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『邪気眼少女』 *Another Story*
1
:
心愛
:2013/02/03(日) 17:30:58 HOST:proxy10046.docomo.ne.jp
こんにちは、または初めまして。
心愛(ここあ)と申します。
拙くて見るに耐えない駄文ですが精一杯頑張りますので、よろしくお願いします。
感想等戴ければ泣いて喜びます。
ですが、ここあは非常に小心者です。一つの批判にもガクブルしてしまうと思われます。
なので、厳しい御言葉はできるだけオブラートに包んで戴けると嬉しいです(>_<)
また、ここあが不要と判断した書き込みは、誠に勝手ながら反応しないことがあります。申し訳ありません。
内容としては、『邪気眼少女の攻略法。』の番外編集となります。
本編とはまた違う登場人物からの視点で展開していく予定ですので、こちらも併せて御覧戴ければ幸いです。
2
:
心愛
:2013/02/03(日) 17:35:13 HOST:proxy10052.docomo.ne.jp
『Prince or Princess? 1』
―――片思いなら、いくつもしてきた。
『まいかちゃん、今日スカートだー』
『珍しいね』
薄っぺらで魅力の欠片もない身体と、同年代の男の子よりもずっと高い身長は、それでも頑張って伸ばしていた長い髪や赤いランドセルとちぐはぐで、いかにも不格好に見える。
そんなことはもちろん、世の中には鏡というものがあるのだから、承知していたけれど。
どうしてもと母親に押し付けられ、スカートを嫌々ながら身に着け登校してきた私を、クラスの女の子たちは笑顔で褒めてくれた。
笑われるんじゃないかと内心びくびくしていたけど、安心してほっと息をつく。
『……そう、かな』
『そうだよー!』
『自信持てばいいのに』
優しいみんな。
甘い言葉のひとつひとつを真に受けたくなる自分が恥ずかしくて、スカートの裾を少しでも伸ばすように、震える手でぎゅっと握った。
『ねー、まいかちゃんかわいいよねー?』
『え―――』
一人の子がにこにこ笑い、悪気なく男の子のグループに話を振る。
慌てて止めようとしたけれど間に合わない。
一番手前で喋っていた男の子が、こっちを振り返った。
『……はぁ?』
身を竦ませた私を冷たい目で睨み、吐き捨てる。
『ばっかじゃねーの? キモいんだよ、オトコ女』
どくん―――と、その辛辣な台詞が重く、胸にのし掛かった。
急速に全ての感覚が遠くなり、目の前が真っ白に霞む。
『男子ひどーい!』
『なにそれ、意味分かんなくない!?』
『気にしない方がいいよ』
―――いつも遠くから想うだけ。
―――気持ち悪いと蔑まれ、嫌われるより。
―――想いを閉じ込めて、溢れないように気をつけて。
―――遠くから見るだけの、ささやかな幸せに浸って、満足していればそれでいい。
『……平気だよ』
だから、私は笑う。
『私、みんなみたいな女の子の方が好きだもの』
―――長い間、もがいてもがいてできたことと云えば。
―――気持ちを深く、心の奥へと埋めることだけ。
中学も高校も、迷わず私服通学のところを選んだ。
髪を短く切り、わざと男っぽい服を身に着けた。
大好きな、可愛い女の子たちに囲まれる、夢のような毎日。
なのに時折、一人になったとき、ふと思うことがあった。
―――……恋がしたい。
一度でいい、恋がしたい。
誰かの大切な人になりたい。
息が詰まるくらい、激しく愛し、愛されたい。
そんな、本当の、恋がしたい。
でも、そんな都合がいいことが起こるわけない、なんてことは―――
もう、分かっていた。
3
:
ピーチ
:2013/02/03(日) 18:00:26 HOST:EM49-252-157-193.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>
苺花ちゃーん!! 男子殴ってやれー!
許してやる義理はないっ! 何発でもいいんだよ!←
4
:
心愛
:2013/02/03(日) 21:05:40 HOST:proxyag112.docomo.ne.jp
>>ピーチ
ありがとーう!
でも殴らせると話変わっちゃうから泣く泣くカットだー(つд`)
苺花が男の格好して、「私なんか」発言するのはこの出来事がそもそもの理由だったのです←
やっと書けた!
でも男男って言うわりには中身は意外と悩める普通の女の子だったりするかも?
これから苺花視点で進んでくけど、「なんだよ苺花もけっこう可愛いとこあるじゃん」って思ってもらえるといいなw
5
:
心愛
:2013/02/03(日) 21:06:13 HOST:proxyag112.docomo.ne.jp
『Prince or Princess? 2』
「王子ー!」
「こっち見てー!」
にこっと微笑んで手を振ると、すぐさまきゃーっという歓声が上がる。
教室までの廊下を歩くだけでこの騒ぎ。
女ながら“王子”の異名を欲しいままにする私は、ここ県立南高等学校でもトップクラスの有名人となっていた。
ラフな印象に見えるようさりげなくセットした髪に、切れ長の双眸。
自分で言うのも変だけど、なかなかに整った顔立ち。高い身長。
無地の白いシャツに、黒のスラックス。
どこからどう見ても、完璧なまでに、男。
「かっこいー」
「あーもう同性でもいいから付き合いたい!」
女の子はいい。
小柄で、可愛くて、綺麗で、やわらかくて。
人は自分とは正反対のものを求めるというけれど、まさにその通りだと私は思う。
この約十五年で、人間、努力すれば大抵のものは手に入るということは学んできたつもりだけど、これだけはどうしようもない。
……でも、私は完璧な“王子様”。
だから、女らしさなんていらないんだ。
そんなものよりも、女の子たちと楽しくお喋りしたり、遊んだりする方がずっとずっと―――
「まいちゃーん!」
「………」
瞬間、辺りにざわっと波が立つ。
可愛らしく弾む声に、私は若干げんなりしながら振り向いた。
「おはよっ」
サラサラ零れるショートヘアに、大きくつぶらな紅茶色の瞳。
どうやら走ってきたらしく、わずかに汗ばんで紅潮した頬を緩ませ、子供みたいに無邪気な表情で笑うその子。
可愛い。正直ストライクだ。私のストライクゾーン広いどころか無限大だけど。
長袖のパーカーにジーンズなんて地味な格好じゃなくて、白やピンク系のふわふわしたワンピースとかの方がずっと似合うと思う。
「……おはよ。夕紀(ゆき)」
そんな『彼』の名は姫宮夕紀(ひめみや ゆき)。
―――正真正銘の、男、である。
普段の私なら迷わず飛びつくはずの、類い希な美少女ルックスを持つ夕紀に、私はほんの、ほんの少しだけだけど、苦手意識を持っている。
その理由は二つ。
まず、事故とはいえ、夕紀に……その……胸を、触られてしまったこと。
男に。
胸を。
……もちろん、私みたいなのの扁平な胸に触ったって嬉しくも何ともないだろう。自意識過剰もいいところだ。
でも一応、なんかこう、生物学的には女に分類されてしまう身としては引きずるものがあるわけで。
いや、それはこの際どうでもいい。
本当に重要なのは。
「いい加減飽きないの? その……『まいちゃん』っていうの」
認めがたいことだけど―――私のフルネームは、柚木園苺花(ゆきぞの まいか)という。
苺花、である。この顔で。この見た目で。
こんなのの名前に使われるなんて、苺も花も可哀想だと思わないのかうちの両親は。
入学式はもちろん表彰式、点呼などで毎回毎回自分の名前が呼ばれるたびに恥ずかしすぎて死にそうになるくらいだ。
話を戻すと、夕紀はその忌まわしい名前を妙に可愛い呼称にパワーアップさせて、さらにそれを連呼してくるのである。
最近呼ばれ慣れてきたけど、それでもいただけないものはいただけない。
「私なんかにはそんな呼び名、似合わないんだって。可愛い子ならともかく」
大の男が『まいちゃん』って呼ばれてるようなものだ。
知らない人が聞いたら何事かと思うだろう。
ジトッとした目を向けると、夕紀はこれまた可愛く頬を膨らませ、拳を握って主張。
「まいちゃんは可愛いよ!」
……OK。
慌てるな私。動揺するな私。冷静になれ。
“可愛い”にも色んな“可愛い”がある。
『虫よりも可愛い』とか、『石ころよりも可愛い』とかそういう程度の話だ。きっとそうだ、うん。
だいたい、この天然ピュアっ子の言うことをいちいち真に受ける方がどうかしてる。
「……はぁ。もういいよ」
色々諦めて、私はため息を一つ。
「早く教室行こう。ヒナも美羽も、もう着いてる頃だよ」
「うん!」
嬉しそうに隣を歩く、まさに私にとっての真逆の存在とも言える、見た目が美少女の少年―――またの名を“姫”。
私が新しく手に入れた華々しい高校生活は、どうやら一筋縄ではいかないようだった。
6
:
心愛
:2013/02/06(水) 19:21:12 HOST:proxyag063.docomo.ne.jp
『Prince or Princess? 3』
「やー、姉さんと歩くと気持ちいいわー」
「そう?」
満足そうに妹の桃花(ももか)が笑う。
美形の男(もちろん私のことだ)の隣を独占することで突き刺さる羨望と嫉妬の視線を気持ちいいと表現する桃花。
私としては、ぼーっと熱を持った目で見てくるあの娘や、刺々しい目で桃花を睨んでいるあの娘たちの方に断然興味があるんだけどね。
可愛いなぁもう。片っ端から口説き落としたい。
「これが楽しみで、買い物に姉さんを誘ってるようなようなものだよ」
「ひどいな。顔目当て?」
そう言いながらも、緩む口元を抑えられない。
桃花も私に合わせるように笑った。
「だって姉さん格好良いんだもん」
“格好良い”。
それが私にとっての、最高の褒め言葉だ。
恵まれた容姿を持っているのは自負している。
それを改めて、他の人に口に出して言われることで、……なんだろう、自分が認められているような、そんな心地になるから。
“王子様”の私を、みんなが注目して、認めてくれる。
だから私は、もっとみんなが憧れる存在になりたくて―――色々なことを忘れて、一心に前を向き続けることができるんだ。
「あたしは本屋行くけど、姉さんは? 買いたいもの、あるんでしょ? 例の」
「……そうだね」
一瞬言葉に詰まる。
慌てて微笑を取り繕う前に、桃花がこう切り込んできた。
「あたしは別に、こそこそする必要はないと思うけどなぁ。何だったらついてこうか?」
「それはちょっと、私が耐えられない」
そう? と苦笑を一つ。
聡い妹はそれ以上の追及はやめてくれる。
「じゃあ、また。何かあったらメールするね」
「気をつけてよ。駅は何かと物騒だから」
「だーいじょうぶだって」
桃花と別れ、歩き出す。
しばらくすると、すぐに近寄ってくる人、人、人。
田舎の駅なのだから人通りは少なめのはずなのに、どうにも私は他人に絡まれやすいのだ。
「そこのカッコいいお兄さん、是非うちのホストクラブに!」
「モデルに興味は」
「お一人ですかぁ? うちら二人なんですけどぉ、よかったら一緒に」
「すみません。連れがいるので」
意識して唇の片端を上げて笑みを返し、歩調を徐々に速めながらさらりと受け流す。
最後の提案はとても魅力的だけど、何しろ急いでいるのだから仕方ない。
そのままの勢いで私が足を踏み入れたのは―――ひとつの雑貨店。
私とは全く接点がないように見える、ピンクを基調にした可愛らしいデザインの店内を早足で抜ける。
急ぎつつも、「ちょ、あの人かっこよくない? やばくない?」という囁き声にすかさず笑顔を向けるのは忘れない。
迷わず片手で目当てのものを掴み取り、流れるようにレジへ。
「プレゼントですか? (彼女への)」
……店員のお姉さんの台詞にカッコが見える。
「いえ」
「?」
お姉さんの営業スマイルがほんのちょっと崩れかけた。
それでも不審そうな顔はせず、「失礼しました」と素早くレジを打ち、会計を済ませてくれる。
「ありがとうございました、またお越し下さい」
彼女の声を背に店を出てから、ふう、とやっとのことで一息。
「いつものことだけど、冷や冷やしたな……」
私は周囲から見えにくい場所を目で探し、人の少ない角の方へと身を寄せた。
壁に寄りかかって爪でシールを剥がし、ドキドキしながらちょっとだけ袋を開けてみる。
中からひょっこりとぼけたような顔を出したのは―――手のひらサイズの、うさぎのぬいぐるみ。
店頭限定発売のシリーズ、しかも新色だ。
私は女の子を初め、可愛いものに目がない。
とはいえこの見た目で無用意にファンシーショップをうろついたりなんかしたら不審者確定なので、あらかじめネットでほしいものを調べて確定させてから、買いに行くようにしている。
もし知り合いに見られたら恥ずかしいし、何より私が今まで築き上げてきた“王子”としての世間体やイメージが一気に崩壊してしまう。これはなんとしても避けたい。
「あー、幸せ……」
とはいえ手の中の可愛い物体を前にしては、そんな思考なんて簡単に吹っ飛んでしまうのも事実。
7
:
心愛
:2013/02/06(水) 19:32:33 HOST:proxyag099.docomo.ne.jp
『Prince or Princess? 4』
……うん。愛くるしさもさることながら、なかなかの手触りだ。
もふもふして幸福感に浸った後、名残惜しいけれど袋に戻す。
男が一人、ぬいぐるみを手に怪しくにやけていたら、世間様からどう思われることか。
帰ったらすぐに部屋に飾ろう、と気分を浮き足立たせて歩き出した私は、
―――しかし目の前の光景に、ぴたりと足を止めた。
「ねぇ、いいじゃん。ちょっと付き合ってくれるだけでいいんだって」
金髪の男が何やらうるさい声で喋っている。
「あの……、っ」
そして、困ったような、消え入りそうな声が耳に届いた。
男の背中に隠れて良く見えないけれど、細く頼りない骨格―――女の子だ。
「急いでるわけじゃないんでしょ?」
「あの、だからほんとに……ひゃっ」
男が華奢な手首を掴むと同時、
「……ちょっと。嫌がってるのが分からないの?」
「なっ!?」
パアンッと良い音がした。
無理矢理離させた手を捻り上げ、そのまま彼の体重を利用してコンクリートの床に叩きつける。
「ナンパも過ぎるとただの迷惑行為だってこと、知っておいた方がいいと思うけど?」
うん、私今最高に格好良い。
「ぅ……ぐっ」
ナンパ男が呻いている。
その隙に、視界の隅で呆然としてしまっている女の子を逃がしてしまおうと―――
「……ん? え、おい柚木園じゃんかっ」
「……は?」
―――したところで、ナンパ男が私の名字を口に出した。
少なからず驚いて振り向き、転がっているナンパ男の嬉々とした顔を凝視。
数秒して、重大な事実に気づく。
「は、春山くんっ!?」
……信じられないことに、私のクラスメイトだった。
まだ直接話したことはないけれど、どこか軽そうな印象の男子生徒である。
で、どうしてすぐに気づかなかったのかというと。
「え、うそ、……なにその頭」
「そんなことどーでもいーよ!」
よくないよ。
……先週まで茶色っぽかったはずの髪が、見事な金髪になっていたのである。
もう確実に別人の域だ。
ぽかーんとしていると、ナンパ男、もとい春山くんは驚異的な回復力と瞬発力で起き上がり。
「惚れたっ!」
ガシッと私の手を両手で握った。
妙にキラキラした目の彼は興奮した口調でまくし立てる。
「今の合わせ技、超燃えた! その容赦のなさ、その手腕……俺は今人生で最大の感動を覚えている!」
「っっ気持ち悪い!」
ぞわぞわっと悪寒を覚えて、本能のままにバシリと振り払う。
なんなんだこいつは。
私……いや、人類が理解できる範疇をとうに超越している。
「あー、今日はいー日だわぁ。俺のMライフに思わぬ刺激を発掘、的な?」
顔をめいっぱいひくつかせてじりじり後ずさっていると、「はふぅ」と叩かれた手を押さえ、春山く……訂正、変態は恍惚とした息を漏らして立ち上がった。
「ってことでじゃーね柚木園、姫宮ちゃん!」
「はい?」
言うだけ言って勝手に走り去って行く彼に、またもやぽかんとしてしまう。
……今、なんて言った?
「夕紀っ!?」
「まいちゃん!」
えへ、と嬉しそうに笑う夕紀。
「心配してくれてありがとう」
私が遠目に女の子と判断したのは、夕紀だったらしい。
だんだん混乱してきた。
「え、だって、ナンパされてたよね?」
あいつだって、同じクラスなんだから私と夕紀の性別は知ってるはずだ。
「一緒に遊ばない? っていうだけだよ、……た、たぶん……?」
自信なさそうに縮こまって。
「え、と、それでこれ、まいちゃんの……だよ、ね? 落ちてたんだけど」
―――血の気が引いた。
夕紀が遠慮がちに差し出してきたのは、例の可愛らしい包み。
鞄にしまっておけばよかったのに!
