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『邪気眼少女』 *Another Story*

2心愛:2013/02/03(日) 17:35:13 HOST:proxy10052.docomo.ne.jp


『Prince or Princess? 1』







―――片思いなら、いくつもしてきた。




『まいかちゃん、今日スカートだー』



『珍しいね』



薄っぺらで魅力の欠片もない身体と、同年代の男の子よりもずっと高い身長は、それでも頑張って伸ばしていた長い髪や赤いランドセルとちぐはぐで、いかにも不格好に見える。

そんなことはもちろん、世の中には鏡というものがあるのだから、承知していたけれど。

どうしてもと母親に押し付けられ、スカートを嫌々ながら身に着け登校してきた私を、クラスの女の子たちは笑顔で褒めてくれた。

笑われるんじゃないかと内心びくびくしていたけど、安心してほっと息をつく。



『……そう、かな』



『そうだよー!』



『自信持てばいいのに』



優しいみんな。
甘い言葉のひとつひとつを真に受けたくなる自分が恥ずかしくて、スカートの裾を少しでも伸ばすように、震える手でぎゅっと握った。



『ねー、まいかちゃんかわいいよねー?』



『え―――』



一人の子がにこにこ笑い、悪気なく男の子のグループに話を振る。
慌てて止めようとしたけれど間に合わない。
一番手前で喋っていた男の子が、こっちを振り返った。




『……はぁ?』




身を竦ませた私を冷たい目で睨み、吐き捨てる。




『ばっかじゃねーの? キモいんだよ、オトコ女』




どくん―――と、その辛辣な台詞が重く、胸にのし掛かった。
急速に全ての感覚が遠くなり、目の前が真っ白に霞む。



『男子ひどーい!』



『なにそれ、意味分かんなくない!?』



『気にしない方がいいよ』




―――いつも遠くから想うだけ。


―――気持ち悪いと蔑まれ、嫌われるより。



―――想いを閉じ込めて、溢れないように気をつけて。

―――遠くから見るだけの、ささやかな幸せに浸って、満足していればそれでいい。




『……平気だよ』




だから、私は笑う。




『私、みんなみたいな女の子の方が好きだもの』




―――長い間、もがいてもがいてできたことと云えば。


―――気持ちを深く、心の奥へと埋めることだけ。




中学も高校も、迷わず私服通学のところを選んだ。

髪を短く切り、わざと男っぽい服を身に着けた。


大好きな、可愛い女の子たちに囲まれる、夢のような毎日。



なのに時折、一人になったとき、ふと思うことがあった。





―――……恋がしたい。


一度でいい、恋がしたい。


誰かの大切な人になりたい。


息が詰まるくらい、激しく愛し、愛されたい。


そんな、本当の、恋がしたい。




でも、そんな都合がいいことが起こるわけない、なんてことは―――


もう、分かっていた。


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