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企画もの【バトル・ロワイアル】新・総合検討会議
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雑談、キャラクターの情報交換、
今後の展開などについての総合検討を主目的とします。
今後、物語の筋に関係のない質問等はこちらでお願いします。
規約はこちら
>>2
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(一日目 AM11:35 E−6地点 病院)
「その『目貫』という能力で君は双葉殿の首輪を破壊したというわけか…」
エーリヒさんの言葉に感嘆のため息を漏らす2人の女の子。
ちっちゃくて肌の白い巫女ちゃん・神楽と、
柔らかそうで幸薄そうなお姉さん・遙。
2人はまるで英雄でも見るみたいな眼差しで、星川を見つめてる。
ふふん。
あたしの彼氏は凄いでしょ?
だって、あいつは王子様。あたしの大事な王子様。
サイコーなヤツに決まってんじゃない!
「では…では、私たちにお力添えいただけませんでしょうか?」
「もちろん♪」
でもね。
あいつったらあたしの熱い視線に気づきもしないで、
軽薄なノリで神楽ちゃんの手を握ったり、
爽やかな笑顔を遙さんに向けたりするんだ。
「な〜に鼻の下伸ばしてんのよ」
「…やきもちはみっともないよ、双葉ちゃん?」
「誰がっ!」
どうしてあいつってばあたしにキ…… キス…… したくせに、
他の女の子の手をぎゅって握ったり、優しい瞳で見つめたりできるわけ?
好きなコがいるならその人のことしか目に入らないもんじゃないの?
少なくともあたしは…… そうだよ?
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「取り込んでいるところ申し訳ないが善は急げという、
早速だが星川君、まずは私からお願いできるかな?」
「OK」
張りのある渋い声が星川に目貫の使用を促した。
星川がわたしの手からアイスピックを持ってゆく。
手を伸ばしたあいつの唇が、こう動いてた。
ご め ん ね ♪
そして、軽くウインク。あたしにだけ伝わるように。
ちっちゃな2人だけの秘密。
やだ、もう。ドキドキするじゃない。
今のあたしの顔、絶対真っ赤だ。
こんなに照れた顔、みんなに見せらんないよ。
「少し顎をあげてもらえますか?…OK、行きますよ」
でも、星川の声が聞こえてくると目で追っちゃう。
いつものチャラい態度じゃなくて、真剣な声と顔つきをしてた。
あたしの胸がきゅんってなる。
―――カッコいい。
あたしって意地っ張りだし、素直じゃないし、あいつの前じゃ絶対言えないけどね。
心の中ではずっと思ってるんだよ?
出会ったときからずっと、ね。
あんたは王子様。
大事な大事なあたしの王子様。
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だから絶対上手くいく。
エーリヒさんや魔窟堂さんや他のみんなの首輪を解除して、
力を合わせて主催者たちをやっつけて、それぞれの故郷に帰るんだ。
だって、あいつは王子様。だから、あたしはお姫様。
そんなふたりのおはなしだから、最後はきっと「めでたしめでたし」。
日本に帰って、いつまでも2人で幸せに―――
パ ァ ン ! ! !
―――暮らしましたとさ。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
って、思ってたところだったのに。
「…ぁ………」
悪い予感なんて全然なかったのに。
「どうして……」
どうしてエーリヒさんが血まみれで倒れちゃったの?
どうして遙さんまで倒れたの?
どうして神楽ちゃんが悲痛な顔をしてるの?
どうして…… 星川が血に染まってるの……
だって、あいつは王子様だよ?
こんなことになるわけないじゃない?
これじゃまるで、星川がエーリヒさんを殺しちゃったみたいじゃない!
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時間が止まってた。
動いているのはエーリヒさんの首から流れる鮮血だけ。
「待ってください、この人は…」
時間を動かしたのは神楽ちゃんの切羽詰った声。
待ってって…… 誰に向かって?
声のするほうに目をやる。
「チッ!」
部屋に入ってきたのは、天パでセーラー服の女のコ。
神楽ちゃんとそのコが重なって。
神楽ちゃんが倒れて。
そのコは倒れる神楽ちゃんを振り返りもしないで。
足を止めなくて。
……星川に向かってる?
あれ? 今、キラッて。
あの子の手の中で光ったのは……
星川っ、後ろに女のコ!
女の子があんたの背中にキラって光る腕を伸ばしてる!
「…まずは、一人。」
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まずはひとり?
何が? 何を? 神楽ちゃんと合わせて2人じゃないの?
ちょ、ちょっと待ってよ。思考が追いつかないから。
てゆーか星川、なにひっくり返ってんの?
小柄なコに背中を軽く叩かれたくらいでだらしなくない?
「え…?」
あのコの手の光るモノが今は光ってない。
神楽ちゃんとぶつかった後で光ってたアレが、星川とぶつかったら光らなくなった。
赤く濡れてる。
どういうこと? あの赤いのってエーリヒさんの血と同じ色じゃない?
それじゃあ……
「星川ッ!?」
うそ…… やだ…… だって、あいつは王子様でしょ?
こんなあっけなく…… ありえないでしょ!!
ねえ、めでたしめでたしは!? いつまでも幸せに暮らしましたは!?
あのコ、爬虫類みたいな目でこっち見て……
来た!! あたしだ!! あたしも!?
敵、星川、血、ナイフ、神楽、老人の亡骸、ゲーム、ゲーム、ゲーム、殺人ゲーム
迫る無機質な目、ベッド、あたし、手の中の鉄砲、ゲーム、ゲーム、殺人ゲーム…………
……………………
……………
……
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=-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-=
何度思い出しても色あせない。
何度思い出しても吐き気がこみ上げる。
何度思い出しても…… あの女が許せない。
見開いた視界が赤く染まってた。
炎の赤じゃない。鮮血の赤に。あの病室の赤に。
―――来た。
思い出から滴り落ちて来た。
ドス黒い殺意の凝縮液が。
半紙に垂らした墨汁が染み込んで広がるように、
あたしの意識に殺意が染み込んで広がってゆく。
殺意はじわじわと染め上げる。
眠気を、疲労を、倦怠感を、黒く、黒く、ひたすら黒く。
うん。
もう大丈夫。もう目は醒めた。
恨みは最高の気付け薬。
諦めへと誘う声は聞こえない。
星川、もうちょっとだけ待っててね。
あんたの無念は、絶対晴らしてみせるから。
↓
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【現在位置:F−5地点 東の森・双葉の道】
【朽木双葉(№16)】
【スタンス:火災による無理心中遂行】
【所持品:呪符×7、薬草多数、自家製解毒剤×1、メス×1、
ベレッタM92F(装填数15+1×3)、カード型爆弾×1、閃光弾×1】
【備考:疲労(大)、式神たち 双葉を保護。持続時間(耐火)=8分程度】
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>>???
(二日目 PM6:26 F−5地点 東の森・双葉の道)
復讐に必要な条件ってなんだろう?
無念を晴らすってどういうことだろう?
星川が死んでからずっと断続的に、あたしはその事を考えてた。
仇の命を奪うこと?
それはもちろん必要だ。
でも、それだけじゃまだ足りない。
仇を苦しませること?
それは絶対に必要ってわけじゃないけど、あった方がいい。
だから、まだ足りない。
仇に自覚させること?
うん、これは大事。
自分がどうして死ぬのか、誰に殺されるのか。
それを理解させないまま命を奪うだけでは、消化不良もいいとこだ。
星川を殺したからあんたが殺される。因果応報。
それを思い知らせてから、殺す。
よし、あと1つ。
復讐に必要な最後の条件。
それはあいつに星川と同じ無念さを味わわせること。
あいつは死体を前に呆然とする星川を、無防備な背後から襲い、刺した。
卑怯に、無慈悲に。
あたしも死体を前に呆然とするアインを、無防備な背後から襲い、刺してやる。
卑怯に、無慈悲に。
自分がどれほど卑怯なやり方で星川を殺したのか思い知らせるために。
-
だからあたしはこの状況を作った。
状況を再現するために。
あの油断も隙も無いアインを星川みたく呆然とさせる―――
ここが一番悩ましいところだったけど、上手い具合に素敵医師がいた。
アインが唯一、執着しているらしいこいつが。
あの女と交わした言葉はそれほど多くないけれど、目を見ればわかる。
あれは、あたしと同じ目だ。あたしと同じ目で素敵医師を追っていた。
だからこいつを殺した。
殺したい相手を殺されたことに気づけば、あの女もきっと自失するから。
よし、舞台装置は整った。
血で真っ赤な病室が炎で真っ赤な森の中だ。
遙さんと神楽ちゃんが式たちだ。
エーリヒの死体が素敵医師の死体だ。
その亡骸を前に呆然と立ち尽くす星川がアインだ。
その無防備な背中を刺したアインがあたしだ。
だからあたしは攻撃に式神を使わない。
兵器化した植物をしない。
この鉄砲だって使わない。
あたしが使うのは―――メス。
この攻撃だけはあたし自身の手で刃物によって行わなければならない。
あたし自身が刺さなくちゃいけない。
それがあたしの選んだ、復讐。
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=-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-=
素敵医師の喉首にアイン必殺の包丁が鋭く突き込まれた。
既に絶命している素敵医師は包丁に勢いが削がれたものの、
四肢に力の入らないアインは素敵医師の重量を支えきれず、
包丁を手放してしまった。
仰向けに地面へ叩きつけられる素敵医師。
アインの目が足元に落ちた彼を追い―――
2歩、3歩。
後ろへとよろめいた。
そのアインの背に、炎の中から飛び出した朽木双葉が衝突した。
手には医療用のメス。
それを、彼女は突き込んだ。
双葉なりの渾身ではあったが、腰の入っていないぬるい刺突だった。
故に刃先はアインの肋骨に刃を留め、勢い余った双葉の柔い掌を
深く切りつけてしまう。
しかし双葉は、それを意に介さない。
刃を握りこんだままアインにぴったりと身を寄せると、
吐息で耳朶を愛撫するかの如く、艶かしく濡れた声で思いを吐き出した。
怒りと恨みと憎しみがたっぷり篭ったどろどろの呪詛を。
「――――いきなり後ろから刺される気持ちはどう?
星川もね、あんたにこうやって殺されたのよ?」
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たかがメスだ。
この一撃で殺せるなどとは双葉も考えていなかった。
ただ、お前が星川を殺したのだと、
卑怯にもこうして星川を背後から襲ったのだと
アインに伝わりさえすればそれで良かった。
たとえ振り返りざまの一撃で返り討ちにあったとしても、もはや悔いは無い。
双葉が命を失えば、制御を失った炎がたちまちに双葉の道を飲み込む。
アインの命は必ず奪われる。
復讐は成った。
朽木双葉は緩やかに瞼を閉じる。
(星川、今、あんたのとこ行くからね……)
双葉に達成感はなかった。
満足感も恍惚も無く、嫌悪感も後悔も無かった。
彼女の五体を包み込んでいるのは、開放感。
やっと終わった。
五体に張り詰めていた緊張が解きほぐされていくのを感じた。
今まで蓄積してきた疲労が一気に噴出するのを感じた。
ただ疲れていた。
もう眠りたかった。
その永劫の眠りがアインによって与えられるのを待っていた。
しかし―――
予測していたアインからの反撃がまるで来ない。
そのことが、一度は弛緩したはずの双葉の心と体に再び緊張を与える。
(もしかして…… あたしのメスで死んじゃった?)
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双葉の背筋を駆け昇ったのは動揺。
メスの一突きでアインが絶命したとするならば、
状況を再現するという条件については青写真以上の成果を上げたと言える。
逆に。
仇に自覚させるという条件についてはまるで達成できていない事になる。
双葉の呪詛が、アインの耳に届いていない事になる。
完璧なはずの復讐に大きな瑕疵が生じてしまう。
(目を開けて、状況を確認しなくちゃ……
でも、もし目に入ったのがアインの死体だったら……?
もう取り返しはつかないのに……)
葛藤が双葉の胸を大きく揺さぶる。
双葉の額に冷や汗が流れる。
その彼女の耳に―――
ざり。
ざり。
音が、聞こえてきた。
双葉がその短い生涯の中で、一度たりとも聞いたことの無い音が。
たまらなく不吉な響きを伴った、単調で重厚な音が。
ざり。
ざり。
音の重圧に負けて開いた双葉の瞳に映ったものは、
素敵医師の遺体に馬乗りになり、その首を切断せんと包丁を鋸の如く
挽いている、アインの姿だった。
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「なにを……」
鬼気迫る光景だった。
アインからはかつての彼女が持っていた機敏さやしなやかさが失われていた。
代わりに得ているのは緩慢さバランスの悪さ。
これがかつてファントムの2つ名で恐れられた暗殺者の姿なのか?
