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TWのシナリオについて考えてみる

1名無しさん:2004/03/05(金) 02:26
シナリオについてのスレです。

7名無しさん:2004/03/05(金) 02:53
むしろ逆で
ナヤがボリスの命を狙ってた
んで返り討ちのとこシベりん乱入

     とか

8名無しさん:2004/03/05(金) 02:56
ボリスはナヤの裏切りを知って
それが許せなかったってところじゃないか。
ボリスの個人的な恨みを買ったとかもありそうだが。
(ボリスがシベリンに協力してもらった恩があった等)

9名無しさん:2004/03/05(金) 02:59
ナヤは黒衣の剣士と対峙してるイベントSSをどこかで見た事があるが、あれはナヤシナリオのか?
ナヤのイベントを見た事がないから推測だが、黒衣と笛族が関係を持っているかもしれない。
黒衣の剣士を狙うシベ・ボリとナヤは対立する可能性もある。

黒衣の剣士とその他のキャライベントで出てくる白い謎の男も体格が似ていて気になるな。

10名無しさん:2004/03/05(金) 03:17
そういえば公式のナヤのプロフィール見ると、
"神の武具の守護者として<審判者>を探せ"って苗族の使命があるんだよな。
黒衣の剣士がその審判者の可能性があると、
ボリスやシベリンと対峙しなきゃならなくなるな。
もしかしてそれが原因か?

11名無しさん:2004/03/05(金) 03:34
んでいざ対峙してはみたものの
ボリほど非情に徹しきれないシベが
土壇場でナヤを庇って逝っちまった・・・と

12名無しさん:2004/03/05(金) 03:38
>>2のはネタの可能性があるからまだ敵対かどうかすら分からないよ

13名無しさん:2004/03/05(金) 03:53
なんか罵声吐きながらっていうのももしかしたら
ほほえましいものだったんかもしれんな・・・。

シベリンが可哀相だ。踏んだり蹴ったりだ。

14名無しさん:2004/03/05(金) 04:26
>>13の予想しているシベの最期

シベ「やっぱ・・痛ぇな・・」
ナヤ「なぜ・・・私を・・・?」
シベ「へっ・・カワイ子ちゃんは、世界共通の財産だからな」
ナヤ「・・・・」
シベ「馬鹿ヤロウ・・泣いたら美人が台無しだろ・・・」
ナヤ「だって・・」
シベ「こんな痛い思いしたんだぜ・・・最期くらい・・・笑顔、見せやが・・れ・・・」







俺の予想するシベの最期

シベ「うおーーーーいってーーーー超いってーーーーー!!」
シベ「ちょっとちょっと!怖くてみれねー! どーなってんの!?」
ナヤ「剣が刺さっている」
シベ「マジかよ!? 死ぬ?オレ死ぬん?」
ボリ「助からん」
シベ「 ぅオイ!! ざけんなロン毛!助けろ!」
シベ「オィー二刀流!!テメーのせいだかんな!」
ナヤ「・・・・・」
シベ「ナントカ言えよーーー!!!!」
シベ「っざっけんな白髪女! マジコロス! 呪い殺すっ!!」
ボリ「少々予定が狂ったが、覚悟しろ 苗族の娘」
シベ「呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪・・・」
ナヤ「覚悟するのはオマエの方だ」
シベ「呪呪呪呪呪呪・・・呪呪呪呪呪呪・・・・呪呪呪呪・・・呪・・・・・・・」

15名無しさん:2004/03/05(金) 04:43
そういえば、ナヤイベントでカウルのエルピダの依頼の時、
クエスト欄見ると「シベリンの態度が気に入らない」と微妙な事書かれてたな。
最初はシベリンが他の女性をナンパしようとしてたのが
気に入らないのかと思ってたが、
クエスト進むたびに嫉妬というよりも
シベリンの態度が本当に気に入らないんじゃないかと思うんだよ。
OPで頭撫でられてる時なんかはいい感じだったんだがな、
イベントで余計な口出すの見てるとな…。

>>14
ワロタ

16名無しさん:2004/03/05(金) 05:58
>>14
腹イタイ

でもシベ使いとしては微妙な心境が(;´Д`)

17名無しさん:2004/03/05(金) 23:37
チャプター2では別にピン子とシベは
くっつかないっていう説もありますよ。
3になったら知らないけど。

18コトの真相:2004/03/06(土) 18:15
マキシ「なぁルシアン お前今日のボリス見てどう思った?」
ルシ「え? 別に普通のボリスだとおもうけど…?」
マキシ「アイツ今日ネコミミ付けてたろ。」
ルシ「え…あ、うん。かなり似合ってたね。」
マキシ「だしょ!? 俺も俺もそう思ったんだよ! やべぇよ…超俺好みだ。」
ルシ「ぇえ!? 僕はそういう意味で言ったわけじゃ…」
マキシ「隠しても無駄だ小僧。お前のボリスを見る目は異性を見つめる思春期の少年の熱いまなざしそのものだ。」
ルシ「ぇぅ…」
マキシ「そこでだ、俺はある仮説を立てた」
ルシ「仮説?」
マキシ「そう…奴は実は女ではないだろうか と!」
ルシ「ぇえーー!?」
マキシ「良く考えてみろ 無口無表情はそれを隠すためかもしれんし
華奢な体 わざと低く押さえつけたよーな声 体型の出ない服 艶やかな長髪
そしてあの色気…これは間違いない」
ルシ「だって胸膨らんでないよ?」
マキシ「余程の爆乳でなければサラシで押さえつけられる。もっともイスピンくらいなら巻く必要も無いがな」
ルシ「うーん…」
マキシ「何よりシベリンの奴が今にも襲い掛かりそうだ。間違いないだろう?」
ルシ「でも、どうやって聞きだすの?絶対自分からは喋らないよ。」
マキシ「風呂を覗くのさ」
ルシ「そういえばボリスってみんなが寝た後にお風呂入るんだっけ…」
マキシ「そういうこと それまでこの話は誰にもしゃべるなよ」
ルシ「うん。」


〜深夜風呂場(女湯)〜
ボリ「(ふぅ…サラシっていうのはいつになっても慣れないものだな…)」
ナヤ「誰かいるの〜?私も入るよ?」
ボリ「(!!!何故こんな時間にっ!)」
ナヤ「ボリス!?こっちは女湯で…って あ、あ、アンタ女!?」
ボリ「チッ!待て! 逃がすか!!」

マキシ「(*´Д`)ハァハァ ヤッパリネ」
シベ「===(*´Д`)ハァハァ オイカケテモットハァハァシナキャ」


〜町外れ〜
ボリ「私の秘密を知った者は誰であろうと生かしてはおかない。」
ナヤ「(くっ…避けられないっ…!!)」
シベ「ボリタソ======(*´Д`)ハァハァ…(グサッ)ぅっ!!!」
ボリ「…シベリン?何故貴様がここに…」
シベ「お前でハァハァしたくてな…追いかけて来たんだが…出るタイミングマズッた…」
ナヤ「シベリン…私を庇って…!?」
シベ「何勘違いしてんだこのアマ!お前があそこで風呂に来なければ もっとハァハァできたし 
俺も死なずに済んだものを…一生恨んでやる…コンチクショウ!死ね おまいが死ね!」

ボリ「(コイツが知っているようでは 既に他の皆にも気付かれているかもしれないな)」
ボリ「私はもうお前達に会う事は二度とない 犠牲に感謝しろ」

>>その後ボリスは失踪、ナヤトレイは途中で知り合っていたベンヤと墓守としてメインストーリーからは退場します。
>>シベは最後まで汚く罵声を吐くので、感動もなく、結局最後まで殆ど人気がないキャラです。


〜最後の戦いを終えて〜
ルシ「終わったね…みんな無事かい?」
イスピン「マキシミン以外はね…」
ルシ「昨日『ハァハァ』って言ったきり部屋から出てこないから…
勝手に入ってみたら、もう冷たくなってた…」
ティチ「死因は腎虚のようです」
ルシ「腎虚?」
イスピン「精力使い果たして死ぬコト」
ルシ「それであんな幸せそうな死に顔だったのかぁ」

ルシ「…ハッピーエンド、だね!」


>>でも何故かハッピーエンド調で萎えます。

19名無しさん:2004/03/06(土) 18:28
ワロタ

20名無しさん:2004/03/06(土) 18:54
激ワラ

21名無しさん:2004/03/06(土) 20:16
ワロタ
シベ最高w

22名無しさん:2004/03/06(土) 22:01
ワロタ
マキシヤバイ。超ヤバイ。

23名無しさん:2004/03/06(土) 23:49
事の真相がボリス萌えだったとは…

24名無しさん:2004/03/07(日) 00:04
このスレワラタ

25名無しさん:2004/03/07(日) 00:17
禿ワラ

26コトの真相:2004/03/07(日) 00:26
ショートストーリースレ もしくはキャラ萌えスレ
た て な い か ?

てか それぞれのキャラ設定もストーリー設定も出来上がってるから
話作りづらそうだわさ(´・ω・`)ショボンヌ

27名無しさん:2004/03/07(日) 00:31
>>18
おまい今すぐ韓国へ向けて発て。そしてSOFTMAXへいけ

28名無しさん:2004/03/07(日) 02:18
>>2のネタで真面目なのを書こうとすると、かなりむずいな。

やっぱり>>18みたいにボリスを女性と勝手に思い込んで
ハァハァしてるシベリンみたいにギャグに走るしかないのか……。

29名無しさん:2004/03/07(日) 04:04
ボリ「…遅いぞ!たかが買い物くらい速やかに済ませられないのか?」
マキシ「へへ 悪ぃな、ちょいと予定外のもの探してたんだよ」
ボリ「予定外…何を買った?」
ルシ「じゃーん みんなの頭装備だよ〜 防御力も上がるしオシャレもできるでしょ?」
マキシ「まず俺はコレ サングラス どうだい 似合うだろう?」
ボリ「ああ メガネを外せばもっと似合うかも知れんがな」
ルシ「ボクは絆創膏とヘルム」
ボリ「青リボンは…ティチェルか で、イスピンは帽子があるから無しというわけか」
マキシ「何言ってんだ ちゃーんと買ってあるぜ ホラこれ」
ボリ「タコ帽子… これは頭装備なのか?」
マキシ「そ。なんだかんだ言って子供はこーゆーのが好きだろ? 折角買ったんだ ベレー帽の上からでもかぶらせるさ」
ボリ「どうなっても知らんぞ」
ルシ「でねでね ボリスのはコレ!」
ボリ「…耳?」
マキシ「そそ。正確にはネコミミだ」
ボリ「これを俺につけろと…?」
ルシ「うん、一番似合いそうなの選んだんだよ 早くつけてみてよ!」
ボリ「断る。こんなもの男がつけて出歩くなどできるか。」
ルシ「えぇ〜男のヒトだってつけてるよ ねえ チョットでいいから ね?」
ボリ「くどい! つけないと言ったらつけない!」
マキシ「ノリ悪いヤツだな… ま、そんな風に言うと思ってたけどよ」
ルシ「しょんぼり…」
ボリ「で、シベリンの奴はどうした? 帰ってこないが…」
マキシ「アイツなら『どーしても欲しい頭装備がある!』って言って 勝手に露店巡りしてたぜ」
ボリ「この分だと帰って来なさそうだな… 一足先に帰るか」
マキシ「あぁ 早くしねぇと待ちくたびれたお嬢様たちに何言われるか分かんないしな」
ルシ「今日のゴハンって何かな?」
マキシ「シチューだってよ イスピンが作るって張り切ってたな」
ルシ「へぇ〜何のシチューかな?」
マキシ「…ゼリークリームが大量にキッチンに積まれているのを見た…」
ボリ「イスピン×ゼリークリームだ おかわりだけはするな ルシアン」
マキシ「…胃薬買ってくる 先帰っててくれ」
ボリ「一応、全員分買っておいてくれ」


〜深夜 ボリス部屋〜
ボリ「ネコミミか…誰も見ていないし 少しだけ…」
ボリ「…と、鏡は…」

ボリ「ふむ…悪くないな、意外と」

ボリ「…」

ボリ(同年代の女は皆綺麗に着飾っている…しかし、私は…)

ボリ「…」



〜翌朝〜
イスピン「おっはよ〜」
ティチェル「おはようございます」
マキシ「はよぉす」
ルシ「おはよ〜」
ボリ「…お、おはよう」

一同「!」
ボリ「あ、いやコレはだな、折角買ってくれたのだし、装備しなければ勿体無いからな…」
イスピン「ボリス可愛い〜」
ティチェル「私より似合いそうですね」
ボリ「余り茶化さないでくれ…」
ルシ「ううん、そんな事ない。ホントに似合ってるよ〜ねぇマキシミン?」
マキシ「・・・」
ルシ「どしたの?」
マキシ「…あ、いや、何でもない…」

「たっだいまぁ〜っ!!」

ボリ「暴れん坊が帰ってきたな… あの馬鹿 一晩中どこほっつき歩いてたんだか…」

シベ「見てくれよ似合うだろカッコイイだろこのアフロ!! 
   どっこも売ってなくて一晩中探し回って――っハウァァ━━━━━Σ(゚Д゚*)━━━━━━!!」

ボリ「…どうした?変な声だして」
シベ「(*´Д`)あ…あ…」
ボリ「早く朝食をとってしまえ 今日はアドセルまで行くからな」
シベ「(*´Д`)あ…あ…ボ…ボリタ…」
マキシ「シーベーリン!落ち着けっ…! お前の言いたい事は分かる!良〜く分かる!!
    だから落ち着けっ…!」
シベ「(*´Д`)…ホント?」
マキシ「あぁ本当だとも。その事で今晩話がある 男と男の大事な話だ いや、男と男と男の か
    分かったらそれまで決して早まったマネするなよ 分かったな?」
シベ「(*´Д`)…ウン」



マキシ(シベリンの美女センサーが発動した。やはり俺の仮説は正しかったようだな
    さすが、探偵は伊達じゃないね)

ボリ「何を話し込んでいる 遅れるぞ」




マキシ「(*´Д`)…ハイ」

>>18へ続く




どうしても書きたかった>>18の前日です
当方ルシ使いのため、>>18共々ルシボリ以外のキャラの喋り方とか完全に見た目から想像してます
喋り方違ってたらスミマセン
ウザかったらモウヤメマスル ゴメンネ(´・ω・`)

30名無しさん:2004/03/07(日) 04:25
超ワラタ GJ

31名無しさん:2004/03/07(日) 04:27
ミラは・・・?(´・ω・`)

32名無しさん:2004/03/07(日) 04:32
キャラ増やし過ぎるとカラミがキツイんで省いちゃいました ミラナヤ…(´・ω・)

33名無しさん:2004/03/07(日) 04:54
>>29
GJ!
笑いすぎで腹イテー

34名無しさん:2004/03/07(日) 05:18
orz

腹筋攀じれたじゃねぇか、GJ!