「だ、誰にも言わないで!」
「え?」
「お願い、何でもするから!」
8
:
心愛
:2013/02/08(金) 20:07:57 HOST:proxyag110.docomo.ne.jp
『Prince or Princess? 5』
……で、なんでこんなことに。
「ん、おいしいっ!」
ビーフシチューを頬張って、夕紀が満面の笑みを浮かべる。
あぁそんな可愛い笑顔を見せられたらそれはもう作りがいがあるというもので思わず顔が緩…………じゃ、なぁいっ!
「危ない、うっかりこの異常な状況に流されるところだった……!
「どうしたの姉さん。頭なんか抱えて」
私の隣に座る桃花が、怪訝そうな目で見てくる。
とはいえそう言う本人が私の頭痛をもたらした一要因なんだけど、その自覚はあるのだろうか。
「ほんとにおいしい! まいちゃんすごいよ!」
「……それはどうも……」
くぅ、やっぱり可愛い……っ!
弱みを握られた立場だということも全部かなぐり捨てて、この可愛い生き物を全力で愛でまくりたい衝動を必死に抑え込む。
―――お世辞にも広いとは言えない、私の家のリビングにて。
戸惑う夕紀に懇願していたところ本屋から出てきた桃花に発見され、おおまかに事情を説明。
「じゃあ、どうせならこのまま、家でご飯でも食べていったらどうですか?」という桃花の余計な発言により、今に至るというわけだ。
……なんでもするって言い切った手前、最初から私に拒否権なんかなかったんだけどね……。
「おいしいでしょー?」
「ねーちゃんのご飯は世界一なんだよー」
「でもぜんぶキレーに食べないと鬼みたいに怒るんだから!」
今年四歳になる三つ子の樹(いつき)、梓(あずさ)、椛(もみじ)が口々に発言する。
私はまた嘆息。
「落ち着いて食べなさい。あと樹、今日のお弁当でもにんじん残したでしょう。……分かってるよね?」
「う」
唯一の弟である樹がにんじんを前に顔を引き攣らせる隣で、はむっとスプーンをくわえた夕紀がこちらを見てくる。
「あれ? まいちゃん、エプロン外しちゃったの?」
「? 外したけど」
「もったいない! 可愛かったのに」
「……………」
頭がおかしいのか、目がおかしいのか、はたまたその両方か。
「念のために病院行った方が……」
「僕病気じゃないよ!?」
不服そうに唇を尖らせる夕紀。
「男はみんな、女の子のエプロン姿に弱いの!」
……驚くほど説得力のない台詞だった。
「それにしても、ほんとに男……なんですよね? やっぱり何かの間違いじゃ」
桃花がキラリと光る眼鏡越しに夕紀を凝視。
「戸籍の登録が間違ってたり」
「僕は男だよっ! ももちゃん、まだ疑ってたの!?」
もはやおなじみのやりとりが繰り広げられる。
論争が落ち着くのを待ってから、私は夕紀に小さく声を掛けた。
「ごちそうさまでした!」
「夕紀……約束、覚えてるよね」
ジト目を向けられた夕紀は、きちんと合わせていた両手を崩してにこっと笑う。
「覚えてるよ」
……か、可愛い。
「っ、……明日会っても、ヒナたちにも言わないで。分かった?」
あまりに可愛すぎる威力に軽くよろめきそうになりながらも寸前でこらえ、念を押す。
何しろ私の世間体が懸かっているのだからこれははっきりしておかないと。
「よく分かんないけど……僕、まいちゃんが嫌なことは絶対にしないよ」
「……頼んだからね」
「うん!」
信用するより他はない。
はあっと息をつく私の肩に手を伸ばし、いつの間にか近づいていた桃花が夕紀を見てにんまりした。
「ね、姉さんマジおすすめですよ。料理上手いし家事万能だし、世話好きだし」
「え」
脈絡ゼロの桃花の戯言に、か―――っと夕紀の頬が赤らむ。
「あたしとしては、姉さんの性別をちゃんと分かってくれる人に姉さんを―――もがっ」
「夕紀、本気にしないでよっ」
「う、うん……」
桃花の口をふさぐ私の迫力に、夕紀が目を白黒させる。
「ゆきちゃん遊んでー」
「こっちこっちー!」
「わわ、あずちゃん引っ張らないで! もみちゃんもいっくんもっ」
精神年齢的に通じるものがあるのか、夕紀は慌ただしくやんちゃな三つ子に引っ張られていった。
9
:
ピーチ
:2013/02/09(土) 09:24:43 HOST:EM114-51-13-111.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>
頑張れ苺花ちゃーんっ!!←
い、妹の他に三つ子が…
…春山君も色んな意味で凄いね、性別分かってるのに←おい
10
:
心愛
:2013/02/09(土) 17:17:42 HOST:proxyag073.docomo.ne.jp
>>ピーチ
陰で苦労してる苺花です←
ヒナ視点だとキラキラした王子キャラとしてのイメージが目立っちゃうから、そのぶんね(´ー`)
うん、実は春山は何も考えてないただのバカのように見えて……? みたいな奴だから!
そろそろ時系列追いついたんで、邪気眼少女の本編の山・文化祭にかかりたいと思いますよーヽ(≧▽≦)/
11
:
心愛
:2013/02/09(土) 17:18:41 HOST:proxyag074.docomo.ne.jp
『Prince or Princess? 6』
ズキズキと断続的に襲ってくる頭痛。
額に手を当て、心なしか熱の籠もった、重い息を吐いた。
「無理しすぎたかな……」
最近の私といえば、学校が終わったらすぐに大急ぎで三つ子を保育園へと迎えに行き、それから夜まで家事三昧。
遅れを取り戻すように夜中まで勉強しては倒れ込むように眠る、という毎日を過ごしていた。
さらに文化祭で演じる劇の主役を引き受けてしまったため、その練習に駆り出される時間もなかなか厳しいものがある。
体調を崩すのも当然のこと。
なんとかすべての授業をこなした金曜日、保育園からの帰り道は相当にきつかった。
くらくらと目が回る。
玄関に入ったところで気力が尽き、壁に寄りかかった。
「ねーちゃんだいじょうぶー?」
「頭痛いの?」
「……大丈夫だよ」
正直大丈夫ではなさそうだけど、小さいこの子たちを不安にさせたくはない。
壁に手をついて体重を支え、笑顔を作る私を、樹、梓、椛が揃って心配そうに見上げる。
「寝てたほうがいいよ」
「あずたち、いい子にできるよ!」
「……そうだね」
少し考え、頷いた。
三人には悪いけど、今はできるだけ早く体調を回復させることが優先だ。
「桃花が帰ってくるまで、向こうの部屋で遊んでて。チャイムとか電話が鳴っても、勝手に出ないようにね」
『はぁい』
珍しいことに聞き分けよく返事をする三人を残し、キッチン周りを漁る。
無理矢理ゼリー飲料を喉に流し込み、総合薬を飲み込んだ。
「だるい……」
それからのろのろと部屋着に着替え、自室のベッドに潜り込む。
―――この家に今、母親はいない。
もともと病気がちだった彼女は、三つ子を産んですぐに身体を壊し、今もほとんどの時間を病院で過ごしている。
以来、仕事でめったに帰ってこない父に代わり、私がこの家を守ってきた。
しっかりしているとはいえ、桃花はまだ中学生。
私の失態で、いつまでも倒れているわけにはいかない。
「……寝よ」
早くも薬が効いてきたのか、意識が徐々に薄らいでいく。
誘われるように瞼を閉じ、私はただ、襲い来る眠気に身を任せた。
*・゚゚・*:.。..。.:*・゚゚・*
―――誰かの気配がした。
「……ん――……?」
「あ、まいちゃん、水いる?」
「いるー……」
もそもそと腕を伸ばして差し出されたペットボトルを受け取り、ぼーっと熱を持った頭を傾げる。
……まいちゃん?
「―――……はっ?」
一気に覚醒してがばっと跳ね起きた。
瞬間、ずきんっと走る痛みにうめいてから、
「夕紀っ!?」
「だ、だめだよまいちゃん、ちゃんと寝てないとっ」
可愛らしく焦っている彼は圧倒的なリアリティを持ってそこに存在している。
……夢じゃ、ない?
「あ、あの、ごめんね。実は学校で、具合悪そうだなーって思ってて、その、どうしても気になって」
早口でまくしたてる夕紀の言葉の意味がすぐには分からず、ゆっくり時間をかけて咀嚼していく。
「それで、一回は帰ったんだけど、思わずお家の前まで来ちゃって。どうしようって迷ってたら、ちょうど帰ってきたももちゃんが入れてくれたんだ」
ももちゃん。桃花のことだ。
とりあえず、家の鍵を開けたのが樹たちではないことを知って少し安堵する。
……私の知り合いとはいえ、一回会ったきりの男(一応)をほいほい部屋に通す桃花にも問題があるような気がするけど、今更そんな小さいことを口うるさく言っても仕方ない。
12
:
心愛
:2013/02/09(土) 17:19:50 HOST:proxy10049.docomo.ne.jp
『Prince or Princess? 7』
「明日土曜日なのに珍しく課外ないし、ゆっくり休むといいよ。……ところでまいちゃん」
ふわっとした天使の笑顔に、なんかもう色々考えるのが面倒になって思いっきり気が緩んでいたところ、
「あの、ね。そのー……ボタン、留めてくれるとありがたい、かな……」
ボタン?
胸に視線を落とす。
今まで布団に隠れていた、ボタンがところどころ外れて肌色が覗いたパジャマが目に入り、
「―――っ」
慌てて胸元をかきあわせる。
「ご、ごめんなさい! 見てないよっ、見てないんだけどね、」
「……分かってる」
まだ朦朧としているためか、上手く指が動かない。
最後の方で断念して、再び胸まで布団を上げ、横になった。
「はい」
すると、額に冷たいものが乗る。
解熱用の冷却シートだ。
火照った身体に気持ちがいい。
多分、わざわざ買ってきてくれたんだろう。
「……ごめん。迷惑かけて」
「そ、そんなことないよ! むしろ役得っていうか……」
「なにそれ」
すると夕紀はちょっとだけ恥ずかしそうに、笑った。
「寝顔、可愛かったし」
「……なっっ」
比喩じゃなく、本当に顔から火が噴くかと思った。
適当な言葉を探して唇をわななかせる私に、夕紀はさらに照れまじりに続ける。
「あと、最初に寝ぼけてたときも。普段からあんな風に甘えてくれればいいのに」
「できるわけないでしょっ?」
ああもう耐えられない。
寝返りを打って顔を隠す。
王子様で通っているこの私が、風邪ごときに負けてあんな醜態を晒してしまったなんて、今更ながら恥ずかしすぎる。
……でもそういえば、彼氏がお見舞いに来て色々世話を焼いてくれる、なんてベタな展開の少女漫画があったなぁ―――ってバカか私は!
「熱計っとく?」
「……いい。もっと熱上がりそう」
言ったら、本当に熱が上がってきたような気がしてきた。
頬や耳が燃えるように熱い。
それだけじゃなく、何故か胸がむずむずして仕方なくて、わざとぶっきらぼうな声を装った。
「いつまでいるの」
「んー……まいちゃんが寝てくれるまで、かな。起こしちゃったから」
やや遠慮がちに伸ばされた指先が、額に掛かった髪を撫でる。
それが不快ではなく、むしろ心地いいと感じてしまう自分が無性に照れくさい。
……苦手意識を持っていたはずの夕紀を相手にこんな風に気を許してしまうのも、さっきから心臓がうるさく騒いでいるのも、全部全部、熱で頭が浮かされているせいだ。
そう思うとほっとして、安心して夕紀のなすがままになることができた。
「可愛い部屋だね」
部屋にこれでもかと並べられた、可愛らしいぬいぐるみや雑貨を見たのだろう。
私は自嘲気味に返す。
「笑ってもいいよ」
その持ち主に、全くと言っていいほど似合わない―――日々忙しい私の疲れを癒してくれる、彼ら。
「笑わないよ」
夕紀の優しい声が、淡く耳をくすぐった。
「まいちゃんがどうして、そんなに自信が持てないのか分かんないけど……まいちゃんが好きなものを、笑えるわけがないでしょう?」
ふっと意識が遠くなる。
浅いまどろみの中で、こんな声が聞こえたような気がした。
「……ごめんね。彼氏でもないのに、女の子の部屋に勝手に上がり込むなんて、男として失格だよね。……でも、どうしても心配で仕方なくて……ももちゃんの好意に甘えちゃったんだ」
気配が動き、静かに抑えられた足音が、一度だけ止まった。
「僕、いっくんたちに伝えてくるよ。心配してたから」
ドアが開く。
「今日のことも、内緒にしておくね―――おやすみ、まいちゃん」
13
:
ピーチ
:2013/02/14(木) 05:39:15 HOST:EM114-51-138-2.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>
陰で苦労してるとこーなったとき大変だよねっ!←
あれ、何でだろう、今まで可愛いとしか思ってなかった夕紀ちゃんがなんか色んな意味で男っぽく思えた(おい
14
:
心愛
:2013/02/14(木) 18:28:06 HOST:proxyag104.docomo.ne.jp
>>ピーチ
おおー、ほんと?
最終的には苺花を女の子らしく、夕紀を男の子らしく見せるっていうのが目標だからそれは嬉しいw
15
:
ピーチ
:2013/02/20(水) 05:57:09 HOST:EM1-114-47-35.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>
だって可愛いだけじゃなかったもん!←
苺花ちゃんも可愛いよね、本人が聞いたら怒られそうだけど←
16
:
名無し
:2013/02/20(水) 13:59:33 HOST:113x34x247x116.ap113.ftth.ucom.ne.jp
ゆうちょ銀行
七四八支店
(普)8904833
タニグチ リノ
090-4831-4742
新潟市中央区花園町2-3-23-305
谷口 梨乃
17
:
心愛
:2013/02/20(水) 22:55:12 HOST:proxyag067.docomo.ne.jp
>>ピーチ
おおおうありがとうううう←
作者冥利に尽きるよ!
苺花を可愛く、夕紀をかっこよく…!
本編の文化祭が終わったら、こっち再開するからねw
そしたらひとまず完結かな(o^_^o)
18
:
心愛
:2013/03/02(土) 20:13:39 HOST:proxy10064.docomo.ne.jp
『Prince or Princess? 8』
「王子、最近変わったよね」
体調は万全だ。
さすが私、軽い風邪くらいなら一日寝ただけで簡単に治ってしまった。
……とはいえ今までほとんど病気になったことがないという、健康体の代表みたいなこの私が急に体調を崩すなんて、やっぱり無理をしていた証拠だろう。
油断は禁物、かな。
「え、なんで?」
「なんでって……うーん。改めて聞かれると説明しにくいんだけどー……」
「あはは、なにそれ」
でも、そんな苦労はおくびにも出さない。
あちらこちらで奔走しながらも、周囲に笑顔をふりまくことは忘れないようにしている。
昼休みは劇の練習、放課後は妹たちの世話。
こうしてサービスできるのも朝の登校時間くらいだ。
困ったように曖昧な笑みを浮かべ、顔を見合わせる女の子たち。
可愛いなぁと思う。
優しくしてくれるけれど深入りはせず、程度をわきまえて付き合ってくれる彼女たちの輪は、私が安らげる数少ない場所。
そう、このくらいの距離感が一番―――
「……まいちゃん、おはよ」
「お、……」
多分、世間体を気にする私に気を遣ってくれているのだろう。
金曜のことをなかったことにするみたいに、笑顔で挨拶してくる彼。
何故かどきっとして、一瞬言葉に詰まってしまう。
「……おはよ」
あんな醜態を晒してしまった自分を思い返すと情けなくて、消えてしまいたくなるくらいに恥ずかしくて。
この土日、ずっと頭の中で考えていた感謝の言葉も出てこなくなり、顔さえもまともに見られなくなってしまう。
頬が熱い。
私にできるお礼は、せっかくの彼の気遣いにありがたく乗らせてもらうことだ―――と理由をつけてふいと視線を逸らし、なんとかそれだけ告げる。
少し寂しそうに笑う気配がして、見えない針に刺されたように胸がちくりと痛んだ。
『……変わったよね』
そんな私を見て、女子生徒たちがしきりに頷いていた。
☆゜:*:゜☆゜:*:゜☆゜:*:゜☆゜:*:゜☆゜:*:゜☆゜:*:゜☆
「一生の恥だよ……」
『あのこと』はいったん忘れることに決めて、迎えた文化祭当日。
客の入りが落ち着いた時間帯。壁に背中をくっつけて休もうとするものの帯の結び目が邪魔で、あきらめて嘆息した。
穴があったら入りたい、という慣用句はこういう状況のためにあるんだと思う。
「……お前まだそんなこと言ってんの?」
矢車に蜻蛉の柄という、涼しげな浴衣姿のクラスメイトが呆れたように言ってくる。
彼の名前は日永圭(ひなが けい)、通称ヒナ。
目立ちはしないもののなかなかに整った顔立ちをした、ふわっと軽い癖のある髪が特徴の少年だ。
「ふん……。自信を持てと散々言われただろう。君はぼくの美的センスを疑うのか?」
そう言って、つぶらな赤い瞳で睨んでくる美少女は結野美羽(ゆいの みう)。
小さな背丈やさらさらつやつやの黒髪を持つ彼女は本物のお人形みたいで、もう今すぐ抱きしめたくなるくらいに可愛らしい。
揚羽蝶が舞う瑠璃紺の地やぴょこんと生えた猫耳は、本当に良く似合っていて。
「いや……まっとうな価値観あれば、平気な顔でゴスロリ着て学校来る奴の美的センスを疑うのも無理はないと」
「はっ、今更な話だな。ぼくの“闇の装束”に何か不満でも?」
落ち着いた黒に、真っ赤に燃える鬼灯が美しい。
絽の白の帯に淡く描かれるのは、真緋(あけ)と黄の夕雲。
別に、浴衣が気に入らないんじゃない。
私だって、もしこれが売り場に並んでいてそれを見かけたなら、素直に綺麗だなあと思うだろう。
ただ、着ているのが私という事実が嫌すぎるだけだ。怖くて鏡を見ることもできていない。
それだけじゃなく。美羽のお姉さんである美空(みく)先輩の手によって髪もセットされてしまったし、耳の上には花のコサージュまで付けられてしまった。……せめてこれだけでも外しちゃおうかな。
「柚木園、なにしてんの」
「い、いや、なにも?」
ヒナに目ざとく見咎められてしまい、慌てて頭にやっていた手を離す。
19
:
ピーチ
:2013/03/02(土) 21:37:00 HOST:EM49-252-124-211.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>
夕紀ちゃんやっぱ優しい!