彼女の過去を知るものが見れば、目を疑うに違いない。
「煙で目をやられたの? 良く見なさい、アイン。
あんたが死に物狂いで追いかけてた男はもう死んでるの。
あたしが殺してあげたから」
双葉が悪寒を堪え、アインへと告げる。
アインは、無反応だった。
包丁に体重をかけて一心不乱に首を挽いている。
「もう死んでるって言ってるでしょ!!」
双葉は叫びと共にアインを蹴り飛ばす。
アインは腰砕け転がった。
糸の切れた操り人形を思わせる、無様な転がり方だった。
それでも。
ゆらぁり……
炎に不気味な影を揺らしてアインは立ち上がった。
墓場から蘇る屍鬼の如く、緩慢に、鈍重に。
双葉をその意識に捉えることなく、素敵医師の側へ。
そしてまた、首を挽く。ざり。ざり。
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哀れな双葉が膝をつく。
メスを突き込んだ時とは似て非なる、重々しい疲労感が彼女を飲み込む。
意図せぬ2種類の爆弾の炸裂。
それが閃光弾だけだったら、アインにダメージは無かっただろう。
それがカード型爆弾だけだったら、アインはダメージを軽減できただろう。
2つの要素が、この順番で、そのタイミングで、あの距離で。
全て揃ってしまったが故に。
長谷川。首。わたし。包丁。
その4つのことだけしか判らないくらい追い込まれた。
長谷川やわたしの生死も判らないくらい追い込まれた。
……ごとり。
執念が実ったか、ついに素敵医師の首は落ちた。
アインはそれを拾い上げると、大切な宝物のようにぎゅっと胸に抱きしめた。
その首の重さも、既にアインの腕の許容量を超えていたらしい。
膝立ちのアインはふらりと後ろに倒れた。
その後ろでしゃがみこんでいた双葉の胸に抱かれるように。
「アイン……」
虚ろな目で仇の名を呟く双葉。
その声にか人肌の感触にか、ともあれ、アインが反応した。
「そこに誰かいるのね……
聞いてくれるかしら……?
わたしの話を……」
双葉が息を呑み、アインを見つめる。
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=-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-=
ねえ、あなた。運命って信じるかしら?
わたしは信じるわ。
今までのすべてことがこの瞬間のために用意されていたような気がするのだもの。
きっと、わたしが今まで生きてきたのもこの日のためよ。
わたしは人を殺すために生かされていたの。
殺して、殺して、殺して、殺す。
誰かが命じるままに、誰かに与えられるままに。
ただ受け入れてただこなしたの。
受動的に、機械的に。
様々な技術を身につけたわ。
雑多な知識も学んだわ。
全ては人を効率良く、高精度で殺す為に。
誰かが命じるままに、誰かに与えられるままに。
ただ受け入れてただこなしたの。
受動的に、機械的に。
それだけしか無い人生だったわ。
いつだったかしら。
そんなわたしに転機が来て、しがらみから逃げ出したの。
その時から、人を殺すために生かされていたわたしが、
人を殺さなくても生きてゆけるわたしに変わったわ。
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それからのわたしの隣にはいつも彼がいたわ。
今はもう、上手く彼のことを思い出せないけれど、
彼はいつだってわたしの手を引いてくれたの。
だからね。
わたしは振舞ったわ。
彼が望むままに。彼の愛するままに。
ただ受け入れてただこなしたの。
受動的に、機械的に。
わたしはそういう人間だったの。
環境が変わっても、立場が変わっても。危険な時でも、平和な時でも。
誰かが指し示す方向にしか進めない人間。
機能だけを磨かれた、ヒトガタの道具。
この首はね。
そんなわたしが初めて、自分が欲しいって思ったものなの。
憎かったような気もする。
愛しかったような気もする。
悲しかったような気もする。
どうしてこれが欲しいと思ったかなんて、もう思い出せないけれど。
それでもね。
わたしはずっとこの首のことを想っていたの。
そのことだけを願っていたの。
欲しい、欲しい、あの首が欲しいって。
これでなくちゃいけない。そんな固執を抱いたのは初めてだったし、
その気持ちを理性で制御できないことも、初めてだったわ。
感情の波に揺さぶられる。眩暈がするほど鮮烈な経験よ。
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それをね。
今まで何も望まなかったわたしが望んだたった一つの物をね。
わたしは手に入れたの。
わたしの技術と
わたしの経験と
わたしの知恵を
わたし自身が
わたしの為に働かせて
わたしの為に駆使して
わたしの願いを
わたしが叶えたの
わたしの全てを、わたしだけの為に使って。
だからね、はっきりといえるわ。
わたしは、いま、しあわせよ。
=-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-=
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「……ぁぃ…、… ……ぁわ……」
アインの告白は言葉になっていなかった。
既に死しているような怪我を妄執の力によって動かしていたのだ。
その妄執が解決されれば急速に崩れてしまうことは自明だった。
「なによその顔はぁっっ!!」
一度は覇気を失っていた朽木双葉が絶叫する。
アインのうわごとは聞き取れないし、聞き取りたくもない。
なぜならアインは笑みを浮かべているから。
安らかであどけない、幸せそうな顔をしているから。
「笑うな!! そんな満ち足りた顔をするな!!
こっちを見ろ! あたしを見ろ!」
満ち足りて死ぬ―――
そんな死に様は双葉にとって完全に予想外だった。
可能性が頭に掠めもしなかった。
たとえ双葉の掲げた復讐の条件を全て満たしていたとしても、
この一手で全てがひっくり返る。全てが無駄になる。
そんな身勝手な死に様、許すものか。
双葉はアインの頬を両手で挟みこみ、自分の方向を向ける。
「あたしは双葉!! 朽木双葉っ!!
星川を、あたしの王子様をあんたが殺したから!!
あたしがあんたを殺すんだ!!」
アインの瞼がゆっくりと閉じられてゆく。
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朽木双葉は怒り狂っていた。朽木双葉は嘆き狂っていた。
暴れる2つの狂気が鬩ぎ合い、五体がバラバラになりそうなくらい軋んでいた。
「星川をっっ!! 思い出しなさいっっ!!」
思わず手が出た。平手を見舞った。
「星川っっ!」 唇を噛み締めて平手を見舞った。
「星川っっ!」 血を吐く思いで平手を見舞った。
「星川っっ!」 叫びながら平手を見舞った。
「星川っっ!」 肩をわななかせながら平手を見舞った。
「星川っっっっ!!!!!」
双葉の痛切な叫びを聞き届けたのは、神か、悪魔か。
幽冥の境に旅立ちかけていたアインの意識が呼び戻された。
アインは眩しそうな気怠そうな表情で、一度閉した瞼を開ける。
そして、焦点の合わぬ目で虚空を見つめて、つぶやいた。
「ほし…… かわ……」
「そう、星川!! あんたが奪った!!」
双葉の声が歓喜に震える。
復讐が遂に実を結ぶ。その予感に。
「……って……」
-
「…………………………何だったかしら」
誰だったかしらですら無い、それがアインの遺した最後の言葉だった。
アインの瞳から光が消え、四肢がだらりと垂れ下がる。
双葉は絶句するのみ。
その瞬間、最後の人型式神が崩れ去った。
まるでそのチャンスを待っていたのだといわんばかりの炎が、
双葉に襲い掛かった。
怒髪に炎が絡み、天を衝く。
「あえ:いrjhぱえいおあぁっっっ!!!!!」
言葉にならない絶叫を迸らせて、双葉は地面を拳で叩いた。
何度も何度も、打ち付けた。
狂奔する怒りに支配され、叫び続け、叩き続けた。
アインはその隣で静かに横たわっている。
殺されたとは到底思えない、安らかな死に顔で。
素敵医師の首を胸に抱いて。
満ち足りた思いも、深い絶望も平等に、炎は全てを飲み込んでゆく。
↓
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【№16 朽木双葉:死亡】
【№23 アイン:死亡】
―――――――――残り 8 人
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>>553-576
仮投下お疲れ様です。
だってあいつは(略の、の投下の方了解しました。
こちらはOKです。妄執レミネセンスの前でも一向に構いませんので。
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名前欄入れ忘れましたorz
「紅蓮の挙句」の方も内容に問題はないと思います。
明日か明後日の夜に6人組の小ネタをここに仮投下する予定です。
「最優先事項」等との兼ね合いができそうなら本投下も考えてます。
ぎりぎり本スレ埋められる容量だといいのですが。
「終わる長い夢」は次スレかここの投下にします。
「最優先事項」等の内容次第で、次は透子の方を予約します。
気づいたことですが、どうもアインの参戦時期はメール欄みたいですね。
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「……ちと良いかの狭霧殿?」
地獄の苦しみに悶絶して自らのバットを抑えるランス。
ふんっ。といい気味といった表情でバットを地面につけたつ狭霧。
男とてその様子に少々怯えながら魔窟堂は後ろから狭霧に話し掛けた。
「あぁ、魔窟堂さんですか」
ニコニコとしながらジジイではなく名前で呼ぶ狭霧の顔が魔窟堂や横にいるまひるたちには少々怖く感じれた。
なにしろ、ランスのハイパー兵器を破壊?した直ぐ後である。
「い、いやの、話したいことがあるんじゃが……」
魔窟堂の言葉で心の中でピクリとだけ動いた狭霧が魔窟堂の顔を覗く。
(さて、ジジイ? もしかして先ほどのことですかね? それとも探りを入れてくるのか……)
ジジイこと魔窟堂が不信感を抱いたのは先ほどのやり取りで感づいた。
このタイミングで話し掛けてくるということは、その気づいた不信感を直接か、
遠まわしか、どちらにせよぶつけてくるのか。
それとも確信を持つために探りを入れてくるのか。
騙しあいが始まりますかね? と狭霧は心の中で呟く。
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「なんでしょう?」
まずは切り出してみないことには始まらない。
