何処か畏怖が刻まれている。
そんな不思議な顔をしている先輩に、青年はますます首を傾げる。

「頭はな、とんでもない照れ屋なんだが、それを上手く表現出来ないっていうか・・・
 まぁ、照れてるってことを知られるのが照れくさいみたいな感じで、とにかく照れると身体が動くんだ」
「・・・・」

「ハンナの姉御と同居が決まった時にな、頭はもうデレッデレなんだが、
 部下にそれを知られたくないってんで王窟に篭ってたんだな。
 ていってもその時はまだ地下室くらいの小さな部屋だったんだが。
 でーよ、俺達も放って置いたんだが、突然地下から轟音が響き渡る訳さ。しかも何回も何回も。
 慌てて俺らが見に行ったら頭が大暴れしてんだよ。壁相手に、しかも変に歪んだ顔で。
 何しているか聞こうと思っても暴れまわる頭と飛び散る岩盤が怖くてだーれも近づけねぇ。
 で、二時間近く大暴れしてやっと頭が落ち着いた頃には・・・・・」

「王窟が、出来ていたんですか・・・?」
「まあそんなところだ。その後俺らが調整して形を整えたんだけどな」

青年の顔が強張っている。
照れ隠しの二時間で巨大な迷宮を作り上げる主人の圧倒的力への畏怖に顔の筋肉が負けてしまっているのだ。
老練されたオーガは苦笑いして青年の肩を元気付けるように叩く。

「例えそういうことが無かったとしてもだ。お前、普通他人のデェトは見てみぬふりが基本だろうが。
 新技とやらは俺が相手になってやるから、頭とハンナ姐さんに水さすなよ・・・・」

・・・・・・


中幕


「オフィ! ・・・ちょっと待って」

かけられた声に応じて立ち止まり、振り返ったオフィサーグはそこで初めてハンナが息を切らしていることに気付く。
ヒトの身長を大きく超えるオーガ族。
その中でもさらに大きいオフィサーグとヒトの女性であるハンナとでは歩く速度がまるで違った。

「あ・・・すまん」

申し訳なさそうに頭を掻いているオフィサーグ。
彼に追いついて呼気を整えたハンナは少女のように笑ってオフィサーグの手を取った。

「別に謝らなくていいけど。でも手、繋ぎたいから」
「・・・・」

オフィサーグは応えずに再び歩き始める。
褐色の顔が、分かりにくいが僅かに染まる。
照れて無口になったオフィサーグと合わせるように、ハンナも僅かに顔を俯けて口を閉ざす。


柔らかな風が肌を撫で、通り過ぎていく感覚

梢が揺れ、さわさわと静かな音の奏で

バベル大河が流れる、遠い水の響き

のんびりとうららかな、優しい春の匂い

太陽の光を浴びながら街道を歩く、二人の間に流れる沈黙


オフィサーグはそっとハンナの表情を伺う。
鋭く燃え盛るような紅の瞳とは対照的な、白く澄んだ肌が僅かに赤らんで見えるのは気のせいだろうか。
後ろに垂らした長い金の髪が風に揺れ、眩いほど輝いて見える。
僅かに俯いた彼女の横顔に魅入られそうになり、なぜかそのことが悪いことのような気がして、
オフィサーグは再び目を前に向ける。

静かな、でもとても居心地の良い沈黙。
繋いだ手の中の温かさを感じながら、黙した二人は歩き続ける。

奥手で、ちぐはぐなオフィサーグとハンナ。
そんな二人なりの、どこかもどかしい逢瀬。

432七掬:2008/09/13(土) 00:09:48 ID:QKFSg0Tk0


異変は、西のバヘル橋を過ぎたあたりからだった。
先に異変に気付いたオフィサーグが、繋いだままのハンナの手を軽く引っ張る。
不思議そうな顔でオフィサーグを見上げた彼女は、
これまでと打って変わって剣呑な光を浮かべたオフィサーグの目を見て事情を察する。

さり気無く、腰に提げられた護身用の細剣に手を添えた直後。

ビンッと弓弦の弾ける音。
正確にハンナの首筋を狙って放たれた矢は、抜き放たれた彼女の細剣によって弾き返される。
オフィサーグの巌のような巨躯が駆ける。
時間差を付けて矢を放とうとしていた男達は、振りかぶられた鉄槌の前に、弓矢を捨てて距離を置く。

轟、と空気が叩き潰され、接触してすらいない地面がめくれ上がる。
襲撃者達の隠れ蓑となっていた巨木ごと空間を打ち払った鉄槌の威力に、襲撃者達は二の足を踏む。

「・・・こいつらは」
「この前警告された、『ハッカー』って連中、だと思う」

まだメンテナンスの終わっていないこの時間に、一般の冒険者達がいるはずが無い。
加えてフランデル大陸では見かけない井出達。
『ハッカー』と呼ばれる、不正に空間を超えて侵入してくる流浪の戦闘民族に間違いなかった。
彼らは侵入した世界のプログラムを壊し、混乱を招くことを生業とする暗殺者集団。

