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【場】『 大通り ―星見街道― 』

1『星見町案内板』:2016/01/25(月) 00:00:31
星見駅を南北に貫く大街道。
北部街道沿いにはデパートやショッピングセンターが立ち並び、
横道に伸びる『商店街』には昔ながらの温かみを感じられる。

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                 ミ三ミz、
        ┌──┐         ミ三ミz、                   【鵺鳴川】
        │    │          ┌─┐ ミ三ミz、                 ││
        │    │    ┌──┘┌┘    ミ三三三三三三三三三【T名高速】三三
        └┐┌┘┌─┘    ┌┘                《          ││
  ┌───┘└┐│      ┌┘                   》     ☆  ││
  └──┐    └┘  ┌─┘┌┐    十         《           ││
        │        ┌┘┌─┘│                 》       ┌┘│
      ┌┘ 【H湖】 │★│┌─┘     【H城】  .///《////    │┌┘
      └─┐      │┌┘│         △       【商店街】      |│
━━━━┓└┐    └┘┌┘               ////《///.┏━━┿┿━━┓
        ┗┓└┐┌──┘    ┏━━━━━━━【星見駅】┛    ││    ┗
          ┗━┿┿━━━━━┛           .: : : :.》.: : :.   ┌┘│
             [_  _]                   【歓楽街】    │┌┘
───────┘└─────┐            .: : : :.》.: :.:   ││
                      └───┐◇      .《.      ││
                【遠州灘】            └───┐  .》       ││      ┌
                                └────┐││┌──┘
                                          └┘└┘
★:『天文台』
☆:『星見スカイモール』
◇:『アリーナ(倉庫街)』
△:『清月館』
十:『アポロン・クリニックモール』
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468タタラ『インスタント・カルマ』:2018/06/11(月) 22:58:13
>>467

「…………ふむ」

(12人? なんか意味があるのかしら。
 クラス全員じゃなくて、12人。
 ……『半数』か、『3分の1』くらいよね)

(清月なんて大きい学校だし3分の1が妥当かしら。
 とはいえ、『全体に占める割合』に意味があるかどうか)

「スマートなやり方ではないけど、
 思いついた事を言わせていただきますワ。
 『きりつけるのに刃物は使った』?」

答えに直接繋がる要素を見いだせていない。
どこまで質問が許されるのかは分からないが、
彼女らの気が済むまでなら、付き合わせて貰おう。

(あえて人数比で考えるなら『性別』?
 私達抜いてってことは彼女らも……
 本来含まれるカテゴリの可能性は高い)

(そうだとして、『きりつける』の正体が分からない。
 きる、じゃなくて『きりつける』なのが……何かありそうだけど)

469『ニュー・エクリプス』:2018/06/11(月) 23:47:17
>>468


エッ子「うんうーん! 刃物はつかってないよー!」

答えは、NOだ。当たり前の話だが、学校で刃物を
振り回すような事があれば、それは大きな事件だ。

朝山「フッフッフッ! (`・ω・´)
手こずってる様子っスね! やはり悪の首領と幹部の
コラボレーションは、まさに大いなる悪なんっス」

調子にのる悪の首領に、ムーさんは呆れる。

「……思うんだが、この問題文も少々意地が悪いんだよ。
きりつけたじゃ、殆どわからん人が多い。
 きり、つけたって言えば未だわかるだろうけど」

エッ子「えー? でも、それじゃあ直ぐわかっちゃうよ〜」

ムーさん「わからんわからん。大体、きりつけたが
ダジャレ見たいじゃないか」

 そんな問答を、ムーさんとエッ子は行った……。

470タタラ『インスタント・カルマ』:2018/06/12(火) 01:05:53
>>469

「ええ、手こずらされておりますワ。
 流石は悪の組織、でしょうか。
 貴女たちが悪だくみをしたら、
 私にそれは解き明かせないのか・も」

            フ

(まあ、そういう事をする子達でもなさそうだけど。
 『きり』『つけた』……ダジャレ? 想定外ね。
 ウミガメのスープでもあり言葉遊びでもあるの?)

(……そうなると、今の考えは一旦捨てた方が良いかしらん)

マジメというわけではないが、
与えられた情報そのままを考えていた。
素直に答えさせてくれるものでもない、か。

「まだ、質問を許していただけるかしら?」

(――きった、のは人。きりつけた、と聞いたのに、
 この子たちの答えは『人だけをきった』というものだった。
 じゃあつけたのは? いや、言葉のアヤかもしれないけれど)

「もし許していただけるのなら、
 こんな質問はいかがでしょうか。
 『きりつけるために、何か道具を用いた?』」

(それに高等部で出来て、中等部ではできない。
 人間にかかわる事なら、体格か年齢か、
 あるいは持ち込めない、持ち出せない物があるか。
 校則やら制服の種類なら私には答えられない。
 あとは授業の種類なんかもそうね……
 校舎の位置やら、先生の性格なんかも分からない。
 一旦、答えられないパターンは想定から外しましょう)

(そのうえで浮かぶ推論を質問で確かめる――これが善手のはず)

471『ニュー・エクリプス』:2018/06/12(火) 09:51:55
>>470

>きりつけるために、何か道具を用いた?

エッ子「YESだー! 当然だけど、道具がないと出来ないもーん」

朝山「因みに、自分はその道具を持ってないんス」

彼女達の答えはイエスだ。そして、中等部の悪の首領は
その道具を持ってないらしい。

ムーさんは、指を掲げて軽く指を横に振る仕草をする。

ムーさん「君(朝山)には、まだ早い。
……そちらのメイドさんは、当然所持してるだろうけど」

朝山「むむっ(`・ω・´) 馬鹿にしないで欲しいっス!
ただ悪の首領は必要性をあんまり感じないので持たないだけっス!!
それと、その仕草はヒントになっちゃうから止めるっス!!!」

ムーさん「自分で言ってちゃあ、世話ないだろ……」

三人はワイワイと騒いでいる。

472タタラ『インスタント・カルマ』:2018/06/12(火) 14:21:52
>>471

(化粧品――なら、中等部でも持つ子は持つわよね。
 高等部でも校則を考えて持ち込まない子はいるでしょうし)

(でも、ほかに何かある? 話し振り的にもそれっぽいし。
 ……『きり』の意味はよく分からないわけだけれど)

「では、次の質問を。
 ……『きりつけたのは人間の顔?』」

(ま、言うだけ言ってみましょうか)

確信は持てないが、可能性はある。

清月では高等部以上が化粧を許可されてるのかもしれない。
彼女らが校則を重んじるのかは謎だが、教師の目もあるだろう。

(私も持ってる、って辺り学校の物じゃないでしょうし。
 お面を被ってれば唇を塗っても意味はないものね)

473『ペイズリー・ハウス』:2018/06/12(火) 15:49:12
>>472

>きりつけたのは人間の顔?

エッ子「ふふーん! 違うんだなー、これが!
もう一回言うよー!
 私は『人』はきりつけたんだ!」

 そう、指を立ててエッ子は得意気に告げた。

不思議な事に、彼女は人間でなく『人』である事だけ
強調している……それは大きなヒントなのかも。

朝山「ムーさんは、あんまりしないっスよねぇ」

ムーさん「面倒くさいからな。付き合いなら
そりゃあするけど……する暇があるなら何か
別の事に時間使いたい」

エッ子「そんなんじゃー、モテないよー」

 新情報も追加だ。
ソレは、ムーさんは余りやらないらしい……。

474タタラ『インスタント・カルマ』:2018/06/12(火) 23:50:06
>>473

「…………『人』を」

(はっきり言って答えが見えない。
 化粧か、美容関係なのは分かる。
 私にその分野の知識が無い訳でもないのに)

(『人』を『きり』『つける』)

「駄目ですワね、どうにも頭が固くて。
 総当たりのようなやり方になってしまうわ」

「醜いようでしたら『降参』しますが」

遊びのクイズだ。
満足されるまでは付き合うが、
クイズの主旨に反する手段は歓迎されまい。

「次の質問は、こうしましょう。
 『貴女方の罪は化粧に関係する?』」

(そうでなければ……スマホとか?
 シャッターを切って加工するって話なら、
 曲解すれば無いって事もないでしょうけど)

(中学生がまだ早いって事もないでしょう。
 そう主張する人もいるでしょうけど、
 私はそうは思わないし。だって便利だもの)

475『ニュー・エクリプス』:2018/06/13(水) 10:21:10
>>474

エッ子「(*'▽') へへーん! かなり悩んでるね!
やっぱり、この問題考えて良かったねー」

朝山「(`・ω・´) くっくっ、自分の悪さに
思わず身震いするっスよ」

二人で騒ぐ幹部と首領を尻目に、ムーさんは少し呆れつつ口を挟む。

「化粧道具に関しては『YES』だよ……ちょっとオサライしようか」

「二人がやってた事の場所は高等部のクラス。
エッ子が先頭して、化粧道具を用いてやった。
 そして、12名ていどの……人、だけに対して
それを行った。そして、中等部でも同じ事を
しようとしたけど結局中断する事にした」

 軽くムーさんは片手を掲げる。
それが、大きなヒントだとばかりに。

「難しく考える必要はないと思うよ
省略してるだけで、答えは一応言ってるから」

476タタラ『インスタント・カルマ』:2018/06/13(水) 17:28:57
>>475

「ええ、悩んでおりますとも。
 ――おさらい、ですか。
 ぜひお願いいたしますワ」

片手を掲げるようなしぐさ。
先ほども似たような事をしていた。
手を横に振る動きだったか――
それにしても、『人』を強調してくるが。

(答えは言っている――『人』の前の間がそれでしょうけど)

(『人間』と『人』の何が違うのかしらん。
 哲学的な領域の話じゃないんでしょうし、
 人形とか、そういうの? 人じゃないわよね。
 生きた人間だけを『人間』と呼んでる、
 なんていうのは有り得なくもなさそうかしら)

(・・・人間の中のカテゴリとは考えたくないわね)

「でしたら、この質問はどうでしょう。
 『“人”というのは生きている人間ではない』」

「どうにも、私には人間と人との違いが分からず。
 難しく考えすぎなのかしらね、ドツボにハマる気分ですワ」

477『ニュー・エクリプス』:2018/06/13(水) 22:16:47
>>476

>人 というのは生きている人間ではない?

エッ子「イエス!」 朝山「ノーっス!」

『・・・・・・(´・ω・`)あれ?』

 この答えに対し、二人は同時に異なる答えを出した。
顔を見合わせる幹部と首領にムーさんは告げる。

「イエスでありノーと言うか・・・・・・
まぁ、ほぼ答えになっちゃうが、『人』の指すのは
『人間の部位』だな。だから生きてる人間っちゃあ
人間だし、生きてないといえば生きてない」

「・・・・・・で、だ。人間の体の部位で
『人』が頭文字につくもので連想するものって
言えば・・・・・・大体わかるね?」
 
 ムーさんは、再度強調するように指を掲げた。

478タタラ『インスタント・カルマ』:2018/06/13(水) 23:14:35
>>477

「――――ああ。
 『指』……『ネイル』ですか?
 なるほど、それは盲点でしたワ」

        フ

「あるいはまだ辿り着けていないのかも。
 だとすれば、私には正答出来ないでしょうし」

笑みを浮かべる。
メイドらしい、熟練した笑みを。

「よければ事のあらましを。
 私にも教えてくださいますか?
 それが回答にもなるでしょう」

(『人』――と言われると困るけれど、
 そう無理のある問題でもなかった、か。
 もちろん、ネイルが間違いかもしれないけど)

(どうして中等部では出来なかったのかは、
 まあ、多分、そういう校則でもあるんでしょうね)

479『ニュー・エクリプス』:2018/06/14(木) 20:20:18
>>478(お付き合い有難うございました。この辺で〆ます)

>『指』……『ネイル』ですか?

エッ子「……デン デンデンデデンン♫」

 彼女は、大袈裟にドラムロールを口ずさむ。

朝山「せーーーいーーーかーーーいっス!」

    バンッ!!  シャキーンッッ!!

