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邪気眼少女の攻略法。

78ピーチ:2012/10/07(日) 12:45:32 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

えー!?まさかの美羽ちゃん凄い悪戯好きだったかんじですか!?

いやいや、クリスマスのトラップはお父さんが可愛そうだって←

79心愛:2012/10/07(日) 15:36:36 HOST:proxyag120.docomo.ne.jp
>>ピーチ


サンタでなくお父さんを生け捕りw

一応悪気はなかったんだ!(笑)

80ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/10/07(日) 16:26:34 HOST:EM117-55-68-140.emobile.ad.jp


正直ヒナくんがすごくタイプですw
更新されるたびわくわくしながらみてます!
がんばってください。

81ピーチ:2012/10/07(日) 18:01:07 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

まさかのお父さんを生け捕り!?

そこは一応なの!? ねぇ!?

82心愛:2012/10/07(日) 18:24:32 HOST:proxyag109.docomo.ne.jp






そう。

こいつは、結野美羽は、他人から自分がどのように見られているのか分からないほどバカじゃないのだ。



「じゃあ、俺が言うことじゃないけど……そういうの、やめなよ。これからもっとつらくなるのは結野だし」



彼女がどんな空間にいようと、どんな人たちに囲まれていようと、結野を蔑視する視線は絶えずつきまとうだろう。


常識に反した存在の彼女が、自分が望んでやっているにしても、その奇異な言動ゆえにつらい目に遭うのを、俺は見たくない。



「今ならまだ間に合う。明日からでも、何もなかったような顔して普通に学校に来ればいいじゃん。基本優しい奴らばっかだし、きっと受け入れてくれるから。だから、もう―――」





「―――やめない」





固い、固い意志を込めた赤い瞳が、怖いくらい静かに俺を見返した。



カーテンがふわりと浮き上がる窓からは黄昏の仄かな光が差し込み、黒く艶を帯びた髪を淡い金色に透かせる。



「……どうして」



「何故君がそこまでぼくに執着するのかは理解できないが、なにも考えなしに言っているわけではないことは分かった。でも、君には悪いが、何と言われようともぼくはやめないよ」



「……だからなんでだよ、自分では格好良いって思ってるかもしんないけど周りはそうは―――」



「なにが格好良くてなにが格好悪いかは、ぼくが決めることだ」



言い放ち、結野はベッドの上で膝を抱えて顎を乗せる。


「……それでは今度はぼくから問おう。君は昔、ヒーローごっこをしたことがあるか?」


「は?」


彼女の質問の意味が分からずに眉を潜める。


「そりゃ、人並みには」


なんとか戦隊なんとかレンジャーみたいなのは、多分どんな男の子でも夢中になる要素があると思う。

努力すればヒーローになれると本気で信じて、こっそり必殺技を練習したときもあったっけ。



「……その延長線上にあるのがぼくだよ」



結野は自身を嘲弄するような冷笑を浮かべる。



「小さな子供がヒーローや美少女戦士の真似事をするのは全く当然のことだろう? 人の手によって盛大に美化された虚像に憧れ、自分もそのような存在になりたいと願う。その理由はただ一つ、すごく単純だ。格好良いからだよ」



薔薇の唇が流れるように、彼女の本音を紡いでいく。



「バカみたいだとか気持ち悪いとか、大人になれとか。端から見たらどう思われるかなんてことは、ぼくが一番分かってる。でも、やめないんだ」



結野はまっすぐ俺の目を見つめ、凛然と声を張った。



「これが、この姿が、このぼくが、心からこうありたいと思える自分なんだ。周りの評価なんて関係ない。自分に嘘は吐(つ)きたくない」



……そっか。


俺にも、やっと分かった。



こいつは、



「だから、ぼくは逃げない。諦めない。誤魔化さない。絶対に、ぼくの信念を曲げない。これがぼくなんだから」



自分に正直で、



「笑いたければ笑え。バカにしたければ思う存分バカにすればいい」



子供っぽくて、



「誰になんと文句を言われようと、ぼくの気持ちは変わらない」



たまらなく純粋で。





「―――これが、ぼくがずっと探し求めてきた、“理想”の自分なんだ」





バカらしくて痛々しくてたまらないのに―――



すべてを吹っ切ったその堂々たる姿は、なんだか妙に、格好良くて。



―――……変わったのは、結野じゃなくて。



―――俺の方、だったんだ。





『わたしはね、“自分”をさがしてるの』





不思議で、素直で、誰よりもまっすぐで。




―――あの日の“ミウ”が、確かに今、ここにいた。

83ピーチ:2012/10/07(日) 18:46:53 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

美羽ちゃんがゴスロリしてた理由がやっと分かったー!!

うん、自分の意志を貫くって大変なんだね←

84心愛:2012/10/07(日) 21:39:39 HOST:proxyag117.docomo.ne.jp
>>ねここさん

ヒナですか!←
奴は基本的にノーマル属性なので地味ですが、お褒めの言葉ありがとうございます!嬉しいです!
ご期待に少しでもお応えできるよう精進したいです<(_ _)>



>>ピーチ

わかってくれてありがとう!
美羽は決して悪い子じゃないんだ、ちょっと努力する方向がアレなだけなんだ…!

85彗斗:2012/10/08(月) 00:09:03 HOST:opt-183-176-175-56.client.pikara.ne.jp
心愛さん>>
なんかすごく久しぶりです!

美羽ちゃんはイタイだけの子じゃなくて凄くカッコイイし大胆な子だったんだね……でも結局の所、痛々しい事には変わりないかもしれないけどねww

それにストーリーが凄く凝ってますよ! 身近で分りやすいし……何回見ても私のと比べたら……私のレベルが低過ぎて目から塩水が出てくるよww

86心愛:2012/10/08(月) 09:06:57 HOST:proxy10060.docomo.ne.jp






理想の自分を追い掛けていた、“ミウ”。



『きみ、いくつ?』



俺の答えを聞いて、一緒だと嬉しそうに笑ったあのときも、彼女は俺に『きみ』と呼び掛けていた。



なのに、



『ユイノ、ミウ。あなたは?』



二回目のときは、俺のことを『あなた』と呼んだんだ。



まるで、本当は今まで『あなた』と言ってきたのに、無理に意識して『きみ』と呼んでいるみたいに。



……あのときの“ミウ”は、一生懸命に自分を変えている途中だったのかもしれない。


らしくない背伸びをして、本来の喋り方まで変えて。


―――なにが一番『わたし』らしいだろう、一番格好良いだろう。
どうやったら、理想の自分になれるだろう―――



考えて考えて、ようやく見つけた“理想”がこの姿。


あのときからずっと、この“結野美羽”を続けているとしたら、



なんて―――強い。



蔑まれることも、笑われることも、憎悪を向けられることも、数え切れないくらい、何回もあっただろう。



でも、結野は負けなかった。



ずっとずっと一人で耐えて、決して屈せず、平気な顔をしながら、自分のポリシーを貫き通してきた。



その強く純粋な心はすべてをはねのけて、
今もなお、まばゆく輝き続けている。




「……はは……」




ああ、くそ。


格好悪いな、俺。


一丁前に常識人ヅラをして、今の結野を受け入れようとしなかった。


なにも知らないくせに、頑張っている結野を拒絶した。



そりゃあ、頑張ってる方向性はおかしいよ。
正直どうかしてると思う。


でも、さ。



たとえ他人にどう思われようと、自分の好きなものや、自分の在り方にそこまで情熱をかけられるっていうのは、ある意味ものすごいことなんじゃないのか?



……こいつは、こいつは本当に―――




「……バッカだなあ」




思わず笑いが漏れた。



「そうだよ」



『素』の結野が、ひどく華奢な肩をすくめてみせる。



「自分で考えた設定になりきって。この年になっても、虚勢を張り嘘で自分を隠すことが格好良いと信じてる。バカだから、大人に押し付けられる良い子の自分には我慢も納得もできない。ぼくは愚昧で身勝手で、………どうしようもなく、バカなんだ」




『わたしが一ばん、こうありたいって思える自分。他人におしつけられる、いい子の自分じゃなくて、わたしが心から、なりたいって思える自分……。そんなリソウの自分を、ずうっとさがしてるんだ』




頑固だと言われようがプライドが高いと言われようが、

誰にだって、絶対に譲れないなにかがある。



それが理解しがたいものなら、無理矢理肯定しなくたっていい。


でも、


そいつを、そいつの人生そのものを、頭ごなしに否定するってのは……それはちょっと、間違ってるんじゃないのか?



「……少し、話しすぎてしまったようだ」



ふっと笑む結野が言う。



「どうしてだろうな。こんなに喋るつもりは全然なかったのに……」



俯いた拍子に、耳に掛けられていた一筋の髪がはらりと零れ、ひんやりと透き通る頬を力なく打った。




「君といると……なんだか無性に懐かしいような、変な感じがするよ」




ゆっくりと噛み締めるように呟かれたその言葉が、空気を震わせた瞬間、



―――なにかが胸の奥深くで、響いたような気がした。

87ピーチ:2012/10/08(月) 20:06:36 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

美羽ちゃん……! 何年間も理想の自分で居ることが凄い!!

あたしとかって絶対無理だし←

88心愛:2012/10/08(月) 23:01:40 HOST:proxy10040.docomo.ne.jp
>>彗斗さん

お久しぶりです!

美羽はイタカッコイイ中二病患者を目指してます←
いや、ホンモノの方はどんなこと考えていらっしゃるのかここあごときには想像もつかないので美羽は完全にここあの創作ですが!

ストーリーに凝っていると思っていただけたなら何よりです(・∀・)
序盤から、学園ラブコメらしからぬ結構深いとこまで突っ込んでみたりしてますので。

いやいやここあなんて自分の不甲斐なさに穴という穴からシュオン作の毒物のごときスライムが(以下グロ描写につき自粛)




>>ピーチ

うん、ここあも無理だな←

美羽は心の強い子なので…
ここまで自分を貫き通せるっていうのはある意味すごいよねw

明らかに非常識な美羽を正当化するのは結構大変だったり。
ほんの一瞬でも、美羽の(ほぼここあの)めちゃくちゃな論理に、ヒナみたくだまされてくれたら嬉しい!





……プロローグの『きみ』と『あなた』は、あくまで自然に、できるだけ気づかれないようにねじ込んでみたのですがお気づきでしたでしょうか?(笑)

89心愛:2012/10/09(火) 07:56:33 HOST:proxy10028.docomo.ne.jp






「……結野」



赤い双眸がこちらを向く。



彼女のしなやかな強さに、そしてかつての“ミウ”の面影に触れ、


今や、俺はこの痛みを一人で抑え込むことが、できなくなっていた。




「俺、昔さ。いじめられてたんだよね」




結野が目を見開く。



こんなこと話したって、彼女を困らせるだけ。
なにも良いことなんてないのに。



何故だろう……どうしても、結野に聞いてもらいたくなってしまった。



勢いがついてしまえば、情けない言葉の吐露はもう止まらない。



「いや……あんな程度をいじめって言うのは、ほんとにいじめに遭ってる奴に失礼かもしんないけど」



ははっ、とできるだけ明るく……みっともなく、笑う。



「俺、小さいときからみんなと一緒っていうのがどうしても好きになれなくて。学校でもつれなくしてたらさ、いつの間にか、自然とみんなの方も俺を『いないことにする』ようになっていった。……それは別に良かったんだけど、わざと聞こえるように悪口言われたり、あからさまに避けられたりした」



結野は一瞬だけ、泣き出しそうにその整った顔をくしゃりと歪めた。



……つくづく最低だな、俺。


結野は俺なんかよりもずっとつらい思いを経験してきたというのに、こんなにも強く眩しく、まっすぐに生きていて。

俺はと言えば、自己満足のために弱い自分の胸の内を女々しくぶちまけている。



……本当、最低だ。




「それで、そんなことなら最初っから孤立してればいいって気づいて。それからは、常に同年代の人間とは関わらないように気を配ってたから……小学校でも中学校でも―――ずっと、一人だった」



九年間。


自分の席の周りだけ、ぽっかりと穴が開いているような気がした。


ひそひそと囁かれる声、笑い声を聞くたびに、自分のことではないかといつも怯えていた。


卒業式の日だって、
みんなが泣いて、別れを惜しんでいる中で―――


俺は、これっぽっちも、悲しいと思えなかった。


悲しいと思えないことが、一番悲しかった。



「結野は俺のことリア充って言ってくれたけどさ、これで分かっただろ。……さすがに高校はこのままじゃまずいって思って、見た目とか、悪い癖とか必死に変えて。今もへらへら笑って精一杯……みっともなくあがいてるだけってわけ」



今までの俺を知る人が誰も適わないくらい頑張って勉強して、思惑通り俺の中学ではたった一人、この南高に合格した。

それからも勇気を出して近所の床屋じゃなくて美容院に行ってみたり、ださい眼鏡をやめてコンタクトにしたりした。


……でも、肝心の中身は全く、なにも変わってなかったんだ。



「ほんと、結野とは大違いだよ。結局、嫌なことから逃げただけ。どんなに見た目が変わっても、俺は暗くて、弱いままの―――」





「―――くだらないな」





凛とした、氷のように冷たく透き通った美しい声。



今まで俺の話を黙って聞いていた結野は、ふん、と小さく鼻を鳴らして、



「言いたい奴には言わせておけばいいんだ。
君のどこが暗いって? 君が弱い? はっ、笑えない冗談だな」



絶句した俺を、心底馬鹿にしたようにせせら笑う。



「本当の弱虫なら、まずぼくに近づこうともしないだろうし、自分を変えようなどと思いつきもしないよ」



……もしかして、このひねくれた、優しい少女は、



「そんな意味の分からないことで悩んでいる時間が勿体無いだろう」



俺を、励まそうとしているのか?



結野の強い眼差しが、厳しい声が、


身体中に、優しい温もりを沁み渡らせていく。




「君は、自分の道を選択したのだろう? あとは進むだけなんだろう? なら胸を張って、前へと進めばいいだけの話じゃないか」




憐憫も気遣いもなく、ただ当たり前の、ちっぽけな真実を語っているだけのように―――結野は続ける。

90心愛:2012/10/09(火) 07:57:28 HOST:proxy10024.docomo.ne.jp








「君は自分自身の意思で、自分を変えようとしたんだ。愚かな夢に囚われただけのぼくとは確かに違うけれど、……君は過去を振り切って、“理想の自分”への一歩を踏み出したじゃないか」




結野は瞳に宿った強烈な光で俺を射抜き、きっぱりと告げた。




「―――君は、強いよ」




……多分俺は、心のどこかで、誰かにそう言われるのを待っていたんだと思う。


俺のしていることは、間違ってなんかいないって。


認められたかった。力強く、背中を押してもらいたかった。



だから、俺と同じ、もしくはそれ以上の苦しみを味わって、その気持ちを痛いほど理解しているだろう結野は―――みじめで格好悪い、はた迷惑な野郎にすぎない俺を、こうして不器用な形で、救ってくれたんだ。



完敗、だった。




「……ありがと、結野」



「礼を言われる筋合いはないが」



照れたように鼻の頭をほんのり赤くして、勢い良くそっぽを向く。


あのときと変わらない、黒絹みたいに艶やかな髪がふわっと浮き上がった。



「……ふん。こんなにも長い間、低俗な愚民と無駄話をしてしまうなんてぼくの人生最大の汚点だな」



「人生って人の生って書くけどそれでいいのか? ヴァンパイアなんだろ?」



「う、そ、それは……この姿は人間界に入る為に造った仮の肉体であって、だから厳密にはっ」



言い訳するように早口でまくしたてる結野を笑っていなす。




……痛い? キモい? 見てて不愉快?