それが十人、彼らを囲むようにして武器を構えている。
脅しの意味も込めたオフィサーグの一撃に怯みはしたものの、その戦闘意欲は失われていないようだった。
多くの冒険者達が利用するオーガ巣窟の秘密ダンジョンの主を失うことは、間違いなく大きな混乱を生む。
手で触れられそうな錯覚すらする程、強烈な殺気と闘気が、包囲されている二人を包み込む。

オフィサーグが、背中を預けているハンナを気遣うようにちらりと見やった瞬間、
隙を突いた『ハッカー』達が一斉に飛びかかってくる。

オフィサーグはその動きを見切っていた。
彼らの動きを見もせずに、後ろにいたハンナを包み込むように抱きかかえると脚に力を込めて一気に飛び出す。
二人を包み込む網に、かわして突破するほどの隙は無い。
ならばとオフィサーグは敢えて正面の、曲刀を構えている『ハッカー』へと突進する。
強力に発達した脚の筋肉が、ハンナを抱えたオフィサーグの身体を加速させる。

正面の『ハッカー』は、横に曲刀を振りかざしていたが、
予想外に速いオフィサーグの動きに、斬撃の速度が追いつかない。

辛うじて刃が肩口に傷をつけるが、十分に力を込められなかった刀では、
鍛え上げられたオフィサーグの皮膚に深く食い込むことは出来ない。
浅く斬られた肩に、さらに刀が食い込むのを無視して、オフィサーグはそのまま正面の男に体当たりを喰らわす。

「が・・・っ」

オフィサーグが繰り出した超重量のタックルをもろに受けた『ハッカー』が吹き飛ばされて地面に激突する。
あっさりと包囲を抜け出したオフィサーグは、抱えていたハンナを降ろし、再び『ハッカー』達と対峙した。
敵の数は一人減っただけの二対九だったが、囲みを突破したことで形勢は大きく変わった。

無造作に、肩に刺さったままだった刀を抜くオフィサーグ。
次の瞬間、ほとんど予備動作なしにその刀が投げつけられた。
風を裂いて飛来する刀をぎりぎりでかわす『ハッカー』達。

二人は既に動いていた。
オフィサーグは左へ、ハンナは右へ。

体勢を立て直す暇を与えず、オフィサーグは目の前の集団へと横殴りに鉄槌を叩きつける。
かわし切れなかった一人が吹き飛び、木に叩きつけられて絶命する。

這いつくばって何とかかわした一人に襲い掛かる、凄まじい踵落とし。
『ハッカー』の着ていた鎧がひしゃげ、下の地面が強烈な圧力を受けて沈む。

鉄槌をバックステップでかわしていた『ハッカー』達が武器を構えて突進してくる。
前方から四人、右から二人。
右の二人が間合いに入る前に、槍を持った影が高速で両者の間に割ってはいる。

433七掬:2008/09/13(土) 00:10:33 ID:QKFSg0Tk0
敵の中央で動きを止めた影は、敵から短槍を奪い取ったハンナ。
彼女の紅の瞳が燃え、高密度の魔力が槍に注がれているのを見て取ると同時に、オフィサーグは高く上へと跳躍する。
襲撃者達はそれの意味するところを気付かない。
無防備に棒立ちしているように見えるハンナへと一斉に斬りかかる。

半眼にされていた彼女の瞳がキッと見開かれ、押さえつけていた魔力を一気に解き放つ。

「―――っ!」

気合一閃と共に振りかざされた槍に続く、相反する属性の牙。
血を凍らせるほど冷え切った魔力の渦に、『ハッカー』の動きが鈍った次の瞬間、
超高温の熱風が叩きつけられる。

魔法抵抗があるはずの特殊な衣が、余りの熱量に耐え切れずに燃え始める。
重傷を負った『ハッカー』達は空間転移による逃走を図る。
彼らの輪郭がぼやけ始め、影が薄くなる。

空間転移術を発動させてしまえば、もはやハンナ達に『ハッカー』達を捕らえることは出来ない。
空間の壁という圧倒的な隔たりが、『ハッカー』の身を保護する、筈だった。

空中へと逃れていたオフィサーグの持つ鉄槌が、眩いばかりの白い光を纏う。
古の雷神、トールの槌が如き、鮮烈な白の輝き。
人々によって『ゴッドハンド』と称される技。
しかしオフィサーグの使ったそれは、決して御神の力の賜物などではない。

限界まで高められた闘志。
形を持たないそれを武器に纏わりつかせ、攻撃力を最大まで高める、究極の極意。
むしろ武道家の烈風撃に近いものを感じさせる、純一な、激しい闘志の塊。