35名無しさん:2004/03/07(日) 05:38
TW初心者に思いっきり誤解を与えるスレタイになったなw

36名無しさん:2004/03/07(日) 05:54
特にシベとボリは誤解されそうだw

37名無しさん:2004/03/07(日) 07:40
:.,' . : : ; .::i'メ、,_  i.::l ';:.: l '、:.:::! l::! : :'、:i'、: : !, : : : : : :l:.'、: :
'! ,' . : i .;'l;' _,,ニ';、,iソ  '; :l ,';.::! i:.!  : '、!:';:. :!:. : : : :.; i : :'、:
i:.i、: :。:!.i.:',r'゙,rf"`'iミ,`'' ゙ ';.i `N,_i;i___,,_,'、-';‐l'i'':':':':‐!: i : : '、
i:.!:'、: :.:!l :'゙ i゙:;i{igil};:;l'   ヾ!  'i : l',r',テr'‐ミ;‐ミ';i:'i::. : i i i : : :i
:!!゚:i.'、o:'、 ゙、::゙''".::ノ        i゙:;:li,__,ノ;:'.、'、 :'i:::. i. !! : : !:
.' :,'. :゙>;::'、⊂‐ニ;;'´          '、';{|llll!: :;ノ ! : !::i. : : : : i :
: :,' /. :iヾ、   `        、._. ミ;;--‐'´.  /.:i;!o: : : :i :
: ; : ,' : : i.:      <_       ` ' ' ``'‐⊃./. :,: : : O: i. :ネコミミ…?
: i ,'. . : :',      、,,_            ,.:': ,r'. : , : : !: : そんなモノ男がつけて出歩くなどできるか!!
:,'/. : : . :;::'、     ゙|llllllllllllF':-.、       ,r';、r': . : :,i. : ;i : :
i,': : : :.::;.'.:::;`、    |llllH". : : : :`、    ,rシイ...: : ; : :/:i : i:!::i: くどい!つけないと言ったらつけないっ!!
;'. : :..:::;':::::;':::::`.、  |ソ/. : : : : : : ;,! ,/'゙. /.:::: :,:': :./',:!: j:;:i;!;
i. : .:::;:'i::::;':::::::::i::`:.、;゙、';‐ 、,;__;,/ノ  . :,/.:::: :/. : :/.:::i. j:;;;;;;;;
l .:::;:'::;':::;':::::::::::i::::i::`:,`'-二'‐-‐''゙_,、-.':゙/.:::: ;ィ': : :/.:::::i: j、;;;;;;;
.:::;:':::;':::;'::::::::::::::i:::i:::::..`'‐、、、-<゙.::::::::/.::: ://. : /.:::::::i :j::.'、:;;;

38名無しさん:2004/03/07(日) 09:05
…1から全部読んだが…
笑いすぎて腹痛いよ…_| ̄|●<シベリンが…

39名無しさん:2004/03/07(日) 10:17
中身が♀のシベ使いですが、アホなここのシベリンがかわいくみえてきますた。

4028:2004/03/07(日) 11:07
一応真面目なのを書いてみたんだが、
>>14とか>>18のようなアホなシベリンが活躍するような
ショートストーリーの方がいいのかなぁ…。
自分もボリ子萌えシベリン好きだし。

41名無しさん:2004/03/07(日) 11:12
それも読みたい。ガンガン投下をー

4228:2004/03/07(日) 11:22
ちょっと長いから分割になるけどいいでつか?
一応、
>ボリスはストーリー中盤でシベリンを殺します。
>正確にはナヤトレイを殺そうとするのだけれど、そこをシベリンが庇いまつ。
>その前後のストーリーでナヤトレイがシベリンを裏切ろうとしてるのが判明しており
>その事を知っていたシベリンは庇うけれど最後まで汚く罵声を吐くので、感動もなく
>結局最後まで殆ど人気がないキャラです。
のとこなので、ナヤ、ボリ、シベしか出てません。
(他のキャラはいつか……書けるといいなぁ。)
しかも、自分はナヤしか(しかも途中まで)してないので、言葉使いは勘弁してくれ。

43その1@28:2004/03/07(日) 11:51
 「はぁ……。」
 ナヤトレイは大きな樹の下で今日何度目かの溜息をついた。
 「お腹……空いた……。」
 腰につけた鞄を覗くが、そこにあるお金は何かを買うには
足りない。
 「シベリン……帰ってこないかな。」
 シベリンが用事と言って一人で出かけたのが一週間前、そ
れから一度も帰ってきていなかった。
 この一ヶ月、シベリンはナヤトレイをおいて一人で出かけ
る事が多くなった。しかも、何をしていたのかさえ教えては
くれなかった。
 (そういえば、一ヶ月前にボリスとかいう奴に会ったな。
あれ以来、シベリンはおかしくなった。)
 今までも金がなくならないと仕事をしなかったくせに、最
近は金がなくても仕事をすることがなかった。
 (仕方ない、ギルドに行って聞いてみよう。ついでに狩り
でもすれば食事はなんとかなる。)
 脇に置いてあった短剣を握ると、ナヤトレイは町の外に向
かって歩き出した。


 一時間後。ナヤトレイはナルビク旅館のレストランで一日
ぶりの食事をしようと、狩りをして得た物を売りに雑貨屋に
向かっていた。
 雑貨屋まであと20mというところで、ふと入り口に目を
向けた時だった。見なれた赤毛の男が、長い黒髪の男と共に
出てきた。
 「!」
 その二人組がシベリンとボリスだと気付いたナヤトレイは、
慌てて人込みの中に紛れ込んで細い路地から二人を観察した。
 親しそうに話しかけるシベリンと、適当に相づちをうつボ
リスは、そのまま酒場に消えた。
 (ど……どういう事?私を残して、シベリンはボリスと仕
事をしていたっていうの?)
 信じられない物を見てしまったショックで、ナヤトレイは
地面に座り込んだ。
 (何か……何か訳があるのかもしれない。ギルドに行って
聞いてみよう。)
 お腹の空いているのも忘れ、ナヤトレイはギルドに走って
いった。

44その2@28:2004/03/07(日) 11:56
 <シャドウ&アッシュ>に着いたナヤトレイは、受付に座っ
ている係員の前に立った。
 「おや。レイ様じゃないですか。」
 「最近、シベリンはここに来た?」
 いつもなら返事もしないナヤトレイが喋ったので、係員は
驚いた表情になった。
 「答えて。シベリンは来たの?」
 「ええ。一週間前に来ましたよ。」
 「仕事をもらいに来た?」
 係員は目の前にあった本を捲って記録を探しはじめた。ナ
ヤトレイはその間も不安を隠しきれず、ずっと腰に差した短
剣の柄を人さし指で軽く叩いていた。
 「ああ、はい。仕事を紹介してますね……って、一緒にし
たんじゃなかったんですか?」
 係員の答えにナヤトレイは目の前が真っ暗になった。
 「どうかしたんですか?」
 係員の不思議そうな声に、ナヤトレイはハッとして首を
振った。
 「何でも無い。少し……思い違いをしていただけ。」
 「ああ。仕事だと思わないでやってたんですね。」
 「……じゃあ。」
 打ちのめされたナヤトレイは、それ以上話をしたくなくて
背中を向けるとそれだけ言って立ち去った。


 町を出てあてどもなく彷徨い歩いたナヤトレイは、疲れ
きって近くの樹の下に座りこんだ。
 (どうして……何も言ってくれなかったの?正当な理由が
あるなら、私だって反対なんかしないのに……。)
 ナヤトレイは今までシベリンが何をしようとも、命の恩人
であり主人だと思うから拒否したりする事はなかった。しか
し、自分を見捨てて他の人と仕事をしていたとなると話は別
だった。
 (私……必要とされてない?)
 ふとそう考えた瞬間、ナヤトレイは背中が凍りついた。
 両親を亡くしても、族長が家族となって孤独と寂しさを癒
してくれた。その族長や一族が殺された時は、シベリンが家
族になってくれた。その大切な家族が、今たった一人の人間
によって奪われようとしている。それは、ナヤトレイにとっ
て恐怖であった。
 「嫌だ……。一人は……もう嫌……。」
 膝を抱えたナヤトレイは、顔を伏せて泣き出した。それに
合わせるかのように雨が降り出し、ナヤトレイの身体を濡ら
していった。

45その3@28:2004/03/07(日) 12:01
 「どうした?娘。」
 しばらくして声をかけられたナヤトレイは、涙と雨に濡れ
た顔をあげた。
 目の前には、黒い衣を纏った剣士が立っていた。
 「お前は……!?」
 ナヤトレイは腰に差した鞘から短剣を抜くと構えた。しか
し、剣士はそんなナヤトレイの前に座ると手を広げた。
 「俺に何か恨みでもあるのか?お前に会ったのはこれが初
めてだぞ。」
 (シベリンの探していた黒衣の剣士はこいつじゃないのか?)
 ナヤトレイは警戒しながらも短剣を鞘に納めた。
 (シベリン……。)
 シベリンの事を考えると、ナヤトレイはまた悲しくなって
きた。
 「こんな雨の中で何をしていたんだ?」
 「…………。」
 「喋りたくはないというわけか。まあいい。」
 その言葉を最後に剣士も黙ってしまい、雨が降る音だけが
辺りを支配していた。


 雨が降り続く中、二人は黙ったまましばらく動かなかった。
 「……質問してもいい?」
 ポツリとナヤトレイはそう言うと俯いた。
 「家族はいる?」
 「家族……か。俺に家族はいない。」
 「家族みたいな人はいる?」
 「いや。今は誰もいない。」
 「そう……。」
 またしばらく無言の時間が流れた。
 「お前には家族はいるのか?」
 「……私の家族は殺された。今は……見捨てられたのかもし
れない。」
 「そうか……。」
 ナヤトレイは顔に張り付いた前髪を邪魔くさそうにかきあ
げると、雨の降る灰色の空を見上げた。
 「私は……どうしたらいいのだろう。」
 「見捨てられる前に、相手を見捨てたらどうだ?」
 剣士の意外な言葉に、ナヤトレイは相手の顔を覗き込んだ。
 「見捨てられる前に……見捨てる?」
 「そうだ。お前はその者の奴隷ではないのだろう?なら
ば、見捨てればいい。」
 剣士の妙に優しげな声が、疲労と絶望で疲れきっているナ
ヤトレイの心に染み込んできた。
 「見捨てる……。」
 「お前を捨ててしまった者に何の遠慮もいらない。お前は
裏切りを許せないだろう?さあ、娘よ……。裏切り者に復讐
するのだ。」
 剣士の目が怪しく輝いた。
 「私は……。」
 ナヤトレイの瞳に、憎悪の光が輝いた。
 「私は……シベリンを許さない。」

46その4@28:2004/03/07(日) 12:08
 その同時刻、酒場で飲んでいたシベリンは、ボリスの話を
聞いていた。
 「へぇー。じゃあ、ボリスは兄さんの事故死が仕組まれた
ものって思ってんのか。」
 「ああ。それでルシアンの警護と引き換えに情報を提供し
てもらっているんだ。」
 「そうか。それを聞いて安心したぜ。」
 シベリンはそう言うと、コップに注がれた酒を咽に流し込
んだ。
 「俺はてっきりボリスが俺の過去に関わってると思ったん
だが、勘違いで良かったぜ。」
 「そうだな。俺も誤解がとけてよかった。」
 一ヶ月前にボリスと会ったシベリンは、黒い服で剣を持っ
ていた為にボリスを自分の過去を知っている黒衣の剣士と
疑っていたのだった。
 「しかし、これを聞くだけで一ヶ月もかかるなんて思いも
しなかった。」
 いつもの調子で近づいたシベリンだったが、相手が悪く信
してもらうまでに二週間もかかり、この話を聞けるまで仲良
くなるまでが二週間もかかってしまった。
 (これが美人のおねーちゃんならもっと違うんだがな。)
 シベリンは心の中でそう付け加えた。
 「そうか?普通だとは思うが。」
 「まあ、俺の方は振り出しに戻っちまったが、ボリスと仲
良くなれたのは収穫だったかもな。」
 シベリンの言葉に、ボリスも同意とばかりに頷いた。
 「シベリンも何か聞いたら教えて欲しい。俺も手がかりは
多い方がいいし。」
 「OK!ボリスも黒衣の剣士の話を聞いたら教えてくれよ。」
 がっちりと握手した二人は互いの肩を叩いた。


 「そういえば、シベリン。ナヤトレイには何か言ったのか?」
 酒場を出た時、ボリスがそう言った。
 「いや……。心配かけたくないから何も言っていない。」
 「だが、一ヶ月もほっておいていたのだろう。いいのか?」
 「そうだな。今日全部話す事にする。」
 ボリスはシベリンの答えを聞くと、安心したように帰って
いった。
 シベリンもボリスを見送った後、寝床にしている貸家に
走って帰った。
 「ただいま、レイ。寂しかっただろ?」
 ドアを開けてそう言ったが、家の中はシンと静まり返って
いた。
 「レイ?いないのか?」
 シベリンは全部の部屋を覗き込んだが、ナヤトレイの姿は
どこにも無かった。
 (どうしたんだ?)
 そう思ったシベリンは、最近稼いだお金を家に置いてない
事に気付いた。
 (やべっ。ボリスの事に気を取られ過ぎて、レイに金を渡
すの忘れてた。)
 シベリンは家を飛び出すと、往来にナヤトレイがいないか
見回した。しかし、あの見なれた銀髪はどこにもなかった。
 (くそっ!俺は何をしていたんだ。相棒を忘れるなんて、
何て馬鹿な事したんだ。)
 心の中で自分を責めながら、シベリンはギルドに向かって
走り出した。

47その5@28:2004/03/07(日) 12:15
 「やあ、シベリン。」
 ギルドに向かう途中で名を呼ばれ、シベリンは立ち止まった。
 「ん?マキシミンか。何か用か?」
 「いや。最近ナヤトレイと一緒じゃないから、どうしたの
かと思ってね。」
 「ああ。ちょっと野暮用でね。じゃあ、俺は急いでるから。」
 そう言ってシベリンが走り出そうとした時だった。
 「そういえば、ナヤトレイが西の町外れの木の下にいたぞ。」
 マキシミンの言葉に、シベリンは慌てて立ち止まった。
 「レイが町外れにいたって本当か?」
 「ああ。黒い服を着た剣士と話をしてたみたいだが。」
 「何?!」
 シベリンはマキシミンに詰め寄った。
 「そいつは本当に黒衣だったんだな?」
 「ああ。」
 シベリンの剣幕に圧倒されながらマキシミンは頷いた。
 「何時だ?」
 「そうだな……。三十分前ってとこだな。」
 (俺がボリスと酒場にいたのが三十分前だから、レイと話
していたのはボリスじゃない。じゃあそいつは……。)
 シベリンは強く握り拳を自分の掌にぶつけると、教えられ
た場所に行こうとした。
 「あ、ちょっと待て。」
 その時、マキシミンがシベリンの腕を掴んで引き止めた。
 「……ナヤトレイはお前を裏切るかもしれないぞ。かなり
ヤバい話を剣士としていたからな。」
 静かにそう言うと、マキシミンは歩いていってしまった。
 (レイが……俺を裏切る?)
 信じられない言葉に、シベリンはしばらく動けなかった。


