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欧州情勢・西洋事情

2439とはずがたり:2017/12/05(火) 19:15:52
>>2438
アイルランド政府はいかなる国境管理の復活にも反対する立場をとり、英国のEU離脱後も北アイルランドがEUの単一市場や関税同盟にとどまることや、アイルランドと北アイルランドの関連規制の統一化を主張している。

これに対して英国政府は、EU法の支配から逃れるため、単一市場や関税同盟から脱退する基本方針を固めている。北アイルランドだけをその例外とすることで、英国の一体性を損なう解決策には否定的だ。そのため、さまざまな技術活用を視野に限定的な形での国境管理を導入したいとしている。

こうした両国の立場は双方の不安定な政治情勢によって一段と複雑さを増している。アイルランドでは、バラッカー首相が率いる統一アイルランド党(フィナ・ゲール)の非多数派政権が、ライバル政党・共和党(フィアナ・フォイル)の閣外協力によって政権を維持している。その共和党が11月下旬、警察の内部告発者への対応が不適切だったとしてフィッツジェラルド副首相の不信任動議を提出。これは閣外協力の合意破棄に当たるため、協力解消による再選挙の可能性が浮上していた。

副首相の辞任で政権崩壊の危機はひとまず回避されたものの、両党間の信頼関係が損なわれ、近い将来に再選挙が行われるとの見方も多い。おまけに、アイルランド再統一を目指す野党のシン・フェイン党も、北アイルランド情勢を巡って政権にたびたび圧力を掛けている。

英国も6月の前倒し議会選で与党・保守党が過半数を失い、北アイルランドの地域政党である民主統一党(DUP)の閣外協力によって政権を維持している状況だ。DUPはアイルランド再統一に反対するユニオニストの代表政党で、北アイルランドのアイルランド接近につながる解決策に反対している。メイ政権がアイルランド政府の要求に屈する場合、閣外協力を打ち切ると警告しており、政権崩壊につながる恐れがある。

しかも、3月の北アイルランドの議会選後、親英・EU離脱派のDUPと親アイルランド・EU残留派のシン・フェイン党の間の連立協議が暗礁に乗り上げており、いまだに政権発足ができずにいる。北アイルランドの将来を左右する重大な決断を、政府不在のまま決定することは難しい。

<アイルランド拒否権発動の可能性は>

なお、12月の首脳会議で第1段階の協議に十分な進展があったかどうかの判断は、英国を除くEU加盟国の総意が必要となる。清算金で合意できたとしても、北アイルランドの国境管理を巡る協議の進展が不十分として、アイルランド政府が拒否権を発動する可能性も残る。

ただ、アイルランドは英国と最も経済的な関係が密接なEU加盟国であり、離脱協議を次の段階に進め、英国との自由貿易を維持することに重大な関心を持っている。また、英国とアイルランドを除くEU加盟国にとって、北アイルランドの国境管理は必ずしも優先課題ではない。アイルランドの拒否権発動には他のEU諸国の猛反発が予想される。

北アイルランドの国境管理の問題は、離脱後の英国とEUの貿易関係がどうなるかによって解決の方法が異なるため、現時点で最終的な解決策を見いだすことは難しい。だが、来年秋の事実上の協議期限に向けて、この問題の解決は避けて通ることができない。

要するに、協議が前進する可能性が高まったことで、何の合意もできずに離脱する「クリフエッジ」のリスクが遠のいたとの楽観論も聞かれるが、離脱通告から8カ月を経て、協議はようやく第1のハードルをクリアするめどが立った段階にすぎないのだ。

今回先送りが濃厚な北アイルランドの国境管理の問題以外にも、移行期間中のEU法の適用範囲をどうするのか、サービス分野での自由貿易をどう確保するかなど、いくつもの難しい課題が待ち構えている。強硬離脱派の間では、全面撤退を余儀なくされつつあるメイ政権の協議方針を批判する声もくすぶり続けている。離脱協議の行方を安心するのはまだ早い。


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