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国際関係・安全保障論

3962とはずがたり:2016/07/14(木) 10:03:19
 しかし今回の「判断」では、「歴史的権利」まで証拠がないとして否定されてしまった。さらに中国が受け入れられないのは、南沙諸島の中で高潮時にも海面上にその一部が出ている陸地についても、「全て島ではない」とされたことである。島でなければ、領海は設定できても、排他的経済水域は認められない。「中国には、海底資源等に対する権利はない」と言われたのである。

 その上、南沙諸島にあるミスチーフ礁等は、高潮時に全没するため、「岩」でさえないとされた。「島」でも「岩」でもなければ、そこは領土ではなく、領海も設定できない。中国がすでに人工島を建設したミスチーフ礁等は、フィリピンの排他的経済水域の中にあり、中国にはいかなる権利もないとされたのである。

 国際的な司法機関によって、中国の南シナ海における権利が、根底から否定されてしまったのだ。中国からしてみれば「受け入れられない」結果だろう。これに対して中国外交部は、直ちに、「南シナ海の領土主権と海洋権益に関する声明」を出し、「中国人は、南シナ海で2000年以上活動してきた歴史がある。中国は南シナ海の島々と周辺海域を最も早く発見して命名し、開発していて、最も早く持続的、平和的、かつ有効に主権と管轄権を行使し、南シナ海の領土の主権と関連する権益を確立した」と主張し、「仲裁裁判所の判断を受け入れない」と表明した。

 さらに、中国は、「国内法及び国連海洋法条約等の国際法を根拠として、南シナ海の島々に主権を有する。これらの島々には、領海及び接続水域、さらに排他的経済水域の設定が可能であり、その上、大陸棚も有している」と主張した上で、「中国は、南シナ海に歴史的な権利を有する」と、改めて主張したのである。

一方の当事者だけでも判断は有効
 しかし、「判断」が最初の部分で述べているように、一方の当事者が参加していなくても、「判断」は有効である。仲裁裁判所は、国際法の条文まで示して、「判断」の有効性を示している。中国にとっては、大変なダメージである。中国は、国際社会からの孤立は何としても避けなければならないが、南シナ海の権利を手放すこともできないからだ。

 中国が強く反発するのは、「中国が国際社会に挑戦している」という構図になるのを嫌がるからであり、国際社会から孤立するのを避けたいためだ。中国は、「国際秩序そのものを変えてやる」と宣言しているのであって、米国が主導する現在の国際社会に対抗する政治的・経済的ブロックを形成することが目的ではないからだ。

 そのため、中国は国際社会の支持を必要としているのである。中国には、「戦勝国である中国には、国際秩序を形成する権利がある」という思いがある。また、「これまで欧米諸国は、軍事力を用いて自国の権益を拡大してきたのに、自分たちの利益配分が確定すると、それを固定するために中国の発展を妨害している」という意識もある。「自分たちはやってきたのに、いざ、中国がやろうとすると非難して妨害するのは不公平だ」ということだ。

 2つの世界大戦後、先進諸国は「もう戦争はしたくない」という思いを共有し、「国際問題の解決手段として戦争という手段を用いない」という価値観あるいはルールを築いてきた。しかし、中国はこの価値観を共有せず、同じルールでゲームをプレイすることを拒否している。自分が悪いと思っていない中国は、「中国を不当に抑え込む」先進国が「中国が間違っている」と言ったところで、聞く耳を持たない。仲裁裁判所の「判断」に対する中国の態度は、中国の意識をよく表している。

中国はこれから3つのことをやる
 中国は今後、3つのことに力を入れるだろう。第1は、フィリピンとの協議である。フィリピンのドゥテルテ大統領はすでに、「フィリピンに有利な判断が出たら、中国と話し合う」と表明している。フィリピンは、「国際秩序を維持する」という目的ではなく、中国からより有利な条件で経済的援助あるいは投資を受けるためのカードとして「判断」を利用しようとしているのだ。フィリピンの態度は、金次第ということでもある。中国は、米国との軍事衝突を避け、日本や欧米諸国を含む国際社会からの非難を最小限に止めるために、一刻も早く当事国のフィリピンと和解する必要がある。そのために、中国はフィリピンに対して積極的な経済支援を表明することになる。


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