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国際関係・安全保障論

3789とはずがたり:2016/05/04(水) 22:47:30
豪潜水艦受注競争「敗北」の本質
http://www.fsight.jp/articles/-/41154
執筆者:伊藤俊幸 2016年5月3日

 日本、フランス、ドイツが競い合ったオーストラリアの次期潜水艦受注競争が一応の決着を見た。ターンブル豪首相は4月26日、「2030年代以降に導入する潜水艦はフランスと共同で開発する」と発表したのである。
 当初圧倒的に有利と言われていた受注競争に、日本はなぜ負けたのか。これまでの経緯をたどりながら分析を試みたい。

必要に迫られた豪州の次期潜水艦

 発端は、豪州海軍のコリンズ級潜水艦の更新計画だった。コリンズ級は水中排水量3300トンの通常動力型潜水艦で、スウェーデンのコックムス社が設計。オーストラリアの国営造船会社(ASC)で建造され、1996年から現在まで6隻が就役している。
 だが、この潜水艦は優れたものではなかった。水中での騒音がひどく、特に船体構造と足回り(ディーゼル発電機や推進装置等)が弱かった。豪海軍は2000年代後半から、中国の積極的な海洋進出による南シナ海を含めたアジア海域の緊張の高まりも鑑み、後継潜水艦についての検討に入る。結局、遠距離での作戦行動も可能な4000トン級の通常動力型潜水艦12隻を導入することを決めた。
 当初は、通常動力型で輸出実績のあるドイツやスペインの潜水艦が調査対象だったとされるが、2011年、日本が武器輸出3原則を緩和したことで風向きが変わった。海上自衛隊が2009年から運用を開始している最新鋭潜水艦・そうりゅう型もその対象として急浮上することになったのだ。

浮上した“そうりゅう型”

 ドイツやスペインの潜水艦の排水量は2000トン前後だから、4000トンの潜水艦を造るには、大型化に伴う新たな建造技術が必要となる。簡単そうに見えるがこれが実際にはなかなか困難で、コリンズ級の失敗もそれが原因といわれている。一方そうりゅう型は水中排水量4200トン、通常動力型潜水艦として世界最高の性能を持つとされ、豪海軍の要求にはうってつけだった。そこに、武器輸出3原則の緩和である。オーストラリアはそうりゅう型の「技術」に大きな関心を寄せるようになった。
 2014年になって、追い風はさらに強まった。まずは4月、従来の「武器輸出3原則」に代わり、「防衛装備移転3原則」が新たな政府の方針として制定された。これによって武器・装備品の輸出や国際共同開発が、基本的に可能になったのである。
 続く7月に行われた安倍首相とアボット豪首相(当時)の会談後、両首脳は「日豪防衛装備品・技術移転協定」に署名した。これは防衛装備品・技術の共同研究、開発及び製造を通じて日豪間のより深化した協力を容易にするというものだ。この頃から「技術協力」という話が、「そうりゅう型輸出」という話に変わっていく。
 豪軍は米軍との相互運用性が非常に高いこともあり、コンピューターや武器管制システム、ソナーなど頭脳にあたる部分は米国製、船体と足回りは日本製、運用は豪海軍という、日米豪が共同して建造する潜水艦の誕生が検討され始めたのである。当時の日本側としては「豪州が日本に依頼した案件」との認識だった。オーストラリアに輸出されることになるであろうそうりゅう型潜水艦を「ごうりゅう(豪龍)」と呼称する日本側関係者も散見されたほどだった。

痛かったアボット退陣

 だが、この日本にとって追い風かつ「受け身」でよかった話は長くは続かなかった。
 まずはオーストラリアの製造業の不振だ。自動車メーカーの撤退が相次ぎ製造業が急速に縮小する中、「潜水艦までも“完成品”を輸入するという事態になれば、雇用不安はますます増大する」との声が国内で上がりだした。潜水艦建造なら、評判が悪いとはいえ、「建造実績を持つASCがあるではないか」と。
 アボット首相は“完成品”の輸入については地元経済の影響よりも軍事的な観点から判断するとしていたが、結局2015年2月、「調達先は日本、ドイツ、フランスの中から選ぶ」「建造や保守管理にはオーストラリアの企業が最大限加わり、地元の雇用を維持する」と言明せざるを得なくなってしまった。
 そして、同年9月のアボット首相退陣である。代わって登場したターンブル首相は、雇用問題を重視したといわれる。日本のライバルとなったフランスとドイツはここにつけ込み、「潜水艦はオーストラリア国内で建造する」を標榜して積極的な売り込みを展開したのだった。


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