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TWのシナリオについて考えてみる

49その7@28:2004/03/07(日) 12:28
 しばらくそんな膠着状態が続いた。しかし、体格と力の差
は埋められなかった。
 「はあっ!」
 力強く振り下ろされたボリスの剣が、疲れの見えたナヤト
レイの短剣を弾き飛ばした。
 「しまった!」
 「これで最後だ!」
 憎悪に飲み込まれたボリスが剣を振りかぶったの見て、ナ
ヤトレイは目を閉じた。
 「皆……ごめんね。」
 それを見たシベリンは、頭の中にナヤトレイと出会った日
が浮かんだ。あの時も、追いつめられたナヤトレイはそう呟
いて目を閉じていた。
 「やめろぉぉぉ!!」
 飛び出したシベリンは、ナヤトレイを抱きしめるようにし
てかばった。
 「何っ?!」
 あまりにも急な事で、ボリスは力を込めて振り下ろした剣
を止められなかった。
 ボリスの剣は、鎧も何もつけていないシベリンの身体を切
り裂いた。
 「な……何で?」
 ナヤトレイもボリスも、シベリンの行動が解らなかった。
 「てめーら、俺の話を聞けよ……。」
 そう言うと、シベリンはナヤトレイの肩を掴んだ。
 「レイが何を勘違いしてんだか知らねーけど、俺はレイを
捨てちゃいねーよ。」
 「だって……何週間も帰ってこなかったじゃない。」
 「ボリスが……黒衣の剣士かと思ってたんだよ。それを……
確かめる為にお前を連れて行ったら……話がまとまらないじゃ
ないか。」
 シベリンの話に、ナヤトレイはショックを受けて床に座り
込んだ。
 「ボリスも……何勘違い……してんだ。」
 「カルツの影の報告で、苗族が俺の兄を事故に見せかけて
暗殺したと……。」
 「私の一族はそんな事しない!そんなのはデタラメだ!」
 放心状態だったナヤトレイも、さすがにその話は反応して
叫んだ。
 「それに、ナヤトレイが君を暗殺する計画をたてていたと
教えられて……。」
 「……暗殺なんかしない。見捨てられたから……先に見捨て
ろって言われて、私は……。」
 「じゃあ、誰がそんな事を……?」
 そうシベリンが疑問を口にした時だった。


 「そうか。終焉を迎えるのは君だけか。」
 家のドアの所に立つ人物を見てボリスは驚いた。
 「あ、あなたは……。」
 それは、黒フードをかぶった男だった。
 「とても面白い友情ごっこを見せてもらえて楽しかったよ。」
 拍手をしながら言う男の声に、ナヤトレイは目を細めた。
 「まさか……あなた……。」
 「そうだよ。嫉妬に狂った愚かな娘。」
 フードを取ると、そこにはシベリンが探していた黒衣の剣
士がいた。
 「!!」
 「シベリン、まさかこの人が……?」
 「そうだ……。俺の……記憶を奪った奴だ。」
 黒衣の剣士はシベリンの睨みも気にせずボリスを見た。
 「手紙は受け取ってくれたようだな。どうだ、適当な身代
わりに復讐した気分は。」
 「なぜ手紙の事を……?……!」
 ボリスは懐にしまった手紙を取り出した。
 「まさか……貴様がこれを……?」
 「そうだ。その苗族の生き残りを始末してもらおうかと
思ったのだが、最後の最後で邪魔がはいったわけだ。」
 ボリスは黒衣の剣士の独白を聞いて愕然となった。
 「てめーのせいで……。み……皆を傷つけやがって……許せね
え……。」
 「これも私の復讐だ。私の復讐さえ遂げられれば、誰が死
のうとかまわん。」
 「ふ……っざけんな!」
 シベリンは側に落ちていたナヤトレイの短剣を力一杯投げ
た。しかし、手元が狂ったのか、短剣は側の柱に当たって
落ちた。
 「もう君は会う事はないだろう。さらばだ。」
 高笑いをしながら、黒衣の剣士は去って行った。
 「くそっ……。ふざけ……んな……、ふざけんなぁぁぁ!!」
 シベリンは力一杯叫んだ。その叫びは途中で旅を終わらせ
なくてはいけない悔しさもまじっていた。
 「ふ……ざけん……な……。」
 どんどんと薄れ行く意識の中で、自分と黒衣の剣士の事を
呪いながらシベリンは目を閉じた。
 「ふ……ざけ……ん……な……。」
 それがシベリンの最後であった。


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