―――余計なお世話なんだよクソが。


一度しかない人生、今の自分が望む自分であろうと努力することを、なぜ否定されなきゃいけない?


あとで自分がどれだけ後悔しようが、今他人にどう見られていようが。


いっぱいいっぱい考えて―――それでも、どうしても譲れないから、あきらめられないから、結野は今こうしてるんだ。


つまらない大人になるくらいなら、一生バカなガキのままでいてやるよ。


自分が格好良いって思うものを信じて、全力でぶつかっていける―――


それは本当に、悪いことなのか?
子供の未来のためだって、無理矢理排除すべきことなのか?


夢をひたすらに追い掛け、それが無意味だと分かっていたとしても―――しぶとくあきらめずに立ち上がる。
それができる、強い心を持った奴は、この広い世界にどれだけいるのだろう。


一時だけの痛い勘違い?
大いに結構じゃないか。


結野の言葉じゃないけどさ、笑いたきゃ笑えばいいよ。




―――俺は“ミウ”の、このまっすぐさに惚れたんだから。




「……まだ帰らないのか? 幸せな奴だな、ぼくが怖くないなんて」



結野は本格的に演技モードに入ったらしい。


その素直じゃない口とは裏腹に、少しだけ寂しそうに瞳を曇らせ、




「君がどんなに強い力の持ち主でも、これ以上この結界の中に入り浸れば君の精神力が磨耗する。吸血姫(ヴァンパイア)の眷属以外はどんな種でも確実にダメージを受ける、強力な結界だからな。……ふん、恐ろしいだろう? その羽虫のような命が惜しければ、二度と『こちら側』に近づかないことだ。分かったな?」




つまり―――



これ以上自分と一緒にいれば、俺までハブられるからとっとと出てけ、と。
せっかく新しくできた俺の立ち位置がなくなるから、もう関わってくれるな、と。



……ああ、もう。
いっそ清々しいくらいのバカだ、こいつは。


姫宮に話し掛けられたときもあんなに嬉しそうにしてたのに、気を遣って自分から離れようとした。


自分と一緒にいたら、相手に迷惑が掛かるから。


だから、きっと結野は、自分の考えを曲げないかぎり、理想と友人、両方を得ることは絶対にない。


これから、ずっと。



だったら。




ひとりぼっちで、本当はすごく、すごく優しくて、でも最高に格好良い、どうしようもないバカのために―――





―――俺も思いっきり、バカになってやるよ。

91ピーチ:2012/10/09(火) 18:17:55 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

絶対無理だ←

でもでもでもでも!! 美羽ちゃんかっこよすぎる!!←

何気にヒナさんも優しかったりww

92心愛:2012/10/09(火) 20:01:25 HOST:proxy10054.docomo.ne.jp
>>ピーチ

美羽かっこいい?
ありがとう!

美羽はカッコよさと強さ、あと優しさと弱さ……相反する要素を持つ子なんです←
痛さと可愛さもいいかんじのバランスを保てたらなw

ヒナと美羽、二人ともまた違う弱いところと優しいところを持った良い奴らなので、好きになってやってねお願いします!

93ピーチ:2012/10/09(火) 22:34:49 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

美羽ちゃん&ヒナさんすっごくいい人じゃん!!

ゆきちゃんとかゆきぞの君とかも!

やばい続きめっちゃ気になる!!←

94心愛:2012/10/09(火) 22:52:47 HOST:proxy10070.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ありがとうっ…!((涙


まだ序盤なんだけど、一段落ついたらやっとのことでキャラわんさかな日常編に入ります!
あ、その前にコラボとソラの波紋進めないとね(^_^;)

95ピーチ:2012/10/09(火) 23:07:30 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

いやこちらこそありがとう!

日常編! わんさかってことはにぎやかになりそう←

だよね! コラボとソラの波紋も楽しみだよっ!!

96心愛:2012/10/10(水) 20:58:40 HOST:proxy10066.docomo.ne.jp






「……その眷属ってのになれば、結野の近くにいても平気ってこと?」



結野は、意味が分からないと言うように目をぱちくりさせた。



「む、む? ……まあ、ぼくと同じ《属性》になれば、ぼくの魔力の影響は受けなくなるから……」



「じゃあ」



俺はにやりと笑って―――


バカそのものの台詞を、言い放った。





「―――……俺を、結野の眷属にしてくれないかな」





「……ふぇ?」



ぽかーんと呆けた結野は可愛いんだか間抜けなんだか良く分からない声を漏らす。



「だめ?」



「え、だ、だめとかそういう……」



「じゃあいいの?」



あうあうと口をぱくつかせ、頼りなげに視線をさ迷わせる彼女。

なんとも面白いので、膝に頬杖を付いてそのまま観察することしばらく。



「……どうして」



結野は俯いて、ぽつりと呟いた。

まばゆいオレンジ色の残光が、彼女の弱々しい身体を柔らかく包み込む。



「君はどうして、……ぼくに―――」



「これからずっと、結野と一緒にいたいから」



どんなにおかしな格好をしていても、
どんなに気丈に振る舞っていても、
どんなに強い心を持っていても、



……それでも結野は、普通の女の子なんだ。


まっすぐで優しい、脆(もろ)くて寂しがりやの女の子。



できることなら俺は、ものすごいうぬぼれだけど……そんな彼女を支える存在になりたい。


強さと弱さを併せ持つ彼女の、一番の理解者でありたい。



そのためなら、結野の傍にいてもいいって証がもらえるのなら、『友達』なんて決して認めないだろう彼女の、お遊びに付き合うのも悪くない。



九年の歳月が経った今でも―――
どんな姿になったとしても、俺はやっぱり、こいつのことが好きなんだ。



「……な、な、な、」



白いレースがたっぷりあしらわれたカチューシャに付いたリボンが、わなわなと震える彼女に合わせて揺れる。



「……どしたの?」



「ど、どうしたのかだとっ? 君の数秒前の言葉を良く振り返ってから言え!」



「『どしたの』?」



「その前だその前ッ」



「えー……なんだっけ」



「うう、もういいっ」



涙目の結野は真っ赤な顔で、八つ当たりするようにぺちぺちとシーツを叩く。



「ぼくの聖域(テリトリー)にずかずかと入って来るし図々しいし……。君には調子を狂わされてばかりだ、まったくっ」



「で、結局どうすんの? 俺のこと」



「本当に図々しい奴だな!?」



怒鳴ると同時に、ぽすっ! と枕を投げつけてくる。


「わ、あぶね」


顔面すれすれまで飛んできたそれを慌ててキャッチした。



「……っああ気が乗らない!」



「それまたなんで」



「当たり前だっ! ……ぼくは……ぼくは他人が怖いんだよっ」



叫ぶや、結野は今にも泣きそうに唇を噛み締めた。



「ぼくはやっぱり、全然強くなんかない! ぼくの所為で、誰かが傷つくところなんて見たくない! ……ずっと一人だったからっ、人との関わり合い方なんて分からないんだ……っ」



強気のメッキが剥がれ落ち、その奥に秘められていたほんの少しの弱さが顔を出す。



「特定の誰かに必要以上に入れ込んで、そいつが取り返しがつかないくらい、大きな存在になってしまってから……いつか嫌われて、置いて行かれるのが怖いんだよ……っ」



「俺もだよ」



なにかに気づいたように息を呑み、結野が俺の目を見た。



「俺だって怖いんだ」



本気で好きな人であるほど、拒まれたときの痛みは大きいと思う。


一緒にいたいとか調子に乗ったことを言いながら、結野に嫌われるのを心底恐れている自分がいる。



俺たちは同じなんだよ、結野。


もうすでに心は決まっているのに。


決定的な、最後の……いや、ある意味では最初の一歩を、いまだに踏み出せずにいる。


でもさ―――決めたのなら、前に進むだけだって言ってくれたのは……結野、お前だろ?

97ピーチ:2012/10/11(木) 13:49:37 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

うわあぁぁ美羽ちゃん可愛いー!!

ふぇ? って何かシェーラちゃんを思い出させる←

98心愛:2012/10/11(木) 18:43:35 HOST:proxy10035.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ありがとーう!
美羽は油断したときにシェーラ系の声が出ますw


キャラいっぱい出てくるよ!
やることがたくさんだー…幸せな悲鳴(´ー`)


土日は用事があるから更新できないんだ(´・ω・`)
また溜まるー(^^;;

99ピーチ:2012/10/11(木) 18:57:17 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

油断した時か!←

でもさ、「む?」ってやつはルイーズ王女に似てるww

100心愛:2012/10/11(木) 22:24:51 HOST:proxyag117.docomo.ne.jp
>>ピーチ

おお、さすがピーチ!
美羽はルイーズの影響をちょっと受けておりますw
いろんな要素があるからねー(・∀・)





まだ序盤なのに100レスいっちゃいました!
皆さんご協力(?)感謝です!
『紫の歌』みたく記念SSはやれませんが(^_^;)

101心愛:2012/10/11(木) 22:26:18 HOST:proxy10033.docomo.ne.jp





「この俺がここまで勇気振り絞ってんだから、それを尊重しろよ」



「う……しかし……」



「心配しなくても、俺は結野から離れたりしない。結野と一緒にいて迷惑だなんて絶対に思わない」



迷うように大きな瞳を揺らす結野に、気づけば自然と笑いかけていた。



「今日で、お互いのこと……良いとこも悪いとこも、たくさん知った。その上で、全部覚悟して、俺は言ってるんだよ」


結野はまた俯き、ぎゅっと小さな拳を握った。



「……ぼくの眷属となれば、もう後戻りはできない。あとでいくら後悔しても、知らないからな」



「望むところだ」



「ほんとのほんとに、知らないからなっ」



「分かってるって」



精一杯、怯える彼女を安心させるように笑ってみせる。



「俺は、約束は守る奴だよ」



「……分、かった」



結野はこくんと頷いた。


それから遅れて―――へへっ、とちょっと下を向いて、嬉しそうに顔を綻ばせる。



それを見てほっとしたのと同時、なんとなく居心地が悪くなって、俺は視線の代わりに話題を逸らす。


「で、その……眷属、でいいのか? 隷属とか使い魔とか契約者とか、似たようなの他にもいっぱいあると思うけど」


「れ、隷属……! 使い魔……! 契約者っ……!」


俺が漫画とゲームの中の世界観で覚えたソッチ系の単語はえらくお気に召したらしく、結野は途端にキラキラと瞳を輝かせる。


「う、ま、迷うところだが……」


「迷うんだ」


「それでもぼくに二言はない! 眷属で統一する!」


「へー。じゃあ眷属ってことでよろしく。じゃあな結野、また明日」


「待て」


「なんでだよ!」


結野は真面目くさった顔で言う。


「……まだ《契約の儀》が終わっていないだろう」


「いや知らないから」


「主となる者になんだその口の利き方は!」


ぴょんぴょんと髪を跳ねさせて一通り憤慨した結野は、モードチェンジのためか目を閉じてすーはーと深呼吸。


数秒後、長く密度の濃い睫に縁取られた瞼がゆっくりと開き―――



半眼の俺を視界に入れた瞬間、芝居じみた動きでおおげさに仰け反った。



「こ、この魔力の波長……! 君はまさか、かつて吸血鬼(ヴァンパイア)の眷属として栄えた名門、《赤闇》の一族……その末裔だというのか……!?」



わあいそりゃあ初耳だぜ。


……響きから察するにアカヤミって赤い闇って書くんだよね?
俺の名字とのギャップがハンパないんですけど。


「……そうですねー」


「君がこの結界に入ることができたのも、ぼくと類似した“血”を持つ者だったからなのだな……!」


「ソウデスネー」


やるからには全部自分好みの展開にやり直さないと気が済まないようだった。


「ふっ、そうか。君はもうすべてを知っている上でここに来たのか……。ならば話は早い」


結野はうんうんと勝手に納得すると、打って変わって傲慢そうな、妖艶な笑みを浮かべた。



「眷属とは、主に絶対の忠誠を誓う選ばれし臣下……。その命を掛けてぼくを支え続ける。すべての苦しみと痛みを共にする。その覚悟が、本当にできていると言うのなら―――」



魅入らせる宝石の双眸が婉然と細められ、




「君をぼくの眷属とする為に―――今から《契約(やくそく)》を交わす」




一瞬、結野の雰囲気に呑まれかけた。

これは現実で、結野の台詞は全部、彼女の創作に過ぎないと十分わかっているのに―――


恐ろしいまでの凄みは、演技という言葉では片付けられないほどの迫力があって、一瞬うっかり騙されてしまいそうになる。



「……で、なにすんの? 今の宣言で終わり?」



「まさか」



結野はふっと笑い、ゴスロリのスカートを片手でごそごそと探る。


彼女が取り出したのは、



「ちょっと待てぇ―――い!!」



「わ、急に話し掛けるな手が滑るっ」



ごついデザインの、カッターナイフだった。


「おっお前なんてもん持って歩いてんの!?」


「護身用にだが? 人間界とはいえ他の組織のスパイに狙われるかも」


「しねぇよ!」


ダメだこいつ!

102心愛:2012/10/11(木) 22:28:58 HOST:proxy10069.docomo.ne.jp






「とりあえず危ないからよこせ!」


「邪魔するな! ぼくの血を口にすることで初めて吸血姫(ヴァンパイア)の《贄》、眷属となる契約ができるんだぞっ」


「人の血なんか飲みたくもねーよ!」


「人じゃない! 吸血姫だ!」


刃を手の甲に押し当てようとする結野を誤って傷つけまいと配慮しながら、抵抗する彼女からカッターをやっとのことで取り上げた。はい没収。


「何をする!」


「それはこっちの台詞だバカ! お前今冗談抜きで危ない奴だぞ!?」


「うるさい! 別に振り回そうとしてるわけじゃない、ちょこっと自分の手を切るだけだ! 返せ!」


「嫌だ!」


「嫌だ!」


「めんどくさっ!」


あまりに不毛な言い争い。

自分の『超カッコイイ設定』に則(のっと)った儀式とやらを遂行しようとする結野は、その頑なさからそう簡単に折れてはくれないだろう。


こんなバカな……じゃなくて、残念すぎる理由で無駄な怪我をさせるわけにはいかない。
それに何が悲しくて好きな子の血を飲まなくちゃいけないんだよ。死んでも嫌だよ。


俺は方向を変えて説得を試みることにした。


「ちょっとだって血出るくらい切ったら痛いだろ普通。それは結野だって嫌じゃん?」


「やだ、けど……我慢くらいできるし……」


よし、この調子。



「じゃあ、他の方法とかないの? 契約ってやつの」



「他の、方法……」



眉をしかめた結野は呟いて、じっと俺の顔を見て沈黙し、



「―――――!」



しゅぼっと音を立てて赤面した。



「ふ、……っふざけるな! なんでこのぼくが、そんなは、ははは破廉恥な真似をッ」



「なに勝手に想像しちゃってんの……?」



大体予想はつくけど。


「こっこの変態! 変態!」


「俺何もしてませんからね? ずっとここに座ってただけですからね?」


目にいっぱいの涙を溜め、面白いくらいガクガク震えて小さく身体を丸める結野。
精巧な陶製人形(ビスクドール)の如き美貌が台無しだ。


「とにかく却下だ却下っ」


「はあ」


頬を火照らせてぺちぺちとシーツを叩く結野。

その手を見ていたら、ふと思いついた。



「じゃあ、握手ってのはどう?」



健全で安全、しかも簡単。

我がアイディアながら結構いいんじゃないかな。



「む……確かに魔力を触れた箇所から直接注ぎ込むことで、ぼくと同じ《属性》に書き換えると考えれば……。でも《契約の儀》としてはどうかと」



「よっしゃそれで決定! いいよな結野!」



結野が何とかかんとか言い出す前に、大声で彼女の声を掻き消す。



「う……わ、分かった」



あまりの剣幕に驚いたのか、目を白黒させながら結野が頷いた。



「はい」



一切迷うことなく手を差し出す。


結野は実に数十秒は掛けてわたわたしてから、覚悟を決めたらしくきっと唇を引き締めて、それからそっと手をその上に置いた。



……うわ……手、ちっちゃ……!



