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国際経済学

712とはずがたり:2015/06/11(木) 16:34:09
>>711-712
 これほど意義のある決定を下したにもかかわらず、株式市場や格付け会社が見せた反応は残念である。

 もっとも中国経済悲観論や反中バイアスに染まっている日本や欧米の市場関係者ではこれほどダイナミックな構想の意義をきちんと理解できないのも無理はない。市場関係者に今回の資本提携の意義を理解させるには、今後同社が目に見える結果を示すことが必要である。

 以上が北京と上海で面談した信頼できる中国経済通のコメントである。

今回の提携の具体的なメリットの中味

 この間、国有企業の改革に詳しい中国人研究者は、今回の提携におけるCITICの狙いについて次のように分析している。

第1に、伊藤忠商事を介した、主に非金融分野での日本企業との協力関係の強化。
第2に、欧米市場への展開に際して伊藤忠商事のネットワークを活用すること。
第3に、混合所有制の導入による企業改革の推進。
第4に、豪州の鉄鉱石鉱山開発プロジェクトの失敗を繰り返さないようにするためのアドバイザーとしての役割を伊藤忠商事に期待している。

 これに対して、伊藤忠商事側のメリットについて筆者は以下のように見ている。

第1に、アパレル、小売り、流通、農業等中国国内市場の幅広い分野で展開する同社事業におけるCITICの人脈・ネットワークの活用。
第2に、CITICとCPグループが強みを持つアセアン、アフリカ市場での事業展開における両社との協力関係の活用。
第3に、将来アジアインフラ投資銀行がアジア諸国でインフラ建設に融資する場合、CITICルートを通じて、中国企業との提携を有利に展開できる可能性。

 以上のように、伊藤忠商事、CITIC、CPグループとも業務範囲の広い巨大コングロマリット企業であることから、広範な地域と様々な分野での協力が考えられ、提携のメリットを生かせる分野は広く、事業規模拡大の余地も大きい。

「赤船」に乗り込む伊藤忠商事の決断が示唆するもの

 筆者は前回の拙稿、『「赤船」中国が迫る第2の開国』の中で、世界秩序が多極化に向けて地殻変動を起こしつつあること、その状況下、日本を覚醒させ、世界ビジョンと国家目標の明示が急務であることを認識させる存在が「赤船」中国であることを述べた。

 それを書き終えた数日後にこの資本提携が発表され、早速その「赤船」に乗り込む日本企業が現れたことに驚かされた。

 多くの日本企業が取り組もうとしている経営のグローバル化の核心はアジア地域を中心とする現地化の推進である。今回の提携の意義は中国およびアセアンにおけるビジネスの現地化を支える土台の形成である。これは日本が国家として持つべき世界ビジョンと国家目標の方向性を示唆しているように見える。

 企業経営において、激変の最中にあるグローバル市場で巨大プロジェクトのメリット・デメリットを判断しリスクを取って決断することができるのは社長しかいない。しかし、日本企業ではそうした決断を迅速に下せる社長は少なく、決断が遅れて貴重なビジネスチャンスを逃す事例は枚挙に暇がない。

 もちろん今回の資本提携が大きな事業展開と収益を生み出すかどうかは今後の努力にかかっている。とは言え、これにより伊藤忠商事が有利なチャンスを得たことは明らかである。その観点から見て、本件は社長の決断力の重要性を示している。

 企業経営においても国家の政策運営においても、下からの積み上げによる意思決定に頼ることが多い日本の組織では、トップリーダーが明確な将来ビジョンと目標を示し、迅速な意思決定を下すことが少ない。

 このため重要な意思決定に時間がかかり、企業はビジネスチャンスを逃し、政府は制度改革など重要政策の実現が遅れることが多い。

 日本を取り巻く環境が激変する状況下、企業においても政府においても、今回の伊藤忠商事の岡藤社長が示したような迅速かつ大胆な決断を下すリーダーシップが求められている。


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