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Cocytus

1たいむ:2008/01/13(日) 04:10:01 ID:5zGLoiLk
ダンテはその昔、彼の著作「神曲」で地獄の最下層を4分割にして書いている。

地獄の最下層-Cocytus-

第一の円 Caina

第二の円 Antenora

第三の円 Ptolomea

第四の円 Judecca


今、国を裏切りし者共がその罰を受けんとcocytusに収容される。
-助かりたければ、殺せ。何もかも。すべてを!-

収容された裏切り者共


田中 ツセ子 
美作 静音

海津 美恵子
矢玉 ヒカル

室屋 佐志朗
加治 恭輔

志藤 風也
森木 亜里沙

牧村 沙世
与野 博

松下 理香
笹倉 豊人

野村 笛雄
西村 達也


執行官:花咲 可憐

2たいむ:2008/01/17(木) 02:45:51 ID:5zGLoiLk
―問おう、貴様等は我々、そう「国」を裏切り、滅ぼそうとしたのか?―

  ―問おう、我々はその強大な力を持つが為に貴様等に狙われたのか?―


日本帝國首都、東京より南へウン十km。国を敬わず、あまつさえ反乱を起こした者たちが収容されその生涯を終える監獄

「Cocytus」

そこに収容されたが最後、いかにしようが逃げることは叶わない。
そのような場所に収容されていた十四人。国を滅ぼそうとし、結託したのち中枢を攻撃した愚か者たち。
彼らは判決を聞くことなくこの場所に連れてこられた。

この国で初めての「殺人競技」を行うために。

監獄の入り口に彼らは送られ、その身支度を強制的に整えられる。
まるで病院の無菌室に入る前の着替え部屋のような場所を抜けるとそこにはフリルのついた赤い豪奢なドレスを着飾った女性が佇んでいた。
彼らが全員揃うと、女が口を開いた。
―御機嫌よう。国を裏切った愚か者さん?貴方達には自分たちの罪を償ってもらうためにその身を、命を削ってお互いを殺しあってもらいます―

女はほくそ笑む様に言い放つと首で周りの兵士達に指図を出す。
彼らが入ってきたのとは別のドアが開き、ガラガラとコンテナが搬入される。
それを一人の兵士が掛けられていた南京錠を外し門のような蓋を開いた。
中に入っていたものはA4サイズの未開封コピー用紙の束と同じくらいの大きさのアルミ製の箱であった。
女が言うにはこれはこれから実験対象の全員に配る武器が入っている箱であり、多少強い衝撃を加えるとすぐに分解され取り出せるそうだ。
兵士が空箱を地面にたたきつけデモンストレーションをしてみせる。謂われたとおり、立方体の箱はカパンと音をたててすんなり開いた。

さらに明らかに対象者を卑下したような口調で女はこの実験のルールを話しだした。
謂うには、
・この実験は二人一組の組となり他の組を殺すモノである。
・この監獄Cocytusの内部は4層になっており一定の人数が死ぬことで次の階層へと進むことができる。
・対象者の皆が何らかの能力を持っていることは把握済みである。
・能力を使用しこちらを攻撃するも敵を殺すも自由である。
・無論武器で殺すことも自由。
・一定の日数が経過しても次階層へ進めない場合監獄内の生存している人間すべてを抹殺する。
・最後まで残った者、組は何らかの権利が与えられる。それは残ったものだけに教える。
・この殺し合いにおいて反則はない。だまし討ちでもなんでも勝手にすればいい

簡素なルールの伝え方をし女は彼らの名前を呼ぶ。組を作らせるとその腕にスタンガンのようなものでバーコードを塗布した。
そして自ら箱を二つ手に取り組の人間に渡すと早く外へ行けと言わんばかりに手を振った。

全員、全組を送り出すと女はニヤっと笑い小さく呟いた。



―認識完了。すべて把握した―

3たいむ:2008/01/19(土) 03:48:12 ID:5zGLoiLk
それぞれ

の   性格を
  考慮し    この組分けとなっている 
 
          この組が吉と出るか        凶とでるかは 誰にも
  わからな                い



最も早く出発させられた木の二人。本来の性格は内向的で温厚。
まして田中ツセ子にいたっては其の能力のお陰で周りのすべての人間が能力に引っかからないようにしておきたいと考えるため、自分からよほどのことがないとモーションを起こさない。
また、パートナーとなる美作静音は感情を表に現すことなく淡々としている。尚且つ人との交流を極度に嫌う人種であるために実験が開始して3時間ほど経つというのにツセ子のほうを見ても何も話すことなくすぐに顔をそむけるだけであった。

