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修正SS投下スレ

1 ◆OCD.CeuWFo:2011/10/26(水) 06:32:34 ID:UbGMEgSk0
修正したSSを投下するスレです

2 ◆XksB4AwhxU:2011/10/26(水) 15:33:07 ID:rlxwSDZQ0
一応ここに書いておこうかな。
「決意のT/少年の使命」ですが、翔太郎の装備はロストドライバーでなくダブルドライバーでした。
wikiの方の修正お願いします。

3 ◆OCD.CeuWFo:2011/10/26(水) 17:08:43 ID:UbGMEgSk0
修正しておきました

4マーダー探偵(修正版) ◆YlAksA5vE6:2011/10/26(水) 17:25:46 ID:0quJgw8A0

 男、涼村暁は人生を遊んで過ごしていた。
 探偵事務所を営んでいるが仕事の依頼は殆どない。
 たった一人のアルバイトに給料も払えないほど苦しかった。
 それでも、暁は多額の借金を背負って女遊びやギャンブルを続けた。
 

ある日、そんな彼の運命を変える出来事が起こる。
 偶然にもクリスタルパワーを身体に浴び、超光戦士シャンゼリオンになったのだ。


「何でも願いが叶うねぇ…」


 思い出すのは殺し合いを宣告された場所で加頭が口にした言葉。
 優勝することができたら、どんな報酬でも渡してくれると言った。
 だったら優勝して巨万の富を手に入れてやる。
 そして、生きて帰って死んだ連中の分まで豪遊する。


 暁にはシャンゼリオンに変身できる能力があるため、有利に事を進められるだろう。
 もう一つ彼を有利にする要素があった。デイバックに詰め込まれた支給品だ。


「なんか役立つ物が入ってるかもしれねぇな」


 期待しながら暁はバックの中身を漁り始める。


「おお、ラッキーだぜ!!」


 最初に手にした武器はウィンチェスターライフルだった。
 あらかじめ弾が14発もセットされている。当たりの部類に入る支給物だろう。
 

引き続きバックを漁る暁は一本の黒いメモリを掴んだ。
 それのディスプレイ部分にはSと骸骨を意匠化したスカルのマークが入っている。
 外郭に違いはあるが、加頭が言っていたガイアメモリだ。
 説明書によれば、同梱されているロストドライバーに装填することで仮面ライダーという超人に変身できるらしい。
仮面ライダーという単語を目にして、脳裏に浮かんだのは会場で加頭と対峙した二人の異形。


「つまり俺もさっきのバッタみたいな奴になれるってことか」


 シャンゼリオンとは別の超人的な力も得ることができた。
 ここまで運が良いと神様が味方してくれているとさえ思える。


 支給品の確認を終え、上機嫌になった暁は足を動かし始めた。
 優勝してパラダイスを楽しむために。


【1日目/深夜 G−8 中学校付近】

【涼村暁@超光戦士シャンゼリオン】
[状態]:健康
[装備]:シャンバイザー@超光戦士シャンゼリオン、スカルメモリ&ロストドライバー@仮面ライダーW、ウィンチェスターライフル(14/14)
[道具]:支給品一式
[思考]
基本:願いを叶えるために優勝する。
[備考]
※第2話「ノーテンキラキラ」途中(橘朱美と喧嘩になる前)からの参戦です。
 つまりまだ黒岩省吾とは面識がありません(リクシンキ、ホウジンキ、クウレツキのことも知らない)

5名も無き変身者:2011/10/26(水) 20:39:50 ID:a7MyEqnQ0
修正乙です

6 ◆OCD.CeuWFo:2011/10/26(水) 21:46:06 ID:UbGMEgSk0
修正乙です
wikiあげておきました

7 ◆zvh.p2EMLo:2011/11/19(土) 15:18:39 ID:UA4eJjRE0
自分が投下したSSを改めて見返したら、エターナルローブの描写がややおかしいことに気付きました。
ゼクロスキックをエターナルがローブ無しで防ごうとしたり、獅子咆哮弾を無効化できなかったりする部分です。
変な改行の所も修正したくなったので、こちらに修正した部分だけを投下してもよろしいでしょうか。

8 ◆OCD.CeuWFo:2011/11/19(土) 16:40:16 ID:UbGMEgSk0
了解です
問題ないと思います

9 ◆zvh.p2EMLo:2011/11/19(土) 17:42:08 ID:UA4eJjRE0
管理人の◆OCD.CeuWFo氏より許可を頂いたので、今から投下します。
全文投下すると多すぎるので、タイトルに修正する文章の本スレ番号を書き込みます。

10(本スレ474の修正版です) ◆zvh.p2EMLo:2011/11/19(土) 18:26:41 ID:UA4eJjRE0
「お前……死人みたいな面だったが本当にNEVERか? そんな筈無いが」
これほどタフな奴など、俺達NEVER以外存在しない。だがこいつがNEVERのはずがない。
NEVER研究が財団Xから打ち切られて以後、自分以外のNEVERは俺自ら選別して、お袋のマリアに蘇生させていたのだ。
だから俺が知らないNEVERは存在しない。その筈だ。
もしいるとすれば財団Xの仕業だろう。打ち切った後でも研究データくらいは残しただろうから、それを使って生み出したのか。

「キサマ……俺と同じ、バダンに?」
俺が今まで戦った相手には全員痛覚があった。カメンライダーでさえ。
例外は胴を両断されても平然としていた、ガモンと名乗ったあの軍服男だけ。
だがこの目の前のカメンライダーは、あの男とは違うように思える。
まるで自分のように、痛みという記憶そのものを知らないかの様な戦い方。
ならば奴も俺のように、一度敗れて死んだのか。バダンは再び俺の様な奴を作り出したのか。

相手が素直に返答するとは思えない、だが聞き出したい。互いにそう思い質問をぶつけた。

「まあどうでもいい、どうせ俺が全て死人の世界に変えるんだ」
先に動いたのはエターナル。一撃でゼクロスの首を刎ねようとエッジを水平に振るう。
首を薙ぐエッジをゼクロスは身をかがめてかわし、たわめた膝をバネに宙へと高く飛び上がる。
空中で反転し、左腕を右斜め下、右腕を右斜め上へ伸ばすポーズ、決め技のスイッチとなる動きをとった。
「ゼクロス…キック!」
叫ぶと同時に、ゼクロスの体が赤く光り輝く。
あれが奴のマキシマムドライブ、切り札と判断したエターナルは、ローブの裾を摘まみ腕を振り上げ、身体全体を包み隠した。
ローブに被さった肩を盾代わりに突き出し、斜に構えて腰を落とし堅固な防御の態勢を作る。
鉄壁の防御を打ち破らんとゼクロスが裂帛の気合を込め急降下する最中、異変が起こった。
「……光が!?」
ゼクロスを包む赤い光が胴体から消え、右足に残った光も腿から足先の順に消えていったのだ。
それでも命中の瞬間、蹴り足を突き出せばダメージを与えられたかもしれないが、ゼクロスは足を伸ばしきったまま踏みつけるようにして技を放っていた。
結果、その蹴りは十数m上空から自由落下したゼクロスの質量分の威力しかなく―――それでも人間一人を殺すには十分すぎるが―――エターナルに軽々と受け止められた。
「あ……」「はあ?」
両者とも予想外の出来事に、気の抜けた声をあげた。
「おい……何だそれはよぉ!」
期待外れの技に激昂したエターナルは、ゼクロスの足を掴み力任せに放り投げた。
ゼクロスの体が地面と何mも擦られる。
滑る身体をゼクロスは頭上に手を当てて止め、ヘッドスプリングで跳ね起きた。
だが先ほどの意外すぎる現象に、愕然として右足を見つめた。

「光が……消えただと!?」
あの赤い光、カメンライダー二人を纏めて倒した、あの力の消えるのが速すぎる。
脱走して以後、バダンの調整を受けていないとはいえ、ここまで俺の身体は……!

「何を呆けている!!」
複眼を右足に向けたまま、身じろぎ一つしないゼクロスにエターナルが突進した。
走る勢いを止めずに反転、後ろ向きから踏み切ってのトウジャンプ。
空中で身体を螺旋状に捻り、コークスクリュー回転から蹴り足がゼクロスへと突き出される。
キックがゼクロスの胸に直撃する寸前、エターナルの右足が青い炎に包まれた。
「グウッ……!」
渦状の炎が爆発し、再びゼクロスは撥ね飛ばされる。何か砕ける音がゼクロスの胸の奥で鳴った。
「先に地獄で、遊んで来い」
ダメージが限界に達したのか、倒れたままのゼクロスに、エターナルはマキシマムドライブを発動させようとロストドライバーのメモリに手をかけ―――
瞬間、ゼクロスとエターナルの間の地面が爆発した。
「「何っ!」」
突然の珍事に何者かの襲来かと、驚く二人。
もうもうと土煙を上げる中から、地面を砕き現れたのは。
「ここはどこだ」
頭にバンダナを巻いた男―――良牙だった。

11(本スレ474の修正版ですが規制により分けます) ◆zvh.p2EMLo:2011/11/19(土) 20:39:17 ID:UA4eJjRE0
「……くそっ!」
うつ伏せのまま、エターナルは苦々しく声を吐き出した。
良牙が動けないと判断したエターナルは、事実その通りだったが気を失ってはいなかった。
獅子咆哮弾の直撃を食らう寸前、エターナルはローブを頭から覆い、ローブの防御力で耐えることに賭けた。
いかなる攻撃をも弾くエターナルローブも、圧迫には分が悪い。
何万トンもの隕石の直撃にローブが耐えられたとしても――そこまで高い防御力を持つか疑問だが――エターナルが持ち上げられるわけではないのだ。そのまま押し潰されてしまうだろう。
結果、気弾の衝撃は防げたが、気の重みによって地面へと押され、身体の前半分が叩きつけられた。致命傷を負うほどではなかったが。
死人が「致命傷」というのも妙な表現ではあるが、NEVERといえど完全な不死身ではなく、マキシマムドライブの様な強力な攻撃を喰らえば塵に還る。
その事実を克己は知っていた。
うつ伏せから仰向けになり、ロストドライバーからメモリを引き抜き、変身を解く。
エターナルの白い装甲が克己から剥がれ落ちた。
「ちっ、体が動かん……」
細胞維持酵素の欠如とも違う、全身が思い通りに動かない感覚に克己は戸惑った。
「傷のせいか? NEVERの俺が?」
確かに胸や顔面の打撲、胴体の裂傷に加えて爆弾を喰らい、気の塊で地面に押し潰されたのだ。並の人間なら既に死んでいる。
だが克己はNEVERである。痛みという記憶を忘れ、不死身に近い耐久力を持っている。
身動きできないこの状態を否定すべく立ち上がろうとしたが、腕一本動かすのも億劫に感じていた。
実は全身の負傷に加えてこの殺し合いにかけられた制限―――戦闘による疲労が二重に克己の体を蝕んでいたのだが、克己はその事実に気付けなかった。
「何だ、あいつは……」
頭を反らすと遠くに走り去る良牙の姿が見えたが、よく分からない体の感覚と得体の知れない技を警戒し、行き先を確かめるだけにした。

何らかのエネルギーの塊を放出する技は、克己自身幾度か見たことがある。
超能力兵士クオークスのサイコキネシスやパイロキネシス。
同じNEVERの芦原賢が変身した、トリガー・ドーパントの右腕の銃から発射されるエネルギー弾。
しかしそれらと比べても、あれは桁外れの威力だった。
おまけに自分諸共周囲を攻撃する自爆技かと思えば、本人だけは無事な出鱈目ぶり。
「あいつ、呪泉郷とか言ってたな」
地面の中に埋もれた時の発言だったが、エターナルの聴力ならば聞き取れない声ではなかった。
郷、ということは人間の集落だろう。
だとするとクオークスが監禁されていたビレッジのように、あんなバンダナ男のような連中が住んでいる場所なのか?
「そういえば、支給品があったか」
気合を入れて起き上がり、置いていた場所に行くと、ディパックは獅子咆哮弾の範囲内にあったせいで地面に埋まっていた。
掘り出してディパックを開け、中にある地図を確認すると確かに呪泉郷の文字がある。
今いる場所はおそらく採石場跡。すると呪泉郷は東北東の方角になる。
方位磁針で方角を確認すると、バンダナ男の行った方向と外れている。
なぜあいつが呪泉郷といいながら南東に行ったのか分からないが、理由を考えても意味が無いので無視する。
さらにバックを探ると、小さいアタッシュケースがある。
取り出して蓋を開けると、中身は緑色の液体が詰まったバイアルが五本。そして白い銃型注射器だった。
共に入っていた説明書には「細胞維持酵素」と書かれていた。
「はははっ! 気が利いてるな!」
これを自分に支給するということは、酵素切れで自滅するな、戦い続けろというメッセージなのだろう。
ならば遠慮なく使わせてもらおうじゃないか。
バイアルを注射器にセットし、腕に当ててトリガーを引く。
酵素が血管内を満ちると同時に、全身の細胞が痘痕の様に盛り上がった。
「呪泉郷も……ビレッジみたいな場所なのか」
克己は誰とも無しに呟いた。

12 ◆zvh.p2EMLo:2011/11/19(土) 20:40:34 ID:UA4eJjRE0
上のタイトル間違えました。
(本スレ481の修正版ですが規制により分けます)

13(本スレ481の修正版、後半です) ◆zvh.p2EMLo:2011/11/19(土) 20:48:10 ID:UA4eJjRE0
克己が、まだ生きている実感が欲しかった頃。人の心、過去の記憶を失い続けても明日を求めていた頃。
某国でテロリストを掃討した直後、超能力兵士「クオークス」の少女ミーナとその同僚、さらに加頭順の装着したエターナルに襲われビレッジへとさらわれた。
ビレッジ―――その場所はクオークスの実験場であり、克己はサンドバック代わりの実験体として連れてこられたのだ。
襲いかかるクオークスから脱走する途中、出会ったクオークス落伍者の生気が失われた態度、クオークス研究者にしてビレッジ管理者、ドクター・プロスペクトの目つきは克己の気に入らなかった。
気に食わない感情のままドクターと戦う克己だったが、ドクターが変身したアイズ・ドーパントに敗れた。
克己は逃げ出したが、ミーナから落伍者の虐殺計画を聞き、改めてドクターを倒しビレッジの連中を解放すると決心した。
別に英雄になる気は無い。ただ死人の自分が明日を求めているのに、生きている人間が未来を勝手に奪い、奪われることを諦めるのが許せない。それが理由だった。
結果としてビレッジからの脱出には成功したが、克己達NEVER以外全員死んだ。ドクターの許可無くビレッジの外に出たクオークス達は、アイズ・ドーパントの力で命を奪われるよう仕掛けられていたのだ。
あの時、あの場所で克己は思い知った。人は皆、悪魔だということを。
同時に克己を現世に繋ぎとめていた最後の縁、わずかに残された人間的な感情も良心も完全に失われた。

14(本スレ482の修正版です) ◆zvh.p2EMLo:2011/11/19(土) 21:08:38 ID:UA4eJjRE0
「少なくとも、ここは違うようだな」
地図をよく見ると風都タワーまである。おそらく場所を再現しただけだろう。
「風都タワーも、エクスビッカーは設置されていないだろうしな」
エクスビッカーとは26本のT2ガイアメモリを同時に起動させ、周囲全ての人間を瞬時にNEVERへと変える兵器である。
もう少しで発動するところを、鍵としてエクスビッカーに接続したフィリップに抵抗され、克己はマリアに細胞分解酵素を注入された。
母親のはずだったマリアの裏切りに激昂した克己は彼女を撃ち、タワーの屋上で拮抗薬となる細胞維持酵素を打った。
次の瞬間、いつのまにかこの殺し合いの場所に集められていた。
「戻ったら、始めからやり直しか」
今手元にあるのは、エターナルのメモリ1本。
世界を地獄へ変えるには、改めて全てのT2ガイアメモリを揃えるところから始めなければならない。
「そういや、ガイアメモリが支給されているんだったか」
最初に集合したときの解説で、白服の男がそんなことを言っていた気がする。
他の支給品にメモリがないかとディパックを探ると、袋が二つある。
開くと、一つは金属らしきフレームで囲われた、黒い球形の宝石だ。
球の中心を対称に、針と同心円が彫られた楕円形のエンブレムが付いている。
袋の中に付属した説明書によると、名称は「グリーフシード」。
「魔法少女が魔力を消費すると溜まるソウルジェムの穢れを、吸いとって移し替えることができる」と書いてある。
ソウルジェムも全員が集められた時言っていたが、魔法少女というのはさっぱり分からない。クオークスみたいな奴らか?
もう一方の袋の中身は胡桃程の大きさをした黒い木の実のような何かだ。表面に白い斑点模様がある。
説明書には「命の闇の種」と書かれてあり、食べるとヒーローに変身できるかもしれない、顔から花が咲くかもしれないがとある。
「食えるか? ……食えないよな」
克己は闇の種を袋に戻した。こんな薄気味悪いものを食う奴など、余程の馬鹿に違いない。

15(本スレ483の修正版です) ◆zvh.p2EMLo:2011/11/19(土) 21:14:56 ID:UA4eJjRE0
さらにディパックを探ると他の中身は食料、照明器具、筆記用具、水と食料、時計、ルールブック。
最後に名簿があった。名簿を確認すると、克己と縁深い人間の名前がある。
仮面ライダーW、左翔太郎。仮面ライダーアクセル、照井竜。NEVER研究を廃止に追いやったガイアメモリ開発の最高責任者、園咲琉兵衛の一族。
いずれも自分達NEVERの邪魔をし続けた男達だ。
連中も気になるが、それ以上に克己の目を引く名前があった。
「京水。あいつも連れてこられたのか」
泉京水。克己と同じNEVERで特殊傭兵部隊NEVERの副隊長だ。
元は仁義に篤い任侠の徒だったが、その時代遅れの感性が原因で他のヤクザ連中に疎まれ、裏切られ殺されたところを克己が拾いNEVERにした。
蘇生した後、どういう理由かオカマになったが。
戦闘力は高く、どこで覚えたのか総合格闘技、特に寝技と関節技が切れる凄腕だ。
「あいつにもメモリは支給されているだろうな」
どこかで会ったら、使ってやるか。あいつは俺のものだしな。役に立ちそうでなければ、メモリを奪えばいい。
少なくとも殺された剛三よりはましだろう。
「ガイアメモリ、もう一度集めるか。とりあえず呪泉郷からだな」
呪泉郷から来た連中は、さっきのバンダナ男の言葉からするとどうやら多そうだ。
集まる人間も多ければ、ガイアメモリが支給された奴の一人か二人はいるだろう。

細胞維持酵素で回復した克己は、まるで先ほどまでの激闘が始めから無かったかのように、すくりと立ち上がった。
呪泉郷に集まった連中が、監獄から来たのか楽園から来たのかは知ったことではない。
悪魔として全員地獄に落とすだけだ。
唯一残った妄執を胸の内に秘め、克己は歩き出した。



【一日目・黎明 D-3/採石場跡】
【大道克己@仮面ライダーW】
[状態]:健康
[装備]:ロストドライバー@仮面ライダーW+エターナルメモリ、エターナルエッジ
[道具]:支給品一式、細胞維持酵素×4@仮面ライダーW、グリーフシード@魔法少女まどか☆マギカ、命の闇の種@超光戦士シャンゼリオン
[思考]
基本:優勝し、自分の存在を世界に刻む。
1:呪泉郷へ行く。
2:T2ガイアメモリを集める。
3:京水と会ったら使ってやる。もしくはメモリを奪う。
[備考]
※参戦時期はマリア殺害後です。
※良牙を呪泉郷出身者だと思ってます。


【支給品解説】
細胞維持酵素@仮面ライダーW
大道克己、泉京水といったNEVER達が蘇生した体を維持するために必要な酵素。
これを投与することで不死身の肉体、常人の数倍の身体能力、死への恐怖心の消失といった数々の肉体的恩恵を享受できる。
定期的に投与しないと、NEVERは死体に還る。


グリーフシード@魔法少女まどか☆マギカ
魔女を倒すと現れる黒い宝石状の物質。
魔法少女が魔力を消費すると溜まるソウルジェムの穢れを、吸いとって移し替えることができる。
(このグリーフシードは第3話の物です)


命の闇の種@超光戦士シャンゼリオン
ダークザイドが人間界を闇次元界へと変えるための重要な物質。
食べるとヒーローに変身できるかもしれない。
顔から花が咲くかもしれないが。

16 ◆zvh.p2EMLo:2011/11/19(土) 21:18:26 ID:UA4eJjRE0
以上で投下を終了します。

17 ◆OCD.CeuWFo:2011/11/20(日) 00:03:42 ID:UbGMEgSk0
乙です

18 ◆7pf62HiyTE:2011/12/12(月) 02:48:59 ID:qDDsRipE0
wikiに最新作まで収録すると共に本スレで指摘された部分(『少なくても』→『少なくとも』)について修正致しましたので報告致します。

19 ◆7pf62HiyTE:2011/12/12(月) 19:26:44 ID:hguAhQpY0
報告を忘れていました。確認した所、サブタイトルが間違っていたのでサブタイトルを『進化論 〜GOOD MORNING! -HELLO! 21st-CENTURY〜』に修正した事を報告させて頂きます。

20 ◆LuuKRM2PEg:2011/12/17(土) 19:16:22 ID:xphsgFlQ0
本スレで指摘された部分の修正です


「さて……とりあえずこれからどうする? いつまでもこんな所にいるわけにもいかないからな」

 図書館のロビーで、翔太郎は三人に問いかける。
 思春期の少女とまだそれにも年齢が及ばない少年と少女の三人。この場では一番年上である自分が三人を守り、上手く導かなければならない。
 かつて鳴海荘吉は幾度となく、依頼人を危険に晒してはならないと言った。だからここでは三人を守る義務がある。

「あ、それなんだけどあたしに考えがある」
「何だ? 言ってみろよ杏子」
「やっぱり、人を探すのなら町に行くのが一番じゃないのか? ほら、ここからそんなに遠くないしよ」

 そう言いながら杏子はデイバッグから地図を取り出し、ここから東の方角にある市街地の方を右手の人差し指で差した。

「どうせ探すんだ。なら、少しでも他の奴らが集まってそうな場所から行ったほうが手っ取り早いだろ?」
「私も杏子に賛成……もしかしたら、なのはだっているかもしれないし」

 にんまりと笑う杏子に、フェイトは静かに同意する。

「そっか……じゃあ、ユーノはどうする?」
「僕も二人と同じ意見です。町には人が集まりそうな分、殺し合いに乗った奴らと遭遇する危険もありますが、それはどこも同じかもしれませんし」
「じゃあ、決まりだな」

 そうして、四人は闇に覆われた孤島を進んだ。
 翔太郎は知らない。今、自分が守ろうとしている少女達が殺し合いに乗っていることを。そして、隙があれば自分達を切り捨てようとしている事を。
 彼はまだ、知らなかった。

21 ◆LuuKRM2PEg:2011/12/26(月) 14:23:48 ID:xphsgFlQ0
これより、先程投下した魔獣で指摘された部分及び状態票の修正版を投下します。


 良い拾い物を得たと確信したバラゴは、闇の中でニヤリと笑う。

「これは貰っておこう。お前が持っていたところで、仕方がないからな」

 冴子と速水のデイバッグを手に取って、中身を確かめる。その中からバラゴにとって不要でしかない、梅干しやよく分からない漫画及びキーホルダーはこの場に捨てた。
 それを終えたバラゴは、タブー・ドーパントに振り向く。

「村にいるはずの仮面ライダーを出来るだけ殺さないように消耗させろ。まあ抵抗するなら、殺しても構わないが」

 バラゴがそう言い放つと、タブー・ドーパントは何も答えることなく宙に浮かんだ。
 恐らく、これもドーパントが持つ能力の一つなのだろうと彼は思う。加頭はメモリの能力は極めて多彩と言っていたから、空が飛べたところで何らおかしくない。
 夜空の元で飛び続けるタブー・ドーパントの後を、バラゴはゆっくりと歩いた。


【バラゴ@牙狼─GARO─】
[状態]:胸部に強打の痛み、顔は本来の十字傷の姿に
[装備]:魔戒剣、魔弾(1発)+銃@牙狼
[道具]:支給品一式×3、ランダム支給品0〜2、冴子のランダム支給品1〜3、顔を変容させる秘薬、インロウマル&スーパーディスク@侍戦隊シンケンジャー
[思考]
基本:参加者全員と加頭を殺害し、元の世界で目的を遂行する
0:あの二人の戦いをまずは監視する
1:仮面ライダーに魔弾を打ち込みホラーにする
2:今のところ顔を変容させる予定はない
3:仮面ライダーと怪人に隙が出来るのを待つ
[備考]
※参戦時期は第23話でカオルに正体を明かす前。
※顔を変容させる秘薬を所持しているかは不明。
※開始時の一件で一文字のことは認識しているので、本郷についても認識していると思われます。

22 ◆LuuKRM2PEg:2011/12/26(月) 14:24:19 ID:xphsgFlQ0
以上です、問題点がありましたら指摘をお願いします。

23名も無き変身者:2011/12/26(月) 23:29:03 ID:K7xpG.Cg0
もう一点気になったので指摘を。

バラゴが梅干し、漫画、キーホルダーを捨てた下りについてですが、この辺りに幾つか疑問が。
まず、インロウマルとスーパーディスクを捨てていない点、『MY FRIEND』の描写を見る限り、説明書が無いのは明白でバラゴが何故これらを使えると判断したのかがわからない。
確かに、シンケンジャーにとっての強化道具だけど、説明書が無い為速見達は全く謎の道具としか判断出来ないので、バラゴならば捨てる方が自然では?

一方で冴子の不明支給品を全て捨てていないという事はイコール冴子の不明支給品は全てバラゴにとって使えるという事を確定してしまう事になるのでは?
冴子の不明支給品に使えない道具、あるいは他の参加者にとってはともかくバラゴには使えない道具があるならば持っていくのは不自然ではないでしょうか?

つまり、読者しか知り得ない筈の使える道具と使えない道具の判別がそのままバラゴ自身が判別出来ているのは不可解。納得出来る理由説明をお願いします。

24 ◆LuuKRM2PEg:2011/12/27(火) 10:34:49 ID:xphsgFlQ0
ご指摘ありがとうございます。
『MY FRIEND』を確認したところ、確かにインロウマルとスーパーディスクに関しては説明書がありませんでした……
これは単純に自分の勘違いです。誠に申し訳ありません。


それと、修正版を投下したいのですが今日はリアルの都合でちょっと時間を取るのが難しそうなので
今回の作品は一旦破棄させて貰ってもよろしいでしょうか?
キャラを拘束してからこういう事を言うのは申し訳ありませんが、今の状態では修正が難しいので……

25 ◆amQF0quq.k:2011/12/30(金) 09:01:27 ID:hEAsqWPw0
本スレに投下された自作の修正部分を投下します。

26(本スレ>>729の修正版です) ◆amQF0quq.k:2011/12/30(金) 09:03:52 ID:hEAsqWPw0
もう1つはその未確認生命体。
超古代においてグロンギと呼ばれたそれは、平和に暮らしていた人類リントに殺戮の牙を向けた戦闘種族。
そして蘇った現代においても、人類にゲゲルと呼ばれる殺人ゲームの牙を向けて来た。
普段は人間の姿で潜伏しているが、殺人や戦いの際には怪人に変身を果たし、
生物としては常軌を逸した生命力と、異常な身体能力を持つ。
その尋常ならざる戦力には、当初は警察の力でも全く対抗できなかったほどだが、
人類に味方する未確認生命体第4号=クウガの協力と、兵器開発や武装強化の甲斐もあって、
現在では多くのグロンギを倒すことに成功していた。
問題はどちらも殺し合いに参加していることである。
五代=クウガのことは隠しておいた方が良い。
クウガであると話しては、五代に対する要らぬ警戒やあらぬ偏見を招きかねないからだ。
しかし未確認生命体の方は、やはり話しておいた方が良いだろう。
鋼牙ならば未確認生命体の存在を知っても、無闇に恐れることも悪用することを考え無いと思えた。

「君には話していなかったが、私は警視庁の未確認生命体対策本部に所属している」
「……未確認生命体?」
「ああ、だから未確認生命体の情報を持っていて……知らないのか?」
「言葉の意味は分かる。だが、聞くのは始めてだ」

事も無げに答える鋼牙に対して、一条は怪訝とした表情を向ける。
鋼牙の返事の意味をそのまま受け取れば、未だ確認できていない生命体という言葉の意味は理解できても、
『未確認生命体』と言う固有名詞を聞いたことが無いと取れる。
しかし未確認生命体の社会的な知名度で、鋼牙のような日本人の成人が存在も知らないというのは有り得ない。
現代日本においては未確認生命体の脅威は公然の事実であり、
未確認生命体の存在が確認されれば、マスコミを通じて警告や避難勧告がされるほどである。
しかし鋼牙はその存在を聞いたことも無いと言う。
一条にしてみれば考えられない事態なのだ。
一条の様子に、無表情のままだが視線を鋭くした鋼牙の口を開いた。

「……どうやら一筋縄でいく話では無いらしいな。とにかくその未確認生命体について説明しろ。できるだけ詳しくな」

一条はどこか腑に落ちない思いを抱えながら、鋼牙の言われるまま未確認生命体=グロンギの説明を始めた。
その生物的特徴と脅威と社会的な影響の大きさを。
警察がどれほど苦戦したかを。
そして人類を守るためグロンギと戦ったクウガの存在を。五代の存在を隠して上で。

「……そしてこの殺し合いにも未確認生命体は参加しているようだ」
「何故それが分かる?」
「警察は未確認生命体の人間態をB群と分類しているが、その内の2号と11号の姿を加頭の説明がされた空間で確認した……」

更に一条は未確認生命体への警告を促すために、
B2号が蝙蝠の怪人、未確認生命体第3号に変身することと、
B11号が状況証拠から推測して甲虫の怪人、未確認生命体第46号に変身する公算が大きいことと、
その2体の人間態と怪人態の姿を説明した。
ただ未確認生命体第3号は一条がその死体を確認し、解剖に回されたことを知っているし、
未確認生命体第46号もクウガによって倒されたことを聞いている。(46号死亡時と思しき、夜を昼に変えるほどの絶大な規模の爆発も見ている)
つまり2体とも死んでいるはずなのだ。
しかしその姿を確認できた。
それでも未確認生命体の生命力を知っている一条には、あまり不思議は無いように思える。
超古代より地中で眠りながら生き続け、
何10発と銃弾を浴びても死亡するどころか行動に支障すらきたさず、
僅かな肉片からでも全身が再生する例すらある。
あの生物の常識を完全に逸脱した生命力なら、再生したと言うことすら有り得ると思えた。
鋼牙はグロンギの話をただ黙って聞いていた。

「なるほど、確かにそれならば俺が知らないと言うのは不自然だな」
「……正直に言って、私には君が未確認生命体を知らないのが信じられない位だ……」
「やはりホラーでは無い、か……」
「……え?」
「…………俺も話すべきだろうな。ホラーのこと……そして魔戒騎士のことを…………」
「ホラー?」

今度はこれまで黙って聞き手に回っていた鋼牙が語り始める。
世の条理を越えた怪物と、それに立ち向かう戦士の物語を。

27(本スレ>>730の修正版です) ◆amQF0quq.k:2011/12/30(金) 09:06:32 ID:hEAsqWPw0
世界には人間の住む世界とは別に魔界が存在する。
そして魔界から陰我のあるオブジェをゲートとして、人間の世界へ通り抜け、
人間に取り憑き人間を喰らう魔獣ホラーが現れる。
魔獣は人間の陰我を増幅し、やがてこの世ならぬ怪物に変貌させるのだ。

鋼牙の話を聞く一条は、不審とまではいかないまでも、
あからさまに不可解と言わんばかりの表情を浮かべている。
無理も無い。
普通の人間が、突然魔界やホラーの話を聞かされたところで、
易々と呑み込めるはずも無い。

それでも鋼牙は揺るがない。
鋼牙には、誰に信じて貰えなくとも揺るがざる使命を持っているからだ。
やがて鋼牙の話は、そのホラーに対抗する者へ移る。
人間の中に存在する、魔獣を狩り、人を守りし者。
魔戒騎士という名の希望の光。

「そして俺も……魔戒騎士だ!」
「──!!」

鋼牙が突如として立ち上がり、剣を抜いて頭上で振るう。
一条は鋼牙の突然の行動、何より一連の挙動の早さと淀み無さに驚く。
そして次の瞬間、更に驚くべきことが起こる。
鋼牙の頭上で円形に空間の切れ目が発生していた。
切れ目から強い光が漏れ、光はやがて円形の面全体にまで広がる。
そしてそこから黄金色の物体が飛び出して来た。
黄金色の物体は鋼牙を覆い──狼面の鎧を形作った。

「これが……魔戒騎士」

黄金騎士の威風。
間近で見るそれに、さしもの一条も僅かに気圧された様子を見せる。
鋼牙を騎士と見た一条の印象は、極めて正確だったということだ。
用が済んだ鋼牙は、変身を解いてまた座り込んだ。
鋼牙が変身をしたのは、別に戦闘などの用が有ったからでは無い。
ホラーや魔戒騎士の話に信憑性を持たせるためだ。
そして何故そこまでして鋼牙が自分の話に信憑性を持たさなければならなかったのか?
それは次の話に移行するためである。

「しかしホラー……未確認生命体の他に、警察がその存在にすら気付いていない人類に対する脅威が存在していたなんて……。
そして君の方は君の方で、未確認生命体の存在を知らない…………」
「いや、俺が未確認生命体を知らなかったのは…………恐らく未確認生命体が存在しないからだ」
「……どういう意味だ?」
「俺の居る世界では、という意味だ。……俺たちはそれぞれ、別の世界の住人である公算が大きい」

鋼牙の話に一条は戸惑いを隠せない。
未確認生命体関連以外には超常的な話に免疫の無い一条は、あからさまに当惑している。
まだホラーなら未確認生命体と、魔戒騎士ならクウガと同じような感覚で把握することもできた。
しかし多重世界の話となれば、完全に一条の観念の外の世界となるのだ。

「…………それは……我々の住む世界が、魔界のように君の住む世界とは別世界であると……」
「空間を異にしているという意味ならそうだが、魔界のような全く様相の違う世界では無いだろう。
おそらくパラレルワールドのような物だ」

鋼牙の科学知識は魔導に関する物に偏っている。
しかし魔界や鎧の召喚の知識から、自分が居る世界と別空間の存在、
そこから派生する別世界の存在という可能性を思いつくことができた。

28 ◆amQF0quq.k:2011/12/30(金) 09:07:48 ID:hEAsqWPw0
本スレでの指摘を受けて、問題の無いように修正をしてみました。
まだ問題があるようでしたら、指摘をお願いします。

29魔法、魔人、悪魔(修正版) ◆gry038wOvE:2012/01/15(日) 16:06:57 ID:NlMREnaQ0
修正版を投下します。
問題点への回答通りに書きましたが、それによって新たな問題がでている場合などは指摘をお願いします。
また、修正希望を受けていない部分も、自分で納得できるよう多少訂正してあります(ミユキの死に際など)。

30魔法、魔人、悪魔(修正版) ◆gry038wOvE:2012/01/15(日) 16:07:32 ID:NlMREnaQ0
 さやかの足取りはまるで浮浪者のようであった。
 魔法少女という得体の知れない存在になってまで掴んだ「正義」、「存在意義」への全否定。
 彼女の心には傷というより靄として残っている。
 しかしその靄はソウルジェムの濁りとして、確かに彼女を死に近づけていた。


(…………誰か、教えて…………)


 自分が信じたいものへの答えを、他人に求める。
 彼女の正義を崩したのは他人であったから、また第三者の意見を聞きたかったのかもしれない。
 自分ひとりではどうしようもない。
 世界とはどういうものなのか。己の考え方、その答えを若き彼女はまだ掴んでいない。
 ただ、平等にこの世を見られる大人を捜してふらふらと歩いていく。
 あれからかなり時間は経ったが、時間の経過によって晴れる靄ではなかった。


 彼女のふらふらと歩く様子は、否が応でも目に留まった。
 いや、彼女を目に留めた男は彼女の姿以外の何かに惹かれていた。
 彼の口元が歪む。
 邪悪な笑みを見せる男が近付いていることに、さやかは気づいていなかった。


「こいつは良い『材料』だ……」


 溝呂木眞也。
 人の心を弄ぶ卑劣漢の笑みがさやかを凝視している。
 このままさやかがしばらく進んでいれば、五代雄介という至極前向きな男と出会い、或いは三影の捻くれた持論を打ち消すこともできたかもしれない。
 ただ、五代にひっそりと付きまとっていた男の存在が、さやかにとって最大の障害だったのだ。
 溝呂木は笑いながら、もう一つの材料を彼女に闇を放った。


「えっ!? 何────」


 本人が背後から来る「何か」の存在に振り向いた時、既にさやかの体にそれは到達しようとしていた。
 それは、回避することができない「闇」という抽象的な物体だった。
 さやかは一瞬、驚愕した顔を見せたが、そこで生まれた別の人格が彼女の表情を笑みへと変えた。


 闇の道化師が生まれたのだ。


★ ★ ★ ★ ★


「この中で何かがあったみたいだな……」


 照井はただでさえ廃れた教会に、真新しい焦げ痕が残っていることに気づいた。
 いや、おそらく誰であっても気づくだろう。
 まるで大砲でも発射されたかのように教会の壁や天井が吹き飛んでいる。

31魔法、魔人、悪魔(修正版) ◆gry038wOvE:2012/01/15(日) 16:08:26 ID:NlMREnaQ0
 ティアナによるものだろうか?
 確かに彼女は銃を使うし、トリガー・ドーパントにもなった。
 しかし、これはあんな小さな銃の口径によるものじゃない。これは間違いなく、彼女よりも強い武器の持主がやったことだ。
 少なくとも、今この惨状によりわかるのは、殺し合いに乗った人間もしくは大量破壊を厭わない危険人物は、照井が思ってい居る以上に多いということだけであった。
 推理をしようにも、参加者全体に関するデータが少なく、それは難しい。大砲やそれに準ずるものを武器として持つ変身能力者がいる可能性が高くなったとして、それがこの傷跡から大雑把にしかわからないならば、対策も立てられない。
 それでも現場から少しでも手がかりを得ようとする照井を心配して、ミユキが口を開いた。


「崩れたりしないでしょうか……?」


 その心配や不安に満ちたミユキの顔を見て、照井も無茶をやめる。他人を心配してこの顔ができる少女の表情を少しでも変えようと思ったのだ。
 それに、テッカマンに変身するたびに危険が伴う彼女を、兄との合流まで護ることができるのは仮面ライダーアクセルである自分だけなのだという責任も簡単には放棄はできない。
 戦闘でもないのに無茶して死んだら世話がない。


「可能性は否定できないな。ここは離れた方がいい」


 場合によっては生死が関わる質問であったためか、照井はいつもの台詞を言わず、少し未練ある現場を眺めつつミユキとともに離れていく。流石にここで「俺に質問するな」と返してしまうのは無責任だ。
 ふと気にかかる点が浮かぶ。
 この攻撃の痕は気にかかるが、ここで何かがあったというのなら、照井たちも気づいたっておかしくないはずだと思った。大砲に値するだけの武器で痕を作るならば、それ相応の轟音もするだろう。
 と考えると、ここで何かが行われたと推定されるのは照井たちの戦闘中だ。あの戦闘から教会に向かうまでの時間は轟音をかき消す声で喋ったりはしていない。
 やはりティアナは違う。それは確証に変わった。
 

(見たところ、死体のようなものはなかった……戦闘というより、誰かが暴れた痕か……?)


 或いは、これだけの砲撃を受けても生存できるような特殊な変身体質の者だったか、被害者がこの攻撃によって死体ごと消滅してしまったか……。
 いや、後者ほどの威力があるのならば戦闘中でも気がついたかもしれないし、この場からは焼肉のような匂いはしない。人の体が焼けたような匂いは残っていないのだ。
 とはいえ、説が複数あり、どれも証拠がない以上は詳細不明と同じ。深く考えてわかることでもないので、今はこの教会から遠ざかることを優先する。
 どちらにせよ、仲間たちが此処にいないならばすぐに村へと向かう予定であったが。


(もしかしたら、この痕はテッカマンの力によるもの……?)


 一方、ミユキもまた己の経験を活かして考える。
 ミユキもこのように壁や天井に大穴を開けることができる能力をもつ戦士の一人だ。だかr、真先に、テッカマンのことを考えた。
 さらに特定するなら、テッカマンたちの究極の技、ボルテッカだ。
 それを使えば確かに天井に穴を開けることなど造作もない。あれだけの威力を持つ攻撃を使えば教会ごと吹き飛ぶ可能性が高いが、ボルテッカを放つ際に威力を調整すればいいだけの話だ。
 そして、威力を調整するということは、大きな破壊や殺戮を生みたくないという意思であるとも考えられる。
 本気で他人を殺すつもりで撃ったなら、教会ごと破壊するだろう。


(威力を調整するっていうことは、相手を殺したくなかったっていうこと……? もしかして、これはお兄ちゃんが──)


 これが兄・相羽タカヤ──テッカマンブレードによるものならば、相手にトドメを刺さないようにボルテッカの出力を抑えることもできるのではないかと思えた。
 精神支配されたテッカマンたちやラダムには容赦はないだろうが、相手が先ほどのティアナのようなドーパントであったなら多少の手加減はするかもしれない。
 その他の理由でエビルやランスが手加減した可能性や、テッカマンでない者がやった可能性も否めないが、やはり一番考えたいと思う理由がミユキの思考の大半を占める。


(でも、この場所からはテッカマンの気配が残ってない……)


 その考えたい理由を打ち破る理由がひとつだけできた。
 テッカマン同士は互いを感知することができるのである。この付近にタカヤがいたというのなら、ミユキはその気配を感じることができるはずだ。
 だが、ミユキは自分で自分自身の疑問に反論をする。


(いや、私が気配を感じられなくなった……そういう可能性もあるわ……)

32魔法、魔人、悪魔(修正版) ◆gry038wOvE:2012/01/15(日) 16:09:12 ID:NlMREnaQ0
 不完全なテッカマンであり、能力も衰退しつつあるミユキは、自分の感知能力が衰えた可能性を考える。
 だが、単純にそれだけではミユキのテッカマンたる能力は落ちないだろう。

 考えられるのは、自分たちの能力に一種の制限が課せられている可能性である。
 よく考えれば、先ほど1エリア跨いだ時にそれほど長くは感じなかった。そうすると、この島はさほど大きくないと考えられる。ならば、島の端から端でも、ある程度の感知はできてもおかしくないはずだ。
 少なくとも自分以外に三人のテッカマンがいるというにも関わらず、その気配を一切感知きない。

 だいたい、異世界の存在が跋扈する中で、タカヤとミユキ──殺し合いに乗らないであろう二人のテッカマンが合流してしまうことも主催者にとっては不利益では?
 感応波やその感知能力は少なからず弱まっていると考えて良い。
 そうして多少の無理を通し、タカヤの居る可能性のある場所を考察する。


 本当に兄がここにいたのなら、兄は何処へ向かっただろう。
 わざわざ村に向かう道路があるのに、森林側に向かうだろうか?
 逆方向に向かったならば自分たちとすれ違っているはずだし、村側に向かうに決まっている。


 向かう方向はおそらく間違っていない。
 ミユキはそう確信し、期待に胸を膨らませる。
 できるだけ早く移動して兄に追いつきたいという気持ちであった。

 そうして感情が村へと向かっていて、周囲を見ることを忘れていたミユキに照井が叫んだ。


「……危ないっ!」


 ミユキはその声が聞こえた方向を見る。
 と、同時に目の前で「仮面ライダーアクセルへ」と黒色の気弾がぶつかった。
 一瞬、何が起こったのかはわからなかったが、自分の命が今危なかったことに気がついた。
 そして、今自分を庇って深いダメージを受けたアクセルに、焦って声をかけるのが二番目の行動。


「だ、大丈夫ですか!?」


 何者かに襲撃され、照井が咄嗟にアクセルへと変身して助けてくれたのだと理解したのは彼女の中では三番目の行動となった。
 だとするなら、アクセルの怪我の程度はどうだろうか。
 ミユキを助けたせいで、ろくな受け身もとれなかったのではないかと、心配は増していく。


「俺に質問するな」


 片手にエンジンブレードを構え、それを盾としていたため、アクセル自身の体もほぼ無傷であった。
 ミユキは安心するが、敵がいるだと気づくと即座に不安に見舞われた。安心して息をつくより以前にそれに気づいたせいで、変な息が漏れる。
 また何者とも知れない敵が現われたのだ。
 テッカマンでも、ドーパントでも、ラダムでも、仮面ライダーでもない。二人は心当たりのない相手に息を呑む。

 三本の角の生えた不気味な模様の怪人。
 赤と黒が左右に交互に彩られた奇怪なマークや、胸元に輝くクリスタル状のものが厭でも目を引いた。
 目元に化粧をしたかのような姿は、まるでクラウンのようである。

 ダークファウスト。
 操り人形である闇の魔人であった。


★ ★ ★ ★ ★


 溝呂木眞也は、先ほど手に入れた都合の良い操り人形で遊んでいた。
 ダークファウストは本来、骸である人間が溝呂木の手によって変貌した姿である。
 ゆえに、既に肉体と魂が分離されている「魔法少女」はファウストにする事に都合の良い存在であった。
 溝呂木は知らないが、この場において死者の蘇生は禁じられているゆえ、溝呂木が殺した人間がファウストとなることはない。
 魔法少女という特例中の特例が、この場でファウストを生み出すことを可能としたのである。


(コイツは闇に堕ちるには打ってつけの存在だった……こんなにも簡単に欲しかった物が手に入るとはな……!)