そして、悪の首領は華麗なポージングと共に告げた……正解だ。

 私たちは、学校の私のクラスで沢山の人をきりつけたんだ!
 大体は、血の色に染まって。それに真っ青になったり、死人みたいに
 真っ白になった人もいたよ! 次の日は全員ちゃんと登校したけどね

 上記の問題文の回答は、こうだ……。

エッ子「先々週ぐらいにねー! 自信作のネイルアートが出来たんだー!
見たい? じゃーん、これが私の究極のアートだーー!」

 ゴミ拾いの軍手を脱いで、素手の爪に輝くのは……『桐(きり)』
桐の花のアートが、『人』差し指だけの爪表面に輝いている。

『桐』のアートを……爪に『つけた』 きりつけた……成程 ダジャレだ。

エッ子「今月一番ってぐらいの力作でねー! 見せたらクラスの
皆が、私にも描いてーってお願いするから。全部の指は無理だから
私と同じようにー描き『きった』のさ! 途中で赤色のが
無くなったから、他の色で代用したけどね!」

朝山「自分も、それを見てクラスの皆にしてあげようって思ったっスけど。
中等部は結構さいきん校則が厳しいんっス。
 一本だけの指でも、あんまり先生が良い顔しないから諦めたっス。
そう思うと、高校生は良いっスよねー」

ムーさん「風紀上、高学年につれて大体黙認するものが増えるけど。
中学生で、ネイルは少々派手に思われるだろうからなー」

 ネイルアート……お洒落が趣味の女の子が
クラスの半数、女子生徒へと行った出来事が彼女達の大きな悪事
であったと言うのが真相だったようだ。


?「ムーさん、エッ子、サッちゃん こっちー?」

エッ子「お! のりが戻って来た。じゃあ、大体この辺の
ゴミ拾いも終わりと言う事だー! 移動するぞー!」

朝山「星見街道のゴミを、根こそぎ消し去ってくれるっスー!!」

ムーさん「熱意だけは悪の貫禄だな。
……それじゃあ」

 『また(な)ねー(っス)!!!』
 
 意気揚々と彼女たちは去る。別れ際に連絡先なども
スマホがあれば交換したかも知れない。
 されど、彼女達の悪の進撃は。どこぞの空の下で今後も
賑やかに続くのだろう。

480小鍛治明『ショットガン・レボルーション』:2018/06/19(火) 23:08:06
雨が降っている。
ジメジメとした嫌な感覚が街中に広がっていく。

小鍛治明は傘を持たない。
いつでもその体で雨を受け続ける。

「……」

雨の降る街を黒髪の女性が歩いている。

481志田忠志『イヴ・オブ・サルヴェイション』:2018/06/26(火) 00:00:02
>>480

「――ん?」

雨が降る中を歩いていて、その姿を見かけた。
幸い、僕は傘を持っている。
もし彼女が困っているとすれば、この傘を渡せば、それは人助けになる。
人助けは好きだ。
だが、その前に少し考える。

(傘がなくて困ってる……って感じでもないな)

(……少し様子を見るか)

もし彼女が傘がなくて困っていないとすれば、
この傘を渡すことは逆に迷惑になるかもしれない。
それでは人助けにはならない。
それは困る。
たまたま進む方向は同じだった。
だから、とりあえずこのまま歩き続けることにした。

482小鍛治明『ショットガン・レボルーション』:2018/06/26(火) 00:51:16
>>481

彼女は真っ黒な格好をしていた。
長袖の上着から少しだけ見える白い服と彼女の白い肌でコントラストを生み出していた。
烏の濡れ羽色の髪が雨に濡れて艶やかだ。
鬱陶しそうな様子もなく髪をかきあげ耳にかけた。
それからスマートフォンを取り出し耳に当てる。

「久しぶりね。えぇ、私は元気よ」

「今日はいい天気ね……雨は好きよ」

「そう……わかったわ。それじゃあまた、後でね?」

短い通話を終える。
スマートフォンが濡れることも気にしない。
小鍛治明が歩いていく。

「それで、貴方は一体何かしら?」

突然明が立ち止まってそう言った。

483志田忠志『イヴ・オブ・サルヴェイション』:2018/06/26(火) 01:16:15
>>482

「え?ああ、いや――」

いきなり問われたことに驚き、面食らった。
それとなく気にしてはいたが、あからさまに見てはいなかった筈だ。
勘が鋭いのか、それとも当てずっぽうか。

「ちょっと珍しいなと思ってね。
 ほら、こんな日は大体みんな傘を使ってるから」

「傘を持ってない人は先を急いでるか、雨が止むのを待ってる」

「君みたいに、傘を持ってないのに平然と雨の中を歩いている人は、
 あまり見ないからね」

「気に障ったんなら謝るよ」

目に濃い隈のある若い男が答える。
雰囲気は温厚だが、やつれた顔をした不健康そうな男だ。
もう何日も眠っていない――そんな感じだった。

484小鍛治明『ショットガン・レボルーション』:2018/06/27(水) 00:19:55
>>483

「別に障ったことはないわ」

薄く微笑む。
鋭い目付きが少し和らいだ。

「私は雨が好きなのよ」

「服が体に張り付く感覚も好きだし、この気温も好きよ」

「なにより、天の恵みですものね」

485志田忠志『イヴ・オブ・サルヴェイション』:2018/06/27(水) 00:55:52
>>484

「君みたいな人は初めて見たよ」

「雨が降ってると、嫌な顔をする人が多いからさ」

雨が降る中、こちらだけが傘を使っていることに、
何とも言えない居心地の悪さを感じていた。
雨が好きだと言っているのだから、
何も気にすることはないのかもしれないが、やはり気にはなる。
だから、彼女が笑ってくれたことで少し安堵する気持ちがあった。

「天の恵み、か……」

その言葉に呼応するように、空を仰ぎ見る。
雨は降り続いている。
流れ落ちた雫が、傘を伝って零れ落ちていく。

「雨を嫌う人は多いけど、雨が降らないと作物も育たない。
 作物が育たないと、僕達も生きていられない」

「雨に助けられてるってことを忘れてるのかもしれないね。
 僕自身も含めて」

「君のお陰で、そのことを思い出せたよ」

そう言って、差していた傘を下ろして畳んだ。
灰色がかった髪に、雨粒が降り注ぐ。
畳んだ傘を片手に持ったまま、雨に打たれる。

「僕も、ちょっと体験してみることにするよ」

「君に倣ってね」

486小鍛治明『ショットガン・レボルーション』:2018/06/27(水) 01:39:53
>>485

「そうね、私にはあまり理解できる感情ではないけれど」

雨を嫌う人の心が分からない。
多分、向こうからも自分の事は分からないだろう。
そういうものだった。

「別に私に倣うのもいいとは思うけれど、風邪をひくわよ」

自分はまるで風邪を絶対に引かないという自信があるようだった。

「そういえば、貴方は誰かしら。私は小鍛治明。小さく鍛えて治めれば明るいで小鍛治明」

487志田忠志『イヴ・オブ・サルヴェイション』:2018/06/27(水) 02:09:06
>>486

「風邪を引くのは嫌だなぁ。
 熱が出たら苦しまなきゃいけなくなる」

「そう考えると、僕には向いてないのかもしれないな。
 慣れないことはするもんじゃあないね」

「本当のことを言うと、この傘を君に渡そうと思ってたんだ。
 でも、君には必要ないみたいだね」

「ただ折角だし、少しの間こうして雨を感じてみることにするよ。
 個人的な自己満足さ」

傘を渡すことは彼女を助けることにならない。
では、一緒に雨に打たれるというのはどうか。
何の気なしに思いついたことを実行してみたのだ。

「僕は志田――志田忠志。志すに田んぼ、そして忠実な志」

「小鍛冶さん、君は風邪を引いたことがないのかい?
 自分は風邪を引かないような口振りだけど。
 そうだとしたら凄いな」

湿った空気とは反対に、乾いた声で問い掛ける。

488小鍛治明『ショットガン・レボルーション』:2018/06/27(水) 23:26:37
>>487

「そう、志田さんね。お気遣いありがとう」

軽く頭を下げる。
ぺったりした髪が重々しく動いて、彼女の顔にかかった。

「風邪、そうね。ここ数年ではそんな経験してないわ」

明がそう返した。

489志田忠志『イヴ・オブ・サルヴェイション』:2018/06/27(水) 23:57:36
>>488

「丈夫なんだな、君は」

「僕はダメなんだ。不眠症でさ。
 見れば分かると思うけど」

「雨の日は、いつもこうして歩いてるのかい?
 それで風邪を引かないんだから羨ましいな」

湿った頭を軽く掻く。
雨に濡れた肌を冷たく感じる。
やはり、自分には向いてないようだ。

「――僕は近くに住んでるんだけど、小鍛冶さんは違うのかな」

「いや、深い意味はないんだ。この辺にはよく来るからね」

「もし今みたいに雨の中を歩いてる姿を見かけたら、
 今日と同じように目についただろうなと思ってさ」

490小鍛治明『ショットガン・レボルーション』:2018/06/28(木) 00:40:47
>>489

「基本的に傘は持ちあるからないから、濡れてることが多いわね」

顔についた髪をかきあげた。
鋭い目付きのその目の端を雨の雫が流れ落ちる。

「私はこの街に住んでいるわ」

「私はどこにでもいるし、どこにだって行けるわ」

491志田忠志『イヴ・オブ・サルヴェイション』:2018/06/28(木) 01:07:29
>>490

「どこにでもいてどこにでも行ける、か」

「良い言葉だ。僕がそう思っただけなんだけどね」

片手に持った傘を広げ、頭の上に持ち上げる。

「そろそろ風邪を引きそうだから、僕はここまでにしておくよ。
 あんまり向いてないみたいだ」

「慣れないことはするもんじゃないね」

その女性の鋭い目を見ながら、軽く笑った。

「同じ街に住んでるんだから、
 またどこかで出くわすこともあるかもしれないね」

「君の姿は、結構目立つ方だと思うからさ。
 特に、こんな雨の降る日はね」

「さっき小耳に挟んだけど、この後で何か予定があるんだったね?
 あんまり引き止めちゃ悪いし、僕はそろそろ行くよ」

声を掛けてから、傘を差して歩き出す。

「それじゃ小鍛冶さん、良い雨を」

雨に濡れる女性に別れを告げ、その場から立ち去っていく。
立ち去った後も、彼女の姿が頭に残っている。

(……不思議な人だったな)

そして、この出会いも、また不思議なものだと思った。

492小鍛治明『ショットガン・レボルーション』:2018/06/28(木) 01:54:23
>>491

「いい言葉? そう、ありがとう」

「私からすればひとつの事実ですけれど」

こともなげにそう返した。
そうして明は志田が行くのを静かに見届ける。
引き止める理由もないのだから。

「……」

空を見上げる。
まだまだ重たい雲は動きそうにない。
もっと雨は降るだろう。
そんな天気に薄く微笑んだ。

「待っていてね。すぐに行くわ」

493稲崎充希『ショッカー・イン・グルームタウン』:2018/07/26(木) 19:41:31
ジジジジ…

「煙草吸う為に、こんな炎天下の中表に出されるとはねぇ。
世知辛ェ世の中だよ全く。アッツ…」

暑さのせいかそれとも生来のものなのか、
虚ろな目をした長身の女が、
真横に灰皿が備え付けられたベンチに腰掛け、
何をするわけでもなしタバコを吸いながら雑踏を眺めてる。

494稲崎充希『ショッカー・イン・グルームタウン』:2018/07/26(木) 22:27:28
>>493
そのまま去って行った

495桐谷研吾『一般人』:2018/07/31(火) 22:49:48

「いくら今が夏とはいえ……。
 ここ数日の酷暑は少々しんどいな……」

夏用の制服を着た若い警官が、表通りを歩いている。
見る限りでは、巡回中のようだ。
眩しそうに手を顔の前に翳し、額に浮いた汗を拭い取って、
自動販売機の前に立つ。

      ピッ
         ガシャンッ

購入した水を一気に飲み干し、木陰のベンチに腰を下ろす。
そして、街を行き交う人々に視線を向けた。
この気温とあって、流石に歩いている人の数は少ない。

(この中にも――『いる』のだろうか……)

一見したところ、ごく普通の人間にしか見えない人々――。
その中に、超常的な力を持つ者が紛れているのだろうか。
あれから新たな手掛かりは掴めていない。
相変わらず、全くの手探り状態だ。
『超能力』――その言葉だけが、
『謎の答え』を知るための唯一の糸口と言っていいだろう。

