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フレイ様人生劇場SSスレpart5〜黎明〜

1迷子のフレイたま:2004/03/02(火) 22:57
愛しのフレイ・アルスター先生のSSが読めるのはこのスレだけ!
|**** センセイ、          ・創作、予想等多種多様なジャンルをカバー。
|台@) シメキリガ・・・       ・本スレでは長すぎるSSもここではOK。
| 編 )    ヘヘ         ・エロ、グロ、801等の「他人を不快にするSS」は発禁処分。
|_)__)   /〃⌒⌒ヽオリャー     ライトH位なら許してあげる。
|       .〈〈.ノノ^ リ))    ・フレイ先生に信(中国では手紙をこう書く)を書こう。
        |ヽ|| `∀´||.      ・ここで950を踏んだ人は次スレ立てお願いね。
     _φ___⊂)__
   /旦/三/ /|     前スレ:フレイ様人生劇場SSスレpart4〜雪花〜
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|. |    http://jbbs.shitaraba.com/bbs/read.cgi/anime/154/1070633117/
   |オーブみかん|/    
              既刊作品は書庫にあるわ。
             ○フレイスレSS保存庫 ttp://oita.cool.ne.jp/fllay/ss.html

              こっちも新しい書庫よ。
             ○フレイたんSS置き場 ttp://fllaystory.s41.xrea.com/top.html

304過去の傷・110:2004/04/17(土) 08:20
「ア、アスラン・ザラって!」
「聞いたことがあるのか?キラか?」
「あ・・・はい・・・」
フレイは初めて見た、この少年を・・・だがそれよりも気になったのは。
「その軍服って・・・」
それは見たことあった、ザフトであの怖い頬に傷のある少年と同じ服を着ていたからだ。
「俺は元ザフトだ、だがいまはもう違う、分かるな?」
フレイは下を向いて黙ってうなずく。
「俺とキラは幼なじみであり親友だ」
その言葉にフレイは顔を上げる。
「君とキラの間になにがあったかは聞いた」
黙ってフレイは聞く。
「だがもう終わったことだ、それとも君はいまでもキラを利用するつもりか?」
フレイは黙って首を横に振る。
「違う・・・違う・・・いまはキラが好き」
「そうか・・・だが君よりは俺の方がキラのことはよく理解しているつもりだ」
「私だってキラのことよく知ってる・・・」
アスランはそれには答えず出て行く。
「フレイ・アルスタ−、話せてよかった、ではラクス失礼します」
「はい、また」
「フレイ!」
カガリが飛び込むように部屋に入ってきた。
「カガリ・・・?」
アスランの方のは目もくれず真っ直ぐにフレイを見つめる。
「どういうつもりだ?今日も私の部屋で過ごすんじゃないのか?」
「カガリさん・・・」
「ラ、ラクス様・・・フレイは私だけの・・・もう私はアスランのことなど・・・」
「カガリ、全て演技だ」
「演技・・・?」
アスランは目を閉じると告げた。
「俺はお前を好きになったことはない、一度もな」
その言葉にラクスは微笑む。
フレイだけ一人わけが分からない様子だ。
「そんな・・・じゃあ・・・」
ラクスを見る。
「カガリさん、私はアスラン一筋ですわ、婚約も解消はずっとしておりません」
「なら私も白状する、フレイ・・・」
カガリに突然声をかけられて驚いたフレイ。
「え・・・?」
「フレイ、私は初めて見たときからお前のことが・・・」
「カガリ・・・?初めて見たときから・・・?」(それって・・・ア−クエンジェルに所属していてキラを利用していたときだわ・・・どういうこと・・・?)
カガリはうなずく。
「ああ、お前可愛くて」
「・・・カガリだって可愛いわよ」
「そうか!?」
「ええ」

カガリが出て行くと。
「じゃラクス、今日は一緒に寝るわよ」
「はい」
(キラ・・・カガリ・・・私は)

305私の想いが名無しを守るわ:2004/04/18(日) 09:56
書き込みテスト

306私の想いが名無しを守るわ:2004/04/18(日) 09:56
もいっちょテスト

307ミリアリア・あの子許せない 作者:2004/04/18(日) 18:52
現在、今まで可能だったはずの長い文章が書き込めません。とりあえず、感想のみ上げさせていただきます。

>>過去の傷
そう言えば、ミリィ、いつ仕事しているのかと思ったら、代わりにダコスタ君が…… いいのか? CICの席なくなるぞ。
フレイ様、アスランと対面、とりあえずは挨拶まで。しかし、カガリは、本当に百合?

>>The Last War
ネメシス・フレイ様とカガリのドタバタですか、これは楽しみです。『The Last War』も期待してます。

>>流離う翼たち
アルフレットさんって、なにか言いにくいのでアルフさんでもいいですか。
アルフさんの、スポーツの有名監督みたいな人を育てる実績で、外野は盛り上がっているようですが、
ここまで、約束されていると、ちょっと天の邪鬼に感じてしまいます。フレイ様、成長するにしても、
型にはまらずアルフさんを振り回すくらいして欲しいな。
ナタルさんとキース、こちらはどうなるのでしょう。キースのこと、かなりショックだったでしょうし。

308流離う翼たち・459:2004/04/18(日) 22:39
「どうしても、聞きたい?」
「はい」

 淀みなく返してくるナタルに、キースはどうしたものかと視線を落とした。

「・・・・・・もう少し待ってくれないかな」
「何故です。私には聞かせられないことなのですか?」
「いや、いつかは話そうと思ってた。ただ、俺の素性を話してしまうと、色々と困る奴も居るんだ。こうなった以上、他にも話しておかないといけない奴が居る」
「それは誰なんです?」
「・・・・・・・・・カガリと、キラだよ」

 それだけ言うと、キースはナタルの脇を抜けて部屋を出て行こうとした。その背中にナタルが声をかける。

「何時まで待てば宜しいので?」
「そうだな、多分キラもアズラエルの話で俺に疑問を感じてるだろうし、早い方が良いだろう。明日にでも俺の家で話そう」
「そうですか、分りました」

 キースはナタルに背を向け、部屋から出て行った。それを見送ったナタルは小さく嘆息すると、なんだか不安そうに両手で体を抱きしめ、壁に寄りかかる。こんなに不安な気持ちになったのは初めてだ。

「キース、貴方は、本当に何者なんです。私は貴方を信じて良いんですか?」

 これまでずっと信じてきたし、実際キースは自分達を裏切ったりしなかった。だが、今のキースは得体が知れない。これまでずっとちょっと変わった、凄腕のパイロットとしか思っていなかった。ブルーコスモスだといっても、それは過去の事だと割切っていた。実はマリューに一度相談したこともあるのだが、その時は笑って考えすぎだと言われてしまった。

「馬鹿ね、知り合う前の事なんか気にしてたら、何でもかんでも疑う事になるわよ」
「ですが、その、不安なんです」
「何が?」

 マリューの問いに、ナタルは答え難そうに顔を俯かせている。だが、その顔色が真っ赤だったり、もじもじと膝をすり合わせていては口にしなくてもマリューにはハッキリと伝わっていたりする。
 マリューはまさか戦艦の中で、それもナタルから恋愛相談を受けることになるとは夢にも思っていなかったのだが、それがこんなハイスクールかそれ以下のレベルの相談事とは更に思っていなかった。
 だからマリューは、表面平然と、内心では大爆笑していたりするのだ。

「ナタル〜、1つ聞きたいんだけどさあ」
「な、何ですか、艦長?」
「もしキース大尉に、別れた女性が10人いたとか言ったら、どうするの?」
「な、ば、馬鹿な、フラガ少佐ではあるまいし、そんな事はありません!」
「あらあら、どうかしらね〜。キース大尉だって男なんだし、女性関係の10やそこらはあるかもよ。なにしろフラガ少佐と長い事一緒にいたんだし」
「まさか、そんな事は・・・・・・・・・・」
「ナタル〜、お姫様チックな夢も良いけど、そろそろ現実を見ましょうね」

 まあ、こんな感じでからかわれたのだが、それでもマリューは色々と教えてくれはした。だが、どれだけ教えてもらおうがいざとなると不安が拭えない。それも、女性関係どころか、相手が人間かどうかという問題なのである。まさか、自分がフレイのような問題に直面する日が来るとは思ってもいなかった。

309流離う翼たち・作者:2004/04/18(日) 22:44
>> 過去の傷
アスラン、流石に演技というのはどうかと。
まあ去年まで付き合ってたカップルが久しぶりに会ったら別れてたってのは良くあるけど
でも、やっぱり同性愛は不毛ですよ、カガリさん

>>307
別に略称は構いませんよ。奥さんはアルと呼んでますし
アルフレットさんはキースとは接し方がまるで違いますよ。フレイ様がそこで何を見つけるかは、もう少し後で。

310ミリアリア・あの子許せない 91:2004/04/19(月) 03:44
第2部 7.ミナシロのこと覚えてる? 8/12
[真っ先に、ここへ連れて来ようと思っていたんだよ]

結局、夕方になっても、捜している、あの子は見つからなかった。私達四人は力なくミナシロの
市街地を歩いていた。

「ごめんね、キラ、トール、カズイ。いろいろ引っ張り回しちゃって。私、もうあきらめる」
私はみんなに謝った。あきらめるには惜しい買い物だったけど、仕方ない。縁が無かったことに
するしかない。

「ミリィ、いいのかい?」
「いいの、もう帰ろう、家へ」

残念そうなキラの言葉に、私はしょんぼりと頷いた。
「本当は、港の夜景も見たかったけど、もういい」

せっかく、ミナシロにキラと来たのに、私は、何してたんだろう。後悔の念がもたげて来る。
元は港の夜景をキラと二人で見たかった。でも、どんどん話が変な方向に行ってしまった。

「そうだな、おなかも減ったし。金も無いし」
「俺も、撮影旅行の予定組み直さなくちゃな」
「そうね、ごめんトール、カズイ」

あきらめて、三人、駅の方に歩きだそうとした時キラは言った。

「ミリィ、みんな。もう一つだけ寄って行こうよ」
「え、どこ?」

「ここだよ」キラは、すぐ隣の建物を指差した。
「ミナシロPARKS、できたばかりのアミューズメント施設。いろんな公園が階層上に
 積み重なっている。港だって、ここから見えるよ」

そこは見上げると、都会のビルの上に、緑の木々が幾重にも、生い茂っているような不思議な建物だった。
今にも沈みそうな夕日を受けて、それらは赤く色づいてる。

キラは建物の入り口の幅の広い階段に向かって行った。そして、階段の端にあるエスカレーターで
登って行く。私達も後に続く。上がってみると、そこは建物の上なのに、緑に囲まれた公園が広がっていた。
ベンチに座ったアベックや親子連れが、次第に落ちて行く夕日を眺めている。私達も、それに見とれた。

上の階へ上がるたびに、趣の異なった公園があり、やがて日が落ちて夕闇に色を変えて行く空と、
次々にライトアップされていく公園の噴水などの施設が幻想的に溶け合って、まるで異世界に
入り込んだような感じを私達に与えていた。トールは関心したように辺りを見回している。
カズイは三脚を出してデジカメで夕日とライトアップが、刻々と、その色合いを変えて行く様を
写真に記録している。

「いいね、ここ知らなかった」私はキラに呟く。
「本当はね、今朝、ミリィにミナシロのこと案内してと言われた時、真っ先に、ここへ
 連れて来ようと思っていたんだよ」

私は、そんなキラの瞳に吸い込まれそうになった。いつもは、子供っぽくて、好ましく思わない
キラの肩にとまったトリィさえ、夕日に染まるキラの顔に映えて、私は心臓の鼓動が高まった。

「ミリィ、あそこにサイがいるぞ」
トールの呼ぶ声に、私はハッとしたように振り向いた。サイが公園の片隅にあるベンチに
一人で座っている。顔は、なにか虚ろだ。私達はサイのところまで駆け寄った。

「サイ、どうしたの?」 私が話しかける。
「デートは、どうなったの?」 とキラ。
「彼女はどうした」 とトール。
「サイ、大丈夫?」 カズイは、サイを気づかうように言葉を掛ける。

サイは、呟くように答えた。サイの左頬は叩かれたような後が少し残っていた。

「やあ、君たちぃ。俺って、悪かったのかな。俺は、俺はさ。相手を理解しようと勤めているんだ。
 例え、どんなことでも、それはそれで彼女の一部なんだから。だから、俺は悪く無いだろ。
 別に隠さなくても構わないよって言ったんだ。それなのに。それなのに、違うって言い張って、
 意地でも否定して…… 俺は悪くない。悪くないぞ」

言っていることが、さっぱり分からない。

「だからって…… だからって、勝手に怒って…… なんでだよ。
 いいんだよ…… 別にいいんだよ。別に特殊でも、趣味は趣味なんだから。
 そんなこと言ったら、俺の趣味なんか、どうなるんだよ」

サイの趣味って一体何? 恥ずかしくて隠すような趣味あったっけ? それは、それで興味あるけど
ともかく、サイはどうしたんだろう? なんか壊れてる……

311ミリアリア・あの子許せない 作者:2004/04/19(月) 03:54
ようやく投稿できました。書き込みフォームが、なにかシステム変更になって、制限がかかっていたのを、
サポートが設定変更して緩和してくれたそうです。一応、これで今まで通りの分量が送信できます。
したらば様、ありがとうございました。

>>流離う翼たち
キース君、わざわざキラとカガリを指定するということは、螺旋の回廊をやる気ですかな。
しかし、マリューさん、ナタルにアドバイスする(これ事体が信じられないが)のはいいけど、
主題が違ってますよ。フラガ少佐との味勝負で頭の中が恋愛モードに染まっているのか。

アルフさん、オフィシャルの愛称は「アル」ですか。うちでは、大物の「アル」がいるので、
済みませんけどアルフさんにさせてください。

312過去の傷・111:2004/04/19(月) 08:31
「ラクスってなんだか暖かい」
「そうでしょうか?」
「ええ、ほんとに」
ここはシ−ツの中である・・・フレイとラクスは同じシ−ツで寝ていた。
(サイ・・・サイはもう私のことを嫌いはじめている・・・でも悪いのは全て私、私の行いがサイをあんなふうにさせた)
サイをあそこまで追い詰めたのは私・・・。
「サイ、ごめんなさい・・・ごめんなさい!!!」
「・・・・・・泣きたいですか?」
そのフレイの様子をラクスが覗き込む。
「泣きなさい、泣きたいときは泣けばいいのですよ」
ラクスはフレイに微笑む。
「ラクス・・・うう・・・サイ、ごめんなさい!ごめんなさい!」
フレイはラクスに抱きついて泣いた、思う存分泣いた。
その二人をカガリがドアの外から聞き入ると、嫉妬の眼差しで見つめていた。

その数時間後。
「じゃあ、エタ−ナルでラクスさんにも手伝ってもらって式挙げようね、キラ?」
「・・・・・・」
「私達こんなに愛し合ってるんだもの、大丈夫よ」
そう私だって少しはキラのこと好きよ、決めた、キラのことト−ルって思うことにするわ。
さあてあとでシャワ−でも浴びようかしら。

シャワ−室に入ったミリアリアは・・・。
(ふう、気持ちいいわ・・・)
そしていい偶然でもあった、赤い髪の少女も入ってきたのである・・・。
「・・・・・・」(フレイ・・・)
「・・・・・・」(キラを取ろうとしている悪女ミリアリア・・・)

313過去の傷・112:2004/04/19(月) 12:07
「・・・・・・」
「・・・・・・」
無言でシャワ−を浴びている二人。
フレイはパックまでしている。
ミリアリアは思った・・・なんなのこの感じは?罪悪感?この子に対して?この子からキラを奪い取ッたことに対しての?
ミリアリアは首を振った。
違う!私は悪くない、私に取られたフレイが悪いのよ、だいたい私に取られるってことはそれだけフレイのキラに対する気持ちはその程度のものだったのよ。
そんな女がキラと付き合う資格はないわ。
私は着替えると黙ってシャワ−室を出た、フレイとは一言も話さなかった、いえ話したくもなかった、フレイだって同じ気持ちだろう。

一時間後、ラクスの部屋に戻ったフレイは。
「軍人はお続けになられるおつもりなのですか?」
「え?」
「貴女が軍に志願した理由はをキラ様を利用してキラ様自身と私を含めたコ−ディネイタ−全てに復讐するためなのでしょう?」
「それは・・・」
そういえばそうなのだ、キラに復讐するため、キラが死ねばいいと思った、キラの死を望んでいた、その為にキラを戦わせた、キラを道具として・・・紛らわすために女として接近した、キラと寝た、キラとキスもした。
ならいまの私は?いま軍人である私は一体なんなのだろうか?なぜいまだにこういうア−クエンジェルの軍服を着ているのだろうか?それは・・・キラが好きだから?キラの側にいたいから?軍人ならキラの近くにいられるから?キラのことは好き、それば事実、だけど・・・。
フレイはもう自分自身が分からなくなってきた。
そしていまさらだが後悔した、なんで私あんなことしたの?キラを酷く傷つけて、サイを傷つけて・・・なんで・・・。
私はなんて身勝手な女なんだろう、いつも自分のことばっかり考えて。
キラごめんね、酷く傷つけて、なにも見ようとしないで・・・ごめんね。
「フレイさん・・・」
ラクスが覗き込んでいた。
「ラクス・・・」
この女、悔しいけど可愛いわね・・・。
(俺には関係ない)
(関係を勝手に解消してきたのは君だろ!)
(君には関係ないだろ!)
サイの言葉を思い出す。
あんなに私に優しくしてくれたサイが・・・。
でも私は言い返すことが出来なかった。
そして私が気づかないうちにラクスを押し倒し覆いかぶさっていた。

314『明日』と『終わり』の間に・1日目:2004/04/19(月) 23:26
「よっ、フレイ!」
「あら、カガリ。今日はいつもより少し早いわね?」
「ああ、今日は大した仕事じゃなかったからな。どうだ?リハビリとか順調か?」

 ―――キラがオーブを経って大体1ヶ月。私はアイツに頼まれて、仕事の合間を縫っては入院中のフレイの見舞いに来ている。アークエンジェルにいた頃は、別に仲が良かった訳でもなかったから最初は渋々だったけど、こいつと話してるうちにだんだん仲良くなってきて、今じゃ自分から通うようになっている。ただキラの奴、下手に刺激するような真似はするなってやたら釘刺してたけど、あいつ何か私に隠してないか?まぁ、それは別に良いんだが。でも最近、こいつとの関係でちょっとした悩みを抱えてる。それは・・・。

「ねぇカガリ。またお願いがあるんだけど・・・」
「えっ!?」
「・・・何、その反応・・・?」

 そう、悩みとは他でもない。こいつの「お願い」のことだ。例を挙げていけば切りが無いけど、中でも一番酷かったのは茶色のかつらを被って一人称を「僕」に変えて欲しいってやつだった。私も最初は断ったんだが、結局その日は1日中その格好で過ごした。これから毎日その格好で来て欲しいと言われた時は流石に勘弁してもらったけど。
 それに、つい最近じゃトリィを伝書バト代わりにしてキラの元に手紙を届けようともしてたな。それを聞いてすぐにいなくなったトリィを探して大騒ぎになった(騒ぎ立てたのは私だけど)。ちなみにトリィはこの病院から500メートルぐらい離れた所にある木の上で迷子になってるところを無事保護された。
 つまり、こいつの「お願い」を聞いて私がろくな目に会わなかった試しが無い。・・・でも、だからといって断るのも可哀想な気もするし、しかもこんな病室に篭りっきりじゃ気分も滅入るだろうし、仕方ないか・・・。

「い、いや、何でも無い。で、頼みって何だ?」
「あのね・・・」


「は!?料理がしたい?・・・何だ、そんなことかぁ〜」
「・・・だからどーしてそんなに安心してるの?」
「悪い悪い。・・・でも、急にどうして料理なんだ?」
「ほら、私も自分一人で着替えとか色々出来るようになったじゃない?だからもっと色んなことをしてみたいって思うようになったの」
「ふ〜ん。・・・とか何とか言って、ホントはキラにでも食べさせてやるつもりなんだろ?」
「・・・カガリって、エスパー?」
「・・・お前、そう言う前に普段の自分の言動を振り返ってみろよ」

 冗談半分で言ったのに、図星だったのか。・・・まぁ、それだけ私もこいつのことが分かってきたっていう証拠か。

「・・・キラが私に会いに来てくれた時、私、お仕事が終わったらすぐに会いに来てって一方的に約束しちゃったの。それじゃキラに悪いから、せめてその時に私の手料理をご馳走したいなぁ・・・なんて」
「・・・そっか」

 ・・・今思えば、こいつの言う我侭は皆キラに会いたいっていう気持ちから来てるんだろうな。そういう意味じゃ、私も同じだな。はぁ〜・・・、アスラン、元気にしてるかなぁ?

「よし分かった、私に任せとけ!お前、私の家に来いよ。そこで私が料理教えてやるから」
「えっ、良いの?」
「ああ、病院の方には私から言っておくから。何、1日ぐらいなら何とかなるだろ」
「有難うカガリ♪私、頑張るわ!」

 ふふふ、あんなにはしゃいで・・・。キラ、私達やこいつの為にも必ず生きて帰って来いよ?

「ところでキラの好きな物、何だか分かる?」
「そうだな・・・。確かカレーが好きって言ってたな。まぁカレーならそんなに難しくも無いし、お前には丁度良いかな?」
「カレーね?分かったわ!・・・ところでカレーって、どんな料理?」

 ・・・まずそこから始めなきゃいけないのか?

315流離う翼たち・460:2004/04/19(月) 23:46
 翌朝、目を覚ましたフレイはベッドから起き、着替えをどうしようかと悩んだ。幾らなんでもここには女物の服は無いだろうし、もっていたらそれはそれで怖い。かといって昨日着てた制服はびしょ濡れで今日は着れないだろうし、本当にどうにもならない。仕方なく昨日借りたシャツを着て部屋の外に出る。すると、何だかベーコンの焼ける匂いが漂ってきた。

「あれ、食事?」

 どうやらまたアルフレットが料理をしているらしい。あれはちとダメージが大きいのだが、泊めて貰っている以上文句も言えない。とぼとぼと食堂に入り、椅子に腰掛ける。

「よう、起きたのか」
「はい、昨日はありがとうございました」
「ハムハムハム」
「なあに、気にすんな。ガキの1人くらい何でもねえよ」
「でも、迷惑かけました」
「モグモグモグ」
「まあ、さっさと食ってくれ。食ったら出かけるぞ」
「え、何処にですか?」
「むむむ、目玉焼きが見事な出来栄え」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 ようやくフレイは隣を見た。いや、さっきからいるのは分かっていたのだが、あえて無視していたのだ。そこには、連合兵士の制服を着た20過ぎくらいの女性兵が座って何故か朝食を食べていた。何というか、顔立ちの整った美人だ。

「あの、この人は?」
「おお、俺の部下で、セランだ。整備班の奴だよ」
「はあ、そのセランさんがどうしてここに?」
「ああ、お前の着替えを持って来てもらった。昨日の夜にちょっと走り回って貰ったんでな、こうして労を労ってる訳だ」

 アルフレットもテーブルに付いて自分のトーストを齧る。隣に座るセランという兵士は自分の方を見ると、右手で略式の敬礼をしてきた。

「セラン・オルセン軍曹です。少尉の着替えを手に入れてくるように少佐に命令されました。少尉の制服と下着は洗濯と乾燥をしてそこに置いてあります」
「あ、ありがとう」
「いえ、構いません。あ、自分のことはセラン軍曹と呼んでください」

 どうやらアルフレットが自分の生活を考えて手を回していてくれたようだ。だが、アルフレットは自分を何処に連れて行くつもりなのだろう。

 朝食を終えた3人はセランの運転する車で何故かマドラス基地へと向かった。フレイにしてみればアークエンジェルから離れられるならそれで良いのだが、基地に行くというのもなんだか気が引ける。アークエンジェルの中では顔見知りばかりだったから余り表に出ていなかったが、実はフレイは結構人見知りが激しい。味方と分かってはいても、知らない人と一緒に居るのはどうにも落ち着かないのだ。

316流離う翼たち・作者:2004/04/19(月) 23:58
>> ミリアリア・あの子許せない
サイが完全に壊れている。一体何があったんでしょうw
でも、これって諸悪の根源はミリィのような気が・・・・・・キラとトールも危ないか

>> 過去の傷
フレイ様の趣味って一体。何故に今度はラクスに・・・・・・

>> 『明日』と『終わり』の間に
が、頑張れカガリ、未来はきっと明るい、と思う
でも、何となく同情してしまう。でもトリィを伝書鳩代わりって、無茶だよフレイ様

317ミリアリア・あの子許せない 92:2004/04/20(火) 06:09
第2部 7.ミナシロのこと覚えてる? 9/12
[あった。私の捜し物]

虚ろな目で、ブツブツと呟き続けるサイに、トールとキラは頷き合う。
「とにかく振られたらしいな」
「そうみたいだね」

「君たちぃ!、俺は振られてなんていないぞ」
サイは、キラとトールに絡みだしている。カズイも、ヘリオポリスでは、あまり見たことが無い
サイの取り乱しようにビックリしている。

一歩引いて見ていた私の目に、サイから少し離れたところにあるゴミ箱に、見覚えのある紙袋が
入っているのが見えた。私は駆け寄ってみる。確かにそれは、間違って持って行かれた私の紙袋だった。
キラ達に隠れて紙袋を調べると、包みが破かれて中身を見た後があるものの、同人誌は、ちゃんと、
そこに有った。なぜ、ここにあるのかは分からないけど。

ひょっとしたら、あの持って行った子が、これに気づいて中身を見て、あまりの過激な内容に
ビックリしてゴミ箱に放り込んだのかもしれない。これ、その筋の人でないと正視できないような
シーン一杯あるもの。普通の人に、これ持ってるの知られたら品性疑われること必須。
もし、デートの最中だったら、破局の可能性大。私も気をつけないと。

とにかく、やっと私は捜しているものを見つけることができた。私の顔に笑みが戻った。

「どうしたのミリィ?」キラが呼んだ。

私は、同人誌を紙袋に戻して、みんなのところに戻るとキラに答えた。
「あった。私の捜し物」

「ミリィ、良かったね」キラが優しい目で言った。
「うん、キラが、ここに来ようって言ったおかげよ」

「え!見つかったって。良かったなミリィ。一体何だっ……」
トールの声は、絡んできたサイに打ち消された。

「悪くないぞ、俺はぁ、悪くないぞ! お月様のバッキャロー」
既に日は落ちて、輝きだした月に向かってサイは吠えだしていた。
私とキラは、そんな見慣れないサイの姿を見て、二人でキョトンとした顔を見合わせた。

やがて、キラが真面目な表情に戻って言った。

「ミリィ、屋上行こう。夕食おごるよ」
「そんな、悪いわよキラ」

「いいよ、捜し物見つかったお祝いだ」

「キラ、俺達もおごりか?」トールが目を輝かせながら聞く。
「ああ」キラは答える。
「やりぃ!」
「やった!」
トールもカズイも歓声を上げた。

「サイも行こうぜ」トールはサイに声をかける。
「サイ、奮発するから、美味しいもの食べて元気出して」キラが笑いかける。
「サイっ」カズイも優しい目で問いかける。
「サイ、行きましょう」
みんなの声に、やっとサイも立ち上がった。

屋上の公園。ガーデン・レストラン。本来は予約しないと席が無いところ。キラは一応、
予約は入れていたのだけど、三人の予定が五人に増えていた。だけど、幸運にも、大口の
キャンセルがあったらしく、私達は一番高いところにある特別席に座ることができた。
その眺めは格別だった。すっかり、日が落ちて闇が広がったミナシロの街のライトアップ、
私の市を挟む山の住宅やアンテナなどの灯、街を取り巻くように光が流れ、やがて四方八方に
散って行く環状ハイウェイ。そして、なにより、私が望んでいた港の波止場やホテルが
明滅する、期待を裏切らない幻想的な美しい光が一望に見渡せた。

確かに、港へ行けば、それを間近で見て、もっと美しかったと思う。でも、そこでは、港しか
見えない。ここは、港はおろか、ミナシロの美しい夜景すべてが見える。ミナシロの全てを
キラ達みんなと一緒に占有している。私達は、それを眺めながら、美味しい料理に舌鼓を打っていた。
アルコールも、ちょっと入っていた。

トールは相変わらずブツブツ言っているサイの話に付き合わされている。カズイは、三脚を付けた
デジカメで夜景を撮るのに夢中になっている。トリィも、キラの肩から離れて公園の木々を飛び回っている。
まわりに、みんないるんだけど、今、この瞬間だけ、キラと二人きり。

「すっごく奇麗! こんなの初めて」
「そうだね、ミリィ」

私は、慣れないビールに、少し顔を染めて、キラの方に、ちょっとだけ頭を傾け、港や
ミナシロ全体の夜景の幻想的な景色に酔いしれた。

「ミリィ、さっきの捜し物。結局、何だったの?」
「キラ、大したものじゃ無いのよ。これ」
私は紙袋を後ろ手に隠す。顔が、さらに赤くなっていたかもしれない。

「ミリィが、そう言うなら」
キラは、それ以上は詮索せず、優しい目のまま微笑んだ。私も、笑顔を見せた。

「みんな撮るよー」
カズイが、やっと私達の撮影を始めたようだった。落ち込んでいるサイを引っ張り込むようにして、
みんなVサインをしながら、カズイの写真に収まっていった。

318ミリアリア・あの子許せない 作者:2004/04/20(火) 06:18
>>過去の傷
フレイ様とミリィは冷戦真っ只中ですね。しかし、なぜにラクスと……

>>『明日』と『終わり』の間に
「The Last War」の番外編ですね。
ネメシス・フレイ様、魅力に天然ボケ・パワーがプラスされて可愛いです。トリィに、大気圏
脱出させる気だったんですかな。そして、カレー、お約束の予感。

>>流離う翼たち
ハムハム、モグモグは、セラン軍曹の台詞ですか。ハム太郎かと思ってしまいました。
まあ、以前からですが、喋り方もキャラによってはTV本編と違うときがあるので、
複数人の会話が並ぶと、時々、誰の台詞なのか分からないことがあります。今回は意図的なんでしょうけど。
ところで、TV本編にならうとオルセン軍曹と呼ぶところですが、なにかあるのかな。
とにかく、フレイ様のTV本編でも感じられた人見知り。まずは、これから?