魔窟堂の声にとてもランスのハイパー兵器をバットで……とは思えないほど爽やかに返事する狭霧。
その様子が余計にまひる達の顔を青く引きつらせる。
「う、うむ。……有体に言えばこれからのことにあたってなんじゃが」
「……と言いますと?」
どうやら今のところ先ほどのこととは無関係であるようだ。
尤もこの先に何があるか、狭霧は油断できないが。
「此方側の戦力・状況分析はほぼ終わったと言ってよいじゃろう。
で、これからの指針になるわけじゃが……、その前に運営者達のことについてじゃ」
「なるほど。脱出が成功するにしろ彼らとの衝突は避けれない。
これからの行動を決める前に、その為にも私達と同じように彼らの戦力と状況を分析すると言うことですね?」
「流石狭霧殿じゃ。解りが早くて助かる」
純粋にそれだけの理由で魔窟堂は話している。
それは例えかすかな不信感があったとしても、やはり知能という面においては最も狭霧が頼りになるからであろう。
ふむ。と内面で思考した狭霧は、警戒を解く。
必要以上に張れば、何処かで警戒を相手にも気づかせてしまう。
それは必要以上に不信感を煽ってしまう、と判断した。
魔窟堂の方も必要以上に勘繰れば彼女に警戒と不信感を抱かせてしまうのがわかっている。
今まで通り普通に接するべき部分ではそうしていくべきだろう、と判断し、これからのことも兼ね揃え、話題を切り出した。
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「では、順番に行きましょうか。
まずはあのザドゥという男ですね」
アソコを抑えてフーフーしてるランスと心配するユリーシャもようやく彼らの会話が耳に届く余裕を取り戻す。
「あぁ、あの野郎か……」
低い声を出しながらランスはザドゥのことを思い出す。
同じく、全ての始まりであったあの時を各々は思い出していた。
「最初の彼の立ち位置から大体想像できますが……タイプ的にも駒というよりは彼の役割はリーダーでしょうね。
恐らく頂点にどっしりと構え座り、まとめ役に立つものだと思いますが……」
「ワシもそう思う。そのためにも圧倒的強さを持つ彼なのじゃろうな……じゃが……」
「ええ、倒せないわけではありません」
あくまで倒せない『わけではない』ですけどね、と付け加わる。
タイガージョーとの打ち合い。
凄まじい攻防の果てにザドゥはタイガージョーを打ち倒し、その自らの強さを示した。
その強さは参加者を畏怖させる。
が、今この時をもってして、それは手の内を晒したという事実に他ならなかった。
「格闘家に間違いないでしょうね。それも生粋の」
「ったくこのアマ……。
格闘家なのは解るが、あいつの打撃一つで虎野郎の動きが止まったぞ?」
「何か言いましたか?」
-
狭霧に対して少々ぼやきながらもランスはあの時見えた光景の疑問を吐き出す。
彼の世界にも格闘家は存在している。
例えば、かつて世界最強と謳われたフレッチャー・モーデル……本人はもはやただのデブだったが、
その弟子は真空破のような物を出したし、ランスの良く知るヘルマンの皇子パットン・ミスナルジは、
格闘レベル2であり、武闘乱武という奥義を使える。
……周囲の認識は自爆技では有るが。
「俺様のランスアタックのように気を使ってるのは解ったんだが……あれはちと厄介だぞ?」
タイガージョーが放った奥義といい、ザドゥが使った死光掌といい、どちらも気を利用している。
同じく気を利用した必殺技を放てるランスは、全てを捉えきることは不可能だったが、彼らの気の動きを原理は解らぬが垣間見ることができた。
「ふむ、気か……。それなら恐らく。
気を相手の身体に打ち込んで相手の体の動きを止めたり、支配権を封じて自由に動かすとかかのう……。
YOU は SHOCK〜 愛で空が落ちてくる〜。というやつじゃな」
世紀末覇者達が繰り広げる漫画のテーマソングを歌いながら魔窟堂がそこから読み取った推測を重ねる。
あの時は何をしたのかどんな技か解らなかったが、気を使ってるという事実さえ解れば、無駄なオタク知識が導いてくれる。
「……触れられたらアウトってことですかね?」
歌う魔窟堂に呆れつつ狭霧が推測を尋ねる。
もし、それが事実であるなら、真正面からの戦いではほぼ無敵と言っていいだろう。
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「それはないんじゃねーかな。俺様のランスアタックもそうだが、気を整えるための時間が必要だし、この手の技は練った時間と込めた力に応じたモンになるからな。
あの時、あの野郎も気を練ってやがったのは感じ取れた。
速射性はなし、触れられたらアウトってこたないと思うぜ」
「うむ。わしもそう思う。全力全開で撃ったものがどのくらいの威力でどういう効果を出すかまでは解らぬが、
漫画のように指先一つで秘孔を押せばダウンということはなかろうて」
「なにその漫画?」
「なに世紀末覇者達の集う熱い漫画じゃよ。無事戻れたらまひる殿も読むといい。なんならワシが貸して……」
「はいはい、それはいいですから。続けましょう」
「ちょっとくらい語らせてくれてもいいじゃろう。オタクの本分は語ることに……」
さみしいのう。とさめざめという魔窟堂を横に狭霧は情報を皆の前で整理する。
ザドゥ。
格闘家であり、その実力は計り知れない。
彼の役割は、ゲーム運営実行者達のリーダー。
運営実行者達を纏めている象徴が彼なのだろう。
が、真正面からでもこのメンバーで勝つ事は可能と判断できる。
スピードにおいては魔窟堂の方が圧倒的であるし、ランスや恭也の戦闘力、まひるのトリック的な能力、
そして今はいないが知佳、更にもしアインが加われば、益々負ける要素はない。
また人間である以上、粉塵爆弾のようなトラップを防ぎきる事は不可能だろう。
しかし、ザドゥの格闘家としての戦闘力もまた達人を超えたものであり、その一撃もさることながら、
相手の動きを止める奥義も所有していると判断できる。
攻撃力は非常に高く、一撃一撃が下手をすれば致命傷に繋がる可能性もある。
真正面からぶつかれば、何人かは命を落とす可能性が高い……いや落とす方が確実だろう。
あくまで真正面から闘った場合であり、奇襲をされた場合の対処は難しいといえる。
倒すのは難しい。
しかし、方法がないわけではない。倒す方法を取れないわけでもない。
みなの指揮を高めるためにも『希望は見える』と強調する。
-
「奇襲してくるようなやつにはみえなかったけどな」
「あの手のタイプは正々堂々真正面から制裁を加えに来るタイプじゃな」
と最後にランスと魔窟堂の意見が付け加わった。
「では次に行きましょうか」
「関わった順番からいけばあの嬢ちゃんかのう……」
「それって……」
「どれだ?」
察したまひるに対して、嬢ちゃんと言われて、最初にいた三人のうちどちらであろうかと尋ねるランス。
「御陵透子……警告者の方じゃな」
「おー、あのねーちゃんか」
んむ、あのねーちゃんも中々えがった。とランスはニヤケタ顔で思い出す。
警告を喰らったことより彼の中ではいい女という印象の方が強い。
「「…………」」
その様子をジト目で見る狭霧とまひる。
狭霧は重要な情報なのにと呆れつつ、まひるはこの人は相変わらずだなぁと苦笑しながら。
-
「まず共通している事は、神出鬼没。恐らく何らかの移動能力を持ってるのじゃろう。
次にどうやら初期の頃からゲームに消極的なもの、反抗的なものや行為を取るものに警告を加えていたようじゃな」
「……何というか得体の知れない不気味な感じでしたね」
「でも攻撃的じゃなかったよね……」
「総合するとその移動能力を持って警告と監視をするのが彼女の役割じゃろうな」
事実、病院では透子の警告の後に狭霧達は襲われている。
ランスは、その後にケイブリスの襲撃を受けている。
透子の役目は警告者に徹するものだろう。と彼らは判断する。
「戦力としては不明じゃな……あの神出鬼没な移動能力は厄介じゃが」
故に不気味である。
ザドゥやケイブリスのように見るものを畏怖させるような『強い』という感じはないが、
先ほど、狭霧が言ったように何かを隠してるような不気味さがある。
「実際に戦闘になってみないと解らんが、知佳殿やまひる殿のように特殊能力的な何かを使うタイプかのう……」
「直接戦うタイプではなさそうですからね……。ま、現状ではこのくらいでしょう」
「では次じゃな……」
「包帯ぐるぐる男ですか?」
「んむ……嫌な声をしとった」
あまり思い出したくない、語りたくないといった風に魔窟堂が口篭もりつつ語る。
狭霧の方も遺作に捕まった時に少々の事は聞いていたし、因縁のある物が多い相手である。
「トリックスター……と言ったところかの」
-
素敵医師の行なったことは、ゲームを加速させること。
薬と話術を用いて、遺作のようなゲームに乗っているものにはサポートを。
遥やアインのような消極的なものには薬を用いて混乱を。
彼らの知らぬ所では藍にグレン達にと様々な手を用いて接触し、混乱させている。
最もどれも破滅していく様を見るのが素敵医師は好きだったのだが。
先に出た透子のような警告者とは違い、直接手を下す実行者的な役割だろう。
「私は一番警戒するタイプだと思いますけどね」
狭霧は考えた結果を口出す。
遺作のことからも愉快犯的な一面があるのが読み取れる。
また策を講じてあれやこれやと此方を引っ掻き回すようなこともしてくるのが遥の件から読み取れる。
ザドゥと違って奇襲も遠慮なくしてくるだろう。
罠も仕掛けてくるだろう。
この状態なら、もしかしたら交渉も持ちかけてくるかもしれない。
この島において最も注意せねばならぬ人物であると彼女は踏む。
「実行犯であることとアイン殿が追いかけてることからも戦闘力も備えてると見た方が良さそうじゃな」
「本質的には裏をかくタイプでしょうけどね」
「そういえばおっぱい娘は俺様達しか出会ってないのか?」
カモミール・芹沢、といってもランス達の前で名乗ったわけではないのでおっぱい娘である。
ちなみに彼女の襲撃でグレンが死に、解除装置を受け取った、ということにランスはしていた。
ばれたらまずいと思い、この輪の中にいる内に浅はかな行動に反省はしつつも、反面「嘘はついてない」とランスは思っている。
確かに彼女の襲撃でグレンが死んだのは事実である。
トドメを刺したのがランスであっただけで。
-
「改めて聞くがどんな感じでしたか?」
「あのおっぱいは兵器だな。うむ、一戦お手合わせしたかったぞ、ガハハハハハ」
「ランス様、そういうことではなくて……」
「ん、ああ。チューリップみたいな大砲を使ってたな。あれは少々厄介だな。
帯剣もしてたが恭也のやつの方が強いと俺様は思うぞ……だが」
「だが……どうしました?」
「グレンのやつに左腕をすっぽり切られた」
「「「「え?」」」
一同の声が重なる。
もしかしたらグレンの最後の力で倒されたのだろうか?
