したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |
レス数が900を超えています。1000を超えると投稿できなくなるよ。

【場】『 大通り ―星見街道― 』

1『星見町案内板』:2016/01/25(月) 00:00:31
星見駅を南北に貫く大街道。
北部街道沿いにはデパートやショッピングセンターが立ち並び、
横道に伸びる『商店街』には昔ながらの温かみを感じられる。

---------------------------------------------------------------------------
                 ミ三ミz、
        ┌──┐         ミ三ミz、                   【鵺鳴川】
        │    │          ┌─┐ ミ三ミz、                 ││
        │    │    ┌──┘┌┘    ミ三三三三三三三三三【T名高速】三三
        └┐┌┘┌─┘    ┌┘                《          ││
  ┌───┘└┐│      ┌┘                   》     ☆  ││
  └──┐    └┘  ┌─┘┌┐    十         《           ││
        │        ┌┘┌─┘│                 》       ┌┘│
      ┌┘ 【H湖】 │★│┌─┘     【H城】  .///《////    │┌┘
      └─┐      │┌┘│         △       【商店街】      |│
━━━━┓└┐    └┘┌┘               ////《///.┏━━┿┿━━┓
        ┗┓└┐┌──┘    ┏━━━━━━━【星見駅】┛    ││    ┗
          ┗━┿┿━━━━━┛           .: : : :.》.: : :.   ┌┘│
             [_  _]                   【歓楽街】    │┌┘
───────┘└─────┐            .: : : :.》.: :.:   ││
                      └───┐◇      .《.      ││
                【遠州灘】            └───┐  .》       ││      ┌
                                └────┐││┌──┘
                                          └┘└┘
★:『天文台』
☆:『星見スカイモール』
◇:『アリーナ(倉庫街)』
△:『清月館』
十:『アポロン・クリニックモール』
---------------------------------------------------------------------------

409<削除>:<削除>
<削除>

410鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/02/17(土) 23:05:56
>>408

「ええん?」

一言そう言った後にハムカツを購入する。
暖かいハムカツを相手に差し出した。

「はい」

411須々木 遠都『スモールタウン・ヒーロー』:2018/02/17(土) 23:44:08
>>410

「はあ、どうも」
(関西弁だ)

 公平な取引には思えないが、まあこちらが得をする分には良い。
 それかきっと、ハムカツがそこまで高くなかったのかもしれない。お安かったのかもしれない。

「そこまでして食べたいものなんですか」
「此処のコロッケ」

 毒気が抜かれてしまった。
 袖振り合うも多生の縁というし、一言二言は交わしていこう。

412鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/02/18(日) 23:08:53
>>411

「ん? 好きなんよ。ここの味が」

そういって鈴元がふにゃっと笑った。

「僕引っ越してきたんよ」

「それでここの道やらお店やら、はよ覚えようおもて」

「ほんなら、恥ずかしい話やけど迷子になってな。お腹空いたなぁって時にここでコロッケを食べたんよ」

413須々木 遠都『スモールタウン・ヒーロー』:2018/02/20(火) 00:25:49
>>412

「……まあ、空き腹には染みるでしょうね」

 苦悩とともにパンを食べたものにしか、……はてその続きはなんだったか。
 いずれにせよ、彼には思い出の味というわけだ。

「この町は広いですから」
「……お気をつけて」

 そう言って、去ろう。
 間食は手短に限る。
 有意義な取引もできた。今日は良い日だったと言えるだろう。

414鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/02/20(火) 01:08:12
>>413

「この街に来てもう一年くらい経つんやろか」

「思えば遠くまで来たもんやね」

去る相手を見送る。
コロッケを食べてふぅと息を吐く。

「さて、買い物も終わったしどうしよかな」

415美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/04/20(金) 21:29:23

「――これじゃない。これでもなし」

ショッピングセンター内に設置されているベンチに座ってスマホを弄りながら、つい独り言を零してしまう。
中々いい感じの新しいスニーカーを買ってテンションが上がっていたのが少し前のこと。
今は、少々厄介な問題に突き当たっていた。

「いくつだったかしら?ド忘れしちゃった」

思い出せないのは、スマホのロックナンバーだ。
普段はロックなんて掛けてないのに、なんとなく試してみたのが失敗だった。
ショッピングに夢中になっていたせいで、設定したナンバーをすっかり忘れてしまっていた。

「あ、分かったわ――」

「『直接』聞けば手っ取り早いんじゃない」

スタジャンの肩に、『機械仕掛けの駒鳥』が現れる。
マイクとスピーカーを備えた私の小さな相棒――『プラン9・チャンネル7』だ。
ロックされているスマホを耳に当て、通話をしているかのように声を発する。

「ハロー、調子はどう?ちょっと教えて欲しいことがあるの。いい?」

呼びかける相手は電話の向こうの人間ではなく、手に持っている『スマホ自体』だ。
私の声は、『プラン9・チャンネル7』のマイクを通じて、私のスマホに意思を持たせる。
そして、意思を持ったスマホは私の『支持者』に変わる。

「実はね、ロックのナンバーを忘れて困ってるのよ。あなたなら分かるでしょう。教えて?」

こんな風に喋っていると、なんだかアイドルだった頃を思い出す。
別に、そこまで鼻につくようなキャラ作りはしてなかったつもりだけど。
ラジオDJの今でもね。

《ワカリマシタ、クルミサン。ナンバーハ、『135790』デス。
 スコシデモ、アナタノオヤクニタテルコトヲ、ウレシクオモイマス》

「――ありがと」

『プラン9・チャンネル7』のスピーカーから出力されたスタンド音声の通りに、ナンバーを入力する。
無事にロックが解除された。
『機械の小鳥』を肩に乗せたまま、ほっと安堵のため息をつく。

416鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/04/23(月) 01:28:21
>>415

「その、お取込み中すいません」

「隣、ええやろか?」

墨色の着物を着た少年が声をかけた。
どうやらベンチの空いている場所に座りたいようだ。
肩ほどまで伸びた黒い癖毛。それを首筋の辺りで髪紐がわりの織物のミサンガで結んでいる。
背の低い少年だった。

417美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/04/23(月) 15:10:38
>>416

「――んっ?ええ、どうぞ」

少年に気付き、少し横に動いて場所を空ける。
同時に、何か聞いたような声だなと思った。
記憶力は良い方なのだ。
しかし、電話というのは幾らか声が違って聞こえる。
だから、本当に聞き覚えがあるかどうか確信は持てなかった。

(聞いたことがある気がしたんだけど……。気のせいかしら?)

こういうのは、一度気になりだすと確かめたくなる。
だけど、いきなり聞くのも失礼だろう。
その間も、『機械仕掛けの小鳥』は、まだ肩の上に乗っている。
少年の声に気を取られていて、解除するのを忘れていた。
動くことも鳴くこともないので、見ようによってはアクセサリーか何かにも見えるかもしれない。

「素敵なお召し物ね」

少年の着物を見て、感想を漏らす。
正月でもない今の時期に着物姿というのは珍しく、純粋に目を引く。
キャップにスタジャン、ジーンズにスニーカーというラフなアメリカンカジュアルスタイルの自分とは対照的だ。

418鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/04/23(月) 23:26:08
>>417

「おおきに」

服を褒められ頭を下げる。
それに合わせるように結ばれた髪が尻尾のように揺れる。

「あんさんもきれぇな服やねぇ」

「……美作さん」

ぼそりとそう呟いた。
伏し目がちにそちらを見ている。

(……お休みの日やんね……よかったやろか)

419美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/04/24(火) 00:06:24
>>418

思い返してみると、やはり聞き覚えがある。
それに、この特徴的な話し方にも覚えがあった。
滅多にない偶然だと思うが、それでも有り得ないことじゃない。

「ありがとう」

「――鈴元さん」

少年に向けて、朗らかに笑う。
彼が私のことが分かったのは、声だろうか。
もっとも、私の顔は番組サイトに掲載されてるから、知られていたとしても特に不思議はない。
だからといって、アイドルだった時代と比べて、呼び掛けられることはあまりない。
今は姿が露出しない仕事だから、当然といえば当然なんだろうけど。

「あの時は、どうもありがとう。久しぶりっていうのも少し変だけど――」
 
「こういう場合は、はじめましてって言うべきかな?」

人との出会いは一期一会というが、やはり再会できると嬉しいと感じる。
再会と呼んでいいのかは分からないけど、全くの初対面とも違う。
いずれにせよ、リスナーと直接顔を合わせられる機会が貴重なのは間違いない。

420鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/04/24(火) 00:14:53
>>419

「……覚えてくれてはったんやね」

まさか覚えらているとは思わなかったのだろう照れているのか頬を赤くして目を伏せる。
膝の上で両の手がもぞもぞと動いていた。

「は、初めましてやないやろか」

「変な感じやけど多分、そうやと思います」

そう言って少年が笑う。

「そういえば、それはその……さっき話してはったんよね?」

少年の目は肩の方に向いている。
機械仕掛けの小鳥に向けられている。

「あ、すんません……それは個人の事やし、それに今日お休みかなんかなんよね?」

「やのに、声かけてもうて……」

421美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/04/24(火) 00:48:13
>>420

「私は、これでも記憶力はいい方だから」

「それに、鈴元さんって個性的だから、印象に残ってたの」

驚いたというのは、こちらも同じだった。
こんな具合に呼び掛けられるとは思っていなかったのだから。
ただ、こちらには照れはなく、純粋に嬉しいという思いがあった。

「えっ?ああ、これね」

「うん、話してたわ。ちょっと困ったことがあったから」

「でも、それは解決したから、もう大丈夫よ」

彼は『プラン9・チャンネル7』が見えている。
ということは、彼も私と同じような力を持っているのだろう。
だからどうということもないのだが、不思議な縁のようなものは感じていた。

「私の前に放送してる番組が、今ちょうど時間延長の拡大版をやってるのよ。
 だから、その間、私は少しお休みをもらえたっていうわけなの」

「でも、次は私の番組が拡大版をやることになってるんだけどね」

「それで、今日は買い物しにきたんだけど、声を掛けてもらえて嬉しかったわ」

笑顔のまま言葉を続ける。
アイドルだった昔は呼び掛けられることも多かったから、その時の気持ちを思い出さないと言えば嘘になる。
だが、今はそれとは関係なく喜びを感じていた。

「鈴元さんは、今日は何か用事?」

「粋な格好だし、この近くで催しでも――」

「あ、それとも普段着なのかしら?着慣れてるようだし……」

422鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/04/24(火) 01:32:03
>>421

「個性的……」

(そやろか?)

思わず小首をかしげる。
他人が自分をどう思っているのかいまいち疎い。

「解決したんやったらそれでええんやけど」

それ以上それが何かを聞きはしなかった。
触れるべきでないというよりは、そこに触れるよりももっと別のことを話したかったのだろう。

「……僕も会えてよかったわぁ」

また顔が少し赤くなった。

「ちょっと買いモンの手伝いで来てて……」

「あぁ、これは普段着。子供の頃からずっとなんよ」

423美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/04/24(火) 21:34:59
>>422

「ええ、一度出会ったら忘れないくらいにね。少なくとも、私はそう思ってるかな」

彼の周りの人にも、同じことを思っている人は多いのではないだろうか。
実際、彼が街中にいれば、とても目立つだろう。
もし人混みの中で見かけたとしても、見落とすことはないと思う。

「一時はどうなるかことかと思ったけど、この子のお陰で助かったわ」

役目を終えた『プラン9・チャンネル7』を解除する。
これからは、パスワードが分からなくなった時は『本人』に聞くことにしよう。
これで、ロック関連のトラブルとは永遠にサヨナラできる。

「私も買い物に来てるの。新しい靴を買いに、ね」

そう言って、ショップの名前とロゴが入った袋を軽く持ち上げて見せた。
中には、少し前に発売された新作スニーカーの入った箱が入っている。
といっても、中身までは見えないと思うけど。

「――ところで、よく私のことが分かったのね。
 声で?それとも顔でかしら?」

知られていたとしても不思議はないとはいえ、気になるといえば気になる。
アイドル時代の過去の栄光にすがろうとする悪い癖なのかもしれない。
ただ、それを捨て切れない自分がいるのも否定できなかった。

「私の番組、以前から聴いていてくれてた?もしそうだったら嬉しいな。
 もちろん、一度でも聴いてもらえたなら、それだけで十分ありがたいことなんだけどね」

424鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/04/24(火) 23:28:38
>>423

「おおきに」

何だかそう返してしまう。
人の心に咲く桜の花のような人間を目指しているからだろうか。
人に認識されるのは嫌な事じゃない。
むしろ、嬉しい事だった。

「そうなんや」

(僕のとは違うんやなぁ……当然やけど)

これまでの人生でスタンド使いという人間に多く出会った。
どれも個性的だった。
……少なくとも自分以上に。
何となく俯くと自分の履いている下駄が視界に入った。

「前から聞いてて、それで……えっと、うっとこは姉と兄がおるんやけど」

「お兄ちゃんがアイドル好きなんよ。ご当地アイドル? とかいうんも好きやったり、いろんな人の事知っとって」

「僕がラジオ聞いてる時に教えてくれて……やから、知っとったんよ」

小さなきっかけだった。
だがそれが今こうして縁になった。

「そやから、顔も声も両方知っとるんよ?」

425美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/04/25(水) 00:25:09
>>424

「へええ――」

思わず声が漏れた。
感嘆のような、あるいは驚きのような声色だった。
もしかすると、その両方だったのかもしれない。

「それを知ってる人に出会えるなんて、いつ振りだろう。
 なんていうか――ちょっと恥ずかしいわね」

「ほとんどの人からは、もう忘れられちゃってるみたいだから」

はにかんだように笑いながら、少しだけ寂しげな表情になる。
瞬間的に、過去の映像が立て続けに頭に浮かんでは消えていった。
照明に彩られた煌びやかなステージ。
美しく飾られた華やかな衣装。
そして、舞台の上で光り輝いている私。
世間の記憶から消えても、私にとっては忘れられない記憶だ。

「私は今の仕事が好きだし、ラジオを聴いてくれる人がいることは、何よりも嬉しいことだと思ってるわ。
 でも、こうして昔のことを覚えててくれる人がいるのも、嬉しいものね」

