広い母音の e, a, o, を、全部一度 a, に集約してしまっている
のもその特徴の一つ。その結果、印欧語族の中でも、母音の中の
a, や @a, の出現比率が極めて高い言語になっている。そして、
印欧語族の特徴の一つである、屈折に際しての<音色変化>(=
e, o, 間の変化)の、起こりようがなくなっているのである。
このような、e, a, o, の統合がなぜ起こったのかについては、
私は調べたことがない。印欧祖語の話し手はこれらの母音の
区別を持っていたはずと考えられるし、亜大陸先住民最大勢力の
ドラヴィダ語族も、長短の e, o, を持っている。内的な要因が
あったのか、或いは三母音体系の全く別の系統の言語を話す
民族の影響があったのか、要調査である。
Sa\msk$rtの前身、ヴェーダ語に移る更に少し前には、有声の
歯擦音(z, #z, %z,そして %zh,)もあったらしい。
"Medially, voiced sibilants, the dental z, the cerebral
#z, and palatal %z, have disappeared before the voiced
dentals d, dh, and h, but nearly always leaving a trace
of their existence."
(A.A.Macdonell; A Vedic Grammar for Students,p18)
(語中において、有声の歯擦音、つまり歯音 z, 反舌音 #z,
硬口蓋音 %z, は、有声の歯音 d, dh, と h, との前で脱落
したが、殆どすべての場合、それらが元々存在していた痕跡を
残している。)
その前後の記述も参照。