 「あ、ボリスさん。手紙が来ていますよ。」
 アクシピターに顔を出したボリスは、受付係に手紙を渡された。
 「ありがとう。」
 ボリスは礼を言って受け取ると、近くにあった椅子に座っ
て手紙を見た。
 差出人は書いてなく、裏に小さく[イェーフネンの真実]
とだけ書かれていた。
 「!」
 文字を見て青ざめたボリスは、封を切って中身を取り出した。
 『拝啓 ボリス殿
 貴兄の事件の詳細が解りました。もう一枚の方に詳細が書
いてあります。
 どうか、貴方の旅に安息の終幕がありますように。
                      カルツの影』
 カルツの影とは、ルシアンの警護と引き換えに兄の事故を
調査してくれている者の名称であった。
 ボリスはもう一枚の紙を貪るように読んだ。
 「そ……そんな事が……。」
 衝撃的な内容にボリスは首を振った。しかし、それを嘘だ
と言えるだけの根拠も無く、犯人以外の事は今までに聞いて
きた内容ともかなり一致していた。
 (苗族の者が事故に見せかけて兄を暗殺したなんて……。
しかも、それがジンマネン家の没落を狙ったものだった
なんて……。)
 報告書ごと手を机に叩き付けたボリスは、悔しそうに唇を
噛み締めた。
 (そして、その証拠があのナヤトレイの持っていたペンダ
ントだったとは……。)
 一度だけ見たペンダントは、報告書では事件で奪われた物
となっていた。
 (……許さない。たとえそれが仕事だったとしても、兄と
家族を陥れた苗族を!)
 ボリスは手紙と報告書を懐にしまうと外にでた。

48その6@28:2004/03/07(日) 12:22
 「あの、そこの剣士さん。」
 背後から声をかけられ、ボリスは振り向いた。
 そこには深く黒いフードをかぶった男がいた。
 「何か用か?」
 ボリスは警戒しながら質問をした。
 「<シャドウ&アッシュ>にいるシベリンさんを知ってま
すよね?」
 「ああ、知り合いだが。」
 「実は、シベリンさんの命が狙われているんです。」
 「!」
 ボリスは突然の言葉に驚いてフードの男に詰め寄った。
 「どういうことだ?」
 「シベリンさんと一緒に仕事をしていたナヤトレイという
人が、黒い衣の剣士とシベリンさんを暗殺するって会話して
いるのを私は聞いてしまったんですよ。」
 「何だって!」
 フードの男は何かを思い出したように手を打った。
 「ああ、そう言えば前からの計画とかそんな事も言って
ました。」
 「なんて奴だ!命の恩人を暗殺だなんて……。その為にシ
ベリンに近づいたのか。」
 拳を怒りでブルブルと振るわせながら、ボリスは吐き捨て
るように叫んだ。
 「でも、どうしてそんな事を俺に言うんだ?」
 「前に、シベリンさんに助けてもらった事があるんでその
恩返しですよ。ただ、シベリンさんは私から言うよりも、最
近一緒にいるあなたからの方が信用されるんじゃないかと思
いましてね。」
 「そうか……。知らせてくれてありがとう。」
 ボリスはフードの男に礼を言うと、シベリンに教えても
らっていた家に向かって駆け出した。ボリスの姿が見えなく
なると、黒フードの男は身体を揺らして静かに笑った。
 「ふふふ……。さて、誰が残るかね。」
 黒フードの男はそう呟くと、ボリスの後をゆっくりと追い
かけた。


 シベリンが家に帰ると、ナヤトレイは椅子に座っていた。
 「……おかえり。」
 「ただいま……、レイ。」
 重苦しい沈黙が部屋の中に流れた。
 「……レイ。お前、黒衣の剣士に会ったんだって?」
 「……シベリンには関係ない。」
 いつもなら顔を見て話すはずのナヤトレイが横を向いたま
ま話しているのを見て、シベリンは何かを感じた。
 「レイ。俺の顔を見て話せないか?」
 「シベリンは、私を捨てた。だから……私はもう誰も頼ら
ない!」
 短剣を抜いたナヤトレイは、その刃をシベリンに向けた。
その表情は憎悪に満ちていた。
 「レイ、誤解だ。俺は……。」
 「もう何も聞きたくない!」
 短剣の刃が横に薙ぎ払われた。シベリンは、間一髪の所で
身を躱した。
 「シベリン、大丈夫か?!」
 そこに駆け込んで来たボリスは、その情景を見て剣を構えた。
 「命の恩人でもあり、仕事のパートナーを暗殺なんて許さ
れると思うな。」
 「何を言う。お前こそ私から家族を奪ったくせに。」
 ナヤトレイの言葉に、ボリスは頭に血がのぼった。
 「お前達苗族こそ、俺の兄を奪ったくせに言うか!」
 「私の一族を悪く言うな!」
 それが戦いの合図になった。ナヤトレイは短剣でボリスの
剣を上手にそらしてはいるが、両手で受けないと力負けする
為に攻撃に出る事ができなかった。
 一方、ボリスもナヤトレイの素早い短剣さばきに一撃を加
える事ができなかった。
 「や、やめろ二人共!」
 シベリンはなんとか止めようと声をかけるが、全てをかけ
た真剣勝負の二人には聞こえてないようだった。

49その7@28:2004/03/07(日) 12:28
 しばらくそんな膠着状態が続いた。しかし、体格と力の差
は埋められなかった。
 「はあっ!」
 力強く振り下ろされたボリスの剣が、疲れの見えたナヤト
レイの短剣を弾き飛ばした。
 「しまった!」
 「これで最後だ!」
 憎悪に飲み込まれたボリスが剣を振りかぶったの見て、ナ
ヤトレイは目を閉じた。
 「皆……ごめんね。」
 それを見たシベリンは、頭の中にナヤトレイと出会った日
が浮かんだ。あの時も、追いつめられたナヤトレイはそう呟
いて目を閉じていた。
 「やめろぉぉぉ!!」
 飛び出したシベリンは、ナヤトレイを抱きしめるようにし
てかばった。
 「何っ?!」
 あまりにも急な事で、ボリスは力を込めて振り下ろした剣
を止められなかった。
 ボリスの剣は、鎧も何もつけていないシベリンの身体を切
り裂いた。
 「な……何で?」
 ナヤトレイもボリスも、シベリンの行動が解らなかった。
 「てめーら、俺の話を聞けよ……。」
 そう言うと、シベリンはナヤトレイの肩を掴んだ。
 「レイが何を勘違いしてんだか知らねーけど、俺はレイを
捨てちゃいねーよ。」
 「だって……何週間も帰ってこなかったじゃない。」
 「ボリスが……黒衣の剣士かと思ってたんだよ。それを……
確かめる為にお前を連れて行ったら……話がまとまらないじゃ
ないか。」
 シベリンの話に、ナヤトレイはショックを受けて床に座り
込んだ。
 「ボリスも……何勘違い……してんだ。」
 「カルツの影の報告で、苗族が俺の兄を事故に見せかけて
暗殺したと……。」
 「私の一族はそんな事しない!そんなのはデタラメだ!」
 放心状態だったナヤトレイも、さすがにその話は反応して
叫んだ。
 「それに、ナヤトレイが君を暗殺する計画をたてていたと
教えられて……。」
 「……暗殺なんかしない。見捨てられたから……先に見捨て
ろって言われて、私は……。」
 「じゃあ、誰がそんな事を……?」
 そうシベリンが疑問を口にした時だった。


 「そうか。終焉を迎えるのは君だけか。」
 家のドアの所に立つ人物を見てボリスは驚いた。
 「あ、あなたは……。」
 それは、黒フードをかぶった男だった。
 「とても面白い友情ごっこを見せてもらえて楽しかったよ。」
 拍手をしながら言う男の声に、ナヤトレイは目を細めた。
 「まさか……あなた……。」
 「そうだよ。嫉妬に狂った愚かな娘。」
 フードを取ると、そこにはシベリンが探していた黒衣の剣
士がいた。
 「!!」
 「シベリン、まさかこの人が……?」
 「そうだ……。俺の……記憶を奪った奴だ。」
 黒衣の剣士はシベリンの睨みも気にせずボリスを見た。
 「手紙は受け取ってくれたようだな。どうだ、適当な身代
わりに復讐した気分は。」
 「なぜ手紙の事を……?……!」
 ボリスは懐にしまった手紙を取り出した。
 「まさか……貴様がこれを……?」
 「そうだ。その苗族の生き残りを始末してもらおうかと
思ったのだが、最後の最後で邪魔がはいったわけだ。」
 ボリスは黒衣の剣士の独白を聞いて愕然となった。
 「てめーのせいで……。み……皆を傷つけやがって……許せね
え……。」
 「これも私の復讐だ。私の復讐さえ遂げられれば、誰が死
のうとかまわん。」
 「ふ……っざけんな!」
 シベリンは側に落ちていたナヤトレイの短剣を力一杯投げ
た。しかし、手元が狂ったのか、短剣は側の柱に当たって
落ちた。
 「もう君は会う事はないだろう。さらばだ。」
 高笑いをしながら、黒衣の剣士は去って行った。
 「くそっ……。ふざけ……んな……、ふざけんなぁぁぁ!!」
 シベリンは力一杯叫んだ。その叫びは途中で旅を終わらせ
なくてはいけない悔しさもまじっていた。
 「ふ……ざけん……な……。」
 どんどんと薄れ行く意識の中で、自分と黒衣の剣士の事を
呪いながらシベリンは目を閉じた。
 「ふ……ざけ……ん……な……。」
 それがシベリンの最後であった。

5028:2004/03/07(日) 12:34
お…終わった。
こんなに長くなってるとは気付かなかった。
うpもしたし寝まつ。皆様お休み〜ノシ。

最後に、誤字脱字等は勘弁してください。

51名無しさん:2004/03/07(日) 12:37
|Д゚)もう書いてもいいよね?リアルタイムで拝見させてもらいますた
シベリン(゚∀゚)カコイイ!

52名無しさん:2004/03/07(日) 12:40
シベは2人きりの時は「ナヤ」って呼ぶんじゃなかったっけとかまあ
そんな細かい事はさておき、お疲れ様ー
他のキャラつかったことないけどボリスと黒衣の剣士は別人なんだな。
オープニングだけでも全員作って観ようかな…

53名無しさん:2004/03/07(日) 12:43
同じくリアルタイムで読ませてもらいました。おつかれさまです。
前のやつ読んでた後だからよけいシベリンへの評価が急上昇しました。

5428:2004/03/07(日) 17:04
読んで感想くださった方、ありがとうございました。

このネタで黒衣の剣士をボリスにはしませんですた。
マサカ…ホントウニボリタソジャナイヨネ?(´・ω・`)

>シベは2人きりの時は「ナヤ」って呼ぶんじゃなかったっけとか〜
う…、そうだったのか。on_
書く前に一回は全員のOP見るべきでつな。
今回は脳内変換して読んでくだはい。

55名無しさん:2004/03/07(日) 17:12
>>28
当方シベリン使い、一応イベントでボリスの事が出てきたが
シベがどうも若すぎて違うって言ってたぜい、だから安心せい

5628:2004/03/07(日) 18:15
>>55
そうでつか。安心したでつ。
コレデネコミミボリタソニ ハァハァスル シベタソガエンリョナク デキルw

実は黒衣の剣士はボリス兄案もあったりして…。

57名無しさん:2004/03/07(日) 18:18
そうそう、今日他キャラのプロローグを一通りみてまわった。
まだ見てないのいくつかあるけど、ナヤとマキシは顔イラスト
よく出てくるね。
特にマキシは表情が一体何種類あるんだと言うほど多かった。
意外とオフィシャルでは最も優遇されてるのかもなマキシ。

58名無しさん:2004/03/07(日) 18:38
                 ,. -‐    ‐ 、
                  /         \
                 / _,,.  ..,,__      ヽ
               / _,..,-‐ァr-、、._``丶、   ',     ________
                 ヶ'/,:'// /,ハトヽヽ `丶.O`ヽ、',   /悪いが、ネコミミ売った金で
                //l //j/1! !lヽヽ\ヾ| | \ ヽ! <  炭鉱用安全メットを買わせてもらったぞ
             {/レ!/イ´'_`!  ヾ ヾ__、ヽ| ト, l ヽj   \
            ノ'^レW,〈.|{:.゙!   /|{:::i}゙}| |_ソ //     ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
            / ‘ナヒチ', ゞ″     ゙'ー'.ィTノ`! {
           ノ_、、 ヾ´} ',   '     “7′ l  ヽ
         ,. '´  ヾ} ノ:ノ/ ヽ、 ` ′  //i   !'、  \
      , '´    ,.-リ'7´/;イ ,イ``ーr ''//ヽく⌒゙ヽヽ、\ーゝ
    ,. '´    / ̄  レ'i!ノ '-ァ、レ_l|  {/ィ , `、.  ヽゝ`ーゝ
... /    , ' -‐ ''' "¨´V / /`ヽフ,-両{./〃~ヽ  \
 /    ./        , ' /      ノ l.   ',    ヽ
. {.  _,. ‐'´     __,,.. , '′ ヽ._,.:  _, -'´ | ,   ',     ヽ
 `ー… '' "¨~´   /         ̄     |'ヽ、 ヽ   il
           /              l. /`丶、._  _リ
           !               |,/i}
              ヽ、            ハ.リ
             `!`` '丶 、._   _, '  l´
             |        ̄   /
              ト、、          /
               | ヾミ:;_ニー_==_彡'〈
               /=ニ、.,_` ヽ、、   `{
                /     ー``''ー-- -一ヘ. r、、
          _」コ/、__           __,,.. 介!lN|
        ○_,イ` ー`r===:f=ニ´-‐ r<..」!lN|
             ボリス・ジンネマン

59名無しさん:2004/03/07(日) 18:46
公式のナヤOPムビDLして見たんだが…何か違う。
しかも、文字潰れて読めねーよ。
本編で確認しろって事でつか…(´・ω・`)

601:2004/03/07(日) 20:45
>>35
漏れもはじめはこんなスレになるとは思ってもみなかったよ。

>>28
乙。ぐっじょぶ。

61その8(後日談)@28:2004/03/07(日) 23:04
 シベリンが死んでから数日後。ナヤトレイとボリスが一つ
の墓の前に立っていた。
 「それで……ボリスはこれからどうするの?」
 ナヤトレイの質問に、ボリスは遠くの景色を見つめた。
 「俺は……もう誰にも頼らずに兄さんの事件を追う。そし
て、シベリンの代わりにあの黒衣の剣士を倒す。」
 ボリスは誰にも言わずに出てきたのだった。それほど、黒
衣の剣士につけられた心の傷は深かった。前にも増して鋭く
なった表情は、何者も信じないという雰囲気が感じられた。
 「そう……。」
 そんな厳しい表情のボリスを見ながら、ナヤトレイは胸に
かけたシベリンの形見のペンダントに触れた。
 「ナヤトレイはどうするんだ?」
 「……私はシベリンの側にいるわ。もう……家族は誰もい
ないから。」
 反対に質問されたナヤトレイは俯きながら答えた。ナヤト
レイも心に負った傷は深かった。綺麗な銀色の髪には白髪が
混じり、その疲れた表情で一気に十年も老けたように見えた。
 「……そうか。」
 さすがにボリスもナヤトレイの落ち込みを励ます事ができ
なかった。家族を失う悲しみは、ボリスも体験していたから
だった。
 「シベリンは……自分が誰だか解らないで死んでしまった
のね。本当の名前も、年齢も、故郷さえ……。私達と一緒に
いたのは誰だったのかな……。」
 ポツリと呟いたナヤトレイの言葉に、ボリスは大きく首を
振った。
 「違う。シベリンはシベリンなんだ。」
 不思議そうな顔でボリスを見つめたナヤトレイは、その意
味が解らないのか首を傾げた。
 「シベリンの過去がどうだろうと、俺達の知っているのは
シベリンなんだ。」
 「私達の知っているシベリン……。」
 「それでいいじゃないか。」
 「……うん、そうだね。シベリンは……シベリンだね。」
 ナヤトレイはゆっくり頷くと、シベリンの墓に手を置いた。
 空を鳥の影が横切り、ボリスは空を見上げた。太陽はかな
り高い位置にいて、もうここで三時間もたたずんでいた事に
気付いた。
 「そろそろ俺は行く。」
 ボリスはそう言うと横に置いてあった荷物を背負った。
 「そう……。ボリス……元気でね。」
 「……ああ。ナヤトレイも元気で。」
 ボリスはそう返事してから、小さくシベリンの墓に頭を下
げた。そして、そのまま森の中に消えていった。
 ボリスの姿が見えなくなると、ナヤトレイは墓の前に座っ
て俯いた。
 「ごめんね、シベリン……。」
 墓に額をつけてナヤトレイはそう呟いた。
 「シベリン……。もう一度……ナヤはいい子だって……頭
撫でてほしいよ。」
 顔を覆って泣き出したナヤトレイの飾り紐に結ばれたシベ
リンの遺髪が、風に吹かれてナヤトレイの髪と一緒になびい
ていた。
 それ以来、ボリスは失踪したという事になり、その行き先
も生活も何もかもが知られる事はなかった。一方、ナヤトレ
イはシベリンの墓守りとして一生をすごした。

 時々、シベリンの墓の前に綺麗な花が飾られていたが、ナヤトレ
イはそれが誰の贈り物かは絶対に喋る事がなかった。

das Ende


なんかその7の終わりをぶっつり切ってしまったのが
どうしても納得できなくなって後日談書きますた。
ボリスの台詞見ようとしてOP見ていたら、
途中で止まったのは仕様でつかね。(´・ω・`)マア,トバシタカライイケドサ…

6218:2004/03/07(日) 23:16
>>28タソGJ! ホロっときました…(ノД`)
もっと盛り上げていきましょい こういうの大好きなんです

本スレで出てたカプリング話でも書こうかな…
Sidestoryみたいな感じで

63名無しさん:2004/03/07(日) 23:20
ボリスのOPは止まっちゃう人多いみたいですね。
そういう自分も止まりました;もう一度見たら動いたけど。

>>ALL
お話全部読ませてもらいましたけどすごく良かったです。
自分の中の空想(妄想?)をここまで立派に構築して
面白く素敵なシナリオにする。
あなた達こそTales Weaverだっ!

