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バイオ燃料・エタノール・新エネルギースレ

4008とはずがたり:2019/10/13(日) 12:35:19
>>4007
しかし世界のバイオマスエネルギーの潮流が、大きく変わろうとしていることをご存じだろうか。

とくにバイオマスエネルギー先進国とされ、日本の政官財関係者がこぞって視察に訪れているドイツでは、政策を転換したようだ。

ドイツは2000年に再生可能エネルギーを普及をめざしてFITを導入した。バイオマスを燃料に作られた電気も割高の固定価格で買い取られるようになった。今では約640の施設がこの制度を適用されているそうだ。

ところが2012年にFITの改正を行い、5メガワット以上の発電の買取価格を引き下げた。しかもエネルギー変換効率が60%以上でないと、原則FITの対象にしないとしたのだ。当然、熱利用を促進しなければ達成できない数値だろう。

ヨーロッパ諸国のバイオマスエネルギー利用は、もともと熱利用に熱心だったが、60%以上にしようと思えば並大抵ではない。

この改正を牽引したのは、近年、コジェネレーション(熱電併給)を行える装置が次々と開発されるようになったからだという。木材をガス化して燃焼させる装置で発電し、熱利用も行うのだ。こうしたプラントなら、0,3〜2メガワットクラスの発電装置で熱電併給が行いやすい。

もともとコジェネ装置は、天然ガスを利用した発電装置で発達したそうだが、それをバイオマスにも応用したのである。今では各社が競って開発し、熱を含めた総合効率が最大80%を超えるまでになっている。

ただし、熱利用は地域が広がりすぎると行えない。熱需要のある範囲と、熱の配給を温水などで行うためのインフラの整った地域が必要だからである。そこでFITでも、小規模なコジェネ装置による発電施設を、地域振興の視点から優遇している。

こうした政策を背景にして、ドイツでは5メガワット以上の発電所の新設がまったくなくなり、代わって0.5メガワット以下の小規模なプラントが急速に増えてきた。規模の大きい蒸気タービン式の発電から、木材のガス化による小規模な熱電併給システムへの移行が進んでいるのだ。 

だが、日本の動きは鈍い。いや鈍い以前に、この時流の変化に気づいていないのかもしれない。コジェネ装置の開発もインフラの整備も遅れている。

日本の5メガワットクラスのバイオマス発電所を1年間稼働させるためには、木材が約6万トン必要とされる。毎年これだけ集めるのは簡単ではない、おそらく調達に苦労して燃料用チップの価格が高騰するだろう。そうなると、建材にできる木材も燃料にしてしまうかもしれない。それでも足りなければ、輸入バイオマスに頼るか、補助金を投入するか……最後は破綻するだろう。

それ以上に、せっかく集めた木質燃料の持つエネルギーも、大半を無駄に捨ててしまうことに気づいてほしい。日本も、熱電併給のできる小型のバイオマス発電装置の普及に舵を切るべきだ。FITの改正が焦眉の急なのではないか。

田中淳夫 森林ジャーナリスト

日本唯一にして日本一の森林ジャーナリスト。自然の象徴としての「森林」から人間社会を眺めたら新たな視点を得られるのではないか、という思いで執筆活動を展開。森林、林業、そして山村をメインフィールドにしつつ、農業・水産業など一次産業、そして自然界と科学(主に生物系)研究の現場を扱う。自然だけではなく、人だけでもない、両者の交わるところに真の社会が見えてくる。著書に『鹿と日本人 野生との共生1000年の知恵』(築地書館)『森は怪しいワンダーランド』『絶望の林業』(新泉社)など多数。Yahoo!ブックストアに『ゴルフ場に自然はあるか? つくられた「里山」の真実』あり。


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