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『邪気眼少女』 *Another Story*

12心愛:2013/02/09(土) 17:19:50 HOST:proxy10049.docomo.ne.jp


『Prince or Princess? 7』







「明日土曜日なのに珍しく課外ないし、ゆっくり休むといいよ。……ところでまいちゃん」



ふわっとした天使の笑顔に、なんかもう色々考えるのが面倒になって思いっきり気が緩んでいたところ、



「あの、ね。そのー……ボタン、留めてくれるとありがたい、かな……」



ボタン?



胸に視線を落とす。
今まで布団に隠れていた、ボタンがところどころ外れて肌色が覗いたパジャマが目に入り、



「―――っ」



慌てて胸元をかきあわせる。



「ご、ごめんなさい! 見てないよっ、見てないんだけどね、」



「……分かってる」



まだ朦朧としているためか、上手く指が動かない。
最後の方で断念して、再び胸まで布団を上げ、横になった。



「はい」



すると、額に冷たいものが乗る。
解熱用の冷却シートだ。
火照った身体に気持ちがいい。


多分、わざわざ買ってきてくれたんだろう。



「……ごめん。迷惑かけて」



「そ、そんなことないよ! むしろ役得っていうか……」



「なにそれ」



すると夕紀はちょっとだけ恥ずかしそうに、笑った。



「寝顔、可愛かったし」



「……なっっ」



比喩じゃなく、本当に顔から火が噴くかと思った。

適当な言葉を探して唇をわななかせる私に、夕紀はさらに照れまじりに続ける。



「あと、最初に寝ぼけてたときも。普段からあんな風に甘えてくれればいいのに」



「できるわけないでしょっ?」



ああもう耐えられない。


寝返りを打って顔を隠す。
王子様で通っているこの私が、風邪ごときに負けてあんな醜態を晒してしまったなんて、今更ながら恥ずかしすぎる。


……でもそういえば、彼氏がお見舞いに来て色々世話を焼いてくれる、なんてベタな展開の少女漫画があったなぁ―――ってバカか私は!



「熱計っとく?」



「……いい。もっと熱上がりそう」



言ったら、本当に熱が上がってきたような気がしてきた。
頬や耳が燃えるように熱い。


それだけじゃなく、何故か胸がむずむずして仕方なくて、わざとぶっきらぼうな声を装った。



「いつまでいるの」



「んー……まいちゃんが寝てくれるまで、かな。起こしちゃったから」



やや遠慮がちに伸ばされた指先が、額に掛かった髪を撫でる。
それが不快ではなく、むしろ心地いいと感じてしまう自分が無性に照れくさい。

……苦手意識を持っていたはずの夕紀を相手にこんな風に気を許してしまうのも、さっきから心臓がうるさく騒いでいるのも、全部全部、熱で頭が浮かされているせいだ。


そう思うとほっとして、安心して夕紀のなすがままになることができた。



「可愛い部屋だね」




部屋にこれでもかと並べられた、可愛らしいぬいぐるみや雑貨を見たのだろう。
私は自嘲気味に返す。



「笑ってもいいよ」



その持ち主に、全くと言っていいほど似合わない―――日々忙しい私の疲れを癒してくれる、彼ら。



「笑わないよ」



夕紀の優しい声が、淡く耳をくすぐった。



「まいちゃんがどうして、そんなに自信が持てないのか分かんないけど……まいちゃんが好きなものを、笑えるわけがないでしょう?」



ふっと意識が遠くなる。


浅いまどろみの中で、こんな声が聞こえたような気がした。



「……ごめんね。彼氏でもないのに、女の子の部屋に勝手に上がり込むなんて、男として失格だよね。……でも、どうしても心配で仕方なくて……ももちゃんの好意に甘えちゃったんだ」



気配が動き、静かに抑えられた足音が、一度だけ止まった。



「僕、いっくんたちに伝えてくるよ。心配してたから」



ドアが開く。




「今日のことも、内緒にしておくね―――おやすみ、まいちゃん」


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