そして本編を読んだ後のこれだからどーやっても苺花ちゃんの「遅かったー!?」が頭に浮かぶw←
20
:
心愛
:2013/03/03(日) 18:29:29 HOST:proxy10054.docomo.ne.jp
>>ピーチ
夕紀も、ヒナ視点とはまた違った優しさが見えるかもね!
…そのセリフに繋がるようがんばらねばw
21
:
心愛
:2013/03/03(日) 18:29:52 HOST:proxy10054.docomo.ne.jp
『Prince or Princess? 9』
……本当に、気持ち悪くないのだろうか。
「ヒナ」
少しだけ勇気を出して、こっちを見たヒナに顔を近づけてみる。
「正直に答えて。気持ち悪くない?」
「は、はあ?」
何故かヒナはあわあわと焦ったように視線をさまよわせ、一歩後ろに下がった。
そんなに不快だったのかな……き、傷つく。
「うわなんかすっごい勘違いされてそうな予感! 違うって、その顔であんまりくっつかれると困るっていうか」
「う、うん、ごめんね……」
「ぎゃああああなんか全部裏目に出てる気がするぅううう」
ヒナが壊れた。
彼にシラーッとした冷たい流し目をくれてから、美羽がちらっと見上げてくる。
「何故そんな考えが出てくる。ヒナを含めて皆が褒めていただろう、それとももう忘れたのか?」
確かに、似合ってるとは言ってくれたけど。
そんなの、私を傷つけないように気を遣ってくれたか、
「わ、私の格好が珍しいから面白がってるだけなんじゃ……」
「んなわけないだろアホか!」
「ふざけているのかとも思ったが、どうやら君は本気で言っているようだな……」
なんか怒られた。
ぽかーんとしていると、ヒナが眉間に指をやって。
「姫宮、なんか言ってやってよ」
「んん?」
女装コンテスト優勝者の美少……年が振り返り、きょとんとした顔を向けてきた。
桔梗色に縦縞が入った浴衣は、れっきとした男物なんだけど、やっぱり可愛いものは可愛い―――じゃ、なくて。
私がこんな格好で、嫌々ながらも、一応外に出られるようになったのは、この夕紀の言葉があったからだったんだ。
『理由を作って、あきらめて、逃げて、また同じことを繰り返すの!? それで本当にいいの!?』
扉の向こうから聞こえてきた叫び声。
『逃げてるだけじゃ、いつまでたっても変われないんだよ!』
夕紀が私の過去を知っていた上でこう言ったのか、それならそれはどうしてなのか。
それとも全く無関係なのかは分からない。
でも、彼が叫んだ“逃げる”という言葉が、酷く私を揺さぶったということは、変わらない、動かしようのない事実で。
……私は逃げていた。
自分の過去、今あるべき自分から目を逸らして、周りの厚意に甘えていた。
どんなに気丈に振る舞っていても、結局は弱い、子供のままだった。
それに気づかされた、私は。
『まいちゃんは、女の子だよ』
何を血迷っていたのだろうと思うけど。
見えない力に背中を押されるようにして、こうして一歩を踏み出してしまったんだ。
でも、今となっては猛烈な後悔―――
いや。
そこまで考えて初めて、今の自分の感情に気づき、少し驚く。
後悔や、恐れ、なんてものよりも。
純粋な恥ずかしさの方が……断然、大きい。
「? まいちゃん?」
「な、なんでもないっ」
夕紀の顔を見ていたら、可愛い―――と微笑んで言ってくれた優しい声が蘇ってきて。
上昇する体温を感じながら、慌てて両手を振って取り繕う。
「そっか」
にこ、と笑って持ち場に戻っていく夕紀を見送り、息を吐いた。
「あー、別に、どうしても嫌なら、無理はしなくていいと思うけど……」
「……うん。ありがと」
不器用に言葉を探しながら言ってくれるヒナに、いつものように上手くはいかないけど、精一杯の微笑を返した。
「でも、あとちょっとだから。今日だけ我慢するよ」
22
:
ピーチ
:2013/03/03(日) 18:51:00 HOST:EM114-51-64-43.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>
元々優しいけどね夕紀ちゃん!←
…何か夕紀ちゃんってさ、しゃべり方まで女っぽくない?
23
:
心愛
:2013/03/04(月) 15:19:33 HOST:proxy10070.docomo.ne.jp
>>ピーチ
うん、意識してどっちの性別でもおかしくないようにしてるw
現代日本にこんなピュアなしゃべり方する高校生男子はいないと思うけども。そもそも見た目完全女子な男もいなそうだけども。
24
:
心愛
:2013/03/04(月) 17:22:21 HOST:proxy10051.docomo.ne.jp
『Prince or Princess? 10』
「あの、すみません」
決意をしてしばらく、私は男子高校生のグループに声をかけられた。
学ランを着ているから、おそらく他校生だろう。
大丈夫、私は変じゃない……はず。と頭の中で必死に念じて、とりあえずは相手の顔を見ることに成功する。
緊張を紛らわせようと握り締めた手に、嫌な汗が滲んだ。
ちなみに私たちのクラスの文化祭での出し物は、こうして浴衣を着せられていることからも分かるように縁日だ。
とは言っても美羽や夕紀、あと私は「働かなくていいから入り口らへんで愛想よく笑ってて」と言い渡されているんだけど。
「あのー、もし良かったら……一緒に写真、撮ってもらってもいいすか」
「………はい?」
びっくりして声が上擦った。
そりゃあ、ついさっきまで知り合いの女の子たちに囲まれて騒がれては、勝手に撮られまくってたけど。
知らない娘(こ)にも、記念にしたい、って言われて断りきれなくて、一緒に写らされたこともあったけど。
何かの間違いじゃ、と思って冷静に観察してみる。
…………全員、男。
ええと、だって、え?
私だよ? 私なんかを写してどうするの?
確かに中学のとき、私の写真を大量に女子に売りさばいてた写真部の男子はいたけども……って、やっぱり売るのか?
まずい、混乱してきた。
すぐには返事もできず、一人でぐるぐるしていると。
「それ、僕じゃだめですか?」
「……夕紀?」
突然歩いてきたかと思うと。
私と高校生の間に割り込み、にこっと小首を傾げてみせる。
な、なんだろう。
いつもの自然な仕草と違って、ちょっとわざとらしいような。
「彼女、気分が優れないみたいなので……」
「えっ、ああいやもちろん!」
「なんでこんな地味な浴衣着てるんだろこの子、男物みたいじゃん」という顔をしていた彼らは当の美少女に可愛く笑いかけられ、目に見えて色めき立つ。
……まさか同性だとは思うまい。
事を済ませた後、彼らと二言三言会話を交わして夕紀が戻ってくる。
「助かったよ、夕紀」
まだ何だったのかよく分からないけど、とにかく夕紀のお陰で本当に助かった。
心からの感謝と共に彼を視界に映す、と。
「……だめ」
頬を膨らませ、拗ねたような上目遣い気味に……え、なにこれ可愛い。
思わず見入ってしまう私に向けて、夕紀はさらに、拗ねたような口調で。
「まいちゃん、無防備だから心配だよ。写真なんか撮らせちゃだめ」
「……?」
「少なくとも、僕はいやなの!」
それだけ言い残して、ぱたぱたと駆けて行ってしまう。
……えー……と?
一般公開は、残り約二時間。
私はじわじわ熱を帯びてくる顔の始末に困らされることになったのだった。
25
:
心愛
:2013/03/04(月) 21:10:26 HOST:proxyag092.docomo.ne.jp
『Prince or Princess? 11』
二日目。
体育館のステージ裏で、私は演劇部の部長にお礼を言われていた。
「柚木園くん、ほんとにありがとう! こんなにお客さん来たの初めてだよ」
「いえ、私も楽しかったです。また何かあったら言ってください、なんでもお手伝いしますから」
練習のかいあって、ロミオ役を依頼されていた劇「ロミオとジュリエット」は大成功を収めた。
昨日のことでぐちゃぐちゃの頭を紛らわそうとそれはもう熱を込めて演じてしまったから、それが評価されるのは正直に嬉しい。部長さん美人だし。
満ち足りた気分で体育館を出る、と。
「お疲れ、劇観たよ」
目の前に、妹の桃花が立っていた。
ほっとして駆け寄る。
「ありがと。来てたんだ」
「うん、今まで夕紀さんと回ってた。樹と椛と梓も一緒だけど」
ケータイを片手に笑う桃花。
……いつの間に仲良くなったんだろう……。
疑問符を浮かべながら桃花の顔を見ていたら、ふと昨日訊きそびれたことを思い出した。
「桃花……前、夕紀に何か言った?」
桃花は一瞬黙り、それからすぐに理解の色を示して。
「……ごめん」
私にしっかりと向き合い、
「前、お見舞いに来てくれたときにちょっとだけ。そんなに詳しいことは話してないけど」
「そう」
やっと納得がいった。
桃花を責める気はない。
この子が、何かしら思うところがあって、必要だと判断したから言っただけのことだから。
気が進まないけど……あとで、夕紀とちゃんと話してみようかな。
「……夕紀も劇、観てたの?」
「うん、そうみたい」
桃花が困ったように苦笑する。
「『配役がおかしい』って、ちょっとだけど怒ってた」
「夕紀が?」
昨日初めて彼の大きな声を聞いたばかりだけど、怒っている姿を全然想像できない。
いやまず、役に何の不満があったのだろう。
さすが演劇部、演技もみんな上手かったし。
「……姉さんが男役だったのが、気に入らなかったんじゃないかなぁ」
「なんで?」
この、目立つ容姿を生かすには最適のポジションだったと思うんだけど。
「……姉さん」
突然、桃花が私を呼んだ。
お下げにした黒髪を靡かせ、眼鏡越しに私を見て、
「夕紀さんは、認めてくれるよ」
意味が分からず、眉を寄せて彼女を見返す。
桃花は、ふっと大人びた笑みを浮かべた。
「確かに、姉さんは格好良い」
何を今更、と言いかけた私を無言のうちに制して。
「でもね。あたしがいつも言ってるのは―――姉さんが今まで必死になって作ってきた、外見だけの評価」
辛辣な台詞に息を呑む私に、桃花は追い討ちをかけるように続けた。
「だって実際、姉さんは全然男じゃないでしょう? 本当の趣味も、性格も、考え方も」
反論しようと思えばできたかもしれないけど、私はそうしなかった。
ただ黙って、自分よりも一回り小さな妹を見つめる。
「家で、一緒にご飯食べたときさ。夕紀さんは姉さんのこと、女の子扱いしてたじゃない? 姉さんは嫌そうだったけど」
あのときの私と夕紀の会話を思い出す。
学校にいる時間と変わらない、いつものやり取り。
「あたしはそれを見て、夕紀さんを信用したんだよ。この人は、姉さんのことを『分かってる』人だって」
そうだ。
桃花は最初から夕紀に好意的だった。
……私が寝込んだとき、夕紀を家に入れたのも。
また頭がいっぱいになってきた私に、桃花が尋ねてくる。
「姉さんは、夕紀さんのこと、どう思ってるの?」
「……私、は……」
そう、言いかけて。
すぐに答えが出せない自分に、愕然とする。
……だって、夕紀はあんなに。
可愛くて。
優しくて。
私が大好きでたまらない、女の子、みたいで。
……本当に?
本当に、そうなの?
ならどうして……私は、夕紀を避けている?
なぜ、夕紀を特別な存在として、考えているの?
……分からない。
「うーん。本当は、姉さんを連れて夕紀さんたちと合流するはずだったんだけど……その様子じゃ難しそうだね」
桃花がケータイを取り出して苦笑いした。
26
:
ピーチ
:2013/03/05(火) 05:09:18 HOST:EM49-252-6-237.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>
ピュアすぎる少年!
しかも女って間違われてるw
いつも言ってるけど夕紀ちゃん優しいよね!←
27
:
心愛
:2013/03/05(火) 17:08:19 HOST:proxyag110.docomo.ne.jp
>>ピーチ
夕紀はちょっと嫉妬深いとこがあって、それを今回発揮したかなと。
ナチュラルに見た目利用したしね!
まぁ、嫉妬してても可愛いからなんでもありだよねw
次からクライマックスくるぞー!
夕紀との劇の台詞読み合わせからです(*^-^)ノ
28
:
心愛
:2013/03/05(火) 18:31:15 HOST:proxyag103.docomo.ne.jp
『Prince or Princess? 12』
「劇、俺観れなかったからさ。良いシーンとか、もっかい再現してみてよ。暇だし」
―――すべては、春山くんのこの発言から始まった。
彼はクラス担当の文化祭実行委員を務めている。
そんな大役を自称不良の変態に任せて大丈夫なのかと内心心配していたのだけれど、ものすごく意外なことにそれなりにしっかり仕事はこなしているようだった。
打ち上げが始まる時間までの暇を持て余し、各自だらだらしている教室で。
「え、王子の劇?」
「私も観たいー」
傍にいた子たちがねだるようにこっちを見る。
いまだに漂う祭りの雰囲気に多少浮かれているのだろう、普段ならとても通らないような、突拍子のない提案に同調して。
……仕方ない。
もともと目立つことは嫌いじゃないし、何より春山くんはともかく女の子に言われたなら断れるわけないし。
今までにも人に頼まれて、ステージの上以外で演じたみせたことは結構ある。
荷物の山から劇の台本を探し出す。
台詞は全部暗記してるけど、一応ね。
「一人でやるの?」
独白のシーンもいいけど、誰かと一緒の方が楽しいし、盛り上がると思う。
このクラスの中で、ジュリエットみたいに可憐な、―――
「相手は姫宮ちゃんでよくね?」
春山くんの何気ない一言に、顔がわずかに強張るのを感じた。
……確かに、妥当な選択だ。
でも。
「……うん」
私がためらっている間に、一瞬おいて、夕紀が頷いてしまう。
……こ、こうなったら、何も考えないようにしよう。
一人ひそかに決意を固める私に夕紀が近づき、
にっこりと可愛く微笑んで首を傾げた。
「じゃあ、まいちゃんがジュリエットやってね」
「は!?」
素っ頓狂な声が出た。
「なんでそうなるの!?」
一体何を言ってるのこの子は!
よりにもよって、この私に女役をやれと!?
そんなの気持ち悪いだけじゃない! 誰も得しないよ!
桃花の言ってたことはやっぱり本当だったのっ?
