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下書き
100
:
【ソフィア0.00】
:2018/12/23(日) 23:03:42
東欧諸国の夜ははやい。それは賑やかな街の中心部でも同じだ。そんな街中の簡素なマンションの一室。
ダイニングのソファに家族を招いた姉に、妹が話しかけた。
「何よ、姉さん。仕事でイヤなことでもあったの?」
母親も心配顔で部屋に入ってくる。姉はふたりを見つめ、話した。
「私の記憶が変なこと、知ってるでしょ?そのことを調べている内にある結社が浮かんだんだけど、その結社から一昨日、私あての手紙が来たの。武闘大会の招待状」
母親の顔が恐怖に歪んだ。
「(闘神大武会!やはり私たちはすでに見つかっていたんだわ……)」
「私、参加するわ。ずっと調べてきた謎の答えが見つかるかもしれない」
「ダメよ!!そんな危険なこと、母さん許しません!決して!!」
しかし、翌朝、姉は旅立った。ふたりを起こさぬように静かに、愛用の鞭だけを持って。その姿を見送る母には気付かず。
「(ソフィア、お前が真相を知ったとき、母さんを許してくれるかしら。それとも……。それでもいいんだよ。無事に帰ってくれさえすれば……)」
老いた女科学者は、朝靄の中でいつまでも自分の「実験体」の後姿を見送っていた。
101
:
【エリス0.00】
:2018/12/24(月) 19:47:48
石畳のリングの上で、私は、対戦相手と向かい合った。対戦相手は、トルコ生まれの女の子で、名をエリスといった。ショートカットの緑髪が、童顔とよく似合っている。白を基調とした踊り子のコスチュームは、レース地が多用され、繊細な年頃の少女らしい魅力を引き立たせていた。
「わあっ、素敵なひと……」
私の姿を見たエリスが、うっとりしたような声をあげた。
「あら、可愛らしいお嬢ちゃんね」
私はエリスに歩み寄り、そのカラダを胸元に抱き寄せると、愛でるように頭を撫でた。
「まるでお人形さんみたい。ん…ちゅ……」
私は、指先でエリスの顎を持ち上げ、唇同士を軽く触れあわせた。
「んっ…、ありがとうございます…。……って、違いますっ!」
エリスは、気を取り直したように私の腕から逃れ、間合いを取った。警戒感を見せるエリスに、私は挑発するように言い放った。
「貴女が私の相手なの? 嘘でしょ、信じられないわ」
「本当ですっ! 私みたいな子供がってお思いでしょうけど、本当なんです」
「悪いことは言わないわ。このまま、お帰りなさい。貴女に大怪我させてしまうかもしれない」
「それだけの覚悟はできています。私、行かなければならないんですっ!」
エリス真剣な表情で食い下がり、両手の短剣を構えた。
「そう。…来なさい。いつでもお相手するわよ」
102
:
【エリス0.00】
:2018/12/24(月) 19:48:46
一礼するエリスに対して手招きし、私は、鞭を構えてエリスとの間合いを計った。互いに見つめあい、じりじりと動く。そんな膠着状態に、私は、鞭を振って探りを入れた。最大射程で放った鞭先は難なく回避されたが、それは想定のうち。私は、エリスを追い立てるように、続けて鞭を操った。
「ほら、どうしたの。もっとこっちに来なさい…?」
挑発するように手招きするが、私の鞭は、エリスのスピードを捉えることができない。
「くっ…、すばしっこいわね」
私は舌打ちするのと同時に、エリスが高く跳躍した。
「アーク・スラッシュ!」
エリスは空中で身を翻し、両手の短剣を構えて頭から急降下する。間一髪で、私は鞭でガードしたが、エリスに懐に入られる形になった。
私は、後ろにステップして間合いを取ろうとしたが、エリスのスライディングに足元を崩された。足を止めた私は、今度は下から突き上げられた。
「ソアー・ウィンドウ!」
「っ…あんっ!」
エリスの体当たりを受け、私は体を折った。エリスの着地を狙って鞭を振ったが、私の鞭は石畳を叩き、エリスの姿も見失なった。
「捕まえた…、お姉さま……」
「――――!」
うなじに、柔らかい唇の感触。私は、エリスに背後を取られ、エリスに抱きつかれていた。エリスは、私の背中に体を密着させ、すり寄せた。
「おっぱいも、腰も、お尻も…。お姉さまのカラダ、素敵……」
エリスは、恍惚とした声で、私の体のあちこちを撫でる。
「そうね。私は極上でしょう?」
103
:
【エリス0.00】
:2018/12/24(月) 19:49:27
エリスの体を振り払い、鞭を振るが、当たらない。
「やあっ、たあっ、たあああーっ!」
「っく…、あんっ、あんっ!」
私が鞭を振るよりも早く、2本の短剣と足技が、次々に私を攻め立てる。ガードも回避も間に合わず、私の傷が少しずつ増えていく。
「この…っ!」
「きやっ!」
苦しまぎれに放ったハイキックが、エリスの頭部を捉えた。ぐらつくエリスに追撃の回し蹴り、しかしエリスの頭上で空を切った。エリスのソアー・ウィンドウを受け、今度は私がぐらつく番だった。高く跳躍したエリスが、短剣を構えて急降下する。私は、エリスのアーク・スラッシュを鞭で受け止めた。
「えいっ!」
「あんっ!」
エリスが跳びあがり、私は後頭部を踏みつけられ、地面に蹴りつけられた。石畳とキスする羽目になった私の横で、エリスは、可愛らしいポーズを決めていた。
「負けないモンっ」
――――サービスタイムは、これぐらいでいいかしら?
私は起き上がりざまに、エリスに向けて鞭を放った。エリスは油断していたのか、私の鞭は、その華奢な体をいともたやすく絡め取った。
「よそ見してちゃダメよ」
エリスは、可愛らしい悲鳴をあげながらもがいていた。鞭から逃れようともがくエリスの姿をしばらく愉しんだあと、私は、エリスの体を力任せに引きずりよせた。小柄なエリスの顔は、ちょうど私の胸のあたりになる。私は、エリスを抱きしめると、胸の谷間でエリスの顔を挟み、頭を撫でた。すると、エリスは抵抗を諦めたのか、身を委ねるような反応を示した。私は、エリスの体をくまなく撫でまわしたあと、エリスの顔を谷間から解放した。
左手でエリスの胸元を掴み、持ち上げる。エリスの頬を打つたび、乾いた破裂音とともに、エリスの上体が右へ左へと揺れる。
104
:
【エリス0.00】
:2018/12/24(月) 19:50:59
「はっ!」
「ああっ!」
フィニッシュの蹴り上げが決まり、エリスは、この日はじめてリングの床を這った。
「ラトルスネーク!」
起き上がりかけたエリスの真正面から、鞭の乱舞を浴びせる。なすすべもなく全て受けたエリスは、再びリングの床を転がる。
「えいっ、たあっ」
不規則な軌道で宙を舞い、足技を放つエリスを、鞭で撃ち落とした。
アークスラッシュ、ソアーウィンドウ、エリスの技が絶え間なく
「スターダスト・ナイト!」
「いっくぞおーっ」
短剣を構えたエリスは、闘気を完全に解き放ち、金色に光り輝くオーラに包まれた。宙を舞い、私の正面に躍り出たエリスは、最後のラッシュに出た。
「たあーっ、たあーっ、たあーっ」
エリスの短剣が加速し、絶え間なく私を傷つける。
「たあーっ、たあーっ、たあーっ、たあーっ、たあーっ」
私は、絶え間なく刺され続け、喘ぎ声をあげることすらできない。
「フレンチ・キッス」
キラキラと輝く闘気が密度を増しながら収縮し、投げキッスのようなモーションとともに臨界点に達し、そして爆発する。
「あああああんっ」
闘気の爆発を直接ぶつけられ、私は吹き飛ばされた。
「(こんな小さな体のどこに、こんな力が――――)」
床に叩きつけられ、バウンドしながら何度も転がり、何とかリングの端に留まった。闘気を直接ぶつけられたダメージで、体が思うように動かない。
おぼつかない足取りで、エリスが近づいてくる。
105
:
【エリス0.00】
:2018/12/24(月) 19:51:41
鞭と足技で痛めつけられ、性技で何度もイかされたエリス
膝は震え、肩で息をしていた。
奥義の大技を続けて放ち、闘気のほとんどを使い果たしたエリスは、闘う力はほとんど残っていないようだった。
立ち上がった私の姿を見て、エリスの表情が絶望に染まっていく。私は、エリスに、力任せに鞭を叩きつけた。なすすべもなく鞭を受け、エリスが短く鳴いた。体を折ったエリスに、私は続けてウインドミル・キックを浴びせる。
「っ――――」
鈍い打撃音が響き、エリスは声にならない悲鳴をあげ、力なく吹き飛んでいった。
リングの床に沈んだエリスを見下ろし、私は、その腹部をヒールで踏みにじった。エリスはほんの少しだけ苦しそうな声を漏らしたが、そのほかに反応はない。私は、エリスが完全に戦闘力を失ったことを確かめると、勝ち名乗り代わりに高笑いを上げた。
「オーッホッホッホッホッホッホッ」
そして、私は、ぐったりしたまま動かないエリスを抱き上げ、帰路についた。
――さて、この可愛らしい踊り子の少女を、どうやって私好みに調教していこうかしら?
109
:
【エリス1.00】
:2018/12/24(月) 23:48:41
――トルコ東部、アルメニア高原
乾燥地帯特有の青い空と、高山植物の濃い緑に彩られた盆地状の地形には、朽ち果てた石造りの古代遺跡が無数に点在している。
【闘神大武会運営本部】より指定された場所は、その遺跡群の中にあった。
古代アルメニア人の手によって造られた、8メートル四方の建造物が、今回の【闘神大武会】のステージだった。
石畳をハイヒールのブーツで踏みしめ、ソフィアは、リングの上に立った。
愛鞭【クラースヌイブーリファ】を手に、SMの女王様のようなバトル・コスチュームを展開したソフィアは、硬い足音とともにリングの中央へと歩いた。
そこには、荒涼とした大自然を背景に、小柄な少女が、ソフィアを待ち受けていた。
「わぁ、素敵な女性(ひと)……」
ソフィアの姿を見た少女が、うっとりしたような声をあげた。
ポニーテールにまとめた長い金髪、整った怜悧な顔立ち、170センチ前後の長身にすらりと伸びる手足、
細くくびれたウェストに、豊満で形の良いバストとヒップ、それらを惜しげもなく見せつけるバトル・コスチュームは、
同性である少女をも魅了するような色香を放っていた。
「あら、可愛らしいお嬢ちゃんね。貴女がエリスかしら?」
「はい。わたしがエリス…です」
ショートボブにした緑色の髪を揺らしながら、エリスが答えた。
愛嬌のあるつぶらな瞳に、あどけない顔立ち、発育途上の華奢な体は、まだ10代の半ばといったところだろうか。
白を基調にしたエリスのバトル・コスチュームは、ベアトップのハイレグレオタードに薄手のレース生地を加え、
ピンクのリボンをアクセントにしたデザインで、童話に出てくる妖精のような、純粋無垢な魅力をふりまいていた。
「まるでお人形さんみたいね。貴女が私の相手なんて、嘘でしょう。信じられないわ」
ソフィアは、頭一つ分だけ背の低いエリスの顎を指先で持ち上げた。
「本当ですっ! 私みたいな子娘がってお思いでしょうけど、本当なんです」
エリスは、ソフィアの手を払いのけ、食い下がるように答えた。
「悪いことは言わないわ。このまま、お帰りなさい。貴女に大怪我させてしまうかもしれない」
「それだけの覚悟はできています。私、行かなければならないんですっ!!」
「そう。…来なさい。いつでもお相手するわよ」
ひたむきなエリスの姿勢に、ソフィアは一瞬だけ物憂げに目を伏せたが、すぐに表情を切り替え、女王様然とした態度で手招きした。
エリスは一礼して両手の短剣を構える。ソフィアも鞭を構え、うら若き乙女による闘いが始まった。
110
:
【エリス0.00】
:2019/01/13(日) 22:09:39
「サンダーリング!」
最初に動いたのはソフィアだった。優雅に振るった鞭の先端から、紫電の環を放った。しかし、その
鞭を巧みに操り、2撃、3撃と
それ以上の機動力で
「アーク…」
「スラッシュ!!」
着地を狙い、大技を繰り出す。
青白い闘気の輝きに包まれ、空中で急激に旋回した。
闘気を放出し、
「ソアーウィンドウ! りゃあっ!!」
「えいっ!!」
「ええーいっ、たあっ、りゃあつ!」
唇を奪った。絡める。
レース生地を破り捨て、
胸のブローチに鞭の先端が刺さり、
汚い悲鳴を上げる。
バトル・コスチュームを維持することができなくなり、セパレートタイプの水着姿となった。濃いピンク色の
表面を覆う薄手のレース生地が消滅し、腰帯
ベアトップのハイレグスーツ
圧倒的に不利な状況にも関わらず、戦意は衰えていない。
闘気を完全に消耗し、シャツにミニスカート、オーバーニーソックスという普段着姿になった。
「ここは…?」
「KGBの格闘訓練場として使われていた場所よ。書類上ではソ連崩壊時に放棄されたことになっているわ」
「私たちを、倒してごらんなさい」
「本気で“壊して”あげる…!」
金髪
111
:
【エリス0.00】
:2019/01/13(日) 22:37:44
一礼するエリスに対して手招きし、私は、鞭を構えてエリスとの間合いを計った。互いに見つめあい、じりじりと動く。そんな膠着状態に、私は、鞭を振って探りを入れた。最大射程で放った鞭先は難なく回避されたが、それは想定のうち。私は、エリスを追い立てるように、続けて鞭を操った。
「ほら、どうしたの。もっとこっちに来なさい…?」
挑発するように手招きするが、私の鞭は、エリスのスピードを捉えることができない。
「くっ…、すばしっこいわね」
私は舌打ちするのと同時に、エリスが高く跳躍した。
「アーク・スラッシュ!」
エリスは空中で身を翻し、両手の短剣を構えて頭から急降下する。間一髪で、私は鞭でガードしたが、エリスに懐に入られる形になった。
私は、後ろにステップして間合いを取ろうとしたが、エリスのスライディングに足元を崩された。足を止めた私は、今度は下から突き上げられた。
「ソアー・ウィンドウ!」
「っ…あんっ!」
エリスの体当たりを受け、私は体を折った。エリスの着地を狙って鞭を振ったが、私の鞭は石畳を叩き、エリスの姿も見失なった。
「捕まえた…、お姉さま……」
「――――!」
うなじに、柔らかい唇の感触。私は、エリスに背後を取られ、エリスに抱きつかれていた。エリスは、私の背中に体を密着させ、すり寄せた。
「おっぱいも、腰も、お尻も…。お姉さまのカラダ、素敵……」
エリスは、恍惚とした声で、私の体のあちこちを撫でる。
「そうね。私は極上でしょう?」
エリスの体を振り払い、鞭を振るが、当たらない。
「やあっ、たあっ、たあああーっ!」
「っく…、あんっ、あんっ!」
私が鞭を振るよりも早く、2本の短剣と足技が、次々に私を攻め立てる。ガードも回避も間に合わず、私の傷が少しずつ増えていく。
「この…っ!」
「きやっ!」
苦しまぎれに放ったハイキックが、エリスの頭部を捉えた。ぐらつくエリスに追撃の回し蹴り、しかしエリスの頭上で空を切った。エリスのソアー・ウィンドウを受け、今度は私がぐらつく番だった。高く跳躍したエリスが、短剣を構えて急降下する。私は、エリスのアーク・スラッシュを鞭で受け止めた。
「えいっ!」
「あんっ!」
エリスが跳びあがり、私は後頭部を踏みつけられ、地面に蹴りつけられた。石畳とキスする羽目になった私の横で、エリスは、可愛らしいポーズを決めていた。
「負けないモンっ」
――――サービスタイムは、これぐらいでいいかしら?