「どうもありがとう」

そう言って、先程までとは少し感じの違う笑みを浮かべる。
どこか哀愁を感じさせるような微笑みだった。
ただ、それは決して暗いものではなかった。

「昔話をするようになると、老けた証拠だなんていう言葉もあるけどね」

そう言うと、今度は砕けた調子で笑う。

「お兄さんにお礼を言っておいてくれるかしら?
 覚えていてくれてありがとう、ってね」

「それから、もしよかったらこれからもよろしくって伝えて欲しいの」

「もちろん鈴元さんも、これからも応援よろしくね」

「そのお返しに、私も鈴元さんを応援するから」

そう言って、また明るく笑う。

426鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/04/25(水) 01:18:52
>>425

「忘れられへんよ。ほんまに輝いとる人の事は」

まっすぐな目でそう言った。
それから恥ずかしそうに笑った。
眉がハの字になってしまう。

「ありがとうやなんてそんな……僕はなんもしてへんから……」

「まだ若いやろ?」

冗談に軽い突っ込みもいれつつ。

「うん。もちろん、伝えとく」

それから次の言葉を聞いてはっとした顔になる。

「あ、いや、そんな、あかんよ。応援やなんて……」

「や、多分応援してる色んな人の事美作さん、応援してはると思うんやけど」

わたわたと慌ててる。
目を白黒させて手を動かしている。

「そんな目ぇ見て言われたら、なんかズルしてるみたいや……」

「ほんまに応援してもらいたくなるし、ほんまに嬉しゅうなってまうやんか……」

427美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/04/25(水) 01:48:53
>>426

「あはは、ごめんね」

慌てる様子を見て、朗らかに笑う。
この少年の反応を見ていると、微笑ましい気分になる。
こんな可愛らしい弟がいる兄と姉は、きっと幸せなのだろう。
そのことが、少し羨ましく思えた。

「そうね、私はみんなに支えてもらってると思うわ。
 そして、私が支えてもらった分だけ、みんなのことを支えたいと思ってるの」

「だから鈴元さんに応援してもらえると嬉しいし、私も鈴元さんのことを応援したいな」

正面から見つめながら、穏やかに問いかける。
自分には弟はいない。
でも、もし自分に弟がいたとしたら、こんな風に接していたかもしれない。
頭の中で、そんなことを考えていた。

「――ダメかしら?」

428鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/04/25(水) 02:04:20
>>427

「……あかんこと、ないよ」

「そんなん、あかんなんて言われへん」

一つ一つ確認するように言葉を紡ぐ。
それが今の精一杯。
だけどそれでよかった。
それでも思いを伝えられるのだから。

「……僕なんかほんまに支えられてるか分からんけど」

「美作さんみたいな素敵な人とお互い支えあって応援しあってっちゅつのは、ええ事やから」

「なんていうたらええんやろ。あんじょうよろしゅうお願いします」

と言って、目をそらす。

「それから、その、あんまり見つめられたら照れてまうわぁ……」

ゆでダコのような顔でそう告げた。

429美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/04/25(水) 02:37:04
>>428

「面と向かって素敵だなんて言われると――さすがに照れるわね……。
 でも、嬉しいわ」

言いながら、人差し指で自分の頬を軽く撫でる。
その仕草が、照れた時によくやる癖だった。
ただ、どちらかというと、褒められたことに対する嬉しさの方が強かった。

「ご丁寧にありがとう。こちらこそ、よろしくね」

今の自分は、かつての自分とは違う。
眩いステージに立つことはない。
華やかな衣装を着ることもない。
舞台上で脚光を浴びることもない。
だけど、一つだけ、あの頃と変わらないものがある。

(そう――今の私だって、捨てたもんじゃないわよね)

人に支えられ、そして支えるということ。
それは、アイドルだった頃も、ラジオパーソナリティーである今も変わらない。
そのことを、改めて教えられたような気がした。

「あはは、ごめんなさい。悪気があったわけじゃないの」

「だから許してね」

そう言って、口元に微笑を浮かべたまま、両方の手の平を胸の前で合わせた。
それから、ポケットから名刺入れを取り出し、その中から二枚の名刺を手に取る。
そして、その名刺をそっと差し出した。
パーソナリティーである自分の紹介や、所属するラジオ局と、担当する番組のことなどが記載されている。

「お詫びっていうわけじゃないんだけど、よかったらどうぞ」

「一枚は鈴元さんに。もう一枚はお兄さんに渡して欲しいの」

430鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/04/25(水) 22:31:31
>>429

名刺を受け取って何が書いてあるか確認する。
それからにっこりと笑う。

「……おおきに」

それからそれを懐から取り出した財布にしまう。

「お礼になるかはわからんけど……」

自分も財布から名刺を取り出す。
そこには『御菓子司 鈴眼』と書かれている。
住所と電話番号が記されている。
派手さのない静かな印象の名刺だ。

「うっとこ和菓子屋なんよ」

「元は京都のお店なんやけどよかったら」

431美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/04/25(水) 23:42:55
>>430

こちらの名刺は色鮮やかで、インパクトのある見栄えを重視したデザインだった。
個人の名刺ではあるが、番組の宣伝用でもあるから、当然といえば当然なのだが。
『パーソナリティー』の隣に表記された『美作くるみ』の名前は、丸みのある手書き文字で書かれている。
その傍らには、小鳥のイラストが小さく描かれていた。
これも手書きのものらしい。

「へえ、和菓子屋さんなのね。道理で、雅な佇まいだと思ったわ」

「私も甘いものが好きだから、近い内にお邪魔しようかな?」

受け取った名刺をしげしげと眺めてから、ひとまず名刺入れにしまっておく。
応援してくれる人と交流できて、新しいお店も見つけられた。
言うことなし、ありがたいことだ。
明るい笑顔を返し、それからスマホの時計を確認する。

「さて――楽しくお喋りしてリフレッシュできたし、ショッピング再開ね」

「私は小物を見てくるわ。スクーターの鍵に付けるキーホルダーが欲しいの」

そう言って、手に袋を持ってベンチから立ち上がる。

「……今日は本当にありがとうね、鈴元さん。
 あなたのお陰で、また明日からの仕事も頑張れそう」

「それじゃ、またどこかでお会いしましょう!
 ラジオの方も、引き続きよろしくね」

別れの挨拶と共に、軽く手を振る。
引き留められなければ、そのまま次の店に向かおう。
気分は上々だった。
今日は、とてもいい日だ。
心の中で、改めてそう感じていた。

432今泉『コール・イット・ラヴ』:2018/05/22(火) 23:37:22

         カリカリカリカリカリ

              カリカリカリカリカリ

「う〜〜〜ん」

喫茶店を一人で勉強に使うのって大学部のセンパイっぽい感じ。
そんな立派な勉強じゃなくて、今日出し忘れた宿題なんだけど。

なんで出し忘れたかって言うとページ数が多すぎたから。
1日寝かしても減るわけない。"先生"が勉強も教えてくれたらいいんだけど。

席はそんなに混んでないから、まだ帰れとは言われない。
窓際の席って客がいる方がツゴーが良いとか聞いた事あるし。
もし外を通りかかった知り合いがいたら見られるのは……別にいいかな。悪い事してないし。

433夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2018/05/24(木) 00:18:41
>>432

      ピコンッ

その時、ラインの通知が届いた。
送信元は――『ユメミン』だ。
内容は以下の通り。

「わたしは、予知のうりょくにめざめた!
 むむむ……みえてきたぞ!
 ずばり、いまイズミンは喫茶店でひとりでべんきょうしている!」

……顔を上げれば、窓の外に誰かがいるのが見えるだろう。
パンキッシュなアレンジを加えたアリス風ファッションの少女。
今さっき届いたラインの送り主だ。

434今泉『コール・イット・ラヴ』:2018/05/24(木) 07:20:55
>>433

              『ピコン』

「ん」

勉強中だけどスマホは机の上に置いている。
だから、画面にポップした通知もすぐに見えた。ユメミンだ。

      キョロキョロ

予知能力、なんてフツーありえない。けどユメミンには『ドクター』がいる。
フツーじゃないことがフツーな人っていうのがこの町にはいる。
もしかしたら本当なのかな。だとしたらテストの答えとか教えてほしいかも。
・・・なんて思いつつ周りを見回したら、窓の外と目が合った。

「あ」「ユメミンじゃないですか!」

声に出しちゃったけど、窓の外にいるんだし聞こえないかな?
小さく手を振ったのは見えたと思うし、窓際にいてよかった。
でもどっちにしても窓越しに話すなんて『ロミジュリ』みたいなのはどうかと思う。

       『ピコン』

だからユメミンにラインを送った。

『奇遇ですね、私もたった今催眠術に目覚めました!
 あなたはだんだんお店に入って来たくな〜〜〜る』

それからシャーペンをページに挟んで、広げていたノートとかを自分の前にちょっとだけコンパクトにまとめた。

435夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2018/05/24(木) 20:13:57
>>434

    ズッ……
          ズズズ……

「こ、これは……!!足がかってに……!!
 わたしのかんがえとは、むかんけいに動いている……!!」

   カランカラン  
          イラッシャイマセー

――などということはなく、普通に入店した。
元々この店に入るつもりで近くまで来ていたのだ。
そこに友達がいたから、というのも勿論ある。

「さすがはイズミン……よくぞ、このスーパートリックをみやぶった……。
 くそ、イズミンじゃなければだましとおせたのに……!
 でも一秒か二秒くらいはしんじただろう!!こんかいは引き分けだな!!」

「――あ、これとこれとこれください。のみものLサイズで」

とりあえず注文しよう。
そしてイズミンに向き直り、身を乗り出す。
ブルーのサングラス越しの視線は、ノートの方に向いている。

「ふむふむ、かんしんかんしん。
 なんの勉強してるのかな??おしえてあげようか??」

自分に教えられるかどうかなど全く気にせず、そんなことを言う。
自分の成績は、下から数えた方が早い。
特に、『漢字』に弱いのだ。

436今泉『コール・イット・ラヴ』:2018/05/24(木) 22:02:27
>>435

「あとちょっとでユメミンの超能力だと納得するところでした!」
「フツーじゃないですけど、そういうのもありえそうだし」「特に私達ならねえ」

「あ、私はアイスミルクティーおかわりで」

飲み物が無くなってたし、ついでに注文しちゃおう。
席を使わせてもらってるお代がわり、っていうのもあるけど。

「これ。現文の宿題です。趣味とその理由を述べよって」
「趣味の理由って難しくないです?」「適当に決めちゃおうかな」

            ジャララッ

シャーペンとスマホを紙の上からどけて、原稿用紙をユメミンに見せてみる。

まだほとんど白紙だし、見せて恥ずかしいものじゃない。
まあ、白紙なのが恥ずかしいっていうのはあるかもしれないけど・・・

437夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2018/05/24(木) 22:59:56
>>436

「ふむふむ――これ、このままで出すっていうのはどう??」

「シュミというのは、アレコレとリユウを問うものじゃないんじゃないでしょうか??
 ヒトのシュミは、コトバではヒョウゲンできないモノなんです。
 だから、このハクシこそが、シュミというものをイチバンよくあらしていると思いました!!」

「――って感じでテイシュツするとか。
 イズミン、清月の『レジェンド』になっちゃうかも??
 ただし、セキニンはもてない!!」

あたらしいデンセツの誕生だ!!
そのぶん、セイセキがギセイになることになるけど。
あと、センセイにマークされて、ヒョウバンとか諸々もあぶないかもしれない!!

「ふっふっふっ、誰も『チョウノウリョク』じゃないとは言ってないけど??」

   ズギュンッ

不適に笑い、傍らに『ドクター』を発現させた。
少し目を閉じてから、片方の目だけをウィンクするように開く。

「――もうすぐ若い男女が入ってくる。
 女の方はミュール、男の方は新しい革靴を履いてる。
 女は身長160cm前後、男は175cm辺り。多分カップル」

いい加減な『予知』――ではない。
その言葉の後に、今さっき言った通りの二人が入店した。

「金ないから、あんまり頼むなよ」 「兄貴、奢ってくれるって言ったじゃん」

兄妹らしい二人は、言葉を交わしながら離れた席に着いた。

「あ〜〜〜『カップル』じゃなかったかぁ〜〜〜。
 もうちょびっとよく確かめてから言うんだったなぁ〜〜〜。
 あとすこしで花丸満点だったのにぃ〜〜〜。ざんねんざんねん」

そんなことを言いながら、大げさに肩をすくめる。
隣では、『ドクター』も同じポーズをとっている。

438今泉『コール・イット・ラヴ』:2018/05/24(木) 23:35:38
>>437

「友達のセンパイが似たような事したらしいんです」
「ハクシで出して『これが俺の答えです』って」
「そしたら大学の推薦も白紙になったらしいですけど」

「ある意味カッコいいですけど、フツーの成績は欲しいんですよねえ」

            クルクルクル

ほとんど空になったグラスの中でストローを回す。
フツーじゃないのはちょっと憧れるけど、なさすぎるのは困るし。
というより、フツーでいいこととだめなことがある? みたいな?

「そういえばドクターの『能力』はまだ知らないんですよね」
「もしかしてほんとに『予知』なんですか?」「だとしたら憧れるかも」

「私も占いとか好きで――――」

なんて言っていたら、ユメミンは言い当てて見せた。
兄妹っぽい二人の客を目で追っていたのに、気づいたら振り向いていた。

「えっ・・・すごいじゃないですか!?」
「今こっち向いてましたよね、ユメミンもドクターも」
「うわーっ、フシギですね・・・ほんとに見てなかったですよね、今?」

                   『ソレハ〝先生〟ガ保証シマス』

「あっ先生。先生が言うならトリックとかじゃないですよね、これ」
                      
                   『今泉サン、夢見ヶ崎サン、コンニチハ』
                   『〝答エ合ワセ〟ヲ 期待シテモ?』

先生は嘘とかはつかない。正直というか、たぶん先生だからだと思う。
まあ見間違えたりはするし、ユメミンの『未来予知』はこのままじゃ謎のまま!

439夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2018/05/25(金) 00:10:56
>>438

「うまい!!イズミンにザブトンいちまい!!」

こんど使おう、と心の中で思った。
あ、『チョサクケン』とかはらわなきゃダメかな??
まぁ、それはそれとして――。

「ふっふっふっ……。
 それをしったら、きっとイズミンもセンセーもびっくりすることまちがいなし。
 私の『ドクター・ブラインド』は――」

自信満々に笑いながら、もったいぶってタメを作る。
もちろん『予知能力』なんかじゃない。

「――『耳が超いい』!!」

……いざ声に出してみると、なんだか間抜けだった。
しかし、事実は事実だ。
そして、『ドクター』の真髄は、それだけではない。

「じゃ、わかりやすく。ちょっとだけ『チクッ』とするよ」

『ドクター』が腕を伸ばし、『手術用メス』を思わせる爪で、イズミンの肌に軽く触れる。
ほんの少しだけチクリとするが、持ち前の精密さで傷はほとんど付いていない。
厳密には、ごく薄い引っかき傷ができることになるが、目にはほぼ見えない程度だ。

「――どう???」

イズミンは、すぐに気付くだろう。
普段よりも、周りの『音』や『声』がよく聴こえていることに。
それは、単に聴こえやすくなったというレベルではない。
席に座っていながら、店内に存在するありとあらゆる『音』や『声』が聴き取れるのだ。
一言で言うなら、『超人的』と呼んでもいいだろう。

「ユメミンの『未来予知』の秘密――わかったかな??」

440今泉『コール・イット・ラヴ』:2018/05/25(金) 00:44:39
>>439

「私じゃなくて私の友達のネタですけどね」
「あ、でもネタ元はセンパイで」「推薦を白紙にしたのは先生、うーん」

「この場合著作者が謎ですし、座布団は私が預かっておきますか!」

               『チャント "返ス" ツモリデスカ?』

「そこはフツーに冗談の一環なのでノーコメントで」
「それにしても、耳ですか?」「それで話の内容を聞いたとか――」

        チクッ

「いっ!」

            『・・・"補修"ヲ 開始シマス』

      シュルルルルルル

ちく、っとした次の瞬間には先生が私の腕にテープを巻いていた。
先生の目線はドクターに向いてる。怒ってるのかな、それとも本能とかなのかな。

「たくは無かったですけど、びっくりしちゃった」
「それで、これが『ドクター』の耳の良さとどう・・・」「んっ!」

「なんだか音がよく聞こえるというか、聞こえすぎるというか」

耳に思わず手を当てた。
周りのボリュームが大きくなったんじゃなくて、自分の耳が良くなったとすぐ分かった。

「プチ手術、ってところですか。予防接種の方が近いのかな」

            『今泉サン、大丈夫デスカ?』
            『傷ハ トテモ浅イデスガ。耳ニ何カ?』

「腕は大丈夫です大丈夫、ちょっと痒かったくらいで〜」
「耳は・・・よく聞こえますねえ、さっきの二人が話してる事とかも」
「あっ、キッチンの会話まで聞こえる?」「面白いですねえ、これ」

「そういうわけで。ばっちり分かっちゃいました、秘密!」

ユメミンの未来予知の正体見たり。いや、聞いたりかな。
私の先生の秘密は前に見せたし、今も見せてるし、これでおあいこって感じがする。

・・・そうこうしているとウエイトレスさんが頼んだものを持ってきたみたい。まだ厨房を出たところだけど。耳が良いって便利。

441夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2018/05/25(金) 06:26:17
>>440

「ゴメンゴメン、センセーおこんないで??さわっただけだとできないんだもん。
 ちょっとチクッとしないとダメだからさ〜〜〜。ゆるして??」

センセーの反応に若干ヤバげなものを感じながらも、そのリアクションに興味も抱いた。
本体の意思とは無関係に動くスタンドが、どんな行動を取るのか。
その先を見てみたい気もするけど、さすがにちょっとキケンがあぶない。

「そう――ちょっとした『手術』ってやつ。
 わたしの『ドクター』は『移植シュジュチュ』ができる!!
 
 ……『移植手術』ができる!!」

肝心なところでうっかり噛んでしまい、微妙な間を置いてから言い直した。
新人シャンソン歌手の新春シャンソンショー!!
舌の動きを滑らかにするためにボイストレーニングが必要かもしれない。

「で――いま『ドクター』の『耳の良さ』をイズミンに『移植』してみた。
 そのあいだ『ドクター』は耳が聞こえなくなって、かわりにイズミンの耳が『超よくなった』ってこと」

「いまは『お店の中』だからこれくらいだけど、
 外でやったら、それはもう、ものスゴイことに……!!
 そこらじゅう『音だらけ』になるから、なれないと大変にタイヘンだけど……」

大量の音の中から必要な音だけを聴き取るというのは、多少のコツがいる。
自分も初めてやってみた時は、あやうく耳がぶっこわれそうになった。
今は、その辺の感覚みたいなものが、なんとなく掴めるようになっている。

「そうそう、わたしなんて、たまに人のないしょばなしをコッソリと……。
 『ちょびっと』だけね、ホントに『ちょびっと』だけ。
 なんていうか『たまたま耳に入っちゃった』っていうかぁ……。
 だけど、これがまたおもしろいのなんの……。
 いやぁ〜〜〜、ヒトとヒトのカンケイってのはフクザツですなぁ〜〜〜」

ベツに積極的にアクヨウしてるわけじゃないよ??
いや、ふつうのアクヨウだってベツにしてないけど。
うん、してない。ぜんぜんまったくしてない。
すくなくとも、わたしが『アクヨウだとおもってること』はしてないんだから。
このジュンスイなヒトミをみれば、それがつたわるはず……!!

「――あ、きてるね。うんうん、きてるきてる」

イズミンの意識が厨房に向いた瞬間、これ幸いとばかりにすかさず便乗する。
そして、少し意識を集中して、もう一つ『予言』をしてみる。
さっきはちょっとだけ外してしまったからだ。

「私達から見て、トレイの右手前にイズミンの『アイスミルクティー』、
 左手前に私の『ホワイトショコラストロベリーラテ』。
 左奥に『クラブハウスサンド』、右奥に『ほうじ茶プリン』」

ウエイトレスが運んできたトレイには、そのように品物が並んでいるはずだ。
といっても、『ドクター』の『超聴覚』はイズミンに移植中なので、音で聴いたわけじゃない。
『ドクター』は『聴覚』だけじゃなく、『嗅覚』も同じくらいに『超人的』だ。
それを頼りにして、『匂い』の漂う方向と距離から計算した結果だった。
それはともかく、おなか空いてるから早く食べたい。

442今泉『コール・イット・ラヴ』:2018/05/26(土) 00:28:35
>>441

         『怒ッテハ イマセンヨ』
         
「先生が何考えてるのかは私も分からないんですよね〜」
「でも私は怒ってないし」「先生にも文句は言わせませんよ!」

         『何モ 無イノナラ 文句ナンテ言イマセンヨ』
         『夢見ヶ崎サン、怖ガラセテ シマッタナラ スミマセン』

「との事ですし、大丈夫ですよユメミン」
「それにしても『移植しゅず……手術』ですか」
「やっぱ言いにくっ」「ともかく本格的にドクターな感じですねえ」

そういえば前に会った時も手術って言ってた。
それで、あの時も言いにくかったのも覚えてる。
初めて会った時のことだし、忘れるわけない。

「フツーに手慣れてるんですねえ」「流石本家本元」
「私も話は聞こえるけど、テレビを何個も同時に見てる感じで」

話からするにユメミンはこの能力を上手く使ってる、みたい。
もしかしたら、それは『盗み聞き』とかなのかもしれない。
ちょっとフツーじゃないけど、そんなに目くじら立てる事でもない。

「どうにも、細かい内容は頭に・・・って」

「え、音だけでメニューまで分かるんですか!?」
「ん、あれ、でも聴覚は今私が持ってるんですよね」

「・・・??」「もしや、ドクターには第二の能力が」
「いや、でも能力が二つも三つもあるのは変ですよねえ」「先生は一つだし」

               コト

ウエイトレスさんがテーブルにユメミンの予知通りのトレイを置いた。

よく分からなくなってきたし、甘い物でも飲んで思考力を研ぎすまそう。
今思ったら、ロイヤルミルクティーにすればよかったかも。

「ユメミン、この問題の答え合わせもお願い出来ます?」
「それとももうちょっと自分で考えなさい!ってタイプの問題?」

443夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2018/05/26(土) 15:13:30
>>442

「あ〜〜〜、ハラへったハラへった。
 きょうは、あちこちイッパイあるいてみてまわったから、チョーおなかすいた。
 うむうむ、ウマいウマい。ガス欠のおなかにしみわたるぜ〜〜〜」

とりあえず注文したクラブハウスサンドにかじりついた。
グリルしたチキンとアボカド、卵、チーズ、トマトが挟んであり、なかなかに分厚い。
付け合せにフライドポテトも乗っている。
軽食ではあるが、割とガッツリ系だ。
今日は――というか今日も、新しい発見を求めて町中を歩き回っていた。
そのせいで、エネルギーが足りなくなっていたところだ。

「『ドクター』も『ノーリョク』は一つだよ。『ノーリョク』はね。
 なんていうかぁ、ちょっと『ヒミツ』があるんだよねぇ」

フライドポテトをつまみつつ、いたずらっぽく笑う。
実際、『ドクター』の能力は『センセー』と同じく一つしかない。
だから、これは能力ではなく特性のようなものだ。

「ふっふっ、そういわれると、なんかジラしたくなっちゃうなぁ〜〜〜。
 まぁ、そんなにひっぱるようなことでもないし、サクッとこたえあわせしちゃおっかなぁ。
 でも、そのまんまおしえるっていうのもツマンナイしぃ。
 んじゃ、かぁるく『ヒント』をだしてっと――」

「あ、センセー、『おてあて』ヨロシク」

     スゥッ

『ドクター』の爪で、イズミンの肌に軽く触れる。
爪の先で薄くなぞるようにしているので、できる傷は極小になるはずだ。
同時に、イズミンに移植した『超聴覚』を解除した。

「――ババーン!!!ってね」

    ド ド ド ド ド ド ド ド ド

アイスミルクティーを口に含んだ瞬間、『それ』が分かるだろう。
先程まで飲んでいたものと比べて、明らかに『違う』のだ。
飲み物の『味』が、目が覚めるように『鮮烈』に感じられる。
そればかりか、ミルクティーを構成する材料や、それら一つ一つが全体の何割くらいかまで把握でき、
全体の一割にも満たない隠し味の存在にも鋭く気付けるほどだ。
たとえるなら、『何十年間も世界中の料理を食べ歩いたグルメ評論家』以上に舌が肥えたという感じだった。

だけど、飲み物に変化があったわけじゃない。
『聴覚』の代わりにイズミンに移植したのは、『ドクター』の『超味覚』だ。
『超人的な味覚』の影響で、イズミンの舌が一瞬で一気に肥えたというわけだ。

「3、2、1……せいげんじかんしゅうりょう!!
 さてさて、シュツジョウシャのみなさんのカイトウをみてみましょう。
 それではイズミンせんしゅ!!おこたえをどうぞ!!」

444今泉『コール・イット・ラヴ』:2018/05/26(土) 19:21:24
>>443

「どこか遊びに行ってたんですか?」
「あ、先生『補修』お願いします」

          『・・・オ願イサレナクテモ、補修ハシマスガ』
          『ホドホドニ シテ下サイ』『ワザト傷ツクヨウナコトハ』

「分かってますよ、でも気になるじゃないですか」
「フツーじゃないとは思いますけど、痛くもないですし」
「痛かったり痕が残るならフツーにやらないですよ」

             チク

          『・・・』

机の上に伸ばした左腕に一瞬だけ違和感があった。
その次の瞬間には先生が手を伸ばして、テープを巻いていた。

「先生、ありがとうございます」
「それで、今度は何を・・・」

                   ゴク

「んん!?」

ミルクティーが舌に触れた。それがはっきりわかった。
それだけじゃなくて、普段なんとなく流し込んでた味がわかった。
わかったっていうのは甘いとか渋いとかじゃなくて、もっと『言葉』だ。

・・・私がそれを言葉に出来たら、作文も楽なんだろうけど。

          『今泉サン、ドウナサイマシタカ』

「分かった! 分かりましたよ、ドクターの能力の正体」
「耳がいいだけじゃなくて、舌も・・・いえ」「鼻とか目も」
「そう、えーと、『五感』というのが鋭い!」
「そしてそれを移植できる・・・これなら一つでしょう」

いつのまにか耳はふつうになっていた。
移植した感覚はすぐに戻せるって事なのかな。

「今の予知は・・・匂い、それかガラスに反射したのを見たとか?」

この味覚からすると、どっちも出来なくはなさそうな気はする。
テストとかでもあるんだよね、こういう『これ!』って答案。
それが絶対あってるとは限らないんだけど、期待はしていい、はず。

「どうです、私の回答。ユメミン的には100点中何点ですかね」
「あ、マルかバツかだけでもいいですよ」「『部分点』があれば嬉しいですけど」

445夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2018/05/26(土) 21:51:25
>>444

「いやー、ちょっとしたぼうけんってとこ。
 なんか『オモシロソーなみせ』とかないかなぁって。
 ここはたまによるんだけど、なかなかいいよねー」

   ムッシャムッシャムッシャ
              ズズスズ゙ーーーー

喋っている間に、クラブハウスサンドとフライドポテトを平らげる。
その次にホワイトショコラストロベリーラテを飲んで口直しだ。
うむうむ、これもイケる。

「そーそー、『ワルいアソビ』はホドホドにしとかないとセンセーにおこられちゃうから。
 リョーカイしました、センセー!!
 でも、ふたりともなんにでもキョーミをしめすトシゴロなんだし、ちょっとくらいは、ね??ね??」

あまり固い感じではないが、一応の弁解を済ませる。
もちろん、言われなくても痛いこととか傷跡が残るようなことはしない。
『ドクター』の外科手術のような精密さなら、そうならないように繊細な微調整が可能だ。

「――う〜〜〜ん……『90点』!!
 おしい!!もうちょいで満点花丸だったのに!!」

「さっきのは『匂い』であてたっていうのは……だいせいかい!!
 いまは、イズミンに『ドクター』の『舌の良さ』を移植してる。
 だから、『ドクター』は『耳も鼻も舌も超イイ』」