落下の勢いと合わせて凄まじい勢いで振りぬかれる鉄槌。
白く輝く光の闘志が、厚い次元の断層を隔てた『ハッカー』へと殺到した。

・・・・・・・


終幕


「・・・仕留めた?」
「さあ、どうだろうな」

オフィサーグの最後の攻撃のあと、槌を媒介に集まっていた光は離散した。
しかしそれでも力は失われず、今もわずかに吹きつけてきた南風に乗ってきらきらと光り輝いていた。
日の光を弾く硝子の乱舞にも見えるその光景が
徐々に薄れていくのを名残惜しげに見つめていたハンナがそっと溜息をつき、オフィサーグを振り返った。

「どうする?」
「ん?」
「洞窟に帰るか、それとも湖行っちゃう? もうあんまり時間無いと思うんだけど・・・」
「ふむ・・・」

少し思案する風をして、彼はクエスプリング湖のある方角を見つめる。
今日はメンテナンスが長引くだろうか。
最近追加された新要素関連とやらで不具合が生じているならば、延長される可能性は高い。
どちらにしても、メンテナンス終了間際には放送が入るはずだから、間に合わなければ引き返せばいいのではないか。

そこまで考えて、自分が湖に行く理由を見つけようとしていることに気付き、彼はわずかに苦い表情になる。
その表情から何を悟ったのか、励ますような微笑みを浮かべたハンナがオフィサーグの手を取る。

「ダメそうだったら引き返せばいいから・・・行こう?」

その健気な笑みに、迷いを流されたオフィサーグが軽く頷く。
降り注ぐ日が、わずかに西に逸れはじめる空の下を、二人は並んで駆け始めた。

434七掬:2008/09/13(土) 00:11:43 ID:QKFSg0Tk0

目的の湖に着いたとき、さすがのオフィサーグも少し息を切らしていた。
ハンナはといえばへたり込んで肩で息をしている。

「・・・それ、で・・・見せたい、もの・・って?」
「ん・・・ちょっとそこの、穴の近くで待っててくれ」
「穴・・・?」

あたりを見回すが、座ったままの低い姿勢のせいか、彼の言う『穴』らしきものは見当たらなかった。

「あー・・・ふむ」
「え・・・きゃっ」

口で案内するのが面倒だったのか、オフィサーグはハンナを抱えあげてその場所へ連れて行く。
疲労している彼女への心遣いのつもりで、彼としては特に他意はなかったのだが、
俗に『お姫様抱っこ』と呼ばれる抱え方をされ、ハンナは少し顔を赤らめて彼の腕の中で丸まっていた。

彼女の緊張はほんの数秒。
割れ物を扱うかのような優しい動きでゆっくりと降ろされる。
少しあたりを探せば、人間が一人入れそうなほどの大きさの孔が、水辺から離れた場所ににぽっかりと空いている。
わずかながらそこから水の音がしているのを聞く限り、どうやら湖と繋がっているようだ。

「ここで待っていてくれ。 あ、あんまり近づきすぎると危ないぞ」
「え? 危ないって・・・」

オフィサーグからは、『見せたいものがある』としか説明を受けていない彼女は、
彼が何を見せようとしているのか図りきれず、不安そうな目をしている。

そんな彼女を敢えて無視して、オフィサーグは湖の中へと入っていく。
雪解け水が流れ込んでいる湖の水はかなり冷たい。
暑さを帯び始めた西日の差す中でも、ヒトならまず凍えるであろう冷たい湖の中を、
オフィサーグは構わずずんずん進む。
やがて、水が彼の胸にまで届くほどまで進むと、彼は目を閉じて瞑想を始めた。

普段彼が秘密の巣窟内で、冒険者達相手に見せている力は、ほんの一部でしかない。
数多やってくる冒険者たちと立ち向かう為には、彼らと同等程度の力ではすぐに殺されてしまう。
冒険者達相手に、『負けたふり』をするには、
当然冒険者たちよりも圧倒的に強くなければならないのだ。

先の『ハッカー』達との戦いのときは、ある程度力を発揮していたが、それすらも全力とは言えない。
彼の真の力は、自らの意思によって封じてある。
今彼が瞑想しているのは、自ら封じた、力に至る扉の鍵を開けようとしているからだった。

一瞬の静寂の後。
ドクン、と全身が鼓動する。
目には見えない力の波動を受けて水面がざわめく。

槌を持つ右手を挙げる。
そこに込められる力の強さを確認して一つ頷くと、左手も加えて大上段に振りかぶった。
構えられた槌は、蛍火をまとって燐光を発する。
見かけは美しい装飾だが、その実とんでもない力を秘めた破壊の光。

台風の目に集まるように、風が渦を巻いてその槌へと向かい、
水面も力の流れに従って複雑な波紋を描く。
なにか物騒な気配を悟ったハンナが、佇むオフィサーグへと声をかけようとしたその時、