112
:
【エリス0.00】
:2019/01/13(日) 22:38:28
私は起き上がりざまに、エリスに向けて鞭を放った。エリスは油断していたのか、私の鞭は、その華奢な体をいともたやすく絡め取った。
「よそ見してちゃダメよ」
エリスは、可愛らしい悲鳴をあげながらもがいていた。鞭から逃れようともがくエリスの姿をしばらく愉しんだあと、私は、エリスの体を力任せに引きずりよせた。小柄なエリスの顔は、ちょうど私の胸のあたりになる。私は、エリスを抱きしめると、胸の谷間でエリスの顔を挟み、頭を撫でた。すると、エリスは抵抗を諦めたのか、身を委ねるような反応を示した。私は、エリスの体をくまなく撫でまわしたあと、エリスの顔を谷間から解放した。
左手でエリスの胸元を掴み、持ち上げる。エリスの頬を打つたび、乾いた破裂音とともに、エリスの上体が右へ左へと揺れる。
「はっ!」
「ああっ!」
フィニッシュの蹴り上げが決まり、エリスは、この日はじめてリングの床を這った。
「ラトルスネーク!」
起き上がりかけたエリスの真正面から、鞭の乱舞を浴びせる。なすすべもなく全て受けたエリスは、再びリングの床を転がる。
------------
「えいっ、たあっ」
不規則な軌道で宙を舞い、足技を放つエリスを、鞭で撃ち落とした。
アークスラッシュ、ソアーウィンドウ、エリスの技が絶え間なく
「スターダスト・ナイト!」
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「いっくぞおーっ」
短剣を構えたエリスは、闘気を完全に解き放ち、金色に光り輝くオーラに包まれた。宙を舞い、私の正面に躍り出たエリスは、最後のラッシュに出た。
「たあーっ、たあーっ、たあーっ」
エリスの短剣が加速し、絶え間なく私を傷つける。
「たあーっ、たあーっ、たあーっ、たあーっ、たあーっ」
私は、絶え間なく刺され続け、喘ぎ声をあげることすらできない。
「フレンチ・キッス」
キラキラと輝く闘気が密度を増しながら収縮し、投げキッスのようなモーションとともに臨界点に達し、そして爆発する。
「あああああんっ」
闘気の爆発を直接ぶつけられ、私は吹き飛ばされた。
「(こんな小さな体のどこに、こんな力が――――)」
床に叩きつけられ、バウンドしながら何度も転がり、何とかリングの端に留まった。闘気を直接ぶつけられたダメージで、体が思うように動かない。
おぼつかない足取りで、エリスが近づいてくる。
鞭と足技で痛めつけられ、性技で何度もイかされたエリス
膝は震え、肩で息をしていた。
奥義の大技を続けて放ち、闘気のほとんどを使い果たしたエリスは、闘う力はほとんど残っていないようだった。
立ち上がった私の姿を見て、エリスの表情が絶望に染まっていく。私は、エリスに、力任せに鞭を叩きつけた。なすすべもなく鞭を受け、エリスが短く鳴いた。体を折ったエリスに、私は続けてウインドミル・キックを浴びせる。
「っ――――」
鈍い打撃音が響き、エリスは声にならない悲鳴をあげ、力なく吹き飛んでいった。
リングの床に沈んだエリスを見下ろし、私は、その腹部をヒールで踏みにじった。エリスはほんの少しだけ苦しそうな声を漏らしたが、そのほかに反応はない。私は、エリスが完全に戦闘力を失ったことを確かめると、勝ち名乗り代わりに高笑いを上げた。
「オーッホッホッホッホッホッホッ」
そして、私は、ぐったりしたまま動かないエリスを抱き上げ、帰路についた。
113
:
【エリス1.00】
:2019/01/14(月) 22:51:21
――トルコ東部、アルメニア高原
乾燥地帯特有の青い空と、高山植物の濃い緑に彩られた盆地状の地形には、朽ち果てた石造りの古代遺跡が無数に点在している。
【闘神大武会運営本部】より指定された場所は、その遺跡群の中にあった。
古代アルメニア人の手によって造られた、8メートル四方の建造物が、今回の【闘神大武会】のステージだった。
石畳をハイヒールのブーツで踏みしめ、ソフィアは、リングの上に立った。
愛鞭【クラースヌイブーリファ】を手に、SMの女王様のようなバトル・コスチュームを展開したソフィアは、硬い足音とともにリングの中央へと進んだ。
そこには、荒涼とした大自然を背景に、小柄な少女が、ソフィアを待ち受けていた。
「わぁ、素敵な女性(ひと)……」
ソフィアの姿を見た少女が、うっとりしたような声をあげた。
ポニーテールにまとめた長い金髪、整った怜悧な顔立ち、170センチ前後の長身にすらりと伸びる手足、
細くくびれたウェストに、形の良い豊満なバストとヒップ、それらを惜しげもなく見せつけるバトル・コスチュームは、
同性である少女をも魅了するような色香を放っていた。
「あら、可愛らしいお嬢ちゃんね。貴女がエリスかしら?」
「はい。わたしがエリス…です」
ショートボブにした緑色の髪を揺らしながら、エリスが答えた。
愛嬌のあるつぶらな瞳に、あどけない顔立ち、発育途上の華奢な体は、まだ10代の半ばといったところだろうか。
エリスのバトル・コスチュームは、ベアトップのハイレグ水着のようなボディスーツの上に薄手のレース生地を被せ、腰に巻いた淡いピンク色の帯を背中でリボン結びにしたものであった。童話の妖精をモチーフにした白いコスチュームは、純粋無垢なエリスの魅力を引き立てていた。
114
:
【エリス1.00】
:2019/01/14(月) 22:55:21
「まるでお人形さんみたいね。貴女が私の相手なんて、嘘でしょう。信じられないわ」
ソフィアは、頭一つ分だけ背の低いエリスの顎を、くい、と、指先で持ち上げた。
「本当ですっ! 私みたいな子娘がってお思いでしょうけど、本当なんです」
エリスは、ソフィアの手を払いのけ、食い下がるように答えた。
「悪いことは言わないわ。このまま、お帰りなさい。貴女に大怪我させてしまうかもしれない」
「それだけの覚悟はできています。私、行かなければならないんですっ!!」
「そう。…来なさい。いつでもお相手するわよ」
ひたむきなエリスの姿勢に、ソフィアは一瞬だけ物憂げに目を伏せたが、すぐに表情を切り替えた。一礼して両手の短剣を構えるエリスに対して、ソフィアはサディスティックな笑みで手招きする。ソフィアが隙を見せれば、エリスはソフィアの懐に入り込み、両手の短剣で超接近戦を挑んでくるだろう。それ故に、ソフィアは、隙を見せることなく鞭を構えていた。
石畳のリングの上で、バトル・コスチュームをまとった美しき乙女が、武器を構えて対峙する。最初に動いたのはソフィアだった。
「来ないなら、こっちから行くわよ…。サンダーリング!」
ソフィアは、優雅に振るった鞭の先端から、紫電の環を放った。その雷撃を、エリスは軽やかなステップで回避する。
「(これを避けられるのは、計算のうちっ!)」
初撃のサンダーリングは、あくまでも相手の反応を探るためのもの。ソフィアは巧みに鞭を操り、エリスを追い立てる。しかし、エリスは、素早い身のこなしでソフィアの鞭打を次々に回避していく。
傍目には、遠距離戦に優れるソフィアが、エリスの間合いの外(アウトレンジ)から一方的に攻め立てているようにも見える。だが、ソフィアの感覚は違っていた。
「(くっ…! 素早しっこいわね…!)」
紙一重で鞭を躱し続けられているのは、ソフィアの鞭の軌道が読まれているからに他ならない。エリスの足元を狙った鞭は、石畳の床を叩き、低い音を立てた。その大振りな攻撃をハイジャンプで躱したエリスは、空中で身を翻し、ソフィアに向けて一直線に急降下(ダイブ)した。
115
:
【エリス1.00】
:2019/01/24(木) 21:17:22
「アーク・スラッシュ!」
「かは…っ!」
ソフィアは鞭でガードしようとしたが間に合わず、エリスの交差した両腕が鳩尾付近に直撃した。ソフィアは大きくよろめいたが、何とか踏みとどまった。ソフィアは、鞭と足技のコンビネーションでエリスを迎え撃つが、エリスのスピードは、ソフィアのそれを遥かに凌駕していた。
「たあっ! たあーっ! えいっ! やあっ!」
「あうっ! あんっ! ああんっ! あんっ!」
鞭の間合いの内側へと入り込まれ、両手の短剣による連撃と、緩急自在の蹴り技で、ソフィアの体にダメージが刻まれていく。接近戦から一転、空中からの一撃離脱、再び接近戦と、闘いの主導権は、完全にエリスに握られていた。
「ソアーウィンドウ! りゃあっ!!」
「く…っ!」
身を低くして体当たりしてきたエリスは、短剣に闘気を乗せ、下段から突き上げた。高く跳びあがったエリスの一撃を、ソフィアは辛うじて鞭で受け止めた。
「っく…浅いっ!?」
ソフィアの強烈なハイキックが、着地寸前のエリスを撃ち据えた。エリスは短い悲鳴をあげて吹き飛んだが、石畳の上に墜落する寸前で受身を取って立ち上がり、再び空中を舞う。リーチは長いが強力な対空技を持たないソフィアは、鞭を放つものの、エリスの空中機動を捉えることができない。
「シックルダンシング!」
「あうっ!」
空振りし、隙を晒したソフィアの顎に、空中で回転しながら不規則な軌道を描くエリスの爪先がヒットする。
「たあっ! たああっ!!」
小柄なエリスの一撃一撃は軽いものの、圧倒的な手数とスピードで攻め立てられ、ソフィアの体に傷が刻まれていく。
「アースキッス! えいっ!!」
「ああんっ!!」
肩に飛び乗られ、エリスの靴底に後頭部を踏みつけられたソフィアは、その技の名前の通り、リングの床とキスする羽目になった。
116
:
幸平@管理人
:2019/02/23(土) 21:40:01
「君、本当、マニアックなとこばかりに行くよねえ」
航空自衛隊戦術教導団飛行教導群(アグレッサー)整備隊本部で、和田3佐が口許を微かに引き攣らせながら言った。
「ええ、まったく」
半笑いの整備統制(メンコン)班長、和田3佐につられるように、俺も苦笑いしながら答えた。
「でもさ、ウチよりも、最初に第6航空団(ろっくうだん)の装備部と整備補給群(せいほぐん)に行かなあかんやろ。これから死ぬほどお世話になるんだから」
「そりゃそうですけど、気が重いっすよ」
「うん。気持ちは解らんでもないけどさ」
小松で最初に和田3佐のところへ挨拶しに行ったのは、単純に、和田3佐が話しやすい先輩だから、という理由だった。
「で、君は、技術研究本部(ぎほん)で、例の無人機の整備なんだっけ?」
和田3佐は、声のトーンをひとつ落とした。そのとき、俺は、自分自身の新しい仕事をよくわかっておらず、曖昧に頷くしかなかった。
日本海に面する石川県小松市。航空自衛隊小松基地に所在する、技術研究本部特別技術研究室小松試験場。そこで試験運用されている無人戦闘機の整備班長というのが、俺の新しい配置先だった。
「まあ…、色々お世話になると思いますんで、よろしくお願いします」
俺は、和田3佐に軽く頭を下げて退出しようとしたところ、和田3佐は半笑いのまま付け加えた。
「それがねえ、僕、君のお世話、したくても出来ないから」
「へっ?」
「僕、8月1日付(はってんいち)で入間に転出だから」
「ガッデム! ガッデェェェム!!」
「……君ぃ、その口癖と、中指立てる癖は、いい加減やめといた方がええで…」
最後に和田3佐とコントめいたやりとりをしたあと、俺は飛教群の庁舎を辞した。飛行教導群は、新田原基地から小松基地へと移転事業を終えてから日が浅く、その航空機整備部門を現場で取り仕切っていたのが和田3佐だった。小松基地での整備業務が軌道に乗ったところで、入間基地の中部航空方面隊(ちゅうくう)司令部の装備部にご栄転、ということだった。
「(畜生、6空団と上手くやれなかったら、中空司の和田さんに泣きついてやるからな…!)」
俺は、心の中で毒づきながら、6空団司令部へ挨拶回りに向かったのであった。