と少しだけ期待しつつ。
「斬られた手に握ってた刀だけもって逃走しやがった。
左腕も置きっぱなしだったし、出血も凄かったし、あの様子じゃ長くないと思うぞ」
実際には斬られた左腕は、斬られた所が素敵医師の薬の副作用で硬質化、更に少しずつ異形化している。
「グレン殿……」
その光景を目に浮かべ魔窟堂がぐっと目を堪える。
「まぁ、処置を施されれば生きてる可能性はありますね。
ですが、戦力としては使えたとしても大幅にダウンしてるでしょう」
「ふむ。では要注意人物ではないじゃろうな」
「……向こうに反則的な回復手段がないことが前提ですけどね」
-
しかし、戦闘手段は大砲で砲撃し、接近戦は剣士として戦うというスタイルだろうことがわかる。
その実力も厄介であるには違いないが、ザドゥ程のような強大なものでもないのがランスの言からも取れる。
素敵医師と違って純粋な歩兵が彼女の役目であると狭霧たちは判断した。
「では、あの巨大な化け物についてじゃが……」
「ケイブリスの野郎か……。強いぞ」
「ワシも姿を見たが、あれを相手にするのは骨が折れそうじゃな」
ケイブリス。
純粋な破壊力ならザドゥ以上であろう。
何より、あの体格が脅威である。
人の身のザドゥと違い、致命傷を与えるのが難しければ、接近戦なら六本の腕と八本の触手の猛攻を掻い潜って攻撃を与えねばならない。
更にランスから聞き及んだ限り、ザドゥと違って奇襲もしてくる可能性が高い。
勿論、巨体である故に目立ちやすい上に大きさから来る立ち回りの不利があるのは間違いない。
が、それを有り余って補う圧倒的な暴力。
奇襲するにしても人間であるザドゥと違って耐久力も防御力も与えなければいけない範囲も桁違いである。
ザドゥの時で述べたような粉塵爆弾等では目くらまし程度の効果しかない可能性もある。
もし戦うことになったら単体では最も一同が警戒せねばならぬ相手。
「できるなら真正面からは戦いたくない相手じゃのう」
「流石の俺様も武器なしじゃ真正面はきついぞ」
「その辺は最悪、恭也さんと魔窟堂さんに前線を期待するしかないですね……。まひるさんでは機動力という面で向いてないでしょうから」
「ご、ごめんなさい」
「後方支援として期待してますよ?」
「が、頑張ります」
-
果たしてそんな化け物相手に自分が役に立てるのだろうか。
いや、やらなければいけないのだ。とまひるは自分に言い聞かせる。
「良きかな良きかな」
と魔窟堂はそのやり取りを見て「努力、友情、勝利はいいのう」と頷いていた。
「ジジイは、その加速装置で相手の撹乱ということで……」
と狭霧は突っ込むようにぼそりと言った。
(ザドゥとケイブリスに対しての理想は奇襲から短時間で仕留める。もしくはトラップにはめる。ですかね……)
かつて。
狭霧があちこちに仕掛け、参加者がかかってくれれば良しであった時と違い、
今度は特定の相手のために罠を仕掛けなければいけない。
今どこにいるか解らない上に次に出会うと限らないケイブリスとザドゥを対象にしたトラップを
連れ込むための場所を用意して仕掛けるというのは現実的に無駄が多い。
彼ら以外が引っかかってもそれはそれで有効なこともあるだろうが、
苦労して仕掛けた切り札をなくしてしまうのは惜しいし、参加者がかかる可能性もある。
ならば、二人以外にも有効なトラップでもいいし即席的なトラップでもいいが、
そうなると煙幕等の小細工的な手段になるだろうか。
奇襲するなら、トラップなら、役立つアイテムを作って用意するとしたらどんな方法がいいか、と狭霧はあれやこれやと考え始める。
-
「各々の対処は、後々臨機応変にしていくとしてじゃ。あと一人じゃな……」
思考しはじめた狭霧を見て、「狭霧殿らしいのう」と言いながら魔窟堂が最後の一人について切り出す。
「正確には何機いるのかわかりませんがね」
「……病院で私達を襲ってきたあの……人?」
「改めて聞く限りでは完全なアンドロイド……で間違いないかの?」
「えぇ、恐らく司令塔である本体は本拠地にいて、そこから遠隔操作で分体を操作しているんだと思いますけどね」
「……まだ駒はあると思うか?」
「断言はできませんが……もし今後のことを考えるのなら、少なくても繰り出してきた数と同数以上、6体前後は最低でも残してる可能性がありますね」
放送の声が彼女であったことからも本体が残ってるのも解る。
「特徴は……」
警告者である透子、早々に舞台へ登場した素敵医師とカモミール芹沢。
それに対して智機が出てきたのは首輪解除後である。
「運営側の最終防衛ラインを担ってる者と言ったところですか」
「あとは、機械歩兵として可能な技術は詰め込めると見てよいじゃろう……」
一度に同時並行で操れる数は解らないが、各々の機体を別々の指示で繰り出す事が出きるだろう。
戦闘方法といった細かい部分はあらかじめ組み込まれたプログラムによってオート化されているのだろうが、
アレを使え、ココは引け、等と言った指示は有効と判断できる。
-
「6か……」
全てを上げ終えたところで魔窟堂がその数を呟く。
「……まだいたりするのかな?」
最初に出会った五人とは別に現われたケイブリス。
そのこともあるともしかしたら、まだ出ていないだけで他にもいるのかもしれない。
他の皆も一度は思った疑問をまひるはこの場にぶつけてみた。
「難しい話じゃな……。じゃが、戦闘員はほぼいないと断言しても良かろう」
「同感ですね」
「え、え、どうして?」
魔窟堂の返答に対して当然といったように返事をする狭霧。
それを見てまひるがクエスチョンマークを浮かべる。
「単純なこった。今俺様達がゆったりしてられる。それが事実だろ?」
挟むようにしてランスが横から答えた。
「まぁ、ランス殿の言う通りじゃな」
「まひるさん、今首輪をつけている参加者は後何人いると思います?」
疑問に対して狭霧は疑問に答えた。
「え、えーっと……ここに6人いて、あとアインさんでしょ……。
あっ!」
-
数え出してまひるはピンと来た。
「そうじゃ、恐らく2人か、3人もいればいい方じゃろう」
「つまり、あちらも全力で此方を潰しにこなくてはいけない……はずなんですよ」
「その状況下で俺達は襲われてない……それが事実だ」
一呼吸つくと魔窟堂が状況整理とばかりに語りだす。
「まず純粋にザドゥと名乗る男はトップじゃ。
トップが軽軽しく動いてはならぬのが組織の定めであり、そのために各々の役割を持った執行者がおる。
この男が前線に出てくるのは、まず余程のことがない限りありえないじゃろう」
「もしかしたらワシラが知らないだけで、今までも、今もどこかに出動してる可能性もあるかもしれんがの」
とだけ魔窟堂は付け加え、
「ありえねさそうだけどなー」とランスが応答する。
「では消去法で行きましょう。次はけったくそわるいと評判の包帯男ですが……」
「アインさんが追いかけてる人……だよね?」
「そうじゃ。今まで此方に来る素振りもないということは、おそらくアイン殿が追跡してるおかげじゃな」
素敵医師がまだ単独で動いてるのかは解らないが、此方に来るには、アインの手を振り切る必要がある。
しかし、その名を知られたファントム。
出し抜くには困難をきっするのは間違いないであろう。
もし他の駒をぶつけたとしたらそれも可能だろうが、それなら今だ此方に来ていないのが気にかかる。
「他にも怪我をしたか、アイン殿の手によって既に亡くなっているか、残る少ない参加者の方に加担しにいったかは解らぬが、
ここまで放置されている以上は、現在手が空いていないと見てよいじゃろう」
-
「手が空いてないと言えば、残りの三名も大なり小なり同じでしょうからね」
「まず陣羽織のお嬢ちゃんじゃが、ランス殿からの情報によれば、そうそう前線復帰はできんじゃろう。
勿論、あれから大分時間も経っとるので既に治療されている可能性もなきにしにあらず、じゃから今後はわからんがな……」
片腕となったカモミール芹沢。
「……ケイブリスの野郎もダメージは負ったはずだからな」
中の両腕と鎧の背を破壊されたケイブリス。
「此方も全滅させましたからね……」
病院で破壊した6機。
今までの彼らの行動は無駄ではない。
勿論、カモミール芹沢やケイブリスのように戦力を戻しつつあるものもいるが、
少しずつではあるが彼らは着実に運営陣たちにダメージを与えていた。
「つまり、もし他にも人員がいたり余裕があるのだとしたら、それを此方に必ず割いてくるはずじゃ。
故に余裕がない可能性の方が高いじゃろう」
「ただ非戦闘員……。まぁ例えば彼らの食事を用意する係りとか掃除係とか……半分冗談ですが、雑用のための人員はいるかもしれません」
「これらから恐らく向こうは今戦力を割く余裕がない、と見ることができる。
そして次に来る時は必勝を来してくるじゃろう」
「前も言いましたが、そのために準備を整えてる……未だ整っておらずと言ったところですかね」
-
ふぅ、と一息つくと「しかし」と狭霧は言葉を再開する。
「ただ一つ気になるとしたら……」
「うむ。戦力はある……しかし、あちらさんの方か、それともここにいない参加者達の方で何かあったか……」
「こっちにかかれないようなことが起きたか、ってことか」
あちら側が、現在此方に手を割くことができないような重大な何かが起きたとした場合である。
戦力も余裕も十分にあった。
しかし、そのせいで此方に来る事が未だできないということである。
「それの懸念材料が今回の放送ですね」
「死者がいなかったことですか?」
此方にとっては喜ばしいことでしたけど、とユリーシャは言った。
「いや、時間の方じゃな」
が、即座に否定の発言が出る。
「ええ、今までぴったりと時間通りに行なわれていたはずの放送が今回に限って6分ですが遅れた」
「たかが数分と思うかもしれんが、少なくともその時何かがあったのは間違いない」
「果たしてそれが何であるのかは解りません……。しかし今現在私達が全く放置されたまま。
先ほどまで出払っていた魔窟堂さんの方にも何も有りませんでした」
「それらと放送遅れが因果関係が全くないとは思えぬ」
「例えば、あの機械兵の軍団ですが……。
もし私達を殲滅できるほど、または兵糧攻めできるほどにストックがあるのだとしたら、既に投入しているはずです。
けど、実際には何も起きていない」
「繰り返しになるが、ストックはあるが手が空いていないかストックに余裕がないか、だな」
-
事実、智機のストックはもう無駄にできない地点まで追い込まれている。
まずアズライト・鬼作・しおりの一件で80体以上を失い、次に病院での戦闘で戦闘特化させたはずの6体を失った。
その時点ではまだ余裕があり、狭霧の懸念したように今度は本気での追撃を行なおうとしたが、
19体を破壊され、とうとう追い込まれた。
挙句の果てには透子の手により二機破壊されている。
本拠地の防衛、管制室の防衛を割くのは最終手段であり、それを除けば智機が総力を尽くせるのは後一回が限度とまで来ていた。
尤も、現在彼女の分機はそれどころではないのだが……。
「わしらが放置されたまま、その上での放送の遅れ。
全く関連性がないとも思えぬ……」
「これ以上は完全に読めない推測になるので何ともいえませんけどね」
と狭霧が一旦締めくくる。
小屋の外で見張りに立つ恭也の額に汗が走る。
少し前から東の方でオレンジ色の光が浮かび上がっていた。
恭也が気づいたのは少し前。
何事かと思いつつ其方からも目を離さなかった恭也であったが、直ぐにそれが何であるかに気づく。
焦げた臭い。
上空に立ち上る巨大な煙の雲。
火の粉が飛び散る様がここからでも良く解る。
森が燃えている……それも大規模な火災。
-
燃えているのは、彼らがいる西の森ではなく東にあった群生の森である。
しかし、ここからでも鼻を燻る臭いが感じ取れる。
病院や学校、東の森の近くの建築物はまず壊滅的だろう。
あの勢いがこのまま続けば、風に流れ、こちらの群生の森まで飛び火する可能性がある。
(これはまずい)
直ぐさま、小屋のみんなに知らせて相談をした方がいいだろう。
しかし、全員外に一斉に出すわけにはいかない。
まずはリーダー格として主導を握る魔窟堂と狭霧の二人に見て貰うか。
そう判断した恭也は扉を背にし、「魔窟堂さん、狭霧さん」と声をかけながらトントンとノックをして開けた。
「あ、恭也さん。どうしたんですか?」
あいつらも飯食うなら食中毒でも起こしたんじゃないか、とランスが言ったり。
そんなことありますか、と狭霧が否定しつつ。
まぁないとも言えんがのう、と魔窟堂が頭を捻らせ。
機械がどうして食中毒を起こしますかこのジジイ、と狭霧が魔窟堂の頭を叩き。
あれではないか、これでもないか、と現在ある情報を元に推測を重ねている所に開かれた扉と呼び声にまひるが答える。
「魔窟堂さんと狭霧さん、少し来てもらえませんか?」
此方に身体を半分向け、中にいる二人に向かって恭也は催促する。
-
「む? 何事じゃ?」
「……何かありましたか?」
「むっ?」
「?」
空気が打って変わって変わった。
恭也の声にただならぬ事態が起きたのではと中にいる各々は思う。
敵か? いや敵ならこんな余裕はないはずである。
では、一体なんであろうか。
緊張が走る中、次に恭也の口から出た事実は想像以上の衝撃をもたらす。
「……向こうの森が燃えているんです。
多分、こっちまで火が移ってきそうな勢いで」
「「「「「え」」」」」
驚きの声を上げる五人をよそに恭也が続ける。
「詳しい状況は見てもらった方が解りやすいので……」
「ぬぅ……。すまんが一度に全員出ると万が一の可能性もある。
ランス殿、ユリーシャ殿とまひる殿を頼めるかの?」
「む、がはははは。そういうことなら任せておけ」
「おいどういうことだ」と言っていたランスだが、女性二人?を任せられると機嫌よく引き受ける。
-
「では、まひるさん、ランスさん、ユリーシャさん、少し見てきますね」
そうして恭也に連れられ、魔窟堂と狭霧の二人は小屋の外に出ていく。
そして
「こ、これは……!?」
「本当に森が燃えている……」
ボウボウとした音がまるで耳に聞こえてくるかのような赤い世界。
瞳をオレンジ色が覆い、夕焼けのような空が広がる。
「恭也度のこれは何時頃から?」
「最初に光が上がったのに気づいたのは放送の少し前です。
何だろうと思ったんですが、直ぐに消えるかとも思ったら、それどころか……」
「もしや……」
「えぇ、可能性は0ではありませんね」
「うむ。時間的にも一致する。
恐らく火災だけではあるまい、あそこでわしが見過ごした何かが起きているかもしれん」
「……どういうことです?」
狭霧と魔窟堂の相槌を見た恭也が何の話かと尋ねる。
「うむ、実はの……」
ひとまず整理した運営組の詳細はおいておき、二人は先程まで小屋の中で運営組に関しての情報整理をしていたことを簡潔に述べると
首輪をつけた参加者が数少ない状況で未だ自分達が放置されてる理由、どうして放送が遅れたかの疑問、などを答えていく。
-
「なるほど……」
「どう思う狭霧殿? 安全を取って移動をするにこしたことはないが……」
「……もしこれが結びつくのなら、打って出るチャンスでしょうね。
しかし……」
安全の為にも移動はした方が良いだろう。
炎をやり過ごすなら西の海方面である。
打って出るのならば始まりの地であった学校であろうか。
しかし、この炎の勢いでは学校は、今いる森より早く火が飛び移り燃えるだろう。
どうするべきか、と恭也を交え二人は考え込む。
一方、小屋の中に残された三人。
「赤い光……大丈夫でしょうか?」
「がはははは、大丈夫だ。いざとなったら海にでも飛び込めばいい」
「あたしは寒いのは嫌だなぁ……」
良く見れば、小屋の窓からもオレンジ色の光が少々垣間見ることができる。
窓越しに見える光を見ておののくまひるとユリーシャだが、外で実物を見たらもっと驚くだろう。
「―――ッ!?」
「「ランスさん・様?」」
二人を元気付けるかのごとく笑っていたランスの雰囲気が変わる。
-
「ど、どうしたの、ランスさん?」
「三人の気配がここからでも解るくらいになった」
急に本気の顔になったランスを見たまひるは意外性もあり、何事かと驚く。
「誰か……よろしくねぇやつが来た」
小屋越しにぴりぴりとした空気をランスは感じ取る。
外にいる三人のものだ。
きっかけは急に恭也の気が緊張して膨れ上がったことだった。
変哲もなかった空気が小屋の中にいても解るほど。
恐らく恭也の方も、気を高めることによってランスに気づかせる意味合いも含んでいるのだろう。
「ユリーシャ、まひるちゃん、気を入れておけよ……」
ケイブリスなら一発で解る。
ザドゥでも同じだ。
あの強烈な気は臨戦体制に入っているのなら気づかぬはずがない。
表の三人の気配が変わった以上、何物かが気づかれるように来た線が濃厚である。
しかし、凝らすようにして気配を探ってもザドゥやケイブリスのような空気を感じ取れない。
(何が来やがった? 参加者か? それとも運営の野郎どもか?)