『ドオオオオオォォォォォ・・・・・ン!!!!!!!』


落雷のような音を立てて、オフィサーグの鉄槌が振り下ろされた。
彼の周囲にあった水が一斉に高さ十数メートルまで盛立ち、津波のような勢いで全方位に向かって流れ出す。
当然、ハンナの立つ方向にも、加速した水が迫る。

驚いて後退りしたハンナだったが、
彼女に向かって加速していた水は急激に力を失い、彼女にまで到達することは無かった。

彼女に向かうはずだった水は別の場所から姿を見せた。
オフィサーグが示した孔。そこから水柱が宙に向かって打ち出される。
打ち出された水は遠く弧を描き、彼方へと吸い込まれていく。

その孔は湖底とつながっており、湖底にはそれよりずっと大きな孔が空いている。
そこへ津波と化した水が大量に流れ込んだため、ハンナの方へと向かう水は少なくなった。
そして、先へ進むにつれ細くなっていく孔を進んでいく水は圧縮されて凄まじい勢いで宙に放たれた為だった。

空に創られた橋は、少し経つとその力を弱め、違う姿へと変わる。
宙に浮く力の無くなった水が、細かな粒子となって辺りに降り注ぎ始めた。
霧雨の様に降る水たちは、傾き始めた太陽の光と、オフィサーグの攻撃の余韻である光の欠片を浴びる。

「あ・・・・」

そして再び、橋が現れた。
先ほどの水の橋とは違う、七色に輝く、光の帯。
空中を横切って、純粋を感じさせるほど美しい光を放つ虹。
少し儚げなそれの向こうに映った空は、何故かいつもよりまっすぐで、澄んだ蒼色に見えた。

435七掬:2008/09/13(土) 00:12:21 ID:QKFSg0Tk0
「暗い洞窟の中じゃ、見れない景色だろ」
「オフィ・・・」

いつの間にかハンナの傍らに、巨大な影が佇んでいた。
少し眩しそうに目を細めながら、自らが創った虹を見つめている。
ずっと洞窟の中で暮らしているハンナへの、彼なりの粋な気遣いだったのだろう。

「・・・・うん。ありがとう」

笑ってそういったハンナの顔は、辺りできらめく水の粒子に照らされているかのように輝いて見え、
つられたオフィサーグも照れくさそうに笑みを浮かべる。

いつもなら、お互いの目が合っても、必ずどちらかが恥ずかしそうに視線を逸らす二人だったが、
今日は二人ともが、視線を逸らすタイミングを逃してしまった。

「・・・・・・」
「・・・・・・」

無言で見つめ合った二人。
やがて、オフィサーグの手がそっと、ハンナの頬に触れた。
緊張からか、ハンナは僅かに怯えるような表情を見せていたが、
それでもオフィサーグを拒絶するようなことはしなかった。
そのままゆっくりと、手が頭の後ろに回った頃には、二人の距離は既にかなり近づいていた。
ハンナがそっと潤んだ目を閉じる。
オフィサーグは慎重に、彼女の唇に自らのそれを重ねる・・・




寸前、

辺りに奇妙な雑音が響き渡った。

『・・・・・・・・間も無くメンテナンスが終了します。諸員は所定の位置で待機して下さい。繰り返します・・・』


声が聞こえた瞬間、彼らは小動物のような機敏な反応でお互いの距離を空けていた。
オフィサーグはげんなりして、何処か中空から聞こえてくる放送を聞きながら、

「・・・台無しだな」

一言、呟いた。
ぺたんと地面に座り込んだハンナも疲れたような笑いを浮かべて空を見上げている。
 微かに虹の名残が残る空を二人はしばらく眺めていたが、やがて

「帰るか」

オフィサーグが諦めたように言ってハンナを促した。

「わたし・・・なんだか疲れちゃった」
「そうだな」
「疲れて、歩きたくないなぁ・・・」
「ハンナ?」

オフィサーグが心配そうに、座ったまま立ち上がろうとしないハンナの顔を覗き込む。
その目を悪戯っ子のような笑みで見返しながら、オフィサーグに向けて両腕を差し出す。

「お姫様だっこ、して」

言いながら、自分の提案に頬を染め、言葉も尻すぼみになる。

「・・・っ」

完全に不意打ちだった。
普段ゆかしい彼女からの言葉だっただけに、オフィサーグも目を見開いて固まる。
一瞬流れた静寂の後、

「ああ」

巌のような厳しい表情ばかり浮かべていた顔が、驚くほど優しい笑顔を見せる。
そのまま、軽々とハンナの身体を抱き上げ、疲れなど知らないかのように走り出す。

これからまた、彼らは秘密の巣窟の役者とならなければならない。
恋人同士ではなく、囚われの姫と魔人にならなければならなかった。
それでも、彼らはお互い、穏やかな微笑を浮かべて巣窟へと駆ける。

