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YOU、恥ずかしがってないで小説投下しちゃいなYO!

1名無しさん:2006/09/04(月) 00:05:29 ID:ZZXqX536
どんどんこーい。

978青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y:2010/02/05(金) 22:28:44 ID:.QicLn4U



『んーーーっ、私もーっ』



「「え………っ?」」

 俺と初紀はシンクロして疑問の声を上げ、目を開けた。
 明らかに、俺でも、初紀でもない声が聞こえたから。それも、かなりの至近距離から。
 僅か数センチの距離に見知った顔が、二つ。

 ―――二つぅっ!!!?

「のぐわぁっ!!?」
「きゃぁぁっ!!?」

 俺達のマジビビりの声に、階段周りの防風林で羽休めをしてた椋鳥が一斉に飛び去っていった。

『あーあ、せっかくのシャッターチャンス逃しちゃった。失敗失敗』

 "そいつ"は、携帯のカメラを構えながら可愛らしく舌を出して笑っていた。
 本来なら、此処に居るはずのない……人物だ。

「なんで……!?」
「どうして……!?」
「お前が、」
「あなたが、」
「「ここにいる(の)っ!!?」」

『あはははっ、息もぴったりだね、お二人さんっ』

 彼女は、青いリボンで結わえた短めのポニーテールを跳ねさせながらイタズラっぽく笑った。


「るい……っ!」「るいちゃんっ!」


 んなバカなっ!?
 もうこの国には居ない筈の、元通知受取人、"坂城るい"が此処に居るなんて何の冗談だっ!!?

「まさか、飛行機が墜落して……!」
「ええっ!? ああああのっ、るいちゃんっ? 足、あるよねっ!?」
「頼む、成仏してくれっ!」
「あのさ、勝手な想像で人を殺さないでくれるかな?
 ……だから、手を合わせるなーっ!!」

 片目を瞑り、鬱陶しそうに頭を掻きながら、俺達を窘めるるい。

「で、でも、海外に居るご両親の所に行くコトになったんじゃ……!?」
「ん〜、本当ならね」
「んじゃ、なんで此処に居るンだよっ!?」
「まぁ……イロイロありまして」
「イロイロ端折り過ぎだろっ!!」
「……ていうか、ひーちゃんさ、神代せんせーから何にも聞いてないの?」

979青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y:2010/02/05(金) 22:32:31 ID:r6XgMnik

 神代サンから?
 ……まさかっ!?

 俺は神代サンから受け取って、制服のポケットに突っ込んだまんまになってた"誕生日プレゼント"の手紙の封を破り、中をあらためる。



 "前田 陸 殿

 この度は、異性化疾患対策委員会への協力、有難う。
 ―――――。
 ――――――。
 ―――さて、誕生日プレゼントということで黙っていたが、この度、坂城るいは僕の私設秘書見習い、兼、監視官として働くこととなった。
 現在の高校には通い続けるので仲良くして欲しい。
 さて、疑問にも思うしれないが、彼女がご両親の下に行く件については、彼女が極度の高所恐怖症が原因で飛行機での移動が不可能と判断され白紙となった。
 ―――――。
 ――――――。
 ――――――。
 異性化疾患対策委員会 委員長代理
 神代 宗"



「………なんじゃこりゃあっ!!!?」

 刑事ドラマの殉職シーンみたいな声を上げるしか出来なかった。

「あはははっ、別に高所恐怖症じゃないんだけどね、私」
「「え?」」

 ステレオサウンドでるいの言葉に首を傾げる。

「そもそも、私の主治医だった人だからね。神代せんせーは」

 るいの言葉で、ある事実が脳裏をよぎった。
 ……まさか。

「ハルさんの嘘の死亡報告の時と同じ手を使ったってのかっ!?」
「まぁ、過去のカルテを改竄するなんてそう簡単には出来ないから、せんせーが口頭で両親にそう伝えただけだけどね」

 俺も初紀も唖然とするしかなかった。
 仮にも政界の名家の出身だっつーのになんつー荒技に出るんだよ、あの人はっ!?

