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106『der Wille』その9@28:2004/03/09(火) 13:13
 静かに机の横まで移動した船長は大きく手を広げた。
 「たかが人間の分際で私にたてつくか。」
 そう言った男の顔が奇妙に歪んだ。その歪みは身体全体におよび、大きく膨れ上がって
いった。それは船室の壁を破壊し、人の死体を混ぜ合わせたような醜悪な物体になった。
 「何?!こいつ化け物だったっていうの?」
 ミラが叫んだ。いくら正体不明だったとはいえ、さすがにそこまでは予想できなかった。
 「もう許さぬ。死して後悔せよ。」
 無数に伸びた手が一斉にミラ達に振り下ろされた。間一髪で躱すと、ミラは次に
向かってきた手を鞭で叩き落とした。
 「人間じゃないなら、遠慮はしない。」
 マキシミンも自分と仲間に援護魔法をかけながら、次々と手を切り落としていった。
 「ミラさんの悲しみ、受け取りなさい!」
 正確で素早い突きを繰り出しながら、イスピンはそう叫んだ。
 「お姉さんを虐めるなんて私許せません!」
 ティチエルはいつものおっとりした時からは想像できないほど次々と魔法を本体に放った。
 ミラ達四人の攻撃で、化け物はどんどんと小さくなっていった。しかし、攻撃の激しさは
相変わらずだった。
 「ったく、これじゃきりがないよ!」
 ミラはそう叫んだ。何百と鞭を叩き込んでいるのに、敵は痛みも疲れも知らないかのように
攻撃してくる。逆に、四人の疲労はピークに達しようとしていた。
 (まだなの?これじゃ皆が持たない。)
 化け物を取り囲んで攻撃している皆を見たミラは、化け物の攻撃を察知することが
できなかった。
 「しまった!」
 そう言った時はすでに遅く、化け物の攻撃がミラの身体を引き裂いた。そのままミラは
マストの支柱まで吹っ飛ばされて叩き付けられた。
 「お姉さん!!」
 ティチエルの悲痛な叫びが船の上に響いた。
 「許せない!」
 ティチエルの周囲にいくつもの光が輝いた。その光は次々と化け物の身体を貫いた。
 「!」
 痛みを堪えて顔を上げたミラは、ティチエルの攻撃で開いた穴の中に黒く光る物を見つけた。
 (あれは!もしかしたらあいつの弱点かもしれない。)
 ミラは痛みを堪え、持っていたカードをそれに向かって投げ付けた。カードは一寸の
狂いも無く黒く光る物体に突き刺さった。
 「ガ……。」
 化け物の動きが止まった。ミラは立ち上がると化け物に向かって駆け出した。
 「これで……これで最後よ!」
 ミラの鞭が黒く光る物体を叩き割った。その瞬間、化け物の身体は空に溶けるかのように
消え去った。
 「や……やった……。」
 化け物の消滅を見届けたミラは、力尽きて甲板に倒れ込んだ。
 「お姉さん!」
 ティチエルは走ってくると、急いでミラの傷を塞ぐ為に回復魔法をかけはじめた。
しばらくすると傷は完全に塞がり、ミラは上体を起こした。
 「ありがとう、皆。これでジュールの仇を討てたよ。」
 「ざっとこんなもんかな。」
 かなり疲れた表情だが、マキシミンは笑顔で答えるとミラと握手した。
 「おめでとうございます、ミラさん。」
 ミラが回復魔法をかけられている間、心配そうに顔を覗き込んでいたイスピンも、
安心した様子で話しかけた。
 「お姉さん、大丈夫ですか?」
 まだ心配そうにしているティチエルの頭をミラは撫でた。
 「お嬢ちゃんが魔法を撃ってくれたおかげで、あいつの弱点を見つけられたよ。本当に
お嬢ちゃんは最高の運を持っているんだね。」
 「えへへ……。」
 ティチエルにもいつもの笑顔が戻り、四人はやっと戦いが終わったのだと実感したのだった。
 「さあ、船に戻りましょうか。」
 立ち上がったミラは、一緒に戦ってくれた仲間に向かって笑顔で手を差し出した。


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