ツセ子はその能力のお陰で美作から殺気が自分に対して出ていないことを知り安心していた。
その時、不意に美作が口を開いた


―2人、こっちへ、来る。―


ツセ子はビクとして水晶を握りしめた。
どうやら自分の方向ではないしにしろ殺意を持っている相手のようだ。
怯える。怯える。息を殺して。

第1の円Caina。建物の中であるはずなのにしっかりと根を張り茂る樹木。
鬱蒼としたジャングルの中で女二人のこの組は息を潜めてその正体を探らんと意識の塊が来る方向を見つめていた。

―アハハ、吹き飛ばしちゃう?それとも、燃やしちゃう?―

そんなべしゃり声をたてたのは火の組、海津美恵子であった。
相棒、矢玉ヒカルの力、「溶接する手」によって作ってもらった支給の箱を原材料としたアルミ管。
その管から強烈な衝撃波を打てば木々が圧し折れるだろう。
その管からオイルを垂れ流せば矢玉の溶接する手から生成される高温の火花によってこのジャングルは燃えてしまうだろう。

暫しの思案。

海津は管を自分の手前へと、向けた。

4たいむ:2009/05/23(土) 02:45:38 ID:5zGLoiLk
ガ  ォん。

轟音とともに目の前の木々が吹き飛ぶ。
ツセ子は危険察知のおかげで吹き飛ばない木の陰に隠れることができた。
ヘタりとその場にしゃがみこむ。否、腰が抜けたと言ったほうが些か正しいように思える。
それもそうだ。木から出て、相方を探した瞬間。衝撃波で吹き飛んだ木の根が突き刺さった相方をすぐに発見してしまったのだから。
それほど遠くない近く。美作の口から真っ赤な血が・・・漏れない。むしろハア、と溜息すらついた。ツセ子は目を疑った。

―大丈夫?可哀想に。何の罪もないあなたが人を殺すための道具に使われそうになるなんて、ね。―

ツセ子はあいた口がふさがらなかった。だが、横に敵対者がいると思いだすと我に返り、火の二人組を見た。

−え、なんなの。馬鹿じゃないの?何で死んでねーの?キモちわりぃよ!!!!―

−そういう人間は、殺しちゃってもいいの。よ?−

美作が自身に腹に刺さった樹に対し優しく喋り掛ける。全長としては1,5M程の樹がその言葉に呼応しするりと地面に立ち直る。
火の組、そしてツセ子はただ茫然とその奇妙奇天烈摩訶不思議な光景を見ているだけであった。否、見ているしかできない。何が起きているのか、よく分かっていないのだから。

ざわ・・・  ざわ・・・

Cainaの中に風が吹いているわけでもなく木擦れの音がざわりと響く。


段々と。吹き飛ばされた木々が生き物のように蠢き、己がもと居た場所に「戻って」きた。
すると、全く傷口の空いていない美作が立ち上がり、鼓舞する戦乙女のように言葉、いや、言霊を放った。

−殺すのです。貴方達が今最も憎く、憎悪の念を抱いている人間を、殺すのです!−





海津の後ろにいた矢玉の「心の臓」を木の槍が貫いた。

5たいむ:2009/05/23(土) 02:47:21 ID:5zGLoiLk
1年以上ネット断ちしてやっと帰ってまいりました。覚えてる方はいらっしゃらないでしょうが細々と書きあげようと思います。

6t:2009/05/28(木) 23:14:25 ID:G4Pn.n6w
 自分はたいむさんの小説を読むのはこれが初めてになりますが、面白いですね!
特に支給の武器ではなくてアルミの箱の方を活用して攻撃するという凝った手段が気に入りました^^
 これからも無理のないペースで更新していただけたら嬉しいですm(__)m

7t:2009/06/02(火) 11:50:29 ID:DTdbiNRk
age

8たいむ:2009/09/22(火) 05:09:41 ID:5zGLoiLk
とっさに後ろを向いた。目玉がギョロっと私を見て、物乞いをする乞食のように見開いたかと思うと、よくしなる鞭のような枝が目の前の男の後頭部を引っ叩いた。
千切れはしない、だが首の骨は砕けて修復などできないレベルだろう。「くにゃん」と前方に倒れその見えなくなった顔面から白い球体が2個落下した。

美作は植物の意思を読み取り、自分の意思を伝えることができる人間である。傍目から見ると気に喋り掛けてる変人にしかみえない。
しかし彼女はその能力を存分に発揮し森林やジャングルなどでの一人ゲリラ部隊として様々な国で暗躍していた。       らしい。
ツセ子も言伝に聞いただけなので本当かどうかはわからない。ただし一つ言えることは森林では彼女は女王となる。ということ。
−憎らしいですね。私の友達に手を出すなんて、人として最低、いえ、多細胞生物にすら劣る。あら、そんなこと言ったら単細胞生物に失礼だわ。−