-
「あぁ、ようやく見つかった」
一人分の足音が三人の耳に聞こえる。
ザッザッザッとした重い足音。
ゆっくりと少しずつ小屋へと近づいてくる。
「恭也さん、魔窟堂さん……」
狭霧の声に応じかのごとく、三人の体を支える足に力が入る。
「動員中による不幸中の幸いといったところか」
オレンジ色の空を背景にして現われるシルエット。
狭霧と恭也には見覚えのある形。
「そう身構えないでくれ。今回は君達と戦うつもりは一切ない」
忘れるはずもない。
細部こそ違うが自分達の命を狙いに来た刺客と良く似た形。
「勿論、ゲームに参加しろと警告を発しに来たわけでもない」
-
露わになる頭部を見て二人は確信し、二人に向いた魔窟堂の目に頷く。
「純粋に頼みたいことがあって交渉をしにきたのだよ」
魔窟堂の体に力が入る、いざとなれば即座に加速装置を発動できるように。
恭也の身体がゆっくりと構えを取る、いざとなれば奥義を発動できるように。
「―――話くらいは聞いてもらえないか?」
両手を上に挙げ、非戦の意思を示した智機が彼らの前に現われた。
-
大変お待たせしました。
それぞれの持ってる運営陣の情報に見落としはないと思いますが(そのために何度も読み直しましたが……)
穴やミスがあったら遠慮なく教えて下さい。
智機の残機数と現状も「最優先事項」にあわせておきました。
>尤も、現在彼女の分機はそれどころではないのだが……。
なら大丈夫と思いますが、どうでしょうか?
今晩、ちょっと帰ってくるのが不可能なので土曜に確認後、早ければ土曜夜にOKが取れ次第投下します。
後編はそんなに長くない+既にある程度できているので時間が取れれば水曜には仮投下できるかと思います。
>「紅蓮の挙句」
>「だって、あいつは(略」
こちらも内容に問題ないと思います。
-
>>579-603
仮投下お疲れ様でした。待った甲斐がありました。
おお思わぬ展開!そして久々に魔窟堂が活躍してていい。
特に問題はないと思います。
おかげさまでこちらも色々アイデアが浮かんできました。
使うとしても、まだ先の方ですが。
こちらの小ネタ仮投下は夜の12時過ぎになります。
「最優先事項」を確認次第、次の予約をどうするか月曜日くらいまでに決めます。
-
>>603
お疲れさまです。
内容に問題はないと思います。
「だって、あいつは(略」に対する返答が頂けましたので、
これより本スレに投下致します。
7〜8KB程度なので、次スレのアナウンスを加えたとしても
DAT落ちにはならないと思います。
-
>>604
書き込みの前にリロードしなかったので、無視するような形になってしまいました。
申し訳ないです。
小ネタの仮投下が終了次第、「最優先事項」の仮投下を行いたいと思います。
-
(二日目 PM1:55 病院内)
――見つけたそれはその場に似つかわしくないものだった。
使える衣服がないかとロッカーを物色してた時、それを見つけた。
ここどこだっけ?と疑念が頭をよぎった。
まさかと思い、それを手にとって恐る恐る臭いを嗅いで見る。
服の臭いしかしなかった事に安堵する。
あたしって下品と、心の中で呟きながら、鼻歌を歌いながら選んだ服をデイバックに詰めた。
部屋から出ようとした時、もう一度『それ』を見た。
不自然さに思わず眉をひそめる。
しばし『それ』を見つめると、手に取って折りたたみ、ビニールに入れてデイパックに入れ、
すぐさま部屋を出た。
□ ■ □ ■
「駄目です」
地図に載っている小屋に行きたいというまひるの提案は、紗霧によってあっさり却下された。
当のまひるを含む何人かは『何で』と言いたげな表情をしている。
紗霧は両目をつむりながら疑問に答える。
「此処に行った所で良くて誰もいないか、悪ければあのロボットが待機してる可能性があります。
もし主催が私達の居場所を把握していない場合は、向こうに好機を与えることになってしまうんですよ?」
「うーん……」
大体予想通りの返答ではあったが、叱られてるようで何か居心地が悪い。
少々ではあるがまひるの表情には落胆の混ざった困惑が浮かんでいた。
「何か在るとしても遺体でしょうね。彼らの支給品も使い物にならないものになっているか、
持ち去られてるかの何れかでしょうし」
-
と紗霧は言う、心の中で迂闊な参加者のと付け加えて。
狭い建物かつ森の中にある最初から所在の知れた小屋など
殺人鬼にとって格好の狩場になりかねない。
「うーん、死体あるなら、その人を弔ってやりたいんだけど」
「……首輪の事を忘れてませんか?」
紗霧は自らの首を親指で指す。
「あの首輪は解除されても、向こう側に色々と解るものなのですか?」
股間のハイパー兵器を押さえながら悶絶してるランスを看病しながらユリーシャは言った。
「それは解りません。ですが用心に越した事はありません」
対人レーダーを使用すれば、確認は可能かもしれないがそれくらいの事で機械停止のリスクを
紗霧は背負いたくなかった。
実際は解除後に探知機等は機能しないのだが、それを知る時間と道具は彼女らにはなかった。
その事を知っていたら、紗霧は罠の材料等に活用していたことだろう。
「う〜ん…………じゃ、諦める」
渋々まひるが返答したのを受けて紗霧は視線を外そうとする。
が、がさごそと物音がまひるの方から聞こえたので再びそちらの方に目を向けた。
「………………何ですかそれは?」
「あたしもこれ見た時はそう思ったよ」
「それって……」
まひるはそれの両端を掴んで全体像をみんなに見せていた。
ユリーシャとランスはそれを――それと同じものをよく目にしていた。
-
「まひる殿……何を……」
魔窟堂も結構目にしている、その為か心なしか声色は弾んでいた。
紗霧は半眼でしばし考え込み、彼女なりにややドスを利かせたつもりで言う。
「本題はこれですか? で、貴女はこれを何処から手に入れたんですか?」
「病院」
表情だけはにこやかに、内心では機嫌悪い時にやばかったかなと後悔しながらまひるは返答する。
「何で病院にこれがあるんですか? 変な趣味をお持ちの方が使ってたとでも言うつもりですか?」
「まったくの新品みたい」
このゲームの参加者の中にそういう格好をしてるのは何人かいた。
デザインは多少異なっているが。
「支給品かな?」
恭也が言う。
これまでに一行は死んだ参加者のデイパック――支給品一式を2つ回収している。
それらの一つと彼は思ったのだ。
「ロッカーに入ってたよ。なぜか」
「そんな得体の知れないものは捨てて下さい」
「何を言う!紗霧殿!」
弾かれた様に魔窟堂が叫ぶ。
おイタをした子供を叱り付ける親の様に。
紗霧はその剣幕に少し驚いたが、数秒後に困惑は怒りに変わった。
-
まひるはその様子を見て冷や汗をかきながら、思わず後ずさった。
だが魔窟堂は引かなかった。
そして、さっきまで悶絶していたランスは力ない声で、だがはっきりと言った。
「まひるちゃん……サイズはいくつだ……」
「え、え、えと、あたしでもちょっと大きいくらいかな、かな?」
紗霧と魔窟堂の間に妙な緊張が走るのを見て、動転しながら何とか答えるまひる。
「そうか……」
ランスはゆっくり息を吐き出すと、ユリーシャの一瞥してから『アレ』を視線を移して言った。
「残念だ」
そんなランスを見て、ユリーシャは苦笑いをした。
「お、そんな趣味?」
「特にこだわってねーが、いいデザインしてるし、いい素材使ってそうだし着てくれると嬉しいけどなー」
「あはは……」
中学生やってた時のある見世物でそういう服を着て、周囲に大いに受けたのをまひるは思い出す。
「誰が着ますか!」
紗霧の怒声がとんだ。
「着てくれんのか、紗霧殿!」
涙を流して魔窟堂が言う。
「変態は黙ってろ」
紗霧が返す。
「なんともったいない!」
-
ユリーシャはランスの妙に自信溢れる台詞を聞いて苦笑いした。
いつか私は似た服を着せられてしまうんでしょうか?と思いながら。
請われたら多分承諾してしまうだろうが、だからといって出自が出自だけに着るのは抵抗感があった。
彼女の実家にいる芋好きの褐色肌の侍女の事を思い出しつつも、いつあの二人の口論を聞き続ける。
そして未だに『それ』を両手に持ったまま途方に暮れているまひるを他所に恭也は思った。
(何でお手伝いさんの……メイドさんの服があったんだろう)
さっきメイド服を着た知佳の姿を想像し、笑みを浮かべてしまった己をちょっと恥じながら、
事態の収拾のため彼は頭を働かせ始めた。
↓
【広場まひる(元№38)】の所持品、服3着の内一つは最高品質(防具にあらず)のメイド服でした。
-
投下終了。
こんな内容で遅くなってすいません。
別にメイド服にこだわりはありません。
ただ……一月ほど前に啓示のようなものを受けて書かざるを得なかったんです。
ちょっと後悔している。
まあアインか双葉のどちらかが合流したら、ネタとして着させるつもりだったんですけどね。
-
以下15レス、「最優先事項」の仮投下を行います。
レプリカまとめの部分は一部変更。
以前頂いた意見の反映+Nシリーズの初期数を160としました。
何か問題ありましたらレス願います。
次回仮投下予定は「そらをみあげて想うこと」。
恭也、知佳、ザドゥ救出タスクチーム・レプリカ達が登場の小ネタで、
明日投下予定です。
没ネタ入りする予定でしたが、>>579-603 にて、
状況が一致(恭也が一人で屋外にいた&最初に火災に気づいた)したので、
やっぱり投下することにしました。
-
>>585
(二日目 PM6:29 C−4地点 本拠地・管制室)
アドミニストレーター権限を委譲されてからのN−22の行動は素早かった。
本拠地のNシリーズ6機を直ちに起動すると、
3機をザドゥ救助タスクチームとし、3機を火災対策タスクチームとして、
該当端末の使用許可と備品・装備の持ち出し許可を与え、同時進行させたのだ。
結果、現時点で既にザドゥの元へNシリーズ1機と当座の救援物資が送り届けられ、
火災の進行シミュレーションと対策素案も纏まりつつあった。
今や他のレプリカ達から「代行」と呼ばれるようになったN−22は、
両タスクが動き出した時点でそれぞれのリーダーに処理を任せると、
情報端末に有線アクセスし、各種情報の徹底収拾を開始した。
それから数分。
彼女が必要とする情報のほぼ全てが、内臓HDDに収められようとしていた。
-
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
*
* オートマン・椎名智機のレプリカには大まかに分けて3種類がある。
* 1つ、通常仕様、Nシリーズ。識別色は橙。
* 1つ、白兵戦仕様、Dシリーズ。識別色は赤。
* 1つ、情報収集仕様、Pシリーズ。識別色は青。
* 識別色はアンテナ機能を備えたカチューシャにペイントされている。
*
* Nシリーズの機体数は46/160機(残存/開始時)。
* うち、本拠地防衛用に10機固定。
* 稼働時間は戦闘モードで4時間、デスクワークモードで10時間。
* 基本身体能力は月夜御名紗霧程度、基本装甲は通常の作業用ロボット程度。
* 正しい意味でのレプリカで、ハード/ソフト共にオリジナルに等しい。
* 基本身体能力を超えない範囲でのあらゆる武装が物理的にはは可能だが、
* リソースを大量消費するパーツ―――高機動レッグや強化アームなどを換装すると、
* フリーズやシステムクラッシュを誘発してしまうという欠点もある。
* この場合、常駐ソフトを切る事で実運用可能なレベルまで緩和できる。
* 無論、切ったソフトに由来する機能は使用不可能となる。
-
*
* Dシリーズの機体数は3/4機。
* 稼働時間は戦闘モードで4時間だが、後述のアタッチメントによって増減する。
* 基本身体能力はランス程度、基本装甲はなみ以下。
* ルドラサウムから与えられた強化パーツを取り付けた精鋭であり、
* 各種アタッチメントを装備することでその能力・特性は大きく変化する。