 そのうえ、さやかの胸に秘めたる負の心は溝呂木が今最も求めるものだった。一体、何が理由であそこまで心がすさんでいたのかは、溝呂木が知る由もない。
 思春期という特殊な時期が彼女をおかしくしたのかもしれないし、元から乱れやすい精神状態だったのかもしれない。魔法少女であることなど知らず、ただ闇に落とそうとした人間が偶然、常人でなかっただけの溝呂木は少しその辺りを気にしたが、細かいことはいい。
 とにかく、闇の中にある彼女の姿は何よりも輝いて見えた。

33魔法、魔人、悪魔(修正版) ◆gry038wOvE:2012/01/15(日) 16:10:36 ID:NlMREnaQ0

 さあ、ファウスト 見かけた人間を残らず殺せ


 斎田リコがファウストになった時は、人間である時にファウストとしての記憶を亡くしていた。
 この女に関しても恐らく同じだ。
 だからこそ、尚更面白いと思えた。
 もし彼女が自らの行動に気づいたら…………?
 それを考えると面白くて仕方が無かった。

 ただ、残念ながら今はあのファウストを眺め続けられそうにはなかった。
 五代と凪を見逃してはならない。いずれも、溝呂木にとってはより面白い実験材料となりそうだからだ。
 五代と凪、新たなるダークファウスト────二つの存在を見守ってやりたいと思ったが、二兎を追う者は一兎も得ず。彼にとっての優先順位は因縁ある凪の方が高いのである。
 そのため、彼女のその後は溝呂木の中では想像に任されることとなった。
 自らが生み出した魔人を放し飼いにする────溝呂木はそんな無責任な親だった。


(まあ、今はヤツが参加者を減らしてくれればそれでいい……)


 ファウストは参加者を減らしてくれるだけでも充分便利だ。
 どちらにせよ、弧門や凪、五代もあのようにする気だったため、さやかの元を離れる溝呂木も別に未練はない。
 むしろ、さやかは闇が大きすぎて、「完成されすぎ」だったとも思えた。
 最初から概ね完成しているものは、作り上げていく楽しみというものがない。


(じゃあな、ファウスト……俺の分まで働いて面白く死んでくれよ)


★ ★ ★ ★ ★

34魔法、魔人、悪魔(修正版) ◆gry038wOvE:2012/01/15(日) 16:11:19 ID:NlMREnaQ0
「……?」


 先ほどから凪の様子がおかしいことに、五代も気がついていないわけではなかった。
 何かが気にかかっているかのように、突然止まったり周囲をきょろきょろ見回したりしているのだ。
 常に全身の神経を周囲への警戒に務めていて、笑顔を一瞬も見せない彼女に、五代は少し困惑しつつも問う。


「一体どうかしたんですか?」

「尾行されている気がする……勘違いかもしれないけど、念のため警戒した方がいいわ」


 五代もクウガであるがゆえ感覚は鋭敏な方だが、バイオレンス・ドーパントを追うことを最優先と考えていたため、背後にはあまり気を向けなかった。
 目を向ける場所がそれぞれ違う二人は、ある意味で良いコンビネーションを発揮できるかもしれないが、いずれ単独行動を強いられる時は明らかに凪の方が生存に大事なものを持っているだろう。
 言われても尚、どこか緩い五代に、凪は少しだけ苛立ちを覚えた。
 ナイトレイダーにも石堀や平木のようにどこか面持ちが緩い人間はいるが、彼らは任務となると高い技術を活かしてそれぞれの仕事をやってくれる。それに対して五代はそれほど切り替えが見事な性格にも見えない。


「追ってるつもりが、追われてるっていうことですね」

「あのドーパントもあなたのせいで見失ったのよ。既に追っているようには思えない」


 あれからしばらく歩いているが、バイオレンス・ドーパントどころか人間の面影すら見ていない。
 それは当然である。溝呂木が現在、同じように五代と凪を見張っているのだ。もし五代たちにも追っている自覚があるというなら、醜くもお互いに同じ場所をぐるぐると回ることになる。
 そのうえ、本当にその「バイオレンス・ドーパント」に追われているとは彼らも思っていないのだ。


「確かに見逃したかもしれません……けど、俺はあの人がいるなら下山したあたり……地図だと教会のあたりじゃないかと思います」


 とはいえ、五代は自分なりに相手がどこに行ったのかを推測しようとしていた。
 見逃したならば、相手がどこに向かうのかを考えてみればいい。
 凪はバイオレンス・ドーパントの行動が人間としての意思をもってのものとは思えなかったたため、少し五代の考え方には戸惑う。


「どうしてそう思うの?」

「あの人がガイアメモリの副作用に侵されているだけなら、まず人が集まりやすい場所は避けると思います。たとえば、村とか街……いくらこの島が無人だからって、村や街って言ったら人がいそうな気がするじゃないですか」

「彼がどう思うかは知らないけど、確かに人間不信や疑心暗鬼ならわざわざ人が集まるところには行かない。だけど、そういった精神状態は時折私たちに理解できない極端な行動に出るわ。
 例えばだけど、逆に人間そのものを全部消そうとして人が多い場所へ向かうとか。必ずしも他人を避けるという考え方は早計ね」

「けど、わざわざこの位置からかなり距離が遠い村エリアまで行くとは思えないんですよね。彼が向かった方向も、教会の方でしたし」

「確かに、向かった方向も教会の方ね。そして私たちは見失った」

「それに、夜の森ってなんだか怖いじゃないですか。普通の人ですら、いつまでもこんなところにいたいと思わないと思います」


 彼の向かった方向を考えても、途中にある道路からどこかへ去ったとも考え難い。
 二人とバイオレンス・ドーパントの距離感を考えても、見渡しの良い道路にいたらすぐに気づくはずだ。
 身を隠してくれる木々のある森エリアを逃げている可能性が高い。

35魔法、魔人、悪魔(修正版) ◆gry038wOvE:2012/01/15(日) 16:11:52 ID:NlMREnaQ0
「とにかく、教会に向かうのは私も賛成だわ。あそこは図書館からも村エリアからも離れてるから、この付近で山から降りてきた人間があそこに向かうと考えるのもわかる」

「でしょう?」

「それに、周囲に障害物がないエリアに出れば、隠れて私たちを狙う何者かも姿を現さなければならなくなる」

「確かに。けど、それって本当に俺たちの命を狙ってるのかなぁ……」

「どういう意味?」

「ほら、西条さんって結構綺麗だから」


 セクハラ紛いの発言ともとれるが、五代は軽い冗談のつもりで悪意はない。その笑顔を見ればそれは確かだ。
 ただ純粋に、「殺人者でなくストーカー」と追っ手のレベルを低めることによって安心感を持たせようとしただけなのだろう。


「ふざけないで」


 彼なりに何かを考えているのはよくわかったが、凪にはまだ彼という人物がはっきりと見えない。
 ただ、ひたすら楽天的で、ポジティブで、緊張感がない。
 そんな性格と見て取れるが、どうすればそんな性格になれるのか──それを知らないのだ。いや、知ってはならないのだろう。
 厳格なナイトレイダーの副隊長は、冷酷さを捨ててはならない。
 ビーストという人の常識を超えた外敵への復讐を果たすためには、人の感情を抑える必要があるのだ。


★ ★ ★ ★ ★


(結局、あいつらも教会に向かうわけか……)


 物陰の溝呂木は、この奇に塗れた偶然に笑みを零した。
 五代、凪、ファウスト──歩測が合えば、彼らは鉢合わせることとなるのだろう。
 ファウストが教会側に向かったのは何となく見えていたし、おそらくはそのまま真っ直ぐに教会に向かっただろう。
 戦いだけの空っぽな人形がランダムに歩いていくとは思えないし、彼女が真っ直ぐに向かっていった可能性は高い。おそらくは、彼らはファウストと合流することになるだろうと思えた。
 そうすれば少なくとも、邪魔なクウガとファウストの戦う様を見ることが出来る。


(まあ、凪が教会に向かうのは確定というわけだ。先回りしてファウストの様子を見てみるか)


 凪の向かった先がわかれば、彼らを追う必要はない。
 突然行き先を変えるとも思えないし、ファウストの様子は気になった。
 溝呂木は凪たちに気づかれぬよう、影に黒衣を紛らせて走っていった。


★ ★ ★ ★ ★

36魔法、魔人、悪魔(修正版) ◆gry038wOvE:2012/01/15(日) 16:12:24 ID:NlMREnaQ0
 常人が引きずるほどのエンジンブレードを振り上げて、アクセルはファウストに向かっていった。
 懐までの距離は既に十メートルもない。そこにエンジンブレードヒットが加わることで、敵に一撃を与える。
 ファウストは振り上げられたエンジンブレードを腕で防ぐ。腕も体の一部なのだから、無論防御しようとダメージは大きい。しかし、あのままだと脳天に直撃していたということを考えると正しい判断だろう。
 切れ味以上にその重みによって腕は軋むが、ファウストはエンジンブレードを防いでから数秒間、互いの体感時間が停止していたことに気がつき、アクセルの足元に蹴りをかます。


「ぐっ!」


 ファウストはダメージらしいダメージを与えられなかったが、アクセルはそれによって少し後退した。
 エンジンブレードも彼女の腕から突き放されていった。
 開いた右腕は、即座にダークフラッシャーを発射した。一度突き放せばこちらのものだ、とばかりに何度かダークフラッシャーを放つ。
 アクセルの肩やわき腹に命中した闇の弾丸は、彼の上半身のバランスを崩す。
 彼の上半身はエンジンブレードを持つ指先がただ、必死に離すまいと握り締めるのみで、それ以外の部位はダークフラッシャーの威力に飲まれて体を震わせていた。


(前進は危険だが、避けるわけにもいかない……!)


 彼の真後ろには生身のミユキがいるゆえ、真横に飛ぶわけにもいかない。
 かといって、ミユキもまた動けない。ここでアクセルという盾に守られながら、彼らの戦いを見守るしかないのである。
 ミユキが左右に移動すれば、敵はそれを狙ってくるだろう。この怪物と因縁があるわけでもないのに突如襲ってくるようなヤツだ。アクセルでなくても、参加者を見れば襲撃するだろう。
 照井の言った通り、兄に会うまで生きろというのなら、ここから迂闊に離れるわけにはいかなかった。


(いや、『危険』を選ぶほうが少しマシだ!)


 アクセルは渾身の力を振り絞って、先ほど襲撃されたときのようにエンジンブレードを縦に構える。
 次に自分の体を狙ってきたダークフラッシャーはそちらに命中した。反動で後ずさりしたが、衝撃を覚悟した分、ダメージは小さい。


 ――Engine――

 ──Jet──


 アクセルはエンジンメモリを使い、エンジンブレード本来の力を繰り出す。
 ジェットの力により、切っ先からエネルギー弾が発射され、ファウストの体に命中する。
 それはダークフラッシャーの弾丸よりも遥かに速く届き、アクセルはすぐさま前方のダークフラッシャー弾を切り落とす。
 悠々とダークフラッシャーを回避したアクセルに対し、予期せぬ一撃を受けたファウストは手を大きく振りながら後方に吹き飛んだ。

 ──Electric──


 電気エネルギーを帯びたエンジンブレードを持ったまま、アクセルはまっすぐに駆けて行く。
 ファウストはそれに気づかぬまま、わざわざ狙いやすいように立ち上がってしまう。本能的に撤退しようとしたのだろう。

 ファウストが懐で輝く剣に気づいたとき、彼女の身体は右肩から左腕にかけて斬りつけられていた。
 アクセルのように装甲をまとっているわけではなく、まして元が肉弾戦経験の少ないファウストは、負う傷が大きかった。傷口を伝い、全身に電気エネルギーが流れる。
 そもそも、ファウスト自体は魔法少女としてのさやかと比べても、弱弱しい存在なのだ……。

 深いダメージを負ったファウストの身体を、アクセルは無情にも蹴り飛ばす。
 ファウストの正体を知らないのだから無理もない。彼にとってファウストは、生命の有無さえ曖昧な、不可思議な存在に他ならないのだ。無論、殺害する気は無いが。
 その一撃にファウストは、っまたしても後方に吹き飛ぶ。体制を整えようとするファウストに、彼は好機とばかりにマキシマムドライブを繰り出そうとしていた。


 次の瞬間────


「フハハハハッ!!!!」


 そんな笑い声とともに、アクセルの身体を、不意打ちのビームが吹き飛ばした。真正面からの攻撃ではなかった。
 ファウストではない。真横からの不意打ちであった。
 
 アクセルとミユキは、同時にそちらを見た。
 そこには、ファウストと似通った、不気味な怪人が佇んでいる。


 先回りをした溝呂木──ダークメフィストである。五代、凪の行き先が把握できた以上、わざわざ彼らの後ろをコソコソと歩いていく必要はないのである。
 ファウストの行き先を確認するという意味も込めて、彼は教会に向かっていた。そして、この激戦に入り込む隙を狙っていたのだ。

37魔法、魔人、悪魔(修正版) ◆gry038wOvE:2012/01/15(日) 16:13:18 ID:NlMREnaQ0
「仲間がいたのかっ!!」


 勝利を確信した瞬間の不意打ちに転げた体を起こしつつ、アクセルは自分の迂闊さを呪う。
 つかつかと歩いてくる二人目の魔人を前に、アクセルは戦慄した。メフィストの威風堂々とした立ち振る舞いは、ファウストとは違って剛健に見える。


「相羽ミユキッ! 逃げろ!」


 アクセルは己の声の限りを振り絞り、ミユキに叫ぶ。
 二人同時に相手にするのは難しい。ましてや、ファウストとメフィストは遠距離型の攻撃ができるため、ミユキを守りきる自信がなかったのだ。
 ミユキは一度、クリスタルを構えた。この状況で、背を向けて逃げるよりもテックセットしたほうが生存率は高いと判断したのである。
 しかし、メフィストはそれを見逃さない。


「死ねぇ!」


 メフィストの腕が闇の弾丸を作り出す。
 それは二つの個体に分裂し、アクセルとミユキを同時に狙った。
 一直線に向かっていった二つの「それ」が、避ける暇さえ与えずに爆発する。


★ ★ ★ ★ ★



 ミユキにはテッククリスタルを翳す暇さえ許されなかった。
 ある意味で、それは照井が原因でもある。
 彼女は他人を護るために自分の命を捨てることも厭わないほど優しい少女だった。
 しかし、彼の叱咤はどこかでミユキの胸を打っていたのである。


 いや、彼が相羽タカヤに似ていたのが悪かったのである。
 彼の願いは、タカヤの願いに共通しているかのような……そんな感覚がミユキにはあった。


 それがミユキの心に迷いを生んだ。
 この時迷いがなかったとしてもテックセットする暇はなかったかもしれないし、テックセットしたとしても二人に勝つことはできなかったかもしれない。
 闇の弾丸に包まれたとき、彼女はもはやそんな事など考えずに、生を諦めた。


(もうすぐ会えると思ったのに……お兄ちゃん……)


 彼女は優しいから。
 クリスタルを残して消えていくまでの僅かな時間を、兄を想うことだけに使ったのである。

 耳に聞こえる波の音が懐かしかった。
 自分を追ってくる兄の声がいとおしかった。
 砂浜を踏んで走る音が忘れられなかった。


 属に走馬灯と呼ばれるものである。
 だが、それはミユキの頭の中にしかないお花畑の妄想でも、遠い日の思い出でもないような気がした。
 だって、本当に彼女の耳にはそれが聞こえたのだから。


 それでも彼女は知っていた。
 兄がいつまでも自分の兄ではないことを。
 兄が走っていく先に、ミユキは一人の女性としては存在しないことを。


(アキさんと幸せに────)


 強いブラザー・コンプレックスを抱いていた彼女は、実の兄に対しても特別な感情を持っていた。
 だが、それは許されないことだと理解していたし、兄の幸せを彼女は誰よりも願っていた。
 死ぬ瞬間も、自分が兄と結ばれようなどと考えることはなかったのである。


【相羽ミユキ@宇宙の騎士テッカマンブレード 死亡】
※相羽ミユキの消失した付近には、テッククリスタルが落ちています。
※デイパックの状態に関しては不明です。


★ ★ ★ ★ ★

38魔法、魔人、悪魔(修正版) ◆gry038wOvE:2012/01/15(日) 16:14:05 ID:NlMREnaQ0
 闇の一撃に全身を呑まれ、既に前も見えないアクセルの身体に、カギ爪が食い込んだ。
 メフィストクローである。硬い装甲をも破る鋭いツメに、アクセルの中で照井が血を吐く。
 続けて、メフィストが一歩後退したかと思えば、別方向からビームが飛んでくる。


「ぐああああっ!!」


 アクセルはボロボロになり、反撃する暇もなかった。
 気がかりなのは、ミユキがどうなったのかである。彼女が今のうちに逃げているというのなら、照井も今、やられ損ではないが、照井はまるで彼女の気配が消えたような不安を感じた。
 悪い予感であってほしいのだが、それを確認する術は今、ない。


(俺自身も、無事ではすまなそうだな……)


 アクセルという仮面の中で、照井の意識は朦朧とし始めていた。
 もはやこの力さえも無意味なほど甚振られているのだ。
 痛みを感じなくなりつつあった身体に、確かな激痛が走る。
 メフィストクローが殻を破って、照井竜の体へと突き刺さったのだ。


 勝ちたい。
 せめて、彼女がどうなったのかを見届けたい。
 そんな思いを裏切るかのように、照井に手招きする何かがある。


『──お兄ちゃん』


 ──春子……──


 兄という単語を聞いて、ミユキという少女の声を自らの妹と錯覚したのかと思ったが、それは間違いなく自らの妹の声であった。
 甚振られ、もはや抵抗する気力さえ失い、痛みさえ感じなくなってきた頃に、その声は聞こえた。


 そして、見えた。


 父が、母が、春子が、照井の目の前にいた。
 竜が育ったあの家の前で、そこに足りない一人を待っているかのように。


 それは異世界において、同じように家族を失った仮面ライダーが見た夢に似ている。
 何より温かく、一人の人間にとって何処よりも安心できる場所が、照井竜を誘惑していた。
 本来ならばいずれ、照井も家庭を持っていくはずだったのだろう。
 彼らはそれを見届けたいはずだった。
 しかし、甚振られて傷ついていく息子を、兄を見て、「もうやすめ」と言っているようだった。


 だが、そんな彼らの想いに気づいた竜は敢えてこう答える。


 ──ごめん、父さん、母さん、春子。俺はまだ、そっちには行けないよ……──


 彼が出す答えもまた、ある仮面ライダーと同じであり、それを見送る者たちの表情をまた、その仮面ライダーの家族と同じであった。


「うおおおおおおおおおおおおっ!!!」


 握力さえ失ったかのように思われたアクセルの体は、意地によって動かされていた。
 エンジンブレードを地面にい突き刺すと、今度は命をかけて迎撃しようという覚悟でメモリを挿入する。


 ──Trial──


 挑戦の記憶を宿したメモリがアクセルの体を青く染める。
 既に紙細工同然とばかりに壊されていた装甲も、よりいっそう薄いものとなった。
 それは死をも覚悟した行動に他ならない。先ほどまでこれを使おうとしなかったのは、その装甲に守られている方が死期が長くなる……という安心感があったのかもしれないと、この時初めて自覚した。


 同じく敗北し、死ぬ未来があるというのなら、「挑戦」してみようではないか。


 先ほどの小さな臨死体験は照井の心を振り切らせた。


(こいつらを倒すまでは、まだ行けない……!)


 音速を超える幾度もの攻撃が、硝煙さえかき消してメフィストとファウストの体を傷つけていく。
 アクセルと比べて弱弱しいとしても、速さがウリのトライアルは幾度もの攻撃を二つの体の同じ箇所に繰り返した。


 ――Trial maximum drive――

39魔法、魔人、悪魔(修正版) ◆gry038wOvE:2012/01/15(日) 16:14:56 ID:NlMREnaQ0
 ────しかし


 蒼き流星が知覚できないスピードを見せたのはいつにも増して短い時間であった。
 僅か2秒。普段の1/5、或いはそれに満たないほどの時間である。


 アクセルの装甲の中で照井竜が胸に受けた傷は深かった。
 青い装甲の内側は、既に致死量に近いだけの赤が充満していたのである。


 メフィストは、突如として視界から消え、自らの体に謎のダメージを残し、そして眼前で倒れ付す戦士を不思議に思いながらも、彼が限界に達して、もう死ぬのだということだけは理解した。


(ゴール…………いや、途中棄権か…………)


 メフィストとファウストの撃退をやり遂げることができなかった自嘲を心の中で済ませる。


(相羽ミユキ……彼女は無事か……?)


 彼は彼女が一足先に家族の下に向かったことなど知らない。


(どちらにせよ、守るという約束は果たせなかったか…………すまない)


 彼はすぐに、この世への未練を悔いることさえできなくなった。
 心臓も、脈も、脳も、全てが途切れ、彼は全ての人間がたどり着くゴールへと向かった。


【照井竜@仮面ライダーW 死亡】
※照井の遺体は現在アクセルの装甲に包まれていますが、数分と経たずに変身は自動解除されます。
※照井の支給品は照井の遺体の付近に放置されています。


★ ★ ★ ★ ★


 ダークファウストの身体は既に限界を迎え、美樹さやかとしての身体に戻っていた。
 トライアルのマキシマムドライブが、不完全ながらファウストの戦闘能力に皹を入れたのである。
 もし、彼がマキシマムドライブを果たしていたのなら、彼女は死んでいたかもしれない。
 そんなさやかの身体を見て、メフィスト──いや、既に溝呂木の姿に戻っている──は、少しばかり笑みを失う。

 二人始末できたのはいいが、それはファウストより溝呂木自身の功績であった。クウガやウルトラマン、アクセルなどと変身能力者の多い現場で、彼女の使い道は非常に限られる。
 他の参加者と比べて能力が劣っているのである。
 無論、マーダーである以上はたとえ弱くても殺しはしない。溝呂木に牙を剥かない限りは、抹殺対象とはならないのだ。それは効率的に生き残るための手段であった。


「凪たちもすぐに来る……あいつらがどういう反応をするか、コイツ自身もどういうリアクションをしてくれるか……それが見られるだけでも良しとするか」


 溝呂木はすぐに教会の陰に姿を隠した。
 彼はこれから、二人の参加者が死体を発見するのを待っている。
 潜在意識にファウストが存在する少女が、これからどうなるのかも楽しみにしている。


 そして、二つの足音が聞こえてくると、男は口元を歪ませた。

40魔法、魔人、悪魔(修正版) ◆gry038wOvE:2012/01/15(日) 16:15:37 ID:NlMREnaQ0
【一日目・黎明 F-3/山間部】

【五代雄介@仮面ライダークウガ】
[状態]:疲労(小)、胸部を中心として打撲多数
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1〜3個(確認済)
[思考]
基本:出来るだけ多くの人を助け、皆でゲームを脱出する。
1:西条凪と情報交換。
2:教会に向かう。
3:西条凪と共に協力者を集める。
4:バイオレンスドーパントを止める。
5:人間を守る。その為なら敵を倒すことを躊躇しない。
[備考]
※参戦時期は第46話、ゴ・ガドル・バに敗れた後電気ショックを受けている最中


【西条凪@ウルトラマンネクサス】
[状態]:健康
[装備]:コルトパイソン+執行実包(6/6)、T2ガイアメモリ@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式、ガイアメモリ説明書、.357マグナム弾(執行実包×18、神経断裂弾@仮面ライダークウガ×8)
[思考]
基本:人に害を成す人外の存在を全滅させる。
1:五代雄介と情報交換。
2:教会に向かう。
3:バイオレンスドーパントを倒す。
4:孤門、石堀と合流する。
5:相手が人間であろうと向かってくる相手には容赦しない。
6:五代の事を危険な存在と判断したら殺す。
[備考]
※参戦時期はEpisode.31の後で、Episode.32の前
※所持しているメモリの種類は後続の書き手の方にお任せします。


【一日目・黎明 F-2/廃教会】
※タイガーロイドの砲撃により、廃教会の天井と一部の壁が吹き飛ばされました。


【溝呂木眞也@ウルトラマンネクサス】
[状態]:腹部にダメージ(小)
[装備]:ダークエボルバー@ウルトラマンネクサス、T2バイオレンスメモリ@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1〜2個(確認済)
[思考]
基本:より高きもの、より強きもの、より完璧なるものに至り、世界を思うままに操る。
1:姫矢准からウルトラマンの力を奪う。
2:その他にも利用できる力があれば何でも手に入れる。
3:弱い人間を操り人形にして正義の味方と戦わせる。
4:西条凪を仲間にする。
5:ファウスト(さやか)の様子を見るのも面白い。
[備考]
※参戦時期は姫矢編後半、Episode.23以前。
※さやかをファウストにできたのはあくまで、彼女が「魔法少女」であったためです。本来、死者の蘇生に該当するため、ロワ内で死亡した参加者をファウスト化させることはできません。
※また、複数の参加者にファウスト化を施すことはできません。少なくともさやかが生存している間は、別の参加者に対して闇化能力を発動することは不可能です。
※ファウストとなった人間をファウスト化及び洗脳状態にできるのは推定1〜2エリア以内に対象がいる場合のみです。


【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:気絶、ダメージ(極大)、疲労(極大)、ソウルジェムの濁り(大)、裏にファウストの人格があります
[装備]:ソウルジェム
[道具]:支給品一式、グリーフシード1個、ランダム支給品0〜2
[思考]
※あくまで気絶前(ファウスト化前)の思考です。
基本:自分の存在意義が何なのかを教えてほしい
1:正義って……何なの?
2:この世界に、守る価値ってあるの?
[備考]
 ※参戦時期は8話、ホスト二人組の会話を聞く前です。
 ※『癒し』の魔法の効果で回復力が高まっており、ある程度ならば傷の自然回復が可能です。
 ※ソウルジェムが濁っていますが、この会場内で魔女化の条件を満たすと死亡します。
 ※正義の味方として戦う事が本当に正しいのかと、絶望を覚えています。
 ※まだ名簿は確認していません。
 ※溝呂木によってダークファウストの意思を植えつけえられました。但し、本人にその記憶はありません。
 ※溝呂木が一定の距離にいない場合、彼女がファウストとしての姿や意思に目覚めることはありません(推定1〜2エリア程度?)。ただし、斎田リコのような妄想状態になる可能性はあります。

41魔法、魔人、悪魔(修正版) ◆gry038wOvE:2012/01/15(日) 16:17:52 ID:NlMREnaQ0
以上、修正投下終了です。
指摘等がなければこのまま本投下します。

42 ◆LuuKRM2PEg:2012/01/15(日) 22:01:15 ID:xphsgFlQ0
投下乙です!
感想は本スレで。

それでは自分も、前回指摘の受けた部分を投下します

43魔獣 (修正版) ◆LuuKRM2PEg:2012/01/15(日) 22:03:49 ID:xphsgFlQ0


 頭部が跡形もなく焼失した速水克彦の遺体を、タブー・ドーパントは無造作に投げ捨てる。
 異形の下に潜む園咲冴子の表情は、死人のように冷たく固まっていた。まるで冴子自身が殺意を覚えていた、加頭順のように。
 しかしそれを冴子が気付くことはなく、何よりも考えることもなかった。

「成る程、君はあのドーパントという奴だったのか」

 そんなタブー・ドーパントの前に、辺りに広がる闇の中からバラゴが現れる。
 バラゴが冴子に魔弾を撃ち込んだのは、男より女の方が利用価値がまだある為。人間の男は愚かにも、女の色気仕掛けに負けてしまう時があった。
 しかし命中してから状況は変わる。何と、冴子が速水を殺す際に加頭順が見せ付けたガイアメモリを所持し、ドーパントに変身したのだ。
 良い拾い物を得たと確信したバラゴは、闇の中でニヤリと笑う。これではまるで、運命が自分の勝利を願っているかのようだと思いながら。
 奴らのデイバッグにある道具を確認したかったが、今は仮面ライダー達をホラーにする事が最優先だからそんな暇など無い。
 これ以上こんな所で時間を浪費して逃げられるくらいなら、後回しにするしかなかった。
 バラゴは気持ちが高ぶりつつある中、タブー・ドーパントに振り向く。

「村にいるはずの仮面ライダーを出来るだけ殺さないように消耗させろ。まあ抵抗するなら、殺しても構わないが」

 バラゴがそう言い放つと、タブー・ドーパントは何も答えることなく宙に浮かんだ。
 恐らく、これもドーパントが持つ能力の一つなのだろうと彼は思う。加頭はメモリの能力は極めて多彩と言っていたから、空が飛べたところで何らおかしくない。
 夜空の元で飛び続けるタブー・ドーパントの後を、バラゴはゆっくりと歩いた。

44魔獣 (修正版) ◆LuuKRM2PEg:2012/01/15(日) 22:04:25 ID:xphsgFlQ0
そして状態票です

【バラゴ@牙狼─GARO─】
[状態]:胸部に強打の痛み、顔は本来の十字傷の姿に
[装備]:魔戒剣、魔弾(1発)+銃@牙狼
[道具]:支給品一式×3、ランダム支給品0〜2、冴子のランダム支給品1〜3、顔を変容させる秘薬、インロウマル&スーパーディスク@侍戦隊シンケンジャー、紀州特産の梅干し@超光戦士シャンゼリオン、ムカデのキーホルダー@超光戦士シャンゼリオン、『ハートキャッチプリキュア!』の漫画@ハートキャッチプリキュア!
[思考]
基本:参加者全員と加頭を殺害し、元の世界で目的を遂行する
0:あの二人の戦いをまずは監視する
1:仮面ライダーに魔弾を打ち込みホラーにする
2:今のところ顔を変容させる予定はない
3:仮面ライダーと怪人に隙が出来るのを待つ
[備考]
※参戦時期は第23話でカオルに正体を明かす前。
※顔を変容させる秘薬を所持しているかは不明。
※開始時の一件で一文字のことは認識しているので、本郷についても認識していると思われます。
※冴子と速水の支給品はまだ確認していません。

【備考】
※タブーメモリ&ガイアドライバー@仮面ライダーWは破壊されました。

以上です、指摘がありましたらお願いします。

45名無しさん:2012/01/16(月) 04:35:08 ID:rlxwSDZQ0
修正乙です
これは…本スレ708後半とバラゴの状態表の修正ですね
バラゴはデイバックの中身を見なかったわけですね
無難な修正だと思います

46戦いは始まる ◆Ltg/xlcQkg:2012/01/22(日) 16:36:47 ID:6/ui7zto0
これより修正版を投下します。




 朝日が昇り始めた頃、自らの力を高める為に戦いの相手を求めてゴ・ガドル・バは歩いていた。
 かつてリントの勇者であるクウガに破れたが、どういう訳か生きて再びこの世界に立っている。何故、自分が生きているのかは気にならないでもないが、正直な話どうでもいい。
 こうしてまた生きているというなら、リントの戦士達を狩るという己のゲゲルを再開するだけだ。その為にもまずは先程戦ったリントの少女達を狩る。
 己の目的を胸にしながら、ガドルは今いる地点から見える巨大な建物を目指した。あの二人とは限らないが、リントが訪れるかもしれないと考えて。
 やがて建物の前に辿り着いたガドルは扉を潜ろうとするが、その途中にある物を見つけて足を止める。

「……ん?」

 ガドルがバギブソンにゆっくりと触れて、不意に横へ振り向く。
 見ると、ここから離れるように四つの人影が歩いているのが見えた。黒い帽子を被った男と眼鏡をかけた少年、そして先程自分を倒した少女達がいる。
 普通の人間ならばこれだけの距離があっては気付くことはできないが、彼はゴのグロンギ。視力も人間のそれより遥かに上回っている。
 どうやらフェイトと杏子とやらはこの建物で新たなリントを見つけ、行動を共にしたようだ。すなわち、あの二人が戦士であれば自らのゲゲルはより充実したものとなる。
 だがここからでは普通に歩いても追いつけるとは思えない。故にガドルは自らの姿をグロンギの物へと変えて、疾走を開始する。
 疾風をも上回りかねない速さで動くことでガドルの皮膚に冷たい風が突き刺さるが、動きを緩めることは決してしなかった。ザギバス・ゲゲルを乗り越えてグロンギの王となり、並ぶ者のいない最強の存在となる。
 その揺ぎ無い信念を抱く限り、ガドルは一秒たりとも止まることはなかった。





「フィリップ……お前は、無事なのか!?」
『ああ、僕なら無事だ翔太郎!』

 ダブルドライバーを腰に巻いた左翔太郎の脳裏に響くのは、長い間共に戦ってきた相棒の声。
 彼は今、かつて倒した筈の加頭順によって囚われの身となっているが、こうして無事を確認できる。その事実で翔太郎の中で安堵が生まれそうになるが、すぐにそれを自制した。

『すまない翔太郎、僕が不甲斐無いせいで囚われの身になって君に迷惑をかけて……』
「謝るのは後だ! お前はどこにいるんだ!?」
『僕は今エクストリームメモリの中に幽閉されている! だが、外がどうなっているのかわからない!』
「そうか……だが待ってろ! 俺がすぐにお前を助けてやるからな!」
『ありがとう……とりあえず、僕の状況を簡潔に言う。僕の手元には今、サイクロンにヒート……それにルナとファングの四つのメモリがある。恐らく、変身して戦う分には問題が無いようだ』

 ソウルサイドのメモリはフィリップの手元にあるので、加頭の言うようにWの変身を行うには問題ないらしい。しかしファングはフィリップの意思で戦うシステムの為、こちらで使うことは出来ないようだ。
 だが、今は贅沢など言っていられない。ここにいるみんなを守る為に、限られた装備でも精一杯戦わなければならなかった。

「そうか……なら、エクストリームは飛ばせるか?」
『それは分からない……だが例え飛ばせたとしても、長時間そちらにいられる可能性は低いかもしれない。一定の時間が過ぎた瞬間、エクストリームメモリが強制的にこちらへ転送される事も考えられる』
「成る程な」

 恐らく、エクストリームメモリを呼び出せる可能性は低い。奴らが人質であるフィリップをそう簡単に開放するなんて、ありえないからだ。
 また、仮に呼び出せたとしてもフィリップをエクストリームメモリから出すことは出来ないだろう。

「翔太郎さん、どうかしたんですか……?」
「……今、フィリップと話をしてた」
「え?」

 怪訝な表情を浮かべているユーノ・スクライアに、翔太郎はそう答えた。
 当然かもしれないが、フェイト・テスタロッサや佐倉杏子も似たような顔をしている。

47戦いは始まる ◆Ltg/xlcQkg:2012/01/22(日) 16:38:10 ID:6/ui7zto0

「このダブルドライバーがあれば、加頭の野郎に捕まったあいつと意志疎通が出来るようになっている……そして、これにガイアメモリを差し込めば仮面ライダーWに変身して戦えるんだ」
「それって……あいつらがわざわざ敵である翔太郎さんが戦う事を許してるって意味ですか?」
「ああ……何で連中がそんな事をしてるのかは、まるで分からないけどな」
「そうですか……」

 そしてユーノはどこか沈んだ顔で頷いた。

「……翔太郎さん、僕も出来るだけあなたの力になります。フィリップさんを助けるために」
「そっか、サンキュ」

 ユーノは自分のことを心配してくれていると、翔太郎は思う。
 気持ちは嬉しいがそれでは駄目だ。仮面ライダーは人々を守る正義の味方でなければならないのだから。共に戦った仮面ライダーディケイドや仮面ライダーオーズにもそう誓った以上、しっかりしなければならない。
 この会場には連れてこられた照井竜や、本郷猛と一文字隼人というまだ見ぬ謎の仮面ライダーも殺し合いを打ち破るために戦っているはずだから。

「あまり、無理はしないで下さいね……?」
「そうだよ。いざって時に兄ちゃんがしっかりしなかったら、あたし達みんなが困るって事を忘れないでくれよ」
「フェイトも杏子も、ありがとな」

 だから今はこの三人の為にも挫けるわけにはいかない。フェイトや杏子を襲った怪物や、ミュージアムの幹部やNEVERのような危険な連中がこの孤島に大勢いる可能性がある。
 そんな奴らから、若い彼らを守る事が俺の使命だ。三人ともある程度戦えるようだが、命の危険になんて晒したくはない。
 翔太郎は決意を固めた瞬間、見つけた。ここから少し離れた場所から、ドーパントのような怪人がボウガンを構えているのを。
 そして、その銃口がこちらに向けられているのを見て、翔太郎は一瞬で目を見開いた。

「みんな、敵だ――!?」

 翔太郎が叫ぶと同時に、銃口から光が放たれる。
 それを見た四人は反射的に横に飛んだ瞬間、地面が大きく爆発した。四人の悲鳴は発せられるものの、轟音によって飲み込まれてしまう。
 地面に叩きつけられた事で翔太郎の全身に激痛が走るが、それを耐える。幸いにもボウガンの矢は当たっておらず、大事には至っていないからだ。
 行動を共にしている仲間達も、無事だった。三人の服装はいつの間にか変わっているので、魔導師や魔法少女に変身していたのだ。

「おい、大丈夫か!?」
「僕は大丈夫です!」
「大丈夫です!」
「あたしも無事だ!」

 しかしユーノ、フェイト、杏子の無事を喜ぶ暇は無い。翔太郎は現れた怪人を睨み付けた。

「お前は……!?」 
「ようやく見つけたぞ」

 岩のような唇から渋い声が発せられる。
 怪人の瞳からは凄まじい殺気が放たれていて、どう考えても味方とは思えない。

「てめえ……さっきの化け物か!?」

 そして、魔法少女に変身した杏子は叫ぶ。
 その様子を見たユーノも異常事態と思ったのか、一気に目を見開いた。

48戦いは始まる ◆Ltg/xlcQkg:2012/01/22(日) 16:38:40 ID:6/ui7zto0

「杏子、もしかしてこいつは……!」
「そうだよユーノ、こいつはさっきあたしとフェイトが戦った奴だ!」

 ユーノと杏子のやり取りが答えだった。
 翔太郎は再び前を向いた先では、男の瞳が赤く染まる。その手に握られていたボウガンはいつの間にか消えていて、代わりにアクセサリーへと変わっていた。
 

「さあ、戦え」

 声から感じ取れるプレッシャーは凄まじかった。それだけでただの弱者を退かせるような威圧感を醸し出していて、只者ではないことが分かる。
 しかしだからと言って翔太郎は逃げるつもりなど毛頭無かった。ここで奴を逃したら多くの人間が犠牲となってしまう。そんな事になっては、フィリップや照井竜に顔向けができない。
 翔太郎はダブルドライバーを腰に巻くと、同時にサイクロンメモリも出現した。始まりのホールで言っていた加頭の言葉はどうやら真実のようだが今はどうでもいい。
 ジョーカーメモリを手にとって、スイッチを力強く押した。

『JOKER』

 メモリから放たれる力強いガイアウィスパーを耳にしながら、翔太郎は目の前の敵を睨みつける。そのまま、ジョーカーメモリをダブルドライバーに叩き込んだ。

「変身!」
『CYCLONE JOKER』

 変身の言葉と共にガイアウィスパーが発せられたダブルドライバーから多数の粒子が生成されて、翔太郎の全身を包んでいく。一瞬の内に、彼の変身は完了した。
 瞳は赤く輝き、左右半分の鎧がそれぞれ緑と黒の色を持っている。仮面ライダーW サイクロンジョーカーへと左翔太郎は変身したのだ。

『翔太郎!』

 そして変身を完了した瞬間、脳裏に長い間共に戦ってきた相棒の声が聞こえる。

「フィリップ、戦いだ!」
『そうか……だが、無理をしないでくれ!』
「分かってるよ!」
「喋ってるのは後にしてくれよ! あいつは来るぞ!」

 ようやくフィリップの無事が確認できたのを喜ぶ暇は無い。杏子が言うように、目の前の怪人から放たれる殺気が徐々に増していたからだ。
 心なしか息苦しさを感じるが、だからと言って負けるわけにはいかない。自分の周りには、守るべき者達が大勢いるのだから。

「……フェイト、お願いだから無理をしないで!」
「ありがとう、私なら大丈夫だから……行こうバルディッシュ!」
『Yes Sir』

 ユーノとフェイト、それにバルディッシュというフェイトの相棒は互いを励ましている。
 自分よりずっと年下の者達ですら恐怖に負けずに頑張っているのだから、ここで負けたりしたら仮面ライダーの名前を汚すだけだ。
 この殺し合いを打ち破るため、そしてみんなを守るために左翔太郎とフィリップは――仮面ライダーWはいつもの台詞をゴ・ガドル・バに告げる。

「「さあ、お前の罪を数えろ!」」

 その言葉を合図に、戦いは始まった。

49戦いは始まる ◆Ltg/xlcQkg:2012/01/22(日) 16:39:18 ID:6/ui7zto0





(フェイトのバリアジャケットが……違う?)