6428:2004/03/07(日) 23:58
皆様、ありがとうごさいます。
>>2のネタで何か思い付いたらまた何か書きまつ。
……ミラとマキシミンあたりで書けるといいなぁ〜。
ハッピーエンドは苦手なので、それしか書けないって罠……。

>>18さんの話も好きでつよ。もう爆笑しながら読んでますた。
カップリング話期待してまつ。

さっきライトブラウンのボリ子タソを見て、
シベタンがハァハァする訳が解ってしまいますた。
あれならナヤにシベリンの態度が気に入らないと言われても納得w

65ボリ&ティチ(1)@18:2004/03/08(月) 07:33

(全く、厄介な荷物を拾ったものだな…)

「ライディアって樹の上にあるんですよね〜見てみたいなぁ」

(はぁ…)

男は心の内で深い溜息をつき、己の長い髪を鬱陶しそうにかき上げた。






――数時間前――

「おっ ボリスじゃねぇか。相棒はどうしたんだよ? ホラ、金髪の」

ボリスと呼ばれた男は、馴れ馴れしく話しかけてきた草色の髪の男に一瞥を与え、踵を返す。

「相変わらず愛想ないねぇ…」

(愛想だと…そんなものにどれ程の価値があるというのだ)
遠ざかる草色の男の声を背に受け、声には出さず吐き捨てる。

ここは海の谷と呼ばれる、街道に設けられた休息の地である。
ライディアの依頼をこなし、ナルビクへ向かう途中でボリスはこの場所に立ち寄っていた。
本来なら目障りな程に五月蠅いパートナーがボリスの傍らに在るのだが、今、その姿は無い。

(…全く、ルシアンの方向感覚の無さときたら普通じゃないな…
  幸い地図は奴が持っているんだ、いつかはナルビクに辿り着くだろうが…)

渓流の上に作られた石畳の上で疲れを癒しながら 無きパートナーに心の内で毒づく。
そのまま流れる水音に耳を澄まし、細めた瞳で水の流れを追う。


幾許かの時が過ぎた後、ボリスの瞳がカッと見開かれた。
その目に水とは明らかに異なるモノが流れ込んできたためである。

(まさか あれは…人間、か…?
  …そうだ、間違いない!)

ボリスは思うが速く、片手で服の襟元を掴み、思い切り引き上げた。
面倒事に巻き込まれるのは御免だが、生きているかもしれない人間を見殺しにできるほど
心は非情に徹しきる事ができない。
その人間を石畳の上に横たえ、生死を確認する。

(…まだ息はあるし、外傷もないようだな。気絶しているだけか。)

安否の確認が済んでから、ボリスはその人間を改めて観察する。

それは少女だった。
歳の頃は15〜17、着ている服からも、冒険者のような稼業では無いことが読み取れる。
艶やかな金髪の、美しい娘。
ボリスは周囲に目を配らせた。
周囲では、お世辞にもガラの良いとは言い難い冒険者達が好奇の眼差しを向けている。


(さて…気絶している若い娘を、山賊紛いの男共の中に放っておいては…)
ボリスは考えた。面倒事に巻き込まれるのは、彼が最も苦手とする所である。

(この女、明朝には人生観が変わってしまうだろうな…)
面倒事に巻き込まれた事を嘆きつつ、己の長い髪を鬱陶しそうにかき上げた。

66ボリ&ティチ(2)@18:2004/03/08(月) 07:34

辺りは闇が覆い去り、昼間の喧騒が嘘のように静まり返っていた
聞こえるのは鈴虫の鳴き声と、焚き木の爆ぜる音くらいである
ボリスは座り樹に身を預け、火を挟み反対側で横になっている少女が目覚めるのをじっと待っていた。

「ん…」

何度目かの焚き木の爆ぜる音と共に、少女はまだ虚ろな眼差しでボリスの方を向いた。

「気が付いたか」
「…おはようございますぅ」

その言葉を聴く限り、いつしか気絶はただの睡眠へと変わっていたようである。
ボリスは安堵と共に、虚脱感に似た疲れを覚える。
刹那、少女から唐突に話しかけてきた。

「ここがナルビクなんですか?」
「…海の谷だ」
「あれぇ…ナルビク行きの船に乗ったのに…なんでだろぅ」

この時点で、ボリスの頭では大方の状況は予想できていた。
数日前にナルビク沖で船が嵐で難破したという情報も耳にしている。
この少女は何かしらの理由でナルビク行きの船に乗っており、その船が嵐で難破してしまい
恐らく、入り組んだ内陸の潮の流れでこんな場所まで流されてきたのだろう、と。

「さて…お前の今置かれている状況を掻い摘んで説明する。」




「――と、いうわけで、お前は遭難したんだ」
「そうなんですかぁ〜」

「…で、これからナルビクまでの経路をどうするかだが。」
「今おもしろいこと言ったのにぃ…」

「お前、モンスターと戦う事はできるか?」
「私モンスターって見たことないんですぅ。楽しみだなぁ」


噛み合ってない。さっきからこんな会話が幾度と無く繰り返されている。
ボリスは頭を抱えたくなった。ルシアン以上の強敵である。

(何故アノマラドの金髪には、こうも天然が多いのだ…)
血色濃き彼等の祖先は、こんなものではなかったのだろうな と、場違いな感想を抱く。

「…仕方無い、幸い俺の目的地もナルビクだ。面倒ついでに連れて行ってやる。」
「わぁ〜、ありがとうございますぅ」

(っ……)

少女が不意に放った言葉が、ボリスの表情を翳らせる。
そのまま伏せかけた瞳を遮るように少女が尋ねた。

「あのぅ…お名前なんていうんですか? 私はティチエル・ジュスピアンです」

いつまでも慣れる事の無いこの質問に 戸惑いを隠しながらボリスは答える。


「ボリス… 
 そう、ただのボリス だ」

67ボリ&ティチ(3)@18:2004/03/08(月) 07:34

灼熱の砂漠の廻路を、黒衣の男と白いドレスの少女が並んで歩いている。
身に着けるそれの色と同じくして、それぞれの表情も対照的である。
男は困り果てたような、そして少女は満面の笑みを浮かべていた。

(全く、厄介な荷物を拾ったものだな…)

「ライディアって樹の上にあるんですよね〜見てみたいなぁ」

(はぁ…)

男は心の内で深い溜息をつき、己の長い髪を鬱陶しそうにかき上げた。




「わぁ〜ボリスさんボリスさん!このお花綺麗〜」

ボリスと呼ばれた男は、振り向きざまにその花を剣で一閃する。
その花は醜悪な呻き声を上げ、地面に崩れ落ちた。

「…ティチェル、俺の傍を離れるな と、一体何度言わせる気だ。
  花に擬態したモンスターがこの辺りには多い。不用意な行動は慎め。」

ティチェルと呼ばれた少女はそれでも笑顔を崩さないで答える。

「だってぇ、モンスター見るの初めてなんだもん。」

ボリスは最早何度目か、数えるのも億劫になるほどの溜息をこぼしつつ踵を返し、
ティチェルもそれにやや早足でついて行く。
先程からこのようなやりとりの繰り返しが続いている上に、
酷暑に加えてのお守で、ボリスは己の精神が疲弊していくのを感じていた。

(いつもなら鬱陶しい雨も、こうも続かないと有難みがよく分かる…)

そんな事を考えている内に、斜め後ろからいかにも女の子らしい小さな悲鳴が聞こえ、
ふと見やると、砂切り石で足を切ったらしいティチェルが屈み込んでいた。

「少し深いな…止血しなければ…」
「大丈夫ですぅ」

清潔な布を探していたボリスを遮るようにティチェルが言い、
その傷口に当てがっていた手から、青白い光が零れ始める。

「…回復魔法が、使えるのか?」
「はい。言ってませんでした?」

脱力しながらも、少し肩の荷が下りたようにボリスは感じた。
傷は徐々に塞がり、数分後ティチェルはその場でピョンピョンと飛び跳ねて見せる。
どうやら完全に元通りになったと言いたいらしい。

「もう大丈夫だな…先を急ぐぞ」

ぶっきらぼうなボリスの言葉を受け、ティチェルは嬉しそうにやや早足で後を付いて行く。

68ボリ&ティチ(4)@18:2004/03/08(月) 07:35

砂漠の夜は静かである モンスターも殆ど寄り付かないこの地の夜は
人はおろか、虫の鳴き声ひとつない。
聞こえるのは焚き木の爆ぜる音、そして ご機嫌そうな少女の鼻歌だけである。


「見て見てボリスさん、押し花作ったの、綺麗でしょ〜?」
「…ああ」

「この果物、美味しぃ〜ですね〜」
「…ああ」

「聞いてます〜?ボリスさぁん」
「…ああ」

「ボリスさん実は女の人ですよね?」
「…いや」
「ぶぅ〜…引っかからなかったぁ」


ボリスと呼ばれた男は座り木に上身を預け、
火を挟んだ向こうにいる少女を、半分伏せた瞳のまま見つめ、考えに耽っていた。

(この少女は…何もかもが俺とは反対だな…
  何故そんなに明るい…何故笑顔でいられる…?
   笑顔でいたって…愛想が良くたって… 誰も、助けてはくれない…)

負の感情が席巻してゆく心の内で、そうつぶやく。




7年前、兄の死と共にジンネマン家は没落した。
一家はボリスを残し、皆死に絶えてしまった。
十にも満たない良家の少年は、その歳にあって、己の力だけで生きる道を選ばざるを得なかった。

誰もがその日暮らしの生に追われ、助けても何の見返りも無い没落貴族の少年に、
救いの手を差し伸べる者などは現れなかった。
どれだけ泣いても、どれだけ助けを請うても、どれだけ愛想良くしていても、どれだけ笑顔でいても。

死の淵に立たされる度に、あの優しかった兄の顔が思い浮かぶ。
両親の寵愛は兄のみに注がれ、見向きもされなかった少年に唯一人向き合ってくれた家族、
イェーフネン・ジンネマン。
事故死と聞かされていたが、風の噂では"殺された"という話も聞く。
その死の疑問を解き明かし、仇を見つけるまではと、形見の大剣ウィンタラーを傍らに
少年は、許されざる死と立ち向かってきた。

誰の力を借りる事もなく、生きて行けるようになる頃には
少年は自分以外心を許す事ができなくなっていた。
その生い立ちは、少年から笑顔を奪い去り、心に暗い翳を落としていた。

(何故、笑う必要がある…
  笑顔などに、どれほどの価値があるというのだ)



「ボリスさん」
「…何だ?」

「昨日いいそびれちゃったんですけどぉ、助けてくれてありがとうございました」


(…ありがとう、か…)

没落貴族の少年は、誰からか必要とされる事はあっても
誰かを必要とする事は無かった。
少女が不意に言うその言葉が
そんな当たり前の言葉さえ言う事ができなかった、家名を名乗る事さえ許されなかった、
己の過酷な生い立ちを、いとも容易く反芻させる。

(俺にはまるで縁の無い言葉 だな…)




「…もう休め。砂漠の夜は冷えるから毛布を渡しておく。生憎、一人分しか無いがな。」
「えへへ…」

ボリスが毛布を投げてよこそうとすると、
少女は嬉しそうに笑い、火を挟んで反対側の座り樹、つまりボリスの元までクルリと歩いてゆく。

「おい、ティチェル…?」

ティチェルと呼ばれたその少女は、ボリスの傍らに腰を下ろし、
上身を座り樹――ではなく、そっとボリスの上身に委ねた。

「こうやってくっついた方が あったかいですよ…」
「…俺は外蓑があるから、平気だ」
「だ〜めっ! 風邪ひいたらどうするんですかぁ?」

そう言ってティチェルは頭をボリスの肩に乗せ、
毛布を二人の体に巻きつける。

「えへへ…あったかぁい…」
「おい…」

突然の事にボリスの表情には、先程までの翳りが全く残っていなかった。
代わりに困惑したような、何とも言えない表情になる。



「…明日だが…」

ボリスが声を掛けようとした時には、既に規則正しい寝息をたてる少女がそこにいた。
気丈に振舞っていたものの、慣れない強行軍に相当疲れていたのだろう。

(やれやれ…)

己の肩にもたれ掛かる少女を見つめ、何度目かの軽い溜息をつく。
が、今までの溜息とはどこかが違う。
それのどこが違うのかを思い当てる間もなく、ボリスもまた深い微睡みの底へ堕ちていった。




To Be Continued

6918:2004/03/08(月) 07:38
というわけで 妄想全開のカプリング話その1 ボリティチです
この2人が一番書きやすかったので…ボリティチ好きな人達ごめん

SSてことで書き始めたものの、話の風呂敷広げすぎて収集つかなくなってしまい、
予想外の長編になりそうです ゴメンナサイゴメンナサイ
続きはまた今晩に投下します(´・ω・`)この2人がナルビク着くまでは書きたいなぁ…

皆さんの妄想も爆発させて欲しいです

70名無しさん:2004/03/08(月) 08:00
18氏乙です
楽しませてもらいました(*´Д`)

皆創話うまいなぁ( ´∀`)

このままこのスレ伸びるようなら
保管庫でも作ってみるかな

71名無しさん:2004/03/08(月) 10:19
>>70
つーか作ってくれ。
こういう話好きだ。
こりゃのこしとかなあかんやろ?と思う奴挙手汁!!
( ・ω・)∩