「『超能力』――か……」

考え事の最中に、思わず『独り言』を口にする。
近くに誰かがいれば、それが聞こえたとしてもおかしくはない。
『脳が過熱している』と取られかねない台詞だが、
『力を持つ者』であればピンと来るだろう。

496斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2018/08/08(水) 22:30:28
>>495

――街を行き交う人々の内に、1人
 コーヒー店の紙袋を片手に、貴方の近くを通り過ぎようとした少年が
 独り言を呟いたと同時にピタリと歩みを止めて振り返る

(――……『警官』?)
(オカルトからは程遠い職業だと思ったが……この町で『超能力』と聞く場合は)
(私的に関わり合いにはなりたくない人種だが、そう考えてられないか)

首に赤いスカーフを巻いた黒いジャケット姿の少年は
乾いた足音を、熱気で歪むアスファルトに打ち付けながら貴方に近づき
およそ2Mの時点で立ち止まった、素肌には汗一つかいておらず
見つめる眼差しには氷が入ったような印象を受けるだろう

(『近距離型』ならこの射程ギリギリか…殴られても届かないか、パワー不足で済む)


「そこの、暑そうにベンチに座る警官さん」
「座ったままでいい、あんたに一つ、質問したい事が有る」

僅かに息苦しさを滲ませながら、開いた口から聞こえる声は
冷えるような声色で貴方の耳に届く

       「――『見えているか』?」

(ま、相手が解らなくても、『俺』が変人扱いで済む話だ)

497桐谷研吾『一般人』:2018/08/09(木) 19:44:27
>>496

「――……」

少年に気付いていないかのように無言でペットボトルを傾け、
渇いた喉に水を流し込む。
そして、下ろしたボトル越しに少年の姿を目視した。
手元の水を思わせる悠然たる静かさで、
少年が発した言葉の意味について思考を巡らせる。

(ごく自然に考えると……今の『見えるか?』という質問は、
 僕の『独り言』を受けてのものだろう)

(つまり、
 『普通の人間には見えないものが見えるか?』と聞いているわけだ……)

(しかし、僕には――それが『見えない』)

僕が『それ』に関して知っていることは多くはない。
分かっているのは、『それ』が『超能力』のようなものであり、
普通の人間には見えないらしいということだけだった。
それ以外の手掛かりは、全く皆無の状態だ。
だからこそ、『知る必要がある』。
いや――『知らなければならない』。

「――あぁ、すまないね……。
 恥ずかしい話だけど、ついボンヤリしてしまっていたみたいだ。
 さては、この熱気でやられたかな?」

間を隔てるボトルを退けると、軽く頭を抑えて少年と向き合う。
内心の考えを表には出さず、暑さのせいで気付くのが遅れた振りをする。
もっとも、暑さに参っているのは本当なので、
そこは演技半分本気半分というところだ。

「でも――お陰で、今の意識は明瞭だよ」

「――『見えている』。『ハッキリとね』」

まるで今の天気について話すような、
さも『当たり前じゃあないか』という口調で、力強く断言する。
これは勘だが、おそらく彼は何か『探り』を入れてきたのだろう。
僕には、まだ警官としての経験は浅い。
ただ自慢じゃないが、
警察学校時代は『直観力は悪くない』という評価を貰っていた。
あちらが探りを入れるのなら、こちらはそれを『逆手に取る』ことにしよう。

498斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2018/08/09(木) 22:36:41
>>497

(これが、普通の人間なら一生に伏す問だろうが……)
(スタンド使いでいいらしいな、この警官)

 「――……そうか」
 「そうか……」


(だが……だが、今一つだけ……何を『ハッキリと』見えてる?)
(俺は『スタンド』を展開していない)
(『スタンド使い』でも『展開されていないスタンド』は見えない)
(『スタンド使いだと想定した、スタンドを出していない相手からの質問の答えとしては妙だ』)

僅かに思案するように俯き、貴方の瞳を覗き込む少年の全身に
足元から鎖が巻き付いていく、一定間隔で続く足踏みからはメトロノームのような印象を受ける

(……何の根拠もない勘だが、この警官、行動と言動がチグハグだ
 本来なら、会う確率も相当に少ない使い手同士、もし警官と言う職業でこの街を見て回るなら
 全てではなく一部を知っている……つまり)

足踏みが止まり、周囲の雑踏から生まれる騒音が、水を引いたように聞こえるほどの冷たさで
少年の口から失望と諦念交じりの言葉が放たれる

(『なりたてのスタンド使い』もしくは
 スタンドと言う単語を知らないが、起された事実から何か超能力のようだとアタリをつけている)

 「つまり、貴方は『見えてもいない』し、ハッキリと『知っている』わけでもないわけだな」

(『逆に、探りを入れてきている』というのも飛躍している発想ではないな……
 確信には未だ弱いが、彼の次の行動でそれは解る)

「外したみたいだ、帰る」

そう告げると、彼は踵を返して雑踏に紛れ込もうとするだろう。

499桐谷研吾『一般人』:2018/08/10(金) 01:15:21
>>498

「ああ、よく見えているよ」

「――この太陽の下の『君の姿』はね」

最初から、『何が見えているか』は言っていない。
それは彼も同じだ。
だからこそ、この質問が『探りらしい』と察しがついた。
そして、対象が明確でないからこそ、後からどうとでも言える。
これが探りを入れる行為である以上、その点は元より織り込み済みだ。

(そして今の反応で分かったことは、
 彼は『手掛かりを握る者』だということだ。
 やはり、この『街の中』に、この『人々の中』に、
 『力を持つ者』は潜んでいる)

『鎖』は見えていない。
よって、そちらに注意を向けることもない。
だが、彼の表情と言動を見ていれば、
彼が『そうである』ことは容易に想像がつく。

「ははは、正解だよ。慣れないことはするものじゃあないね。
 ガッカリさせて悪かった。いや、申し訳ない」

「――では、『熱中症』に気を付けて」

呆気ない程にアッサリと自分の素性を明かし、
立ち去ろうとする少年に声を掛ける。
その途中で、右手の人差し指をピッと立ててみせた。
もう片方の手で、曲がった帽子の角度を直す。

「今、思い出した。
 一つ聞きそびれたことがあるんだけど、いいかな?」

「さっきは僕が君の質問に答えた。
 礼儀の押し付けをするわけじゃあないけど、良ければ、
 今度は僕の質問に答えて欲しいんだ。
 『この暑い中、これ以上警官なんて面倒な人種に関わりたくない』
 っていうのじゃあなければね」

まだ二十歳そこそこの若い警官。
その顔立ちや表情は好青年といった印象を持っている。
少年の冷たい眼差しとは対照的と呼んで差し支えない。

「――『ある人』を探してるんだ。
 かなり『特徴のある外見』だったから、
 君が見かけたことがあるかどうかを聞きたくてね。
 
「ああ、そういえば『年も』君と同じくらいだったな」

『外した』という言葉と、いかにも失望したような態度。
それらの要素から、彼は『力を持つ者』を探していると推察できる。
つまり、背景や形は違えど、目的自体は僕と同様だと言える。
ハズレを引いたとあっては、
自分が彼の立場でも同じようにガッカリしただろう。
この質問を彼に振った理由は、大体そんなところだ。

500斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2018/08/10(金) 01:42:03
>>499

帰ろうとする足を止め少年が独り言のように、しかし貴方に届く様にハッキリと呟く

「――『3回』だ」
「馬鹿にせず話を聞いた事、願ったとおりに椅子に座ったまま返答した事、礼節を持って俺の相手をした事」

背を向けた少年は立てた指を折りながら振り向き
貴方に再びその瞳を向ける、夏風に赤いスカーフを僅かに震わせながら

「面倒なのは認める、嘘をつかれたのも気にくわない、が、自分に応じて『3回』だけ質問に答える」
「罪悪感や後悔は精神の瑕だ、成長ではない、それを俺の心に残すのは許さない」

(ま、事情も知らないのだから、仕方ない、仕方ない
 憎むべき仇だが、憎悪というのは消耗品だ、無駄遣いする時でもない)

「散歩で出てくるのも久方ぶりだったんだが……」

「――最初の一つは『尋ね人』でいいのか?
 その『特徴』だと知らないとしか答えないぞ、警官(カラス)さん」

極めて無表情に、蒸気で歪むアスファルト上に立ちながら、膨大な見えない鎖を巻き付けた彼は貴方に問いかけている。

501桐谷研吾『一般人』:2018/08/10(金) 02:19:17
>>500

「――なるほど、『三つ』だね。ご協力に感謝するよ」

身も蓋もない表現をすれば、『餌』のつもりだった。
彼は、『力を持つ者』を探しているようだ。
そして、僕も『力を持つ者』を探している。
もし、その事実を彼が悟ったとすれば、
僕の言う『ある人物』と『力ある者』の二つを、
結び付けて考えるのではないかと予想したのだ。
だからこそ、
この『情報』に食い付いてくれれば有り難いと思っていたのだが……。

(『予想外』だけど『想定以上』――。
 どうやら、僕が思っていた以上に『出来た』人物だったようだ)

「じゃあ、まず一つ目いいかい?
 僕は、まだ『特徴』については何も言っていないよ」

「『白い長髪で赤い目を持つ黒いワンピースを着た少女』
 を見かけたことがないか教えてもらいたい。
 しばらく前に、『歓楽街』の路地裏で少し話したんだ。
 『超能力』に関する話題についてね」

実際のところ、これは聞かなくてもよかった。
これはむしろ、質問に応じてくれた少年に対する『謝礼』のようなものだ。
どう受け取ろうが少年の自由だが『情報提供』と呼んでも間違いではない。

「それから、二つ目……この『超能力』の『概要』をご教授願いたい」

『鎖』は見えていない。
少年の前にいる警官にも。
少年の周囲を歩く人間達にも。

502斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2018/08/10(金) 20:39:02
>>501

「――少し待て」

少年が僅かに俯き、記憶の底を漁りだす

(白髪、赤目、黒い服、女性……『スタンド使い』だというなら恐らく、展望台の彼女、『幸運を呼ぶ女』
 ……恐らく、言わなかったな、巻き込まないためかは知らないが)

少年が自らの記憶の探索から戻り
ゆっくりと顔を上げると、その瞳でしっかと貴方の顔を見、口を開く

「まず、『一つ目』に回答しよう」 

    「『俺』は知らない」

(悪いが、彼女と俺とでは思考回路が違う…他人だ)

「だが、恐らく知り合いだろう 会った事もある」
「彼女の事については話さない、あんたの質問は『知っているか』だけだからな」
「これで『一つ目』」

少年が喋り終え、指の一つを折る
顔の表情は変わらず、淡々と冷たい声で喉を震わす

(彼女には……悪い事をするな)

僅かな沈黙の後、二本目の指を指し示して貴方に告げる

「二つ目を再確認しよう」
「『概要』、概ね、様々な物事を、全体を大まかに表現するのに都合のいい言葉……」

「だからこう言う、それは『力』だ、超能力だのという名前は単なる上っ面に過ぎない」
「『引力』『傍に立つ』『立ち向かう』『物理法則を無視する、人の精神の具現』」

「……そして『力を持つ』という事は、『敵を作り増やす』という事」
「求めれば、あんたには『敵』が増えることになる、純然たる事実として、な」

……注意深く観察すれば、僅かに少年の声色に好奇の色が混じる事が解るだ

(――だから教えた、『自分の手を汚さず、死んでもらう為に教えた』……最も、俺が言わずとも
 この警官が、『真実に到達しようとする意志』を持ち続けていたら、遅かれ早かれ、死ぬには違いないが)

(喋ってしまったのは義理立てって所か…遠いな)

「――必要以上に喋ったが、これで『二つ目』
 最後の『三つ目』を聞こう、それが『ルール』、答えたら、俺は帰る
 それで、あんたとは最後だ、恐らく二度と会わない」

――少年は無機質な表情を崩さぬままに、貴方の質問を待っている。

503桐谷研吾『一般人』:2018/08/10(金) 22:30:41
>>502

第二の質問の答えを聞いて、納得したように小さく頷く。
それがどんなものであれ、情報は情報だ。
知識がない僕にとっては、有益ではある。
特に、『精神』という部分に引っかかりを覚えた。
どうやら、その力は『精神』に由来するものらしい。

(『精神』――『精神』か……)

