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国際関係・安全保障論

4578とはずがたり:2017/07/31(月) 11:30:03
>>4577-4578

 同リポートは「実は、あまり知られていないことだが、大慶油田は単体でなく、薩璽図油田や葡萄花油田など20近くの油田群から構成される。産出された原油は通常、パイプラインを通じて遼寧省に送油された後、大連や秦皇島、北京方面に向かう」と説明する。

 このため、「北朝鮮向けの原油輸出を停止するためには、多くの油田を一斉に生産停止にする必要がある。黒竜江省産の原油には、ろうそくの原料となるパラフィンが多く含まれているため、いったん生産活動を停止すると、原油を抜き取るパイプ管内が固結し、(管が)詰まってしまう。結果として再稼働が難しくなるというわけだ。そのため、生産活動を間断なく続けざるをえないのが実情だ」と指摘している。

 ただし、同レポートが指摘するように、過去には実際にごく短い間だが、原油禁輸が実施されたことがあるのも事実。7月11日付の韓国の朝鮮日報の記事によると、中国は2003年初めに、北朝鮮が対話のテーブルに着くことを拒否するやパイプラインを3日間閉鎖し、北朝鮮がすぐに降参したという。

 2つ目の理由は、政治的な理由だ。原油の禁輸は北朝鮮経済に致命的な打撃をもたらすだけに、実現すれば絶大な効果が見込まれる。4月には中国の北朝鮮パイプライン遮断説が取りざたされる中、AP通信は4月22日、平壌のガソリンスタンドのガソリン価格が70%以上高騰し、ガソリンスタンドには給油待ちの車の長い列ができていると報じた。実際に中国がパイプラインでの原油供給を削減したかなど事実関係は明らかになっていないが、北朝鮮に与える中国石油の影響度を改めて認識させるニュースとなった。

 また、中国が原油禁輸という断固たる措置を取れば、平壌が北京を完全に敵視する可能性が出てくる。北朝鮮と中国の関係は、金正恩氏が2013年末に中国とのパイプ役だった親中派の張成沢(チャン・ソンテク)氏を処刑したことでぐっと悪化した。中国として「石油の禁輸」という伝家の宝刀を抜いて実効性ある制裁に舵を切っても、北朝鮮がさらに暴走し、思わぬ「返り血」を浴びるおそれもある。

 石油の禁輸は両刃の剣だ。歴史を振り返れば、戦前の大日本帝国も1941(昭和16)年8月1日に米国から石油を止められた。中国大陸から日本軍を引き上げろという米国の要求を飲まなかったほか、昭和16年6月の独ソ開戦に乗じ、南部フランス領インドシナ(仏印)進駐を開始したことがきっかけとなった。これを受け、日本は日米開戦への一途をたどる。北朝鮮も石油禁輸に直面すれば、追い込まれた末に自存自衛のための戦争を銘打って、負け戦覚悟で暴発しないとは限らない。

 さらに、原油の禁輸で、北朝鮮が万が一にでも崩壊すれば、中国東北部に大量の北朝鮮難民が流入する事態になりかねない。韓国主導で朝鮮半島が統一し、在韓米軍が中国の喉元にまで迫り、緩衝地帯(バッファーゾーン)が消滅する事態は中国としては何としても避けたい。リビアやイラクのように、核なしの北朝鮮が米国の攻撃で崩壊するより、核付きの北朝鮮が朝鮮半島を分断したまま、安定的に現状を維持してくれていたほうがいいと思っているフシさえある。これはロシアも一緒だ。

 中露にとっては、北朝鮮問題は、経済問題やシリア問題を絡めた米国に対する貴重な外交カードともなっており、やすやすと米国の要求を飲むわけにはいかない。

 また、中国が北朝鮮への石油禁輸に踏み切ったとしても、ロシアがその穴を埋める可能性が極めて高い。米VOA放送は7月11日、ロシア連邦税関の資料を集計した結果、今年1〜4月のロシアの対北朝鮮石油輸出額が230万ドルに及び、前年同期比で200%以上増えたと報じた。さらに、石油取引にかかわった北朝鮮の脱北者によると、北朝鮮は年間20〜30万トンの石油をシンガポール企業を通じて、ロシアから輸入しているという。北朝鮮のロシアへの原油依存度が高まっていることを如実にうかがわせる。

■トランプ政権の先行きをにらんでいる? 

 3つ目の理由は、ロシア疑惑で足元が揺らぐトランプ政権の先行きが見えないことだ。中国の習近平国家主席としては、5年に1度の中国共産党大会を今秋に控え、余計な問題を抱えたくない。トランプ政権とはそれまで、ほどほどに事なきを得る形で向き合っていくとみられる。トランプ政権の基盤がぐらつき、いつまで持つかわからない中、つねに中長期的な戦略をもっているようには見受けられる中国としては、石油禁輸という大事な戦略カードを焦って使う必要はない。

 ワシントンポスト紙は25日、北朝鮮は早ければ来年にも、北米都市を攻撃できる核弾頭搭載のICBMを完成させる見通しとの米当局による最新の分析結果を報じた。米国は、北朝鮮からの高まる脅威に切迫感を持って、ますますさらされることになる。制裁効果のある中国の北朝鮮向けの石油をめぐって、米中の激しい綱引きが今後も引き続き起こりそうだ。

高橋 浩祐 :国際ジャーナリスト


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