72名無しさん:2004/03/08(月) 10:35
(´▽`)ノ

73名無しさん:2004/03/08(月) 11:08
∩( ・ω・)∩

SS見て、ボリスとシルベンの株が急上昇しました。
使ってたキャラと全く関係がなかったものでね…
今度キャラ作るときその二人を使いたくなりました。(*´Д`)ハァハァ

74名無しさん:2004/03/08(月) 11:10
ボリスって本当に女だったのか…

75名無しさん:2004/03/08(月) 12:37
シルベン…汁弁…?なんかヒワイだな

76名無しさん:2004/03/08(月) 16:11
>>18さんGJです。後半も楽しみにしてまつ。

確かに、気楽に盛り上げようとすると風呂敷広がりまつね。
ヒロガリスギテ,テニ オエナクナルコトモ ジブンハ アルケドサ(´・ω・`)
全員のOP見てからまた考えるか…。

7770:2004/03/08(月) 20:38
結構久しぶりにHTML弄ったんで疲れました(;´Д`)

簡単に作ってみたんで色々粗があると思いますが
保管庫として随時更新していきたいとおもっちょります

要望とか意見とか貰えると気合入るので
何かあったらバシバシ言って下さい

http://homepage3.nifty.com/twstory/

78名無しさん:2004/03/08(月) 20:55
70氏速い仕事GJディス(  ̄ー ̄)b

79名無しさん:2004/03/09(火) 00:25
TWのクラ殆ど起動させてない漏れだが
このスレ激しく好みだ(*´∀`)

18氏、28氏期待しております。
ちなみにボリとルシ、ティチ以外のキャラはよくわかりません_| ̄|○

80 ボリ&ティチ(5)@18:2004/03/09(火) 09:31
「む……」

空がまだ薄明るいうちにボリスは目覚めた
空気はまだ冷たく、眼前の砂漠は人も動物もなく、ただ閑散としている。
ふと傍らを見やると、肩には昨晩のままティチエルがもたれ掛かっていた。
ボリスは肩を揺すらぬよう気遣いながら、ずり落ちかけていた毛布を掛けなおし、
そのままティチエルが目覚めるのを待っていた。

ボリスの目は、遥か彼方の地平に向けられている。
アノマラドでも珍しいその青灰色の瞳は、しかし、何も映してはいなかった。

この娘はなぜ、こうも人を警戒するという事をしないのか。
或いは、それすら知らないのか。
そんな事を考えながら、瞳を細める。

初めて会った、自分に無いものを持っていて、自分に在るものを持っていない人間。
何もかもが正反対のこの少女に抱くこの感情は、憧憬のようであり、また、侮蔑のようでもある。

相変わらずその瞳の先にある風景は、緩やかな動きを以っていて尚、映り込んではこない。




幾許かの時が流れ、日差しが岩元に陰を作り出す頃、ボリスの肩口で
もぞもぞと動きが感じられた

「目が覚めたか」
「ゲロ」


「………ゲロ…?」

ふと見やると、ティチエルの胸元で何かがもぞもぞ動いている。
警戒する暇も与えず、それはボリスの顔面に飛びついてきた。

「うおぉっ!」

らしくもない驚嘆の声を上げ、ボリスはそのまま仰向けに倒れこみ、
同時に支えを失ったティチエルが、コテン と横に倒れ、目を覚ました。

「おはようございます〜…どうしたんですかぁ?」

冷静さを取り戻し、ボリスは己の顔面にへばり付いている何かを手に取ってみる。
寝ぼけ眼だったティチエルはそれを見て、途端に目を開き嬌声をあげた。

「あぁ〜〜かえるさんだぁ」

ボリスの手の平の上にあったそれは、紛れも無くカエルだった。
手の平で仰向けになっているカエルは、無防備に手足をひろげ、
喉を膨らませたり、萎ませたりしている。
何とも言えない、愛嬌が有るような無いような仕草である。

「かわいぃ〜… どうしたんですかこの子?」
「…お前の服の中から出てきた。恐らく、海の谷の水辺辺りで紛れ込んだのだろう。」

常識から考えても、こんな砂漠の真っ只中にカエルがいるとは考えにくい。
同時に、丸一日以上服の中に紛れ込んでいたカエルに気付かなかった少女の天然ぶりを再認識する。

(金髪と天然の関連性か…)
ボリスは、途方に暮れているであろうパートナーに思いを馳せ、

(剣を手放す事があったなら、研究職もいいかも知れんな…)
カエルの喉を指でつついているティチエルを見ながら、自分に有り得ぬ未来を思い描く。





「そろそろ行くぞ」
「あ…はぃ。 あのぅ…」

軽く朝食を取って支度を始めるボリスに、
まだカエルをつついていたティチエルは、遠慮がちに声を掛ける。

「この子…連れていっちゃだめですか?」
「ああ、構わないぞ」
「え?」

予想外の答えに、ティチエルは戸惑いを隠しきれない。
その意外そうな表情を読み取ったのか、ボリスは溜息を交えながら答える。

「カエルをこんな砂漠で逃がしては、生きては行けまい…」
「あっ、あの、ボリスさんも動物好きなんですか?」

「…………嫌いでは、ない。」

少し間を空けて、そう答えるボリスを、ティチエルは嬉しそうに見つめる。
心成しかその顔が今までより、穏やかに見えたのである。

「動物は、正直だ。仲間を見捨てる事も、裏切る事も、
  ましてや…殺しあう事など、決してしない。」

そう言うボリスの横顔は、何処か寂しげにティチエルには感じられた。
何かを秘めていて、それを表に出せず、苦しい思いをする、
そんな胸が絞めつけられるような思いと共に…。



.

81ボリ&ティチ(6)@18:2004/03/09(火) 09:33


「まずいな…」
「どうしたんですか?」

先を歩いていたボリスは、おもむろに上空を見上げ、呟いた。
つられるようにしてティチエルも空を見上げる。
上空には、どす黒い雷雲が立ち込めてきていた。

「雨が降る…しかも、相当強い雨だ。」
「じゃあ少しは涼しくなりますね〜」

はしゃぐティチエルに対して、ボリスの方は浮かない顔をしていた。
この地方の雨はそれこそ我が身を穿つ程の強い雨であり、その中を強行でもすれば、
初めこそ涼しいものの、時間が経てば体温を奪われ、精神力を大幅に失ってしまう。
ボリスは己の経験からそう解釈していた。

「幸いあそこに岩陰がある、あれで雲が通り過ぎるのを待つぞ。」





雨滴が砂を打つ音は、辺りに低く低く響く。
その重低音の旋律は、殺風景な砂漠の午後を殊更に昏く彩る。
日差しは途絶え、転々と生える乾燥に強い植物も、身を打つ雨に鎌首を擡げている。
動物も、獲物を探すのを諦め、木々の麓で雨宿りをする。
ただ、ティチエルのカエルだけが、嬉しそうに雨の中を飛び跳ねていた。

「ふふ、かえるさん嬉しそぅ〜」
「…そうだな。」

ボリスの予想通り、途轍もないどしゃ降りとなっていた。
この地方では、年に数回こうして強い雨が降る。
とは言え、わずか数回では、やがて雨水は砂に敗れ去り、再び元の砂漠へと戻ってしまう。

「いつもこうやって雨宿りしてるんですか?」
「…いや。雨宿りしたのは初めてだ。」

「じゃあ今日はなんでですか?」
「俺は平気だが、お前が辛いだろう。」

実際、精神力が力の根幹を成すティチエルにこれ程の雨は酷である。
ボリス一人だけなら、無理やりにでも突っ切って、一刻も早く任務を遂行させているであろうが。

「…ボリスさんてぇ〜」
「…何だ?」

ふと見やると、ティチエルは両膝を抱え込みながら座りこみ、
顔だけボリスの方を向いて、嬉しそうに微笑み、こう言った。

「…優しいですね。」



とてもではないが、向き合っていられなかった。
気恥ずかしさが込み上げてきたボリスはそっぽを向き、
言われ慣れない、自分に向けられた今の言葉を心の内で反芻した。

(…優しい? 俺が…?)

そんな事をした覚えはない、が、確かに自分に向けられた言葉。
何事にも動じないと思っていた自分の思考が、
たった一つの少女が放った言葉で、ひどく逡巡している。
考えてみれば、これほど滑稽な事も無い。

「…ふっ」
「どうしたんですかぁ?」
「…いや、何も。」

そっぽを向いたままで、どんな表情をしているのかティチエルには分からない。
質問は軽くはぐらかされてしまったが、穏やかそうな雰囲気だけは読み取れた。
そして続けざまにティチエルが質問をする。

「だってぇ…私を助けてくれたり、一個しかない毛布を渡そうとしてくれたり〜」
「…………物事を途中で投げ出すのは性分じゃないからな。」

少し考えてから、ボリスはそう答えた。
矢継ぎ早にティチエルから質問が飛ぶ。

「私を助けてくれた時って、人工呼吸してくれたんですかぁ?」
「安心しろ、寝ているだけの女の唇を奪うほど俺は好色ではない。」

即答だった。言葉あそびのような、言葉での応酬をするような、
それでいて殺伐としていない、不思議と穏やかな空気が二人を包み込む。

「なぁんだ」

「…」

言葉での応酬はティチエルに軍配が上がった。
ティチエルが不意に言った強烈な言葉の真意は、聞き出す事もなく、
二人の会話は、そのまま強い雨音にかき消されていった。




.

82ボリ&ティチ(7)@18:2004/03/09(火) 09:35


目の前にはステップが広がっている
脛元まで伸びた緑色の絨毯が、視界の遥か彼方まで広がり、埋め尽くしていた。

「うわぁ〜すごいですね〜 草がいっぱ〜い」
「ここを抜ければ、ナルビクは目と鼻の先だ。」

砂漠を抜けて一変した光景に二人は立ち止まっていた。
もっとも、ボリスにとってはそれ程珍しい光景ではないが、
ティチエルの目には、その何もかもが新鮮に映りこむ。
真新しい光景に感嘆を覚える姿に、ボリスは少なからず羨望を感じた。
そして、そんな考えが浮かんだ自分に気付き、戒める。

(らしくないな…どうもティチエルと居ると調子が狂う…)

「ボリスさぁ〜ん 早く〜」
「…ああ」

ボリスは軽くかぶりを振り、先に駆け出していたティチエルの後を追って歩く。





「この辺でひと休みだな。」
「もぅ足がクタクタです〜」

草の背が低い所にある、切り立った岩の麓で二人は腰を落ち着ける。
日はまだ高い。これなら今晩にでもナルビクに着けるとボリスは思った。

「ティチエル、ナルビクには両親は来てるのか?」
「パパはウチでお留守番してます〜」

「母親もか?」
「ママはいないんです」

ボリスは思わず目を伏せ、自重すべきだったと思った。
掛ける言葉が見つからずにいると、ティチエルから話し始めた。


「パパが、『ママは天国っていう遠いところにお出かけしてるんだ』って。
 …天国ってとっても遠いから、会いに行けないんです」

「…そう…か。 寂しくは、ないのか…?」

「少し寂しいけど、パパもいるし、ボリスさんともお友達になったし、平気です〜」



そう言って ティチエルは微笑んだ。



死を死だと教えられていない、或いは理解していないのか。
いずれにしろ、ボリスは目の前の少女の無垢な心に、
澱みを含んだ自分の心が締め付けられるような思いを抱いた。

生きるために、盗みを働き、人を傷つけ、裏切り、時には命に手をかけ、
日々を過ごすためだけに、要らぬ悲しみを生み続ける人間。
自分も含めて、そんな人間が嫌いでしかたなかった。

傍らの剣に目をやる
愛用の剣の柄布は、度重なる返り血で赤黒く変色している。
モンスターばかりでなく、任務とは言え、山賊や野党を手にかけた事もあった。
嘆き、悲しみ、苦しみ果てたそれらの欠片を糧として生きている自分さえ、許せなかった。

兄の仇を討ったら、自ら命を絶とう、と そう考えていた。
…少なくとも、この少女に出会うまでは。

この少女は、自分が今まで見てきた人間とはどこか違う。
そんな思いが膨れ上がって、描いていた己の最期を押し潰してゆく。




「ボリスさんの家族はどこに住んでるんですか?」

考え込んでいた沈黙を割る形でティチエルが声をかけてきた。


「俺の家族は…ティチエルの母親と同じところにいるんだよ。」
「わぁ〜じゃあママたちもお友達かも知れないですねぇ」

本当に嬉しそうにティチエルは語る。
以前なら、聞かれるだけで辛かったこの質問。
例え誰であろうと、答える事が無かったこの質問に、
自分でも驚くほど素直に答える事ができた。

(不思議な女だ…)

「私、飲み水汲んできますねぇ〜」
「ああ」

駆けて行く少女の背中を見つめながら、
ボリスは己の内の何かが、軋み音を立てている、
そんな錯覚に似た感情を抱いた。




.

83ボリ&ティチ(8)@18:2004/03/09(火) 09:37


(遅い… 何をやっているんだ)

ボリスは切り立った岩の麓でティチエルの帰りを待っていた。
"水を汲む"と言ったきり、もう半刻以上過ぎている。
このステップ地帯には、それ程強力なモンスターがいるわけではない。
故に一人で行動する事をボリスは許した。

(また珍しい花にでも見とれているんだろうか…)

ボリスは自分自身に言い聞かせるように考えたが、すぐに否定した。
悪い予感がする。
長年の冒険者としての経験が、そう告げていた。

(くそ…胸騒ぎがする!)

ボリスは愛用の剣を手に取って、ティチエルが駆けて行った方向へ走り出した。





ステップには遮蔽物となるものが殆ど無い。
倒れてさえいなければ、遠目でも見つける事が可能である。
そして程なくして見つかったティチエルには、
もう一つの巨大な黒い影が、三軒ほど水を空けて忍び寄っていた。

(あれは…デビルナイトかっ!!!)

"何故こんな所に"という思いより早くボリスは駆け出していた

「ティチエル!! 逃げるんだ!!」

走りながらボリスは叫ぶ。
ティチエルへの注意を喚起すると共に、デビルナイトの注意を自分に惹きつけようと試みたのである。
…が、奇しくも耳が無いのか、デビルナイトは全く反応もせず、ティチエルへ迫ってゆく。
ティチエルも怯えた表情で、その場から動けずにいた。

(くそッ…!!)

デビルナイトが剣を振り上げ切った所で、ボリスは間合いを詰め切る事ができた。
しかし、一撃で仕留めることが出来なければ、剣は振り下ろされ、ティチエルを切り裂いてしまう。
ボリスは意を決して、剣の柄を絶対に離さぬよう握り締めた。
自分が一撃を受ければ、反撃で仕留める事もできる。

ボリスはデビルナイトの剣が振り下ろされた瞬間、ティチエルに覆いかぶさり、
背中から右手にかけて、思い切り薙ぎ払われた。

「ぐッ…!!」
「っ!! ボリスさん!! どうして!!」

ボリスは彼女の問いに答える間も無く、振り向きざまに剣で薙ぎ払おうとする。
…が、右手の先に握られているはずの剣が無くなっていた。
それどころか、右手そのものの感覚が無い。

(しまったっ… 腱を断たれたのか…いや、神経そのも…)
「…ぐはぁっ!!」

状況を整理するボリスの背中に、容赦なく二撃目が加えられる。
黒色の外蓑が襤褸切れになって舞い落ちる

「ボリスさんっ…!」

目下で青ざめる少女。

「お前は…動くな、 俺の…下にいるんだ…」

ボリスは精一杯平静を装った顔で答える。
その間も次々と剣戟が背中に加えられ、その度に火傷の様な激痛に襲われる。

周囲には、黒い外蓑の襤褸切れと、血飛沫が飛散していた。




(突き…刺されたら…まずい…)

ボリスは最後の力を振り絞って、腹筋に思い切り力を込める。
突き刺されても、貫通してティチエルにまでは届かないようにだ。

「ティチ…エル…」

意識が途切れ始めていた。
背中の激痛も、その感覚が鈍り始める。

ただ、自分の下にいる少女を抱きしめる左手だけに感覚が残っていた。


「ティ……」


そして 視界が徐々に暗転して行く。


程無くして、ボリスの意識は完全に途切れた。




.