そう考えると、別の疑問も出てくる。
『精神』というのは、何も人間だけが持ち得るものとは限らない。
たとえば犬とか猫とか、『動物も力を持ち得る』という解釈も可能だ。

「『曖昧な質問』には『曖昧な答え』しか帰ってこない。
 さっき君も同じことをやっていたね。覚えているかい?」

「君は『見えているか?』と聞き、僕は『見えている』と答えた。
 確かそうだったね。あの時、君も『要点』を言わなかったろう?
 それは単なる『偶然』かな?」

「『曖昧な質問』には『曖昧な答え』しか帰ってこない。
 これは良い教訓になるね」

この『時間稼ぎ』の意味は、少年を観察することにある。、
あの『白い髪の少女』とこの少年には、一つの『共通点』が見受けられる。
といっても、姿形が似ているという意味ではない。

話しぶりや態度から滲み出る雰囲気に、どこか近いものを感じるのだ。
たとえるなら、『奇妙な自信』と呼んでもいいだろう。
もしかすると、
それは『力を持っているという事実』から来ているのかもしれない。

ベテランの刑事の中には、初対面の相手を見ただけで、
『堅気かそうでないか』を見分けることができる者がいる。
それが可能なのは、
『その世界の人間』に『特有の雰囲気』を感じ取っているからなのだ。
僕はベテランとは言えないが、
今確かに少女と少年に共通する雰囲気を感じ取っている。

「それじゃあ、『三つ目』を言わせてもらうよ」

腕時計を一瞥する。
そろそろ交番に戻って先輩と交代しなければならない。
遅れると面倒なことになりそうだ。

「傍らに立つ――さっき、そう言ったね。
 君と同種の『力を持つ人間』を教えてくれないかな。
 『連絡先』や『住所』が分かっている人に限定してね。
 つまり、僕が会える人間を教えて欲しいんだ」

たった三つの質問で何もかも全て聞けるとは最初から考えていなかった。
そして、彼から聞けないのなら、彼以外の誰かから聞けばいい。
この少年との接触は到達地点ではない。
あくまでも『きっかけ』であり、いわば『糸の端』に過ぎない。
糸を手繰った『先』で、僕の求める『真実』を見出す。

504斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2018/08/10(金) 23:08:54
>>503

最後の質問を聞き、少年は
思案する素振りすら見せず、夏の空を一瞥してから貴方に向き直る
表情のない顔に、氷のような声を舌に載せて口を開く

「……もったいぶった割には、意味のない質問だったな」
「三つ目に答えよう」



「――……『言えない』」

――少年の瞳が僅かに煌めく
見えない全身の鎖を、崩れ落ちるように消し去りながら

「理由は」

「アンタが言ってる事は
『俺の知ってる限りの知人に、服、脱ぎ捨ててまっぱだかになれ』……って言うのと同じだ
 しかも、『信頼も信用できない赤の他人の言葉』で、そこまで身を切る必要は俺には無い」

(…しかしこの警官、直感と洞察力、観察力には優れていた……生き残るか?
 見えない時点で『素養』は無い、が、予想外と言うのは人生において常に発生し続ける物だしな……
 後は、どうか、俺の為に、俺の見えないところで死んでくれと願うくらいか。)

「これで、全部、答えたな…罪悪感もなくなった
 宣言通り、帰らせて貰う(……時間だ)」

言い終われば踵を返して、雑踏の中に紛れ込む
彼の首に巻かれた赤いスカーフも、まるで最初からいなかったかのように、人々の中に消えるだろう
そして帰路に向けての歩みの中で、手首に巻かれた、古い腕時計の螺子を回す

(――……ん、あれ……? そうだ、僕、コーヒー店の帰りで……早く帰らなくっちゃあな
 お祖母ちゃん、心配してないと良いのだけど。)

505小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/09/27(木) 00:31:45

初秋の大通り――その一角に佇む『美術館』で、
『絵画の展覧会』が開催されていた。
プロやアマチュアを問わず誰でも自由に参加できるという催しであり、
数多くの作品が館内に展示されている。
それらの中に、一枚の『油絵』が飾られていた。

  「――……」

額縁の中では、『白いウエディングドレス』を着た女が微笑んでいる。
絵の前に立っているのは、『黒い喪服』を着た陰のある女だ。
心なしか二人の顔立ちや背格好は、よく似ているようだった――。

506小鍛治明『ショットガン・レボルーション』:2018/10/01(月) 23:21:00
>>505

カツカツと靴が鳴らしながら人が近づいてくる。
黒い髪を持ち、黒い服を着ている少女だ。
ふと、白いウエディングドレスの絵の前で立ち止まった。

「……」

静かに絵を眺め、それから視線を小石川に向ける。
特に何を思っているとか、そういう情報が読み取れない瞳で。

507小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/10/02(火) 00:37:42
>>506

意識の大半は、目の前に飾られている絵の方に向けられていた。
そのせいで、誰かが近付いてくるのに気付くのが遅れた。
ややあって隣の少女に視線を向ける。

   ――……?

その姿を、どこかで見たような覚えがあった。
一体どこだっただろうか。
少し考えて、少女の名前を思い出す。

  「あの……失礼ですが――小鍛冶さん……ですか?」

  「私は小石川……小石川文子です」

  「――覚えておいででしょうか……?」

軽く頭を下げ、改めて自分の名前を名乗る。
美術館には、それなりの人がいるようだ。
ただ、今の時点で『白い女の絵』の前に立っているのは二人だけだった。

508小鍛治明『ショットガン・レボルーション』:2018/10/02(火) 01:17:50
>>507

「えぇ、私は小鍛治明」

「そういうあなたは小石川さん」

礼と言葉を返す。

「前に会ったのは確か、ハロウィンの時期だったかしら」

結構経つのかそれともそうでもないのか。
詳しくはよく思い出せないが。

「今日は絵を見に……来たんですよね?」

「この絵が気に入っていらして?」

509小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/10/02(火) 01:49:31
>>508

  「はい――私も、そのように覚えています……」

そう言ってから、再び絵に視線を向ける
絵を見つめる瞳の中には、複雑な色があった。
それから、また少女の方を見やる。

  「この絵は……ええ、そうですね……。おっしゃる通りです」

小さく頷いて、口元に静かな微笑を浮かべる。
それは、絵の中の女と同じ表情だ。
しかし、両者の雰囲気は異なっていた。

  「……これは、私の夫が描いた絵なのですが……」

  「この催しがあることを聞いて、他の方にも観ていただければと思い、
   こうして展示させていただいているのです」

  「――彼も喜んでくれるのではと……私は、そう思っています……」

510小鍛治明『ショットガン・レボルーション』:2018/10/02(火) 02:05:43
>>509

黒い髪を彼女の手の甲が弾く。
鋭い視線を絵に向け、それから小石川に戻す。
見比べる。
似ているが、違う。
そういう印象を得た。

「いい絵ですよ。ご結婚の際のものかしら」

「貴方の旦那様は画家の方?」

そう言って止まる。
手が口元に伸びて、唇に緩く握った拳の白い指が触れる。
思案、といった感じの表情だった。

「……ごめんなさい。この話は、続けていいのか分からないのだけれど」

「よろしくて?」

喪服と何かを繋げたらしい。

511小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/10/02(火) 02:38:42
>>510

  「――ありがとうございます……」

自分にとっては、こうして観てもらえるだけでも十分ありがたい。
それだけでなく、いい絵だと言ってもらえたことが素直に嬉しかった。
その気持ちを示すために、深いお辞儀と共に感謝の言葉を返す。

  「これは……私がドレスを試着した際のスケッチを元にして描いたものです」

当時のことを思い出しながら話す。
あれは結婚する直前のことで、その時の自分はとても幸せだった。
絵の中の自分を見ていると、まるで昨日のことのように思い出が蘇ってくる。

  「……はい、彼は絵を描くことを仕事にしていました。
   こうした油絵だけではなく、他にも色々な分野の絵を描いていましたが……」

  「この絵は一度も発表する機会がなかったもので……これを選びました」

言葉を続けながら、少女の仕草が視界に入る。
次に、その表情を見つめた。
それから、穏やかに微笑んだ。

  「ええ――どうぞ……」

512小鍛治明『ショットガン・レボルーション』:2018/10/02(火) 22:40:22
>>511

「はっきりと言ってしまうのだけれど」

「その方は亡くなられた、と解釈してもよろしいかしら」

揺らがない瞳。
変わらない声色。
刺々しくはないが鋭い言葉の色がにじむ。
すっぱりと言葉にした。

「それで貴方は今も喪に服していると。私は考えているわ」

513小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/10/02(火) 23:49:54
>>512

少女の真っ直ぐな視線を受け、軽く目を伏せる。
しかし、それは僅かな間のことだった。
一瞬の後には、また少女を見つめ返す。

  「……その通りです」

  「結婚して間もなく……彼は……」

無意識の内に、左手が右手に触れる。
左手の指先が、右手の薬指に嵌められている銀の指輪を撫でた。
それは、左手の薬指に見える指輪と対になっているものだ。

  「……それから、長い時間が経ちました」

  「ですが……私は、これからも喪に服し続けるつもりでいます」

普通は、一定の期間を過ぎれば、喪は明ける。
けれど、私の喪は明けることがない。
今までも、これから先も、生きている限り続いていく。

  「それが、彼に対する私からの手向けになると信じていますから……」

もしかすると、それは愚かな考えなのかもしれない。
そうだとしても、止めようという気持ちはなかった。
いつまでも想い続けることが、彼に対して自分ができることなのだから。

514小鍛治明『ショットガン・レボルーション』:2018/10/03(水) 00:27:08
>>513

「そう」

視線を切った。
一歩絵に近づく。
絵を見つめ、息を吐く。
いま目の前にあるものの持つ意味と、それに繋がる人間。
点と点。
繋がっているのか繋がっていないのか。

「貴方は素敵な人ね」

ぽつりとそう呟いた。
それは小石川に向けられたものだったのだろうか。
目も合わせずに言葉が零れている。

「思わぬ場所で思わぬ作品と出会って」

「人の思わぬ場所を知ったわね」

515小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/10/03(水) 01:16:41
>>514

  「――……」

何も言わず、絵に視線を向ける少女の背中を見つめる。
自分と同じ黒い装いの少女。
その色が意味するものは何なのだろうか。

  「私も、思わぬ場所で思わぬ方と出会えました……」

今日、こうして再会したのは、きっと偶然なのだろう。
だけど、もしかしたら何かの縁があったせいかもしれない。
ふと、そんな考えが心の中に思い浮かんだ。

  「そして……思わぬ言葉をいただきました」

一歩足を進め、再び少女の隣に並び立つ。
その視線は、少女と同じように絵の方に向けられていた。
壁に飾られている額縁を隔てて、絵の中にいる過去の自分と、
今ここに立つ現在の自分が向かい合う。

  「小鍛冶さん……」

  「この絵の前で足を止めてくださったことに、心から感謝します」

  「彼に代わって、改めてお礼を言わせてください」

  「本当に……ありがとうございます……」

真摯な思いを込めた言葉の後で、深々と頭を下げる。
先ほど口にした謝辞は、自分の気持ちを示すためのものだった。
これは、絵を描いた彼の言葉を代弁したものだ。

516小鍛治明『ショットガン・レボルーション』:2018/10/03(水) 01:43:41
>>515

「そう。でも、感謝をされる筋合いというのはないわ」

「いいものを見て、いいと言うのは当然のことよ」

髪を触る指。
黒い髪に白い指が潜り込んでいる。

「それじゃあ私はそろそろ行かせてもらうわ」

「用がある作品があるの。えぇ、この絵には及ばないものだけれど」

(私の作品が、ね)

517葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2018/12/25(火) 17:29:02

何か用事があったというわけでもなく、なんとなく町を歩いていた。
なんとなく町を歩く。小雨が髪を濡らす。良い気分だ。
            パタ
         
「…………」

           《お嬢様、じきに本降りになりましょう。
            今の内にお纏い下さいませ》

「また……勝手に出てくる……」

ただでさえその赤い髪と目、大きな黒いリボンは目立つのに、
その傍らには『蝙蝠傘』を人型に組み直したような異形の『従者』。

           《『雨具』の本懐です故、どうぞお赦しを》

「……目立つから、そこ、入るよ」

本降りの雨の中を闊歩するのも気分は良い。
気分は良いが……風邪を引くのは、いやだ。

従者の勧めに素直に従うのは少し癪だが、
屋根のある路地裏に入り込み彼の能力を使う事にする。

・・・ただでさえ目立つ格好が、そんな目立つ事をしているわけだ。

518美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/12/25(火) 22:51:39
>>517