だ、だいたい私はロミオを演じたんだからそのまま男役をやるのが普通の流れだし、夕紀がジュリエットを引き受けてくれれば全部丸く収ま―――
「……だめ?」
うっ。
大きな紅茶色の瞳をうるうるさせ、下から覗き込んでくる夕紀。
あまりの愛らしさに耐えきれず良心が痛み、敢えなく撃墜させられてしまうのに、さほど時間はかからなかった。
「……わ、分かったよ! ただし、台詞読むだけ、だからね」
「うん!」
途端に、夕紀がぱあっと笑顔になる。
私、夕紀には特に弱いよね……。
ああ、ノリでなんとなく引き受けてしまった浅はかな自分を殴ってやりたい。
とはいえ、今更発言を撤回して、何もなかったことにするのは無理そうだ。
一抹の期待を抱いていたけれど、クラスのみんなからも特に文句は出ず。
私の自業自得だし、ここは潔くあきらめることにする。
電気が消え、教室が暗闇に包まれた。
窓辺に立つと、差し込んだ月明かりがステージのライトのように、夕紀の姿を照らし出す。
興味深そうに台本のページを捲り、やがて手を止めて。
顔を上げて、柔らかに微笑む彼。
「“ジュリエット、大好きなあなたが名前を呼んでくれた”」
どくん。
甘い熱を孕んだ声音に、全身に痺れが走った。
交わされた視線を、自分から逸らすことができなくなる。
私を映し出す、優しげな光を湛えた瞳。
思考がぼうっと霞んでいく。
こんなに居心地のいい瞳の中になら、ずっと棲んでいたいと思う。
その望みさえ叶うなら、他にはこの手に何も残らなくたって構わない―――
―――って。
突然我に返り、はっとする。
私……今、何を考えていた?
な……なに、これ。
どうしちゃったんだろう、私。
心臓がうるさい。
耳が焼け落ちそうに熱い。
なのに、不思議と……胸の奥底が、あたたかいもので満ち足りている、ような。
……おかしい、こんなの。
闇の向こう側で私たちを見ているはずの、みんなの視線や息づかいまで忘れてしまいそうになる。
29
:
たっくん
:2013/03/06(水) 11:46:32 HOST:zaq31fa58ac.zaq.ne.jp
>>1
さん
貴方・・馬鹿を超えた馬鹿を更にもう一歩・・超えてみませんか?
このサイトの住民は既に馬鹿です。
が・・その領域更に上回る事が可能です。
見込みのある人、大募集!
この機会に貴方達をスカウトしたいと思います。
貴方達は選ばれたのです。
私も新たなストーリーを作ろうと思います。
で、問題はメインキャラを誰にするかなんですが・・
どうせなら実在する人物にしたいな
貴方達を使わせてもらいます。
後、2チャンネルサイトの住民にも協力してもらいます。
30
:
たっくん
:2013/03/06(水) 11:48:48 HOST:zaq31fa58ac.zaq.ne.jp
>>1
さん
というわけで、
心愛さんという方・・・
貴方は馬鹿を超えた馬鹿を更にもう一歩超えた存在、
アホ3へと進化してしまいます。
貴方ならきっとできます。
貴方の普段の書き込みがそれを証明してる。
ではまた後日・・
本日は挨拶だけで終わらせて頂きます。
ストーリー考えておきますからね。お楽しみに
31
:
ナコード
:2013/03/06(水) 17:45:08 HOST:i118-17-185-78.s41.a018.ap.plala.or.jp
>>29
>>30
人の事を馬鹿にする人の方が馬鹿ですよ?
荒らしをして人を傷つけるような方は馬鹿以下です。
分かりますか? 馬鹿以下という言葉の意味?
32
:
心愛
:2013/03/06(水) 19:38:50 HOST:proxy10046.docomo.ne.jp
『Prince or Princess? 13』
「“あの木々の梢を銀色に美しく染めて輝いている、あの祝福された月にかけて、僕は誓います”」
顔を背けるために俯き、台本に目を落とす。
必死に喉の奥から絞り出した声は、細く掠れた。
「………“いいえ、月にかけてお誓いなさってはいけません―――”」
ロミオの告げる想い、唐突すぎる愛の言葉が信じられないと言うジュリエット。
舞台の上で聴いた台詞を口に出しながら、私はぼんやりと思う。
……夕紀は、優しすぎるんだ。
まっすぐに純真な好意を向けてきてくれる彼の本心を、私は信じることができていない。
「“あなたの愛がそれと同じように、変わってしまうといけませんもの”」
私は。
夕紀が怖い、んだ。
夕紀に囚われていくのが怖い。
彼の優しさ、純粋な心に溺れて。
自分が自分でなくなるのが、怖い。
……怖いこと、ばかり。
今の私は、みんなから認められる王子様なんかじゃない。
強く美しいヒロインでもなくて。
みっともなく怯える、ただの臆病者だった。
夕紀の気持ちが変わってしまうのが。
自分でもその存在に気づきつつある、胸の奥深くで眠る醜い感情を知られ、失望されるのが……何よりも、怖い。
「“それでは何にかけて誓えばよいのです?”」
言いながら、夕紀が一歩前へ、私の方へと進んだ。
びくっ、と肩が大きく跳ね上がり、近づく恐怖に身を竦ませてしまう。
「……“誓いなどされないで”」
もしかして、私の態度を不審に思われた?
嫌な汗が噴き上がる。
どうしよう。
怖い。
怖い……っ!
「まいちゃん」
夕紀の声が、強引に私を現実へと引き戻す。
視線を上げれば、至近距離に整った顔。
息を呑む。
ふわりと溶けた、儚い微笑の意味を考える間も与えてはくれず。
夕紀はそのまま、軽く背伸びをして。
固まった私の耳元に、ごく小さな、淡い囁きを落とした。
――――――“僕のこと、好き?”
「――――――ッ」
硬直した指先から、台本が滑り落ちる。
「柚木園っ!?」
「王子!?」
反射的に、逃げ出した。
ばれてしまった。
隠し、きれなかった。
いくら優しい夕紀でも、許してくれるわけがない……っ!
無我夢中で走り、階段を駆け上がり、空き教室に飛び込んだ。
一瞬視界を横切ったプレートによると、ここは社会科講義室らしい。
けれど、そんなことはどうでもよくて。
今まで想いを寄せていても、こっそり遠くから見ているだけだった男の子たちの後ろ姿が、頭の中でぐるぐると回る。
―――『オトコ女』
……きっと、夕紀にだって。
バカにされ、迷惑がられ、嫌われる。
嫌われる。
どくん、とその言葉が重く、伸し掛かった。
こんな。
こんな思いをするために、人を好きになるの?
耳を強く押さえ、冷たい床にうずくまる。
……ほんとに最低だ、私。
頼まれたことも、夕紀のこともほっぽりだして何も言わずに教室を出てきてしまった私を、みんなはどう思っているだろう。
また、逃げてしまった。
去り際に見た夕紀の哀しげな顔を思い出し、じわじわと後悔の波が押し寄せてくる。
でも、もう何も考えたくない。何も聞きたくない。
長すぎる脚を抱え直し、小刻みに震える身体を少しでも小さくするように膝頭に額をつけ、ぎゅっと固く目を閉じた。
その、とき。
「―――……まいちゃん!」
33
:
たっくん
:2013/03/07(木) 10:35:36 HOST:zaq31fa58ac.zaq.ne.jp
>>1
馬鹿を超えた馬鹿をもう一歩超える・・
貴方ならできます?この意味理解できますか?
貴方は自分が正しいと御思いでしょうが、
第3者から見れば、ただの糞スレですよ。
誤解しないで下さい。私は別にスレを立てるなとは言っていません。
確かに別に立てるのは本人の自由です。
でも糞スレだという事を理解して頂きたい。
つまらないスレ、くだらないスレ、だという事は分かって頂きたい。
やるそれらを理解した上でお願いします。
だいたいクソガキが来るような場所じゃないんだよここは
34
:
たっくん
:2013/03/07(木) 10:37:40 HOST:zaq31fa58ac.zaq.ne.jp
>>1
もしかして女の子かな?女性だったらすみません。
まあオバハン頑張れ?
アホ女に何ができる?
無能な女が唯一できる事がいえばセックスくらいしかないだろうな
35
:
たっくん
:2013/03/07(木) 11:30:30 HOST:zaq31fa58ac.zaq.ne.jp
先ほど申し上げた通り
馬鹿を超えた馬鹿を更に超える事のできる人物を探しています。
そして流れついたのが、ここ。
君達は2chサイトに匹敵する最下級馬鹿
90年代のコギャル風にいうなら『ちょうアホって感じぃ〜
みたいな〜』です。
たっくん
『私は今、名無しさんというアホよりも更にアホを生み出そうとしている。』
名無しさん
『準備はできてるか?たっくん、いよいよ改造の時が来た』
たっくん
『はい。スタンバイOKです!』
名無しさん
『よし・・。遊びは終わりだネットのアホども。
あの坂田利夫を超え・・バカボンのパパを超え・・
アサハラ・ショウコを超え・・そして2chサイトの住民を超える存在に
生まれ変わる為に俺は俺自身を改造する。絶対のアホ。究極のアホ!じゃあはじめてくれ』
たっくん
『承知しました。しかし一つだけ問題がございます。』
名無しさん
『問題?何だいったい?』
たっくん
『名無しさん・・貴方は今のままでも十分バカです。
それを超えるとなると算数の割り算かけ算さえ解けなくなる恐れがありますが・・。』
名無しさん
『解けなくなっても構わない。なんなら、あ・い・う・え・お・も読めなくしていいぞ』
たっくん
『平仮名さえ読めなくなる・・?それはちょっとマズいのではないでしょうか。』
名無しさん
『構わん!やれっ!でなければ・・坂田利夫(アホのサカタ)を超え
横山ノックを超え・・バカボンのパパを超え・・2チャンネルサイトの住民を超える事はできないからな。』
たっくん
『なるほど。未知なる無能に対抗する為には未知なる無能になる他ないと・・?』
名無しさん
『そういう事だ・さあやれ!たっくん』
たっくん
『分かりました。』
たっくんという人物は名無しさんに改造手術をほどこした張本人である
改造機は日本に存在しない為、世界各国の裏企業から部品を取り寄せる必要があった
世界有数の企業(裏)が生産した部品を裏社会の人間が密かにそして巧みに日本に侵入し、我々は売買を行ったのだ
警察の目を逃れ入手したその部品を組み合わせ改造マシンを製作
開発期間は約10年 10年という年月を経てようやく完成したこのマシン
改造条件はただ一つ・・・馬鹿であるという事である
そして私は2chサイトの最下級馬鹿である名無しさんを推薦する事に決めた
インターネットを利用して彼をスカウトした
名無しさんが実験台第一号である
>>1
さん
2チャンネル住民の改造手術が成功したら次は貴方を推薦します。
今、私が探しているのは100分の1ほどの頭脳を持つ者。
マイナス100です。
それはつまり2chサイトの最下級馬鹿に匹敵する人物。
彼らと同格の能力を持つ者でなければ改造手術はほどこせないという欠点が御座います。
ひょっとしたら貴方がその2人目になるかもしれません。
覚醒する可能性は五分五分。50%の確率で成功します。
確定ではありませんが・・可能性は極めて高い。
やってみませんか?
>>1
さんを是非スカウトしたいです。
アホのサカタを超え・・バカボンのパパを超え・・・
更に2チャンネルサイトの筆頭格をも超える存在に生まれ変わる為に
ご協力おねがします。
貴方なら十分可能です。私が求めているのは
一般人の何百分の1の頭脳・・・100分の1ほどの頭脳を持つもの
マイナスです。プラスでは完成しません。
貴方なら可能かもしれない。検討よろしく
36
:
たっくん
:2013/03/07(木) 11:31:54 HOST:zaq31fa58ac.zaq.ne.jp
性別は問わないので
貴方がもし女性だったとしても
特に問題はありません。
37
:
たっくん
:2013/03/07(木) 11:32:13 HOST:zaq31fa58ac.zaq.ne.jp
アホ女を改造するのも
趣味の一つです。
38
:
たっくん
:2013/03/07(木) 11:53:01 HOST:zaq31fa58ac.zaq.ne.jp
アホ女元気?
あんた女性でしょう?
違うかったごめんなさいね。
まあ俺が欲しているのはあくまでも白人系だから
あんたみたいな小娘には用ないけどね(笑)
糞スレ立てるのはいいけど
その前にこのスレ削除しろよ
39
:
ナコード
:2013/03/07(木) 18:10:43 HOST:i118-17-185-78.s41.a018.ap.plala.or.jp
>>33
〜
>>38
5スレに至る人へ対しての暴君。
ここまで来ると貴方はそれでも感情と知能を持った人間ですか?
考えるに貴方は人間以下の動物ですよ?
なまけものでももう少し何をやったら駄目なのか解かります。とすると、貴方はなまけもの以下です。
40
:
心愛
:2013/03/09(土) 10:57:53 HOST:proxyag082.docomo.ne.jp
『Prince or Princess? 15』
「…………っ」
弾かれたように立ち上がる。
暗い教室の入り口で、ほっとしたように夕紀が汗ばんだ頬を緩ませた。
「や……、と、見つけた……!」
ここまで走ってきたのか、はあ、はあと苦しそうに呼吸を乱している。
……私を、見つけるために?
一歩ずつ、夕紀が近づいてくる。
後退しようとするものの背中が固いものにぶつかり、壁に阻まれたことを知った。
「逃げないで」
手首を掴む力は強く、ぴくりとも動かせない。
真剣な、熱い瞳に射すくめられ。
彼の唇が、再び開く前に。
「ご、……っ」
やっとのことで、喉につかえていた塊を吐き出した。
「ごめん……っ!」
相手の顔が見られない。
カタカタと震えながら謝る私を、夕紀が不思議そうに見る気配がした。
「まいちゃん?」
下からそっと覗き込んだその瞬間、私の異変に気づいたらしく顔色を変える。
「どうしたの!? まいちゃん!」
「ゆる、して……!」
ごめんなさい。
私なんかが、君を好きになってしまって、本当にごめんなさい……!
謝って許してもらえるはずがなくても、そうしなければ自分を保てずにはいられない。
……好きにならなくて、いい。
そんなこと、望めるわけがない。
でも。
だから。
「お願い、……嫌わないで……」
無様な涙が浮かび、目の前が滲む。
泣き顔を見られたくなくて、俯いた。
なんて身勝手。
なんて愚かなんだろう。
一方的に恋焦がれた私が浅はかだったのに。
未来がないのなら、傷が浅いうちに、完全に堕ちる前に、この心を引き剥がせば良かったのに。
なのに、夕紀に知られてしまった今は。
夕紀に嫌われ、見放されることが、恐ろしくてたまらない。
この期に及んでそんなことを思ってしまう、酷く女々しい自分に吐き気がする。
きっと夕紀は、不愉快に思っているだろう。
呆れているに違いない。
いや……いっそ、思い切りなじってほしい。
ふざけるなと責め立ててほしい。
下手に優しい言葉を掛けられるより、きっとその方が楽に、この想いを消すことができるから。
今すぐ逃げ去りたい衝動に耐えながら、ひたすらに下を向き続けた。
夕紀が僅かに身じろぎする。
「………なんで?」
―――怒ったような、声だった。
「なんで嫌いにならなくちゃいけないの?」
顔を上げる。
情熱的な光を孕んだ紅茶色の大きな瞳と視線が重なり、息を呑んだ。
「僕は」
私の姿をしっかりと映したその瞳が、一際綺麗に、美しく、濡れたように煌めく。
きらきら輝く宝石、みたいに。
「僕は、まいちゃんが好きだよ」
ビクリと胸の奥が動いた気がした。
途端に変な動悸が込み上げてきて、くしゃりとシャツの胸元を掴む。
い、今、なんて……?
「う、……」
まだ完全に事を理解しきれず混乱した思考と裏腹に、バカみたいに高鳴る心臓だけは正直だった。
「うそ」
だって。
こんな。こんな都合の良すぎる話がある?
私をからかってるんじゃ、ないの?
「ほんと」
「嘘だ! 信じない!」
たまらないほど嬉しくて、でも、たまらないほど怖くて。
ぎゅっと瞼を閉じ、首を何度も横に振った。
「……それなら!」
ふわりと触れた熱い吐息の感触に心臓が跳ねた。
息がかかったと思われたそれは湿ったぬくもりになり、
―――キスされたのだと気づくのに、数秒かかった。
呆然と、唇を両手で押さえる。
「……これで、信じて……くれ、る?」
恥ずかしそうに頬を染めて。
首を傾げ、上目遣いで窺ってくる彼。
カッと全身が燃え上がる。
頭の中が沸騰する。
41
:
ピーチ
:2013/03/10(日) 17:15:41 HOST:EM49-252-15-7.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>
まさかの急展開!
苺花ちゃん自覚なさすぎる!←
42
:
心愛
:2013/03/10(日) 19:05:24 HOST:proxyag118.docomo.ne.jp
>>ピーチ
自覚ないけど、実は結構女の子してる苺花だよw
なにげに夕紀は大胆です←
あと一回で完結かな!
43
:
ピーチ
:2013/03/12(火) 15:10:55 HOST:EM1-114-198-155.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>
ある意味一番女の子っぽいかも! 女の子の中で!←
後一回かー……もーちょい続いてほしい気もする←
44
:
心愛
:2013/03/12(火) 18:39:08 HOST:proxyag054.docomo.ne.jp
>>ピーチ
そこを分かってもらえてとっても嬉しいよ…(;_;)
苺花は案外乙女だよ!
ここあキャラで一番性格が女の子かもしれないよ!