 ユーノ・スクライアはフェイト・テスタロッサの纏うバリアジャケットの形が違うことに違和感を覚えていた。
 それはかつてプレシア・テスタロッサの元にいた時に纏っていたのと、寸分の狂いもなく同じだった。
 何故、彼女はそれを纏っているのか? 思えば先程も翠屋を知らない反応を見せたりしたから強い違和感を感じる。

「……ユーノ?」

 しかしそんな中、怪訝な表情を浮かべているフェイトから声をかけられた。そして彼女の向こうには杏子が言っていた怪人がこちらを睨んでいる。
 それを見たユーノは、違和感を振り払う。今はあの怪人を倒すことが最優先だから、事情を聞くのはその後にするしかない。

「……フェイト、お願いだから無理をしないで!」
「ありがとう、私なら大丈夫だから……行こうバルディッシュ!」
『Yes Sir』

 バルディッシュだってあの怪物と戦おうと強い闘志を発しているのだから、自分もしっかりしないといけない。
 そう思いながらユーノもまた、怪人――ゴ・ガドル・バを睨み付けた。






【一日目・早朝】
【I−7 平原】


【左翔太郎@仮面ライダーW】
[状態]:健康、仮面ライダーWに変身中
[装備]:ダブルドライバー@仮面ライダーW (腰に装着中)
[道具]:支給品一式、ガイアメモリ(ジョーカー、メタル、トリガー)、ランダム支給品1〜3個(本人確認済み)
[思考]
基本:殺し合いを止め、フィリップを救出する
1:この怪人(ガドル)を倒す。
2:まずはこの三人を守りながら、市街地に向かう
3:仲間を集める
4:出来るなら杏子を救いたい
[備考]
※参戦時期はTV本編終了後です
※他世界の情報についてある程度知りました。
(何をどの程度知ったかは後続の書き手さんに任せます)
※魔法少女についての情報を知りました。

50戦いは始まる ◆Ltg/xlcQkg:2012/01/22(日) 16:40:57 ID:6/ui7zto0
【ユーノ・スクライア@魔法少女リリカルなのは】
[状態]:健康 、バリアジャケット展開中、フェイトへの不信
[装備]:無し
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1〜2個 (本人確認済み)
[思考]
基本:殺し合いを止め、企画者たちを捕らえる
0:この怪人(ガドル)を倒す。
1:ここにいるみんなの力になる
2:三人と一緒に市街地に向かう
3:フェイトへの不審
[備考]
※参戦時期は闇の書事件解決後です
※ガイアメモリはロストロギアではないかと考えています
※検索魔法は制限により検索スピードが遅く、魔力消費が高くなっています
※他世界の情報についてある程度知りました。
(何をどの程度知ったかは後続の書き手さんに任せます)
※不明支給品の一つはグリーフシード@魔法少女まどか☆マギカです。
※魔法少女についての情報を知りました。
※バリアジャケットが違うことにより、フェイトに不審を抱いています。



【フェイト・テスタロッサ@魔法少女リリカルなのはシリーズ】
[状態]:疲労(小)、魔力消費(小) 、バリアジャケット展開中
[装備]:バルディッシュ@魔法少女リリカルなのはシリーズ
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3(本人確認済み)
[思考]
基本:殺し合いに優勝してジュエルシードを揃える
0:この怪人(ガドル)を倒す。
1:今はこの三人と一緒に行動する。
2:左翔太郎とユーノ・スクライアを上手く利用する。
3:何かを聞かれたら、出来るだけ誤魔化す。
[備考]
※魔法少女リリカルなのは一期第十話終了後からの参戦です



【佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:ダメージ(小)、左胸に大穴、下腹部に貫通した傷、魔法少女に変身中
[装備]:槍@魔法少女まどか☆マギカ
[道具]:基本支給品一式、イングラムM10@現実?、火炎杖@らんま1/2、ガドルのランダム支給品1〜3(本人確認済み、グリーフシードはない)
[思考]
基本:殺し合いに優勝する
0:この怪人(ガドル)を倒す。
1:フェイトと手を組んで殺し合いを有利に進める
2:今は翔太郎とユーノを上手く利用する
3:他の参加者からグリーフシードを奪う
[備考]
※魔法少女まどか☆マギカ6話終了後からの参戦です
※首輪は首にではなくソウルジェムに巻かれています
※魔法少女の身体の特性により、少なくともこの負傷で死に至ることはありません



【ゴ・ガドル・バ@仮面ライダークウガ】
[状態]:全身にダメージ(小)(回復中) 、格闘体に変身中
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本:ダグバを倒し殺し合いに優勝する
0:まずは目の前の四人(W、ユーノ、フェイト、杏子)を倒す。
1:クウガ(五代)と再び戦い、雪辱を果たす。
2:強者との戦いで自分の力を高める
※死亡後からの参戦です
※フォトンランサーファランクスシフトにより大量の電撃を受けた事で身体がある程度強化されています。

51戦いは始まる ◆Ltg/xlcQkg:2012/01/22(日) 16:42:04 ID:6/ui7zto0
それと>>46に一部間違いがありました
以下のように修正します。


 朝日が昇り始めた頃、自らの力を高める為に戦いの相手を求めてゴ・ガドル・バは歩いていた。
 かつてリントの勇者であるクウガに破れたが、どういう訳か生きて再びこの世界に立っている。何故、自分が生きているのかは気にならないでもないが、正直な話どうでもいい。
 こうしてまた生きているというなら、リントの戦士達を狩るという己のゲゲルを再開するだけだ。その為にもまずは先程戦ったリントの少女達を狩る。
 己の目的を胸にしながら、ガドルは今いる地点から見える巨大な建物を目指した。あの二人とは限らないが、リントが訪れるかもしれないと考えて。
 やがて建物の前に辿り着いたガドルは扉を潜ろうとするが、グロンギの発達した聴覚が遠くの物音を察知する。

「……ん?」

 見ると、ここから離れるように四つの人影が歩いているのが見えた。黒い帽子を被った男と眼鏡をかけた少年、そして先程自分を倒した少女達がいる。
 普通の人間ならばこれだけの距離があっては気付くことはできないが、彼はゴのグロンギ。視力も人間のそれより遥かに上回っている。
 どうやらフェイトと杏子とやらはこの建物で新たなリントを見つけ、行動を共にしたようだ。すなわち、あの二人が戦士であれば自らのゲゲルはより充実したものとなる。
 だがここからでは普通に歩いても追いつけるとは思えない。故にガドルは自らの姿をグロンギの物へと変えて、疾走を開始する。
 疾風をも上回りかねない速さで動くことでガドルの皮膚に冷たい風が突き刺さるが、動きを緩めることは決してしなかった。ザギバス・ゲゲルを乗り越えてグロンギの王となり、並ぶ者のいない最強の存在となる。
 その揺ぎ無い信念を抱く限り、ガドルは一秒たりとも止まることはなかった。

以上です
矛盾点がありましたら、指摘をお願いします。

52名無しさん:2012/01/22(日) 21:20:18 ID:hEAsqWPw0
修正乙です。
概ね問題は無いと思いますが、議論スレで指摘された>>51
>リントの戦士達を狩るという己のゲゲルを再開するだけだ。
の部分が修正されていないように見えます。

「リントの戦士達を狩るという己のゲゲル」の部分は例えば「殺し合い」にするなど
言葉を変えるなどで修正をした方がいいと思います。

53名も無き変身者:2012/01/22(日) 23:50:38 ID:Pj1pc3xg0
細かい事を言うとせっかく狙撃ポジションを取っているのに一発撃った後突撃してきちゃってるのはどうかと思うけど……
4対1になるから流石に不利だろうし、狙撃ポジで次にリレーしたほうが両陣営ともに戦略の広がりが作りやすいように思う
5人で乱戦とかだと書きにくいし

そうすると、ガドルが目の前にいないから、Wの決め台詞とか使えないけど…
まぁガドルの判断がおかしいとか言うわけじゃなくて、展開の好みに近い話だからスルーしてくれておkですが

54 ◆Ltg/xlcQkg:2012/01/24(火) 17:58:41 ID:Q/QP2Ydg0
>>52
ご指摘ありがとうございます。
それでは収録時に氏の言うように「リントの戦士達を狩るという己のゲゲル」を「殺し合いを行うだけだ」に修正させていただきます。

>>53
分かりました。
それではガドルは射撃体のままという形に修正させていただきます。

55 ◆Ltg/xlcQkg:2012/01/25(水) 15:55:43 ID:Q/QP2Ydg0
お待たせしました。
指摘された部分及び状態表の修正です。

「杏子、もしかしてこいつは……!」
「そうだよユーノ、こいつはさっきあたしとフェイトが戦った奴だ!」

 ユーノと杏子のやり取りが答えだった。
 翔太郎は再び前を向いた先では、遠くに立つ怪人の瞳がギラリと輝いている。その手に握られているボウガンの弾は一発でも当たったら、致命傷になりかねない。
 
「さあ、戦え」

 声から感じ取れるプレッシャーは凄まじかった。それだけでただの弱者を退かせるような威圧感を醸し出していて、只者ではないことが分かる。
 しかしだからと言って翔太郎は逃げるつもりなど毛頭無かった。ここで奴を逃したら多くの人間が犠牲となってしまう。そんな事になっては、フィリップや照井竜に顔向けができない。
 翔太郎はダブルドライバーを腰に巻くと、同時にサイクロンメモリも出現した。始まりのホールで言っていた加頭の言葉はどうやら真実のようだが今はどうでもいい。
 ジョーカーメモリを手にとって、スイッチを力強く押した。

『JOKER』

 メモリから放たれる力強いガイアウィスパーを耳にしながら、翔太郎は目の前の敵を睨みつける。そのまま、ジョーカーメモリをダブルドライバーに叩き込んだ。

「変身!」
『CYCLONE JOKER』

 変身の言葉と共にガイアウィスパーが発せられたダブルドライバーから多数の粒子が生成されて、翔太郎の全身を包んでいく。一瞬の内に、彼の変身は完了した。
 瞳は赤く輝き、左右半分の鎧がそれぞれ緑と黒の色を持っている。仮面ライダーW サイクロンジョーカーへと左翔太郎は変身したのだ。


【ゴ・ガドル・バ@仮面ライダークウガ】
[状態]:全身にダメージ(小)(回復中) 、射撃体に変身中
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本:ダグバを倒し殺し合いに優勝する
0:まずは目の前の四人(W、ユーノ、フェイト、杏子)を倒す。
1:クウガ(五代)と再び戦い、雪辱を果たす。
2:強者との戦いで自分の力を高める
※死亡後からの参戦です
※フォトンランサーファランクスシフトにより大量の電撃を受けた事で身体がある程度強化されています。

56名も無き変身者:2012/01/25(水) 15:56:28 ID:Q/QP2Ydg0
以上です、ご意見がありましたらよろしくお願いします。

57名も無き変身者:2012/01/26(木) 19:33:16 ID:hEAsqWPw0
>>56
修正乙です!
私は今回の修正で通しで構わないと思います。

58 ◆udCC9cHvps:2012/02/25(土) 13:18:27 ID:8JECCMaMO
以前に投下した『捲られたカード、占うように笑う』での支給品情報ですが、T2ガイアメモリや現実の支給品などの説明文は省いてしまったのですが、やはり無いなら無いで他の書き手氏が把握に困るかもしれないのでこちらに書いておきます。
今さらでご迷惑をおかけしますが、できればwikiの支給品一覧などに追加をお願いします。


【T2サイクロンメモリ@仮面ライダーW】
風の記憶を宿したT2ガイアメモリ。原作では克己の母・マリアが使用。
体内に挿入すればサイクロンドーパントに変身でき、風の力を使うことができる。
具体的には風の障壁を作って防御をしたり、味方のスピードを上げられるようになる。
どちらかと言えば支援向き。
(まどかに支給)

【双眼鏡@現実】
一般に流通している物と同じ仕様の双眼鏡。
遠くを見渡すことができる。
(ノーザに支給)

【スモークグレネード@現実】投げて使う発煙弾。
発破すれば大量の煙が発生し、視界を遮る。
3つで1セット支給。
(スバルに支給)

59名も無き変身者:2012/03/05(月) 16:39:33 ID:79jL0yyAO
収録させて頂きました。
遅れて申し訳ありません

60 ◆7pf62HiyTE:2012/04/15(日) 08:46:44 ID:ovZ.rArk0
拙作『街』での状態表など一部不備をwiki上で修正した事を報告いたします。

61 ◆OmtW54r7Tc:2012/04/18(水) 20:33:58 ID:rlxwSDZQ0
『野望のさらにその先へ』のピーチとの対話時の黒岩のセリフ、修正します

「私は黒岩省吾、東京都知事だ!」
       ↓
「申し遅れました。私は黒岩省吾、東京都知事です」


「ところで…君のほかにもう一人誰かいなかったか?」
        ↓
「ところで…君のほかにもう一人誰かいなかったかい?姿が見えないようですが…」


「なるほど…つらいことを聞いてしまったようだな」
         ↓
「なるほど…つらいことを聞いてしまったようですね」


「ああ、だが私は見ていることしかできなかった。都知事ともあろうものが情けないな」
           ↓
「ええ、しかし私は見ていることしかできませんでした。都知事ともあろうものが、我ながら情けない…!」


「ありがとう。だが改めて誓おう。東京都知事として、君たちと共に戦うことを」
           ↓
「ありがとう。だけど改めて誓うよ。東京都知事として、君たちと共に戦うことを」


「花咲つぼみという少女には出会ったな」
        ↓
「花咲つぼみという少女には出会いましたね」

62 ◆LuuKRM2PEg:2012/04/20(金) 20:57:51 ID:WsrgJI0g0
修正乙です
特に問題はないと思います。

そして遅れましたが、自分も拙作『変身超人大戦』の修正パートを投下します

63変身超人大戦(修正版) ◆LuuKRM2PEg:2012/04/20(金) 20:58:50 ID:WsrgJI0g0


「全てはノーザ様のために……ノーザ様の邪魔者は、みんないなくなってしまえばいいんだ」

 それはソレワターセによって己を奪われてから、スバルに初めて芽生えた意思だった。
 気付くことはないが、言葉に込められた殺意はスバルだけのものではない。その身に取り込んだシャンプーやゴオマが抱いていた殺意も、ソレワターセによって与えられていた。

「全ては……ノーザ様のためにっ!」

 身体に絡まっていた蔦が背中に戻り、そのおぞましい姿を周囲に晒しながら彼女は獲物達の方へ振り向く。その中の数人は姿が変わっていて、ホテルから逃げ出してからすぐに変身をしたのだろうが関係ない。
 どうせ、誰一人として残らず餌になるのだから。





(あれってまさか……!?)

 ホテルに現れた少女から飛び出した蔦には、明堂院いつきにとって見覚えがあった。
 前にブラックホールが復活させたトイマジンとサラマンダー男爵によって、イエロープリキュア達がおもちゃの国に飛ばされたことがあった。その時に、ゲームと称してデザトリアンを始めとしたたくさんの怪物と戦わされたが、みんなで力を合わせて脱出に成功している。
 あの少女の全身を包んだ蔦は、おもちゃの国のすごろくにいたソレワターセという怪物ととてもよく似ていた。
 ただならぬ気配を察したのか本郷猛と池波流ノ介は、既に変身を果たしている。
 猛の全身はバッタを模した黄緑色の仮面と装甲に覆われ、二つの瞳が赤い光を放つ。仮面ライダー一号の首に巻かれた赤いマフラーが、夜風に棚引いた。
 胴衣のような模様が刻まれている青い鎧に包まれた流ノ介はその腰から、一本の刀を取り出す。漢字の「水」が模様となったマスクから放たれるシンケンブルーの視線は、その手に握るシンケンマルに負けないくらいに鋭かった。
 いつきも懐からシャイニーパフュームを取り出し、窪みにプリキュアの種を入れる。いつも着慣れている私立明堂学園は一瞬で金色に光り輝くワンピースに変わり、ショートヘアーが腰にまで届くほどに長くなった。

「プリキュア! オープン・マイ・ハート!」

 その魔法の言葉に答えるように、シャイニーパフュームが眩い輝きを放つ。
 いつきはパフュームの中身を全身に吹きつけると、ワンピースが形を変えた。両腕と腹部を露出させた白い上着の胸元に金色のリボンが飾られていて、ヒマワリのようなミニスカートが風に揺れる。
 長くなった髪は金色に輝きながら花形の髪飾りによってツインテールとなって、両耳にイヤリングが付けられる。最後に彼女はシャイニーパフュームを腰に添えたことで、ココロパフュームキャリーに包まれた。
 身体の奥底から力が溢れ出てくるのを感じて、変身を終えた明堂院いつきは高らかに名乗る。

「陽の光浴びる一輪の花! キュアサンシャイン!」

 キュアサンシャインは名前の通りに周囲を照らす輝きを放ちながら、太陽のように堂々と立った。
 彼女はホテルから聞こえてくる足音を耳にして、半身の構えを取る。目前から発せられる威圧感が、とても禍々しく感じられたため。
 ホテルの扉を潜って現れたのは、チャイナ服を着た少女ではなかった。青いロングヘアーはショートカットになっていて、顔立ちはさっきより少しだけ若い。しかし両目から放たれる金色の輝きが、不気味な雰囲気を感じさせた。
 服装もいつの間にかチャイナ服から露出の多い服へと替わっている。胸元を覆う黒いへそ出しシャツにデニム生地の短パン。頭部に巻かれたハチマキと、長袖ジャケットにマントのように棚引く腰布は、どれも白い。
 両手には鋼の手甲が装備されていて、両足のローラーブーツに組み込まれたエンジンが唸りをあげていた。
 その肌は人間とは思えないほど青白くなっていて、全身の至る所から植物の蔦が生えている。変色した瞳がそれらと相まったことにより、怪物というイメージをその身で体現しているようだった。

64変身超人大戦(修正版) ◆LuuKRM2PEg:2012/04/20(金) 21:02:53 ID:WsrgJI0g0
続いて、ノーザとアクマロの会話シーンの一部及び振動破砕の説明文を修正


「ほう、六人が相手でも互角以上に渡り合いますか……何とも、有能ですなぁ」
「恐らく、さっき取り込んだコウモリ男の影響もあるわね。あれも栄養になっているでしょうから」
「だとすると、奴はいい獲物だったということになりますな」

 冷たい風の流れる木々の間から、ソレワターセの力によってノーザの操り人形となったスバル・ナカジマの戦いを眺める筋殻アクマロは、素直にそう口を零す。
 シャンプーに化けたスバルがホテルに突入して六人を騙そうとしたが、中にいた二人の小娘が原因で失敗に終わった。その原因である高町なのはという少女を前にして、スバルは異様なまでに混乱しているが、それでも戦いは有利に見える。

「それにしても、あのシンケンブルーがここにいるとは実に都合がいい。このまま、潰してほしいものですな」
「ええ……あなたの悲願を達成するためにもね」

 ふと、アクマロはノーザの方に振り向いた。
 スバルが本郷猛達を騙す計画が狂っただけでなく、キュアサンシャインという未知のプリキュアが現れた。それにも関らずしてノーザは涼しい笑みを浮かべている。
 無論、慌てふためかれるよりは信用できるがそれにしても落ち着きすぎていた。むしろ、都合のいいように計画が進んでいるようにも見える。







「IS・振動破砕」

 そんな呟きが耳に届いた瞬間、サイクロン・ドーパントはまるで全身が砕け散るような衝撃を感じる。予想を遥かに上回るくらいに凄まじい威力で、サイクロン・ドーパントが耐えられるダメージではなかった。
 気がつくと、視界に映っていたのはようやく登り始めたとても美しい朝日だったが、朦朧とした意識の中ではそれを意識することはできない。
 そこからすぐに身体が揺れるのを感じて、その度に痛みが全身を蹂躙していく。ようやく振動が収まって起き上がろうとするが、急に全身は鉛のように重くなっていた。
 一体何がどうなっていて、自分の身に何が起こったのか? その疑問が解決されることもなく、彼女は自分の右手が腹部に触れていて、そこに生温かい液体が付着してるのを感じる。
 この違和感の正体を突き止めるため、何とかして腕に力を込めて手を見つめた。スバルから受けたダメージによって体内に宿るガイアメモリは首輪から排出され、元の華奢な女子中学生の姿に戻っているが、それを意識していない。
 ただまどかが認識しているのは、自分の右手が真っ赤に染まっていることだけだった。

「えっ……何、これ……?」

 新鮮なトマト以上に鮮やかな赤さを持つ液体からは、鉄の匂いがする。
 刹那、喉の奥から何かが逆流してきて、それがまどかの口から勢いよく吐き出された。そして次の瞬間には、口内に血の味が広がっていく。
 この時まどかはようやく察した。たった今、スバルから受けた攻撃によって腹に大きな穴が空いて、そこから大量の血が流れ出ていることを。
 まどかは知らないが、その一撃は戦闘機人タイプゼロ・セカンドであるスバル・ナカジマが持つIS(インヒュレートスキル)と称される特殊技能の一種で、振動破砕の名を持つ接触兵器による物だった。それは四肢の末端部から強烈な振動を標的に与えて、対象物の内部を容赦なく破壊する防御不能の機能。主な目的は機械兵器を破壊することだが、生物に対しても莫大な殺傷能力を持っている。
 本来ならその振動にはスバル自身にも伝わり、危険な諸刃の剣とも呼べる機能だった。しかし今の彼女はソレワターセの力によって肉体が強化されており、反動は伝わらない。結果、振動破砕はまどかに致命傷を与えられる強力な武器となったのだ。
 それは首輪による制限によって威力が減退しているにも関わらず、サイクロン・ドーパントの変身を強制的に解除させて、まどかの臓器や骨を破壊するには充分すぎた。

65変身超人大戦(修正版) ◆LuuKRM2PEg:2012/04/20(金) 21:12:40 ID:WsrgJI0g0
続いて、スターライト・ブレイカー発射のシーンをスターライト・ブレイカーからディバイン・バスターに差し替えます。
(その際スターライト・ブレイカーに関する説明は全面カットで)

 アスティオンの懇願を前に、キュアサンシャインは何もできずに止まってしまう。そんな迷いの後、ガシャリと何かが駆動するような音が数回だけ響いた。

「えっ……?」

 それを聞いたキュアサンシャインは思わず振り向くと、スバルが先程のように腰を深く落としているのを見た。彼女の手からは漆黒の闇が生じていき、それに伴って周囲の粉塵を舞い上がらせているのが見えた。
 やがて暗闇から稲妻が迸っていき、キュアサンシャインの全身が警鐘を鳴らす。そして、これからスバルはとてつもなく恐ろしい一撃を放とうとしていると、本能で確信した。

「アインハルトにティオ、私に掴まって!」

 それからキュアサンシャインが取る行動は早かった。彼女は急いでアインハルトとアスティオン、そして二つのデイバッグを手にとって少しでも遠くに離れようと動く。
 その際に、一号とシンケンブルーの方に一瞬だけ振り向いて叫んだ。

「一号にシンケンブルー! アインハルト達は私が守りますから、ここから離れてください!」

 言い残せたのはそんなぞんざいな言葉だけで、返事を聞く暇もない。二人との間に開いた距離は、残された時間で行くには遠かった。無責任だと知っているが、そうしなければアインハルト達を助けられない。
 ノーザとスバルの狙いはここにいる特定の誰かではなく、このエリア全て。例え防御をしたとしても、これから来る技はそれを軽く吹き飛ばす位にまで凄まじいと、キュアサンシャインは無意識の内に確信していた。
 せめて今は、アインハルトを助ける可能性を少しでも上げなければならない。それだけがキュアサンシャインの思考を満たしていた。





 そうやって捨て台詞だけを残して、アクマロはここから遠ざかっていった。流ノ介はアクマロを追おうとするも、痛みが身体の動きを阻害する。

「ディバイン――!」
「流ノ介、俺にしっかり掴まっていろ!」

 スバルの叫びを掻き消すかのように力強い声を発しながら、一号は流ノ介を背負って走り出した。その背中を見て、流ノ介は今の自分がただの足手纏いでしかないことを察する。
 恐らく一号はこんな死にかけになった自分を助けるに違いない。その気持ちは実に嬉しいが、その為に彼が犠牲になるのは耐えられなかった。背負ったままでは、スバルの攻撃を避けられるかわからない。それで二人とも死ぬことになっては何の意味もなかった。
 そして侍になったからには誰かに守られるのではなく、自らの命を犠牲にしてでも誰かを守らなければならない。だからこそ、流ノ介はサイクロンメモリのスイッチに指を触れた。

「すまない……本郷!」
『Cyclone』

 野太い電子音声を耳にしながら、まどかのようにガイアメモリを額に差し込む。あの加頭順が持っていたから信用できない代物だが、今は躊躇っている場合ではない。
 首輪から風の記憶が流れるのを感じながら、池波流ノ介はサイクロン・ドーパントに変身していく。彼は全身から突風を発して、振り向いてきた一号を吹き飛ばした。

「流ノ介、何を――!」
「――バスタアアアアァァァァァァァァァァ!」

 風に流されて遠ざかっていく一号の疑問はスバルの叫びに遮られ、間髪入れずに地面が砕けるような轟音が背後より響く。そのままサイクロン・ドーパントの肉体に灼熱が走り、視界は漆黒に包まれた。
 サイクロン・ドーパントは……否、池波流ノ介は自分の命が燃え尽きていくのを感じるが、不思議と痛みや苦しみはなかった。彼の胸中にあるのは忠義を誓った志葉家の当主と自分と同じ家臣達に、ここで出会った仲間達の顔。

66変身超人大戦(修正版) ◆LuuKRM2PEg:2012/04/20(金) 21:14:31 ID:WsrgJI0g0
そしてスーパー1との戦闘シーンの一部修正で


「ガアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァ!」

 背後から突然、獰猛な恐竜のように凄まじい叫び声が鼓膜を刺激する。
 スーパー1は思わず背後を振り向くと、先程冷凍ガスで動きを拘束させたはずのスバルの肉体からどす黒いオーラが発せられて、殺意の波動が更に強くなっていく。
 そして両足と触手を凍らせていたはずのガスは溶けてなくなって、咆吼するスバルは突貫してきた。

「何ッ!?」

 予想外の出来事にスーパー1は思わず両腕を交差させてスバルの拳を受け止めるが、その衝撃によって後退ってしまう。その僅かな隙を付いて複数の触手が飛び出してきて、そのままスーパー1に襲いかかった。
 しかしスーパー1は決して焦らず、両腕をスーパーハンドに戻しながら両手で構えを取る。まるで、全てを優しく包み込む梅の花のように。

「赤心少林拳……梅花の型!」

 かつてドグマの怪人ギョトスマに敗れた際に玄海老師から修行を受け、会得した拳法でスーパー1は触手を弾く。荒々しい闘いの中にあってなおも花の可憐さを愛おしむ心を持って、全ての攻撃を確実に防いでいた。
 しかしそれでも両腕に痛みが走っていて、このままではいつ打ち破られてもおかしくない。触手の一本一本の重さが、あまりにも凄まじかった。

「うぐっ!」

 触手の群れを弾くのに精一杯だったスーパー1は鋼の拳を避けることができずに、呻き声と共によろめいてしまった。そして梅花の型も崩れたところに触手が銀色の肉体を叩いてくる。
 立て続けに痛みが走るものの、スーパー1は必死に耐えた。ここで少しでも崩れたりしたら、その瞬間にノーザ達の思い通りになってしまう。
 スーパー1は攻撃の嵐を避けるために、一旦距離を取った。

67変身超人大戦(修正版) ◆LuuKRM2PEg:2012/04/20(金) 21:16:14 ID:WsrgJI0g0
最後に状態票です
もしも問題点などがまだありましたら、お手数ですが指摘をお願いします。


【一日目・早朝】
【B−9 焦土】

【備考】

※戦いの影響によって【B−9】エリアの大半が焦土となりました。
※以下の支給品が【B−9】エリアに放置されています。

支給品一式×4、流ノ介のランダム支給品1〜3、なのはのランダム支給品1〜3、本郷のランダム支給品1〜3、まどかのランダム支給品0〜2
ヴィヴィオのぬいぐるみ@魔法少女リリカルなのは 、志葉家の書状@侍戦隊シンケンジャー、サイクロン号@仮面ライダーSPIRITS、ナナシ連中の刀@侍戦隊シンケンジャー

※池波流ノ介の肉体と首輪、ショドウフォン@侍戦隊シンケンジャー、及びT−2ガイアメモリ(サイクロン)@仮面ライダーWは跡形もなく消滅しました。


【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのは】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(中)、ソレワターセによる精神支配、シャンプー、ズ・ゴオマ・グ、鹿目まどか、高町なのは、本郷猛の肉体を吸収、ダグバのベルトの欠片とレイジングハートエクセリオンを吸収
[装備]:マッハキャリバー、リボルバーナックル(右手用)&(左手用)@魔法少女リリカルなのは、カートリッジの弾薬セット(残り10発)@魔法少女リリカルなのは
[道具]:支給品一式、スモークグレネード@現実×2
[思考]
基本:ノーザ様のしもべとして働き、参加者を皆殺しにする
0:………………………
1:ノーザ様の指示待ち
2:あの子(アインハルト)はどうして私の名前を知ってるの・・・・・・?
[備考]
※参戦時期はstrikers18話から20話の作戦開始前までのどこかです。
※シャンプーの姿を前回の任務の自分(strikers17話)と重ねています。
※『高町ヴィヴィオ』は一応ヴィヴィオ本人だと認識しています。
 また、彼女がいることからこの殺し合いにジェイル・スカリエッティが関わっているのではないかと考えています。
※ソレワターセに憑依された事で大幅にパワーアップしています。
※シャンプーの遺体を吸収し、彼女に関する情報を入手しました(首輪も含まれています)。
※シャンプー、ズ・ゴオマ・グ、鹿目まどか、高町なのは、本郷猛の肉体を吸収したことで、彼らの姿にコピーすることができます。
※ズ・ゴオマ・グの肉体とアマダムを吸収したので、今後何らかの異変を起こすかもしれません。(実際にどうなるかは後続の書き手さんにお任せします)
※ディバインバスターの使用によってカートリッジが消費されました。

68名も無き変身者:2012/04/21(土) 00:17:05 ID:.uDdYPOUO
修正乙です!
ただ、スターライトブレイカーをディバインバスターにランクダウンしたのならその後の破壊描写にも修正が必要かなと思います。
スターライトから威力も破壊力も格段に低下しているはずですし、1エリア壊滅は流石に無理があるかと・・・

69名も無き変身者:2012/04/21(土) 01:53:09 ID:LmTYrNV20
確か1エリアが数キロ四方だった筈(というより、そういう設定を確定させたのは氏だった筈)なので、いくら何でも一直線のディバインバスターじゃ無理だと思う。
それにいくらソレワターセで強化されているからってスバル側に全く反動がないのもどうにもおかしいような。
後、威力がここまで落ちたのならサイクロンドーパントに変身している流ノ介を跡形も無く消滅させるのも難しいのでは?
棒立ちだったならともかく、全力で強風発生させたからすぐさま消滅するわけでもないだろうし。

70名も無き変身者:2012/04/21(土) 02:53:34 ID:.uDdYPOUO
もっと言うなら「高町なのは」のスターライトブレイカーの時点でこんな広域破壊魔法じゃないんですよね・・・恐らく闇の書の意志(リインフォース)のものと勘違いしていたのでは?

71 ◆LuuKRM2PEg:2012/04/21(土) 11:27:52 ID:WsrgJI0g0
そうですか……再度の指摘を感謝致します。
それでは、もう一度修正した部分のみの投下をします。



(殿……!)

 だから、最後の最後まで志葉丈瑠の無事を祈ることを池波流ノ介は一秒たりとも止めなかった。
 例えその肉体が闇に飲み尽くされ、命が消え果てたとしても。





「流ノ介……ッ!」

 自分を救うために突風を起こしたサイクロン・ドーパントの元に振り向くが、そこに倒れているのは黒く焦げた焼死体のみ。そして、その傍らには緑色のガイアメモリが放置されていて、ショドウフォンはもう残っていない。
 それが池波流ノ介だった肉塊だと察して仮面ライダー一号が愕然とした直後、スバルの身体から飛び出した触手がその肉体を飲み込む。一号はすぐに食い止めようとしたが、ガイアメモリだけを残して跡形もなく消えてしまった。
 鹿目まどかや高町なのはだけでなく、池波流ノ介までも見殺しにしてしまう。助けるどころか逆に助けられてしまうなんて、あってはならなかった。

「くそっ……!」

 それを目の当たりにした一号の胸中に、押し潰されそうな程の後悔が満ちてくる。
 こうなることがわかっていれば、最初から無理矢理にでもまどか達を逃がすべきだった。スバルを元に戻せるという希望に釣られて、三人に無理を強いたのがそもそもの間違いだと気付かなければならなかったが、もう遅い。
 全ては絶望を生み出すために張り巡らされたノーザの罠。無様にその餌食となって始めから負けが決まっていた賭けに乗ってしまい、こんな悲劇を生み出してしまった。
 それでも一号に絶望することは許されない。せめて、まだ生きているキュアサンシャインとアインハルト・ストラトスの二人を守り抜くまでは、死ぬわけにはいかなかった。

「ハハハハハハハハハハハハハッ! やっぱりあなたは凄いわ! それでこそ、私のしもべにした甲斐があったものね!」

 しかしこの世の終わりとも呼ぶに相応しい景色を前にして、あまりにも耳障りな哄笑が確かに聞こえてくる。ノーザの愉悦はいよいよ抑えられなくなったらしい。

「全ては……ノーザ様のために」
「そうよ! あなたの全ては私のためだけにあるのよ! 私が望む暗黒の世界を作る……それがスバルの存在理由だわ!」

 あれだけの技を放った反動で息を切らしながらも淡々に伝えるスバルと、全身を仰け反らせて両腕を広げながら笑い続けるノーザの姿はあまりにも対照的だった。
 そして一号はそんなノーザを前に、あまりにも狂っていると思うしかなかった。






「行かないと……!」

 ディバイン・バスターの余波によって地面に叩きつけられ、その痛みとこれまでのダメージで全身に痛みが走るが、キュアサンシャインはそれに耐えて立ち上がった。
 池波流ノ介が犠牲になって悲しいはずなのに、仮面ライダー一号はそれを表に出さずにノーザやスバルと戦っている。だから自分だけがここで倒れたりすることは絶対に許されなかった。
 ふと、キュアサンシャインは気を失って倒れているアインハルトとアスティオンに目を向ける。アスティオンの意思を蔑ろにするのは嫌だったが、このままでは一号が危なかった。
 心の中で彼女達にごめんと謝ったキュアサンシャインは前を向こうとするが、その途端に足音が聞こえてくる。

「おや、何処に行かれようと言うのですかな? キュアサンシャイン」

 そして声が聞こえてきたので、キュアサンシャインはそちらに振り向く。
 すると彼女は、ここから数メートルほど離れた場所より筋殻アクマロがゆっくりと近づいてくるのを見た。




72 ◆LuuKRM2PEg:2012/04/21(土) 11:31:49 ID:WsrgJI0g0
続いてです。
まだ矛盾点などがありましたら、申し訳ありませんが指摘をお願いします。





 何度殴られても立ち上がり、何度蹴られても起きあがる。その度に反撃しようとするが、どれもまともに通らなかった。
 スバルは現在、ディバイン・バスターの反動でこちらを様子見しているだけで戦いには加わっていないが、アインハルトの奥義を受け止めるほどの力を持つノーザがいる。体力を消耗した一号には辛い相手だった。
 一号の拳が避けられた直度、ノーザの拳が胸部に叩き付けられる。

「があっ!」

 仮面の下から漏れる悲鳴は打撃音と混ざり、スーツに守られた肉体から大量の血が流れていく。
 いくらショッカーの技術を結集して生まれた改造人間とはいえ、この戦いで負ったダメージがあまりにも深すぎた。加えて、ノーザもスバルもアクマロも皆、並のBADANの怪人を凌駕する実力者だから、自然に追い込まれていくのは当然の結果。しかもスバルは流ノ介を取り込んだことが何か関係してるのか、次第に息が整っていくように見える。
 それでも一号の闘志は微塵も揺らぐことはなく、痛む身体に鞭を打って立ち上がる。しかし明らかに蹌踉めいていて、いつ崩れてもおかしくなかった。

「一号……大丈夫ですか?」

 そしてそんな彼の肩を支えたのは、キュアサンシャインだった。
 彼女も一号と同じでボロボロになっていて、表情からは酷く疲れ果てた雰囲気が感じられる。多分、変身を維持するのがやっとでとても戦えない身体かもしれないがそれにも関わらずして、僅かに涙を滲ませる瞳からは未だに太陽のような輝きを放っていた。


【一日目・早朝】
【B−9】

【備考】
※以下の支給品が【B−9】エリアに放置されています。

支給品一式×4、流ノ介のランダム支給品1〜3、なのはのランダム支給品1〜3、本郷のランダム支給品1〜3、まどかのランダム支給品0〜2
ヴィヴィオのぬいぐるみ@魔法少女リリカルなのは 、志葉家の書状@侍戦隊シンケンジャー、サイクロン号@仮面ライダーSPIRITS、ナナシ連中の刀@侍戦隊シンケンジャー、T−2ガイアメモリ(サイクロン)@仮面ライダーW

※ショドウフォン@侍戦隊シンケンジャーは跡形もなく消滅しました。


【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのは】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(中)、ソレワターセによる精神支配、シャンプー、ズ・ゴオマ・グ、鹿目まどか、高町なのは、池波流ノ介、本郷猛の肉体を吸収、ダグバのベルトの欠片とレイジングハートエクセリオンを吸収
[装備]:マッハキャリバー、リボルバーナックル(右手用)&(左手用)@魔法少女リリカルなのは、カートリッジの弾薬セット(残り10発)@魔法少女リリカルなのは
[道具]:支給品一式、スモークグレネード@現実×2
[思考]
基本:ノーザ様のしもべとして働き、参加者を皆殺しにする
0:………………………
1:ノーザ様の指示待ち
2:あの子(アインハルト)はどうして私の名前を知ってるの・・・・・・?
[備考]
※参戦時期はstrikers18話から20話の作戦開始前までのどこかです。
※シャンプーの姿を前回の任務の自分(strikers17話)と重ねています。
※『高町ヴィヴィオ』は一応ヴィヴィオ本人だと認識しています。
 また、彼女がいることからこの殺し合いにジェイル・スカリエッティが関わっているのではないかと考えています。
※ソレワターセに憑依された事で大幅にパワーアップしています。
※シャンプーの遺体を吸収し、彼女に関する情報を入手しました(首輪も含まれています)。
※シャンプー、ズ・ゴオマ・グ、鹿目まどか、高町なのは、池波流ノ介、本郷猛の肉体を吸収したことで、彼らの姿にコピーすることができます。
※ズ・ゴオマ・グの肉体とアマダムを吸収したので、今後何らかの異変を起こすかもしれません。(実際にどうなるかは後続の書き手さんにお任せします)
※ディバインバスターの使用によってカートリッジが消費されました。

73名も無き変身者:2012/04/21(土) 12:17:39 ID:LmTYrNV20
スバルへの反動云々は振動破砕のパートなのですが……

74 ◆LuuKRM2PEg:2012/04/21(土) 18:52:47 ID:WsrgJI0g0
……重ね重ね申し訳ありません。
では、振動破砕部分の修正を。


「IS・振動破砕」

 そんな呟きが耳に届いた瞬間、サイクロン・ドーパントはまるで全身が砕け散るような衝撃を感じる。予想を遥かに上回るくらいに凄まじい威力で、サイクロン・ドーパントが耐えられるダメージではなかった。
 気がつくと、視界に映っていたのはようやく登り始めたとても美しい朝日だったが、朦朧とした意識の中ではそれを意識することはできない。
 そこからすぐに身体が揺れるのを感じて、その度に痛みが全身を蹂躙していく。ようやく振動が収まって起き上がろうとするが、急に全身は鉛のように重くなっていた。
 一体何がどうなっていて、自分の身に何が起こったのか? その疑問が解決されることもなく、彼女は自分の右手が腹部に触れていて、そこに生温かい液体が付着してるのを感じる。
 この違和感の正体を突き止めるため、何とかして腕に力を込めて手を見つめた。スバルから受けたダメージによって体内に宿るガイアメモリは体内から排出され、元の華奢な女子中学生の姿に戻っているが、それを意識していない。
 ただまどかが認識しているのは、自分の右手が真っ赤に染まっていることだけだった。

「えっ……何、これ……?」

 新鮮なトマト以上に鮮やかな赤さを持つ液体からは、鉄の匂いがする。
 刹那、喉の奥から何かが逆流してきて、それがまどかの口から勢いよく吐き出された。そして次の瞬間には、口内に血の味が広がっていく。
 この時まどかはようやく察した。たった今、スバルから受けた攻撃によって腹に大きな穴が空いて、そこから大量の血が流れ出ていることを。
 まどかは知らないが、その一撃は戦闘機人タイプゼロ・セカンドであるスバル・ナカジマが持つIS(インヒュレートスキル)と称される特殊技能の一種で、振動破砕の名を持つ接触兵器による物だった。それは四肢の末端部から強烈な振動を標的に与えて、対象物の内部を容赦なく破壊する防御不能の機能。主な目的は機械兵器を破壊することだが、生物に対しても莫大な殺傷能力を持っている。
 本来ならその振動にはスバル自身にも伝わり、危険な諸刃の剣とも呼べる機能だった。現に彼女の左腕部分の内部ケーブルが一部破損してしまい、リボルバーナックルやマッハキャリバーにも亀裂が走っている。
 だがその見返りは大きい。制限によって威力が減退しているにも関わらず、サイクロン・ドーパントの変身を強制的に解除させて、まどかの臓器や骨を破壊するには充分すぎた。



【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのは】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(中)、左腕が一部破損、ソレワターセによる精神支配、シャンプー、ズ・ゴオマ・グ、鹿目まどか、高町なのは、池波流ノ介、本郷猛の肉体を吸収、ダグバのベルトの欠片とレイジングハートエクセリオンを吸収
[装備]:マッハキャリバー、リボルバーナックル(右手用)&(左手用)@魔法少女リリカルなのは、カートリッジの弾薬セット(残り10発)@魔法少女リリカルなのは
[道具]:支給品一式、スモークグレネード@現実×2
[思考]
基本:ノーザ様のしもべとして働き、参加者を皆殺しにする
0:………………………
1:ノーザ様の指示待ち
2:あの子(アインハルト)はどうして私の名前を知ってるの・・・・・・?
[備考]
※参戦時期はstrikers18話から20話の作戦開始前までのどこかです。
※シャンプーの姿を前回の任務の自分(strikers17話)と重ねています。
※『高町ヴィヴィオ』は一応ヴィヴィオ本人だと認識しています。
 また、彼女がいることからこの殺し合いにジェイル・スカリエッティが関わっているのではないかと考えています。
※ソレワターセに憑依された事で大幅にパワーアップしています。
※シャンプーの遺体を吸収し、彼女に関する情報を入手しました(首輪も含まれています)。
※シャンプー、ズ・ゴオマ・グ、鹿目まどか、高町なのは、池波流ノ介、本郷猛の肉体を吸収したことで、彼らの姿にコピーすることができます。
※ズ・ゴオマ・グの肉体とアマダムを吸収したので、今後何らかの異変を起こすかもしれません。(実際にどうなるかは後続の書き手さんにお任せします)
※ディバインバスターの使用によってカートリッジが消費されました。
※振動破砕の影響で左腕が一部破損し、マッハキャリバーとリボルバーナックル(左手用)に亀裂が走っています。(どの程度の規模かは後続の書き手さんにお任せします)

75名も無き変身者:2012/04/22(日) 17:56:41 ID:ADAxj.cU0
それで問題無いと思います。

76 ◆OmtW54r7Tc:2012/05/05(土) 12:12:27 ID:rlxwSDZQ0
変身超人大戦についてですが、ホテルがあるのはB−9でなくB−7です
あと、沖たちの現在地の表記がC−8でなくC−3になっていました

それと、>>61の修正についても誰かお願いします

77 ◆OmtW54r7Tc:2012/05/05(土) 12:34:57 ID:rlxwSDZQ0
どうにか自分で修正することが出来ました
>>76で述べた点について修正したことをお伝えします

78答えが、まったくわからない(修正版) ◆LuuKRM2PEg:2012/05/26(土) 18:51:43 ID:WsrgJI0g0
拙作「答えが、まったくわからない」の最後のシーン及び状態票の修正版を投下します。
(なお、タカヤ達の方は杏子達とは合流してません)




 ようやく昇り始めた朝日によって名も知らぬ街に光が照らされ、それに伴って電灯の輝きが消えていく。朝になれば見滝原のように人通りが盛んになるのかもしれないが、それにしては生活の気配が一切感じられず、ゴーストタウンのようだった。
 しかし佐倉杏子にとってそんな異質さなど、まるでどうでもよかった。少しでも遠くに行きたいと思いながら無茶苦茶に走っていたので、ここがどのエリアなのか全くわからない。今更地図を確認した所で、具体的な場所がわかるとも思えなかった。
 彼女は地べたに座って、体を休めていた。いくら魔法少女として凄まじい体力を誇っていたとしても、戦いの直後にデイバッグ二つと男一人を抱えながら全力疾走したのでは、流石に疲れてしまう。
 とにかく今は体を休めて今後の事を考えたかったが……どうするべきなのかまるで考えが纏まらない。

「ちくしょう……何で、何であいつらは……!」

 頭の中に溜まるモヤモヤを晴らすために拳を地面に叩き付けるが、無意味な痛みを感じるだけで何も解決しなかった。
 あれから大分時間が経ったのに、フェイト・テスタロッサもユーノ・スクライアも一向に現れる気配がない。それが意味するのは、あの怪人に二人が殺されてしまった。
 合流場所を決めてないから二人が姿を見せていないと一瞬だけ考えたが、それはあまりにも楽観的な解釈だった。

「何でだよ、何でなんだよ……何で、何で、何で!?」

 杏子は感情任せに叫び続けるが、空しく木霊するだけだった。

「何で……何であんたらは勝手に死ぬんだよ!? そんなの、あたしが許さないって言ったよな!? 何でなんだよ!? 何で、あんたらが死んで……あたしなんかが生きてるんだよ!? 教えろよ!」

 その問いに対する答えを何よりも見つけたかったが、当然の事ながら疑問は晴れずに葛藤が続く。
 好き勝手にやって優勝を目指し、その為ならば何でも利用するつもりだった。だが実際はフェイトとユーノを見捨てた事でこんなにも苦しくなり、今が絶好のチャンスであるにも関わらずして左翔太郎の命を奪えない。
 フェイトとユーノが殺されたのは、勝てるわけがないのに特攻した彼らの責任だ。そんな馬鹿な奴らの事はとっとと忘れて先に進まなければならないのに、忘れることができない。
 それに、命を捨てて自分達を逃がしてくれた彼らを侮辱する事が杏子にはできなかった。

(みんな、誰かの為に戦ったんだよな……フェイトもユーノもこの兄ちゃんも。でも、それに引き替えあたしは何だ? あたしは、あたしだけの為にしか戦ってないよな……?)