「だいたいあってるんだけど……『イッコ』だけちがうんだよねぇ。
 よ〜〜〜くみてみたら、ひょっとするとわかっちゃうかもぉ??」

そう言いながら、自分の傍らに佇む分身――『ドクター』に視線を向ける。
その両目は、相変わらず固く閉じられていた。
目が存在しないというわけではなく、目そのものは確かに備わっている。
ただ、それがずっと閉じっぱなしなのだ。
考えてみれば、今まで一度も目が開いた所を見ていないことに気付くだろう。

  ……『L(エル)』 『I(アイ)』 『G(ジー)』 『H(エイチ)』 『T(ティー)』……

ふと、『ドクター』が、前に聞いたのと同じ言葉を呟いた。
以前と同様に、男とも女ともつかない無機質で淡々とした口調だ。
その五つのアルファベットを順番に並べれば、一つの単語が出来上がることになる。

「ジャジャン!!さいしゅうもんだい――あとの『イッコ』はなんでしょうか??
 これがとけたらポイントが2ばいだ!!」

446今泉『コール・イット・ラヴ』:2018/05/26(土) 23:28:43
>>445

「前は『爬虫類カフェ』でしたっけ」「ヘビの写真を送ってきたやつ」
「私はフツーな店しか知らないから、ああいうのを教えたりは出来ないですが」
「こういう感じのカフェなら、そこそこ知ってるんですけども」

放課後とか、よく喫茶店に行ったりするし。
友達に教えてもらった店とかもあるし。
まあ、喫茶めぐりが趣味ってほどじゃないけど。

            『〝社会経験〟ノ一環デアレバ 止メハシマセン』
            『・・・壊レテシマワナイ 限リハ デスガ』
            『デスガ、先生モ不安ニナリマスカラ。ソレハ オ忘レナク』

「フツーに大丈夫ですって。無茶なことはしませんよ」
「安心してくださいよ先生。私はフツーが好きなので」

フツーじゃないのも、そんなに嫌いじゃないけど。
でもそれはフツーがあるから、ってところはある。

「う〜ん、惜しいですね。赤点は免れてよかったですが」
「イッコ・・・そうですね、耳、鼻、舌・・・と来れば」

「あ、『眼』ですか? なんか、ずっと閉じてますし」
「『エルアイジーエイチティー』って、光の方の『ライト』ですよね」
「というわけで、最終問題の回答は・・・ドクターに『視覚』はない!でどうです?」

            『・・・・・・・・・』

それにしても、なんでそんな制限があるんだろう?
そう思ったところで、ユメミンはいつもサングラスを掛けている事に気づいた。

ユメミンはフツーじゃない恰好をしていてオシャレだから、その中じゃフツーだった。
サングラスは、フツー室内じゃ掛けない。あー、私、今フツーの顔でユメミンを見れてるかな。

447夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2018/05/27(日) 05:39:08
>>446

「そうそう、『シャカイケンガク』ってやつ。
 ジンセーなにごともケイケンがだいじ!!
 『アリス』だって『ウサギ穴』にとびこんだんだし、
 わたしも『アリス』だから、ふしぎなセカイがあったら、そこにとびこんでいかなきゃ。
 なんてったって、わたしは『この世の全部』をみなきゃならないんだから!!」

別に危険に遭いたいわけじゃない。
だけど、その先に見たことのない未知の世界が待っているとしたら、躊躇う理由はない。
だって、私は『アリス』だから。

「ドドン!!イズミンせんしゅ、せいかいです!!
 『ドクター』は『耳や鼻や舌』はバツグンだけど、『目』はみえないんだよね〜〜〜。
 あ、あと『指先の感覚』とかも超イイから、肩コリとかで『どこがこってるか』とか、
 すぐわかっちゃってベンリ!!
 わたしのマッサージは、そのスジではけっこうひょうばんあったりなかったり」

  スッ

そこで唐突に笑うのを止める。
その顔には、いつになく真面目な表情が浮かんでいた。
おもむろに席から立ち上がると、静かに口を開く。

「私の『ドクター』には『視覚』がない。だけど、『ドクター』に『死角』はない。
 何故なら、存在しない『視覚』を補う『力』があるから」

  トスッ

やや抑えた声色で精一杯カッコつけた台詞と共に、やたらと気取ったポーズを決める。
少しの間そうした後、また着席した。

「――っていうのかっこよくない??いま、おもいついた。
 こんど、どこかでつかおっかな。ちゃんとメモっとかなきゃ」

スマホを取り出すと、メモ帳アプリを立ち上げてメモをとり始めた。
どうやら、いつか使う気らしい。

「ん??あれあれ??イズミン、かおになんかついてるよ??
 ここ、ここ。ほら、このあたりにさぁ〜〜〜」

スマホを元通りしまうと、声を掛けつつ自分の顔の中央付近を指差す。
イズミンの様子を何となく察したからだ。
湿っぽいのは、あんまり好きじゃない。

「――ね?『鼻』がついてるでしょ?わたしといっしょ。『お揃い』だね」

ふふっと笑う。
さっきまでの屈託のない笑い方とは少し違う、穏やかな笑い。
私は普通じゃない世界に目を向けることが多いし、実際そういう風に行動してる。
だから、イズミンとお喋りしてると、なんだか一休みできてるって気がしてホッとする。
それは、イズミンから感じられる『普通のオーラ』みたいなものに触れてるせいかもしれない。
『普通って何か』って聞かれたら、上手く答える自信はないけど。
でも、今の私が、この時間は充実した時間だって感じてることは間違いないと思う。

「あ、これウマい。イズミンも食べる?」

ややあって、食べていたほうじ茶プリンを差し出す。
しかし、『味覚』を移植したままなのを忘れていた。
食べたら、ビビッと電気が走ったみたいに、物凄く鮮明に味を感じられることだろう。

448今泉『コール・イット・ラヴ』:2018/05/27(日) 23:53:16
>>447

「やっぱり、夢が大きいですねぇ、ユメミンは」
「ユメミンだけに」「なんて言ったら私は泉が大きい事になりますけど」

「・・・」

笑顔を浮かべてみる。多分ちゃんと笑顔だろう。
別に、今はもう大丈夫って感じなんだろうし。
あんまり気にしてる方がユメミンも気まずいはず。

「やった! 正解いただいちゃいました」
「便利ですねえドクター」「まさに死角なし・・・」
「っと、顔? どこですかね、ストローから跳ね――」

指先を顔の上で滑らせていると、次の答えを貰った。

「・・・・・・鼻、ですか」「そうですね! お揃いです」
「手も、脚も、カタワレも」「まあ見た目は違いますが」

             ヘヘ

「いただきます、実は食べたかったんですよそれ」
「晩御飯買っちゃったし、注文しなかったんですけど」
「断るのは悪いから仕方ない! という自分への言い訳で」

差し出されたプリンを受け取って一口食べる。
この甘いのくらい柔らかく気持ちをほどければいいんだけど。

「やっぱりおいしいですね〜、ほうじ茶スイーツ!」
「『移植』のおかげで、『和!』みたいな、後味?感じますし」
「抹茶派から陥落しそうです」「あ、ユメミンはほうじ茶派?」

私はフツーに、一晩寝でもしないとちょっと遠慮してしまう。
でも表には出さない。ユメミンはそういうの、好きじゃないだろうし。

私はフツーに、フツーを演じる事くらいできる。それくらいフツーだけどね。

449夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2018/05/28(月) 00:58:29
>>448

「すべてをやさしくつつみこむ、めがみのようなホーヨーリョク。
 それは、まるできれいなみずをたたえた、おおきなイズミのよう。
 あなたがおとしたのはキンのオノですか??ギンのオノですか??
 ことし、だいちゅうもくの、じつりょくはしんじんアイドル、イズミン。
 みんな、おうえんヨロシク!!」

イズミンの笑顔。
それに対して冗談を飛ばしながら、こちらも笑顔を返す。
その顔は、また賑やかな感じの笑いに戻っていた。
もう大丈夫だって伝えたかったから。
だから、普段通りの表情に戻ることにしたのだ。

「そう、同じ!!どうし、あいぼう、マブダチだ!!
 『カタワレ』だって――あ、これセケンでは『スタンド』っていうらしいよ。
 ユメミンの、あしたつかえるまめちしき№4!!」

そう、手だって脚だって――『目』だって同じだ。
昔は見えなかったけど、今は見えている。
光除けのサングラスは手放せないけど、それでも見えていることに変わりはない。
だから、私とイズミンは『同じ』なのだ。
そんなことを心の中でちょっとだけ思ったけど、顔には出さなかった。
せっかく明るくなったのに、またナイーブでセンチメンタルな雰囲気になってしまう。

「んー??まー、たぶんそんなかんじかもしれない。
 『今は』、だけど。ユメミンのこのみは、ていきてきにかわるのだ!!
 2しゅうかんくらいまえは『抹茶派』だった!!あしたは『紅茶派』になってるかもしれない!!」

「うんうん、いまなら食レポもできるぞ!!アイドルには、それもひつようだ!!
 ことばがなくても、おいしそうにたべてるだけでつたわるさ!!
 だって、いまイズミンがたべてるやつ、すげーおいしそうだもん。
 イズミンのせんでんこうかで、ここもあしたからおきゃくさんがばいぞうだ!!」

どうしてアイドルデビューする話になったのだろうか??
そんなことは私も知らない。永遠の謎だ!!
きっと、海に沈んだアトランティス大陸よりも深い謎が隠されているに違いない!!
そういえば、『味覚』を解除するの忘れてたな。
でも、イズミンがおいしそうに食べてる最中だし、もう少しこのまんまでもいいか。

「あ、こんどイズミンのオススメのみせとかおしえてくれない??
 かわったとこじゃなくてもいいよ。イズミンとおしゃべりしてるのって、ケッコーたのしいし」

「わたしは、めずらしいモノとかフシギなのがスキなんだけど、
 なんていうかさ――イズミンといっしょにいると『フツー』なのもいいよねってかんじ」

しみじみと言いながら、イズミンに笑いかける。
自分は、『普通じゃないこと』に惹かれることが多い。
でも、『普通のこと』だって改めて見直してみれば、今まで気付かなかった良さに気付くこともある。
『普通』があるから『普通じゃない』もあるのかもしれない。
イズミンと話していると、ふとそんなことを感じた。

450夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2018/05/28(月) 01:34:12
>>449

なんかモジバケしてたので、さりげなくテイセイだ!!

×ユメミンの、あしたつかえるまめちしき?・4!!
○ユメミンの、あしたつかえるまめちしきナンバー4!!

451今泉『コール・イット・ラヴ』:2018/05/28(月) 01:47:17
>>449

「あはは、ほめ過ぎですよユメミン」
「アイドルだなんて」「・・・悪い気はしませんけど」
「ユメミンもデビューしません? 同士として」

「それにしても・・・『スタンド』ですか」

            『不思議ト 納得ノ行ク呼称 デス』
            『立チ尽クシテイル ワケデハ ナイデスガ』

「そう呼ぶのがフツーなら、私もそうしようかな」
「先生は私の『片割れ』という雰囲気でもないですし」
「今日から使える豆知識になってしまいました」「流石はユメミン」

私は笑っている。
ユメミンも笑っている。

『なかったこと』には出来ない何かを、それでも隠して笑う。
その時の笑顔は嘘だけど、気持ちは嘘じゃない。楽しい時間。
本当に楽しいから・・・だから隠そうって思えるんだ。

「紅茶スイーツもいいですよね、それからコーヒー」
「『アフォガード』がおいしいお店があるんですよ」
「今度案内します」「いつになるかは分かりませんけど」

        ニコ

「私もユメミンとお喋りしてると楽しいから」
「フツーな私でよければまた遊びましょうね」
「・・・っと、と、遊びで思い出したけど、勉強中だった」
「すみません、作文集中するんでちょっと口数減りますね」

シャーペンを手に取る。ユメミンはここにまだいるのかな。
それとも食べ終わったら帰るのかな。どっちにしても、文章を考えよう。
ユメミンと話すのは楽しい。話さなくても、友達はそこにいるだけで嬉しい。

                カリカリカリカリ

                          カリカリカリカリ

452タタラ『インスタント・カルマ』:2018/06/06(水) 01:42:36

        カコン
               カコン

一つ、また一つ。
善行という石を積み重ねる。
この世は賽の河原ではない。
積み重ねた善行が勝手に崩されはしない。

    カコン
             カコン

まあ小難しい話ではなく。
単にゴミを拾っているのだが。

(暑くなってきたせいか、空き缶が多いわね。
 今週の善行は全部これで良いんじゃないかしら)

         カコン

クラシックなメイド服の女がゴミを拾いまくる姿は、
傍目に観るとかなり小難しい状況にも見えるだろう。

453『ニュー・エクリプス』:2018/06/08(金) 19:52:36
>>452

 ――クルクル  
          シュッ
                タンッ!!

