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新・戦場スレ Part1

1 ◆tb48vtZPvI:2016/05/07(土) 11:08:38 ID:MYeZc9GQ
ということで心機一転立てました

2 ◆tb48vtZPvI:2016/05/08(日) 13:30:39 ID:BEARmQQ.
 第一話 ファースト・バトルズ


 ノイズまみれの通信がコロニー「サイラス3」の通信室へ届いた。
「……こちら共和国国防軍第9遊撃部隊。帝国軍の一部隊と交戦し、ここまで撤退した。受け入れを要求する」
 サイラス3は前線へ戦力を供給する補給網の中継地点であり、帝国には未だ知られていない基地が存在している。本来ここに救援を求めることすら適切とはいえない。
 しかし敗残兵たちは既にサイラス3の防衛圏内に入っており、この通信を無視するという常套手段は不可能となっていた。
 当然遊撃部隊の指揮官もそれを理解しており、ワープ時にジャミング措置は必要以上に施していた。
 敵は撒いた。そのはずだった。

「……来ました来ました、来ましたよっと」
 ダミー隕石に偽装していた偵察装備サイクロプスのパイロットがじっと望遠カメラに目をやりながら呟く。自戦隊とオンラインにし、無線を入れた。
「負け犬が従兄弟の巣に入りました。周辺警戒は手薄。俺らだけでも行けますぜ」
 帝国軍も決して愚かではない。この付近の宙域に共和国の基地が存在することは予想がついており、監視の目は絶えず張り付かせていたのだ。
 国防軍を追い詰め、あえて逃し、基地に追いやる。その基地がサイラス3だったのは、帝国側の僥倖といえる。あるいは執念の勝利と言うべきか。
「……先行せず味方の到着を待て? はいはいわかりましたよっと」
 コクピットの中にすっかり辟易していた偵察兵の予想よりずっと早く、味方はやってきた。攻撃が開始された。

 間もなくコロニー駐在部隊と帝国軍部隊の交戦が始まった。
 国防軍は数で押すが、練度では帝国軍が上回る。次々と撃破されてゆくスチュパリデスMK-2。
 伸び切った防御網は安々と食い破られ、戦闘はコロニー内部へと移っていった……