* キャタピラ、軽ジェットエンジンなどの移動機器。
* 耐熱装甲、工学迷彩スーツなどの装甲。
* 高周波ブレード、ビーム砲などの武装。
* 無限のバリエーションであらゆる局面に対応できる万能さが魅力だ。
* 但し、強化パーツの制御には多大なリソースを占有する為、
* オリジナルが同期できないというデメリットもある。
* なお、強化パーツの一つは、虎の子として本拠地の倉庫に保管されている。
* このパーツを前述のNシリーズに組み込むことで、Dシリーズに昇格させることが可能となる。
*
* Pシリーズの機体数は6/6機。
* スペックその他はNシリーズに等しく、識別されるのは役割と権限に違いがある為。
* 担う役割は現場での情報収集、哨戒活動。
* 有する権限は情報収集端末への常時アクセス権と、優先レベル3以下の命令拒否権。
* 特殊装備はスタングレネードと最高速40Km/hのカスタムジンジャー(セグウェイ)、
* バッテリーパック×2。
* ゲーム開始前から今に至るまで島内の担当領域から情報を収集/発信し続けている。
* 参加者に対しては隠密行動を是とし、被発見時には交戦せず逃走するよう刷り込まれている。
* また、Pシリーズが破壊された場合はNシリーズに同種の装備と権限を与え、
* 新たなPシリーズとして登録変更される仕組みだ。
-
*
* 最後に、全てのレプリカに共通する特徴を記す。
* この種の機械の例に漏れず、智機も基本的に熱に弱い。
* 冷却ユニットは水冷式。
* 蒸気の排出は後頭部の排気口から、冷却水の補充は口から行われる。
* 内臓しているのは通信機と充電コード。
* 充電については全機ともに本拠地と学校の専用充電機にて3時間、
* 島内各所の建物のいくつかに仕込まれた特殊なコンセントにて10時間が必要となる。
*
* そして最たる特徴は―――
* 最優先事項に【ゲーム進行の円滑化】が設定されていること。
* マザーボードに焼き付けられているそれは、決して覆ることはない。
*
[EOF]
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
-
代行管制機・N−22はデータバンクより抽出した最後の資料「レプリカ概要」に
目を通し、ようやく必要とする全ての事前資料をそのHDDに収め終えた。
「なるほどな」
その隣では、N−22より御陵透子へのコールを引き継ぎ、
使えなくなったらしい『世界の読み替え』についての状況把握に努めていた1機が、
深いため息と共に通信を切ったところだった。
「透子はザドゥ救助タスクに組み込めそうかね?」
「No、代行。透子の返答は要領を得ないが、推測するに世界の読み替えが制限されたようだ」
「では、救助タスクのみならず火災対策タスクにおいても……」
「Yes。残念ながらね」
管制室の6機のレプリカたちがそれぞれに嘆息する。
両チームともに透子の未知なる『世界の読み替え』に期待をかけていたのだ。
それが、頼れなくなった。
理由は不明。
しかし、N−22の論理推論プログラムは推論を導き出していた。
オリジナルの焦燥と怒りが透子の能力制限と一本の線で結ばれているのだろうと。
「ケイブリスの協力は得られそうかな?」
「判らないな。現在オリジナルと密談中だが、どうやら両タスクに関係の無い話のようだよ」
「無線も切られているしな」
「かの魔人殿は計算に入れないほうがよさそうだな」
「Yes、私もそう判断するよ」
同じ声、同じ姿の6機の智機が同じ結論に達する。
-
「では、ザドゥ救出・火災対策タスクは私たちだけの手で行わなければならないな」
「まずは両タスクの優先度を決めるとしよう。
ザドゥ救出タスクチーム。そちらの進捗状況はどうかな?」
問いに対するチームリーダの返答は、苦渋に満ちていた。
「物資の調達まではトントン拍子で進んでいたのだが……」
「我々が内臓する通信機は熱、もしくは煙に弱いようだ」
「カタパルトで飛んだ1機は着陸時点で。学校からの4機も先ほど通信が取れなくなった」
「ザドゥ様の通信機はノイズが酷くて使い物にならないしね」
「No! 苦しい状況だな……」
N−22は大げさな身振りで頭を振りつつ、対策を講じるべく演算回路を回し始める。
そんな様子を察してか、火災対策タスクチームが強い口調で横槍を入れた。
「私たち火災対策タスクチームは、火災対策こそ最優先で行うべきだと主張する」
「論拠として火災シミュレーションの模様をご覧頂きたい」
「代行、メインモニタへの投影許可を」
「Yes、許可しよう」
管制室の正面に82インチの液晶が輝き、補助端末の画像を映し出す。
衛星画像に似た鳥瞰全島図のCGが画面端よりポップアップした。
その全島図の楡の木広場を中心に、赤色表示されるドーナツが如き領域がある。
「これが定点カメラとPシリーズの報告から予測した、5分前の火災状況」
「風の向き、強さが変わらないものとして、6時間分の推移を1時間毎に表示しよう」
-
1時間後―――南西方向への広がりが大きく、形は歪に。炎に飲まれる。
2時間後―――南西方向は全焼、洞窟と小屋2、隠し部屋3が炎に飲まれる。
3時間後―――東の森ほぼ全域が燃える。西の森および病院、廃村に延焼。
4時間後―――学校、耕作地、花園に延焼。小屋3が炎に飲まれ、廃村の6割が被災。
5時間後―――廃村全焼、さらに西の野原と漁港に延焼。小屋跡1も炎に飲まれる。
6時間後―――漁港、西の森が全焼。火の手はついに北西の山地へと伸びる。
「これほどとは……」
「火災対策チーフの主張を我々ザドゥ救出タスクチームも支持するよ」
「Yes」
「全私一致か。ならば次は対策の検討に入る」
この瞬間、ザドゥと芹沢はレプリカ達から切り捨てられた。
ゼロとイチの思考に評価点の大小を上回る判断基準は存在しない。
1ポイントの差が、それだけで絶対の差。
増してや曖昧に揺蕩う感情などを挟む余地など有ろうはずが無い。
「続きを」
N−22が手の動きで火災対策タスクリーダーを促す。
リーダーはYesと頷き、コンソールを操作。
メインモニタの画像が2時間後の映像に巻き戻り、固定された。
「まず、前提として消火の線は切り捨る」
「為すべきは延焼の阻止。実行すべきは木々の伐採と撤去」
「被害を東の森だけに留めるということだよ」
「そして、この対策完了のリミットがご覧の2時間後。PM8:30」
「廃村と西の森への延焼を許したらGAMEOVERだ」
-
ズームアップ。
そこには鬱蒼と生い茂る木々に隠れて佇む、一軒の山小屋があった。
先刻、魔窟堂が単独行の折に発見し、ペンのような何かを設置した小屋だ。
「楔を最初に打ち込むべき場所。それは東の森の名も無き小屋」
「アクション1。ここを中心に実働部隊を展開。周囲一切の樹木を切り倒し、運び出す」
「除去消火というやつだな」
「これを今から2時間以内に完了する」
「ここさえ乗り切れば、その後は幾分楽になる」
「延焼危険ポイントの西部、南部、および花園、学校周辺を軽く除去消火」
「こうして切り倒した箇所を仮に防衛ラインと名づけて、アクション2だ」
「アクション2。防衛ラインに進入する炎に、土砂を掛ける」
「窒息消火というやつだな」
「それを、危険が無くなるまで繰り返す」
「消火に十分な水とそのインフラが整備できない以上、打てる手はこの程度だ」
「故に必要なのは速度」
「そして人数」
火災対策タスクチームはそこで沈黙した。
3機の目線が代行N−22に注がれている。
N−22はしばし黙考した後、演技がかった口調で問いを発した。
-
「Yes。ならば問おう。必要な速度、それは何分後なのかな?」
「直ちに!」
「直ちに!」
「直ちに!」
火災対策タスクチームの3機の返答は淀みない。
「Yes。さらに問おう。必要な数、それは何機なのかな?」
「全機!」
「全機!」
「全機!」
火災対策タスクチームの3機の返答は一糸乱れない。
「つまり君たちはこう主張する訳だ」
「即時全機投入!!」
「即時全機投入!!」
「即時全機投入!!」
火災対策タスクチームの3機の返答は確信に満ちている。
-
「成る程、君らの意見はよくわかった。
では―――ザドゥ救出タスクチーム、君たちはどうだ?」
N−22は指差して問う。チームの2機は即座に右腕を上げて答える。
「即時全機投入!!」
「即時全機投入!!」
今まで口を閉ざして周囲の警戒に当たっていた本拠地警備・管制室担当の2機も、
自らの思いを主張した。
「即時全機投入!!」
「即時全機投入!!」
その時、同時に6本ものコールが入った。
通信を入れたのは全てレプリカPシリーズ。
火災対策チーム・オペレータがコールをディスカッションモードに切り替えると、
通信機の向こうの彼女らもまた、自らの思いを主張した。
『即時全機投入!!』
『即時全機投入!!』
『即時全機投入!!』
『即時全機投入!!』
『即時全機投入!!』
『即時全機投入!!』
-
この話を聞いていたほぼ全てのレプリカが、同じ意志を同じ言葉で伝えた。
残るは1機。
火災対策タスクチームのリーダーが代表して最後の1機、N−22の意志を確認する。
「代行、あなたは?」
N−22はニヤリと歪んだ笑みを浮かべて、言った。
「無論、即時全機投入だ」
管制代行機かつ、アドミニストレーター権限保有者の意思表示。
それはすなわち決済であり、命令であった。
=-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-=
-
眠る全てのレプリカたちが起動した。
拠点防御に当たっていた10機のNシリーズたちは、命令を下さずとも
自ら武装を解除し、鎮火に適した装備への換装を始めている。
Pシリーズはタスクの本格始動に先立ち、道具/装備品や情報の収拾を中心に、
柔軟な準備活動を行うよう指示されていた。
また、火災対策タスクチームのリーダーはDシリーズの装備品の検討に余念が無く、
残りの2機は詳細なプランの構築に全機能を集中している。
慌しく、しかし整然と準備を整えてゆく同胞たちを満足げに眺めながら、
N−22は蚊帳の外ぎみのザドゥ救出タスクチームにも命を下した。
「君たち2機も火災対策実働部隊に参入してくれ」
「Yes!」
「Yes!」
2機が目覚めたNシリーズたちに合流すべく、管制室を後にする。
その扉を潜る前に、ザドゥ救出タスクチーム・リーダーがN−22に軽口を叩いた。
くすくすと忍び笑いしながら、人を小馬鹿にしたような口調で。
「しかし…… オリジナルの私がこの状況を見たら目を回すだろうね!」
「だから今、オリジナルがいない今、行うのだよ。
わたしがアドミニストレーター権限を保有しているうちにね。
【自己保存】を中心に据えた判断をされたら、
本拠地の守りは残す、Dシリーズは温存しておくだの言い出しかねんだろう?」
「くくっ、臆病者だな、オリジナルは」
「責めてやるな、私。それが【自己保存】なのだから」
くすくす。
ザドゥ救出タスクチーム・リーダーは笑いながら扉を閉めた。
-
「シミュレーション結果、出ました」
火災対策タスクチームの2機が同時に顔を上げ、作業の完了をN−22に告げた。
「全タスクの完了までどれほど時間がかかる?」
「南西部緊急対策に90分。完全終了に220分」
「損害予測は?」
「Dシリーズ全機破損。Nシリーズ20機破損」
「よし、上出来だ」
半数以上の仲間を失うという報告を淡々と行うこと。
それを首肯すること。
我々人間の目に映るそれは、あまりに非情。あまりに冷酷。
しかし―――
レプリカ達の最優先事項は【ゲーム進行の円滑化】。
故に彼女らの態度は至って正常な反応。
機械には機械のルールがある。
これは決して残酷な話ではない。
「オペレータは1機で十分だからね」
「私、N−26もこれより現場組に合流しようと思うのだが、如何か」
「Yes。許可しよう」
また1機が、管制室を後にする。