   シャキーンッッ

 「悪の組織の首領! モーニングマウンテン!!」

エッ子「おやつ幹部 エッ子(/・ω・)/ !」

ムーさん「昼寝幹部……ムー」


 『三人合わせニュー・エクリプス! (∩´∀`)∩』

 「……んっ!? むむむっ!! どうにも一人足りない気がするっス!
幹部が一人足りないっス!! これは一体どう言う事っス!?」

 エッ子「そーだ! 一人足りないのだー! (`・ω・´)」

ムーさん「のりなら、この恥ずかしい状況に耐えられなくて
少し先でゴミ拾いしてるよ」

 
 「ふーむ、幹部のりは先行してゴミ拾いっスか!
こう言うキメポーズは全員でやらないと行けないんっス!!
 ん? おー!! こちらにも悪のゴミ拾い活動をしてる
お仲間が居たっス! こんにちはっス!! 暑い中ご精が出ますっス!!」

エッ子「こんにちはー(*'▽')!!」

物凄く和気藹々とした二人と、少し疲れた一人が
悪の組織と言いつつ貴方に近寄って来る。
 どうやら、悪の集団らしい。

454タタラ『インスタント・カルマ』:2018/06/08(金) 22:27:32
>>453

(特撮好きのボランティア部か何かかしらん。
 まあこれだけたくさんゴミもあるし、
 横取りだなんだって考えるのは罪深よね)

(……とはいえ)

「ご機嫌よう、お仲間様。
 学校の課外活動か何かかしら?
 それとも、自主的にやっているの?」

      「どちらにせよ感心しますワ」

空き缶を掴むトングを一旦、背中に戻す。
そしてお辞儀。メイドらしく、規律正しい角度。

「それにしても『悪の』というのは?
 ゴミ拾いは悪ではありませんワ。
 善行、要するにボランティアですもの」

「ああ、まあ、空き缶拾いで生計を立てている方には『悪い』ですけど」

少し引っかかる言葉があった。
まあ向こうは子供だし、そんな噛み付くような調子ではなく、
純粋に疑問として聴いている。渦巻くような瞳での凝視を添えて。

455『ニュー・エクリプス』:2018/06/08(金) 22:47:20
>>454

 悪の首領を名乗る少女は、最近再ブレイクした猫娘な感じの仮面を被っている。
貴方の言葉にハキハキした口調で答える。

因みに三人は、学生服で同じくゴミ袋を各自が持っており。片手に軍手を嵌めてる

 「ふっふっふ! 我らは悪の組織ニュー・エクリプス! そんでもって
清月学園のうちゅー・とーいつ部なんっス!
 ゴミを拾って、みーんながニュー・エクリプスの活動に対して偉いんだなーと
感心する事により、我らの悪の侵略活動が水面下で起こる事を気づかせない!
 これぞ、我ら悪の秘密組織の大いなる悪の侵略活動なんっスよ!」

エッ子「あっ! 星見グレープジュース飲む?
さっき自販機で当たったんだぞー! (*'▽')」

 悪の首領が堂々と悪の活動を述べるなか、貴方へと黄色い髪の毛の高等部の女子は
冷えたてな缶ジュースを渡してくる。

ムーさん「……」

一人だけ、二人と雰囲気が異なる怠惰な目つきをした女子は。貴方の渦巻く
瞳に対し、怯んだ様子なくフゥーとシガレットチョコを加えつつ見つめるに留まる。

ムーさん「とある家から一組の男女が出て来た。
その二人が現れた瞬間、家の周りにいた群衆の反応は劇的だった。
ある者は悲鳴をあげ、ある者は泣き出し、ある者は手にあるものを投げつける
 だが、その二人は平然と笑っていた。
それは何故なのだろう?」

 いや、見つめるに留まらず謎々なのか、ウミガメのスープなのか知らぬが
問題を出してきたぞ。

456タタラ『インスタント・カルマ』:2018/06/09(土) 04:31:13
>>455

(にしても、仮面? ファッション?
 ……顔のケガとかかもしれないし、
 無暗に突っ込まないのが妥当よね)

異様な仮面少女に多少の警戒はしつつ。

「マア、悪の組織……宇宙統一部。
 侵略活動とは一大事ですワね、
 私が此処で食い止めるべきかしら?」

            フ

(要はごっこ遊びって事ね。
 エクリプスってのは気になるけど)

「――――と、思ったけれど。
 私も正義のヒーローとかでも無し。
 ワイロを受け取ってここは見逃しましょう」

       「ありがとうエッ子さん」

口元に指を添え、黙秘を示しつつ。
グレープジュースを有難く受け取る。

「……?」

「クイズ、それとも心理テストかしら。
 そうですワね――――私の答えは、
 『二人は自分達に絶対の自信があるから』」

「愛か、強さか……正義か、何かは知らないけど。
 他人から何を言われても揺らがない軸があるんでしょう」

457『ニュー・エクリプス』:2018/06/09(土) 18:48:54
>>456

タタラは悪の組織の賄賂をうけとり黙認を示す。

エッ子「ラムネうまーい!! ヽ(*゚▽゚)ノ」

 「ラムネうまーいっス!!v( ´∀` )v」

悪の首領と、おやつの幹部も一休みしつつ自賛してるラムネを
飲んで、ぷはーっと笑顔でハイタッチをしている。一人は仮面で
顔色は読み取れないが、ほぼ性格が似てるので推し量るのは容易だ。

>『二人は自分達に絶対の自信があるから』

チッチッチッ

ムーさんは、貴方の回答に軽めに人差し指を振りつつ
気怠い様子を醸しつつ否定のジェスチャーを行う。

「クイズ、ではなし。これは『ウミガメのスープ』と言う問題だね。
主観的な感想や、象徴のようにアバウトではない。
この状況は、ある場所では極めて自然に見られる光景だ……」

 「……ん? 何でいきなり、そんな問題をするのか、か……
暇つぶしだね、うん」

 どうやら、ムーさんは貴方にウミガメのスープ問題を出したくて
仕方がないようだ。はい、いいえで答えられる質問ならば
幾らでも受けてくれそうだ……。

458タタラ『インスタント・カルマ』:2018/06/09(土) 22:01:49
>>457

悪の二人に微笑みかけ、
自らもグレープジュースを開封した。

     ゴク  ゴク

「……ひまつぶし、そう。
 それはステキですわね」

(人のコトは言えないけど、フシギちゃんね。
 こっちがヒマとは一言も言ってないけど……
 まあ、そんな風に断るのは大人気ない、か)

実際、べつに忙しい訳でもない。
ほとんど余暇の時間に近い。

であれば――遊びに付き合うのも、また一善。

「良いでしょ、質問をさせてもらっても?
 そういうルールでしたワね、この遊戯は」

             「……」

    ス…

口元に手を添えて、黙考する。

「まず、『お話の舞台は2018年6月のS県でも成り立つ』?
 要は異世界とか、異文化とか、戦時下とかではなく、
 私達が生きている今日、それが起きてもおかしくないか」

「これが『創作世界』の話じゃないのは分かってるけれど、
 念のため、ですワ。走り回った末の灯台下暗しは悲しいもの」

とはいえ前提を埋めるのが先だ、と気づくのはすぐだった。
あとで脳内で起きた出来事でした、なんて言われても、困るので。

459『ニュー・エクリプス』:2018/06/09(土) 22:35:07
>>458

>『お話の舞台は2018年6月のS県でも成り立つ』?

ムーさん「YES。まず、世界中の何処で起きていても
ちっとも不思議でも何でもない。この問題の舞台は
大昔でも起きてるだろうし、何十年もの未来でも普通に起きてるだろうね
季節は特に関係ないし……」

エッ子「お(/・ω・)/ なになに!? 何か面白い話!?」

「私たちも混ぜるっスー!」

ムーさん「んー……この問題、二人も前にやったからな。
あぁ、それじゃあ。今から、回答するメイドさんの質問に
二人も答えられる権利を与えようか」


 質問できる人数が増えた。陽気な二人は、どうやら以前も
このウミガメスープ問題を、した事があるらしい。

460タタラ『インスタント・カルマ』:2018/06/09(土) 22:58:01
>>459

(持ちネタみたいなもんなのね。
 という事は、回答者の素性は関係ない)

ウミガメのスープは『脳内当て』と紙一重。
特に初対面の相手であれば警戒は必要だ。
一つ一つ、可能性は潰していく。

そうすればおのずと、答えは見えてくる。

「――そうですか、では次の質問を。
 『集まった群衆の感情はポジティブな物である』?」

渦巻く目の焦点が彷徨う事をやめていた。
射貫くべき謎を見つけた気がしたからだ。
まあ別に探偵とかではないので、気分の話だが。
 
「ああ、『喜怒哀楽』の『喜楽』をポジティブと定義しますワ。
 悲鳴も、涙も、物を投げるのも、『嬉しい時』もする事でしょう」

           「そう。結婚式、とか――ね。
            それとも、大スターの花道歩きかしらん」

黄色い悲鳴。うれし泣き。ライスシャワーや、衝動の余りの投擲。
感情は一色ではない。相反する感情の者が入り乱れる場と考えてもいいか。

いずれにせよ――――この答えにはそれなりの『善』を感じるわけだ。

461『ニュー・エクリプス』:2018/06/10(日) 19:30:05
>>460

>『集まった群衆の感情はポジティブな物である』?

「YES。群衆の感情は全体的に明るいものだ……」

ムーさんは、そう回答すると共にタタラの言葉に僅かに眉をあげる。

それは『結婚式』のワードを聞いてだった。

「――正解だ。そう、結婚式
教会。神の家から出て来た二人を待ち受けてたのは親族と友人。
 花婿と花嫁の同僚や同級生に友人は黄色い悲鳴をあげて、親族の
何人かは泣き出し、そして彼らを祝うために紙吹雪とライスシャワーを投げた。
……ある程度まえに、私の親戚の式に参加して思い付いた問題だったんだ」

エッ子「その割には、何だか顔を顰めてない(´・ω・`)?」

ムーさん「ブーケトスに巻き込まれて、もみくちゃにされたのか苦痛だった……」

彼女は、少し遠い眼をしつつ語る。
 ムーさんの、ウミガメのスープは終わる。それに反応したのは
悪の首領と、おやつ幹部だった。

エッ子「ふっふっ! (`・ω・´) 
ムーさんの問題には、この前してやられたからね! 次は私たちの問題だ!」

「そう! モーニングマウンテンと幹部の問題っスー!」

続けて悪の首領と、幹部がウミガメのスープを出すらしい。
 呆れた声で、ムーさんは呟く。

ムーさん「……ちゃんとした問題なんだろうな?」

モーニングマウンテン「モーマンタイっス! ちゃんとしたウミガメスープっス!」

自信満々の悪の首領に代わり、エッ子は前に出ると不敵な笑みで告げた。


エッ子「では、この前に実際私たちが起こした出来事だ!
 私たちは、学校の私のクラスで沢山の人をきりつけたんだ!
大体は、血の色に染まって。それに真っ青になったり、死人みたいに
真っ白になった人もいたよ! 次の日は全員ちゃんと登校したけどね!」

モーニングマウンテン「そして、続いて自分達は
私のクラスでも、同じ事をしようと思ったんスけど。
とあるふかーい事情により、断念する事になったんス!
 さぁ、こっからが問題の要っス!
ずばり、自分達の犯した事は何だっス!?」


ムーさん「……ふぬ?」

 高等部エッ子と、中等部の朝山はウミガメのスープを繰り出す!
ムーさんは、本当に初めて聞く問題らしく首を捻ってる。
 二人に一人ずつ質問が出来そうだ。

462タタラ『インスタント・カルマ』:2018/06/10(日) 21:04:55
>>461

「お気に召す回答だったかしらん。
 こういう頭の使い方は久しぶりだったから、
 中々楽しい時間を過ごせましたワ。ありがとう」

「……」

(これじゃ、ボランティア部じゃなくてクイズ部ね。
 ま、ここで断るのも可哀想だし付き合いましょうか。
 ゴミは逃げない。今日の分はもう拾ったと考えてもいいし)

(ある意味辻クイズに応じるのも善行よね)

一瞬ゴミ拾いに割く時間を危惧したが、
そこまで忙しいわけでもない。付き合おう。
ゴミばかり拾うのは善行とはいえ多少気が滅入るし。

「――マア、貴女達も問題を。
 それはステキですわ、聞きましょう」

高度と自認する作り笑いを浮かべる。
そして、静かに最後まで問題を聴き終える。

「――とても物騒というか、罪深げな問題ですワね。
 一応確認しておくけれど……首領様は今、中等部で?
 そちらの――ええ、おやつ幹部様は高等部だと、思うのだけれど」

口元に指先を当て、小さく首をかしげる。
クラス、という単語が出た以上学年が関係する可能性はある。

「今の確認が正しい、という前提で聞きますワ。
 『貴女達が"きった"ことで、その人達は流血した』?」
 
「例えばもし人体を斬ったにせよ――髪を切ったら血は出ない。
 けれど真っ赤になって怒る人も、蒼白になる人もいるでしょうものね。
 とは言え、そんな非道い事はしていないのでしょうけれど……ね?」

もちろん髪を突然切って回るような奇行は想像し難いし、
そんな事をされれば次の日は休む人がいてもおかしくない。

なので、これが答えとは考えていない。あくまで質問その1だ。

463『ニュー・エクリプス』:2018/06/10(日) 21:22:51
>>462

>首領様は今、中等部で?

「そうっスよ! このモーニングマウンテンは
中学二年っス!!」

「私は、高校二年だー!」

 元気に首領と、おやつの幹部は声をあげる。

>"きった"ことで、その人達は流血した?

エッ子「うんうーん! 全然そんな事ないよー!」

朝山「怪我は全員してないっス!」
 
 この回答で、二人のおこなった事が誰かに怪我をさせるような
ものでない事はわかった。ムーさんは暫く考えこんでいたが
合点がいった様子で聞く。

 ムーさん「この前、この前……あぁ、もしかして
あの手抜きの事か?」

 エッ子「あっ! ムーさん解ったんなら黙っててー!」

ムーさん「はいはい……と言うか、きった……か。
…………あぁ、でも間違っちゃいないか」

 ムーさんは、どうやら正解を思いついたようだ。

464タタラ『インスタント・カルマ』:2018/06/10(日) 22:43:40
>>463

「年の離れた友情、というのは素晴らしいですワね。
 そして、そう、そうね――中々難しい問題のようで。
 きりつけた、という言い回しには意味がありそうだけど」

「アラ、先を越されてしまいました。
 流石、というべきかしら、
 それともそういうのはお世辞に感じる?」

          「本心から言ってますワよ」
 
    フ

(きりつける、って言い方には恣意がある。
 同音異義か、言い換えかは分からないけど、
 『ムーさん』の反応からして『私にもわかる』範囲)

(切り付ける、霧つける、切る、着る……)

「そうですね、では、次の質問を。
 『血の色、真っ青、真っ白というのは比喩?』」

「実際にスプレーを吹き付けたとか、そういう話なのかどうかですワ」

色をわざわざ並べたことには意味があるのだろうか?
単なる言葉の飾りなら、それはそれでノイズを省けたことにもなる。

465『ニュー・エクリプス』:2018/06/10(日) 23:13:56
>>464

>『血の色、真っ青、真っ白というのは比喩?』

 エッ子「いや! 比喩ではないねっ。
ちゃーんと、その人、その人でそうなったよ!」

>スプレーを吹き付けたとか、そういう話なのか

 朝山「スプレーではないっス! それに、スプレーだと
きったっ、と言うのは可笑しな言い方になっちゃうっスからね」

ムーさん「人それぞれだと思うけどねぇ」

 人 を、そう言う色に染めた。
スプレーではない。
 
 今の質問でこれだけはわかった。

466タタラ『インスタント・カルマ』:2018/06/11(月) 00:17:09
>>465

「…………なるほど。
 では次の質問ですワ」

流血はしていない。
比喩表現としての色でもない。
塗料を吹き付けたわけでもない。
つまり『どこから色が来たのか』。

「『きりつけたのは人間である』?
 人間の一部、というのも含めますワ」

(学年によっては出来ない……
 そこのところが分からない。
 重要な情報か、ノイズの一種なのかも。
 清月よね、この子達。校則関係かしらん?)