3 ◆h9Hr5c.eFE:2016/05/09(月) 19:45:32 ID:H3ynXwSI
「敵襲だと!? バカな、サイラス3の秘匿は完璧ではなかったのか!?」
回線越しに聞こえてくるのは、怒気を帯びた野太い男の声だった。
「どうも、敗走してきた部隊がヘマをやらかしたみたいですねぇ。情報戦の甲斐もなく、バレちゃったものかと」
モニターに大写しにされているのはガナルド・ドナール准将。近年国防軍の、引いては共和国全体の注目を集めている「フェアリー・フォース・プロジェクト」の統括責任者である。
恰幅のいい体格に白髪混じりの角刈り、色黒の髭面という風体は、およそプロジェクトの華やかさに似合うものとはいえず、多分に威圧的である。
「第5艦隊の無能どもめ…! これじゃ何のために辺鄙な民生コロニーでちまちまテストをしてきたのかわかりゃしない! 設備投資だけでいくら掛けたと思っとるんだ!」
そんな男の怒鳴り声にも眉ひとつ動かさず、ウェインライト・ウェーバー博士はほとんどモニターに背を向けるようにして、キーボードを叩き続けていた。
「ウェーバー! 今すぐシルキーを運び出せ! ワープ経路は手配してやる! あの小娘と貴様も、ぐずぐずしていないで脱出しろ!」
「無茶でしょ。帝国は港側から攻め込んできてるんですから。防衛ラインが持ちこたえてくれるのを信じて待つのが関の山かと」
「待つ? そんな僻地にすぐに救援は…」
「『オーダー』ですよ。さっき向こうから、加勢に来てくれるとの打診があったそうです」
『オーダー』。その名を耳にした途端、ドナールは目を剥いて、言葉に詰まるあまりにモゴモゴと口を動かした。
「き…貴様…! あんな連中を頼りにするなど…それでも誇り高き国防軍の科学者か!?」
「客観的に見て、我々だけじゃど〜やっても押し返せそうにないんですよ。市街地の方も荒らされ放題で、非常通路からコソコソ逃げるわけにもいかないみたいですし、ここは『正義の味方』の皆さんのご厚意に甘えましょうよ?」
深々と溜め息をつき、額を押さえて項垂れるドナール。
「何てことだ…これではますます騎士どもをつけ上がらせる結果に…!」
と、そんな彼を押し退けるようにして、モニターに横から別の人影が割り込んできた。
「市街地が襲われてるんですの?」
豊かな金髪をなびかせる、軍隊には不釣り合いともいえる妙齢の美少女だった。ドナールはぞんざいな扱いを受けたにも関わらず、恭しく自ら身を引いて、彼女にカメラの正面を開け渡す。
「そうなんですよ。どうやら民間のドックからも、何機かの機動兵器が忍び込んでるらしくて。退路を断とうって魂胆なんでしょうかねぇ」
「ふうん……」
人差し指を頬に沿えて、何やら思案し始める少女。ドナールは口を挟みこそしないが、気が気でないと言った様子でチラチラと彼女の顔色を伺っていた。
「シルキーは? 戦えて?」
「は…!?」
「まあ、機体の調整はほぼ万全ですし、有事に備えてツバサくんも搭乗させてます。でも、今現在彼女がどういう段階かは、お嬢様もご存知ですよね?」
「構わないわ、出撃準備をなさい」
「ちょちょ、ちょっ…ミレニアお嬢様、さすがにそのようなお考えは…!」
ドナールが狼狽のあまりに裏返った声を上げる。ミレニアと呼ばれた少女は目を細め、ふん、とそれを一笑に伏した。
「お節介なオーダー達には好きにさせてあげましょう。でも、今回のヒーローは決して彼らではないの」
「……! な…なるほど!」
わざとらしくポンと手を鳴らし、ドナールが頷いてみせる。
「戦禍の只中、逃げ惑う民の前に舞い降りる美しき妖精、フェアリー・フレーム……鮮烈なるデビューステージには、お誂え向きのシチュエーションでしょう?」
ウェーバーはそんな二人のやり取りを、丸眼鏡の位置を正しながら黙って見つめていた。
「…どうなっても知りませんよ、僕は」

4 ◆tb48vtZPvI:2016/05/09(月) 21:14:00 ID:faAz5A6E
 交戦より少し前!

 林立するビル街を光とするならば、路地裏は闇の部分であろう。
 新興宗教カルト。反共和国セクト。マフィア。電子物理を問わぬ違法ドラッグバイヤー、あるいはただのゴロツキ。陽の光を嫌う者たちはいつもそこにいた。
 少々スケールに関して見劣りはするが、サイラス3も例外ではない。
「ちょっとよォ、お嬢ちゃん、オチャしない?」モヒカンタテガミの馬パンクスが言った。彼が一番大柄だった。
「俺たちこう見えてもさ、ナカモチ・クランのメンバーなんだよ。ワカル?」タンクトップの豹パンクスが言った。一番暴力的アトモスフィアを発散していた。
「いいからさァ、ちょっと直結しようよォ」人工ドレッドヘアパンクスが言った。彼はヒューマンだったが明らかな違法電子ドラッグのオーバードーズであった。
 3人のパンクスの勢いに少女は困惑の表情を浮かべている。落ち着いた色のロングヘアーは、いかにも荒事に慣れていない様子だ。彼女の胸は豊満であった。
「ねェ〜、だからさァ〜、いいお店知ってるよォ? 俺たち」馬パンクスが少女に詰め寄った。顔が近い!
「ちょっとだけでいいンだよ、ちょっとだけでさァ」豹パンクスの目は充血していた。ひょっとしたら食人嗜好でもあったかも知れない。
「直結しようよォ、お願いだよォ」人工ドレッドヘアパンクスが首の後ろから生やしたケーブルを振り回した。
 清楚ロングヘアー少女のなんかが危ない! その時!
「チョットスミマセン」3人のパンクスの背後から逆光を背負った陰が声をかけた。
「アァン?俺たちはこの子と友好関係を築きたいだけなンですけど」馬パンクスは意外なボキャブラリーを披露した。
「スッゾテメッコラー!」豹パンクスが牙を剥いて凄んだ。ヤクザスラングだ、コワイ!
「何アンタ? ひょっとしてアンタもこの子と直結したいの? …横取りは良くないよねェ」人工ドレッドヘアパンクスは威圧めいてケーブルの回転数を早めた。
 陰が路地裏へ入ってきた。ハンチング帽にトレンチコート。背は高くないが、声は渋い。
「その娘、あまりお前たちに好感を抱いてはいないようだ。これ以上はやめた方がいいのでは?」
「ザッケンナコラー!」
 豹パンクスが殴りかかった。彼は宇宙ボクシングのハイスクール選手権で6位、素人を容易に殴り殺す自信がある! 彼は拳を握り締めて肉迫し「イヤーッ!」
 鋭いシャウト! その場にいる誰もが反応出来なかった。次の瞬間、豹パンクスは地面に叩きつけられたまま、完全に失神していた。
「ア…ア?」「何? 何があったの?」
「次にこうなりたいのはどちらだ? あるいは二人共か?」ハンチング帽の下で青い瞳が二人のパンクスを射抜いた。パンクスたちはしめやかに失禁した。
「「ア、アイエエエエ…」」「さっさと友達を連れて帰るがいい」「「ヨ、ヨロコンデー!」」
 パンクスが撤退したのを見送り、彼は少女の方を見た。少女の背中は既に遠ざかっていた。彼は意に介さず、再び雑踏へと消えた。