319過去の傷・113:2004/04/20(火) 12:24
「あの・・・?フレイさん?」
「ラクス・・・」
突然ベッドに押し倒されときょとんとしているラクス。
「あの・・・」
ラクスが起き上がってくると、再度押し倒す。
「!」
「私を慰めてラクス」
「寂しいのですか?フレイさん」
フレイはうなずく。
「キラ様に会わなくてもよろしいのですか?」
「キラには会いたいけど・・・いまは同姓の女に慰めてほしいの」
ラクスは疑った顔になる。
「もしかしてフレイさんそういう趣味がおありなのですか?」
「ええ、最近ね」
私はラクスの唇を見つめた、ピンクの口紅が可愛い、これほしいわ。
そしてフレイは一瞬我を忘れた、自分が女ということも・・・。
フレイはラクスの唇に唇を重ねた・・・。
ラクスが目を大きく見開く。
まさか・・・まさか・・・ファ−ストキスの相手が大好きなアスラン・ザラでもなくキラ・ヤマトでもなくイザ−ク・ジュ−ルでもなく大好きなエドワ−ド・エルリックでもなく・・・女性のフレイ・アルスタ−だったとは。

「さっきシャワ−室にフレイがいたよ」
キラは反応する。
「フレイが!?」
「でも、なにも話さなかったわ、話す気にもならなかったし・・・」
「・・・・・・」
フレイ・・・もうあの子との仲は冷え切ってしまったみたい、でもあの子が悪いのよ、全てなにもかもあの子が悪いの・・・フレイの自業自得だわ。

320流離う翼たち・461:2004/04/20(火) 23:19
 アルフレットが連れて行ったのはMSの置かれている格納庫だった。整備兵たちがそれぞれ担当の機体に取り付き、汗水流して機体の整備をしている。そこにはフレイにとって見慣れたストライクやデュエルもあるが、敵として戦ったバスターやブリッツ、パワーと一緒に助けに来てくれたストライクダガーとかいうMSもあった。特にダガーの数はかなり多い。
 セランはジープを格納庫の脇に停めると、フレイにこの場所を説明してくれた。

「ここはMS格納庫です。大西洋連邦の南アジア方面軍では数少ないMS部隊なんですよ。特にストライクダガーはまだこの基地にしか配備されていません」
「ストライクダガーって、ストライクの量産機なんですか?」
「あはははは。名前はそうですけど、中身はデュエルです。デュエルが敵に奪われて縁起が悪いからストライクダガーになったそうです。試作機はデュエルダガーだったそうですよ」

 セランは楽しそうに説明してくれる。どうやら彼女はここの整備兵であるらしく、MSに限らず自分の整備している機体に誇りを持っているらしい。

「セラン軍曹は、どの機体を担当してるんです?」
「私は、手前から4番目のデュエルです」

 見れば確かにそこにはデュエルがあった。自分にも慣れた機体だし、攻してみると何だか乗りたくなってくる。いつの間にか、自分はすっかりパイロットになっていたらしい。
 そこに、部下と話していたアルフレットが声をかけてきた。

「おい、お嬢ちゃん、ちょっとこっちに来い」
「え・・・・・・あ、はい!」

 言われて急いでアルフレットの所に走る。アルフレットは近くに来たフレイを目の前にいる部下に紹介した。

「フレイ・アルスター少尉だ。短い間だが、預かることになったから、上手くやってやってくれ」
「はあ、それは構いませんが、何でここに?」
「予備のダガーがあるだろ。あれに乗せてやってくれ」

 とんでもない事を言い出すアルフレット。フレイは勿論、目の前の部下までがビックリしている。

「な、何考えてるんですか。貴重なMSをこんな女の子に使わせるつもりですか!?」
「女の子って言っても、こいつくらいのパイロットも結構いるだろ」
「そりゃいますが、彼らはちゃんと訓練を受けてます」

 あくまで譲ろうとはしない部下に、アルフレットはニヤリと人の悪そうな笑みを浮かべ、フレイを見てきた。

「つまり、MSを使えるなら文句はねえんだな?」
「はあ、まあそうですが、MSを使うにはそれなりの訓練が必要ですよ」
「というわけだ。確かお嬢ちゃん、MSには乗れたよな?」
「え、あ、まあ、乗れますけど」
「そういうわけだ、文句は無えな?」

 アルフレットは勝ち誇ってそう言い放ったが、言われた方は唖然としていた。そりゃまあ、こんな女の子がいきなりやってきてMS乗れます、などと言うのだから普通はこうなるだろう。
 部下が黙ったのを見て、アルフレットはフレイとセランを連れて格納庫へと入っていく。格納庫内には整備兵やパイロットが沢山いて、アルフレットと一緒に入ってきた見慣れない女の子に何だか注目している。アルフレットはそんな部下達を無視して奥に立て掛けてあるダガーにフレイを案内した。

「さて、こいつが予備のダガーだ。ここにいる間、お嬢ちゃんの好きにして良いぜ」
「でも、何で私が?」
「気にすんな。まあ、強いて言うなら教官役だな。何しろここには実戦経験豊富なのは俺しかいねえんだ。俺が面倒見てやれりゃ良いんだが、生憎俺もそう暇ってわけでもねえしな」
「それで、私はどうすれば?」
「こいつに乗ってここにいる連中と模擬戦をしてくれりゃ良い。別に難しいことでもねえだろ。ああ、機体の整備と調整はセランに任せな。こいつは良い腕だぜ」

321流離う翼たち・作者:2004/04/20(火) 23:23
>> ミリアリア・あの子許せない
サ、サイ、哀れすぎる。だが、一体どういう内容だったのだろう?
とりあえずミリィを信じたキラたちは幸運と言うべきなのでしょうか
軍曹の呼び名には意味がありますよ。

>> 過去の傷
フレイ様、いよいよ見境が無くなりつつありますな
ラクスもそりゃショックでしょう

322ミリアリア・あの子許せない 93:2004/04/21(水) 06:03
第2部 7.ミナシロのこと覚えてる? 10/12
[ごめんね、お母さん]

夕食の後、すっかり夜遅くなり、キラ、トールは、私を家まで送ってくれた。
サイは、両親とミナシロにホテルを取ってあったらしく、同じくミナシロに撮影旅行で
ホテルを予約していたカズイが送って行った。

マンションの前に近づくと、私のお母さんがマンションの出口から走り出るのが見えた。

「お母さん!」
「ミリィ!」

「お母さん! どうして朝、居なかったのよ。私、せっかく帰ってきたのに」
「何言ってるんですかミリィ、連絡してきた時間は今日の夕方でしょ。いつまで待っても
 帰って来ないし、電話にも出ないから、お父さんと一緒に心配してたのよ」

「え! なんで?」

私は携帯電話を取り出した。いつの間にかバッテリ切れになっている。キラの予備電池を
借りて、携帯の電源を入れて、両親に連絡した時のメールを確認する。私は、連絡の時、
午前と午後を間違えていた。

「ごめんね、お母さん」
「もう、こんな心配かけないでね。それでこちらは?」

「カレッジの友達で、同じゼミのキラとトール。二人とも挨拶して」

「初めましてキラ・ヤマトです」
「トール・ケーニヒです」
「ミリアリアの母です。娘が、迷惑をかけて済みません」

お母さんは挨拶しながらも、その目はじっとキラに注がれていた。
「ミリィ、お前、このキラって人、まさか……」

私は、今になって気がついた。
「あ、お母さん。何でもないのよ。単なる偶然だから」

キラは不審そうに、私とお母さんを眺めている。

「どうです。ちょっと家でお茶でも」お母さんが言う。

「いえ、もう遅いですし」
「そうだな」
キラとトールは顔を見合わせる。

「そうだよね。もう遅いもんね。疲れてるお父さんもいるんだし」
私も調子を合わせる。急に家で紹介だなんて、こっちも心の準備が……

「僕達、帰ります」
「それじゃ、ミリィ、また今度」
キラとトールは帰って行った。

私は、お母さんと並んでマンションの部屋に向かって行った。お母さんは歩きながら私に言った。

「ミリィ、安心したわ。二人も男友達できて。あれから、酷く落ち込んでいたから心配してたけど」
「うん、ごめんね、お母さん」

私は、様々な想いを胸に、お母さんに心から謝った。あれから、もうかなり経つんだ……

「で、あなた、あの二人のどちらが好きなの」
私は黙っている。

「やっぱり、あのキラ君?」
私は、お母さんを見つめた。そして、小さく頷いた。お母さんに分からないはずが無い。

「そう、良かったわね。今度、二人を家に連れてきてね。キラ君に、いろいろお話し聞きたいわ。
 トール君にもね」
「うん、今度、いつか」
私は、小さく言った。

「ミリィ、今まで、どこに行ってたの?」
「ミナシロ」 お母さんの問いに、私は答える。

「じゃ、あの震災慰霊所に行ってきたの?」
「あ、忘れてた」

お母さんの言葉で、私の中に、ある思い出が蘇った。
ミナシロ市は、私が小さいころ、大きな震災に見舞われたことがある。
そして、それが復興された時にできた震災慰霊所。私は、かつて、そこに一度だけ、
連れられて行ったことがある。お父さんでもお母さんでも無く、ある人に。

「お母さん、ちょっといい」
私は一人、マンションの通路の端まで行くと、キラの予備バッテリを付けたままの携帯で、
キラに電話をかけた。

「ミリィ、今度は何だい」
「ねえ、キラ、ミナシロ、震災慰霊所に行ったことある?」

「行ったことあるよ。僕が両親とオーブに越してきて二年ほどだけど、ここは行っておかないと
 いけないって言われて」
「キラ、今度、そこに連れてって」

「どうしたんだい?」
「行きたかったの」

「明日以降は、ちょっと予定あるけど、行けるようなら連絡するよ」
「うん、キラよろしく……」

キラと二人でと言おうとして、私は、また躊躇した。そして、しばらくして、私は言った。

「また、トールと三人で…… 良かったら、サイやカズイも誘って、みんなで……」

323ミリアリア・あの子許せない 作者:2004/04/21(水) 06:05
>>過去の傷
全然見てないんで最初分からなかったけど、ラクスってハガレン・ファンなんですか。
ミリィ、あの子、あの子って、うちのミリィみたい。

>>流離う翼たち
ストライクダガーでの模擬戦、フレイ様、まずは楽勝では?
ストライクダガーの元がデュエルとは言われていますが、デュエルダガーとは。
MSVで出た105ダガーだと、ほんの少しの差なんですが、ストライク度は
増すんですけどね。

324過去の傷・114:2004/04/21(水) 08:37
「!・・・や・・・やめてください・・・」
覆いかぶさっていたフレイを突き放すとラクスは唇に手をやりハンカチで何度も拭く。
「ラクス・・・ごめんなさい」
「出て行ってください・・・」
「でもラクス・・・私どうかしてて・・・」
「・・・あれが貴女の本心でないのなら構いませんが・・・あんなことは初めてです」
「ラクスごめんなさい・・・私、男好き・・・だから・・・もうあんなことしないから・・・泊めてくれない・・・?」
ラクスは少し考えたが・・・。
「よろしいですよ」
「ラクス・・・ありがとう・・・」
サイ・・・そうだ、ちゃんとサイに謝ろう・・・サイは私に以前は優しかったから、謝ればきっと許してくれる・・・もしかしたら私が謝るの待ってるのかもしれない・・・。
そして・・・私・・・ラクスと・・・同姓とキスした・・・気持ちよかった・・・ラクスは嫌がってたから・・・。

「サイ・・・あの・・・」
フレイは通路を歩いていたサイに声をかけた。
「あの・・・一緒にジュ−スでも・・・」
「ごめん・・・お断りするよ」
「あ・・・そう・・・」
横を通り過ぎようとしていたサイに慌てて声をかけた。
「サイでも!」
「なんだよ!」
苛立ったように私を見るサイ。
「え・・・なにって・・・」
「なんなんだよいまさら!ええ!なんでいまさらなれなれしくしてくるんだよ!」
そう言うと話は終わりというように立ち去ろうとした。
「サイごめんなさい!」
サイが立ち止まる。
「そうよね、私、貴方になんて酷いことしたんだろ、ほんとよね・・・裏切ったのは私よね、ごめんなさい、ほんと私ってなんて身勝手な女なんだろう・・・キラにも貴方にもなんて酷いことしたんだろう・・・ごめんね、サイごめんね・・・サイ・・・ごめんなさい!」
サイは少し黙っていたが。
「そうか・・・分かった」
「え?」
「聞こえなかったのか?いいかげんなところはあいかわらずだな、分かったって言ったんだよ」
そう言うとサイは立ち去った。
「・・・・・・」
サイの分かったってどんな意味なんだろう・・・あ、ミリアリア。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
キラを取ろうとするなんて最低な女。
「ミリアリア、私あんた嫌い、大嫌い」
「奇遇ね、私もあんた嫌いよ」
「馬鹿女」

325過去の傷・作者:2004/04/21(水) 10:46
>>翼たち
ストライク・ダガ−の模擬戦フレイ様頑張ってください、期待します、見せ付けてください、力の差を・・・。
>>ミリアリア・あの子許せない
サイご愁傷様、というよりどんな内容だったんでしょう?
ミリィはやっぱりキラに気があったんですね、ト−ルに少し同情してしまいます。

326ミリアリア・あの子許せない 94:2004/04/22(木) 05:42
第2部 7.ミナシロのこと覚えてる? 11/12
[ミナシロのこと覚えてる?]

これが、長期休暇の時にミナシロであったことの顛末。

私の同人誌を持って行った、あの腹の立つ女性は、結局見つけられずじまい。一言謝らせた
かったけど、もう済んだことだし、別に、どうでもいい。

その後の状況……

その休みの間、キラやトールに用事があったり、うちの両親が忙しくて、出張準備や家事に、
こき使われたりで、結局、みんなでミナシロの震災慰霊所に行くことも、キラとトールを
家に呼ぶこともできなかった。私は次の休みには震災慰霊所に連れてってくれるよう、
キラと約束した。

補足すると、その家事手伝いも、私が料理を、まったくできないせいで、インスタントものと、
買ったままの食品トレイが、そのまま並ぶ食卓に、主にお母さんが小言を並べていたことを
付け加えておく。

トールと私は、帰りのシャトル代を使い込んでしまい、代わりに払ってくれるよう、親に
泣きついたけど聞き入れてくれず、親に借金した形でヘリオポリスへのシャトルに乗った。
その後、仕送りから、少しずつ、さっ引かれて、金欠に苦しんだ。キラも、カッコつけて
私達に食事をおごったことで、親からの前借りを使い込んだらしく、同様に金欠状態に陥っていた。

さらに、私が親へのぼやきで、休み中、毎晩のようにキラやトールに携帯で長電話をかけて
時間をつぶし、さらに、時々二人からも、かけ直しで繋いでいたものだから、後から来た
電話代の請求書に、三人のサイフはもう……。

結局、私達三人はカレッジに戻った後、授業そっちのけでバイトに追われ、出席日数ギリギリで
進級した。その間、私達三人の間では、互いの稼ぎを日々の食費で奪い合う醜い争いが繰り広げられた。
私達の場合、光熱費と通信費。それと教養費、っていうか趣味の本とかの費用は絶対に削れないから。

さすがに、私の金欠時の常套手段「ついでに……」も予防線を張られてしまい、代わりに、
カトウ教授の怒る回数で夕食代の賭けをしたり、各自のバイト先へ陣中見舞いと称してタカリに行ったり、
トールと二人して、唯一、二人以上の棲息スペースのあるキラの寮に転がり込んで、授業のノートを
チェックし合いながら、元手はタダのバイトの残り物を、三人の間で金銭オークションにかけたり……

でも、キラやトールとの、そんな、おバカな日々が私の幸せだった。進級して、徐々に三人の関係が
変わって行くまでは……

サイは、ヘリオポリスに戻ってからも、しばらく落ち込んでいた。苦しい財政の元、元気づけようと
みんなで何回か食事に誘ったけど、中々、元気が出ない中、ある日、研究室でメールを見て
喜んでいるのを見てから、いつもの状態に戻った。彼女と仲直りしたらしい。
今、思えば、サイのデートの相手って、あの子…… フレイのことだったんだろうけど……
なんで喧嘩したのかは不明。サイが、なにやら、ぼやいてたの、さっぱり要領を得なかったから。

サイの趣味については、その後判明した。サイってアイドルおたくだったらしい。しかも、アレコレと
節操が無いタイプ。おっかけまでは行かないけど、ヘリオポリスでコンサートあるときは誰彼なく、
行きまくっていたらしい。でも、隠すほどのことじゃないと思うけどな。

カズイは、あの後、撮影旅行で、海洋遊園や海洋プラントの見学に行った。
海洋プラントの海底居住ブロックまで、潜水艇で行って入ったと、しばらく自慢していた。
もっとも、その時見たクジラに驚いたらしく、海には大きい生き物がいると恐がっていて、
アークエンジェルが紅海に出た時、このことで私はカズイをからかったことがある。

海洋遊園、海洋プラントの写真も見せてもらった。その写真を見ると、横倒しのボンベのような
概観の居住ブロックは、中は意外と広く、中央を吹き抜ける広い通路がカズイの写真に写っていた。
そこも、一度行ってみたかった。今は戦争のせいで、計画が中断し、廃棄同然になってしまったと聞いている。

カズイは、ミナシロで撮った写真をホームページに登録した。ミナシロの街の風景、
夕闇に染まるPARKSの光景。きらめく夜景。結構、好評だったらしく、アクセスカウンタの
桁も跳ね上がっていた。

カズイのホームページを見るたびに、あのミナシロでのことを思い出す。楽しい思い出。
あの時のミナシロのこと覚えてる? キラ。

P.S.
あの801同人誌、エロかったです。とっても実用的。さすが伝説の本。

327ミリアリア・あの子許せない 作者:2004/04/22(木) 05:44
>>過去の傷
ラクスは、フレイ様をどう考えているのか謎ですね。嫌っている訳でも無いみたいだし。
ここのサイは冷たい。もうちょっと話聞いてあげても……
ミリアリアとの罵り合い、平手打ち合戦に発展しなければいいけど。

328過去の傷・115:2004/04/22(木) 12:40
「馬鹿女ですって!?」
ミリアリアが声を張り上げる。
「ええ、馬鹿女に馬鹿女っていってなにが悪いのよ!人の彼氏横取りしようとするなんてあんたって最低な女!」
「その言葉そのままお返しするわ、あんただって二人の男、手玉に取ったじゃない、悪女はあんたよこの腹黒女!」
「なによ、ト−ルがいない寂しさをキラで紛らわしたいだけなんでしょ!?キラは道具じゃないのよ!?」
あんたが言うなって。
「道具って・・・道具として利用してたのはそもそも誰かしら?」
「あれは・・・でももういまは違うわ!なによあんたこそ人の彼氏取ろうとしてるじゃない」
「ええ悪い?でもあんたみたいにお嬢様ぶったりしてないわ!」
「なんですって!?」
フレイはミリアリアの頬を平手でぶった。
ぶたれたミリアリアは・・・頬を押さえるとフレイを殺意をこめるような表情で睨んだ。
「なによ・・・なにすんのよ!」
そしてフレイにつかみかかっていった、女二人が倒れる。

「ラクス・・・失礼します」
「あら、アスラン♪」
「それで話とは?」
ラクスは微笑む。
「いいえ、貴方にお会いしたかっただけですの」
アスランはため息をつくと入ってきた。
「ラクス・・・貴女は私が守ります・・・」

カガリは部屋の中でただ一人。
「明日のフレイの実戦練習どうしようかな・・・でもあいつだけは危険にさらしたくない・・・私もフレイを援護するか・・・フレイ、お前は私が守る・・・」

329流離う翼たち・462:2004/04/23(金) 00:09
 セランを指して気分良さそうなアルフレット。フレイは逆らう気も起きなくなり、仕方なくセランのほうを見る。

「あの、御免ねセラン軍曹、こんな事になって」
「いえ、構いません。それより早く機体の調整をしましょう。一応使える状態にはしてありますから、少尉が乗って調子を確かめてください」
「うん、分かった」

 フレイは制服のままでコクピットに入っていく。下からセランが大事な事を聞き忘れたと声をかけてきた。

「そういえば少尉、少尉は前は何に乗ってたんです!?」
「私はデュエルよ!」
「ああ、なら問題ないです。操縦系はデュエルと同じですから。ただ、パワーはデュエルほど高くないので気をつけてください!」

 フレイは礼を言ってコクピットに収まった。確かにコクピットの作りはデュエルと全く同じだ。これなら動かすにも戸惑うことは無いだろう。フレイは慣れた手つきで機体を起動させ、ダガーを起き上がらせた。外部スピーカーを起動し、格納庫に声を流す。

「よし、これなら動かせるわね。とりあえず外に出るから、道を開けてください!」

 フレイの声に吃驚した整備兵やパイロットが慌てふためいて格納庫の中央から退いていく。フレイは兵員が退いたのを確認すると、ダガーを外に出そうとして、早くも違和感を感じた。

「あれ、なんか反応が鈍いかな?」

 最初は気のせいかと思ったが、やはり動きが鈍い。自分の操作に機体が付いて来ない。それでも普通に動かす分には問題は無いので機体を格納庫から出し、広い所まで持ってくる。そして戦闘時のような機動を軽くこなしてみて、違和感を確信に変えた。この機体は間違いなく鈍い。
 そんな不満を感じていると、後ろから付いてきたセランがジープの無線で質問をぶつけてきた。

「どうです少尉、ダガーは?」
「デュエルと同じなのは嬉しいけど、何だか動きが鈍いです。こっちの操作と動きにかなりズレがあって気持ち悪いというか」
「そうですか、とりあえずソフトの方を弄りますから、機体を屈ませてください」

 言われて機体を屈ませ、コクピットを開けるフレイ。セランはコクピットのハッチに一っ飛びで飛び乗ると、機体のOS用キーボードを引き出し、物凄い速さで打ち出した。その余りの速さにフレイも驚いてしまう。

「少尉、機体を動かしてみてください。それで当たりを出します」
「え、でも、危ないわよ?」
「体は器具で固定してあります、大丈夫。ですが、余り無茶はしないで下さい」
「う、うん、分かった」

 言われてフレイは機体を適当に動かしてみる。そのフレイの動きと機体の動作の誤差をセランが修正していくが、だんだん表情が悩むように顰められていく。

「・・・・・・・・・はあ?」

 セランがあんぐりと口を開けてフレイを見る。フレイは何かおかしかっただろうかと不安になったが、その不安はすぐに別の驚きに変わることになる。セランは、信じられないという表情でフレイにこう言ったのだ。

「あの、少尉、これって、本当に問題ないですか?」
「え、なんで?」
「だって、これが本当なら、少尉はコーディネイター並の反応速度を持ってることになりますよ」
「へ?」

 フレイは気付いていなかったのだ。自分が、一体どれほどの化け物になっているのかを。MSパイロットとしての比較対象はキラしかいなかったからこれまでフレイ自身が気付いていなかったのだが、彼女の反応速度は既にフラガと同様にナチュラルの常識を超えていたのである。

330流離う翼たち・作者:2004/04/23(金) 00:19
>> ミリアリア・あの子許せない
何とも大変ですな。本当に全員が金欠になるとは。
学業そっちのけでバイトに走るのはある意味正しい学生の姿かもw

>> 過去の傷
なんか、だんだんヘリオ組全員が怖くなっている
サイとミリィ、フレイ様が壊れ、次はキラが壊れるのかな?

331ミリアリア・あの子許せない 95:2004/04/23(金) 06:06
第2部 7.ミナシロのこと覚えてる? 12/12
[ハイ、キラ、忘れました]

回想が終わり、私の意識は、オノゴロから首都に向かう連絡機に乗る私に戻った。

私は大きなバッグから、私の携帯電話を出した。軍に入っている間は、バジルール中尉に
没収されていたもので、アークエンジェルを降りる際に返されたものだった。やがて、
首都が近づくと共に、アンテナの電波強度を示すバーの本数が増えて来る。私は、携帯電話に
登録されたブックマークを選んでホームページを表示した。

それは、カズイの個人ホームページだった。ヘリオポリスは崩壊したけど、ホームページの
サーバのデータはオーブにもコピーされていて無事だった。カズイが、あの休みの時、
撮影したミナシロの写真が携帯電話の画面に現れる。ミナシロの街、ショッピングモールの
人ごみ、時計塔の広間の様子、海洋遊園、海洋プラントの中。私は、それを言葉無く虚ろな瞳で
眺めながら、ボタンを押して次々と送っていく。

そして、最後まで来た時、私は、もうひとつのブックマークを叩いた。覚えているパスワードを
入力する。それは、カズイが撮った、あの時の私達の写真を掲載した裏ページ。
ミナシロPARKSの屋上レストランでの写真を次々と送りながら見つめる。

「キラ、トール、サイ、カズイ」私は一人呟く。

「トール、トール、……」私は、みんなにVサインをしながら抱きつくトールの写真に、
その騒がくも、周りを明るくさせたトールの声を思い出す。「トール……」

そして、キラの隣で顔を染める私の写真をじっと見つめる。
「キラ、キラ、キラ ……」

連絡機がオーブに到着したアナウンスがした。私は携帯電話を持ちながら、タラップから
連絡機を降りた。降りた一団は、海浜空港から出て、連絡駅へ歩きだす。

── 降りるんだミリィ。そして、忘れるんだ僕のこと。忘れてしまえばいい。

私は、私とキラの写真を出したままの携帯電話を持って、駅では無く海岸の桟橋の方に歩いて行く。

── 忘れるんだミリィ!!