119
:
GAF
:2019/03/17(日) 00:40:06
民間飛行場である小松空港と、航空自衛隊小松基地は、1本の滑走路を共有しており、昼間の時間帯では、民航機と自衛隊機が、絶え間なく離着陸を繰り返している。その間隙を縫うようにして、1機のT-4型練習機が着陸灯(ランディングライト)を点灯させ、滑走路にアプローチしてきた。
「F-4乗り(ファントムライダー)か。上手いな」
T-4の着陸の仕方を見れば、そのパイロットが、どの戦闘機に乗っているか、判る人が見れば一発で判る。主脚(メインギア)をソフトにランディングさせたあとも、前脚(ノーズギア)を浮かせたままエアロダイナミクスで引っ張るのがF-15乗りの特徴であり、逆に、深い降下率から主脚と前脚を同時に着地させるのがF-4乗りの特徴であった。
大きな迎角を取ったまま、機首の向きをラダーで微調整しながらスロットルを開き、ハードな3点同時着地を決める。この着陸(やりかた)は、熟練したF-4乗りのそれだった。
「T-4、798、ランディング」
「班長了解(ライン・リード、コピー)」
俺は、統制所からの無線通信に応答した。小松の独立実験飛行隊には、3機のANMが所属しているが、T-4は所属していない。D2P形態――両翼に燃料タンク、胴体にトラベルポッドを吊下げた赤白塗装のT-4は、外来機、すなわち独飛(ウチ)のお客さんらしい。タクシーバックするT-4の垂直尾翼には、小松では見慣れない部隊章が描き込まれていた。
「青い山笠マーク…、西司飛(せいしひ)か?」
「そのようですね」
髭面の整備員、舟木1曹――通称フナさん――が頷いた。6空団の飛行場勤務隊(ひきんたい)の整備員が、両手の指先で首の両側を掻き切るような手信号を出し、T-4のエンジンがシャットダウンされた。俺は、インテークの吸気が十分に弱まったことを確認し、オレンジ色の梯子(ラダー)を機体に取り付けた。
「お疲れーっす。…って、ええ!?」
コックピットに手を伸ばし、2人のパイロットから荷物を受け取ろうとした俺は、盛大に噴き出し、そして固まった。
「あれ、お前、昔浜松にいたよな。もう1尉になったのか?」
「よう。お前、横田から異動したのか」
T-4の前後席にいたのは、2人とも、俺と面識があるパイロットだった。航空学生出身の年喰ったファイター上がりの万年3佐とは、古強者のオーラを出している人間が多いが、2人の3佐も、その例に漏れない人物であった。
「西部航空方面隊司令部支援飛行隊、飛行班長の渡辺3佐と、総括班長の岡本3佐ですね。ようこそ、独立飛行実験体へ。わたくし、RF-4EJ-ANM、ファントムと申しますわ」
エメラルドグリーンの髪を揺らし、ファントムは、スカートの両端を摘まんで優雅に一礼した。静かな口調だが、ファントムの声は、ジェット機の爆音が支配する飛行場地区でもよく通る。
「おい依田、どういう事だ?」
ファントムと俺を見比べ、岡本3佐が眉を顰めた。そりゃそうだ、戦闘機部隊に不釣り合いな、10代ぐらいの女の子の姿を見れば、誰だってそういう反応を返すに決まっている。
「僕に言われてましても…。なんと説明したら良いか……」
「こういう事だ。ポン」
「ジークさん…!」
ポンというのは、岡本のタックネームだった。定年退職を数年後に控えた岡本に、基地内で先輩風を吹かせることができる人物は、そう多くはない。タイミングを見計らったかのように、那須野が現れた。
「先輩…! 南米で死んだんじゃなかったんですか…!?」
「…ポンさん、知り合い?」
岡本の隣から、渡辺3佐が訊ねた。
「ジークさんが那覇の302飛行隊にいた頃、岡本さんとよく編隊を組んでいたそうですね。岡本さんとペアを組んでいた縄田さんは、少し前に定年退職なされたそうですが。岡本さんと縄田さん、それに渡辺さんも、昔は信濃飛行隊で一緒だったんですよね」
岡本と渡辺が、装具を持ったまま、顔を見合わせる。
「積もる話もあるでしょうが、お父様――室長がお待ちです。案内いたしますわ」
「装具は…、ベストは機体にセットしておけば良いですよね。ヘルメットはどうします?」
「いいえ。お2人には、後でシミュレーターにも乗ってもらうので、装具類はシミュレーター室に持ってきてください」
狐に包まれたような顔をした岡本と渡辺から、俺は装具類を受け取り、飛勤隊の電源車の車内に置いた。
「あの2人から、後で八つ当たりされるのはイヤだぜ……」
ファントムと那須野に促され、技本庁舎に向かう岡本と渡辺の背中を見送り、俺は軽くため息をついた。
120
:
GAF
:2019/03/17(日) 18:37:37
小嶋3尉→6空団副官、航空機整備幹部、防大時代はニコニコ超会議で自衛隊写真集を売ってる同人サークルの手伝いをしていたらしい
斎藤1尉→6空団司令部法務班長、青学卒、P免、最近まで最終型のFD3Sに乗っていたが、子供が生まれたので泣く泣く手放した
古田1尉→斎藤1尉の後任の法務班長、こちらもP免組、口の悪い関西人、カートレースの経験あり
阿川1尉→6空団飛行群総人班長、P免、高専卒、名航三菱でF-15MJの計器パネルの改修設計を担当していた経歴あり(その関係でイーグルとの絡みを多目にしたい?)。趣味はミニ四駆の魔改造
山田曹長→6空団飛行群准曹士先任、以前は303SQや31SQに所属、妻は306SQの整備員から、最近、総隊司の副官になったらしい。浜松に単身赴任していた頃、台風でゴールポストが愛車のGRMNヴィッツに直撃した。フナさんとは、他の同僚(乾曹長、石井1曹、牧1尉、釘尾1尉、小翠1尉、小林1尉)とともに長い付き合い。
藤井“ジーク”1尉→303SQ所属のパイロット、航学出身。モットーは「航学は身を削って飲む」。イーグル被害者の会終身名誉顧問。独飛に那須野が加入したことにより、TACネームを変えようかと悩んでいる。
樋口“タッチ”1佐→名前のみ登場。元31SQ隊長、現在は空幕に所属。小松F-15僚機撃墜事件の当事者で、イーグル(#864)に搭乗していた。後述する渡辺3佐とは航学の同期。
桑野“ボブ”1佐→名前のみ登場、現在は定年退官。2空団所属時、前世イーグル(#079)に搭乗中、小松沖で炎上してベイルアウトした。前述の樋口1佐と、あともう1人と合わせて『ベイルアウト3兄弟』と呼ばれていたらしい。
渡辺(ラッコ)3佐→西部航空方面隊司令部支援飛行隊飛行班長、過去には信濃飛行隊の若手パイロットとして活躍。前任意は中司飛で、総隊司令官の要務飛行のためよく横田に来ていた。10年ほど前にはブルーインパルス5番機を務めており、ローアングルテイクオフのブチギレぶり(本人いわく「高度計がマイナスを指していた」)には現在もファンが多いらしい。
岡本“ポン”3佐→西部航空方面隊司令部支援飛行隊総括班長。過去には83空時代に那須野(ジーク)の僚機を務めたり、信濃飛行隊の若手パイロットとして活躍。浜松に自宅があり、少し前は1空団飛行群運用主任も務めていた。なお、かつての相棒であった縄田“リーチ”3佐は数年前に定年退官している。
大石1尉→技本航装研所属の技術幹部。名大の院生時代にベンチャー起業を経営しており、その時に稼いだ貯金でTRD仕様の86ターボとAE86を所有している。八代通とは妙にウマが合うらしい。
山本1尉→飛実団所属の技術幹部。部内幹部出身の古参。八代通被害者の会第3号。コミケときにはよく野上武志のサークルを手伝っているらしい。
初沢→陸自のヘリ整備から空自航学P免、現在は海保の固定翼操縦士。海保学校時代の教官が、慧の母親の上司だったらしい。KLX250のほか、カワサキのバイクを多数所有するサバゲーマニア。
那須野“ジーク”→鳴海章『ゼロと呼ばれた男』シリーズの主人公。架空の人物。南米で死んだという噂があったが、イスラエルのPMC(アドバイザリー部隊)の顧問をしており、日米のアニマ開発にも関わっている。ファントムが苦手とする数少ない人間。
121
:
【ソフィア1.02】(1)
:2019/03/17(日) 22:33:26
「ラトルスネーク!!」
「くは…っ! あんっっ!!」
ライトブルーの一条鞭が風を裂いて乱舞し、ソフィアの全身を打ちのめす。音速でしなる鞭に足元を薙ぎ払われ、ソフィアは力なく崩れ落ちた。
「ぐ…ぁ……!」
受身を取れず、したたかに背中を打ち付けたソフィアは、リングの床で押し殺すように呻いた。
「その程度?貴女の力というのは」
仰向けになったまま動けないソフィアは、鞭打たれた胸元を押さえ、苦しげに呻いている。ハイヒールの硬い足音を鳴らし、【もう1人のソフィア】が、その様子を見下していた。
「オーッホッホッホッホ! 全く話にならない殺試合(コロシアイ)だわ」
「だまれ…っ!」
体中の痛みをこらえながら、ソフィアは立ち上がった。闘いのダメージでふらつきながらも、再び鞭を構えた。
「貴方は何も感じないの…?こうして同じ容姿をした私たちが、こんな形で闘ってるなんて…っ!」
向かい合う2人のソフィアは、ポニーテールの髪型も、胸の谷間を露出したハイレグのボンデージスーツも、鞭使いの戦闘スタイルも、全てが同じであった。ただ、そのカラーリングだけが大きく異なっていた。
痛めつけられ、ボロボロになった【オリジナル・ソフィア】は、長い金髪をポニーテールにまとめ、バトル・コスチュームは黒光りするエナメル質で、長い一条鞭は闘気でライムグリーンに染まっていた。もう1人のソフィアは、ライトブルーの髪に緑を基調にした迷彩模様のバトル・コスチューム、鞭の色も髪と同じライトブルーとなっていた。そして、オリジナル・ソフィアとは大きく異なり、緑色のソフィアの顔とふとももには、朱色の幾何学模様が浮かび上がっていた。
124
:
【ソフィア1.02】(2)
:2019/03/23(土) 18:03:53
「私たちは、あの秘密結社に、運命までも弄ばれようとしているのよ!?」
ダメージから十分に立ち直ることができないまま、ソフィアは鞭を振る。しかし、その鞭撃は精彩を欠き、試作型ソフィアを捉えることができない。肩で呼吸をするソフィアの前で、試作型ソフィアが軽く鞭を鳴らした。
「もちろん知ってるわよ、その程度のこと。でもねぇ、要は、世の中強い者が勝つ、それでいいじゃない。それに、この闘神大武会は、私にとっては願ってもないチャンスなのよ」
試作型ソフィアは、軽く鞭を鳴らすと、身を低くしてダッシュし、攻撃態勢に移った。
「まず第1に、己の力の限界を知る為に――」
「かは…っ!! あううっ!! あああんっ!!」
試作型ソフィアの美脚がしなり、ソフィアを打ちのめす。
「そして第2に――私は二人いらない!!目ざわりなんだよ!実験体の分際で!!」
「ああっ!ううんっ!ぐはっ!!」
サンドバッグと化したソフィアは、試作型ソフィアのブーツに何度も打ち据えられ、力なく膝をついた。
「消えてしまいな!!」
「あんっ! あんっ! あうっ! ああんっ!!」
試作型ソフィアは、足技から鞭へと切り替え、なおもソフィアを痛めつける。四つん這いの姿勢になったソフィアの背中から尻にかけて、無数の傷痕が刻み込まれていったる。
「オーッホッホッホッホ!なに、気持ち良さそうにアンアン喘いでるの?」
「っく…! あんっ! ああんっ!!」
126
:
【ソフィア1.02】(3)
:2019/03/23(土) 21:31:16
ソフィアは右脚を鋭く振り抜いた。狙いすましたハイキックが、試作型ソフィアの顔面にクリーンヒットした。
「かは…っ!?」
「そうよ。何が何でも、私は、この大会――――」
追撃体勢に移ったソフィアは、自分自身に気合を入れるように、ピシャッと鞭を鳴らした。
「負けられないのよっ!!」