5 ◆h9Hr5c.eFE:2016/05/09(月) 21:59:28 ID:H3ynXwSI
帝国軍・飢狼軍団の手によって、サイラス3の居住区は炎に包まれていた。
多くの建造物が倒壊し、ひび割れた路面には無惨にも力尽きた人々の亡骸が転がっている。
住民たちはコロニー内に4ヵ所存在する非常シェルターへと急ぎながらも、その多くは寸断された交通網に行く手を塞がれ、避難を完了した住民は未だ全体の20%にさえ達していなかった。
中でも、工業エリアに隣接する第4シェルター近辺は最悪の状況にあった。シェルターへの入口の一つが、避難を試みていた100名以上の住民達の目の前で破壊されたのである。
彼らは複数機のサイクロプスが繰り広げる破壊活動の中、散り散りに逃げ惑う恐慌状態にあった。
「逃げろ! 逃げるんだよ! 早く!!」
「おい、道を開けろよ!!」
「どこに逃げるっていうの! 最寄りの入口だって3kmも先なのよ!? 」
「もう駄目だぁ…おしまいだぁ…!」
そして、密集した人々の頭上高く、ビルの壁面へとヒートクロスボウの矢が深々と突き刺さった。
「ひぃっ!?」
降り注ぐ瓦礫から一瞬遅れて、衝撃で屋上に据え付けられていた大型の貯水タンクが脱落。無情にも一同を目掛けて落下を始める。
「…うわあああああーっ!?」
「ぎゃああああああああ!!」
巨大な影に覆われた、その誰もが死を確信した、その時であった。

「危なーいっ!!」

不意に横合いから飛び込んできた大きな『掌』が、タンクを思いきり払い除けた。
一瞬の後、タンクは数m離れた地面に激突、恐ろしい轟音と共に破裂し、大量の水を噴き上げていた。

「……なっ……?」
「あ、あれって…!?」
「あの時…あの時式典にいたロボットだ…!」
「フェ、フェアリー・フォースが来てくれたんだ!!」

絶望的なムードから一転し、人々の間で歓声が上がる。
「ま…間に合ったぁ……」
勢い余ってビルに突っ伏しているのは、桜色に彩られた水鳥の羽根のごとき装甲に身を包んだ、可憐な少女型の機動兵器。
近頃国防軍が大々的にお披露目したフラッグシップ部隊、フェアリー・フォースの所属機『シルキー』だった。
その華美ともいえる美しいフォルムと、高らかに唱われる最新鋭機としての卓越したスペック、そして何よりパイロットが民間人からの選抜メンバーを含む美少女達であることから、共和国内で物議を醸しつつも、大いに注目を集めていた。
「…み、みなさん! お怪我はありませんか!?」
スピーカーを通して呼び掛ける。人々の返答の声はコックピットまでは届かなかったが、足下の人々の元気そうな姿に、パイロットはほっと胸を撫で下ろした。
「あちらの通りに、国防軍の方々が救助ビークルを用意してくださってます! みなさん、避難を急いでください!」
そして、シルキーは踵を返し、矢を放ったであろうサイクロプスを正面に捉えた。