 詳しいことは知らないが、フェイトは母親の為に殺し合いに乗った。翔太郎とユーノは、この殺し合いに巻き込まれたみんなを救う為に戦っている。手段こそは正反対だが、三人とも誰かの為に一生懸命戦っていたのは同じだった。
 でも自分は彼らと違って、自分の為だけにしかこの力を使っていない。昔は彼らのように意気込んでいたが、今はこの有様だ。

(もしかしたら、あたしもあの胡散臭いおっさんと同じ……いやそれ以下なのかも。ハハッ、笑えねえな……まあこれも自業自得なのかな)

 どうして今更こんな事を考えてしまうようになったのかもわからないし、本当は何がしたいのかもまるでわからない。
 全身から全ての力を失ってしまったかのように、脱力感に支配された杏子はただぼんやりと考えるしかできなかった。
 ただ今は休むしかない。左翔太郎も目覚めないし誰の気配も感じられない以上、佐倉杏子にはこうしているしかなかった。

79答えが、まったくわからない(修正版) ◆LuuKRM2PEg:2012/05/26(土) 18:52:37 ID:WsrgJI0g0
【1日目/早朝】
【H−8 市街地】



【左翔太郎@仮面ライダーW】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)、気絶中
[装備]:ダブルドライバー@仮面ライダーW (腰に装着中)
[道具]:支給品一式、ガイアメモリ(ジョーカー、メタル、トリガー)、ランダム支給品1〜3個(本人確認済み)
[思考]
基本:殺し合いを止め、フィリップを救出する
0:…………(気絶中)。
1:この怪人(ガドル)を倒す。
2:まずはこの三人を守りながら、市街地に向かう
3:仲間を集める
4:出来るなら杏子を救いたい
[備考]
※参戦時期はTV本編終了後です
※他世界の情報についてある程度知りました。
(何をどの程度知ったかは後続の書き手さんに任せます)
※魔法少女についての情報を知りました。


【佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(中)、ソウルジェムの濁り(中)、脱力感、自分自身に対する強い疑問、ユーノとフェイトを見捨てた事に対して複雑な感情
[装備]:ソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ
[道具]:基本支給品一式
[思考]
基本:????????????
0:????????????
1:自分の感情と行動が理解できない。
2:翔太郎に対して……?
[備考]
※魔法少女まどか☆マギカ6話終了後からの参戦です。
※首輪は首にではなくソウルジェムに巻かれています。
※魔法少女の身体の特性により、少なくともこの負傷で死に至ることはありません。
※ユーノ・スクライアのフィジカルヒールによって身体に開いた穴が塞がれました。(ただし、それによってソウルジェムの濁りは治っていません)
※左翔太郎、フェイト・テスタロッサ、ユーノ・スクライアの姿を、かつての自分自身と被らせています。



【1日目/早朝】
【G−8 市街地】

【相羽タカヤ@宇宙の騎士テッカマンブレード】
[状態]:健康
[装備]:テッククリスタル@宇宙の騎士テッカマンブレード
[道具]:支給品一式、メモリーキューブ@仮面ライダーSPIRITS、ランダム支給品0〜2
[思考]
基本:主催者を倒す。
1:他の参加者を捜す。
2:俺はいつまでコイツ(京水)と付き合わなければならないんだ……
3:シンヤ、モロトフを倒す。ミユキと再会した時は今度こそ守る。
4:克己、ノーザ、冴子、霧彦を警戒。
5:記憶……か。
[備考]
※参戦時期は第42話バルザックとの会話直後、その為ブラスター化が可能です。
※ブラスター化完了後なので肉体崩壊する事はありませんが、ブラスター化する度に記憶障害は進行していきます。なお、現状はまだそのことを明確に自覚したわけではありません。
※参加者同士が時間軸、または世界の違う人間であると考えています。


【泉京水@仮面ライダーW】
[状態]:健康
[装備]:T-2ルナメモリ@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式、細胞維持酵素×4@仮面ライダーW、克己のハーモニカ@仮面ライダーW、ランダム支給品0〜1
[思考]
基本:剛三ちゃんの仇を取るために財団Xの連中を潰す。
1:タカヤちゃんが気になる! 後、シンヤちゃんやモロトフちゃんとも会ってみたい! 東せつなには負けない!
2:克己ちゃんと合流したい。克己ちゃんのスタンスがどうあれ彼の為に全てを捧げる!
[備考]
※参戦時期は仮面ライダーオーズに倒された直後です。


【東せつな@フレッシュプリキュア!】
[状態]:健康、困惑
[装備]:リンクルン@フレッシュプリキュア!
[道具]:支給品一式、伝説の道着@らんま1/2、ランダム支給品0〜2
基本:殺し合いには乗らない。
1:友達みんなを捜したい。
2:ノーザを警戒。
3:可能ならシンヤを助けたいが……
4:克己やシンヤ、モロトフと分かりあいたい。
5:結城丈二や涼邑零とまた会えたらもう一度話をする。
[備考]
※参戦時期は第43話終了後以降です。
※大道克己達NEVERが悪で、テッカマンエビルとテッカマンランスを倒すという結城丈二の言葉は正しいと理解していますが、完全に納得はしていません。
※この殺し合いの黒幕はラビリンスで、シフォンを再びインフィニティにする事が目的ではないかと考えています。

80 ◆LuuKRM2PEg:2012/05/26(土) 18:53:07 ID:WsrgJI0g0
以上です。
疑問点などがありましたら、お手数ですが指摘をお願いします。

81名も無き変身者:2012/05/26(土) 23:33:05 ID:H2KIt13E0
確認しました。この位置ならば厳しいけれど可能なレベルだと思います。
ただ、問題という程でもないのですが、この展開だと完全にタカヤ達3人のパートが本筋の杏子パートと剥離してしまっていると感じます、疑問点をあげるならばそこぐらいです。

82 ◆LuuKRM2PEg:2012/05/27(日) 09:13:36 ID:WsrgJI0g0
わかりました。
それでしたら今回のタカヤ達のパートは一旦破棄として、収録の際は杏子達のパートだけにさせて頂きます。
(今回破棄にしたパートはまた機会があれば、再予約する形で)

83 ◆gry038wOvE:2012/06/01(金) 23:33:48 ID:erauoaKM0
ASTRYの追加修正部分を投下します。
なお問題となる場合は、時間そのものを黎明に変更します。

まず、ほむらと暁の位置をF-4に変更、その後、丈瑠とパンストの状態表を削除して、代わりに以下の文を挿入する形で対応します。

84ASTRY(修正部) ◆gry038wOvE:2012/06/01(金) 23:34:20 ID:erauoaKM0
★ ★ ★ ★ ★



 丈瑠とパンスト太郎はそれから、三途の池から離れていった。当然といえば当然である。わざわざ火の立つところで行動する意味はない。
 参加者もそれを幾ばく気にするだろうが、そこに向かうとは限らない。わざわざこの状況下で、火災現場に向かう人間は稀有だと思える。


 いや、厳密には、向うであろう人間を丈瑠は知っている。
 ──無論、池波流之介や梅盛源太のことである。
 ここで最も会いたくない人物の上位二名だ。彼らは人を救うために己を犠牲にすることを辞さない。
 かつて、丈瑠も彼らの仲間だったからこそ、それはよくわかっていた。
 だから、丈瑠はその場に留まることを本能的に避けたのだ。


 パンスト太郎は、丈瑠のように深い考えがあったのではない。
 ただ、その場を避けたのは「熱いから」だ。メラメラと燃える森の中に、そう何時間も留まってなどいられない。
 これもある種本能的な反応だった。


 気づけば、もう炎が霞んで見えるほどに遠くまで来ている。
 流石に気になり、何度も後ろを振り返ったが、消えたのか見えなくなっただけなのか、炎はない。
 汗もあまり体に残ってはいなかった。


(……ところで、こいつ、何も話さない気か?)


 ……パンスト太郎は、それまでの時間、ほぼ口を利こうとしない丈瑠に気まずい空気を感じていた。
 ほとんど寡黙な彼であっても、丈瑠の持つオーラには何となく共感しがたかったのだ。


(俺以上に重い何かを背負っている……そういう目だ。まあいい、そういう男ほど利用しやすい)


 思いつつも、この我慢大会のような空気には彼も息が詰まりそうになっていた。
 寡黙同士、寡黙と寡黙──その雰囲気を気まずいと感じているのは、パンスト太郎だけのようだ。
 丈瑠は一切意に介さず、一言も会話を交わさないのは普通と思っているようである。


(とにかく何か話でもするか……いや、しかし何かを言えば名前の話が出てくるかもしれん)


 趣味の話とか、好きな食べ物の話とか、将来の夢の話とかをしようかとも思ったが、迂闊なことはできない。名前の話題を出されたらパンスト太郎は同盟を切るしかなくなってしまう。
 そもそも、ここまで名前を知らずにパンスト太郎と付き合ってることが異常なのだ。
 そう思うと、丈瑠が少し良いヤツであるようにも見えた。名前を聞いてこない人間ほど、良いヤツはこの世にいない。


 丈瑠の寡黙さは、パンスト太郎に少しの迷いを生んだが、彼はそれをすぐに断ち切った。
 名前を変えてしまえば、名前を聞いてこない人間を友好的に思う必要もない。
 そう、


 ──かっこいい太郎


 その名前に変われば、名前を言って馬鹿にされることもなくなるのだ。
 彼はそう信じていた。


【G-5/森】

【志葉丈瑠@侍戦隊シンケンジャー】
[状態]:健康
[装備]:裏正@侍戦隊シンケンジャー、T2メタルメモリ@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式
[思考]
基本:殺し合いに乗り、戦う
0:人斬りに対する躊躇や抵抗が拭えない
1:パンスト太郎と協力する
2:十臓は最優先に探し出し、決着を着けたい。
3:流ノ介や源太が相手でも容赦はしない
[備考]
※参戦時期は、第四十六、四十七幕での十臓との戦闘中です
※流ノ介や源太と戦うことに、迷いがあります

【パンスト太郎@らんま1/2】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:水とお湯の入ったポット1つずつ(変身一回分消費)、支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考]
基本:殺し合いに勝利し、主催も殺す。奪った技術を用いて自分の名前を付け替える
1:適当に参加者を殺して回る
2:丈瑠と協力する
3:丈瑠はもしかしたら少し良いヤツかもしれない
[備考]
※参戦時期は不明です。
※乱馬が近くにいることを知りましたが、特別興味はないようです。

85 ◆gry038wOvE:2012/06/01(金) 23:35:32 ID:erauoaKM0
以上、修正投下を終了します。
この度は本当に申し訳ありません。

もし許していただけるのなら、後ほど予約メンツのフォローの内容を執筆させていただけると幸いです。

86 ◆gry038wOvE:2012/06/01(金) 23:39:23 ID:erauoaKM0
>>83
F−6です。

87名も無き変身者:2012/06/02(土) 09:10:23 ID:WsrgJI0g0
修正投下乙です。
これなら問題ないと思います。

88Kは吠える/永遠という名の悪魔(修正版) ◆LuuKRM2PEg:2012/06/16(土) 09:47:29 ID:WsrgJI0g0
本スレで指摘された部分の修正版を投下します。
ご意見などがありましたら、再度指摘をお願いします。


 何処からともなく、そんな無機質な音声が鳴り響いてくる。
 その声はあかねには覚えがあった。何もすることが無くただぼんやりと支給されたT−2バードメモリのボタンを押してみたら、聞こえてきた声ととてもよく似ている。そんな一瞬の思考の後、自然の物とは思えない蒼い輝きによって闇が照らされた。
 一体何事かと思ってあかねが振り向くと、そこには人ではない異形が立っていた。額からは三本の角が真っ直ぐ上に伸びていて、∞の形をした複眼が黄色に輝いている。純白に彩られた装甲と周囲の闇に同調しそうな黒いローブが、あまりにも対照的だった。
 あまりにも予想外すぎる訪問者を前にあかねは呆気に取られながらも、無意識の内に訪ねる。

「えっ、あなた……誰?」
「仮面ライダー……エターナルだ」

 淡々と名乗った異形、仮面ライダーエターナルは腰から取り出したコンバットナイフを手中で数回転させてから、その切っ先を向けてきた。





「はぁ、仮面ライダー?」

 闇の中より突如として現れた仮面ライダーエターナルを見た途端、梅盛源太は怪訝な表情を浮かべる。
 仮面ライダー。一瞬だけ何の事かと思ったが、あの加頭順とかいういけ好かない奴からそう呼ばれていた男たちがいた。一瞬だけ味方かと考えたが、すぐに違うと源太は判断する。
 いきなり現れて刃物を向けてくるような相手は、あかねを襲った女と同じで敵としか思えない。外道衆と同じで倒さなければならない連中だ。
 だから源太は懐からスシチェンジャーと寿司ディスクを取り出して、あかねと無精髭の男を庇うように立った。

89名も無き変身者:2012/06/16(土) 10:47:13 ID:rlxwSDZQ0
修正乙です

90 ◆7pf62HiyTE:2012/06/17(日) 02:01:09 ID:1M2ng3xA0
拙作『Lの季節』について、他の人の仮面ライダーW風サブタイトルと統一性を持たせたいのでwiki上でタイトルを『Lの季節/〜』に変更(つまり、/を/に変更)させて頂いた事を報告します。
また、『白と黒の黙示録』についても、各パートの一部の英語タイトルを修正した事も合わせて報告いたします。

91漆黒の推察 ◆F3/75Tw8mw:2012/07/09(月) 12:53:28 ID:gMs7hgZs0
当SSについて、指摘を受けた点について修正をいたしましたので、これより投下いたします。
内容は一条の五代に対する呼び方の訂正、及び二人の現在地変更です。

92漆黒の推察 ◆F3/75Tw8mw:2012/07/09(月) 12:55:07 ID:gMs7hgZs0
本スレ>>881を、以下に差し替えで。





――――――それでは参加者の諸君、健闘を祈る。



「そんな……!!」


突如として聞こえてきた、第一の定期放送。
その無情且つ無慈悲な内容に、一条は驚きのあまり声を出してしまった。
隣に立つ鋼牙も、声こそ出してはいないものの、その表情には明らかに驚愕の意が表れている。
それも当然だ。


「……もう、18人も……!?」


彼等がこの会場に放り込まれてから、まだものの六時間しか経っていない。
それにも関わらず、既に参加者の内3分の1近くが死亡したと告げられたのだ。
ましてやこの二人は、殺し合いが始まって以来まだ、お互い以外の参加者――鋼牙だけは、相羽シンヤと出会っているが―――とは遭遇していない。
幸か不幸か、命の危機からは無縁のままに第一放送を迎えているのだ。
それだけに一層、受けた衝撃も大きかった。


(……零は無事、か……
薫の方も、知り合いが呼ばれた様子は無さそうだな)

(五代……良かった。
冴島君の方も、見る限り知人が亡くなったという事は無いか……)


そんな状況下で唯一救いと言えたのは、お互いに知っている名前―――五代雄介と涼邑零―――が呼ばれなかった事だろう。
彼等ならそう簡単に死ぬ事はないとは思っていたものの、それでも何分状況が状況だ。
生存している事には、素直に安堵せざるを得ない。

93漆黒の推察 ◆F3/75Tw8mw:2012/07/09(月) 12:56:03 ID:gMs7hgZs0
続き、本スレ>>883を以下に差し替えでお願いします。



(……五代……)


その考えに至ると同時に、一条の脳裏にある一抹の不安が浮かんだ。
本郷猛がそうならば、五代雄介とてきっと同じ筈だ。
この殺し合いを止める為に……誰かの笑顔を守る為に、彼は今も闘っているに違いない。
いつ、命を落とすかも分からない、この危険な場所でだ。


(なら……私は……!)


そんな彼の為に……彼等の為に、自分が出来る事とは何か?
決まっている。
警察としての使命を全うし、一人でも多くの命を救う事だ。
人々の笑顔を守る為に闘いたいというその気持ちは、全く同じなのだ。


「……死んだ者達の為にも、そして今も尚闘っている者達の為にも。
 一秒でも早く、この殺し合いを終わらせる……それが俺達の使命だ」


その気持ちを察してか、鋼牙が口を開いた。
警察官と魔戒騎士。
立場こそ違えど、彼と手その思いは同じだ。
守りし者として、この殺し合いを動かす巨悪を必ずや討つ。
死者達が安らかに眠られる為にも、一人でも多くの命を救う為にも。


「ああ……あんな奴らのために、これ以上誰かの涙は見たくない。
 皆に、笑顔でいて欲しい……それには、私達が頑張らなくてはな」


嘗て雄介が自身に聞かせた、その言葉を胸に。
一条は僅かな笑みを顔に出し、鋼牙へとその意志を確かに口にした。

それは彼が初めて鋼牙へと見せた、笑顔に他ならなかった。

94漆黒の推察 ◆F3/75Tw8mw:2012/07/09(月) 12:57:12 ID:gMs7hgZs0
続き、>>893の状態表を差し替えでお願いします。

【1日目/朝】
【D-4/森】

【冴島鋼牙@牙狼─GARO─】
[状態]:健康
[装備]:魔戒剣、魔導火のライター
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考]
基本:護りし者としての使命を果たす
1:首輪とホラーに対し、疑問を抱く。
2:加頭を倒し、殺し合いを終わらせ、生還する
3:再びバラゴを倒す
4:一条と共に行動し、彼を保護する
5:零ともできれば合流したい
6:未確認生命体であろうと人間として守る
7:相羽タカヤに会った時は、彼にシンヤのことを伝える
[備考]
※参戦時期は最終回後(SP、劇場版などを経験しているかは不明)。
※魔導輪ザルバは没収されています。他の参加者の支給品になっているか、加頭が所持していると思われます。
※ズ・ゴオマ・グとゴ・ガドル・バの人間態と怪人態の外見を知りました。
※殺し合いの参加者は異世界から集められていると考えています。
※この殺し合いは、何らかの目的がある『儀式』の様なものだと推測しています。
※首輪には、参加者を弱体化させる制限をかける仕組みがあると知りました。
 また、首輪にはモラックスか或いはそれに類似したホラーが憑依しているのではないかと考えています


【一条薫@仮面ライダークウガ】
[状態]:健康
[装備]:滝和也のライダースーツ
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1〜2(確認済み)、警察手帳、コートと背広
[思考]
基本:民間人の保護
1:警察として、人々を護る
2:魔戒騎士である鋼牙の力にはある程度頼る
3:他に保護するべき人間を捜す
4:未確認生命体に警戒
※参戦時期は少なくともゴ・ガドル・バの死亡後です
※殺し合いの参加者は異世界から集められていると考えています。
※この殺し合いは、何らかの目的がある『儀式』の様なものだと推測しています。


【滝和也のライダースーツ@仮面ライダーSPIRITS】
滝和也が、仮面ライダー達と共に闘う為に身につける、その魂を体現した漆黒のライダースーツ。
顔面の部分に髑髏をペイントしてある黒いヘルメットと、耐衝撃用の装甲が着けられた漆黒のスーツ。
炸薬入りのナックルダスターと、強力なスタンガンを仕込んであるブーツとで、ワンセットになっている。

95漆黒の推察 ◆F3/75Tw8mw:2012/07/09(月) 12:57:50 ID:gMs7hgZs0
以上、修正となります。
私用で連絡が遅くなり、申し訳ございませんでした。

96 ◆gry038wOvE:2012/07/09(月) 22:23:40 ID:FFfJQo0g0
了解です。これで問題はないと思います。

97 ◆F3/75Tw8mw:2012/07/10(火) 23:24:39 ID:gMs7hgZs0
Gの咆哮/破壊の呼び声について。
本スレ>>913を以下に差し替えお願いいたします。



「バギングドググ、バ……」


十八か。
死者を告げる放送を聞き、その数にガドルは小さなため息をついた。
このうち二人のリントは自身が殺害している為、与り知らぬところでは十六もの参加者が死亡している事になる。

そう、たったのそれだけしか、まだ死者が出ていないのだ。


「……ダグバガギゼロバゴ、ボボバズドザバ」


ダグバがいてもなお、この数とはな。
それが、この放送についてのガドルの感想だった。
彼等グロンギの、それもゴ集団に属する者達のゲゲルでは、数百或いは数千の命がターゲットになる事がある。
しかもそれは無闇矢鱈な殺戮ではなく、厳粛なルールを定めた上でのものだ。

そんな同属達のゲゲルを多く見てきた、そして自身も実行しようとしたガドルにとって、六時間でたった十八という死者の数はやはり少なく感じられたのだ。
ましてやこの会場には、あのダグバまでもいるにも関わらずである。
つまりこれは、自身だけでなくダグバでも、リントを相手に楽勝とはいかないでいるという事実。
この会場にいるリント達はやはり、屈強な戦士揃いという事だ。

98名も無き変身者:2012/07/11(水) 12:48:32 ID:Q/QP2Ydg0
修正乙です

99 ◆7pf62HiyTE:2012/07/23(月) 00:00:48 ID:ssOwQXkk0
拙作『no more words』について一部修正(具体的には、乱馬状態表(放送を疑っているのにショドウフォンを渡す相手に流ノ介が消えているのはおかしいので追記)と時間表記(表現の統一程度で内容そのものは変化無し))をwiki上で行った事を報告いたします。

100 ◆LuuKRM2PEg:2012/11/11(日) 11:04:54 ID:WsrgJI0g0
これより『あざ笑う闇』の修正版を投下します。
まずは石堀の台詞
「黒岩、あんたもあんただ。涼村にも問題はあるが、だからといって煽るような言い方はやめろ……東京都知事を目指すなら、感情を抑えることも必要じゃないのか?」

「黒岩、あんたもあんただ。涼村にも問題はあるが、だからといって煽るような言い方はやめてくれ」
に修正します。


続いて、石堀と結城の会話シーンの加筆もさせて頂きます。


「それで、一文字と沖は確か18時に市街地で落ち合う予定となっているのだったか?」
「ああ。つぼみちゃんやラブちゃんもきっと来てくれるはずだ。あんたもその頃に来れば、仲間と再会できるはずだ」
「わかった……私達もできる限り、事情が片付き次第そちらに戻ろう」

 一文字は村から南、一也は東から進んで仲間を探しながら市街地に向かっているようだ。しかし落ち合うのは18時からのようなので、すぐに後戻りする必要もない。
 何にせよ、このまま村に向かっていたら無駄足に終わるかもしれなかった。あそこには、一文字によって倒された三影英介の遺体しか残っていないようだから。

「ところで、あの黒岩省吾という男は本当に人間じゃないのか? 涼村暁はダークザイドという怪物だと言っていたが……」
「俺は彼が変身する場面を見ていないが、少なくともただの人間じゃないだろうな。俺や副隊長、それに孤門のような例外はあるが、こんな所に呼ばれてるからには可能性は否定できない」
「そうか……」

 石堀と共に行動していた黒岩省吾という男は、泉京水や大道克己のように人間ではないらしい。
 涼村暁は黒岩のことをダークザイドという闇の生物だと言っていた。
 奴らは人間を襲っているらしく、それを倒す為にシャンゼリオンという戦士に暁は変身して戦っているようだ。
 だが、黒岩はそれを否定している。人間ではないことは肯定しているが、それでも殺し合いに乗るつもりはないようだった。彼の言葉は信じるに値するのかどうか、今のままでは判断が付けられない。
 デストロンやBADANには巧みな話術で人間を騙す怪人が数多くいたので、簡単に信用などしては痛い目を見る。無論、黒岩を敵だと思いたくはないが、それでも暁が嘘を言っているとも思えなかった。

(どうやら、黒岩省吾に関しても警戒が必要のようだな……せめて、嘘でなければいいが……)

 甘い考えだと知りつつも、結城丈二は祈ってしまう。
 黒岩省吾の言葉が真実であり、無駄な争いが生まれないことを。

101あざ笑う闇 ◆LuuKRM2PEg:2012/11/11(日) 11:08:00 ID:WsrgJI0g0
続いて本スレに投下した>>615>>616の修正です


「で、黒岩省吾……聞いた話によると、あんたはダークザイドって化け物らしいな。人間の命を奪い取ろうとする、ね」

 零は暁の隣で豪華な雰囲気を醸し出す椅子に座っている黒岩省吾という男に、やや鋭い目線を向ける。
 ここにいる者達で情報交換をした際、暁はやや紳士のように見えるこの男がダークザイドという怪物だと言った。暁曰く、ダークザイドとはラームと呼ばれる人間のエネルギーを奪うらしい。
 言うなれば、ホラーと似たような存在のようだ。
 そんな危険な相手を前に零が警戒を露わにする中、黒岩は口を開く。

「……確かに俺は人間ではないが、無益に命を奪うことを望まない。ましてや、人間の命を奪う怪物などではない」
「へえ」
「君達から見れば、俺は確かに怪物だ。しかし、俺は君達人間と共に生きたいと考えている。何故なら、人間社会には素晴らしい物が数え切れない程にあるのだからな……それを生み出す人間を裏切るなど、愚か者のやることだ!」
「確かにそうだな……だけど、悪いが俺はあんたの話を完全には信用できない。今の言葉だって、そもそもただの演技である可能性だって充分にあるからな」

 強い熱が秘められた真摯な表情で黒岩は語るが、それでも零は全く気を許していない。
 彼の態度にほとんどの人間が騙されるだろう。しかし、狡猾なホラーを何度も見てきた零は黒岩の言葉が嘘であると感じていた。

「そうだそうだ! こんな野郎を仲間にするのは間違いだ! だから、こんな奴はとっとと……!」
「俺もそうしたいけど、そんなことをしたら結城さんがうるさいからね……それに、もしかしたら本当っていう可能性もあるしな」

 暁の言葉を遮る様に零は意見を述べたが、そこには建前が混ざっていた。
 黒岩が本当のことを言っているとは零は微塵にも思っていない。もしも結城や石堀がいなければ、人間の命を吸い取る怪物なんて今頃とっくにこの手で斬っていたはずだった。
 それでも今は、余計な面倒を起こさない為にも剣を納めている。ここで下手に結城を刺激して同盟を決裂するようなことになり、消耗をするなど得策ではなかった。

「そうか……すまないな、涼邑君」
「礼を言うのは勝手だ。だけど、もしも涼村暁が言うようにあんたが人を襲うような奴だったら……その時は、わかってるよな?」
「当然だろう。あのような狂った主催者達に従って人殺しをするなど、できる訳があるか」
「そうしてくれるなら、俺も助かるよ」

 零が軽く答えた頃、部屋のドアがゆっくりと開く。
 振り向くと、結城丈二と石堀光彦が順番に部屋に入り、そして石堀の上官である西条凪という女が最後に現れた。

「へえ、あんたも目が覚めたのか……いがいとイケてるな、西条さん」
「こんな時にふざけないで、涼邑零」
「はいはい」

 凪の瞳は鋭利な刃物のような輝きを放っている。
 どうやら、彼女はややきつい性格のようだと零は思った。この状況では正解なのかもしれないが、あまり仲良くなれそうにない。
 あの東せつなという少女のようにもう少し穏やかならまだ話しやすいが、贅沢を言っても仕方がなかった。

「結城さん、もう話し合いは終わったのかな?」
「ああ……一文字や沖と出会える可能性が増えたのは、私としても喜ばしいことだ」
「それじゃあ、そろそろ行こうか? やっぱりここは居心地が良くないし」

 石堀達の為に戻ったが、本当ならば家族の仇である男の家などにはいたくなかった。
 それにこうしている間にもあの冴島鋼牙は今も何処かでのうのうと生きている。零にはそれが何よりも許せなかった。
 他の参加者によって無様に殺されるのも面白いだろうが、できるならこの手で決着を付けたい。だから、早く移動したかった。

「そうだな……いつまでもここにいるわけにはいかないからな。石堀、私達は先に行く。どうか、無事でいてくれ」
「ああ。あんたらこそ、生きてまた会えることを祈っているよ」

 石堀がそう答えた後、結城は黒岩に振り向く。

「それと、黒岩省吾」
「何か?」
「例え君が人間でなかろうと、私はできる限り君を信じるつもりだ……しかし、涼邑零に言った言葉を裏切るのであれば、私は君を許したりしない。これだけは忘れないでくれ」
「その言葉……しっかりと胸に叩きこんでおこう」
「すまないな」

 そう返事を残した結城は、部屋の外に向かって歩いていく。
 そんな彼を零も追おうとしたが、その前に暁に振り向いた。彼とはもう少し話をしたかったが、そんな時間などない。

102あざ笑う闇 ◆LuuKRM2PEg:2012/11/11(日) 11:12:47 ID:WsrgJI0g0
>>618及び>>619の修正です。


「つまり……俺とこの黒岩って野郎は、未来で会っている可能性があるのか?」
「そういうことになるな。尤も、黒岩が見てきたのはあんたとよく似た同姓同名の他人かもしれない……そして、涼村が会うのはここにいる黒岩とよく似た『黒岩省吾』という名の別人という可能性がある。これは突拍子もない推測だけどな」

 呆けたように口を開ける涼村暁に石堀光彦は冷静に返答する。
 結城丈二と涼邑零が去った後、休憩を兼ねた情報整理を改めて行っていた。気絶していた凪には詳しいところまでは話せていないので、今後の行動方針を決めるついでに伝える必要があった。
 そして今、結城が話した参加者達は別々の時間から集められているという説を、石堀はここにいる者達にも話していた。
 だとすると、ここにいる暁と黒岩省吾は同じ世界に生まれながらも別々の時間から集められているかもしれない。
 どちらかが嘘を吐いているようにも思えない。それならば、暁は黒岩のことを全く知らない時間から連れて来られたと考える方が自然だった。

「じゃあ、俺はこんな訳のわからない奴と出会うのかよ……何だか、明日を迎えるのが嫌になってきたぞ……」
「なら、一人で行動すればいいだろう」
「そんなことできるか! むしろ、てめえが一人でいればいいだろ! この嘘吐き野郎!」
「貴様にだけは言われる筋合いはない!」
「待ちなさい!」

 睨み合いながら言葉をぶつけ合う暁と黒岩の間に割り込むように、凪は叫ぶ。
 その姿はまるで手のかかる子どもを叱ろうとする母親のようだった。

「こんな時に揉めるのはやめなさい、状況がわからないの!?」
「だって、こいつが……」
「黒岩省吾が人間ではないって話は聞いたわ……私だって、正直信用できない。それでも今は協力者なのだから、無駄に戦うのは止めなさい」

 凪の言葉に石堀は思わず目を見開く。
 いつの間に彼女はこんなに丸くなったのだろうか。こういう状況ならば不安要素になりかねない黒岩など即刻射殺するはず。例え殺さないにしても、集団から追い出すかもしれなかった。
 しかし今の彼女はそれをしないということは、何かがあったとしか考えられない。現に目が覚めてから事情を説明してからも暗黒騎士キバの元に飛び出して行ったりせず、状況の説明を求めていた。
 もしかしたら、違う時間から連れて来られたのかもしれない。いつも見てきている凪より、少々丸くなっている印象があるのだから。
 尤も、ビーストのような人類に害を成す存在への憎悪という根っ子の部分は変わっていないようだが。

103あざ笑う闇(修正版) ◆LuuKRM2PEg:2012/11/11(日) 11:13:37 ID:WsrgJI0g0
「それと黒岩省吾……あなたがもし少しでも不振な動きを見せたら、私はあなたを敵と認識するわ。例えどんな信念を持っていようとも」
「……肝に銘じておこう」

 凪の鋭い眼光を前に黒岩は頷く。
 その瞳には獲物を狙う猛獣のような殺気が宿っていて、今にも襲い掛かりそうな雰囲気を醸し出している。
 殺し合いという異様な状況下に置かれているのもあるだろうが、いつも以上に闇が宿っているようだった。

(流石は凪だな。この状況下にいても尚、闇を強める……それでこそ俺が選んだ女だ)

 油断はできないが、どうやらこの殺し合いは凪を強化させるきっかけとしては上出来かもしれない。それはウルトラマンの光も同じで、もしかしたら凪に継承される頃には予想される以上の力を得ている可能性もあった。
 今は凪の生存を最優先に考えて、孤門一輝や姫矢准を探さなければならないだろうが。

(そして、ボトムにブラックホールか……まさか平行宇宙にはそんな連中がいるとはな)

 そして石堀の興味を引く存在がもう一つある。
 花咲つぼみとの情報交換の際に知ったボトムという名の深海の闇。
 黒岩省吾が出会った桃園ラブという少女が戦ったと言われるブラックホールという名の闇。
 どうやらこの殺し合いの裏にはそういう連中がいる可能性があるようだ。聞いていると、そういう奴らならば異世界や時間、更には異なる宇宙すらも手を伸ばせるかもしれなかった。

(だとしたら、不完全とはいえ俺を拉致できる輩がこの殺し合いに関わっている……やれやれ、事態は思った以上に深刻なようだな)

 ほんの少しだけ驚愕はしたが、微塵の恐怖も抱かない。神に等しい存在であるダークザギは、むしろ畏怖を齎す側だった。
 とはいえ、現状ではそんなことに力を入れる余裕などない。本来の計画通りに事を進める為にも、まずは脱出の糸口を探らなければならなかった。
 一文字隼人や沖一也、更に結城丈二達や花咲つぼみとは18時に市街地で落ち合うことになっている。そこに集まった者達を、どう利用するかが鍵になるかもしれない。
 とはいえ、主催者達も恐らくその事態を見通して市街地全域を禁止エリアにする可能性もあるだろうから、その時の事も考えなければならなかった。
 だが、それよりも今は……

「ほら見ろ! やっぱりてめえみたいな怪人は信頼されてねえじゃねえか!」
「それは貴様も同じじゃないのか!? もしもこれ以上足を引っ張るようなことをするなら、どうなるのか覚悟を決めておいた方がいいぞ!」
「いい加減にしなさい!」

104あざ笑う闇(修正版) ◆LuuKRM2PEg:2012/11/11(日) 11:14:16 ID:WsrgJI0g0



 西条凪は強い苛立ちを覚えていた。
 仮面ライダーアクセルに変身して一文字隼人と共に暗黒騎士キバと戦っていたはずなのに、無様な敗北を喫してしまう。その上、石堀光彦に抱えられて撤退させざるを得ないような状況を作ってしまった。
 しかも聞いた話によると桃園ラブという少女が一人で一文字を助けに向かったらしい。
 せっかく力を手に入れたのに、これではただ集団の足を引っ張っているだけだ。全体の規律を乱しかねない五代雄介達と別行動を取ったのに、何の意味もなかった。

(これじゃあ、彼らのことを笑えないわね……石堀隊員と合流した意味だってないわ)

 このままでは誰と出会っても役立たずのままだと、凪は思わず自嘲する。
 溝呂木眞也や暗黒騎士キバどころか、誰にも勝てる訳がなかった。加頭順やサラマンダーの元に辿り着けるなんて夢のまた夢だ。
 ましてや元の世界でビースト達を殲滅させることだって、できるわけがない。

(……いいえ、弱気になっても意味はないわ。今は目の前の男達をどうにかしないと。溝呂木眞也や美樹さやか、それに暗黒騎士キバもこの手で必ず殺す……今はその為に力を蓄えるべきだわ)

 しかし凪はその思考を振り切って、涼村暁と黒岩省吾をどうするべきかを考える。
 黒岩という男は人間ではないようだが、それでも五代雄介や美樹さやかと同じ対応を取るつもりだった。協力するなら良し、裏切るのであれば惨殺するだけ。
 また、不穏になるようであれば別れることも辞さない。涼村暁にも言えるが、これまでと同じだった。


 西条凪は知らない。
 信頼を寄せている部下がビーストの親玉である全ての元凶であり、母の仇でもあることを。
 また凪が力を振るう度に、その影は笑みを浮かべていることも知らない。
 この殺し合いの中で西条凪が全ての真実を知る時が来るのかどうかは、まだ誰にもわからなかった。





(くそっ……やはり簡単に誤魔化せる奴らではなかったか)

 黒岩省吾もまた考えていた。
 結城丈二や涼邑零と遭遇してから、涼村暁は余計なことをペラペラと喋っていた。ダークザイドのこと、更に黒岩はダークザイドであると。
 下手に否定をするとかえって疑心を抱かれるので、集まった者達には『人間ではない』ということだけは肯定した。そして、殺し合いに乗るつもりも微塵もないとも言っている。
 そのおかげか、その場しのぎにしかなっていないにしても、敵と認識されることはなかったが、今後はどうなるのかわからない。
 現に西条凪からは警戒心をまるで隠す気配が感じられなかった。彼女のような人間から敵と思われては問答無用で殺害されてしまう恐れがある。

(だが、どんな壁が待ち構えていようとも関係ない……そして、ここにいるシャンゼリオンが違う時間から連れて来られたとしても、必ず決着を付ける。覚悟しておくんだな)

 揺ぎ無い野望を胸に抱き続ける黒岩省吾は、誰にも伝わらない形で宣戦布告をした。

105あざ笑う闇(修正版) ◆LuuKRM2PEg:2012/11/11(日) 11:16:37 ID:WsrgJI0g0
最後に状態表の修正です。
もしもまだ不備がありましたら、指摘をお願いします。

【涼村暁@超光戦士シャンゼリオン】
[状態]:ダメージ(小)、疲労(中)
[装備]:シャンバイザー@超光戦士シャンゼリオン、スカルメモリ&ロストドライバー@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式(ペットボトル一本消費)、首輪(ほむら)
[思考]
基本:願いを叶えるために優勝する………………(?)
1:石堀、黒岩と行動し、黒岩が変な事をしないよう見張る。
2:何故黒岩が自分のことを知っているのか疑問。
3:可愛い女の子を見つけたらまずはナンパ。
4:ラブちゃん、大丈夫なのか……?
[備考]
※第2話「ノーテンキラキラ」途中(橘朱美と喧嘩になる前)からの参戦です。
 つまりまだ黒岩省吾とは面識がありません(リクシンキ、ホウジンキ、クウレツキのことも知らない)
※ほむら経由で魔法少女の事についてある程度聞きました。但し、まどかの名前等知り合いの事については全く聞いていません。
※黒岩とは未来で出会う可能性があると石堀より聞きました。



【黒岩省吾@超光戦士シャンゼリオン】
[状態]:健康
[装備]:デリンジャー(2/2)
[道具]:支給品一式、ランダム支給品0〜2
[思考]
基本:周囲を利用して加頭を倒す
1:あくまで東京都知事として紳士的に行動する
2:涼村暁との決着をつける ……つもり、なのだが……
3:人間でもダークザイドでもない存在を警戒
4:元の世界に帰って地盤を固めたら、ラビリンスやブラックホールの力を手に入れる
5:井坂とティアナが何を考えていようとも、最終的には自分が勝つ。
6:桃園ラブに関しては、再び自分の前に現れるのならまた利用する。
7:涼村暁が石堀光彦や西条凪に妙なことを口走らないよう、警戒する。
[備考]
※参戦時期は東京都知事になってから東京国皇帝となるまでのどこか。
※NEVER、砂漠の使徒、テッカマンはダークザイドと同等又はそれ以上の生命力の持主と推測しています。(ラブ達の戦いを見て確信を深めました)
※ラブからプリキュアやラビリンス、ブラックホール、魔法少女や魔女などについて話を聞きました 。
※暁は何らかの理由で頭が完全におかしくなったのだと思っています。
※暁は違う時間から連れて来られたことを知りました。

106 ◆OmtW54r7Tc:2012/11/11(日) 15:05:14 ID:rlxwSDZQ0
修正乙です
自分は良いと思います

107 ◆OmtW54r7Tc:2013/02/11(月) 11:29:41 ID:rlxwSDZQ0
これより「分身出来ると思った?残念枯れちゃいました!」の修正案を投下します

108分身出来ると思った?残念枯れちゃいました!(修正案) ◆OmtW54r7Tc:2013/02/11(月) 11:30:57 ID:rlxwSDZQ0
「ここが呪泉郷か」


ビートチェイサーから降りたバラゴは、一言そうつぶやくと辺りを見回した。
どうやらここは、修行場らしい。
そして辺りにはいくつかの水のたまり場…泉が点在している。


「…なるほどね、それで『呪泉郷』というわけか」


すぐそこには、ガイドの看板にこの場所についての説明書きがされている。
どうやら、この泉に入ったものは水を浴びると姿を変える特殊な体質になるという事だった。

「放送までまだ少しある…少しこの場所について調べてみるか」

ひとまずバラゴは、近くにある社務所のような建物に入ってみることにした。
そして部屋の中の物色を始めた。

「ん?これは…」

そうしてしばらくすると、バラゴはあるものを見つけた。


バラゴが見つけたもの…それは呪泉郷の顧客名簿だった。
そこには泉の名前とその効能、溺れた人の名前(この殺し合いの参加者の名前もいくつかあった)、などが書かれてあった。

「…とはいっても、あまり僕には関係ないかな」

泉の効能は猫になったりブタになったり、あるいは性別が変わったり…あまりこの殺し合いで役に立つとは思えない。
阿修羅など強そうなものに変身する効能のものもあるようだが、暗黒騎士としての絶対的な力を持つバラゴにとっては気休めにしかならない。


「…ん?この泉の効能は…」


だが、そんな中一つだけバラゴの興味を引いた泉があった。


「双生児溺泉か…」


双生児溺泉。
それは水をかぶると双子になる体質となってしまう。
確かにこれがあればこの殺し合いを円滑に進めることができるだろう。

「だが、場所が分からないな。もう少し探ってみるか」

109分身出来ると思った?残念枯れちゃいました!(修正案) ◆OmtW54r7Tc:2013/02/11(月) 11:31:49 ID:rlxwSDZQ0
そうしてまたしばらくして、バラゴは地図を見つけた。
ご丁寧に、泉の場所が一つ一つ記載されている。
もっとも地図はその一枚だけで、他にはなさそうであったが。


「双生児溺泉は…あそこか」


バラゴは、地図に記された場所へと歩いて行った。



「ち……」

双生児溺泉のある場所へと向かったバラゴは、舌打ちをした。
双生児溺泉は…地図に記されたその場所は、枯れていた。
他の場所はちゃんと泉がわいているというのに、そこだけ水が一滴もなかった。

「まあ、当然か。そんなものを主催者が用意しているはずもない」

考えてみれば当たり前の話である。
浴びたものが分身する水など、支給品として少量用意するならともかく、マップに泉として配置していては参加者が増えまくり殺し合いがいつまでも進行しない。
それは、主催者の望むことではないのだろう。
だったら最初から地図に場所を記すなとも思うが。
多少残念に思いながらも、すっぱりと双生児溺泉のことを諦めたバラゴのもとに…



『初めまして、参加者の皆さん。私の名前はニードル。
 加頭順、サラマンダー男爵と同じく、このゲームの企画に協力している者です。』



二度目の放送の声が響いた。



「…ふん、魔戒騎士共や一文字隼人は生き残っているか。そうでなくてはな」

放送で、バラゴの知る名前が呼ばれることはなかった。
いや、花咲つぼみの話を聞いたプリキュアや、先ほどの呪泉郷顧客名簿にあった名前など、名前だけなら聞き覚えのある者はいたが。
ニードルという男が出したボーナスのヒントについては、幼稚ななぞなぞに過ぎなかったためすぐに分かった。
とりあえず、不本意ながら直接手を下した参加者が一人もおらず、またその『ワープ地点』からも距離が離れているバラゴには、今の所関係ない情報だ。
頭の隅にとどめておく程度でいいだろう。

「パンスト太郎…か」

そういえば、先ほど放送で名前を呼ばれたあの男、顧客名簿には二つの泉に溺れたとあった。
複数の泉に溺れた場合、その人物はどのような変身を遂げるのだろうか。
少し気になった。


「…まあ、せっかく来ておいて収穫なしの手ぶらというのもさみしいからな。少しここの泉を拝借していこうか」


そういうとバラゴは、社務所で見つけたいくつかの容器で、適当にいくつかの泉の水を掬った。
まあ、使う機会があるかどうかは分からないが。


「次は北のホテルへ寄ってみようか」


ビートチェイサーにまたがったバラゴは、北へと進んだ。




「これは…」

110分身出来ると思った?残念枯れちゃいました!(修正案) ◆OmtW54r7Tc:2013/02/11(月) 11:32:47 ID:rlxwSDZQ0
そこは、まさしく戦場跡だった。
辺りの木々は倒れたかあるいは消滅し、地面はボロボロで大きなクレーターまでできている。
しかし、周りに人の気配はない。
全滅したか、あるいは生き残りは既に移動をしたのだろう。

バラゴは、その戦場跡の中にできた大きなクレーターへと近づいた。
すると…


『Who are you?(誰ですか?)』


クレーターの中から、声が聞こえてきた。
それは、機械的ながらどこか悲しみを帯びた女性の声だった。



【1日目/日中】
【B-7/ホテル付近・戦場跡】

【バラゴ@牙狼─GARO─】
[状態]:胸部に強打の痛み、ダメージ(中)、疲労(小)、顔は本来の十字傷の姿に
[装備]:魔戒剣、ボーチャードピストル(0/8)@牙狼
[道具]:支給品一式×3、ランダム支給品0〜2、冴子のランダム支給品1〜3、顔を変容させる秘薬?、インロウマル&スーパーディスク@侍戦隊シンケンジャー、紀州特産の梅干し@超光戦士シャンゼリオン、ムカデのキーホルダー@超光戦士シャンゼリオン、『ハートキャッチプリキュア!』の漫画@ハートキャッチプリキュア! 、ビートチェイサー2000@仮面ライダークウガ、呪泉郷の水(種類、数は不明。本人は確認済み)@らんま1/2、呪泉郷顧客名簿@らんま1/2、呪泉郷地図
[思考]
基本:参加者全員と加頭を殺害し、元の世界で目的を遂行する
0:声の主(レイジングハート)との接触
1:冴島鋼牙と出会ったら、この手で葬る。
2:今のところ顔を変容させる予定はない
3:石堀に本能的な警戒(微々たるものです)
4:一文字隼人とキュアピーチは再び出会うことがあれば、この手で殺す。(ただし、深追いはしない)
[備考]
※参戦時期は第23話でカオルに正体を明かす前。
※顔を変容させる秘薬を所持しているかは不明。
※開始時の一件で一文字のことは認識しているので、本郷についても認識していると思われます。
※冴子と速水の支給品はまだ確認していません。
※つぼみ達の話を立ち聞きしていました
 そのためプリキュア、砂漠の使徒、サラマンダー男爵について知りました
※雷剛や閻魔斬光剣の召喚はできません。
 バラゴはこれを制限の影響だと考えています。
※零は放っておけば心滅獣身で闇に堕ちると考えています。
※呪泉郷からいくつかの泉の水を拝借しました。種類およびその数については後続に任せます
※ニードルの出したヒントによりワープ装置の場所及び使用条件を知りました


