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叫号〜Io ripeto un incubo〜

6霧月 蓮_〆 ◆REN/KP3zUk:2012/02/28(火) 00:16:18 HOST:i121-114-186-133.s04.a001.ap.plala.or.jp

―ねぇ、湊? ……私たちの道は何処で違えてしまったのでしょうか?
 嬉しそうにはにかんで、誰よりも明るかったあなたが、残酷なほどに冷たくなったのは何故?―

第一章 捕らわれ少年と犠牲少女

 少年、秋空 湊は灰色の箱の中にいた。首には真っ黒なチョーカー。それからは妙な管がいくつも出ていて……。足には動くたびに音を立てる冷たい鎖に生々しい痣の残るその身体……。あちこちが引き裂かれた、闇を象徴する黒い制服。……あちこちに残る“乱暴”の跡には似合わないほどに、湊は穏やかな寝顔を浮べていた。まるで親の腕の中で眠る幼子のような安心しきった表情。
 突然、箱の中に光が差し込む。湊はその僅かな光に反応し、呻き声に良く似た声をあげながら、目を開けた。……立っていたのは厭らしい笑みを浮かべた真っ白な男。自分へと伸びる男の手を黙って見つめていた湊はやがて嗤う。……少年と少年を捕らえるもの以外はない灰色の世界に、紅い、紅い華が咲いた。

 「ああ……勝手に出てきちゃ駄目だよ。ウィンディーネ」

 華をぼんやりと眺めた後、湊は自分を起こそうとする娘に言葉を投げかけた。誰もが言葉を失うであろう程に美しい娘。そんな娘の顔には何一つ表情は浮かんでいないし、娘からは生気というもの感じなかった。美しいのに、何か足りない、そんな印象を受けるのだ。生気のない娘が動くさまは、まるでからくり人形のようで……。
 深くため息をついた湊は、黙って娘に身体を預ける。いや、そうするしかなかった。抵抗しようにもチョーカーに力を吸い取られているらしく、本当に僅かに手を動かすのが限界なのだ。そこに刹たちの元に現れた彼の強さはなく。……全く情けないものだと湊はため息をついた。
 そんな事、お構いなく娘は湊の頭を撫でる。優しく、幼子をなだめる母親のように「もう大丈夫、……怖くない、怖くないからね」と何度も、何度も……。その意味が分からないながらも、湊は心地よさそうに目を細めていた。

 「さぁ、ウィンディーネ。もうお帰りなさい。……こんな穢れた世界、君には毒だろう」

 湊が言うと、娘は黙って首を振る。穢れてなどいないとでも言うかのように。穢れてもいないし毒にもならないから帰りたくないとでも言うように。どうしたものか、と思案する湊の顔を娘が覗き込む。僅かに濡れた髪から落ちた雫が、湊の頬を伝い落ちた。その冷たい雫が落ちていく感覚に、湊は気持ちの悪さを覚える。

 「我侭は嫌い。……君も僕を“失望”させるのかい?」

 冷たい湊の声が響いた。一瞬だけ怪しい光が湊の瞳に宿って……ずっと無表情だった娘が驚いたような表情をする。娘は湊を優しく地面に寝かせて、愛おしそうにその頬を撫でて、消えた。まるで池の波紋のような揺らぎを見せながら、ゆっくり、ゆっくりと……。
 静まり返った箱の中で、湊はため息をつく。まだ光は差し込んでいた。……真っ白な男が入ってきた方からだ。ぼんやりとしてきた頭で出口だろうか? なんて考えて、その外を夢見る。何時になったら箱の中から出られるかも分からないと言うのに、湊は外の世界を夢見ていた。
 だってそれぐらいのことしか湊には出来ないのだから。寝ているか、汚い大人達の相手をしているか……それとも箱の外の世界を夢見るか。湊の日常はそんな味気ない単純なことで形作られていた。でも、湊はそれに満足している。大人達の相手だけは嫌いだが、外の世界を夢見るだけなら、綺麗な部分だけを切り取って並べることが出来るのだから。

 「あー……これ見つかったら不味いな……」

 ふと紅い華に視線を移した湊は息を吐く。ムッとした鉄の臭いが辺りを包んでいく。ただ、湊にとってそれはどうでもいいことで、重要なのはどうやって人にバレないようにしながら臭いの元を片付けるか。今漂っている臭いなんてものにはいくらでも耐えることが出来るが、流石に臭いの元と共に暮らすのは無理だ。いくらなんでもそれは特殊な趣味がない無理だ、と考えて湊は笑った。
 あまり放置して腐臭が漂ってしまえばもう最悪。湊が許せるのは鉄の臭いまでで、それ以上は無理。ああ、ウィンディーネを帰すんじゃなかった、なんて娘を追い返してしまったことを後悔する。もう一度呼び出してやろうかとも考えたけど、それは無理。だって、湊にはそんな力は残っていないのだから……。

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文章が非常に不安定です。
そして初っ端からヤ湊君の一人舞台。……いや正確には一人とはいえないけど((


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