間もなく、シルキーを取り巻く飢狼軍全機へと、共通回線を通じて映像通信が送られてきた。
「え…えぇっと……」
まるで決闘を所望するオーダーの戦士のごとき行いだが、そこに映っていたのは騎士でも何でもなく、艶やかな青緑色の長髪をポニーテールに纏めた、年端もいかない少女の姿だった。
「て……帝国の方々! そこまでにしてください!」
モニターの中の少女がビシッと正面を指差すポーズを取ると、シルキーも全く同時に同じ姿勢を取ってみせる。宣伝に違わない、きわめて高精度のモーショントレースシステムの賜物である。
「ここは、民間人のみなさんが平和に暮らしている場所です! こういう場所を攻撃することは、条約で禁じられてるはずなんです!」
眉を吊り上げ、険しい表情を作って必死に呼び掛ける少女だったが、垂れ目がちのつぶらな瞳とあどけない顔つき、可愛らしい声質と要領を得ない発言のために悲しいぐらい迫力がない。むしろ、飢狼たちの視線は別の場所に向かっただろう。
少女の服装は国防軍の一般的なパイロットスーツではなく、光沢のあるゴム質のハイレグレオタードのような特異なものだった。肩口から二の腕、太股から鼠径部にかけてが大胆に露出している。純白のスーツそのものもへそのラインが浮き出るほど身体にぴっちりとフィットし、顔立ちの幼さとは不釣り合いの肉感的なボディラインを顕にしていた。
加えて、目に留まる特徴は出で立ちだけではない。
「こ、ここから立ち去らずに攻撃を続けるのなら、この私が……国防軍特殊遊撃部隊フェアリー・フォース所属、シルキーのツバサ・ウィークリッドが、あなたたちを成敗しますっ!!」
彼女の耳は、横長の錘形をしていた。
それは美しい容姿共々、彼女が銀河系の希少種であり、ある分野において非常に高い価値を有する『セレニアン』である証左であった。

6 ◆tb48vtZPvI:2016/05/09(月) 22:36:31 ID:faAz5A6E
 戦場から遠く離れて、半壊したハイウェイに一つの影があった。
 ハンチング帽とトレンチコートを身につけた白ネズミ獣人だ。彼は戦火の地を見ていた。機械化なしの裸眼で、双眼鏡もなく。
 彼は懐の端末を取り出し、通信をオンにする。
「ドーモ、エミリー=サン。ジン・ミックです。常駐部隊から出撃許可が降りた。ユウセイ=サンとライオ=サンは? …そうか。では、個別に行動することとしよう。私は先行する」
 通信相手からの応答。
「そうだ。今私の手元には人型兵器はない。だが問題もない」
 ミックはコートを翻した。なんと……彼は一瞬にして蒼いイクサ装束をまとっていた!
 何故なら……ジン・ミックはニンジャ、シバラク・ニンジャの異名を持つニンジャだからだ!
 やがて背後から一台の大型バイクが走ってきた。流線型のボディに目に鮮やかな青と赤のペイントが施され、その上に意匠化された「天狗凄」の金エンブレムが輝く。シートは無人、オートジャイロだ。
「オミヤ・ファクトリー」謹製インテリジェント・アームドバイク「テングスゴイ」。
 そのスタイルは共和国国防軍制式バイクである「シュゲンザ」と共通シルエットを持っている。それも当然だ。「シュゲンザ」はこの「テングスゴイ」をコストカット&デチューンすることで作られた。
「イヤーッ!」シャウト一つ、ミックはテングスゴイに飛び乗り、今や不整路と化したハイウェイを疾走開始した。戦地へ向かって。