※呪泉郷の双生児溺泉の水は枯れています


【呪泉郷顧客名簿@らんま1/2】
18巻にてパンスト太郎が盗んだ呪泉郷で溺れたものの名をリストアップした名簿。

【呪泉郷地図】
主催側が独自に用意した呪泉郷の地図。
どこにどの泉があるか記されている。
社務所にはバラゴが手に入れた一枚以外には置かれていない。

111 ◆OmtW54r7Tc:2013/02/11(月) 11:33:41 ID:rlxwSDZQ0
修正ss投下終了です

112 ◆OmtW54r7Tc:2013/02/11(月) 11:47:19 ID:rlxwSDZQ0
とりあえず、呪泉郷内に地図があったってことで修正させていただきました

113 ◆OmtW54r7Tc:2013/02/11(月) 17:49:19 ID:rlxwSDZQ0
再びすみません。
原作の顧客名簿について勘違いしていて、『呪泉郷に訪れた人の名前と性別』を書き連ねたに過ぎないものだったようです
なので、少し苦しいですがこの顧客名簿も主催者が用意したオリジナルに変更します
たびたびすみません
それにともない、状態表および支給品解説欄もこのように変更します


【バラゴ@牙狼─GARO─】
[状態]:胸部に強打の痛み、ダメージ(中)、疲労(小)、顔は本来の十字傷の姿に
[装備]:魔戒剣、ボーチャードピストル(0/8)@牙狼
[道具]:支給品一式×3、ランダム支給品0〜2、冴子のランダム支給品1〜3、顔を変容させる秘薬?、インロウマル&スーパーディスク@侍戦隊シンケンジャー、紀州特産の梅干し@超光戦士シャンゼリオン、ムカデのキーホルダー@超光戦士シャンゼリオン、『ハートキャッチプリキュア!』の漫画@ハートキャッチプリキュア! 、ビートチェイサー2000@仮面ライダークウガ、呪泉郷の水(種類、数は不明。本人は確認済み)@らんま1/2、呪泉郷顧客名簿、呪泉郷地図
[思考]
基本:参加者全員と加頭を殺害し、元の世界で目的を遂行する
0:声の主(レイジングハート)との接触
1:冴島鋼牙と出会ったら、この手で葬る。
2:今のところ顔を変容させる予定はない
3:石堀に本能的な警戒(微々たるものです)
4:一文字隼人とキュアピーチは再び出会うことがあれば、この手で殺す。(ただし、深追いはしない)
[備考]
※参戦時期は第23話でカオルに正体を明かす前。
※顔を変容させる秘薬を所持しているかは不明。
※開始時の一件で一文字のことは認識しているので、本郷についても認識していると思われます。
※冴子と速水の支給品はまだ確認していません。
※つぼみ達の話を立ち聞きしていました
 そのためプリキュア、砂漠の使徒、サラマンダー男爵について知りました
※雷剛や閻魔斬光剣の召喚はできません。
 バラゴはこれを制限の影響だと考えています。
※零は放っておけば心滅獣身で闇に堕ちると考えています。
※呪泉郷からいくつかの泉の水を拝借しました。種類およびその数については後続に任せます
※ニードルの出したヒントによりワープ装置の場所及び使用条件を知りました


※呪泉郷の双生児溺泉の水は枯れています


【呪泉郷顧客名簿】
原作で登場したものと違い、主催側が用意したもの
泉の種類と効果、およびその泉に溺れた人物の名前をリストアップした名簿。

【呪泉郷地図】
主催側が独自に用意した呪泉郷の地図。
どこにどの泉があるか記されている。
社務所にはバラゴが手に入れた一枚以外には置かれていない。

114 ◆gry038wOvE:2013/02/11(月) 23:19:13 ID:dr6pOkoM0
特に問題点はないと思います
目につきにくいので、一応あげておきますね

一文字はまた合流したらブタとかにされるんだろうか…(そういえば、ちびまる子ちゃんが一文字はブタみたいな顔だとか言ってたような…うわ何をするやめr

115 ◆gry038wOvE:2013/03/03(日) 00:00:30 ID:apOUU2pY0
修正版「届かない、M /─僕はここにいる─」を投下します。

修正点
・戦闘シーンの増加
・修正前版未使用のフォーム、武器の使用
・一条の変身が解ける理由の変化
(×10分経った ○エターナルとの戦闘や一条の変身戦闘経験不足でクウガがグローイング化&変身解除された)

などです。
戦闘が増えたところで、全体の印象にやや違いが出るかもしれませんが、極力違和感なく問題点を排除する方法として用いたので、その点は大目に見てもらえたら幸いです…。
昇竜抜山刀がほとんど戦闘に使われていなかったので、その点もともに補完したつもりです(問題点だったわけではないのですが)。

116届かない、M /─僕はここにいる─(修正) ◆gry038wOvE:2013/03/03(日) 00:01:26 ID:apOUU2pY0


 ──少年は追っているはずだった。必死に走って、必死にあがいて、それを求めているはずだった。
 それが何なのか、彼自身にさえわからない。ただ、それが無ければその人間は、その人間としての価値を失ってしまうということだけは、うっすらとわかった。
 人間の価値──それは、人間であるはずの彼には確かに必要なものだったはずだ。
 だから、彼は必死にそこに手を伸ばしていくのだろう。
 もしかしたら、彼自身、既にそれに届かないと気づいていたのかもしれない。
 それでも彼は必死に手を伸ばし続けた。
 ……しかし、どんなに足掻いても、それは日々遠ざかって行った。
 普通の人たちだって、いつかはそれを失い続けるのはわかっている。


 だが、彼にはまた、常人の何倍ものスピードで消えていくものなのである。
 ……あきらめたくない。
 手を伸ばしても、声を出して呼んでも、それに手が届くことはなく、彼の声も聞いてないふりをされるだけだった。
 やがて、それを求めていたことさえ忘れ始めた。


 そして、もう完全に失ったのだろう。


 ある時、少年は気づいた。
 Mが遠ざかっているのではない。
 自分の足場がMから離れていくのだ。
 自分の中の崩壊は、もはや留まるところを知らないのだ。


 殺しの記憶が蘇る。
 海外の戦地。何人の人間を殺したか。
 兵士、民間人、老人、子供……。


 普通に生きていれば……ある出来事がなければ、彼は優しい少年だったはずだ。
 家族想いで、戦争や争いごとなんて大嫌いな、正義感の強い少年だったはずなのだ。



 彼を崩した物は何?
 彼からMを奪った物は何?
 彼を殺人鬼にした物は何?



 心はいつしか空っぽになっていた。
 空っぽで、乾いた心が、殺人を何とも思わない人間にした。
 失ったものはもう取り戻せない。
 それを失った時点で、取り戻したいと思う心も消えていったのだから。



★ ★ ★ ★ ★



 花咲つぼみは、再びキュアブロッサムに変身して走り出していた。
 走る、という動作はほぼ自然に行われている。「走ろう」と考えてもいないのに、彼女はただ真っ直ぐに走っていた。
 まあ、言ってみれば「来た道を戻るだけ」だった。特に意識しなくとも体が勝手に行ってくれる動作である。
 行きと景色が違えど、森の木々が、僅かに聞こえる川の音が、なんとなく彼女を元の場所に帰す方法を教えてくれた。彼女自身、ほとんど真っ直ぐに走っていたことを記憶していたので、深く考える必要もなかった。
 とはいえ、本来、山中や森では、道順を意識して進まなければならないであろう。樹海に迷い込む人間がいるのも事実だ。
 なのに何故彼女は、まったく別の事を考えているのだろう。
 理由は、ここまでの話の順序を考えれば、ごく単純だった。

117届かない、M /─僕はここにいる─(修正) ◆gry038wOvE:2013/03/03(日) 00:02:37 ID:apOUU2pY0


(ゆりさん……)


 頼れる先輩にあたる仲間の死。
 月影ゆりという人の死。
 それを、キュアブロッサムこと花咲つぼみはつい先ほど知ったのである。自分のことなど忘れて、そこに意識を置いてしまうのも仕方なかった。
 死体を見たわけではない。しかし、段階的にその死を確信的なものへと変えていった。
 仮面ライダーエターナルの言葉で知り、ダークプリキュアの挙動で確信へと変わった。
 月影ゆりは、もういない。
 つぼみの仲間のプリキュアが、無二の親友・来海えりかに続いてもう一人、逝ってしまったのだ。


 そして、もう一つの事実──その来海えりかの死に、よく知っている人間が関っている可能性が浮上してきた事も、彼女の頭の中を混乱させていた。
 これに関しては、二つの全く情報が入り混じっていたゆえに、余計に混乱を強めたのである。
 仮面ライダーエターナルの言葉によると、えりかはキュアムーンライト──つまりゆりによって殺害されたらしい。
 どちらかといえば、彼の言葉の方が信用に足らないものだろう。
 ダークプリキュアによれば、えりかを殺害したのはダークプリキュア自身だという。
 勿論、どちらも敵の言葉には違いない。いずれも嘘という可能性だってある。



(ダークプリキュア、あなたの言葉は……)


 だが、素直すぎる少女は、このどちらかが真実なのではないか……と察した。

 ダークプリキュアは、敵ながらにして、こんなくだらない嘘をつくような相手とは思わせなかったのだ。
 ダークプリキュアは狡猾だが、嘘をついてまで自分の手柄を得ようとする敵だとは思えなかった。はっきり言って、キュアムーンライト以外の人間は彼女にとって同等。たとえプリキュアであっても、それは違わないだろう。
 それを、倒してもいないのにわざわざ「キュアマリンは自分が倒した」などと言う必要は彼女にはないし、キュアマリンは彼女にとって、特別視される存在ではない。


 そして、砂漠の使徒で敵である彼女には、キュアマリンを撃退する理由も存在する。
 実際に、つぼみたちは彼女と何度も交戦しているのだ。ブロッサムも先ほど、ダークプリキュアによって殺されかけている。
 同時に、その戦いこそが、情報を混乱させる最大の理由にもなっているのだが。


(えりか……えりかは──)


 そこまで決まっているにも関わらず結局のところ、つぼみはその答えを断定できないのだ。だから、聞けるのなら、えりかに聞きたかった。その死の真実──全てを。
 ダークプリキュアが彼女を殺したのだと決定づけてしまえば非常に楽なのに──そこに踏み出す勇気がなかった。
 えりかの死を受け入れられない、というわけではない。
 ただ、ダークプリキュアの態度が、とにかく引っかかったのだ。
 あの落ち着きは何だろう。
 キュアブロッサムに見せた瞳は、まるで敵意を感じないものだった。
 彼女の目にあったのは、「決意」とでも言うべきもの。まるで、普段彼女がキュアムーンライトに見せるような表情と、どこか似通っていたのである。
 ゆりの代わりを求めているのとも違う。
 そう、あれは、悪辣で非情な彼女とは、まったく別なのだ。
 なにか、憂いのようなものが入った瞳だったのだ。


 ドゴォォォォォォォォオン


 爆音が鳴る。
 そこで、つぼみの意識が別の方向に向いた。
 えりか、ゆり、ダークプリキュアではない。
 今は今の仲間と共に、撃退しなければならない相手がいる。今聞こえた音は、きっとその戦闘音だろう。

118届かない、M /─僕はここにいる─(修正) ◆gry038wOvE:2013/03/03(日) 00:03:15 ID:apOUU2pY0

 ──仮面ライダーエターナル。

 彼を撃退するために、キュアブロッサムは力を貸さなければならないのだ。
 何故か。
 そう、──彼女には守るべき仲間がいる。
 一条薫、響良牙──彼らはあの場を引き受けてくれたが、戦力を持つ人間ではなかった。
 いや、確かに良牙は人間離れした戦闘能力を有しているし、一条も人間としては破格の強さを持つ男だった。
 しかし、ここで言う戦力とは「変身」の力のことである。二人はそれを持ってはいなかった。


(待っててください、一条さん、良牙さん!)


 少しその音に惑わされて、迷いながらもキュアブロッサムは走る。
 己の力の全てをかけて、戦いを止めたいのだった。



★ ★ ★ ★ ★



 ドゴォォォォォォォォオン


 クウガとエターナルの拳がぶつかり合った瞬間、何処かから爆音が鳴り響く。
 それは、ブラスター化したテッカマンたちのボルテッカがぶつかり合った音なのだが、どちらから聞こえた音なのかは、この森でははっきりとはしなかった。
 その周囲が驚きに固まる。
 耳を打つ爆音に、良牙は不吉な予感を感じずにはいられなかった。


「……つぼみ!」


 良牙は、花咲つぼみの心配をする。
 彼女のいる場所から発された音なのではないか、と思ったのである。
 死人が出たのではないかと思えるほどの轟音だった。
 どうやら、一瞬拳をぶつけ合った二人──仮面ライダークウガと仮面ライダーエターナルもそれを気にしたようだった。
 拳をぶつけ合った瞬間に爆音とは、まるで映画の演出のようだったが、その音を気に掛ける二人は戦闘から一瞬だけ解放されたようだった。
 懐の距離にありながら、敵以上に気になる存在があったのだ。



「どうやら、どこもかしこも、戦いが好きらしいな」


 エターナルは言う。
 鼻で笑ったような言葉だった。
 ここにいる誰もが、もう人の死や争いには慣れ始めている。
 しかし、それが実際また起きても、笑うことができるのは、この場では仮面ライダーエターナル──大道克己ただ一人だった。
 あの爆音の結果、誰かが死んだとしても、彼はそうして鼻で笑うようなそぶりを見せるに違いない。


「……さあ、中断は無しだ。俺たちも続きを始めるか」


 と言っている隙に、エターナルの顔面に向けてクウガのパンチが放たれる。
 戯言を言い続けているのはエターナルだ。クウガは、爆音に一瞬気を取られながらも、エターナルに対する注意を忘れなかった。
 が、エターナルはその腕を真横から掴んで止めていた。


「俺が気を抜いてると思ったか?」

119届かない、M /─僕はここにいる─(修正) ◆gry038wOvE:2013/03/03(日) 00:03:46 ID:apOUU2pY0


 エターナルは、エターナルエッジを構えている。
 そのブレードがクウガの体へと至ろうとしていく。
 片手を封じられたクウガには、それを避ける術がない。
 だが、仮面ライダークウガ──一条薫にも隙などなかった。


「超変身!」


 その姿を「赤」のマイティフォームから、「紫」のタイタンフォームへと変化する。
 すると、その身体はどんな刃にも屈さぬ銀色の鎧に覆われる。この鎧に守られたゆえ、彼の身体にエターナルエッジが到達することはなかった。


(……なるほど、傍から見るぶんにはもう少し簡単そうだが、やはり実戦では難しいな)


 一瞬の判断に、一条薫は救われたのである。
 少なくとも、いまの判断がなければ身体へのダメージはもう少し深刻なものになっていただろう。ただ、一条自身、それは余裕のある状態での判断ではなく、まさに咄嗟に出た判断だった。
 五代雄介は、このフォームチェンジのやり方にある程度慣れてはいたようだが、これがいかに難しいものだったのかを一条はその肌で理解する。


(各形態の差も考えなければな。緑のクウガはこの場で使うのは難しい、か……)


 クウガは、エターナルエッジをエターナルの手から強い力で引き抜くようにして奪った。
 刃を持つエターナルエッジは、クウガの手でタイタンソードへと変化していく。
 ナイフから大剣に変わっていくエターナルエッジ──いや、タイタンソード。
 それは、周囲から見れば異常な光景だっただろう。


「……面白い能力だな」


 エターナルは、至近距離では危険と感じ、敵の腕を離しながら、咄嗟に木の上へとジャンプする。
 予感的中だった。
 タイタンソードは、エターナルのいなかった。虚空へと振り下ろされた。
 長年の戦闘経験ゆえ、至近距離での戦闘が危険な相手くらいは判断がつく。
 ブォンッ、と音が鳴ると、エターナルが乗っていた枝葉もそっと揺れた。


「エターナルにも欲しい技だ」


 敵の武器を奪い、それを自分の武器へと変える……という能力はエターナルにとっても新鮮で、随分と面白みのあるものだった。
 その切っ先は長く、ナイフという形状から大剣へと確かな変化を遂げていたのである。
 ガイアメモリのような特性を持つそれに、エターナルは思わず苦笑した。


(クッ……五代によれば、ずっと金で戦えるらしいが……)


 一方、一条も別のことを考える。
 金──ライジングフォームの力をここで使って大丈夫だろうか。
 この場であの強すぎる力を放てば、周囲は壊滅、そして良牙も巻き込むのは間違いない。
 周囲の物を爆破し尽くすあの封印エネルギーを使うことは、おそらく今は許されないのである。
 五代がアマダムそのものを進化させているならば、おそらく一条が変身したクウガでも変わらないはずだが、五代もおそらく使わなかっただろう。


「はっ!」


 エターナルは、また準備が完了したように木から降りてくる。
 エターナルの体重を支えていた硬い枝が、ざわっと揺れ、エターナルが完全に着地した瞬間、その木の枝が折れた。エターナルが落下する時の踏み込む力にやられたのだろうか。それとも、体重を支えるにはもろかったのか。タイタンソードの素振りの効果か。
 まあ、彼はそれを意にも介していなかった。
 彼の目の前にあるのは戦いのみ。
 作戦はないが、エッジがなければ戦えないわけではない。
 格闘能力も当然常人と比べて高いのが克己だ。


「さあ、そいつを返してもらおうか」


 ……とはいえ、武器がないといろいろと不都合だ。
 エターナルは右手を前に差し出し、タイタンソードと化したエターナルエッジの返却を求める。
 が、一条がそれに応じるわけもない。

120届かない、M /─僕はここにいる─(修正) ◆gry038wOvE:2013/03/03(日) 00:04:17 ID:apOUU2pY0


「……人を傷つけるための剣を、返すわけにはいかない」

「おいおい、人のこと言えるのか?」

「……君にはわからないだろうな」


 そう言って、クウガは大きく振りかぶってエターナルに踏み出た。
 剣道の「面」の構えと同じ。
 隙のない踏み込みであるがゆえに、エターナルは簡単に避けることができた。
 が、避けたところに今度は、「銅」を打つ。エターナルローブが遮るが、それは、刃が通り過ぎた後に風が来るようなキレの良い一撃だった。


「剣道か」


 警察の必修である剣道を、一条ができるのは当然だった。
 ただ、タイタンソードの鎧に包まれた身体がやや重いゆえにそれが少しぎこちない動きになってしまうのが問題か。
 何にせよ、剣道の腕においては一条も克己には負けないほどである。
 攻撃を受け続けて敵に面を与える……という五代の戦法に、一条は更なる味を付け加えることに成功した。


「そういえば、NEVERにはそういう技を使う奴はいなかったな」


 エターナルの足が、クウガの腹へと叩き込まれる。クウガはやや後方へ下がると、タイタンソードを握りしめた。
 と、その瞬間、


「チッ、定時放送か」


 エターナルは舌打ちし、その言葉で残りの二人も定時放送の時間であることに気づく。


『初めまして、参加者の皆さん。私の名はニードル』


 上空のフォログラフィ、首輪から鳴る主催の男の音声。
 それはサラマンダー男爵とは違う人間によるものだ。彼が感じさせていた気品とはまったく違う。落ちこぼれた科学者のような、汚い白衣に包まれた、髪型も髭も無精な男によるものだった。


 ────休戦。


 エターナルにせよ、クウガにせよ、良牙にせよ、その瞬間に敵と戦おうなどという真似はしなかった。
 この時間は戦いそのものを中断するのが暗黙の了解なのだ。
 全員が、互いを気にしつつも、上空のフォログラフィに目を奪われ、首輪の音声をはっきり聞いている。


 下手に敵を襲って、禁止エリアなどの重要な情報を聞き逃したら目も当てられないだろう。
 彼らは、理性というものがあるゆえ、そのあたりの分別はまだついていた。


『では、サラマンダー男爵の時と同じく、まずは第一回放送からここまでの死亡者を読み上げましょう。
 相羽シンヤ、井坂深紅郎、五代雄介────』


 一条と良牙の中で何かが奮い立つ。
 一条はその場にいたのだから、五代雄介の死は誰よりも強く認識している。
 その名前がこうして放送で呼ばれるのは、また不思議な感覚だった。
 大勢の名前は知らない。相羽シンヤや井坂深紅郎がどんな人間なのか、一条ははっきりとは知らない。
 なのに、五代が死んだのを一条は知っている。
 偶然、一条は五代雄介の死を目撃しただけで、確かにこの場では相羽シンヤや井坂深紅郎の死を見届けた人間たちがいるはずなのだ。その人たちはその人たちで、またかなり重い宿命を背負っている。それが不思議だった。
 ……ちなみに、実は、二人とも一条のかなり近くにいたのだが、一条は二人とすれ違い同然の関係だった。



『早乙女乱馬』


 良牙に、心臓を射抜かれたような感覚が襲う。
 まさに、最も身近に「死にえない」人間の名前だ。
 高校の同級生であり、何度戦い合い、何度共闘したかもわからぬ男──早乙女乱馬、その死。
 良牙は、暴力的な衝動に見舞われることさえなく、ただその場で力そのものを失っていく感覚に飲み込まれた。

121届かない、M /─僕はここにいる─(修正) ◆gry038wOvE:2013/03/03(日) 00:04:49 ID:apOUU2pY0


『志葉丈瑠』


 彼らは知らないだろう。
 その名前が、自分たちを助けた男の名前だったことに。
 いつか、気づくことがあるか否かはわからない。
 ただ、二人はあの男の名前を何も知らずに聞き流してしまっているのは申し訳ないと少し心の中で思っていた。
 この瞬間呼ばれているなど、想像もしなかっただろう。


『筋殻アクマロ、スバル・ナカジマ』


 どこまでも縁のある名前ばかりが呼ばれる。
 スバルの名前は、良牙の胸に刻まれていた。あの少女が呼んだ名前だ。
 スバル。
 スバル・ナカジマ。
 良牙は、その名前をきっと忘れない。


『園咲霧彦』


 園咲の名を知る克己も、これに少し反応する。


『月影ゆり、ティアナ・ランスター、パンスト太郎──』


 彼らにとって因縁のある名前が、今回は多すぎた。
 すれ違い。
 名前も知らない相手。
 近くで戦闘を繰り広げていた者。
 元の世界の知り合い。
 克己本人が殺した者。


 あらゆる名前が呼ばれ、死者の名前が呼ばれる時間は終了する。
 天道あかね、という名前が良牙の中で反芻されるが、その名前が呼ばれなかったことに安心感はなかった。
 乱馬の死という痛みを、彼女が抱えているとするのなら──。


『次に禁止エリアを発表します』


 禁止エリアも、知っておかねばならぬエリアだった。
 ここから街に行くには確実に通る森中が、15時からの禁止エリアだ。……まあ、一応目的地は呪泉郷のはずなのだが。
 マップを用意できる状況下なのでマークはできないので、三つのエリアは一条が記憶する。
 絶対に良牙を単独行動させないようにという決意が彼の中に生まれた。


 その後、ボーナスについても発表される。
 強力な兵器、というものがまた気になった。
 しかし、それ以上に、一条や良牙にとっては、殺し合いの状況下でゲーム感覚でなぞなぞを出題してきた主催陣に対する冷めぬ怒りが渦巻いている。


「クソォォォォッ!!!!!」


 辛うじて抑えられていた良牙の怒りが放送終了と同時に爆発し、轟音が鳴る。
 そちらを見ると、良牙の拳のあたりから綺麗に折れた木が有った。
 彼の人間離れした腕力は、木をあまりにも見事に折っていた。
 早乙女乱馬。
 その死が、良牙の中では強くのしかかっていた。


「さあ、始めるか。休戦時間は終了した」


 エターナルは言う。
 勿論、良牙の精神状態を汲み取って、デリケートな言葉をかけるなんて、彼にはありえない。
 ただ、放送はエターナルが提案する稀有な休戦時間だった。
 しかし、いっそ戦闘をして忘れていた方が良いような事実が、良牙には伸し掛かる。
 五代の死を知っていた一条、ほとんどの死に関心がない克己は、戦闘体勢に入っている。
 強い悲しみや、驚きに見舞われることがない。
 だが、良牙には強いショックが与えられていた。

122届かない、M /─僕はここにいる─(修正) ◆gry038wOvE:2013/03/03(日) 00:05:21 ID:apOUU2pY0


(くそっ……。あの野郎が死んだくらいで俺は……)


 早乙女乱馬の死。
 それは、良牙にとってもありえない事象。
 殺しても死なないから、良牙は彼を相手に本気で戦ってきたのだ。
 その全てを否定しながら、乱馬は死んだ。
 良牙が本気を出しても息の根が止められないような男が、おそらく何者かに殺されたのである。許しがたい出来事だった。


(……なんなんだよ……! この湧き出る怒りは! なんで勝手に死にやがるんだよてめーは……)


 良牙のプライドもある。
 はっきり言って、常に乱馬の行動にはイライラしていたし、彼からあかねを奪おうと必死になったこともある。
 しかし、悔しいが……彼が死んだことにより、あかねはきっと笑顔を忘れた。


(くそっ……あかねさんはどうする気だよ……)


 良牙もあかねが好きだった。
 ……しかし、その一方でわかっていたのだ。
 彼女は間違いなく、乱馬と一緒にいるときが一番輝いていた。彼には本心をぶつけていたが、良牙に対してのあかねは優しく笑いかけるだけだった。
 あかねは、良牙を友達としか見ていない。
 それを認めたから、自分は今──


 泣いているんじゃないか──


 と、思っていた。
 乱馬の死を悲しむあかねの姿を必死に想像した。
 それによって自分が泣いているのだと思い込みたかったからだ。


 しかし、実際はそうじゃなかった。
 それも良牙の中ではわかり始めている。
 乱馬と共に戦ったあらゆる日々ばかりが目に浮かぶ。
 そこにあかねの姿はなかった。
 時にはあかねの姿もあったが、良牙はその姿に泣いているのではなかった。


 想い人の悲しむ姿で泣いているんじゃない──
 良牙は、親友の死に泣いているのだ。


「……ダチじゃ」


 良牙は、涙ごしにクウガとエターナルの戦いを見ていた。
 クウガは、タイタンソードを使って、良牙を庇うように戦っている。
 良牙は先ほど倒した木の幹に目をやった。


「ダチじゃねえのかよ、俺たちは……」


 木の幹が立ち上がる姿は異様だったと言えるだろう。
 エターナルとクウガの目の前で、折れたはずの木の幹が、また生えたように立ち上がる。
 それは、良牙が全身を使ってそれを抱え込んでいるからだった。
 人がこんなものを持てるはずがない。
 大木を、僅か十六歳の男が全身で抱え持っている。


「もう会えないなんて俺はいやだぜ!! 乱馬ああああああああああああああああああああ!!!!」


 良牙はそれを思い切りエターナルの方に投げつけた。
 エターナルは初動が遅れたせいでその大木が自分に降りかかるのをよけきれなかった。
 NEVERでもこんな真似ができる奴はいない。
 はっきり言って、化け物としか思えない。


(クソ……だが、面白い奴だ……)


 エターナルの上に大木がのしかかり、エターナルは体を崩す。
 絶句するクウガを前に、良牙は、ここにいる誰でもない男に言った。


「────乱馬! 俺は方向オンチだから言わせてもらうぜ。てめーのいる所には、じじいになるまでたどり着かねえ! 会いたくても我慢しろよ!」


 俺は仮面ライダーごときにやられる男ではない。
 俺は簡単に死ぬ男ではない。
 だから、三途の川の向こうにはたぶんしばらくは行き着かないだろう。

123届かない、M /─僕はここにいる─(修正) ◆gry038wOvE:2013/03/03(日) 00:05:51 ID:apOUU2pY0
 良牙の発言の意味は、だいたいこんな感じだった。
 そして、エターナルを前に見せたこうした技が、その言葉に確かな説得力を持たせていた。


 ……ただ、「乱馬に会いたい」と言っていたのはほかならぬ良牙自身であって、当の乱馬はおそらく天国で「誰も会いたくなんかねーよ」とジト目で彼を見つめていたであろうことは保障する。



★ ★ ★ ★ ★



「……ニードル」


 村雨良はその名前を呟いた。
 つい先ほど上空に現れたホログラフ、そして音声はその男のものだった。
 BADAN──ゼクロスが刻んだ記憶の中にあった悪魔の組織の名前。
 そいつらの追跡をゼクロスは未だに受け続けていた。


「……やはり、BADANが絡んでいたか」

「BADAN、だと……?」


 鋼牙もその言葉に反応する。
 未知の言葉であるが、どうやらこの殺し合いの主催者にまつわる言葉らしいので、情報の一つとして訊いておかねばならない。


「人間を拉致し、記憶を消し、改造して殺戮兵器にする集団だ……ニードルは、そこの幹部だった。そして、俺も……」


 彼の顔は怒りに満ちていた。
 BADANという組織への怒り……奪う者たちに対する憤り、全てを拳に込めつつ、彼はただ震えていた。
 どこにも振るう当てはなかった。


「……」


 鋼牙はそんな彼を黙って見守る。
 人として生きながら、ある日突然奇妙な組織に拉致され、洗脳され、改造され、殺戮させられる……そんな苦しみから解放された彼の先にあったのは、きっとまた苦しみだ。
 この男の辛さがわからない限り、鋼牙は声をかけることができなかった。


「……前回は18人、そして今回は15人の命を……奴らは奪った」


 鋼牙と村雨は、険しい顔をしていた。
 今回の戦死者は15名。それは男女や人間非人間問わずだ。
 魔戒騎士や仮面ライダーの死者はいなかったものの、気になる死亡者は何名か確かにいたし、第一回放送終了以降に何人もの参加者が死んだのを二人は確認していた。


(相羽シンヤ、奴もか……)


 鋼牙が冴島邸で出会ったあの奇妙な男も死んでしまったという。
 それは、鋼牙にとってどことなく寂しいものだった。
 この半日の間に様々な出来事があったために、随分昔に会ったような気分だったが、シンヤと出会ったのは数時間前である。


(スバル……あの女の子が呼んだ名前だ)


 村雨は思い出す。
 どちらも死んでしまったが、あの少女は最後に「スバル」と名前を呼んだ。
 スバル・ナカジマ。
 放送によって呼ばれたその名前で間違いないだろう。──村雨良は、全身のうちで唯一「村雨良」のものである脳に、その名前を刻んだ。

124届かない、M /─僕はここにいる─(修正) ◆gry038wOvE:2013/03/03(日) 00:06:49 ID:apOUU2pY0


((五代雄介))


 二人が確かに知っている名前だ。
 鋼牙は、はっきり言えば彼を看取っただけだが、最後まで誰かの身を案じたというその男の魂に敬意を払っていた。
 村雨は、その名前の男によって心の中の何かを動かしていた。
 そう、人間らしい何かを。



「……行くぞ」

「ああ」


 たとえ、呼ばれた名前に思うところがあっても、彼らは立ち止まるわけにはいかない。
 そう、良牙たちを追い、万が一の場合に彼らに加勢する戦力となるのだ。
 ボーナス、なぞなぞ。それらはまた後で考えればいい。
 内容は二人とも頭の中に叩き込んでいた。────明らかに五代雄介の意味を持つ、「雄介」や一条薫の意味を持つ、「薫」という言葉もあったのだから当然だ。


 二人は良牙たちの向かった場所へと歩き出した。
 検討はついている。
 良牙のことだから、呪泉郷に向かっただろう。……ということはつまり、「呪泉郷ではないところ」。
 そして、この近くで戦闘音が聞こえる場所だ。



★ ★ ★ ★ ★



「……そんな」


 キュアブロッサムが足を止める。
 首輪から響いた放送の音声に、彼女は立ち止まらずにはいられなかった。


「やっぱり、ゆりさんは……」


 これがまず一つ目の衝撃だった。
 月影ゆりは死んだ。──悪役二人に聞かされた話は、やはり事実だった。
 先ほどの出来事で覚悟はしていたが、やはり僅かにここで呼ばれない事を期待したつぼみの胸が痛む。


「……それに、プリキュアのみんなも」


 二つ目の衝撃。
 それは、山吹祈里、東せつなの二名も死亡したことだ。
 共にボトムと戦ったプリキュアの仲間であり、共に遊園地で遊んだ友人たちだった。
 第一回放送終了時点では、来海えりか以外のプリキュアは死亡していなかったが──。


「さやか……五代さん……」


 美樹さやかの死、五代雄介の死。
 いずれも彼女の心を抉るような事実だった。
 放送によって初めて知ったことではないが、やはりあの時の出来事を思い出してしまう。
 二人もの人間が、つぼみの近くで死んでしまった……。
 それは、広間でのクモジャキーたちの死とともに強く刻まれていた。

125届かない、M /─僕はここにいる─(修正) ◆gry038wOvE:2013/03/03(日) 00:07:33 ID:apOUU2pY0


「スバルさん、アヒルさん……」


 それから、何度となくつぼみに襲いかかる戦いや死。──スバルと呼ばれていた女の人。名は知らなかったけどアヒルの姿をしていたあの男の人。他にも、たくさんの死がつぼみに伸し掛かる。
 全ての幕開けであるあのオープニングさえ、つぼみの心を痛めつけた。


「……やっぱり、こんなの間違ってます」


 誰のために争いが開かれたのか。
 何のために殺し合いをしなければならないのか。
 殺し合いをする人は、何故殺し合いをしてしまうのか。
 つぼみの心は、あらゆる疑問が渦巻いていた。


「……えりかが死んで、さやかが死んで、ゆりさんも死んで、みんな……みんな悲しんでるのに────なのに、どうして殺し合いなんて、するんですか!!」


 本当は誰も、殺したくなんてないはずなのに、殺し合いは進んでしまう。
 つぼみは、そのやり場のない怒りをぶつけることができない。
 たとえ、その想いをぶつけたとしても、誰かが答えてくれることはない。


 つぼみに、──キュアブロッサムに出来ることは、誰かを守り続けることだけだった。



 この殺し合いがある理由。「変身」に拘る理由。
 すべて、今のつぼみには解明しようがない。
 だから、つぼみに出来るのは、殺し合いをする人もしない人も──たとえ誰であっても、この殺し合いの会場で犠牲を出さないように奮闘することだけだ。


 キュアブロッサムは再び走る。


 響良牙や一条薫を守らなければならない。
 そして、仮面ライダーエターナルの、心も────。



★ ★ ★ ★ ★

126届かない、M /─僕はここにいる─(修正部分) ◆gry038wOvE:2013/03/03(日) 00:08:30 ID:apOUU2pY0



 倒された木は再びざわめき始め、その下敷きになっていた者の声が聞こえた。


「よう」


 その木を片手でどけながら、仮面ライダーエターナルの白い姿が現れる。
 エターナルローブに包まれていない状態での一撃は、流石にこたえたらしい。
 不意の一撃。まさにそう呼ぶに相応しい攻撃。
 その感触にエターナルは酔う。
 生身であれだけのパワー、そして耐久力。NEVERに一瞬でもダメージを与えた生身の身体能力。
 それを浴びるのは最高の気分だった。


「……エターナルッ……!!」


 起き上がったエターナルを相手に、仮面ライダークウガが警戒を始めた。起き上がった彼の手には、先ほどまでは持っていなかった長い刀を持っていた。
 刀といっても、それは一条ら「リントの人間」の理解を超えた形状だった。まるでグロンギが使うような、古風で異文化的で珍妙な刀であった。それを刀だと見分けることができたのは、持ち手があり、辛うじて銀の刃になっている部分が見えたからだ。
 それは、エターナルが木々の下から掘り出した、自分のデイパックとともに置かれた武器である。
 エターナルエッジが扱いにくくなるゆえ、こうしてデイパックとともに付近に置いておいたものである。
 それが、同じく木の下敷きとなっていたので、エターナルはこうして昇竜抜山刀を手持ち武器にして戦うことにしたのだ。
 一緒に置いてあったデイパックをその近くから放り投げ、エターナルは言う。


「……剣と剣だぜ? 剣道をやってみるか?」


 エターナルの手から振るわれた昇竜抜山刀の先から、かまいたちのような風圧が放たれ、クウガの身体にその衝撃が到達する。タイタンフォームとなったクウガには、それは微々たるものだったが。


「君に蹲踞ができるとは思えないな」

「……武士道とかいうやつか。だが、そいつも俺は忘れちまったな。戦いは常に殺し合い……正々堂々も何もない」


 エターナルは正々堂々戦う気など毛頭ない。
 人をだますことも、不意をついて攻撃することも、彼には躊躇のないことだ。
 ルール通りに戦い合うなど、馬鹿げている。


「なら、それは剣道でも何でもない」

「……そうか。じゃあ、殺り合いだな」


 タイタンソードと昇竜抜山刀がぶつかり合い、鈍い音をたてた。
 それは、竹刀と竹刀の争いにも……あるいは、戦国の争いにもない、古来の異形が使った大剣と大剣のぶつかり合いである。
 だが、一条の動きが剣道に倣ったものであるのは変わらなかった。
 エターナルの攻撃が面ならば、それを受けるように真横一文字にタイタンソードを構える。鎧が邪魔でしなやかさに欠け、いまいちしっかり守るのは難しそうだった。

127届かない、M /─僕はここにいる─(修正部分) ◆gry038wOvE:2013/03/03(日) 00:09:31 ID:apOUU2pY0


「……超変身!!」


 敵の攻撃を強い力で弾き返し、クウガは敵がドラゴンフォームへと変身する。ドラゴンフォームに超変身したために、タイタンソードはエターナルエッジに戻る。
 クウガは先ほど良牙が倒した木から枝を折り、それをドラゴンロッドへと変形させた。


「……ほう、青か。俺のエターナルと同じだな」


 エターナルは、そういいながらエターナルエッジを奪おうと手を伸ばす。


(あの剣が無くとも、このナイフを狙おうとする……ということは、これは彼にとって特別使いやすいものなんだろう……)


 一条はそう考えつつ、ドラゴンフォームのまま何度かエターナルに攻撃を到達させようとする。ドラゴンロッドは、エターナルに向けて何度も振るわれる。
 スピードや俊敏性、瞬発力に特化したこのフォームは、一条にはドラゴンロッド以上に向いていただろう。
 だが……


「……はぁっ!!」


 ドラゴンロッドはすべて、エターナルローブに弾かれ、エターナルが足を巧みに使ってクウガの身体に何発もの蹴りを叩き込む。
 クウガの身体はエターナルの蹴りの方向に向かって回転し、エターナルに背中を向ける形になった。
 そして、そこに今度は昇竜抜山刀の一撃が振るわれる。
 右肩から左わき腹にかけて、強い一撃が放たれ、クウガは悲鳴のような声をあげた。


「ぐああああああっ!!!!!」


 一条とて、クウガのフォームごとの特性を理解していないわけではなかったが、それを見るのと実際に戦うのとでは大きく違う。
 ドラゴンフォームの防御性能がどのくらいなのか、実際のところ、こうして戦わなければわからないのである。
 タイタンフォームの鎧の恩恵も、戦わなければわからなかったのである。


「……クッ」


 しかし、それでもエターナルエッジは離すまいとして、クウガは拳を硬く握ったまま白へと体色を変化した。
 初変身だったのだから、扱いが難しく、すぐに白のグローイングフォームに変化してしまうのも無理はないことだった。


「ハッ!!」


 エターナルの足が再びクウガの腹部に命中し、白きクウガの身体は吹き飛んだ────。
 だが、吹き飛んだ先で、クウガの身体が地面へと落ちていくことはなかった。
 良牙がクウガの身体をキャッチしたのである。クウガは後ろから抱きかかえられた状態で地面にそっと落ちる。


「その弱さじゃもう、お前たち二人は絶望的だな!」


 エターナルがそう言ったが、二人はそうは思わなかった。
 戦う意思があるからではない。勝てる方法があると思っているからではない。


(確かにエターナルが言うとおり、ここにいるのが二人だけならば絶望的かもしれないだろう……だが)


 勝機の足音が二人には聞こえ始めていた。
 三人。
 そう、三人分の足音が、彼らに近づいてきて、やがてその姿が木の間からチラチラと見え始めた。


 ……二方向から、救援が現れたのはその直後のことである。



★ ★ ★ ★ ★

128届かない、M /─僕はここにいる─(修正部分) ◆gry038wOvE:2013/03/03(日) 00:10:40 ID:apOUU2pY0



「良!」

「良牙」

「冴島君」

「薫……か?」

「みなさん!」


 良牙による木の倒壊を合図に、五人の戦士が結集する。
 左端、冴島鋼牙。
 左端と中央の間、村雨良。
 中央、響良牙。
 右端と中央の間、仮面ライダークウガ。
 右端、キュアブロッサム。
 変身、非変身の違いがあれど、彼らはいずれも志の強い戦士であった。


「……五人がかりか。面白いじゃねえか」


 そして、ここからも楽しい戦争の時間が始まることだろう。
 険しい顔でエターナルを見つめる五人の姿を、彼は笑っていた。


 ────と、同時にクウガに変身していたはずの一条薫が変身を解く。


「……くっ……やはりダメージを受けすぎたか……」


 仮面ライダークウガ・グローイングフォームは、戦う覚悟か戦闘能力のいずれかが欠如した状態のクウガである。
 それは変身が解ける赤信号の役割のようなものを果たしている。
 一条は、変身して戦った経験がなく、身体能力の向上に追いついていくこともクウガを扱うことも難しかったし、エターナル自体が強敵だったせいもあり、この形態になってしまったのである。
 更に、グローイングフォームになって変身が解けた場合、その後二時間は変身不可能になってしまう。

129届かない、M /─僕はここにいる─(修正) ◆gry038wOvE:2013/03/03(日) 00:11:28 ID:apOUU2pY0


「……すまないが、後は任せた」


 一条は申し訳なさそうに誰かに言う。
 誰に言えばいいのかはわからなかった。
 冴島鋼牙か、村雨良か、響良牙か、花咲つぼみか。
 しかし、誰かが確かにその言葉を継いで戦ってくれることを彼は信じた。


「……おっと、その前にこいつは返してもらうぜ」


 エターナルの初動は速かった。
 彼は一瞬で一条の前まで走りぬけた。まるで瞬間移動のようにさえ見える。
 エターナルは、一条の首を絞めながら、一条の右手にあるエターナルエッジを半ば強引に掴む。
 敵に武器を返すまいと、一条はエターナルエッジを強く握ったが、残念なことにエターナルの握力を前には無意味だった。
 エターナルエッジを奪った彼の満足げな目を見た一条の身体は、そのまま吹き飛ばされ、高く舞い上がってから地面に叩きつけられた。


「……がほっ、がはっ……」


 一条は、急所か何かを打ったせいか、むせ返る。


「一条さん!」


 ブロッサムが声をかけるが、一条はむせ返りながらも「私のことはいい」と返した。
 ともかく、一条の身体は少しの間このような状態になるだけで、これから行動するのに大きな支障はなさそうだった。
 一条の身体は、それなりに頑丈にできているのだ。
 それより、一条が今気にかけているのは、エターナルの姿だった。


「さあ、残りの四人。誰が俺と戦いたい? 全員かかってくるのも一つの手だ」


 エターナルエッジを構えたままのエターナルは、四人の戦士に対してそう言った。


「……一人ずつ行くぞ」


 鋼牙が言った。
 彼は今のところ、ほとんど「共闘」というやつをしてこなかった。
 銀牙騎士絶狼や、済し崩し的に共闘した仮面ライダーたちくらいだろうか。


 だが、今回はほとんど見ず知らずの相手との共闘。
 それは、冴島鋼牙にとって厄介だった。
 巨大なホラーが相手ならともかく、この体積の相手にした場合、うまく連携が取れず、仲間同士で自滅する可能性だって生じてしまうだろう。


「……まずは俺が行く。良、お前は休め」


 それに、村雨良は疲労の度合いが大きい。
 この中で最も信頼できる相手は一条と村雨なのだが、その二人は今戦闘に出せる状態ではない。
 そのうえ、残りの良牙とつぼみはまだ子供だ。
 できれば、戦いはさせたくない。
 いざ、という時は戦闘力がある彼らにも任せなければならないが……