84ボリ&ティチ(9)@18:2004/03/09(火) 09:38


(乞食かぁ!? 寄るんじゃねぇよ!)
――お願い…助けて…――


(あんな汚い子と 遊んじゃだめよ!)
――まってよ、僕を置いていかないで…――


(おめぇ以外盗む奴なんかいねぇだろ!!)
――違う…僕じゃない…――


(お前の家には散々搾取されたんだ!)
――痛いよ…! やめて…――


(お前は、誰からも必要とされない人間なんだ)
――そんな…そんな事、ないよ…――




(お前も少しは兄を見習わんか!出来損ないが!)
――父さん…待って…――


(本当にイェーフネンは素晴らしいわねぇ、私も鼻が高いわ)
――母さん…僕の事も見て…――


(父さんに言われた事、あまり気にするんじゃないよ…)
――兄さん…――


(それは知らなかった…ボリスは動物博士だね、偉いぞ…)
――兄さん…待って…――






(あのぅ…お名前なんていうんですか? 私はティチエル・ジュスピアンです)

――…僕はボリス、 ボリス・ジンネマン…――




(あっ、あの、ボリスさんも動物好きなんですか?)

――…動物は大好きだよ。これでも昔は動物学者目指してたんだ…――




(だってぇ…私を助けてくれたり、一個しかない毛布を渡そうとしてくれたり〜)

――…この先、何があっても君は僕が必ず守ってみせる…――




(ボリスさんの家族はどこに住んでるんですか?)

――…僕の家族は…ティチエルの母親と同じところにいるんだよ…――




.

85ボリ&ティチ(10)@18:2004/03/09(火) 09:40


焚き木の爆ぜる音が、初めは遠く小さく、次第に近くに大きく聞こえるように感じた。
目は開かないが、仰向けに寝かされているのが分かる。
暖かい光が、自らの中に流れ込んでくるような、そんな心地よい気分の中で意識が覚醒していった。


ゆっくりと瞳を開けてゆく。
その目には、既に暮れ切った空と、目を閉じて詠唱に集中する金髪の美しい少女が映りこむ。
自分の頭は、どうやらその少女の膝元に乗せられているようだと気付いた。
そして、目を開いた事に気付いた少女が詠唱を中断し、そっと声をかける。

「…ボリスさん…」

ボリスと呼ばれた男は周囲を見回し、自分が置かれている状況を
頭のなかで整理した。
近くに切り立った岩が見える。
どうやら昼間立ち寄った休憩場所のようだった。


(俺は…デビルナイトに…)


つい先程の事のような、それでいてずっと以前の事のような気もする惨劇を
まだ軽く残っている背中の痛みで思い出した。
右手が利くかどうか、何度か握り締めてみる。

「…ティチエル… 俺は、生きているのか…?」

ティチエルと呼ばれた少女は、笑顔で何度も頷く




「怪我は…無いか?」

「…」

ティチェルは言葉に詰まるように、何度も頷いた。
そして、言葉の代わりに嗚咽が漏れ、
その瞳から、涙が次々と零れ落ちた。

ステップに流れる夜風は、その草々をたなびかせている。
草々の奏でる音は、少女の泣き声を優しく遮り、
辺りにはただ、静寂がこだましていた。




.

86ボリ&ティチ(11)@18:2004/03/09(火) 09:43


「まっ…まだ動いちゃダメですよ…」
「もう平気だ、痛みは無いからな。」

制止する声を遮るように言い、ボリスは岩の麓に上身を預ける。
正直に言うと、痛みはまだ残っているが、
万が一に備え、上体だけでも起こしておきたかった。
常に死と背中合わせの生い立ちが育んだ、癖のようなものである。





「えへへ…」

暫しの沈黙の後にティチエルが呟く。
見やると、笑顔のまま、また零れそうになっている涙を一生懸命指で拭っている。

「泣いたり、笑ったり、忙しそうだな…」
「だってぇ…嬉しいんです…」

「嬉しい…から、泣くのか?」
「はい。そして、嬉しいから…笑顔になるんです。」

しばらく互いの視線が絡み合い、
恥ずかしくなったティチエルは少し視線を外し、続けた。



「笑顔も涙も…人の感情が生み出す、ごく自然なものですから…。」



ボリスは少し瞳を伏せたまま、その言葉を胸の内で反芻する。

"笑顔を見せれば、誰かが優しくしてくれる"
"涙を流せば、誰かが同情してくれる"

そう、思い込んできた。
そして優しさも、同情も、ボリスには与えられる必要の無いものだった。
だから、ボリスは笑顔も涙も見せる事が無かった。


だが、涙や笑顔の先に何かがあるのではなく、
嬉び、悲しみ、そういったごく自然な感情の先にあるのが 笑顔であり、涙である。
そんな当たり前の事さえ忘れていた。

ボリスは伏せかけた瞳を閉じる。




「ボリスさん… 自分の感情を抑え込まないでくださいね…。」

「…どうして、そう思う?」


「時々…凄く寂しそうな顔をしています…。」

「…。」


「さっきだって…ひどくうなされていたし…。」

「…。」




ボリスは言葉が続かなかった。
この少女には、自分の全てが見透かされているような気がした。
自分の感情を偽る事の愚かしさ…そんな思いを抱かされる。





長い沈黙の後、瞳を閉じたまま、呟いた。

「……夢を見ていた。 幼い頃の… 辛い夢を…。」

それっきり、言葉は続かなかった。
今までの、辛い思い出、僅かな楽しい思い出が、
次々と呼び覚まされてゆく。
再び、長い長い沈黙が流れた。





静寂を静かに割るように、ティチエルが声をかけた。

「ボリスさん… 私、回復魔法使えますよね。」
「…ああ。」

当たり前の言葉に、ボリスは相槌を打つ事しかできなかった。

「回復魔法で癒せない傷って、あると思いますか?」
「…。」

ボリスは答えに詰まる。



「それは、心の傷なんです。」

ボリスは閉じた瞳をゆっくりと上げ、ティチエルを見つめた。



「辛い思い出とか… 苦しい過去は、どれだけの魔法をもってしても、癒せないんです…。」

瞳の先に映る少女は、穏やかな微笑みを浮かべている。



「だから、一緒にお話したり… 悩みを聞いてあげたり…」

唐突に、瞳に映る少女が歪んだ。



「一緒に楽しい思い出を作って…、そして、その楽しい思い出を語り合ったり…」

次第に、少女の輪郭が、曖昧になっていく。



「その人を本当に大切に想う誰かが、ずっと傍にいてあげる事で… 初めて心の傷は癒されるんです…」

瞳に映る光景は、ほとんどぼやけてしまっている。




ティチエルはゆっくりとボリスの方へ歩み寄り、
そして、
ボリスの顔を、胸のうちに、そっと抱きしめた。




「…これは私が幼い頃、ママに会いたくて、寂しくて、泣きそうな時に
  パパがやってくれた…、特別な魔法…」



心の中で、頑なな何かが絆され
そして、
それは氷解するように、消えていった。



「こうやって頭を撫でながら… 泣いてるのを隠しててくれてたんです…」

もう、ぼやけ切って、何も映らない視界を遮るように、瞳を下ろす。



「辛かった事も… 楽しかった事も… いっぱい話してください
 ボリスさんの心の傷…、 私が…癒してあげたいから…。」

閉じ切った瞳の端から、ひとすじの雫が頬を伝い、零れる。



「……………」



草原に流れる夜風は、その草々をたなびかせている。
草々の奏でる音は、少年が小さく呟いた言葉を優しく遮り、
辺りにはただ、静寂がこだましていた。

ただ、ティチエルにだけは、
たとえどれ程小さくとも、はっきり聴く事ができた。





――…‥ありがとう‥…―――




.

87ボリ&ティチ(12)@18:2004/03/09(火) 09:46


ナルビクの空は、今日も深く青く晴れ渡り、
街を行き交う人々の喧騒を、全て包み込むように広がっている。

アノマラド南部でも最大のこの港都では、
暖かい日差しが照りつける中、たくさんの人々が
買い物、商業、貿易など、せわす事無く流れている。

「着いたな、ここがナルビクだ。」
「うわぁ〜人がいっぱ〜い!」

嬉しそうに目を輝かせるティチエルとは対照的に、
ボリスはどこと無く浮かない表情をしていた。
ナルビクへの到着は、短かった旅の終わりを意味する。
ボリスにとって旅の終わりは、自分の過去を、現在を、そして澱んでいた心さえ、
初めて全てを受け入れてくれたこの少女との、別れを意味する。

昨晩の事は、特殊な状況もあったため、真意を聞き出すような事はできずにいた。

(…別れを辛いと思ったのは、7年振りの事だな…)

ボリスは青空を見上げ、かぶりを振り
暗くなりそうな気分を改めた。





「…じゃあ、それぞれ用事を済ませてから、またここでな。」
「はぁ〜い、いってきま〜す!」

アクシピター本部へ元気良く駆け出して行くティチエルの後姿を見つめ、
ボリスは複雑な思いに駆られる。

(楽しそうだな…)

少し残念な気分はあるものの、再び青空を見上げてから、
踵を返し、クエストショップへ向かった。





「おっ ボリスじゃねぇか。相棒はまぁだ見つからねーのか? ホラ、金髪の。」

道行くボリスを見かけた、草色の髪の男が下品な声をかけてくる。

「ルシアンか…奴は方向音痴だが体力はある。いずれ帰ってくるだろうさ。」
「………」

まさかボリスから答えが返ってくるとは思ってもいなかった草色の髪の男は、
しばらく放心した後に、やっとの思いで言葉を返す。

「…へ、へへ… ちったぁ愛想身につけたようだな。俺みたいによぉ。」
「ぬかせ、愛想と馴れ馴れしいのは違うぞ。」

草色の髪の男は、思わぬクギを刺され苦笑する。





「いたー! いたいた〜! ボリスちゃ〜ん」
ボリスの背後から、野太い声が響いてきた。
振り向いた先にいたのは、燃えるような赤い髪の男

「シベリンか…」

シベリンと呼ばれた男はこのナルビクに本部を置くギルド"シャドー&アッシュ"の一員であり、
槍使いの名手で、真紅の死神と呼ばれている。
端正な顔立ちと、その腕前から女の噂は絶えないが、
それ以上に彼の名をこのナルビクで知らしめている所以は
"可愛ければ男女見境がない"という変態性そのものに他ならない。

「ボリスちゃん、今日こそ俺のモノになる決心はついたかい?」
「"ちゃん"付けはよせ、そして俺は女ではない。」

シベリンは狼狽した。いつもならこの場面では、
言葉無く、抜き身の剣先がシベリンの喉元に突き付けられるのが慣例であったためである。

「ま、またまた〜 隠したって分かる奴には、分かるんだ。」
「…なら確かめてみるがいい。」

そう言ってボリスはシベリンの手首を掴み、
己の胸元に押し当てた。

「…どうだ? これで分かっただろう。」
「俺は貧乳も嫌いじゃないぜ?」

ボリスは軽く溜息を吐き、視線をシベリンの斜め後ろへずらし、
忠告するようにシベリンに告げる。

「先程から苗族の娘がお前を殺しそうな目で見ているぞ…。」
「げっ!」

青ざめながらシベリンはその娘の機嫌を取ろうと、必死に何か話しかけていた。
…が、ほどなくしてその娘は歩いて行ってしまい、シベリンが慌ててそれを追いかける。

その途中でシベリンは振り返り、ボリスに向かってこう言った。


「少しカドとれて丸くなったな、お前、イイ女になるぜ!」


.

88ボリ&ティチ(13)@18:2004/03/09(火) 09:49


用事が先に済んだのは、ティチエルのほうであった。
ボリスが待ち合わせ場所へ向かうと、そこには既にティチエルの姿があった。
遠めに見るティチエルの表情は、どこか寂しく見える。

「待たせたな」
「おかえりなさ〜い」

ボリスの声を聞いてか、表情は一変して明るくなる。
そんな繕った笑顔を見て、ボリスは殊更に胸を締め付けられる思いがした。


他愛も無い話をしようにも、なかなか続かない。


周囲の喧騒とは、まるで別の空間にでもあるように、
二人の間では、沈黙が支配していた。





沈黙が耐えられなくなったのは、ティチエルが先だった。

「それじゃあ…ボリスさん…」
「あ…、ああ」

唐突な切り出しに、ボリスはただ相槌を打つ事しかできなかった。
そしてそのまま二人は俯いたまま、どちらとも動き出せず、
ただ、時間だけが過ぎていった。





ボリスがふと顔を上げると、ティチエルは何やら顔を真っ赤にして、
何かを言いたそうに口元を動かしている。

「どうした?ティチエル。」
「あ…あのぅ」

ティチエルにしては珍しく、歯切れの悪い様子が伺える。

「えっとぉ、き…きの…」
「…きの?」

顔を真っ赤にしながら、ティチエルは告げた。

「昨日の…こと…」

そこまで聞いて、ボリスにはティチエルの言いたい事が理解できた。
そして傍に歩み寄り、その頭を撫でながら、
ティチエルの次の言葉を遮るように、告げた。

「言っただろう?
  …物事を途中で投げ出すのは性分じゃない…とな。」


本当に告げたかったのは、別の言葉だが、
似たような意味を持つこの言葉が、今のボリスには精一杯だった。


「それって…」

ティチエルは目を輝かせながら続ける。

「私をボリスさんの、お嫁さんにしてくれる…って事ですか?」
「ぶっ!」

余りに飛躍した、唐突なティチエルの言葉に、ボリスは固まった。
そんなボリスを見て、ティチエルは可笑しそうに笑う。

「あはははは! 冗談ですよぉ〜」

ボリスは、ふと砂漠で雨宿りした時を思い出し、
やはり口では敵わないと、改めて思い知る。

可笑しそうに笑い続けるティチエルを見つめていると、
ボリスは、己の内から、ある感情が溢れ出そうになるのを感じ、
気恥ずかしさと共に青空を見上げた。

ティチエルも、それにつられる様に青空を見上げる。

「あはは…どうしたんですか〜?」

それは、7年前に少年が失ったと思っていたもの。

「…何でもないよ。」






ナルビクの空は、今日も深く青く晴れ渡り、

街を行き交う人々の喧騒を、

金髪の少女の笑い声を、

そして、長髪の少年の笑顔を、全て包み込むように広がっていた。






おしまい

8918:2004/03/09(火) 09:52
カプリング第一弾完結しますた。お目汚し失礼します。
本スレであがってた「ドン暗ボリが、ティチの性格に感化…」というコンセプトで書いたですが
コンセプト重視しすぎて、露骨にイチャイチャムニムニした話ではなくなりました。ゴメンナサイゴメンナサイ
純粋なサイドストーリーとして読み流してください。
でもなんとか広げた風呂敷たたみ込む事ができました。

ナルビク前夜に"コト"を致したかどうかは各自で脳内補完して下さい
あと、我慢できずシベ出しちまいましたとさ

ちなみにコレ書いたあとTWログインしたんですよ
したらいきなり入ってきたチームチャットの第一声が
同じクラブで同じチームの白ティチさんの


「俺超TUEEEEEEEEE━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━!!!」


でした
現実は残酷です('A`)

9028:2004/03/09(火) 10:31
>>18さん、お疲れさまでつ。

いやぁ〜、良い話でつね。
久し振りに読んだ恋愛ストーリーなので、もうニヤニヤしながら読んでますた。
自分にゃ書けない物を書ける人は尊敬の眼差しで見てしまうでつ。

……サテ,ガンバルカ.