7 ◆HU7XfvOYA2:2016/05/09(月) 23:45:52 ID:NpbI6GtI
遡ること一刻半


「おー、ようやく着いたなぁ」
宇宙港の発着場からスーツケースを片手に一人の男性が両手を上に伸ばし固まった身体を解しつつ独り言ちた。
生まれの惑星から民間船での長い長い移動が一度終わり、このコロニーから出る共和国本星へのシャトル便に乗るべく一度一泊し、明日この港から出る最初の便を目指していたが。
「宿に行くにはまだ早いなぁ…」
腕の時計を確認するとまだ予定のチェックイン時間には早く、然りとて観光するにはちと時間が足りない。そして、問題が一つ。
「腹、減ったなぁ」
ポンと掌を腹の虫が鳴る上に重ね、到着直前から御機嫌ナナメな様子で鳴り響くそれを落ち着かせると足を嗅覚が誘う方向へ進ませる。
「(さて、こういう場合は先ずは一当てといきたい所だが…)」
普段であれば適当な露天で買い食いをしつつ、腹の虫の御機嫌を伺いながらラーメンでも…と思っていたが…。
「(困ったな、土産の菓子ばかりで…いや、焦るんじゃない。私は腹が減っているだけなんだ。今、此処で小腹を満たしてもまだ後があるんだぞ…)」
どうやら、この通りは土産品が主な商品らしい。確かに、土産にするには良い商品が多いが、腹を満たすにはチト物足りないのだ。悪くは無いが腹にドスンと来ない。
「(ン?あの店…)」
足を奥に向け進んで行くと段々土産品を販売する店が少なくなり、八百屋や薬屋、本屋など生活に関わりが多い店が段々と増えてきた。やがて、一軒の精肉店にたどり着く。
「(この店…手前は精肉店だけど、裏側は食事処になっているのか…面白いな…良し、此処にしてみよう)」
店の裏側に回り、入口の扉を開き店内に入る。扉を開くとカランコロンと扉に付いている鈴が鳴り響き、店員さんがパタパタと足音を鳴らし奥からやって来た。どうやら、一段落した時間帯なのか客は自分しか見当たらない。「いらっしゃいませ!お好きな席へどうぞ!」ニコニコと愛想の良い女性のスタッフが声をかけてくれた。お言葉に甘えてカウンターの右端へと座る、同時におしぼりとコップに入った冷えた麦茶をテーブルの上に置いてくれた。メニューを手に取り、もう片手にコップを持ち麦茶を一口…
「(うん?麦茶と少し違うな…)」
口にした味わいの違いに僅かに眉を寄せると先ほどのスタッフさんが笑顔で教えてくれた。「此方はとうきびを使ったお茶です!」…聞いた話によると時期限定で提供しているそうな。
「(とうきび茶、そういうものもあるのか!)」
麦茶とはまた違う香ばしい風味に舌鼓を打ちつつメニューに視線を走らせる。しょうが焼き定食、ロースカツ定食も悪くは無いが、此処は丼ものの定番で腹を満たそう。
「すみません、カツ丼を大盛りで。」
そして、片手を上げてスタッフさんに声をかけて注文をすると、気を使って暇潰しにスイッチを入れてくれたテレビをぼうっと見始めた。

8 ◆tb48vtZPvI:2016/05/11(水) 01:49:47 ID:afgechQo
»5
「むっ!」
「むっ!」
「むっ!」
「レオタードいいねェ…」
モニタに映し出された美少女の姿に、サイクロプス飢狼兵がにわかにいきり立った。オンラインになっていた隊長格が呆れた声で叱責する。
「私語は慎め!」
「でも隊長…あんなハクいスケ、色街のオイランでもちょっと見かけませんぜ」
「あの耳、どうやらセレニアンらしい。美女揃いで知られた種族だ。尤も数が減りすぎて銀河中で保護対象だがな」
「何その都合良さげな生き物。闇に売り飛ばしゃアいい値が付きそうだな」
「自分専用のオイランにしちまうのもよさそうだ」
「そいつはいいな!」
「だから戦闘中に発情しとる場合か貴様ら!」
「じゃあよォ、さっさとあのお嬢ちゃんを捕まえちまえばいいんだろォ?」
「グッドアイディアだぜ!」
「そうだ。戦闘後の貴様らまでは軍規も縛らん」
「隊長はどうなの?」
「浮気がバレれば妻に殺されかねんのでな」
「うわぁ、結婚怖い!」
「世知辛いねェ」
「無駄口を叩くな。さっさとやれ!」
 フォーメーションを組んで四機編隊サイクロプスがシルキーに襲いかかった!

