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スーフィズムに関するHP

1861とはずがたり:2017/04/08(土) 16:31:37
>>1859-1860
これからどうなる?
上述の通り、安保理常任理事国の立場が著しく異なる以上、国連を通じた事実の解明や、問題解決のための措置が取られることはまず期待できない。そうなると、問題は欧米諸国が国連を経ずに大規模な懲罰行動にでるか、ということになる。しかし各国がそのような行動に出ることは、2011年以来の欧米諸国の対シリア政策を根本的に転換する大冒険である。アサド政権打倒を目指してきた欧米諸国やサウジ、トルコ、カタルなどは、紛争勃発以来一貫して「アサド政権を打倒するには過少、紛争と長期化させるには過大」な資源を投入してシリア紛争に介入してきた。また、これらの諸国はアサド政権を打倒した後のシリアの内政・外交の運営や、シリアや近隣諸国の国際関係・安全保障環境の管理のための構想も手順も全く持っていない。化学兵器使用を懲罰し、抜本的な行動に出るというのならば、この問題をまず解消しなくてはならないが、そのためには各国が大軍を投入し、巨額の戦費や復興予算を負担しなくてはならない。問題は、世界のどこにも、そのような負担を喜んでする政府・国民が存在しないことだ。
今回、「またしても」化学兵器使用問題が取りざたされたのは、シリア紛争をめぐる内外の環境が以上のような局面に至ったさなかである。事実関係がどうであろうと、今般の問題が現場の政治・軍事的優劣を覆すことになるとは考えにくい。また、欧米諸国などがシリア政策を多少見直して、「反体制派」の政治団体の復権や、イスラーム過激派を主力とする「反体制派」武装勢力への支援を再開・増強することも考えにくい。なぜなら、「反体制派」の政治団体や武装勢力の処遇の問題と化学兵器は全く別問題だからだ。その上、現段階で「反体制派」の増強を図っても、その結果は「イスラーム国」対策の放置とシリア紛争の更なる長期化にしかならないだろう。
結局のところ、今般の化学兵器使用問題によって生じうる効果は、欧米諸国が「現実を直視」して現在のシリア政府が当面存続することを容認しつつある中、シリア政府が長期的かつ公式に正統性を回復することを妨げる足かせをつけること、となるだろう。これにより、あくまでアサド政権打倒を目指す人々は、自らの存在意義を確認し、運動の将来に希望をつなぐことができるようになるだろう。その一方で、これは欧米諸国がシリアの政治・経済・社会的再建に背を向けることにもつながるので、最終的に一番損害を被るのは、化学兵器使用云々とは無関係の一般のシリア人だけということになるだろう。

髙岡豊
公益財団法人中東調査会 上席研究員
新潟県出身。早稲田大学教育学部 卒(1998年)、上智大学で博士号(地域研究)取得(2011年)。2014年5月より現職。著書に『現代シリアの部族と政治・社会 : ユーフラテス河沿岸地域・ジャジーラ地域の部族の政治・社会的役割分析』三元社、『「イスラーム国」がわかる45のキーワード』明石書店など。


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