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欧州情勢・西洋事情

1390とはずがたり:2016/07/19(火) 19:49:03
>>1389-1390
 国民投票でEU離脱という結果が出たことで、スコットランド独立に対する人々の考えは変わりました。国民投票前に行われた世論調査では、継続して独立反対が賛成を上回っていたのですが、国民投票後の世論調査では独立賛成が多数となりました。 スコットランドの少なくない人々が、国民投票におけるEU離脱という結果は、SNPのいう「著しく重大な変化」にあたると見なしたようです。

 住民投票では独立に反対したスコットランド有力紙の中で、国民投票結果を受けて独立を求める立場に変わるものも出てきました。同様に、独立に反対していた労働党政治家や労働組合幹部の中からも、少数ながらEU離脱に向かう英国からの独立を支持する人々も見られるようになりました。このように、EU国民投票を経てスコットランド独立をめぐる環境は、大きく潮目が変わりつつあるようです。

経済、通貨、安全保障など大きな課題
 それでは、スコットランドの分離独立は不可避なのでしょうか。必ずしもそうとは言えません。なぜなら、住民投票で独立に対して立ちはだかった壁が、依然として存在しているからです。そして、分離独立を問う住民投票を再び実施して敗北すれば、今度こそスコットランド独立問題の幕引きとなる可能性があります。

 スコットランド独立に向けて乗り越えなければならない壁として、まず経済の問題があります。住民投票で独立が否決された理由の一つに、独立後の経済の展望について多くの有権者が抱く懸念を払拭できなかったという点がありました。この点で、スコットランド経済の重要な部分を占める北海油田の石油産業が、近年の原油価格低迷の影響で深刻な不況に陥っているのは、独立派にとって大きな痛手となっています。

 また、経済に関係する問題として、独立したスコットランドがどのような通貨を使用するのかという通貨の問題も、独立への大きな壁として残っています。EU加盟国である英国の通貨ポンドを独立後のスコットランドが継続使用することさえ問題とされたわけですから、EU加盟国ではなくなる英国のポンドを使い続けることとスコットランドのEU加盟は両立しないとされても仕方ありません。

 さらに、住民投票の争点となったスコットランドのEU加盟の問題についても、英国のEU離脱によって自動的に認められるというわけではないでしょう。そして、英国から分離独立してEU加盟を求める場合には、ユーロ参加という問題も避けては通れません。ユーロ危機によって大きく評価を下げた通貨に、果たしてスコットランドの人々が参加を容認するのか必ずしも定かではありません。

 そして、安全保障に関係する問題も、英国のEU離脱によってスコットランドの独立を促進するわけではありません。まず、ヨーロッパの安全保障の基盤となっているNATO(北大西洋条約機構)に対して、独立したスコットランドがすぐに加盟を認められるかどうかは定かではありません。また、独立をめぐって安全保障面での大きな争点となったスコットランドに存在する原潜基地の撤去についても、英国と独立したスコットランドの間で厳しい対立をもたらす可能性があることに変わりはありません。

 このように、EUを離脱する英国からスコットランドが独立してEU加盟を果たすには、大きな課題があるということに間違いありません。しかし、英国のEU離脱という衝撃により、スコットランドでは英国やその中心に位置するイングランドに対する反発が高まっています。前回の住民投票では挫折した独立という目標が、近年中に実施される二度目の住民投票において達成されることも十分考えられるのではないでしょうか。

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■力久昌幸(りきひさ・まさゆき) 1963年福岡県生まれ。京都大学大学院法学研究科修了。博士(法学)。1994年北九州市立大学講師、2005年から現職。専門分野、イギリスおよびアイルランドの現代政治。著書、『イギリスの選択:欧州統合と政党政治』、『ユーロとイギリス:欧州通貨統合をめぐる二大政党の政治制度戦略』など


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