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国際関係・安全保障論

4109とはずがたり:2016/10/13(木) 12:22:30
>>4108-4109
 しかし、彼女は欧州委員として国際機関での勤務経験もあり、ロシアに留学していたこともあるため、ロシアも反対しない候補であり、またアメリカを含む西側諸国も、彼女のEUでの経歴を考えれば反対することはないと思われていたため、理想的な候補とみられていた。
 他方、「女の戦い」を制してブルガリアから推薦を受けていたボコヴァは第1回、第3回予備選では3位に入ったものの、第4回では5位、第5回では6位と勝ち目がない状態であった。そのため、ブルガリア政府はボコヴァの推薦を取り消し、ゲオルギエヴァを推薦しなおす形で候補として名乗りをあげることとなった。
 しかし、ゲオルギエヴァが立候補した後の公聴会では、グテーレスを超えるだけの政治的能力を示すこともできず、また、彼女の国連の諸政策に対する態度は傍観者的で、国連関係者から見るとコンサルタントのような、やや距離感のある態度であった。こうした失望感からゲオルギエヴァも候補としては物足りないというのが国連関係者の一致した見方となっていった。

グテーレスは国連を変えられるか

 膠着していた事務総長選の救世主になるかと思われたゲオルギエヴァへの失望が高まる中、やはり最後にはグテーレスしかない、という状況が生まれたことは確かである。また、第6回の予備選の直前、米国のケリー国務長官とロシアのラブロフ外相が電話会談を行い、シリア問題を含め幾つかの問題についてめどが立ったことも幸いして、ロシアの(とみられる)反対は取り下げられ、グテーレスは「推奨」13票、「不賛成」0票、「意見なし」2票という結果を得た。その後、安保理は全会一致でグテーレスを候補として選出し、10月13日に行われる総会での投票の唯一の候補となった。過去の投票から見て、グテーレスが過半数を得ることはほぼ確実であり、次期事務総長に内定したと言っても過言ではないだろう。
 では、グテーレスが事務総長となった国連はどのようなものになるのだろうか。グテーレスは10年間の難民高等弁務官の経歴以前から、人権や貧困に対して熱心に取り組んでおり、その意味では国連の様々な政策について、過去の事務総長よりもはるかに多くの知見を有し、経験も豊富である。しかし、国連事務総長は現場に出て働くわけでも、政策を立案するわけでもない。国連という巨大組織を統括し、運営することが最も重要である。
 その意味で、グテーレスに期待されるのは適材適所の人材配置と、問題の本質を捉え、それに対して国連が持ちうるリソースを活用すること、さらには各国の支援を取り付け、自らが設定する目標を達成するための協力を集めることである。国連難民高等弁務官としての経験はそうした意味で大変有益であり、過去の事務総長よりも期待できるといえるだろう。
 しかし、そうした個人の能力が優れているとしても、国連でことを成すのは容易ではない。加盟国、とりわけ安保理常任理事国との関係がうまくいかなければ、事務総長は無力であるし、常任理事国の顔色をうかがってばかりでは、問題の解決は難しい。さらには、どんなに優秀な事務総長であっても、常任理事国の間の対立が激しければ、安保理で決議を1つ通すことも困難となる。その意味では、現在の事務総長である潘基文は米ロ対立の中でイニシアチブを発揮することもできず、また各国の顔色をうかがって政策を進めようとしたため、結果的に多くの問題が未解決のまま事務総長職を去ることになりそうだ。
 しかし、グテーレスはそうした中でも問題解決のアイディアを出し、各国の対立を仲介しながら、第3の道を提示していくことのできる人物である。ポルトガル首相の際もユーロ加盟に向けて経済が低迷する中でも財政政策のバランスをとることに腐心し、難民高等弁務官としても、シリア難民が急増する中で、周辺各国との調整を進め、なんとか難民を受け入れる体制を作り出すことに尽力した。こうした現場での能力や具体的な対策づくりの実績を超えて、国連という巨大組織を運営していく立場をうまくこなしていくことができるかどうか、注目していきたい。(文中敬称略)


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