ひとまず、情報の精度を上げる事にした。
この手のクイズは本来質問を重ねるのが前提。
1問目をスピード解決できて、柄にもなく焦っていたか。

(一つ一つ積み上げる、という意味では善行と同じ。
 欲をかいても糸が切れるだけね。……さて、この次は?)

467『ニュー・エクリプス』:2018/06/11(月) 09:00:23
>>466

>『きりつけたのは人間である』?

 エッ子「そうだよー!
もう、バッサバッサの大立ち回りで、きったのさ!」

朝山「そうっス! 人だけをきってるんっス!」

堂々と言い切る二人に、長身のムーさんは呆れた声で口を挟む。

ムーさん「だからって、何で人だけだったんだ。
 まぁ、私たち抜いて12人も相手するのは面倒だけどさ」

 そう、気になる発言を彼女は行った……。

12人……何故、そんな限定的なのだろう?

468タタラ『インスタント・カルマ』:2018/06/11(月) 22:58:13
>>467

「…………ふむ」

(12人? なんか意味があるのかしら。
 クラス全員じゃなくて、12人。
 ……『半数』か、『3分の1』くらいよね)

(清月なんて大きい学校だし3分の1が妥当かしら。
 とはいえ、『全体に占める割合』に意味があるかどうか)

「スマートなやり方ではないけど、
 思いついた事を言わせていただきますワ。
 『きりつけるのに刃物は使った』?」

答えに直接繋がる要素を見いだせていない。
どこまで質問が許されるのかは分からないが、
彼女らの気が済むまでなら、付き合わせて貰おう。

(あえて人数比で考えるなら『性別』?
 私達抜いてってことは彼女らも……
 本来含まれるカテゴリの可能性は高い)

(そうだとして、『きりつける』の正体が分からない。
 きる、じゃなくて『きりつける』なのが……何かありそうだけど)

469『ニュー・エクリプス』:2018/06/11(月) 23:47:17
>>468


エッ子「うんうーん! 刃物はつかってないよー!」

答えは、NOだ。当たり前の話だが、学校で刃物を
振り回すような事があれば、それは大きな事件だ。

朝山「フッフッフッ! (`・ω・´)
手こずってる様子っスね! やはり悪の首領と幹部の
コラボレーションは、まさに大いなる悪なんっス」

調子にのる悪の首領に、ムーさんは呆れる。

「……思うんだが、この問題文も少々意地が悪いんだよ。
きりつけたじゃ、殆どわからん人が多い。
 きり、つけたって言えば未だわかるだろうけど」

エッ子「えー? でも、それじゃあ直ぐわかっちゃうよ〜」

ムーさん「わからんわからん。大体、きりつけたが
ダジャレ見たいじゃないか」

 そんな問答を、ムーさんとエッ子は行った……。

470タタラ『インスタント・カルマ』:2018/06/12(火) 01:05:53
>>469

「ええ、手こずらされておりますワ。
 流石は悪の組織、でしょうか。
 貴女たちが悪だくみをしたら、
 私にそれは解き明かせないのか・も」

            フ

(まあ、そういう事をする子達でもなさそうだけど。
 『きり』『つけた』……ダジャレ? 想定外ね。
 ウミガメのスープでもあり言葉遊びでもあるの?)

(……そうなると、今の考えは一旦捨てた方が良いかしらん)

マジメというわけではないが、
与えられた情報そのままを考えていた。
素直に答えさせてくれるものでもない、か。

「まだ、質問を許していただけるかしら?」

(――きった、のは人。きりつけた、と聞いたのに、
 この子たちの答えは『人だけをきった』というものだった。
 じゃあつけたのは? いや、言葉のアヤかもしれないけれど)

「もし許していただけるのなら、
 こんな質問はいかがでしょうか。
 『きりつけるために、何か道具を用いた?』」

(それに高等部で出来て、中等部ではできない。
 人間にかかわる事なら、体格か年齢か、
 あるいは持ち込めない、持ち出せない物があるか。
 校則やら制服の種類なら私には答えられない。
 あとは授業の種類なんかもそうね……
 校舎の位置やら、先生の性格なんかも分からない。
 一旦、答えられないパターンは想定から外しましょう)

(そのうえで浮かぶ推論を質問で確かめる――これが善手のはず)

471『ニュー・エクリプス』:2018/06/12(火) 09:51:55
>>470

>きりつけるために、何か道具を用いた?

エッ子「YESだー! 当然だけど、道具がないと出来ないもーん」

朝山「因みに、自分はその道具を持ってないんス」

彼女達の答えはイエスだ。そして、中等部の悪の首領は
その道具を持ってないらしい。

ムーさんは、指を掲げて軽く指を横に振る仕草をする。

ムーさん「君(朝山)には、まだ早い。
……そちらのメイドさんは、当然所持してるだろうけど」

朝山「むむっ(`・ω・´) 馬鹿にしないで欲しいっス!
ただ悪の首領は必要性をあんまり感じないので持たないだけっス!!
それと、その仕草はヒントになっちゃうから止めるっス!!!」

ムーさん「自分で言ってちゃあ、世話ないだろ……」

三人はワイワイと騒いでいる。

472タタラ『インスタント・カルマ』:2018/06/12(火) 14:21:52
>>471

(化粧品――なら、中等部でも持つ子は持つわよね。
 高等部でも校則を考えて持ち込まない子はいるでしょうし)

(でも、ほかに何かある? 話し振り的にもそれっぽいし。
 ……『きり』の意味はよく分からないわけだけれど)

「では、次の質問を。
 ……『きりつけたのは人間の顔?』」

(ま、言うだけ言ってみましょうか)

確信は持てないが、可能性はある。

清月では高等部以上が化粧を許可されてるのかもしれない。
彼女らが校則を重んじるのかは謎だが、教師の目もあるだろう。

(私も持ってる、って辺り学校の物じゃないでしょうし。
 お面を被ってれば唇を塗っても意味はないものね)

473『ペイズリー・ハウス』:2018/06/12(火) 15:49:12
>>472

>きりつけたのは人間の顔?

エッ子「ふふーん! 違うんだなー、これが!
もう一回言うよー!
 私は『人』はきりつけたんだ!」

 そう、指を立ててエッ子は得意気に告げた。

不思議な事に、彼女は人間でなく『人』である事だけ
強調している……それは大きなヒントなのかも。

朝山「ムーさんは、あんまりしないっスよねぇ」

ムーさん「面倒くさいからな。付き合いなら
そりゃあするけど……する暇があるなら何か
別の事に時間使いたい」

エッ子「そんなんじゃー、モテないよー」

 新情報も追加だ。
ソレは、ムーさんは余りやらないらしい……。

474タタラ『インスタント・カルマ』:2018/06/12(火) 23:50:06
>>473

「…………『人』を」

(はっきり言って答えが見えない。
 化粧か、美容関係なのは分かる。
 私にその分野の知識が無い訳でもないのに)

(『人』を『きり』『つける』)

「駄目ですワね、どうにも頭が固くて。
 総当たりのようなやり方になってしまうわ」

「醜いようでしたら『降参』しますが」

遊びのクイズだ。
満足されるまでは付き合うが、
クイズの主旨に反する手段は歓迎されまい。

「次の質問は、こうしましょう。
 『貴女方の罪は化粧に関係する?』」

(そうでなければ……スマホとか?
 シャッターを切って加工するって話なら、
 曲解すれば無いって事もないでしょうけど)

(中学生がまだ早いって事もないでしょう。
 そう主張する人もいるでしょうけど、
 私はそうは思わないし。だって便利だもの)

475『ニュー・エクリプス』:2018/06/13(水) 10:21:10
>>474

エッ子「(*'▽') へへーん! かなり悩んでるね!
やっぱり、この問題考えて良かったねー」

朝山「(`・ω・´) くっくっ、自分の悪さに
思わず身震いするっスよ」

二人で騒ぐ幹部と首領を尻目に、ムーさんは少し呆れつつ口を挟む。

「化粧道具に関しては『YES』だよ……ちょっとオサライしようか」

「二人がやってた事の場所は高等部のクラス。
エッ子が先頭して、化粧道具を用いてやった。
 そして、12名ていどの……人、だけに対して
それを行った。そして、中等部でも同じ事を
しようとしたけど結局中断する事にした」

 軽くムーさんは片手を掲げる。
それが、大きなヒントだとばかりに。

「難しく考える必要はないと思うよ
省略してるだけで、答えは一応言ってるから」

476タタラ『インスタント・カルマ』:2018/06/13(水) 17:28:57
>>475

「ええ、悩んでおりますとも。
 ――おさらい、ですか。
 ぜひお願いいたしますワ」

片手を掲げるようなしぐさ。
先ほども似たような事をしていた。
手を横に振る動きだったか――
それにしても、『人』を強調してくるが。

(答えは言っている――『人』の前の間がそれでしょうけど)

(『人間』と『人』の何が違うのかしらん。
 哲学的な領域の話じゃないんでしょうし、
 人形とか、そういうの? 人じゃないわよね。
 生きた人間だけを『人間』と呼んでる、
 なんていうのは有り得なくもなさそうかしら)

(・・・人間の中のカテゴリとは考えたくないわね)

「でしたら、この質問はどうでしょう。
 『“人”というのは生きている人間ではない』」

「どうにも、私には人間と人との違いが分からず。
 難しく考えすぎなのかしらね、ドツボにハマる気分ですワ」

477『ニュー・エクリプス』:2018/06/13(水) 22:16:47
>>476

>人 というのは生きている人間ではない?

エッ子「イエス!」 朝山「ノーっス!」

『・・・・・・(´・ω・`)あれ?』

 この答えに対し、二人は同時に異なる答えを出した。
顔を見合わせる幹部と首領にムーさんは告げる。

「イエスでありノーと言うか・・・・・・
まぁ、ほぼ答えになっちゃうが、『人』の指すのは
『人間の部位』だな。だから生きてる人間っちゃあ
人間だし、生きてないといえば生きてない」

「・・・・・・で、だ。人間の体の部位で
『人』が頭文字につくもので連想するものって
言えば・・・・・・大体わかるね?」
 
 ムーさんは、再度強調するように指を掲げた。

478タタラ『インスタント・カルマ』:2018/06/13(水) 23:14:35
>>477

「――――ああ。
 『指』……『ネイル』ですか?
 なるほど、それは盲点でしたワ」

        フ

「あるいはまだ辿り着けていないのかも。
 だとすれば、私には正答出来ないでしょうし」

笑みを浮かべる。
メイドらしい、熟練した笑みを。

「よければ事のあらましを。
 私にも教えてくださいますか?
 それが回答にもなるでしょう」

(『人』――と言われると困るけれど、
 そう無理のある問題でもなかった、か。
 もちろん、ネイルが間違いかもしれないけど)

(どうして中等部では出来なかったのかは、
 まあ、多分、そういう校則でもあるんでしょうね)

479『ニュー・エクリプス』:2018/06/14(木) 20:20:18
>>478(お付き合い有難うございました。この辺で〆ます)

>『指』……『ネイル』ですか?

エッ子「……デン デンデンデデンン♫」

 彼女は、大袈裟にドラムロールを口ずさむ。

朝山「せーーーいーーーかーーーいっス!」

    バンッ!!  シャキーンッッ!!

そして、悪の首領は華麗なポージングと共に告げた……正解だ。

 私たちは、学校の私のクラスで沢山の人をきりつけたんだ!
 大体は、血の色に染まって。それに真っ青になったり、死人みたいに
 真っ白になった人もいたよ! 次の日は全員ちゃんと登校したけどね

 上記の問題文の回答は、こうだ……。

エッ子「先々週ぐらいにねー! 自信作のネイルアートが出来たんだー!
見たい? じゃーん、これが私の究極のアートだーー!」

 ゴミ拾いの軍手を脱いで、素手の爪に輝くのは……『桐(きり)』
桐の花のアートが、『人』差し指だけの爪表面に輝いている。

『桐』のアートを……爪に『つけた』 きりつけた……成程 ダジャレだ。

エッ子「今月一番ってぐらいの力作でねー! 見せたらクラスの
皆が、私にも描いてーってお願いするから。全部の指は無理だから
私と同じようにー描き『きった』のさ! 途中で赤色のが
無くなったから、他の色で代用したけどね!」

朝山「自分も、それを見てクラスの皆にしてあげようって思ったっスけど。
中等部は結構さいきん校則が厳しいんっス。
 一本だけの指でも、あんまり先生が良い顔しないから諦めたっス。
そう思うと、高校生は良いっスよねー」

ムーさん「風紀上、高学年につれて大体黙認するものが増えるけど。
中学生で、ネイルは少々派手に思われるだろうからなー」

 ネイルアート……お洒落が趣味の女の子が
クラスの半数、女子生徒へと行った出来事が彼女達の大きな悪事
であったと言うのが真相だったようだ。


?「ムーさん、エッ子、サッちゃん こっちー?」

エッ子「お! のりが戻って来た。じゃあ、大体この辺の
ゴミ拾いも終わりと言う事だー! 移動するぞー!」

朝山「星見街道のゴミを、根こそぎ消し去ってくれるっスー!!」

ムーさん「熱意だけは悪の貫禄だな。
……それじゃあ」

 『また(な)ねー(っス)!!!』
 
 意気揚々と彼女たちは去る。別れ際に連絡先なども
スマホがあれば交換したかも知れない。
 されど、彼女達の悪の進撃は。どこぞの空の下で今後も
賑やかに続くのだろう。