淡いブルーに透ける血管、氷細工のように繊細な指先に浮かぶ桜貝の爪。



こんなに綺麗なものを俺なんかが触っていいものか、と若干躊躇しながらも、その手をきゅっと握る―――と言うよりも、できるだけ優しく包み込んだ。

ひんやりと冷たい結野の手へと、次第に俺の手の熱が移っていくのが分かる。

ぴったり触れた肌は異様なほど柔らかく、しかし儚くほっそりしていて、くっつきあった部分からじわりと溶けて混ざり合ってしまいそうなくらいに滑らかだった。

滲んできた汗は多分だけど俺のもの。

恋人同士みたいに手を繋いでいるみたいな構図に今更ながら緊張してきて、ちらりと結野の様子を伺った。



「……………………」



真っ赤だ。
熟れすぎたトマトよりも真っ赤だ。


頬だけじゃなく首や耳までも、見事な朱色に染まりきっていた。


てっきりなんかそれっぽい台詞を言ったり呪文を唱えたりするんじゃないかと思ってたけど、明らかにそんな余裕はなさそうに、小刻みにぷるぷると震えている。



「………………」



「……………………」



「…………もう、良くないか?」



「いっ今そう言おうとしていたところだっ」



はっとしたように結野は顔を引き攣らせ、勢い良く手を離してついでに後ろへと飛び退く。

103ピーチ:2012/10/12(金) 18:40:59 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

美羽ちゃんすごーい!!

ヒナさんも良く考え付いたね!←

104心愛:2012/10/12(金) 18:54:32 HOST:proxy10005.docomo.ne.jp
>>ピーチ

美羽は一歩間違ったらただの危ない子だよね!

そろそろ一段落つきそうw

105心愛:2012/10/12(金) 18:55:25 HOST:proxy10005.docomo.ne.jp






結野は目を閉じ、こほんこほんっと咳払いした。



「……契約完了だ。今この瞬間から、無事に君はぼくの眷属となった」



「やっとか……」



「と言うわけで、ぼくのことは敬意を込めてミウ=黎(ローデシア)=リルフィーユ様と呼ぶように」



「長ぇよ。あとクラスメイトに様付けっておかしいから」



結野は道理だと思ってくれたらしく、「む」と眉間にしわを寄せて考え込んだ。




「……なら、ミウでいい」




「…………は?」



「君が言いにくいなら仕方ないだろう。ミウと呼べ」



「い、いやいや待て待て!」



そりゃあ心の中でこっそりそう呼んでたりもしましたけれども!



「俺は女子の下の名前をフツーに呼べるようなタマじゃないよ!?」



「……下の、名前?」



…………はっ。



「今気づいたの!?」



こいつマジで末期だな!



「う……でも、眷属が名字呼びはちょっと……」



「じゃ、じゃあお前俺のこと圭って呼べんのか今から! 無理だろ普通!」



「うぐ……っ」



結野は「ううううう」と唸り、それから弱々しげに俺を見た。



「……君の名字は……」



「日永だよ! 日永圭!」



こんだけ色々話してたのに俺の名前すら知ってなかっただと!?


軽くショックを受けている俺はすでに視界に入っていないらしく、結野は上の空な様子で静かに呟く。



「……ひなが……」



しばらく口の中でもごもごして、



「……よし、決めた!」



そして、ぱっと晴れやかな顔を上げた。





「―――ぼくは君のことを、“ヒナ”と呼ぶことにする!」





―――……心臓が、どくんっと大きく脈打った。




「“ひなが”だから、ヒナ。愛称というのもなかなかいいものだな。……ふふん、とっさに考えたにしては上出来だろう。異論は認めないからな」




得意げに胸を張る結野の、大輪の花が咲いたように無邪気で眩しい笑顔が、




『じゃあ、“ヒナ”ね!』




記憶に焼き付いた“ミウ”の笑みに―――重なる。




「…………っ」




不覚にも。


涙が、出そうになった。




女ってずるい。


弱っているところを見ただけでも、男の俺はどうしようもなく胸が痛くなる。

なんとかしてやんなきゃ、って思ってしまう。


なのに、


こんな顔、見せられたら。




「ったく……しょうがないなぁ……」



絞り出した声が僅かに揺れていたのに、彼女は気がついてしまっただろうか。




「これからよろしく。……美羽」




照れ混じりにだけど、はっきりと呼び捨てる。



ゆ……美羽はピシリと固まった。


かと思うと、雪の肌をかあっと紅潮させて細っこい脚をばたつかせる。



「な、な……っんだか無性に恥ずかしいぞっ!? なんだこれはっ」



「お前がそうしろって言ったんだろが!?」

106ピーチ:2012/10/12(金) 19:18:13 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

やっと美羽ちゃんの眷属になったー!!

小さい頃に言ったことを忘れてるのね((汗←

107心愛:2012/10/12(金) 20:09:50 HOST:proxy10062.docomo.ne.jp





「美羽ー」



次の日の昼休み。

俺はやっぱり、ちょっと気恥ずかしさを覚えながらも美羽に声を掛けた。


「遅い! 何秒待ったと思っているんだ!」


「時間の単位おかしいからな? 自販機行って選んで買って帰って来るのに秒単位はないからな?」


ご立腹の美羽はガタガタと机を揺らす。


「仕方ないじゃないか、ヒナしか話す相手がいないんだからっ」


「それ堂々と言うことじゃありませんよね」


パシられた上に理不尽に怒られている俺は嘆息しながら自分の席に座り、一本の缶を美羽の机に置いてやる。


「ほい。迷ったから無難にお茶にしといたんだけど、これで良かった?」


「ん……む……」


美羽は何故か困ったように視線をさ迷わせ、それからゆっくりと、プルタブに指を掛けた。


「……………く!」


開かない。


顔にやる気をみなぎらせ、ものすごく頑張って力んでいるのに、ぷるぷるする指先が白くなっていくだけ。

非力すぎんだろこいつ。


「う……く」


「貸して」


仕方なく美羽の手から缶を引ったくり、ぷしゅっと開けてやった。


「……礼は言わないからな」


「はいはい」


恥ずかしそうに上目遣いで睨んでくる美羽。


「眷属は主に絶対服従なんだからなっ、ヒナ如きにありがとうなんて言わないんだからなっ」


言ってんじゃん。


顔を隠すように上品に両手で缶を持ち、ちびちびと飲んでいる美羽。

次からはパックのやつにしてやろうと考えながら、頬杖を付いてその端正な横顔を眺めた。

知らずのうちに笑みが浮かぶ。



「ねーねー!」



俺のすぐ後ろ、弁当箱を広げた姫宮がにこにこと笑って美羽と俺を交互に見た。


「今、ゆいのん日永くんのこと、ヒナって呼んでたよね?」


「…………」


美羽はわたわたと慌てて缶を取り落としそうになるもぎりぎりでこらえ、


「……そうだが?」


「なんかいいね、ヒナ。私もヒナって呼ぼうかな。可愛いし」


姫宮の隣で柚木園も笑う。


「別にいいけど……って可愛いはないだろ」


「えー、可愛いよー! なんかひよこみたいだし、日永く……じゃなくてヒナの髪って」


「ひどっ」


実はコンプレックスの、癖が強くて色素が薄い猫っ毛を片手でわしゃわしゃとやる。

ひよこ……。


「ぷ……確かにひよこ頭だな、ヒナは」


「うるせーな!? みんな美羽みたくまっすぐで癖ないわけじゃないんだぞ!?」



『……美羽?』



叫んだ途端、クラスにいた約四十人ぶんの目が一気にこちらを向いた。


「へえ、結野さんって美羽って言うんだ。可愛いね、似合ってるよ。私も名前で呼んでいい?」


「か、構わないが?」


早速口説いている柚木園と、迷惑そうに顔をしかめながらも意外とまんざらでもない様子で応じている美羽……は、さておき。


「おいおいヒナ、俺たち友達だろ? なに結野さんとはいえサラッと女子の名前呼び捨てちゃってるわけ? なんかあったの昨日」


「お前と俺がいつ友達になったよ。ってか勝手にヒナって呼ぶな」


むさい野郎に馴れ馴れしく肩を組まれ、いっやぁあああな顔をしながら身体を離す。

108心愛:2012/10/12(金) 20:11:29 HOST:proxyag072.docomo.ne.jp





「てゆーかなに、ヒナも美羽たんも妙に仲良くなってないー? うちら置いて青春すんなし」


「たん!?」


一人の女子の声に、ばっと美羽が反応した。


「なんだその頭の悪そうな呼称はっ!」


「ぽんのがいい?」


「そういう問題じゃなくてだな!?」


「……なんかもーめんどいから美羽から説明よろしく」


俺はわいわいと集まってきた奴らの中心で、半ば投げやりになって言う。


美羽のことだから、頼まなくてもほとんど嘘の中二台詞を長ったらしく喋ってくれるだろう。


案の定、美羽はやや緊張気味に口を開く。


「……よ、よくぞ聞いてくれた、我が忠実なる僕(しもべ)たちよ」


クラスメイトを僕扱いすんのやめろ。


でも、鉄壁が崩れて親しみやすさが出たんだろう―――みんなの美羽を見守る目は、笑い半分だけど温かい。


「実は、」


美羽もそれを感じているのか、威風堂々かつ余裕綽々だった自己紹介に比べると固さは残るものの、ちょっと嬉しそうだ。


……良かった良かった。




「実は昨日の放課後、保健室でヒナと《契(ちぎ)り》を交わしたんだ」




空気が、凍った。



……アレ?



美羽は頬を赤らめ、両手の指をもじもじしながら続ける。



「あ、安心しろ、保健医はいなかったし……声は誰にも聞かれてはいないはずだから」



『…………………!!』



ちょ。



「あんなこと初めてだったから色々戸惑ったけれど……ヒナが案外手慣れていたのもあって、その、……なかなか気持ちがいいものだった」



「紛らわしい表現するなぁあ――――!?」



握手しただけだからねっ!?



『…………殺せ』



男共の目がきゅぴぃんと怪しく光る。


「入学早々大人の階段昇りやがってカスが」


「県の高校別カップル成立率ランキング最下位の南高舐めんなコラ」


「美少女と」


「保健室のベッドで二人きり」


「殺す」


「死なす」



「ちょおっ!? 誰だ今三角定規投げたの! だっだから誤解だって、美羽とは別に」



『言い訳は署で聞く』



「どこだよ署って!」



悪質なクラスメイトたちによって今まさに眷属が命の危機に晒されているというのに、主の方はというと。


「みうみうって髪超キレーだよねー。シャンプーどこの使ってんの?」


「み……!? っえ、い、いや……みんな家政婦が用意してるからそういうのは良く……」


「家政婦!? な、なんかすご……。じゃあこーいう服はどこで買ってんの?」


「既成のものはあまり。細かいところとか自分でこだわりたいからオーダーメイドが多いが」


「わ、ゆいのんってすっごいお金持ちなんだねー! ゴスロリって高そうだし」


「最初はどうかと思ったけど正直似合ってるよね、こういうの」


「うん。美羽はどんな格好をしていても可愛いと思うけど、やっぱりそれが一番しっくりくるような気がするよ」


「あは、王子はすーぐそーいうこと言うー」


「事実だもの」


「う……あ、あり……」


「どしたのゆいのん」


「なっなんでもない! ……ぐ、ぼくは誉れ高き《純血の薔薇》の一級魔女なんだぞ、ぼくに軽々しく近づくんじゃって頭を撫でるな! 触るな! ヒナ、助けっ……はーなーせー!」



……んー……楽しそうだから、いっか。



女子グループ+柚木園の中心でじたばたしている美羽。


昨日までの寂しげな様子を思い出し、ふっと心が和んだ。



「ヒナ。悪いことは言わない。正直に話せ」



「え、ちょっとこのライトどこから持って来たの!? それになにこのハードボイルドなBGM……うわまぶしっ」



「……親御さんも、悲しむだろうな」



「息子がこんな目に遭わされてるって聞けばね! ……ってそのグラサンなんなの!? いつ全員分用意したんですか!?」



「……カツ丼、食うか?」



「いらねえよ! つか弁当食わせろよ!」



昼休み終了まであと二十五分。


それまでにこのうざったい男共を蹴散らし、昼飯にありつけるかどうかが問題だった。

109心愛:2012/10/12(金) 20:20:17 HOST:proxyag071.docomo.ne.jp
>>ピーチ


覚えてるヒナの方がアレだけどね!




ここからやっと日常編に入ります。……長かった……。
わいわいがやがや、嫌な意味でここあらしくいっちゃいますよー!
無事クラスでいじられ役としての地位を築いちゃった美羽とヒナを「良かったねー……」と生暖かい目で見守っていただければ幸いですw
美羽の勘違いっぷりが可愛く思えてくるレベルの個性的な面々、または変態さんが登場していきますよ(・∀・)



明日明後日は多分無理ですが、ちょっとずつ他のスレにも手を出し始めますw

110ピーチ:2012/10/12(金) 22:21:34 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

ヒナさん、誤解はしっかり解かないと!←

あたしはめんどくさいからそんなん一切やんないけどね!←

111ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/10/13(土) 12:31:18 HOST:EM117-55-68-31.emobile.ad.jp

めちゃくちゃ楽しそうなクラスの雰囲気が伝わってきますw
もうパソコンの前でにやにやによによしながら読んじゃってますようわああ←

ヒナかっこいいしミウちゃん可愛いです!
日常編も楽しみにしてます!

あと、遅れましたが100突破おめでとうございます(・ω・´)

112心愛:2012/10/14(日) 19:08:18 HOST:proxy10034.docomo.ne.jp
>>ピーチ

んー、美羽はソフィアみたく思い出すことはないんじゃないかなぁ←
ヒナはいつかちゃんと話せる日が来るのでしょーか(´ー`)



>>ねここさん

ありがとうございますーっ(つд`)
ニューバージョンの美羽も可愛いと言っていただけてほっとしました!
日常編は短編集みたいな形にしたいなと思っていますので、きらーくにご覧いただけたらと←

113ピーチ:2012/10/14(日) 19:20:59 HOST:nptka407.pcsitebrowser.ne.jp
ここにゃん〉〉

美羽ちゃん思い出せー!!

そしてヒナさん思い出させちゃえー!!