「出掛けた矢先に降られちゃうとは、我ながらツイてないわねぇ」

思わずグチを零したくなるが、それで雨が止んでくれる訳もない。
仕方なく、ひとまず屋根のある場所に入る事にする。
そこで――――『吸血鬼』を思わせる少女と、奇怪なスタンドに遭遇した。

「………………」

その時、チラリと見てしまった。
見たというより、たまたま視界に入ってしまったという方が正しいかもしれない。
とにかく、その光景を目撃してしまったって事になる。

(自分で喋るスタンド――『コール・イット・ラヴ』と似てるわね)

自然公園で出くわした少女のスタンドを思い出す。
あの『コール・イット・ラヴ』と名乗ったスタンドは、
自分の意思を持っているようだった。
この『蝙蝠傘』のスタンドも、きっとそうなんだろうと思う。

(さて、どうしようかしら)

私は向こうのスタンドを見た。
その視線には気付かれただろう。
黙ったままというのは何となく居心地が悪いし、
かといってスタンド使いである事を指摘するというのも違う気がする

        ――シュンッ

ラフなアメカジファッションの女の肩に、『機械仕掛けの小鳥』が止まる。
ちょっとした挨拶のようなものだが、どう受け取られるかまでは分からない。
もちろん、この何処か『吸血鬼』を連想させる佇まいの少女が、
まさか『本物』ではないだろうと判断した上での行動ではあったが。

519葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2018/12/25(火) 23:04:08
>>518

「……」

「……? 『エヴリウェア』?」
 
              ≪――――お嬢様。面目御座いません。
                お言葉通り、『目立って』しまったようで≫

「!」

       バッ

振り返った。美作と、目が合った。

吸血鬼――――というには、
愛嬌ある顔だちの少女だった。   
冷たい美貌とはまるで違う。

だが、どこか異様――――『非現実』の風ではある。

「…………」

(どう、しよう。あれ、スタンド……だけど、
 私のを見て、びっくりして出しただけ……かも)

       (……悪い人、じゃなさそう) 

              ≪万一も御座います、故に。
                ――――警戒失礼致します、ご婦人。
                そしてお嬢様、遅ればせながら『お纏い』下さい≫

                主の考えには同意する。
                悪意は感じない、ゆえに謝罪のあと、
                あくまで念のためその身を主に委ねる。

「……ん」

            『ベキバキッ』

      『ミシ』  『ボギ』     『パタパタパタ』

そして何より異様なのは、その『従者』が『変形』し、
骨と皮膜で構成された赤黒の『レインコート』として少女に纏われたこと!

「……あのっ、ええと。その。
 …………こんにちは! 見えてます、か?」

                 「その、すみません。……驚かせちゃって」

520美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/12/25(火) 23:36:35
>>519

「…………わぉ」

スタンドに生じた変化を目の当たりにし、小さな呟きが漏れた。
少女が言うように、『驚いた』というのが正直な感想だ。
『蝙蝠傘』と『レインコート』――共通点は『雨具』だろうか。

「ううん、いいのよ。私は全然気にしてないから」

「こっちこそ変な事しちゃってゴメンなさい。何かしようって訳じゃなかったんだけど」

「そこの『エヴリウェア』さんを見たもんだから、つい。ホントにゴメンね」

     アハハハ

開いた両手を軽く上げて、申し訳なさそうに笑う。
ちょっと軽率だったかもしれない。
でも、本当に危険な相手なら、こんな場所で目立つ行動は取らないだろうし。

(というより――――日頃から警戒が必要なのは私の方かもね)

自身のスタンドを考え、ひそかに胸中で思う。
『プラン9』の専門は『情報』だ。
純粋な力や速さを一切持っておらず、
あぶらとり紙の一枚さえ持ち運ぶ事ができないのだから。

「ね、『プラン9』」

『小鳥』に語りかけるが、当然答えは返ってこない。
肩の『小鳥』は囀る事もなく、ただ黙って佇んでいる。
遠目から見ると、アクセサリーか何かに見えるかもしれない。

521葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2018/12/25(火) 23:59:30
>>520

「いえ、その、私も大丈夫、です。
 こっちが、先に出しちゃってた、ので」

       モゴ

「その……こっちが悪い、です。……」

         チラ

             ≪ご無礼をお詫び申し上げます、
               早計が過ぎました、ご婦人。
               それに――――『プラン9』殿≫

「……もう」

やはり『半自立』のスタンド。
本体とは違う気持ちを持ち、動き回る影。

        サ
             ア 
                 ア   ・ ・ ・

小雨をBGMに、穂風は肩の鳥に視線を向けた。

「『プラン9』さん、って、言うんです……ね。
 その、『鳥さん』……スタンド、なんですよね?」

             ≪同輩の気配を感じます故≫

(そんな気配とかあるのかな……)

鳥のスタンド。穂風のスタンドも異形だが、
人型ではないスタンドは比率的には『珍しい』のかもしれない。

「えへ、でも……なんだか、かわいい感じ……ですね」

ただ、穂風にはスタンドだからとかではなく、
肩に乗る鳥、というのが珍しく、愛い物に思えた。

        (……ペット、とか。ちょっと憧れる……けど。
          でも、かわいいだけじゃない、よね。きっと)

自分のが口うるさくておせっかい焼きなだけじゃないように、だ。

522美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/12/26(水) 00:34:48
>>521

「じゃあ、『おあいこ』って事にしときましょうか。それで、この問題は解決よ」

自分の意思を持ち、言葉を話し、行動するスタンド。
やはり、『マスキングテープのスタンド』と同じだ。
当然ながら、その性格には違いが見られるのだが。

「ええ、そうよ。僭越ながら『ご同輩』ね」

「褒めてもらってありがとう。可愛いでしょう?私も気に入ってるの」

「でも、『エヴリウェア』さんもイケてるわよ。何ていうか風情がある佇まいよね。
 あなたとのコーディネートも上手くできてると思うわ」

少女と『従者』を交互に見比べる。
スタンドは本体の精神の発露。
この少女がどんな人物かは知らないが、何処となく似合っているような気がする。

「それに、お話もできるみたいだし。
 前にも一度、そんなスタンドを見かけた事があるのよ。
 私の『プラン9』はお喋りしてくれないから、ちょっと羨ましいかな」

目の前のやり取りを見ていると、実際は苦労もあるかもしれない。
ただ、自分が持たないものでもある。
ボディに『マイク』と『スピーカー』を備えた小鳥――
『プラン9』は無口であり、『従者』とは対照的だ。

「私は美作っていうの。美作くるみ」

「スタンドの自己紹介をした訳だし、せっかくだから名乗っておくわね」

まだ雨は止まないし、名前が分かった方が話はしやすい。
そう思って、名前を名乗った。
静かに佇み続ける『プラン9』は、外見と同じく機械的な雰囲気があった。

523葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2018/12/26(水) 01:05:50
>>522

「あ、はいっ。それでお願い、します」
 
       ペコリ

丸く収まったようで安堵する。

         ≪お褒め頂き、光栄の至り。
           お嬢様を着飾るのも、
           『雨具』としての勤めですゆえ≫

「……そうです、か?」

(見た目は、まあ、嫌じゃない、けど。
 ……性格もべつに、嫌って訳じゃないけど)  

胸を張るようなしぐさを見せる従者を、
なんとも複雑な表情で見やる穂風。

「皆さん、その、言ってくれます。
 お喋りできるの、うらやましいって」

「……私は、その鳥さんみたいに、
 その……静かでかわいいのも、羨ましいです」

            ≪……≫

「あ、う……別に、うるさいのが、
 …………嫌とかじゃ、ない……から」

            ≪ええ、存じておりますとも。
              ご信頼をいただいている以上、
              いえ、仮に頂かずとも――――
              私めは常に『従者』に御座います≫

             煙たく思われても、忠言はいつか主の為になる。
             主も、それを何処かでは理解してくれている。

「……そ、う」

穂風と従者の関係は一言で表しづらいものだ。
信頼はある。かけがえのない存在でもある。
それはそれとして、なんとなく煙たい時もある・・・

             ハトリ ホフリ
「あ、ええと、その。『葉鳥 穂風』と、いいます」

             ≪改めまして――――お嬢様の従者にして、
               『雨具』にして、スタンドで御座います。
               私めの名は、『ヴァンパイア・エヴリウェア』≫

                        ≪――――お見知りおきを≫

524美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/12/26(水) 01:35:28
>>523

「葉鳥さん、改めてこんにちは」

「そして、『ヴァンパイア・エヴリウェア』――――ね」

「やっぱりイカしてるわね。その名前も覚えておくわ」

その名前も、少女には似合っているような気がした。
少女に対して、吸血鬼っぽい風体などとは流石に言えないが。
それでも、精神の象徴なだけあって、相応しいという感じはする。

「それなら、私もちゃんと紹介しておかないとね」

「『プラン9・チャンネル7』よ。この子の代わりに、私の口から言っておくわね」

肩の『小鳥』に視線を向ける。
もう一人の自分であり、小さなパートナー。
厳密には喋る事もできなくはないが、挨拶はできない。

「この名前も気に入ってるのよね。私にピッタリだから」

「私、ラジオの仕事やってるの。いわゆるラジオパーソナリティーってヤツ」

「『Electric Canary Garden』って番組でね。私が色々お喋りする小さな『箱庭』よ」

525葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2018/12/26(水) 02:18:07
>>524

「はいっ、こんにちは……くるみ、さん」

         ≪それはそれは、
          身に余る光栄に御座います。
          美作様、そして――――
          『プラン9・チャンネル7』様≫

               ペコォーーーッ

礼節正しく頭を下げる従者と、
笑みを浮かべ、挨拶を返す主。

「ラジオ、ですか……!」

ラジオは知っている。
昔から聞いていたし、
『外』に憧れた理由の一つだ。

もっとも、美作の番組は知らないけれど。

「すごい、です……ラジオの、喋る人、なんて。
 とってもすごい……人、なんですね。美作さん」

            キラキラ

それでも憧れの視線を向ける。
なりたい!と言う憧れというより、
有名人に会うというのが穂風には新鮮だ。

「その、ええと。何をしゃべってるん、ですか……いつも。
 ええと、例えば……ううん、その、音楽の事……とか、ですか?」

526美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/12/26(水) 02:54:52
>>525

「アハハハ――その言葉は嬉しいけど、そんなにスゴい事もないわよ?」

羨望の視線を向けられて、笑いながら軽く片手を振ってみせた。
ここまで言われる事は少ないので、やや照れもある。

「私は、まぁ『それなり』だから。順位としては、そこそこって感じね」

まぁまぁの人気はある――と、自分は思ってる。
昔ほどではないけど。
それでも、支持してくれる人がいるのは決して悪い事じゃない。

「私が喋るのは――『楽しい事』かしら。
 流す音楽の事や、新しいお店の事や、普段のちょっとした話なんかね」
 
「聴く人が楽しい気持ちになれるような話題を提供してるってところよ」

「私の話を聴いて、少しでも皆に楽しんでもらう事が、私の目標だから」

かつては歌で、今ではトークで、それを目指す。
フィールドは変わっても、そこは変わらない部分だ。

「葉鳥さんは、ラジオは好きかしら?」

「私は好きよ――って、これは当たり前だけど、ね」

527葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2018/12/26(水) 04:00:54
>>526

「順位……順位が、あるんですね。
 知らなかったです、その……
 でも、どんな順位でも、あの、
 ラジオで話してるのが、すごいなって」

       モゴモゴ

「私、その、あまり話し上手でなくて。
 ラジオ聴いてると、皆さん、凄く上手で。
 お仕事だから、そういうものなのかも、
 その……しれない、ですけど。でも」

時折もごもごと言葉を濁しつつ、
穂風は己の語彙を動員して、よく話す。

「楽しい事――――ですか」

          ≪バラエティーと言った所、ですかな。
            私めも詳しい訳では御座いませんが≫

(私よりは、詳しいけど……)

