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国際関係・安全保障論
3225
:
とはずがたり
:2015/06/11(木) 00:40:09
>>3223-3225
黄海は、それこそ潜航すら危険ほど浅すぎ、東シナ海も浅い大陸棚のため、ミサイル原潜が潜むには適さない。巨大なミサイル原潜が浅い海を航行すると、様々な痕跡を水面に残し、それは軍事衛星から丸見えになる。広大で深い海は、アメリカ本土を狙うミサイル原潜を潜ませるために、中国がどうしても内海化したい場所である。その遠大な計画の第一歩として、中国は長年、南シナ海に突き出た海南島の海軍基地を整備してきた。
アメリカ海軍が本当に海上自衛隊にやらせたいのは、この海域での対潜活動に他ならない。実際、ソヴィエト海軍の潜水艦狩りを目的として成長してきた海上自衛隊は、その能力を有している。こと対潜作戦に関しては、米海軍より能力が高い、すなわち世界一と言っても過言ではない。
逆に言えば、中国が一番恐れているのは、海上自衛隊に、この海域で対潜活動を繰り広げられることである。
もし海自艦艇が南シナ海域で活動を始めたなら、中国海軍は、海南島基地から立ち所に倍の数の水上艦艇を繰り出して威圧し、空からも戦闘機を飛ばして嫌がらせし、最終的には、そっちがこちらの領土を脅かすならと、今度こそ尖閣諸島に海軍艦艇を派遣してしっぺ返ししてくるだろう。
私は、このパトロールに関して、やるべきか否かの意見は持ち合わせない。相当に困難で、覚悟の要る任務だからだ。しかし我々の判断如何に関わらず、対米協力の名の下に出撃することになるのだろう。アメリカのリバランス政策は、予算不足のせいで巧く進んでいない。アメリカ海軍は、今後とも徐々に縮小し続ける。その隙間を埋めるように、中国海軍が進出してくるだろう。日本は、その縮小する第7艦隊の埋め合わせをすべきだとは個人的に思うが、日本には、憲法上の制約があり、また防衛予算も決して青天井では無い。
そして、肝心なことだが、アメリカは中国と国境を接しているわけではない。彼らはいつでも逃げ出せる。尖閣でそうしたように、いざとなれば、優柔不断な態度でお茶を濁すことができるのだ。その結果が今日の南沙の事態であることは、言うまでも無い。オバマ政権の腰が引けた尖閣問題へのアプローチが、中国への誘い水になったことは疑いようが無い。中国は今、対中政策が不透明になる米大統領選挙の前に既成事実を完成させようと必死である。
封鎖があったとしても迂回できる
最初の命題に戻ろう。「南沙を巡る状況は、我が国の存立危機事態にエスカレートする危険がある」との命題だ。私の考えでは、この命題は真ではない。たとえ最悪の事態を迎えて、中国が南沙一帯を封鎖しても、船舶はフィリピン東側へ迂回すれば済むのだ。そのコスト増は、こと原油に関しては、価格に上乗せしても末端のガソリン価格にはたいして影響しないレベルに留まるだろう。
しかし、海域を封鎖するとなれば、自国に向かっている船舶も影響を受ける。中国船ばかりが中国の港へ向かっているわけではないし、海事保険料の上昇は全ての船主にのし掛かる。中国もまた損害を被るから、そう簡単にできる話ではない。
さらに最悪の最悪のケースを想定するなら、南沙の基地から飛び立った中国の戦闘機が、フィリピン東側へと迂回した日本の船舶をミサイル攻撃するという事態も考えられるが、これはいささかナンセンスだろう。なぜなら、瀬戸際政策と戦争は全く別のフェーズである。
中国の指導部は傲慢で、瀬戸際政策に秀でているが、戦争を起こすほど愚かではないと信じたい。もしそんな事態を招いたら、より大きな犠牲を払うことになるのは中国の方である。なぜなら日本は、中国の太平洋航路を完璧に封鎖できるからだ。いずれにせよ、それはもうホット・ウォー。戦争である。
封鎖まで行かなくとも、偶発的事故を契機に、タンカーが該当海域を回避して遠回りを強いられるという事態は十分ありうる。南沙での中国の傍若無人な振る舞いは決して許されることでもないし、こうした事態への国際貢献、対米貢献は大いに結構なことだ。
しかし、思い出して欲しい。尖閣を巡って、日本がもっともアメリカのバックアップを欲していた当時、アメリカがどのように振る舞ったかを。彼らは、尖閣に射爆場まで設定していながら、徹頭徹尾、領土紛争不介入の立場を貫き、中国国内で日本車が焼き討ちに遭っているすきにGM車を売りまくったのである。
アメリカはいざとなれば、汚れ仕事を日本に押しつけ、梯子を外すくらいのことは平気でする可能性がある。「国家に友なし、国益のみ」。同盟関係と言えども、それが国際政治の現実である。
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