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445
:
名無しさん
:2015/06/20(土) 22:49:52
>>444
――成算があったわけではないんですか。
「ありませんでした。編入試験の制度ができたのは退職してから1年近く先のことでしたから。実際に制度ができたのも、その試験をパスできたのも運が良かった」
――2回目の奨励会で再び挫折してしまいました。
「完全にプロになるのをあきらめました。プロ棋士の先輩のつてで証券会社の契約社員になり、資産運用を任されました。ですが、勝負に甘い人間がうまくいくわけはありません。3カ月で辞め、実家に帰りました」
――それでも最後には、プロ棋士という一番就きたかった仕事につけました。
「それまでに何度も失敗しました。ただ、自分の可能性にふたはしませんでした。そのせいか、失敗のたびに奇跡的な出会いがあり、めぐりめぐって介護という職場で働かせてもらえました。その5年間の経験が、自分に足りないものを埋めてくれたんだと思います。プロ棋士になる条件をクリアできたんですから」
――仕事を選ぶうえでの心構えは何でしょうか。
「どんな職場でもそれなりに気にくわないことは起こります。でも、それは自分に何か原因があるんです。自分が変わっていけば、人も変わっていくと思います。自分が気持ちいいと思える環境は自分で作れるんです。過去は変えられませんが、未来は変えられます。どうせなら楽しい人生にしたほうがいい。そういうスタンスで仕事を選べばいいじゃないでしょうか」(浦野直樹)
◇
いまいずみ・けんじ 1973年7月生まれ。広島県福山市出身。小2のとき将棋を覚え、14歳でプロ棋士の養成機関「奨励会」に入会。99年、26歳までにプロと認められる四段になれないと原則退会という年齢制限にかかり退会した。2007年にはアマ棋戦の優勝者が年齢に関係なく挑戦できる試験に受かり再入会した。しかし、プロ入りの規程である2年間で四段に昇れず再び退会。
その後、アマが出場できるプロ公式戦で10勝以上かつ勝率6割5分以上を果たし、プロ編入試験を受ける資格を獲得。昨年、プロ棋士3人をやぶってこの試験をクリアした。41歳でのプロ入りは戦後の将棋史で最年長となる。
■記者のひとこと
諦めないで挑戦しつづけることは尊い。今泉さんを取材してそう思った。
プロ棋士への最終関門である奨励会「三段リーグ」。今泉さんはプロ入りを果たせなかったものの、「次点」を2回とった。
全く歯が立たないのなら、まだ諦めもつくだろう。だが、あと一歩のところまで迫りながら夢を絶たれたとしたら、無念の思いはより大きかったはずだ。現在は「次点」2回でプロになれる制度があることを考えるとなおさらだ。
就活でも同じような局面があるかもしれない。「最終面接まで行ったのに」「去年までは募集があったのに」
そんな時、30年近くかけて夢をかなえた今泉さんの言葉を思い出すと勇気づけられるのでは。「人生、リスタートはできる」。
朝日新聞社
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