「は、はいっ、好き、です。
 最近はあまり……聞けてない、ですけど」

学校に通っているから。
昔は通ってなかったから、夜長に楽しめる娯楽だった。
何を想って、与えられていた娯楽だったのかは、
今となっては――――穂風には定かではないが。

「でも、好きです。あの……『想像』出来る、から」

         「お話とか、音楽とか、聴いて。
          それがどんなに楽しいか、って」

                 「考えて、もっと……楽しめる、から」

後見人が出来てから、今風の娯楽もいろいろ知った。
スマートフォンも持ってるし、動画サイトなんてのも知っている。

けど、ラジオはそれとは別のチャンネルで、楽しい事を届けてくれる。

528美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/12/26(水) 14:35:26
>>527

「ああ、ハッキリしたランキングみたいなものがある訳じゃないのよ。
 順位っていうのは言葉のアヤってヤツでね。
 人気があるかどうかっていうのは順位に近いかもしれないけど」

「言い方が紛らわしくって悪かったわ。
 つい普段のノリで喋っちゃって。
 要するに、私の人気は『まぁまぁ』くらいだから、
 そんなにスゴくないって事が言いたかったの」

こういったタイプとはあまり接した経験がなかったために、
少しだけ戸惑いがあった。
何というか、ピュアというのだろうか。
表現しにくいが、一般的な人と比べて世俗的な匂いが薄いような気がする。

「そうね……『バラエティー』っていうのは中々いい言葉だと思うわ。
 よく分かってらっしゃるじゃない」

軽く頷いて、『ヴァンパイア・エヴリウェア』に同意を示す。
そして、穂風の話を静かに聴きながら、僅かに目を細める。

(やっぱり不思議な感じがする子ね)

彼女の生まれ育った環境がどんなものであったか。
当然それは知る由もない。
それでも、やはり普通とは違った雰囲気がある事は察せられた。

「『想像』――――ね」

「その言葉、他のパーソナリティーにも伝えておくわ。
 きっと喜ぶと思うから」

「現に、今私が喜んでるんだもの。素敵な言葉をありがとう」

       ニコリ

化粧っ気のある顔に、明るく気さくな笑みを浮かべる。
こういう時が、ラジオの仕事をしていて良かったと思う瞬間だ。
もしアイドルを続けていたとしたら――知る事はなかったかもしれない。

529葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2018/12/26(水) 21:44:50
>>528

「あっ、そ、そうなんですね。
 すみません、その、早とちりで」

(美作さんで、スゴくないなら、
 スゴい人ってどんななんだろう。
 こ、こっちが言う前に、分かったりするとか……?)

穂風は知らないことが多い。
いろいろな事を知れるのは美点だが、
なんとなく話がかみ合わない事もある。

          ≪本日は良くお褒め頂きますな。
            私めには、身に余る光栄で御座います≫

「……調子、乗らないでね」

          ≪とんでもございません、お嬢様≫

やはり誇らしげな従者に視線を流しつつ、
美作の笑みには、同じく明るい笑みを返す。

      ニコォ〜ッ

「あ、いえ、そんな。えと、こちらこそありがとうございます」

「あの、ラジオ、『エレクトリック……』」

             ≪……≫
                     ボソボソ

「……カナリア・ガーデン』!
 あ、と、ちゃんと、覚えておきます、から。
 またお休みの日とかに、聴いてみます」

             「その、楽しみにしてますっ」

もしかすると、『ファン』というやつが1人増えたのかもしれない。

530美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/12/27(木) 19:41:21
>>529

(何だかんだ言っても、やっぱり良い関係みたいね)

番組名を主人に伝える従者を見て、そう感じた。
そういうのを見てると微笑ましい気分になる。
自分も従者とは言わないが、そういう相手が欲しいと思えてくる。

      …………現在、『募集中』だ。

「ありがと。葉鳥さんが聴いてくれたら、私も嬉しいな」

ファンが増えるのは、何よりも喜ばしい事。
それに関しても、昔と変わらない部分と言えるのかもしれない。

 「あ、そうだ――って、名刺入れ置いてきちゃったか」

   「いや、待てよ……」

      「あ、あったわ……」

         ゴソ ゴソ

スタジャンのポケットを漁るが、目的の物は忘れてきてしまっていた。
途中、ふと思い出して財布を手に取る。
名刺入れを忘れた時のために、財布にも一部入れていたことを思い出したのだ。

「これ、良かったらどうぞ。放送局とか放送時間とか、色々書いてあるから」

鮮やかなグラデーションで彩られた名刺を差し出す。
『Electric Canary Garden』と『パーソナリティー:美作くるみ』の文字が、
細身のシャープなフォントで印刷されている。
片隅に描かれているイラストは、
『電源コード付きの丸みを帯びたデフォルメ調のカナリア』だ。

「この子はイメージキャラクターの『電気カナリア』。私がデザインしたの。
 くるみ共々よろしくね」

イラストを指差して、そう付け加えた。
それから、雨の方に視線を向ける。
話している間に、少しずつ弱まっていたようだった。

531葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2018/12/27(木) 21:15:02
>>530

「えへ……あっ。ありがとうございますっ」

           ゴソリ

ポケットに名刺を入れた。
これで番組を間違える事もない。

          ≪――――お嬢様。空を。
            どうやら通り雨だった模様で≫

「そう、みたい……」

「あの、私、そろそろ。
 その、行こうって、思います」

理由はとくにないけれど、
雨の切れ間だったし、
ちょうど話題の切れ間でもあった。

「今日は、ありがとうございました! それでは、また……!」

           ≪お寒い季節です故、御息災を。
             またお会いしましょう、美作様≫

そうして穂風は歩きだし、雨上がりの町へと溶け込んでいく。

532美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/12/27(木) 22:21:09
>>531

   「 『Goodbye』 」

       「 『and』―――― 」

            「 『See you again !!』 」

主人である少女と、精神の片割れの従者を見送る。
雨に降られてツイてないと思ったけど、そうでもなかったみたいだ。
神様も案外、粋な計らいするじゃない。

      キュッ

「さてと――『私達』も行きますか」

肩の上の『小鳥』に小さく声をかけ、キャップを被り直す。
歩き出し、その姿は街の中へ消えていく。

ある雨の降る日の小さな一幕だった――。

533門倉『ソウル・ダンジョン』:2019/01/01(火) 22:32:54

 「………ふゥゥ〜〜〜〜」

栗色のソフトモヒカン、ワインレッドのジャケット、20代半ばの男が、
わざとらしいほどの溜息を繰り返すのは、『駅』近くにある彼の行きつけのファミレス。
年明け早々、派手ともいえる外見に反してなにやら陰気な雰囲気を漂わせていた。

ファミレス自体はそれなりに混雑している。そしてこのファミレスは時折『相席』を求められる事もある。
あるいは近くの席に座っているならば、彼の仰々しい『溜息』は『気になるもの』として感じられるかもしれない。

534斉藤刑次『ブラック・ダイアモンド』:2019/01/02(水) 19:32:34
>>533

    「……何か『悩み事』でもあるんスかァ〜〜?」

      「いやね、“お一人様でゆっくりしたかったのに、
       相席に来たのが『カワイコちゃん』でもねえ『こんなナリ』のヤローだとは思わなかった”
       ……ッつゥのもワカランでは無ェ〜ッスけどォォ〜〜」

向かいあった席からの声。
赤と黒の入り混じった派手めの髪、ドクロのシルバーアクセをゴソゴソつけた、
ひと昔前の「信念持ってバンドやってます!近頃のJポップはクソ」とか言いそうなルックスの青年が
心配そうというか、迷惑そうというか、そんな感じの眼差しで門倉を見つめている。

   「まァ……メシぐれーは楽しく食いましょーよォ…!」

           ピンポーン

     「あ、オネーサン、俺ランチセットで」

535門倉『ソウル・ダンジョン』:2019/01/02(水) 21:16:49
>>534(斉藤)
「そういう悩みもあるにはあるがね………」

向かい合う席のバンドマン(だろう)『斉藤』を一瞥する門倉。
門倉自身もきちんとした社会人の身なりとは到底言いがたいが、
そういうのは棚にあげた視線だ。

「あ、君。俺もその…ランチセットで。飲み物はコーヒーでいい。アイスで。

 そういえばあの店員は今はいないの? ツインテールの。

   ――あ、辞めた。
                                ………そう」

結構前からちょっかいかけていたツインテールの店員も辞めてしまったようだ。
なんだかやけに時が経ってしまったような感覚を覚える門倉だった。

「………そういう君は楽しそうだね。やっぱり悩みなんてないのかい?」

眼前の青年に何の気なしに語りかけてみる。

536斉藤刑次『ブラック・ダイアモンド』:2019/01/02(水) 21:57:15
>>535

 「いやァ〜〜俺こんなッスけど、悩みまくりッスよ」

  「年末特番録画忘れたり、バイトで年下に怒られたり、
   知り合いが軒並み『インフルエンザ』に罹って連絡取れなかったり、
   親父は自営業なんスけど、最近ヒマそーだしよォォ〜〜」

気まずそうに後頭部を掻きながら小市民的な悩みを吐露する。
体が揺れるたびにチャラチャラとアクセサリーがうるさい。

  「おじ……オニーサンもパッと見、
   フツーの会社員ッつーカンジじゃねーケド芸能関連の人ッスか?
   俺、実はバンドやってんスけど、CDとか聴いてみてくんねーッスか?」

『おじさん』と言いかけてやめた青年は、黒い革のバッグからペラペラのCD-Rを取り出そうとしている。
実際の年齢は二人ともさほど変わりないのだろうが、門倉は年上認定されたようだ。

537門倉『ソウル・ダンジョン』:2019/01/02(水) 22:23:58
>>536(斉藤)
「へェ―― タイヘンそうだねェ〜〜〜」

自分から話を振ったにも関わらず、人の悩みにはあまり興味なさそうな返答の『門倉』。
あらかじめ運ばれた冷水にズズイと口をつける。

「いや、芸能関係なんてモノじゃあないよ。ただのふど………」

 何かを思い出したらしくしかめ面をする『門倉』。
   彼の悩みは仕事がらみの事なのかもしれない。

 「………まあなんであれ、せっかくの出会いだ。聴いてみよう。
  といってもさすがに今すぐは無理か。
   聴ける機器なんて今どき持ってはいないだろうからね」

 一応、CD-Rを受け取ろうとする。

538斉藤刑次『ブラック・ダイアモンド』:2019/01/02(水) 22:47:15
>>537
  「ま、仕事以外の悩みも色々ありますしねェ〜〜……
   お気に入りのファミレス店員が辞めちゃったりとか、色々ね」

最初の店員とのやり取りもちゃんと聞いていたようだ。
悪意は無いのだろうがニヤついている。

  「不動産屋ッスか?オニーサン、仕事で悩んでんスか?」

言いかけた部分を取りあえず無遠慮に拾っていく。
CDは、まあ宣伝のつもりでそのまま渡す。あまり意味はない。

539門倉『ソウル・ダンジョン』:2019/01/02(水) 23:07:18
>>538(斉藤)
「………」

 『斉藤』の意味ありげなニヤつきに少しの間、沈黙しつつも

「不動産屋……そう、だったんだがね」

 『斉藤』の問いかけに再び口を開く。

 「ちょっと店がね。
               その………『爆破』してね」

少し前に世間を騒がせた某不動産チェーン店のスプレー破裂事件。
その影に隠れるように『門倉』の不動産屋、『門倉不動産』も何者かによって爆破されていた。
(何となく心あたりがあるような気もするので『門倉』としては犯人捜しをする気はないのだが)
爆破といっても例の事件に比べるとささやかなもので、被害も軽微といえるものだった。
地方ニュースでちょこっとやった程度の事件性で怪我人すら出ていない―――
だがそれでも周辺の店舗への保障、そして何より、自身の店の補修は行わらなければならない。

「まあ、詳細は端折るがその『保障』に追われているというわけなんだ。
             だから稼がないといけない……いけないのだ」

                      ふゥ〜〜〜……

『門倉』は再度溜め息をつく。
そう言いながらもファミレスなんかでノンビリしているのだが。

540斉藤刑次『ブラック・ダイアモンド』:2019/01/02(水) 23:27:32
>>539

  「ばッ……」

    「『爆破』ァァ〜〜ッ!?」

  「そりゃ『大事件』じゃねェーッスかァァ〜〜ッ!!
   こんなトコでのんびりしてる場合じゃねェ〜〜ッスよ!!」

周りの客や店員が一瞬こちらに注目するのも構わず、大きな声で驚く青年。
少々オーバーリアクション気味ではあるが、素の反応なのだろう。
斉藤のような一小市民にとって、そういった出来事はそれこそ『ニュース』の中だけの出来事なのだ。