私は携帯電話を海へ投げた。また、涙が一しずく流れた。

(いいの、こんなことしていいの!)
(後から後悔しても遅いのよ!)

私は、ベンチを探して座り込んだ。

「ハイ、キラ、忘れました。仰せの通り」
私は呟いた。そのまま、しばらく、私は放心したように、じっとベンチに座っていた。

どれくらいの時間が経ったのだろう。
私は、やっと立ち上がると、大きなカバンを引きずるようにして、首都に向かう電車の駅へ、
ゆっくりと歩き始めた。

332ミリアリア・あの子許せない 作者:2004/04/23(金) 06:10
これで、7章「ミナシロのこと覚えてる?」終わります。10/12 [ごめんね、お母さん] で出した、
いくつかの不明点は二章後で補完される予定です。また、ミナシロ市そのものも、また出てきます。
次は、フレイSSに戻って、7章「幼子(おさなご)」から続いていた一連の話の締めを、お送りします。

>>過去の傷
うう、ほんとに殴り合いになるとは。私が想像した二人は、だからと言って仲良くはならなかったですね。
結局、一方は、寝返った敵の男を好きになったりして不幸路線でしたが、応援してました。

>>流離う翼たち
フレイ様の、この力、表面上の現れ方はコーディネータやブーステッドマンと同じなんですね。
フレイ様自身が、整備兵に気味悪がられる路線に行かなければいいけど。それには、今のオリキャラの
なにかの活躍要素が必要なんでしょうね。

333過去の傷・116:2004/04/23(金) 08:59
「ラクスさん、なんでしょうか?」
とキラは尋ねた。
「アスラン・・・貴方に剣を託します」
「剣といいますと・・・?」
「はい、自由を・・・フリ−ダムを貴方に託します」
「ラクスさん、どういうことですか!?」
「キラ様、いえキラ・ヤマト!貴方にあれを託したのは間違いでした、はっきり言わせていただきます、貴方にフリ−ダムに乗る資格はありません!!!」
な!?なんだって・・・?
「そ、そんな・・・」
「キラ様・・・・・・ではもう用はありません、帰ってください、アスラン・・・あれをお願いします」

「大丈夫だ、ラクスに秘密で乗せてやる」
「アスラン・・・」
「や、やめて・・・」
「あんたなんか・・・あんたなんか!」
ふいに女同士の言い争いがあったので・・・キラはそちらに向かった。

「フレイ・・・ミリィ・・・」
ミリアリアに馬乗りになりフレイが頬を叩いていた。
お互い頬が腫れていたがミリアリアは酷く・・・痛そうだった。
「はあ・・・はあ・・・」
「・・・うう・・・」
「ミリアリア、分かったでしょ!?女の色気でも容姿でも喧嘩でもあんたは私には勝てないのよ!」
「・・・・・・」
その数時間後。
ミリアリアは食堂にいた。
「ミリィ、キラの様子は?」
「うん・・・大丈夫よ、いまは眠ってるわ・・・」
サイの声に私は答えた。
実はあの一時間後、キラが倒れたのだ・・・熱も下がんないし・・・。
「皆は来ないでね・・・私一人でついていたいの・・・」
カガリやアサギ、ジュリ、マユラにも聞こえるように言うと食堂を去ろうとする、そして赤毛の少女の隣を通り過ぎようとした、すると・・・消え去りそうなくらい小さな声だった・・・。
「キラを・・・頼むわね・・・」
ほんとに消え去りそうなくらい小さな声だ・・・フレイは私に顔を向けようとしない・・・。
「え・・・ええ・・・」
私はそう言うと逃げるように食堂を出た。
これは罪悪感?フレイからキラを私は奪った、それは事実。
「フレイ・・・ごめんなさい・・・」
いまさらだけど罪悪感が出てきた、ト−ルがいないという理由で私はフレイからキラを奪った、いえまだ奪おうとしている・・・。

334流離う翼たち・463:2004/04/23(金) 23:37
 コーディネイター並の反応速度を持つと言われたフレイは唖然としてしまった。馬鹿げている。ナチュラルでは及ばない能力を身に付けたのがコーディネイターである筈だ。そのコーディネイターの能力にただのナチュラルである自分が匹敵するなど、ありえる事ではない。
 だが、自分を見るセランの目がそれを否定させない。セランは興奮してキーボードを操作し、設定を次々に変えていく。そして、設定変更が終わったのかフレイに親指を立てて見せた。

「これで良いと思います。もう一度やってみて下さい。私は下で見ていますから、もう一度結果を教えてくださいね」
「ええ、分かった」

 セランが機体から飛び降り、ジープに戻ったのを確認したフレイは、早速機体を動かした。最初は簡単な機動、そこからだんだんとスピードを上げていき、フレイはダガーの応答速度が十分なレベルにまで引き上げられて居るのを確認して機体を止めた。そしてコクピットから体を出し、駆け寄ってくるセランに大きく頷いて見せた。

「大丈夫、これなら問題ないです!」
「そうですか、それは良かった!」

 セランが拳を握って喜んでいる。そのままダガーの足元にまで駆け寄り、フレイに手で格納庫の方を示している。

「少尉、あそこに練習用の模擬サーベルと模擬ライフルがあります。システムを訓練モードにしてあれを装備してください」
「えっと、どうして?」
「さっき少佐が言ってたじゃないですか。これから模擬戦なんです」
「ちょ、ちょっと待ってください。なんでいきなり!?」
「さあ、私も無茶だと言ったんですが、少佐がいいからやらせろと」

 困った顔になるセラン。フレイが急いでサブモニターに格納庫前の拡大画像を映し出し、アルフレットの姿を確認する。すると、思ったとおりそこには心底面白そうにニヤニヤと笑っているアルフレットの姿があった。

「・・・・・・なるほど、フラガ少佐やキースさんの上官だわ」

 アルフレットは2人に似て人が悪い。良い人なのだが状況を楽しむ癖がある。丁度フラガやキースが自分達をからかって遊ぶように、あの人もそういう人の悪さがあるのだ。

「・・・・・・良いわよ、やってやるわよ」

 暫し悩んでいたフレイはこのアルフレットの露骨な挑発に乗ることにした。何を考えているのかは知らないが、これでもデュエルに乗って総合撃墜スコア30機以上なのだ。フラガ少佐やキースさんに褒められるくらいの技量にはなっているし、誰が相手でもそう簡単に負けるつもりは無い。
 覚悟を決めたフレイは、セランに分かったと答えて訓連用の装備を取りに行った。

 フレイの返事を聞いたアルフレットは面白そうに鼻で笑うと、チラリと背後を振り返った。

「よし、とりあえずは1対1だ。お前ら、誰か行きな」
「それじゃあ俺が!」

 フレイと同じくらいの年の少年が名乗りを上げた。黒髪の東洋系の少年だ。アルフレットはその少年を見ると、ポンポンとその頭を叩いた。

「ようし、その意気だ。勝ったら何か頼み事を聞いてやろう」
「本当ですか!?」
「おお、俺に叶えられるなら何でも聞いてやるぞ。何なら明日一日休暇とかな」
「おおおおおおおおお!!」

 志願した少年は喝采を上げて自分のダガーに乗り込んでいく。それを見送った同年輩の少年達は羨ましそうにその後ろ姿を見送っていたが、彼らより年長のパイロット、多分隊長級のパイロットは不満顔でアルフレットに問いかけた。

「良いんですか隊長、あんな約束をして?」
「何、構やしねえさ。あのお嬢ちゃんに勝てたならそれくらいは安いもんだ」
「どういう事です?」
「まあ、黙って見てなって」

 不信そうに自分を見る部下に、アルフレットは不敵に笑うだけで何も答えはしなかった。

335流離う翼たち・作者:2004/04/23(金) 23:50
>> ミリアリア・あの子許せない
ミリィ、とうとう携帯を捨てちゃいましたか。ドラマのラストシーンですな
次からは再びフレイ様に戻られるようで、楽しみにしてます。

>> 過去の傷
喧嘩は終わったようですが、さてこれからどうなるやら
フレイ様はカガリに走るしかなくなったのか

336ザフト・赤毛の虜囚 49:2004/04/24(土) 07:32
9.母親(ママ) 1/8
[え、行くって、どこのことだっけ?]

私は、安らかな眠りについている。ここは、多分夢の中……

──「フレイ、迷惑をかけてごめん。なるべく早く終わらせるから、ちゃんと待っててくれ」
ビデオメールに残るキラの言葉。
初めて出会った合コンの写真。みんなとの食事の写真。にこやかに微笑むキラの写真。
キラのメモリチップに残る思い出。

そして、そこに眠る私の知らないキラに癒されている。
これで、また歩いて行けると思う。キラの求めるもののために。

「うふ、うふふ……」
思わず笑みがこぼれてしまう。こんな楽しい気持ち、本当に長い間、忘れていた。
ヘリオポリスの平和の中で。友達と、いろいろ、おしゃべりして、買い物して、
あの時以来のこと。

あら、あちらも、なんだか楽しそう。ちょっと行って来よう。

え、行くって、どこのことだっけ?

いいわ、キラも一緒だもの。どこにだって行ける。どこでも安心できる。私はキラに話しかける。
「一緒に行こう、キラ」

ふと、傍らを見ると、今にも泣き出しそうに顔をクシャクシャにしている子供がいる。見たことない子。
私の腰くらいしかない女の子。でも、私には、それが誰なのか分かる。私は、その子に酷いことを
言って追い返した。泣きそうな顔して必死に耐えている姿が記憶に残っている。

「ミコトでしょ。あなたも一緒に行かない」

小さいミコトは、おそるおそる手を伸ばす。その両手を私とキラがひとつずつ繋ぐ。

「一緒に行こう。キラ、ミコト」

二人でミコトの手を振って歩くうちに、少しずつ表情が和らいで来るのが分かる。
私は、キラと小さいミコトを暖かい気持ちで見つめる。

いつのまにか、キラの向こうには、ミコトよりも少し年上の金髪の男の子が手を繋いでいる。
キラは、あの食事の写真のような優しい微笑みを、その男の子に向ける。そして、ミコトにも、私にも……
私達は四人、微笑みながら歩いて行った。

え、行くって、どこのことだっけ?

337ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/04/24(土) 07:34
フレイSS新章です。前章の続きで、フレイは今だお休み中です。
ここで、しばらく、メルデルの方に話を移します。
メルデル編では、メインの一人である新キャラが登場します。
ただ、オリキャラでは無く、TV本編のオフィシャル・キャラです。

>>過去の傷
よく分からないけど、キラはフリーダム剥奪と、ミリィ・フレイ様の喧嘩を見て
ショックで寝込んだのでしょうか。キラが倒れるのを見て、ミリィ・フレイ様の
喧嘩は少し納まった?なんか、二人の意識が変化してますね。キラは、どんな
倒れ方をしたのでしょう。

>>流離う翼たち
展開引っ張りますね。フレイ様、自分に対する意識も思い込み一杯ですね。
こういうところがフレイ様らしいです。凄い力を持っている主人公の場合、
その力を本番のみとか発現に特定の条件を持たせて、一方で人柄的なところで、
味方に受け入れさせるようにしますが、今のフレイ様は、そのどれもしてません。
アルフさんは、フレイ様をどうするつもりなのでしょう。

338過去の傷・117:2004/04/24(土) 11:29
キラの側について看病している私。
キラの側にいられるだけで私は幸せ。
「うう・・・ト−ル・・・ごめん・・・」
「!」
キラはト−ルのことでまだ苦しんでるのね、そこまでト−ルを・・・。
「・・・・・・」(・・・・・・)
私は笑みを浮かべた、そう・・・苦しめばいい・・・私だって苦しいんだから・・・。
でもキラにとってはいいはず、私と付き合えるんだから、それに私もキラを好きになりかけてるから・・・ううん、好きよ、キラのことは好き。
「キラ?」
一人の少年が入ってきた。
この人って・・・。
「キラの様子は?」
と、アスランは言った。
「いえ、状態はそのままです」(この人がト−ルを・・・)

アスランが出て行く、残ったミリアリアは。
(気にしたって仕方ないわね、あの人はト−ルを殺そうとしたわけじゃないんだから、あの人はキラを殺そうとしたって・・・)
「・・・ミリィ・・・」
「あ、気がついた?」
キラが目を覚ます。
「ずっと眠ってたわよ」

通路を歩いたフレイ。
こんなときもキラになにもしてやれない自分が悔しかった、どうして?どうして・・・ミリアリアよりは容姿もなんでも勝ってる自身はあった。
それなのになんで?なんで・・・ミリアリアにキラを取られたんだろう?キラを責めてしまう、キラだって悪いのよ・・・なんでミリアリアに行ったのよ、分からない?あの子はほんとはキラのことなんか・・・。
そう思っているうちキラの部屋に向かっていた、明日はアストレイに乗る、でもいまはそれどころじゃない・・・キラには私が必要・・・私にもキラが必要・・・。

「ト−ルが・・・そう・・・」
「まだ、まだ苦しいんだ・・・ごめん、君のことを思うと」
「アスランって人が来たわよ」
キラの表情が変わり曇る。
「アスランが?そう・・・くう・・・アスランもト−ルも僕にとっては大切な友達なんだ・・・だから・・・うう」
泣きながら告げる。
「ごめん・・・ごめん・・・ミリィ、ごめん!」
「ト−ルのことはもういいの、終わったことよ、それよりもいまはキラが大切よ、大好き」
キラは震えながらミリアリアに顔を上げる。
私は微笑むと。
「大丈夫・・・大丈夫・・・私が・・・いるわ・・・キラには私が・・・」
「く・・・ト−ル、僕は無力!守れなかっ!」
力も剣もあるのに僕は守りたいものを呪いにでもかけられてるように守れない、あのシャトルの少女もト−ルも・・・僕には神様はいないのか?いや・・・ミリィがいる、それでも・・・。
「キラ、私を貴方に上げる・・・だから泣かないで・・・」
ミリアリアはキラの顔を上げされるとキスした、キラも戸惑いながらも目を閉じミリアリアの背中に手を回し唇を押し付けてきた。
そして二人はベッドに入って行く。

339『明日』と『終わり』の間に・2日目・午前:2004/04/24(土) 22:22
 料理がしたいというフレイの願いを叶えてやるため、私は病院にあいつの仮退院を願い出た。幸いにも一日だけという条件で認めてもらうことができ、その翌日私はフレイを自宅に招待した。そして今、私達はキッチンでカレー作りの真っ最中である。

「―――よーし、あとはじっくり煮込むだけだな。なっ、簡単だったろ?」
「・・・確かに簡単だったけど、材料切るのはカガリが全部やっちゃって、私ほとんど何もしてない気がするけど・・・」
「お前に任せてたらお前の指が何本あっても足らないだろ?切るどころか切り落としかねない勢いだったし、あんなの見てたら気が気じゃないぞ」

 ピ〜ンポ〜ン!

「!ン?誰か来たのか?今日は私達以外誰もいないし、ちょっと行って来るよ。その間鍋の中の様子見といてくれ」
「ええ、分かったわ」

 ピ〜ンポ〜ン!

「煩いなぁ、今行くよ。じゃ、頼むな」
「・・・・・・」


「は〜い、どちら様ですか?」
「あ、訪問販売の者です。商品の実演に来たんですけど・・・」

 ちっ、セールスマンか・・・。忙しい時に限ってこういうのが来るんだよなぁ。まぁいいや、適当に相手してやるか。・・・それにしても今の声、何処かで・・・?

「お嬢さん、包丁とかいかがですか?こいつがまたグゥレイトな奴で今なら抗菌まな板とセットでおまけにもう一本・・・って、ゲッ!?」
「・・・何やってんだ、ディ・・・!ディ〜・・・、ディディー?」
「・・・ディアッカな」
「そう、それ!・・・で、何してんだお前?」
「いや〜、大事な仕事トチってまた給料減らされたんだわ!それでそれだけじゃもう食っていけなくて、会社に内緒で色々とバイトを・・・。!!いっ、いやいや、あっしはただのしがねえセールスマン、ディアッカなんて名前じゃありやせんぜ?」
「・・・いや、一目でばれてるから。無理してキャラ変えなくていいぞ?」

 そうか、こいつ今オーブにいたんだった。でもこいつ、すっかり丸くなったなぁ。一応元ザフトの赤服だろ?・・・いいのかよ、こんなんで・・・。

「とにかく、ここであんたに会ったのも何かの縁だ。頼む、包丁買ってくれ!このままじゃ今月のノルマを達成出来ねーんだよ!」
「ここで会ったのもって、ここ私の家だぞ?それに別に包丁には困ってないしさ」
「そう言うなよ、知らない仲じゃないだろ?あ、そうか。ならこの包丁がどれだけ凄いか見せてやるよ!」

 ・・・まずいな、長くなりそうだ。早いとこ追っ払うか。

「例えばこの分厚い電話帳もこいつなら・・・、〜〜〜ッ、あれ?〜〜〜くっ!・・・おかしいな、何で切れねーんだ?」
「・・・無理しなくていいぞ。どうせ切れても買わないから。・・・なぁ、いい加減帰ってくれよ?今日は人が来てるんだ」
「んあ、人?・・・ハハ〜ン、分かったぜ。取り敢えず、アスランには内緒にしといてやるよ。・・・だからその代わり包丁買ってくれよ」
「・・・何を勘違いしてるか知らないけど、今すぐ失せないとその包丁の切れ味、お前で試すことになるぞ?」


 ―――くそ、あれから大分時間が掛かったな。初めから『警察呼ぶぞ!!』って言えば良かった。手間取らせやがって、ディ〜・・・、何だっけ?ま、いっか別に。それより、もうカレー出来上がってるんじゃないか?

「すまん遅くなって!」
「カガリ遅〜い!何やってたのよー!?」
「まぁ、色々とな・・・。それより鍋の方は大丈夫だったか?」
「うん。そろそろ出来たんじゃないかしら?」
「そうだな。どれどれ〜・・・?」

 ・・・・・・えっ!?

「・・・フレイ、私がいなかった間に何かしたか?」
「別に、ただ様子見てただけよ?」
「・・・そうか」

 ・・・変色してるな、”赤”く・・・。それになんかツ〜ンとする匂いもするし・・・。あいつ、何入れたんだ?・・・取り敢えず、盛付けしてみようか・・・。

340ザフト・赤毛の虜囚 50:2004/04/25(日) 07:12
9.母親(ママ) 2/8
[ユーレン・ヒビキだな。ちょっと、ご同行動向願おうか]

私は安らかな気持ちで目を覚ました。ここはホテルの部屋。

私はコロニー・メンデルのホテルを点々としていた。私は、彼を必要としている。
彼が私のところへ来るのを、ずっと待っている。ホテルのドアが、そっと叩かれる。

「誰?」私は問いかける。
「メルデル、僕だ」
「ユーレン!」

私は、喜んでユーレンを部屋に入れる。
「どう様子は? 研究所はどうなっているの? フラガは何もしていない?」
「とりあえずは大丈夫だ。ヴィアも、所長に言って、しばらく研究所に
 寝泊まりさせてもらっている」

「ヴィアは、なんて言っている」
「君が宇宙港に来なかったことで心配している。僕が最後に会ったことになっているから。
 食事に誘った時のこと。色々、聞かれているけど。途中で別れたと言ってある」

「ヴィア…… ごめんなさいユーレン、あなたにも嘘つかせて」
「構わないよ。君のためだ」

ユーレンは、私にキスをする。それで、私は、その気にさせられてしまう。

「メルデル、そろそろ、ここも引き払わないといけない」
「ユーレン、出て行く前に…… して」

「おい、そんなことしてる場合じゃ」
「ずっと待ってたの。してくれなくちゃ嫌」

「しょうが無い、お嬢様だな」
「誰のせいよ」

私はユーレンを手放すことができない。ヴィアに返したくない。ユーレンにヴィアの匂いが
付いていないか確かめたい。なんて醜い心の私。

* * *

私とユーレンは抱き合いながらホテルを出た。その時、私達二人を数人の集団が取り囲んだ。
私は青ざめた。ユーレンが私をしっかり抱き寄せる。私も、ユーレンの胸に隠れるように抱きついた。

「ユーレン・ヒビキだな。ちょっと、ご同行動向願おうか」
「ユーレンは見逃して。あなた達の目的は私でしょ」私は必死の声をあげる。

「誰だ? この女」

戸惑ったような声。おかしい、私を連れに来た、フラガの雇った者達じゃ無いの?

「お前など関係ない。我々が用事があるのはユーレン・ヒビキだ」
「だけど、この女も見逃せないわ。私達を見たんだから」

メンバーの中の、学生とも思えるような少女が言った。私が見ても美しい少女。髪は、
ややウェーブがかった細い髪質、それを後ろに簡単に結んでいる。その少女は、顔に
似合わない冷たい瞳で私を睨みつけた。そして、懐に忍ばせた手に拳銃をチラリと覗かせた。
私を殺すつもりだ。

「よせ、カリダ。無駄に血を流すな。一緒に連れて行くんだ」
「カリダ?」 私は呟いた。

「分かったわ」カリダと呼ばれた少女は拳銃に触れた手を放すと、他の男と一緒に私達を
近くに止めてあった車に乗せた。

「一体何者だ?」
ユーレンは車の後部座席で、隣に座る、さっきのカリダという少女に聞く。
「フラガの手のものじゃないの?」私も問いかける。

カリダは車の中で遠慮無く銃を抜いた。
「黙ってて、汚らわしい悪魔の使い。そこの女、フラガなんて知らないわ。
 私達はもっと崇高なものよ」

「カリダ、お前は過激すぎる。財団の理想を忘れたか」助手席の男がたしなめた。

カリダは、謝るように言葉を返した。
「済みません。この言葉に誓います。青き清浄なる世界のために」

「ブルーコスモス!」ユーレンが恐ろしいことを聞いたように呟いた。

私も聞いたことがあった。コーディネータ排斥を謳い、密かに暗殺までしていると
噂される圧力団体のことを。私はユーレンに体を寄せて震えた。

341ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/04/25(日) 07:13
>>過去の傷
ミリィは、アスランには、そっけない。逃げてる? キラは、相変わらずですな。

>>『明日』と『終わり』の間に
ディアッカが、なんというか…… マニアックなMSばかり作ってたせいでしょうか。
ネメシス・フレイ様、煮込むの見ていただけなのに何が…… 次も楽しみです。

342過去の傷・118:2004/04/25(日) 21:02
「ミリィ・・・」
「もう・・・こんなときくらい黙っててよ」
私はそう言うとキラを抱きしめる。
「ごめん」
「私と結婚するんでしょ、もっとしっかりして・・・ト−ルはまだしっかりしてたわよ」
「うん、そうだね、もっとしっかりしないと・・・」
そう言うとキラは立ち上がる。
「その調子よ」
ミリアリアも立ち上がる。
「ミリィ・・・君は僕が守る・・・」
「なら・・・私も一緒に戦うわ・・・キラの想いの分まで・・・」
そしてお互いキスを交わした。
これでキラは完全に私の虜・・・。

ミリアリアとキラは気づかなかった、フレイが殺意ともとれる険しい表情で二人のキスをドアの隙間から見ていたのを・・・この表情はあれより怖い、父を守れなかったキラに怒りをぶつけたときの・・・それくらい怖い表情でミリアリアとキラのキスを見ていた・・・。

キラ・・・こんなに憎しみを覚えたのはパパが死んだとき以来だわ、なんで・・・なんでミリアリアとキスしてんのよ・・・馬鹿。

「ミリアリアさんとお会いしたのですね?」
「はい」
ラクスの部屋というより指揮官の部屋にアスランは来ていた。
「それでどうでした?」
「私はどうすれば・・・」
そう思うのは当然であろう、あの子の恋人を意思がないとはいえ殺してしまったのだから・・・これは戦争だからといって許されるものではないのである、たしかにアスランも軍人だ、何度もあった、しかし・・・殺した相手の恋人と同じ艦にいるというのは・・・。
「どうすればというのは?ミリアリアさんに対してですか?」
「はい・・・私はあの時キラを殺すつもりでした、しかし・・・結果としてキラの友人を・・・私は・・・」
「でも敵だったのでしょう?お互い・・・なら仕方ないのではありませんか?戦争なんですもの・・・少なくとも私はそう思いますわ」
これはキラ様にも言ったことです。
「そう言ってくださいますと私としても・・・」

343流離う翼たち・464:2004/04/25(日) 23:26
 対戦相手のダガーを前にしたフレイは緊張していた。何しろ初めての連合MSとの対戦であり、模擬戦としては初めてキラ以外のパイロットと戦うのだ。今まで自分がキラに勝てたことは無い。キラは自分を「強くなった」と言っていたが、それがどれくらいのレベルなのかを実感として捉えられたことは無い。何しろ測る目安となる相手がキラしか居ないのだから。航空機のシミュレーターでは流石にフラガやキース相手では勝負にならない。というかキラでも2人には負ける。
 だからフレイは、目の前に立つダガーが少し怖かった。初めてのキラ以外の味方との対決。同じ機体、同じ武装、乗っているのは同年代のナチュラル。こんな条件で戦ったことは一度も無いのだから無理は無いのだから無理も無いだろう。
 些か緊張しているフレイの耳に、通信機からアルフレットの声が聞こえてきた。

「お嬢ちゃん、準備は良いか?」
「は、はい!」
「ようし、それじゃあ模擬戦開始だ!」

 アルフレットの合図と共に相手のダガーが突っ込んでくるが、それはフレイの意表をつく動きだった。

「えっと、どういう事かしら?」

 相手はドタドタと走ってくる。その動きはキラどころか、これまで相手にしてきたデュエルやバスターよりも遙かに劣る動きであった。通常のジンやシグーでもこれよりは速く動くだろう。余りにも遅いその動きにフレイがかえって何かの罠かと警戒してしまう。だが、隙だらけのその動きにフレイは訳が分からぬままにライフルの照準を合わせ、トリガーを退いた。実際に弾が出るわけではなく、コンピューターが命中判定を出すだけなのだが、そのコンピューターは一撃で判定撃破を出している。

「えっと?」

 余りにも弱すぎる相手にフレイは状況が理解できなくなっていた。このダガーは何しに出てきたのだろうか。呆然とするフレイの下にアルフレットからの通信が送られてくる。

「ご苦労さん。一瞬だったな」
「あの、さっきのストライクダガーは何しに出てきたんですか?」
「ああ、この基地の新米パイロットだ」
「ああ、訓練生だったんですか」

 それなら納得だ。幾らなんでもあんな動きでは前線に出ても死ぬだけだろう。あれではヨーロッパで初陣したときの自分よりもさらに性質が悪い。ジンを相手に次々と撃ち落される様が目に浮かんでしまうほどだ。
 アルフレットはそれには答えず、次の相手を前に出した。

「ようし、次行け。勝ったら嬢ちゃん連れてデートさせてやる!」
「ちょ、ちょっと待ってください、何とんでもない事言ってるんですか!?」

 自分をダシに部下を煽りだしたアルフレットにフレイが文句を言うが、アルフレットはニヤニヤ笑いを崩さぬままにフレイの文句に答えた。

「お嬢ちゃん、昔から一宿一飯の恩って言うだろ」
「うぐっ」
「まあ全勝すりゃ問題ないんだから頑張りな。ちなみにうちのガキどもは俄然やる気になってくれたぞ」
「しょ,少佐、貴方って人は〜〜〜」

 フレイは歯噛みしてこの上官の性格を呪ったが、それで事態が好転するわけでもない。暫しブツブツと文句を言っていたのだが、とうとう観念して気持ちを切り替えた。確かに勝てば良いのだ。

「もう良いわ、何人でも来なさい。全員返り討ちにしてやるから!」

344流離う翼たち・作者:2004/04/25(日) 23:37
>> ザフト・赤毛の虜囚
むうう、カリダさんがいきなりブルコスに参加しているとは
でも、カリダさんってキラの叔母さんじゃなかったでしたっけ?記憶違いかな
いずれにしても、ユーレンピンチw

>> 過去の傷
フレイ様までダークサイドに取り込まれてしまった
ラクスの言う事だけはずっと変化してませんね

>> 『明日』と『終わり』の間に
ディアッカ、なかなかに多芸な奴。とうとう訪問販売まで
しかし、このカレーは一体。フレイ様が何もしてないのなら、カガリの材料の問題か?

