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欧州情勢・西洋事情

1954とはずがたり:2017/04/27(木) 16:55:02
>>1953-1954
学校では創造性と自己表現が重んじられるため、社会に出たときにも自分の主張を臆せずに言えるようになるという。天然資源に乏しく、大きな産業もないデンマークにとって、人材こそ何よりの財産とする国の方針により、すべての子供は生まれたときから手厚く保護されているというわけだ。

離婚率が高いなどの問題もあるようだが、塾や習い事などの教育費が家計を逼迫している日本と比べて、子育て事情では見習うべき点が多い。社会人になるまでの長いスパンで教育を捉えている点も見逃せない。幼児期から社会性を身につけ、自主性を育てるということは優秀な社会人の人材育成にほかならないからだ。

もちろん共感する面ばかりが書かれているわけではない。著者がカルチャーショックを感じたことはたくさんあったようで、週の平均労働時間が34時間しかないこと、セックスに寛容すぎること、クリスマスの恐るべき乱痴気騒ぎ、デンマーク以外の国旗掲揚の禁止など、暮らしてみなくては分からない現実的なデンマークの姿が描かれる。これらは読者にとっても驚きだろう。

それにしても、たった1年でここまでデンマーク・ライフをレポートした著者の取材力には脱帽だ。インタビューは彼女の生業とはいえ、ささいな日々の疑問にぶつかるたびに、持ち前の好奇心の強さとフットワークの軽さから専門家に突撃インタビューを試み、自分の体験をもとに真相に迫ろうとする。ときには客観的データを交え、ときには皮肉とユーモアをたっぷり込めて。

人と人が信頼し合えるデンマークで見つける幸せ
ヘレンが出会ったデンマーク人に必ず尋ねるのは「あなたの幸せスコアは10点中、何点ですか?」というものだ。驚いたことに、職種を問わず、ほとんどのデンマーク人が8点または9点と答えている。

研究によれば、幸せの度合いというのは、ある一定の収入を越えると必ずしも富に比例しないという。物をたくさん買えてもそれで幸せになれるわけではなく、物欲には限りがない。働けど働けどいつも満たされない思いを抱えていたロンドン時代のヘレンに自分を重ねる読者は多いだろう。

一方、ワーク・ライフ・バランスを重んじるデンマークでは、収入の多い人は50%以上もの税金を納めている。潤沢な共有財産があるから、皆が安心して生活することができるという仕組みだ。

物価は総じて高いので、無駄な買い物もしなくなる。また職場と家庭以外に、趣味のサークルをいくつも持っている人がほとんどで、そこでは収入の差を超え、共通の趣味を通じて自分の存在を実感することができる。ボランティアももちろん盛んだ。結果としてデンマークでは、人と人が互いに信頼し合える社会が成り立っている。

赤ん坊を寝かせたベビーカーを店の外に放置したまま、両親が店内で食事をとっている光景にはじめは腰を抜かしたイギリス人夫婦も、本書の最後では、生まれてきたわが子をベビーカーに眠らせたまま、店の外に置いて食事をとっている(!)。治安の良さという意味でも、このような国は稀有といわざるを得ない。

孤軍奮闘しながら異国の地で暮らすヘレンは、コメディ映画さながらに失敗を繰り返しながら、自分らしいヒュッゲな生活を模索する。レゴマンの仕事の契約更新は1年。さて、ヘレンはこの地に残るのか、それとも故郷へ帰るのか、彼女の決断に最後まで目が離せない。

『幸せってなんだっけ?――世界一幸福な国での「ヒュッゲ」な1年』
 ヘレン・ラッセル 著
 鳴海深雪 訳
 CCCメディアハウス


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