「……それにしても、その手紙に書いてある"監視官"って……なに?」

 初紀が当然の疑問を向ける。
 確かに私設秘書ってのは何となく理解出来る―――とは言っても一介の女子高生に出来る作業とは思えない―――けど、監視官ってなんなんだ?

「あーそうそう。それね。
 私、"ひーちゃんと初紀ちゃんの監視"を任されてるんだよね」
「………え、俺と……初紀?」
「はい、コレ」

 るいは、軽い感じでキャリーバッグの中からA4のファイルを取り出して、俺に手渡す。
 これ……今日神代さんに頼まれてサインした"誓約書"じゃねーかっ!?

980青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y:2010/02/05(金) 22:38:44 ID:.QicLn4U

 …………へ?
 甲ってのは……俺のことだよな?
 乙は……委員会か。
 うん、そうだ、誓約書のアタマに書いてある。

「……陸、これって………あの、その」

 初紀が顔を赤らめて口ごもる。
 え、何だよ、どういうことだよっ!?

「ひーちゃんは、今日から5年間、誰ともえっち出来ませんってコト」

 …………。
 そうか、なるほど。俺は5年間……
 って、なにぃぃいっ!!?

「ど、どどどどういうことだよっ!?」
「異性化疾患の抗体がえっちするコトによって消える可能性を考慮したんだろうねー」

 そもそも、男女間の性的な交わりを以て異性化疾患を回避出来るんだから……確かに理にかなっているのかもしれねぇけど……。

「で、晴れてこーんな可愛らしい子と結ばれた、うら若き男子が次のステップを我慢出来るワケないもんね?
 そこで! 私の出番ってワケですよ」
「どういうことだよっ!?」
「私が初紀ちゃんと生活を共にして、初紀ちゃんのバージンを毎日確認させてもらいまーすっ」
「「えええぇえっ!!?」」

 るいの奴……なんて羨ましい……じゃなくてっ!!!

「は、初紀は、関係ねぇだろっ!?」
「大アリだよー。
 だって、ひーちゃんは見ず知らずの女の子を抱けるような性格してないし、コトが起こるとしたら……ね?」
「"ね?" じゃねぇよっ!! つーか、初紀の両親がンなコト許すわけが――――」
「―――あっ」

 そこで、初紀が何かに気付いたような素っ頓狂な声を上げる。

「……もしかして、母さんが言ってた"家族が増える"って……!?」
「あ、うん。私のこと。再就職先が見つかっても、通知受取人用の宿舎には戻れないしね。
 もちろんお給料から下宿代は出させてもらうよ?」

 ―――全身の力がヘナヘナと抜けていくのが分かる。
 今日、この日までの俺の葛藤は一体なんだったっつーんだ……!?

「ま、いいじゃん。細かいコトはさ」
「ちっとも細かくねぇよっ!!」
「……っ、ぷくくっ、あははははっ!」

 何がツボにハマったのか、るいは俯いて、凄く楽しそうに笑う。

981青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y:2010/02/05(金) 22:43:33 ID:.QicLn4U

「……るいちゃん」
「―――っ」

 不意に初紀が声を掛けたその瞬間に、るいは身体を弛緩させて、甲高い声を止めた。
 ―――そして。

「おかえりなさい、るいちゃん」

 まるで、どっかの御伽噺かなんかの聖女みたいな清らかな顔で、初紀は……俯いて固まったまま動こうとしない―――るいを抱き止めた。

「なんでそんな優しいのかな。
 私、此処に居てもいいのかなぁ?
 二人の仲を掻き回すだけ掻き回したのに。
 ……ひーちゃんにも、初紀ちゃんにも、いっぱい、迷惑掛けちゃったのに……! また、きっと、いっぱい、いっぱい……困らせちゃうよ……?」