黄昏に紅く染まっていた空が、闇など知らんとばかりに再び明るい蒼へと移り変わっていく。



常昼の世界の下、冒険者達の喧騒が、遠くかすかに響いてきていた。




とある木曜日の風景   fin

436七掬:2008/09/13(土) 00:18:17 ID:QKFSg0Tk0
本当にごめんなさい。下げ忘れましたorz

ほとんどの方が始めましての方になってしまっていて、
今更出てくるのもどうかと思ったのですが、一時期速さについていけなくなった
小説スレにやっと追いつけた嬉しさからつい投稿してしまいました。

なんかいろいろと残念な文章になっています。ブランクって怖い。
しかも下げ忘れてるし。本当になにやってんだ自分。

職人様方への感想は、また後日余裕があれば書き込ませていただきます。
引き続き、小説スレをお楽しみください。

437ナツル:2008/09/13(土) 22:44:31 ID:.512Jk2k0
今俺は夜空を見ている。
そんな俺の隣には一人の少女。
俺が俺じゃなくなった原因の少女。
俺が好きになった少女。
そんな彼女にあった日のことを今から話そう。

俺はいつもと同じように敵を倒していた頃だった。
ギルドの皆で雑談でもしながら頑張っていたあの日俺は彼女と合ったんだ。
彼女は俺の前を通り、下の階に急いでいた。
そんな彼女を見、俺は彼女を手伝おうと思った。
ギルドの仲間に抜けることを伝え、俺は彼女の向かったほうに向かった。
彼女は途中で敵と戦い傷を負っていた。
彼女は意識がほとんどないらしく重傷みたいだった。
「俺が今助けるからここで待ってて」
俺はそういうと彼女はびっくりした顔でこちらを向いた。
俺は敵の下に行き敵を切り殴り飛ばした。
敵を倒したらいそいで彼女のもとに戻り薬を与え回復してもらった。
「君、名前は?」
「私はテララっていいます。あなたは?」
「俺はカグロ。しがない武道家だよ。」
彼女はにっこり笑って眠った。
俺はそんな彼女を自分の家のベッドで寝かせ、自分は床で寝た。

朝、そこには元気に回復したテララの姿があった。
彼女はキッチンで俺と自分の朝食を作っていてくれた。
「あ、起きたカグロ?もうちょっと待ってね。もう少しで出来るから。」
テララは鼻歌を歌いながら朝食をつくっていた。
テララが朝食を作り終えると机の上に並べた。
「はい。できましたよ。」
「今行くよテララ。」
俺はそう言いながら席についた。
「いただきます。」
俺とテララの声が部屋に響いた。
そこからはテララと雑談を少しした。
「テララそろそろ街に行かないか?俺のおごりでよければ何か買うよ。」
俺はそう言うと彼女は目を輝かせた。
「いいの?行く行く。」
そんなテララをみているときにはもう彼女のことが好きだったんだと思う。

街にでてみるとテララはずっとキョロキョロしながら露天を見回っていた。
「どうしたテララ。珍しいか?」
「えっとね・・・私って田舎の方の出身だから。」
そう言う彼女は恥ずかしがって頬が赤く染まっている。
俺はそんなテララがとても可愛く見えた。
「ねえ、カグロあれ買ってくれない?」
そうテララが指差したものはケーキだった。
結構豪華なケーキで値段もそれ相応だったがテララのうれしそうな顔が見たくて
かなり高かったが了承してしまった。
「あぁ、いいよテララ。クッキーも買おうか?」
「いいの?ヤッター。」
テララの無邪気な顔を見ているとこのくらいならいいかとかも思ってしまう。
そんなこんなしているうちに夕暮れになってきた。
「テララ、そろそろ帰ろうか。」
そう言うとテララは少し名残惜しそうに街を見てから
「いいよ」
と、言った。
「また明日もあるよ。」
「そうだねカグロ。じゃあまた明日もこようね。」
微笑まれながら言われ
「ああまた明日こよう。」
と言ってしまう俺。
デートみたいで頬が赤くなったが夕日のおかげでばれずにすみそうだ。




すいませんが今日はこれまでで。

438◇68hJrjtY:2008/09/14(日) 05:07:50 ID:nj1vQZFI0
>七掬さん
お久しぶり、そしてほんのりあったまる「美女と野獣」的なお話ありがとうございました!
メンテ中のNPCたちを想像する事はあれど、秘密ダンジョンの、それもオフィサーグというモンスターと
ハンナという女性のラブストーリーなんて考えた事もありませんでした(ノ∀`*)
いつもは「メンテ延長」と言われるとイライラするものですが、こんな舞台裏があると思うと延長も許せる気がします(笑)
私事ながら先日オガ秘密に行ってきたのでなんだか親身になれました。しかしハッカー、怖いなぁ…(笑)
またの投稿お待ちしております♪