量の都合であと二回になっちゃったんだけどねw
くっついた後も、夕紀と苺花はちゃんと本編で活躍してくれるから大丈夫←
まずは放置食らってる主人公カップルをどうにかせんと…!
45
:
心愛
:2013/03/12(火) 18:39:35 HOST:proxyag054.docomo.ne.jp
『Prince or Princess? 16』
「いつも涼しい顔してるけど、頑張やさんで。変なところで自信がなくて」
ためらうように、一度。
そして、二度、三度とあやすみたいな仕草で髪を撫でられる。
「優しくて、可愛くて、ほんとは誰より女の子らしい」
私と視線を合わせ、ふわりと微笑んだ。
「―――そんなまいちゃんが、僕は、大好きだよ」
もうだめだった。
嗚咽が漏れた。
膝が崩れる。
ずるずると床にへたり込んでしまう私に合わせるように、夕紀が膝を折って屈み込む。
「もう。なんで頭いいのに、分かんないかなぁ」
「わ、かるわけ……っ」
しゃくりあげているせいで声がうまく出せない。
ひくっ、ひくっと痙攣する喉を時間をかけて落ち着かせ、
「夕紀は……なんで分かったの」
私が、夕紀のことをそういう意味で好きになってしまった、って。
「だってまいちゃん、分かりやすいんだもん」
即答する夕紀。
そんなに顔に出てたのかな、私。
演技には自信があっただけに、少し落ち込む。
「ももちゃんだって気づいてたみたいだよ?」
「……そう、だったね……」
結局、一番最後まで分かってなかったのは私自身か。
またずーんと一人暗い影を背負ってへこんでいると、
「……まいちゃん」
急に夕紀の顔が近づいてきて、慌てて身を退く。
「な、なにっ」
動揺しまくりの私に対して、夕紀は冷静だった。
じっとこちらを見つめてくる。
「ももちゃんから聞いたよ。つらい思い、したんでしょう?」
俯き、まだ涙が残っていた目元をぐいと拭う。
「だからこういう、わざと男っぽい格好したり、そういう風を装ってたんでしょう?」
「……」
無言で肯定を示す。
夕紀はこくんと頷き、
「だから、ね。無理にそうしろとは言わないけど」
一旦言葉を止め、私を見る。
何を言い出すのだろうと顔を上げた私を見て、にこっと笑った。
「まいちゃんは、好きなように振る舞っていいと思うよ」
可愛くて、なのに不思議と力強い笑顔に一瞬見惚れてしまったその間に、夕紀がさらに言葉を繋げる。
「この学校に、まいちゃんを馬鹿にする人なんかいない」
それにね、と前置きして。
「もしそんな人がいたら、僕がやっつけるから!」
拳を握って力む様子に、思わず笑ってしまう。
「に、似合わな……っ」
「僕は本気だよ!?」
ぷくっと膨れ、小さく拗ねたように呟いた。
「今は無理だけど……。まいちゃんに相応しい男になれるように、頑張るから」
「え?」
「なんでもないよっ」
赤い顔で誤魔化されてしまう。
夕紀はこほんっと仕切り直すように咳払いしてから、
「そ、それで、ねっ。お願いがあるんだけど……」
「お願い?」
首を傾げる私に、夕紀は超絶破壊力の上目遣いで、言った。
「手、繋いでも……いい?」
その可愛らしくも健気な問いに、私は思わず固まる。
46
:
心愛
:2013/03/12(火) 18:40:27 HOST:proxy10065.docomo.ne.jp
『Prince or Princess? 17』
「い、今?」
「……いや?」
私の反応に、しゅんとしてしまう夕紀。
「……や、じゃ、ないけど、」
うう、顔が熱い。
ちょっと異常なんじゃないの私の体温。もしかしたら血液沸騰してるかもしれない。
視線を逸らし、消え入りそうな声で告げる。
「―――だって、か、彼氏彼女、みたいだし……っ」
「……まいちゃん……」
夕紀が呆れたような目を向けてきた。
「僕たち、彼氏彼女じゃないの?」
……そ、そっか。
キス、しちゃったし。
告白だってしたようなものだし、されてしまったし。
世間的にはそういう呼び方をしても、いいの、かもしれないけど。
「……っ、あ、や、それは……っ、あのっ、そ、そう、だけど……!」
な、なんか響きが妙に生々しいんだよ!
今まで私が彼女の立場になるとか、考えたこともなかった……!
さらに今までのことを瞬時に思い出してしまい、ぶわわわわっと身体中が熱くなる。
夕紀は「……はぁ」と嘆息した。
「まいちゃんは可愛い」
……真面目な顔で何をトチ狂ったことを。
そういえばさっきもそんなこと言ってたっけ。
「自覚、持って。……いつ――かと思うと、気が気じゃないよ」
「……夕紀?」
台詞の後半は良く聞き取れなかった。
ぽかんとする私に背を向け、夕紀がさらに何事か呟く。
「……うーん。こうなってくると、やっぱりまいちゃんは誤解したままでもいっか、って思ってきちゃうよね……。
女の子らしくなって男子にモテ始めちゃったりしたら、もっと嫌だもん……」
「さ、さっきからなんなの……?」
天真爛漫な夕紀らしくない。
小声でぶつぶつ言っている彼に、おそるおそる声を掛けてみる。
「うっ、ううん、ただの独り言だから気にしないで!」
「はあ」
夕紀は曇りのない笑顔に微かに汗を滲ませて言い繕う。
気になったけど、追及はひとまずやめておいた。
「それよりまいちゃん。僕にしか可愛いとこ、見せちゃだめだよ?」
「見せるも何も、そんなもの存在しないから心配する必要はないと思う」
私はむしろ夕紀の目と頭が心配だ。
本当にお世辞の類じゃないなら、天然って、普通の人と価値観がずれてるものなんだろうか。
……でも、実を言えば……夕紀にとぼけた発言をされるのも、ちょっとだけ嬉しかったり、するけど。
真に受けたら負けだって、たとえ承知していても。
「うー、またそういうこと言うー」
夕紀は不満そうな顔をしたけれど、
「……仕方ないなぁ」
突然私の手を強引に握り、ぐいっと引っ張った。
「え、えっ」
あれ、意外と手は小さくない。
むしろ少年ぽいっていうか、細いながら骨格もしっかりしてて―――
……なんて浮かれかけた思考を途中で断ち切り、
「待っ、夕紀、手っ! 手っ!」
「早く打ち上げ行こ!」
行こ、って! そんな気軽に言わないでほしい!
外に出たりしてこの状態誰かに見られたら恥ずかしすぎて死ねるんだけど!?
「ほら、春山くんからメール来てるよ。みんな待ってるって」
「本当にこのまま行く気!? ……あ、あんな雰囲気で出て行っちゃった手前合わせる顔がないし今日はちょっと遠慮したいかな……っ?」
「……だめ?」
「う」
「……だめ?」
「うぅう」
くっ、ここで引っかかったら終わりだ私……!
ああ、でもでもやっぱり……っ!
単純にも葛藤を始めてしまう私を見て。
「……かーわい」
私だけの可愛い王子様は、月明かりを浴びて悪戯っぽく微笑んだ。
47
:
ピーチ
:2013/03/13(水) 05:08:42 HOST:EM114-51-28-190.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>
案外と言うより外見以外女子だよね!←
そして夕紀ちゃんはそれを分かってくれる人w
やっぱいいよね初々しい感じ!
48
:
心愛
:2013/03/13(水) 22:57:25 HOST:proxy10042.docomo.ne.jp
>>ピーチ
分かってくれる方が夕紀以外にもここに一人w
よかったね苺花!
ここあはやっぱり恋愛経験ゼロで戸惑いまくりの初々しいカップルさんが書きたくなっちゃうなぁ←
露骨にベタベタする人たちは見てるだけでイラッとくるわ(~_~;)
49
:
ピーチ
:2013/03/15(金) 05:45:39 HOST:EM49-252-224-96.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>
良かったね苺花ちゃん!
分かるよここにゃん! と言うより初々しいのしか書けない!←
露骨にベタベタ……あたしイラッとくると同時に「気持ち悪っ」って感じになるw
50
:
心愛
:2013/03/16(土) 10:45:29 HOST:proxy10068.docomo.ne.jp
>>ピーチ
ね!
お付き合いするのは勝手だけど、人前では節度をわきまえてほしいものだよねw
次のおまけ的なもので、一旦このスレはお休みかな。
昴と美空の話は本編終わってからの方が都合がいいから、しばらくお待ちくださいませ←
でもそれまでに苺花視点美羽視点とかのサイドエピソードを入れていけたらいいなと思ってますw
51
:
心愛
:2013/03/16(土) 10:46:17 HOST:proxy10068.docomo.ne.jp
『とある放課後の会話記録』
「ううっ、姫、おいたわしい……」
「あんなおと―――ではなかった、女に誑かされて……!」
「……何こそこそしてんのあんたたち。通報するよ?」
「覗きとかきもーい」
「覗きではないわッ! 姫の御姿をじっくりねっとり見守るのは決して下卑な欲望による行為などではなく、我らの使命であり……む? その顔ぶれ……貴様らは、確か」
「お察しの通り、ってとこかしら。どうも、頭おかしい名前のファンクラブの皆さん」
「失礼な! どこがおかしいと言うのだ!」
「へー。……正式名称は?」
『《我らが天使にして希望の光・姫宮夕紀を草葉の陰から愛で、戦い、全力で守護する会》だが?』
「おかしいよ! むしろおかしいとこしかねぇよ!」
「こんなキモいストーカー集団につけ回されてるなんて、姫かわいそーう」
「ストーカーでもない! 姫の御身と純粋すぎる御心を穢す一切合切を駆除・抹殺せんが為に日夜細々警備活動を続けるというのが、姫が中学生のときから見守ってきた我ら聖騎士の任務であってだな―――」
「長文乙www」
「中二病キャラは美空の妹で十分足りてますが」
「勝手に付きまとったり盗撮したりするのが騎士のすることかよ。それに分かってる? 姫っていくら可愛くても男だよ?」
「と、盗撮とは人聞きの悪い。訴えられない程度に留めているさ」
「それにそれを言うなら貴様らも似たようなものだろう!」
「そうだそうだ! 俺たちと変わらないはずだ!」
「王子親衛隊の活動内容に何か文句でも?」
「別にやましいことないよ? 堂々とラブコール送ってるだけだよーん」
「くそう、あいつと俺たちの何が違うって言うんだ……! 柚木園なんて、ちょっと顔が良くてスタイルが良くて頭が良くて運動神経が良くて人柄が良いだけじゃないか!」
「褒めてんじゃん」
「ベタ褒めだね」
「うるさい! たまたまそうなってしまっただけだ!」
「仕方ないよ、柚木園くんは欠点がないところが欠点なんだから」
「……柚木園といえば……どうしても解せないのだが。貴様ら女子はあれが男みたいだから、いいんじゃないのか? 観察していれば、見た目こそイケメンだがいわゆる宝塚系女子と言うべきか……とにかく中身は完全に女だろう」
「バカね、そこがイイんじゃない」
「あの勘違いっぷりが可愛いのよねー」
「見た目と中身のギャップと、それを隠そうとしてるとことかハマる!」
「確かに文化祭のときには、姫目当てで押し掛けた11組に、可哀想なくらいに恥じらっているモデル級の超絶美人がいたから本気で誰かと思ったが……」
「詐欺だろうあれは」
「いつもは自信満々なのに、急に気弱な様子見せられるときゅんと来るよねー。姫が警戒するのも頷けるよ」
「やっぱお似合いだよね、二人」
「くっ……だがやはり納得がいかん!」
「俺たちは何があっても手は出さないと互いに協定まで結んでいたのに!」
「……姫のファンって、性別の境を見失ってる節があるよね……」
「そりゃそうでしょ。夕紀ちゃん自体が性別の境界線超えてる異例の存在だもん」
「あ! 王子と姫がこっち来るよ!」
『っ!? ………。…………………………』
「……おい。何故貴様らまで隠れている」
「うるさいわね黙ってなさいよバカ男」
「先に待ち伏せしてたのはそっちでしょうが」
「しーっ。姫が何か言ってるよ」
「んん……? “―――ヒナたちも―――だから”」
「“僕たちも二人でデートしようよー”……って感じ?」
「マジで!? 柚木園くんめっちゃ真っ赤になっちゃったんだけど!」
「いつもすらすらキザな台詞言ってるくせに、かーわーいーいー!」
「うぐぐぐぐぐぐぐぐ」
「まあまあ。ここは私たちみたく身を退いて、応援することにしましょうよ」
「姫だって幸せそうじゃん?」
「この浮いた話皆無の南高の中であっさり彼女作っちゃった時点で、相当な根性だよ夕紀ちゃん。諦めな」
「うう……姫ぇ……」
52
:
ピーチ
:2013/03/16(土) 21:04:40 HOST:EM114-51-179-122.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>
だよねー! 周りに気持ち悪いもん見せつけんなって感じ←
会話文だけ来たーっ!
と、盗撮!? …夕紀ちゃんも何か可哀そうに……
53
:
心愛
:2013/03/18(月) 17:18:19 HOST:proxyag095.docomo.ne.jp
>>ピーチ
大丈夫、男が男を盗撮するだけさ!
…あれ、もっと悪い気がするのは何故だろう。
迷惑きわまりないファンクラブですw
54
:
ピーチ
:2013/03/19(火) 05:37:04 HOST:EM114-51-37-149.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>
大丈夫じゃないよ!? 明らかにおかしいよ!?
いや何故だろうじゃなくて!
…こーなってくると性別とかって関係ないよね……←
55
:
下平
:2013/03/19(火) 13:52:51 HOST:ntfkok217066.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
心愛のおまんまんペロペロ
>>1
56
:
心愛
:2013/03/19(火) 20:27:27 HOST:proxy10052.docomo.ne.jp
>>ピーチ
美少女だからね、夕紀w
夕紀が今までピュアっ子のまま育ってきたのはファンクラブの尽力もあるんだよ←
苺花のファンクラブもとい親衛隊の皆様は、王子としても女性的な面も含めて苺花が大好きなんだ!
そういう意味でも好かれてるって苺花気づいてないけどね!
57
:
ピーチ
:2013/03/19(火) 21:59:48 HOST:EM114-51-160-122.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>
美少「女」なんだよね、夕紀ちゃんw
まさかのファンクラブの尽力!? なぜ!?
苺花ちゃんってどっか鈍いよね←こら
58
:
心愛
:2013/03/20(水) 10:19:17 HOST:proxy10056.docomo.ne.jp
>>ピーチ
夕紀が不審者に話しかけられそうになったら本人の目に入らないようにしつつフルボッコにしたり、男に告白されそうになったらことごとく邪魔したり(本人気づかずスルー)とかひそかに頑張っているんだよ! ストーキングしながら!
…書きたくなってきた←
苺花は鈍いよねー。
基本、ここあキャラは自分の恋愛沙汰には鈍いけどねー。
でも例外もいるんだぜ?
59
:
ピーチ
:2013/03/20(水) 19:24:46 HOST:EM1-114-57-214.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>
夕紀ちゃんスルーですか!
ぜひとも書いてくださいな!←おい
例外……ヒナさんとか?
60
:
心愛
:2013/03/20(水) 23:10:02 HOST:proxy10070.docomo.ne.jp
>>ピーチ
時間あったら書こうっと←
おしい! ヒナはまだマシな方だけど、美羽の好意を匂わせる発言や反応にはあんまり気づいてないんだw
そんなこんなで、まさかの美空&昴編予告的なおまけ↓
本編と繋がってます!
こういう複雑な子視点初めてなのでごちゃごちゃしてますがお許しを。
キャラの印象がガラッと変わると思うよ!