ソフィアは鞭を振り、最大出力のサンダーリングを放つ。
「貴様ァァ!!」
女王様然とした態度をかなぐり捨てた試作型ソフィアは、その鞭でサンダーリングを叩き落とした。集中力が極限まで高まったソフィアにとって、その動きはスローモーションも同然であった。力任せの大振りな迎撃で、試作型ソフィアに隙が生まれた。そのチャンスを、今のソフィアが見逃すはずもなかった。ソフィアは、残された全ての闘気を解放し、青白い光に包まれた。
「コール・ミー…」
新体操のリボンのように鞭を操り、螺旋を描いたソフィアは、自らも高速でスピンを開始する。ソフィアの闘気がダイヤモンドダストのように光輝き、ソフィアのスピンは更に加速していく。
「クィーン!!」
地面を離れ、宙を舞ったソフィアは、急カーブを描いて試作型ソフィアに襲い掛かった。
「あああああんっ!!」
遠心力の乗った鞭と、闘気で加速した空中からの強烈な体当たり――ソフィアの秘伝必殺奥義が炸裂し、試作型ソフィアは悲鳴とともに吹き飛んでいった。リングの床に叩きつけられた試作型ソフィアは、何度も地面をバウンドし、リングアウト寸前でようやく停止した。気を失い、戦闘不能となった緑を見下し、ソフィアは、腰に手を当て、色気のあるポーズを取った。
「いつでもお相手するわよ」
127
:
【ソフィア2.00】
:2019/03/25(月) 17:57:30
富士の樹海、その奥には【夜鬼】と呼ばれる一族の集落がある。集落の最深部では、夜鬼の族長が広大な屋敷を構えており、その敷地内には闘技場が設けられている。その、闘技場の床に、夜鬼一族最強の槍使い【モンド】が力尽きて倒れていてた。
モンドとの死闘を制した【エイジ・シンジョウ】が、
「エイジ・シンジョウ……ね!」
「あ……アンタ確かモンドと闘った後の……美人のおね〜〜さん」
「あ……ありがと」
「ショウ・シンジョウの弟……よね」
「に…兄さんのことを知っているのかっ!?」
「兄さんはどこなんだっ!!」
「どこにいるの彼は!!」
「そう…。素直に話してもらえるはずがないと分かってたのに、もしやと思ってしまって……」「馬鹿よね」
「ちょ…、ちょっと待ってくれよあんた。ショウ兄さんと一体どういう関わりがあるんだ!?」
「明日!その場所に来るのよ待ってるわ」
「お、おいそんな自分勝手に! 俺は忙しいんだ、用件があるんなら今ここで済ませば…」
「こんな他人目の多い場所なら、具合が悪すぎるでしょう?」
口許を歪め、
「何だぁ?つぶれたディスコクラブ……かな」
「な〜〜んか嫌な予感がするけど……まァいいか」
ソフィア「変わり身?」
ソフィア「さすがだわ。ショウの弟だけあってただのデクの棒じゃないようね」
エイジ「わざわざ来た客にずいぶんな歓迎してくれるじゃね〜〜か」
ソフィア「ウフフフ…ほんのあいさつ代わりよ」
ソフィア「私の名は『ソフィア』!!わけあって闘神大武闘会に途中参加させていただくわ!!」
エイジ「大体そんな事だろうと思ってたけどな。やめといた方がいいんじゃねえかな。ココんとこの俺はちょっと強ぇぜ!」
ソフィア「そうかもしれないわ。けれど、もう後には退けないの。クラースヌイ・ブーリファを手に取った以上」
エイジ「何のことかわかんねえけど、後悔するなよっ」
エイジ(奴の武器は鞭だリーチがあるっ。但しフトコロにもぐり込みさえすりゃあ)
エイジ(よしっ!!かいくぐった)
エイジ「何っ!?」「くっ」「むおっ」「おおっしこのスキにっ」「うあっ」
ソフィアは
「ラトル・スネーク!」
128
:
【ソフィア2.00】
:2019/03/25(月) 18:03:27
ソフィアは手首を返し、鞭の軌道をコントロールし、エイジを追い込んでいく。
「ラトル・スネーク!」
エイジは太刀で受け止めるが、捌ききれずに滅多打ちにされ、吹き飛んだ。
口の中を切ったのか、口許に付いた血を拭った。
「く…くそっスキがねえっ!」
「ホホホホッどうしたのっ」「手も足も出ないのかしら?ボ〜〜ヤ」
「サンダー・リング!!」
「ぐっ」
太刀で防ぎ、鈍い音を立てる。
「触ってもいいのよ。出来るものならばね」
「何おぉ…」
「ラブ・ラバーーッ」
大技が次々と決まる。場を支配しているのはソフィアだった。
(こ…攻撃が読めねえ。なぜだトレーシーの時はあれほど見切っていた俺が……)
(何てザマ…だ)
「戦闘強化人間を甘く見たわね」
(強化……人間!?)
「さあ話しておしまいなさい。ショウ・シンジョウの行方を!」
「それさえ分かれば鞭を退くわ。この勝負もあなたの勝ちということで構わない…もとより大武会なんかに関わりたくはなかったのだから」
(なん……だとぉ!?)
「彼はどこっどこに行けばショウに会えるのっ!?」
「……だから言ったろ。俺も、ずっと捜してるって。だからこそ、この大武会に出たんだ」
「……………………」ソフィアは沈黙。
「ならば仕方ないわ。残された手段はひとつ、大武会を自分で勝ち抜くしかないようね。覚悟なさい。もう手加減はできない……から」
(な…何だ表情がガラッと変わりやがった)
「ハアッ」
(止めようとしてももう止まらない戦いの高揚感が我が身を精神(こころ)を支配してゆく)
(あの男ヒトにもう一度会いたい)(強化される以前の記憶も何もかも失くしていた私に初めて人間らしい感情を持たせてくれたあの男ショウに!!)
(けれど…けれどそのために強化人間としての能力ちからにすがっている)(それ以外にやり方を知らない哀れなソフィア)
(ダメだっ攻撃に耐えるのが精いっぱいで反撃の糸口すら見つからねえ)
(中略)
129
:
【ソフィア2.00】
:2019/03/25(月) 18:06:44
(中略)
「俺は敗けねえっ!そう決めたっ今決めたあっ!!」
(ば…ばかな急に……何だこの気迫は!?)
「熊刃閃!狼牙斬!破脚斬!鋼鉄割りッ!!」
優勢だった筈のソフィアに、次々にダメージが刻まれていく。
(敗けるワケにはいかないのよっ!!ここで敗けてしまっては…あの男ヒトへの糸が途切れてしまうっ)
「ローリング・スピア!!」
「夏塩脚!!」
「ぐうっ」「がはぁ」
(まだまだっ)
(このくらいでぇ)「倒せると思うなっ!!」
エイジの突きが、ソフィアの脇腹を掠めた。掠めただけとは思えないほどの重い衝撃が、ダメージや疲労、ソフィアの体を突き抜ける。
「ううっ」
呻きながらも脇腹を庇うが、一瞬、すぐに力任せに鞭を叩きつけた。
「もらったぁ」
「ぶっ」
(よしっ手応えあった…これはっ……)
「な…んのぉ」
雄たけび
(な…なぜ?彼にはダメージというものが無いとでも……!?)
(たかが猪突猛進の直線攻撃リーチの差でこっちのものよ)
「しまった」
「つかんだっ!!」「よしっ!」
「地獄門!!!」
「あ…あなたにあなたに届か…ないだめぇえ」
白目を剥いて気絶したソフィア、戦闘不能
133
:
【ソフィア2.00】(0)
:2019/04/03(水) 22:49:58
富士の樹海、その奥には【夜鬼】と呼ばれる一族の集落がある。集落の最深部では、夜鬼の族長が広大な屋敷を構えており、その敷地内には闘技場が設けられている。その、闘技場の床には、夜鬼一族最強の槍使い【モンド】が力尽きて倒れていた。その傍らで、満身創痍になった青年が、太刀で体を支えて辛うじて立っていた。死闘を制した【エイジ・シンジョウ】に忍び寄る影があった。どこからともなく現れたソフィアは、硬いヒールの音とともにエイジに歩み寄った。
「勝者に、祝福を――」
エイジの頬に軽く口付けしたソフィアは、呆然とするエイジの前から、風のように去っていった。
136
:
【ソフィア2.00】(1)
:2019/04/03(水) 22:57:40
暗闇に身を潜めたソフィアは、闘気を研ぎ澄ませながら、時が来るのを待っていた。静寂が支配する部屋のなかで、建て付けの悪い扉が微かな音を立てた。
「つぶれたディスコクラブ…か? なーんか嫌な予感がするけど、まァいいか」
人の気配を感じたソフィアは、感覚だけを頼りに、長い一条鞭を放った。鞭を握る右手から、鞭先が標的の首を捉えた感触が伝わってくる。ソフィアは勢いよく右手を振り、標的を足元に引きずり寄せた。
ガシャン、という重い機械的な音が響き、煌々とした照明が灯った。ソフィアの足元には重そうな布の袋が転がっており、腕を組んだソフィアは、ハイヒールの爪先で、その布袋をもてあそんだ。
「変わり身? さすがだわ。ショウの弟だけあってただの木偶(デク)の棒じゃないようね」
「わざわざ来た客に、ずいぶんな歓迎してくれるじゃねーか」
「ウフフ…、ほんのあいさつ代わりよ」
妖艶な笑みで標的(エイジ・シンジョウ)の言葉を受け流したソフィアは、闘士の顔へと表情へ切り替え、鞭を構えて名乗りを上げた。
「私の名は【ソフィア】!! 理由(ワケ)あって闘神大武闘会に途中参加させていただくわ!!」
「大体そんな事だろうと思ってたけどな。やめといた方がいいんじゃねえかな。ココんとこの俺はちょっと強ぇぜ!」
「そうかもしれないわ。けれど、もう後には退けないの。【クラースヌイ・ブーリファ】を手に取った以上――」
ソフィアが手にした鞭の名を唱えると、その長い一条鞭は、ソフィアの闘気で濃いピンク色に染まった。自信に満ちた表情で抜刀したエイジの前で、ソフィアは、バレエの演目を舞うように鞭を振った。
「何のことかわかんねえけど、後悔するなよっ」
137
:
【ソフィア2.00】(2)
:2019/04/03(水) 22:59:33
【白虎の太刀】を構えたエイジに狙いを定め、ソフィアは鞭を振りかぶった。ソフィアに向かって駆け出したエイジに向けて、ソフィアは鞭を振り下ろす。鞭の間合いの内側に入り込もうとするエイジだが、ソフィアは手首を返して巧みに鞭を操り、エイジを寄せ付けない。
「何っ!? …くっ…、むおっ! うあっ!!」
ソフィアの鞭は急激に軌道を変え、エイジを執拗に狙い撃つ。ソフィアの鞭に追い立てられ、無理な回避で体勢を崩したエイジに、ソフィアは必殺技を解き放った。
「ラトル・スネーク!」
「くっ…! うぉあああっ!!」
ソフィアの鞭が自在に乱舞し、無数の打撃をエイジに与える。その鞭を、エイジは太刀で受け流そうとするが、捌ききれずに全身を鞭で叩かれ、フィニッシュの一撃とともに吹き飛んだ。
「く…くそっ! スキがねえっ!」
エイジは辛うじて受身を取り、素早く立ち上がった。口の中を切ったのか、エイジは口元に付いた血を手の甲で拭った。
「ホホホホッ! どうしたのっ? 手も足も出ないのかしら、ボウヤ?」
挑発するような高笑いとともに、ソフィアの必殺技がキレを増していく。
138
:
【ソフィア2.00】(3)
:2019/04/03(水) 23:05:34
「サンダー・リング!!」
「ぐっ…」
ソフィアの闘気が雷の環となって、鞭先からエイジに向けて放たれる。エイジは間一髪でガードし、太刀が鈍い音を立てた。
「触ってもいいのよ。出来るものならばね」
「何おぉ…」
「ラブ・ラバ――ッ!」
ソフィアは、豊満な胸元を強調するように、魅惑的な手招きでエイジを誘惑する。ソフィアの体がエイジに触れた瞬間、ソフィアは独楽のように回転して変則的な軌道を描き、四方八方からエイジに体当たりを炸裂させた。ソフィアの究極宝技に、吹き飛ばされ、エイジは力なく宙を舞った。ソフィアが手元に戻した鞭先を掴むのと同時に、エイジは、背中からリングの床に叩きつけられた。
「戦闘強化人間を甘く見たわね」
「強化……人間!?」
「さあ話しておしまいなさい。ショウ・シンジョウの行方を!」
「それさえ分かれば鞭を退くわ。この勝負もあなたの勝ちということで構わない。…もとより大武会なんかに関わりたくはなかったのだから」
(なん……だとぉ!?)