9 ◆h9Hr5c.eFE:2016/05/11(水) 21:12:06 ID:4Fkn0jKY
(は、博士ぇ…仰られた通りにしましたけど、これからどうすれば…)
ツバサは声を殺して、ほとんど涙声で基地に控えるウェーバーに指示を仰ぐ。
人一倍プレッシャーに弱い自分が、ぶっつけ本番でここまでの段取りを行えたこと自体奇跡のように思えた。
それはひとえに、目の前で民間人が貯水タンクに潰されそうになる事故が発生したおかげかもしれない。
出撃を命じられて以降震え続けていた身体が弾かれるように動き、それを機に嘘のように震えが収まった。あとは名乗りを上げる所まで勢いで行えてしまった。
が、やはりいざ敵から注目を浴びてしまうと、ぶり返すように恐怖が込み上げてくる。
「大したもんだよツバサくん。これで奴らの注意は君へと集中した。あのサイクロプスは重装甲格闘戦仕様のDタイプだ。F装備の機動性を活かして逃げ回れば捕まりはしないよ」
(に、逃げればいいんですね! わかりました!)
「そうそう、君はオーダーが来るまで粘るだけで…って、ん…?」
ウェーバーはモニターしている各種の数値をざっと一瞥し、眉をひそめた。
「ツバサくん、まさかとは思うが、映像付きで通信をしていないかね?」
「えっ…? あ、あっ!?」
思いがけない過失に気が付き、通信モードを切り替えようとT-スキンのネックユニットに手を伸ばすツバサ。
「あのっ、どうすれば音声だけに切り替えられ…」
が、その行動はサイクロプスの急襲によって遮られてしまう。
「ひぁっ…!」
慌てて後方に跳びすさると、腰部に纏うスカートアーマーのスラスターが作動し、シルキーを素早く後退させる助けとなった。
DRESSシステム――パイロットの脳波と神経電気によって制御され、本体と高度に連携するオプション兵装。中でもF(フェンサー)装備を纏ったシルキーは、モーショントレースシステムによる鋭敏な反応と併せ、高い機動力と柔軟な動作性を発揮することができる。
もっとも、これらのシステムには致命的な弱点も存在するのだが……
「通信モードを切り替えてるような余裕はないね。適度に応戦したまえ」
「そんなぁ……」
結果的に自分の姿を敵機に中継しながら戦う事態となってしまい、多少T-スキンの露出度の高さに馴れたツバサであっても羞恥心が込み上げてくる。
しかし、今はウェーバーの言うとおり、形振り構っていられるような状況ではなかった。
「……と、とにかく、牽制しなきゃ! レーザー・ダガー!」
腰部両サイドに2本ずつマウントされた短剣の柄を、指の股に挟むようにして計4本抜き放つシルキー。美しいグリーンのビーム刃が発振する。
「行って下さいっ!」
ツバサが舞うように全身を躍動させると、シルキーは同様に水平回転しつつ、左右の手から続けざまにダガーを投擲する。
4本のダガーは風に乗るや、突如内蔵されたスラスターによって三次元的に曲がりくねる複雑な軌道を見せ、サイクロプスらを撹乱するように襲いかかる!

10 ◆tb48vtZPvI:2016/05/12(木) 23:17:52 ID:tzwpC37.
>>9
シルキーのダガー投射モーションを見てサイクロプス4機はただちに散開した。
ここまでは正しい。反応も悪く無い。だがダガーの軌道変化までは読みきれず、2本が右側の1機に突き立った。
「グワーッ!」
「ファッキン、やられた!」
「チクショウ!」
「余所見するんじゃねえ、撃ちまくれ!」
急所直撃により爆発四散する僚機を尻目に、サイクロプス残り3機はシルキーへハンドガンとグレネードによる攻撃を行った。

