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Tohazugatali Medical Review

5224とはずがたり:2019/10/27(日) 21:38:07
>>5223
【田原】山中さんが…「基礎研究はVW」と言われたとおっしゃっていました。…ヴィジョンとワークハードのこと。日本人研究者はワークハードだけどヴィジョンがないと気づいて、…米国と日本の研究環境の違いは、そこですか。

【武部】そうですね。欧米の一流機関で教授になろうと思えば、ノーベル賞級の教授たちの前で黒板を使って自分のヴィジョンを語ることを求められます。比較的近い未来のヴィジョンから長期のヴィジョンまで、ぜんぶ語れないと採用されません。

【田原】教授になった後も違いますよね。…

50代の研究者がクビになりました
【武部】いま私は米国の研究機関にも勤めていますが、つい最近、50代の研究者がクビになりました。厳しい世界ですが、緊張感を持ってやり続けることが必要だと思います。

【田原】成果を問う一方で、失敗を容認するのも米国。…

【武部】そうですね。私は研究室を「人がズレてる」「プロジェクトにブレを持つ」という2つのコンセプトで運営しています。プロジェクトにブレを持たせるということは、むちゃくちゃなものにも挑戦させるということ。当然、繰り返し失敗するのですが、日本ではこのブレが許されない。一方、米国はブレを認めてくれます。そうなると、イノベーティブな研究は日本より米国でやらざるをえない。いまは米国と日本の両方で研究していますが、米国で芽を出させて、それを日本の研究室で成長させています。それでうまく回っているので私自身は困りませんが、日本のことを考えると、本当にそれでいいのかなと。

【田原】武部さんはいま米国でどんな研究をしているのですか?

【武部】スタンフォードのときから始めていた研究をちょうど先日「Nature」で発表しました。先ほどミニ肝臓は長生きできないという話をしましたが、その理由はシンプルで、肝臓は体の中で単独で浮いているわけではないから。肝臓は胆管という別の臓器に繋がり、膵臓とくっついて最後は十二指腸に繋がっています。これらの臓器と繋がってなければ、肝臓は機能しません。そこで新たにミッションとして掲げたのが多臓器一括再生です。
…人間は受精してから10カ月で生まれてきますが、1カ月の段階ではまだ多臓器ではなく、それから数日を経て多臓器になる。その直前の状態を設計して作れば、あとは自発的に肝臓、胆管、膵臓、十二指腸ができるのではないかという仮説に基づいて研究を続けて、それがようやくできるようになりました。

【田原】その研究は日本じゃ無理?

【武部】同じような研究を日本で申請しましたが、すべて落とされました。米国では採択されて1億円取れましたが、日本では1000万円の研究費も取れませんでした。

【田原】研究者としては米国でやったほうがいいと思うけど、武部さんは日本にも研究室を持っていますね。

肝臓を使ってほかの臓器の病気の薬も開発
【武部】いま日本でも、東京医科歯科大学、横浜市大、あと武田薬品の中で山中先生と一緒にやっているラボの計3つで研究をしています。武田薬品での研究は薬の開発です。肝臓は重要なたんぱく質を作るので、肝臓を使ってほかの臓器の病気の薬も開発できる。それも大事な研究なので、ずっと米国にいるわけにもいきません。

【田原】東京医科歯科大学と横浜市大では、最年少の教授になった。閉鎖的な日本の研究環境だと孤立したりしませんか?

【武部】言いづらい部分がありますね(笑)。でも、そういうものも含めてサバイブしないといけないなと。

【田原】もう1つ、武部さんは再生医療のほかに「広告医学」に取り組んでいる。これは何ですか?

【武部】医学は過去2000年間、ヒポクラテスがメディシン・フォー・ディジーズ、つまり医療は病を治すためにあると定義してから、外科学や内科学、精神科学のように体系だったものが実践され続けてきました。でも、いま私たちが対峙している病気は、外傷や感染症のような命に直接の危険があるものばかりではなく、生活習慣病や精神病のように生活の場で捉えなくてはいけないものも増えてきた。それらに対応するには、薬や手術だけでなく、ファッション、不動産、家電、環境デザインまで含めたコンテクストで医療を設計する必要があります。…


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