 平静を装ってたようなるいの声が、言葉を重ねる毎に……震えてきてるのがわかる。
 ……そう、か。るいは、無理に明るく振る舞ってただけだ。
 本当は―――。

「ね……、陸」

 初紀の視線が俺に向けられる。

「さっきの告白の返事、少し待ってもらっていいかな?」

 初紀は冗談めかすわけでもなく、真面目に問いかけてきた。

「え……っ?」
「ど、どういうことだよ?」

 俺は、多分るいと同じ様な顔をしていたと思う。

「これで、私達は同じスタートラインに立てた気がするから。
 ……同じ場所、同じ時間、同じ好きな人。
 何の足枷もない、自由な恋。
 ……恋に勝ち負けなんて、本当はあっちゃいけないんだろうけど……。
 お手柔らかにね、るいちゃん?
 どっちが、勝っても負けても。……私はずっと友達だからね?」

 初紀はそう言って、これ以上無いほどの綺麗な微笑みをるいに投げかけた。
 ……強いな。ホント、強ぇ。
 女になっても、お前だけには敵う気がしねぇよ。

「……ダメ、かな? 陸?」

 ……ったく。
 さっきの俺の一大決心はなんだったんだよ、ホントに。
 でもよ―――。

「るい―――」

 ―――俺、嬉しいんだよ。
 今、コイツが目の前に居てくれて。

「―――おかえり」

 暫く、この二人の美少女に振り回されることになるだろう。
 いずれ、どちらかを選ぶ時が来るだろう。

 周りの環境にも、遠回りな思いにも左右されない、俺自身の意志で。

 それが、なんて幸福なことで、なんて不運なことだとしても。

982名無しさん:2010/02/05(金) 22:50:00 ID:xHZO7ZZI
GJ!!!

983青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y:2010/02/05(金) 22:54:08 ID:r6XgMnik

 ―――決めなくちゃなんねぇんだよな。

 でも、今は―――。

「ただいま―――ひーちゃん、初紀ちゃん……!」

 ―――今だけは、真っ赤に泣き腫らした目を押し隠して、心底から嬉しそうに笑うポニーテールの少女の帰還を、素直に喜ぶことにしよう―――。



 ―――予鈴のチャイムが防風林の向こう側から聞こえてくる。

「……どうしよ。こんな顔じゃ……」

 ……初紀も、るいも、このまま教室に戻ると誤解されること請け合いな真っ赤な目をしていた。

 ……ま、試験前だけど今日くらいは……いいか、無礼講だ。

「屋上、行くか?」

 俺がそう問い掛けると、二人は暫くの間、顔を見合わせてから。

「「………うんっ」」

 思春期の男を一瞬で恋に落としてしまいそうな眩しい笑顔で頷いた……。







 ―――俺に宛てられた青色通知から事を発した、俺の情けなくて忘れられない数日間の話は、これでおしまいだ。

 ……コイツは余談だが、俺達が直面したこの物語は、青色通知や通知受取人を取り巻く、数多くの問題の一例に過ぎないらしい。
 他の誰かの元に青い封書が届いた時、それは……そいつらにとって、どんなものになるのか俺は知らない。
 幸せを運ぶものなのか。
 または、人生を奈落まで突き落とす最後通告なのか。
 そこには、届いた奴にしか分からない、たった一つの物語が綴られている。
 そんな気がしてんだ、……なんとなくだけど、な。


 15、16歳位までに童貞を捨てなければ女体化する世界だったら

  〜青色通知〜

  了

984青色1号:2010/02/05(金) 23:00:02 ID:GCfaQzbc
すっげぇ難産だったけど、青色通知はこれにておしまいです。


お付き合い頂いた皆様、本当にありがとうございました。


↑建前 本音↓

もう小難しい設定じゃ絶対ぇ書かないっ! 疲れたっ!! 陸氏ねっ!!!

985名無しさん:2010/02/05(金) 23:02:37 ID:foShRnuE
長丁場おつかれwwww

986 ◆jz1amSfyfg:2010/02/05(金) 23:08:53 ID:Bqv1VbVs
長い間お疲れ様でしたー!