   店員:「あ、あのォ〜………
       『ランチセット』とアイスコーヒーお持ちしましたァ〜……」

 「あ、スンマセン……!そこ置いといてください」

店員が怪訝そうな顔で配膳に来たのに気づき、声のトーンを落とし気味で受け取る。
門倉の注文も同じタイミングで届いたようだ。

541門倉『ソウル・ダンジョン』:2019/01/02(水) 23:44:56
>>540(斉藤)
「『大事件』―――そうだな、そのとおりだ。普通ならば。
 ただこの町じゃあ『大事件』ってほどじゃあないんじゃあないか?
                    中……いや、『小事件』程度さ。

  もしかしたらあのニュースの爆破も、『能力』の仕業かも―――なんてね」

訳知り顔でよく分からない事を語りだす『門倉』。
あるいは『能力』という言い回しに何かしら感じるものがあるかもしれない。

「おっと、そんなこんなでランチタイムだ。とりあえずは食べようじゃあないか。
 ノンビリしてる場合じゃあないというが、腹は減っては戦は出来ぬというしね」

  話の途中で来たランチに早速手を出そうとする『門倉』。

542斉藤刑次『ブラック・ダイアモンド』:2019/01/02(水) 23:58:43
>>541

  「いやね、最近思うんスけど」   カチャ カチャ

  「オニーサンの言う通り『フツー』に言えば……ッスよ、
   店舗が『爆破』!ッつーたら結構な事件ですよ、フツー」

        「ところで不幸なオニーサンにはコレをあげます」

ランチセットのハンバーグを齧りながら、
そしてセットのプチトマトを門倉の皿に勝手によこしながら、一般人の立場で話をする。

  「それこそ『能力』だとか、そういうのを抜きにすれば―――の話ッスけどォォ〜〜〜……
   ――――――………ん?いまアンタ『能力』ッて言った?」

門倉の風貌から「胡散クセ〜〜〜」ぐらいは思っていたが、
そこまで警戒心を抱いてはいなかった斉藤の箸が一瞬止まる。

543門倉『ソウル・ダンジョン』:2019/01/03(木) 00:12:38
>>542(斉藤)
「君がキライなんじゃあないのかそれは……」

よこされたプチトマトに軽くツッコみながらも、素直に頬張る『門倉』。
プチっと潰れ口から軽く種が出てしまったが、まあ些細な事だ。

「ん……んん、『能力』。
               確かに。確かにそう口にしたが―――」

アイスコーヒーを飲みつつ、『門倉』はじっと『斉藤』を見ている。
不用意な事を言った、というより、その言葉に反応している
『斉藤』に興味を抱いたようだった。

            「何か気になる事でもあるのかい?」

ちょっとズレてはいるものの普通に使う日本語ではある。
ただその言葉に特殊な意味を籠めている人種も居る。

  眼前の男がそれに当てはまる男なのかどうか―――
          ・ ・

544斉藤刑次『ブラック・ダイアモンド』:2019/01/03(木) 00:28:57
>>543

   「『能力』ッてのは、いわゆる―――――――

    ――――――『スタンド能力』ッてヤツですよ!(小声)」

僅かな警戒心が言葉を遅らせようだが、『スタンド』について言及する。
あまり大声で叫ぶようなことでは無いので小声ではあるが、
まあいざとなったら逃げるなりなんなりすれば良い。

門倉の言う通り『爆破事件』なんてのは『スタンド使い』同士が話をする上では
それほど『大事件』というワケでもない、という事を斉藤は知っている。

   「アンタもそうなのか?『刺青』とかそういう類の」

545門倉『ソウル・ダンジョン』:2019/01/03(木) 00:47:55
>>544(斉藤)
「………!」

『斉藤』の言葉に『門倉』は一瞬を見開き、そして黙る。
しかしその仕草は明確に語っていた―――『門倉』が『知っている』という事を。

「驚いたな………しかも、『刺青』の事まで知っているとは。
 得る方法はいろいろあるようだが………そこまで『一緒』なのか」

              グ イ  ン
                             シュウウ……

ほんの一瞬………まるで秘密を分かち合うように
『門倉』の体から半透明の『人型』が現れ、そして消えた。
注視している『斉藤』でなければ見落としてしまうであろう刹那の出来事だ。

「………『見せる』事を嫌う者も居るだろうけどね。
  人生は短いし、出会いは貴重だ。
     語り合える『仲間』が増えるのに越した事はない」

546斉藤刑次『ブラック・ダイアモンド』:2019/01/03(木) 01:08:39
>>545

   「やっぱ『刺青』――――かァァ〜〜〜……
    いやァ、世間は狭いッスねェ〜〜〜〜〜」

                 ズズ    !

特に危険人物では無さそうなので、自身もスタンドを一瞬だけ発現させる。
箸を止めていた斉藤の腕に、やはり半透明の『腕』が現れ、消えた。

  「ま、ヤバそーな相手だったら見せねーッスけどね……」

     「うおッ……や、ヤベ〜〜〜もうこんな時間か……!
      そろそろ俺は行くッス!バイトあるんで」

時計を確認すると斉藤は慌てた様子でランチの残りを頬張って、そそくさと帰り支度を始めた。

    「オニーサンも、その『爆破』とか、何か協力できんなら手伝いますよォォ〜〜〜
     ここで会ったのも何かの縁だし、『仲間』ッつーコトで!」
                                   グッ

別れ際にサムズアップし、特に声をかけられなければそのまま立ち去るつもり(会計は済ませるが)。
ちなみに、斉藤から渡されたCD-Rには一応連絡先らしきものが書いてある。

547門倉『ソウル・ダンジョン』:2019/01/03(木) 01:19:40
>>546(斉藤)
「ほう………」

『斉藤』の『腕』に興味深そうな声をあげる『門倉』。
そして―――

「ああ、もう少し話したかったがバイトならば仕方がないな。
 世の中、稼がないといけない―――」

再び自分の置かれた惨状を思い出したのか、顔が曇る『門倉』。

 「確かに縁、『運命』というものはある。また会える時を楽しみにしているよ」

 そのまま『斉藤』を見送る『門倉』。
  そして去った後は、一人でほんやりとランチを貪ったのだった。

548鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/01/04(金) 03:03:48
相も変わらず寒い日が続いていた。
星見駅の近くのベンチに和服の少年が座っている。
若草色の長着と羽織、白い足袋と木の色の雪駄。
黒い癖毛の後ろ髪を平織りのミサンガで結んでいる。
小さな尻尾のようになった髪が、彼の動きに合わせて揺れている。

「……ふぅ」

空に向かって息を吐くと、それは白い煙のようになってあがっていく。
少年はそれをただ静かに眺めていた。
煙草の煙のように薄く細いその白い筋が天に昇って消えるのを見つめている。

「綺麗……」

雲一つない晴天だった。
何ということのない一日である。
代り映えのしない日常を彼の視界が切り取っていた。
空に雲がかかったような表情で見ていた。

549門倉『ソウル・ダンジョン』:2019/01/05(土) 21:05:46
>>548(鈴元)

「……ふゥ〜〜」

まるで『鈴元』のため息に追従するかのように少し離れた場所から溜め息が聞こえた。
『鈴元』がそちらに目をやれば、同じくベンチに座る20代半ばの男が目に入るだろう。

栗色のソフトモヒカンに、ワインレッドのジャケット、マフラーを身に着けた人物。
『門倉良次』―――しばらくぶりに目にする彼は『鈴元』には気づいていないようだ。
何やら考え事をしているのか、散漫な印象を受ける。

550鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/01/05(土) 21:47:52
>>549

「ん……」

自分以外の存在を感じて視線を向ける。
あまり見過ぎては失礼だろうからそーっと覗き見るように。
遠慮がちな視線が泳いで男性の姿を捉える。

「あ」

ダメだと思いながらも声が漏れた。
自分はこの男性を知っている。
色々と縁が重なった結果、知っている人物に変わった男性。
もちろん、勝手知ったる仲、ではないが……
それでも全く知らない人という訳でなかった。
何だか心の中でモゾモゾと動くものがある。

(休んではる……ん、よね……)

声をかけていいものか、と思ってしまう。
何か疲れているのかもしれない、仕事の待ち合わせかもしれない。
そんな思考が頭の中に浮かんでいく。
ただ、そんな中でも自分の心に従ってみることにした。

「門倉さん……やんね?」

「なんか、お悩み事でも、ありそんな感じやけど……?」

551門倉『ソウル・ダンジョン』:2019/01/05(土) 22:15:29
>>550(鈴元)
「………ん?」

『鈴元』の呼びかけに『門倉』は首をかしげる。
残念ながらというべきか、思い出すのに時間がかかっているようだ。

「あ―――ああ、その恰好と言葉遣い………
 君はアレだ。
             ……す………」

必死こいて『す』まではなんとか出てきたらしいが、それ以上はけして進めない様子だった。

「―――ステキな男だね。人が悩んでいるのをみて声をかけてくれたわけか。
 そういえば、前も何か手伝ってもらった気がするよ。

     とりあえず
                    ―――あけましておめでとう」

『門倉』は何かをごまかすかのようにやや遅めの新年のあいさつをしてきた。

552鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/01/06(日) 01:23:18
>>551

「あけましておめでとうございます」

相手の話し方に若干の違和感を感じつつも挨拶には挨拶で返す。
話し方というか、なんとなく何か考えつつという感じ。
明らかに『す』から先に進めていない言葉が引っかかる。
突っかかるほどではないけど、引っかかりはする。
それぐらいの感覚が喉につっかえた小骨のように感じる。

「……その、よかったらお話聞きますけど。僕で良かったらやけど」

「まだ子供やけど話聞くくらいは出来るから」

553門倉『ソウル・ダンジョン』:2019/01/06(日) 02:02:38
>>552(鈴元)
「ああ―――ありがとう、………す、スズ……君」

最後の方は聞き取れないほどの小声だ。
どうやら名を忘れてしまった事をごまかしている(つもり)らしい。

「まあいい―――いいんだ。それで『悩み』というのはね。

 知っての通り………いや知っていたかどうかは定かじゃあないが、
 俺は『不動産屋』をやっている。だが、不幸な事件によって『店舗』が爆破してね、
 まとまった金が必要なんだ―――

  ………………一番いいのは。

  何気なく俺の前に現れた君が
  実は札束に火をつけて遊ぶくらいの『大富豪』で、戯れついでに
  俺に数百万ほどホイッと施してくれるという結末なんだが………」

唐突にそんな厚かましいお願いをしてくる『門倉』。
さすがに冗談だろうが、妙にねちっこいその視線は、
『あわよくば』という、一縷の希望を託しているようにも思えた。

554鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/01/06(日) 02:16:49
>>553

「……」

目を閉じてにっこりと笑う。
優しい笑みだ。

「不動産屋さんっていうのは、どっかで聞いたことある気ぃするけどぉ……」

詳しくは知らなかった。

「いや、それは……大変なんやねぇ……」

爆破という言葉に少し眉が歪む。
一体どういう経緯なのかというのは気になるが、そこに触れてもいいものかとも考えてしまう。
心の迷いが指に出る。
規則的な拍子で自分の手の甲を反対の手の指が叩く。

「残念やけど、僕は大富豪ではないんよ。鈴元の家のお金も僕のお金やないし」

心苦しそうな声と表情だった。
あわよくばという意志に気づいていないのか、もしくは気づいた上でこれなのか。
それは鈴元涼だけが知っている。

「えろうすんまへん。地主さんの知り合いとかもおらんでもないねんけど……富豪……多分そない急に言うて融資してくれはるんは……」

555門倉『ソウル・ダンジョン』:2019/01/06(日) 02:33:13
>>554(鈴元)
「そうか―――
          いや、そうさッ そうだろうとも!

