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Tohazugatali Economic Review

1921とはずがたり:2018/07/01(日) 18:53:22
>>1894

日本人経済学者の業績比較 1
https://rpubs.com/mixingale/251962
川口康平
2017年2月20日

国際的に認められた査読誌に論文を掲載することは経済学者にとってもっとも重要な仕事の一つです。社会科学の役割はいま・ここにある一個の社会を超えた社会一般にとって意義のある普遍的な洞察を導出することにあり、国際的に認められた査読誌の編集者と査読者に対して自身の研究の意義を説得することはそのための第一歩だと位置づけられるからです。

この観点からみて懸念すべき論点が河野太郎衆議院議員から最近提起されました。日本の主要な国立大学に所属する経済学者の過半数は過去10年間査読論文を全く書いてこなかったのではないか?というのです。

河野氏が依拠してるのは、二神孝一、神谷和也、芹澤成弘、柴田章久の四名によって書かれ、大阪大学社会科学研究所のディスカッション・ペーパーとして刊行された「9大学経済学研究科及び附置研究所の研究業績比較調査(2015年)」という論文です。この論文(以下阪大論文)は、大阪大学、東京大学、京都大学、一橋大学、神戸大学、名古屋大学、東北大学、北海道大学、九州大学の経済学研究科および附置研究所の教員の業績リストを独自の方法で評価・比較した論文です。

具体的には、Web of ScienceのArticle Influence Scoreに基づいて経済学の査読誌をTop20、Top50、Top100、Top200に分類した上で、各教員の各ランクの査読誌への論文の掲載数を計算、これを部局ごとに平均や中央値で評価しています。ここでは「掲載数」は著者数で割った値として定義されていることに注意してください。例えば、ある教員がTop20のジャーナルに論文を掲載して、その著者数が2だった場合は、0.5とカウントされます。Top20のスコアが1.5だった場合、2006-2015年のあいだにTop 20のジャーナルに掲載した論文の1/著者数の和が1.5になっている、ということになります。その結果が以下の表です。:

阪大論文p.6より
なんとTop 200の査読誌に至ってもなお対象となった14部局のうち11の部局において、論文掲載数の中央値が0になっています。この結果を受けて河野氏は次のように書いています:

大半の大学が、論文掲載数の中位値が0、つまり「その部局の過半数の研究者が、当該期間に当該リストの学術誌へ掲載した論文数がゼロである」ということに驚きました。これはどう解釈したらよいのでしょうか。これは経済学部独特の結果なのでしょうか。

さて、この結果をどう解釈すればよいのでしょうか?

阪大論文は議論の出発点として意義のあるものです。しかし、その手法には不適切な点と不十分な点があります。不適切な点は各部局において比較対象となる教員の選定基準です。不十分な点は比較のスコープの取り方です。 以下順にみていきましょう。

対象となる教員の選定基準の問題
阪大論文の問題点
阪大論文では各部局の常勤教員を対象として各部局の掲載数、一人当たり掲載数、個人掲載数の中央値を計算しています。しかし、常勤教員のなかには「経済学の国際的査読誌への掲載数」によって業績を評価することが適切ではない教員が多数含まれています。

まず、多くの大学の研究科は教養科目を教えるために語学や数学の教員をかかえています。留学生のメンター的な役割を担う教員が含まれている場合もあります。大学付属の研究所にはこのような教員は配置されません。これらの教員を「経済学」の査読誌への掲載をもって評価するのは明らかに不適切です。

次に、大学によっては、経済史などの歴史学系教員、公共政策などの実務家教育教員など、「国際的」査読誌で業績を評価することが必ずしも適切ではない教員が含まれています。

こうした教員も含めて「国際的」査読誌で評価すべきであるという意見はありえます。また、どのような教員を一つの部局に配置するかという人事戦略も含めて部局間のパフォーマンスを比較したいというのであればこうした教員を対象範囲に含めることも正当化されるかもしれません。

しかし、比較分析の基本は属性をそろえることです。まずは、それぞれの部局において「国際的査読誌への掲載数によって業績を評価すべきだというコンセンサスが取れているタイプ」の教員(以下近経教員と呼ぶ)に絞って、統制のとれた比較を行うべきです。

各大学のどの教員が「近経教員」にあたるのか外部からは定かではないという分析上の難しさはあります。それでも、各大学の教員二、三人に独立に裏取りをすれば十分対応できる話です。阪大論文では教員リストをつくる段階で各大学の教員に直接コンタクトをとって確認をしているようですが、その際にあわせて「近経教員」のリストをつくることは可能であったし、そうするべきだったと思います。




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