狂ってる。  美作の言動にツセ子の背筋に嫌な汗が流れた。



−燃え・・ちまえ!−

海津はチューブからオイルをブチ撒けた。あたり一面、植物とかにガンガンかかるように振り回して。
美作が身構え、ツセ子は隠れていた木からパートナーのほうに吹っ飛ばされた。
出来事は一瞬だった。オイルをまき散らしながら海津はもっていたライターでジャングルに火を放った。


はずだった。


ズキュゥゥゥゥンという音とともに海津の手は珍妙な形に変形した。


ツセ子に支給された筈の「アーマライト・M16変形銃」が一本の木に取り込まれ、そこから発射されていた。

−間に・・・合った。大、丈夫?パートナー。−

9たいむ:2010/07/06(火) 21:29:01 ID:5zGLoiLk
本当はこんな事をするために生まれてきたはずじゃなかった。
でも、小学校の時、リコーダーから其処に有るまじきものが流れ出した時私の人生はとうに終幕を告げていたのかもしれない。

「海津同志。今回の焼き討ちはこの建物だ。君のその『無尽蔵の化石燃料』で今宵も悪夢を見せてやろうではないか。」

私はその時にはただの機械と化していたと思う
それでも良かった。ただ、存在意義があったから。必要とされていたから。
でも使い捨て。所詮、使い捨て。

この能力以外愛玩としての使い道しかなかった私は。逃走の際はただの足手まといでしかなった。そのまま、私は収監された。

そして今。

見たこともない変な女に触られて。自分を馬鹿にするような目で見られて。
そして無理やりパートナーにされた男はすぐに死んでしまって。
目の前にいる女はキモい、そしてわけわかんねえ能力で。
ふざけなんな!私はここでも捨て駒なのかよ!畜生!せめて一矢むくいt・・・



ライターをもってた右手は吹き飛び、もう、なにも考えたくなくなっていた。
ただ、今はこの右手の苦痛から逃れて、楽になりたい。そのことが頭を駆け巡った。まだ、死にたくないのに

「楽になりたいでしょう?」

不意に聞こえた言葉は自分の考えを読んでいたかのようで。

「でも、楽にはしてあげない。私は、許さない。絶対にだ。」

いやな声。絶望を運ぶ声。振り下ろされた。銃座。後頭部をカチ割られたような感覚が走る。
前へ、倒れる。見えた顔は、冷静な顔が豹変した口角がつりあがった美作の顔だった。あれが、ゲリラのころの顔なのだろうか。

畜生、まだ死にたくな・・・・


−じゃあね、私の友達を吹き飛ばした人は当然の、報いよね。−

10たいむ:2012/01/25(水) 07:09:26 ID:CzUavPTg
第一の円4ツ分ノ2
光の組の笹倉豊人はかつての知り合いとコンビになれたことに多少なりとも幸運を感じていた。
お互いに能力を理解できている。これは他の組と違って大きなアドバンテージとなる。
コンビとなった松下の「質量のある残像」。彼女が一定以上の速度で動くことができれば多大なダメージが与えられるということである。

だが一方の松下派かというと、
−やっばー・・・ササの能力って何だっけか・・・なんか光に関することだったけど全然思い出せねえって−
こんなことを考えていた。

4ツ分ケノ2は1と変わりコンクリートジャングルを模した廃墟のオフィス街といった趣の作りとなっており、廃車なども転がっている。
ここに分けられたのは金と水。運命は、皮肉だった。

―なあ、リカ。敵さん来たらどうする?まあ死にたくなきゃ殺さなきゃなんねーんだけど。向こう次第で行く?―

笹倉は迷っていた。彼女の性格はイケイケゴーゴー。おそらく突っ込んで自爆する可能性が見える。それをさせないために彼は布石を撃つことにした。
彼女の能力は確かに強力である。だが彼女が死んでしまってはひとたまりもない。

―んー・・・やっぱ突っ込むのは危ないよねぇー。でも、私は、向こうがこっちを殺す気でいると考えておく方がいいと思うの。だって、そういう実験なんでしょ?
  だったら、私は闘うよ。だって、死にたくん倍し、だって、生き残りたいし、だって、ここから逃げ出したいし。だから私は、敵が来たら容赦なく、迎え撃つつもり。―

・・・。意外だった。年月とはこうも人を変えるものか。以前の弾丸娘のような彼女はそこにはいなかった。杞憂に終わった。
そしてその彼女はしっかりと意思を持って自分の目の前にいる。、以前のかわいらしい彼女とは違ったりりしい女性を見て、笹倉は心底落ち着いた。

だが聞こえた。彼女以外に、話す者の声が。

―俺は、俺は死、しにたかあねえ!ぜってーに!―

試合の幕開けだった。目の前の彼女は手にグルカナイフを構え、スっと佇んでいた。


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