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国際関係・安全保障論

3984とはずがたり:2016/07/26(火) 12:04:02
 こうした中国にどう対応するのか。私は先週のコラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49175)で日米豪などの対中包囲網を指摘したが、今週は話を一歩進めて、どんな対中包囲網が可能か、あるいは不可能なのかを考えてみよう。

 米国の戦略家として著名なエドワード・ルトワック氏は著書『中国4.0 暴発する中華帝国』(文春新書)で「封じ込め戦略」を提案している。この本はよく売れているようだ。好戦的な中国のおかげだろう。

 具体的には中国が尖閣諸島を占拠したら、欧州連合(EU)などに輸出入の入管手続きを強化してもらって「実質的に貿易取引禁止状態にする」という提案である。そうなれば、たしかに中国は「深刻な状況に追い込まれるはずだ」(同書171ページ)。

 これは尖閣占拠のケースを想定しているが、南シナ海問題でも同じ対応が考えられる。

 封じ込めは、かつて冷戦期に米国が旧ソ連圏に実行した戦略でもある。発案したのは最強の戦略家として知られたジョージ・ケナンだ。ルトワック氏が唱える封じ込めがケナンのそれと同じかどうか知らないが、貿易取引を禁止するアイデアは冷戦期と同じである。

 冷戦期には西側の対共産圏輸出統制委員会(COCOM)がソ連を中心とする共産圏への輸出を禁止した。核兵器を保有しているソ連を相手に熱い戦争をしたら、双方が破滅してしまうので、西側からの技術と資源の流出を防ぎ、経済戦争で相手を追い詰めようとしたのだ。

対ソ戦略を振り返る
 貿易禁止だけではなかった。

 冷戦研究の大家である米国の歴史学者、ジョン・ルイス・ギャディスの古典的名著『Strategies of Containment』によれば、封じ込めはソ連との戦いを戦争によって決着をつけるのを目指した戦略では「ない」(英語版同書51ページ)。

 そうではなく経済戦、思想戦あるいは宣伝戦による勝利を目指した。経済封鎖と自由と民主主義の理念的求心力によって共産主義に対抗しようとしたのだ。ケナンは軍人相手の講演でも軍事力だけに頼らず、米国政治システムの優位による戦いを強調している。

 私がギャディスの本を初めて読んだのは、いまから28年も前の留学中だったが、まさか中国問題を考えるのに、再び本を手にとる日が来るとは夢にも思わなかった。あらためてページをめくってみると、ケナンのリアリズムに基づく見識に思いを深くする。

 たとえば、国際連合についてケナンはどう考えていたか。
 ケナンは「国際連合が紛争を解決できるわけもない」と見抜いていた。国連は「議会のシャドーボクシング」にすぎず「真の問題から米国人の目を逸らさせてしまう。まったくバカげている」と一刀両断に切って捨てている(29ページ)。

 そうではなく「私たちの安全保障は敵対勢力との間に均衡を保つ能力にかかっている」。そのために封じ込め戦略を唱えたのだ。これは現下の情勢にも、そっくりそのままあてはまる。中国やロシアが拒否権を持っている国連は、もはや実質的に機能していない。

 それはクリミア侵攻を批判する国連安全保障理事会決議に対するプーチン大統領の拒否権発動で証明された。中国が尖閣諸島に侵攻し国連が取り上げたとしても、中国はロシア同様、非難には必ず拒否権を発動する。

 ただ、ケナンの対ソ封じ込め戦略を現代の対中封じ込めに適用できるかといえば、少なくとも当時のままでは適用できない。それには、いくつか理由がある。


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