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国際関係・安全保障論

3352とはずがたり:2015/09/12(土) 14:59:59
しかも機動戦闘車用の砲弾は、単に74式戦車の砲弾の流用であり、ゲリラ・コマンドウ対処に必要な多目的砲弾も開発もなされなかった。過去の戦争の戦訓で、従来の榴弾では建物や強固な陣地に立てこもった敵に対して有効ではないことがわかっている。従来の榴弾は、本来野戦で破片をばらまいて殺傷することを目的としており、建物や陣地に立てこもった敵に対して十分に威力的ではない。

これは昨今のイラクやアフガニスタンの戦闘で大きな問題となり、欧米やイスラエル、中国などでも多目的弾の開発・装備化が進んでいる。この中には電子式信管を有して、発射時に砲弾にプログラムを行い、敵の上空で砲弾を炸裂させることができるものもある。陸自はゲリラ・コマンドウ対処のためといいつつ、そのための砲弾の開発を行っていない。これも本来は華々しい対戦車戦をするための装輪「戦車」が欲しかったのだろうという、間接的なエビデンスである。

また機動戦闘車は車体も専用のものが開発されたが、これまた大きな無駄である。陸自は新しく、8輪装甲車を開発するが、そのバリーションとしてそのような歩兵戦闘車、あるいは火力支援車を開発すればよかった。仮に105ミリ砲を搭載するにしてもそのバリエーションとして開発すればよかった。そうすれば運用や兵站コストは劇的に下がる。逆に申せば、専用の車体を開発したことで運用兵站コストは劇的に高価になった。

実際、陸自には1990年代にそのような装甲車のファミリー化構想があり、105ミリ砲を搭載する火力支援車も検討されていた。この構想のための試作も行われたが、新たな汎用8輪装甲車の開発はなされなかった。そしてまたも個別最適化した装甲車を作り、わざわざ調達単価と運用コストを上げ、弱い兵站を圧迫している。96式自走120ミリ迫撃砲などたった24両しか調達しないのに、わざわざ専用の車体が開発された。この高コストのために陸自の装甲車は調達数が少ない上に、採用の近代化も行われず、旧式化や稼働率の低下が放置されている。そして機動戦闘車がほぼ完成したころに新型の8輪装甲車の開発が決定している。

諸外国では1980年代以降、装甲車両ファミリー化は常識であり、21世紀なってもこのような無駄な装備の開発と調達を行っているのは陸自ぐらいである。わざわざ不効率な開発を行って少ない予算を浪費し、脆弱な兵站を自らさらに脆弱化させている。

74式戦車を近代化すれば十分

ゲリラ・コマンドウ対処では10式戦車もこれを理由に開発されており、用途がダブっている。105ミリ砲搭載の車両が必要ならば、10式など開発せずに、74式戦車を近代化すればよかった。これをネットワーク化し、対戦車兵器用の増加装甲やRWS(リモート・ウエポン・ステーション)など装備を付加すればよかった。その方が安上がりだし、要員の訓練もほとんど同じで無駄がない。敵の戦車の交戦を想定せず、ゲリラ・コマンドウ対処を主任務とするのであればそれで十分である。ゲリラ・コマンドウ対処では戦車駆逐車よりも防御力が高い戦車の方が有利である。ゲリラ・コマンドウ対処では耐地雷・IED(即席爆発装置)防御力が重要だが、機動戦闘車はこの点でも脆弱である。

ゲリラ・コマンドウ対処をする場合、5個ある各方面隊に1個分隊も配備すれば十分であり、ならば近代化した74式が60両もあれば事が足りる。200車両も新たな、しかも高価で脆弱な車両をわざわざ導入する必要はない。むろん10式戦車も必要なかった。

機動戦闘車や10式戦車に、贅沢に使う予算は陸自の機甲科にはない。陸自唯一の機甲師団である第7師団は人員約6000人だが、諸外国のひと回り小さな旅団レベルにすぎない。たとえば英陸軍の1個機甲旅団は5000〜6000人。総兵力は約10万人で陸自の3分の2だが、3個機甲旅団からなる1個師団を有している。

第7師団では戦車と共に戦う歩兵戦闘車である、89式装甲戦闘車は諸外国の戦車並に高価だったこともあり、第7師団ですら歩兵中隊に十分に行き渡るほど配備されていない。しかも採用された1989年以降まともな近代化もなされておらず、稼働率も低い。

さらに申せば指揮通信車をはじめ1970〜90年代に採用された多くの装甲車両も同様であり、現代的な戦闘は不可能である。つまり一個旅団すらまともに整備できていない、まるで博物館のような惨状を呈している。

とても実戦を想定しているとは思えない。機動戦闘車や10式戦車のような「楽しい玩具」を導入する予算があれば、旧式装甲車両の近代化や更新、稼働率の改善、兵站組織の向上に予算を使うべきだった。


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