>ナツルさん
初めまして〜投稿ありがとうございます!
さてさて恒例の、武道キタ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(*゚∀゚*)゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*
こちらもほんのりラブストーリーですね。やっぱり武道はピンチを救うヒーローみたいな役回りがなんとなく似合います(笑)
テララの仕草のひとつひとつが愛しそうなカグロ…この平和なデート日和が毎日続けばいいなぁ(*´ -`)(´- `*)
約束を交わして別れた二人。これから二人がどうなるのか、続き楽しみにしております♪

439名無しさん:2008/09/14(日) 14:22:05 ID:cGjU7c0k0
去年もそうだったけど夏になると減速するね
もう昔みたいな賑やかさは無理だろうけどちょっとずつでも書き手さんが戻ってくれると嬉しいです

440白猫:2008/09/16(火) 22:12:17 ID:I1WQQh5o0

血の盟約。
悪魔が魔物を従える、或いは人間を惑わすとき用いる、血液を用いた儀式。
相手と一方的に契約を交わし下僕とする代償に、自らの血を捧げるという儀式。
悪魔に遭遇したら、この儀式には絶対に気をつけなければならない。
この儀式は、呪文と血液、そして魔力さえあれば瞬時に完了してしまう。
そして契約を万が一結ばれた場合、

・契約者に攻撃を加えてはならない

・契約者の身を護らねばならない

・契約者に不利となる情報を洩らしてはならない

・契約者に絶対の忠誠を誓わねばならない

この4つの、理不尽とも言える誓いを護らねばならなくなる。
悪魔は血の盟約を駆使し、遥か古代に人々を下僕として酷使した。
二度とそんな愚行を繰り返させてはならない。
この世で最も忌むべき存在である悪魔を――許してはならない。








古都ブルンネンシュティング。
東西の経済が集結する都であり、フランデル大陸内でも指折りの大都市である。
アリアンのように実力者の集う故に発展した冒険者の都とも違う、[古くから都として機能していた街]――それが、古都。
この都市へとついさっき到着した馬車から、一人の少年が顔を出した。
 「ふぅ――ついた。ブルンネシュティング」
その、まだ幼さの残る声の茶髪・碧眼の少年。少年は辺りを見回し顔を輝かせた。
両親から聞かされていたが、とにかく広い。そして、彼が見たこともない様々なもので満ち溢れていた。
少年の表情に笑う御者は、しかし心配そうに少年へと言う。
 「気ィ付けろよ。人が多いだけ治安も結構悪い。まァアリアンよかよっぽどマシだが」
 「はい。ありがとう、ウォンさん」
ウォン、と呼ばれた御者は手を振り、すぐに手綱を取って走り去っていってしまう。
それを「がんばれ」というサインだと分かっていた少年は、少しだけ頭を下げ、改めて古都の景観を眺める。
本当にこの辺りは広い――というか、人が多い。
今まで自分の村で生きてきた人生で見た人の数と同じだけは、もう見てしまっただろう。
見渡す限り人、人、人。気持ち悪いとしか形容できない。
 「えーっと……まずはどうしよう、かな」
ある程度の金銭は親から貰って――否、借りている。だが、この程度の金額は十日もすれば無くなってしまうだろう。
そこからは、本当に自分で稼がなければならない。

師匠の言葉、「乞食みたいに西口で飴拾えば生きてはいける」。

これをしばらくは実践することになりそうである。
とりあえずは師匠の言っていたその「西口」へ向かうことになりそうだ。
西口――ということは、西なのだろう。西。
 「西、西……西ってどっち? 左?」
少年は平面での左しか知らない。
お昼だから太陽なんて使えない。
しばらくゴソゴソとカバンをいじくりまわし、小さく溜息を吐いた。
 「コンパス忘れた……」
幸先の悪いスタートで、少年の冒険が始まろうとしていた。





一時間後。
 「……ここどこーっ!?」
いつの間にか真っ暗な水路に到着してしまった少年は、水路全体に響きかねない声で叫んだ。
引き返そうにも、マンホールから落ちてきてしまったために引き返しようがない。
とりあえず歩こう、と思い、ふと足元を見たところで、
固まった。

自分の足元に、黄色く美味しそうなキャンディーが落ちている。

本当に美味しそうな、子供が喜びそうなキャンディーが、ひとつ。
ラッキー、と拾おうとかがんだ少年は、途中でふと、止まった。
どうしてこんなところに、キャンディーが落ちている?
そもそも食べられるのだろうか。此処は地下水路――古都の住民たちの生活排水の流れ込んでいる場所である。
食べられる――とは思えない。食べたら腹を下すかもしれない。
が、
少年は何の躊躇もなく、そのキャンディーを拾い上げた。