「彼はどこっどこに行けばショウに会えるのっ!?」
「……だから言ったろ。俺も、ずっと捜してるって。だからこそ、この大武会に出場たんだ」
「……………………」ソフィアは沈黙。
「ならば仕方ないわ」
太刀を放り投げた。
「残された手段はひとつ、大武会を自分で勝ち抜くしかないようね」
ゆらりと鞭を構えた。闘気のオーラが立ち上った。
「覚悟なさい。もう手加減はできない……から」
139
:
【ソフィア0.00】
:2019/04/19(金) 23:09:26
「これは…!」
原型をとどめないほどに破壊された機材が、その威力を物語っていた。
「うふふ…、よく避けたわね。でも、そうでなくっちゃ。私を、愉しませてくれる?」
140
:
【ソフィア0.00】
:2019/04/24(水) 17:47:55
中華服の老人が肩で息をしていた。対照的に、余裕そうなソフィア、指先で挑発的な手招き
「けえええッ轟曇発破――」
ケケケケケーッ
「鮮血にまみれてハジケとべ――」「何ッ?」「!!」
「サンダーリング」
「わしの妖術が…人間ごときにやぶられると…は…」
「人間じゃ……ないかもね」
141
:
【エリス】
:2019/04/24(水) 18:09:24
「シて?」
子犬のように潤んだ瞳で見上げるエリス、ソフィアの理性を破壊するに十分だった。
事務所の下の階、閉鎖されたディスコクラブ、会場になっていた。
142
:
【ソフィア1.02】(1)
:2019/05/08(水) 21:33:58
「ラトルスネーク!!」
「あうっ! ああんっっっ!!」
全身を何度も鞭打たれ、その痛みでソフィアは悲鳴を上げる。ライトブルーの長い一条鞭は、風を裂いて乱舞し、ソフィアを何度も打ち据えていた。音速でしなる鞭に足元を薙ぎ払われ、ソフィアはリングの床に崩れ落ちた。
「…く…ううっ……」
受身を取ることができず、背中をしたたかに打ちつけたソフィアは、押し殺すように喘いだ。
「…その程度? 貴女の力というのは」
大技をまともに受けたソフィアは、仰向けに倒れたまま、思うように動けない。ソフィアのバトル・コスチュームは所々が破損しており、白い柔肌には、幾筋ものキズや無数のアザが刻み込まれていた。、胸元を押さえ、苦しげに呻くソフィアを、【もう1人のソフィア】が見下していた。
「オーッホッホッホッホ! 全く話にならない殺試合(コロシアイ)だわ」
ハイヒールの硬い足音を響かせながら、もう1人のソフィアが近づいてくる。ボロ雑巾も同然となったソフィアとは対照的に、もう1人のソフィアはほとんど無傷であり、余裕の表情を浮かべていた。
143
:
【ソフィア1.02】(2)
:2019/05/08(水) 21:35:51
「だまれ…っ!」
体中の痛みをこらえながら、ソフィアは立ち上がった。ふらつきながらも、ソフィアは鞭を握り直し、なんとかファイティングポーズを取った。
「貴方は何も感じないの…? こうして同じ容姿をした私たちが、こんな形で闘ってるなんて…っ!」
向かい合う2人のソフィアは、ポニーテールの髪型も、胸の谷間を露出したハイレグのボンデージスーツも、鞭使いという戦闘スタイルも、全てが同じであった。ただし、そのカラーリングだけが大きく異なっていた。
痛めつけられ、ボロボロになった【オリジナル・ソフィア】は、長い金髪をポニーテールにまとめ、バトル・コスチュームは黒光りするエナメル質で、長い一条鞭は闘気でライムグリーンに染まっていた。【試作型(もうひとりの)ソフィア】は、ライトブルーの髪に緑を基調にした迷彩模様のバトル・コスチューム、鞭の色も髪と同じライトブルーとなっていた。そして、オリジナル・ソフィアとは大きく異なり、緑色のソフィアの顔とふとももには、朱色の幾何学模様が浮かび上がっていた。
146
:
【ソフィアprolog】(1)
:2019/10/12(土) 11:22:24
人々の欲望が蠢く大都会に、時折、緊急車両のサイレンが遠く響く。不夜城と化した都心から、寝静まった街外れへと疾駆する人影があった。ポニーテールの長い髪を風になびかせ、夜の闇を縫うように走り去るのは、最近、裏社会でその存在を知られつつある女怪盗であった。
彼女の目的を知る者はいない。だが、彼女の標的となった企業や人物は、いずれも、ある【秘密結社】との繋がりを持っていることが共通していた。ただし、その共通項に気付いた者はほとんどいない。
飛び交うサーチライトを巧みに回避し、彼女は、軽やかなステップで屋根から屋根へと飛び移る。雲の隙間から淡い月明かりが差し込み、猫科の猛獣を思わせるようなシルエットが浮かび上がった。彼女を覆う黒いボディスーツは、しなやかに鍛え上げられた肢体にぴったりとフィットし、すらりと伸びた手足や豊満な体つきを強調していた。
長い髪をかき上げた女怪盗は、火照った体を冷ますため、首元のジッパーを下げ、胸元のあたりまで開け放った。たわわに実った胸の谷間を大胆に露出し、素肌に涼しい夜風を感じながら、彼女は都心の方を振り返った。
整った顔立ちと、凛とした意志の強さを宿した瞳。ほんの僅かだけ歪んだ口元は、喜びか、嘲笑か。
都心の巨大なビルから伸びるサーチライトが、女怪盗のいる一帯を薙ぎ払った。硬いヒールの足音が静かに響く。サーチライトの暴力的な光が去り、再び闇が訪れたときには、既に、彼女の姿はどこにもなかった。
147
:
名無しさん
:2020/03/31(火) 18:47:28
エリス(通常)/アリス(赤)/クリス(黒)
ソフィア(通常)/ソフィーティア/ゾフィー
148
:
【エリス】
:2020/12/30(水) 21:25:40
「いっくぞぉぉぉっ!」
満身創痍となったエリスが叫んだ。空高く飛び上がり、高まった闘気が
「あうっ!!」
空中からソフィアに一撃。
「たあっ! たあっ! たあっ! …たああああっ!!」
「フレンチ・キッス!!」
投げキッスとともに、闘気のエネルギーをぶつける。
「んんっ…。今のはちょっと、痛かった…わよ?」
力を使い果たしたエリスは、なすすべもなく鞭打たれ、足蹴にされる。
アッパー・ウィップが顎に入り、エリスは断末魔の悲鳴を上げて吹き飛んだ。
「きゃああっ!」
149
:
【beforestage】
:2021/01/02(土) 23:59:31
その秘密結社は、巨大財閥【ジェラート財団】のグループ内部に存在していた。
世界各地に点在するジェラート財団の拠点の中でも、一際勢力
北欧のとある小国、ジェラート財団北欧本部ビルにて。
「ウラヌス様。ソフィア、ただいま戻りました」
「ええ。ご苦労でした」
主に跪くソフィアを、ウラヌスが労った。
「首尾はどうですか?」
「はい。招待状を送った者たちは、全て揃ったようでございます」
「さて、その中に、わが眼鏡に叶う者がいればよいのですが」
「選りすぐりの者たちです。必ずや、ウラヌス様のお眼鏡に叶うかと」
「だと…いいですけれど」
赤色灯が明滅し、異常事態を報せるブザーが鳴り響いた。
「何事か!?」
「どうやら、このアジトにネズミでもまぎれこんだようですね」
「何者かが忍び込んだと…?」
「ソフィアよ、追いなさい」
「はい」
「任せたぞ」
(鞭、風切り音)
「いい気なものだ。貴様が武術家を集め、何をしようというのか解らぬとでも思ったか」
(足音)タッタッタッ
150
:
【beforestage】
:2021/01/03(日) 00:00:01
足音を響かせ、うら若き乙女が駆け抜ける。息を弾ませ、蜂蜜色の長い髪
「はっはっ…」
目鼻立ちの整った容貌
体にぴったりとフィットしたハイレグのボンデージスーツね
黒い背広姿の男が
ソフィアの行く手を阻むように現れた。
拳銃を構える。
「待て!」
「追い詰めたぞ」
「大人しく我々と来てもらおうか」
「くっ…しつこいったらありゃしない!」
(鞭)
多勢に無勢
圧倒的な戦闘能力で
「何が目的か、たっぷりと絞り上げてやる!!」
(蹴り)
「じゃあ貴女たちは…」
「ならば私が相手をしてやろうか」
「何」
「ソフィア様」
「また会ったな、オリジナル・ソフィア」
「その女はわが組織の情報を探っていたらしい。こちらに渡してもらおうか」
「私をどうするつもり?」
「むろん、わが組織の秘密に近づこうとする者には、死あるのみ」
「冗談じゃない。あんたらの組織の秘密を暴くまでは、死ねるものか」
「(笑)何が知りたいというのだ。お前の失われた記憶のことか。それともお前の母親が、元はわが組織である実験をしていたことか」
「何故、お前おまえがそんなことを知っている!?」
「知れたことよ。お前たちをこの闘神大武会に招待するにあたって、わが組織が徹底的にお前たちの過去を調べ上げているのだ。それにお前の場合は、もともと組織の中に資料が豊富に存在したからな」
「それじゃあ…、やっぱり私は、お前たちの人間兵器開発プロジェクトのために、実験台にされていたのか!?」
「さあ。それ以上は言えないわ。恨むならばお前の母を恨むのね」
「くっ…貴様……」
「さあ、おしゃべりはここまでよ。死んでもらおうかしら」
「ふっっざけるんじゃないよ。逆に私がお前たちを倒して、本当のことをきかせてもらうよぉ…」
「面白い。闘神大武会の予行演習といこうじゃないか」
151
:
【beforestage】
:2021/01/03(日) 00:02:21
「はあッ!!」
ソフィアの長い一条鞭が風を裂き、
「甘いわぁ…」
「その程度の技でこの私は倒せないわよ」
「ならば…サンダーリング」
「むっ…おわああっ」
確か名前は風裂のソフィア
「さあ、そんなもんで終わりじゃないでしょ? さっさと立ったらどう?」
「なかなかやるが、この私のボディには通用しないわよぉ?」
「ば…、ばかなっ!? マトモにくらったはずなのに!?」
そいつのタフさとパワーは並みじゃない
「だったら音を上げるまで攻撃してやるわ。ラトルスネーク」
(鞭)
「っはは…、こそばゆいわね。本当の攻撃というものを見せてあげる!はあああっ」
「ああああっ」どさっ
「(笑)どう、私の鋼の肉体から繰り出される殺人タックルの威力は」
「うう…くっ」
「さあて、ひとおもいにトドメを刺してあげる。…はあああっ!!」
「お前が明らかに肉体改造を受けているとなれば話は別だ」
「何」
「いくら何でもお前のその体は異常だ。おそらくはそれも人間兵器とやらの産物だろう」
「ふん、よく見破ったわね。確かに私の体は改造を受けている。だがそれがどうだというの? そのおかげで私はこのパーフェクトなボディを手に入れたのだ」
「はあ…。哀れなやつだ」
「なあに? この私のドコが哀れなの?」
「その体は決してパーフェクトなどではないわ。それが解らないから哀れだと言ったのよ」
「っはは…その通りね。」どさっ
「貴様っ…!」
「私にも今の戦いだけで弱点が見えたわ」
「貴様、この私のボディをバカにするつもり!? やあっ!!」(鞭)
「おのれ…っ!」
「ふふっ。まず1つ目の弱点、それは無理なパワーの上げすぎで、スピードがガタ落ちになっているというコトっ!」
蹴り
「むおっ」
「そしてさらにスタミナが伴っていない」
「むっぐはっはっ」
「ふふふ。ほぉら、もう息が上がってるわよお。…スタミナが切れれば、当然、耐久力も落ちるっ」
蹴り
「おあああっ」
「それじゃあ、とてもじゃないけどパーフェクトなカラダとは言えないのよ。さあ、私の前に跪かせてあげるわ。そして女王様とお呼び!」
「コールミークイーン」
(断末魔)
さすがちゃんと弱点を見抜いていた