61
:
心愛
:2013/03/20(水) 23:10:36 HOST:proxy10070.docomo.ne.jp
『その頃の彼女』
「美羽ちゃんをよろしくねー」
相手に抜け目なく念を押してから、あたしは通話を切った。
黙ってケータイの画面を見ていると、ふふっと笑いが込み上げてくる。
苦手なのに早起きして、落ち着けなくてそわそわ鏡を見たり、我に返ったようにじたばたしたりして。
「嘘だったら赦さないからな!」と喚きながらも、圭くんと約束していたことをあっさり看破してしまったあたしのアドバイスに従って、嫌々用意した服を着てくれて。
美羽ちゃんは認めないだろうけど、圭くんとのお出かけをすっごくすっごく、楽しみにしていたから。
―――美羽ちゃんは可愛い。
いい意味で単純、強情。
まっすぐで純粋で、触れたら壊れてしまいそうに繊細。
何を犠牲にしても守りたいと願える、世界で一番、大切な子。
「………」
車の窓ガラスに、顔を上げた自分が映る。
静かに凪いだ漆黒の眼差し。
―――あたしの、薄汚い本性。
「……!」
そのとき、手元で着信を知らせるメロディーが鳴った。
表示された名前を確認し、テンションを瞬時に切り替える。
「彩(あや)ちゃん? 久しぶりー!」
『お久しぶりです美空(みく)さん! やっぱ美少女は声だけでも美少女ですね!』
「またまたぁ、彩ちゃんってば褒め上手ー」
あたしの受け答えに『ほんとのこと言ってるだけですから〜』と笑い―――急に、あどけなくて明るかった声の、トーンが落ちた。
『―――前にも言いましたけど。お兄ちゃんを利用しないでくださいね』
それを聞いて、あたしは微笑む。
「もちろん」
『あは。相変わらず、まったく動じないんですね。さすがです』
「彩ちゃんこそ。こんなに話が早い中学生って珍しいと思うよ?」
『お兄ちゃんに関することだけですけどね。彩は年季入ったブラコンなので!』
本当に、この子は頭が良く回る。
この前あたしの家に圭くんと一緒に来たのも、隙を見てあたしに釘を刺すためだったって云うんだから、相当だ。
お兄さんから簡単に伝え聞いただけであたしの人物像を掴み、警戒したその洞察力は、賞賛に値する。
「圭くんが美羽ちゃんにとっての“救い”である限り、あたしは一歩後ろで、圭くんを応援し続けるよ」
今の時点で、彩ちゃんとあたしの目的、利害は一致している。
それゆえの協力関係だ。
「でも、圭くんが美羽ちゃんの敵になり得るときは―――」
『その心配はいりませんよ』
あたしを遮り、彩ちゃんが熱の籠もった声で告げる。
『お兄ちゃんは美羽さんのこと、本当に大好きですから。裏切ることは絶対にしませんし―――無闇に美羽さんを傷つけるほど、お兄ちゃんは馬鹿じゃないです』
「……そうだね」
わざと言った引っ掛けに反論する真剣な様子が可愛らしくて、くすっと笑った。
彩ちゃんとあたしは似ているようで、全然違う。
彩ちゃんは少し大人びているところがあるけど、それは大好きなお兄さんを守るのに必死なだけ。
こうやって、自分より“出来る”年上のあたしに噛みついてくる根性は見上げたものだけどね。
美羽ちゃんや圭くんもそうだけど、彩ちゃんだってまっすぐな、優しい子だ。
あたしみたいに狡猾で、躊躇いもせずに人を利用することができるわけじゃない。
「大丈夫、解ってるよ」
お兄さん思いの女の子を安心させるように、あたしは意識して優しい声を出す。
「忠告ありがとう。またね」
『……はい』
今朝の圭くんの様子を聞いておきたかったけど、さっきの通話から大体想像はつくし、それは後でも話せることだ。
ケータイをバッグの中に突っ込んで、軽く背を伸ばす。
62
:
心愛
:2013/03/20(水) 23:11:30 HOST:proxyag095.docomo.ne.jp
「お嬢様……」
隣の運転席に座る昴(すばる)が、心配そうな眼差しを送ってきた。
優秀で従順な執事は文句一つ言わずにあたしのワガママを聞いて、美羽ちゃんを送り出した後もこうして車を停めたままにしてくれている。
と云うのも、圭くんに会った美羽ちゃんがどうしても今日の服装を嫌がって、昴を頼った場合のために、こっそりゴスロリ一式を持って来ていたから―――なんだけど、あの様子なら大丈夫だろう。
圭くん、かなり浮かれてたし。美羽ちゃんは超絶可愛いから当然だけど。
「もしかして、まだシートから落ちそうになったこと気にしてるの? 大丈夫だって」
違うのは解っているけど、圭くんに「椅子から落ちそうになった」って言ったときのことを持ち出して混ぜっ返す。
圭くんの面白すぎる動揺っぷりに笑いすぎて、椅子……っていうか車の座席から落ちかけたのは本当。
でも、実を言えばあたしがドジをしでかすのはいつもってわけじゃなくて―――“表”の自分のときがほとんどなんだ。
一人になると急速に思考が冷めて、頭も行動も、高校生らしくなく落ち着いたものになる。
あたしの素顔をすべて知っているのは、専属執事である昴だけ。
……そんな自分が嫌になる。
たとえば。
昴の気持ちを知っていながら、あたしは卑怯にも、それに気づかないふりをし続けている。
でも、それを悪いこととは思わないし、思えない。
完璧なお嬢様を演じているあたしには、使用人にすぎない昴の想いを受け入れることは赦されないから。
あたしは冷徹な人間だ。
自分だけじゃなく、美羽ちゃんの立場に悪い影響を及ぼさないためにも、昴とはこの関係を保っていかなくてはならない。
「―――……圭様はお優しい方です」
ぼんやり考えていたら、昴がそう口に出した。
「昴に言わせたら、全人類みんな“お優しい方”じゃない」
「お嬢様」
淡いブルーに輝く瞳で咎めるように見られ、茶化すのをやめる。
「……解ってるよ」
あたしと美羽ちゃんのためなら、あたしは迷いなく他者を切り捨てる。
たとえそれが圭くんだって、昴だって。
あたしの性格を熟知しているからこそ、昴は圭くんのことを気にかけているんだ。
彩ちゃんが感づいたのと、同じように。
「圭くんのことは大切に思ってる。美羽ちゃんを助けてくれる、唯一の人材なんだから」
シートベルトを締めながら、あたしは笑う。
『安心して任せて下さい、美空先輩。……今はまだだけど、いつか』
いくつか会話を交わし、圭くんは『あの子』とは違うんだ、って慎重に見極めようとしていたあたしに、彼は満面の笑顔でこう言った。
『―――俺は俺なりの方法で、ありのままの美羽を攻略してやりますから!』
……本当に嬉しかった。
涙が出るかと思った。
美羽ちゃんが探して、求めていたのはこの子なんだって。
圭くんなら、美羽ちゃんの心を動かせる。支えて、守ることができる。
―――恋に臆病になってしまった美羽ちゃんを、救うことができる。
あたしにできないことを、やってもらわなくちゃならないんだ。
圭くんはきっと、あたしの信用を裏切らない。
―――昴がアクセルを踏み、窓の向こうの景色が動き出す。
……それでも、彼を完全に信じきるにはまだ早いから。
優しくて綺麗な美羽ちゃんを、これ以上傷つけないように―――あたしは疑う。
こう思わずにはいられないけど――――
「……期待、してるよ。圭くん」
63
:
ピーチ
:2013/03/23(土) 09:59:11 HOST:EM1-114-3-215.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>
時間あったらぜひ!
違うの!? ……じゃあ春山くん!
マジですかあの美空先輩ですかぁ!?
……ちょっと待って、ドジじゃない美空先輩って美空先輩じゃないよ!?←こら
64
:
心愛
:2013/03/23(土) 18:50:58 HOST:proxy10070.docomo.ne.jp
>>ピーチ
正解は美空のつもりだったんだけど……うん、春山もある意味正解!
さすがピーチ、分かってらっしゃる!
今回でちょっとばらしたけど、裏表あるキャラは春山、彩、美空で全員。
春山と彩はまだたいしたことないんだけど、問題は美空だな。ある意味ラスボス。
でも結局はヒナに対する彩と同じく、美羽が大好きなだけなんだ!
美空は昴を拒絶してるわけなんだけど、さてさてこれからどうなるでしょうw
65
:
ピーチ
:2013/03/23(土) 22:03:12 HOST:EM49-252-247-164.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>
わーごめんなさーいっ!!
……美空先輩、ある意味ラスボスより強そうじゃないっすか…?
何でー? 昴さんいい人なのにー!←こら
66
:
心愛
:2013/03/23(土) 23:59:17 HOST:proxy10055.docomo.ne.jp
>>ピーチ
うん、昴はいい人だけどね! 個人的には結婚したい自キャラナンバーワンだけどね!
社長令嬢が執事と恋愛しちゃったらちょっと世間的にね……?
67
:
ピーチ
:2013/03/24(日) 00:19:53 HOST:EM49-252-247-164.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>
いい人だよねそうだよね!
……シュオン様とかヒースとか空牙くんとか押しのけて昴さんがナンバーワンか!←
うーん…そういう意味では美空先輩が正しいのかなぁ……?
68
:
心愛
:2013/03/24(日) 18:25:00 HOST:proxy10051.docomo.ne.jp
>>ピーチ
いくら美形でも、爆発起こしたり腹黒かったり剣振り回したり目つきがアレだったりツッコミで忙しすぎたりミレーユにボロクソ言われてたりする人は、真面目に考えるとちょっとね…?
一緒に暮らすなら中も外も紳士的な昴がいいよ、うん。美空羨ましい……って自キャラに何言ってんだろね(笑)
だから「悪いこととは思わない」んだよね。
美空は明らかに正しいんだけど、昴に肩入れすれば可哀想に思える(つд`)
69
:
ピーチ
:2013/03/25(月) 21:00:34 HOST:EM1-114-34-228.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>
シュオン様はじめとしてほんとに個性豊かですよね皆様っ!←
確かに紳士的な人がいいよね! それは分かる!
70
:
ピーチ
:2013/03/25(月) 21:31:23 HOST:EM1-114-34-228.pool.e-mobile.ne.jp
紫と紅と黒
「っ…………」
ふっと瞳を見開いたあおりが、天音に笑みを向ける。
「終わったみたいだよ、天音?」
それくらい、この親友ならすぐに感づくのだろうが、一応。
声に出さないのと声に出すのとは、やはり重みが違ってくるのだ。
「えぇ」
僅かな安堵が、声音から感じ取れる。それに気付いたあおりが苦笑する。
何だ、口では何だかんだ言ってもやはり二人のことを気にかけていたのか。
そんなことを思ったとき、少女の声が聞こえた。
「えーっ!」
「へ?」
唐突に聞こえた声に二人が同時に振り返る。
シェーラが不満そうな表情で天音たちに問うた。
「もう帰っちゃうんですか? シュオン様がいいって言えば、ちょっとくらい上がって……」
「………ごめんなさい、それだけは遠慮しておくわ」
彼の母の存在を知ってなおあの邸に足を運ぼうなどとは、到底思えない。
それを彼女の表情から読み取ったシュオンが苦笑する。無言で謝っているようだ。
「? 何で?」
ただ一人意味が通じないあおりが、天音を見た。あの強情の塊のような彼女をそうまで言わせる人物など、そう居ないだろう。
そう思っての問いだったのだが、天音をはじめとし、それぞれが視線を逸らす。
「え? ちょ、天音っ?」
一人置き去りにされたようであおりが焦った。柊一たちも知っているだろうが、あの天音がこの状態では、二人が口を割るとはまず思えない。
「……何なら、あおりだけ直に会ってみれば?」
少女の提案に、ソフィアたちはもちろん、シュオンとヒースもさすがに言葉を挟んだ。
「え、ちょ、止めとけって! これ以上犠牲者を増やすわけには……っ」
「それに、喜ぶのは母上だけだしね…」
「分かってるわよ」
二人の言葉に冗談だと返し、天音が僅かに苦笑する。
「まぁ、私たちも色々とあるから……ごめんね?」
シェーラにそう言って、天音はソフィアたちを顧みた。
ソフィアたちもシェーラと同様のことを思っているのだろうが、彼女たちがそれを口にすることはあまりないのだろう。
「…それに」
さすがに疲れたように、しかし妙に晴れやかに彼女は言った。
「―――もう、定期的にこっちにも来た方がいいみたいだから」
「え?」
天音の言葉を受けたソフィアたちの瞳が僅かに輝いた。
「だから、今回は帰るわ。またね」
「…はいっ!」
元気よく答えたシェーラの言葉を聞き届け、天音とあおりの周りに突風が吹き荒れる。
そして、薄い微笑を湛えた天音と、軽く手を振ったあおりの姿が、闇に呑まれた。
71
:
心愛
:2013/03/25(月) 22:13:43 HOST:proxyag114.docomo.ne.jp
>>ピーチ
個性の塊だねっ!
あ、あと、夕紀ファンクラブの話をちょろっと明日以降載せると思います←
最近のソラの波紋が重いから、なんかバカな話が書きたくなった…w
ピーチ、スレ違いスレ違い!(笑)
シュオン母脅威だね!
あおりちゃん、可愛いからお持ち帰りされちゃうよ気をつけて!
ばいばい二人ともー!
定期的なご訪問のときに、またお会いしましょう!
72
:
ピーチ
:2013/03/25(月) 22:44:28 HOST:EM1-114-34-228.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>
個性個性w
ソラの波紋は確かに重い!
ごめんなさいほんとご迷惑ばっかおかけしてますごめんなさいっ!!
あおりはひょいっと持ってかれそーだよね、事情知らないから←
ばいばいソフィア様御一行様ー! またねー!←こら
73
:
心愛
:2013/03/26(火) 10:30:54 HOST:proxy10043.docomo.ne.jp
『とある男共の華麗なる奮闘記』
「お母さん! だから何回言ったら分かるの!?」
朝。
姫宮家の玄関で、今日も慌ただしい足音と可愛らしい少じ……年の叫び声が響く。
「みんなが寝てる間に、僕の部屋を勝手にピンク一色にしないでってば! たった一晩で衝撃のビフォーアフター遂げちゃってるんだけどっ?」
「夕紀。人生、少しはびっくりすることがないとつまらないわよ?」
「そうだね、でも心臓が止まるレベルのびっくりは必要ないんじゃないかな!?」
母親相手に一生懸命にツッコむ様子は、いつもながらたいそう愛らしい。英語にするならベリーキュート。
そんな、我々が愛してやまない“姫”の家の前の塀に隠れ、俺―――《我らが天使にして希望の光・姫宮夕紀を草葉の陰から愛で、戦い、全力で守護する会》会長は数人の会員を従えて、早朝から張り込みをしていた。
ストーキングではない。姫の平穏な生活を守るために必要な、ただの張り込みである。
「そうそう、この前買ってきたんだけど、夕紀に渡したいものがあるの。ずっとアレで悩んでいるでしょう? 母さん、ちゃんと分かってるのよ?」
「今会話の流れ完全無視したよねとか現在進行形で僕の悩みの種を大量生産してる人に言われたくないんだけどとか、言っても無駄なんだろうね……。 うーん、なんだろ。ダンベルとかかな」
呆れながらも、真面目に答える姫。
なんでも彼は、男らしくなれるように、と牛乳を毎日飲んだり筋トレに勤しんでいるらしく。
その天然な空回りっぷりも素晴らしい……と、会員同士アイコンタクトを交わし、うんうんと頷き合う。
「ママー! 怖いお兄ちゃんたちがいっぱいいるよー?」
「バカっ、ミナ! 見ちゃだめ!」
……う、うん……ごめんよ、ミナちゃん。
意外に結構子供好きな会員同士、ガックリいかつい肩を落としつつも盗ちょ……ではなく聞き取りを続行。
「―――ほら見て、シリコン製胸パッドよ! これでお前の悩みも解決ね!」
「息子の悩み、いい加減で理解してよお母さん!」
「えーと、ここに説明書が……なになに? フルーツ型の形状で下着や水着にも綺麗にフィット。程良い弾力のシリコンは付け心地も優しく女性らしいバストラインを演出―――」
「女性らしさ求めてないから! 僕は男だから! やめてよなんかいたたまれない気持ちになってくる!」
「そんな、夕紀……母さんの愛情が受け取れないって言うの?」
「歪みまくった愛情が行き過ぎてただのイジメになってるからね!」
姫とパッドの組み合わせをリアルに想像してしまったらしく、ブパァッと鼻血を噴出してばったり倒れたバカ極まりない会員を介抱しつつ、俺たちは何食わぬ顔で―――全員、鼻にティッシュを詰め込む作業に移る。
……うむ。今日も空が青い。
「わっ、もうこんな時間になっちゃったじゃない! 部屋、元に戻しておいてよ!?」
「大丈夫! ばっちり、夕紀のあだ名にぴったりな……お姫様部屋にしておくわ!」
「うわぁぁぁぁ―――――ん!」
と、ジャージ姿も可愛い我らが天使が涙目で飛び出し、瞬く間に走り去った。
我々は慌てて彼の登校をサポートすべく追おうとし―――
「あら、いつもの」
『おはようございます!』
―――したところで光栄にも姫のお母上に声を掛けられたので、ピッチリ最敬礼を取る。
栗色のロングヘアに紅茶色の瞳が柔らかな印象を与える姫宮めぐみさん(41)はうっかり姉君と間違えそうになる程若々しく、かなりの美人。
……ちなみに情報を追加すれば、姫のお父上は地元で名高い医師である。
「ときに、めぐみさん。姫の性別は、もちろん分かっておられますよね……?」
で、彼女はまあ、姫がツッコミ役に回るくらいには、頭がゆるふわでいらっしゃる方なわけで。
俺は半ば本気で心配していたのだが、めぐみさんはほんわり微笑む。
「やぁね、当たり前じゃない。ちょっとした遊び心ってやつよ?」
『ですよねー』
なんだ。良かった良かった。
「うふふ。それにあの子も、なんだかんだで喜んでるみたいだし。私のイタズラ」
―――天然は遺伝するものなのだな、と我々は確信した。
74
:
心愛
:2013/03/26(火) 10:38:10 HOST:proxy10043.docomo.ne.jp
>>ピーチ
あおりちゃん天音ちゃん、柊一くんがいないときは特に注意だよ…!