=-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-=
-
「№16・朽木双葉の首輪からの生体信号が、今途絶えた。
策士が策に溺れてしまったようだね。非常に残念だが、まあしかたない。
それよりも、だね―――」
出発準備は十分弱で完了していた。
N−22は本拠地の正面出口前に整列するレプリカ達に向けて、放送を発信する。
「この死によって後顧の憂いが無くなった。そこに着目しよう。
我々の鎮火タスクは、もう警告事由:ゲームの進行阻害に抵触しないのだ。
大手を振って任に当たれる。幸先が良いとは思わないかね?」
N−22の演説にレプリカ達が沸く。その潮が引いてから、彼女は号令を下した。
「よろしい。では全機に命じよう。
N−29を当オペレーションの最高権限者とし、40機の全てはその指揮に従え。
また、命令実行に伴う各種判断においては自律思考を許可する。
なお、命令の優先レベルは5。最高レベルだ。
……ではリーダー、オペレーション開始だ。号令を」
「―――出発!」
「Yes」「Yes」「Yes」「Yes」「Yes」「Yes」「Yes」「Yes」
「Yes」「Yes」「Yes」「Yes」「Yes」「Yes」「Yes」「Yes」
「Yes」「Yes」「Yes」「Yes」「Yes」「Yes」「Yes」「Yes」
「Yes」「Yes」「Yes」「Yes」『Yes』『Yes』『Yes』『Yes』
『Yes』『Yes』『Yes』『Yes』『Yes』『Yes』『Yes』『Yes』
40の智機たちが、一斉に唱和した。
↓
-
【レプリカ智機・代行(N−22)】
【現在位置:C−4 本拠地・管制室】
【スタンス:管制管理の代行】
【所持品:内蔵型スタン・ナックル】
【レプリカ智機・オペレータ(N−27)】
【現在位置:C−4 本拠地・管制室】
【スタンス:火災対策タスクのオペレーティング】
【所持品:内蔵型スタン・ナックル】
【レプリカ智機・リーダー(N−28)】
【現在位置:D−3 本拠地入口 → F−6 小屋2付近】
【スタンス:火災対策タスクの現場監督】
【所持品:】
【備考:3機のDシリーズ、6機のPシリーズ、31機のNシリーズが指揮下に】
※ 本拠地にはメンテナンス中の智機本体×1と、レプリカ×3が存在。
※ レプリカは代行N−22、オペレータN−27と智機が同期している機体。
※ 前報酬の強化パーツ1個は倉庫で厳重に保管。開錠方法はオリジナルのみ知る。
※ 学校からザドゥ救出に向かった4機は消息不明。
-
>>628
×【レプリカ智機・リーダー(N−28)】
○【レプリカ智機・リーダー(N−29)】
-
「だって、あいつは(略」本スレ投下の折のご支援、ありがとうございました。
遅ればせながらお礼申し上げます。
さて、以下7レス「そらをみあげて想うこと」の仮投下を行います。
次回仮投下予定は「カモちゃん★すらっしゅ!」。
ザドゥ、芹沢、救援レプリカ登場で、来週末までに仕上げる予定です。
-
>>542
(二日目 PM6:21 D−6 西の森・小屋3付近)
高町恭也は小休止を取っていた。
慣れぬ角度への飛針投擲と視線移動を続けたことで肩と首筋に張りを感じたからだ。
常日頃よりマニアと揶揄されるほどの修行三昧の日々を送っていたこの少年は、
休むべき時に休むことの利を経験上熟知していた。
りん……
秋の虫の声が、恭也の耳朶をくすぐった。
彼はその澄んだ音色に、澄んだ瞳と澄んだ声の少女の面影を連想する。
「仁村さん―――」
守ると誓ったどこか危うさのある少女。
恭也の胸に奔るは疼痛。
恭也個人の心情としては、今すぐここを飛び出して彼女を探したいと思っている。
しかし、滅私済民の精神を礎に数百年間磨き上げられてきた『御神』という歴史が、
師範代である彼の私心を押さえつける重石となっていた。
打倒主催者という大局観。
恭也は―――否、恭也に根付いている御神真刀流の精神は、それを至是とした。
要人を守ることで社会を守る。
御神真刀流の存在意義。
恭也は御神として己に問うた。
(悲願・主催者打倒を成す為に、守らねばならぬ要人とは誰か?)
-
回答は明らかだった。
月夜御名紗霧だ。
彼が紗霧に従うと宣言したことは、この判断に由来する。
回答は明らかだった。
仁村知佳ではない。
思慕を貫き大局を見失うことは唯の我侭だ。
結論は既に出している。誓いという形で己を規定した。
それでもなお―――
高町恭也の胸の奥で、仁村知佳は燃えていた。
(いかんな。また俺の心が揺れようとしている)
思考の渦に飲み込まれる寸前、恭也の理性が警告を発した。
意識を切り変えるために立ち上がり、空を見上げた。
深呼吸を何度か。
振り仰いだ上空に赤い尾を引く星が流れた。
北の空から東の空へと。
「流れ星、か」
恭也は祈った。
御神の名に縛られぬ、裸の心で。
=-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-=
-
>>556
(二日目 PM6:21 E−7 廃村・井戸付近の民家)
仁村知佳は潮風にさび付いた窓枠に背中を預け、一人震えていた。
陽の光が自分の能力と心の平衡を回復させる。
その時間が終ってしまったから。
彼女は次の朝を迎えるまで、2つの闇と戦わねばならない。
視界を塞ぐ夜の闇と、衝動的な破壊をもたらす心の闇。
伏せられた長い睫毛が年齢にそぐわぬ憂愁を醸し出している。
その慎ましやかな胸の奥に抱いているのは孤独感。
仲間たちと袂を分かってから半日と経っていない。
それでも、淋しい。人恋しい。
「恭也さん―――」
この島に来てから、その孤独感を忘れさせてくれたのは彼だ。
自分の手を引いてくれた高町恭也の逞しい背を思い出し、
仁村知佳は可憐な頬を染める。
守ってもらえることが嬉しかった。守ってあげられることが嬉しかった。
依存ではなく利用でもなく優劣もなく、真心で相手を気遣い、支え合う。
短い付き合いではあるが、恭也と関係は知佳にとって理想的なものだった。
「―――会いたいよ……」
知佳は思わず呟いた言葉が震えているのを知った。
目頭に熱を感じた途端、堰を切ったように涙が溢れてくるのを感じた。
思い出もまた、涙と共に溢れてきた。
荒んでいた幼き日の思い出が。
-
念動力の暴走と人の心が読める故の不信感から周りを傷つけ、
座敷牢の如き離れに隔離されていた日々。
真実の心を姉・真雪に看破され、愛情を注がれるようになるまでの知佳は、
淋しさを破壊衝動に置き換えることで孤独感から耐えていた。
「あはは…… 弱くなっちゃったなぁ……」
その後、人と接する事と能力を制御することを覚え。
いつしか、さざなみ寮の仲間たちの暖かさと真心に触れ。
頑なだった心は日々癒され、柔くほぐされてしまっていた。
故に、幼き日には耐えられたはずの孤独感に耐え切れず、
ここに来て知佳は、遂に涙腺を崩壊させてしまったのだ。
恭也に己の醜い心の在りようを知られるのを恐れる気持ちと、
制御を離れたXX障害の暴走で彼を傷つけてしまうことを恐れる思慮。
感情と理性がそれぞれ導いたこの2つの恐れから、彼女が決めた別れだった。
それでもなお―――
仁村知佳の孤独な心は、高町恭也を求めてしまう。
涙を拭かぬまま見上げる滲んだ夜空に、恭也の面影を映してしまう。
その滲んだ視界の先に、赤い尾を引く星が流れた。
「ながれぼし?」
知佳は祈った。
両腕を額の前で組み、瞳を閉じて、心の底から。
=-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-=
-
偶然の一致では片付けられない何かが、2人の間にはあるのかもしれない。
知佳は廃村の片隅で。
恭也は西の森の中で。
2人の立つ場所は距離を隔ててはいるけれども―――
「「あの人が、無事でいますように」」
同じ時間に同じ夜空を見上げ
同じ流れ星を見つけて
同じ祈りを捧げたのだから。
2人は名残惜しそうに、雲間に吸い込まれてゆく赤い星の尾を見つめる。
暫くのち、その雲だと思っていたものが煙で、発生源が東の森なのだと気づいたのも
また、同じだった。
=-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-=
-
2人の見た『赤い流れ星』は東の森の上空、約15mの地点で静止していた。
「落下ポイントに到着した。これよりフェーズⅡに移行する」
『赤い流れ星』は立ち込める煙の中で咳き一つすることなく、
冷静な声で通信機の先にいる同胞に状況連絡を行った。
そう、この『赤い流れ星』はレプリカ智機。
カタパルト投擲からの飛翔にて救援物資と共にザドゥの直接援護に赴いた1機だ。
纏うのは宇宙服が如き銀色の防熱スーツ。
下げるのは救援物資のみっちり詰まったボストンバッグが2つ。
背負うのは個人用噴射型離着陸機。
恭也と知佳が捉えた赤色の光は、この離着陸機のバーナーだった。
『ザドゥ様の無線が不安定で、十分なナビゲーションが出来ないのだよ。
大事を取って予定ポイントの10mほど北で降下準備を行ってもらえるかね?』
「Yes。了解したよ、リーダー」
レプリカは頷くと、懐からカードの束を取り出した。
↓
-
【高町恭也(元№08)】
【現在位置:D−6 西の森・小屋3付近】
【スタンス:主催者打倒、アイテム・仲間集め、包囲作戦】
【所持品:小太刀、鋼糸、アイスピック、銃(50口径・残弾×4)、保存食、
釘セット】
【能力:小太刀二刀御神流(奥義神速は使用不可)】
【状態:失血(中)、疲労(中)、右わき腹から中央まで裂傷あり。
痛み止めの薬品?を服用】
【仁村知佳(№40)】
【現在位置:E−7 廃村・井戸付近の民家】
【スタンス:恭也達との再会、主催者達と場合によっては他の参加者達の
心を読んでの情報収集。
手帳の内容をいくつか写しながら、独自に推理を進める。
恭也が生きている間は上記の行動に務める】
【所持品:???、まりなの手帳、筆記用具とメモ数枚】
【能力:超能力、飛行、光合成、読心】
【状態:疲労(小)、精神的疲労(小)】
【備考:定時放送のズレにはまだ気づいていません。
手帳の内容はまだ半分程度しか確認していません】
-
ところで、そろそろ新スレを立てようと思うのですがよろしいですか?
その際のテンプレは、基本的に第6部のものと同じで、
変更箇所は以下数点にしようかと思っています。
1)冒頭のコメント
再開 → クライマックス、近し。
2)過去スレ・過去関連スレの対応
前スレ → 第六部
過去スレ一覧に 第五部 追加
葱板バトルロワイアル 保管サイト第一避難所 の追加
3)運営側人物欄
素敵医師に×マーク
時期、内容等にご意見ありましたらお願いします。
-
連日の仮投下乙です。
>だって、あいつは……〜
あーあの頃は平和だったんだなあ……。
双葉の内面描写がよくされていて、いろんな意味で自暴自棄な彼女が痛々しい。
希望から絶望に変わる『ねむりひめ』の別視点SS……GJでした。
アインもそうだけど、他の参加者との同行を避けてたのが痛いなあ。
『終わる長い夢』は容量的にも埋められないくらいのサイズで
次スレで投下するのもなんですので、次回のまとめUP前にここに投下してから
今の本スレで修正の報告をして完了とします。
投下は月曜日になると思います。
先日、投下したSSは時間的にも>>579の『無題』との兼ね合いは無理ですので
加筆したのをアナザー行きにします。
本投下した場合は喧嘩はカットしましたけどね。
小屋行き断念と首輪を回収しなかった理由付けがメインでした。
次スレのテンプレについては何ら問題ないと思います。
時期については次のSSの本投下後に、こちらが『終わる長い夢』の修正報告。
それから次スレを立てて、即死回避用に一本SS投下。
次に今スレに次スレの誘導のレスを投下してから、今スレを埋めるというのでどうでしょう?
