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叫号〜Io ripeto un incubo〜
34
:
霧月 蓮_〆
◆REN/KP3zUk
:2012/12/31(月) 21:15:25 HOST:i118-20-98-64.s04.a001.ap.plala.or.jp
湊の言葉に紅零は小さく首を振って「答えてくれて有難う」と呟いた。嬉しそうな表情だった。それを見ると不思議なものだ、胸の中が暖かくなる、と湊は思った。
意味もなく頷いて、湊は顔を白鷺に向けた。白鷺は不思議そうな表情をして首を傾げる。始末書について悩んでいたので、今の今までの会話を聞いていなかったのである。そんな事を分かっている湊はいじらしく笑って見せた。
白鷺は気まずそうに視線を伏せた。それを見て湊はますます楽しそうに笑う。
「白鷺、桜蘭研究所にテレポートしてくれるかい?」
「……場所、分からない。方角、距離、指定できない」
湊の言葉に白鷺は僅かにムッとしたような表情がした。どうやら散々笑われて、流石に悔しかったようである。湊と白鷺がああだこうだと言い合いをする様子を見た紅零が僅かに笑う。それに気づいた湊がハッと動きを止めた。
そんな湊を見た白鷺はふうっと短くため息をついて、紅零に顔を向けた。それだけで紅零は察したと言うように研究所の場所を話し始める。そのヒントの全てにこくん、こくんと白鷺は頷いていた。
やがて、白鷺は黙って小さなモニターを取り出す。天空都市が今飛んでいる場所を現すものだ。天空都市内から天空都市内に移動するのならばあまり必要はないのだが、天空都市から外に、外から天空都市に移動する時にはそうもいかないようである。
白鷺のテレポートがそもそも特殊なのが影響しているのかもしれない。白鷺のテレポートに明確な距離制限はない。同じ“国”の中ならば好きなようにテレポートすることができるのだ。ちなみに白鷺の場合普段は天空都市を国、と見て移動を行う。
しかし場合によっては天空都市の下にある国の一部だと判断をして、その国に移動して地上に降りるという手段をとる。そんな感じによく分からない能力なのだ。
「準備完了。行く」
フッと部屋の中から三人の姿が、消えた。
*
三人が降り立ったのは大きな建物の前だった。
建物の中からは丁度、白衣を着た黒髪の少女が出てくるところだった。右目を黒い眼帯で隠していて、左目は綺麗な青色の少女。その少女に気づくなり、紅零はハッと走り出して、その少女の前に立った。少女は静かに何かを言っているようだった。
湊たちは近づかずにその様子を眺めていた。微笑ましい光景だなぁなんて思いながら。
しばらくして、紅零は静かに頭を下げて建物の中へと消えていく。少女の方はぼんやりと湊たちを眺めた後、深く、丁寧に頭を下げて、紅零の後を追う。
やがてその少女の姿も見えなくなったころ、湊はフッと笑って白鷺の方を見た。
「たまにはこういうのもいいものだね」
「何故、こんなこと。似合わない」
白鷺の問いに、湊は空を見上げた。そうして、静かに言う。
「同情さ。ずっと忘れていたけれど、思い出した瞬間、可哀想になった。忘れられるような存在が学園に残っていることがね。人の盾となることを強制された犠牲の少女が、懐かしい場所に変えることもできないなんてさ……なんだか寂しいなって」
「……以外。優しいところ、合った」
目をぱちくりさせて言う白鷺に湊は笑う。白鷺は湊の方を見てはいなかった。空を見上げる湊とは対照的にジッと地面を見つめている。
「優しくないさ。強いていうのなら核からも外され、犠牲としての意味を失った彼女は“外”の人間だ。そんなものがあっても駒としては使えないからね。なら、同情に任せて空に放ってやろうと思っただけだよ」
もう、白鷺は何も言わなかった。僅かに白鷺の様子を探るように表情を窺った湊はすぐにその視線を空へと戻す。まるで何かを望むように、何処か悲しげな笑みを浮かべながら。
NEXT Story 第二章 仮面少年と幽霊少年
―――――――――――――――――――――
やっと第一章完結。な、長かった……
書き溜めがあったので連続投稿です。
続いて二章は一章ほどは長くならない予定です
一章目次
>>6
‐13
>>17
>>22
>>25-34
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