345ザフト・赤毛の虜囚 51:2004/04/26(月) 01:59
9.母親(ママ) 3/8
[我々を利用するつもりか?]

「手荒な真似をして済まなかった。だが、どうしても来ていただいて話をしたいと思っていた」

私の前にいる男は、まだ30歳前後と若そうながらも、丁寧でいて、かつ、威厳のある口調で話している。
私とユーレンは、広いテーブルについている。後ろには、私達をさらってきた者達が、
かしこまったように突っ立っている。その中には、あの少女カリダもいた。

「もっとも、そうは言っても容易には納得しないかもしれんが、そちらの、お嬢さんには
 危害を加えないことを約束しよう」
「自分でした約束をお忘れなきよう。それと、こちらはミセスです」ユーレンが話す。

そう、私はユーレンに抱かれた時、フラガの指輪を外して、そのままにしていた。

「これは失礼した。確か、そなたの奥様とは違うようだが」
「ミセス・フラガです。私との関係は、ご想像にお任せします」

「フン!」 カリダが軽蔑したように小さく声を漏らすのが聞こえた。

「フラガ……、ということは、あのアル・ダ・フラガか。若い妻をもらったと聞いたことがある。
 そう言えば、顔に覚えがある」

私は、事もなげに話す男に、睨むような暗い瞳を向ける。

「ところで、本題に入りたいところだが」
「その前に、もう一つ約束をしてもらいたいことがあります」

「ほう、この状況で、さらに要求するとは」
「私も馬鹿ではありません。あなた達ブルーコスモスが気づいていること、真に望んでいることが
 何なのか、私も知っているつもりです。それが、分かった上で、約束をお願いしたいのです」

「なんと! うむ、言ってみたまえ」
「私とミセス・フラガが、あなた達ブルーコスモスに拉致されていることを公表してください」

「なぜ、そんなことを?」
「私達二人と、彼女の夫、フラガ氏には、あるトラブルが起こっています。このまま二人が
 行方不明になれば、私の研究所にフラガ氏の圧力がかかります。
 私の妻に危害が加わる恐れがあります」

私は不安げにユーレンの顔を見た。ユーレンは真剣そのものの目付きだった。私の心はざわめいた。

「我々を利用するつもりか?」
「ありていに言えばそうです」

後ろに立っている男達が、どよめいた。カリダは、もう手を懐に忍ばせている。

「カリダ、やめい! まったく、お前は何度言ったら分かるのだ!」

男の一喝で、カリダの手が止まった。その後のカリダの顔は、さっきとは違う、まるで、
叱られた猫のように、しょぼんとしていた。

「いいだろう、聞いてやろう。それにしても、自分の立場さえ危ういというのに、この場に
 居ない妻の身を案じ、しかも、我々を利用することを公然言い放つとは……
 大した自信だ。変わった男だな」
男は関心したように呟いた。

「いえ、逆です。私の力など限られています。この場にいないからこそ、こうして、あなた方に
 妻を任せるのです。自分と、そして、ここにいる私の愛しい人は、自分自身で守ります」
ユーレンは、私の肩に、そっと手を置いた。

「ユーレン……」
私は肩に置かれたユーレンの手に、自分の手を重ね、ユーレンを見つめて言葉をかけた。
ヴィアのことだけを想っていると不安だった。私のこと、やっぱり……。

「よし、約束しよう。そなたの奥様の身は保証すると。このウズミ・ナラ・アスハの名にかけて」
「頼みます。ウズミ様」

ここは、オーブ。私達はL4コロニー・メンデルから連れ出され地球に降りた。
そして、オーブの、とある場所に監禁された。このウズミ・ナラ・アスハは、オーブの王族の血筋の人。
だけど、ブルーコスモスに密かに関っていた。何を目的にしているのか、私には分からない。
ただ、私には、自分とユーレンが、どうなるのかということだけが気がかりだった。
そして、その心配も今消えた。ユーレンは私を守ってくれる。

そして、もう一つ。ウズミの言葉の後、うって変わったように、おとなしくなり、切なげな瞳で
ウズミを見つめるカリダの姿が気になった。

(カリダって、ウズミのことが……)

346ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/04/26(月) 02:01
カリダは公式年表ではヴィアの妹ということになっていますが、クローン・フレイの
話を考えていった時は、それが明らかになる遥か前で、その時点で最初からカリダは
ブルーコスモス所属のつもりでした。その他、ストーリーの都合もあり、本SSでは、
妹設定は無視させてもらいます。他にも、色々都合があって、公式年表から改変を加えています。

>>過去の傷
ミリィも、そう言ってるんだから、キラしっかりしないと。で、フレイ様とは?
アスランは、直接ミリィと話しないんですね。結局、「星のはざまで」でも絡みませんでしたし。

>>流離う翼たち
なんかレベルが違う気が。フレイ様、後は全勝するという己自身のプレッシャーに勝てるかどうかですな。

347過去の傷・119:2004/04/26(月) 09:51
「あ、僕、少し出かけてくるよ」
そう言うとキラは出て行った。
その数分後。
キラ遅いな・・・どこ行ってるんだろ。
あ、来た。
「・・・キラ?・・・!!!」
入ってきたのは黒い髪の少年ではなく赤い髪の少女だった。
「フレイ・・・ちょっと勝手に入ってこないでよ」
しかしフレイはミリアリアの言葉には耳をかさずに強引に部屋に入ってきた、あきらかに怒りの表情を浮かべて。
「なによ」
「うるさい」
一言でミリアリアを黙らせると辺りを見渡す。
「この美容液も化粧水も私のじゃないんだけど、あんたのでしょ?部屋から出しなさいよね」
「どうして私がそんなことしなくちゃなんないのよ」
「ここの部屋は私とキラの部屋よ!ラクスの許可も取ってるの!」
苛立たしげに叫ぶフレイ。
たしかに・・・キラ・ヤマト、フレイ・アルスタ−専用個室となっている。
「早く出て行きなさいよね!・・・ちょっと・・・なにいつまでもなれなれしくキラのシ−ツかぶってんのよ!」
フレイはミリアリアのいる寝室まで来るとミリアリアのかぶっているシ−ツを強引に奪い取ろうとする。
「いや、やめて!」
ミリアリアも必死に抵抗する・・・。
女同士の奪い合いとなるが、フレイの方が若干、力が強いのかシ−ツを強引に奪い取る。
「・・・・・・」
「だいたいあんたなにやってるの?仕事しなさいよね、それでも軍人なの!?」
「それはあんただって・・・」
「私はモビルス−ツ操縦をカガリとやってるわ、あんたはなにしてんの?ここで」
「私は・・・CICはダコスタさんが・・・」
声が消え去りそうなくらい小さなミリアリアの声、しかしフレイは容赦ない。
「結局はその人に任せっきりなんじゃないの、モビルス−ツも歩くことすらできない、なんの役にも立ってないじゃない、情けない女だわ、はっきり言ってあんたア−クエンジェルにいた頃の私と同じだわ、さらにキラまで騙して利用しようとしてるなんてほんとあんたって救いようがない女だわ」
利用という言葉に反応した。
「違うわ、私・・・」
「なにが違うのよ!私が知らないとでも思ってるの!?」
「違う、最初は・・・でもいまは違うわ!だいたい・・・フレイになにが分かるのよ!ト−ルが死んで悲しい私の気持ちなんて・・・」
「他人でしょ?恋人といっても他人じゃない」
他人?この女は・・・。
「なんですって!?もういっぺん言ってみなさいよ!」
「ええ、何度でも言ってるやるわ、ト−ルは他人よ、肉親じゃないの!」
「!」
「私にはパパもママもいないわ、あんたにはいるじゃない!あんただけ寂しいなんて勝手に思わないでよ!!!いいかげんにしなさいよね!」
そしてキラが戻ってきた。
「キラの馬鹿!」
「フレイ!?」
「あんたミリアリアに騙されてるのよ!?」
終わったわ・・・。
「キラの嘘つき!あんたなに考えてるのよ!ええ!あんたは私が好きなんじゃないの!?」
フレイの迫力にキラも圧倒されてるみたい。
「あんたには私がいないと駄目なんだから!私がいないとなにも出来ないくせに!この馬鹿!!!キラ、黙ってないでなんとか言いなさいよね!私はあんたが好き!あんたはどうなの!?」

348キラ(♀)×フレイ(♂)・42−1:2004/04/26(月) 17:51
絶望と希望が、まるでコインの裏表のように目まぐるしく入れ替わった夜が明けた。
サドニス島二日目。爛々と輝く太陽は、東の海を赤く染めながらゆっくりと立ち昇る。
その太陽が穏やかに本島普天に鎮座した時分、安ホテルの出口から一組のカップルが
のそのそと姿を現した。キラとフレイである。
二人は互いに身体を寄せ合いながら、まるで徹夜明けのリーマンのような寝不足の
顔を覗かせている。今の時刻は正午過ぎ。一見、お寝坊さんの身分を詐称しながらも、
実は一晩中情事に明け暮れており、ほとんど一睡もしていなかったからだ。
前日の恐怖体験のトラウマを癒やすかのように、はじめてアークエンジェル以外の場所で
濃密な一夜を過ごした二人の共通の感想は、「部屋にシャワー室があるのって便利」である。
いやはや、フレイはともかくキラまでもが、随分と思考が廃れ始めたみたいだ。

集合時間までまだかなり間の合った二人は、思考をアンプラトニック(自堕落モード)
から、プラトニック(フレッシュモード)へと切り替え、アミューズメント・パーク
で時間を潰すことにした。



「わぁい。遊園地なんて何年ぶりかしら」
ホテルからバスを二つほど乗り継いで、二人はパークのゲート前に辿り着いた。
意外とお子様ランチなキラは、遠目からでも視認可能な大型観覧車の存在に瞳を
キラキラと輝かせていたが、それとは逆にフレイは退屈そうに欠伸を噛み殺した。
こんなご時世だから、客足もガタ落ちしているだろうし、採算が合わずに営業停止して
いるだろうと高を括っていたフレイだが、彼にとって不幸(キラにとって幸い)
なことに、悪魔の壁が開かれる前後の日付は、パークは臨時営業していたのだ。

「流石に中は空いてるわね。これなら待たずに済みそうだわ」
フリーパスを買い込んで、全乗り物制覇に浮かれて「ルンタッタ♪、ルンタッタ♪」
とワルツのダンスを踊りながら鼻歌を演奏するキラに、フレイは軽く肩を竦める。
「なんで、こうも極端なのかね…」
今のキラのドリィーミングな姿と、彼だけが知る彼女のアダルティックな
夜の顔とのギャップの激しさに、フレイも些か戸惑いを感じざるを得ない。
「早速乗り物に乗ろうよ」「その前に軽く腹ごしらえが先だろう」
と意見が真っ二つに分かれていた二人の前に、デート中のトール達カップルが姿を現した。


「あっ、ミリィ達も来ていたんだ………って、どうしたの二人とも?」
軽い笑顔で話しかけたキラとは打って変わって、二人は警戒心バリバリで、キラ達
…というよりはキラの隣にいるフレイを睨んでいる。彼氏の影にそそくさと隠れた
ミリアリアは小動物のように脅え、トールは身体全体から敵意を発散させている。
「それじゃ、僕は何か飲み物とフードを買ってくるよ」
脅怒の相反する二人の視線を軽く受け流したフレイは、この機を幸いにと自分の意見を
押し通すことにして、その場を離れていく。フレイを過剰に意識しているトール達とは
対照的に、フレイの方は二人に一瞥もくれることなく、彼女達の存在を無視していた。

くそっ!キラが関わらなければ、俺らのことは眼中に無しかよ!?
てっきり二人でいることを皮肉られて、嫌味の一つでも投げ掛けられるのでは
身構えていたトールは、シカトされた事に腹を立てて内心で歯軋りした。
フレイと天中殺に近い相性の悪さを誇るトールは、彼がどういう行動をとっても
負(マイナス)の感情しか刺激されないみたいだ。

349キラ(♀)×フレイ(♂)・42−2:2004/04/26(月) 17:51
本当に二人ともどうしたんだろう?
トールがフレイを嫌っているのは何時ものことだけど、どうしてミリィまで…。
そういえば、ミリィ達の格好が昨日と全く同じだけど、それと関係あるのかな。
キラは小首を傾げたが答えは出てこない。
営倉でのフレイと二人の確執を知らないキラにとっては、解けない謎だった。
それから、三人のいる空間(スペース)に間の悪い沈黙が続いた。
鈍感なキラにも、フレイとミリィ達の間に何かあったことぐらいは簡単に察せたが、
いくら何でも直接問うのは躊躇われた。
逆にトール達は、キラに対する一種の負い目のような感情に囚われてしまい、
その業が彼らを金縛りにして、この場から立ち去らせるのを躊躇させていた。
「やっぱり、皆ここに来ていたんだ」
この奇妙な三竦み状態を打破したのは、さらなる第三者グループの出現だった。


「カズイ、サイ……それに、カガリ?」
愛想笑いに近い笑顔を浮かべているカズイ。ポーカーフェイスを維持しているサイ。
何故か不貞腐れたような表情でソッポを向いているカガリ。キラが振り返った先には
私服姿の三人が三者三様のポーズで佇んでおり、あまり日常での接点を感じさせない
奇抜なトリオの発生にキラは驚きの声を上げる。
「ははっ…。こんな偶然もあるんだね。
これでフレイがいたらヘリオポリス組全員集合じゃないか?」
「フレイは今、場を外しているだけよ。もうすぐ戻ってくると思うけど」
なんとなく沈滞していた場の雰囲気を和らげようとしたカズイの一言は、逆効果みたいだ。
フレイの存在を確認した刹那、サイは態度を硬化させ、カガリは軽く舌打ちする。
これを契機として、停滞していた場は大きく乱れ始めた。


「キラ、行こうぜ」
「えっ!?ちょ…ちょっと、カガリ!?」
唖然とするキラや周りの様子には全く頓着せずに、カガリは大胆にもヘリオポリス組
環視の前でキラの腕を掴むと、強引にキラを引き摺り出した。
どうやら、鬼の居ぬ間に何とやらで、この好機にキラをフレイから掻っ攫う腹らしい。
「カズイ、行きましょう」
次に行動を起こしたのはサイだ。こんな場所でフレイと顔を合わせたくなかった彼女は、
極めて消去法的に道連れを選択すると、キラ達とは逆の方向へ姿を消していった。
「ねぇ、トール。これって?」
ミリアリア達が呆然としている間に、場は激変し、二人だけがこの場に取り残された。
さらには、極めて間の悪いタイミングで、買出しに出かけていたフレイが戻ってきて、
トール達にとって最悪のフォーメーションが組まれることになった。

「ねぇ、君たち。キラがどこに行ったか知らないかい?」
トレイ一杯に食料を抱えたフレイは、キョロキョロと辺りを見回してキラの不在を
確認すると、あたかもそれだけがミリアリア達の存在意義であるかのように、
初めて彼の方からトール達に声を掛けてきた。
そのフレイの傲慢さにカッとなったトールは彼の質問を無視しようとしたが、
「キラならカガリが連れて行ったわよ」
揉め事はゴメンとばかりに、ミリィがやや後ろめたそうな表情で、情報をリークする。
「ふ〜ん」
「ご…誤解しないでよね。本当にカガリが勝手にやったことで、私たちは関わっていない」
意味深な目付きでミリアリアを眺めるフレイに、ミリィは必死に弁解した。

350キラ(♀)×フレイ(♂)・42−3:2004/04/26(月) 17:52
「おい、ミリィ!」
先の彼女の言い草は、トールにとってあまり気持ちの良いモノではなかった。
妙な喩えだが、虐めっ子の魔の手から必死に逃れようとした気弱な級友の逃走先を
売り渡した(チクった)悪辣な女生徒の姿とダブってしまったからだ。
トールはミリアリアの態度を嗜めようとしたが、彼の腕を強く掴みながら、縋るような
瞳で自分を見上げるミリィの脅えた表情を見せられたら、何も言えなくなってしまう。
これが、あのミリィかよ…。
かつて、親友のキラの為に何が出来る…と共に語り合った彼女はもういない。
今のミリィから感じられるのは自己保身だけだ。あんな脅しを受けた後だから、
無理からぬことかも知れないが、トールは眩暈に似た苛立ちを覚えた。


「なるほどね」
トールの内心の葛藤などお構い無しに、フレイはキラ拉致事件をどう片付けるか思案する。
それから何を思ったのか、フレイは二人に近づくと、トールの掌の上に二人分の食料と
飲料の置かれたトレイを押し付けた。
「何のつもりだよ?」
「情報料だよ。キラに振られてしまった僕にはもう必要のないものだからね。
ここは大人しくパークから引き上げることにするよ」
元々遊園地でのお子様デートにさほど未練を抱いていなかったフレイは、トール達が
拍子抜けするぐらい、あっさりとカガリにキラとのデート権を譲渡することにした。
このフレイの余裕は、例のお姫様救出ミッションをクリアした件が大きかった。
単なるデートイベントと命懸けの救出イベント。世界が正しく出来ているのなら、
どちらがより多くヒロインの好感度を得られるかなど、比べるべくもない。
まあ実際は、逆にますますキラのフレイへの疑惑度が高まっていたのだが、
流石のフレイも読み違えていた。というか、悪魔的にキラの思考と心情を、
完璧に把握・操作していた初期の頃に比べれば、最近のフレイの言行は空回り
しているケースが多々見受けられる。
人間とは、己から遠く離れるほど客観的な判断が可能で、逆に自分に近づくほど、
情が混じって正確な判断が出来なくなるというが、それだけキラの存在がフレイ
の裡に深く浸透しているという証なのかも知れない。


「本当にこのまま黙って手を引くつもりなのか?」
「それじゃ何かい。君たちは僕がキラを追いかけて、パーク全体が注目するほどの
派手な修羅場をカガリ君と演じるのを期待しているわけかい?」
「そ…そんなわけじゃ」
トールは言葉を詰まらせる。彼は別にトラブルを望んでいるわけではなく、先の件で
フレイのキラへの異常な執着心を思い知らされていたので、キラ誘拐犯(カガリ)への
寛容さを不審に思っただけだ。そのトールの疑惑に感応したのかは不明だが、フレイは
彼が感じているキラの恋愛観(二股理論)について簡単に説明した。

「最近、何となく気付いたんだけどね。どうもキラは、僕とカガリ君をそれぞれ
別の役割に分けて、器用に両天秤を掛けているみたいなんだ。
強いて呼び方を定めるのなら、プラトニックとアンプラトニックってところかな?」
「プッ…プラトニックとアンプラトニック!?」
「どうやら、キラの中ではカガリ君はプラトニック担当らしい。つまり、こういうお子様
…もとい健全なデートをするなら、僕より彼の方が楽しめるってことだろう。
逆に僕はアンプラトニック担当さ。何がアンプラトニックかは想像にお任せするよ。
もしかすると、僕はキラに良いように身体だけ利用されているのかも知れないね」
そのフレイの物言いにトール達は絶句した。彼の言い分に全く理がないわけではないが、
本来なら到底、男子の側から主張されるような台詞ではない。

351キラ(♀)×フレイ(♂)・42−4:2004/04/26(月) 17:53
「おい、フレイ。何時も自分の立場だけ主張して、相手を一方的な加害者にしやがって。
言うに事欠いて「身体だけ利用されていた」だぁ!? それはテメエだろう!?
お前、今日までに何人の女の子を食い物にしてきたと思ってるんだよ!?」
ある意味、今のトールは自分の彼女(ミリィ)をフレイに人質に取られたようなもので、
キラに関して静観のスタンスを貫こうとしていたが、その誓いは、早くも破られた。
「だ…駄目よ、トール!」
沸騰してフレイに踊りかかろうとするトールをミリアリアは必死に宥めようとする。
ミリィはフレイを怖がっていたし、何よりも、どうせ最終的には、また例の口八丁手八丁
で言いくるめられるのが目に見えていたからだ。無論、トールとて馬鹿ではない。
彼女の予測している顛末ぐらい弁えていたが、それでも言わずにはいられなかったのだ。

「僕は今日まで一目惚れされたことはあっても、一度も一目惚れしたことはなくてね」
先の二人の期待(?)に応えてか、フレイがまた何やら珍妙な事を宣い始める。
「はあっ!?」「だから?」
ミリィは素っ頓狂な声を上げたが、トールは軽く眉を釣り上げただけで鉄面皮を守った。
流石にトールもいい加減フレイの遣り口に慣れてきたので、この後、話しがどう展開
するにしても、一々驚きのリアクションなど取ってはいられないということだろう。
「僕は超能力者ではないからね。その娘が自分に合うか否かは実際に付き合って
みなければ判らない。趣味や役割分担、一緒にいて楽しいか、さらには身体の相性
などを色々と試してみた結果、互いを不幸にすると判断したから別れたまでさ。
勿論、これは僕が大変に我儘なだけなので、彼女達には何の落ち度も責任もないけどね」

やっぱり、フレイは確信犯的なプレイボーイだわ。
彼の恋愛スタンスを聞かされたミリィは、今更ながらにフレイは悪辣だと思った。
確かに互いを知り合うのは大切な事だろう。けど、男の側の理論が勝ちすぎている。
男と女では失うモノの大きさが違うのだ。試される女の側としては溜まらない。
「それで、キラはお前の適正審査に合格したというわけか?」
その彼女の想いを代弁するかのように、トールが口を挟んだ。
「ああ、彼女は限りなく僕の理想に近いね。特に身体の相性は最高だよ」
再びミリアリアが絶句するぐらい、フレイはいっそ抜け抜けと男側の理(利)を主張する。
「それが納得いかないんだよ。許婚がいて、その上で、選り取り見取りの立場のお前が、
どうしてあれだけ嫌っていたコーディネイターのキラを選ぶんだよ!?そもそも…」
「おいおい、人を好きになるのに一々尤もらしい理由がないといけないわけかい?
それなら君は、ミリアリアを好きになった訳を原稿用紙800字以内で語ってみせろよ。
話の筋や思考に矛盾がないか、一つ一つネチネチと添削してあげるからさ」
トールが、前々から感じていた疑問をぶつけたが、反って茶化されてしまう。
暖簾に腕押しというか、フレイには何を言っても、霧散霧消されてしまうみたいだ。
「悪いけど、これで失礼させてもらうよ。君達だって僕と議論しても全然楽しくないだろ?
他人の色恋沙汰よりも、もっと自分達自身の幸福を追求した方が人生は楽しいと思うよ?」
フレイは再度、最後通告を突きつけると、二人を振り返ることなくパークから出て行った。


「ええい、くそ!」
トールはフレイから手渡されたトレイの中身を、勿体なくもゴミ箱の中に放り捨てる。
食べ物を粗末にするのは気が引けたが、「キラの件は観て見ぬ振りをしろ」とまるで
フレイに買収されたかのような嫌な錯覚を覚えたからだ。
トールは先のミリィの態度を苛めに喩えたが、それは彼自身にも適応可能な事象だ。
「苛めというのは、積極的に参加しなくても、ただ黙って見ている者もまた同罪である」
小さい頃から正義感が強く、竹を割ったように真っ直ぐな性格だったトールは、
そう信じて、加担はおろか、周りの虐めを見過ごした事さえも一度もない。
故にヘリオポリスの学園時代、単にコーディというだけで村八分状態だったキラを、
サイと共に自分達のゼミに招いて、彼女と交流を深めてきたのだ。

352キラ(♀)×フレイ(♂)・42−5:2004/04/26(月) 17:53
フレイがキラを害しようとする敵なら、トールは刺し違えてでもフレイと戦う覚悟を
持てただろう。けど、色々と腑に落ちない点はあるにしても、フレイは今の過酷なキラの
心に安らぎを与えている彼氏なのだ。客観的に見れば、その構図を揺さぶり無用な揉め事
を起こしている闖入者は自分達の方だろう。それもトールが踏み切れない理由の一つだ。
何よりも…。
トールはチラリと自分の片腕に抱きついている愛しい人(ミリィ)の姿を見下ろす。
「この件に深入りするつもりなら、君達自身の破滅を賭けて僕に挑んでくるんだね」
どうあっても、彼女を巻き込む訳にはいかない。もう他人同士ではない自分達なのだから。
けど、俺はそうやって理由を付けて、奴から逃げ、キラを見殺しているだけじゃないか?
今まで、矛盾や葛藤とはさほど無縁に生きてこられた少年は、人生で初めて抱える板挟み
の問題に、そう心を痛めて自問自答したが、この場で回答は得られなかった。



「ひいっ!?カガリぃ!で…出た、出た!!」
「落ち着けって、キラ。単なる作り物じゃないか」
トールとミリアリアの二人が、まるでカガリの尻拭いのようにフレイと相対していた頃、
その事態を招いた張本人達は、暢気にお化け屋敷でデートと洒落込んでいた。

「ちょ…ちょっと、カガリ、離してよ」
左手首を掴まれたキラは、両足で踏ん張ってその場に留まろうとしたが、ズルズルと
カガリに引き摺られていく。その様は、まだ遊び足りずに帰宅を嫌がって駄々を捏ねる
愛犬の手綱を必死に引っ張る飼い主との構図と似ていなくもなかった。
「いいから大人しく付いて来い、キラ。これはお前の為でもあるんだぜ」
「えっ!?」
キラはキョトンとした表情で、意表を突かれたかのように、カガリの顔を覗きこむ。
「カズイとか言ったけ?あいつ、どうやら優男に振られた許婚(サイ)に気があるらしい。
サイの姉ちゃんも元婚約者(フレイ)とは顔を会わせたくないだろうから、俺たちが
いなくなれば、二人だけでしけ込む公算は高いぜ」
「カズイがサイを?」
「多分な。俺は午前中、あいつらと一緒に行動していたから何となく判ったんだ。
二人がくっついてくれれば、お前にとっても有難い話じゃないのか、キラ?」
胡散臭そうな表情のキラに、カガリは再度、建前の口上を口にする。
カズイのサイへの恋慕に気付いたこと自体は嘘ではないが、本来ならカガリは他人の
色恋沙汰を影で応援してやるほど殊勝な性格ではない。欲しい物(者)は、他人から
与えられるのではなく、自分で奪い取るのが、彼の人生哲学だからだ。
今回だけ例外的に、キラを説き伏せるための方便として、相互利用するつもりだ。