9118:2004/03/09(火) 11:04
28氏どうもです 読むのお疲れさまでした
でもそんな大層なもんじゃないですヨ
ヌルい恋話ですんません せいぜい劣化ボー○ズ・ビーです

BGMにTWフォルダのBGM0073を聴きながら読んでくれると
雰囲気がチョットだけマシになるという糞仕様です

28氏や他の人の読みたいので ためらってる人もドンドン爆弾投下シヨウヨ


閑話休題

マキシ「イスピン、お前"餅つき大会"って、大っ嫌いだろ?」
イスピン「餅つき?なんで?」
マキシ「ペッタン…ペッタン…ペッタン…」

イスピン「【連】LV30 125%×6 」

9270:2004/03/09(火) 11:17
御疲れ様です
楽しませてもらいました(*´Д`)

少しお聞きしたい事があるのですが
18氏の作品は18と29と65-68.80-88で
28氏の作品は42-49.61で
あってますか?

9328:2004/03/09(火) 11:24
>>70さん。
えと、自分のは43〜49と61で1セットでつ。

9470:2004/03/09(火) 11:32
��
挨拶の所から入れちゃってた(;´Д`)
修正します
どうもご迷惑をおかけしました

9518:2004/03/09(火) 11:59
70氏あってますよ〜
それと実は14も俺の落書きです('A`)
作品として扱いたければご自由にどうぞん


ところでティチって

×ティチェル
○ティチエル

なんすね。後半書くまでキヅカナカッタ('A`) ヴァー

9670:2004/03/09(火) 12:15
修正しましたー
御二方協力感謝です



自分もティチェルかと思ってたヽ(`Д´)ノウワーン

9728:2004/03/09(火) 12:31
し……死にそう。

じゃなくて、新作できますた。
今回もまた>>2ネタの話でつ。
例の如く、参考の為にOPとその先のちょっとまでしかプレイしてないので、
使っている人には「○○の呼び方違う!」と怒られそうなのは仕様でつ。
誤字脱字も仕様でつ。と前置き。

98『der Wille』その1@28:2004/03/09(火) 12:53
 「ああ、いい天気だねぇ。」
 ミラは『紅い射手』号の上で伸びをした。
 アクシピターでの働きが認められ、かなり破格の違反金で事が済んだのだった。
 (しかし……最後の約束は問題じゃないよ。)
 違反金は確かに少額で済んだ。しかし、かなりの問題を見逃してもらうかわりに、最後の
任務が与えられた。それは、オルランヌの首都オルリーにティチエルを送るという事だった。
 (まぁ、それで部下も助け出せたんだからいいか。)
 「お姉さん。何見ているんですかぁ?」
 晴れ渡った空のような明るい声が背後からかけられた。
 「ん?海だよ。」
 「キラキラ光って綺麗ですねぇ〜。」
 隣に並んだティチエルは船についてくるカモメに手を振った。
 (ったく、お嬢ちゃんとこんなに付き合いが長くなるとは思わなかったよ。)
 はしゃぐティチエルを見ながら、ミラは初めて会った時を思い出していた。
 「わぁ!お姉さん、イルカさんがいますよ〜。」
 船縁に駈けていったティチエルは、振り返ってミラを呼んだ。
 「ああ、解ってるよ。」
 「え?イルカがいるの?」
 ミラの返事と同時に、そう言って駈けてきたのはイスピンであった。
 「そうなんですぅ。可愛いですよね〜。」
 「わぁ。本当に可愛いね。」
 「ったく、イルカなんてナルビクでも見たじゃないか。」
 そう言って飲み物の入ったカップを持ちながら船室から出てきたのはマキシミンだった。
 「いいじゃないか。本当に可愛いんだから。」
 イスピンはそう言ってマキシミンを船縁に連れてきた。
 (やれやれ……、騒がしいねぇ。)
 呆れたように肩を上げたミラは、予定外の客人を見た。
 ナルビクで最後の任務を言い渡された後、ナルビク港でオルリーに行く船を探していた
イスピンとマキシミンに出会ったのだった。
 ミラは少し厄介そうな二人を適当にあしらおうとしたのだが、ティチエルが素直にオルリー
行きを喋ってしまった。そして、いつも通りティチエルの泣き落しに折れて、かなり破格の
謝礼で乗せたのだった。
 「おねえさーん。一緒にイルカさんを見ましょうよ〜。」
 大きく手を振りながらティチエルがミラを呼んだ。
 (でも……賑やかなのも悪くないね。)
 ミラは手を上げて了解の合図をすると、皆のいる船縁に歩き出した。

99『der Wille』その2@28:2004/03/09(火) 12:56
 「何だって?!」
 途中で立ち寄った港町の酒場にミラの興奮した声が響いた。それに驚いた客が一斉に
ミラの方を見たが、ミラはそんな事も気にせずに酒場の親父に詰め寄った。
 「本当か?それは本当なんだな?」
 「あ、ああ。あんたの言う青いガレー船が、最近この周辺にいたよ。昨日も見たって
言ってた奴がいた。」
 (見つけた。やっと……やっとジュールの仇を……。)
 興奮の為にブルブルと震えるミラを、一緒についてきた三人は互いの顔を見合わせた。
 「どうしたんですか?」
 イスピンの質問に、ミラは振り返ると嬉しそうな表情を浮かべた。
 「やっと、ジュールを殺した仇を見つけたんだよ。これで復讐ができる。」
 イスピンとマキシミンはその言葉に何かを考えているようだった。
 「教えてくれますか?あなたの復讐の事を。」
 イスピンの言葉にミラは暫くしてから頷いた。
 「長い話だけどいいかい?実は、あたしは孤児なんだよ。」
 酒場の隅の机を囲むと、ミラはそう話を始めた。
 「お婆ちゃんが死んで誰も家族がいなくなったあたしを拾ってくれたのが、紅い射手の
前船長のジュールなのさ。」
 グラスの中に入った酒を見ながら、ミラはジュールの顔を思い出していた。
 「武器の扱い方から船の動かし方まで教えてくれたのがジュールだった。だから、
ジュールはあたしの親父も同然だった。」
 「…………。」
 「そのジュールと一緒にあたしは栄光の航路を探していた。」
 「栄光の航路?」
 マキシミンの質問にミラは頷くと一口酒を飲んだ。
 「海賊の間での伝説なんだよ。そして、あたし達は旅の途中に偶然古代遺跡を
見つけたのさ。」
 「へぇ。何かあったの?」
 「ああ。古びた箱を手にいれたよ。だけど……。」
 懐かしそうに語っていたミラの表情が一変した。
 「それを手に入れてから一ヶ月後、その箱をよこせと言ってきた奴がいた。」
 「まさか……。」
 「察しの通りだよ。それが正体不明の青いガレー船に乗った海賊だった。」
 拳を強く机に押し付け、ミラは怒りを押さえつけていた。そうでもないと、誰かに
あたってしまいそうだった。
 「そして、ジュールはその戦闘で死んだ。」
 ミラは俯くと悔しそうに机を叩いた。その衝撃でグラスの中の氷が音を立てて酒の中に
沈んだ。
 「…………。」
 イスピンとマキシミンはそんなミラにかける言葉が見つからず、黙って次の言葉を待った。
 「……あたしはジュールの後を継いで船長になると、復讐の為に青いガレー船を追い
はじめた。」
 「そして、今その仇である青いガレー船の情報があったって訳か。」
 「ああ、昨日もこの近辺で見た奴がいる。やっと手が届くところまで来たんだ。」
 マキシミンの言葉に頷いたミラは、右手を伸ばして何かを掴むように手を握りしめた。
 「もう逃がしはしない。この手で沈めてやるよ。」
 「これからそのガレー船を追うの?」
 イスピンの質問にミラは首を振った。
 「ここまで追いつめたんだ。あんた達を送ってからでも遅くはないよ。」
 ミラは口先のことではなく、本当にそう思っていた。

100『der Wille』その3@28:2004/03/09(火) 12:59
 「……ねぇ、ボク達に手伝いをさせてもらえないかな?」
 「はぁ?」
 いきなりのイスピンの言葉の意味が解らなかったのか、ミラは間抜けな声を出してしまった。
 「相手は海賊船なんでしょ。ボク達だって<シャドウ&アッシュ>の傭兵だから、手下を
片付ける手伝いはできると思う。」
 「ちょ、ちょっと待て。」
 ミラよりも先に口を出したのはマキシミンだった。
 「ボク達……って俺もかよ?」
 そう言ったマキシミンはかなり嫌そうな顔をしてた。
 「そうだよ。格安で船に乗せてもらっているんだから、手伝いくらいしてもいいじゃない。」
 「だからって……。」
 「そうだよ。これはあたし達の問題で、あんた達に迷惑かけることはできないよ。」
 今度はマキシミンの言葉を遮ってミラが言った。
 「あたしはこのお嬢ちゃんを送るついでだからOKしただけで、あんた達を雇ったわけじゃ
ない。それに、下手すりゃ死ぬんだよ。」
 「そうだ。海戦の恐さを知らないのか?」
 「そんな事恐れていたら、手伝いしたいなんて言わない!」
 強い口調のイスピンに二人は黙った。
 「ボクはミラに助けてもらった。だから、その恩返しがしたい。それじゃ理由に
ならないの?」
 「助けてって、船に乗せてオルリーに送るだけじゃない。そんなの助けたうちに
入りゃしないよ。」
 イスピンの単純な理由にミラは呆れ返ってそう言った。
 「そう?海賊に襲われる心配もないし、変な船に乗って身ぐるみ剥がされる事も無い。
こんなに快適な船が他にある?」
 「それは……。」
 ミラは口ごもった。海賊が多くなったからこそ自分達の船がナルビクで拘束されたのだし、
普通の客船を装って引っかかった馬鹿な客の身ぐるみ剥いだり、身代金を要求する事件も
良く聞いていた。
 「船員さんはみんないい人だし、料理だって美味しいわ。それを格安でなんて悪いでしょ。
だから、値切った代金分働くの。」
 「…………。」
 ミラは何と言っていいかも解らず、ジッとイスピンを見つめた。

101『der Wille』その4@28:2004/03/09(火) 13:01
 「……そうだな。最初に提示された代金分から支払った分を引いただけは働いてやるよ。」
 それまで黙っていたマキシミンはそう言って立ち上がるとミラの肩を叩いた。もう
イスピンを止められそうもないと悟ったのだった。
 「感謝しろよ。<シャドウ&アッシュ>でも腕利きの俺達だからな。」
 そう言うとマキシミンはさっさと外に歩いて行ってしまった。
 「もう!何でそんな言い方するのかな。」
 イスピンはしばらく呆気にとられていたが、急に怒りだして声を荒げた。
 「……ふふっ。」
 ミラはそんな二人の優しさが嬉しくなった。その為か、自然に笑みがこぼれていた。
 「な、何がおかしいんですか?」
 そんなミラを見て勘違いしたのか、イスピンは顔を真っ赤にして詰め寄った。
 「ボ、ボクはマキシミンの態度が……。」
 「違うんだよ。」
 クスクスと笑うミラは、必死なイスピンの肩を叩いた。
 「嬉しいんだよ。あんた達の心遣いがね。」
 ミラはそう言ってイスピンの肩に頭を乗せた。
 「ありがとう……。」
 「……どういたしまして。」
 「ふにゃ?」
 酒の飲み過ぎで途中から寝ていたティチエルが寝ぼけ眼を擦りながら顔を上げた。
 「やっと起きたのかい、お嬢ちゃん。」
 ミラはイスピンの肩から顔を上げると呆れ顔でそう言った。ティチエルは周りを見回すと、
自分の状態が把握できたのか手を打った。
 「私また寝ちゃったんですね。」
 「ったく、酒弱いくせに何で飲むのさ。」
 「だって、皆さんが美味しそうに飲むんですもの。」
 (やれやれ……。)
 いつもと同じティチエルの返事にミラはもう慣れていた。本当に何度も何度も同じ事を
繰り返してきた。その度にミラはティチエルの明るさに救われていた。
 「そういえば、私もお姉さんのお手伝いしていいですか?」
 「へ?」
 「お姉さんは海賊さんと戦うんですよね?だから、私もお手伝いします。」
 「駄目だ!」
 ミラはさすがにこれだけは許せなかった。
 「お嬢ちゃんはこの町で待機だよ。」
 「ええ〜、どうしてですか?私もお手伝いしたいです。」
 「今回だけは駄目!」
 「でもでも……。」
 「駄目ったら駄目!」
 額に青筋をたてて怒るミラの迫力に怯えてか、ティチエルの目に涙が浮かんだ。
 「お姉さん意地悪です。イスピンさんとマキシミンさんは連れて行くのに、私だけ連れて
行かないなんて……。」
 「今回はお使いみたいな楽な物じゃないんだ。下手すりゃ殺されるんだよ。そんな所に
お嬢ちゃんを連れて行ける訳ないじゃない。」
 「ぐすん……。」
 ボロボロと涙をこぼすティチエルに、イスピンはハンカチで涙を拭いてあげた。
 「今回はミラさんの言う事を聞いてあげて。ミラさんはティチエルの事を心配して
言ってくれているんだから。」
 「でもぉ……。」
 「大丈夫。ボクがティチエルの分も頑張るから。約束するよ。」
 イスピンの約束が納得できたのか、ティチエルは小さく頷いた。
 「……解りました。絶対に帰ってきて下さいね。」
 「ああ。さっさと片付けてすぐにオルリーまで送ってあげるよ。」
 ミラは明るく笑いながらティチエルと指切りをした。