で、ピーチさんや。本スレに移動しなくていいの?
ここあがコピって載せとこうか?
夕紀ファンクラブの活動、これから始まります!
75
:
ピーチ
:2013/03/26(火) 14:00:25 HOST:EM114-51-147-230.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>
柊一はある意味最強だからねw
移動させようと思って途中まで書いててもなぜか用事入って消される……っ
……申し訳ありませんお願いしてもよろしいでしょうか
76
:
心愛
:2013/03/27(水) 12:51:16 HOST:proxy10015.docomo.ne.jp
「行ってらっしゃい。今日も夕紀をよろしくねー」
『確かに承りました!』
我々を“夕紀のお友達”だと盛大に勘違いしていらっしゃるめぐみさんに手を振られ、ビッシリ敬礼を返す。
……いや、もちろん聖騎士の活動内容について説明はしたけれど、「まあ、素敵ねー」と言われるばかりで微塵も分かってもらえなかったのだ。
《ピリリリリリリ》
「おっと」
と、そこで俺は、無機質なデフォルト設定の着信音を吐き出す携帯電話を取り出した。
姫の護衛に、携帯電話は必需品。
けれど学校内では持ち込みおよび使用は禁止なので、着信相手もこっそり物陰からかけてきているのだろう。
迷わず通話ボタンを押す。
『会長。こちら第三部隊所属、会員番号26であります』
「報告を」
『はっ。只今、姫の昇降口到着を確認致しました。さらに“姫の行動予定表No.82”によりますと、テニス部のミーティング及び朝練のため、このまま部室に向かうと思われます』
「うむ、ご苦労。我々が手間取っている間にすまなかったな」
『はっ。有難きお言葉』
めぐみさんと話している間に、ダッシュで学校に向かった姫は登校を済ませてしまったようだ。
念のため配置していた別部隊の順調な働きぶりに感謝しつつ、携帯電話を握り直してさらに問う。
「他に何か、この場で報告すべきことはあるか」
『はっ。さらに先回りして、姫がお通りになられる路上の障害物を悉く排除する目的でゴミを隊員総出で拾っていたところ、御近所のご老人酒田さん夫婦に感謝され、お褒めの言葉と飴玉、ゴミを入れる用途のビニール袋(大)を戴きました。無論、リサイクルのために分別も徹底しております』
「また『地域に貢献した模範生徒』として表彰される日も近いな」
うむ。素晴らしきかな、忠誠心。
『その通りであります。さらにさらに、同部隊の特攻班、別名自転車通学班が姫の後ろから尾行していたところ、偶然にも引ったくりに遭遇しましたので一部会員が追跡。鮮やかな手並みで奴をぶちのめし、拘束した後速やかに通報して連続犯逮捕に協力したとの情報も入っております』
「警察に感謝状を贈られるのはこれで何度目だろうな」
しかし、これらの所行はあくまで、姫の尾行の間に起こった“偶然”の産物。いわば、活動のおまけのようなものである。
我らの目的はそんなことなどではない。
そう。姫宮夕紀を見守り、闘い、そして一心に愛でることのみ!
「了解した。では―――本格的に任務を開始する。そちらの会員にもそう伝えてくれ」
『はっ』
俺が通話を終え、携帯電話の電源を切ろうとした―――ちょうどそのときだった。
「会長! テニス部の会員から、朝練の様子の写メが届きました!」
『なにっ?』
テニスコート……校内で堂々と携帯電話を使用し、あまつさえ撮影にまで至るとは、なんたること!
素晴らしいじゃないかっ!
「メーリングで! メーリングで回せ!」
「今送ります!」
全員携帯電話を取り出し、待機。
そして受信を知らせるマークが出た瞬間に決定ボタンを連打、カッと目を見開く!
学校指定の、少しだぶっとしたジャージ。
さらりと額に掛かる髪、ラケットを振りかぶる真剣な表情。
ああ、それはどう見ても―――
『(かわぇぇぇのう)』
路上にたむろすゴツい男たちが一斉に、ほんにゃりと相好を崩す。
髪が張り付くほっそりした首筋とか僅かに光る汗の粒とか上気した頬とか、もう本当にたまらないね!
こうして犯罪者すれすれな笑みを口元に刻む俺たちは、姫が何か荷物を落としていた場合速やかに届け出るべく地面に目を光らせながら、競歩並みの速度で学校へと向かったのだった。
77
:
ピーチ
:2013/03/28(木) 07:08:51 HOST:EM114-51-160-221.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>
よろしくねーって説明を完全にスルーしてません!?
でも可愛いから許せるっていうのはやっぱ親子ゆえ?←
78
:
心愛
:2013/03/29(金) 09:21:43 HOST:proxy10050.docomo.ne.jp
>>ピーチ
夕紀母は夕紀より分かりやすい天然です←
ゆるふわ〜(・∀・)
外見は夕紀そっくり!
79
:
ピーチ
:2013/03/29(金) 21:04:07 HOST:EM114-51-148-105.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>
まさかの夕紀ちゃんよりも分かりやすい天然!?
…ねぇ、何かここにんゃんキャラって隠れ最強に誰かの母親多くない?(おい
男と女が似てるってのも何か面白いかも←
80
:
心愛
:2013/03/30(土) 15:04:38 HOST:proxyag074.docomo.ne.jp
>>ピーチ
確かにそうかもね!
アゼリアといいめぐみさんといい…方向は違えど息子を色々と凌駕してるよね…!
よく気づいたなピーチよ!
母親の外見生き写しの息子w
81
:
ピーチ
:2013/03/30(土) 20:55:59 HOST:EM114-51-184-84.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>
だーよねー! 色んな意味で子供を凌駕する母親w
何か気付いたーw
だって見た目が…っ!←
82
:
心愛
:2013/03/31(日) 20:30:38 HOST:proxyag111.docomo.ne.jp
「……なんで、僕が着替えてるときは誰もいないんだろ」
我々が睨みを利かせて不届き者を締め出しているからです。
部活を終えた姫が使用中の男子更衣室前に仁王立ち。
筋骨隆々、いかにも屈強な容姿の会員がずらりと並べばそれだけで、子供も大号泣の威圧感を醸し出すのだ。
また同じく、体育の着替えやトイレのときなども、授業終了のチャイムと同時に集合して警備を行っている。
「不思議だなぁ……」
ササッ。ガラガラッ。
着替え終えた姫が出てくる前に、我々は素早く身を隠した。
゚・:*:・。☆゚・:*:・゚☆。・:*:・゚・:*:・。☆゚・:*:・゚☆。・:*:・゚
「あ、あの……っ、姫宮さん!」
「はい?」
「何故かいつも変な奴らに邪魔されちゃうからこんなとこで言うけど……この際男でもいい! お願いします、俺と―――」
「おっと足が滑ったァ――――ッ」
「おっと手が滑ったァ――――ッ」
「ひぎゃああああ!? またお前らかぁぁあああ」
サッカー部が足払いを仕掛け、ラグビー部が華麗なタックルとパンチのコンボでぶっ飛ばす。
念のため、締め技専門の柔道部も待機済みだ。
「……あれ? 今、そこに誰かいませんでしたか?」
「気のせいでしょう。虫は一匹いましたが」
「そっか……僕の聞き間違いかな。ちょうちょだったら見たかったなぁ」
首を傾げる姫の愛らしさに、今にも昇天しそうに身悶える会員たち。
だが、これはまだ序の口。
我々の活動はこれからが本番だ。
゚・:*:・。☆゚・:*:・゚☆。・:*:・゚・:*:・。☆゚・:*:・゚☆。・:*:・゚
「あ、あのっ! 自分一年なんすけど一目惚れし」
『トゥラッシャアアアアアアア!!』
「ぐぎゃあああ!!??」
゚・:*:・。☆゚・:*:・゚☆。・:*:・゚・:*:・。☆゚・:*:・゚☆。・:*:・゚
「ぐふっ、可愛いねぇ。学ランなんか着てコスプレかい? 金は払うからおじさんが楽しいことを教えて」
『フォワァアア――――!!』
「うぼぁあああ!? な、なんなんだね君たちはぁああああ!!」
゚・:*:・。☆゚・:*:・゚☆。・:*:・゚・:*:・。☆゚・:*:・゚☆。・:*:・゚
「―――さて、今日も御苦労だった。……我々の目的は只一つ!」
『姫の笑顔の為にッ!』
「よろしい。以上、解散!」
合い言葉で結束を確認した後、解散を宣言する。
整列したメンバーたちは、その合図にすぐにばらばらに―――は、ならなかった。
一人の会員が代表するように、俺の前に進み出る。
「会長。これからの活動、如何されるおつもりですか。受験生ですし、私たち三年は引退を考えるべき……だと」
言いながらも、しょんぼりと肩を落とす会員。
姫と離れるのが、つらいのだ。
この上に高校も別になったら、もう姫のお姿を見ることさえも叶わなくなる。
「姫は……ほぼ間違いなく、南高を受験するでしょう」
姫は優秀な方。
ここ周辺の高校としては最難関である、彼の父親の出身校を狙うことは安易に想像がつく。
でも。
だから、なんだ。
「……お前らの想いは、その程度か?」
会員たちが、はっとしたような顔をする。
友情とも、恋とも違う。
尊敬。憧憬。
その言葉がおそらく、一番近い。
彼―――姫宮夕紀の、奇跡的なまでの純粋さと、内面の美しさに、我々は本気で惚れているのだ。
それを守るのは、我々の義務。
……いや。
何に代えても成し遂げたい、ただ一つの願いだ。
「そうだ、今の成績がなんだ!」
「やったるわ!」
「よし。残り半年強、姫への想いを全て勉強につぎ込め! 文字通り死ぬ気で励むぞっ、お前ら!」
『おう!』
また、高校で姫を迎え入れてやる!
「目指せっ、全員合格!」
『姫の笑顔の為に!』
*・゚゚・*:.。..。.:*・゚゚・*・゚゚・*:.。..。.:*・゚゚・*
―――後日談として。
とある県南の中学校が、例年の五倍近くの某高校合格者数を叩き出した。
地元テレビ局の取材に、一部の男子生徒は誇らしげに、こう語ったという。
「信念は、不可能を可能にする」
83
:
心愛
:2013/03/31(日) 20:33:53 HOST:proxyag111.docomo.ne.jp
>>ピーチ
シュオンもアゼリア似だしねw
さて、次からは美羽視点で入学式の話いくよ!
やりたいことが山ほどあって困るけどね←
本編と同時進行です(・∀・)
84
:
ピーチ
:2013/03/31(日) 21:01:32 HOST:EM114-51-186-14.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>
ちょっと待って会員さんたち何か怖いよ!?
と思ったら何気に優しい(?)
美羽ちゃん視点待ってますそしてコラボで使わせて頂きますー!←
85
:
彗斗
:2013/03/31(日) 23:20:25 HOST:opt-115-30-217-109.client.pikara.ne.jp
心愛さん>>
か…会員さん達、物凄くかっけぇ……!!(と同時に物凄く怖えぇ!!)
一言で表せば……正に執念の塊! いやぁ……青春って凄いですね☆(高一が何を言うかww)
実は……ソフィア様(現在進行中)、ミレーユちゃん(参戦内定)と来れば……。私がお願いしたい事は流れで……?
考えている事は恐らく当たってると思います。出来ますか……ね?
86
:
心愛
:2013/04/01(月) 19:54:20 HOST:proxyag097.docomo.ne.jp
>>ピーチ
怖いけど優しいんだよw
美羽一人称は割とすらすら書けた!
慣れてきたからかな←
話のまとまりとしてはあと二つ、短くも美羽視点でお送りいたしますw
>>彗斗さん
怖いけどカッコイイ……(笑)
せっかくの青春にこんな暴走をさせてしまうとは執念恐るべしw
高校入学おめでとうございます! 今からかな?
え、えっと…………マジですか………?
彗斗さんなら楽々できるような気もしますけども! しますけども!
ミレーユたちと同じく、他のここあキャラと基本的に鉢合わせさせないようにしていただければ……ええ。喜んでお貸ししますとも!
ただその前に、中二病に男の娘(夕紀のことです)にイケメン女にドジっ娘といろんなヒロイン(?)が揃ってますし、まずは本編だけでもサラッと流し読みしてもらえたらいいなと思います!
長いけどソラの波紋よりは無駄話が多いぶん、読みやすいんじゃないかと←
87
:
心愛
:2013/04/01(月) 19:54:49 HOST:proxyag097.docomo.ne.jp
『ぼくの本音』
手のひらに汗が滲む。
特にすることもないのにケータイをいじるのは、ぼくが落ち着かない気分のときの癖だ。
危なげなく姉と同じ高校に合格し、迎えた入学式当日。
姉の執事に送ってもらってなんとか門はくぐったものの、緊張と吐き気に耐えきれずにすぐさま保健室に駆け込み、入学早々に入学式をすっぽかしてしまった。
保健医は優しい人で、深いことは何も聞かずに休ませてくれたけれど。
さっきから教室の隅で後ろから二番目の席という悪くはないポジションに堂々と座するぼくには、絡みつくような嫌悪、というわけではないが『…………な、なんで?』という遠慮がちな視線が恐る恐る向けられている。
それもこれも、今日のぼくの装いの所為だ。
ふんわり膨らんだ姫袖のブラウスに、アシメトリーなデザインが気に入っている漆黒のコルセットスカート。
薔薇のケミカルレースとグログランリボンのヘッドドレスは黒を映えさせる純白が基調になっている。
ぼくが愛してやまない闇の装束、早い話がゴシック・ロリータ。
さらには、今は見えないだろうが紅の(“赤”ではない、断じて)カラーコンタクトまで嵌めている。
……繰り返そう、此処は高校の、しかも入学式後の教室内だ。
浮いている自覚はある。
むしろ、これで浮いていないと思っていたらそいつはおそらく脳に疾患がある部類の人間だろう。
露骨な嘲笑ではないにせよ、ぼくの肌を撫でるのは隠しようもない、他者からの好奇心や訝しみの眼差しだ。
全てが今まで、ぼくの人生で何度も感じてきたもの。
ぼくは目立つのが好きなわけでは決してない。
むしろ逆だ。
けれど、変わり者の烙印を押され、自然と遠巻きにされることに、変な安心感や心地よさを覚えるのは事実。
さすがに中学では制服通学だったからこんな奇抜なファッションをすることはなかったけれど、それでもやはり、こんな話し方でつれない態度を取っていたぼくは、同級生たちにいつも冷たい目を向けられていた。
そこそこ好成績をキープしていたのと、後輩の間でも有名な誰かさんの名前のお陰で、大きなイジメにまでは発展しなかったが。
「……?」
と、ぼんやり回想していたところに突然メールが届いたのに気づき、慌てて開く。
やはり姉からだ。
流行だかなんだか分からないが、小文字絵文字顔文字が乱舞する読みにくい字列。
その中で、ぼくを気遣う旨の文句がずらずらと並んでいた。
二年生は授業日のはずなのに、何をやっているんだか。
内心苦笑しながら返信を打つ。
……でも、姉が心配するのも、頷ける。
この一年間、彼女には本当に、迷惑と心配ばかり掛けさせていたから。
あんなことがあったのに、彼女たちの優しさを良いことにして、また同じ過ちを繰り返そうとしているぼく。
全く、愚かしい。
担任が入って来て話を始めたのでケータイをしまい、頬杖をついて窓を眺める。
いかにも気怠げに見えるように取り繕いながら、すぐにでもこの空間から逃げ出したい衝動を懸命に堪えた。
88
:
心愛
:2013/04/01(月) 19:55:31 HOST:proxyag110.docomo.ne.jp
やがて、担任の指示で自己紹介が始まった。
正直に言って、関わる予定のない人間の個人情報には全く興味がない。
適当に聞き流すことしばらく、軽そうな印象の男子生徒が無難に話を終えて席に戻り、ぼくの左隣の男子生徒が立ち上がる。
隣の顔くらいは見ておいてもいいかと思い、彼が違う方を向いている間に一瞬だけ視線を走らせた。
「えーと、……初めまして、日永圭と言います。中学は―――」
ぎこちなくはにかみながら、たどたどしく言葉を選ぶ男子生徒。
これと言って特徴はないものの、なんとなく人の好さそうな顔立ちをした彼は、誰からも好感を持たれるタイプのように思えた。
何故か、ぼくはそっぽを向きながらもいつの間にか彼の声に耳を傾けていて。
彼は漫画やゲームが好きだそうだ。
リア充的外見のくせに、こちらの文化にも理解があるとは。
……さぞや、人気者になることだろうな。
隣に戻ってくる彼の気配を感じながらそんなことを思って―――
……解ってる。
こういう人は、ぼくには手が届かない存在だ。
顔も、雰囲気も全然違うのに。
『ある人』の影と重なって、必死に封じた記憶が甦って―――ひんやりと胸の奥が凍り、斬りつけられるような痛みを覚える。
今、この瞬間もクラスメイトたちに笑われ、後ろ指を指されている気がして、耳を塞ぎたくなる。みっともなく、震え出しそうになる。
怖い。
怖い……っ!