 エターナルは問う。


「おい、いいのか? 一対一で」

「構わん」


 鋼牙は魔戒剣を右手にぶら下げたままエターナルにゆっくりと向かっていく。
 ブロッサムは、その姿を心配そうに見つめた。

130届かない、M /─僕はここにいる─(修正) ◆gry038wOvE:2013/03/03(日) 00:12:07 ID:apOUU2pY0


「……あの、何なら私も手を貸──」

「手を出すな」


 ブロッサムの言葉を遮ったのは、良牙だった。
 その手はわなわなとふるえている。
 その顔を見ると、彼の顔は目を充血させて怒りに満ちた表情をしていた。
 ブロッサムは思わず良牙を恐れたが、彼は別にブロッサムに怒っているわけではない。


「あいつにはここにいる全員がムカついてるんだ。……これは、誰があいつの息の根を止めるかを選ぶ戦いだ!」


 ブロッサムには良牙の気持ちはわからなかった。
 しかし、ブロッサムも確かにエターナルと戦いたい気持ちがあったのである。
 それは、決して彼の命を奪うためではなく、救うためなのだが。


「それに、エターナルはタフだ……順番にやって体力を崩すのも良い手段だろう。奴自体もそれに気づいているのか気づいていないのか、このやり方に乗ってる」


 良牙は言った。
 鋼牙の中にも、そういう考えはあっただろう。順番に一人ずつ戦うことで敵の体力を削っていくというやり方も一つの手だ。



「それに、俺が勝つにせよ、エターナルが勝つにせよ……アイツが回復するまでの時間稼ぎくらいにはならねえといけない……!」


 良牙は、良の方を見る。
 先ほど、良牙たちを逃がした戦いのうちで、彼はかなり疲弊し切った様子である。
 彼はおそらく順番に一人ずつ戦うなら、最後に戦う戦士だろう。
 現状では疲弊も目に見えており、良牙の中で最も「戦士」として信頼されているのは村雨良──ゼクロスだった。

 それぞれの目的を胸に秘めながら、エターナルとの対戦が始まる。


「面白いな、順番に俺と一対一で戦うゲーム──名づけるなら、【エターナルゲーム】ってところか」


 鋼牙が眉をしかめる。

 ゲーム──それは、この殺し合いにおいて最も禁句となる言葉であった。
 バトルロワイアルというゲームの中で、仲間の死を何度も見ることになる。それを、ゲームと呼んでいいはずがないはずなのだ。
 しかし、最も呼びやすいネーミングであるゆえ、誰もが皆、ついその名前で呼んでしまう。「バトル・ロワイアル」、「殺し合い」と言った呼称よりも呼びやすいのだ。殺し合いに招かれながらも、「殺す」予定のない人間には、喉に引っかかる時がある。
 このエターナルがこの戦いを「エターナルゲーム」と名付けたことで、「ゲーム」という呼称に対する嫌悪感が増した。
 ゲームは遊ぶもの、あるいはバルチャスのように戦略を考えるものだ。
 こんなに辛い思いをしながらやるものじゃ、ない。


 ────仮面ライダーエターナルと、冴島鋼牙が対峙する。


「エターナルゲーム、一回戦の始まりだ────」


 エターナルゲームと名付けられた遊戯が、今始まった。

131届かない、M /─僕はここにいる─(修正) ◆gry038wOvE:2013/03/03(日) 00:19:24 ID:apOUU2pY0
修正部
>>126-128
他は、本投下したものと変わりませんが、全体の流れを通してみて違和感があるかもしれないので、こういう風にしました。
修正点は>>115参照で。

wiki収録で修正する点は、ガロの変身時間に関して「10分」の話を出すシーンと、一条の状態表に背中に傷について追加するところです。
これは普通にカット&追加で、わざわざこちらに投下するまでもないと思うので、ここに併記しておきます。

132 ◆gry038wOvE:2013/03/03(日) 00:49:29 ID:apOUU2pY0
あげておきます

133名も無き変身者:2013/03/03(日) 19:26:30 ID:WsrgJI0g0
修正乙です。
これで大丈夫だと思います。

134g:2013/03/07(木) 17:47:34 ID:cxzccc8g0
ロリ画像掲示板

h ttp://d4u88bqk.seesaa.net/

135 ◆7pf62HiyTE:2013/03/22(金) 20:34:10 ID:NJ7CAxcY0
報告です。拙作『運命の鳥』の状態表にて、あかねの参戦時期に関する部分について以下の通りの修正をwiki上で行った事を報告します。


※参戦時期は37巻で呪泉郷へ訪れるよりは前で、少なくともパンスト太郎とは出会っています。



※参戦時期は37巻で呪泉郷へ訪れるよりは前、少なくとも伝説の道着絡みの話終了後(32巻終了後)以降です。

136 ◆7pf62HiyTE:2013/06/16(日) 21:36:50 ID:krFPqDrQ0
報告です、
拙作『死神の祭典』でガドルが『温度差』で暁がスカルに変身しているのを把握していた様な描写になっていましたが、
『温度差』を読み直した所、神経断裂弾を撃たれたのは暁がスカルに変身する前、つまりガドルは『温度差』でのスカルを把握していない状態じゃないとおかしい為、
そこに絡む部分(他、本編に影響出ない範囲で一部修正)をWiki上で修正しました事を報告致します。

137 ◆OmtW54r7Tc:2013/07/27(土) 00:46:58 ID:rlxwSDZQ0
本スレ366〜369前半までの修正です
鋼牙達と会って以降の展開は同じです


「ここ……ね」

そこにあったのは、相羽シンヤの所持品に椅子の残骸、残骸の上に乗ったクリスタル。
そして…シンヤの死体。


―Luna―


ルナ・ドーパントに変身した京水は、変身によりクネクネになった手で近くに穴を掘り始める。
そして、ある程度穴を掘ったところで、そこにシンヤを埋めた。
シンヤと一緒に、近くに落ちていたボロボロの椅子(おそらくシンヤを守ろうとしたあの怪物だろう)も一緒に埋めた
クリスタルは…一応回収しておいた。
万が一という時タカヤに必要になるかもしれない。

「おやすみなさい…シンヤちゃん」

シンヤの死体はとても安らかで晴れやかな表情をしていた。
とても死んだ人間とは思えないほどに。
だが、それでもシンヤは動かない。
そんなシンヤの死体を埋めると、京水は一人黙祷した。



――それでは、今回の放送は終了です。……みなさん、ごきげんよう――


「なによ、前の放送のやつは結構いい男だったけど、今回は微妙ね。好みじゃないわ」

それが、泉京水の放送が終わった直後の第一声だった。
別にふざけているわけではない。
ただ、塞ぎ込むのは自分の性に合っていないからと、自らを鼓舞する意味も込めて軽口を叩いてみただけだ。
さすがに前回の放送のように同行者がいる場合にそれをやったらただのKYだが、今回は実質一人だ。

138Lの雄叫び/逃避(修正) ◆OmtW54r7Tc:2013/07/27(土) 00:48:33 ID:rlxwSDZQ0
「タカヤちゃん…起きないわね」

背負っている同行者を見つめながら京水はつぶやく。
彼は、おそらく放送を聞いていないだろう。
敵とはいえ、先ほどまで戦っていたとはいえ、双子の弟の死を知ってしまったとき、何を思うだろうか。

「せつな…あの子も死んだのね」

東せつな。
タカヤ共々一緒に行動していた少女。
正直に言うと、京水は彼女をそこまで好きではなかったし、特にその死が悲しいという事もない。
ただ、タカヤがそれを知ったらと思うと、やるせなくなってくる。
もっとも、京水は知らないが、今のタカヤにはもはや東せつなの記憶は消去されているのだが。



「これがシンヤちゃんの荷物ね」

放送を聞き終えると、これまた近くに落ちていたシンヤの荷物を回収する
荷物は3つもあった。
モロトフはこれだけ多くの荷物を回収しなかったようである
支給品など必要ないという事だろうか。
京水は一つ一つ荷物の中身を確かめ、そして…

「剛三、ちゃん……!」

荷物の一つにあったのは、最初の場所で無惨にも殺されてしまった京水の仲間、堂本剛三の遺品、メタルメモリであった。
本当ならこのメモリは剛三が手にしているはずのものだったのだ。
しかし加頭は…まるで道端の虫を踏み潰すかのようなあっけなさで、彼を殺した。

「剛三ちゃん…あなたの無念、私と克己ちゃんがきっと晴らしてあげるわ」

メモリを大事そうにギュッと握りしめると、京水はそのメモリを自分のデイバックの中に入れた。
このメモリはなるべく自分の手元に置いておきたかった。

「私も克己ちゃんも財団Xなんかに屈したりしないわ。だから…天国で私たちの幸せを祈っててよね♪あ、それとも地獄かしら?」


――聞けぇっ!! リントの戦士たちよっ!!!――



「どうしたものかしらね」

変身を解いた京水はこれからの行動について考える。
ここから市街地までは少し遠い。
少なくともタカヤを運びながら進むとなると危険だ。
それにモロトフが街の方へ向かっていたことを考えると鉢合わせる可能性も高い。
そして西方から聞こえてきた声。
声の主は風都タワーで聞いたものと同じ…ガドルによるものだろう。

139Lの雄叫び/逃避(修正) ◆OmtW54r7Tc:2013/07/27(土) 00:50:44 ID:rlxwSDZQ0
しばらく考えたのち、とりあえず京水はここから離れることにした。
ガドルという目の前の脅威から逃げる必要があったからだ。
そんなわけで京水は、タカヤと荷物を抱えると、ガドルのいた場所から正反対の東へと進んだ。
幸いにもガドルは、京水たちに気づくことはなく、西条凪達4人のチームのもとへ向かったのはまた別のお話。



東に進んだ京水はF-6とF-7の境にある橋付近までやってきていた。
さすがにタフなネバーといえども、成人男性一人に5人分のデイバックを背負った状態で全力疾走すれば疲れが出る。
そして、ちょうど川にぶつかったので一度ここで休息を行うことにしたのだ。
京水は川の水を飲んだり、目を覚ますことを期待してタカヤに水をかけてやったりした。(タカヤは起きなかった)
そして休みながらも、西方への警戒を怠らない。
だが、幸いにもしばらく時間が経過してもガドルがこちらへやってくる様子はなく、ひとまずホッと肩をなでおろした。
それにしても、やはり気を失った人間を抱えての行動というのはなかなかハードだ。
せめて、誰かゲームに乗っていない人物と合流できれば、こちらの安全度も高まるのだが。



ザッザッザッザッ



と、そんな時、足音が聞こえてくる。
方向は北。ガドルのいた場所とは別の方向からだ。
しかも足音が聞こえるほど近くにいるという事だ
京水は再び警戒しつつそちらを向いた。
そして……



「イケメンキター!」



吠えた。
目の前の人物がイケメンだと分かった瞬間、先ほどまでの警戒はどこへやら、京水は叫んだ。
突然叫び出した男に、そのイケメンと同行者の少女は若干引きつつも、接触してきた。




以上です
それと、京水の状態表で疲労(小)を(中)に変更します
これは収録時に変えておきます

140名も無き変身者:2013/07/27(土) 23:48:01 ID:kaaM3kE20
修正乙です。
銃声を聞いてバットショットを放つシーンを変えた形ですね。
特に指摘された部分は問題はなくなったと思います。
前回の京水の話はシンヤの支給品とかを探しにいくところで終わってたんですが、その途中で放送を聞いたという流れでいいんですよね?

141 ◆OmtW54r7Tc:2013/07/28(日) 01:14:30 ID:rlxwSDZQ0
>>140
そうですね、シンヤを埋葬したところで放送という事にしました
特に問題ないということなので後日収録しますね

142悲劇の泉でやりたい放題です!(修正) ◆gry038wOvE:2013/09/16(月) 02:06:01 ID:Jb4jQKnY0
投下します。

143悲劇の泉でやりたい放題です!(修正) ◆gry038wOvE:2013/09/16(月) 02:06:39 ID:Jb4jQKnY0
 花咲つぼみと一条薫、──そして響良牙さんの三人が、逃走の果てにたどり着いた場所は、呪泉郷という名前の修行場であった。良牙と一条のみが、ここを知る。
 暗黒騎士キバからの逃走経路の都合上、一条たちはD−7からC−7に一度戻る必要があった。 彼らと行動している花咲つぼみがこの泉の群れを見るのは初めての事となるが、太陽を映し出す幾つもの泉は非常に美しい光景であるように見えた。此処が呪いの泉である事など忘れるほどである。

「結局またここに戻って来ちまったな……」
「ああ……しばらくは動けないかもな」

 良牙もまた、この時ばかりは自分が逃げ延びて此処にいる事を忘れて、泉の景色を眺めていた。詰所の近くなら、そうそう泉に落ちる事などない。そこで、三人で泉の景色を眺めた。
 ここから市街地に向かう道中で戦闘が行われている。変に動く事もできないだろうし、ここから先どうするべきだろうか。
 ぼーっと眺めつつ、良牙も考えるが、良牙は、そうした地理関係が苦手で、どうしても目的地と真っ直ぐに線を引いて道を突っ切る方法を選んでしまう。明らかにまた戦闘に出くわしてしまうだろう。

 此処にはもう、誰もいない。
 誰かいた痕跡すら、この場所には無い。

「……誰かがここに来たなら、行き先でもメモして置いといてくれりゃあいいのになぁ……」

 と、良牙は思う。
 あかねは本当にこの場所を目指したのだろうか。自分の思い違いなのではないだろうか。
 詰所の中にメモでも置いておいてくれれば、良牙はそれをもとに次の場所に向かう事ができたが、そんなものはここにはない。

「確かに呪泉郷なんかに長居はできねえだろうが……」

 と、言いかけた時。

「……ん? 待てよ……?」

 ふと、良牙は一つの事実にたどり着く。
 そんな良牙の顔を残りの二人が訝しげに見た。
 過去に呪泉郷に来たときは、そういえば気づかなかった一つの事実。

「本当にここが呪泉郷なら……男溺泉があるはずじゃねえか!!」

 ここまで忠実に呪泉郷を再現しているのなら、おそらく多くの泉は本物だろう。
 良牙にもこの社務所は覚えがあったので、すぐにここは本物と全く同じ呪泉郷なのだとわかった。
 ならば、もしかするとここにある呪泉郷は正真正銘の本物なのかもしれない。本物であれば、当然その効果は本物の呪泉郷と全く同じはずだ。

 良牙は他の二人を置いて一人で走り出した。
 たくさんの泉の群れの前まで、良牙は凄まじいスピードで走っていく。
 その姿に遅れ、「どうしたんですか、待ってください!」、「待ってくれ! そうしたんだ」という二人の声が聞こえたが、良牙の耳には届かない。あまりにも突然、良牙が走り出したもので、二人とも戸惑ったのだ。
 良牙は、そんな二人を置いてまで走り、呪泉郷の前まで辿り着く。




 だが……




「……どれが男溺泉なのかわからん」



 良牙の前でぴゅーと風が吹いた。
 目の前にある無数の泉の中から男溺泉を探すのは至難の業だ。大きく見積もって百を超える泉がある。何か区別があるならともかく、呪泉郷の泉はどれもぱっと見た限りではただ棒が突き立っている泉でしかない。
 案内してくれる人間や地図がなければ、どこに男溺泉がわからないのだ(良牙なら地図があっても志葉屋敷あたりにたどり着くかもしれない)。
 後ろに、またまたつぼみと一条がついてきた。

144悲劇の泉でやりたい放題です!(修正) ◆gry038wOvE:2013/09/16(月) 02:07:10 ID:Jb4jQKnY0

「一体、どうしたんだ」
「この泉のどこかに、俺が探している泉があるんだ。そこに入れば……俺の呪いが解ける」
「呪い……?」
「ああ、世にもおぞましい呪いだ……」

 しかし、その先を口にする事はなかった。彼にもプライドがあるので、流石に、子豚になる事を言いたくはないのだ。

「……仕方ねえ!! こうなったら片っ端から泉に入ってやるぜ!!」

 良牙はすぐに駆け出して、走り幅跳びでもするかのように勢いをつけて高く跳び、泉の一つに飛び込む。
 もはや、やけっぱちであった。とにかく、入りまくればどこかで男に戻れるだろうというくらいに投げやりな考え方で、良牙は彼らに何も告げる事なく泉にダイブしたのであった。
 何でもいいから、男に戻りたいのである。

「良牙さん、一体何をっ!!?」

 三度、つぼみと一条が、良牙の姿を追いかける。
 しかし、追いついた頃にはその泉は、つぼみたちの目の前で巨大な水しぶきを上げており、周囲にいたつぼみと一条はその水を頭から全身まで、その巨大なしぶきが作り出した波を被る事になった。

 ざぱーん、と音が鳴る。

 思わず、つぼみも目を瞑るが、すぐに飲み込まれていく。
 泉の水が全て空になるのではないかというほどの衝撃だが、勢いをつけたうえに高く跳んだ良牙が落下したのだから、水柱が立つのも当然といえよう。
 つぼみが目を開けて前を見る。全身はびしょ濡れだが、そんな事よりも、水量がかなり減った目の前の泉の方が気がかりだった。

「お? ちゃんと人間の姿じゃねえか! ……よし! 適当に入ったが、どうやらちゃんと戻ったようだぜ……」

 ──そこには、良牙と同じバンダナを頭に巻いて、良牙と同じ黒い服を着た“少女”の姿があった。
 泉の水量が大きく減った今では、彼女の胸元が膨らんでいるのがよく見えるので、そこにいるのは良牙ではなく少女なのだとすぐにわかった。

「……ってあれ? 俺、こんな高い声だったかな……? あれ? あれ? ……って俺、女になってるじゃねえか!!!」

 そう、良牙が入ったのは娘溺泉だったのである。
 つぼみは、その言葉でこのバンダナの少女は、やはり響良牙なのだと再認識する。
 しかし、男が女になるわけがない。つぼみも男のようにカッコいい女の子の事ならよく知っいてるし、ついさっき出会った人は男でありながら女の言葉を使っていたが、体格ごと明らかに違っているのは“在り得ない”事なのである。

「ど、どうして、良牙さんが女の子に……?」

 良牙の高い声を聞き、膨らんだ胸元を見たつぼみには、そんな疑問が浮かんでくる。
 目の前にいるのは、どう見ても良牙ではないではないか。

「あー、…………コホン」

 つぼみの真横で、咳払いをする声が聞こえた。
 そこにいるのもまた──ライダースーツを着た女性であった。“彼女”は一条薫だろうか。
 今、頭から大量の水を浴びたために、良牙と同じく女性になってしまったのである。
 大人の女性になった一条の姿は、異世界でグロンギと戦っていた女性警官の姿に似ていたが、そんな事はここにいる誰も知る由もない。


「どうやら、君の当てが外れたようだな」

 ……静かな怒りを言葉に含ませながら、一条は、そう訊いた。





145悲劇の泉でやりたい放題です!(修正) ◆gry038wOvE:2013/09/16(月) 02:07:53 ID:Jb4jQKnY0



 ここから、良牙の説明を聞くために詰所に戻った三人は、説明を聞くよりも先に、まず風呂に向かった。全身がびしょ濡れな彼女らとしては、とりあえず風呂に入らなければならない。この殺し合いに来てから、全身が濡れるのは、第一回放送後に川に落ちて以来、二回目になる。実を言うと、それも同じ人間のせいだったが、つぼみは知る由もない。
 狭い詰所ながら、風呂くらいはあった。着替えは、さやかの支給品の黒いタイツスーツ──デストロン戦闘員スーツを使うしかない。このスーツは三着あったが、一条のライダースーツは水を弾いていたので、とりあえず必要となるのは自分の分と良牙の分で二つになるだろう。
 服は全て、適当な場所で乾かす。下着は、ドライヤーで乾かせばいいだろうか。

 かぽーん。

「……ふぅ〜……極楽ですぅ〜」

 頭にタオルを乗っけて、つぼみが呟いた。
 決して大浴場というわけではないが、全身の力が抜けていくような感覚である。
 ここまで、随分いろいろあったものだ。泥にまみれ、砂にまみれ、敵と戦い、悲しんで……服もボロボロになりそうだったし、随分と身体も疲れた。
 このままずっとここにいたいほどに、つぼみは疲労困憊である。
 暖かすぎて、頭がぼーっとしてくる。
 悲しい事も、ここが殺し合いである事もだんだんと忘れられていく。そんなお風呂の温かさが、つぼみをここにずっといたい気持ちにさせていた。
 だが、やはり無理だ。
 風呂を堪能しに来たわけではない。濡れた体を温め、服を乾かし、ついでにシャワーでも浴びて身体を綺麗にするために来たのだ。
 唯一休息といえる三分間は、あっという間に過ぎる。

「……善は急げ……こうしちゃいられないですね」

 つぼみは、その後石鹸で身体を洗い、すぐに風呂を出て、脱衣所で身体を拭く。
 その後、少し恥ずかしいがタイツスーツを着て、下着をドライヤーで乾かして、衣服を室内に干す。流石に、衣服をドライヤーで乾かすほどの時間はなかった。







 その後、つぼみがデストロン戦闘員スーツというのを着たまま、女良牙とバトンタッチした。風呂があるので、ポットに入ったお湯は使っていない。コンセントを使って、ポットを温めているところを見ると、水やお湯も補充したのだろうか。ここには四つものポットが並んでいた。ポットだらけなのは何故だろうか……。
 一条は、ライダースーツではなく、いつものコートを着ていた。滝のライダースーツは男性用に作られていたためか、やはり胸が苦しいようなのだ。

「……一条さん、デイパックの確認ですか?」
「ああ。随分とたくさんのデイパックを手元に置いてしまったからな。……君も、何か必要そうなものがあれば自由に持って行ってくれ」

 いま、机の上には、一条のデイパックの中身が並べられている。一条は、それでもまだ中身を並べつづけていた。几帳面な性格なのか、ペットボトルはペットボトルで一か所に、食料は食料で一か所に、と分けられていた。つぼみも多分このように並べるだろうが、おそらく良牙はもっと乱雑に並べるだろう。

「……説明書があったものもあるから、自由に見てくれていい。ペットボトルや食料の類は、後で三等分する。他の参加者が口をつけているものは脇に置いてあるから、心配する必要はない」

 一条は、いろいろと配慮ができていた。
 そうしたペットボトルも、後で中身を捨てて洗い、水道の浄水などを入れるようだ。

「あっ! これ……」
「知っている支給品があったか?」

 つぼみが、ある支給品に気づく。
 それは、赤、青、マゼンダの三色の小さな物体と、黄色、紫、オレンジの同じ形状の物体が分けて置いてあった。綺麗に透き通っており、その姿は宝石を彷彿とさせる。しかし、宝石というほど確かな輝きはなく、人の目をくらませる魔力もない。
 つぼみは、これを知っていた。

146悲劇の泉でやりたい放題です!(修正) ◆gry038wOvE:2013/09/16(月) 02:08:58 ID:Jb4jQKnY0

「……こころの種です」

 プリキュアが敵との戦いから手に入れるこころの種であった。
 ココロパフュームやシャイニーパフュームに装填する事で、それぞれプリキュアの力を高めたり、気分を高揚させたりといった効果を発揮する。
 パンスト太郎という男と、先ほど出会った泉京水の支給品であった。

「なるほど……。君たちが使える支給品もあったというわけだな」

 それから、全ての支給品の詳細を読んでいく。
 説明書にはものすごく簡潔な文章しか書いておらず、お陰で良牙が風呂を出る前に全ての支給品の確認が終了する。つぼみの所有分も開示されたが、ココロパフュームと鯖だけしか持っていなかった彼女が、これだけたくさんの支給品に囲まれる事など、誰が想像しただろうか。

 T2ガイアメモリだけでも相当な数があった。
 京水が所有していたT2ルナメモリ、T2メタルメモリ、の他に、来海えりかの支給品からはT2ウェザーメモリが見つかった。良牙が持っているT2エターナルメモリやT2ゾーンメモリを含めれば、相当な数に上るだろう。
 その他には、バットメモリやスタッグメモリといった特殊なものもあった。ギジメモリというらしく、バットショットやスタッグフォンを起動するために使用することができる。
 これは五代雄介にも支給されていた。
 彼が所持していたのは、スパイダーショックという同様のメモリガジェットであった。
 ともあれ、これでバットショット、スタッグフォン、スパイダーショックの三つのメモリガジェットが手元にあるという事になる。

「ただのノートみたいなものもありますね……」

 中には、ただのラクガキノートのようなものもあった。
 プリキュアのようなピンクの衣装を着た可愛い女の子の絵が描いてあるが、何かのデザインだろうか。しかし、確かに上手いがデザイナーの絵というわけでもなさそうである。
 どうやら一条の支給品らしい。

「何となくだが、君たちが変身するプリキュアに似ているな……私にとってはいらないが、もしかしたら何か君たちに関係があるものかもしれない」
「そうですね……でも、この絵、プリキュア以外の誰かに似ているような……」

 一条はあまり見ないだけで、こういうアニメは結構あるので、もしかすれば知っているものかもしれない。
 本当にプリキュアかもしれないし、これと同じ位置にリボンをつけた少女に覚えがあるので、念のためにつぼみはそのノートをもらった。

「この辺りは普通の武器だな」

 五代の支給品の中には、非常に鋭利な刀があった。
 ミカヤ・シェベルという人物が使う居合刀と書いてある。明らかにその刃渡りは銃刀法違反に抵触するレベルであったが、特殊な認可を受けていれば問題はない。
 ミカヤ・シェベルという人物はその認可を受けたのだろうか……と一条は考えた。
 この居合刀は結構な重量があり、相当な達人でなければ使いこなせそうにないものだが……。
 とにかく、つぼみはそれを受け取る気はないようで、そのまま一条のものになる。

「……これは……ただのまねきねこですね」

 腑破十臓の支給品であるまねきねこは、シュールな雰囲気を醸し出している。
 こうして武器等が並べられている中でも圧倒的な存在感を放っているのは珍しい。
 だが、誰も欲しがる事はなかった。

「これはなんだ? ……しかし、よくこんな巨大なものが入っていたな。やはりデイパックに至るまで特殊なのか」

 来海えりかの支給品の一つである、大貝形手盾は、おそらくえりかの身長では扱いきれないほどの巨大な盾である。
 禍々しい牙を幾つも生やしたような形状は、使う気を失くさせる。
 まあ、持っているに越したことはないだろうか。ずっと所持していると相当かさばりそうなので、とりあえずデイパックに入れ直す。やはり、嘘のように簡単に、吸い込まれるように入っていった。

「これは洗剤……? この二つ、混ぜると危険なものみたいですけど……」

147悲劇の泉でやりたい放題です!(修正) ◆gry038wOvE:2013/09/16(月) 02:09:42 ID:Jb4jQKnY0

 泉京水には洗剤が支給されていた。
 一見すると武器でも何でもないが、こうした洗剤は混ぜると非常に危険なガスを発生させるのである。
 そして、二つの容器には相反する二つの成分が入っている。

「これも、このスーツみたいな衣装と同じものでしょうか?」

 相羽タカヤの支給品には、黒い布があった。デストロン戦闘員のスーツと酷似しているが、畳まれていたその布を開いてみると、タイツスーツではなく、もっとしっかりした服であるとわかった。
 歌舞伎の黒子のようなマスクがあるところを見ると、そうしたものなのだろうか。
 恥ずかしさで言えば、こちらを着用した方がマシに見えるが、今更着替える場所もない。実質的には男性の一条はともかく、つぼみは本質が女性だ。男性の心を持つ人間の前で着替えるのは抵抗がある。

「……こっちは、i-podですか?」
「あ、あいぽっど……?」
「音楽を聴くための道具です。少なくとも、私の世界にはありますけど……」

 腑破十臓に支給されていたi-podを一条は知らない。
 仮に、一条の世界に存在していたとしても、一条がこういう機械を操作する事ができるとは思えないが……。
 つぼみが収録されている曲を確認すると、多すぎて目を回しそうになった。

「……『Alright! ハートキャッチプリキュア!』、『HEART GOES ON』、『Let’s!フレッシュプリキュア』、『仮面ライダークウガ!』……?」

 などなど、見ていくと幾つか気になる曲名があった。自分たちにテーマソングがあった覚えはないが……。
 『HEART GOES ON』は文化祭で友達二人が歌っていた曲である。
 他にも、だーっと並んでいる曲の中には、幾つも気になる曲があったが、聞き覚えのない曲はいきなりこんなところで聞く気にはならない。
 イヤホンも付属しているので、聞きやすいかもしれない。

「……とにかく、気になるならば貰ってくれ。私は、そういうものは苦手なんだ」
「わかりました。……ありがとうございます」

 説明書に目を通したら、デイパックから出して、イヤホンを外して使うと、その場に合った音楽が流れるらしい。
 特に、戦闘中に音楽を流すという機能がついているらしい。
 とにかく、ただのi-podではないようである。なるべく、イヤホンを装着した状態にしておきたい。

「こっちにある本は……?」
「ああ、それは……私の支給品と、相羽タカヤの支給品だ」

 ここに置いてあるのは、トルストイの『戦争と平和』と、レイモンド・チャンドラーの『長いお別れ』だ。
 何故、こうした本が支給されているのかはわからないが、そもそも鯖を見た時点で、支給品のひとつひとつに詳しい意味があると考える事はやめている。
 一条としては、この『戦争と平和』という本が以前、グロンギの隠れ家から見つかった本と同じ装丁のものである事が気になったが、深くは考えなかった。

「読む暇はなさそうだな……」
「そうですね……」

 二人とも、本を読む事自体は嫌いではないが、やはり長編小説を読むほどの時間も心の余裕もなかった。

「こっちはプラカードですね」

 五代雄介にはプラカードが支給されていたようである。
 サインペンや、黒板消しのような形のクリーナーが同じように支給されているところを見ると、何度でも書いたり消したりできるようだ。
 音を立てずに遠くに何かを伝達する時などに使えるだろうか。

「……このディスク、確か、響くんにも支給されていたな」

 美樹さやかの支給品である秘伝ディスクを見て、一条が言う。
 良牙にも同じく、秘伝ディスクというものが支給されていたらしい。
 基本的に、一般人には使う事ができないものであった。

148悲劇の泉でやりたい放題です!(修正) ◆gry038wOvE:2013/09/16(月) 02:10:19 ID:Jb4jQKnY0

「……これは『反』という字が書いてあるみたいですけど、良牙さんのディスクの字は読めません……」

 さやかのディスクは反という字が書いてあったが、良牙のディスクは何が書いてあるのか全然読めない。
 とにかく、どちらにせよ使いどころはなさそうである。

「こちらは銃器か。レミントンM870だな」

 えりかの支給品であるレミントンM870。これは一般的な女子中学生が知るものではない。
 一条のように警察という職業に就いていて、尚且つ日本中が特殊状況下にあるために銃器を頻繁に使わされる人間ならば知っていてもおかしくないが、えりかが知るわけはなかった。
 つぼみにとってもその使用方法などはわからないので、レミントンは一条の手に渡った。
 良牙もこれを気に入る事はないだろう。

「ん? ……一条さん、これって……」

 つぼみは、机上に小さく置いてある“あるもの”に気づいて、一条に見せた。

「ああ、それなんだが……」







 それから、二人は全ての支給品を片づけ、デイパックに元通りに戻した。良牙が風呂に入る前の時点で、一条もかなりの量の支給品を机上に出していたので、良牙も一条の支給品の必要と不必要の分別はしていた。
 それから、つぼみの持っていたものの確認をしたが、そこに良牙が必要とするものはない。

 お湯につかった一条と良牙は、既に元に戻っていた。

「なるほど……それで呪いの泉の郷なんですか……」

 つぼみは、良牙から全てを聞いて納得する。
 良牙の話は、おとぎ話のような不思議な世界の話であるように感じた。人が溺れた悲劇の話から、その泉で溺れた者や泉の水を浴びた者が同じ呪いにかかる……つぼみが昔読んだファンタジーのような話だ。
 しかし、不思議なのは、その呪いの泉が大量にある事である。この近辺でばかり何でもかんでも溺れるのは理不尽なレベルだが、なんだか呪われそうで嫌なので、何も言わなかった。

「まあ、娘溺泉だったのは、不幸中の幸いだったか……。全員が猫にでもなっていたら一体どうすれば良かったのか……」

 とりあえず、一条は全員が意思疎通可能な人間である事が不幸中の幸いだと思う事で気持ちを静める。つぼみも含め、全員が別の生物になっていれば大変だっただろう。
 こうして、互いが誰なのかを認識し合っているために、今は大きな混乱も無いが、もし、全員が猫になっていたなら、意思の疎通さえ図る事ができず、パニックになっていたはずだ。

「そうだ! もしかして、あの時のアヒルさんも、きっとこの泉の水を……」

 つぼみは話を聞いて、良牙があのアヒルの事を知り合いだと思った事や、あのアヒルが最後に人間になった事などを思い出した。
 すべて、辻褄が合う。やはり、あのアヒルもまた、呪泉郷に呪われたアヒルだったのだろう。人間に戻る事ができたのは不幸中の幸いと言っていいのだろうか。

「ああ、たぶんな……俺の知り合いのムースも同じくアヒルになる男だったんだが……」

 ムースの名前には聞き覚えがあった。つぼみの持っていた眼鏡の本当の持ち主である。
 アヒルをムースと勘違いしていた理由もこれでわかった。

「……しかし、このままの体質だとかなり厄介だな」

 一条が深刻な表情で言う。
 水を浴びられないというのは今後の人生でかなり面倒な話である。雨にでも降られたら、そのたびに女性になるのだろうか。

149悲劇の泉でやりたい放題です!(修正) ◆gry038wOvE:2013/09/16(月) 02:10:57 ID:Jb4jQKnY0
 女性の不便さはこれまでの人生でも充分知っている。女性の強さや、女性である事の利点も当然知っているが、不便な点も多すぎるのだ。この姿のままではいられないだろう。
 だいたい、元の世界でも職務に困ってしまう。自分がクウガになり、同時に水を被ると女性になる体質である事になってしまうが、果たして元の世界の同僚はどれほど受け入れてくれるだろうか。

「……とにかく、俺達は男溺泉を探すしかねえな」
「そうだな」

 良牙と一条は互いの目を見て誓い合う。
 つぼみが猫などになったらそれこそ洒落にならなくなるので、とにかくつぼみ以外の全員で男溺泉を探す事にしたのだ。
 つぼみは後ろでサポートという形になる。

「……あの、良牙さん。絶対に、思いっきり飛び込んだりしないでくださいね」
「ああ」







 タオルを腰に巻いた二人の男が並び立つ。
 巨大な生物になった場合、服が弾けてしまうので、とりあえず服は着ていないのだ。
 つぼみとしてもそれを直視するのは恥ずかしいが、とにかく後ろで彼らの様子を見るしかない。

「タコですか……」

 良牙がいま入った泉は、タコが溺れた章魚溺泉であった。
 つぼみの目の前で、巨大なタコが蠢いている。良牙はいきなりとんでもない泉に入ったらしい。頑張ってタオルを足で持っている。

「……こっちは猫さんですか」

 一条が入った泉は、猫が溺れた猫溺泉である。
 彼は優雅で毛並の良い猫であった。とにかく、この泉は男溺泉ではないと認識した一条は、すぐに別の泉に向けて走り出す。

「あ、阿修羅……? 阿修羅が溺れた泉なんてあるんですか?」

 今度は、阿修羅溺泉で良牙が阿修羅になっていた。
 幾つもの手と顰めっ面を持った良牙が火を吐いている。かなり強そうであるが、生活には不便そうだ。

「……今度は一条さんが可愛い男の子になってます」
「む……。君より若くなってしまったな……」

 一条は、童子溺泉で男の子になっていた。
 可愛らしいが気品のある聡明そうな子供だったため、つぼみは子供一条が少し可愛いと感じる。一応、男には戻ったものの、子供ではもっと不便だろう。そのうえ、一条のこの口調はこの姿では少し変だった。

「えーっと……今度は何でしょう。ごめんなさい、わかりません」

 良牙は、パンスト太郎と同じく牛鶴鰻人溺泉につかり、いろいろと混合した怪物になっていた。
 流石に、初見のつぼみにも判別不能である。牛のような角があるので、牛鬼とかそういう妖怪の系統だろうか?

「……お、狼さん……怖すぎです」

 一条の方に目を移すと、彼は狼になっていた。華麗で聡明そうな狼であったが、やはり人間から見れば狼の姿はワイルドすぎたため、つぼみは怯えた。
 襲い掛かりかねないイメージが強いのだ。

「……パ、パンダさん……?」

 更に今度は、良牙が乱馬の父のようにパンダになっていた。
 パンダであるのも確かに強そうだが、日常生活では不便すぎるだろう。

150悲劇の泉でやりたい放題です!(修正) ◆gry038wOvE:2013/09/16(月) 02:11:40 ID:Jb4jQKnY0
 つぼみはこんな感じで、あらゆる泉に入る二人の様子を見守っていた。

 ……見守っているといえば確かに聞こえは良いかもしれないが、実際には見ているだけである。協力の形を取っている部分といえば、身動きが取れなくなったり、移動に手間がかかるほど小さくなったりした時の運搬ができる点だけだろうか。
 どうにも、助けになれていない気がして、もどかしい気持ちになってしまう。

「うーん……どうにかして二人のお手伝いができませんかねぇ……」

 つぼみは、まだまだ変身する一条と、パンダになってサボりだした良牙を見て思わず呟いた。
 何か手伝える方法はないだろうか……とつぼみが考える。
 だが、自分が別の生物になってしまうと、後でいろいろと困る。
 しかし、そのままぼーっと考えていると、ある事に気づいた。

「……そうだ、私にもあれがあるじゃないですか!!」

 ふと、何かに気づいたつぼみは実況解説をやめて、腕まくりをする。
 使えるかもしれないものが一つあった。

「じゃじゃーん!」

 思いたったらすぐに自分のデイパックを開けたつぼみは、活きの良い鯖を掴んでいた。そう、鯖だ。鯖といえば少なくとも生き物である。そんな鯖を、つぼみは泉の中に入れた。
 つぼみの手も泉に浸かるが、手が入った程度では、この泉の効果が表れない。
 この鯖のように全身が浸かってこそ、初めて姿が変わるはずなのだ。

 しかし──

「駄目ですか……効果はないみたいですね……」

 どうにも、効果らしいものは現れず、鯖に変化はなかった。
 鯖は鯖でしかなく、何になる事もない。
 人にしか変化は起きないのだろうか。魚が溺れるというのも、猿が木から落ちるくらい変な話だし、まさかこれが鯖溺泉という事もないだろう。
 別の泉に漬けてみたが、やはり鯖は鯖のままだった。つぼみは、すぐにデイパックに鯖を戻す事になる。何故腐らないのかは謎であった。

『オイ! なんで俺ばっかり変な姿になるんだよ!』

 良牙パンダが、支給品のプラカードにサインペンでそう書いてこちらに訴えていた。
 良牙がこれまで変身している生物は、確かに珍妙なものばかりだった。対して、一条はそこまで変なものではなかった。
 しかし、それに理由があるとしたら、やはり良牙に運がないだけだろう……。
 聞かれても困るので、つぼみはたじろぐ。
 どう答えれば満足なのだろうか。
 その時──



「あったぞ!! これがたぶん男溺泉だ!!」



 良牙がサボり、つぼみが戸惑っているうちに後ろから一条の大きな声が聞こえた。
 そちらを見ると、一条が泉に半身をつかりながら、男の姿のままで良牙のほうに手を振っている。泉に入っているにも関わらず、その姿が男であるという事は──間違いない。
 そう、どうやら一条が遂に男溺泉を見つけたらしいのである。
 良牙は、自分が変な姿になる理由の答えを聞きたがった事など忘れて、すぐにそちらに駆けだした。







「……子豚にならない」

 じーん、という擬態語が良牙の後ろで文字に現れるほど、良牙は感動に胸を震わせていた。自分の全身が、いま確かに変身体質を克服し、何があっても男であり続ける普通の男になっている。

151悲劇の泉でやりたい放題です!(修正) ◆gry038wOvE:2013/09/16(月) 02:12:11 ID:Jb4jQKnY0

「……良牙さん、子豚さんだったんですね」

 今の台詞でつぼみにもわかったが、良牙の以前の体質というのは、どうやら子豚化だったらしい。

「ああ! 俺は確かに豚だったさ! だが、もうそんな事もどうでもいい!! 遂に俺は変身体質を克服した!! これで水を被ってもあんな情けない豚にはならねえ!!」

 心からの喜びを表現するつもりか、顔に笑顔を張り付けたまま、手でバンザイしてスキップしている。
 あまりに不気味な姿だったので、つぼみたちは少し引き気味である。
 もはや、良牙にとって自分が豚だった事など遠い過去の話。それが発覚したところで、どうでもいい。それくらいに彼の心は悦びに満ちていたのである。

「ありがとうっ!! 二人とも……!! 俺は……二人のお蔭で遂にただの人間に戻れたんだ!!」

 つぼみと一条の手を交互に軽く握り、感謝を表現する。
 良牙は普段はクールを装っているが、本質はコレであった。つぼみにしろ、一条にしろ、少しは感じ取っていたが、怒りだけでなく喜びの表現まで極端だとは思わなかったのだ。

「……あの、とりあえずここはもう立ち去るっていう事でいいんですよね?」
「ん? ああ、俺はもういいぜ。すまねえな、二人とも。迷惑かけちまって……」

 陽性の感情が膨らむと同時に、自分が彼らにかけた迷惑を思い直して素直に謝るだけの真心が芽生えた。
 謝りながらも、無駄にさわやかな笑顔で良牙はそう謝る。
 それならまあ良いか……とばかりに、一条は苦笑いをした。

「……これから俺達が向かう先は、街の方だよな」

 良牙が言う。
 元々、鋼牙とつぼみは共に街に向かっていたのだ。18時までに一文字という人たちと落ち合う予定である事も聞いている。
 そのため、街に向かおうとするのは当然だった。

「ちょっと待ってくれ」

 だが、良牙が街に向かおうとして村の方角を向いた時に、一条が制止する。
 てっきり、向かう場所の訂正をするのかと思っていたが、一条の言葉は違った。

「君には言い忘れていたんだが、先ほど、あの人の支給品の確認をしたときに少し気になるものを見つけたんだ」

 ……あの人というのは、京水である。あの男性とか、あの女性とか、そういう表現がしづらかったのだろう。それで、つぼみは気づいた。あの支給品について話すのだろうと。
 どうしたんだ、と良牙が訊く。

「これだ」

 一条は懐から四角い小さな物体を取り出すと、わかりやすいように掌に乗せて見せた。
 つぼみは、てっきり良牙も確認しているものだと思っていたが、彼は机の上の支給品について、そこまでよく観察していなかったようである。
 まあ、秘伝ディスクやガイアメモリの説明書を見落としている彼なので、その辺りも仕方がない。

「こいつは……」
「見覚えのある形だと思わないか?」

 あまりにも小さく、用途は不明に見えるが、このサイズの四角い物体を見た瞬間、ここにいる三人はその用途を直感で認識する事ができた。これにピタリとはまりそうな“くぼみ”を知っていたのである。
 その物体には相羽タカヤが読んだ説明書が付属していたので、一条はそれにも目を通していた。

 そこには──

「これはメモリーキューブ。納められた記録、あるいは記憶をZXに与える──説明書には、そう書いてあった」

 そう、仮面ライダーゼクロス──村雨良の記憶が収められているという、良牙が推測したとおりの記述があったのである。

152悲劇の泉でやりたい放題です!(修正) ◆gry038wOvE:2013/09/16(月) 02:12:55 ID:Jb4jQKnY0
 良牙たちが望んでいた物だった。
 つまり、これを彼の死体にはめ込めば、唯一彼に欠落した記憶というのを返してやる事ができる。──そんな支給品だ。
 勿論、これがはめ込まれたところで、彼が生き返るわけでも何でもない。ただ単に、彼の生涯の悔いをなくしてやれるだけだ。
 しかし、左脳がそれを無意味な事だと思っても、右脳が確実に成し遂げたいという想いを託していた。

「……勿論、今は冴島たちと合流するために街に向かうのを優先する。だが、その後は……」

 一条は言った。
 このまま、村雨良の死地に向かうとなると、タカヤや鋼牙が戦うD−7エリアに立ち入ってしまう事になる。流石に戦闘も終わっているだろうが、実際のところ、避けた方が良いエリアなのは間違いない。戦闘に出くわせば、逃げた意味そのものがなくなってしまうだろう。
 一度、街で他の参加者と合流してから向かった方が得策だ。

「……待てよ。そんな事やってるうちに、アイツが死んじまった場所が禁止エリアになっちまったらどうするんだよ」

 だが、すぐに良牙は反論する。
 そう、もうすぐ第三回放送も始まる時刻なのだ。そこで村雨良の死地がもし禁止エリアになってしまえば、村雨良の死地には二度と立ち入れなくなってしまうのである。

「もしそんな事になっちまったら、もうアイツに借りを返してやる事もできねえじゃねえか……」
「……」
「……俺達はアイツに散々助けて貰った。でも、俺達はアイツの墓を作ってやる事さえできなかったんだぜ」