……恋愛って難しいよね←いきなり何だw

114心愛:2012/10/15(月) 16:12:54 HOST:proxyag055.docomo.ne.jp
>>ピーチ

でも、なんでそんな昔のこと覚えてんのかって話になったら「実は好きだったからです」的なカミングアウトが必須になっちゃうから、やるにしてももうちょい先かなw
ヒナにはまだ荷が重い←

難しいよね(笑)
ここあもぶっ飛んだ妄想の勢いのままで書いてるからときどきあれ? ってなりますがw

115ピーチ:2012/10/15(月) 17:32:51 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

確かに! それはそうだ←

時々あれ?ならまだ良くない?

あたしなんか「何だこれー!?」って絶叫してるし←

116心愛:2012/11/03(土) 22:44:17 HOST:proxy10002.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ここあもしょっちゅうだよw

でもノリでごまかそうと頑張るw




ちょっとだけお久しぶりです、ここあです。
何とか生きてます……。はい。


さてさて、次は日常編最初の回ということで柚木園くんと夕紀に頑張ってもらわねばならないのですが、話の都合上、ある程度書きためられたら投稿することにしますね(・∀・)
あともうちょっとお待ちくださいー←

117ピーチ:2012/11/04(日) 07:07:05 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

まさかのノリ!?

生きててくれてありがとー!←不謹慎

楽しみw ゆるーりと待ってるねーw

118心愛:2012/11/04(日) 09:06:17 HOST:proxy10023.docomo.ne.jp

『BOY or GIRL?』





「柚木園くん、おはよ!」


「おはよ。神田さん、清水さん、藤谷さん」


「えー、王子もううちらの名前覚えてくれたの? 早くない?」


「もちろん。可愛い女の子に関することなら何でも、自然に覚えちゃうよ」


やだー、と笑いが起きる。
無地のシャツにジーンズを合わせただけという普通だったら地味路線まっしぐらな服も難なく着こなし、柚木園はキラキラした光を纏って女子集団の真ん中に君臨していた。

甘やかに煌めく黒い瞳を細め無造作に髪をかき上げるその流れるような仕草は優雅で、その上妙に色っぽい。



「……リア充め……」


美羽がジト目で、教室の隅にハーレムを形成している柚木園を見やった。


「目障りだ耳障りだいらいらする。爆発しろリア充。滅びろリア充。死に晒せリア充」


「呪詛を吐くな」


「……嗚呼……人間界では《呪縛》によって魔力の供給が途絶えているのが残念でならない……。今ぼくに本来の力があれば、あの浮かれた男を木っ端微塵にしてやるのに」


この前は魔力が暴走するとかなんとか言ってなかったっけ?


「だから物騒なこと言うなって」


「そうだよー」


姫宮も、めっ、と可愛く人差し指を立てる。


「柚木園くん、すごく良い人だよ! そんなこと言っちゃだめだよゆいのん」


「君に言わせれば、全ての人間が『良い人』に分類されそうだがな……」


ふんっと美羽はお馴染みの鼻を鳴らす仕草をする。


「生憎だが、そんなことは承知している。彼は下心から女子に馴れ馴れしくしているわけではなく、ただ純粋に誰とでも仲良くなりたいだけなのだと」


「へえ」


……なんか、キツいこと言ってるわりに結構好意的じゃん?


正直あんまり面白くは、ない。


面白くないんだけど……なんでだろう、柚木園個人に大してムカつくっていうわけじゃない。

それに、モテる男やイケメンはつい、本能的に毛嫌いしてしまいがちなんだけど。

その代表格みたいな奴なのに、柚木園に対して憎しみが持てるかって言ったら、やっぱりちょっと違う。

多分それは俺以外の男もそうなんじゃないかな。

あぶれ者だった美羽を気遣ってくれる優しい一面を見てしまったし、それに、纏っている雰囲気がなんだか、『憎めない』のだ。

女子も、柚木園の顔が目当てなんじゃなくて中身に惹かれるから、こうやって集まってるのかもしれない。


……いや、いくら優しくて良い奴でも、本気で美羽に手ぇ出したら許さないけどさ。



「……ヒナ? どうかしたか?」



「な、何でもない何でもない」



怪訝そうにこっちを見てくる美羽に、慌てて手を振ってあははと笑ってみせる。


……バレたら即死なことを考えてしまった。


も、もう柚木園の分析なんかしないことにしようそうしよう。



「ヒナって見てると面白いよねー」



「決して見ていて気持ちが良い顔ではないが、一人で思い悩んで百面相しているところなどは確かに飽きないものだな」



「ほっとけよ!」



そんなに顔に出るタイプだったっけか俺……。



「なになに、何の話?」



「あ、王子様だー」



いつの間に話をやめていたらしく姫宮の隣に来て、やめてよ、と笑う柚木園。


「柚木園はモテんなーって話だよ」


「やだなあ、そんなことないって」


「そんなことあるって」


「そうだよー。ねーゆいのん」


「そこで何故ぼくに同意を求める」


美羽はちらっと柚木園を見上げてから、再びそっぽを向いた。


「……ふん。しかし、君はあまりにも節操がなさすぎじゃないか? ヘタレでふらふらしている主人公の所為で迷惑を被るのは周りの女と決まっている」


「二次元の世界観で三次元を語るな」


それに柚木園は『普通よりちょっとだけ顔良いだけで、勉強も運動も並なのに何故か異様に美少女にモテる』主人公ってよりは、ヒロインにちょっかい掛けてくる二枚目役とかの方が適任なんじゃなかろうか。



「ふらふらはしてないよ?」



柚木園はばっちりウインクを決めて爽やかイケメンスマイル。



「そう、私は全ての女の子を平等に愛しているんだから! 愛の花がたくさん蕾を付けてしまっただけなんだ、これは仕方がないことなんだよ……!」



「ほんと終わってんなお前」



なんでこんなのがモテるんだろう。

119心愛:2012/11/04(日) 09:15:57 HOST:proxy10023.docomo.ne.jp




「ひっ」


美羽が、まず満面の笑顔の人間を見たときに発する類ではない声を出して唇の端を引き攣らせる。

いつものように演技をする余裕もないみたいだ。


「……美羽が怯えてんぞこら」


「え、どうしたの? 怖がっている顔も魅力的だけど、美羽は笑顔が一番可愛いと思うよ」


「ひぃぃ……っ」


微笑みかけられ、ぶるぶるとマナーモードのケータイのように震える美羽。

そういえば美羽が面と向かってクサい台詞を吐かれたのは初めてだったっけか。


「な、何なんだこの恥ずかしい生物は……!」


「そう、そんなに恥ずかしがらなくてもいいんだよ?」


「ぎゃああーっ!?」


良いように自分の言葉を拾われた上に、顎を掬われて悩殺王子スマイルを向けられた美羽はぞわぞわと鳥肌を立てた。


「ひ、……ヒナ! 命令だ、この気色悪い変態をどうにかしろ!」


「分かった。頑張れ」


「話が噛み合ってないぞ!?」


ぎゃんぎゃん騒いでいる美羽だけど、変た……柚木園は一応紳士(?)的だし、これはふざけてるだけなんだと思う。

本気で襲ったりすることはないだろう。……多分。


「くっ、使い物にならない眷属だな! こうなったら姫宮さんでもいい、何か言ってやれ!」


じたばたしている美羽の声を聞いているのかいないのか。

姫宮は何故か、じーっと美羽―――じゃなく柚木園を見ていた。


頭のてっぺんから爪先まで眺め、むう、と悩ましげに眉を寄せる。



「……姫宮?」



「……むー……」



ぺちぺちと自分の胸を叩き、不満げな表情を作る。


それから、



「……むううー……」



「はっ? ……な、なんだよ……」



てくてくと歩いて俺の前まで来ると、手を伸ばして俺の肩やら腕に触れてきた。

面白みも何もない胸に手のひらをぺたぺた押し付けてみてから、はーっとため息をつく。



「やっぱり違うよねー」



「何が」



「体格。いーなぁ」



……いや、そりゃ違うだろ。


男子と女子ですよ?


今更なに言ってんの?


姫宮は美羽をいじっている柚木園と頭に疑問符を浮かべている俺を順番に見て、



「……男らしいっていーよねー……」



男、らしい?


いや……俺もそうだけど、柚木園を男らしいと評するのもちょっと違和感があるような。

どちらかと言うと、美形でも女顔のグループに分類されるんじゃ。



「……そうかな……?」



「そうだよー」



……ふむ。


とにかく姫宮の好みのタイプは男らしい奴、と。


「……脳内にメモしてどうする気だ?」


「ほわっ!? な、なんで分かっ!?」


「顔に出ていた」


美羽にじろりと睨まれた。


……ヴァンパイアより超能力者の方が向いてるんじゃなかろうか。


煩わしげに柚木園を振り払った美羽は、何故か不機嫌そうにむすっとしている。


「……なんだよ」


「うるさい」


にべもない。


気まぐれな猫みたいに顎をつーんと斜め上に向けている美羽を、楽しそうに柚木園が見守る。


「あー美羽はほんとに可愛いなぁ」


「黙れ」


「あはは」


冷たくあしらわれても全くめげずに、何もなかったように愛で続けるそのド根性は尊敬に値する。


特にすることもないので、良く分からん二人を観察していると、



「柚木園くんもいいー?」



「へ?」



一人で難しげな顔で胸に手を当て、何やら考え込んでいた姫宮がぱっと顔を上げ、てててっと柚木園に近づいていく。


俺にしたみたいに触らせろってことなんだろうけど、柚木園は美羽に夢中で俺たち二人のことは見ていなかったので、事態に付いていけずきょとんとしていた。


姫宮が「えへへー」とにこにこしながら、彼へと無邪気に手を伸ばしたそのとき、




ふにゅ。




―――……柚木園の胸に、指先が『めり込んだ』。



「…………あれ?」



姫宮が驚いたように、ぱちぱちと瞬きをする。



「え? ……え?」



は?


……え、めり込んでる、よな?


なんで?




「―――……きゃあああっ!?」




「ひゃっ」



どんっ、と思い切り突き飛ばされた姫宮が床に倒れ込む前に、間一髪で後ろから支えた。

120心愛:2012/11/04(日) 09:31:54 HOST:proxyag104.docomo.ne.jp




「……ヒナ? ありがと……」



「ごっ……ごめん!」



くしゃ、とシャツの胸元を庇うようにしながら、まだ赤みの残る顔の柚木園が姫宮へと慌てて駆け寄る。


「痛かったでしょう? 本当にごめんね……! 怪我はない?」


「……ううん! 全然だいじょぶだよ」


たははと笑いながら、姫宮が立ち上がる。


それから、



「……あ、あのー……柚木園くん」



「う、うん」



美羽と二人、いや、聞き耳を立てていたらしいクラスメイトたち全員が、息を詰めた。



……まさかとは思うけど、



その結論しかありえない。



もしかして、



もしかして、柚木園は―――



「すごい筋に」



スコンッと綺麗な手刀が入った。


「いっ」


「阿呆か君は!」


「えええー」


背伸びの体勢から戻った美羽が、涙目で後ろ首を押さえている姫宮を叱り飛ばす。



「……柚木園」



「……う、うん」



やり直しだ。


姫宮のアホ発言(未遂)のせいで微妙に緊張感が削がれたが、過ぎたことは致し方ない。


俺はすうっと息を吸い、



「―――お前、まさか……女、じゃないよな?」



「……その通りです……」




何とも気まずそうに、柚木園はらしくもなく小さな声で、俺の言ったことを認めた。


自分が女なのだと、認めた。


それを聞いて、



「なんで言わなかったんだよ」



柚木園は『え?』という顔をする。



「……ええと。私が言うのも変だけど、もっとこう……驚いたり、ショックを受けたりしないの?」



「そこまでは」



言われてみれば―――どうして今まで気がつかなかったのかと思うくらいだ。


中性的に整った顔立ちに、匂い立つような色気。

切れ長の瞳をけぶらせる長い睫(まつげ)、肩の薄さに、さっき上げた悲鳴の色まで―――全ての要素が意外な程、女って性別に『しっくりくる』のだ。


美形の男にしか見えない容姿にほんの少しの女性らしさが溶け合って、絶妙なバランスでもって魅惑的な雰囲気を醸し出している。


ずっとわだかまってた違和感がようやく解けたような感じ。

美羽に言い寄ってたのにあんまりムカつかなかった理由はごく単純、柚木園が女子だったから。

一人称が男にしては珍しい『私』だったのも、男じゃないんだからむしろ当たり前のことだった。



「……別に、隠してたわけじゃないんだ」



柚木園はちょっとだけ照れたように続ける。



「みんな、私が男だって思っちゃってるんだろうなーとは分かってたんだけど、なかなか言い出せなくて」



言い、ごめんね、とクラスのみんなに笑いかける。



「い、いや……君が謝ることでもないと思うが……」



「ありがと。……ほら私、この背だし、胸もないし。女の子らしい格好は最初から諦めてるんだよね」



確かに、柚木園の身長は男子の平均を超えているだろう。


でも、


「……さっきのを見た限りでは、すごい意外だけど結構あるような気が……。あれがいわゆる着やせするタイプってやつか」


「なんだって?」


「何でもないです」


美羽に横目でギロリと睨まれた。

……こええー。



「……あ、ごっ……ごめん柚木園くん! ほんとにごめんなさいっ」



柚木園の言葉に一人呆けていた姫宮が我に返り、勢い良く頭を下げた。



「そんなに謝らないで。どう頑張ったって男にしか見えないもの。慣れてるから」



「そうじゃなくて……っ」



姫宮は真っ赤になって、消え入るような声で。



「あの、さ、触っちゃったから……」



「え? ……ああ、急にだったからびっくりしただけだよ。私こそ大げさに騒いじゃってごめん」



爽やかに笑む柚木園。



姫宮は感動したように目を潤ませた。



「許してくれるの?」



「許すも何もないよ」



「ありがとう!」



眩しい笑顔で、姫宮は。




「ほんとに僕、悪気はなかったんだけど……。男に触られるなんて、やっぱり普通はやだよね。柚木園くんは優しいなー」




…………。



…………………。



…………………………。




『………………は?』

121ピーチ:2012/11/04(日) 10:42:06 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!? まさかの男→女!?

ついでに姫宮さんまで逆転疑惑あり!?

え、もしかして男らしくていいなーって、自分が男だから!?

122心愛:2012/11/04(日) 11:43:08 HOST:proxyag054.docomo.ne.jp
>>ピーチ


生きてるよー!(涙)


素敵な反応をありがとうっ←
そう、夕紀は「自分も男らしくなりたいのになー」って意味で言ってたんです。
前からの発言も、可愛いって言われて嫌がらせたりとか、一人称出さずにしゃべらせたりとか、仕込むのに大変だった( ´∀`)

この手のキャラって最近増えてるし、柚木園くんはちょっとわざとらしすぎるかなーと思ってたんだけどね←


次からは夕紀のターンだぜ!

123ピーチ:2012/11/04(日) 12:23:53 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

生きてたよー!((泣←

素敵な反応なんだねあれが!?

……どーりでくまなく探しても姫宮さんの一人称がわかんなかったわけだ←おい

124心愛:2012/11/04(日) 14:41:29 HOST:proxy10057.docomo.ne.jp
>>ピーチ

探してくれちゃいましたか←

ごめんね(^-^;


日常編、これが最初の山場なんで頑張ります!