カガリの提案を聞いたキラは、その場に足を止め思案顔で俯いた。
確かにサイが新しい幸せを見つけてくれれば、キラの罪悪感も幾分薄まるのではあるが…

カガリ、いくら何でもそれはチョト無理があるんじゃないの。
改めてカズイの姿を心の中に思い浮かべたキラは、内心でキツイ判定を下した。
もし、キラがトリビアの泉に出演していたら、へぇボタンを連打していただろう。
意中の高嶺の花に振られたヒロインが、身近にいる自分を慕っている平凡な男性と
くっつくというシチュもまた恋愛物の黄金の不文律ではあるが、現実としてどうだろう。
キラは、カズイを友人としてはともかく、異性としては全く評価していなかったので、
フレイの許婚だったサイが、いきなりカズイに転ぶとは思えなかった。
キラの男性基準は、物心ついた時から最も彼の身近にいた異性(アスラン)をベース
としていたので、理想が高くなってしまうのは仕方が無い傾向なのかも知れない。
ただ、アスランほど優秀で誠実な男性は極めてマレ(稀有)な存在であり、彼を測りに
して篩いにかけられたら、ほとんどの男性にとっては、堪ったものではないだろう。

353キラ(♀)×フレイ(♂)・42−6:2004/04/26(月) 17:54
「でも、そういう事なら仕方ないよね。サイには悪いことしちゃったしね」
内心でサイ・カズイカップルの不成立を予言したキラだったが、まあ、それはそれ…と
いうことで、カガリの提案に乗り、デート相手をアンプラトニックからプラトニックの
パートナーへの切り替える事にする。
キラは神妙そうな表情を取り繕うとしていたが、どうしてもニヤついてしまう。
カガリの強引な拉致行為自体は、恋人と逃避行…というシチュに密かに憧れていたキラ
は実はあまり悪い気はしていなかったし、フレイの予測通り、彼に疑惑を覚えて以後は、
ベッド以外の場所では、カガリの方が心が休まるのは確かな事実だ。
ただ、このままだと後(フレイ)が怖そうなので、一応の抵抗を見せていたキラだったが、
カガリの甘言を渡りに船とばかりに、一時の快楽の為に悪魔に魂を売り渡すことにした。


「うらめしやぁ〜!」
「ひいっ!?カガリぃ!で…出た、出た!!」
薄暗い館内の中で、お岩さんに扮した幽霊が、まるでクストーから打ち上げられるグーン
のように、井戸の中からピョーンと飛び出し、キラは涙目になってカガリに抱きついた。
「こらっ、くっつくな、キラ!…って、お前、本当に怖いのか、これが?」
自分に胸元に必死で取り縋るキラをカガリは呆れたような瞳で見つめる。
本物の戦場で生命の遣り取りを体験している者が、何でこんな作り物のお化けを
恐れるのか、カガリには理解不能だった。

お化け屋敷を出た二人は、次はジェット・コースター、絶叫マシンなど定番の乗り物
を次々と制覇していく。流石に今度はキラも怖がることはなかったが、キャーキャー
叫んで心底楽しんでいるようだ。
本当に、何でこんな物を楽しめるんだ?子供騙しも良いところじゃないか。
戦闘機での空戦経験のある彼にとっては確かにそうだろうが、それはキラにも言える
ことの筈なのに、キラはまるで飽きること無く、カガリの手を掴むと、逆にカガリを
引き摺って次の乗り物へと突進していく。
もしかして、俺はあの悪魔にキラのお守りを押し付けられただけなのか?
十個以上の乗り物を盥回しされたカガリは、自分からキラを拉致した分際で、
そんな自己中な被害妄想に陥るほど、心身共にヘトヘトに疲れ切ってしまった。


「はぁ、はぁ、やっとこれで終わりか」
二人が最後に辿り着いたのは、パーク目玉の大型観覧車だ。今現在の時刻は夕暮れ時。
この時間帯に、観覧車の頂点付近から見られる夕焼けは絶景で、恋人たちが甘い一時
を過ごす為のデートスポットとして定評がある。
観覧車は緩やかに上昇し、ここへ来てようやくカガリは一息つくことが出来た。
「ほら、海岸線が見えてきたぞ、キラ?」
カガリは窓の外を指差したが返事はない。先程までのパワルフさが嘘のように、
キラは押し黙ったまま、軽くカガリにもたれ掛かり、身体を預けてきた。
「おい、キラ……」
キラの身体を揺すりかけてカガリは言葉を飲み込んだ。ここに来るまでキャーキャー
騒ぎ続けて遊び疲れたのか、キラはカガリの肩に頭を乗せたまま熟睡していた。
「しょうがない奴だな、まったく…」
カガリは軽く苦笑する。こうしてキラのあどけない寝顔や、先までの子供のように
楽しそうにはしゃぐ姿を見ていると、自分の心労にも意味があるように思えてきた。
「でも…」
さっきから、キラのふくよかな肢体の感触がカガリの心を掴んで離さない。
彼女の豊かな胸の谷間や、ミニスカートから覗かせる白い太腿を至近で捉えたカガリは、
キラを妹ではなく性の対象として意識してしまいゴクリと生唾を飲み込んだ。
「どんなに幼そうな表情をしていても、こいつはもう女なんだ」

354キラ(♀)×フレイ(♂)・42−7:2004/04/26(月) 17:55
次の瞬間、ハッと我に返ったカガリはブンブンと頭を振って、煩悩を押しやった。
「いけない、いけない。何、考えてるんだ。こいつは俺の妹なんだぞ。それを…」
それでもカガリは想像する。
もし、メンデルを訪ねる事無く、あの忌まわしい出生の秘密を知らなければ、
自分達は今頃どうなっていただろう。
ひょっとすると、彼はキラを実の妹とは知らずに、異性として惹かれていたかも。
今現在も時たま妹である現実を忘れてしまいがちなので、十分に有り得る話しだ。
「何、やってるんだろうな。俺は…」
カガリは溜息を吐いた。こんな子供染みた真似をしてキラを拉致し、一時的にフレイ
から引き離したところで、単なる対処療法でしかなく、抜本的な解決にはならない。
最終的には、キラは自分ではなく、またあの悪魔の元へと戻っていってしまうのだから。
けど、他に方策が無いのもまた事実だ。現在の所、自分はキラに横恋慕していると
AA内では見られており、そんなカガリがフレイの危険性を訴えた所で、単なる痴話喧嘩
の延長としか思われないだろう。或いは自分がキラの兄である事実を打ち明けられれば、
キラも耳を傾けてくれるかも知れないが、それはキラ自身の為に暴露出来ない真実だった。
「何で、あの悪魔なんだ。本当にキラを大切に想ってくれている人間が、
キラを支えてくれたなら、俺が余計な心配をする必要性はなかったのに…」
カガリはキラの本当の想い人であり、今現在キラと対立しているアスラン・ザラの存在を、
この時はまだ把握していなかった。


「うっ…う〜ん」
突然、彼是悩んでいるカガリの隣にいるキラが僅かに身じろいだ。
「おっ…おい、どうした、キラ?」
キラは脂汗を掻きながら、ウーン、ウーンと苦しそうに唸っている。
もしかすると、昨夜、マイケルに襲われた時の悪夢を見ているのかも。
「だ…駄目。フレイ。……は、お尻は嫌だよぅ………」
「へっ?」
どうやら違ったみたいだ。カガリは、最初は羞恥で傷のない側の頬を赤く染め、
さらには怒りで顔全体を真っ赤に染めた。
「あの野郎、キラに一体何しやがった!?」
或いはカガリのフレイへの憎悪が殺意に転換されたのは、この瞬間だったかも知れない。
カガリ自身は特に意識していなかったが、彼はかなりのレベルのシスコンだった。

355キラ(♀)×フレイ(♂)・42−8:2004/04/26(月) 17:55
一方、その頃、ジブラルタル基地には、宇宙から降下したアスランとニコルが到着して、
クルーゼ隊の赤服チームが全員集結した。先着のイザーク、ディアッカコンビと
久しぶりの会合を果たしたアスラン達だが、場の雰囲気はあまりよろしくなかった。
原因は、彼らの隊長であるクルーゼが、イザークの直訴を受け入れて足付き討伐チーム
を編成した際に、そのリーダーにアスランを指定してしまったからだ。

「俺…いえ、私がですか?」
「そうだよ、この任務が勤まるのは君しかいないと私は思っている。
期待しているよ、アスラン」
クルーゼは仮面の下に、他者からは窺い知れないある種の笑いを浮かべると、
彼らの間に不和の種をばら撒いて、そのまま会議室から出て行った。
「大出世だな、アスラン。いや、今はザラ隊の隊長か」
クルーゼの撒いた種は早くも発芽し、早速イザークがアスランに絡んできて、
アスランは軽く舌打ちする。
「クルーゼ隊長の命令だから、仕方なくお前を隊長と敬ってやるが、隊長殿の失策は
隊全員の評価に関わってくるのでな。以前、独断でストライクを捕獲しようとして、
結局、取り逃がしてしまった時のような失態は見せてくれるなよ」
「イザーク!」「くっくっく…」
ニコルは大声を張り上げてイザークの非礼な態度を嗜めようとし、明らかに今の事態を
面白がっているディアッカは、瞳に陽気そうな色を浮かべて笑いを押し殺した。
クッ、コイツ。
イザークの慇懃無礼な態度に、アスランはうんざりした様な表情を啓かした。
彼は何時もそうだ。アカデミーの時から何かに付けてアスランに執拗に絡んできたのだ。
野心剥き出しで、自分に対抗意識を燃やすのも結構だが、その前に、少しはそれに
相応しい実績をあげてみせたらどうなのだ。
砂漠での戦闘で、彼らが何ら戦況に寄与することなく、反って味方の足を引っ張って
バルトフェルト隊の全滅に貢献したという基地内の噂はアスランの耳にも届いていた。
そういえば幼年学校時代も、今のイザークのように、妙に自分に敵対心を抱いている
上昇志向の強い級友がいたのをアスランは思い出しが、名前までは思い浮かばなかった。

結局、「善処する」と、まるで誠意のない政治家のようなコメントをイザークに返した
アスランは、心配そうに声を掛けるニコルを無視し、クルーゼに続いて会議室を後にする。
キラ…。
既に彼の心の中には、イザークへの苛立ちなど完全に消失している。
かつての級友…いや、大切な想い人への複雑な想いに満ち満ちていた。
キラ、俺は再びお前と戦わなくてはならないのか…。
「昨日の友は、今日は敵」というわけでもないだろうが、その運命の理不尽さに苦悩する。
自然、キラの良心を悪用し、兵器として利用しているとしか思えない足付きの軍人共や、
その非力さ故に、彼女を自分と敵対せざるを得ない事態にまで追い詰めた、キラの
「守るべき大切な友達」とやらに対してさえも、アスランは好意的ではいられなかった。


それから、数時間後。ジブラルタル基地から、三機のガンダムを乗せた輸送機が
カーペンタリア基地に向けて発進した。
イージスを搭載した輸送機は計器の故障が見つかり、離陸許可が下りなかったので、
アスランはしばらくの間、基地内での待機を命じられていた。
この些細な運命の悪戯が契機となって、キラの心に深く浸透している彼女の知人から、
現在のキラの近況を直接聞き出す機会を得られることになるなど、当然、今のアスラン
には想像もつかなかった。

356ザフト・赤毛の虜囚 52:2004/04/27(火) 06:32
9.母親(ママ) 4/8
[うふ、うふふ……]

「うふ、うふふ…… うふ」

私の表情は自然にほころんでいた。ユーレンが、私のことを『私の愛しい人』と呼んだことに
舞い上がっていた。

「さらわれた身のくせに、気持ち悪い笑い方してるんじゃ無いわよ」
私に与えられた部屋まで連行してきたカリダが、不快感を投げかける。

「いいじゃない。嬉しい時は笑わなきゃ。今まで笑うことさえできなかったんだから」
私はカリダに、自分でも馴れ馴れしいと思うような言葉使いで話しかける。

「アンタって変! 何考えてるの。自分の立場分かってるの?」
「分かってる。私は、あなた達ブルーコスモスに拉致された。囚われの身。
 だけどね、ここにはユーレンがいる。私を『愛しい人』と言って守ってくれる。
 だから、私は安心していられる。フラガのとことは大違い」

「まったく変なやつね。信じらんない。自分の夫のところより、私達にさらわれた方が嬉しいですって」
「そう、嬉しい。私とユーレンをさらってくれて、ありがとう」

カリダは、顔を真っ赤にした。懐に手を伸ばすけど、そこには銃は無い。
私の面倒を見る役目のため、取り上げられたのだ。私も、それを見ていた。

「あなたって、すぐ銃で人に言うことを聞かそうとするけど、そんなことじゃ、人の心は動かないわ」
「余計な、お世話よ」

「特に、あなたの愛しいウズミ様にはね」
「!?……」

カリダは、さらに顔を真っ赤にして、パニックになっていた。
私は、そんなカリダの様子をじっくり楽しんだ。

実は、この手のやりこめ方って、ヴィアに、よくやってたのよね。ヴィアは意思が強くて頑固だけど、
女らしい弱点突かれると、すぐに顔を真っ赤にして何も言えなくなるもの。この子ってヴィアと似てるわ。

「うるさいわよ。この不倫女!」
「そっちこそ、身分の違う道ならぬ恋に憧れて。切ないわね…… 人のこと言えないんじゃない?」

「冗談じゃない、アンタと一緒にしないでよ!! それに違うわよ、ウズミ様は、あんな擦れた男じゃないわ!」

カリダは、捨て台詞を残して奥へ引っ込んだ。

結果的に、この先制攻撃が功を奏して、私とカリダとの関係は、終始、私が優位に立てた。

ユーレンはウズミと話をして、何かブルーコスモスのための研究に手を貸しているらしい。
私は、それが何なのかは気にしない。夜にはユーレンが私のところに来てくれるから。
フラガとの虜囚生活とは大違い。私は、ここが幸せだわ。ユーレンを独り占め。

…… ごめんね、ヴィア。

357ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/04/27(火) 06:34
>>過去の傷
ラクス、キラとフレイ様の専用個室って、なんて札を付けてるんだ……
フレイ様、ミリィには、ちょっと言い過ぎ。肉親以外でも大切な人がいることを
自分で分かっているはずなのに。でも、そうであっても譲れない気持ちも分かります。

>>キラ(♀)×フレイ(♂)
ヘリオ組 1 の遊園地アバンチュール、良かったです。
ミリィとトールは、せっかくの思い出の日が、フレイ(♂)のせいで台無しに。
カズイは、それでも、サイ(♀)と、少しは、いい思いが出来たのかな。
キラ(♀)は、やっぱり、TV本編のフレイ様と合成されているのか、危ない魅力を発散してますね。
カガリ君(♂)も大変でしょう。で、次は運命の出会いですか。

358過去の傷・120:2004/04/27(火) 13:02
フレイは言ってた、心が読めるって・・・、心・・・そうよ、心の中では誰もどう思ってるのか分からない、フレイがそうだったように・・・。
あの男も・・・アスラン・ザラ、キラの前では言ってた、お前を殺そうとしたって・・・ディアッカと聞いたことがある、でも本当は違うのかもしれないわ、キラと喧嘩になるのがいやで、嫌なように見られるのが嫌でああ言ったのかもしれない・・・いえきっとそうよ・・・あの男はト−ルを殺したのよ、虫けらのように・・・許さない、絶対に許さない・・・。
「このままには・・・しないわ」
私は決心した・・・。
でも、どういうふうに?力では到底敵わない、相手はキラと同じコ−ディネイタ−、それに女の力では男に勝てないのも分かってる・・・でも女にも武器がある・・・色気・・・そして魅力・・・キラと同じように私の魅力で・・・婚約者がいても関係ない。
ミリアリアはもはやキラのことなど頭に片隅にもなかった。
だってキラのことはどうも思ってなかったから・・・。

次の日の朝。
「まだまだだな、君達はまだアストレイの性能を引き出せてない」
「「「だって〜!」」」
「よし昼からはカガリにアルスタ−二等兵も加えての練習だ、いいね?」
「「「は〜い!アスランさんと一緒なら私達どこまでもついていきます!」」」

パイロットロッカ−に来たアスランは。
「キラ・・・もしお前が・・・二コルと知り合っていたら・・・そのときは・・・!」
ふいに香水というか化粧水の香りがした。
「ラクス?いや・・・」
振り向くとそこには・・・。
「君は・・・」
「ミリアリア・ハウです」
あの少女だ。
いつみても可愛い。
ナチュラルでもフレイやミリアリアは飛び抜けているほどの美人だ。
アスランも可愛いとは思っていた。
ラクスに匹敵するほどの可愛さだろう、フレイ、ミリアリアは。
「すまない・・・」
「え・・・?」
「俺、いや私は君になんてことをしてしまったんだろう」
アスランはミリアリアに頭を下げる。
そのアスランをミリアリアは冷たく見下ろす。
「意思が無かったとはいえ君の大切な人を死に追いやってしまった・・・すまない」
卑怯な人、偽善ね、自分を助けたいだけなんだわ。
「いいんです・・・もう」
無理に笑顔を作りこの男を油断させる。
「終わったことですから・・・気にしないでください」
「しかし!」
「それが戦争です、分かってたことですから」
「君は・・・え!?」
突然ミリアリアに抱きつかれ戸惑うアスラン。
至近距離から可愛い少女にみつめられ、背中に暖かい腕の感覚を感じてドキンとする。
「私はどうすればいい・・・?」
「なにもしなくていいです・・・」
「いやしかし・・・だが私に出来ることは君を・・・君達を守ることだ、それが彼に対するせめてもの償いになればいい・・・」
そうだ、彼に対するせめてもの償いはしなくてはならない、この艦の人を、この少女も守りぬくことだ・・・。
「なら・・・私も一緒に戦います、貴方と共に・・・」
ミリアリアの体がさらに擦り寄ってきた。
そして自分の唇に彼女の唇が触れてくるのが分かる。
「私をあげる・・・」
そしてアスランは気づいた、彼女にキスされているのだと・・・そして彼女の唇と吐息につい酔って目を閉じてしまった、そして彼女の魅力の前にアスランは忘れた、婚約者であるプラントの歌姫のことを一瞬忘れてしまった、それくらい暖かかったのである。
(キラ・・・お前が地球軍の残った理由が少し分かった気がする・・・)

359私の想いが名無しを守るわ:2004/04/28(水) 02:42
>>過去の傷
ミリィは矛先をアスランに変えましたか。で、その武器で、どうするのでしょう。
まあ、方法はともかく、ミリィとアスランが直接向かい合うところは見てみたいです。
TV本編は、あれはあれでひとつの解決なのでしょうけど、やはり直接話をしなかったのは
残念でしたから。

360過去の傷・121:2004/04/28(水) 13:30
やっぱりこの子は可愛い、こんな可愛い子と・・・。
ミリアリアからの突然のキスに戸惑うアスラン。
なんてやわらかい唇なんだろう。
そして自然と二人は離れた。
「き、君は・・・」
「ミリィって呼んでください」
「あ・・・いや、ええと・・・」
戸惑ってるのね、やっぱりそうだわ、男なんてちょっとキスしてやれば思いのままだわ、この男も虜にしてあげる・・・男はキスに弱いんだから。
「私・・・信じてます、アスランさんが好きです・・・」
甘える声で言うと今度は頬に軽くキスする、そして唇にキスしようとするとアスランに離される。
「やめてくれないか・・・失礼する・・・すまない」
そう言うとアスランは慌てたように出て行った。
残ったミリアリアは口元に笑みを浮かべた。
好きでもない・・・ト−ルを殺した嫌いな男とキスした、でもいい・・・これであの男も・・・男なんてこんなもんだわ、少し誘惑すればこの通りだわ、思惑どうりね・・・ふふ。
そういえばあの男、ラクス・クラインさんと婚約者同士だったわよね・・・使えないかしら、アスランさん・・・これからも誘惑してあげる・・・。

通路を歩いていたアスランは呟いていた。
「キスは浮気じゃないよな・・・?さっきのあの子とは浮気になるのか?」
「アスラン、どうなさいましたの?」
「な!?ラクス・・・」
ラクスはきょとんとしている。
「アスラン・・・?」
「い、いえなんでもありません」
「めずらしいですわね、貴方が慌てているとは」

「フレイ、その・・・」
「なによ」
「まさか、ミリィに騙されてるなんて・・・僕は馬鹿だったよ」
「ほんとに馬鹿よね、キラは馬鹿よ」
「・・・・・・」
「まあそこがいいんだけどね」
「え・・・?」
「今日はカガリの部屋で寝るわ、まあ明日からなら・・・ここで寝るから」
そう言うとフレイは微笑んだ。

361流離う翼たち・465:2004/04/29(木) 00:31
 訓練生相手に本気になったフレイ。それを見たアルフレットは口笛を吹いてみせ、徐に後ろを見る。

「お前ら、どんどん行け、一度に掛かれば勝てるかもしれんぞ」

 何と多対1の勝負をさせるつもりらしい。言われて訓練生達が自分のダガーに乗り込んでフレイに挑んで行ったが、アルフレットの挑発ですっかり気が立っていたフレイは同時に5機ぐらいで襲い掛かられても不敵、というより何か壊れた笑みを浮かべているだけだった。

「素人は引っ込んでなさい!」

 ライフルを使って2機を続けて判定破壊するフレイ。コンピューターに強制停止されたダガーがその場に止まり、驚いた3機が左右に散ろうとするがさらに1機が直撃を受けてしまう。
 左右に散った2機を見てフレイは動きの悪い左に回った機体に目を付けた。ダガーを走らせてあっという間に距離を詰め、そのままシールドごと相手にぶつかって姿勢を崩して模擬サーベルを突き込む。それでこいつも停止し、残るは1機となった。
 最後の1機は仲間が全員倒されたのを見て怯えたように後ずさりしている。フレイには相手の怯えの感情がはっきりと伝わってきており、その経験の無さに憐憫さえ覚えた。そして最後の1機もまた、フレイの前に沈んだのである。

 一瞬で5機のダガーを撃破したフレイの強さに、格納庫の前に居たパイロットや整備兵は声を無くしていた。あんな女の子がダガーを平然と乗り回し、新兵が使ってるとはいえ5機のMSを1機で撃破してしまったのだ。俄かには信じられないことであり、言葉を失うのも無理は無い。
 フレイは訓練生と勘違いしていたが、彼らは新兵とはいえ一応正規のパイロットである。

「ア、 アルフレット少佐、彼女は、コーディネイターなんですか?」
「いや、ただのナチュラルだ」
「でも、あの強さは・・・・・・」

 声を無くしている部下にアルフレットは組んでいた腕を解くと、背後を振り返った。

「ボーマン、お前が行け」
「ええ、俺ですか?」

 20代前半の士官が自らを指差して驚いていたが、アルフレットが頷いたのを見て仕方なく自分の機体の方に歩いていく。その背中にアルフレットは声をかけた。

「油断するなよ。あのお嬢ちゃんは、お前が考えてるより強いぞ」
「どういう事です?」
「まあ、戦ってみりゃ分かるって」

 アルフレットは一度はぐらかすと何も教えてくれない。それを知っているボーマンはやれやれと自分のデュエルに乗り込んでいった。機体を起動し、格納庫の外へと出す。そしてダガーの前に立ち、じっとその機体を見据えた。

「あんな女の子がMSを使いこなすとはなあ。一体何処で訓練を積んだんだか」

 ボーマンはそんな事を考えながら、いきなり模擬ライフルでダガーを狙った。だが、撃とうとした時にはダガーは射線上にはおらず、急いで自分もデュエルを走らせる。フレイのダガーは彼の想像を超えて速く、しかも攻撃位置を掴ませない動きを見せている。その練達の動きにボーマンは舌を巻いていた。

「何だよあの娘は、経験があるどころじゃないぞ!?」

 アルフレットが自分が考えているより強いといった意味がようやく分かった。あのフレイという娘は確かに強いというレベルではない。こちらの動きを全て読みきっているかのような機動をしているし、射撃は正確そのものだ。
 だが、ボーマンは知らなかった。自分を振り回すほどの強さを見せる今の状態でさえ、フレイはまだ全力ではないということを。キラと戦った時のフレイは、今見せている動きを遙かに上回っていたのだ。

362流離う翼たち・作者:2004/04/29(木) 00:42
>> ザフト・赤毛の虜囚
ウズミまでブルコスキャラに!? 
しかし、ウズミは何をさせてるんでしょうねえ。まさかキラを作ってる?

