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国際関係・安全保障論

3535とはずがたり:2015/11/26(木) 23:49:46
>>3534-3535
●テロリストの標的が一般市民に

 このテロリズム・インデックスには、最近のテロの特徴として興味深いデータが示されている。テロのターゲットである。テロリストの標的が以前ような宗教関係者などから、一般市民に移ってきているのだ。2000年には2000人以下だった民間人の死者数は2014年に1万5380人に達している。ちなみにこの数は2013年から172%も増加している。

 報告書に書かれているのは、テロとの戦いを正義と考える欧米諸国にとっては見たくない数字のオンパレードである。激増しているのは死者数だけでない。経済的な損失でも莫大な数字がはじき出されている。2000年に49億ドル(6034億円)だったテロ被害の経済損失は、2014年に史上最高額となる529億ドル(6兆5139億円)ほどになった。ただもちろん、テロの被害額を正確に出すのは難しい。というのも、犠牲者と建物の破壊など直接的な損失のほかに、間接的な損失もあるからだ。それでも急増していることだけは間違いない。

 また、世界各国が国内のテロ対策に費やしている予算の総額は、2014年だけで、およそ1170億ドル(14兆4070億円)に達すると試算されている。米国だけで見ると、2001年から2014年までに治安機関が対テロ対策として使った金額は、1.1兆ドル(135兆4512億円)。年平均730億ドル(8兆9890億円)を費やしていることになる。

 余談だが、報告書によれば、2014年に急激にテロ犠牲者が増えた国はナイジェリアだ。これは、イスラム過激派組織ボコ・ハラムが活動を活発化させていることを意味する。死者数を見る限り、現在、世界で最も危険なテロ組織はイスラム国でもアルカイダでもなく、ボコ・ハラムである。ボコ・ハラムは2014年、テロによって6644人を殺害、一方のイスラム国は6073人だった。

●世界は降りられない列車に乗っている

 テロリズム・インデックスを読む限り、今後もテロは増加していくものと考えるのが自然だ。というよりも報告書はむしろ、今回のフランス同時テロへの報復によって、テロ行為がさらに増える可能性を示唆しているのである。

 となると、今回のフランス同時テロに、フランスをはじめとする欧米諸国はどう対処すべきなのか。報復を中止すべきか? 私の周りにも、平和主義精神で「暴力は暴力を生むだけだ」と主張する人もいる。しかも今回取り上げたテロリズム・インデックスには、それを裏付けるような数字が示されている。

 ただ言うのは簡単だが、現実に、それでは問題は解決できない。欧米などがイスラム国への攻撃を止めれば、イラクやシリアではさらに領土が奪われ、イスラム国というテロ国家が本当に生まれてしまいかねない。

 そうなれば、恐怖統治を行うイスラム国という「国家」の独自戒律によって、別の暴力が生まれることになる。例えば、ヒゲを剃ったら死刑などというとんでもない理由で死者が続出しかねない(実際に過去に取材したイスラム原理主義勢力タリバンに統治されていたパキスタンのある国境地域では、そういう「戒律」のためにヒゲの薄い人は証明書を常に携帯する必要があった)。

 領土を拡大し始めた時のように、イスラム国は土地を奪いながら自分たちの考えと相いれない人々を次々と殺戮していくだろう。テロリストの巣窟(そうくつ)になることもありえる。そうすればまたそこから逃れる難民が増え、今回のフランス同時テロのように、テロリストを輸出する結果になることだって考えられる。

 もはや世界は降りられない列車に乗っている。イスラム国を食い止めるために掃討作戦をやめるわけにはいかないからだ。イスラム国を徹底して掃討すれば、地域には安定がもたらされる。その希望に賭けるしか、世界に残された道はないのではないか。

 報復は暴力しか生まない――。確かに、それは正しいだろう。だがイスラム国との戦いでは、現実を直視しない平和主義が別の暴力を生むということも理解しておいたほうがよさそうだ。

※1ドル=123円
(山田敏弘)


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