>>969
言われてまとめられている事に気づいたw

まとめてくれた人ありがとうー!

987名無しさん:2010/02/05(金) 23:23:19 ID:wsh95M1o
盛大に乙っ!

988青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y:2010/02/06(土) 00:46:15 ID:TpO2LH9w
  〜青色通知、御堂家の後日談〜

るい「初めまして、坂城るいです。今日からお世話になりますっ」

るい(わ、初紀ちゃんのお母さん……だよね? 凄い綺麗な人だなぁ……)

初紀(……るいちゃん、凄い営業スマイル)

初葉「あ、あなたが宗くんの言っていた子ですね?」

るい「はいっ」

初葉「ふふっ、自分のウチだと思ってくつろいで下さいね」

るい「ありがとうございますっ
 それで、あの……お家賃のコトなんですけど―――」

初葉「―――要りませんよ」

るい「え……っ、で、でもっ」

初葉「他ならぬ、宗くんのお願いですから。主人も納得してくれていますよ?」

るい「そんなの、悪いです……っ、私、きちんとお支払いしますからっ!」

初葉「あらあら、困りましたね
 ――――あ」

初紀(あ……なんか良からぬコトを思い付いた顔してる)

初葉「じゃあ、るいさん。お家賃の代わりに、お願いがあるんです」

るい「はいっ、なんですかっ!?」

初葉「私の作ったお洋服をモデルさんになって―――」
初紀「―――却下」

初葉「どうしてですかっ!? こんなに可愛いかったら、水兵さんも女給さんもウサギさんも絶対似合いますっ! 私が保証しますっ!!」

初紀「論点そこじゃないでしょっ!? そもそも未成年にバニー服着せるなんてどーいう神経―――」

るい「―――いいですよ?」

初紀「何るいちゃんもあっさり承諾してるのっ!?」

るい「だって、見られるだけだし、可愛い洋服着られるのは嬉しいし」

初紀「乙女として羞恥心はどこに行ったんですかっ!?」

るい「でも、そーいうの好きでしょ? ……ひーちゃんも」

初紀 ぴくっ

るい「いいのかなぁ? 私がいろーんなコスプレでひーちゃんにあんなことやこんなことしても……」

初紀「だ、ただだだダメっだってば!」

るい「だって、おんなじスタートラインに立てたんだもん。後は全力で走り抜けるだけでしょ?」

初紀「う……」

るい「どうしよっかなぁ? 私は乗り気だし、初紀ちゃんは嫌がってるし……しょーがないよね?」

初紀「わ……私も着るっ、着ますっ!」

初葉「決まりですねっ」


 その後、御堂空手道場にはコスプレをした二人の美少女が居るという噂が瞬く間に広がり、爆発的に男性の門下生が増え、収入が格段に増えたという。

989青色1号:2010/02/06(土) 01:08:01 ID:WiVJB6dc
 ごめんなさいごめんなさい、ホントにごめんなさい。
 クソ真面目な話ばっか書いてておちゃらけたのが書きたくなっただけなんですホントにごめんなさい。
 こんなアホなので残り少ないレス消化してごめんなさい。

 あぁ、恥ずかしい。死にたい。今すぐ死にたい。

 次回作あるかどうかわかんないけど、別スレで探偵物の続き書くかもしれないけど書かないかもしれないんでごめんなさい、本当にごめんなさい。
 坂城るいがフライングで出ててごめんなさい。

 本当にありかとうございました。
 しばらく死んでます。

990名無しさん:2010/02/06(土) 12:34:28 ID:5B9p0qAc
いやいや。フライングしてて「あー、こうなるのかー」ってニヨニヨしてたからいいんです。
下手するとひーくんに会えない状態で虚勢張ってるのかなとか思ってたから安心したのよ。