>> 過去の傷
ああ、とうとうアスランまで巻き込まれだした
フレイ様はミリィと喧嘩してなんだか吹っ切れたかな
キラはさてどうするのやら

>> キラ(♀)×フレイ(♂)
遊園地・パニックですな。トールとミリィは大変そうですが
フレイは今回はあっさりと手を引いて、キラはカガリを振り回してたか
でもカガリ、君のシスコンは結構怖いぞ。w

363ザフト・赤毛の虜囚 53:2004/04/29(木) 08:18
9.母親(ママ) 5/8
[カリダも触ってごらんなさいよ]

「ねえ、ユーレン、動いてるの分かる?」
「ああ、分かるよ」

私はユーレンに甘い声で話しかける、一時は気分が滅入ったり、落ち込んだりしたけど、
今は、もう安定している。毎日が楽しくて堪らない。

「フン! なによ……」
カリダは、私を見ると、いつも面白く無さそうな顔をする。私は、その理由を既に知っているから、
カリダに優しい声をかける。

「カリダも触ってごらんなさいよ」
「いいわよ、ほっといて」

「遠慮しないで、さあ」
私はカリダの手を取って、無理矢理、私のお腹に手を当てさせる。

「感じるでしょ。動いているの。私の中にいるのよ、赤ちゃんが。ユーレンの子が……」
「や、離して」

カリダは、いやがりながらも、その感触に戸惑うように、そのままにしている。

私は、やっとナチュラルに子を授かった。ユーレンの子を産むことができる。
フラガの独り善がりな考えで、コーディネータを強いられることは無い。私は、幸せだ。

「動いてる…… メルデル」
カリダは、やがて感動したように、私の名を呼んだ。

* * *

私にナチュラルの子ができたと喜んでいるのを見て、最初、カリダは不審がった。

「アンタの不倫相手って、コーディネータを作るお医者さんでしょ。
 それだから、私達ブルーコスモスがマークしてたのに……
 なんで、そのアンタがナチュラル妊娠して喜んでいるのよ!」

「カリダ、私はね。フラガがコーディネータを欲しいために、本当に酷い目にあった。
 体を傷つけられた。それも、ユーレン自らの手で。だから、コーディネータは嫌い。
 私はナチュラルに子を授かって、ほんとに嬉しいの。二億分の一の奇跡を体験したのよ」

カリダは怒りの表情を、私に向けた。

「なによ、勝手に喜んで! アンタこそ残酷だわ。私がどんな想いでウズミ様を見ているのか
 知らないくせに。決して、結ばれること無い。報われること無い」
「そりゃ、年齢は離れているけど…… でも、フラガが私と結婚したくらいだし。世間体は……
 フラガと私は、そんないい関係じゃないけど……」

「違うわ、年なんかじゃ無い。そんなだったら、私の友達でも、もっと、おじさんと結ばれた子も
 いたわよ。違う、違うのよ。私……」
「カリダ、一体……」

「産めないの、赤ちゃん」
「え? 嘘!」

「奇形だって。セックスだって、きちんとできないの」
言ってしまって、カリダは、真っ赤になった。なんで、私に言ったのか戸惑っている様子だった。

「カリダ……」
私は、カリダを抱きしめた。カリダは涙を流して、私に抱かれるままになっていた。
ずっと辛い想いを隠してきたのだろう。それが、一気に吹き出していた。

カリダは、私がフラガにされたものの何倍もの仕打ちを、生まれつき背負っている。可哀想な子。
だから、世間では、今やファッションにまでなりつつあるコーディネータの出産を、
あんなに憎むようになって、こんな団体にまで入ってしまった。

「大丈夫よ、カリダ。いずれ、ユーレンがなんとかしてくれるわ」
「うん、分かった。えと…… 名前……」

「メルデルよ」
「うん、メルデル、メルデル、分かった……」

カリダは泣きながら、私の胸で頷いていた。

364ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/04/29(木) 08:23
>>過去の傷
ミリィ、ラクスに逆らって謹慎させられたこと忘れているような。仕事しないとヤバイぞ。
どうせなら、CICから意味ありげな通信送って悩殺するのが、管制官の正しい誘惑方法(?)金髪さんに負けるな。
フレイ様とキラは、よりを戻したの? キラ、良く助かりましたね。

>>流離う翼たち
フレイ様怒るとNT能力覚醒するようですね。相手の感情分かっても、おかまいなしですな。
アルフさんは、それが分かっているのかな。それにしても、ボーマンなんて懐かしい名が。
ガンダムAだと、レナ・イメリア搭乗機に、前に言ってたデュエルダガーとかバスターダガーとか本当にありました。
だけど、別の本のジャン・キャリー機はロングダガーとも書いてあったけど、設定混乱しているのか?
個人的にはフレイ様はルージュ+ガンバレル・ストライカーに乗って欲しい。これだと、弾数無限大でも許されそうだから。

365過去の傷・122:2004/04/29(木) 11:30
「昼からだって、実戦練習・・・なんか僕も呼ばれてる」
「キラも?・・・そう、でもキラが見ていてくれてるなら私、安心」
通路にて、キラとキラに寄り添い腕を組んだフレイが歩いている。
「アスランは安心していいよ、無口で冷たい印象あるけどほんとはとっても優しいから」
「ええ、キラがそう言うなら・・・」
そして、歩いてきたミリアリアと会う。
「熱々ね」
二人を見たミリアリアは冷ややかに告げる。「
「相変わらずね、ほんとお似合いのカップルだわ!」
「ミリィ・・・」
「私に裏切られたからフレイとよりを戻したわけ?いえ別れてもいなかったの間違えかしら!?」
ミリアリアは怒っているのか分からなかった。
「それで?昨日は一緒にベッドの中で慰め合ったのかしら?」
声を張り上げるミリアリア。
「ミリィ・・・全部芝居だったの・・・?慰めてくれたのも全て」
キラが呟く。
「・・・そうよ・・・ええそうよ!全部芝居よ!馬鹿じゃないの!?騙されちゃって!なんで私がキラを好きになるのよ!勘違いしちゃってほんと馬鹿みたい!本気だとでも思ったの!?」
「ミリィ・・・」
「ちょっとなれなれしくしないでよ!ただの友達でしょ!」
たまらずフレイが口を挿む。
「ミリアリア、そこまで言うことないじゃない」
キラを庇うフレイをミリアリアは睨みつけた。
「フレイ、あんたなに偉そうなこと言ってるのよ、昨日よく言ってくれたわね、救いようがない女なんて・・・ア−クエンジェルにいたときの大騒動を巻き起こした張本人のくせに!」
「!」
「救えない女はあんたの方じゃない!自分の行為を棚に上げてよく言うわね!」
「うるさいのよ・・・」
「キラ、よかったわね、今日からはまた貴方の大好きなフレイ・アルスタ−さんと寝れるんだから!こんなに幸せなことないんじゃない?どうせならこのまま結婚すれば!?」
「うるさいって言ってるでしょ!」
フレイが叫ぶがそれを無視するとそのままミリアリアは去って行った。

その一時間後。
パイロットロッカ−に来たフレイとキラは。
「キラも着替えるの?」
「一応ね・・・」
「そういえばさ・・・艦は違うけどここよね・・・私とキラが初めてキスした場所・・・」
ああ、恥ずかしい・・・でもほんとに・・・。
「うん・・・」
「でもあのときはキラのこと好きじゃなかったの、ただキラを信用させるために・・・女として貴方に近づくために私・・・」
「いいんだよ、もう・・・忘れよう、今の君自身を大切にしてくれ、それとも今もそうなのかな?」
「違うわ!違う!今はほんとに貴方のことが好き!大好きなの!」
フレイが無邪気な顔でそう言うとキラは微笑んだ。
「ありがとう・・・」
そして着替えた二人歩き出した、過去のあやまちを忘れるように・・・。
フレイは思った。
確かに間違ったかもしれないわ・・・でも間違ったならやり直せばいいの・・・キラと共に・・・。

366ザフト・赤毛の虜囚 54:2004/04/30(金) 07:53
9.母親(ママ) 6/8
[私がママよ]

「ハッ! ハッ!」
下腹部に痛みが走る。一杯で、はちきれそうなお腹。耐えられない。
私は唇を噛み締めて、体に力を入れようとする。

「まだ、駄目だメルデル。呼吸を整えて楽に」
「ハァーッ ハァーッ」

「まだ、先は長いんだメルデル。今は落ち着いて
「ハァーッ ハァーッ 分かったユーレン」

いよいよ、私とユーレンの子が生まれる。私はユーレンの手を握り、彼の言葉に自分を委ねる。
ユーレンは、産婦人科の専門、そして、私の子の父。私の愛しい人。これ以上に安心なことは無い。
私は心配そうに見ているカリダに目を向ける。
「大丈夫よ」

あれから何時間も過ぎた。痛みの周期が短くなってくる。モニタをチェックしているユーレンの
声が興奮を帯びて来る。

「いきんで、メルデル」
「ウゥーッ」

それを何度も繰り返す。手が分娩台のバーを握り締める。汗ビッショリになる。ユーレンは手を握らせて
くれない。万が一の場合にユーレンが動けなくなるから。私が、頑張らなきゃ。

「ウゥーッ!!」
「見えた。メルデル、もういい、後はまかせて」

「ハッ! ハッ! ハッ! ハッ! ハッ!」

「オギャア、オギャア」

痛みがスーッと引いていった。私は汗にまみれ、息も絶え絶えでユーレンを見つめる。
やがて、赤ちゃんを取り上げ、毛布にくるんだユーレンが、私に手渡してくれた。

「私の子、ユーレンの子」私はユーレンに微笑みかけた。
「よくやった。頑張ったねメルデル。男の子だよ」

私は涙ぐんで言った。
「うん、ありがとうユーレン」

カリダが近づいてきた。カリダも涙ぐんでいた。
「すごい、メルデル。すごかったよ。私も一緒に産んでるみたいだった。
 ありがとう見せてくれて。私、これだけでも充分よ」

カリダは、私の妊娠を、ずっと見ていて徐々に心を開いていた。そう、既にカリダは、私の親友だ。

「いや、君もいずれ子供を抱ける日がくるよ。君自身の子を。約束する」
ユーレンの言葉に、カリダはユーレンに抱きつくように涙をこぼした。

「カリダ、抱いてみる? 今は、私達の子だけど、自分の子のために」
「うん、抱かせて」

カリダは生まれたばかりの赤ちゃんを抱いた。まるで自分の子のように、大切なもののように。

「名前は、もう決まっているんだっけ?」
「うん」

「教えて」
「ムウ」

「ムウ?」
「そう、ムウよ。ムウ・ヒビキ」

私は、またカリダからムウを受け取った。そして、ムウの耳元で優しく囁いた。

「可愛いムウ、私がママよ」

367ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/04/30(金) 07:54
>>過去の傷
ミリィ、開き直って言いたい放題ですな。こんなんじゃ友達できないぞ。
フレイ様、キラとどうにか関係復活。だけど、カガリとラクスは? 次の傷は何?

368過去の傷・123:2004/04/30(金) 11:40
「君のお父さんのことだけど」
「それは言わないで・・・パパの話はしないでほしいの・・・」
フレイが青ざめたのでキラも下を向く。
「あ、ごめん・・・」
「また貴方を責めそうで怖いの、貴方にもうそんな感情抱きたくないから・・・それにパパが死んだのはキラのせいじゃないでしょ?ただ貴方にあたっただけなの・・・」
「フレイ・・・」
フレイは微笑んだ。
「もう!なんでこんな暗い話になるのよ!」
「あ、そうだねごめん」
やっとキラと歩み続けることができるわ・・・。
キラ、貴方となら私・・・。
ワガママで意地っ張りで自分勝手な私だけど、貴方の前なら素直でか弱い女になれるかな・・・?
フレイは頬を可愛く染めるとキラの腕にしがみついた。
「フレイ・・・?」
「なんでもない♪それより行くわよ、実戦」

ラクスの部屋の前に来ているミリアリア、中の様子を伺う。
「では行って参ります」
「アスラン、お気をつけて・・・貴方のご無事をいつも願ってます」
「ありがとうございます」
馬鹿じゃないの?なんで婚約者同士なのに敬語で話してるんだろう、頭おかしいんじゃないかしら?この二人。
そしてラクスの顔がアスランに近づいてくる、アスランが静かに目を閉じるとラクスはアスランの頬に軽くキスをした。
私は見せつけられたみたいで内心面白くなかった。
「では失礼します」
ミリアリアは慌てて隠れる。
アスランが出て行った。
なおも残ったミリアリアは・・・。
中のピンクの少女を見つめる。
ほんわりとした白い肌、ほっそりした細い腕、そして柔らかい綺麗なピンクの髪。
そして同じ女であるミリアリアは見とれるほど可愛い顔立ちである。
しかし目がきりっとしている、指揮官としての風格を感じさせる、そのためかピンクの髪の結んでいるのだ、それから衣装は羽織りだろうか?そんな衣装を着ている。
ミリアリアは・・・ラクス・クラインさん・・・貴女だけ幸せなんて・・・。
だいたい気にいらないのよ、なにもしないくせに私に偉そうに言う、だいたいなんでこの人だけこんないい部屋にいるのよ。
<ハロ!ハロ!>
「ネイビ−ちゃん、どうしました!?」
「きゃあ!」(しまった・・・ばれた?)
ハロに見つかってしまったミリアリア。
「誰かそこにいるのですか?」
「・・・・・・」
「さっきの声はミリアリアさんですね?出て来なさい」
「・・・・・・」
「この艦から降ろしましょうか?いいのですよ貴女がいなくてもCICはダコスタさんがやってくれますから、それにこのところ貴女仕事してないみたいですがどうしました?」
仕方なくラクスの部屋に入る。
「・・・失礼します・・・」
「ミリアリアさん・・・ここでなにをしてるのです?」
そうだ、ラクスさんを滅茶苦茶にしてやろうかしら・・・困らせてあげる、この女の驚く顔が目に浮かぶわ・・・。
「あの・・・アスランさんを知ってますよね?」
「・・・はい?アスランですか?アスラン・ザラは私の婚約者ですが・・・」
ミリアリアは突然笑い出した。
「ふふ・・・あはははは!!!」
「ど、どうなさいました・・・?」
ミリアリアはイタズラっぽく微笑み、挑発的に告げた。
「私、アスランさんと・・・キスしたんです」

369過去の傷・作者:2004/04/30(金) 14:28
>>翼たち
まあ当然か、力の差見せつけましたね、もう想像以上の強さですねフレイ様♪

>>ザフト・赤毛の捕囚
これはムウの・・・しかしこの人達のやり取り見てると妙に懐かしいですね。
フレイ様の感覚を感じさせてくれます。

370流離う翼たち・466:2004/04/30(金) 23:59
 結局懐に入られたボーマンの敗北でこの模擬戦は終わってしまった。まだ新兵は沢山いたのだが、小隊長であるボーマンが負けたことで皆すっかり萎縮してしまっている。アルフレットは挑戦者が出なくなったのを見てフレイに通信を入れた。

「よし、もう良いぞ。降りてこいお嬢ちゃん」
「分かりました」

 フレイはダガーを格納庫の前まで持ってきて膝を付かせ、コクピットから降りた。そして駆け寄ってきた整備兵に幾つか注文をつけてアルフレットの所まで行く。

「少佐、私をダシにしてとんでもない事しないで下さい!」
「う、す、すまねえ」

 怖い形相で怒っているフレイにアルフレットは気圧されていた。どうやらこいつも女に頭が上がらないタイプであるらしい。
 とりあえずアルフレットが謝った事でフレイは溜まった不満を押さえる事にした。フレイが落ち着いたのを見てか、アルフレットがフレイを全員に紹介する。

「まあ、さっき見た通り、このお嬢ちゃんはMS戦においては連合中探しても屈指の腕前だ。これから暫くお前らの模擬戦の相手をしてもらう事になるから、覚悟しておけよ」
「あの、その娘は誰なんです?」

 先ほどフレイに負けたボーマンがアルフレットに問い質す。アルフレットはチラリとフレイを見た後、少しだけもったいぶって答えた。

「何だボーマン、こんな有名人を知らねえのか?」
「有名人なんですか?」
「ああ、こいつがかの有名なアークエンジェル隊のエースパイロットの1人、真紅の戦乙女、フレイ・アルスター少尉だ。撃墜スコア30機以上という凄腕だぞ」

 アルフレットの紹介に、全員の視線がフレイに集中した。全員に見られたフレイは居心地が悪そうに身動ぎしたが、フレイに向けられる視線は驚きからすぐに好奇心へと変わっていった。

「す、凄いや、あの真紅の戦乙女!?」
「30機以上のスコアって、カスタフ作戦が初陣なのに、どうやって落としたんだよ?」
「ねえねえ、アークエンジェルってあの「エンディミオンの鷹」や「エメラルドの死神」が居るんだろ。どういう人か教えてよ!」
「あの、今日の夕食を一緒にどうでしょう?」
「あのクルーゼ隊と戦ったんだって?」

 たちまちフレイを揉みくちゃにする新兵たち。その全員がフレイと同年輩の少年少女たちだ。連合はこんな子供たちまで実戦に駆り出しているらしい。それがおかしいと感じないのは今の時代がそういう時代だからなのだろうか。

371『明日』と『終わり』の間に・2日目・お昼時:2004/05/01(土) 00:09
「しつこいわね!だから違うって言ってるじゃない!」
「嘘つくな!ただ見てただけでカレーが赤くなるか!!お前以外に誰がそんなこと出来るんだよ!?」
「知らないわよそんなの!キッチンに住んでる妖精が悪戯でもしたんじゃないの!?」
「妖精って・・・、今時子供でもしないよそんな言い訳!!」

 ―――この状態、一体何時まで続くんだ?正直に言えば許してやるつもりだったのに、何だかお互いやけにむきになってしまった。それにしても私も口喧嘩には自信があるんだが、こんな強敵は初めてだ。キラの奴も大変だったんだろうな・・・。よーし・・・。

「しかしこのカレー、マズそうだなぁ〜・・・」
「!食べても無いくせに、マズいですってぇ!?どーいうつもりよ!?」
「そんなの見れば分かるだろ!色も赤いし、よく見ると変なものが入ってるし、それに随分水っぽいし・・・。誰だってそう思うさ!これカレーじゃなくて血の池地獄じゃないのか?」
「何よ!ただ隠し味にと思って入れてみただけなのに、そこまで言われる筋合いは・・・って、あっ!」
「・・・やっぱり何かしたんだな・・・?」

 やっとボロを出したか。・・・何だかこの勝利、誇らしくすら思えるな。

「で、何でこんなことをしたんだよ?食べ物を粗末にしちゃ罰があたるぞ?」
「・・・嘘をついてたことは謝るわよ。・・・でも、別に悪気があったわけじゃないわ。ただ・・・」

 ん?どーいうことだ?

「・・・駄目だと思ったのよ。普通のカレーじゃ!」
「は?」
「だって、私はキラに満足してもらえる、私にしか作れないカレーが作りたいの!」
「・・・いや、別にいいだろ何事も普通で。何だその変なチャレンジ精神は・・・?」
「何言ってるのよカガリ!何時までも古い形に拘ってたら、新しい道は切り開けないわ!」
「・・・!」

 ・・・そうだ、私は、何て馬鹿だったんだ!そんな大事なことを忘れてたなんて・・・。今私やアスラン達は、ナチュラルとコーディネイターが仲良く共存できる世界を作らなきゃいけないんだ。それが今は亡きお父様の、そして私達の夢。そのためには、今あるしがらみを壊さなきゃならない。それなのに・・・、私がそれを否定してどうするんだよ?
 それにこのカレー(?)は、あいつが心をこめて(私に対してじゃないけど)作ったもの。それをマズいだなんて、あいつの想いを踏み躙るような真似までして・・・、私は最低じゃないか。すまんフレイ、許してくれ。

「・・・そうだったのか。ごめんなフレイ、お前の気持ちも知らないで、酷いこと言って・・・」
「いいのよカガリ。私だって悪かったんだし・・・。でも、そう思ってくれるのなら・・・」
「!何だ?」
「・・・これ、食べてみて!折角二人で作ったのに、捨てちゃったら勿体無いわ」

 ・・・えっ!?それってつまり・・・、実験台になれってことじゃ・・・?

「どーしたの?・・・やっぱり、イヤ?」
「!あっ、いや、別にそういう訳じゃ・・・」
「・・・そうよね。こんなんじゃきっと、美味しくないわよね・・・」

 うわっ、泣いちゃいそうだよ!何だか私が悪いみたいじゃないか!どっ、どーすればいいんだこんな時!?・・・えーい、こうなったらなるようになれだ!!

「たっ、食べる!食べるよフレイ!何だかよく見たら美味そうだし、それに赤いカレーってのもありなんじゃないか?」
「ホント?じゃあこれ、どうぞ召し上がれ」
「・・・い、いただきます・・・」

372流離う翼たち・作者:2004/05/01(土) 00:10
>> ザフト・赤毛の虜囚
ム、ムウって、ヒビキって・・・・・・兄貴もこれで不幸に!?
このあと兄貴は陰険オヤジに連れていかれるんでしょうなあ
たしか、ダガーの試作がデュエルダガーで、その後にダガーを強化兵用に再設計したのがロングダガーだったはずです。
だから両者は違う機体の筈です。
ガンバレル・ストライカーは出ますが、兄貴やフレイ様は乗らない予定です。兄貴には別機体がありますから

>> 過去の傷
ミ、ミリィさん!?
キラがフレイ様と話しているのも凄いけど、ミリィも凄い。ラクスに攻撃している
アスランに明日はあるのか?

373『明日』と『終わり』の間に・作者:2004/05/01(土) 00:23
 最近投稿が滞り気味で申し訳ないです。フレイ様がカレーに何を入れたかは次回で明かします。

》赤毛の虜囚
 ムウさんの誕生秘話ですね。以前フレイ様の夢に登場していた金髪の男の子とは彼のことだったんですね。ずっと気になっていましたので。
 
》流離う翼たち
 フレイ様、お見事な勝利でしたね。それにしてもアルフレット少佐の思惑は一体・・・?

》過去の傷
 ミリィが何をしたいのか分からなくなってきました。まさかキラの次にアスランに狙いを定めるなんて・・・。ラクスを挑発したりとまだまだ波乱が続きそうですね。

374私の想いが名無しを守るわ:2004/05/01(土) 07:04
>>『明日』と『終わり』の間に
カガリ一人称語りって、実はあまりなかったことに
今更ですが、気づきました。素直に反省して、食べて
しまうところがカガリらしいです。
>>流離う翼たち
フレイ様の人相と二つ名の認知度のギャップが、フ
レイ様の今の位置をよく表しているというところで
しょうか。なにげに新兵達も健気ですな。どさくさ
にまぎれて夕食誘っているヤツもいますね。
>>過去の傷
艦名が「エターナル」なだけに永遠に傷つけ合いそ
うで…特に㍉は何がしたいのか、私も知りたいところです。
トール喪失の傷はクライン派を内側から解体しそうな勢いですね。
>>ザフト・赤毛の虜囚
後年のカリダの人懐っこそうな部分と幸薄そうな部分
が同時に垣間見える章ですね。30代のウズミはカッコ
よさそうです。ブルコスメンバーなのにもびっくりしました。
>>キラ♀
フレイ様の策は、相変わらずズバズバヒットしますな。
カガリもトールもフレイ様の手のひらで踊らされていますね。
確かにこのフレイ様は遊園地って柄ではなさそうです。

375ザフト・赤毛の虜囚 55:2004/05/01(土) 08:30
9.母親(ママ) 7/8
[会いたかったよう…… ママぁ]

(私がママよ)

朝、私はここちよく目を覚ました。体に喜びが満ちあふれているようだった。
私は、自分のお腹に手を当てる。しっかりした充実感が感じられ、それ自体が喜んで
いるようだった。

私はフレイ・アルスター。…… そうよ、私が……
私はゆっくりベッドから体を起こし、しばし、その感覚を慈しむようにジッとしていた。

ドアのロックが開いて、コール音がした。そのまま入って来ない。おそらく、ミコトっていう子だろう。
私はドアを開けた。

ミコトは沈んだ顔をしていた。
「ママ、新しいの持ってきたよ。それと、お洗濯とか、入れ物とか……」

ミコトには、以前、きついことを言って追い返してしまったことがある。可哀想なことを
したという気持ちが残っている。私は、優しく答える。

「ええ、ありがとう。助かったわ。ちょっと待って、洗濯物取って来るから」
私は、ミコトの持ってきた新しい下着などを受け取ると、代わりに、どっさりある洗濯物などの袋を
持ってきた。それを受け取ったミコトは、私の顔色を伺うように、小さな声を出す。

「ママ、怒ってない?」
「ええ、怒ってないわよ。前は悪かったわ。ごめんね」

「ほんと、ママ? ほんとに怒ってない?」
「ほんとよ。怒ってない。ありがとうミコト」

さっき、自分のお腹に手を当てて、それを実感したせいだろうか。今の私は、ママと
呼ばれることが嫌じゃなかった。暖かい気持ちになっていた。

「ママ、大好き!」

ミコトは、洗濯物の袋を床に落とし、かがんで私の胸に顔を埋めた。以前、マリューさんが
教えてくれたママのすることを思い出した。私は思わずミコトの頭を抱え、髪を撫でていた。
自分の髪をいじっているのと同じ感じがする。本当に自分の娘の髪を撫でているような気がした。

「ミコト……」
私はミコトに優しい声をかけた。
それが合図のように、ミコトは切ない声で泣き出した。
「ママ、ママぁ…… 会いたかったよう…… ママぁ」

この間、私が追い返した時は泣きそうな顔をしながらも我慢していたのに、
私が許した今は、涙をポロポロこぼして泣いている。私はミコトの背中をさすりながら、
しばらくの間、じっと抱きしめていた。

私はミコトを受け入れていた。ミコトが大好きになった。

捕虜として捕まっているザフト。でも、その中の人達に私は少しずつ心を許している。
キラといて分かったこと。コーディネータとナチュラルも同じ。その心に変わりはない。
キラの望む戦争の無い世界。そのためにできることが、今の私にもあるんじゃないかと、
思い始めていた。

376ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/05/01(土) 08:36
>>過去の傷
フレイ様は、素直で、か弱いだけでなく、我が侭で意地っ張りでも魅力的ですよ。
ミリィ、ラクスと戦うには、まだ手駒不足だぞ。もうちょっと管制官特権を利用してからの方が……

>>流離う翼たち
二つ名は偉大ですね。これで新兵達には溶け込めたようです。整備兵には分かることですが、
メンテしたセランさんはアルフさんになにか聞かされているようですし、これで第一ステップはクリア?
でも、これだけでは無いですよね。
ムウの新機体はメビウス系統なのかな? 楽しみにしておきます。

>>『明日』と『終わり』の間に
ネメシス・フレイ様の普通じゃ満足できないという論理は、お約束で、分からないこともないけど、
カガリは、それにナチュラルとコーディネータの未来を重ねているのは予想外でした。
カガリはオーブの仕事に取り組み過ぎなのでは? そして、このまま被害者に?

377過去の傷・124:2004/05/01(土) 09:36
「そうだ、私とフレイは愛し合ってるんだからな!」
「でもカガリ様は女ですよね?」
「そんなの関係あるもんか!男同士だろうが女同士だろうがだ!恋愛にそんなのは不要だ!」
「限りなく関係あると思いますけど・・・」
マユラがそう言うがカガリは気にしてない様子だ。
「でもカガリ様、フレイさん、キラさんと腕を組んでますよ」
「なにぃ!?」
カガリの視線の先には完全に関係を戻した二人がいた。
カガリは慌てて駆け寄るとキラをフレイから強引と突き放す。
「キラ貴様!私のフレイになれなれしく触るな!」
「カガリ・・・君?」
「カガリ・・・貴女」
フレイとキラが戸惑うようにカガリの名を呼ぶ。
「キラ、姉に対しての気遣いをたまにはしろ」
「カガリ、ごめんね、私やっぱりキラが・・・貴女とは女同士だし・・・」
「そうか・・・誘ってきたのはお前だったのに・・・もういい・・・」
カガリがショックを受けた様子で青ざめる。
「皆、いるな・・・」
そしてアスランが来た。
皆が挨拶するなかフレイも・・・。
「お、おはようございます・・・今日はよろしくお願いします」
フレイも丁寧に挨拶した。
ザフトの捕虜の頃、クル−ゼにもこんな感じで挨拶していたのでなれてはいた・・・。
「うん、アルスタ−二等兵ちょっといいか?」
「あ、はい」
アスランに呼ばれ返事をしたフレイ。
「今日は君はこれに乗るんだ・・・」
「え?」
「プロヴィデンスX改だ、しかし普通にプロヴィデンスと呼んで構わない」
「これが・・・私の機体・・・?」
「そうだ、この機体で・・・君はカガリ達と手を組みキラと俺の二人の相手をしてもらう・・・」
フレイは突如怯える・・・。
「い・・・いや・・・これって・・・」

そんな頃ミリアリアは・・・。
「キス・・・?」
「はい、キスしました、ちょっとアスランさんを誘惑したら・・・」
「そんなはずはありません、アスランはそんな人ではありません・・・私はアスランを信じてますから」
「男なんてだれだって誘惑すれば思いのままです、アスランさんだって冷静そうに見えて私の色気の前では・・・」
「なにを馬鹿なことを言ってらっしゃるのです?そんなこと絶対にありませんわ」
「なんて・・・冗談ですよ!あはは!」

378流離う翼たち・467:2004/05/01(土) 23:47
 揉みくちゃにされて困っているフレイを見かねたのか、ボーマンが子供達を引き剥がしに掛かった。

「こらこら、アルスター少尉が困ってるぞ。お前達もいい加減にしておけ」

 ボーマンに言われて新兵たちは仕方なくフレイから離れる。ボーマンはフレイの前まで進むと、右手を差し出した。

「まさかああも簡単に負けるとは思わなかった。正直驚いたよ。俺はボーマン・オルセン中尉だ」
「いえ、ボーマン中尉も強かったです」

 フレイはその右手を握り返した。だが、ボーマンは何故か渋い顔になり、視線をフレイからずらした。

「まあ、何と言うかな。あれだけはっきり負けた後で言われると、少し凹むな」
「あ、それは、その・・・・・・」

 憮然とするボーマンしどろもどろになりながら必死にフォローの言葉を探している。だが、フレイが何か言うよりも早く、やってきたセランがボーマンの頭を持っているボードで叩いた。ドカンという音がしてボーマンが頭を押さえている。

「セ、セラン、手前、本気で殴りやがったな!」
「兄さんこそ、何少尉を苛めてるの。模擬戦で負けたくらいで大人気ない」
「ぬぐっ、別にそれを含んでるわけじゃないぞ」
「兄さんにその気がなくても、こっちから見ればそう見えるのよ」

 手でボーマンを追いやったセランがフレイの隣に立った。

「すいません少尉、うちの馬鹿兄が迷惑かけたようで」
「あ、兄って、お兄さんなの?」
「はい、あれが残念ながら私の不肖の兄、ボーマンです」

 セランは心の底から残念そうな声で兄を紹介する。それが余程気に入らなかったのか、ボーマンはこめかみに青筋浮かべてプルプルと体を震わせている。

「セラン、一度お前に兄の偉大さというものを分からせる必要がありそうだな」
「あら、やるつもり兄さん。これまでの5戦全敗の過去をもう忘れたのかしら」
「ふん、ならばこれが6度目の正直だ!」

 ボーマンが一切の躊躇無く繰り出してきた拳を、セランは腰に挿していたモンキレンチで迎撃した。ガギンという鈍い音を立てて両者が激突する。というか、さっきの音は絶対に人間の体が立てる音じゃない。よく見てみればボーマンは右拳にメリケンサックを付けているではないか。

「少尉、少し離れていてください。今からこの学習能力の無い貧弱な兄さんをぶちのめして自分の身の程というものを分からせてやりますから」
「え、ええと?」

 事態の急展開に付いていけず、頭がフリーズしてしまっているフレイの腕を新兵の1人が掴んで安全圏まで引っ張ってくる。それを合図に兄妹の壮絶なバトルが始まった。2人ともどういう体をしているのか、無茶苦茶な速さで動き、素人目にも分かるほどの強烈な一撃を叩き込み合っている。
 フレイはその動きを見ていて、何故かキラやアスランを思い出してしまった。

「凄い」
「ああ、そりゃ凄いさ。ボーマン中尉もセランもコーディネイターだからな」
「コーディネイター?」

 新兵のうちの1人がフレイの疑問に答えてくれたが、その答えにフレイは驚いてしまう。何故に大西洋連邦軍にコーディネイターが居るのだ。

「なんで、コーディネイターが大西洋連邦軍に居るの?」
「あの2人はマドラス生まれのマドラス育ちなんだよ。両親もコーディネイターだから第2世代って事になるか」
「地元出身のコーディネイターって、結構珍しいんじゃない?」
「まあ珍しいさ。でもまあ、地元の人たちはあの2人に好意的らしくて、コーディネイターにありがちな迫害ってのも少なかったらしい。ブルーコスモスに狙われた時も両親共々近所の人に匿って貰ったそうだし」

 その話にフレイは驚きを感じたが、一方で納得してしまう部分もある。世の中にはいろんな人が居るし、世界中の全てのナチュラルがコーディネイターを憎んでいるというわけでもない。ましてこの街で生まれ、この街で育ったと言うのなら、この街の住人ならば敵とは感じないだろう。
 だが、幾らこの街で生まれたといっても、よく同じコーディネイターを相手に殺し合いなどする気になったものだ。キラは同じコーディネイターを殺すことにかなりの抵抗を感じていたのに、2人はそういうものを感じることはないのだろうか。
 目の前でセランの持ち出したパイプレンチがボーマンを殴り飛ばしたのを見ながら、フレイはその辺りを聞いてみたいと思っていた。

379流離う翼たち・作者:2004/05/01(土) 23:54
>> 『明日』と『終わり』の間に
何かしていたのかフレイ様、でも、何入れたんでしょう。トマトとか?
とりあえずカガリ頑張れとしかいえません。

>> ザフト・赤毛の虜囚
ミコトが泣きついている。でも、ユーレンとの子供はフラガなわけで、この娘は何なんでしょうね、ちょっと分からなくなりました
そういえばミコトに相談されたイザークは何してるんでしょうw?