102『der Wille』その5@28:2004/03/09(火) 13:04
 次の日。
 ミラ達を乗せた『紅い射手』号は教えられたポイントに向かっていた。
 「で、敵さんと遭ったらどうするんだい?」
 甲板で作戦会議をしていたマキシミンはそうミラに質問した。
 「できるだけ早いうちに決着をつけたいね。砲撃しつつ近寄って、直接敵を仕留めた方が
効率よさそうだね。」
 「じゃあ、ボク達の出番はかなり後になりそうだね。」
 「もしかしたら砲撃を手伝ってもらうかもしれないけど、うちの船員だけで十分だと思う。
それまでしっかり休んでいて。」
 「OK。じゃあ、そうさせてもらうかな。」
 マキシミンがそう言って椅子から腰を上げた時だった。
 「船長!大変ですぜ!」
 船員の怒鳴り声が船室の方から響いた。ミラ達三人は急いで船室まで走った。
 「どうしたんだい?」
 「実は……。」
 ミラ達が船室を覗き込むと、船員が指差す方にティチエルがちょこんと座っていた。
 「!」
 「えへへ。やっぱりお手伝いしたいから内緒で乗っちゃったですぅ。」
 「こ……。」
 無邪気な笑みを浮かべるティチエルに、ミラは顔を紅潮させながら近づいていった。
 「あ、ヤバい!」
 その状況の後にある情景を想像できたジケルが慌ててミラを羽交い締めにした。
 「まずいよ、お嬢!」
 「離せ、ジケル!!」
 ミラはジケルの羽交い締めを振りほどくと、ティチエルの頬を張り飛ばした。
 「この馬鹿が!何であたしがあんたを乗せなかったが解らないのよ!」
 どうしてぶたれたのか解らないティチエルは呆然とミラの顔を見上げていた。
 「あたしはね、あんたを危険な事に巻き込みたくないのよ!どうしてそれを解って
くれないの!」
 ミラは目に涙を浮かべながら怒鳴った。
 「ご……ごめんなさい。どうしても私、お姉さんの役に立ちたかったんです。」
 「あんたの気持ちは嬉しいよ。でもね、あたしはあんたが傷付くのを見たくないんだよ!!」
 「…………。」
 さすがにティチエルも自分が悪い事に気付いたようだった。
 「お願いだから、これ以上心配させないで。あんたを守れなかったら、あたしはあんたの
両親になんて詫びればいいのよ。」
 ミラは次々と溢れる涙を拭きもせずに言い続けた。
 「ごめんなさい、お姉さん。私、仲間はずれにされているんじゃないかって
思ったんです……。」
 ミラは床に跪くと、ティチエルを抱きしめた。
 「そんなわけないじゃない。大好きだから言ってるのよ。」
 「うう……。ごめんなさい、お姉さん。ごめんなさい。」
 泣きながらティチエルは謝った。そんなティチエルの涙を拭きながら、ミラは優しい顔で
頷いた。
 「解ってくれればいいんだよ。あたしもぶって悪かったね。」
 「う……うぇーん……。」
 許されて安心したのか、ティチエルは前にも増して激しく泣きはじめた。
 「あ、その……も、もう泣くんじゃないよ。」
 さすがに大泣きされるとは思ってなかったミラは、あたふたと慰めの言葉を考えたが
思い浮かばず困ったように頭を掻いた。
 「ほら、泣き止んで。お嬢ちゃんは笑ってる方が可愛いんだからさ。」
 「う……ぐすっ……。」
 ティチエルは自分のハンカチで涙を拭くと、まだ少しぎこちない笑顔を浮かべた。
 「よし、いい子だね。」
 ミラはティチエルの頭を優しく撫でると、もう一度ティチエルを抱きしめた。

103『der Wille』その6@28:2004/03/09(火) 13:06
 その時、甲高い鐘の音が連続でした。
 ミラはティチエルを抱きしめた手をほどくと、急いで立ち上がった。
 「船長!青いガレー船を見つけました!」
 船室に駆け込んできた船員の言葉を聞いて、ミラの表情が引き締まった。
 「よし。皆を甲板に急いで集めるんだよ。」
 「了解!」
 船員が飛び出して行くと、ミラは船室に残った三人に向き直った。
 「しばらくあんた達の命、あたしに預けさせてもらうよ。」
 「うん。」
 「OK。」
 「はぁい。」
 ミラの言葉に三人は同時に頷いた。
 「じゃあ、接近戦になるまで待機していて。それまではあたし達の出番だからさ。」
 「頑張れよ。」
 「無事を祈っています。」
 ミラは頷くと船室の扉に向かって歩き出した。
 「お姉さん!」
 いきなりティチエルが走ってきてミラの腕を掴んだ。
 「怪我しないでくださいね。もし怪我したら、私を呼んで下さいね。」
 「ああ、解ったよ。でも、大丈夫だから心配しないで。」
 ミラは優しく微笑むとティチエルの頭を撫でた。
 「あたし達には幸運の女神様がいるんだからね。」
 ミラはもう一度ティチエルの頭を撫でると外に飛び出した。そして、集合している皆の前に
立った。
 「いいかい、皆。ジュールの弔い合戦だ。気合い入れていくんだよ!」
 「オォー!」
 ミラの勇ましい声に呼応するように、船員達からも気合いの入った声が返ってきた。
 「よぉし。皆、持ち場につきな。ジュールを殺した奴等に、あたし達を怒らせた後悔を
させてやるんだよ!」
 「了解!!」
 船員達が持ち場に散らばると、ミラは舵の隣に立った。
 「撃てー!」
 大砲が届く位置まで接近した時、ミラのかけ声と共に大砲の爆音が鳴り響いた。
 青いガレー船の方も砲撃が始まり、鉛の玉が両船の間で飛び交った。
 「ぎゃぁ!」
 さすがに全ての砲弾を回避する事は無理で、被弾した所で悲鳴があがった。
 「くっ!」
 ミラは悔しそうに手摺に拳を叩き付けた。向こうの方が砲門の数が多い為に、こっちの方が
被害が大きかった。
 「救護班はさっさと怪我した奴の手当をするんだよ!こっちは数で劣るんだ、手数で
勝負しな!」
 「了解!」

104『der Wille』その7@28:2004/03/09(火) 13:07
 一方、船室の中で待機している三人にもミラの声は聞こえていた。
 「ちょっと押されているみたいだな。」
 冷静なマキシミンの言葉に、イスピンは悔しそうに目を細めた。
 「……そうだね。何かボク達にはできないのかな。」
 「怪我してる人がいるんですよね?」
 「ああ。」
 ティチエルはマキシミンの答えを聞くと立ち上がった。
 「私、皆さんの治療に行ってきます。」
 「ま、待ってよ。ミラさんはここにいなさいって言ってたんだよ。」
 「でも、このままじゃお姉さんの大切な人達が可哀想です。だから、私行きます。」
 ティチエルの真剣な表情に、イスピンとマキシミンは顔を見合わせて頷いた。
 「ボク達も行くよ。ティチエルだけに危ない思いをさせて、ボク達だけ中で
のんびりしていたじゃ悪いからね。」
 「まあ、俺達にできる事はやるのが普通だな。」
 二人の言葉にティチエルの表情が明るくなった。
 「じゃあ、私は怪我をした人の治療をしますね。」
 「ボクも治療にまわるよ。」
 「俺は攻撃と補助だな。二人共、砲弾に注意しろよ。」
 「うん。マキシミンも気をつけて。」
 三人は船室から飛び出すと、それぞれの持ち場に散らばった。
 「皆さん、大丈夫ですか?今、怪我を治しますね。」
 被弾した場所に着いたティチエルは、回復魔法を次々と怪我人にかけていった。
 「ティチエルさん!君は隠れてなきゃ駄目だよ。」
 ティチエルの姿を見つけたジケルがすっ飛んできて言った。
 「いいえ、私もお手伝いします。皆さんで一緒に帰りたいんです。」
 そう言うティチエルは、いつもの笑顔が消えてとても真剣な表情をしていた。その決心を
感じ取ったジケルは無言で頷くと頭を下げた。
 「解りました。お願いします。」
 「はい。任せて下さい。」
 ティチエルは頷くと、次の被弾場所に駈けていった。
 「よぉ。」
 「マキシミン?!何であんたがここにいるのよ!」
 隣に立ったマキシミンを見て、ミラは批難の声をあげた。
 「少しは役に立ちたいんだよ。出来る事をするのが俺達のやり方だからな。」
 そう言うと、マキシミンは補助魔法を船員に向けて次々と放った。
 「……!まさか、イスピンとティチエルもやってるんじゃないだろうね?」
 「その通りだよ。ちなみに、言い出したのはティチエルだからな。」
 「な、何だって!」
 ミラはマキシミンを睨みつけたが、マキシミンは反対に真剣な表情でミラを見つめた。
 「少しはあの子の気持ちも考えてやれよ。守るだけが優しさじゃないだろ?生きる為に
あの子の成長を手伝うのも、優しさなんじゃないのか?」
 「…………。」
 「あの子は強い。純粋に思う分だけ強いんだ。それを影で支えてやろうじゃないか。」
 マキシミンの言葉にミラは頷いた。
 「解ったよ。あんたもいい事言うじゃないか。」
 ミラは少し皮肉を入れて答えると、マキシミンはニヤリとした表情を浮かべた。
 「褒めても何も出ないぞ。」
 「いいよ。バリバリ働いてもらうから覚悟しな。」
 「チエッ。後で追加分もらうからな。」
 軽口を叩きながら二人は自分の仕事に集中した。

105『der Wille』その8@28:2004/03/09(火) 13:10
 接舷すると、青いガレー船の船員が乗り込んできた。
 「覚悟しな!」
 ミラは腰に吊るしていた鞭を構えると、自分に向かってきた相手を叩きのめした。
あちこちで剣の打ち合う音や怒号、悲鳴があがり、甲板は流された血で赤く染まりはじめた。
 「やっぱり数が多いね。」
 イスピンの声にミラは相手を捌きながら頷いた。
 (解ってた事とはいえ、数が多すぎる。かなり手こずりそうだね。)
 必殺技も使いながらミラは次々と敵を撃破していった。周りでも同じように必殺技を使い
イスピンやマキシミンが敵を血の海に沈めていった。
 「イヤー、来ないで下さいー!」
 ティチエルも必死に逃げながら魔法を敵に打ち込んでいた。
 「お嬢ちゃん、無理するんじゃないよ!」
 「はーい。解りましたー。」
 「ジケル!お嬢ちゃんを守るんだよ!」
 「了解!」
 それから十分後、ミラ達四人の活躍で立場は逆転していた。
 「乗り込むよ!」
 「おぉ!」
 ミラを先頭に二十人程が青いガレー船に乗り込んだ。船に残る敵はかなり数が少なく、
ミラ達は難なく船長室に辿り着いた。
 「ジュールの仇。覚悟しな!」
 ミラはドアを蹴破りながら叫んだ。部屋の中には船長らしき男の他に、数人の武装した
男しかいなかった。
 「ほう。箱を渡しにきたのか?」
 「ふざけた事言ってんじゃないよ!あたしは復讐の為に来たんだ!」
 追い詰められたというのに妙に落ち着いた男の言葉にミラは激怒した。
 「復讐なんぞ何の意味も無い。」
 「あんたに無くても、あたしには意味がある。」
 「箱をおとなしく渡せば殺しはしない。揃って魚の餌になりたくはないだろう?」
 「……く……くっくっく……。あーはっはっは……。」
 ミラは突然笑い出した。額に手をあて少し反り返りながらミラはしばらく笑い続けた。
そんなミラを見て、ティチエル達は困ったように顔を見合わせた。
 「……馬鹿な事言わないで。」
 笑いが止まり、ミラはそう言うと正面を向いて手をどけた。そこに現れた顔は、残酷な
笑みだった。
 「このミラ様がそんな脅しに屈すると思ってるの?あたしはね……。」
 高慢な態度で言うとミラは手に持った鞭で床を叩いた。
 「そういう下品な交渉は嫌いなのよ!」
 叫ぶと同時にミラが動いた。その動きは素早く、一気に船長に詰め寄った。
 「死ね!」
 そう言って鞭を船長の首に巻き付けようとしたが、ミラの攻撃は武装した男達に阻まれた。
 「くっ!」
 男達の剣をバックステップで躱しながら、ミラは一人の男の武器を叩き落とした。
 「ミラ、下がってろ!」
 マキシミンはそう叫ぶと、片手で複雑な文様を宙に描いた。すると、天井を突き破り雷が
男達の間に降りそそいだ。
 「ぎゃあぁぁ!」
 一瞬にして男達は黒焦げになって崩れ落ちた。
 「さあ、これで残るはあんただけのようだな。」
 マキシミンの言葉に船長はゆっくりと椅子から立ち上がった。

106『der Wille』その9@28:2004/03/09(火) 13:13
 静かに机の横まで移動した船長は大きく手を広げた。
 「たかが人間の分際で私にたてつくか。」
 そう言った男の顔が奇妙に歪んだ。その歪みは身体全体におよび、大きく膨れ上がって
いった。それは船室の壁を破壊し、人の死体を混ぜ合わせたような醜悪な物体になった。
 「何?!こいつ化け物だったっていうの?」
 ミラが叫んだ。いくら正体不明だったとはいえ、さすがにそこまでは予想できなかった。
 「もう許さぬ。死して後悔せよ。」
 無数に伸びた手が一斉にミラ達に振り下ろされた。間一髪で躱すと、ミラは次に
向かってきた手を鞭で叩き落とした。
 「人間じゃないなら、遠慮はしない。」
 マキシミンも自分と仲間に援護魔法をかけながら、次々と手を切り落としていった。
 「ミラさんの悲しみ、受け取りなさい!」
 正確で素早い突きを繰り出しながら、イスピンはそう叫んだ。
 「お姉さんを虐めるなんて私許せません!」
 ティチエルはいつものおっとりした時からは想像できないほど次々と魔法を本体に放った。
 ミラ達四人の攻撃で、化け物はどんどんと小さくなっていった。しかし、攻撃の激しさは
相変わらずだった。
 「ったく、これじゃきりがないよ!」
 ミラはそう叫んだ。何百と鞭を叩き込んでいるのに、敵は痛みも疲れも知らないかのように
攻撃してくる。逆に、四人の疲労はピークに達しようとしていた。
 (まだなの?これじゃ皆が持たない。)
 化け物を取り囲んで攻撃している皆を見たミラは、化け物の攻撃を察知することが
できなかった。
 「しまった!」
 そう言った時はすでに遅く、化け物の攻撃がミラの身体を引き裂いた。そのままミラは
マストの支柱まで吹っ飛ばされて叩き付けられた。
 「お姉さん!!」
 ティチエルの悲痛な叫びが船の上に響いた。
 「許せない!」
 ティチエルの周囲にいくつもの光が輝いた。その光は次々と化け物の身体を貫いた。
 「!」
 痛みを堪えて顔を上げたミラは、ティチエルの攻撃で開いた穴の中に黒く光る物を見つけた。
 (あれは!もしかしたらあいつの弱点かもしれない。)
 ミラは痛みを堪え、持っていたカードをそれに向かって投げ付けた。カードは一寸の
狂いも無く黒く光る物体に突き刺さった。
 「ガ……。」
 化け物の動きが止まった。ミラは立ち上がると化け物に向かって駆け出した。
 「これで……これで最後よ!」
 ミラの鞭が黒く光る物体を叩き割った。その瞬間、化け物の身体は空に溶けるかのように
消え去った。
 「や……やった……。」
 化け物の消滅を見届けたミラは、力尽きて甲板に倒れ込んだ。
 「お姉さん!」
 ティチエルは走ってくると、急いでミラの傷を塞ぐ為に回復魔法をかけはじめた。
しばらくすると傷は完全に塞がり、ミラは上体を起こした。
 「ありがとう、皆。これでジュールの仇を討てたよ。」
 「ざっとこんなもんかな。」
 かなり疲れた表情だが、マキシミンは笑顔で答えるとミラと握手した。
 「おめでとうございます、ミラさん。」
 ミラが回復魔法をかけられている間、心配そうに顔を覗き込んでいたイスピンも、
安心した様子で話しかけた。
 「お姉さん、大丈夫ですか?」
 まだ心配そうにしているティチエルの頭をミラは撫でた。
 「お嬢ちゃんが魔法を撃ってくれたおかげで、あいつの弱点を見つけられたよ。本当に
お嬢ちゃんは最高の運を持っているんだね。」
 「えへへ……。」
 ティチエルにもいつもの笑顔が戻り、四人はやっと戦いが終わったのだと実感したのだった。
 「さあ、船に戻りましょうか。」
 立ち上がったミラは、一緒に戦ってくれた仲間に向かって笑顔で手を差し出した。


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