991ファンタ ◆jz1amSfyfg:2010/02/07(日) 05:10:24 ID:oY4YUpm2
【目指せ、甲子園─番外編1】





【翔太の服装整理】



「ああ……相変わらずクローゼットには母さんが買ってきた女物の服に浸蝕され続けてる」

せっかく休みを利用してクローゼット整理しようと思ったのにこれじゃ、整理する気も失せる。

「まあ、愚痴言ってもしょうがないか……」

俺は渋々、クローゼットの中を整理し始めたのだが……

「ん、なんだコレ?」

クローゼットの中から一着、明らかに他の服とは違う物が出てきた。
黒のワンピースに清潔感をイメージさせる白いエプロン、そのエプロンと同じ色のヘッドドレス、そしてワンピースと同じ黒のタイツ……と、どこから見てもメイド服そのものだった。
こんなのは、普通男は着ない。
もちろん俺も着た事は無い。
という事は、母さんが俺用に買ってきたって事になる。

「母さん……アンタは息子にメイド服を着せて何をしたいんだよ……」

母さんを遠くに感じた一日だった……





【目指せ、甲子園─番外編1 おわり】

992ファンタ ◆jz1amSfyfg:2010/02/07(日) 05:11:58 ID:jN2LkQdw
という訳で番外編でした
現在、【目指せ、甲子園─9】を携帯でチマチマと打っているのですが、予想以上に長くなりそうで10レス以上使ってしまう危険があるので、今回は番外編になりました

完成して、次のスレがたっていたら、9話目を投下します

では、また次回

993名無しさん:2010/02/09(火) 00:19:34 ID:PceC/6UA
続きwktk

994青色1号:2010/02/10(水) 04:25:44 ID:aFGiFVuY
口調で一瞬分からなくなるけど、
まどかは厳格な口調をした純正な女の子で、みちるはにょたっ子の巫女さんなんですよね?

解釈間違ってたらすみません。
と改めて通して読んだら、先が気になってしょーがないです、は、早く続きを……。

995名無しさん:2010/02/10(水) 04:27:22 ID:v7yqbxN.
しまったコテ付けてた死にたい。
無理にせっついて、すみませぬ……。

996 ◆jz1amSfyfg:2010/02/10(水) 14:58:03 ID:dIdvf2TA
>>994
そう考えてもらって問題はありません
わかりにくい文章ですいません……

次のスレにて続きを投下するので、少しの間お待ちいただけたら幸いです

997ファンタ ◆jz1amSfyfg:2010/02/13(土) 02:44:16 ID:vZO0bqBI
【目指せ、甲子園─番外編2】





【母親の罠】



メイド服ショック(番外編1を参照)から数時間。
気力の急降下にもめげずに、クローゼットの中の整理を黙々と続け、それを終える頃にはもう夕方になっていた。

「風呂にでも入るか……」

疲れた。ただ疲れた。
せめて風呂に入って、ゆっくりとしたい。
一階に降りて、風呂場に向かう途中で母さんと鉢合わせした。

「あら、お風呂入るの?」
「そのつもりだけど、もう入れる?」
「ええ、今ちょうど沸いたところよ」

タイミングがいいことにちょうど風呂が沸いたようだ。

「んじゃ、入らしてもらうかな」

そのまま、脱衣所に入る。
シャツを脱ぎ、ふと何も纏ってない上半身を見て、気分が滅入る。
さらしを巻かなくても気づかれないんじゃないか、と思うほど薄い胸にため息が出る。
状況が状況なので、文句はないが。
それにしても、女体化初日は自分の裸体一つまともに見れなかったのに、今は普通に見る事ができる。『慣れ』って恐ろしい。
気を取り直して、着替えを続ける。
ズボンとパンツ──一応付け加えておくが、ちゃんと男性用だ──をさっさと脱いで、浴室に入る。