「さあ、まだこれで終わりじゃないのよ。貴女には組織の秘密を洗いざらい話してもらいますからね」
「……誰が…話す…もの……」
「はっ…?」
爆発音、断末魔
152
:
【beforestage】
:2021/01/03(日) 00:09:35
「何、今の。…誰?」
「それ以上組織の秘密を喋らせる分けにはいかんからな」
「貴様は」
「我が名はウラヌス。闘神大武会の主催者と言えばわかるかな」
「貴様が闘神大武会の主催者」
「秘密を守るために自分の仲間までも」
「ふふ。仲間といっても、そいつは私の軍団を調べに来たスパイでしたからね」
「スパイ?」
「組織内で私の失脚を狙う何者かが差し向けたのでしょう。ふふ。仲間であろうと隙を見せれば寝首を掻くのが我が組織の常ですからね」
「ふん。ふざけた組織ね」
「お前が丸丸の丸丸ね。ふふ。なかなか良い眼をしている。これで、闘神大武会がいっそう楽しくなるというものね」
「貴様も母さんの名を…。…待ちなさいっ! ソフィアがこうなった以上、あなたに話を聞かせてもらうわよ」
「そうか。どんな望みがあるか知らぬが、闘神大武会を勝ち抜くことだ。勝ち抜けば、最後にこの私を倒したものが、どんな要望も叶えてやろう」
「ふん。面白い。だったら私は貴女を倒して、こんな怪しげな組織ぶっつぶしてやる」
「では、力の限り頑張ることだ。ソフィア、せいぜい私をたのしませてもらいましょうか」
「きゃああっ」
「奴が…消えた」
「今のがとうしんだいぶかいの主催者、ウラヌス」
「ただものじゃなかった、見ているだけで震えが来るぐらい」
「だが私は必ず勝つ」
156
:
【beforestage/SHO】
:2021/01/03(日) 02:06:24
ドイツ、ベルリン市街地を流れるシュプレー川のほとりにて。日中は市民の憩いの場となっているが、深夜は人通りも途絶え、心もとない街灯の明かりが影を落としている。
「いたぞ、こっちだ!」
怒号と靴音が静寂を破り、大勢のシルエットが石畳の上を走る。彼らは【組織】に所属する戦闘員であり、【組織】の周辺で暗躍する女怪盗ソフィアを処分するために放たれた刺客であった。影から影へと飛び移るように逃げる女怪盗に、戦闘員のサーチライトが浴びせられる。その光は、女怪盗のポニーテールを微かに照らした。
「くっ…! しつこいったらありゃしないっ!」
追われるソフィアは苦々しい表情で舌打ちし、鞭を振るう。
「ぐおっ!」
「うあっ!」
風を裂くような鋭い音に続き、打撃音とともに何人かの悲鳴が上がる。射程距離の長い一条鞭を振りつつ逃げるソフィアだが、徐々に袋小路へと追い込まれていった。
「ここから先は行き止まりだ!」
高圧的な態度でチェックメイトを告げるのは、戦闘員のリーダー格だろうか。ソフィアは後ずさりながら辺りを見回した。周囲は【組織】の戦闘員に取り囲まれ、すぐ背後には石造りの高い壁がある。
157
:
【beforestage/SHO】
:2021/01/03(日) 02:13:05
「私をどうするつもり?」
「無論。【組織】の秘密を知る者は、死、あるのみ」
戦闘員らは一斉に武器を構えた。刀剣類から棍棒や鉤爪まで、多種多様な武器がソフィアに向けられる。
「冗談じゃないわ。こんな所で、死ねるものか…ッ!」
ソフィアは語気を強め、鞭を構えた。勢いよく張られた鞭が、ピシャリと子気味よい音を立てる。
「はッ!!」
ソフィアは、新体操の演技のように鞭を振り、闘気を解き放った。まばゆい光がソフィアの体を包み込み、衣服が弾け飛ぶ。魅惑的な肢体が露わとなり、競泳水着のようなハイレグスーツに、腕にはオペラグローブ、脚にはキンキーブーツと、白い肌に黒いバトル・コスチュームが展開されてゆく。
「クラースヌイ・ブーリファ!」
ソフィアが愛鞭の名を唱えると、それに応えるかのように鞭が闘気を帯び、淡い緑の光を放つ。SMの女王様のような妖艶な姿へと変身したソフィアに、大勢の戦闘員が一斉に襲いかかる。ソフィアは鞭を巧みに操り、それらを迎え撃つ。しなやかな革の一条鞭には鋼鉄製の錘とワイヤーが仕込まれており、その一撃は音速を超える。変身によって精度と威力を増した鞭が、【組織】の戦闘員を次々とぶちのめしていく。
158
:
【beforestage/SHO】
:2021/01/03(日) 02:18:24
だが。
「(流石に…、数が多いっ!)」
ソフィアがいくら鞭で打ち据えても、敵の群れは数に物を言わせてじりじりと詰め寄ってくる。鞭を振り回し、孤軍奮闘するソフィアの肌は上気し、玉のような汗が浮かんでいた。
「この…っ!」
鞭の間合いの内側に入られたソフィアは、足技をメインに切り替え、1対多数の乱戦へと移っていく。次々に繰り出される攻撃を、躱し、受け流し、ガードする。それでも、いくつか攻撃を受けてソフィアは呻くが、怯むことなく、ローキック、ハイキック、蹴り上げ、後ろ回し蹴りを放つ。時には鞭の一撃を加え、着実に敵の数を減らしていく。
159
:
【beforestage/SHO】
:2021/01/03(日) 15:27:00
「この…っ!」
鞭の間合いの内側に入られたソフィアは、足技をメインに切り替え、1対多数の乱戦へと移っていく。次々に繰り出される攻撃を、ソフィアは躱し、受け流し、ガードし、ローキック、ハイキック、蹴り上げ、回し蹴りを放つ。時には鞭で一撃も加え、着実に敵の数を減らしていった。
「たああっ!」
ソフィアのウィンドミルキックがクリーンヒットし、また1人の戦闘員が吹き飛んでいく。
「あとは貴男たちだけのようね…っ!」
肩で息をしながらも、ソフィアは、残りの戦闘員へと鞭を向ける。たが、残る4人は一様に不敵な笑みを浮かべていた。
「もう息切れしてるようだけど、俺たちを相手にできるのか?」
「ふん、余計なお世話よ」
「俺たちをコイツら雑魚と一緒にするなよ?」
「中々やるようだけど…。覚悟しなさいっ!」
ソフィアは鞭を放ったが、2人の戦闘員に左右から肩を掴まれて、石造りの壁に押しつけられた。
「がは…っ」
顔をまともに殴られ、身動の取れないソフィアの腹部に、男の拳がめり込む。
「ううっ…、けほ…っ……」
苦しげに咳き込むソフィア。残る2人の戦闘員に、代わる代わる、容赦のない腹パンチを浴びせられた。
160
:
>>40
:2021/01/03(日) 15:35:06
>>40
東欧諸国の夜は早い。それは、賑やかな街の中心部でも同じだ。そんな街中の簡素なマンションの一室。
ダイニングのソファに家族を招いた姉に、妹が話しかけた。
「何よ、姉さん。仕事でイヤなことでもあったの?」
母親も心配顔で部屋に入ってくる。姉はふたりを見つめ、話した。
「私の記憶が変なこと、知ってるでしょ?そのことを調べている内にある結社が浮かんだんだけど、その結社から一昨日、私あての手紙が来たの。武闘大会の招待状」
母親の顔が恐怖に歪んだ。
「(闘神大武会!やはり私たちはすでに見つかっていたんだわ……)」
「私、参加するわ。ずっと調べてきた謎の答えが見つかるかもしれない」
「ダメよ!!そんな危険なこと、母さん許しません!決して!!」
しかし、翌朝、姉は旅立った。ふたりを起こさぬように静かに、愛用の鞭だけを持って。その姿を見送る母には気付かず。
「(ソフィア、お前が真相を知ったとき、母さんを許してくれるかしら。それとも……。それでもいいんだよ。無事に帰ってくれさえすれば……)」
老いた女科学者は、朝靄の中でいつまでも自分の「実験体」の後姿を見送っていた。
161
:
名無しさん
:2021/01/03(日) 17:31:08
東欧諸国の夜は早い。それは、賑やかな街の中心部であっても例外ではない。そんな街中の、簡素なマンションの一室にて。ダイニングのソファに家族を招いた姉に、妹が話しかけた。
「何よ、姉さん。仕事でイヤなことでもあったの?」
母親も心配顔で部屋に入ってくる。姉はふたりを見つめ、話した。
「私の記憶が変なこと、知ってるでしょう?」
母親と妹が頷く。
「そのことを調べている内に、ある【結社】が浮かんだんだけど、その【結社】から一昨日、私あての手紙が来たの。武闘大会の招待状」
母親の顔が恐怖に歪んだ。
「(闘神大武会! やはり私たちはすでに見つかっていたんだわ……)」
「私、参加するわ。ずっと調べてきた謎の答えが見つかるかもしれない」
「ダメよ!! そんな危険なこと、母さん許しません! 決して!!」
「ここは…?」
「KGBの格闘訓練場として使われていた場所よ。尤も、書類上ではソ連時代に閉鎖されたことになっているわ」
「私たちを、倒してごらんなさい」
「本気で“壊して”あげる…!」
しかし、翌朝、姉は旅立った。ふたりを起こさぬように静かに、愛用の鞭だけを持って。その姿を見送る母には気付かず。
「(ソフィア、お前が真相を知ったとき、母さんを許してくれるかしら。それとも……。それでもいいんだよ。無事に帰ってくれさえすれば……)」
老いた女科学者は、朝靄の中でいつまでも自分の「実験体」の後姿を見送っていた。
162
:
【Cupido】
:2021/01/05(火) 12:18:15
逢魔が時、陰と陽が交錯する。コバルトブルーに染まり、夢と現の境目が曖昧となった世界で、ボロボロになったソフィアがうつ伏せに倒れていた。ソフィアは、遺跡のような場所で闘っていた。遠い過去に、戦乱で破滅を迎えた古代都市。破壊された当時の姿を留める人工の建造物は、どれも白っぽい石で造られており、それが、薄暗い空間のなかでやけに目立っていた。
「うう…っ……」
ソフィアは、呻きながら薄目を開けた。壊れかけの体と心に鞭を入れ、ソフィアは石畳の地面に手と膝をつく。
なんとか立ち上がったソフィアだが、露出の多いバトル・コスチュームは所々が破損し、白い肌には無数の傷が刻まれていた。その足元はふらつき、肩が上下するたびに、豊満な胸と長いポニーテールが揺れていた。
ソフィアを痛めつけた張本人が、ソフィアの前に立っていた。痩身の麗人、その瞳が夕陽を受けて紅色に光っている。確か、【緋色の堕天使】と、そう呼ばれていた。中性的な雰囲気の彼女は、ボロ雑巾同然のソフィアとは対照的に、ほとんどダメージを負っていないように見える。
ソフィアは、彼女をキッと睨み付け、鞭を放つ。だが、ソフィアの鞭が彼女に届くことはない。彼女の薙刀が、ソフィアに向けて突き出される。だが、立っているのがやっとのソフィアは、反応することさえままならない。
163
:
【Cupido】
:2021/01/05(火) 12:23:10
逢魔が時、陰と陽が交錯する。コバルトブルーに染まり、夢と現の境目が曖昧となった世界で、ソフィアは闘っていた。遺跡のような場所に設けられた闘技場で、ボロボロに痛めつけられたソフィアは、うつ伏せに倒れている。遠い過去に、戦乱で破滅を迎えた古代都市は、破壊された当時の姿を留めているようだった。白っぽい石で造られた建造物のシルエットが、薄暗い空間で浮かび上がっている。
「うう…っ……」
ソフィアは、呻きながら薄目を開けた。壊れかけの体と心に鞭を入れ、ソフィアは石畳の地面に手と膝をつく。
なんとか立ち上がったソフィアだが、露出の多いバトル・コスチュームは所々が破損し、白い肌には無数の傷が刻まれていた。その足元はふらつき、肩が上下するたびに、豊満な胸と長いポニーテールが揺れていた。
ソフィアを痛めつけた張本人が、ソフィアの前に立っていた。痩身の麗人、その瞳が夕陽を受けて紅色に光っている。確か、【緋色の堕天使】と、そう呼ばれていた。中性的な雰囲気の彼女は、ボロ雑巾同然のソフィアとは対照的に、ほとんどダメージを負っていないように見える。