>> 過去の傷
プロヴィに乗れってのはちょっとトラウマになってると思うのですが
しかしカガリさん、マジだったんですかw!
一方でミリィはなにやら暗躍中ですな

380『明日』と『終わり』の間に・お昼過ぎ:2004/05/02(日) 01:04
 ―――駄目だ、スプーンが進まない。一体どーしてこんなことに・・・?ああ、ジッと見てるよあいつ。こうなったらちゃんと食べないといけないだろうし・・・、何であんなこと言っちゃったんだ、私?・・・このカレーは美味い、このカレーは美味い、美味い、美味いんだ・・・!よしっ、いくぞ!

 パクッ!

 !こ、この味は!?
 
 何だこの辛さは?違う、カレー粉やスパイスとかそんな類のものじゃない!カレーの中にもう一つの全く異なる辛さが隠れてる!何なんだこの味の正体は!?ハッ、この歯触りに独特の匂い、さては”キムチ”だな!?カレーにキムチを入れることでカレーの辛さを更に引き立てようとしているんだ!!
 それだけじゃない!この何処か不思議なまろやかさは何だ?この甘さは、果物・・・、苺・・・!そうか、”苺ジャム”だ!カレーにキムチ、そして苺ジャムを加えることによってこの絶妙のハーモニーが醸し出されてるのか!?
 それにこの喉ごしの良さ、これは”完熟トマト”か!?新鮮なトマトのみずみずしさがカレーにあっさりした風味を与えてるんだ!!

 ―――私は、この味をどう表現したらいいんだ?今まで味わったことの無いこの味を?・・・!あれ、何だか涙が出てきたな?どうしてだろう・・・?そんなの、決まってるじゃないか。さぁカガリ、あいつに言ってやるんだ。このカレー・・・。

「・・・マズいに決まってんだろーがぁぁぁーーーーっ!!!」

 言ってやった、言ってやったよ、私・・・。あっ、気が遠くなってく。アスラン、キラ、助けて・・・。御館様、ミツヒデ様が御謀反なされました。・・・って、なんだこの記憶?―――。

 ―――数十分後―――

「・・・ねぇ、カガリ・・・」
「・・・何だ、フレイ・・・?」
「・・・そんなに美味しくなかった?」
「・・・まぁな・・・」
「・・・やっぱり、苺ジャムじゃなくてブルーベリージャムにしとけば良かったかしら?」
「・・・そーいう問題かあれ?」

 ・・・これはもう、料理の才能が有る無いの問題じゃない。こいつ、料理というものが何なのかということ自体が分かってないんじゃ・・・?とにかく、まずそこから教えてやらなくちゃいけないな。久々に、本気を出すか・・・。

「・・・フレイ、今からだと少し時間が掛かるけど、昼ご飯は私の手料理をご馳走してやるよ。その間お前はトリィとでも遊んでろ!」
「カガリが?一人で大丈夫なの?」
「なぁに、心配するな。何たって私は、今までに何度もアスランに手料理を振舞ってるんだ」
「ハイハイ、その話は病院で何百回も聞いたから。いいわよ別に。でもお腹が減ったから、なるべく早くしてよね?」
「ああ、任せとけ!」

 ―――さらに数十分後―――

「わぁ、すっごぉーい!まるでレストランのフルコースじゃない!これ全部一人で作ったの?」
「ふふふ、私が少しでも本気を出せばこんなもんだ。さぁ、冷めないうちに早く食べろ」
「ええ。いただきまーす!」

 まぁ、ざっとこんなもんさ。これで少しぐらいはこいつも料理ってもんが分かるだろ?それにしても何だか懐かしいな。初めてアスランに手料理を食べてもらったあの日みたいで。あの時アスランの奴、残さず全部食べてくれたっけ。『血を吐くほど美味い』って言ってホントに吐いてたしな。あっ、そういえばあいつ、『これから俺以外の人間には誰にもご馳走しないでくれ!』って言ってたような・・・?ごめんなアスラン、妬かないでくれよ?

 ドサッ!

 ん、何の音だ?・・・ってフレイ、どーした?床の上で寝るなよ。・・・おーい、フレイー・・・!?

381ザフト・赤毛の虜囚 56:2004/05/02(日) 07:59
9.母親(ママ) 8/8
[ミコト〜 もう離れちゃやだよママ]

アタシ、ミコト・ヒイラギ。
今日また、クルーゼ隊長の部屋にいるママに会った。この前、ママは怒って、アタシに
どこかへ行っちゃえって言った。ミコト、なにか悪いことしたの? でも、ママは怒るだけだった。

でも、今日のママは違った。優しかった。怒ってないって聞いたら、

「ほんとよ。怒ってない。ありがとうミコト」

って言った。笑ってた。アタシ、ママ大好き。
アタシ、ママに抱きついた。ママ、アタシの髪を撫でてくれた。優しく撫でてくれた。

アタシ、そうしてたら、いつのまにか泣いてた。うれしいのに泣いてた。
ママ、ママ、会いたかったママ。いつも一人で寂しかった。会いたかったようママ。
もう離れちゃやだ。いつもいっしょ。もう離れちゃやだよママ。

クルーゼ隊長言ってた。アタシ達、基地についたらプラントに帰るって。
ママもいっしょだよ。ぜったい、ぜーったい、いっしょだよ。

パパ…… パパは、どうしたのかな。アラスカで声がしてたパパ。パパもいっしょに来て欲しい。

パパどこにいるのかな。ママ、今度教えてね。

382ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/05/02(日) 08:02
これで、7章「幼子(おさなご)」から9章「母親(ママ)」まで続いていたミコトとフレイの出会いの話は、
ひとまず終わります。次は、ちょっと、いろいろ展開の見直しを行うため、ひょっとしたら時間が空くかもしれません。
その間は、フレイの番外的な章を入れる予定です。ミリィSSの方、展開伸ばして済みません。
でも、おかげで、やっとフレイSSとの劇中時間差が埋まりつつあります。

>>過去の傷
ミリィの攻撃、ラクスに意外と効いている?
プロヴィデンスX改って、どこが、Xで、どこが改なのかも気になりますが、アスランが、どこから持ってきたのかも
気になります。

>>『明日』と『終わり』の間に
ううむ、想像するだに無気味な赤のカレーですな。しかし、カガリも負けず劣らずのようで……

>>流離う翼たち
なるほど、そう来ましたか。コーディネータと戦争とのあり方を、今一度考えさせられます。
どんな道を示してくれるのか、ずっと見えなかったのですが、やっと期待が持てるようになりました。
本題は、これからですが、小説内で明らかにされること気長に待っています。

セラン軍曹と呼ばれる理由は、ボーマン艦長、もといボーマン・オルセン中尉という、お兄さんが近くにいる
からなんですね。ところで、セランさん、パイプレンチは、充分、凶器になりますので気をつけましょう。

私のSSへの疑問の方ですが、ムウとミコトは、番外編でヴィアが話していたように、両親を同じくする、
一番まっとうな兄妹です。ただ、SS内独自年表だと10歳離れていることになります。ムウの年齢は、都合により、
TV本編より若い設定になっています。

383過去の傷・125:2004/05/02(日) 10:31
「フレイ!?」
キラが慌てて駆け寄る。
(やはりな・・・怯えている・・・)
「いや・・・これ・・・私を・・・私を殺そうとした・・・」
「アルスタ−二等兵、いいかよく聞け」
「アスラン!もういいだろ、この機体は彼女の心と体を傷つけた機体だ、これに彼女を乗せるなんて」
キラがフレイを庇おうとしたが。
「お前は黙ってろ、アルスタ−二等兵・・・君は何か勘違いしている」
フレイが顔を上げる。
「君を撃ったのはこの機体じゃない、隊長だ」
フレイがハッとする。
「機体にはなんの責任もない、恨むならクル−ゼ隊長を恨め、それに乗るのが嫌なら乗らなくても構わない」
そうだわ、私なにやってるんだろう・・・機体にはなんの関係もないじゃない・・・私って相変わらず馬鹿だわ、一人に振り回されて自分だけいつも回りが見えない・・・クル−ゼ隊長は私を生かしてくれた・・・もしかしたら芝居かもしれない、私に死んでもらったら困るからかもしれない、私を生かしたくて生かしたわけじゃないかもしれない、でもそれでも・・・生かしてくれたことには変わらない。
機体に怯えたら駄目、怯えて逃げるのは以前の私、もう以前の私は忘れるの・・・。
「あ、あの!アスランさん!」
フレイはアスランに叫びながら必死に声をかけた。
アスランが振り向く。
「アルスタ−二等兵、なにか言いたいことがあるなら言ってみろ・・・」
「あ、あの!私みたいな女に乗れるか分からないけど、私もう逃げない!私、プロヴィデンスに乗ります!いえ乗らせてください!」
とたんアスランが微笑んだ。
「そうか・・・よしなら褒美をやろう」
「褒美?」
「君はキラのフリ−ダムと手を組み、俺達と実戦練習だ、君もその・・・好きな男と一緒に戦いたいだろう・・・?」
フレイの顔が赤くなった。
「待て、アスラン!なんで私がお前と手を組んだよ!私はフレイを守って決めたんだ!私はフレイの援護をする!」
カガリが声を張り上げた。
「・・・勝手にしろ・・・カガリ・・・敵になるならお前でも容赦しない」

「ミリィ・・・?」
食堂で一人ジュ−スを飲んでいたサイのもとにミリアリアが笑みを浮かべながら歩み寄ってきた。
あのあとラクスにこっぴどく叱られ逃げてきたのだ・・・。
「ねえサイ・・・」
ミリアリアは色気ある目でサイの隣に座るとゆっくりとサイの手を握る。
「ミリィ・・・?どうした?」
「ううん・・・なんでもない・・・ふふ」
不審そうな目でサイはミリアリアを見る。
「ちょっと手伝ってほしいのよ、ラクスさん・・・ラクス・クラインとアスラン・ザラの仲を引き裂きたいのよ、上手くいったら私、サイの彼女になってあげてもいいわよ」
「興味ない・・・なんで俺がそんなことを・・・」
「ねえ・・・サイお願い・・・」
そう言うなりミリアリアはサイを振り向かせるとサイの首を両手をかけた、キョトンとしているサイに構わずサイの唇にキスした、軽くではなくじっくりと押し付けるキスだった。
「サイ・・・いいでしょ・・・?」
「やめてくれ!」
抱きつくミリアリアを突き放すとサイは慌てて食堂から出て行った。
残ったミリアリアは舌打ちをたてていた。
キスしてやったのになんなのよサイは・・・ほんと役立たずなんだから・・・。

384私の想いが名無しを守るわ:2004/05/02(日) 21:25
>>「明日」と「終わり」の間に〜
カガリが気を失う寸前の記憶は、某ゲームの声優ネタからですよね?
フレイ様に負けず劣らずカガリの料理も壊滅的でしたか(汗)。
血を吐きながらも全部食べたアスランは凄い!!

385流離う翼たち・468:2004/05/03(月) 00:23
 同時刻、マドラスの近くに上陸した者達が居た。ゴムボートを引き上げて海岸の窪地に隠し、目立たないよう私服に着替えていく。それはアスランとフィリス、エルフィの3人であった。

「さて、これからマドラス基地に潜入するわけだが、もう一度確認しておくぞ。俺たちの仕事はあくまで沿岸の防御設備の確認と、脚付きの居所だ。間違っても連合兵士と問題を起こさないように」
「それは分かってます」
「私たちより、隊長の方が心配なんですが」

 エルフィが頷き、フィリスが逆にツッコミを入れてくる。フィリスのツッコミを受けてアスランは些かの怯みを見せ、エルフィが困った顔でフィリスを見ている。

「あ、あの、フィリスさん、今回はザラ隊長の気分転換も兼ねてるんですから、余り追い詰めるような事は言わない方が良いと思うんですが」
「そ、そうでしたね、すいません」

 生来のツッコミ気質からついついアスランに言い返してしまったフィリスだったが、エルフィに窘められてすまなそうに頭を下げた。そう、今回の上陸はストレス性胃潰瘍を起こしかねない状態に陥っているアスランの、言うなれば気分転換を兼ねた任務なのである。その為に同行者も良識派の2人で固められ、アスランの負担を極力軽くするように配慮されているのだ。
 今回の偵察任務はエルフィが潜水艦隊司令のモラシム隊長に具申したものだった。当初はエルフィの意見具申を歯牙にもかけずに却下しようとしたモラシムだったが、エルフィが余りにも執拗に食い下がってくる為に仕方なく彼女の話しを聞くことにしたのだ。そしてエルフィの話を聞き終えたモラシム隊長は、何故か感動した表情でエルフィに頷き、持ってきた意見具申書にその場で承認を与えている。
 敵中に偵察に赴く方が精神的に楽、というアスランの悲惨極まりない現状に同情してしまったモラシム隊長は、アスランの体調を心配するエルフィの心遣いに打たれて今回の偵察任務を許可し、支援までしてくれたのである。
 エルフィが今後の予定表を持ち出してアスランとフィリスに確認を取る。

「それでは、今日の14:00に潜水艦隊から支援のミサイル攻撃がマドラスに向けて行われます。私たちはその後のゴタゴタに紛れてマドラスに潜入、情報収集を行う事になります。旅費の関係でこちらに留まれるのは1日だけ、1泊2日となります」
「エルフィ、1泊2日って、修学旅行じゃないんだから」
「う、そうですね。でもまあ、明日の14:00までにこの回収地点に来ないと死んだと思われて攻撃開始なんで、気を付けて下さい。モラシム隊長は待ってはくれませんよ」

 エルフィはアスランのツッコミに少したじろぎならがも通達事項を伝え終えた。フィリスは自分の手に持つを取り、マドラス市街を見やる。

「それじゃあ行きますか。一応あそこは敵地ですので、気を付ける事だけは忘れないで下さい」
「うう、イザークたち、また問題起こして無ければいいんだが」
「それは大丈夫でしょう。モラシム隊長が引き受けるといってましたから」
「なら、良いんだが」

 胃の辺りを押さえながら不安そうに答えるアスランに、エルフィとフィリスは小さく肩を落としてしまう。全く、この隊長はどうしてこうもっと余裕も持って生きられないのだろうか。
 ちなみにアスランの胃痛の原因たるイザークとディアッカはというと、実はもう既に、問題を起こしてモラシムに罰則を受けさせられていたりする。モップを手に格納甲板を掃除させられていたイザークは三角帽を被った姿で右手を握り締めて文句を言っていた。

「畜生、何でアスランが偵察任務に出れて、俺がこんな所でモップかけなくてはいかんのだ!?」
「イザークよお、流石にこれ以上騒動起こすのは不味くねえか。次やったらモラシム隊長がサメの餌にするとか言ってったぜ」
「はっ、やれるものならやってみろって言うんだ!」
「ほお、ならそうしてやろうか?」

386流離う翼たち・469:2004/05/03(月) 00:26
 いきなり背後から聞こえてきたその声に、イザークとディアッカはビクリと体を震わせて恐る恐る背後を振り返った。すると、そこには何とモラシム隊長が不機嫌そうな顔で腕を組んで立っているではないか。

「あ、あの、モラシム隊長、何時からそこに?」
「ジュールが拳を握り締めて文句を言ったあたりからだな」
「あ、あ、それは、ですねえ。ディ、ディアッカ、お前からも何か・・・・・・」

 イザークは言い訳の言葉さえも浮かばなくなって友人に助けを求めようとしたが、既にディアッカはその場にはおらず、離れた所で鼻歌を歌いながら楽しそうにモップがけをしていた。

「フンフンフン〜〜♪ 俺は愉快な掃除屋さ〜ん♪」
「ディ、ディアッカ――――――!!?」

 友に見捨てられた事を悟ったイザークは悲痛な声を上げたが、ディアッカはイザークの方を見る事さえなく、イザークはモラシムに首根っこを捕まえられて引き摺られていったのである。

「さあ、インド洋がお前を呼んでいるぞ」
「ま、待って、待ってくださいモラシム隊長!?」
「たまには海水浴もいいものだ。なあに、そう滅多にサメに襲われたりはせん」
「滅多にってことは、襲われる確立もあるってことでしょうがあ!」

 悲鳴を上げながら引き摺られていくイザークを、整備中の機体から顔を出したミゲルとニコル、ジャックが見送っていた。

「あ〜る〜はれた〜ひ〜る〜さがり〜、いちば〜へつづ〜くみち〜」
「なんですかミゲル、その変わった歌は?」
「ドナドナっていう、大昔に流行った流行歌だ」
「へえ。でも、何でいきなりそんな歌を?」
「・・・・・・いや。この歌はそのまま聴くとちょっとシュールなだけなんだが、実はある国が行っていた組織的な虐殺をテーマとした歌なのだ。丁度、イザークのように処刑場に連れて行かれる囚人の歌なんだ」
「・・・・・・・・・だからですか?」
「ああ、あのイザークはまさにこの歌が似合う、そう思ったからな」
「ジュール隊長も可哀想にと言いたいですが、まあ自業自得ですね」

 連れて行かれるイザークを見送った3人には一抹の同情もありはしない。残念だが、イザークは少し懲りた方がいいと考えていたのだ。ディアッカもイザーク同様に懲りた方が良いのだが、彼は引き際を心得ているので中々法の網に掛からない。肝心な所で抜けているイザークよりもはるかに厄介な相手なのだ。

「でも、大丈夫ですかねえ、ザラ隊長たち」
「まあ、フィリスとエルフィもついていってるし、大丈夫だろ」
「最近のアスランは顔色が悪かったですからね」

 一応敵地に潜入するという危険極まりない任務に行っているのだ。3人がアスランたちを心配するのも仕方が無いだろう。
 ちなみにイザークはというと、本当にモラシムに海に叩き込まれて30分ばかり泳ぎ続けていたらしい。途中でなにやらとても大きな魚影を見たモラシムに急いで引き上げられたそうだが、詳しい事をイザークは遂に最後まで語らなかった。ただ、その時の事を聞かれるとガタガタと震えだして逃げてしまうようになったとか。

387流離う翼たち・作者:2004/05/03(月) 00:36
>> 『明日』と『終わり』の間に
も、森蘭丸!? カガリの前世は一体・・・・・・
しかしカガリも似たような物か。という事はカレー事件の責任は誰に行くのやら
アスランにとりあえず敬礼!

>> ザフト・赤毛の虜囚
ミコトさんも一緒に宇宙へ。ゲイツにでも乗るのかな。一応赤服だし
回答ありがとうございます。なるほど、兄貴の妹ですか

>> 過去の傷
フレイ様がプロヴィに、なんか、イメージが・・・・・・
カガリとアスランは仲が悪そうだし
サイはミリィの手を逃れたようですな。感心感心

388ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/05/03(月) 02:50
今日は執筆が間に合わなかったので感想だけ書き込みます。

>>過去の傷
アスランは言葉使いも変わって隊長の風格というか、偉そうというか。
ミリィは、やはり、まだラクスには適いませんか。サイを味方に引き込むのは失敗したし、
次は誰を…… って、すっかり悪党の器ですな。でも、ちょっと気が短いかも。

>>流離う翼たち
いいところで場面転換ですね。また話が交差するのを待ちましょう。
いまさらですが、マドラスってインド半島の東側の都市で、ムックなどでは、中立よりの赤道連合に
属する場所ですが、ここでは、連合の拠点になんですね。連合のどんな拠点なのかは、あまり説明が
無いのですが、戦艦修理や、アズが居たり、アスランまで潜入したりと、すっかり、TV本編のオーブの
ような重要な位置付けになってますね。

ちなみに、ミコトは今の予定ではゲイツ改に乗せるつもりです。

389過去の傷・126:2004/05/03(月) 09:17
「この感じは・・・この機体・・・私使えるかもしれないわね」
(いい感覚ね、それより月光蝶システムってなにかしら・・・?武器かな・・・?それからこのドラグ−ンシステムって・・・?)
(それはいわゆる・・・Gビットみたいな感じです)
(ティファ・・・)
(フレイさん、こんにちは・・・あ!この世界に来るという話なんですけど・・・駄目でした、マイクウェ−ブ施設で・・・あ、そんなことより通信が)
<アルスタ−二等兵も発進するんだ、宇宙に出る>
アスランの声だ。
<あ、はい分かりました・・・フレイ・アルスタ−!プロヴィデンス出るわよ!>

<ミ−ティア装着完了!>(これくらいのハンデはないとな)
宇宙の出た四機の機体は・・・。
<アルスタ−二等兵、君はキラのフリ−ダム、カガリのストライク・ル−ジュと協力し、俺と戦うんだ>
<アスランさんと?そんな・・・>
<これは練習だ、気負いすることはない>
<は、はい分かりました!>
<いくぞ!練習開始!>

「じゃ、じゃあ行くわよ!」
(ええっと・・・キラに言われたとおり・・・ファンネル!いって!)
そしてプロヴィデンスから、無数の飛び道具系のビ−ムが飛び出した。

(さあて、どれを狙うか、キラが厄介だな・・・しかし・・・俺はプロヴィデンスとニュ−タイプと戦いたかったんだ・・・いくぞ、フレイ・アルスタ−!)
そしてジャスティス・ミ−ティアはプロヴィデンスの放ったドラグ−ンシステムをなんとか回避しながら突っ込んだ。
(やはりまだまだ素人だな・・・)

(フレイさん、モビルス−ツ接近!)
(え!?もう来たの!?)
<フレイ大丈夫だ!>
<カガリ!?>
そしてジャスティス・ミ−ティアが無数のビ−ムの前から突如姿を現した。
(ああ・・・来たわ・・・いや)
切りかかってきた敵機、しかしプロヴィデンスの前にストライク・ル−ジュが現れシ−ルドで防ごうとする。
<ここは・・・通さん!>
<カガリ!そんなもので防げるとでも思ってるのか!>
しかし、さすがに全ては防ぎきれなかったらしくル−ジュも多少だが損傷した。

その頃キラのフリ−ダムは・・・。
「くくく・・・皆殺しだ・・・」

そして同時刻。
「キラ・・・そろそろ薬が効いてきたころかしら・・・さあ・・・殺してねキラ」
とミリアリアが部屋で一人呟いていた、不気味な笑みを浮かべて。
「殺して、殺して・・・あははは!」
(ふふ・・・だいたい十五分ってとこかしら一つしかないんだ大事の使ってねキラ・・・ふふ・・・あはは!)

390『明日』と『終わり』の間に・作者:2004/05/03(月) 09:32
>>384
 その通りです。ガンダムと関係のない声優ネタだったので使うかどうか少し迷いましたが、分かってくださった方がいてくださって良かったです。

》流離う翼たち
 フィリスさんのツッコミ気質は生まれつきなんですねw。しかしアスランは本当に苦労しているみたいですね。
 それにしてもモラシム隊長、あんなこと言っておいていざという時に焦っちゃ駄目ですよ。イザ―クにまた新しいトラウマが出来ましたねw。

》過去の傷
 アスラン、何だか無理強いしてるみたいですね。フレイ様に対してここまで高圧的になる理由は何でしょう?それにプロヴィデンスX改は月光蝶システムまで装備しているとは。ひょっとして『SEED』も黒歴史の一部?
 それとミリィ、キラに何飲ませたんだい?凄いことになってるけど・・・。

》赤毛の虜囚
 ムウさんとミコトちゃんは兄妹なんですね。本編と年齢が異なるとありましたが、何歳になるんでしょうか?それと他にもそうした設定の違うキャラはおられますか?