手早く頭と体を洗い、湯船に入る。

「ふー……落ち着く」

湯船につかってリラックスする……が、妙に気にかかる違和感。何か忘れているような気がする。
……何だったかな。何か必要な物が無いような……

「……あっ!」

声が出てしまうほど大事な物……バスタオルと着替えを忘れた。
バスタオルに関しては、使わなくても脱衣所でしばらく待っていれば体が乾くので無くても大丈夫だ。もちろん有った方が便利なのは言うまでもないが。
問題は着替えだ。
真っ裸で家の中をうろついても風邪をひいたりはしないだろうけど、さすがに家族とはいえども裸の姿を晒すのは避けたい。
今、父さんは会社で兄貴はバイト中なので、家には母さんしかいないが、そろそろ2人が帰ってくる頃だ。
部屋に戻って着替えるとしても、すでに2人が帰ってきていれば、風呂場から一歩も出られない。
さて、どうすればいいか……
俺が頭を働かせていると、脱衣所の方から扉の開く音と母さんの声が聞こえた。

「翔太、着替えとバスタオル忘れたでしょ? ここに置いておくからね」


どうやら、母さんが気がついて持ってきてくれたらしい。
俺は湯船から感謝の言葉を送った。

998ファンタ ◆jz1amSfyfg:2010/02/13(土) 02:45:09 ID:ZWvqeYZc
「さて、そろそろあがるか……」

体から湯気が出るほど浸かったし、頃合いだろう。
浴室から出て、脱衣所に置いてあったバスタオルで体を拭く。

「それにしても、助かった」

母さんが気づいてくれなかったら、真っ裸で家の中をうろつかなきゃいけないところだった。

「いやー、本っ当に助か……」

言葉はそこで止まってしまう。
服が置いてあるべきところには、予想だにしない物が置いてあった。

「こ、これは……」

俺は震える手でそれを掴み取り──



「か・あ・さ・ん!」
「あ、翔太、随分のんびりだったじゃない」

台所で、おたまでに鍋をかき混ぜていた母さんが振り返り……笑顔で頬に手を当てる。

「あら、まあ。可愛い服着てるじゃない」
「半ば無理矢理着せたくせに!」
「いいじゃない、似合ってるわよ、そのメイド服」
「嬉しくないよ!」

風呂場に持ってきた『着替え』の内容がメイド服だったとは……クローゼットの奥深くに封印してきたはずなのに、見つけるとはな、隠し方が甘かったか。
それはともかくとして、着替えの服がメイド服しか置いてない状況では、それを着ざるをえない。

「バスタオルがあるじゃない」
「着れるか! 父さんや兄貴が帰ってくるかもしれないのに!」

しかも、その格好で見つかったらメイド服よりヤバイ、色々と。

「なら、普通の服に着替えてくれば?」
「よく言えるな。俺の服隠したくせに」
「あら、人聞きが悪い。男物の服を一旦拝借しただけよ」
「それを隠したって言うんだ! 返せよ!」
「やあよ♪ 可愛いんだし、今日一日着てればいいじゃない」
「着てられるか! こ、こんな恥ずかしい格好……っ!」

そう、母さんの持ってきたメイド服はなぜか露出度が高めで、下手すると下着が見えてしまいそうなほど、スカートも短い。

「じゃあ、着替えれば?」
「だから、服が女物しかないから、男物を返せっつってんだよ!」
「ダメ。家では女の子らしくするって約束でしょ?」
「ぬぐ…………」

それを言われると反論できない。

「さあ、選びなさい。普通の女性用の服に着替えるか、それとも、そのメイド服を着たままでいるか!」

母さんは俺にビシリと指を突きつけ、言ってのけた。





【目指せ、甲子園─番外編2 おわり】

999ファンタ ◆jz1amSfyfg:2010/02/13(土) 02:46:17 ID:ZWvqeYZc
とりあえず、ここまで
これの続きは投下するかもしれないし、何事もなかったかのように他の話を投下するかもしれません
予定は未定です

1000名無しさん:2010/02/13(土) 18:57:18 ID:lj8pC.xo
投下乙


次スレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/study/7864/1266054928/

現本スレ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1259594237/




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