ソフィアは、彼女をキッと睨み付け、鞭を放つ。だが、ソフィアの鞭が彼女に届くことはない。彼女の薙刀が、ソフィアに向けて突き出される。だが、立っているのがやっとのソフィアは、反応することさえままならない。
164
:
【Cupido】
:2021/01/05(火) 12:26:50
「がは…っ……」
ソフィアの下腹に薙刀の刃先が突き刺さる。ソフィアは、無意識に薙刀の柄を掴んでいたが、腹部を抉られたまま、体ごと空高く持ち上げられる。そのまま、八の字を描くように振り回され、そして。
勢いよく、地面へと叩きつけられた。
「――――!」
全身を突き抜ける衝撃に、声すらでない。内臓がダメージを受け、吐血する。
「かはっ…、えぐっ、うぐっ…っああああっ……」
苦しげに咳き込み、呻き声をあげるソフィアだが、体から徐々に力が抜けていく。闘気が尽き、淡い光とともにバトル・コスチュームが強制解除される。
戦う力を失ったソフィアに、再び薙刀が向けられる。その刃先は、ソフィア自身の血で赤黒く染まっていた。
「――――の力もその程度だったか」
「今のお前では、運命に抗うことは出来ない」
「お前を待ち受ける、破滅へとすすむ運命には」
「今一度、おまえの運命の糸はここで斬れる」
首筋に、ゆっくりと刃がはしっていく。
「くっ…、こんな……」
「ところ、で…………」
意識が白濁してゆく中で、ソフィアは何かを思い出したような気がした。
――――私はまた届かない――――
――――私はまた何度も繰り返すのだろう――――
ソフィアの記憶は、そこで途絶えた。
165
:
【prolog】
:2021/01/05(火) 22:24:23
(磨き込まれたグランドピアノの上に寝そべっていた)
(周囲には楽譜が散乱している。ショパンの『革命』)
風は銅色に霧散し、気怠げに1人の女戦士の元へ降り注ぐ。
彼女は独り、己を探す。
そして――
風は幾多の戦士達をひき合わせる
限りない闘いの幕開けの為に――――
166
:
【SHO】
:2021/01/05(火) 22:55:35
(街角)
モブ「うっ……」
モブ「き……キサマはっ」
ショウ「この女のことはもう忘れろ!」
モブ「しっ……しかし……」
ショウ「あるいは」
ショウ「ソフィアは既にこのエトランゼに敗れ去った者として報告するならば」
ショウ「問題はなかろう」
ショウ「だが」「どうしても“否”と言うのであれば……」
モブ「わ……」
モブ「ぅ分かりましたあっ」
ソフィア「…………」
167
:
【SHO】
:2021/01/05(火) 23:12:22
(シティホテル)
ソフィア「どうして…」「あたしなんかを助けてくれるの」
ショウ「別に君のためのいうワケではない」
ショウ「ただ、結社(ジェラード)のやり方を潰すためにやったことだ」
ソフィア「ど…どっちにしてもあたしには…」
ソフィア「嬉しかった」
ソフィア「あたしには」「何のお礼も出来ない」「……けど」
ショウ(振り向く)→(足音)
ソフィア「ショウ!?」
ショウ「恩に感ずる必要はない」(背中)
ソフィア「あたしがっ……その……」
ソフィア「戦闘用に強化を受けた……身体だから?」(抱)
ソフィア「確かにあたしはあの鞭……」
ソフィア「クラースヌイ・ブーリファを手にすると人格までもが変わってしまう」
ソフィア(回想)
ソフィア「けれど…」
ソフィア「けれどそんな我が身を今まで何度呪ったことか……」
ショウ(手を解く)
ショウ「普通の女性(おんな)としての自由を望み続けていたのではないのか?」
ソフィア(座)
ショウ「その自由がその手の届くところまで来ているというのに」
ショウ「つまらん感情に囚われて」
ショウ「血塗られた私の手を取れば全てがムダになってしまう」
ショウ(退室)
ソフィア(座)
ソフィア「(そんなものじゃ……ない)」「(決して)」
ソフィア(俯いた顔を上げる。その目線の先にはテーブルの衣類の上に置かれた鞭)
ソフィア「(あの男(ヒト)をどうしても追うのならば)」
ソフィア「(もう一度クラースヌイ・ブーリファを手にしなければ……)」
ソフィア「(けれど)(それは)(自由との決別!!)」
ソフィア(鞭を手にする。投機が立ち昇り、バトル・コスチュームが形成)
168
:
【SHO】
:2021/01/05(火) 23:21:06
(夜のスラム街)
ショウ「何の用だ」
エイジ・シンジョウは順調に勝ち続けています
それよりも、いよいよ結社の幹部
特にウラヌスだけが何か行動を起こそうとしているのが気にかかると……
ショウ「情報収集など頼んだ覚えはないが…」
存じています
これは私が勝手にやっていることです
ショウ「好きにしろ」(退去)
ええ、好きにさせてもらいます
あなたがいかに険しい状況を選ぼうと
私も出来る限りあなたに近い道を進む……
彼女(ソフィア)も多分……(月明かり)
169
:
名無しさん
:2021/05/05(水) 15:06:36
「私に興味が出てきたみたいね」
「だとしたら、こんなバカげた戦いを続けることもないわ。約束は果たしたのだから」
「私は、あなたの目に止まることができた」
「自分の吐いたセリフ位憶えているわよね」「ガイア」
「来い」「ソフィア」
「貴様は組織によって造られた人間兵器」「我が手中におさまることが貴様の運命」
「プロジェクトリーダーだった貴様の母親に連れ去られることで」
「一時は中断していた計画だが……」
「実験体自らの意思で戻って来るとはな」
「どうだ、我が組織に与えられた力」「ここまでの戦い」
「勝ち残ることはたやすいものであったハズだ」
「…………」くっ「私の過去なら」「それが私の追い求めていたものなら」
「受け入れる覚悟はできている」
「だけど」
「母をまきこんでいたことは」「許さない」
「コール・ミー・クイ――ンッ」
「…………」「おろかな」
「何ッ」
「我にキバをむくなら」「貴様などに用はないわ」「死ね」
170
:
名無しさん
:2021/05/11(火) 22:35:09
>>127-129
>>136-138
「く…くそっ! スキがねえっ!」
「ホホホホッ! どうしたのっ?」
「手も足も出ないのかしら、ボウヤ? サンダー・リング!!」
「ぐ…っ!」
闘気の雷撃がエイジの太刀に当たり、鈍い音を立てる。
「触ってもいいのよ」
171
:
名無しさん
:2021/05/13(木) 00:01:32
>>168
「だけど、母を巻きこんでいたことは」
ソフィアの瞳に力が
「許さないっ!」
ソフィアは、持てる闘気を全て解き放った。爆発的に上昇した闘気が青白い光の粒子となり、ソフィアの周囲を包みこむ。フィアの
「コール・ミー・クイ――ンッ!!」
高速で回転しながら舞い上ったソフィアは、空中からガイアを狙う。
いきなりの大技だったが、それがガイアに届くことはなかった。ガイアの両腕が伸び、ソフィアは、なすすべもなく捕らえられる。
「な…っ!? く…ううっ!?」
秘伝必殺技をたやすく見切られ、身動きの取れないソフィアに、ガイアの無慈悲な死刑宣告が下る。
「愚かな。我に牙を剥くなら貴様などに用はないわ。死ね」
ガイアの上体がのけぞる。闘気が高まる一瞬のタメ。
「水の青(ツィンサイ)」
「っ…あ…、 きゃああああっ!!」
鞭でガードする間もなく、ソフィアは闘気の濁流に呑まれる。ソフィアの体は力なく吹き飛ばされ、リングの床に叩きつけられ、2度3度とバウンドして地面を転がる。
「く…、うぅ…っ……」
たった一撃でボロ雑巾同然となったソフィア。
あまりのダメージに身動きすらままならないソフィアに、鎧を鳴らしながら、ガイアの巨体がゆっくりと近づいてくる。
172
:
名無しさん
:2021/06/15(火) 22:23:15
●ロンドン場末の酒場にて。
ショットグラスを手にしたまま、カインは体を震わせた。
根本から先端まで何度も舐め上げては、
「ぐ…、すげえ乳圧……っ!!」
「あはっ、いっぱい出たぁ」
●四方八方から
「どうする?」
「出来損ないは」
「壊しちゃお」
ダメージで身動きの取れないソフィア屍肉を求めるハゲタカのように群がってくる。ソフィアの体中をついばむ。
絶頂を迎える間際に、ソフィアの中で、何かが弾けた。
「はあああああっ!!」
クピードーのイージスウォールによく似た技。闘気による攻防一体の光の壁は、
金色の刺繍の入った帯
「しぶといじゃない」
「でも、まだ回復しきってないようね」
●スリーブレスレオタード、あるいは競泳水着のようなハイレグのボディスーツに、ロンググローブとサイハイブーツの組み合わせ。ミルクのような肌と黒光りするコスチュームが、煽情的な色香を放っていた。
173
:
名無しさん
:2021/06/15(火) 22:29:16
「私の唇はこんなに安くないわよ」
「(こいつ…っ! さっきから胸ばっかり…!)」
「(早く…! 早くっ! イきなさいっ! この雑魚ち〇ぽ!!)」
174
:
名無しさん
:2021/06/17(木) 23:37:34
「ソフィアちゃんのオ〇ニーが見たいなあ」
「ねえ、ここでオ〇ニーしてよ」
「じゃあ、こっちも気持ちよくしてくれる?」
おもむろにズボンのチャックを開け、〇〇を取り出した。
「(臭くて汚らわしいものなのに…なんで……)」
「こいつらのぶんも相手してくれるってよ」
バストサイズ90を超えるGカップの胸を揺らしながら、ソフィアは夜の街を走る。
白濁した粘性の液体を浴び、ソフィアは
白く濁ったどろっとした液体
「貴男、ソフィアとこの店でHしたそうじゃない」
「どちらが貴男のご主人様か、わからせてあげますわ」
パンプスでぐりぐりとしごき上げる。
「足だけで十分よ」
「エイジ…っ、お外で仲なおりのいちゃいちゃえっち、シよ?」
175
:
名無しさん
:2021/07/06(火) 20:24:24
低身長で童顔のエリスだが、その踊り子のコスチュームの下には
意外にも肉付きの良いふともも
すべすべとした血色の良い健康的なふとももで挟み、
「お姉さま、正気に戻っ……あんっっ!」
「(どうしよう…! お姉さまの鞭、いつもより気持ちいい…っ!)」
「お姉さま…! 捕まえた…っ!」
「お姉さまのココ、苦しそう」
「いっぱいヌいて楽にしてあげる」
176
:
名無しさん
:2021/07/08(木) 23:42:54
>>149-152
「また会ったわね、オリジナル・ソフィア」
ソフィアが鞭を振るよりも早く、
猫のように、静かに、しなやかに
強引にふりほどき、ハイキックを一閃。
177
:
名無しさん
:2021/08/03(火) 21:59:17
「私の鞭は、風をも切り裂くのよ」
「おわかりかしら? き・し・サ・マ?」
「くっ…! 色香に、迷ったか……っ」
片膝をつき、剣を杖の代わりにして立ち上がろうとする。
ソフィアはデュークの首に手を回し、胸元に抱き寄せる。
大きく張り出した乳房で、デュークの後頭部を包み込む。
178
:
名無しさん
:2021/08/11(水) 22:10:33
◆フランスの中世、石造りの古城
◆ランバート領、ランバート家、ランバート城
◆中世ヨーロッパの伝統的な様式
フランスの田園地帯、旧ランバート領。
旧領主家として、中世より伝わる古城を代々の居城としていた。
闘技場に、風を切り裂く音と、打撃音が響き、くぐもった男のうめき声が響く。
プレートアーマー姿の騎士が、大剣を杖代わりにして、辛うじて立っていた。