 もし、首輪を外す事ができれば禁止エリアなど関係ないとしても、それこそいつになるかわからない。──禁止エリアに誰よりも怯えている良牙は、真っ先にその可能性を心配していた。

「……そうだな」

 自分の小さな見落としに気づいて、一条は年長者として、この先の判断を整える。
 いや、もはや判断にかかる時間など一瞬だった。

「行くか、二人とも」
「はい」
「ああ」

 行動順序はまた変更する事になる。
 今の最優先は、村雨良の死地に一刻も早く向かい、このメモリーキューブだけは差し込む事だ。

「……変身!」
「プリキュア! オープンマイハート!」

 一条とつぼみは、それぞれ移動に最も便利な姿へと変身する。

「超変身!」
「レッドの光の聖なるパフューム! シュシュッと気分でスピードアップ!」


「──今の私は稲妻気分!!」


 一条が変身したクウガは、更に超変身してマイティフォームからドラゴンフォームへと姿を変え、キュアブロッサムは赤いこころの種をココロパフュームに装填し、自分の身体に振りかけた。
 仮面ライダークウガとキュアブロッサムは並び立ち、良牙をじっと見つめる。
 彼ばかりは変身できないのだ。

 しかし──

「良牙さん、少し恥ずかしくても我慢してください」

 キュアブロッサムは、そのまま強引に良牙の身体をお姫様抱っこの形で抱きかかえた。自分よりも身長が高い男性を、である。良牙は少し縮こまり、赤子のような体勢になってしまった。

153悲劇の泉でやりたい放題です!(修正) ◆gry038wOvE:2013/09/16(月) 02:13:27 ID:Jb4jQKnY0
 だが、良牙は、今ばかりは恥ずかしがる事もなく、自分の不甲斐なさに心を痛めていた。流石に、彼らほどのスピードで走る事はできないし、彼らよりも大きく体力を消耗してしまうので、足手まといでしかない。
 キュアブロッサムはいち早く駆け出したクウガの姿を追って、駆けだした。スピードを格段に上げる赤い種の力で、今のブロッサムはすぐにクウガに追いつく事ができた。

(……そうか)

 その身体にしがみついた時に、良牙はちょっとした事実に気づいた。
 今の自分の身長が高すぎるために、つぼみには結構な負担をかけているのだ。
 小さな豚でいたのなら、小脇に抱えて移動してもらう事もできただろう。
 仮に今、水をかけたとしても、良牙は子豚になる事はできない。
 子豚の身体でいた方が、便利になる時もあったのだ……。

(……案外、なくなると寂しいもんだな……)

 あかねと同じ風呂に入れたのも、
 あかねの胸で抱きかかえられたのも、
 あかねにキスをしてもらえたのも、
 全部自分がPちゃんだったお陰だ。
 それを思うと、やはり、子豚のPちゃんであった事に未練もあったのかもしれない。
 完全にスケベ心だった。

「あの、良牙さん……泣くほど恥ずかしいなら、下ろしましてもうちょっとゆっくり移動するように言いましょうか?」

 ……良牙は、もう二度とあかねにあんなに優しくしてもらえない事を考えて、しくしく泣いていた。
 しかし、泣いている理由は恥ずかしすぎて言えなかった。



【1日目 夕方】
【C−7/呪泉郷付近】

【響良牙@らんま1/2】
[状態]:全身にダメージ(中)、負傷(顔と腹に強い打撲、喉に手の痣)、疲労(大)、腹部に軽い斬傷、五代・乱馬・村雨の死に対する悲しみと後悔と決意 、ゾーンメモリの毒素については不明、男溺泉によって体質改善、デストロン戦闘員スーツ着用、キュアブロッサムにお姫様抱っこされている、号泣
[装備]:ロストドライバー+エターナルメモリ@仮面ライダーW、昇竜抜山刀@侍戦隊シンケンジャー
[道具]:支給品一式×2(食料一食分消費)、水とお湯の入ったポット1つずつ、秘伝ディスク@侍戦隊シンケンジャー、ガイアメモリ(ゾーン)@仮面ライダーW、ムースの眼鏡@らんま1/2 、細胞維持酵素×2@仮面ライダーW、グリーフシード@魔法少女まどか☆マギカ、歳の数茸×2(7cm、7cm)@らんま1/2、デストロン戦闘員マスク@仮面ライダーSPIRITS、プラカード+サインペン&クリーナー@らんま1/2、メモリーキューブ@仮面ライダーSPIRITS
[思考]
基本:天道あかねを守る
0:村雨良の死地に向かってメモリーキューブをはめ込んだ後、警察署に向かう。
1:天道あかねとの合流
2:いざというときは仮面ライダーとして戦う
[備考]
※参戦時期は原作36巻PART.2『カミング・スーン』(高原での雲竜あかりとのデート)以降です。
※良牙のランダム支給品は2つで、秘伝ディスクとガイアメモリでした。
 なお、秘伝ディスク、の詳細は次以降の書き手にお任せします(ガイアメモリはゾーンでした)。
 支給品に関する説明書が入ってる可能性もありますが、良牙はそこまで詳しく荷物を調べてはいません。
※シャンプーが既に死亡したと知りました。
※シャンプーの要望は「シャンプーが死にかけた良牙を救った、乱馬を助けるよう良牙に頼んだと乱馬に言う」
 「乱馬が優勝したら『シャンプーを生き返らせて欲しい』という願いにしてもらうよう乱馬に頼む」です。
 尚、乱馬が死亡したため、これについてどうするかは不明です。
※ゾーンメモリとの適合率は非常に悪いです。
※エターナルでゾーンのマキシマムドライブを発動しても、本人が知覚していない位置からメモリを集めるのは不可能になっています。
 (マップ中から集めたり、エターナルが知らない隠されているメモリを集めたりは不可能です)
※主催陣営人物の所属組織が財団XとBADAN、砂漠の使徒であることを知りました。
※第二回放送のなぞなぞの答えを全て知りました。
※つぼみ、一条、鋼牙と125話までの情報を交換し合いました。
※男溺泉に浸かったので、体質は改善され、普通の男の子に戻りました。

154悲劇の泉でやりたい放題です!(修正) ◆gry038wOvE:2013/09/16(月) 02:14:44 ID:Jb4jQKnY0


【一条薫@仮面ライダークウガ】
[状態]:疲労(小) 、ダメージ(大、特に背部)、アマダム吸収、クウガドラゴンフォームに変身中
[装備]:ミカヤ・シェベルの居合刀@魔法少女リリカルなのはシリーズ、レミントンM870(8/8)@現実
[道具]:支給品一式×8(食料一食分消費、(一条、五代、十臓、京水、タカヤ、シンヤ、丈瑠、パンスト))、警察手帳、プロトタイプアークル@小説 仮面ライダークウガ、T2ルナメモリ@仮面ライダーW、細胞維持酵素×4@仮面ライダーW、克己のハーモニカ@仮面ライダーW、バッドショット+バットメモリ@仮面ライダーW、スタッグフォン+スタッグメモリ@仮面ライダーW、テッククリスタル(シンヤ)@宇宙の騎士テッカマンブレード、T2メタルメモリ@仮面ライダーW、水とお湯の入ったポット1つずつ、力の源@らんま1/2、スパイダーショック+スパイダーメモリ@仮面ライダーW、まねきねこ@侍戦隊シンケンジャー、滝和也のライダースーツ@仮面ライダーSPIRITS、混ぜると危険な洗剤一本ずつ@魔法少女まどか☆マギカ、黒子の装束@侍戦隊シンケンジャー、『戦争と平和』@仮面ライダークウガ、『長いお別れ』@仮面ライダーW
[思考]
基本:民間人の保護
0:警察として、また仮面ライダーとして人々を守る。
1:村雨良の死地に向かってメモリーキューブをはめ込んだ後、警察署に向かう。
2:他に保護するべき人間を捜す
3:未確認生命体に警戒
※参戦時期は少なくともゴ・ガドル・バの死亡後です
※殺し合いの参加者は異世界から集められていると考えています。
※この殺し合いは、何らかの目的がある『儀式』の様なものだと推測しています。
※アマダムを吸収したため、仮面ライダークウガに変身できます。アマダム自体が強化されているため、ライジングフォームへの無制限の変身やアメイジングマイティフォームへの変身も可能かもしれませんが、今の所実践していないので詳細は不明です。
※主催陣営人物の所属組織が財団XとBADAN、砂漠の使徒であることを知りました。
※第二回放送のなぞなぞの答えを全て知りました。
※つぼみ、良牙、鋼牙と125話までの情報を交換し合いました。
※泉京水の支給品を回収しました
※タカヤの支給品などは返す予定です(ただし、京水の所持デイパックを纏めて受け取ったのでメモリーキューブがタカヤのものである事は知りません)。

155悲劇の泉でやりたい放題です!(修正) ◆gry038wOvE:2013/09/16(月) 02:15:52 ID:Jb4jQKnY0

【花咲つぼみ@ハートキャッチプリキュア!】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)、加頭に怒りと恐怖、強い悲しみと決意、デストロン戦闘員スーツ着用(変身前)、キュアブロッサム変身+赤いこころの種使用中でスピードアップ(+イナズマ気分に)、良牙をお姫様抱っこ中
[装備]:プリキュアの種&ココロパフューム
[道具]:支給品一式×4(食料一食分消費)、鯖(@超光戦士シャンゼリオン?)、スティンガー×6@魔法少女リリカルなのは、プリキュアの種&ココロパフューム(えりか)@ハートキャッチプリキュア!、プリキュアの種&ココロポット(ゆり)@ハートキャッチプリキュア!、こころの種(赤、青、マゼンダ)@ハートキャッチプリキュア!、破邪の剣@牙浪―GARO―、T2ウェザーメモリ@仮面ライダーW、まどかのノート@魔法小少女まどか☆マギカ、大貝形手盾@侍戦隊シンケンジャー、デストロン戦闘員マスク、着替え、特殊i-pod
[思考]
基本:殺し合いはさせない!
0:村雨良の死地に向かってメモリーキューブをはめ込んだ後、警察署に向かう。
1:この殺し合いに巻き込まれた人間を守り、悪人であろうと救える限り心を救う
2:南東へ進む、18時までに一文字たちと市街地で合流する(できる限り急ぐ)
3:ダークプリキュア…
[備考]
※参戦時期は本編後半(ゆりが仲間になった後)。少なくとも43話後。DX2および劇場版『花の都でファッションショー…ですか!? 』経験済み
 そのためフレプリ勢と面識があります
※溝呂木眞也の名前を聞きましたが、悪人であることは聞いていません。鋼牙達との情報交換で悪人だと知りました。
※良牙が発した気柱を目撃しています。
※プリキュアとしての正体を明かすことに迷いは無くなりました。
※サラマンダー男爵が主催側にいるのはオリヴィエが人質に取られているからだと考えています。
※参加者の時間軸が異なる可能性があることに気付きました。
※この殺し合いにおいて『変身』あるいは『変わる事』が重要な意味を持っているのではないのかと考えています。
※放送が嘘である可能性も少なからず考えていますが、殺し合いそのものは着実に進んでいると理解しています。
※ゆりが死んだこと、ゆりとダークプリキュアが姉妹であることを知りました。
※大道克己により、「ゆりはゲームに乗った」、「えりかはゆりが殺した」などの情報を得ましたが、半信半疑です。
※ダークプリキュアにより、「えりかはダークプリキュアが殺した」という情報を得ましたが、上記の情報と矛盾するため混乱しています。
※所持しているランダム支給品とデイパックがえりかのものであることは知りません。
※主催陣営人物の所属組織が財団XとBADAN、砂漠の使徒であることを知りました。
※第二回放送のなぞなぞの答えを全て知りました。
※良牙、一条、鋼牙と125話までの情報を交換し合いました。


【共通備考】
※支給品一式は全員で均等に分けています(状態表では殆ど一条のところにありますが、基本支給品は共有しています)。
※消費されていた水は水道水などで補充し、ポットの水も補充されています。



【支給品解説】

【デストロン戦闘員スーツ@仮面ライダーSPIRITS】
美樹さやかに支給。
デストロンの戦闘員が着ているスーツで、V3本編でもSPIRITSでも色んな人が着用している。これ自体はただの変態スーツ。
三着支給されたが、一着は良牙のせいで早くも散った。

【こころの種セット(赤、青、マゼンダ)@ハートキャッチプリキュア!】
パンスト太郎に支給。
ココロパフュームにセットして効果を発揮する種。シャイニーパフュームでは使用していないが、おそらく互換性はある。
デザトリアンを浄化すると妖精が生み出す。別名:うんk(ry
赤いこころの種→スピードアップ
青いこころの種→ふりかけられると気分がクリアになる
マゼンダのこころの種→がんばる気分になる
使用前と使用後でこころの種の数が変動してないあたりを見ると、使用しても消費されない模様。作中で使ったのは、この三つだけ。

【こころの種セット(黄色、紫、オレンジ)@ハートキャッチプリキュア!】
泉京水に支給。
ココロパフュームにセットして効果を発揮する種。シャイニーパフュームでは使用していないが、おそらく互換性はある。
デザトリアンを浄化すると妖精が生み出す。別名:だいb(ry
黄色いこころの種→元気になる
紫の種→占いゲームができる
オレンジのこころの種→記憶ゲームができる
使用前と使用後でこころの種の数が変動してないあたりを見ると、使用しても消費されない模様。作中未使用だが、玩具では上記の効果がある事を示唆している。

156悲劇の泉でやりたい放題です!(修正) ◆gry038wOvE:2013/09/16(月) 02:16:23 ID:Jb4jQKnY0

【スパイダーショック+スパイダーメモリ@仮面ライダーW】
五代雄介に支給。
腕時計型のメモリガジェット。射出型の強化ワイヤーを搭載しているほか、マーカーを取りつけた相手の追跡などが可能。
スパイダーメモリを装填するとクモ型のライブモードに変形する。

【T2ウェザーメモリ@仮面ライダーW】
来海えりかに支給。
井坂深紅郎が使うウェザーメモリのT2版。劇場版でその辺を歩いてた人が変身した。

【まどかのノート@魔法少女まどか☆マギカ】
一条薫に支給。
鹿目まどかが落書きしたノート。魔法少女になった時のまどかや、キュゥべえなどの絵が描いてある。
ちなみに担当声優が書いたもの。

【ミカヤ・シェベルの居合刀@魔法少女リリカルなのはvivid】
五代雄介に支給。
ミカヤ・シェベルの使う刃渡りの長い居合刀。

【まねきねこ@侍戦隊シンケンジャー】
腑破十臓に支給。
27話で志葉丈瑠と入れ替わったまねきねこ。殿の魂は入ってない。

【大貝形手盾@侍戦隊シンケンジャー】
来海えりかに支給。
9話に登場するヒトミダマが使用する盾。
光を発して攻撃する事もできるうえに強固な盾で、これを使えば守りながら攻撃できる。
「おおかいのなりてたて」と読む。

【洗剤@魔法少女まどか☆マギカ】
泉京水に支給。
混ぜると有害なガスを発生させる危険な洗剤をそれぞれ一本ずつ支給。
テレビではロゴがあったが、DVD/BD版で完全に真っ白な容器に修正された。
これがどういう外見になってるのかは後の書き手にお任せ。

【黒子の装束@侍戦隊シンケンジャー】
相羽タカヤに支給。
シンケンジャーを支える黒子たちが着用している黒装束。

【特殊i-pod@オリジナル】
腑破十臓に支給。
参戦作品の主題歌、挿入歌、BGMなどの全てが網羅されているi-pod。
イヤホンを外して持ち運ぶと、自動的にその場に合った音楽が流れる。
尚、歌詞の流用はなるべく控えるように。

【『戦争と平和』@仮面ライダークウガ】
相羽タカヤに支給。
ゴ・ブウロ・グが作中で読んでいた本。作者はトルストイ。
グロンギ族のゴ集団が物凄い知識量を誇っていた事がうかがえる。

【『長いお別れ』@仮面ライダーW】
一条薫に支給。
左翔太郎、フィリップ、鳴海壮吉などの愛読書。作者はチャンドラー。
フィリップの由来となったフィリップ・マーロウという探偵が登場する。


【プラカード+サインペン&クリーナー@らんま1/2】
五代雄介に支給。
早乙女玄馬がパンダになった時、喋るのに使うプラカード。
玄馬はたまにこれで人を殴る事もある。

【反ディスク@侍戦隊シンケンジャー】
美樹さやかに支給。
「反」のモヂカラが織り込まれた白ディスク。
アヤカシの術を跳ね返す効果がある。

【志葉家のモヂカラディスク@侍戦隊シンケンジャー】
響良牙に支給されていた秘伝ディスク。
志葉家の家紋が記された秘伝ディスクで、上手くいけばドウコクを倒すだけの驚異的なモヂカラが込められている(ただし、一度目は効かなかった)。
強すぎるモヂカラにディスクが耐えきれなくなるため、一度使用すると全壊する。

【レミントンM870@現実】
来海えりかに支給。
「魔法少女まどか☆マギカ」第10話にも登場し、暁美ほむらが使用していたほか、原作「バトル・ロワイアル」で川田章吾が使用していた武器。
装弾数8発のポンプアクション式散弾銃(ショットガン)で、非常に耐久性が高いため、警察などでも使用されている。

157悲劇の泉でやりたい放題です!(修正) ◆gry038wOvE:2013/09/16(月) 02:18:04 ID:Jb4jQKnY0
以上です。

158名も無き変身者:2013/09/16(月) 09:48:40 ID:rlxwSDZQ0
修正乙です
問題ないと思います

159 ◆LuuKRM2PEg:2013/10/16(水) 20:12:16 ID:fO5KPHsU0
これより投下します

160 ◆LuuKRM2PEg:2013/10/16(水) 20:14:34 ID:fO5KPHsU0
「さようなら、一文字さん……」
 ラブは笑顔を保ったまま、大地の下で眠りについた一文字に別れを告げる。
 彼女は泣いていなかった。やはり、女の子は泣いているより笑っている方がいいと暁は思った。
 二人は黙祷を捧げる。それを終わってから、一文字が持っていたと思われる支給品を暁は回収した。中を見てみると手榴弾と思われる物や奇妙な貝殻、そして人が死ぬ光景が映し出された写真がある。
 残酷な写真を見た暁は思わず表情を顰めた。こんな時に嫌な写真は見たくないし、悪趣味な物を支給した主催者への憤りが強くなってしまう。そんな嫌な雰囲気を一刻も早く忘れる為にも、暁は写真をバッグの奥に収めた。
 本来なら、この場にはもう一つだけモロトフの支給品もあった。しかしモロトフが自爆した際にそれら全ても爆発に巻き込まれてしまい、跡形もなく消滅している。もっとも、暁がそれを知ることはないが。
「行こうか、ラブちゃん」
「はい」
 涼村暁と桃園ラブは一文字隼人が眠る場所から去っていく。
 二人は市街地を目指して歩き続けた。そこには沖一也が待っているのだから、先輩である一文字の死を伝えなければならない。
 他の仲間達も街に辿り着いていることを信じたかった。





【涼村暁@超光戦士シャンゼリオン】
[状態]:疲労(中)
[装備]:シャンバイザー@超光戦士シャンゼリオン、モロトフ火炎手榴弾×3
[道具]:支給品一式×3(暁(ペットボトル一本消費、食料一食分消費)、ミユキ)、首輪(ほむら)、姫矢の戦場写真@ウルトラマンネクサス、タカラガイの貝殻@ウルトラマンネクサス、八宝大華輪×4@らんま1/2、ランダム支給品0〜2(ミユキ0〜2)、
[思考]
基本:加頭たちをブッ潰し、加頭たちの資金を奪ってパラダイス♪
0:市街地に向かう。
1:別れた人達(特に凪のような女性陣)が心配、出来れば合流したい。黒岩? 変な事してないよな?
2:あんこちゃん(杏子)を捜してみる。
3:可愛い女の子を見つけたらまずはナンパ。
[備考]
※第2話「ノーテンキラキラ」途中(橘朱美と喧嘩になる前)からの参戦です。
 つまりまだ黒岩省吾とは面識がありません(リクシンキ、ホウジンキ、クウレツキのことも知らない)。
※ほむら経由で魔法少女の事についてある程度聞きました。知り合いの名前は聞いていませんでしたが、凪(さやか情報)及び黒岩(マミ情報)との情報交換したことで概ね把握しました。その為、ほむらが助けたかったのがまどかだという事を把握しています。
※黒岩とは未来で出会う可能性があると石堀より聞きました。
※テッカマン同士の戦いによる爆発を目にしました。
※第二回放送のなぞなぞの答えを知りました。
※森林でのガドルの放送を聞きました。



【共通備考】
※I−5エリアに放置されていた一文字隼人の遺体と、I−7エリアに放置されていたフェイトとユーノの遺体は埋葬されました。
※モロトフの持っていた全ての支給品は爆発に巻き込まれています。

161 ◆LuuKRM2PEg:2013/10/16(水) 20:15:09 ID:fO5KPHsU0
以上で修正した箇所及び状態票の投下を終了します。

162名も無き変身者:2013/10/16(水) 20:50:40 ID:rlxwSDZQ0
修正乙です
後はwikiに投稿する際に暁の共通支給品欄のとこの(暁(ペットボトル一本消費、食料一食分消費)、ミユキ)の部分に一文字の名前を加えればおkだと思います

163 ◆LuuKRM2PEg:2013/10/16(水) 21:26:25 ID:fO5KPHsU0
ご指摘ありがとうございます。
収録の際に追加させて頂きます。

164 ◆7pf62HiyTE:2014/03/03(月) 23:38:27 ID:q1yRA3z.0
拙作。『哀しみの声』三部作について、Wiki上で幾つか修正を行ったことを報告します、修正点は
1.マッキャリバーの台詞の一部
2.PART.4での一部台詞(以前の話でマミ=溝呂木の擬態という結論は出ていた、良牙が『アクマロの下僕』という事を耳にしている)修正、
3.一部誤字修正
以上の通りです。

165 ◆OmtW54r7Tc:2014/03/18(火) 20:45:58 ID:rlxwSDZQ0
『空虚』の修正、投下します

166空虚(修正版) ◆OmtW54r7Tc:2014/03/18(火) 20:49:36 ID:/i70pVZE0
黒岩省吾と天道あかねを見逃したゴ・ガドル・バは、北へ進路を進めていた。
自分に屈辱を味わわせてくれた石堀光彦がどこへ向かったのかも分からず、向かうべき道を見失っている所だった。
そこで彼は、かねてから気になっていた、グロンギ遺跡に向かうことにした。
グロンギ遺跡。
おそらくは自分達グロンギが一度は封印され、そして再び復活を遂げた場所だ。
別に郷愁の念などない。ただ、やはり気になる場所ではあった。
それに、もしかすればダグバも自分と同じようにそちらに向かっているかもしれない。


「ダグバ…」


跨る鉄馬、サイクロン号を走らせながらガドルは宿敵の名を呼ぶ。
本来なら自分にまだ彼と戦う資格はないはずだったが、こうして戦う機会を与えられた。
一度は再会したものの結局別れ、未だ戦うには至っていない。
あの時は強敵との戦いを台無しにされた怒りからその場を去ったが、今度は逃がさない。
ン・ダグバ・ゼバ。
『ン』の名を持つ我らが王は、この破壊のカリスマの手で必ず倒す。

その後ガドルは約2時間、サイクロン号を走らせ続けた。
その間にも疲労やダメージは少しずつ癒えていき、かつて霧彦から受けた右脇の傷はすっかりと消えていた。
途中焦土となった場所へ訪れ、そこで激しい戦いがあったことを知り、自分がその場に居合わせなかったことを残念に思ったりもしたが、すぐにまたその場を離れて遺跡を目指した。
そうして、グロンギ遺跡が既に眼前にまで見えてきたその時、


『参加者のみんなー、こんばんはー!!』


三度目の放送が訪れた。



ガドルは放送に耳を傾ける為、一度サイクロン号を止める。
放送を行うゴハットの独特のテンションには、特に気を留めた様子はなかった。

『一文字隼人』

それは、最初の殺し合いが宣言された場で、本郷猛と共に加頭の前に立ちはだかった男だった。
ガドルも多少興味を持ったが、最初の放送で呼ばれた本郷同様、こんなところで敗退してしまう弱者であったか。

『西条凪』

それは、少し前に交戦した女の名であった。
あの女は、自分に興味深いことを教えてくれた。
「受け継がれる力」――もしもそんな存在に出会ったとしても、叩き潰すだけだ。

次々と名前が呼ばれるが、さして興味のある名前が呼ばれることはない。
どうやら石堀光彦も死んでいないようだ。
クウガである五代雄介が既に死んだ今、彼が関心があるのは自分を倒した石堀と、ダグバくらい…


『ン・ダグバ・ゼバ』


…………………。
……………………………………。
今、こいつはなんといった。
誰の名を呼んだ。


『ン・ダグバ・ゼバ』


頭の中でその言葉がリピートされる。
間違いない。
ンから始まる名前など、この場には他にいない。
ダグバが…自分の倒すべき相手が、死んだ。



その後、放送が終わった。
ダグバの死に衝撃を受けつつも、ガドルは放送を聞きのがすことはなかった。
しかし、その表情は未だ衝撃から抜けきってはいなかった。


「ダグバ…」


分かってはいた。
この場にいるリントたちが、いずれも一筋縄ではいかない力を持っていることは。
しかし、だがしかし、ダグバが、あのダグバが死んだなど、ガドルには到底受け入れがたいことであった。
彼が放送にその名を刻むのは、自分の手で倒された時だと、心のどこかで思っていた。
あのダグバが、自分の預かり知らぬところで死ぬなど、思ってもみなかった。
それだけガドルは、ダグバの強さというものにある種の信頼をしていた。

167空虚(修正版) ◆OmtW54r7Tc:2014/03/18(火) 20:50:38 ID:/i70pVZE0
「何故だ…」


続いて放たれたその言葉には、わずかな怒気が含まれている。
ガドルの、破壊のカリスマの顔が、怒りの表情で歪む。


「何故だ!何故死んだダグバ!貴様は、この破壊のカリスマによって倒されるべき存在だというのに!」


ガドルは、ダグバをこの手で倒したかった。
ダグバは、自分達グロンギの頂点に立つ存在だった。
その頂点を、自分は越えたかった。
例えゴのままであっても、力に圧倒的な差があったとしても、彼に劣らぬ実力をつけ、倒してやるつもりだった。
それなのに、ダグバは死んでしまった。
自分に倒されるよりも前に、他の誰かによって倒されてしまった。

「フ……」

しばらくたち、心に平静を取り戻したガドルは、再びサイクロン号に乗りグロンギ遺跡へと向かった。
そう、ダグバが死んだなら、ダグバを殺した者を自分が殺せばいい。
そうすれば、自分はダグバを越えたことになる。
故に、こんなところで立ち止まっている暇などない。


「…………………」


そう心を納得させようとしても、ガドルの心は不思議と空虚を感じていた。





「ここは…」

そこは、ガドルのよく知る遺跡ではなかった。
グロンギの遺跡と明記してあったために自分が封印されていた九郎ヶ岳遺跡のことだと思っていたが、どうやら別の遺跡だったらしい。

「あれは…」

一つの、棺桶が目についた。
サイクロン号をその場に置き、ガドルはその棺桶に近づく。
そこには、一人の男性の死体があった。

「この男は…」

見知らぬ男ではある。
しかし、同族ではないことは確かだ。
この男は間違いなくリントだ。
そして棺の中にいることを考えると、おそらくはこの遺跡の封印を守っていた…

「先代のクウガか」

見たところ、封印は解かれている。
最初から解けていたのか、それともここに来た参加者によって解かれたのか。
しかし、封印が解けたならば今頃同族が目を覚ましているのではないだろうか。
もっとも、この遺跡自体が形を模しただけの偽物である可能性が高いが。

ガドルは遺跡の中を歩いてみる。
誰かがいる様子はない。
この殺し合いの参加者も。
封印が解かれたかもしれない同族も。
そして…当然ながらダグバも。

「ダグバ…貴様はいったい誰にやられたというのだ?」

力を五代から受け継いだ新たなクウガだろうか。
それとも自分を倒した石堀だろうか。
しかし考えても答えなど出るはずもなく、ガドルの胸には先ほども感じたやるせない空虚感に包まれた。
ダグバを殺した者を殺す。
そう納得させようとしても、その感情を抑えることは出来なかった。
ガドルは、自分の手でダグバを倒したかったのだから。
もしこの遺跡の封印が解かれたことによって、ダグバが、いや、ダグバでなくてもいい。
ダグバのような『ン』の戦士が蘇ってくれていたらどんなに良かっただろう。
そうすればガドルは、その戦士と戦い、この空虚な心を満たすことができただろう
しかし、ガドルの見た限りでは同族が蘇ったような痕跡などない。
封印が解けても、蘇りなどしなかったのだ。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


ガドルは、満たされぬ自分の心に喝を入れるように、雄叫びをあげる。
自分の戦いはまだ終わっていない。
例え『ン』を倒すという目標が失われたとしても、ガドルは戦いをやめるつもりなどない。
ダグバすら倒されるこの殺し合いの場で、自分は優勝する。
真の頂点に立つために。
それしか、今のガドルにはこの空虚を、渇きを満たすことは出来ない。


「ボバゴセンザゾグンギギズゲドバセ、リントゾロ!(この俺の覇道の礎となれ、リントども!)」




「む?」

どこからか戦いの音が聞こえる。
音源は少し遠いようだったが、しかし今の爆発音はかなりのものであった。

168空虚(修正版) ◆OmtW54r7Tc:2014/03/18(火) 20:52:06 ID:rlxwSDZQ0
ガドルはすぐさまサイクロン号に乗る。
音は、南から聞こえてきた。
新たな戦いを求め、ガドルはバイクに乗って走った。





ガドルがたどり着いたときには、既に戦いは終わっていた。
辺りには、誰もいない。

「ビガグロボバ(逃がすものか)」

そう遠くには行っていないはずだ。
ガドルはすぐさま射撃体へと変身し、その視力と聴力を頼りに辺りを探る。
そして見つけた。
その見覚えのある背中を。


「クウガ…!」


そう、紛れもなくそれはかつて自分を倒した戦士の後ろ姿であった。
ちなみにガドルが聞いた爆発音はその戦士と、もう一人の仮面ライダーによるダブルライダーキックの音であった。


「どうやらあのフクタイチョウの言っていたことは真実であったようだな」


そう、おそらくあれはかつて自分を倒した五代雄介とは別人だ。
何者かが、五代から新たにクウガの力を受け継いだのだ。
ガドルは、離れていくクウガを逃がすまいと、サイクロン号を走らせる。
クウガは自分と同じく鉄馬に乗っているが、同行者と足並みをそろえる為か、そこまで移動速度は速くない。
充分に追いつくことができる。


「この破壊のカリスマの挑戦、受けてもらうぞクウガ!」


【1日目/夜】
【E―7/荒れ地】

【ゴ・ガドル・バ@仮面ライダークウガ】
[状態]:疲労(小)、全身にダメージ(小)(回復中) 、肩・胸・顔面に神経断裂弾を受けたダメージ(回復中)、胸部に刺傷(回復中)、ダグバの死への空虚感、サイクロン搭乗中、射撃体に変身中
[装備]:サイクロン号@仮面ライダーSPIRITS、スモークグレネード@現実×2、トライアクセラー@仮面ライダークウガ、京水のムチ@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式×8(スバル、ティアナ、井坂(食料残2/3)、アクマロ、流ノ介、なのは、本郷、まどか)、東せつなのタロットカード(「正義」を除く)@フレッシュプリキュア!、ルビスの魔剣@牙狼、鷹麟の矢@牙狼
[思考]
基本:殺し合いに優勝し真の頂点に立つ。
0:クウガを追い、殺す。
1:参加者を探す。
1:石堀と再会したら殺す。
2:強者との戦いで自分の力を高める。その中で、ゲームとしてタロットカードの絵に見立てた殺人を行う。
4:体調を整え更なる力を手に入れたなら今まで取るに足らんとしてきた者とも戦う。
※死亡後からの参戦です。
※フォトンランサーファランクスシフトにより大量の電撃を受けた事で身体がある程度強化されています。
※フォトンランサーファランクスシフトをもう一度受けたので、身体に何らかの変化が起こっている可能性があります。(実際にどうなっているかは、後続の書き手さんにお任せします)
※テッカマン同士の戦いによる爆発を目にしました。
※ナスカ・ドーパント、ダークメフィストツヴァイを見て、力を受け継ぐ、という現象を理解しました。

169 ◆OmtW54r7Tc:2014/03/18(火) 20:52:55 ID:rlxwSDZQ0
修正版投下しました
またなにかあればお願いします

170名も無き変身者:2014/03/18(火) 22:50:36 ID:r9Nmo5jM0
修正乙です。
これなら問題はなくなったと思います。

171名も無き変身者:2014/03/19(水) 00:47:28 ID:jM8cHyrw0
修正乙です!
確かにグロンギ遺跡のことは余程詳しくないとはっきりわかりませんよね……。
ガドルは放送前に石堀に負けてからどんどん感情的になってきてるなぁ、一回落ち着けるかどうか。

それと、少し◆LuuKRM2PEg氏の「覚醒」で気になったのですが、
マッハキャリバーがダグバ、一文字等の死について完全に無関心なのはどうかと。
「あまりのショックに言葉が自主的に出なかった」としても、あのメンバーの中で一番情報を持ってるのはマッキャリなので、良牙、一条あたりがそれとなく聞きそうなものだと思うのですが。
もし自分の見落としだったり、その説明は「覚醒」内ではいらない、という意見等ありましたら今のうちに予め謝罪しておきます。

172 ◆LuuKRM2PEg:2014/03/19(水) 00:51:53 ID:r9Nmo5jM0
指摘に気付かず、先走って本編の収録をしてしまって申し訳ありません。
それでは、該当部分の加筆を後ほど行います。

173覚醒(加筆版) ◆LuuKRM2PEg:2014/03/19(水) 16:20:32 ID:r9Nmo5jM0
指摘された部分の加筆の投下を行います(本スレ>>932)



「……わかっているよ、一条。良の前では、嫌な顔をするつもりはない」
「すまない」

 薫に返事した良牙も同じ気持ちのようだった。
 不意に辺りを見渡すと、周りの植物が焼け焦げていて、地面も不自然な穴があるのが見える。ここは、仮面ライダーエターナルと戦ったあの場所であると、キュアブロッサムは察した。
 既にクウガはビートチェイサー2000から降りているし、キュアブロッサムも良牙を下している。彼が眠っている所まで、そう遠くなかったからだ。

『村雨良と一文字隼人……本郷猛と同じ、仮面ライダーの名前が二人も呼ばれるとは』

 そんな中、良牙の手元にあるマッハキャリバーが呟く。
 音声のトーンは変わらなかったが、驚いていることは感じられた。マッハキャリバーは仮面ライダーが強い戦士であることを知っているのだから、信じられなかったのだろう。
 それはキュアブロッサムも同じだった。一文字隼人がもう死んだなんて、簡単に受け入れられない。
 村での別れが最後の別れになってしまった。こんなことになるなら、別行動を取らなければよかったという考えが芽生えてしまうが、どうにもならない。
 それに、いつまでも落ち込んでいたら怒られてしまう。だから、キュアブロッサムは泣かなかった。
 一文字の力強い笑顔を思い出している中、マッハキャリバーの言葉は続く。

『それにあのダグバまで……』
「ダグバ……確か、未確認生命体の一人だったな。未確認を倒すほどの戦士が、この場にいると言うことなのか……」
『どうやら、ダグバは未確認の中でも特に強大な力を持つらしいです。ガドルはダグバより劣りますが、それでも強いことに変わりません』
「なるほど。ならば、ガドルの警戒を忘れてはならないな……奴はまだ、どこかにいるのだから」

 クウガは頷いた。
 ン・ダグバ・ゼバ。放送で呼ばれたその参加者も未確認生命体のようで、比類なき力を持つらしい。そんなダグバが倒されたなら脅威が減ったことになる。だけど、もしも倒したのが殺し合いに乗った人物なら、いつか戦う時が来るかもしれない。
 ダグバを倒したのは殺し合いに反対している人であることを祈るしかなかった。

「……ガドルのことも忘れてはいけないが、今は村雨君のことが先だ。もう、到着するだろう」

 クウガの案内の元、キュアブロッサムと良牙は森の中を進んでいくと……すぐに見つけた。未だに笑顔を浮かべたまま、永遠の眠りについた仮面ライダーゼクロス……いや、村雨良の姿を。

「村雨さん……」
「良……!」

 キュアブロッサムと良牙は辛そうな表情を浮かべながら呼びかけるが、やはり良は答えない。
 傷だらけの身体と失われた片腕が、彼がもう死んだ人間であることを物語っている。キュアブロッサムだって、良の最期をきちんと見届けたのだから事実を受け入れるべきだと理解している。
 だけど、信じたかったのだ。良の安らかな笑顔と、力強いサムズアップは……生命の力強さに溢れているように見えるのだから。もしかしたら、奇跡が起こってくれるかもしれないと、キュアブロッサムは期待してしまう。

174覚醒(加筆版) ◆LuuKRM2PEg:2014/03/19(水) 16:22:05 ID:r9Nmo5jM0
続いて、一条薫の状態表も修正します。
もしもご意見がありましたら、指摘をお願いします。

【一条薫@仮面ライダークウガ】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大、特に背部)、アマダム吸収、クウガマイティフォームに変身中、ビートチェイサー2000に騎乗
[装備]:ミカヤ・シェベルの居合刀@魔法少女リリカルなのはシリーズ、レミントンM870(8/8)@現実、ビートチェイサー2000@仮面ライダークウガ
[道具]:支給品一式×8(食料一食分消費、(一条、五代、十臓、京水、タカヤ、シンヤ、丈瑠、パンスト、冴子、シャンプー、ノーザ、ゴオマ、速水、バラゴ))、警察手帳、プロトタイプアークル@小説 仮面ライダークウガ、ガイアメモリ(T2ルナ)@仮面ライダーW、細胞維持酵素×4@仮面ライダーW、克己のハーモニカ@仮面ライダーW、バッドショット+バットメモリ@仮面ライダーW、スタッグフォン+スタッグメモリ@仮面ライダーW、テッククリスタル(シンヤ)@宇宙の騎士テッカマンブレード、T2メタルメモリ@仮面ライダーW、水とお湯の入ったポット1つずつ、力の源@らんま1/2、スパイダーショック+スパイダーメモリ@仮面ライダーW、まねきねこ@侍戦隊シンケンジャー、滝和也のライダースーツ@仮面ライダーSPIRITS、黒子の装束@侍戦隊シンケンジャー、『戦争と平和』@仮面ライダークウガ、『長いお別れ』@仮面ライダーW、インロウマル&スーパーディスク@侍戦隊シンケンジャー、紀州特産の梅干し@超光戦士シャンゼリオン、ムカデのキーホルダー@超光戦士シャンゼリオン、双眼鏡@現実、ランダム支給品1〜7(シャンプー0〜1、ゴオマ0〜1、バラゴ0〜2、冴子1〜3)、水とお湯の入ったポット1つずつ、バグンダダ@仮面ライダークウガ
[思考]
基本:民間人の保護
1:警察として、また仮面ライダーとして人々を守る。
2:警察署に向かう為にも二人を先導する。
3:他に保護するべき人間を捜す
4:未確認生命体に警戒。どこかにいるゴ・ガドル・バもいつか倒す。
5:可能ならばデバイスを回収する。
6:凄まじき戦士の力をどうするか……
※参戦時期は少なくともゴ・ガドル・バの死亡後です
※殺し合いの参加者は異世界から集められていると考えています。
※この殺し合いは、何らかの目的がある『儀式』の様なものだと推測しています。
※アマダムを吸収したため、仮面ライダークウガに変身できます。アマダム自体が強化されているため、ライジングフォームへの無制限の変身やアメイジングマイティフォームへの変身も可能です。
※主催陣営人物の所属組織が財団XとBADAN、砂漠の使徒であることを知りました。
※第二回放送のなぞなぞの答えを全て知りました。
※つぼみ、良牙、鋼牙と125話までの情報を交換し合いました。
※泉京水の支給品を回収しました

175 ◆LuuKRM2PEg:2014/03/20(木) 16:55:53 ID:r9Nmo5jM0
「覚醒」の加筆分の収録及び、一部の誤植を修正させて頂きました。

176 ◆LuuKRM2PEg:2014/03/23(日) 11:33:34 ID:r9Nmo5jM0
「解─unlock─」の収録の際、台詞及び状態表の一部や誤字脱字の修正を行ったことを報告します。

177名も無き変身者:2014/03/25(火) 19:58:39 ID:jM8cHyrw0
gry氏、「騎士の物語」〜「風花の物語」の超大作投下、お疲れさまでした!
……しかし、いちゃもん、というわけではないのですが、wikiにてナンバリングを分けられるのでしたら、
「変わり者の物語」以降に登場する場合でも一端そこまでで状態票を作っておいた方が、後から読む人にはわかりやすいかと。

具体的には翔太郎、いつき、ダープリの状態票ですね、別に作らなくても良いとは思いますが、少しでも混乱を避けるために気が向いたら作っていただいた方がいいかな、と思うのですが。

178 ◆gry038wOvE:2014/03/27(木) 16:49:45 ID:Abv.3SKM0
今回、ナンバリングを分けたのは、wikiで読む際の簡易的な配慮です。
長い話ですから、後から特定キャラだけ追いたくても大変な事になると思います。

「美希や杏子たちがこの後出てくるかと思ってちゃんと全部読んだのに、後半は出てこなかった」とか
「一条やガドルが見たいので前半を真面目に読んでたのに全く出てこなかった」とか、そういう事が起きないように…のつもりなので、
後続の書き手さんに見てもらえれば問題ない状態表をあまりたくさん入れすぎるのも逆にわかりにくいんじゃないかな…と思いましたし。

実質的には一つの話なんですが、後から把握のうえで詐称が起きないように二つに分けた…という形です。
タイトルでもそれはわかるようになっていると思うので、対策としては「状態表は次の話へ」でいいかと思います。

179 ◆LuuKRM2PEg:2014/04/06(日) 10:39:43 ID:r9Nmo5jM0
「ラブのラブレター! 驚きの正体!?」の収録で、誤字と文章の修正を行ったことを報告します。

180 ◆7pf62HiyTE:2014/04/07(月) 17:46:47 ID:BC3ufEgk0
拙作『X、解放の刻』について、Wiki上で一部修正及び追記を行ったので報告致します。

181 ◆LuuKRM2PEg:2014/04/09(水) 18:44:30 ID:r9Nmo5jM0
本スレで指摘された「なのはの決意! プリキュアとして、戦います!!」の修正した部分を投下します。
修正前

 明堂院いつきの遺体を埋葬してから、一同はライディングボードに乗って森の中を進んでいた。
 今のままでは、例え変身をしていても徒歩では時間がかかってしまう。それにつぼみと良牙はガドルとの戦いで消耗をしているので、ここで体力を消耗する訳にはいかない。なので、なのはが持っていたライディングボードに乗って移動していた。
 三人も乗っているせいなのか、ビートチェイサー2000やサイクロン号に比べるとスピードが落ちている。しかし、それでも移動するには何の障害もなかった。
 まるで、空飛ぶ絨毯に乗っているようだとつぼみは思う。三人もいるせいでほんの少しだけ窮屈だけど、今は我慢しなければならない。

「そうだ、つぼみ……いつきの持っていたシャイニーパフュームはあなたが持っているべきだと思う」

 木々が通り過ぎていく中、隣にいるなのははシャイニーパフュームを差し出してくる。

修正後

 明堂院いつきの遺体を埋葬してから、つぼみ達は森の中を進んでいた。
 三人ともとてもゆっくりと歩いている。つぼみと良牙はガドルやドウコクとの戦いを乗り越えたので、ここから無理に体力を消耗することができなかった。
 変身をして駆け抜ければ早く辿り着けるかもしれないが、今は少しでも温存したかった。

「そうだ、つぼみ……いつきの持っていたシャイニーパフュームはあなたが持っているべきだと思う」

 そんな中、隣にいるなのははシャイニーパフュームを差し出してくる。

また、もう一つ。

 なのはは一度、街に向かったことがあるので、彼女の案内でライディングボードを動かしている。そして、不幸にもその道にバラゴの遺体は存在しなかった。もしも、レイジングハートと出会うことができていたら、鋼牙への誤解が解けたかもしれない。



 なのはは一度、街に向かったことがあるので、彼女の案内で道を進んでいる。そして、不幸にもその道にバラゴの遺体は存在しなかった。もしも、レイジングハートと出会うことができていたら、鋼牙への誤解が解けたかもしれない。

に修正して、状態表と備考の欄もこれらに合わせて修正させて頂こうと思います。

182 ◆7pf62HiyTE:2014/04/11(金) 08:41:58 ID:sBKhZE2c0
本スレで指摘されていたライディングボード関係について『no more words』にて以下の部分を修正します。



