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九州・沖縄 地方議会・首長,政治・選挙スレ
2673
:
名無しさん
:2012/04/12(木) 00:04:08
熊本県菊池市泗水町は農業で栄えてきた。熊本市から北東に約15キロ。通勤通学圏内にあり、新興住宅地の開発も進む。人口は今年2月には1万4947人を数え、合併前より500人以上増えた。
しかし、市全体では、合併時の5万2788人から約1500人減った。中心部の隈府(わいふ)地区の商店街(約200店舗)は、2004年に31店だった空き店舗が5年間で53店に増えるなど、衰退に歯止めがかからない。
合併で財政規模が大きくなれば、社会資本が整備され、総人口も増えて地域の底上げにつながる。市役所だと部署も多くなり、行政サービスは向上する。泗水町の住民たちはそんな青写真を描いていた。
「7年たったが、合併の効果が見えにくい」。泗水地区地域審議会長の佐美三(さみそう)信雄さん(67)はため息をつく。元泗水町長の松岡一俊さん(71)はこまめに公民館などを回り、住民に「小回りのきく自治体を取り戻したい」と訴え続けている。
◇
国は10年以上にわたり、「平成の大合併」を推進した。1999年3月に3232あった市町村は、1727とほぼ半減。行財政の効率化は進んだが、ひずみが生じたケースも少なくない。
東日本大震災で、自治体として最も多い4000人弱の死者・行方不明者を出した宮城県石巻市。05年4月に6町と合併し、面積は4倍になった。日本一のすずり産地、旧雄勝(おがつ)町もその一つに含まれる。
「合併しない方が早く復興できた」。名振地区の自治会長を務める漁師の大和久男さん(57)は、津波で全壊した自宅跡を見ながら、悔しそうな顔になった。
震災後、市職員は旧石巻市内を中心に避難者が多い学校などに張りついた。一方、189人が身を寄せた同地区の公民館には現れず、住民だけで運営した。大和さんは市雄勝総合支所に毎日通い、「仮設住宅を早く整備して」「岸壁を直してもらえないか」と頭を下げた。答えはいつも「(市の)本庁に伺いを立ててみます」だった。
車で50分かけて本庁にも行ったが、収穫はなく、亀山紘市長(69)とも面会できなかった。結局、自分たちで民有の山林を造成し、仮設住宅の敷地を確保した。
町長とすぐに面会できた町役場は市支所に姿を変えた。職員数も合併前の半分の約35人になった。昨年4月から市に高台への集団移転を求めているが、見通しは立たない。「国に直接ものを言える町の方が良かった」。大和さんはそう思う。
市にも事情はある。職員数は合併から5年で20%減った。亀山市長は「合併によりマンパワーが不足していることは明らか。初動が遅れ、混乱した」と認める。
◇
ただ、マイナス面ばかりではない。
菊池市は小学6年生以下が対象だった医療費の助成を、昨年度から中学3年生にまで拡大した。市は「合併で予算規模が拡大したから実現できた」と説明する。
旧雄勝町は、約4300人いた人口が大震災後に約1000人に減った。住民の多くは合併相手の旧市町にある仮設住宅や借家で暮らす。最後の町長だった山下壽郎(じゅろう)さん(78)もその一人。「合併したおかげで、小さな雄勝を石巻市全体が支えてくれている」と実感する。
「住民は『合併する前とした後』を比べがちだ。だが、厳しい財政などを抱え、合併しなかったらどうなっていたか、も考えてほしい」。合併の旗を振ってきた総務省幹部はそう強調する。
昇秀樹・名城大教授(地方自治論)は「自治体は第三者による評価委員会を設置し、合併の影響を検証すべきだ。そのうえで、住民の不満がくすぶっている課題の解決策を考えていかねばならない。自治体の中心部と周辺部が互いの立場に配慮し、一体感をつくろうとする姿勢も大事になる」と指摘する。
◇
合併、都市制度、地方分権、自治体財政――。地域に共通する課題を見つめ、市町村のあり方、住民にできることを考える。
平成の大合併 自治体行政の効率化と財政基盤の強化を目指し、国が推進。1自治体あたりの人口は3万6387人から6万9067人に、面積も114・8平方キロから215・4平方キロに倍増した。合併について尋ねた読売新聞の世論調査(2008年2月)では、「住民サービスが良くなったと思う」が25%だったのに対し、「思わない」が63%。「行政の無駄が減ったと思う」も42%にとどまり、「思わない」の49%を下回った。
(2012年4月4日 読売新聞)
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