- 1 : ◆95S72tfpdk :2020/04/01(水) 12:45:11
- おーぷんが使用できなくなった時などにお使いください
- 37 :名無しさん :2020/07/20(月) 15:49:38
- >>36
『ラブレスブランドのニュー・モデル・ファッション、今夏一斉発売!』
『シャーロック姉様不在の今、このエルロックがオックスフォードを守ります!』
『世界初の共産主義国家の成立か。果たしてどうなるやら……』
混ざりあった言葉達は、全て一つの音となって、耳を抜けていく。 友達を見つけるのは、後回しになってしまいそうだと、その中から見つけ出すのは、やはり諦めざるを得なかった。 椅子の上に腰を押し付けても、やはり友人に対する思いから、心は中々、落ち着けることが出来なかったが――――
「……それは……そう、でしょうか……なら……」
少なくとも、彼女の語る言葉は気休め程度にはなったことに違いない。 (省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
- 38 : ◆HnQRCeqIrM :2020/07/21(火) 00:58:18
- >>37
「うん、それだけ。ワタシが、キミに興味があったんだ」 「そんなに緊張しなくたっていいさ。何も取って食べようって訳じゃないんだから」
至極あっさりと、さしたる理由がない事を認めた。あるいは、そう思わせない程に飄々としているだけかもしれない。 視線を逸らす事はなく、偶然の邂逅にしても行き過ぎた、言葉通りの好奇心を隠そうともせず。 両肘をテーブルに乗せ、組んだ手の上に顎を置く。首を傾げて、一挙手一投足を観測しているようだった。
「分かるよ。ワタシも沢山の国を廻ったけど、英国の紅茶は格別だ。ロシアじゃあ、こんなに繊細な飲み物はなかったからね」
英国流の作法や文学的な所感を求めているつもりはなかった。そも、彼女とて英国を拠点としていたのは数年程。 土地に際立って深い思い入れがある訳でもなく、だからこそ本当に上質な物に心を惹かれる。 拙いながらも素直な感想は、むしろ祖国の代物ではないが故の共感を齎して大きく相槌を打った。なんでもないように、彼女もまた異邦人である事を露呈した。
「へえ、そうだったんだ。こんなに遠くまで一緒に来るなんて、二人とも仲がいいんだね」 (省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
- 39 :名無しさん :2020/07/21(火) 11:30:55
- >>37
興味だけで話しかけた。それについては納得したが、かと言って観察されるのを是とするわけではない。 そもそも、その興味の対象が自分であるということに納得しているわけではないことにも後になって気付く。 なんとも本心を躱すかのような、誘うような物言いに、やはりやり難いように視線を送って。
「ええ、日本でもあまり馴染みが無いですけど……ロシア? えっと、そちらの方から来た……のでしょうか」
日本における紅茶文化はまだ庶民には浸透していない。 輸出品としてはそれなりの質のものを作ってはいるものの、ティーハウスの誕生までまだ幾許か待つ必要があった。 それでも、上質な茶葉は、そんな日本人からして、良いものだ、と理解させるだけの質があった……そして。 彼女の言葉に、思わず聞き返した。ロシアといえば、正しく今、革命を終えたばかりの渦中の国でもあったのだから。
「はい……物静かで、でも好奇心が旺盛で、少し危なっかしくて……でも優しくて、勇気があて……。 私の一番大事な人なんです。だから……一緒に来ようって、前から約束していて」 (省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
- 40 : ◆HnQRCeqIrM :2020/07/21(火) 22:12:17
- >>39
「血の日曜日よりずっと昔の話だよ。彼らがあの国をどうしようと、ワタシの知った事じゃあない」 「一度気になったら、じっとしていられない性分でね。若い頃から転々としていたんだ」
国家を揺るがす大きな流れに対する言葉は、苦言や皮肉の色を映さない。 優しく語って聞かせているようで、呆れたように肩を竦めたものだから、一切の関心がないのは事実らしかった。 自ら口にする好奇心旺盛な気質は、否定するべくもないだろう。現に今、こうして見ず知らずを相手に実演しているのだから。
