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避難所ロールスレ

40 ◆HnQRCeqIrM:2020/07/21(火) 22:12:17
>>39
「血の日曜日よりずっと昔の話だよ。彼らがあの国をどうしようと、ワタシの知った事じゃあない」
「一度気になったら、じっとしていられない性分でね。若い頃から転々としていたんだ」

国家を揺るがす大きな流れに対する言葉は、苦言や皮肉の色を映さない。
優しく語って聞かせているようで、呆れたように肩を竦めたものだから、一切の関心がないのは事実らしかった。
自ら口にする好奇心旺盛な気質は、否定するべくもないだろう。現に今、こうして見ず知らずを相手に実演しているのだから。

「随分と仲がいいんだ。羨ましいな、ワタシにはそこまで想える相手がいなかったから」
「キミ達は、人を大事にするといい。お節介だと思ってくれても構わないけれどね」

悔悟だとか、そういった過去を惜しむ湿っぽさは見受けられない。純粋に、若さ故の豊かな情緒を微笑ましげに眺めていた。
己の生き方に欠落があると知りながらも、欠片も後悔を抱いていなければ、違う道を嫉む事なく素直に訓示などできないだろう。
志を共にする同胞はいても互いを想い合う友を得られなかった、表裏に孤高と孤独を据えた人生を。

「……キミが想像している人間が、誰の事かは分からないけれど」

狼狽に揺れる琥珀の漣、焦燥に知らん顔をしてテラス席を包む陽の光。
学生層の比較的多い雑踏も、隣の卓の甘い香りも、黙々と動き回る給仕の影ですら。
泰然とした彼女の佇まいを崩す事は叶わない。秘め事を共有する悪戯っ子のように、唇に人差し指を添えた。

「彼女はあの地獄の時、この学園都市で死んでいる。そうでしょう?」
「今のワタシは、真理と叡智を求めて旅するただの遊子。それ以外の何者でもないさ」

全てを語らずとも、その質問の真意を汲んでいる時点で答えを明言しているようなものだというのに。
あまりに平然とそう嘯いて、まるでバレてしまっても構わないとでも言いたげであった。
はっきりとその名を口にしないのは、むしろ周囲を意識しての事だった。神智学の礎を築いた人間として、また衆目を集めるのを彼女は嫌っていた。
かつては成り行きでそうなったとはいえ、せっかく死を偽ってまで余計な柵を捨て去ったのだから。
ひどく迂遠な言い回しとはいえ、目の前の少女に、暗にそう扱われる事自体を厭ってはいなかった。


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