   《食中毒になるかのたれ死ぬかなら――食中毒の方がいいだろ?》

師匠の言葉を思い、少年はとりあえず、とそのキャンディーを保留にする。
いざとなれば、洗って食べるか犬にあげるかすればいい。

少年はキャンディー[1]を手に入れた。
少年はちょっぴり悲しくなった。

441白猫:2008/09/16(火) 22:12:44 ID:I1WQQh5o0


 「あれー? キャンディー落としちゃったかも」
 「ん、どした?」
ゴソゴソとベルトのポケットに手を突っ込む少女に、少年が首を傾げる。
しばらくポケットを引っ張り回していた少女は、しかし諦めて手をポケットから抜いた。
 「キャンディー落としちゃった……折角ペットにあげようと思ったのに」
 「ああ……ペット用キャンディーだっけ? あれくらい新しいの買ってやるって」
 「ホント? ホントだよ?」
 「はいはい」
そんな会話を交わしながら、少年と少女は古都の喧騒の中に消えていった。






所変わって、地下水路。

 「わ、わわ、わ――――――ッッ!!!!」
凄まじい量の野良犬に追われ、少年は叫びながら地下水路中を駆け巡っていた。
ビスルで暮らしていたときから魔物に懐かれるタチではあった。だがまさか野良犬の群れに追いかけられるとは。
サマナーらしからぬその光景に剣士がポカンとそれを眺めているが、必死な少年はそんなものを見る余裕はない。
召喚獣の一体でも召喚出来ればなんとかなるのだろうが、生憎と少年は"出来そこない"のサマナーだった。
今まで召喚どころか、テイムの一つも成功したことが無い。
だが今は四の五の言っている場合ではない。なんとかひねり出さなければ。

 「火の精霊よ。総てを焼き払う獄炎の使いよ、我が声に応え、我が求めに応えよ――ケルビー!!」

・ ・ ・ 。


 「やっぱり無理かーッ!?」
詠唱は完璧。魔力の使い方も、式の組み立ても全て完璧のはず。
しかしやはり、発動しない。
やり方に問題がないのなら……才能の問題、なのだろうか。
自分にはサマナーの才能がないのか? ――いや、そんなことはない、と思いたい。
血だけを見れば彼は指折りのサマナー。のはずである。現に両親は、ビスルの村を護り続けた[守人]。実力はビスルでもトップクラスである。
なのに彼は。たったの一匹……小妖精の一匹ですら、召喚できたことがない。
そして今も。この、色んな意味でヤバい状況においてもやはり、召喚獣を卸すことができない。
 (何が足りないんだ、何がー!?)
と、少年が走る前方に。
 「げっ」
と少年が唸ってしまうほど大量の「コボルト」が屯っていた。
優に5体を超える群。一匹一匹相手ならば笛による音色で幻惑し、倒すこともできるだろうが如何せん数が多い。
前にコボルト、後ろに野良犬。
行くも帰るも地獄である。残る選択肢は――いや、無理だ。
自分の未熟な体術では絶対に切り抜けられない。相手は弱くとも魔物である。
それに、両親の血を継いだ純粋なサマナーが体術なんてできるわけが――

そこまで考え、少年はふと思う。
 (……血?)
血。
自分の血は、間違いなくサマナーの血。それは間違いない。
ならばどうして召喚を使えない? それは、もしかして必要なものを満たしていないからではないのか?
少年はここにきて、昔読んだ書物に記されていた儀式を思い出した。
 「――火の聖霊よ、総てを焼き払う豪炎の使いよ。我が血の元に盟約を結べ。我が求めに応え――我の前に馳せ参ぜよ」
書物に記されていた儀式。それに倣い、少しだけ呪文を変える。
腕の皮を歯で強引に裂き、洩れる血を少しだけ、ほんの少しだけ、捧げる。
この間、最初の詠唱が失敗してから、僅か十数秒。
土壇場になって、ようやく彼の記憶のピースが繋がった。

一週間前ならば、絶対にこんな"痛い"マネはしなかっただろう。
彼はまだ、手を一度も汚したことのないただの少年なのだから。
だがようやく、彼は気付いた。
自分の持てる力の大きさは、恐らく並ではない。両親にも匹敵する――あるいは、それ以上のもの。
だが、だからこそ。自然と共感するだけでは、足りなかったのだ。
もっと深く。もっと強く、自然と結び付く。故に彼は使った。
[血の盟約]――通常は悪魔が下等魔物に対して結ぶ盟約を、"自然に対して"。

呪文を唱えた瞬間、彼は体全体が燃え上がるような感覚に陥った。
まるで全身を流れる血が突如燃え滾った様な、沸騰してしまった様な。
初めての感覚に、少年は興奮ではち切れそうになっていた。
今まで学友たちは、こんな感覚の中にいたのか。こんな、これほど"素晴らしい"感覚の中に。