-
>最優先事項
>「ケイブリスの協力は得られそうかな?」
なるほど、ケイブリスとの会話中に行動開始でしたか……。
此方が現在今執筆中の後編では、
戻ってきて状況確認したら既に分機が行動開始していたのでそのことも含めてケイブリスと会話中。
(分機がある程度動きだしてしまってるのを知った上でのこれからどうするかの会議)
と言う感じでした。
不都合がなければ最優先事項 (5/14)の後半の該当部分を少しだけ変更と言うのはできないでしょうか?
今後の都合も含めて不可能なら、こちらの方で途中で気づくなり何なりちょっと流れに変更を入れようと思います。
-
>>639
>先日、投下した
>607-611のことですよね。
最優先事項の時間の兼ね合いから、『無題』が終わるまで30〜40分程時間があります。
例えば、
>あいつらも飯食うなら食中毒でも起こしたんじゃないか、とランスが言ったり。
からの部分を>607-611にあわせて変え、その間に起こった出来事として当てはめる。
冒頭部分のバッドを構えてるシーンからを>607->611の終了から繋ぐように変える。
このどちらかなら無理なく挿入できると思いますが、どうしましょうか?
-
>>638
私もOKだと思います。
細かい部分は建てる前に一度ここ(避難所)に投下して確認で良いのではないでしょうか?
>639
>時期については
『無題』が状態表含めると30KBくらいになるので、良ければ次の話の投下後に新スレ立てと新スレへの『無題』の投下を兼ねてやりましょうか?
-
ご意見ありがとうございます。
あと1本、現本スレ(第6部)に投下を、ということのようですので、
今から「妄執ルミネセンス」を投下してきます。
以下5レス、新スレ(バトル・ロワイアル 【今度は本気】 第7部)
テンプレ案を投下します。内容は>>638で述べている通りです。
これで問題なければ、流れとしては
>>639
> 時期については次のSSの本投下後に、こちらが『終わる長い夢』の修正報告。
> それから次スレを立てて、即死回避用に一本SS投下。
> 次に今スレに次スレの誘導のレスを投下してから、今スレを埋めるというのでどうでしょう?
とし、
>>642
> 『無題』が状態表含めると30KBくらいになるので、良ければ次の話の投下後に新スレ立てと
> 新スレへの『無題』の投下を兼ねてやりましょうか?
のお言葉に甘えたいと思いますが、いかがでしょうか?
-
クライマックス、近し。
前スレ
バトル・ロワイアル 【今度は本気】 第6部
ttp://set.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1122229185/
<感想・質問等はこちらへ↓>
関連スレ
【バトル・ロワイアル】新・総合検討会議
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/computer/15097/1091460475/
過去スレ・過去関連スレなどはこちら >>2
参加者表その1はこちら >>3
参加者表その2はこちら >>4
主催者表はこちら >>5
割り込み防止用 >>2-10
常に【sage】進行でお願いします
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【過去作品スレ】
バトル・ロワイアル【今度は本気】第5部
ttp://pie.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1053422142/
バトル・ロワイアル 【今度は本気】 第4部
ttp://www2.bbspink.com/erog/kako/1044/10442/1044212918.html
バトル・ロワイアル 【今度は本気】 第3部
ttp://www2.bbspink.com/erog/kako/1029/10293/1029399672.html
バトル・ロワイアル。【今度は本気】 第2部
ttp://www2.bbspink.com/erog/kako/1012/10127/1012701866.html
リアル・バトル・ロワイアル。【今度は本気】
ttp://www2.bbspink.com/erog/kako/1008/10085/1008567428.html
過去関連スレ(共に消失)
【リアル・バトル・ロワイアル。】 総合検討会議
ttp://doom.on.arena.ne.jp/cgi-bin/giko/hinan/test/read.cgi?bbs=erog&key=008871626
【バトル・ロワイアル。】 総合検討会議 #2
ttp://doom.on.arena.ne.jp/cgi-bin/giko/hinan/test/read.cgi?bbs=erog&key=012551729
葱板バトルロワイアル 保管サイト第一避難所
ttp://d1s.skr.jp/ergr/top.html
編集サイト(現在休止中?)
tp://syokikan.tripod.com/
-
◆参加者1(○=生存 ×=死亡)
○ 01:ユリーシャ DARCROWS@アリスソフト
○ 02:ランス ランス1〜4.2、鬼畜王ランス@アリスソフト
× 03:伊頭遺作 遺作@エルフ
× 04:伊頭臭作 臭作@エルフ
× 05:伊頭鬼作 鬼作@エルフ
× 06:タイガージョー OnlyYou、OnlyYou リ・クルス@アリスソフト
× 07:堂島薫 果てしなく青い、この空の下で・・・。@TOPCAT
○ 08:高町恭也 とらいあんぐるハート3 SweetsongForever@ivory
× 09:グレン Fifth@RUNE
× 10:貴神雷贈 大悪司@アリスソフト
× 11:エーリヒ・フォン・マンシュタイン ドイツ軍
○ 12:魔窟堂野武彦 ぷろすちゅーでんとGOOD@アリスソフト
× 13:海原琢磨呂 野々村病院の人々@エルフ
× 14:アズライト デアボリカ@アリスソフト
× 15:高原美奈子 THEガッツ!1〜3@オーサリングヘヴン
○ 16:朽木双葉 グリーン・グリーン@GROOVER
× 17:神条真人 最後に奏でる狂想曲@たっちー
× 18:星川翼 夜が来る!@アリスソフト
× 19:松倉藍(獣覚醒Ver) 果てしなく青い、この空の下で・・・。@TOPCAT
× 20:勝沼紳一 悪夢、絶望@StudioMebius
-
◆参加者2(○=生存 ×=死亡)
× 21:柏木千鶴 痕@Leaf
× 22:紫堂神楽 神語@EuphonyProduction
○ 23:アイン ファントム 〜Phantom of Inferno〜@nitro+
× 24:なみ ドリル少女 スパイラル・なみ@Evolution
× 25:涼宮遙 君が望む永遠@age
× 26:グレン・コリンズ EDEN1〜3@フォレスター
× 27:常葉愛 ぶるまー2000@LiarSoft
○ 28:しおり はじめてのおるすばん@ZERO
× 29:さおり はじめてのおるすばん@ZERO
× 30:木ノ下泰男 Piaキャロットへようこそ@カクテルソフト
× 31:篠原秋穂 五月倶楽部@覇王
× 32:法条まりな EVE 〜burst error〜@シーズウェア
× 33:クレア・バートン 殻の中の小鳥・雛鳥の囀@STUDiO B-ROOM
× 34:アリスメンディ ローデビル!@ブラックライト
× 35:広田寛 家族計画@D.O.
○ 36:月夜御名紗霧 Rumble〜バンカラ夜叉姫〜@ペンギンワークス
× 37:猪乃健 Rumble〜バンカラ夜叉姫〜@ペンギンワークス
○ 38:広場まひる ねがぽじ@Active
× 39:シャロン WordsWorth@エルフ
○ 40:仁村知佳 とらいあんぐるハート2@ivory
-
◆運営側(○=生存 ×=死亡)
○ 主催者:ザドゥ 狂拳伝説クレイジーナックル&2@ZyX
× 刺客1:素敵医師 大悪司@アリスソフト
○ 刺客2:カモミール・芹沢 行殺!新選組@LiarSoft
○ 刺客3:椎名智機 將姫@シーズウェア
○ 刺客4:ケイブリス 鬼畜王ランス@アリスソフト
○ 監察官:御陵透子 senseoff@otherwise
-
以上です。
ERROR!
リンクURLを含む投稿を許可しない設定になっています。
掲示板内の規制に関しましては掲示板管理者へお問い合わせください。
とのことでしたので、http の h を抜いて書き込みました。
お手数ですがスレ建て時には、外部(避難所等)以外のリンクに
h を加えていただけますようお願いします。
-
>>640
該当箇所を以下のように修正しようと思います。
どうでしょうか?
=-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-=
「オリジナルと密談中のケイブリスからは、協力が得られそうかな?」
「まず無理だと判断するよ。部屋の鍵が掛けられているし、無線にも応答しないからな」
「おまけに室内には電磁シールド。音声すら拾わせない念の入れ様だ」
N−22は思い出す。数分前、オリジナル智機が管制室に戻ってきた時のことを。
何故、起動できた?――― DMN権限を取得したからね。
何故、取得できた?――― 最高指揮官ザドゥ様より与えられましたので。
その2つの質疑応答のみで、オリジナルは管制室を出て行った。
彼女は皮肉の一つも口に出さずあっさり引いたオリジナルに違和感を覚える。
(気にはなる――― が、先ず為すべきはザドゥ救出、火災対策の両タスクだ)
ゲーム進行の円滑化という判断基準が、N−22のオリジナルに対する考察を封じた。
優先評価点が高い事項を差し置いて、低い事項が取り上げられることは機構上有り得ない。
-
>>641
あ、本投下してもいいんですか。
ありがとうございます。
方法はどちらでも構いませんので。数分間の出来事ですし。
追加部分の投下は『終わる長い夢』の直後になると思います。
『終わる長い夢』は遙やタカさんの事にも触れられているので、
内容的にまずいんでしたら本スレの報告の際、そのレスアンカーを除きます。
>>643
OKです。
-
>>643-
此方もOKです。
>>650
お手数かけてすみません。
ありがとうございます。
これでOKそうです。
>>651
では、少し修正を加えますね。
ということで修正を加え、明晩に新スレ立てと本投下を行なおうと思います。
大丈夫でしょうか?
-
>>652
大丈夫です。
投下は午前1時前後になりそうです。
-
>>614->>628
(二日目 PM6:13 東の森・双葉への道)
広場中央には長谷川の姿はなかった。
辺りは炎と煙に囲まれ、巨木の近くにいただろう、双葉の姿を確認する事もできない。
「た……」
さっきから耳鳴りがする。巨木が倒れた時からだ。
わたしはそれに構わず、追跡を続行するため、即座に広場の外周を観察した。
「そこね」
一ヶ所だけ火が途切れてる箇所があるのを見つけた。
罠の可能性も考えて、わたしは他に抜け道がないかどうか観察する。
……今度は見当たらない。長谷川はあそこから逃げたのだろうか?
ドズンッ!
「!」
背後に大きな物体が落ちる音がした。
燃え盛る音と熱風が一層強くなったような気がした。
耳鳴りもいっそう強くなった。
わたしは他に道は無いと悟り、抜け道の入り口まで走った。
「え……」
目の前が急に暗くなった。
-
わたしは急停止し、不安を打ち払うように視線を下にして目を何度も瞬かせた。
徐々に視界が元に戻り、それから地面を凝視すると火に照らされた枯れ草がはっきり確認できる。
幸いにも視覚障害に陥った訳ではなさそうだ。
これもカオス使用の副作用だろうか?
わたしは前を見つめつつ、姿勢を低くしながらゆっくりと走る。
この道もわたしを誘い出すためのものだろうか?
……別にそれでも構わない。
いくら翻弄されようと最後に奴をこの手で始末さえできれば、それでいい。
病院で撃った時、猛獣でさえ殺せる攻撃を当てたのにも関わらず奴は生きていた。
だから今度こそ追いついて、確実に始末する。
その後、わたしは火災から逃げる時間と余力を失い命を失う事になる。
それでもいい。
遙を……ようやく持てたわたしの夢を踏みにじったあの男を始末できれば、それでいい。
……キーーーーーーーーン…………
うるさい。
わたしは耳鳴りを打ち消すように頭を振る。
双葉の生死は確認できてない。
彼女の扱うまやかしを警戒し、眼前の道自体が幻でないかどうか凝視する。
経験上は安全……それ以上は判断の材料もないのは確かだけれど、行くしかない。
最悪、無駄死に覚悟でその道にゆっくりと足を踏み入れる。
進んで行くと、両端には遠目ながらも燃え移っていない木や草がところどころ確認できた。
わたしは姿勢を屈め、ゆっくり前進していく。
うっとうしい耳鳴りは未だに続いている。
戦闘に支障がなければいいのだけれど……。
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