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叫号〜Io ripeto un incubo〜
17
:
霧月 蓮_〆
◆REN/KP3zUk
:2012/05/20(日) 22:28:49 HOST:i114-180-35-89.s04.a001.ap.plala.or.jp
「ッ!?」
響く銃声。打ち抜かれたのは刹の左腕。あまりの痛みに、刀を落としてしまった。真っ白な制服にジワリと滲む紅を見て、湊はさも満足そうに笑った。……狂ってやがる、そう呟いて刹は傷を塞ぐ。
四方から飛んでくる水の刃を床を転がって避け、再び刀を握る。頬を汗が伝い落ちていく……。その気持ち悪さに顔を顰め、乱暴に汗を拭ってから刹は走り出す。……不規則に変わる水の刃や炎の刃を避けながら。いっその事、馬鹿みたいに同時に炎と水を放ってくれれば楽なのに、そう考えて刹はため息をついた。
不気味な笑みを浮かべ、近づいてくる湊を真正面から睨みつける。しっかり刀を構えて再び湊の懐に飛び込む。振るった刀に向かって湊は黙って手を翳す。それなのに刀は呆気なく受け止められてしまった。
人間の手と刀、それなのに二つがぶつかり合う音はまるで金属同士のもののようで……。
「……僕、君のことを気に入っているんだ。ここまで、堕ちてきてくれないかなぁ?」
「……お断りですよ。あんな場所、居るだけで気が狂ってしまいそうだ」
いきなり、刹の頬に手を当てた湊は静かに笑う。刹からの返答はもちろん予想できていた。
冷たく吐き捨てるかのようにいい、一瞬で後ろに下がる刹を湊は、優しげな笑みを浮かべたまま見つめる。その笑みに悪寒を感じたのは対峙している刹ではない。
……風雅だった。湊の笑みを見た瞬間に僅かに肩を揺らして、目を逸らす。あまりにも不気味に思えて、今すぐにでも戦いに介入して刹を引きずってでも離れさせたいと思う。でもそんな事は出来ないから、目を逸らして、祈る。結局何かが起きるまで誰も動かない。
刹那、湊の姿が消えた。いつの間にか炎を取り戻したサラマンダーと再び現れたウィンディーネが動くのがうっすらと見えたような気がした。刹は思わず黙って、日本刀を鞘へと戻す。元々分かりきっていたことではあるのだが、武器では太刀打ちできないと思ったのだ。流れるように日本刀を構えていたときとはまた違う構えをとる。
一瞬、刹の瞳に宿った光が大きく揺らいだ。いまだに現れない湊のことなど気にも留めずに、静かに歩き出す。ゆっくり、ゆっくりと、確実に、まるで何かを確かめるように……。
「ここまで来てくれないと言うのなら、君は障害にしかならない。……邪魔なものは早いうちに消し去るべきでしょう?」
刹の耳元で湊は囁く。刹はといえば無表情で、特に何の動きも見せない。ピタリと動きを止めて、まっすぐ前を見つめているだけ。そんな刹に湊は思いっきり蹴りを入れようとする。それを分かっているのにもかかわらず刹は動かない。
窓から優しい光が差し込んでくるのを確認した瞬間に刹は薄く笑みを浮かべた。一瞬で湊の背後に回りこんでその肩に手を当てる。その動作とほぼ同時に、不健康なほどに白い光が容赦なく湊の肩を貫いた。不健康な白と、鮮やかな赤が辺りを舞った。
ダラダラと血の流れる肩を押さえて湊は笑みを浮かべた。流れ出る赤を眺めながらも湊は全く取り乱さない。淡く、湊の手が光を発して、傷を塞いだ。刹も大して気にしていないようで、ブツブツと何かを呟き始めている。
「楽しそうですね。やっぱり狂っている」
「何をいまさら。そういう君こそ口元が緩んでいるよ? あの時の君みたいだ」
湊に指摘されて、刹は自分の口元を押さえる。確かにその口元は緩んでいて……。
ギリッと歯軋りをして、刹は右手を振るう。いくつ物光線が複雑に絡み合って、まっすぐ、まっすぐと湊を貫こうと込んでいく。その光線に湊は無言で手を翳してなにかを呟いた。ウィンディーネとサラマンダーが姿を消して、小さな少女が現れた。
少女がふわりと光線の周りを待った瞬間に、光線はぼろぼろと崩れ落ちた。同時に放たれた水の刃が光線の変わりに湊を貫いたが、その傷もすぐ塞がってしまう。心底面倒くさそうにため息をついて刹は右手で空を斬る。
上がる歓声と、殺せと叫ぶ声。……ハウリングにもよく似た音と共に湊に襲い掛かる不気味な色をした不規則な破片。罵声、呻き声、笑い声……。すべてがごちゃ混ぜになった、奇妙の世界に刹は舌打ちをする。何もかも狂ってやがると呟いて。
「ッ!?」
瞬間、刹の動きが不自然に鈍った。それを見て、待っていたとでも言うように湊は少女に指示を出す。もう緩む口元を隠すことを止めて、心底楽しそうに残酷な指示を出した。
……白が赤く染まって……。大きくふらついて膝を地面につく。どよめく光サイドと歓声を上げる闇サイド。ここまで異質の空間が何処にあるのだろうか。そう呟いて風雅はきつく手を握って、刹と湊の間に走っていこうとする。
でもその行動は刹自身の変化によって止められる。一瞬にして紅く、紅く染まった瞳は明らかな敵意と、殺意を持って湊を睨みつけていた。
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