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下書き

116幸平@管理人:2019/02/23(土) 21:40:01
「君、本当、マニアックなとこばかりに行くよねえ」
 航空自衛隊戦術教導団飛行教導群(アグレッサー)整備隊本部で、和田3佐が口許を微かに引き攣らせながら言った。
「ええ、まったく」
 半笑いの整備統制(メンコン)班長、和田3佐につられるように、俺も苦笑いしながら答えた。
「でもさ、ウチよりも、最初に第6航空団(ろっくうだん)の装備部と整備補給群(せいほぐん)に行かなあかんやろ。これから死ぬほどお世話になるんだから」
「そりゃそうですけど、気が重いっすよ」
「うん。気持ちは解らんでもないけどさ」
 小松で最初に和田3佐のところへ挨拶しに行ったのは、単純に、和田3佐が話しやすい先輩だから、という理由だった。
「で、君は、技術研究本部(ぎほん)で、例の無人機の整備なんだっけ?」
 和田3佐は、声のトーンをひとつ落とした。そのとき、俺は、自分自身の新しい仕事をよくわかっておらず、曖昧に頷くしかなかった。

 日本海に面する石川県小松市。航空自衛隊小松基地に所在する、技術研究本部特別技術研究室小松試験場。そこで試験運用されている無人戦闘機の整備班長というのが、俺の新しい配置先だった。
「まあ…、色々お世話になると思いますんで、よろしくお願いします」
 俺は、和田3佐に軽く頭を下げて退出しようとしたところ、和田3佐は半笑いのまま付け加えた。
「それがねえ、僕、君のお世話、したくても出来ないから」
「へっ?」
「僕、8月1日付(はってんいち)で入間に転出だから」
「ガッデム! ガッデェェェム!!」
「……君ぃ、その口癖と、中指立てる癖は、いい加減やめといた方がええで…」
 最後に和田3佐とコントめいたやりとりをしたあと、俺は飛教群の庁舎を辞した。飛行教導群は、新田原基地から小松基地へと移転事業を終えてから日が浅く、その航空機整備部門を現場で取り仕切っていたのが和田3佐だった。小松基地での整備業務が軌道に乗ったところで、入間基地の中部航空方面隊(ちゅうくう)司令部の装備部にご栄転、ということだった。
「(畜生、6空団と上手くやれなかったら、中空司の和田さんに泣きついてやるからな…!)」
 俺は、心の中で毒づきながら、6空団司令部へ挨拶回りに向かったのであった。


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