               そうだろうとも………」

 『門倉』は少しだけ肩を落とすが、ほどなくして再度語り出す。

「正月だからといってそんな『お年玉』が
 簡単に転がり込んでくるとは俺も思っちゃあいない。
       むしろもうあげる側の年齢だしね―――

 だから『お年玉』は自らの手にする………ッ
 そう思ってツテを使って、『お金』になりそうな話を探したんだ。
 そして一つの依頼を受けた。
 不可思議な『呪い』を解決してほしいという特殊な依頼だ。

             …………あれ、そういえば、君はどうだったっけ?」

『門倉』の話がふと止まる。
『鈴元』が『門倉』をみやると、彼の体から霊体のような『腕』が重なるように出ている。
『スタンドの腕』………これをこれみよがしにヒラヒラと動かしている。

 おそらく『鈴元』がこれが視える存在かどうか確かめようとしているのだろう。

556鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/01/06(日) 20:16:57
>>555

「……」

鈴元涼はお年玉を貰える歳だ。
姉からも、兄からも、京都からこの街に来てくれたお弟子さんやお手伝いさんからもだ。
申し訳ないという気持ちと嬉しい気持ちが半々である。
自分からお年玉を得る、ということがどういうことか、門倉が何をしたのかは予想出来ないが、大変なことがあったのだろうと考えた。

「え、あぁ、はい」

鈴元の傍に経つ霊体。
『ザ・ギャザリング』
そういう名前を付けられた存在。
儚く、消え入りそうな姿。
人の形をとったもの。

「あの、呪いってどういうことなんやろ?」

557門倉『ソウル・ダンジョン』:2019/01/06(日) 21:05:48
>>556(鈴元)

「―――ああ、やはり君も『使える』身か。やはり『刺青』?」

『君はどこ中?』みたいなノリで軽くスタンドの出自を確認しつつ、『門倉』は更に語る。

「そして『使える』のならば、話を進めよう。
 といっても俺も得ている情報は少ないんだけどね。

  依頼元は、とある『美容外科クリニック』。
  かなり評判のいいクリニックでいつも予約一杯って感じだったらしい。
  『だった』と表現したのは、今はそうではないという事だ。

  少し前から、そのクリニックの患者の『顔』が―――
                     『崩れる』というトラブルが起こっているらしい。

  それだけきくと、『手術失敗』したんじゃあないの? と思ってしまうんだがね。
  どうやらそういう事でもなく、その『症状』はしばらくすると収まるとの事らしい。

  それをそのクリニックの『院長』は『呪い』と称して解決する術を探っているというわけさ。
  『呪い』をかけられる『心当たり』があるのかないかは不明だが―――

                           ・ ・
   ともかくそれを解決するのが今回の俺たちの『仕事』というわけだね」

※ミッションの誘いとなります。危険度は高くない推理系ミッションの予定です※
※当然、断って頂いてもまったく構いません※
※開催される場合、門倉『ソウル・ダンジョン』はNPC的な参加となりますl※
※当然、このミッションによって門倉がいわゆる『リアルマネー』を得る事はありません※

558鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/01/06(日) 22:37:51
>>557

「ま、まぁ。そうです、けどぉ」

困ったように笑いながら言葉を返す。
背中にある咲いた桜の刺青。
色々困ることもあるが、後悔はない。
自分の目では見えないところにあるというのもいい。

(美容外科……)

美容外科でお金になりそうな話。

(受けに来る人を増やす、とかなんかなぁ)

顧客が増えるのは病院にとっていい事だ。
だからスカウトというか、人を集める仕事かと思っていたが、真実は違うらしい。

「顔が崩れる」

思わず復唱してしまう。
尋常ではない事だ。
そして、実際に門倉が依頼を受けたということはそれは事実なのだろう。

「呪いかぁ」

確かに、呪いと言えるだろう。

「……たち?」

たち。
たち、と言われてしまった。

「……」

少しの沈黙。
それから柔らかな笑みを浮かべて言った。

「分かりました。これもなんかの縁やし、そのお話受けさせてもらいますぅ」

「よろしゅうね」

559門倉『ソウル・ダンジョン』:2019/01/06(日) 23:04:03
>>558(鈴元)
余談になるが門倉の刺青も『背中』にある。ドアノブ。
まあ背中を見せ合う事など基本ないだろうから完全な余談である。

「フフフ―――『たち』と言ったのに少々驚いているようだね。

 無理もない無理もない。だが………

                       ――――え?」

『鈴元』が語り出す少しの沈黙の間にさらに言葉を重ねた『門倉』。
しかし、『鈴元』から帰ってきたあっさりとした返答についマヌケな返しをしてしまう。

「あれ、あれ、い、いいの!? いいのかい? そんなに即答してしまって。
 これからあの手この手で説得にあたろうと身構えていたのに………」

『門倉』の悩みというのは『依頼を受けたものの一人では心もとない』という事だった。
こんな町なので有象無象の『解決すべきこと(ミッション)』は溢れている。
しかし、『門倉』は今まで単独でそういった事案に立ち向かった事はない。
そういうわけで『どうしたものか』と悩んでいる時に、声をかけてきたのが『鈴元』だったというわけだ。

「いや――― いいんならいいんだ。問題はまるでない。
 じゃあ俺の方で依頼元と交渉してアポはとっておくから………
                    後日、君に連絡させてもらうよ」

『門倉』はそう言って『スマホ』を取り出す。『連絡先』を交換したいという事だろう。
『鈴元』に迷いがなければ、このまま『連絡先交換』を行い、『仕事』の誘いを待つ事になる。

560鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/01/07(月) 00:23:56
>>559

「ええよ。門倉さん、困ってはるんやろ?」

説得されるまでもなく鈴元の心は決まっている。
自分が求められたならそれに応えるだけだ。
そういう心持ちで動いているのだ。
それ以外の感情は大きくない。

「はい。待っときますぅ」

スマホを取り出し、連絡先を交換しておこう。

561門倉『ソウル・ダンジョン』:2019/01/07(月) 00:42:07
>>560(鈴元)
互いの連絡先を交換する二人。
その際に『門倉』は抜け目なく『鈴元』の名前を再確認した。

「ありがとう! いや、ありがとう、鈴元君。
 初夢にタカもナスビも富士山も出なかったが
   そんなもの見なくても新年早々、君に会えた―――

      俺は素でツイてる、そういう事だね?

         なんだか勇気がわいてきたな。フフフ―――」

 『門倉』がそんな事を言いつつベンチから立ち上がる。

「じゃあ、そういう事で、そろそろ俺は帰らせてもらうよ。
        機が来たら連絡するからね。くれぐれもよろしく頼むよ」

        新春の寒空の下、『門倉』は軽くスキップをしながら去っていく。
こうして『鈴元』は、新年早々よく分からない『呪い』とやらに対峙する事となったのだった。

562小角 宝梦『イル・ソン・パティ』:2019/01/10(木) 01:53:32

大通りの『オープンカフェ』に小さな『探偵』がいた。
白銀の髪、鹿撃ち帽、インバネスコートなど、
いかにもな外見だが……顔立ちに覇気は皆無。

(……うう、雰囲気で外の席にしてみたが、
 あまりに寒いぞ……よく皆平気な顔をしてるなあ)

     ポンポンポン

ポケットに入れたカイロを叩く音だ。
 
         (それにしても……)

「『不動産屋爆破事件』……だとぉ?
 こ……この町にも魔の手が迫っていたとは」
 
          パラパラ 

手帳をめくりながら、思わず声に出してしまった。

街中で聞きつけたウワサを、
勝手に『事件』とか言ってるだけだ。
不可解ではあるが……なにも『証拠』はない。
聞いたのは『不動産屋で爆発があった』事だけだ。

(まあ、スプレー缶とかが爆発したんだろうけどね……しかし、
 そんなにいっぱいスプレー缶を開けたくなるものなのかなあ)

本人的にも事故の可能性は高いと思うのだが、
こういう『ポーズ』から入るタイプ、ということなのだ。
ちなみに今はもう、ほとんどの席が埋まっていて、
それが小角が未だに外に留まっている理由でもある。

・・・『相席』という形でこいつと相まみえる理由にもなり得る。

563三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/01/10(木) 21:52:09
>>562

「お向かい、失礼します」

    ペコリ

ずっと歩いて少し疲れたので、カフェにやってきました。
探偵さんの向かいの席が空いているみたいです。
挨拶してから座りました。

     ビクッ

そのすぐ後に、『爆破事件』という言葉が聞こえました。
そういう話を聞くと『死』を連想してしまいます。
とても怖いです。

     ササッ

なので即座に目を瞑り、両手で耳を塞ぎました。
怖い話を聞くと、ついやってしまいます。
いつもの癖です。

      ……スッ

もう怖いところは終わったでしょうか?
薄く目を開けて、両手を少しだけ離してみます。
終わっていたら嬉しいです。

564小角 宝梦『イル・ソン・パティ』:2019/01/10(木) 22:29:50
>>563

「ああ、かまわないとも。
 好きに座りたまえ……ふふん」

         スイッ

「わたしのテーブルじゃないからね」

机に広げていた本を滑らせ引き寄せる。
いわゆる『推理小説』だ。ほとんど新品のように見える。

「……??」

「な、なんだい、きみは……!
 わたしの顔を見るなり、
 いきなり目を閉じたりして……」

    「あっ、それに耳まで!」  「ううむ」

謎に直面し、思わずうなる小角。
フクロウのような丸い目がやや細まる。

「むむむ……も、もういいのかね?」

爆破事件の話には思い至らないが、
その事自体は、もう口にしていない。

「きみぃ……いきなり謎めいているぞ。
 いったいどうしてわたしを怖がったりするんだ。
 自慢じゃあないが、あまり怖がられたことはないのに」

         「あ、これがメニューだよ」

    ススッ

手元のメニュー表を得意顔で滑らせて渡す。
最初の本といい、机の上を滑らせるのがマイブームなのか?

565三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/01/10(木) 23:23:18
>>564

怖い話は終わったみたいです。
ゆっくり目を開けて、両手を離しました。

「はい、もう大丈夫です」

「失礼しました」

     ペコリ

「ありがとうございま――」

     スカッ

メニューがテーブルから落ちてしまいました。
受け止めるのが少し遅かったみたいです。

     スッ

メニューを拾い上げて、軽く手で払っておきます。

「これを下さい」

店員さんを呼び止めました。
ココアを注文します。

「お姉さんは怖くないです」

「怖い話が苦手なので、ついやってしまいました」

「ごめんなさい」

    ペコリ

566小角 宝梦『イル・ソン・パティ』:2019/01/10(木) 23:50:07
>>565

「な、なに、怖い話……?
 わたし、お化けの話なんかしたかい?」

         「……ああっ!」

「つまり、わたしの推理によると……
 きみは爆破じ……お、おほんっ。
 『怪事件』の話の事を言っているのだろう!」

ややばつの悪そうなどや顔という、
器用な顔を作りつつ机の下を覗く。
落ちたメニューを目で追っていたのだ。

          ススス

そして拾われたメニューと共に顔を上げる。

(お……お姉さんかあ。
 なんだかいい感じの響きだぞ!
 わたしをそう呼ぶやつはそうそういない)

「ま、気にする事はないさ……
 誰にでも怖い物の一つくらいある。
 むろん、このわたしにだってあるとも」

         フフン

怖い物が結構ありそうな顔だが、
探偵だしそうでもないのかもしれない。

「事件の話を迂闊にしてしまった、
 わたしも悪かったよ。おあいこだね」

「……それにしてもココアか。わたしも頼んだよ。
 寒い日に外で飲むのはココアが一番だと思うんだ」

567三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/01/11(金) 00:20:49
>>566

    パッ

爆破事件という言葉が聞こえかけたので、反射的に目を閉じて耳を塞ぎました。
でも、すぐに終わったので、また目を開けて手をどけます。

「癖なので、つい」

顔を上げて、探偵さんの方を向きました。
カールした睫毛と巻き毛が軽く揺れます。

「すみません」

   ペコリ

性別の分かりにくい顔立ちですが、小さいので子供なのは確かです。
何かの発表会にでも着ていくような、キッチリしたブレザーを着ています。

「そう思います」

「お姉さんもココアを注文したんですか」

「ココア仲間ですね」

そう話す声は高い声です。
やはり性別は判断しづらいです。

「お姉さんが怖いものはお化けですか?」

「さっき、そう言われていたので」


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