 そう口にする乱馬の一方、ヴィヴィオが違う反応を示す。

「それ……ウェンディの……」


 ヴィヴィオによると、目の前のボードはウェンディ・ナカジマがかつて使っていた固有武装ライディングボードであった。
 彼女は自身の先天固有技能ISを駆使する事でライディングボードを時には砲撃に、時には盾に、時には移動用に使用していた。
 なお、量産を視野に入れたという説もあり、ウェンディ以外にも使用する事は可能である。


「こんな危なっかしいもん支給するなよな……」


 物騒さは感じるものの有用な移動手段である事に違いはない。乱馬はライディングボードを受け取り移動を始めようとする。



上記の部分を



 受け取りつつそう口にする乱馬の一方、ヴィヴィオが違う反応を示す。


「それ、ウェンディの……」


 ヴィヴィオによると、目の前のボードはウェンディ・ナカジマがかつて使っていた固有武装ライディングボードである。
 彼女は自身の先天固有技能ISを駆使する事でライディングボードを時には砲撃に、時には盾に、時には移動用に使用していた。


「こんな危なっかしいもん支給するなよな、というかこれ使えんのかよ……」
「説明書きを見た所、ガジェット・ドローンの技術が流用されて……」


 ガジェット・ドローンとはヴィヴィオも関わっていたJS事件で現れた空中を浮遊する機能を有した機動兵器である。
 ライディングボードにはその技術が流用されており、元々空戦能力の持っていないウェンディはこれを利用することで限定的に空戦能力を得ていた。
 つまり、ガジェットの技術によりボード自体に浮遊する力があり、それを使う事で空中を移動するのに使えるという事だ。
 勿論、ライディングボードの性能を最大限に引き出す事に特化したISを有するウェンディほど上手くはいかないだろうが、


「使えますか? もし無理だったら私が……」
「おっ、浮きやがる。ま、武器として使う気はねーが移動に使う乗り物としてなら……」


 使いこなせるかどうかは別にして使用する事は誰でも可能らしい。
 実際、量産を視野に入れたという節もあり、ウェンディ自身もディアナ・ランスター(彼女も空戦能力は無い)に貸そうとした事があった。


「実際これの持ち主……ウェンディちゃんはこれを使う事で飛行出来る様になったらしいからね、使えるなら丁度良いと思うよ」


 と言いながら霧彦は説明書きを乱馬に渡す。


「いや、普通人は飛行出来る様にはならねぇよ……」
「ママ達は飛べますけど……」
「ヴィヴィオちゃん、それ例外だから……」



 物騒さは感じるものの有用な移動手段である事に違いはない。乱馬は早々にライディングボードの使い方を把握し移動を始めようとする。


また、ライディングボードの支給品紹介もこちらのテキストを



【支給品紹介】
ライディングボード@魔法少女リリカルなのはシリーズ
園咲霧彦に支給、
ウェンディの固有武装で移動手段だけではなく盾や砲撃手段としても使用できる。
ウェンディによるとスカリエッティは量産を視野に入れていたらしい。またウェンディ以外の人間も使用が可能。



以下の様に修正いたします。


【支給品紹介】
ライディングボード@魔法少女リリカルなのはシリーズ
園咲霧彦に支給、
ウェンディの固有武装で移動手段だけではなく盾や砲撃手段としても使用できる。
ウェンディは先天固有技能によりライディングボードの性能を最大限に引き出していた。
ガジェット・ドローン(空中を浮遊する機動兵器)の技術が流用されており、それ自体に浮遊する力がある。
元々空戦能力の無いウェンディはこれを利用する事で限定的に空戦能力を得ていた。
ウェンディによるとスカリエッティは量産を視野に入れていたらしく、ウェンディ自身もティアナに一度貸そうとした事があった。
その為、ウェンディ以外の人物も空を飛ぶ等の使用は可能。

183 ◆LuuKRM2PEg:2014/04/22(火) 21:43:27 ID:r9Nmo5jM0
以前投下した「壊れゆく常識」で、孤門が沖と共に研究室に入る部分や
鋼牙の行動について、意見がありましたのでその修正版を投下させて頂きます。

184壊れゆく常識(修正版) ◆LuuKRM2PEg:2014/04/22(火) 21:44:23 ID:r9Nmo5jM0

「こんな設備がこの警察署にあったとは……」

 警察署の一室で沖一也は瞠目している。
 蒼乃美希から手渡された『D−BOY FILE』という謎のカードを解析する為の機械を使う為、孤門一輝の案内でこの部屋にやってきたのだ。
 ここには、あのアメリカ国際宇宙開発研究所で使われているようなスーパーコンピューターは勿論のこと、一也にとって未知のマシンが存在感を放っている。
 しかし、ただの警察署にこんな設備が必要とは思えない。殺し合いの役に立つとも思えないし、何の為に用意したのかが理解できなかった。チェックマシンのように、特定の参加者に向けて意図的に作り出したのかもしれないが、情報が足りないので断定はできない。
 今は、この機械達を使ってファイルの解析をするしかなかった。

「ええ、ヴィヴィオちゃんと一緒にいる間に見つけました。ここなら、きっと解析もできるはずです」

 案内人である孤門は、近未来の技術が凝縮された部屋に足を踏み入れる。
 見た所、この部屋に罠が仕掛けられているようには見えない。自分達以外の誰かが潜入した形跡も感じられなかった。

「確かに、こんなに設備が整っているのならできるかもしれない……やってみるか」
「わかりました」

 孤門が頷いたのを合図にするように、タイル状の床を踏み締める。ガラスのように綺麗で、数分前に誰かが掃除をしたと言われても信じてしまいそうだった。
 かつ、かつ、かつ……二つの足音を響かせながら、部屋の中を確認する。すると、すぐにカードが挿入できそうな四角い穴があったので、そこに差し込む。
 すると、部屋に設置されているスピーカーから男の声が発せられてきた。



 このファイルを残した男の名前はハインリッヒ・フォン・フリーマン。地球の侵略を企む悪質な知的生命体・ラダムと戦うスペースナイツという集団のチーフだった。
 ラダムは他の生命体に寄生して、脳を支配することで生態系を保っているらしい。
 相羽家やその知人が乗ったアルゴス号はラダムと接触して、悲劇が起こった。ラダム達はアルゴス号の乗務員達を支配して、テックシステムと呼ばれる生体兵器を生み出す。しかし相羽タカヤは相羽孝三の働きにより支配から逃れて、そして地球に帰還した。
 それから相羽タカヤはスペースナイツと共に戦うようになったが、あまりにも無茶な行動を繰り返すせいで「Dボウイ」と呼ばれてしまう。Dボウイはテッカマンブレードとなってラダムと戦えるが、不完全なテックシステムの影響で三十分以上の戦闘を続けると、ラダムに精神を支配されるデメリットを持っていた。
 スペースナイツの働きによってDボウイは正気に戻る。そして、ブレードのシステムを元に、人間達もソルテッカマンと呼ばれるパワードスーツを生み出した……しかし、その一方でラダム側に所属するテッカマン達が現れる。
 テッカマンエビルとテッカマンレイピア。相羽タカヤの双子の弟・相羽シンヤが変身するエビルはラダムに支配されていて、相羽タカヤの妹・相羽ミユキが変身するレイピアは精神支配から逃れていた。しかしミユキはテックセットをする度に肉体崩壊を起こすデメリットがあり、最期はタカヤを守る為にラダムテッカマン達と戦い……散ってしまった。

185壊れゆく常識(修正版) ◆LuuKRM2PEg:2014/04/22(火) 21:45:27 ID:r9Nmo5jM0
『……地球の、未来を信じる者に』

 フリーマンという男が残したメッセージが告げられて、そこで止まった。
 沖と孤門は何も言えなかった。相羽の名字を持つ参加者達がそんな壮絶な運命を背負っていたなんて、夢にも思わない。身体を弄られてしまい、そして自分の意志を奪われたまま殺戮を強いられてしまう……ドグマやジンドクマの悪行を聞いているようになってしまい、ラダムに対する憤りが湧きあがった。

「……なんということだ」

 今の沖には、胸に湧き上がる感情を言葉に込めることしかできない。
 相羽家の人間達に対する同情をしても、彼らはもうこの世にいなかった。だから、もう彼らを救うことだってできない。もう少し早く知っていたら、彼らのことも助けられたはず……そんな可能性が芽生えてしまい、今度は無念の苛立ちが広がってしまう。
 だが、今となってはどうにもできなかった。相羽家の人間がどこでどんな風に死んだのかもわからない以上、弔うことすらできない。せめて、仮面ライダーとして人間をラダムから守りたかった。

「俺は、彼らの為に何かをすることもできないのか……」
「沖さん……」
「孤門。確か、美希ちゃんはマイクロレコーダーを持っていたね。それは、相羽シンヤのだったな」
「はい……子どもの頃に、シンヤが残したのだと思います。その頃はまだ、二人は普通の人間だったのでしょう」
「……くそっ」

 表情を曇らせている孤門の言葉を聞いて、沖の中で遣り切れない気持ちが更に強くなる。
 きっと、相羽タカヤと相羽シンヤは仲のいい兄弟だったはずだ。ミユキも含めて、家族全員で幸せに暮らしていたはずなのに、ラダムによってぶち壊されている。
 変わり果てた家族と戦わされてしまい、そして妹の死を目前で見せられてしまったタカヤの心境を考えただけでも、胸が張り裂けそうになってしまう。


「孤門。この話は、子ども達には内緒にしておこう……彼女達が知ってしまったら、きっと相羽タカヤ達の世界に行って、戦いに向かうはずだ。ラダム達と戦うのは、仮面ライダーの仕事だからな。翔太郎君にも、後で話しておかないとな」
「……わかりました。でも、その時は僕も一緒に行きます。僕だって、タカヤさん達が生きた世界の人々を守りたいですから」
「そうか……なら、その時は頼むぞ」
「はい!」


 孤門が頷くのを目にした後、沖はカードをケースの中に戻した。
 こんな残酷な話は未来ある子ども達が知る必要はない。これからを頑張ろうとしている少女達に、余計な絶望を植えつける訳にはいかなかった。残酷な現実を知らなければいけない時は確かにあるだろうが、それは今ではない。
 仮にタカヤ達のことを教えるにしても、殺し合いを終わらせてからだ。それまでは、このファイルのことは秘匿にして、信頼できる大人達の間に留めるべきだった。
 例え、タカヤが自分の世界のことを翔太郎や杏子に教えたとしても、このファイルの内容は限られた大人だけにした方がいいかもしれない。どうか、詳しい所まで話していないことを願う。
 首輪の解析などもしたいが、今は仲間の元に戻ってこれからのことを話し合うのが最優先だ。





186壊れゆく常識(修正版) ◆LuuKRM2PEg:2014/04/22(火) 21:48:31 ID:r9Nmo5jM0
「なるほど。これは見事に参加者のスタンスが纏められているな……」

 冴島鋼牙は手元に握っている一丁の名簿を眺めながら、感心したように呟いた。
 魔導輪ザルバと再会してから、鋼牙は警察署にいる三人の少女達を見守っていた。今、この場には沖一也と孤門一輝の二人はいない。
 沖は支給のファイルを解析する為に研究室へ向かい、孤門はその案内をしたことによって、大人は鋼牙だけになった。二人が戻るまでの間だけ、鋼牙は子ども達を守ることになった。
 子守りは鋼牙の柄ではないし、一刻も早くみんなを捜さなければならない。だけど、ここにいる少女達にはザルバを守って貰った恩があるのだから、その分だけ守るべきだった。

『そういえば、鋼牙。お前、本当にまたバラゴを倒したのか?』
「ああ。奴はこの地でも人を二人も殺した……同じ魔戒騎士として、奴の凶行を止めなければならなかった」
『それは当然だな……それにしても、キバの鎧だけじゃなくバラゴ自身もかなりしぶといな。もう、出て来ないことを祈りたいぜ』

 ザルバがうんざりしたようにぼやく。
 バラゴ。そして、バラゴの邪心から生まれた暗黒騎士キバとは幾度となく戦った。あるサバックの調査を行った時だって、キバの鎧は暁の精神を乗っ取った。いつかまた、キバの鎧は蘇る可能性もあるが、倒せばいいだけ。

(涼村暁か……この男も、何者なんだ?)

 名簿を見るうちに、ある男の名前が目に飛び込んでくる。
 暁。参加者の中には涼村暁という名前がある。その人物に関する情報は書かれていなかったが、どうか危険人物でないことを願った。

『美希の嬢ちゃん、ヴィヴィオの嬢ちゃん、それにアンコ……どうか、仲良くやってくれないかねぇ』

 ザルバの目には、三人の少女の姿が見えているようだった。
 蒼乃美希と、高町ヴィヴィオと、佐倉杏子。この地で出会った、花咲つぼみと同じくらいに若い少女達だ。
 蒼乃美希。見るからに真面目で、品行方正という言葉が似合う少女だった。キュアベリーに変身する彼女はつぼみの友達らしい。
 高町ヴィヴィオ。美希のように固くはないが、真面目な少女だ。彼女は魔導師という戦士に変身することができるらしい。プリキュアや仮面ライダーのように高い戦闘力を誇るようだ。
 佐倉杏子。やや言動は荒いが、根はいい奴だとザルバは言っている。魔法少女、そしてある人物からウルトラマンとプリキュアの力を受け継いだらしい。ザルバが認めているのなら、信頼できるだろう。
 しかし、それとこの三人が集まったらすぐに仲良くなれるかと言われたら、話は別だ。

「なあ、やっぱり今まで盗んできた分って、働いて返さないと駄目か?」
「それは当たり前でしょ。あなたが辛かったのはわかるけど、盗まれた人達には関係ないわ。生活が困った人だっているのだから」
「やっぱりか……やれやれ、昔のあたしはとんでもないことをしていたんだねぇ」
「他人事みたいに言わないの!」
「はいはい」

 美希の咎めに対して、杏子は軽い態度で流す。それが許せなかったのか、美希は更に表情を顰めさせた。

「え、えっと二人とも……今は喧嘩はやめましょうよ! さっき、孤門さんからも言われたじゃないですか!」

 そんな彼女達の間で、ヴィヴィオはおろおろしながらも喧嘩を止めようとしている。

(こくこくこく)
「にゃー」
「ほ、ほら! クリスとティオだって、二人には仲良くして欲しそうですし!」

 ヴィヴィオの周りには、うさぎのようなセイクリッド・ハートと猫のようなアスティオンというぬいぐるみが、それぞれ頷いていた。
 どちらのぬいぐるみも人の言葉を話さない。しかし、それでもヴィヴィオには意思疎通ができるようだ。目と目で、気持ちを伝えあっているのだろうか。

「えっ? ヴィヴィオ、あたしは別にそんなつもりじゃ……」
「そうそう。あたしだって、また孤門の兄ちゃんに殴られるのは御免だよ」
「そ、そうですか……それなら、よかった」

187壊れゆく常識(修正版) ◆LuuKRM2PEg:2014/04/22(火) 21:49:16 ID:r9Nmo5jM0
 ヴィヴィオはホッ、と溜息を吐く。
 彼女としても、仲間が喧嘩をする光景など見たくないのだろう。こんな状況で内輪揉めなどされては、その瞬間に空気が悪くなってしまう。
 だが、このままでは同じことが繰り返されてしまうかもしれないから、空気を変えなければならない。そう思った鋼牙は口を開こうとするが……

『……おい、お嬢ちゃん達。難しいのはわかるが、あんまりギスギスしていると俺様も悲しいぜ? 喧嘩をする程、仲がいいとは言うが限度がある』

 指の中に収まっているザルバに先を越されてしまった。

『アンコは今までのことを反省している。そして、美希もアンコのことを理解している……これで充分じゃねえか。これ以上、不安にさせるなよ』
「はぁ? あたし達は……」
『喧嘩はしていないってか? お前達はそうかもしれないが、傍からはそう見えないぞ? 尤も、いがみ合っているようにも見えないがな』
「ザルバ……どっちなんだよ!?」
『それは、これからのお前達にかかっている。俺様は見守りはするが、必要以上に干渉はしない……お前達の関係は、お前達で作るものだからな』

 そう語るザルバは、まるで教師のような態度だった。尤も、ザルバがそこまで面倒見がいいかは定かではないが。
 鋼牙は喧嘩の仲裁などあまり経験がないし、ましてや思春期の少女のメンタルケアなど専門外だった。涼邑零やゴンザなら何とかなるかもしれないが、鋼牙にそこまでの能力はない。
 冴島財閥のトップでもあるが、流石に女子中学生の面倒を見られるかと言われたら首を傾げるだろう。だが、逃げる訳にはいかない。

「杏子、そして美希……お前達が住む世界は違うだろう。そして、生きる道も違う。だが、それでも今は共に歩いている……それを忘れるな」
「鋼牙さん……?」
「つぼみは言っていた。最初はある少女と敵対していたが、それでも気持ちをぶつけあったことで友達になったと……俺が言えるのは、ここまでだ」

 美希の疑問に答えるように、鋼牙は答えた。
 なるべく暗くならないようにしたかったが、元々こういうのは得意な性格ではない。なので、もしかしたら余計に不穏になってしまう恐れもあった。

「気持ちをぶつけあう、ね……まあ、そういうのも悪くはないかな」

 頭をポリポリと掻く杏子は、納得をしたかのように呟く。

「さっきは喧嘩をしたけど、あたしは別に美希のことが憎い訳じゃない……美希のことだって、知りたいと思っている」
「……杏子?」
「せつなからも頼まれた。あんたや、ラブって奴のことをお願いって……せつなは、最期まであんた達のことを考えていた」
「……」
「あんたの堅物さにはイラついたことはあった。でも、あんたのことは決して嫌いじゃない……これだけは本当だ」

 杏子はどこかバツの悪そうな表情を浮かべながら、美希から視線を逸らしていた。
 ザルバが言うには、この二人で何やら一悶着があったらしい。美希が警察署に戻る前、杏子の素行の悪さに怒ったようだ。彼女からすれば、ルールを破る杏子は許せないのだろう。
 美希の気持ちは理解できるが、ザルバが言うように杏子は反省をしている。無論、反省をすれば全てが許されると言う訳ではないが、それでも変われるきっかけになるはずだった。

「杏子。あなたの気持ちはわかったわ……あたしも、昔のあなたの振舞いは許すことができない。誰かを助けられるはずの力で、誰かを不幸にしてきたのだから」
「わかってるよ……あたしだって」
「でも、杏子はせつなのことを守ってくれた。そして、せつなの想いを伝えてくれた。だから、あたしはあなたを信じることに決めたわ」

 そう言いながら美希は前に出て、杏子の手を握り締める。
 呆気にとられる一方で、美希は言葉を続けた。

「せつなのことを守ってくれて、ありがとう……ブッキーのリンクルンも守ってくれて、本当にありがとう……!」
「……どうしたしまして」

 美希と杏子は笑っていた。ぎこちなかったが、そこには確かな絆があった。
 そんな二人を見て、ヴィヴィオも表情を明るくする。ザルバも表情は動かないが、したり顔になっているはずだった。
 どうやら、この二人はもう心配する必要はないだろう。無論、完全に仲が良くなった訳ではないだろうが、前進はしている。

188壊れゆく常識(修正版) ◆LuuKRM2PEg:2014/04/22(火) 21:50:48 ID:r9Nmo5jM0

『……俺様が助言をして、正解だったな』

 そんな中、蚊の鳴くような声でザルバはぽつりと呟いた。

「すまないな、ザルバ」
『何。ここはこの俺様が出なければ、不穏になるだろうからな……鋼牙では力不足だろう?』
「ムッ……」

 皮肉とも取れるザルバの言葉だが、否定することはできない。鋼牙では刺々しくなる可能性があるからだ。ザルバはそれを見通したからこそ、出てきたのだろう。
 しかし、鋼牙は怒るつもりはない。むしろその逆で、気配りをしてくれた相棒に感謝をしなければならなかった。

「……待たせたね、みんな」

 そして、ドアが開くのと同時に沖一也が姿を現す。隣には孤門一輝も立っていた。
 その手には『D−BOY FILE』というケースが握られている。つまり、解析が終わったのだろう。

「終わったのか?」
「ああ……この中には、相羽タカヤの戦いに関するデータが纏められていた。そして、相羽シンヤと相羽ミユキについても」
「……そうか」

 沖の言葉に鋼牙は何も返せない。
 ファイルの名前に『Dボウイ』が付けられているので、相羽タカヤと何らかの関係があるのではと推測していたら案の定だ。しかし、相羽タカヤはもうこの世にいない。
 鋼牙自身が、タカヤの遺体を埋葬したのだから。

「冴島さん、これからあなたはどうしますか?」
「俺は仲間達を捜しに行くつもりだ。彼らはまだ、森のどこかにいるのだから」
「そうですか……あなたを一人にさせたくはないですが、無理に止めることもできません」
「合流をしたら、お前達のことも話す……そうすれば、また会えるだろう」
「わかりました。どうか、気を付けてください」
「ああ」

 鋼牙は沖に頷く。
 時計を見てみると、針はもうすぐ21時になろうとしている。ここにいるメンバーを責めるつもりはないが、大分時間が経ってしまったようだ。 
 ここに来るまでにつぼみ、一条、良牙の三人を見つけられていない。入れ違いになったのか、それとも三人はまだ森の中にいるのかはわからないが、捜さなければならなかった。

「そういえば、沖の兄ちゃん。もうすぐ、あのゴハットって野郎が言っていた時間になりそうだけど……本当に何かがあるのか?」

 佐倉杏子は疑問を口にする。
 第三回放送の担当者であるゴハットが言っていたボーナスの時間まで、もうすぐだった。ゴハットが言うには三十分もの間、誰にも見られないように単独行動を続けなければいけないらしい。
 もしもそれが本当ならば、これからの戦いの役に立つかもしれないが、安易にそれを鵜呑みにするのは危険だった。

「恐らく、可能性はあるかもしれない……だが、下手に単独行動を取るのは危険だ。その間に襲われては、大変なことになる」

 沖の言葉は尤もだと、鋼牙は思う。
 この島にはまだ危険人物が残っている。血祭ドウコクや天道あかねがその代表例だ。 数人で固まっているならまだしも、一人で戦って勝つのは難しいかもしれない。

『なら、心当たりのある奴だけがどっかの部屋で待っていればいいんじゃないか? 何かがあったら急いで変身をして、助けを呼べばいい……そうすれば、簡単には殺されないはずだろ?』

 その思案を払拭するかのように、ザルバが提案をする。

189壊れゆく常識(修正版) ◆LuuKRM2PEg:2014/04/22(火) 21:51:30 ID:r9Nmo5jM0
『ないと思う奴らだけが固まって、あると思うならこの部屋で静かに待つ……これでいいんじゃないか? その後に、休憩を取ればいい』
「それもそうだが……」
『もしも何か便利な力があるのなら、さっさと使えるようにした方がいいだろ? 出し惜しみをしたせいで死んだら、情けねえぞ?』

 ザルバの言うことは尤もだった。技が使えなかったせいで危機に陥るようになっては意味がない。

『鋼牙。お前も何か制限とやらがかかっているはずだ。確か、轟天が呼びだせなかっただろう? もしかしたら、敵さんのボーナスとやらで呼べるようになるかもしれない……お前の仲間と再会した後なら、試す価値はあるだろう』
「ああ……だが、俺はまだいいが、他のみんなはどうなんだ? 一也の言うように、敵は他にもいる」
『なら、交互に部屋に入ればいいだけだ。三十分ごとに二人ずつで待機をして、戻ってきたらまた別の二人が行動をする……時間はかかるが、一度に大勢が単独行動を取るよりはマシじゃないのか?』
「それなら、あたしからやるよ」

 鋼牙の指で提案を続けるザルバに頷いたのは、杏子だった。

「代わりばんこなら、後回しにするのは面倒だ。さっさと済ませてやるよ」
「杏子、あなた……!」
「おっと、説教ならなしだ。三十分くらい、すぐに過ぎるだろ? ちょっとくらい、心配するなって……何かあったら、すぐに戻るからさ。それとザルバ、色々とありがとな……あんたも気を付けろよ」

 美希は止めようとするが、杏子はそれに構わず背を向ける。そのまま軽く手を振りながら廊下に去っていった。
 今から呼んだとしても、絶対に戻ってこないだろう。

「全く……」
『やれやれ、性急なこった……で、美希のお嬢ちゃんはどうするんだい?』
「あたしは……大丈夫。さっきも言ったように、特に心当たりはないから」
『了解。それなら、俺達も行くとするか』
「ああ」

 ザルバの言葉に鋼牙は頷いた。
 そのまま、部屋を後にしようとするが、その前にザルバは言葉を続ける。

『それと、沖の兄ちゃんもやってみたらどうだ。何かあるかもしれないぜ?』
「そうですよ。ここは僕に任せてください」

 ザルバの提案を進言したのは孤門だった。
 辺りを見渡すと、特に誰も不満を抱いているようには見えない。

「……わかった。だが、もしも何かあったらすぐに叫んでくれ」
「当然ですよ。でも、ここは僕達に任せてください」
「頼んだぞ」

 孤門の言葉に頷いた後、沖は鋼牙の方に振り向いて来る。

「それと、冴島さん……結城さんやゼクロスの力になってくれて、ありがとうございます」
「そういえば、お前も仮面ライダーの一人だったな」

 沖一也という男は、村雨良や結城丈二と同じ仮面ライダーの一人だ。その名を、仮面ライダースーパー1。
 聞いた話によると結城の後輩であり、村雨にとっては先輩らしい。しかし、彼もまた零のように、村雨のことを知らない時間から連れて来られたようだ。

190壊れゆく常識(修正版) ◆LuuKRM2PEg:2014/04/22(火) 21:52:38 ID:r9Nmo5jM0
「はい。俺は村雨良のことを知りませんでしたが、やはり俺達と同じように人の夢や想いを守ってくれたのですね」
「ああ……あいつは最期まで戦っていた。お前達と同じように……そして、大道克己も救った」
「大道克己……確か、仮面ライダーエターナルのことでしたね」
「彼は殺し合いに乗っていたが、同時にこの殺し合いを打ち破ろうとしていた。あいつも、あいつなりの信念を持っていたんだ」

 大道克己の最期は今でも脳裏に焼き付いている。
 仮面ライダーの名前を背負ったゼクロスと戦い、互いに想いや信念をぶつけあった。彼らは正真正銘の仮面ライダーだった。
 それを聞いた沖は、どこか安堵をしたような表情を浮かべる。

「そうですか……色々と教えてくれて、本当にありがとうございます」
「ああ……俺はもう行くぞ。仲間が待っているからな」
「どうか、気を付けてください」

 そう言い残して、冴島鋼牙と沖一也は会議室から去っていく。
 孤門一輝、蒼乃美希、高町ヴィヴィオの視線を感じながら、仲間を求めて歩み始めた。


【冴島鋼牙@牙狼─GARO─】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)
[装備]:魔戒剣、魔導火のライター、魔導輪ザルバ
[道具]:支給品一式×2(食料一食分消費)、ランダム支給品1〜3、村雨のランダム支給品0〜1個
[思考]
基本:護りし者としての使命を果たす
1:みんなの所に戻る
2:首輪とホラーに対し、疑問を抱く。
3:加頭を倒し、殺し合いを終わらせ、生還する
4:良牙、一条、つぼみとはまたいずれ会いたい
5:未確認生命体であろうと人間として守る
[備考]
※参戦時期は最終回後(SP、劇場版などを経験しているかは不明)。
※ズ・ゴオマ・グとゴ・ガドル・バの人間態と怪人態の外見を知りました。
※殺し合いの参加者は異世界から集められていると考えています。
※この殺し合いは、何らかの目的がある『儀式』の様なものだと推測しています。
※首輪には、参加者を弱体化させる制限をかける仕組みがあると知りました。
また、首輪にはモラックスか或いはそれに類似したホラーが憑依しているのではないかと考えています
※零の参戦時期を知りました。
※主催陣営人物の所属組織が財団XとBADAN、砂漠の使徒であることを知りました。
※第二回放送のなぞなぞの答えを全て知りました。
※つぼみ、一条、良牙と125話までの情報を交換し合いました。

191 ◆LuuKRM2PEg:2014/04/22(火) 21:53:14 ID:r9Nmo5jM0
以上で修正した部分の投下を終了します。
ご意見がありましたら、指摘をお願いします。

192 ◆LuuKRM2PEg:2014/04/22(火) 22:04:35 ID:r9Nmo5jM0
あ、修正漏れがありました。
「恐らく、可能性はあるかもしれない……だが、下手に単独行動を取るのは危険だ。その間に襲われては、大変なことになる」

「恐らく、可能性はあるかもしれないが、奴の言葉が真実であるという確証もない」
に修正させて頂きます。

193名も無き変身者:2014/04/22(火) 22:49:55 ID:jM8cHyrw0
読み手様だと言われても仕方ないと思ってはいるのですが、それを承知で少しばかり。
内容に関しては前にこの作品が投下された際指摘されていた点の修正ということで問題ないと思います。
しかし、今回の修正は些か遅すぎる&タイミングが悪すぎる所があるのではないでしょうか。

先にも言った通り、今回の修正箇所は前々、言わばこの作品が投下された三月下旬程度に呟かれていたものであり、最近改まって修正要請が出されたものではありません
それをほとんど一カ月経ったこのタイミング、しかも後続の書き手氏が予約をしたこのタイミングで修正するというのは、余りにもあんまりじゃないでしょうか。

むろん、後続のgry氏も一旦予約を取り消し、今回の話は終わったと言えますが、意図的なものを感じかねないこのタイミングでの修正に対して、少々ばかり疑問に思うところがありました。
今でなくては駄目だったのかな、と。
もちろん矛盾は解消していくべきですが、修正のタイミングを逃したとも言えるこのタイミングでの断りなしの修正には、少々強引なものを感じざるを得ません。
少なくとも、該当パートの予約が入った時点で、一言断りを入れてもよかったのではないでしょうか。

書き手でもない私がこのような口を聞くのは本当に図々しく憚られるべき行為と分かっているのですが、それを承知で好き勝手言わせていただきました。
お目汚し&長文、書き手氏への暴言ともとれる発言、お気に触られましたらこの場をお借りして謝罪申し上げます。

194 ◆LuuKRM2PEg:2014/04/22(火) 22:58:43 ID:r9Nmo5jM0
今回の件に関しては、こちらの不備が原因です。大変申し訳ありませんでした。

195 ◆LuuKRM2PEg:2014/04/25(金) 16:55:21 ID:r9Nmo5jM0
「壊れゆく常識」で鋼牙が妖赤の罠について触れている個所の修正(触れない方面に)をさせて頂いたことを報告します。

196 ◆7pf62HiyTE:2014/04/25(金) 23:03:07 ID:wpAQZxFM0
拙作『Pに翼』にて、wiki上で一部微修正を行った事を報告(『ガドル、そしてダグバを倒し』→『ガドル、そしてエターナルを倒し』、あかねの基本支給品の数(2→4)、良牙の鋼牙に対する呼称(冴島→鋼牙))致します。

197 ◆LuuKRM2PEg:2014/05/03(土) 22:45:09 ID:r9Nmo5jM0
本スレで指摘されていた『この想いを…』でロッソ・ファンタズマを使った部分に関する修正版を投下させて頂きます。


「死ね……!」
「やめろおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 巨大な得物がギロチンの如くキュアパッションに振り下ろされようとした瞬間、ランスの動きは止まる。その巨体は鎖で拘束されていた。それも一本だけではなく、何十もの数だ。
 虚空から現れた拘束具がギリギリと音を鳴らしながら締め付けていく中、あの佐倉杏子が現れた。

「何っ!?」

 杏子が槍を叩き付けたことによってランスは後退してしまい、キュアパッションはようやく解放される。それに喜ぶ暇もなく、彼女の身体は持ち上げられた。
 それに反応する暇はない。何が起こっているかなんて判断する余裕はない。失血によって意識が徐々に薄らいでいくせいで、キュアパッションはまともに思考することができなかった。
 しかしそれでも、視界も確実にぼやけているが、それでも彼女は見ることができている。助けてくれた少女の姿を。

「杏子……」

 キュアパッションを抱えながら走っているその少女は、無事を願っていた佐倉杏子その人だった。





 巴マミと同じ魔法少女である佐倉杏子によって拘束されたのは流石のテッカマンランスも驚いたが、だからといって不利になるわけではない。
 恐らく、あのマミと同じような技を使ったのだろうが、テッカマンの力さえあれば打ち破れないことはなかった。脆弱な人間にとっては脅威だろうが、テッカマンにとっては子供騙しに等しい。

「ヌ……グググ……ダアッ!」

 ランスは全身に力を込めたことによって、鎖はミシミシと軋んでいく。この分なら、打ち破るまでに時間は必要ない。
 杏子が消えても尚、その影響が衰えることはないが今は邪魔する者などいない。以前の戦いではキュアピーチによって妨害されたが、それがなければ簡単に破壊できたはずだった。
 やがてランスの圧倒的な怪力によって……巨体を縛りつけている鎖が破壊された。

「フン、他愛もない……所詮、小娘は小娘に過ぎないということだ」

 そう語りながら息を整えて辺りを見渡すが、誰もいない。
 恐らくあの杏子と言う小娘は、一瞬の隙を狙ってキュアパッションと共に逃げたのだろう。だがあんな小物どもをわざわざ追いかけ回すのも、それはそれで馬鹿馬鹿しいだけ。あれだけ痛めつけたのだから、巴マミのように勝手に死ぬだろう。
 やはり慢心さえしなければ、プリキュアと魔法少女は充分に圧倒できる相手だ。油断をしなかったからこそ、わざわざボルテッカを使うこともなく勝てている。
 だが、終わったことをいつまでも悔やんだ所で仕方がない。それよりも今は、このエリアにいるブレードにメッセージを伝えるのが最優先だった。
 小娘どもがブレード達と合流して、自身のことを話されてはたまったものではない。奴がブラスターテッカマンへの進化が可能となっているなら、また敗北してもおかしくなかった。

『どんな手を使おうとも、多人数で挑もうとも構わん!!
 この俺……破壊のカリスマ、ゴ・ガドル・バに挑むがいい!!』

 そして、三人の杏子が現れてから途切れ途切れに聞こえてきた大声が、ようやく止まる。
 戦いによる咆哮や轟音でほとんどが掻き消されている上に、音源が遠かったせいでまともに聞こえなかったが、ランスの耳には確かに届いていた。
 恐らくあのゴ・ガドル・バとかいう名の小物も、自分と同じように拡声器でも使って蟻どもを呼び出しているのだろう。
 ならば、ブレードの後に始末してやればいい。相当な自信があるのだろうが、テッカマンには遠く及ばないことを教えてやろう。
 そう、テッカマンランスは心の中で呟きながら、テッカマンブレードを探すために足を進めた。






 佐倉杏子は拘束魔法をテッカマンランスに使ってから、キュアパッションを抱えて必死に走っていた。
 どこを目指しているかなんて決めていない。ただ、あのテッカマンランスと名乗った大男から逃げ出すこと以外、何も考えていなかった。
 このままでは死んでしまう。あたしなんかを信じて戦ったキュアパッションが、死んでしまう。そんな思考だけが杏子の中で広がっていた。
 命が徐々に尽きていってしまうキュアパッションの姿が、自分一人を残して死んでしまった家族のみんな、それにフェイトやユーノと一瞬だけ重なって見えてしまう。
 そんな彼女に待ちうけている未来は一つだけ。それに抗う為に、杏子はキュアパッションを連れて必死に走っていた。

198 ◆LuuKRM2PEg:2014/05/04(日) 22:10:01 ID:r9Nmo5jM0
再度、修正版の投下をさせて頂きますので、問題点がありましたら指摘をお願いします。
(今回はせつな死亡シーンの加筆という方向性で)

 ロッソ・ファンタズマ。 
 まだ理想に燃えていた頃、あのテッカマンランスという奴に殺された巴マミと一緒に特訓した末に会得した魔法だった。
 忘れられないあの日から、もう二度と他人のために使わないと決めていたはずなのに、佐倉杏子は感情任せに使ってしまった。いつもならそんなことはないはずなのに、今回だけ使った理由がわからない。
 無意識の内に使ったことに驚いたが、今の杏子にとってそこまで重要ではなかった。魔法の一つや二つが使えた理由なんて、後で考えればいいだけ。
 今の杏子は、キュアパッションを助ける方法しか考えていなかったが、答えは見つけられない。

(このままじゃ……死んじまう! また、死んじまう!)

 だから杏子は焦っていた。
 命が徐々に尽きていってしまうキュアパッションの姿が、自分一人を残して死んでしまった家族のみんな、それにフェイトやユーノと重なって見えてしまう。このままでは、キュアパッションもみんなと同じ運命を辿るだけ。
 それに抗う為に、杏子はキュアパッションを連れて必死に駆け抜けていたけど、何も変わらない。

(どうして……どうしてだよ!? どうしてだよ!? どうして、みんな……!?)

 妹だけじゃない。力を貸してくれた人達が次々と死んでいく。
 どうして、次々と自分の前からいなくなってしまうのかがわからない。
 胸の中に様々な感情が湧きあがるが、どうすることもできなかった。その鬱憤を晴らすかのように、杏子は叫ぶ。

「おい! しっかりしろよ、おいっ!」

 必死に走った甲斐があってか、ランスの元から逃げ出すことに成功した。しかし状況が良くなっている訳ではなく、時間の経過と共に悪化している。
 腕の中でぐったりとしているキュアパッションの呼吸は既に弱弱しくなっていて、青白くなった唇からはゆっくりと血が流れていた。風穴の空いた脇腹や腕から流れる血の勢いは止まる気配を見せず、杏子の衣服や地面を容赦なく汚していく。
 あんな槍に刺されては、骨や臓器も無事でいる訳がない。魔法少女である自分ならまだしも、人間が変身するプリキュアがそんなダメージを受けたら致命傷になるに決まっている。

「くそっ……何か、何かないのかよ!?」

 戦場から離脱する際に確保しておいたデイバッグの中を杏子は漁るが、傷を治せるような道具は何一つ見つからない。自分達のサイズに合いそうにない胴着を引き千切って包帯代わりにしても、止血にすらならないだろう。
 まだ微かに息があるとはいえ、長くないのは明らかだった。殺し合いの場には病院なんてものはないし、ガイアメモリを使った胡散臭い男のような医者もこの場にはいない。
 しかも、逃走の最中に焦って左翔太郎や相羽タカヤのいる風都タワーから離れてしまったので、誰かに頼るのも不可能。
 マミや美樹さやかのように癒しの魔法さえ使えれば可能性があったかもしれないが、杏子の得意分野は幻覚や幻惑。魔女を倒す以外に誰かを助ける力はなかった。
 つまり、キュアパッションを……東せつなを救う手段を、杏子は何一つ持ち合わせていなかったのだ。フェイトやユーノの時のように、彼女を見殺しにするしかないと悟った瞬間、頭部がハンマーで殴られるような錯覚に陥ってしまう。

「杏、子……ゴホッ!」

 そんな中、肝心のキュアパッションはぼんやりとした瞳でこちらを見上げながら口を開いた瞬間、血を吐き出してしまった。

「喋るんじゃねえ、傷に響くだろ!」
「……もう、いいの。私はもう、長くないから……」
「そんなこと言ってるんじゃねえ! てめえは……せつなは、あたしの事が心配じゃなかったのかよ!? あたしが心配なら、弱音なんか吐くなよ!」
「ごめんね、私が弱いせいで……杏子を、苦しめることに、なって」
「謝るな、謝るんじゃねえよせつな! 今、あたしが何とかしてやるから待ってろ!」

 震えるキュアパッションの手を力強く握りしめながら杏子は叫ぶ。
 無論、どうにもならないのは杏子が一番よくわかっていたが、納得などしたくなかった。
 だから必死に嘘を言い続けたが、そんなことをしたって死への運命を変えられるわけがない。慰めにすらならない、無意味な行動だった。

199 ◆LuuKRM2PEg:2014/05/04(日) 22:11:46 ID:r9Nmo5jM0
「ねえ、杏子……」
「だから、喋るなって……!」
「やっと……呼んで、くれたね……」

 どうすることもできずに、ただ呼びかけることしかできない。そんな杏子に、キュアパッションは言葉をかけた。

「……えっ?」
「ありがとう……せつなって、名前で呼んでくれて……」
「何で、何で……ありがとうなんて言うんだよ……あたしは、あんたに感謝されるようなことなんかしてないのに……何で?」
「だって、最後に私の名前を呼んだから……このまま名前を、呼んでくれなかったら……ちょっとだけ、寂しかったけど……もう、心残りは、ない……かな? それに、友達が……一緒に、いるし」
「と……友達?」

 いつの間にか柔らかい微笑みを向けているキュアパッションに対して、杏子は呆けたように呟いた。

「友達って……まさか、あたしのこと……なのか?」
「決まってる、でしょ……他に、誰がいるの……?」
「どうしてあたしなんかがせつなの友達なんだよ……あたしは、せつなを……!」
「だってあなたは……モロトフさん、から……私を助けて、くれたでしょ……あのままじゃ、ラダムに支配されて望まない戦いを、させられているあの人を……もっと、悲しませるかも、しれなかった……それに、杏子が私を逃がしてくれたから、私は最後に杏子と……話が、できた」

 息も絶え絶えになっているが、それでも必死に紡がれるキュアパッションの言葉を杏子は黙って聞くしかない。邪魔することなど杏子にはできなかった。
 キュアパッションはこの期に及んで、自分自身よりも他人のことを心配している。しかも、こんな身体にまで追い込んだランスや、何もできない自分のことを。
 本当なら恨むべきなのに、それどころか心配や感謝をしている。キュアパッションは……東せつなはどうしようもないくらいお人好しだった。
 もしかしたら、ロッソ・ファンタズマを使ったのも、そんなせつなを助けたいと思ったからかもしれない。彼女に死んでほしくないと思って、無意識の内にトラウマを乗り越えて使用した……
 そんな思考が芽生えたが、真相はわからない。また、仮にそうだったとしても関係なかった。例え逃げだせたとしても、せつなのことを助けられなければ意味がない。
 それにも関わらずして、せつなは笑っている。最後まで自分のことを気遣って、そして信頼しているのかもしれない。

「あんたさ……だったら尚更、最後だなんて言うなよ」

 だからこそ、杏子は許せなかった。マミ達みたいな正義の味方でありながら、生きることを諦めようとするキュアパッションが。

「あたしの友達なんだろ……だったらさ、あたしを置いて勝手に死ぬなよ! せつなは、あたしと一緒にやりたいことがあるんだろ!? なあ!」
「いっぱいあるよ……いっぱい、あった……でも、杏子がそばにいてくれるから……私は、大丈夫」
「そんな話じゃねえ! せつなは良くても……友達のキュアピーチって奴はどうなるんだよ!? せつなが死んだら、悲しむに決まってるだろ!」

 杏子自身、激情のあまりに何を叫んでいるのかがわからなくなってくる。
 叫び声に導かれて、危険人物が寄って来るかもしれないと言う思考は今の彼女にはない。ただ、キュアパッションに対して湧き上がってくる胸の蟠りを爆発させるしかできなかった。
 そして、杏子の感情をひたすらぶつけられているキュアパッションは僅かに咳き込んだ後、苦笑を浮かべながら変身に使ったアイテムを手に取る。
 するとキュアパッションの全身は赤い光に包まれたが、ほんの一瞬で元の東せつなの姿に戻った。

「せ、せつな……?」
「杏子……ラブや美希、それにブッキーって呼ばれてる祈里って子の事……お願いね」

 そして震える腕で差し出されたそれを、杏子は両手で取る。
 見た目はちょっと変わった形状の携帯電話なのに、異様なまでに重く感じられた。魔法少女の力を自分勝手に振舞うためだけに使った自分には、プリキュアが使うアイテムを握る資格などないと、一瞬だけ思ったため。
 しかしそれでも、手放してはいけないような気がした。

「アカルンは……きっと、あなたの力になってくれるはずだから……精一杯、頑張ってね」
「な、何を言ってるんだよ……?」
「どうか、誰も憎まないで、みんなを助けて……大丈夫、優しい杏子なら……絶対に、できるはずだから……」
「待てよせつな! 勝手なこと言ってるんじゃねえよ! せつな……せつなっ!」

200 ◆gry038wOvE:2014/05/06(火) 00:10:19 ID:AE9vUq.A0
修正乙です。問題ないかと。

201 ◆LuuKRM2PEg:2014/06/21(土) 12:26:39 ID:tWLrvWdY0
『みんなの言葉! 思い出は未来のなかに!!』を収録する際に
夢に出てきた台詞の一部と、地の文を修正させていただきました。

202 ◆LuuKRM2PEg:2014/06/21(土) 19:44:39 ID:tWLrvWdY0
読み直した所、収録した状態表の一部が投下した時と違っていたので
直させて頂きました。

※結城丈二の死を知りました。

※結城丈二が一人でガドルに挑んだことを知りました。


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