性別誤解したまま日常に突入させるわけにはいかぬ←

125ピーチ:2012/11/04(日) 17:22:40 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

探しましたよ←

確かに性別間違えたままだと面倒だw

126心愛:2012/11/04(日) 18:43:17 HOST:proxyag089.docomo.ne.jp




姫宮を安心させるように優しい笑みを浮かべた柚木園、

理解はしたらしいけど微妙にうろたえている美羽、

しっかり聞き耳を立てていて、柚木園を新しい目で、それでも温かく見ていたクラスメイトたちが、


ピシッと氷のように凍りついた。



「……姫、宮?」



「なにー?」



にこにこと屈託なく笑いながら、姫宮はこてんっと首を傾げる。……可愛い。



「うん、大したことじゃないんだ。多分、いや絶対、俺の聞き間違いだと思うんだけど」



俺は『彼女』に、口元をひくつかせた精一杯の笑みをもって問いかける。



「お前、今……自分のこと、男っつったよな?」



「え? うん」



当然のことのように、姫宮。



「それがどうかした?」



「姫宮さん」



フリーズ状態を解除した美羽が腕を伸ばし―――がしっと姫宮の肩を掴んだ。


「ひゃっ……ゆいのん? どうしたの」


「君は正気か?」


「ええっ?」


赤い瞳に異様な迫力を漂わせた美羽に、姫宮はきょとんとした眼差しを向ける。


「しょ、しょーき? だよ?」


「……ふう。失望した。君が冗談なんて高度なテクニックが使えるとは最初から思ってはいなかったが、これはセンスがなさすぎるだろう」


「え、……?」


ぽかんと口を開ける姫宮に、柚木園もふうっとため息をついた。


「美羽の言う通りだよ姫宮さん。ジョークにしても無理があるって」


「ま、待って」


姫宮はサラサラのショートヘアを揺らし、



「ま、まさかみんな、僕のこと女の子だと思ってたのっ!?」



「事実だろ」



「違うもん!」



大きな紅茶色の瞳をうるうるっとさせて。



「僕は男だよっ!」



ぐっと両の拳を握って主張する。

その表情は真剣そのもので、教室中がにわかにざわめき出す。



「……姫、なに言ってんの」


「姫宮男の娘(こ)説……? や、ないってどっからどう見ても女子だって」


「でもマジっぽくね」


「じゃああれじゃん、性同一性障――」


『それだ』



「ちーがーうー! 僕は正真正銘男なんだってばー!」



腕をぶんぶん振り回す姫宮。


「にしてもクラスに二人も僕っ娘(こ)って……。漫画でもないだろ、世も末だな」


「良く分かんないけどヒナが僕のこと信じてないってことだけは分かったよ!」


姫宮は憤慨した様子で、自分の鞄を漁って生徒手帳を取り出し、俺たちに突きつけた。



「ほら! ちゃんと男ってなってるでしょっ」



生徒手帳に付いたビニールカバーの中に、学生証が挟んである。

学校名や名前、生年月日などが記されたそれには姫宮の言葉通り、性別の欄に『男』とマルが付いていて。

柚木園が眉を寄せた。



「これは……ひどい間違いだね。先生に言った方がいいんじゃない?」



「確かにひどいな。嫌がらせとしか思えない」



「早く直してもらえよ」



「ひどいのはみんなだよ―――っ!」



姫宮の絶叫に、みんなして耳を押さえた。



「ひ、姫宮? 落ち着けって、落ち着いて話し合おう。な?」



「変に優しい目で見ないでっ! ……あーもう! 分かったよ!」



目にいっぱいの涙を溜め、姫宮はふるっと震えながら長袖のTシャツに手を掛ける。



「……恥ずかしいけど……今から証拠、見せるからっ」



「姫宮さんっ? なにをっ」



ぐっと瞼を閉じ、頬を火照らせた姫宮が、柚木園の声も聞かずにシャツの裾を上へ引っ張り上げた。



『きゃ――――――!!?』


男女関係なく上がった本気のスクリームが教室に響き渡ると同時、



「わ、分かった! 認める、認めるからやめろ!」



「……ほんとに?」



白い腹が見えた瞬間、俺は心からの恐怖を覚えて叫んだ。


姫宮は疑わしげながらも一応手を止めてくれる。



「ほ、ほんとだって! なあ柚木園っ」



「そ、そうだね! そこまで言うのならそうなんじゃないかな! そうだよね、美羽っ」



「あ、ああ! 何の躊躇もないということは、やはり姫宮さんはお………おと…………」



「やっぱり疑ってるぅー!」



言いかけながら視線を泳がせた美羽を見て、姫宮がだばーっと涙を流した。

127ピーチ:2012/11/05(月) 18:21:58 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

嘘だろおい―――!?

まさかのゆきちゃん(君?)信じてもらえてない!?

…………うん、フツーに女だと思うよね、普通は←

128心愛:2012/11/05(月) 19:16:11 HOST:proxy10046.docomo.ne.jp
>>ピーチ

夕紀は、まだ『ゆうき』だったら男っぽかったのにねw

なんとでも呼んでやって\(^o^)/

129心愛:2012/11/05(月) 19:17:56 HOST:proxy10052.docomo.ne.jp






「……う……僕がもっと男らしかったら、こんなことにならないのに……」



落ち込んだようにしょんぼりとうなだれ、すんすん鼻をすする姫宮を見ていたら、なんだか罪悪感が込み上げてくる。

それは美羽も同じみたいで、



「わ、悪かった。人は見た目よりも中身だと言うしな。容姿だけで判断するのは少々軽率だった、反省するよ」



「分かってくれるの? ゆいのんっ」



「……う、うん……まあ……」



「良かったー」



うるうる潤んだ瞳で見つめられ、美羽が早速言葉に詰まっていた。


見た目だけじゃなくて中身だって女子っぽいんじゃ……。


毒々しい美羽とは対照的な正統派美少女だと思っていた姫宮がまさか男だったなんて、やっぱりすぐには信じられない。


でも、美羽も言ってたように、恥ずかしそうにしながらも躊躇なく上を脱ごうとするんだから、本人の言い分通り、男、なんだろう。
……信じられないけど。



「はー。こんなに女の子っぽいから“姫”とか呼ばれちゃうんだよねー……。こっそり筋トレとか頑張ってるんだけど、全然筋肉つかないんだよなぁ……」


「多分一生む……じゃなくて。ひ、姫宮さん、無理は良くないよ。お願いだからずっと可愛いままでいて、ね?」


「柚木園くんひどい! 可愛くなんかないもん!」


「しかし、“姫”というあだ名がぴったりくる男子というのもすごいものだな……」


「全然ぴったりこないよ! あれは同中の子が面白がって言ってるだけだし。それに柚木園くんだって、ほんとは女の子なのに“王子”って呼ばれ、て………あ、あれ、もしかして、あの取り巻きの子たちは……」


「そういや、まさか女だって知らなかったりしないよな?」


「ううん、中学のときからの友達だから。違うクラスなんだけどね。みんな知ってるよ、安心して」


「あ、あれは友達だったのか……」



ようやく話が和やかになってきたところで、



「そうだ! 柚木園くんのこと、これからなんて呼べばいいかな? くん付けはやだよね?」



姫宮が笑顔で、こう切り出した。



「え? いつもそうだし、私は別に」



「んー、柚木園さん、もなんか今更やだなぁ」



柚木園の声も聞かず、姫宮が『んー』と考え込む。



「じゃあ……下の名前、なんて言うの?」



そこで柚木園は、何故かピシーンッと硬直した。



「……あ、あのね? えーと、名前はちょっと、あんまり気に入ってないというか、嫌いというかだから、その、困るというか……」



しどろもどろに言葉尻を濁す柚木園。


「そういえば知らないな」


「君はただの人間の分際でぼくの高貴なる名を呼んでいるのだから、これは不公平というものだろう」


「え、ええ……っと」


「格好いい系だろ、男でも女でも通用しそうなやつ」


「あのー……」


「? どうかしたのか」



美羽に聞かれ、柚木園は困り切ったように。



「わ、私の名前って、ちょっと変だから。名前で呼んでほしくはないかな」



……名前が変……って、DQNネームみたいなのだろうか。



「そんなの気にすんなって、良いから言ってみろよ」



「そうだよー! どうしても嫌なら無理には呼ばないから! でも隠すことはないと思うなー」



「……そ、そう……か、な」



それでも柚木園は迷うみたいに下を向いてたっぷり時間をかけてから、諦めたみたいに消え入りそうな声音で、小さく囁くように言った。




「…………………まいか」




『……へ?』



「だっ……だから『まいか』だよっ! 苺の花って書いて『苺花』! ……ぜ、絶対呼ばないでよ、似合わないの気にしてるんだからっ」

130心愛:2012/11/05(月) 19:19:20 HOST:proxy10007.docomo.ne.jp






まいか。

柚木園、苺花。



……な、なんていうか……。



「『苺花』? わぁ、すっごく可愛い名前だねっ!」



「………………」



「姫宮さん! 余計なことを言うんじゃない!」



一瞬で真っ赤に茹で上がり、ふらふらとよろめいた柚木園を、足をぷるぷる踏ん張って支えながら美羽が怒鳴る。


……確かにイケメンバージョンでは似合わないことこの上ないけど。



「や、やめて姫宮さん……! ほんとにコンプレックスなんだよその名前……っ」



こうやって赤面して顔を片手で覆い、弱り切ってるとこなんかは……その名前通り、ちょっと可愛い、かもしれない。



「わ、私の顔を見てからこんな名前を付けた両親の気が知れない……。可愛く女の子らしく育ってほしかったからっていう軽い気持ちだったらしいけど、こんな風になっちゃった今ではただのイジメだよこれは……」



ずーんと暗い表情でぶつぶつ呟く柚木園に、姫宮は小首を傾げ、にっこりと笑った。




「―――じゃあ、『まいちゃん』って呼ぶね?」




「かはっ」



「柚木園ぉお―――ッ!?」



可愛すぎる笑顔と可愛すぎる呼称にザックリ見事な袈裟(けさ)切りを見舞われ、ダメージを受けた柚木園が血を吐くように膝から崩れ落ちた。



「む、むごい……っ」



「人の心を抉る天才かもしれないな……」



戦慄の表情の俺たちと、床にうずくまった柚木園を見て、姫宮が不思議そうに瞬く。



「どうしたの? まいちゃん」



「ぅ……うく……っ」



柚木園は壁に手を付いてよろよろと立ち上がり、眦(まなじり)にうっすら涙を残したまま、びしっと姫宮を指差した。




「あ……あああもうっ! こうなったら私だって、……私だって姫宮さんのこと、『夕紀』って呼んでやるから!」




「わーい!」



まるでなんの解決にもなっていない台詞を苦しげに柚木園が吐き捨て、それに姫宮が心から楽しそうににこにこしている。



そんな応酬を見ていたら、



「嗚呼……風が……泣いている……」



「現実逃避すんな!」



ずるい!



一人遠い目で窓の外を見つめていた美羽が、ふっと力なく笑う。



「なあヒナ。これは夢なんじゃないか? 目が覚めれば何もなかったことに」



「ならないよ。現実見ろよ」



「それとも、ぼくたちが騙されていて、彼らに揃ってからかわれているだけだったりしないか?」



……そうだったらどんだけ良いことか。




「ねーねーまいちゃん! 今日の四時間目の授業って何だったっけ」



「知らないよ! 自分で調べなよ!」



「だってまいちゃんしっかりしてるんだもん」



「……ね、ねえ、やっぱりやめない? それ」



「やだよー。可愛いからいいじゃん」



「………っ、…………数学」



「数学かー! ありがとまいちゃん!」



耳まで赤くなって無駄な色香を撒き散らしているイケメンの“王子”が女で、



邪気0パーセントの笑顔がどうしようもなく可愛い完全美少女の“姫”が男で。



「なあ美羽、性別ってなんだっけ……?」



「ぼくだって訊きたいよ……」



俺と美羽は、揃って苦々しく嘆息した。

131ピーチ:2012/11/05(月) 19:39:57 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

性別……確かにこれ見てると聞きたくなる気がする…←

ヒナさん&美羽ちゃんの言うことも納得できるよ安心して!←何の?

132心愛:2012/11/05(月) 21:02:36 HOST:proxyag070.docomo.ne.jp
>>ピーチ

うん、ありがとう!(笑)


…そんなわけで苺花さん←
苺花はちゃんと女っぽい格好すればすごい美人さんになるだろう、残念なイケメンガールでございます(≧∀≦)
いつか、苺花と夕紀主役の話を書きたいんだけどいつになることか…。


どこからどこまでが天然なのかよく分からん夕紀と、意外と打たれ弱いとこがある苺花。

実はヒナと美羽よりも歴史がある二人ですので、末永くお付き合いください!

少しでも好きになってもらえるように頑張ります!



もうちょいしたらキャラ紹介まとめとかやろうと思います←

133ピーチ:2012/11/06(火) 06:42:09 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

苺花ちゃん……ちょっと女の子らしくしてみたら?

絶対可愛くなるから!←

……夕紀君は……ショートカットでも女の子に見えるわけだから………

134心愛:2012/11/06(火) 17:57:15 HOST:proxyag083.docomo.ne.jp
>>ピーチ

苺花の女装(ぇ)回はそのうちw
でも自分からは絶対やらないだろうから、今後の周りからの焚き付けに期待?←

夕紀は無理だね、うん。
あきらめてもらおう☆




それから、とりあえず自分のやつは置いといて、なっがっらっくっお待たせしまくったコラボに手を付けようと思います!

…ほんとごめんごめんなさい許して下さい(土下座

お詫びとも言えませんが、今までのぶん集中して更新頑張るから…!

135ピーチ:2012/11/06(火) 22:47:51 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

まさかの女装!?

………夕紀君、諦めるの?

こっらぼー!←

いやいや、全然いいよ! ここにゃんの小説だったらどれでも面白いし!←

136心愛:2012/11/06(火) 23:14:04 HOST:proxy10070.docomo.ne.jp
>>ピーチ


夕紀は見た目は女の子のままだろうだけど、かっこいいとこもちゃんと作れたらいいな…←


ピーチ優しすぐる…っ(;O;)
ありがとう、でもコラボの方すぐに更新しますので!

137ピーチ:2012/11/07(水) 20:06:22 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

夕紀君、ちゃーんとかっこいいとこあるよね! ね!←催促するな

全然優しくないよー!