ついに自分の番が回ってきても、ぼくは動くことができなかった。
自分がしていることに、これからしようとしていることに対するとてつもない不安に、押し潰されそうになる。
ざわめきが遠い。
……馬鹿か、ぼくは。
今更何を迷っている。
ぼくが弱い、ただのちっぽけな人間だなんてこと、とっくの昔から解っていたことじゃないか。
「ゆ、結野……さん? 体調が悪いのかな?」
ぐっと、人知れず唇を噛み締めた。
ぼくは。
何の為に此処にいる?
こんな格好をしている?
脳裏にとあるキャラクターの、銀髪を靡かせる凛々しい姿を思い描く。
肉親が殺されても美しい心と誇りを失わず、復讐の為に自ら血を浴びて戦う姫君。
ぼくの何億倍もの痛みを乗り越えて、凛然と顔を上げることができる。
そんな彼女のようになりたいと、そう思ったからじゃないのか。
隣の男子生徒が、困惑の視線を向けてくるのが分かる。
もう、此処まで来てしまったんだ。こんなところで中途半端にして逃げることこそ、一番卑怯で、恥ずかしいことではないのか。
……やってやる。
徹底的に、“理想の自分”を貫いてやる。
心が固まったのを感じ、覚悟を決める。
仕方ない、とでも言うように溜め息をつき、ゆっくりと席を立つ。
靴を鳴らして歩き、教壇へ。
新しいクラスメイトたちを、目を逸らさずに、まっすぐに見る。
恐れるものなど何もない。
少しでも自分を大きく見せるように胸を張り、挑発的な笑みを浮かべて。
ぼくは、ぼくが一番格好良いと思う台詞を吐いた。
「……初めまして、と言うべきかな。
ぼくのこの世界での名は結野美羽。またの名を、ミウ=黎(ローデシア)=リルフィーユ―――魔術組織《純血の薔薇(Crimson)》の一級魔女にして吸血姫(ヴァンパイア)、赤の十四番《黄昏(イヴ)》。
……下等な人間共と慣れ合うつもりは微塵もないが、まあ一応、宜しくとでも言っておこうか」
89
:
ピーチ
:2013/04/01(月) 21:10:04 HOST:EM114-51-206-242.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>
怖いけど優しい子供好きw
美羽ちゃんちょー可愛いー!
結局美羽ちゃんって強いもんね!←
90
:
心愛
:2013/04/02(火) 12:32:54 HOST:proxy10049.docomo.ne.jp
>>ピーチ
ヒナ視点では分からなかったけど、自信満々に見えた美羽も、最初はけっこう色々悩んでたんだよという過去話でしたw
心の強さでは、並大抵の人には負けないよ!
次からは一気に現在に飛びますw
前半は、あたふたする美羽を生暖かく見守ってやってくださいな。
91
:
心愛
:2013/04/02(火) 12:33:27 HOST:proxy10050.docomo.ne.jp
『月下、少女は願う』
ある日の夜。
ぼくは自室のベッドの上で、ノートパソコンの画面を凝視していた。
「…………」
【超↑よく当たる!? 恋愛占いっ☆】
ピンク色の文字で書かれた頭の悪そうなタイトルを、じっくりと時間をかけて読んで。
「……美空の奴、またぼくのパソコンを勝手に使ったな……?」
全く、ドジで不器用で極度の機械音痴なのにこんなものを使って。ぼくの留守中に壊れたらどうしてくれる。
一ノ瀬に美空の監視を強化するように言おうと心に決めながら。
【★異性との相性占い★】
「…………」
クリック。
「ふ、ふん……くだらない。実にくだらないな。こんな迷信めいた遊びに興じ、あまつさえその結果に頼るだなんて。低脳な人間共のおめでたい思考には全く恐れ入る」
心底呆れ返りながらもさらにクリック。
「……む、自分と相手の名前、それから……?」
キーを押して必要事項を入力してからケータイを手に取る。
ぼくは暇なので、とっても暇で暇で今にも死にそうなくらいなのであくまで仕方なく、自然な流れで眷属にメールを送ることにした。
『君の血液型と星座と生年月日を教えろ。3秒以内だ』
…………………ピピピピピッ!
37秒もかかった。遅い。
『はあ!? 急になに!? 何に使うんだよ怖いんだけど!』
『うるさい早くしろ』
『えええええ』
というやり取りの末に。
「まったく……。これだからヒナは」
まんまと目的の情報を手に入れたぼくは、ちょっとだけドキドキしながら『決定』ボタンをクリックする。
すぐに、パッと結果が表示された。
【とても良い相性です。
多少のいざこざがあっても簡単には断ち切れない良縁です。
きっかけがあれば最高のパートナーになれるはず】
「眷属なのだし……当然の結果だな。もうその“きっかけ”とやらを得るには遅いが、機械にしてはなかなか分かっているじゃないか」
嬉しさで独り言までもが弾む。
まだ文章は続いているので、徐々に下へと辿っていく、と。
【いずれは良い恋人として素敵な関係を築けるでしょう】
「こっ……!?」
カッと頬が燃え上がるように熱を持つ。
「ばっ……馬鹿か君は! ヒナはただの眷属だぞっ? そうやってすぐに恋愛事に結びつけるなんて、そんな低俗なっ」
憤慨してべしべしとシーツを叩く。
相手がもの言わぬ物体であるのをいいことに、一方的に怒鳴るぼくの姿は端から見たらかなり珍妙なものであっただろう。
【あなたの片思いの場合↓】
「だっ誰が誰に片思いだってっ!?」
【あなたは、彼につい憎まれ口をきいてしまうことはありませんか?】
「う」
見透かされているような心地に、口を噤む。
ヒナのことなんてまったく全然どうでもいいがっ、彼には確かに、好き放題きついことばかり言っている気がする。
【いくら相性が良くても、あなたの方から行動を起こさなくては何も始まりません】
「うう」
【具体的には】
「具体的には?」
【手紙などきちんとした感じは避けて、短いメールなどで冗談ぽく『好き!』と伝えてみましょう】
「す……っ」
ケータイについ目をやってしまった自分に気づき、ハッとして脚をじたばたする。
「でっできるわけがないだろう! ふざけるな! 第一ぼくはヒナとそういう関係になりたいわけではなく、」
【そうすれば、ケンカもするけど、誰もがうらやむ仲良しなカップルになれるでしょう!】
「人の話を聞けぇッ!」
ぜえぜえと呼吸する。
顔が熱い。
「……っああもう! まったく当てにならないな、この占いはっ!」
ぺちぺち頬を叩いてから、ぼくは最後の行に視線を移した。
【では、あなたは相手からどのように思われているでしょうか?】
92
:
ピーチ
:2013/04/02(火) 19:05:08 HOST:EM114-51-136-117.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>
美羽ちゃーん! 相手機械だよー!?
……美羽ちゃん、美空先輩のことどんな風にとらえてるの…?
やっぱりヒナさんと美羽ちゃんのやり取りって読んでて和むー←
93
:
心愛
:2013/04/02(火) 20:42:45 HOST:proxy10025.docomo.ne.jp
>>ピーチ
「何でもできて頼りになるある意味憧れの姉(※ただし超絶ドジ)」みたいな?
カッコの中がとっても重要なのです←
確かにいいコンビかもねw
94
:
心愛
:2013/04/02(火) 20:44:56 HOST:proxy10022.docomo.ne.jp
【あの人は今、あなたのことを深く想っています。
でも、何かしらの理由があって、その気持ちを意図的に表に出さないようにしていることが暗示されています。
信じられないかもしれませんが、心の中ではあなたのことを―――】
指先が凍った。
思考が急速に冷めていく。
「……違う」
唇が、震える。
「馬鹿か……ぼくは」
甘い誘惑に乗せられ、一時でも翻弄されてしまったことが情けない。
……そんなわけがないんだ。
素直に信じて喜ぶには、その話はあまりにも虫が良すぎて。
ぱたんとノートパソコンを閉じる。
起き上がって腕を伸ばし、カーテンを開けた。
窓の外に、金色の月。
「……ヒナ」
儚い光を放つそれを見上げながら、ぼくは小さく笑う。
「ぼくは、弱いよ」
ヒナは今まで、同級生と上手く馴染めず、肩身の狭い思いをしてきたと言う。
けれど、そんな過去を完全に振り切って、今はたくさんの仲間に囲まれて笑ってる。
彼は元々、それだけの強さを持った人間だったんだ。
「過去に縛られているのは、ぼくの方だ」
忌まわしい記憶。
消し去りたいと思うのに、意識すればするほど鮮明になり、ぼくを苦しめていく。
ぼくが。
恋に臆病になった、理由。
「ぼくは……君を、信じても、いいのかな」
ヒナは、ぼくのことを笑わなかった。
それだけじゃない。
弱くて愚昧で、身勝手なぼくを受け入れて、眷属になるとまで言ってくれた。
『心配しなくても、俺は結野から離れたりしない。結野と一緒にいて迷惑だなんて絶対に思わない』
『俺は、約束は守る奴だよ』
仕方がないなぁとでも言いたげな顔で、文句を垂れることもあるけど、それでも最後にはぼくの我儘を聞いてくれる。
優しい、ヒナ。
ぼくは彼を―――“眷属”という名の枷で、縛りつけている。
「君の優しさを利用することを……許してくれ」
虚勢を張り、欺瞞で弱い心を覆い隠すことで、自分を護ってきた。
今までも、良心や同情心で仲良くしてくれようとするクラスメイトは、少しだけいた。
そのすべてを、ぼくは冷たくはねのけてきた。
到底こんな自分は理解されるわけがないし、何よりぼくと一緒にいれば、それだけで彼らに迷惑が掛かる。
そう、ずっと信じていたのに。
それなのに。
ヒナに手を引かれるようにして前への一歩を踏み出し、ぼくは今までとはまったく違う、新しい世界を知った。
楽しい。
そう思える自分がいる。
自分の好きなものを、ぼくのすべてをひっくるめて、笑顔で迎え入れてくれる、あたたかい場所。
愚かな夢に囚われたぼくの居場所を、君が作ってくれたんだ。
「信じ、たい」
信じたいよ、ヒナ。
君の言葉を、
自分の、想いを。
認めたい。
でも、認められない。
足を踏み外して壊してしまうより、ずっとずっと、今の変な、心地よい関係でありたい。
「……忘れよう」
窓枠をぎゅっと握った。
過ぎた幸せの先に待っているのは絶望だと、ぼくはすでに知っている。
もう少しだけ。
優しい君に甘えてもいい?
―――願わくは、今だけは。
君と同じ色の夢を、見られんことを。
95
:
ピーチ
:2013/04/02(火) 20:45:35 HOST:EM49-252-217-126.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>
カッコの中がね! そうなのね!←
……ある意味とは?
いいコンビだよね! 美羽ちゃんとヒナさんw
96
:
心愛
:2013/04/03(水) 22:30:44 HOST:proxy10059.docomo.ne.jp
>>ピーチ
いくら文武両道で才色兼備な自慢の姉でも、三歩歩いてコケる姿を見れば尊敬の気持ちも萎えるよね……という意味でw
カップルの前にいいコンビが成立しておるw
97
:
ピーチ
:2013/04/03(水) 22:38:26 HOST:EM114-51-142-165.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>
三歩歩いてコケる姿はさすがに……ねぇ?←
確かにいいコンビw
98
:
心愛
:2013/04/04(木) 21:08:59 HOST:proxyag102.docomo.ne.jp
『バレーボール』
たんっ、と華麗な跳躍。
床を蹴ると同時、ひとつの影が敵サイドに強烈なアタックを打ち込んだ。
きゃーっと黄色い歓声が弾ける。
『王子ーッ』
『柚木園くーん!』
すらりとした細身、キラキラ粒子を纏う黒髪。秀麗な美貌には無駄に清々しい笑顔。
水際立って麗しい美男ぶりを披露している、れっきとした女子生徒であるぼくのチームメイト―――柚木園苺花(ゆきぞの まいか)がにこやかに微笑んで周囲に手を振れば、キョアアアアア!! と最早怪鳥に近い叫びが体育館内に充満する。ちょっとしたアイドル状態だ。
ヒナたち男子は外の運動場に行っているので女子だけの、憂鬱な午後の体育の授業。
女子に甘いと評判の男性教師が傍観する中、とても生ぬるい試合が展開されていた。
一応対戦の形式を取っているものの勝負なんて真剣なものではなく、“彼女”の勇姿にきゃあきゃあ声を上げることが彼女らの活動みたいな感じになっている。
そんなわけで暇なぼくは後方で、ぼんやり“彼女”の活躍を眺めていた。
……うーん。
同じ色白でも全然違う。
もそもそとぼくの美意識に反するキッズサイズのジャージの袖を捲り、不健康極まりない蝋人形のように蒼白い自分の肌と、そのしなやかな肢体を見比べてため息をついてみたり。
……この暑い中で長袖なんておかしいのは分かっているけれど、人前に肌を晒すのにはまだ少し抵抗があるのだ。
ジャージにレースを縫い付けたら変だろうか。変だな―――などと、一人でくだらないことを黙考したりしていると。
「美羽ー」
「にゃっ」
急にボールが飛んできて、ぼくは反射的に飛び退いた。
「あ……危ないじゃないか! いきなり何をするっ!」
「うわなに今の可愛い!」
「こらみうみう、ドッジボールじゃないんだから! 王子もときめかないの!」
「サーブ、美羽っちの番だよー」
やっとのことで把握する。練習を兼ねて、サーブを打つ役を順番に回しているらしい。
だが、引き受けるという選択肢はない。
姉と違ってへっぽこのぼくからすれば、バレーなんて申し訳程度に隅っこに突っ立って、たまに外に出るボールを拾って無言で返すだけの競技なのだから。
「何故ぼくがっ」
「あ、そこじゃなくてもっと前からやった方がいいと思うよ? ほらこっち」
「? ここか?」
……あれ? と遅れて気がつくと、いつの間にか敵味方関係なく全員が、ぼくを見守りながらにこにこ微笑んでいた。
な、何故こんなことに。
「美羽、大丈夫? こう構えて」
「……む、」
アンダーハンド? だかなんだか知らないが、ぼくが困っているのを見て取りすぐ傍に寄ってきた“彼女”がそのやり方を丁寧に教えてくれる。
手に持った球体はずっしりと重い。
どうして普通の人間はこんなものをほいほい投げられるのだろう。理解に苦しむ。
「点数とか関係ないし、気楽にやって大丈夫だから」
「わ、分かったから撫でるなっ」
頭に乗った“彼女”の手を振り払う。
足を踏ん張り、ぐっと力を込める。
こうなったらヤケだ。
―――ぺすっ。
案の定、威力は限りなくゼロに近かった。
間抜けすぎる音を立ててやっとのことで宙に浮いたボールは、へにゃへにゃした軌跡を描き、ネットの上方に当たって敢えなく落下―――するかと思われたが、
「あ、あれ……?」
誰かの困惑したような声。
ぼくもぽかんとしてしまう。
……ギリギリ、本当にギリギリで、入っ……?
察知した一人が慌てて滑り込もうとするが、ボールはふよふよ飛びながらその腕を掠り。
最後にはぽてりと床に落ち、弱々しく跳ねた。
わっ、と、喝采が沸く。
「やるじゃん、美羽!」
ハイタッチを求めるように両手を差し出してくる“彼女”。
“彼女”にとっては高いどころか低い位置だけれど。
「……ん」
無視するのも戴けないので、一応、ぺち、と叩いておく。
素直に応じてしまったぶん、なんだか妙に気恥ずかしくて。
いつもの癖で、ふいと熱い顔を逸らした。
「……もうやらないからな」
99
:
ピーチ
:2013/04/04(木) 21:45:49 HOST:EM49-252-234-200.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>
シェーラちゃんの声久々に聴いた気がする!←
美羽ちゃん可愛すぎるよー! 頼りない女の子って可憐だよねー!
あたしの女キャラも結構非力な方だと思うけど(おい
100
:
心愛
:2013/04/05(金) 16:05:34 HOST:proxyag118.docomo.ne.jp
>>ピーチ
可憐と非力を行き過ぎて一人じゃ生きていけなくなってるからね、美羽…。
誰かさんが大切に甘やかしすぎたせいだな、うん。
ヒナに養ってもらわないとね!
あと、試験前につき久しぶりに一週間くらいお休みさせて戴きたく存じますw
そしたら邪気眼少女の旅行と、ソラの波紋のラストバトル前に入りますかねー←
春休み中に結構進んでよかった!
美羽パートは終わったから、とりあえずしばらくこっちは更新ストップしますよろしくです!
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