391過去の傷・127:2004/05/03(月) 10:14
<なんか、キラの様子が変だ!>
<アスランさん!キラが!>
<キラがどうした・・・?>
一時止まった三機。
そしてフリ−ダムが駆けつけてきた。
<僕の邪魔をするなら・・・死ぬよ?皆・・・皆殺しだ>
(なにかにやられたな・・・薬か?それとも・・・おそらく十五分程度で切れるだろう・・・仕方がない)
<アルスタ−二等兵にカガリ!キラは薬にやられている、十五分程度と思うが・・・それまで粘るぞ!今日はこれで終わりだ!>
<分かりました、これも練習のつもりで・・・>

<そら・・・いくよ!>
フリ−ダムがプロヴィデンスに遅いかかってきた。
「キラ・・・」
ルプス・ビ−ムライフルを放ってきた。
しかし、Iフィ−ルドがそれを無効化する。
そしてすかさずドラグ−ン・システムを放つ。
そしてそのまま突っ込む。
無数のビ−ムを回避しているフリ−ダムにプロヴィデンスが斬りつける。
(キラって・・・たいしたことないわね)
いや、機体の性能のおかげだと思うが・・・。
そして・・・。
<フレイ・・・?僕は・・・>
<よかった、気づいたみたいね・・・もう十五分過ぎたころかしら>

機体から降りた四人は。
「気づいてないの?」
「うん、どうも意識がなくてさ」
「そう・・・」
フレイはキラを気遣っていた、そして背中を優しくさする。
「もう・・・心配かけないで」
「フレイ、ごめん・・・ありがとう・・・」
「もう・・・馬鹿」

一人でいたアスランは・・・。
「・・・・・!」
「アスランさん・・・」
「君・・・」
ミリアリアは歩み寄るとアスランの隣に座る。
なんだ、生きてたんだ・・・でも少しやりすぎたかしら。
「どうしてここに?」
「アスランさんがとっても心配で・・・」
「俺が・・・?」
ミリアリアはアスランを抱きしめた。
「な・・・君」
「言ったはずです、私も一緒に戦うって・・・貴方とともに・・・」
アスランは抵抗もせずされるがままになっていた。
「疲れたよ」
「なら・・・私の部屋に来ませんか?」
「いや、いい・・・」
「ならアスランさんの部屋に行ってもいいですか」
それにアスランは戸惑う。
「いや、しかし・・・」
「分かりました・・・」

392流離う翼たち・470:2004/05/03(月) 23:48
 基地の食堂でフレイはセランとボーマンの2人を加えて食事を摂っていた。セランは上官とはいえ経験の浅いフレイを何かと気にかけてくれており、フレイもそんなセランに随分気を許していたのだ。そしてボーマンもパイプレンチを食らった頭に止血を施して包帯を巻いてセランの隣に座っている。
 フレイはスパゲティを食べながらセランに自分の疑問をぶつけてみた。

「ねえセラン軍曹、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「はい、何ですか少尉?」

 セランは食べようとしていたハンバーグを止め、フレイの方を見る。フレイは少しだけ躊躇った後、その疑問を口にした。

「軍曹達は、どうして大西洋連邦軍にいるの?」
「は?」
「大西洋連邦はコーディネイターに優しい国じゃないわ。なのに、同じコーディネイターと戦ってまでどうして?」
「ああ、そういう事ですか」

 納得したのか、セランはおかしそうに笑っている。ボーマンの方も同様で、どうもこの2人はキラとは何かが違うらしい。

「私たちはこの町で生まれて、この街で育ったんですよ。その故郷を攻撃してきたプラントの連中なんかにどうして肩入れしなくちゃならないんです?」
「全くだな。同胞だか何だか知らんが、行った事も無いプラントや、顔も見たことも無い連中に義理なんぞ感じんよ」
「そういうものなの?」
「当り前ですよ。第1、同胞だから味方しろなんて冗談じゃないです。会ったことも無い遠くの親戚より、近所の人たちの方が大事です」

 セランの答えに、フレイは動揺を隠せない。キラは同じコーディネイターと戦う事にあれほど苦しんでいたのに、そのコーディネイターから全く違う意見を聞かされたのだ。2人とキラは生まれた場所も育った環境も違うというのは分かるのだが、こうも違うものだとは。
 考えこんでしまったフレイに、ボーマンが声をかけた。

「何でそんな事を聞くんだ?」
「・・・・・・アークエンジェルにも、コーディネイターがいるんです。かれは同じコーディネイターと殺しあう事に苦しんでました」
「なるほど、そういう事か」

 ボーマンは納得して頷いた。だが、セランは納得していなかったらしく、むしろ糾弾口調でそのコーディネイターに文句を付けた。

「そのコーディネイターは覚悟が足りないんですよ。そりゃ色々事情はあるんでしょうけど、一度こっちに付くって決めたんなら悩んでどうするんだか」
「でも、相手には友達も居るっていうことだし」
「それがどうだって言うんです。私たちの親戚だってプラントに居ますよ。会った事は無いですけどね」

 セランの反論にフレイはまた衝撃を受けた。何でそんなに簡単に言えてしまうのだ。戦争で敵同士だという事は、自分でその親戚を殺してしまうかもしれないというのに。

「なんで、そんな風に割り切れるの?」
「そんなの簡単です。さっきも言いましたが、私は会った事も無い親戚より、両親とこの街とそこに住んでる人の方が大事だからです。親戚が居るかもしれないから、何て考えてたらこの街も守れないですし、私たちも死んじゃいますよ」
「そういう事だな。そいつがどうかは知らないが、俺たちは身近な人たちを守りたいから軍に入った。それが全てだよ」
「でも、大西洋連邦軍だと、色々と問題も起きるんじゃないの。嫌がらせをされたりとか、ブルーコスモスに狙われたりとか」
「そういう事も確かにありますけど、それくらいは仕方ないですよ。それに隊の仲間達は良くしてくれますし、アルフレット少佐が色々と手を回してくれてからは嫌がらせも無くなりました。兄さんなんかは勲章も貰ってるんですよ」

 どうやら自分が考えていたより2人はずっと苦労していたらしい。だが、それを全く感じさせないのは、キラと違って1人ではなかったからだろうか。それにアルフレットみたいな上官も居たのが大きかったのだろう。

393流離う翼たち・作者:2004/05/03(月) 23:51
>> 過去の傷
月光蝶って・・・・・・なんでそんな物騒な物を。世界を滅ぼす気かアスランは?
しかし、キラって何使われたんでしょうね

394私の想いが名無しを守るわ:2004/05/04(火) 03:25
>>流離う翼たち
このSSの大西洋連合はまだアルフレッドの影響力が浸透すると
いう点でマシなというか、より勝利に貪欲な組織に見えますね。
ちょっと間の抜けたというか油断しっぱなしのザフトと対照的です。
>>過去の傷
「月光蝶である」のあれですね。私はダブルXとプロヴィデンス
のMIXを想像してました。アスランは、前の戦争だけでは戦い足
りないという感じですね。㍉の意図も見えてきた感じがします。
>> ザフト・赤毛の虜囚
フレイ様とミコトの関係が親密になればなるほど、ゲイツ改に
乗るという設定が不安を誘いますね。キラともぶつかることに
なるのでしょうか。じっと次の展開を待つことにしましょう。
>> 『明日』と『終わり』の間に・お昼過ぎ
カガリ成分がかなり強いらしいという噂はよく聞いてます。
「ごめんなアスラン、妬かないでくれよ」←調子に乗るカガリ
の顔が目に浮かぶ一言ですね。フレイ様大丈夫だったのかしら。

395ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/05/04(火) 08:50
用意していた番外的な新章。最終チェック中に、サイズ超過になって時間切れです。投下は今晩以降になります。
感想を聞いていると、「ヴィアとミコト」の番外は、9章「母親(ママ)」の後にすれば良かったですね。
間に、ミリィのミナシロ編挟んでしまいましたからね。

>>過去の傷
プロヴィデンスXのXって、あっちのXでしたか。ティファは、出て来れなくて残念です。
ミリィは一体何の薬を使ったんだ。キラを誘惑している時に一服盛ったとすると、かなり遅効性。
意外と、隠れた策略を用意しているみたいで、これからのミリィ vs アスラン・ラクス戦線に期待。

>>流離う翼たち
セランとボーマンの戦う理由、キラと同じなんですね。フレイ様は気づいていないようですが、
キラにとっての近しい人は、フレイ様を始めとするヘリオポリスの友人とともに、アスランがいるはずです。
それが、二人との考えが違うように見える理由なのでしょう。そのアスランもマドラスに潜入したようですし、
フレイ様、その辺に触れることができるのかな。そういえば、この世界ではトリィはいるのでしょうかね。

>>390
ムウは、24、5歳といったところです。当然、マリューさんやナタルも、それにつれて若干シフトする
ことになります。うちのSSの年齢設定で、一番、影響が大きいのはジョージ・アルスターでしょうね。
かなり老け込んでいることになっています。その他は、年齢がはっきりしないのを自分なりに
決めていっているぐらいです。ただ、設定は変えていないですが、フレイ達は、自分では、
大学生くらいのつもりでいます。

396過去の傷・128:2004/05/04(火) 12:15
「ちょっと・・・いいか?」
パイロットロッカ−でフレイはアスランに声をかけられたのだ。
ス−ツをまだ着ていたが仕方なく座る。
「君は・・・キラが好きか・・・?」
突然の質問に戸惑いながらフレイは頬を少し赤く染めると小さくうなずいた。
「はい・・・」
「そうか・・・あいつは・・・泣き虫で・・・甘ったれで・・・優秀なのにいいかげんな奴で・・・でも優しい奴で、ほっとけない奴だ」
「そうですよね・・・泣き虫で、でもそこが可愛いんですよ・・・私も何度か泣きつかれて慰めたことが」
「そうか、大変だったな」
「いえ、そんなことないです」
アスランは微笑んだ。
「あいつが地球軍にいた理由も残った理由も君がいたからかもしれないな・・・」
「え・・・?」
驚いたようにフレイはアスランを見た。
「いや・・・アルスタ−二等兵、君に頼みがある」
「え?はい、私に出来ることでしたら・・・」
「キラを見れば分かるが君はあいつにとっては世界の中で一番の女性だ・・・」
「え・・・?私が」
そしてアスランは地面を見ると告げた。
「だからあいつを・・・キラを頼む・・・」
フレイは微笑んだ。
「はい!」
この人にとってもキラは大切なのね・・・だから私はこの人のためにもキラを愛して本当の想いでキラを守るわ・・・。
「あの・・・アスランさん」
「アスランさんこんなところにいたんですか〜♪」
少女の声がしたので二人が振り向いくといつもより綺麗なミリアリアがいた。
「君・・・」
「う〜ん、やっぱり入浴後はいい気持ちね」
そうか・・・入浴後なのだ、それでいつもより色気があるのだろう・・・それから香水だろうか、いい香りがミリアリアからした、普通でも可愛いミリアリアがさらに可愛くみえた、アスランは美少女二人を目にして婚約者である歌姫のことなど頭の片隅にも置いてなかった。
アスランもついミリアリアに見とれてしまった、フレイには悪いがパイロットス−ツの彼女よりは今のミリアリアは色気や魅力があり、目がいってしまうのは当然だろう。
「アスランさん、探しちゃったわよ〜♪」
「あ、ああ・・・すまない・・・」
そしてアスランの手を取ると立たせてフレイに見せつけるようにどきまぎしているアスランを抱き寄せ腕を組み胸のふくらみをアスランに感じさせる。
「アスランさん♪」
「・・・・・・」
フレイというと・・・予想通りうんざりした様子でいちゃいちゃしている二人をあきれた目でため息をつきながら眺めている。
「ここ雰囲気ないわ、私の部屋にでも行きましょう?」
甘える声で言われ戸惑うアスラン。
フレイが立ち上がる。
「私行くわ・・・お邪魔みたいだから・・・」
そう呟くとフレイが立ち去る。
「あ、アルスタ−二等兵・・・」
アスランとしても面白くなかった、フレイとまだ話したかったし、ア−クエンジェル内でのキラの話もまだ聞きたかったのだが・・・とんだ邪魔をされた感じだ。
そしてアスランはぎょっとした・・・ミリアリアがフレイの後姿を敵意のような眼差しで・・・警戒するように睨みつけていたのだ。
「君は・・・彼女が」
「ええ、私・・・あの女が大嫌いなんです」
さっきまでの甘えた声や表情は完全に彼女からは消えていた。
全てフレイに見せつけるためだったのだ。

397散った花、実る果実40:2004/05/05(水) 02:27
「地球の人々と私たちは同胞です。コーディネイターは決して進化した違うものではないのです。婚姻工作を行ってもなお、生まれてこぬ子供達。
すでに未来をつくれぬ私たちの、どこが進化した種だというのでしょう」
スクリーンの中で切々と訴える彼女。その声と顔は覚えのあるものだった。
「愛する人々を失ってもなお、戦いつづけるその未来は、間違いなく待つものなのでしょうか。」
ナチュラルとコーディネイターの併合を説く彼女の演説に対して政治家の反論が入る。
「苦しくとも今を戦い、そして、平和で輝かしい・・・・・」
プツッと言う音を立ててスクリーンのスイッチが切られた。
ラクス・クライン。ザフトの歌姫。
初めて見たとき、なんて不快なコなんだろうって思った。
コーディネイターのくせに、ナチュラルの私たちの艦で馴れ馴れしく近づいてきて。
いかにもお嬢様といった振る舞いでイライラさせられた。
でも、スクリーンの彼女は違う人のように見える。
ぽやぽやして無神経なことを言うばかりだと思っていたけど・・・・このコ、こんな事考えていたのね。
『愛する人々を失ってもなお』・・・・・彼女は愛する誰かを失ったのだろうか。
私は、・・・・これからどうしようと言うのだろう。
今なら彼女と話せる気がした。
彼女は、あの時、あの爆発を見て、何を思っただろう。
あの激しい戦闘の中、静かに歌を歌いながら、何を考えていたんだろう。

「ラクス・クラインには、議長も大分手を焼いておいでのようだ。よもやそれで我等に帰国命令出たわけでもあるまいが。」
嘲笑うようにそう言った仮面の男はモニターのスイッチを切り、こちらを振り返った。
「しかし、私には信じられません。・・・彼女が反逆者などと。」
血気さかんな顔に傷のある少年がその言葉に反発する。
「そう思うものがいるからこそ、彼女を使うのだよ、クライン派は。君たちまで惑わされてどうするね。」
仮面の男はそれに動じることなく諭す様に続ける。それがまるで彼の演説であるかのように。
「様々な思惑がからみあうのが戦争だよ。何と戦わねばならないのか・・・・見誤るなよ」
そう言って去っていく彼の背中を、銀髪の少年はは睨みつけるようにいつまでも見つめていた。

398散った花、実る果実41:2004/05/05(水) 02:28
「あの・・・リスティア。ラクス・クラインって・・・・・」
私の質問に、なんでもない事のように彼女は答える。
「ああ・・・ザフトの歌姫。ちょっと前までは慰問団の中心というか・・・・追悼式で歌を歌ったり、私たちの平和のシンボルとして活躍していたのだけれど・・・・先日、戦艦を奪って離反したらしくてね。」
え・・・・・?
「離反て・・・・・どうして?」
「彼女は・・・・コーディネイターを特別な種だとは考えていないようね。コーディネイターとナチュラルは同じ人間だと・・・・・そう、主張しているわ」
なんで・・・・そう思えるのかしら・・・・・・コーディネイターであることに優越感を持たず?
「それを聞いて・・・・あなたはどう思う?」
「え・・・・どう思うって・・・・・」
リスティアは意外そうに問い返す。
「だって・・・ラクスは今まではむしろコーディネイターの象徴だったわけでしょ・・・?それが・・・・コーディネイターを否定する側にまわっている。それって・・・・コーディネイターの側からすればどう思うものなの?」
「・・・・そうね・・・・・・」
彼女は随分考え込んでいるようだった。
「コーディネイターとして・・・・っていうのはちょっと答えにくい面もあるわね。私個人の意見になっちゃうもの。ただ・・・・彼女の言うことが全部間違ってる、とは・・・思わない・・・・・・・」
「それって・・・・・・」
「誤解しないで、ナチュラルを認めたわけではないわ。でも・・・第二世代、第三世代とコーディネイトを重ねるに従って低下する出生率・・・・不安を覚えるのは確かだわ・・・・・だからこそ・・・皆彼女の言葉に動揺せずにはいられないのでしょうね・・・・・」
「コーディネイター自身も、自分達のありように不安を抱いている・・・・・?」
「ただ、彼女の言うことが全面的に正しい、とも思わないわ。出生率の問題に関しては、これからそれを解消するためのコーディネイトがきっと見つけ出されると思うし・・・・それに・・・・・」
「それに?」
促すと彼女は自分を励ますように一つ頷いて言葉を続けた。
「コーディネイターはやはり優れた種よ。みてごらんなさいよ、ナチュラルとコーディネイターの能力にいかに格差があるか。今更コーディネイターが間違ってました、だなんて・・・現実を見ていないにも程があるわ。」
確かにコーディネイターとナチュラルには歴然とした能力差がある。でもナチュラルにもコーディネイターと比べて能力に遜色のない者もいる。
ナチュラルとコーディネイターに違いがない、とは今の私にも思えない。でも、初めから違う種なのだと、共存できないのだ、と他者を排除しようとする今の戦争は・・・・・・

ラクス・クラインの演説は、やはりザフトの意識にも影響を与えているようだった。
最初の頃のピリピリした空気はなりをひそめ、私と話してナチュラルを知ろうとするものも少なくなかった。
「君、ナチュラルにしては美人だよね。コーディネイターの血は入ってないんだよね?」
「ナチュラルは遺伝子を操作せずに出産するけど、どうなの?例えば遺伝子異常があったりとか、極端に能力の低い子供が産まれて来たり、とか考えて怖くなったりしないの?」
その意見にははっきり言って失礼なものも多かったけど、人間扱いして私と向き合って話してくれる人がいる、というのはいいことに思えた。
「私はコーディネイターではないわ。だから捕虜としてここにいるの。地球軍にはほとんどナチュラルしかいないわよ。美人?ありがと。パパとママからの贈り物ね。私のママ、美人だったんだから。」
「ナチュラル能力が皆低いわけでもないわよ。遺伝子はいじらなければ確率の問題なんだから、コーディネイターより能力的に高い子供が産まれる確率だってあるわ。遺伝子異常は、考えられなくはないけど・・・でも、ナチュラルだって、遺伝子異常の検査はするし、遺伝子異常があって、それで遺伝子操作することまでは否定してないわよ。」
私は知った。コーディネイターとナチュラルの間には大きな誤解があることを。
コーディネイターを生み出した一世代目はどうだかわからない。
でも、2世代目、3世代目になると、ナチュラルに対する知識そのものに偏りがあり、コーディネイトによる能力付加がむしろ標準だと考えられている節があり、ナチュラルに出産するということは遺伝子上欠陥の生じる可能性が高かったり、能力が平均より劣る、というように捉えられているらしかった。

399散った花、実る果実/作者:2004/05/05(水) 02:49
お・・・お久しぶりです。すいません。
ちょっとばかし忙しかったのと鬱入ってたので投下控えてました。
未熟なもので、精神状態が話に影響出やすいのですねえ・・・・

>>過去の傷
み・・・ミリ・・・怖・・・・・・・
なんだかタンクトップフレイ様みたいになってますが・・・・・
しかしアスランにフレイ様が理解してもらえたみたいでよかった。これで嫁姑問題は解決ですねって、あれ?(笑)

>>流離う
セラン、えらい清々しい!ここまで言い切れる彼女は素晴らしい。
まあ、会ったことのない親戚と兄弟のように過ごしてきた親友と比べてしまうのはキラには酷な気もしますが。
放送中「キラ、どうするんだ、はっきりしろ!!」って思った事は確かに一度や二度じゃないですねえ・・・

>>赤毛の虜囚
ミ、ミコトちゃんが!えっらい可愛いんですけど!!!
もうキラとフレイとミコトちゃんで三人で仲良く暮らしましょうよ、そうしましょう。
・・・って血迷ってしまう位、ミコトちゃんに萌えてしまいました。(汗)
幸せになってもらいたいものですねー。

>>明日と終わりの間に
カガリ一人称、中々いいですね。感じ出てます。
いやー、しかし・・・・カガリもですか・・・・そうですか・・・・・(爆笑)
アスランの一言に愛を感じますね。アスランはそれでも食べるのですね。頑張れアスラン!!
>>Last War
キラの成長を感じました。
今までのキラだったら、アスランを止めることまではできず、また苦しんでいたことでしょう。
続きが気になりますね。

>>キラ♀フレイ♂
キラの不信感が育っていると思ったのでほのぼのデート(未遂だけど)は意外でした。
まあまだそこまで不信感を抱いているわけでもないのでしょうか。
しかしカガリのシスコンっぷりは・・・・犯罪に走らないように注意、でしょうか。w

>>へリオポリス
フレイ様はまだキラへの想いに目覚めてはいないのですね。
うーん、ちょっとつらそうな感じ。

>>リヴァオタ
いつもリンクしているイラストや写真はご自分で調達してるんでしょうか。
すごいですね・・・・・

400ザフト・赤毛の虜囚 57:2004/05/05(水) 08:55
10.親友 1/8
[ジェシカとミーシャ]

私の前に座っている二人、ジェシカとミーシャ、二人とも私の親友。

「フレイ、いい加減白状しなさいよ」
「何よ、ジェシカ。何のことよ?」

「とぼけるんじゃないわよ、アンタの彼氏、サイのこと。どこまでいったのよ。もう、したの?」
「ジェシカ、サイとは、そんなんじゃ無いんだから」

「でも、今日会うんでしょ。今夜はホテルかしら」
「ミーシャ、そうだけど、今日はパパのパーティだし、私、パパと泊まるから。サイだって両親来てるし」

「ホントかな、二人抜け出して……」
ジェシカとミーシャが声を揃えて言う言葉に、私は癇癪を起こす。

「いい加減にしてよ、二人とも!」
私は置いてあるパフェをひっくり返さんばかりにテーブルを叩きつける。

ここは、ミナシロ市ショッピングモールの、とある喫茶店。ヘリオポリスの工業カレッジに
在学しているサイが、二週間の休みでオーブに帰って来る。家族ぐるみ、兄妹のように頻繁に
会っていたのに、ヘリオポリスに行ってから、長期の休みにしか会えなくなったサイ。
メールやビデオレターのやりとりはしてるけど、直接、会うのはやっぱり違う。サイに会いたい。
サイの表情を間近で見たい。パパの仕事のパーティが、ここミナシロ市で開かれ、サイも両親と
パーティに来るということで、私はサイと事前に、ミナシロのショッピングモールで待ち合わせをしたのだ。

ところが、それをジェシカとミーシャに気づかれた。結局、朝から呼び出され、買い物に
付き合わされた上に、質問責めにあっている。

私はサイとの約束で、婚約を隠しとかなきゃいけないから、いろいろと突っ込んで来る二人を
かわすのに大わらわ。私とサイとのこと、あること無いこと想像して、もう、なんてやつらよ。

「まったく、のんびりしてるんだからフレイは。ぼやぼやしてると、他に取られるわよ」
「別に、それで一生決める訳じゃなし、他にも男いるんだから、堅苦しく考えないでさ」

「一線越えちゃえば、男なんて変わるから。思い切って、こっちから言っちゃいなよ」
「やってみて気に入らなかったって、平気だから、お試し期間だと思って」

「私の彼なんて、あの後、まるで手のひら返したように態度変えたわよ。今までの奥手は何だったのよ」
「男なんて、いっぱい居るし、フレイなら、ちょっと着飾れば、みんな寄って来るわよ」

「お試しって、人のこと、なんだと思ってるのよ……」
私はミーシャの言葉に、後ればせながら、ぼそっとツッコムけど、まるで気づかないように、
二人はハイペースで、話し続ける。

そりゃいいわよ、二人とも男の子と付き合い上手だし。ジェシカなんて、何度、彼氏の話を聞かされたか。
もう微に入り細に入り、私、顔を真っ赤にして、まともに聞けなかった。ミーシャは、そこまで
いかないけど、結構もてるって。特に、港にあるイベント場では、そうらしい。他人を見る目も特別。
あの人と、あの人はデキてるとか…… 二人とも男なんだけど……

ジェシカとミーシャ、二人との付き合いは長いけど、私はなんとなく距離を感じる。
サイのこと隠していることもあるけど、どうも二人のノリには付いて行けない。基本的に自分が
面白がれば、みんな喜ぶと思っているのよね。要するに自分勝手。私だって、まあ、そんなところあるけど。
人が困ってるの察して話を聞くとかいう訳でも無い。別に、ジェシカとミーシャが嫌いだって訳じゃないけど、
これで親友って言えるのかな。

「もう行くわよ。パーティの前に、パパと待ち合わせしてるし」
「パパとだなんて嘘ばっかり」
「ちょっと、フレイ逃げる気、ちゃんと答えてよ」

サイが待ってるんだから、もう早く行かせてよ、二人とも……

401ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/05/05(水) 08:59
フレイSSの番外的な新章開始します。テーマは親友。さて、うまく書けているでしょうか。

>>過去の傷
ミリィはアスランに標的を変えても、フレイ様への敵視は変わっていないみたい。
アスラン、戦闘訓練では偉そうでしたが、フレイ様を認めてるんですね。よかったです。

>>散った花、実る果実
お久しぶりです。カーペンタリアに着いてからの話ですね。
ザフトのフレイ様に対する接し方も変わって、随分、打ち解けた雰囲気になっていて微笑ましいです。
だけど、ミリアリア・リスティアのように、まだ、戦争の目までは捨て切れていないのでしょうね。

402過去の傷・129:2004/05/05(水) 13:07
「そうなのよ!すごいでしょ、私あのキラと互角だったんだから」
夜の食堂だ、フレイは当然、キラ、カガリ、アサギ、マユラ、そしてラクスがいた。
ジュリはサイの部屋にでもいるのだろう。
それを入り口からミリアリアが見ているのだ。
実戦練習のことを自慢しているフレイを見て、ミリアリアは正直面白くなかった。
ふんなによ、どうせ練習なんでしょ、馬鹿じゃないの?キラが本気で戦うわけないじゃない、手を抜いたに決まってるでしょ、それに機体の性能のおかげに決まってるわ、それなのになんなのよあの女は、そこまでして自慢したいのかしら、まあフレイの思いつくことだわね。
「でもフレイ、君にそんな才能があったなんて」
と、キラがフレイを褒める。
ああ、やだやだ、いやになるわね、恋人同士褒め合っていちゃいちゃしてるわ、このバカップル。
「すごいですわフレイさん」
「ふふ、ありがとうラクス」
今度はラクスだ。
駄目、私はあの中に入ってはいけない、どうせ私が行ってもしらけて暗くなるのは分かってるもの、そしてフレイと喧嘩になるのも。
そう・・・ミリアリアはいつのまにか皆と距離が離れていたのだ。
特に気に入らないのが、フレイが輪の中にいるということ、ア−クエンジェルの頃とは立場が逆になってしまった、あの女がなんで皆と溶け込んでいるのよ、おかしいわ、こんなことがあっていいの?いいわけないわ。
あの女は悪い女なのよ?なのに・・・そうよ、もうここはア−クエンジェルじゃない、ト−ルはいない、去年は楽しかった、もう艦長はマリュ−さんじゃない、歌姫のくせに規則にいちいちうざいくらいうるさいラクス・クライン。
キラだってそう、もうキラはまるで私のことは忘れたみたいにフレイといちゃいちゃしている、少し私に裏切られたからもう私のこと忘れるなんて私に対する気持ちなんてその程度のものだったのよ。
ああ、もうここにいるのもいやになるわ。
私はフレイの顔も見るのがいやで食堂の入り口を後にした。
あいつ等なんか皆いなくなればいいのに・・・。
ト−ルがいないのになんであいつ等がいるのよ・・・。
あ、アスランさんは・・・?
ミリアリアは笑みを浮かべた。

「プロヴィデンスに問題なしと・・・」
コンピュ−タ−を打ち込んでいるアスラン。
「しかし、彼女にあれだけの力があるとは・・・しかしあのキラにな・・・」
そんなとき誰かが入ってきた。
「アスランさん、いたんですか」
ミリアリア・ハウだった。
「あ、ああ・・・」
「お疲れ様でした、疲れたでしょう?」
ミリアリアは座ると微笑んだ。
「いや、そんなに」
「私が癒してあげます・・・」
そして抱きついてきた。
「私を抱いて・・・」

403過去の傷・作者:2004/05/05(水) 13:29
>>散った花 実る果実
ラクス嬢に対してのフレイ様ですね、真実の彼女を見たフレイ様の感想が良かったです、フレイ様も少し見直した感じですね。
嫁姑・・・笑ったです。
>>ザフト・赤毛の捕囚
フレイ様の必死が伝わってきます、これはサイとのことですね、しかし・・・女の子はこんな話題が好きですからね、この頃はフレイ様もサイが好きだったのかもしれませんね。
それから親友をテ−マにした新章も期待させていただきます、これからも頑張ってください。
それにしても作者様は女性同士の会話が上手なんですね。


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