あ、最初だけだけど鈴扇霊の方も新しいの更新したから参考になるかも←

138心愛:2012/11/07(水) 21:15:20 HOST:proxy10041.docomo.ne.jp
>>ピーチ

夕紀がかっこよくなってくれるのはいつになることやらw

鈴扇霊、リニューアルバージョンかあ←
参考にさせてもらいます(*´д`*)

139心愛:2012/11/16(金) 21:16:22 HOST:proxy10060.docomo.ne.jp
夕紀と苺花のネタばらしが終わったところで、とりあえず悪ノリに乗りまくったキャラ紹介をば。
これからもキャラはいっぱい増えていきますが、ここまで詳しくやるかは分からないです←

というか、このペースで話がちゃんと終わるか心配だ…( ̄〜 ̄)

140心愛:2012/11/16(金) 21:17:25 HOST:proxy10059.docomo.ne.jp
☆*:;;;;;:*☆*:;;;;;:*☆




Character File No.1


日永圭(ひなが けい)


♂* 15old
173㎝



11組所属

小、中学校とあまり良い思い出がなく、高校デビューを目指して南高に入学。

幼い頃に美羽と出会い、一目惚れするが再会した彼女は末期中二病患者になっていたという哀れすぎる運命を背負ってしまった。

結構ヲタが入っていて、必死に隠してはいるがちょいエロラブコメが好き。

一人称俺、通称ヒナ。

中学生の妹がいる。



looks*
くしゃっとした感じの色素が薄い猫っ毛以外は至って普通。
中肉中背で、顔はすごく良いわけでもないが悪くもない。
『良く見たら結構イケる?』みたいな典型的主人公フェイス。


character*
基本は穏和で常識人なお人好し。
争い事は好まないが、周りの人間が人間なのでツッコミと気苦労が絶えないご様子。
何事もこつこつ少しずつやる努力家。
あんまり特徴がないのでモブキャラ扱いされることもしばしば。


like*
カレー、ポテチ、漫画、ラノベ、ゲーム、小動物、寝ること、英語、ロングヘアの清楚系美少女、ツンデレキャラ、美羽


dislike*
数学、無視、クソゲー、表紙買いで失敗すること、ヤンデレキャラ、ケンカ、納豆


data*
高校入学後、「王子にラブレター渡して!」と頼まれた回数 13回(日々更新中)

高校入学後、「姫に本当に彼氏いないか確かめてくれ!」と頼まれた回数 34回(日々更新中、夕紀の事情を知らない人には毎回律儀に誤解を解いてやっている)

中学時代クラスメイトと会話した回数 5回

所持している漫画及びラノベの数 517冊


sample voice*

「……なあ、俺の高校生活ってこれでいいの? そこんとこどうなの?」

「天パ言うな!」




☆*:;;;;;:*☆*:;;;;;:*☆




Character File No.2


結野美羽(ゆいの みう)


♀* 15old
145㎝



11組所属

絶賛邪気眼発症中の貧弱お嬢様。

魔術組織《純血の薔薇(Crimson)》の一級魔女で吸血姫(ヴァンパイア)、ミウ=黎(ローデシア)=リルフィーユ、という設定らしい。

意思が強く、“理想の自分”であるためには努力を欠かさないという一面も。

ヒナを眷属とし、それを理由に何かにつけてこき使っている。

一人称ぼく。

一学年上に姉がいる。


looks*
腰までの黒髪ストレートの美少女。
黒い瞳だが赤のカラコンを愛用。
ほぼいつもゴスロリ姿。
スリーサイズは子供体型。


character*
痛々しい設定になりきり、クールにカッコよく振る舞うよう努力しているが、単純なためすぐに作ったキャラが崩壊する。
独特の優しさを持つが、他人に指摘されるとキレる。

色々と不器用で、常に空回りしがち。

負けず嫌いで低血圧、偏食家。


like*
邪気眼系のアニメとか漫画や小説、ゴスロリ、フリル、レース、ネサフ、甘いもの、猫、国語、黒


dislike*
リア充、スイーツ(笑)、ビッチ、荒らし、数学、体育、早起き、食事、誰かから強制されること全般、苦いもの、辛いもの、しょっぱいもの、酸っぱいもの、炭酸飲料


data*
一日のネット利用時間 約5時間

持っているゴスロリの数 部屋ひとつ分

マンガ喫茶に一人で入ろうとして「小学生が入っちゃダメでしょ」と止められた回数 7回
(顔を上げて無言で店員を睨みつけることで全て解決)



sample voice*

「く……紅き月の光を浴びると、ぼくの血が生贄を欲して騒ぎ出す……っ」

「こ、こ、恋? いや、ぼくはそんな、わ、分かっ……」




☆*:;;;;;:*☆*:;;;;;:*☆

141ピーチ:2012/11/16(金) 22:07:40 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

ヒナさん、色んな意味でパシリだね……

美羽ちゃんかっわいいー!! …小学生と間違われるって、よっぽどだよね…

142心愛:2012/11/16(金) 23:39:25 HOST:proxy10032.docomo.ne.jp
>>ピーチ

…うん。ヒナは良いようにパシられる子なんだ…(´ー`)

美羽は身長・体格は完全小学生だけど別に童顔ではないつもり←
小学生だったらゴスロリも許され……る、か?(~_~;)
非行少女っぽいなw

143ピーチ:2012/11/17(土) 08:16:31 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

…哀れだねヒナさん…

あ、てっきり童顔だと思ってた…美羽ちゃんに怒られそー←おい

144心愛:2012/11/17(土) 15:30:37 HOST:proxyag054.docomo.ne.jp
>>ピーチ

「こっ……子供扱いするんじゃないっ! ぼくはれっきとした高校せ……じ、じゃなくて偉大なる吸血姫(ヴァンパイア)だ!」

みたいな?←
美羽は子供っぽいけどね( ´∀`)

145ピーチ:2012/11/17(土) 18:34:03 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

やっぱり高校生だー! 自分で言いかけたー!←うるさい

でもそれが可愛いw

146心愛:2012/11/17(土) 20:20:58 HOST:proxyag072.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ありがとう!
中二病で空回ってる女の子は可愛いんだ!と信じてるここあなんで嬉しいです←

ここあのキャラは結構暗い過去があったりなので、空牙しかりミレーユしかり、ソフィアしかり暗殺者組しかりでヒナを始めとして美羽と苺花もそれなりに傷抱えちゃってます(/_・、)
でもそれを乗り越えてこそだぜ!

というわけで、こっちもそろそろ更新再開するかも?←
ピーチも無理せず見守っててください!テストは大事だよ人のこと言えた義理じゃないけど!

147ピーチ:2012/11/17(土) 22:02:14 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

可愛いーw←

よくよく考えてみれば確かに凄かった!

……今思ったんだけど、ミレーユちゃんと天音が毒舌勝負ってなったらどっちが勝つと思う?

いや別にスルーおっけだよ!←

148心愛:2012/11/18(日) 11:03:33 HOST:proxy10028.docomo.ne.jp
>>ピーチ

…そんな恐ろしいことになったら空牙が疲労で死にそうだな……。


んー、罵倒のバリエーションとしてはミレーユ、容赦のなさでは天音ちゃんに軍配が上がりそうw

149ピーチ:2012/11/18(日) 11:15:24 HOST:nptka204.pcsitebrowser.ne.jp
ここにゃん〉〉

確かに! でも何気にやってみたいかも←おい

空牙君のことだけが心配だけどね!

150心愛:2012/11/18(日) 15:20:41 HOST:proxyag054.docomo.ne.jp
>>ピーチ

地獄絵図だね☆
そのときは頑張ってくれw

151心愛:2012/11/18(日) 15:21:28 HOST:proxyag054.docomo.ne.jp
☆*:;;;;;:*☆*:;;;;;:*☆




Character File No.3


姫宮夕紀(ひめみや ゆき)


♂* 15old
165㎝



11組所属

本人は嫌がっているが、そのあまりの可愛さ、優しさから“姫”と呼ばれる。
会員オール男のファンクラブがあるとかないとか。

男らしくなれるよう日々筋トレを欠かさないが、趣味が手芸という時点で色々無理だと思う。


将来の夢は看護師。ナースナース。

一人称僕。



looks*
栗色の髪に紅茶色の瞳の清純系美少女……ではなく非常に残念ながら美少年。
私服通学だが、たとえ学ランを着たとしても「男装した恐ろしく可愛い女子」にしか見えない。


character*
今時珍しいほどのピュアっ子。
心根は極めて純粋で優しい。
気配りはできる方だが、たまに空気読まない天然発言をぶちかます。

何故か特に苺花を気に入っており、悪気はないものの「可愛い」発言を繰り返しては怒られている。

信条は『みんな友達』。


like*
友達、ホットケーキ、手芸、ミルクティー、うさぎ、甘いもの、数学、映画鑑賞、苺花


dislike*
可愛いと言われること、女の子に間違えられること、にんじん、セロリ


data*

中学時代、男に告白された回数 217回 (同じ相手も含む、大抵は気づかずスルー)

裏で密かに取引が成立され、校内で出回っている丸秘写真の枚数 44枚(着替え中のものなど完全に盗撮。レアなため超高値で売れる)


sample voice*

「姫って呼ばないで! ねえ、僕は男なんだよっ? 分かってるよね、ね?」

「まいちゃんって可愛いよねー」





☆*:;;;;;:*☆*:;;;;;:*☆




Character File No.4


柚木園苺花(ゆきぞの まいか)


♀* 16old
172㎝


11組所属



勉強全般、家事全般得意で運動神経抜群。

女の子大好きでナチュラルに口説く。

アホかというくらいモテまくり(女に)で、通称王子。

家では親に代わって弟妹の世話に明け暮れる面倒見の良いお姉さんだったり。

一人称私。


looks*
黒髪ショート、黒い瞳で長身。
モデルかホストかという危険な香りのするパーフェクトイケメン、でも女子。


character*
困っている女の子は放っておけないフェミニスト(ただし本人も女)。むしろ困ってなくても放っておけない。
信条は『可愛いは正義』。
他人に優しく、自分に厳しい完璧主義者。

意外と打たれ弱く、自分の容姿に合わない名前を気にしている。
涙もろいところもあり、そういう面ではこの作品で一番乙女かもしれない。


like*
友達、女の子、家族、可愛いもの、パスタ、コーヒー、節約、料理、世界史、体育、格好良いと褒められること


dislike*
自分の名前、浪費、グリーンピース、虫、怪談、ライバル視されること


data*

中学時代、ラブレターの入れられすぎで靴箱が壊れた回数 6回

去年のバレンタインチョコの獲得数 164個(学校中の女子がこぞって押し掛けるのでちょっとしたお祭り状態に)

男に「弟子にしてください」と頼まれた回数 9回


sample voice*

「どうしたの、可愛い君。そうだね……キスしたら、泣きやんでくれるかな」

「はあっ!? 私がっ? 全然これっぽっちも可愛い要素なんかないしってちょっと聞いてる!?」



☆*:;;;;;:*☆*:;;;;;:*☆

152心愛:2012/11/18(日) 20:13:28 HOST:proxyag113.docomo.ne.jp

※この作品は徹頭徹尾完全にフィクションです。

「こんな奴いねーよ!」というツッコミはなしでお願い致します(キリッ


……今時ラブレター書く人なんているのかな……?




整理がつきましたところで、次から本編に戻ります(´ー`)
ヒナの妹が初登場ですー(・∀・)

153ピーチ:2012/11/18(日) 20:33:48 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

ヒナさんの妹ー!!

ここにゃんのキャラってさ、居そうで居ない人達だよね←

……ラブレター、どーなんだろ…

154心愛:2012/11/18(日) 21:31:32 HOST:proxy10062.docomo.ne.jp
>>ピーチ

うん、それ狙ってるんだw
フツーじゃ物足りないからついキャラ濃くしちゃうんだよねー…


ヒナの妹もなかなかすごいぞ!↓

155心愛:2012/11/18(日) 21:32:12 HOST:proxy10061.docomo.ne.jp

『妹』






「……ただいまー」



玄関で靴を脱ぎ、そのまま二階にある自分の部屋に向かう。


階段を上りながらぶつぶつと独り言を漏らした。



「先生が言うまで気づかなかった俺も俺だけど。美羽の奴、勝手に上靴の代わりに自分の靴持ち込んでんじゃねーよ……。当然のごとく俺まで巻き込まれたし」



南高は私服通学だが、もちろん学校の中で履く上靴は指定のもの。

そういや確かに、入学式の日から教室で堂々と黒い靴履いてたような気もするけど、気づいた人はどれだけいるのだろう。

何故か「ヒナ! 眷属たる者、主の危機に立ち会わないでどうするというんだ、こっちに来い!」なんて言われて、なにが危機だ完っ全にお前の自業自得だろうがぁああああああと突っ込みたいのも必死に我慢して、放課後担任の説教に付き合わされること早一時間。


……こんなときは漫画なりラノベなりゲームなり、二次元の世界に籠もるのが一番だ。

ビバ現実逃避。




「はー……あ?」




「おかえりー」




部屋のドアを開けると、ベッドに寝転がっていた少女が振り返ってひらひらと手を振った。



―――……俺のエロ本を読みながら。



「ぎゃあああああああ!? ちょ、待てそれは女子供が読んでいいブツじゃない! 返せ! 返せこのバカ! 変態!」



「んー、お兄ちゃんちょっと趣味変わった? 同人誌ばっかなのは相変わらずだけど、SMに強姦モノにー……でも妹萌えも近親相姦モノもないのかーつまんなーい」



「申し訳御座いませんでした誠にお手数ながらそちらの本を返して戴けませんでしょうか彩(あや)様」



俺、土下座。

それは健全な女子中学生が発する台詞として大いに間違っているぞ我が妹よ……!



んーしょーがないなー、とにまにま笑う彼女。


色素が薄めの柔らかな猫っ毛に同色の瞳、そこそこ整った造作。


可憐な容姿もさることか、至る所に隠した俺の秘蔵コレクションを勝手に発掘するのが趣味の逆セクハラ女。


非常に残念ながら、これが俺の妹です……。



「そうそう、これは学習机の上から二番目の引き出しにある歴史の資料集に挟んであったやつなんだけど、この前お母さんも『あれはちょっと圭には早いんじゃないかしら』って言ってたよ。
………………お兄ちゃん、自殺するのはいいけどお兄ちゃんが死んだら彩がエロ漫画もエロゲーもタイトル全部リストアップしていろんな人に情報提供しちゃうからね?」



はっ!


あ、危ない、身体的にも精神的にも社会的にも死ぬところだった……!


今にも窓枠に足を掛けて爽やかな青空にダイブしようとしていた俺はその寸前で我に返り、俺のベッドでぐでーんとしている彩の前の床に正座する。



「お兄ちゃんほんとツンデレ好きだよねー。彩も好きだよ」



「男のだろ」



「まあねー。ツンデレ最高。鬼畜攻め×ツンデレ受けマジ王道」



「黙れ汚女」



「さあってと、お兄ちゃんをBLに目覚めさせる第一段階として、コレを使ってより詳しい性癖のチェックを」



「腐海に帰れ!」



「それともこっちの漫画のセリフ朗読してあげよか」



「結構ですやめろやめて下さい」



「そこは喜んでよー」



「嫌だよ!」



俺の心休まる時間は自分の家にもないのかっ?