480小鍛治明『ショットガン・レボルーション』:2018/06/19(火) 23:08:06
雨が降っている。
ジメジメとした嫌な感覚が街中に広がっていく。

小鍛治明は傘を持たない。
いつでもその体で雨を受け続ける。

「……」

雨の降る街を黒髪の女性が歩いている。

481志田忠志『イヴ・オブ・サルヴェイション』:2018/06/26(火) 00:00:02
>>480

「――ん?」

雨が降る中を歩いていて、その姿を見かけた。
幸い、僕は傘を持っている。
もし彼女が困っているとすれば、この傘を渡せば、それは人助けになる。
人助けは好きだ。
だが、その前に少し考える。

(傘がなくて困ってる……って感じでもないな)

(……少し様子を見るか)

もし彼女が傘がなくて困っていないとすれば、
この傘を渡すことは逆に迷惑になるかもしれない。
それでは人助けにはならない。
それは困る。
たまたま進む方向は同じだった。
だから、とりあえずこのまま歩き続けることにした。

482小鍛治明『ショットガン・レボルーション』:2018/06/26(火) 00:51:16
>>481

彼女は真っ黒な格好をしていた。
長袖の上着から少しだけ見える白い服と彼女の白い肌でコントラストを生み出していた。
烏の濡れ羽色の髪が雨に濡れて艶やかだ。
鬱陶しそうな様子もなく髪をかきあげ耳にかけた。
それからスマートフォンを取り出し耳に当てる。

「久しぶりね。えぇ、私は元気よ」

「今日はいい天気ね……雨は好きよ」

「そう……わかったわ。それじゃあまた、後でね?」

短い通話を終える。
スマートフォンが濡れることも気にしない。
小鍛治明が歩いていく。

「それで、貴方は一体何かしら?」

突然明が立ち止まってそう言った。

483志田忠志『イヴ・オブ・サルヴェイション』:2018/06/26(火) 01:16:15
>>482

「え?ああ、いや――」

いきなり問われたことに驚き、面食らった。
それとなく気にしてはいたが、あからさまに見てはいなかった筈だ。
勘が鋭いのか、それとも当てずっぽうか。

「ちょっと珍しいなと思ってね。
 ほら、こんな日は大体みんな傘を使ってるから」

「傘を持ってない人は先を急いでるか、雨が止むのを待ってる」

「君みたいに、傘を持ってないのに平然と雨の中を歩いている人は、
 あまり見ないからね」

「気に障ったんなら謝るよ」

目に濃い隈のある若い男が答える。
雰囲気は温厚だが、やつれた顔をした不健康そうな男だ。
もう何日も眠っていない――そんな感じだった。

484小鍛治明『ショットガン・レボルーション』:2018/06/27(水) 00:19:55
>>483

「別に障ったことはないわ」

薄く微笑む。
鋭い目付きが少し和らいだ。

「私は雨が好きなのよ」

「服が体に張り付く感覚も好きだし、この気温も好きよ」

「なにより、天の恵みですものね」

485志田忠志『イヴ・オブ・サルヴェイション』:2018/06/27(水) 00:55:52
>>484

「君みたいな人は初めて見たよ」

「雨が降ってると、嫌な顔をする人が多いからさ」

雨が降る中、こちらだけが傘を使っていることに、
何とも言えない居心地の悪さを感じていた。
雨が好きだと言っているのだから、
何も気にすることはないのかもしれないが、やはり気にはなる。
だから、彼女が笑ってくれたことで少し安堵する気持ちがあった。

「天の恵み、か……」

その言葉に呼応するように、空を仰ぎ見る。
雨は降り続いている。
流れ落ちた雫が、傘を伝って零れ落ちていく。

「雨を嫌う人は多いけど、雨が降らないと作物も育たない。
 作物が育たないと、僕達も生きていられない」

「雨に助けられてるってことを忘れてるのかもしれないね。
 僕自身も含めて」

「君のお陰で、そのことを思い出せたよ」

そう言って、差していた傘を下ろして畳んだ。
灰色がかった髪に、雨粒が降り注ぐ。
畳んだ傘を片手に持ったまま、雨に打たれる。

「僕も、ちょっと体験してみることにするよ」

「君に倣ってね」

486小鍛治明『ショットガン・レボルーション』:2018/06/27(水) 01:39:53
>>485

「そうね、私にはあまり理解できる感情ではないけれど」

雨を嫌う人の心が分からない。
多分、向こうからも自分の事は分からないだろう。
そういうものだった。

「別に私に倣うのもいいとは思うけれど、風邪をひくわよ」

自分はまるで風邪を絶対に引かないという自信があるようだった。

「そういえば、貴方は誰かしら。私は小鍛治明。小さく鍛えて治めれば明るいで小鍛治明」

487志田忠志『イヴ・オブ・サルヴェイション』:2018/06/27(水) 02:09:06
>>486

「風邪を引くのは嫌だなぁ。
 熱が出たら苦しまなきゃいけなくなる」

「そう考えると、僕には向いてないのかもしれないな。
 慣れないことはするもんじゃあないね」

「本当のことを言うと、この傘を君に渡そうと思ってたんだ。
 でも、君には必要ないみたいだね」

「ただ折角だし、少しの間こうして雨を感じてみることにするよ。
 個人的な自己満足さ」

傘を渡すことは彼女を助けることにならない。
では、一緒に雨に打たれるというのはどうか。
何の気なしに思いついたことを実行してみたのだ。

「僕は志田――志田忠志。志すに田んぼ、そして忠実な志」

「小鍛冶さん、君は風邪を引いたことがないのかい?
 自分は風邪を引かないような口振りだけど。
 そうだとしたら凄いな」

湿った空気とは反対に、乾いた声で問い掛ける。

488小鍛治明『ショットガン・レボルーション』:2018/06/27(水) 23:26:37
>>487

「そう、志田さんね。お気遣いありがとう」

軽く頭を下げる。
ぺったりした髪が重々しく動いて、彼女の顔にかかった。

「風邪、そうね。ここ数年ではそんな経験してないわ」

明がそう返した。

489志田忠志『イヴ・オブ・サルヴェイション』:2018/06/27(水) 23:57:36
>>488

「丈夫なんだな、君は」

「僕はダメなんだ。不眠症でさ。
 見れば分かると思うけど」

「雨の日は、いつもこうして歩いてるのかい?
 それで風邪を引かないんだから羨ましいな」

湿った頭を軽く掻く。
雨に濡れた肌を冷たく感じる。
やはり、自分には向いてないようだ。

「――僕は近くに住んでるんだけど、小鍛冶さんは違うのかな」

「いや、深い意味はないんだ。この辺にはよく来るからね」

「もし今みたいに雨の中を歩いてる姿を見かけたら、
 今日と同じように目についただろうなと思ってさ」

490小鍛治明『ショットガン・レボルーション』:2018/06/28(木) 00:40:47
>>489

「基本的に傘は持ちあるからないから、濡れてることが多いわね」

顔についた髪をかきあげた。
鋭い目付きのその目の端を雨の雫が流れ落ちる。

「私はこの街に住んでいるわ」

「私はどこにでもいるし、どこにだって行けるわ」

491志田忠志『イヴ・オブ・サルヴェイション』:2018/06/28(木) 01:07:29
>>490

「どこにでもいてどこにでも行ける、か」

「良い言葉だ。僕がそう思っただけなんだけどね」

片手に持った傘を広げ、頭の上に持ち上げる。

「そろそろ風邪を引きそうだから、僕はここまでにしておくよ。
 あんまり向いてないみたいだ」

「慣れないことはするもんじゃないね」

その女性の鋭い目を見ながら、軽く笑った。

「同じ街に住んでるんだから、
 またどこかで出くわすこともあるかもしれないね」

「君の姿は、結構目立つ方だと思うからさ。
 特に、こんな雨の降る日はね」

「さっき小耳に挟んだけど、この後で何か予定があるんだったね?
 あんまり引き止めちゃ悪いし、僕はそろそろ行くよ」

声を掛けてから、傘を差して歩き出す。

「それじゃ小鍛冶さん、良い雨を」

雨に濡れる女性に別れを告げ、その場から立ち去っていく。
立ち去った後も、彼女の姿が頭に残っている。

(……不思議な人だったな)

そして、この出会いも、また不思議なものだと思った。

492小鍛治明『ショットガン・レボルーション』:2018/06/28(木) 01:54:23
>>491

「いい言葉? そう、ありがとう」

「私からすればひとつの事実ですけれど」

こともなげにそう返した。
そうして明は志田が行くのを静かに見届ける。
引き止める理由もないのだから。

「……」

空を見上げる。
まだまだ重たい雲は動きそうにない。
もっと雨は降るだろう。
そんな天気に薄く微笑んだ。

「待っていてね。すぐに行くわ」

493稲崎充希『ショッカー・イン・グルームタウン』:2018/07/26(木) 19:41:31
ジジジジ…

「煙草吸う為に、こんな炎天下の中表に出されるとはねぇ。
世知辛ェ世の中だよ全く。アッツ…」

暑さのせいかそれとも生来のものなのか、
虚ろな目をした長身の女が、
真横に灰皿が備え付けられたベンチに腰掛け、
何をするわけでもなしタバコを吸いながら雑踏を眺めてる。

494稲崎充希『ショッカー・イン・グルームタウン』:2018/07/26(木) 22:27:28
>>493
そのまま去って行った

495桐谷研吾『一般人』:2018/07/31(火) 22:49:48

「いくら今が夏とはいえ……。
 ここ数日の酷暑は少々しんどいな……」

夏用の制服を着た若い警官が、表通りを歩いている。
見る限りでは、巡回中のようだ。
眩しそうに手を顔の前に翳し、額に浮いた汗を拭い取って、
自動販売機の前に立つ。

      ピッ
         ガシャンッ

購入した水を一気に飲み干し、木陰のベンチに腰を下ろす。
そして、街を行き交う人々に視線を向けた。
この気温とあって、流石に歩いている人の数は少ない。

(この中にも――『いる』のだろうか……)

一見したところ、ごく普通の人間にしか見えない人々――。
その中に、超常的な力を持つ者が紛れているのだろうか。
あれから新たな手掛かりは掴めていない。
相変わらず、全くの手探り状態だ。
『超能力』――その言葉だけが、
『謎の答え』を知るための唯一の糸口と言っていいだろう。

「『超能力』――か……」

考え事の最中に、思わず『独り言』を口にする。
近くに誰かがいれば、それが聞こえたとしてもおかしくはない。
『脳が過熱している』と取られかねない台詞だが、
『力を持つ者』であればピンと来るだろう。

496斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2018/08/08(水) 22:30:28
>>495

――街を行き交う人々の内に、1人
 コーヒー店の紙袋を片手に、貴方の近くを通り過ぎようとした少年が
 独り言を呟いたと同時にピタリと歩みを止めて振り返る

(――……『警官』?)
(オカルトからは程遠い職業だと思ったが……この町で『超能力』と聞く場合は)
(私的に関わり合いにはなりたくない人種だが、そう考えてられないか)

首に赤いスカーフを巻いた黒いジャケット姿の少年は
乾いた足音を、熱気で歪むアスファルトに打ち付けながら貴方に近づき
およそ2Mの時点で立ち止まった、素肌には汗一つかいておらず
見つめる眼差しには氷が入ったような印象を受けるだろう

(『近距離型』ならこの射程ギリギリか…殴られても届かないか、パワー不足で済む)


「そこの、暑そうにベンチに座る警官さん」
「座ったままでいい、あんたに一つ、質問したい事が有る」

僅かに息苦しさを滲ませながら、開いた口から聞こえる声は
冷えるような声色で貴方の耳に届く

       「――『見えているか』?」

(ま、相手が解らなくても、『俺』が変人扱いで済む話だ)

497桐谷研吾『一般人』:2018/08/09(木) 19:44:27
>>496

「――……」

少年に気付いていないかのように無言でペットボトルを傾け、
渇いた喉に水を流し込む。
そして、下ろしたボトル越しに少年の姿を目視した。
手元の水を思わせる悠然たる静かさで、
少年が発した言葉の意味について思考を巡らせる。

(ごく自然に考えると……今の『見えるか?』という質問は、
 僕の『独り言』を受けてのものだろう)

(つまり、
 『普通の人間には見えないものが見えるか?』と聞いているわけだ……)

(しかし、僕には――それが『見えない』)

僕が『それ』に関して知っていることは多くはない。
分かっているのは、『それ』が『超能力』のようなものであり、
普通の人間には見えないらしいということだけだった。
それ以外の手掛かりは、全く皆無の状態だ。
だからこそ、『知る必要がある』。
いや――『知らなければならない』。

「――あぁ、すまないね……。
 恥ずかしい話だけど、ついボンヤリしてしまっていたみたいだ。
 さては、この熱気でやられたかな?」

間を隔てるボトルを退けると、軽く頭を抑えて少年と向き合う。
内心の考えを表には出さず、暑さのせいで気付くのが遅れた振りをする。
もっとも、暑さに参っているのは本当なので、
そこは演技半分本気半分というところだ。

「でも――お陰で、今の意識は明瞭だよ」

「――『見えている』。『ハッキリとね』」

まるで今の天気について話すような、
さも『当たり前じゃあないか』という口調で、力強く断言する。
これは勘だが、おそらく彼は何か『探り』を入れてきたのだろう。
僕には、まだ警官としての経験は浅い。
ただ自慢じゃないが、
警察学校時代は『直観力は悪くない』という評価を貰っていた。
あちらが探りを入れるのなら、こちらはそれを『逆手に取る』ことにしよう。

498斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2018/08/09(木) 22:36:41
>>497

(これが、普通の人間なら一生に伏す問だろうが……)
(スタンド使いでいいらしいな、この警官)

 「――……そうか」
 「そうか……」


(だが……だが、今一つだけ……何を『ハッキリと』見えてる?)
(俺は『スタンド』を展開していない)
(『スタンド使い』でも『展開されていないスタンド』は見えない)
(『スタンド使いだと想定した、スタンドを出していない相手からの質問の答えとしては妙だ』)