そして、凄まじい熱量を辺りに撒き散らしながら、

"それ"は、舞い降りた。

442白猫:2008/09/16(火) 22:13:13 ID:I1WQQh5o0


 「…………ぇ」
目の前に召喚された"それ"を見、少年は瞠目した。
有り得ない。
どうして、"こんなもの"が召喚されたのだ。
今まで少年が見てきた――否、歴代のサマナーたちが見てきた召喚獣は。
そう、[獣]の形をしていたはずなのに。
それなのに、目の前に舞い降りた"一人"の召喚獣は。


燃え上がるような赤い髪を靡かせ、

小柄な身体の全身に、はち切れそうな力を漲らせ、

どう見ても書物上の悪魔にしか見えない翼と尻尾を持ち、

つり上がった自信たっぷりな金色の瞳で、少年を見ていた。


 「あんたが、私を召喚したのね――マスター」
 「……召、喚?」
野良犬たちやコボルトは、突如現れた謎の少女に困惑していた。
困惑し、しかし一歩も動くことができなかった。
無理もないだろう。目の前の少女は全身を炎で包み、その熱で辺りは凄まじい熱風が吹き荒れていたのだから。
並の魔物では指一本動かせない。それほど彼女が巻き起こした熱風には力があった。
少年はだが熱風の嵐の中、完全な無風状態の中にあった。
少女を中心として渦巻く熱風の嵐は、どういうわけか少年だけを"避けて"吹き荒れていたのだ。
 「[血の盟約]を交わして私を冥界から引っ張り出せるなんて……とんだ当たりクジを引いたみたいね、私」
 「……え? えっ?」
冥界? 当たりクジ? ていうかそもそも君誰?
全く状況を掴めていない様子の少年を見、ようやく少女は疑問符を浮かべた。
 (あれ? ガキンチョ? 4000年くらい前からずっと塞がれてた冥界への入口開けたのがガキ? マジでっ!?)
ひょっとして実体化の場所を誤ったのか? いや、それはない。
現に、彼女の熱風は少年を襲ってはいない。「召喚獣は召喚者を攻撃することはできない」という盟約が成立している証である。
もしかして――ほんとうに、ほんとうにこの少年が、召喚したのか? この[煉獄悪魔]を?
冥界でも自分と対等に戦えた悪魔など、あの忌々しい三人の小娘だけだったというのに。
 (……まぁ、召喚されたものは仕様がないし)
今頃冥界では大騒ぎになっているだろう。何しろ、自分が護っていた大釜の火が消えたわけだし。
いざとなったらほかの悪魔があの炎もなんとかできるだろう。今は冥界のことを気にする必要はない。
 「ねぇ、あんた」
 「ふぇっ?」
今さっきまで思考をフル回転させ少女の正体を探っていた少年は、突如話しかけられ声が裏返る。
この一挙手一投足に溜息を吐きたくなる少女は、しかし彼がマスターなのだからと心を静めた。
 「一応名乗っておくわ。私はベガル。あんたが呼ぼうとしてたケルビーの上の上の上のずーーーっと上の位である炎の魔人よ。まぁみんなケルビーの上だからケルって呼ぶけど」
 「……え、と」
 「ほら、マスター。あんたも名乗りなさいよ。この私が名乗るなんて数百年ぶりのことなのよ?」
少女――ケルの言葉に何か言おうとした少年は、しかしケルに一蹴され頭を掻いた。
とりあえず自分が彼女を召喚したことは間違いないらしい。彼女が自分を「マスター」と呼んでいるから、という根拠でしかないが。
だが相手が名乗ってきたのだから、こちらも名乗るべきだろう。悪魔にしか見えない容姿と数百年ぶり、という言葉はとりあえず隅へ寄せておく。
 「僕は――フェレス。ビスル出身のサマナーだ」





その、半年後。
四人の悪魔を引き連れた一人のサマナーの武勇伝は、古都のちょっとした話題となった。








---
どうも、白猫です。久々(?)の投稿となりました。
ハロウィンのイベントまでダンマリを決め込もうと思っていましたが、過疎を感じてきたので燃料投下になればと。
今回はちょっと短いお話になっています。もしかすると連載ものになるかもしれません。
悪魔を召喚しちゃった元ダメサマナーと召喚されちゃった冥界出身悪魔。
本当は鳥とか魚とか土竜とか書きたかったです。しかしそれをやるともう完全に連載になるわけで(ry
勘のいい人だと気づくかもしれませんが、一度目の召喚の前後で書き方がすこしだけ違います。
399さんがなかなか興味深いアドバイスを下さってので、微妙に書き方を変えてみました。たぶん気づいた方はいないでしょう。
それでは再度沈ませていただきます。
白猫の提供でお送りしました。


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