156心愛:2012/11/18(日) 21:33:51 HOST:proxy10059.docomo.ne.jp






当然のように居座る気満々の彩はごろんごろんと左右に寝転がりながら、



「それでー? 今日は学校でなんかあった?」



「スカートでごろごろすんなパンツ見える。……なんかってなんだよ」



「決まってるじゃーん。柚木園さんとか姫宮さんとかー、あとは愛しの“ミウ”さんとのことだよ」



「……うぜー」



顔をしかめる俺にも構わず、彩は頬杖をついてにこにこする。



「あー会ってみたいなー! お兄ちゃんの初恋・リアル僕っ娘(こ)中二病美少女美羽さん! しかも姫宮さんは男の娘で、柚木園さんはイケメンの女の人なんでしょーっ? 彩的にはお兄ちゃんは受けだと思うんだけど姫宮さんとだったら攻めでも全然アリだしっ、柚木園さんは男体化すればイケるイケる」



「イケねーよ。話でしか聞いたことない人のダチで妄想すんな腐女子」



「ふっ、甘いな。いくら妄想しようが陵辱しようが、それが脳内での出来事である限り罪には問われないのだよ!」



「開き直んな!」



ものすごくイイ笑顔でビシッと親指を立てる彩。



「ほれほれ、そんな可愛い妹の妄想材料提供タイムだぞ? ムフフなエピソード期待! さあ吐け」



「お前のどこが可愛い妹なんだよ図々しい!」



「かっ勘違いしないでよね! 別にお兄ちゃんのことなんて好きじゃないんだからねっ!」



「ツンデレなら可愛いってもんじゃないからな!?」



「かっ勘違いしないでよね! 別にお兄ちゃんのこの本をリビングのテーブルに置いて来たりなんてしないんだからねっ!」



「脅迫やめろ!」



「ところでイケるってよく考えるとエロくない?」



「いきなり真顔で何言い出しちゃってんですかこの子はぁ―――!?」



連続ツッコミに疲れてぜーぜーと肩で息をする俺を見て、彩は「にゃはは」と変な声で笑う。



「お兄ちゃんは楽しーなー」



「俺はまったく楽しくないんですがねえ!?」



「あはは」



「笑い事じゃないし!」



「それでー? 今日の話、いーかげんこの彩ちゃんに大人しく教えなさいな」



「………はぁ」



俺はなんかもう色々諦めて。


彩の言う通り、ゆっくりと今日の出来事を話し始める。


もともと、分かりやすく説明することは得意じゃない。


俺の下手な話を第三者が聞いたって楽しいはずもないんだけど。


たどたどしく言葉を選んでいくその間中、彩は俺の枕に顎を乗っけて嬉しそうに目を細め、ハイソックスに包まれた足をぱたぱたさせていた。



「――……はい終わり。これで満足?」



「ん!」



こくんっと頷いて。



それから彩は―――ひどく優しくて、淡い微笑みを浮かべた。




「……ほんとに良かったね、お兄ちゃん」




くすっと笑う。



「…………」



「お兄ちゃん、高校入ってから毎日すっごく楽しそうで……。今までと全然違うんだもん。彩、お兄ちゃんの『友達』に……皆さんに、お礼言いたいくらい」



……分かってる。


彩がふざけながらも、こんなにもしつこく俺の話を聞きたがるのは―――俺のことを、本当に心配しているからだってことも。


小学校、中学校のとき、毎日暗い顔で帰宅していた俺を、こいつはずっと、ずっと……見てきていて。



―――俺に『友達』と呼べる人間ができたことを、心から喜んでいるからだってことも。



「……ブラコン」



「へっへーん」



照れ隠しにぼそっと憎まれ口を叩いたら、彩はいつも通りのへらへらした笑みで、得意げに胸を反らした。

157ピーチ:2012/11/20(火) 06:48:27 HOST:nptka201.pcsitebrowser.ne.jp
ここにゃん〉〉

彩ちゃん可愛い←

可愛いだけじゃなくて優しい!

158心愛:2012/11/20(火) 12:19:31 HOST:proxyag062.docomo.ne.jp
>>ピーチ

彩は動かしやすいわw


ありがとうー!
ここあキャラの特徴をばっちり押さえちゃってる彩さんです←
そしてヒナは妹にまでいじめられてますw
でも愛ゆえなんだ!がんばれヒナ!

159名無しさん:2012/11/20(火) 21:31:55 HOST:EM114-51-219-252.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

動かしやすいんだ彩ちゃんww

ヒナさん…妹にまでって←

まぁ、愛があるからだけどね!←

160心愛:2012/11/21(水) 22:40:11 HOST:proxyag088.docomo.ne.jp
>>ピーチ

彩はここあの趣味丸出しだからね…。むしろ分身?

ちなみにヒナは彩の前だとヲタっぽさに磨きがかかるよ←

161心愛:2012/11/21(水) 22:49:00 HOST:proxyag088.docomo.ne.jp





と、寝転がっていた彩が、急に「あれっ?」と跳ね起きた。



「今何時?」



「六時ちょい」



「あ、なんだぁ。じゃあレンオー始まるまでには余裕あるなー。暇ー」



「またアニメかよ。勉強すれば?」



「やだー」



……だから成績悪いんだよこの愚妹は……。



「今のうちから頑張っとかないと来年泣くぞ。受験だろ」



「彩勉強嫌いだもん。どーせ頭良いお兄ちゃんには分からないですー」



ぷーっと頬を膨らませる彩。



「そりゃ俺だって嫌いだって、でも」



「そうそう、レンオーってね」



「話逸らすなっての」




「―――美羽さんの設定にかなり似てるキャラがいるんだよ?」




「そこんとこkwsk」



「……お兄ちゃんって分かりやすいよね……」



ほっとけ。



にししっと彩は意味不明な声を立ててから、



「レンオーっていうのは『煉獄のAurora(オーロラ)』の略ね。異能バトル中心のいわゆる邪気眼アニメ」



邪気眼……。



「魔力とかヴァンパイアとか出てくる?」



「出てくる出てくる」



部屋にあったノートパソコンをひょいと立ち上げ、カチカチ操作する彩。



「そのヒロインがー……んーと、これこれ」



しばらくして、画面に表示されたのはゴスロリ姿の美少女キャラの画像だった。


銀髪に紅(あか)い瞳、つんと澄ました顔。



「シルヴィア=ファローズ。吸血姫(ヴァンパイア)で、冥界最強の異能《赫き煉獄の宴(ローゼン・クランツ)》の所持者。一人称は『ぼく』ね」



「……ほ、ほう……」



髪の色は違うものの……やべえ、超そっくり。


小さそうな背丈も細っこい体つきも、目の色も服装も、雰囲気も。美羽をそのままアニメキャラにしたみたいに生き写しだ。


……否定してたけど、あの格好はやっぱりコスプレなんじゃ。



「……で、何してんの」



「んー?」



考えているうちに、彩はそのままカーソルを動かし、ゴスロリ娘の画像から、黒髪のイケメンと金髪の美青年のイラストに変えて「はふぅ」と満足そうに息をついた。



「でも彩はやっぱり悪魔×ダークエルフの思わせぶりな関係がBLすぎてwktkだからそっち目当てなんだけどね!」



「日本語でおk」



「鬼畜攻めには健気受けもいーよねー。誰か公式でアレユリのBLゲー作ってくんないかなぁ」



「聞けや」



「ま、そんなわけで美羽さんに聞いてみたら?」



「超話飛びましたね」



「ごーいんぐまいうぇいな性格なもので」



「分かってんなら直せよ。誰が被害被ってると思ってんだよ」



「ちなみに『ごーいん』は漢字の『強引』って書きます」



「知るか」



「そんじゃ彩はこのへんで。あでゅー!」



「話の飛び方ぱねぇなおい。暇なんじゃなかったのかよ」



ドアに手をかけた彩は『にぱっ』と笑ってピースサイン。




「ちょっくら一階行って洗濯機×洗剤×服で萌えてくるわ!」



「うん、病院行け」



「ついでに服の汚れを参加させることで夢の4Pを実現」



「ボケの大渋滞でどこからどう突っ込めばいいのか分かんなくなってきたけどとりあえず無機物萌えはやめろ」



「安心して! ちゃんと擬人化するから!」



「その台詞のどこに安心しろと!?」



俺がある程度美羽の中二病発言に耐性あるのって、絶対この変態の影響だよね!



「あ、情報代は美羽さんをお家デートに誘うことでいいよ? 彩やさしー」



「……な、何でだよ!」



「このままじゃ一生彼女なんかできないだろう非モテでヘタレなお兄ちゃんの背中をそっと押す健気な彩。……泣けるねぇ」



「お前の暴言に泣けるよ! それと一生は余計だ!」



「じゃあ柚木園さんと姫宮さんも呼べばいいじゃん」



「だから話の腰を折りまくんなよ! なんかもう原形留めてないレベルにベッキベキだよ!」



「はっ! 洗濯機の前にホコリ×空気があるじゃん! こうしちゃおれん、まずは彩の部屋に行って来まーす!」



「二度と帰って来んなゴキ腐リがぁああああ―――!」

162心愛:2012/11/22(木) 11:49:36 HOST:proxyag107.docomo.ne.jp






《ブーッブーッ》



「おわっ」



ポケットに入れていた、マナーモードのスマホの振動に驚いて、慌てて取り出してそれを落としかける。



「メール一件……美羽じゃん」



開く。




『嗚呼……紅蓮に霞む月夜は、吸血姫(ヴァンパイア)としての本能が疼く……。

……君を此方へと誘(いざな)う運命の歯車は廻り始めた……。

さあ……血誓の宴の刻。
今宵、君に凍てつく闇の冷たさを教えてやろう……』




【訳‖暇だ】




「………………」



ぐんにょり。


メールなのに点々多用すんな読みにくいだろとか、カッコ使ってまで無理矢理ルビふらなくてもとか、いやその前に常人なら正気を疑うような文章送りつけてくんじゃねぇよ迷惑メールかと思うじゃんかとか、なんかもう突っ込みどころ満載だった。



「……あーもー……とりあえず」



顔をしかめながらも、電波メールを保護しておく。



い、いいじゃん。好きな子からのメール保護したっていいじゃん! 純情少年なの俺は!

たとえそれが『俺……マジであれのこと好きなんだよね?』って一瞬思っちゃうような代物でもさっ!


……ちょっと泣きそうになった。


端っこに鍵マークがついたのを確認してから、無駄だというのは百も承知で文面をもう一回読み直す。


……この文章見て、即座に訳がつけられる俺もすごいよね。



「んー……」



向こうのテンション完全無視で、これだけ打って返信。




『レンオーって知ってる?』




「………」




《ブーッブーッブーッ》




「返信早っ!」



メールを開く。




『なぬがあった!?』




「いやお前に何があった!」



……どうやらかなりテンパってるらしい。


どう返せばいいんだか迷っていると、さらにもう一通届いた。




『今のは間違いだ。
一体何があった? 君からその血と戦慄に彩られた名を聞くことになるとは思いもしなかったぞ』




微妙に落ち着きを取り戻したようにも見えるが、それは多分メールだからだろう。

今頃本人は相当パニクってるに違いない。




『別に。妹が今から見るっていうアニメ。美羽も見てんの?』




『……ふっ……何のことだか分からんな……』




嘘つけ。



さっき彩から聞いたことを元に、鎌をかけてみることにする。




『そん中にシルビア? とかいうのがいるらしいけど。美羽にそっくりな』




『シルヴィアだ!! 間違えるな、一番好きなキャラなのに!』




駄目じゃん。



どんだけ単純だよ。こんなにも綺麗に引っかかるとかこっちがびっくりだよ。




『い、今のはなしだ。忘れろ』




『無理だし。で、そのシルヴィアのコスプレなの? 美羽のあれは』




『だから違うと言っている! 確かに似ている箇所はあるがぼくの衣装は自分でデザインしているものなんだからな! 完全にオリジナルだ! それに口調も昔から』




……と、毎回毎回面白いくらいぼろを出してくれる美羽とやり取りを続けることしばらく、



美羽はそのシルヴィアとかいうキャラのファンだが、決してコスプレをしているわけではないこと。


今まで通してきた自分の設定や背格好がキャラのそれと類似していることから最近ハマっただけだということ。


でも元となる世界観などは、『レンオー』を“一部参考にして”拝借した部分もあるということ。



以上のことが判明した。
情報提供しすぎだろ。




『……そろそろ、《咎人(アウフルーフ)》との決戦の時間だから落ちる』




ここまできたら素直にアニメ始まるからって言え。

163名無しさん:2012/11/22(木) 20:02:56 HOST:EM114-51-202-35.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

………彩ちゃん、の影響ね……

凄い偶然があった!美羽ちゃんが彩ちゃんと同じアニメ見てたんだ!

…凄い言い訳考えつくもんだね、美羽ちゃん…

164心愛:2012/11/22(木) 22:28:18 HOST:proxyag113.docomo.ne.jp
>>ピーチ

美羽超必死です←


シルヴィアって、『ソラの波紋』に一回名前だけ出てきてたんだけど気づいた?←
『煉獄のAurora』はここあが昔書こうとして断念した小説を改変して、美羽が好きなアニメってことにしちゃったやつなんだな。
で、『ソラの波紋』は『煉獄のAurora』の世界観とキャラを乗っ取って、新しい主役の空牙とミレーユをつけたしたものです(´ー`)

美羽のモデルのシルヴィアもいずれ『ソラの波紋』に登場させる予定w


長文スマソ(^-^;

165名無しさん:2012/11/23(金) 14:12:45 HOST:EM114-51-192-34.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

まじか! どっかで見た記憶あるくらいしか分かんなかった!

美羽ちゃん超必死w←

まさかの断念した小説がアニメにw

あたしも似たよーなのあるよー←

166心愛:2012/11/23(金) 15:29:45 HOST:proxyag084.docomo.ne.jp
>>ピーチ

痛いのは十分承知ですがね…(~_~;)
コラボも終わりが見えてきたし、『ソラの波紋』も進めないと←


次からまた新キャラ登場です!
こいつとあと一人出したら一段落かな?

こいつは名前出してなかったけど、今までちょこちょこ出てきてたんだよ。


ここあキャラの中で一番の変態度を誇る男ですが嫌いにならないでやってね! ……むしろ喜ぶか……?

167心愛:2012/11/23(金) 15:30:30 HOST:proxyag083.docomo.ne.jp

『春山慎太郎』






さて、突然ですが問題です。



朝登校したら、前の席に座っている奴の頭が普通の黒から綺麗な金髪になっていた場合、どんなリアクションをとるべきなのでしょう。



……週明けの朝、俺は期せずしてその大ピンチに直面していた。



「お、おま……その頭どしたの」



「んー?」



振り向いたのは一人の男子生徒。

脱色された髪に、不自然なほど細い眉毛。
柚木園みたくずば抜けてはいないものの、それでも俺からしてみれば十分すぎるくらいに整った目鼻立ち。


そいつは歯を剥き出して嬉しそうに笑い、



「おー、なんだヒナか!」



「だからヒナ言うな」



着崩したシャツに腰パン、開きまくった胸元にはじゃらじゃらしているシルバーアクセサリー。
何故か棒付きキャンディーをくわえている。


確か、春山……そう、春山慎太郎(はるやま しんたろう)とかいう名前だったはずだ。


元々なんかチャラそうなワイルド系の美形で、そんな格好も正直ばっちり似合っちゃったりなんかしてますけど!


