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修正SS投下スレ

199 ◆LuuKRM2PEg:2014/05/04(日) 22:11:46 ID:r9Nmo5jM0
「ねえ、杏子……」
「だから、喋るなって……!」
「やっと……呼んで、くれたね……」

 どうすることもできずに、ただ呼びかけることしかできない。そんな杏子に、キュアパッションは言葉をかけた。

「……えっ?」
「ありがとう……せつなって、名前で呼んでくれて……」
「何で、何で……ありがとうなんて言うんだよ……あたしは、あんたに感謝されるようなことなんかしてないのに……何で?」
「だって、最後に私の名前を呼んだから……このまま名前を、呼んでくれなかったら……ちょっとだけ、寂しかったけど……もう、心残りは、ない……かな? それに、友達が……一緒に、いるし」
「と……友達?」

 いつの間にか柔らかい微笑みを向けているキュアパッションに対して、杏子は呆けたように呟いた。

「友達って……まさか、あたしのこと……なのか?」
「決まってる、でしょ……他に、誰がいるの……?」
「どうしてあたしなんかがせつなの友達なんだよ……あたしは、せつなを……!」
「だってあなたは……モロトフさん、から……私を助けて、くれたでしょ……あのままじゃ、ラダムに支配されて望まない戦いを、させられているあの人を……もっと、悲しませるかも、しれなかった……それに、杏子が私を逃がしてくれたから、私は最後に杏子と……話が、できた」

 息も絶え絶えになっているが、それでも必死に紡がれるキュアパッションの言葉を杏子は黙って聞くしかない。邪魔することなど杏子にはできなかった。
 キュアパッションはこの期に及んで、自分自身よりも他人のことを心配している。しかも、こんな身体にまで追い込んだランスや、何もできない自分のことを。
 本当なら恨むべきなのに、それどころか心配や感謝をしている。キュアパッションは……東せつなはどうしようもないくらいお人好しだった。
 もしかしたら、ロッソ・ファンタズマを使ったのも、そんなせつなを助けたいと思ったからかもしれない。彼女に死んでほしくないと思って、無意識の内にトラウマを乗り越えて使用した……
 そんな思考が芽生えたが、真相はわからない。また、仮にそうだったとしても関係なかった。例え逃げだせたとしても、せつなのことを助けられなければ意味がない。
 それにも関わらずして、せつなは笑っている。最後まで自分のことを気遣って、そして信頼しているのかもしれない。

「あんたさ……だったら尚更、最後だなんて言うなよ」

 だからこそ、杏子は許せなかった。マミ達みたいな正義の味方でありながら、生きることを諦めようとするキュアパッションが。

「あたしの友達なんだろ……だったらさ、あたしを置いて勝手に死ぬなよ! せつなは、あたしと一緒にやりたいことがあるんだろ!? なあ!」
「いっぱいあるよ……いっぱい、あった……でも、杏子がそばにいてくれるから……私は、大丈夫」
「そんな話じゃねえ! せつなは良くても……友達のキュアピーチって奴はどうなるんだよ!? せつなが死んだら、悲しむに決まってるだろ!」

 杏子自身、激情のあまりに何を叫んでいるのかがわからなくなってくる。
 叫び声に導かれて、危険人物が寄って来るかもしれないと言う思考は今の彼女にはない。ただ、キュアパッションに対して湧き上がってくる胸の蟠りを爆発させるしかできなかった。
 そして、杏子の感情をひたすらぶつけられているキュアパッションは僅かに咳き込んだ後、苦笑を浮かべながら変身に使ったアイテムを手に取る。
 するとキュアパッションの全身は赤い光に包まれたが、ほんの一瞬で元の東せつなの姿に戻った。

「せ、せつな……?」
「杏子……ラブや美希、それにブッキーって呼ばれてる祈里って子の事……お願いね」

 そして震える腕で差し出されたそれを、杏子は両手で取る。
 見た目はちょっと変わった形状の携帯電話なのに、異様なまでに重く感じられた。魔法少女の力を自分勝手に振舞うためだけに使った自分には、プリキュアが使うアイテムを握る資格などないと、一瞬だけ思ったため。
 しかしそれでも、手放してはいけないような気がした。

「アカルンは……きっと、あなたの力になってくれるはずだから……精一杯、頑張ってね」
「な、何を言ってるんだよ……?」
「どうか、誰も憎まないで、みんなを助けて……大丈夫、優しい杏子なら……絶対に、できるはずだから……」
「待てよせつな! 勝手なこと言ってるんじゃねえよ! せつな……せつなっ!」


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