鞭の先端に仕込まれた鋼鉄の錘が、デュークの首筋を
「オーロラレボリューション!」
独楽のようにローテーションし、遠心力で刃となった
大剣でガードする。最初の数発は耐えたが、やがて耐えきれず、ガードを突き破られ、何度もヒットする。
断末魔の悲鳴を上げ、きりもみ状に回転しながら吹き飛んでいった。
二の腕で両側から乳房を挟み、谷間を強調するように前かがみの姿勢を取ってみせた。媚びるような上目遣いで、
騎士家に代々伝わる武技も、戦闘用強化人間のパワーの前には勝てない。
傷つき、
デュークの姿は、ソフィアにとって、とても愛しいものに見えた。
「おっぱいには、ヒトを癒す力があるの」
179
:
名無しさん
:2021/08/12(木) 22:10:21
「ジ・エン……がはっ! うぐっ!」
フランスの田園地帯を中世より見守り続けるランバート城。
その、石造りの古城では、乾いた破裂音と、くぐもった男のうめき声が響いていた。
デルニエ・ヴァンクールに青白い闘気のオーラを纏わせ、回転して勢いをつけ、上段から一気に振り下ろす。
側転で回避し、
------------------------
中国の奥地、雲海の上のリングに、ソフィアは立っていた。
リングの上で、ソフィアは、ホー・ファイと向き合っていた。
モデル立ちのような姿勢で、ホーを見下していた。
ボロ雑巾同然となった白髪の小柄な老人
鞭で、足技で
「サンダーリング!」
闘気の精神エネルギー
------------------------
ソフィアの肩に、カインのカカト落としが
「うぐ…ぁ……」
苦痛に顔を歪め、呻き声を漏らす。
「オーロラレボリューション!!」
新体操かフィギュアスケートのように、足の爪先を軸にして高速でスピンする。
竜巻となり、
------------------------
マスター
180
:
名無しさん
:2021/08/19(木) 22:42:39
淫魔を相手に、性技で勝負を挑んでしまったことを
「ダークネス・イリュージョン!」
激しく痙攣しながら、
「やっと起きたのね、お寝坊さん」
そこには、かつて、ソフィアと闘った者たちがいた。
そして、誰もが変わり果てた姿となっていた。
モリガンが、四つんばいになったアイヴィを椅子代わりにしていた。
いろはが、
手足を鎖で縛られたかすみとあやねが、狂ったように互いを貪りあっている。
聞きなれた艶声は、エリスが、リリスに騎乗位で侵されていた。
181
:
名無しさん
:2021/08/23(月) 21:07:20
>>148
>>172
童顔低身長のエリスだが、ロリっぽい見た目に反して着やせするタイプであり、コスチュームに隠されたむっちりエロロリボディが露わになっていた。
183
:
名無しさん
:2022/03/11(金) 20:38:46
【まえがきという名の作者の独り言】
2022年3月11日、11年前と同じ金曜日
例の震災が起きたのは、昼休みが終わって午後の業務がはじまり、
「再来週に寮を追い出されるから、この週末でアパート決めないとマズいなぁ」
なんてボーっと考えているときのことでした。
あれから11年、転勤を繰り返して、何年かぶりに当時の職場に復帰しました。
発災時にいた建物は、最近、老朽化のため解体撤去されてしまいましたが、
――確かに、あのとき俺はそこにいたんだ。
そして、
「整備俺と操縦俺と」を最初に投稿してから、今日でちょうど10年が経ちました。
185
:
名無しさん
:2022/03/11(金) 20:40:53
1955年夏、扶桑国。
国防空軍の教育部隊が数多く所在する浜松基地では、今日もJ56型魔導ターボジェットエンジンの喧騒に包まれていた。
遠州名物の強い西風を受け、飛行学生の航空ウィッチが離着陸を繰り返す。
「(あれから10年。昔の記憶の、そのまんまなんだよなぁ)」
正門(南門)から基地に入って、左手には第1航空団司令部庁舎があり、
奥に向かって第1術科学校本部庁舎、第2術科学校本部庁舎、そして大正時代に建てられた木造の平屋建てがある。
旧陸軍時代は爆撃機搭乗員の教育講堂として使われており、現在は資料館として使われている。
186
:
名無しさん
:2022/03/11(金) 20:41:48
1術校本部の裏には南隊員食堂があり、
【10年前の2011年】4月〜7月の間、1術校の航空機整備幹部課程に入校していた頃も、朝昼晩はこの幹部食堂で世話になっていた。
【あちらの世界】では、戦後の米軍駐留時代に建てられたものだと聞いていたけれが、
こちらの世界でもリベリオン軍の援助で建ててもらったらしい。
そういえば、あちらの世界にいた頃、当時の1術校長は吉川将補で、
鳴海章の原子力空母信濃シリーズでは信濃飛行隊の整備隊長をやってた人だったな。
いけない、話が脱線した。
187
:
名無しさん
:2022/03/11(金) 20:43:50
「うーしーお渦まーくー、遠州なーだーにぃー」
残業を切り上げ、浜松航空隊歌を口ずさみながら団司令部庁舎の向かいにある厚生センターへ向かう。
2階の図書室の横には公衆電話が設置されており、昔馴染みに電話をかける約束をしていた。
国際電話のダイヤルを回し、交換を経由して相手を待つ。
北欧のスオムスにいる昔馴染み。
10年前、第501戦闘航空団がブリタニアに展開していた頃、ひょんな事から兄妹みたいな間柄になっていた人物だった。
――スオムス空軍のエイラ・イルマタル・ユーティライネン。当時はまだ少尉だった。
扶桑時間で今は19:30。
スオムスとの時差は7時間だから、向こうは昼飯食い終わったぐらいの時間のハズだ。電話する時間帯はあらかじめ電報を打ってある。
ああくそっ、インターネットや携帯電話がないのは不便だ。
188
:
名無しさん
:2022/03/11(金) 20:44:32
何度かのコールのあと、懐かしい声が聞こえてきた。
「よう、イツル」
「久しぶりだな、にーちゃん。元気そうダナ」
「そっちもな」
「手紙読んだゾ、もう産まれたのカ?」
「ああ。女の子だ」
「名前は?」
「伊鶴(イツル)。イロハニホヘトの伊に、鳥の鶴という意味だ」
「…あのなア、私の呼び名から取ったのカ?」
「まあな、それもある」
エイラの愛称はイッルと言うのだが、俺は上手く発音できなくて、イツルと呼んでいた。
俺は34歳で、イツルは26歳。お互い歳をとったよなぁ、とつくづく思う。
189
:
名無しさん
:2022/03/11(金) 20:45:06
「サーニャさんの要素も入れてるぞ」
「サーニャ? どこに?」
「鶴だ。オラーシャ語でジュラーヴリク。あの国では女の子を指す言葉だろ?」
「で、サーニャも小さい頃にはそう呼ばれてたんじゃないか、って?」
「そんなところだ」
「いつか会わせろヨ」
「ああ。欧州にもまた行ってみたいしな」
「ヒガシによろしくナー、あと扶桑のみんなにもナ」
「ああ。そっちも、サーニャさんによろしく」
――――
――
―
190
:
名無しさん
:2022/03/11(金) 20:46:51
はは、良い時代だ。本当に。
今の扶桑は戦後復興の最中でまだ貧しいけれど、どん底から上っていく途中だ。
焦土から這い上がって、世界2位の経済大国まで上り詰めていく時代だ。
俺が定年するまであと15年ぐらい。
史実通りなら、ニッサンから箱スカとS30Zが発売されるタイミングと重なるので、
退職金で4ドアの箱スカGT-Rを買って、フルオリジナルのまま乗りたいな、と思う。
で、L型エンジンのS30Zかスカイラインの中古が安くなったら、程度の良い個体を何台か仕入れて、
レース仕様に改造したり、オリジナルコンディションを維持するのも良い。
シャーリーさんに頼んで、スカイラインと輸出仕様のS30Zを交換してもらうのも良いなぁ、L28積んでるヤツ。
どうせオイルショックで一度はゴミ同然の価値になるんだ。それを子供が受け継いだら、ちょっとした財産になっちまうんだよなぁ。
191
:
名無しさん
:2022/03/11(金) 20:47:45
あ、そういえば。
俺の親父が1957年、お袋が1962年の生まれだから、俺の長女は俺の親父よりも少し年上になるのか。
だけど、浜松から名古屋に行って、俺の実家を探そうという気にはなれない。
こういうパラレルワールド物では、祖父母あたりが既に亡くなっているというのがお決まりのパターンだ。
それを見るのが怖い。
シュレディンガーの猫ではないけれど、こういうのは知らないままでいる方が幸せに違いない。
いけねぇ、頭の中がどんどん変な方向に走ってゆく。
今日はもう帰ろう。
嫁が――ケイが伊鶴と退院してくるまで、あと1週間だ。
192
:
名無しさん
:2022/03/11(金) 20:48:27
【あとがきという名の作者の独り言】
作中の1945〜1955年の間に何が起きたか、設定も作ってあるので近々投下予定。
アフ魔編とか劇場版編とか外伝的なモノもちょこっと書いたけど、
肝心の本編が完結しないままフェードアウトして一体何年経ったのやら。
(荒らしのターゲットになったのが2014年頃だったかな? それでモチベ無くして放置)
そういえば、あの頃はまだ民主党政権が続いてて、安倍政権になる前でしたね。
スマホはだいぶ普及していたけど、SNSが今ほど普及していなくて、
YouTubeやらVTuberやら、艦これとかウマ娘もまだ世に出る前の時代でしたね。
アメリカの25年ルールもまだ知られていなくて、R32GT-Rも100万円前後で買えた時代だったなー。
あの頃は、80〜90年代のスポ車がまだ手に入れやすい時代でした。
197
:
ショウ編(1)
:2022/11/22(火) 23:05:14
闘神大武会。
それは、何年かに一度だけ開催されるという闇の武道大会。
その大会には、とある秘密結社が関わっており、真の強者を選び抜くためのものだと噂されている。
決して表社会に出ることがない格闘トーナメントを勝ち抜き、大会主催者との死闘を制したのは、凛々しくも美しい金髪の女戦士だった。
深海の幻想的な闘技場の空間に、女王様然とした高笑いが反響する。
心縛る妖艶の鞭、風裂きのソフィア。
長い金髪をポニーテールに結び、ハイレグカットのボンデージスーツに、ロンググローブとサイハイブーツの組み合わせ。革製の長い鞭を自在に振り回し、美脚から放たれる足技で闘うソフィアの姿は、まさに女王様そのものであった。
198
:
ショウ編(2)
:2022/11/22(火) 23:06:02
ソフィアの金髪は所々が煤け、そのボンデージスーツは所々が破れし、白磁の肌に刻まれた様々な傷あとが、闘いの烈しさを物語っていた。豊かに実ったおっぱいと尻たぶには、手荒く執拗に揉みしだかれた跡がくっきりと残っている。ハイレグの股布から浮き出た割れ目から絶対領域のふとももまで、様々な体液が混じりあってぬらぬらと光っていた。
ソフィアが闘神大会に身を投じたのは、自らの失われた記憶を取り戻すため。
だが、最終決戦に勝利しても記憶を取り戻すことは叶わず、ソフィアの心には虚ろな哀しみだけが残っていた。張りつめていた糸が途切れるように、高笑いは徐々に張りを失い、ソフィアの傷ついた躰はゆっくりと崩れ落ちてゆく。
薄れゆく意識の中で、ソフィアは誰かに抱きとめられていた。
懐かしい匂いと、どこか守られているような安心感を覚えつつ、ソフィアの意識は白く染まっていった。
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