驚愕している俺に、春山は舐め終わったらしいキャンディーの棒を片手で弄びながらニカッと笑って言う。




「不良始めたからねー」




………いや。
いやいやいやいや。


そんな『かき氷始めました』みたいなノリで言われましても。



「……な、なんで?」



ここは南高の教室である。

真面目で勉強第一な校風の学校の教室に、ザ・金髪頭の男が急に光臨したらそりゃあ浮きまくるのは当然のことで。

校則ゆるっゆるとはいえ、美羽みたいな例外を除き、何も言われなくてもほとんどの生徒が良識的な範囲内での服装で登校してくるわけで。

もちろん、不良さんルックスの生徒なんか一人だっているわけがないわけで。


クラスの皆さんも、遠巻きに春山を見てはひそひそと小声で何か言い合っている。

俺だって、こういう人種とはできれば関わり合いにはなりたくないくらいなんだけど……。


それでも、なんか事情でもあんの? という疑問を持つことは、美羽のときもそうだったけど至極当然のことと言えるだろう。むしろ持たない方がおかしい。



「………」



隣では、机を壁にくっつくくらいにできる限り遠ざけた美羽も、警戒の色を赤い瞳に滲ませて春山を睨んでいる。



「あーそれは……ってちょ、そんな睨まないでよ結野ちゃん! 俺不審者じゃないからね? 怖くないよーほらほら」



「……そんな格好で堂々と学校に来るなんて、不審者以外の何だと言うんだ。高校は学業に励む場所だろう」



お前もだろ。



「あーでもその蔑んだ目いいわぁ。そのまま罵倒プリーズ」



「何を言っているんだ君はっ!」



チッチッチッと猫を手懐けるみたいに舌を鳴らす春山に、「き、気持ち悪いっ」と涙目になった美羽がガタンッと席を立ち、俺の背後に隠れる。


……こいつ、こんなキャラだったっけか……。



「いーねいーねー、結野ちゃんに気持ち悪いって言われるとゾクゾクくるわぁあ」




「……は、春山くんにヒナに……ゆいのん? どうしたのっ?」




奇妙な光景に、登校してきた姫宮が目を丸くしていた。



「姫宮ちゃーん! よっ、今日も可愛いねぇっ」



「か、可愛くないもん!」



「一回でいーから今度デートしてよ、なんかおごるから」



「男と一緒に出掛けることをデートって言うの!? 少しは反省しようよっ」




「―――ちょっと、夕紀をいじめないでくれる?」




姫宮に続いて入ってきた柚木園が、腕を組んで冷たく言った。



「まいちゃん! おはよっ」



「おおう柚木園っ! 遅いじゃんかっ」



柚木園を認めるなり、春山は顔をキラキラと輝かせた。



「……ゆ、柚木園? お前まさか、春山と仲良いの?」



「失礼なこと言わないでよ。誰がこんな変態と」



「へ」



柚木園らしくない言い草に美羽と二人して呆ける。

対照的に、春山は鼻息を荒くして。



「おっほう! その冷たい声がたまらんっ! もっとなじってくれていーんだぜ! むしろ思いっきり足蹴にして!」



「ほんとお前どんなキャラなんだよ!」



ドン引きだよ!

168心愛:2012/11/23(金) 15:32:30 HOST:proxyag066.docomo.ne.jp






何の躊躇もなく、柚木園の前の床に身を投げ出した春山は歯をキラーン。




「ただのドMキャラですが何か問題でも」



「大有りですよ! むしろ問題しかねぇよ!」



何なのこの人! 何なの!?



「なーなーゆーきーぞーのー!」



「……っ気持ち悪い!」



その長くすらりとした足にすがりつかれた柚木園は、顔を引き攣らせると乱暴に春山を振りほどく。


当然、春山はまるでゴミのように、ベシッと固い床に投げ出された。



「い、今すごく嫌な音がしたぞっ?」



少しでも距離を取るように美羽が後ずさり、




「……はぁはぁ」




『本物だぁあああ―――――!!!』




クラスが一丸となって叫ぶ!



怖い! ドM怖い!!




気色悪く頬を染め、春山はうっとりした目でまくしたてる。



「でもまだ足りないっ! 柚木園、貴様の本気はそんなものじゃなかったはずだ! さあ昨日のように! 遠慮容赦一切ゼロの一撃を俺にくれっ!」



「……? 昨日もそうだったけど……春山くんは蹴られても平気なの? 痛くないの?」



「夕紀は何も知らなくていいんだよ」



さっきから一人きょとんとしている姫宮に柚木園が力なく微笑みながら、金髪を振り乱して迫る春山をゲシッと蹴り飛ばす。

教室の隅で「あふんっ」という声が上がった。



「き、昨日って?」



「それがね……」



柚木園はげっそりしながらも説明してくれる。



「……昨日は日曜だったでしょう? 買い物に行ったんだよ」



「うん」



「そうしたら、金髪の男にナンパされてる子がいて。しつこく絡まれてたから、その子の顔も見ずに、いつもの癖で助けちゃったのね。……夕紀だったんだけど」



「へえ。偉いな」



「『へえ』じゃないよ! 男が男をナンパだよっ? そこは疑問を持とうよヒナ!」



や……だって……ねぇ?



「その男が、髪染めた春山くんだったってわけ。ちょっとやりすぎちゃったかなとは思ってたんだけど……。気に入られたみたいだね、迷惑なことに」



何をどうやりすぎたのか気になるところだ。



「それは、その……ご愁傷様なことだな」



「ありがとう……」



美羽に困ったように言われ、ふっと笑う柚木園。


……哀れだ……。


と、



「……そんで結局、春山はなんでそんな頭にしたんだよ」



まだ質問に答えてもらってないことに気づき、自分がぶつかったことによってずれた机をきちんと直しながら(律儀だ)立ち上がっている春山を見る。


「あ、悪い悪い」と金髪頭を掻いて。



「だってさぁ、不良っつったら喧嘩だろ?」



「あー、そう……かもな」



そこで春山は、なかなかに魅力的な満面の笑みを浮かべて。




「じゃあ同じ不良になったら、そこらへん歩いてるだけで絡まれて、本職の方々にボコボコに痛めつけてもらえるじゃん!」




『この変態がぁ―――――!』




想像を絶する変態ぶりだった!



「やー、親に『もしも南高に入れたら、何でも好きにしていい。お前の頭じゃ絶対無理だろうから』って言われて猛勉強したんだよね。連続満点を叩き出しこうして晴れて不良に! これで白昼堂々殴ってもらえるぜやっほい!」



「そのためだけに!?」



「君のご両親が可哀想で仕方ないんだけど!」



「天職ってこーいうことを言うんだよなー」



「さっさとクビになっちまえそんな職業!」



「かっこいーだろー? 結野ちゃん、惚れてもいーよ?」



「誰が惚れるか!」



「もっと吐き捨てるように!」



「リクエストするんじゃないドMがぁ―――!」



「ねーまいちゃん、そういえば、……どえ・む? ど・えむ? ……って何なの? 春山くんのことだよね?」



「夕紀は黙ってて!」



「えええっ!?」




―――入学から約二週間。


俺にも好意を向けてきてくれるクラスメイトに対して、初めて心からの恐怖を覚えました。

169ピーチ:2012/11/23(金) 19:14:39 HOST:nptka302.pcsitebrowser.ne.jp
ここにゃん〉〉

………やだ。こーゆー人絶対やだ。

湯きぞの君だけねの気持ちよく分かる

170心愛:2012/11/29(木) 18:19:33 HOST:proxyag072.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ご、誤字りまくってるけど大丈夫っ?



テスト終わったー!
2つの意味で終わったー!


…う、うん、チャラくてキモくてウザいけど悪い奴じゃないから!
ここあキャラの特徴もちゃんとあるし、クライマックスでまともな見せ場用意してるから!

ソフィアとシェーラ殺しかけたオスヴァルトとジルとユーリエみたく、あら不思議、気づいてみれば印象が変わ…ら…ない、か?←

まあここあだって、こいつが現実にいたら絶対やだけどね、うん。



そんなわけで、主要クラスメイトがそろったとこで日常編再開!
コラボはもうちょいお待ちを(´ー`)

171心愛:2012/11/29(木) 18:20:38 HOST:proxyag072.docomo.ne.jp

『体育』






「……ヒナ? なんで後ろ向いてるの?」




「……………」




頑と顔を壁に向け続ける俺。

額にはダラダラと汗。



「ひーなー! なんでなんでなんでーっ?」




「お前が着替えてるからだよ!」




クラスの約三分の一を占める女子全員が更衣室に行ってしまった後の教室。

ひどい話だが、この学校には男子更衣室がないので自然と男子はここで着替えることになる。

そんなことになったら当然。



「姫、いーから大人しく女子更衣室行って来いって!」



「絶対バレないから俺が保証するから!」



「や―――だ―――!」



とても直視できずに目を背けつつ説得を始める男子諸君に続いて、春山も赤い顔でわめく。



「じゃあ姫宮ちゃん、更衣室じゃなくていーから! こっちの身がもたねーからせめて違うとこで着替えてくんね? 本気で頼む!」



「なんでーっ!?」



「だっ……からこっち向いちゃだめだって! せめてカーテンで隠……せねーわ窓から丸見えだわっ」



おたおたしながら、机の上にあった姫宮の体操着を後ろへ向けて投げてやる春山。



「わ、顔に掛かっ……」



「とにかくハダカでうろちょろしない! 上着て早く!」



「い、意外。お前絶対、修学旅行で女子風呂覗きに行こうぜ! とか言い出すようなキャラかと思ってたのに……。ガン見しないんだ」



「や、さすがの俺も無理これは。ガチで無理」



変態の中の変態・春山の素を引き出すほどの美少女ぶりを発揮する姫宮は、紅茶色の瞳をうるうるさせている様子がよく分かる声で。



「う、ううう……こうなったら女子もいないことだし、一度ちゃんと僕が男だって証拠を」



「まっ待て早まるな! 落ち着け! ズボンから手を離せ!」



「この年で警察の世話にはなりたくないんだよ!」



「……え? なんでみんながおまわりさんのお世話になるの?」



『(お前が可愛すぎるからだよちくしょぉぉおおおおおお!!)』



お巡りさんって! この年でお巡りさんって!

きゅるん、って感じに目ぇ潤ませて、不思議そうに小首傾げて可愛い声でさぁっ!

おまけに胸元に当てた体操着の間から、日に焼けてないまっさらな肌が所々覗いちゃってるしっ!


もうどうしてくれるこの可愛さ! なんなのこれ! おかしい! 頭おかしい絶対!



くそ、健全な教室が犯罪現場と化すのは時間の問題だ……!



『(……ごくり)』



ツッコミを入れるためについ爆弾の方を向いてしまった俺らはぎゅいんっと勢いよく首を元の位置に戻し、込み上げる何かを耐えるように鼻をつまみながら、唾を飲み込む。


くっ……一刻も早くこの危険地帯から抜けなければ全員の命と理性と世間体が危な―――



…………あ。




「姫宮、ちょーっと待ってろ。そのままそのまま、そうそう。……ほらみんな着替える! 急げ!」




『!』




声を張った俺の意を汲んだ男子が一斉に頷き―――


それはまさに神業だった。


全員が残像が見えそうな速度で一斉に脱衣、ジャージを着込んで脱いだ服はしっかりぴっしり綺麗に畳み、俺がばーんっと開け放ったドアから訓練された軍隊のごとく整列して飛び出す。


この間わずか三秒弱。



「え、え、えっ?」



「っつーわけで俺ら先行ってるから!」



「ゆっくり着替えていいよ、あ、カーテンちゃんと閉めて!」



「ま、待ってよみんなぁー!」



……後で姫宮専用更衣室を設置するように先生に言ってみよう、そうしよう。


とっても紳士な俺らはさっきちらっとだけ見えた光景を大汗かいて必死に脳内メモリに叩き込みながら、引きまくっている他の生徒たちを蹴散らすようにズダダダダッと廊下を全力疾走したのだった。

172ピーチ:2012/11/29(木) 20:33:18 HOST:EM49-252-130-126.pool.e-mobile.ne.jp
大丈夫だよ! ちょっと混乱してただけで!←

二つの意味で終わらんでくれーあたしと一緒にならんでくれぇー!!!

……ゆきちゃん、確かにバレなさそう←おい

173心愛:2012/12/02(日) 18:52:06 HOST:proxyag111.docomo.ne.jp
>>ピーチ

テスト終わってもまだ忙しいここあです。……げふぅ。


うん、夕紀は完璧バレないと思う←
そんじょそこらの美少女よかよっぽど美少女の……男っていう(´ー`)

174ピーチ:2012/12/02(日) 19:10:33 HOST:EM114-51-189-14.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

点数悪すぎて訂正も溜まりまくってる時に小説書くという馬鹿女です←

絶対ばれないね。小中学校で間違われなかったか夕紀ちゃん?

175心愛:2012/12/02(日) 20:07:24 HOST:proxyag118.docomo.ne.jp
>>ピーチ

小学校とかなら、まだ女の子みたいな男子っていうのも結構いるだろうからそんなに目立たなかったかもね(^-^;


ピーチがんばれ!
ここあもがんばるよサボる方向に全力で!(こら

176ピーチ:2012/12/03(月) 20:26:17 HOST:EM114-51-83-65.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

あ、なるほど

うん頑張る! サボる方向で全力に!←おい

177心愛:2012/12/25(火) 09:05:18 HOST:proxy10017.docomo.ne.jp






「体育と言えばーっ!?」



『揺れる胸! 透ける下着!』



「よっしゃあ! どさくさに紛れて女体をじっくり観察するぜ野郎共!」



『うおおおおおおー!』




「こいつら最低だっ!」




11組から13組までの男女合同で行う体力測定。
春山のコールに合わせて血走った目で絶叫する一部の男子に、あからさまに他の皆さんが距離を置いている。


み、認めない……! あのバカの塊が俺の所属する集団だなんて絶対に認めない……!



「今時ムッツリはモテないぞ、ヒナ。欲望に忠実に生きろ」



「誰がムッツリだ!」



そのトップオブザバカ・春山にぽんっと肩に手を置かれ、鳥肌を立てながらそれを瞬時に叩き落とす。


そんな俺たちの傍らでは、むさい集団の中で異彩を放つほわほわした美少女が癒しオーラを放出していた。



「ねーねー、むっつりってかたつむりに似てない?」



『(………ほわぁ)』



……ちょっと和んだ。不覚にも。


俺だけじゃなく全員が目を横線にして、視線でこの奇跡的に可愛い生物を愛でまくっている。


ま、奴らのテンションを妙な方向にフルスロットルさせた原因も姫宮なんだけどね。




『きゃー!』




と、空気を突き破って体育館中に響き渡る黄色い悲鳴。
なんだなんだと出所を探すと、すぐにシャトルランの順番待ちでだべっている女子が目に留まる。


……どうでもいいけど20メートルシャトルランって鬼畜すぎだよね。
見られてる感と徐々に余裕なくなってく感とか、テンポ上がるときのティレレ♪って音が最高に嫌。
最後の方まで残って女子に声援送られてる奴とか見ると、もうほんと―――



「―――……くんかっこよすぎー! やばいっしょ!」


「顔も頭も運動神経もいいって完璧だよね!」


「性格だって超いーじゃん! あーもう彼氏にほしー」



は? ふざけんなよ誰だよその野郎。
ちょっとモテるからっていい気になってんじゃねーし。


口には一切出さずに暗く毒づいていると、隣に立つ姫宮がパッと顔を輝かせた。




「あー! まいちゃんだー!」




……野郎じゃありませんでした。



「王子がんばってぇー!」


「かっこいー! 男子よりずっとかっこいいー!」



きゃいきゃい手を打ち鳴らして騒ぐ女子たちの目線の先に、髪を颯爽と靡かせるイケメン女の姿。
今やトップ独走状態、ほぼ全員がギブアップする中で息一つ乱れさせずに涼しげな顔。
無駄に長い脚を見せつけるようにきゅっとシューズを鳴らして足首を返し、



『っっきゃぁあ―――!』



ついでにバチっとウインクを返すことも忘れない。



「ジャージなのにイケメンって……! ジャージなのにイケメンってぇ……!」



この差はなんだって言うんだよちくしょう!



思いっきり地団駄を踏みたい衝動に駆られていると、



「あー柚木園に蹴られてー。踏まれてー」



「来世は床にでもなれば?」



「……いーかも」



「真面目に考えんなよきめぇ!」



むむっと真剣な表情をする春山。



「でもさーヒナ。あの柚木園の脚はしょーじき芸術的なレベルで見事じゃね? 俺以外にも男の信者って結構いるんだぜ」



「………え゙」



羨ましさが一気に薄れた。


美形に生まれても色々大変なんだな、うん。
普通で良かった。……マジで。


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