したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | メール | |

国際関係・安全保障論

4074とはずがたり:2016/09/17(土) 15:00:54

部品と整備費不足のAH-1S

それではAH-1Sはどうだろうか。陸自は89機のAH-Sを調達したが、現在はこれまた部品と整備費の不足で稼働率が悲しいほど落ちている。たとえば北部方面隊で基地祭などがあって、AH-1Sの編隊飛行を行う時には、北部方面隊だけでは稼働機が確保できず、ほかの方面隊から借りてくる有様だ。現場では機体から取り外したパーツを、別の機体に使用するいわゆる「共食い整備」が日常化しているとも聞く。恐らくはすべての稼働するAH-1Sを集めても2個飛行隊にもならないだろう。

そもそもAH-1Sの調達からしてデタラメだった。AH-1Sは、富士重工が1982年からライセンス生産を開始し2000年まで18年かかって、89機が生産された。初期の2機は1977年と1978年に1機ずつ輸入されており、調達に約四半世紀を費やしたことになる。

だが「本家」の米陸軍ではすでに1984年から、AH-1Sの後継機であるAH-64Dの調達が始まり、1997年には調達を終えている。にもかかわらず、わが国では米国がはるか前に調達をやめた旧式攻撃ヘリを延々と生産してきたのだ。その平均調達価格は約25億円で、米国の約3倍、特に末期には調達数が減り、単価は48億円、米国の6倍ほどまでに高騰した。旧式の軽自動車に最新式のベンツの値段を払ってきたようなものである。

AH-1Sのライセンス生産に先立って、もし国会で「アメリカでは2年後にAH-1Sに替わる新型のアパッチの生産を開始します。しかも1997年までにはそのアパッチの生産も終わります。わが防衛庁・陸上自衛隊では、旧式化したAH-1Sを今後18年ほどの年月をかけて調達します。米国での調達価格は8億円ぐらいですが、わが国では最大48億円ほどになります」と説明されていたら、賛成する議員がどのくらいいただろうか。

AH-1Sはすでに能力の面でも旧式化が著しい。まず速度が遅く、大型の輸送ヘリである、CH-47などにも随伴できない。主要武装である対戦車ミサイルは旧式のTOWであり、これは有線誘導で、空中に静止して目標に命中するまで延々と誘導を続ける必要がある。この時に敵の対空砲火のいい的になる。最近の対戦車ミサイルAH-64が搭載するヘルファイアのように打ちっぱなしか、あるいは終末誘導をレーザーで行う、レーザー誘導のセミアクティブ方式が主流である。これであれば発射した機体は素早く回避行動がとれ、誘導は僚機か、または地上からのレーザー照射で行うことが可能で、それだけ攻撃ヘリの生存性は高くなる。つまりAH-1Sは骨董品であり戦場での生存性は極めて低い。

またAH-1Sは単発機であるため、海上での飛行に難があり、島嶼防衛作戦などでも使用が難しい。さらに申せば、パッシブの赤外線像化装置などのセンサー類も旧式化している。当然ながらネットワーク化もされていない。実際に作戦にAH-1Sを投入すればAH-64Dの何倍も多い損害を出すことなる。

攻撃ヘリに随伴する偵察ヘリOH-1も250機ほどの調達予定がわずか34機で打ち止めなった。OH-1は偵察ヘリとしての役割だけでなく、特科(砲兵)などの観測を行うOH-6の後継としても開発されたが、世界で全く類を見ない特異でぜいたくな機体であり、あまりにコストが高すぎた。本来特科の観測ヘリならば数億円程度の汎用ヘリを流用すればことは足りた。だが偵察ヘリだけなら必要な機数は40機程度であり、これでは国産開発・生産には数が少なすぎるので、特科用の観測ヘリも合わせてOH-1で統一するという「贅沢」が決定された。だが生産は主として攻撃ヘリに随伴する偵察用の機体が34機ほど調達されて、平成22年度で打ち止めとなったのだ。

OH-1はなまじ、エンジンなどで専用のコンポーネントを多用したために、コンポーネントの生産はわずか34機分であり、維持費がなおさら高く付いている。はじめに国産ヘリ開発がしたいという「情緒」というか、あるいは「執念」だけ開発が進められ、ソロバン勘定を全く行わずに無謀なプロジェクを進めたといえるだろう。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板