僅かに思案するように俯き、貴方の瞳を覗き込む少年の全身に
足元から鎖が巻き付いていく、一定間隔で続く足踏みからはメトロノームのような印象を受ける

(……何の根拠もない勘だが、この警官、行動と言動がチグハグだ
 本来なら、会う確率も相当に少ない使い手同士、もし警官と言う職業でこの街を見て回るなら
 全てではなく一部を知っている……つまり)

足踏みが止まり、周囲の雑踏から生まれる騒音が、水を引いたように聞こえるほどの冷たさで
少年の口から失望と諦念交じりの言葉が放たれる

(『なりたてのスタンド使い』もしくは
 スタンドと言う単語を知らないが、起された事実から何か超能力のようだとアタリをつけている)

 「つまり、貴方は『見えてもいない』し、ハッキリと『知っている』わけでもないわけだな」

(『逆に、探りを入れてきている』というのも飛躍している発想ではないな……
 確信には未だ弱いが、彼の次の行動でそれは解る)

「外したみたいだ、帰る」

そう告げると、彼は踵を返して雑踏に紛れ込もうとするだろう。

499桐谷研吾『一般人』:2018/08/10(金) 01:15:21
>>498

「ああ、よく見えているよ」

「――この太陽の下の『君の姿』はね」

最初から、『何が見えているか』は言っていない。
それは彼も同じだ。
だからこそ、この質問が『探りらしい』と察しがついた。
そして、対象が明確でないからこそ、後からどうとでも言える。
これが探りを入れる行為である以上、その点は元より織り込み済みだ。

(そして今の反応で分かったことは、
 彼は『手掛かりを握る者』だということだ。
 やはり、この『街の中』に、この『人々の中』に、
 『力を持つ者』は潜んでいる)

『鎖』は見えていない。
よって、そちらに注意を向けることもない。
だが、彼の表情と言動を見ていれば、
彼が『そうである』ことは容易に想像がつく。

「ははは、正解だよ。慣れないことはするものじゃあないね。
 ガッカリさせて悪かった。いや、申し訳ない」

「――では、『熱中症』に気を付けて」

呆気ない程にアッサリと自分の素性を明かし、
立ち去ろうとする少年に声を掛ける。
その途中で、右手の人差し指をピッと立ててみせた。
もう片方の手で、曲がった帽子の角度を直す。

「今、思い出した。
 一つ聞きそびれたことがあるんだけど、いいかな?」

「さっきは僕が君の質問に答えた。
 礼儀の押し付けをするわけじゃあないけど、良ければ、
 今度は僕の質問に答えて欲しいんだ。
 『この暑い中、これ以上警官なんて面倒な人種に関わりたくない』
 っていうのじゃあなければね」

まだ二十歳そこそこの若い警官。
その顔立ちや表情は好青年といった印象を持っている。
少年の冷たい眼差しとは対照的と呼んで差し支えない。

「――『ある人』を探してるんだ。
 かなり『特徴のある外見』だったから、
 君が見かけたことがあるかどうかを聞きたくてね。
 
「ああ、そういえば『年も』君と同じくらいだったな」

『外した』という言葉と、いかにも失望したような態度。
それらの要素から、彼は『力を持つ者』を探していると推察できる。
つまり、背景や形は違えど、目的自体は僕と同様だと言える。
ハズレを引いたとあっては、
自分が彼の立場でも同じようにガッカリしただろう。
この質問を彼に振った理由は、大体そんなところだ。

500斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2018/08/10(金) 01:42:03
>>499

帰ろうとする足を止め少年が独り言のように、しかし貴方に届く様にハッキリと呟く

「――『3回』だ」
「馬鹿にせず話を聞いた事、願ったとおりに椅子に座ったまま返答した事、礼節を持って俺の相手をした事」

背を向けた少年は立てた指を折りながら振り向き
貴方に再びその瞳を向ける、夏風に赤いスカーフを僅かに震わせながら

「面倒なのは認める、嘘をつかれたのも気にくわない、が、自分に応じて『3回』だけ質問に答える」
「罪悪感や後悔は精神の瑕だ、成長ではない、それを俺の心に残すのは許さない」

(ま、事情も知らないのだから、仕方ない、仕方ない
 憎むべき仇だが、憎悪というのは消耗品だ、無駄遣いする時でもない)

「散歩で出てくるのも久方ぶりだったんだが……」

「――最初の一つは『尋ね人』でいいのか?
 その『特徴』だと知らないとしか答えないぞ、警官(カラス)さん」

極めて無表情に、蒸気で歪むアスファルト上に立ちながら、膨大な見えない鎖を巻き付けた彼は貴方に問いかけている。

501桐谷研吾『一般人』:2018/08/10(金) 02:19:17
>>500

「――なるほど、『三つ』だね。ご協力に感謝するよ」

身も蓋もない表現をすれば、『餌』のつもりだった。
彼は、『力を持つ者』を探しているようだ。
そして、僕も『力を持つ者』を探している。
もし、その事実を彼が悟ったとすれば、
僕の言う『ある人物』と『力ある者』の二つを、
結び付けて考えるのではないかと予想したのだ。
だからこそ、
この『情報』に食い付いてくれれば有り難いと思っていたのだが……。

(『予想外』だけど『想定以上』――。
 どうやら、僕が思っていた以上に『出来た』人物だったようだ)

「じゃあ、まず一つ目いいかい?
 僕は、まだ『特徴』については何も言っていないよ」

「『白い長髪で赤い目を持つ黒いワンピースを着た少女』
 を見かけたことがないか教えてもらいたい。
 しばらく前に、『歓楽街』の路地裏で少し話したんだ。
 『超能力』に関する話題についてね」

実際のところ、これは聞かなくてもよかった。
これはむしろ、質問に応じてくれた少年に対する『謝礼』のようなものだ。
どう受け取ろうが少年の自由だが『情報提供』と呼んでも間違いではない。

「それから、二つ目……この『超能力』の『概要』をご教授願いたい」

『鎖』は見えていない。
少年の前にいる警官にも。
少年の周囲を歩く人間達にも。

502斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2018/08/10(金) 20:39:02
>>501

「――少し待て」

少年が僅かに俯き、記憶の底を漁りだす

(白髪、赤目、黒い服、女性……『スタンド使い』だというなら恐らく、展望台の彼女、『幸運を呼ぶ女』
 ……恐らく、言わなかったな、巻き込まないためかは知らないが)

少年が自らの記憶の探索から戻り
ゆっくりと顔を上げると、その瞳でしっかと貴方の顔を見、口を開く

「まず、『一つ目』に回答しよう」 

    「『俺』は知らない」

(悪いが、彼女と俺とでは思考回路が違う…他人だ)

「だが、恐らく知り合いだろう 会った事もある」
「彼女の事については話さない、あんたの質問は『知っているか』だけだからな」
「これで『一つ目』」

少年が喋り終え、指の一つを折る
顔の表情は変わらず、淡々と冷たい声で喉を震わす

(彼女には……悪い事をするな)

僅かな沈黙の後、二本目の指を指し示して貴方に告げる

「二つ目を再確認しよう」
「『概要』、概ね、様々な物事を、全体を大まかに表現するのに都合のいい言葉……」

「だからこう言う、それは『力』だ、超能力だのという名前は単なる上っ面に過ぎない」
「『引力』『傍に立つ』『立ち向かう』『物理法則を無視する、人の精神の具現』」

「……そして『力を持つ』という事は、『敵を作り増やす』という事」
「求めれば、あんたには『敵』が増えることになる、純然たる事実として、な」

……注意深く観察すれば、僅かに少年の声色に好奇の色が混じる事が解るだ

(――だから教えた、『自分の手を汚さず、死んでもらう為に教えた』……最も、俺が言わずとも
 この警官が、『真実に到達しようとする意志』を持ち続けていたら、遅かれ早かれ、死ぬには違いないが)

(喋ってしまったのは義理立てって所か…遠いな)

「――必要以上に喋ったが、これで『二つ目』
 最後の『三つ目』を聞こう、それが『ルール』、答えたら、俺は帰る
 それで、あんたとは最後だ、恐らく二度と会わない」

――少年は無機質な表情を崩さぬままに、貴方の質問を待っている。

503桐谷研吾『一般人』:2018/08/10(金) 22:30:41
>>502

第二の質問の答えを聞いて、納得したように小さく頷く。
それがどんなものであれ、情報は情報だ。
知識がない僕にとっては、有益ではある。
特に、『精神』という部分に引っかかりを覚えた。
どうやら、その力は『精神』に由来するものらしい。

(『精神』――『精神』か……)

そう考えると、別の疑問も出てくる。
『精神』というのは、何も人間だけが持ち得るものとは限らない。
たとえば犬とか猫とか、『動物も力を持ち得る』という解釈も可能だ。

「『曖昧な質問』には『曖昧な答え』しか帰ってこない。
 さっき君も同じことをやっていたね。覚えているかい?」

「君は『見えているか?』と聞き、僕は『見えている』と答えた。
 確かそうだったね。あの時、君も『要点』を言わなかったろう?
 それは単なる『偶然』かな?」

「『曖昧な質問』には『曖昧な答え』しか帰ってこない。
 これは良い教訓になるね」

この『時間稼ぎ』の意味は、少年を観察することにある。、
あの『白い髪の少女』とこの少年には、一つの『共通点』が見受けられる。
といっても、姿形が似ているという意味ではない。

話しぶりや態度から滲み出る雰囲気に、どこか近いものを感じるのだ。
たとえるなら、『奇妙な自信』と呼んでもいいだろう。
もしかすると、
それは『力を持っているという事実』から来ているのかもしれない。

ベテランの刑事の中には、初対面の相手を見ただけで、
『堅気かそうでないか』を見分けることができる者がいる。
それが可能なのは、
『その世界の人間』に『特有の雰囲気』を感じ取っているからなのだ。
僕はベテランとは言えないが、
今確かに少女と少年に共通する雰囲気を感じ取っている。

「それじゃあ、『三つ目』を言わせてもらうよ」

腕時計を一瞥する。
そろそろ交番に戻って先輩と交代しなければならない。
遅れると面倒なことになりそうだ。

「傍らに立つ――さっき、そう言ったね。
 君と同種の『力を持つ人間』を教えてくれないかな。
 『連絡先』や『住所』が分かっている人に限定してね。
 つまり、僕が会える人間を教えて欲しいんだ」

たった三つの質問で何もかも全て聞けるとは最初から考えていなかった。
そして、彼から聞けないのなら、彼以外の誰かから聞けばいい。
この少年との接触は到達地点ではない。
あくまでも『きっかけ』であり、いわば『糸の端』に過ぎない。
糸を手繰った『先』で、僕の求める『真実』を見出す。

504斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2018/08/10(金) 23:08:54
>>503

最後の質問を聞き、少年は
思案する素振りすら見せず、夏の空を一瞥してから貴方に向き直る
表情のない顔に、氷のような声を舌に載せて口を開く

「……もったいぶった割には、意味のない質問だったな」
「三つ目に答えよう」



「――……『言えない』」

――少年の瞳が僅かに煌めく
見えない全身の鎖を、崩れ落ちるように消し去りながら

「理由は」

「アンタが言ってる事は
『俺の知ってる限りの知人に、服、脱ぎ捨ててまっぱだかになれ』……って言うのと同じだ
 しかも、『信頼も信用できない赤の他人の言葉』で、そこまで身を切る必要は俺には無い」

(…しかしこの警官、直感と洞察力、観察力には優れていた……生き残るか?
 見えない時点で『素養』は無い、が、予想外と言うのは人生において常に発生し続ける物だしな……
 後は、どうか、俺の為に、俺の見えないところで死んでくれと願うくらいか。)

「これで、全部、答えたな…罪悪感もなくなった
 宣言通り、帰らせて貰う(……時間だ)」

言い終われば踵を返して、雑踏の中に紛れ込む
彼の首に巻かれた赤いスカーフも、まるで最初からいなかったかのように、人々の中に消えるだろう
そして帰路に向けての歩みの中で、手首に巻かれた、古い腕時計の螺子を回す

(――……ん、あれ……? そうだ、僕、コーヒー店の帰りで……早く帰らなくっちゃあな
 お祖母ちゃん、心配してないと良いのだけど。)

505小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/09/27(木) 00:31:45

初秋の大通り――その一角に佇む『美術館』で、
『絵画の展覧会』が開催されていた。
プロやアマチュアを問わず誰でも自由に参加できるという催しであり、
数多くの作品が館内に展示されている。
それらの中に、一枚の『油絵』が飾られていた。

  「――……」

額縁の中では、『白いウエディングドレス』を着た女が微笑んでいる。
絵の前に立っているのは、『黒い喪服』を着た陰のある女だ。
心なしか二人の顔立ちや背格好は、よく似ているようだった――。

506小鍛治明『ショットガン・レボルーション』:2018/10/01(月) 23:21:00
>>505

カツカツと靴が鳴らしながら人が近づいてくる。
黒い髪を持ち、黒い服を着ている少女だ。
ふと、白いウエディングドレスの絵の前で立ち止まった。

「……」

静かに絵を眺め、それから視線を小石川に向ける。
特に何を思っているとか、そういう情報が読み取れない瞳で。

507小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/10/02(火) 00:37:42
>>506

意識の大半は、目の前に飾られている絵の方に向けられていた。
そのせいで、誰かが近付いてくるのに気付くのが遅れた。
ややあって隣の少女に視線を向ける。

   ――……?

その姿を、どこかで見たような覚えがあった。
一体どこだっただろうか。
少し考えて、少女の名前を思い出す。

  「あの……失礼ですが――小鍛冶さん……ですか?」

  「私は小石川……小石川文子です」

  「――覚えておいででしょうか……?」

軽く頭を下げ、改めて自分の名前を名乗る。
美術館には、それなりの人がいるようだ。
ただ、今の時点で『白い女の絵』の前に立っているのは二人だけだった。

508小鍛治明『ショットガン・レボルーション』:2018/10/02(火) 01:17:50
>>507

「えぇ、私は小鍛治明」

「そういうあなたは小石川さん」

礼と言葉を返す。

「前に会ったのは確か、ハロウィンの時期だったかしら」

結構経つのかそれともそうでもないのか。
詳しくはよく思い出せないが。

「今日は絵を見に……来たんですよね?」

「この絵が気に入っていらして?」


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板