11 ◆h9Hr5c.eFE:2016/05/13(金) 00:32:35 ID:./Vjc0sw
>>10
「や、やった…!?」
爆散するサイクロプスを目の当たりにし、驚嘆するツバサ。
予想を超える敵機とシルキーの性能差にある種の安堵を覚えるが、数の上ではあちらの優勢は変わっておらず、手放しに喜ぶことはできない。
「囲まれないように。それだけは注意して動きたまえ」
「はいっ!」
攻撃マニューバを終えて返ってきたダガーを腰部にマウントし、シルキーは敵弾をかわしながら、背にしていたビルの奥へと回り込む。
「建物の持ち主さんには、申し訳ないけど…!」
そのままビルを盾にして射撃をやり過ごしつつ、ツバサはT-スキンのグローブに設けられた感圧コンソールを操作する。
シルキーの左前腕部に折り畳まれていたレーザー・クロスボウユニットが展開される。見た目は弩のそれを模しているが、実態は連写速度に優れたレーザーガンである。
そして、高精度の射撃管制システムにより、建物の逆側にいる敵の一機にマーカーを設定する。
「…せーのっ!」
敵の斉射が止んだ瞬間を見計らい、シルキーはビルの影から半身を乗り出し、クロスボウを連射した。
狙いを付けずとも、瞬時にFCSが射角を補正し、敵機を捉えるはずである。

12 ◆tb48vtZPvI:2016/05/13(金) 00:53:38 ID:rX7lnsXM
>>11
柔軟で軽快な機動に、サイクロプスらは一瞬シルキーを見失った。
「そこへ行った!?」
「イディオットめ! ビルの陰に隠れたんだよ!」
「グレネードで炙り出せ!」
一機がグレネードを投じようとする。そこへ飛来するレーザーの矢の雨。慌てて躱すが、レーザーの一本が手元のグレネードを貫いた。
KABOOM! 爆発が巻き起こり、サイクロプスは右腕を大破、頭部にも無視できないダメージを食らう。
「グワーッ!」
僚機の大ダメージに気づいたサイクロプスが大破機体へ駆け寄った。レーザー射界外へ大破機体を引きずりつつ、ハンドガンでシルキーへ牽制を行う。

13 ◆h9Hr5c.eFE:2016/05/13(金) 19:19:32 ID:./Vjc0sw
>>12
「よし…これなら、シミュレーション通りに…!」
再びビルの影へと身を潜めるシルキー。
再度4本のレーザー・ダガーを抜き放ち、遮蔽物の向こうでひと固まりになった敵郡に狙いを定める。
「お願いします! エリアル・ダガー!」
そして、ビルを背にしたまま前方、虚空に向かってダガーを投げ放つ。
ダガーはスラスターによって瞬時に反転し、高速で舞い飛びながら、自動追尾によって三機のサイクロプスを切り刻みに向かう。

14 ◆tb48vtZPvI:2016/05/13(金) 21:10:58 ID:rX7lnsXM
>>13
「こりゃダメだ」「えっ」「えっ」
高速飛来ダガーを見て一機は大破機体とそれを引きずる僚機を見捨てる選択をした。それは実際正解だった。ダガーの自動追尾プログラムが、行動の制限されている機体に狙いを定めたためである。
SLASHSLASHSLASH!!「「グワーッ!!」」ダガーが致命部位にヒットしサイクロプス二機は爆発四散!

更に追撃をしかけんと踏み出したシルキーの前へ新たなサイクロプス部隊が割り込んだ。
映像付き通信がシルキーのスクリーンへ強制表示される。
大写しにされたそれは見るも醜怪な生物である。
その名はガバノイド、かつて惑星セレニアを侵略し、以降長きに渡って美しきセレニアンを文字通り蹂躙し続けた忌まわしき知性体だ!
性質は獰猛にして邪悪、共和国の急進的人権派が彼らの人権保護に動いたこともあったが、結果は彼らがケバブにされた事実で十分理解できよう。
「フーンク! フーンク!」
鼻息も荒く唸りを上げるガバノイド。彼らは蛮種そのものの見た目に反して高い知性を有していた。
「お、おら、たたかいすきだ。けど、セレニアンのメスはもっとすきだ」
小さい目に明らかな好色の光を宿して告げる。「セレニアンはエサによしオイランによしっていうだ」

15 ◆tb48vtZPvI:2016/05/13(金) 21:13:31 ID:rX7lnsXM
訂正

性質は獰猛にして邪悪。共和国の急進的人権派がガバノイドの人権保護に動いたこともあったが、結果は人権派の出向者がケバブにされた事実で十分理解できよう。


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