「随分と仲がいいんだ。羨ましいな、ワタシにはそこまで想える相手がいなかったから」 「キミ達は、人を大事にするといい。お節介だと思ってくれても構わないけれどね」
悔悟だとか、そういった過去を惜しむ湿っぽさは見受けられない。純粋に、若さ故の豊かな情緒を微笑ましげに眺めていた。 己の生き方に欠落があると知りながらも、欠片も後悔を抱いていなければ、違う道を嫉む事なく素直に訓示などできないだろう。 志を共にする同胞はいても互いを想い合う友を得られなかった、表裏に孤高と孤独を据えた人生を。
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
- 41 :名無しさん :2020/07/22(水) 00:58:33
- >>40
特定の国家に対して、自身の存在意義を委ねるような相手ではないことは何となく察しはついた。 ただ、その国を転々としていたという経歴には納得するに足るだけの、好奇心を、今まさに見せつけられている。 それを疑う余地もなかった。アールグレイをまた一口、運ぶ。
「……はい、その……私にとって、いちばん大事な人……なんです。 他の誰よりも……今までも、これからも。だから、はい。これからも、大事にしていけたらと……」
普段であれば、こんなに小っ恥ずかしい事は、友人にも、面と向かっては早々言えたことではない。 聞かれていたらどうなるか。こんな風に素直に物を言えたのは、彼女自身が、全くもって赤の他人だからか。 彼女の歩んだ孤独の道に、美珠は答えることはできなかった。ただ、彼女が応援する言葉に、頷くのみであった。 その訓示の通りに歩むことを約束するくらいのことしかできず……それで答えは合っているのかと、疑問ではあった。
「――――っ」
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- 42 : ◆HnQRCeqIrM :2020/07/22(水) 13:23:22
- >>41
「あはは、まるで番だね。ワタシまで恥ずかしくなりそうだよ」
揶揄っている調子ではなかった。むしろ心に灯が点って、思わず笑みが零れてしまったかのようだった。 籍を入れた相手こそいたが、女にはそういう人間はいなかった。拒んでいた訳ではなかったが、それよりも優先すべき事があった。 かつて黎明が一翼を担った身として。碩学たる彼女を今尚慕う者こそ多々いれど、それら以上に熱を傾けるべきだと信じて疑わないモノが。 同じく人倫も軽視できる同胞ですら、二の次にしてしまえるくらいに。
「好きにするといい。それが本当に正しいか、ワタシからは何も言わないさ」
その許容が、何よりもはっきりと答えを示していた。スコーンが一つだけ残っている皿を無言で押しやる。 利発で少し感情が面に出やすい、多くを語らずとも意を汲んでくれた少女への、細やかな返礼のつもりなのかもしれなかった。
「可笑しな事を言うね。ワタシとキミが会うのは、今日が初めてだっていうのに」 「ワタシがキミにしてあげた事なんて、今ここでご馳走しているくらいだろう?」 (省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
- 43 :名無しさん :2020/07/22(水) 15:33:38
- >>42
「つ、つが……!! げほっ、げほっ……!」
彼女の言葉に揶揄の意図は含まれていなかったかもしれないが、少なくとも美珠自身に似た効果があったことは明確だった。 顔に昇る熱は美珠自身の錯覚によるものではなく、紅潮という形で、外見から見て分かる通りに描き出されている。 品も無く噎せてしまったことで、そこに否定も肯定も挟む余裕もなかったのは、ある意味で幸運だったかもしれない。 落ち着いた後も、動揺から落ち着きを取り戻すのに、ほんの幾許かの空白を挟む必要もあった。
「……ええ、確かに初めてです。でも……貴女にもらったものは、これだけじゃない」
差し出されたスコーンを、指先で摘んで拾い上げて、口へと運ぶ。 その話も名も聞いている。偉大なる碩学が一人。マハトマの女。……彼女はあくまで、そう名乗ることはなかったが。 彼女はあくまで、その好奇心のままに動いた。それだけかもしれない。 彼女が……その口振りのままに、全て知っているのだろう。彼女の上を行こうだなんて、そんな気持ちは欠片もない。 (省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
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