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青年と奴隷と預言書と

1御陵:2011/11/01(火) 10:02:43 HOST:wb005proxy05.ezweb.ne.jp
初めまして、御陵と書いて『みささぎ』と申します。
初めての作品になります。
ジャンルとしてはファンタジーに入りますね。

始めにこの作品に対する注意ですが、
・中傷、荒らしなどはご遠慮ください。
・感想、アドバイス、歓迎です。極力読者になってくださる皆様の意見を取り入れていきたいです。
・少々、グロ表現などが取り入れられる予定です。苦手な方は読まないことをオススメします。
・この作品は完全オリジナルです。どなたのも真似ておりませんし、真似されるのは嫌です。

世界観みたいなものを説明します。内容は薄っぺらいかもしれません。

→貧富の差が激しい国がいくつも存在する世界エンターヴィル。奴隷制度が構築されて早数百年の現在。未だに貧富の差は広がるばかりで、金を持つ者だけが優遇される慈悲のない世の中。
 そんな中で、国同士が血眼になって探すのは、世界の未来を預言するという神の預言書。神の預言書を手にすれば世界を自分のものにできる権利という噂ばかりが飛び交い、現物を見た者など今だかつて存在していない。
 そして、神の預言書と対となる神の古文書。世界が創造された時から現在までのものが記され、手にするだけであらゆる知識を得ることができると言われている。
 この預言書と古文書を巡って、世界の運命の扉が今開かれる……。

2御陵:2011/11/01(火) 19:57:06 HOST:wb005proxy05.ezweb.ne.jp
第一章 少年奴隷


 元の色が分からないほどくすんだ砂塵避けのローブを身に纏い、最低限の荷物を肩に抱えて栗色の髪をした長身の男、エリオット・クライブは雲一つない晴れ渡った空を見上げて吐息をもらした。

『神の預言書の探索を命ずる。手にするまでは敷地に入ることまかり成らぬ』

広いこの世界で、あるかも分からない預言書を見つけるのは至難の技だ。途方もなく、いつ終われるのか分からない任務。

 任務と称した呈の良い追放なのだと言い渡された瞬間に理解した。いっそのこと懲戒免職を言い渡してくれたほうが気が楽だったに違いない。

 エリオットは荷袋を持ち直して、辿り着いたばかりの街の中を歩き始める。

 街を歩いていて目につくのは、やはり貧富の差だった。鼻につく異臭と、痩せこけた住民。一日の食事もろくにできない状況なのが一目瞭然だ。住む家もないのか新聞や段ボールを下に敷いて生活している者も少なくなかった。

 そんな生活を強いられている者がいるというのに、好き放題に金を湯水の如く使う貴族や皇族。金が権力の証と言わんばかりの世界。差別も頻繁に起きているのをエリオットは知っている。

 どんなに努力をしても、所詮は金。金を持つ者が勝つ世界。理不尽なルールが当たり前になっていることが問題なのだとエリオットは嫌になるほど経験していた。

 その集大成が、この状況だったりする。

「さて、どうしたものか……」

 手がかりも何もない状態でできることはなく、途方にくれていたエリオットの目に入ったのは、奴隷商の姿。こういった世界では日常的に行われている光景だ。奴隷制度がなくならない限り消えることのない仕事だろう。

 なんとなく奴隷商の隣に置かれた檻の中にいる奴隷たちが気になってエリオットは足をそちらへと向けた。

3御陵:2011/11/03(木) 12:30:37 HOST:wb005proxy08.ezweb.ne.jp
 奴隷商はエリオットの姿を見るや一瞬嫌な顔をしたが、すぐさま揉み手を始めて笑顔を貼り付ける。お金を持っていなさそうだと、エリオットの姿で判断したのだろう。その奴隷商の態度を不快に感じつつも、エリオットは隣の檻にいる奴隷たちに視線を走らせた。

 痩せ細った体からろくな食事を与えられていないと容易に推測できる奴隷たち。その顔はまだ幼さが残る子供たちだ。そこかしこに打撲の跡や傷が見られ、子供たちの扱いを否応なしに理解するしかない。

「……」

 死んだような目をする子供たちの中に、一人だけ異彩を放つ子供がいた。まっすぐにエリオットを見つめるその瞳は、奴隷という立場であることを忘れてしまいそうなほど意志が強く感じられる。汚れた髪は黄土色をしていて、瞳は琥珀色。奴隷にしては澄んだ瞳をしていた。

「おやじ、その子……」
「お兄さん、お目が高い!」

 エリオットが少年奴隷を指すと、奴隷商は声を高く上げた。なんだか買わされそうな雰囲気がするが、エリオットに買う気はないし、そんな予算もない。

「少々曰く付きではありますが、かなりの上玉ですよ」
「曰く付き……?」

 そうは見えないが、この奴隷商は「曰く付き」の厄介なものを売り付ける気だろうか。

「主人の命令に忠実で、見映えも良いところから買い手は数多なんですがね、買われてからしばらくすると必ずコイツの主人だった者が不可解な死を遂げるんですよ」

 まさに曰く付きの少年奴隷だ。ほかの子供たちより怪我が目立たないのも、特別扱いされていた証拠だろう。彼はまっすぐにエリオットを見つめている。その瞳から逃れられない何かをエリオットは感じていた。

「おやじ……」





   ◇ ◇ ◇





 どうしてこんなことになってしまったんだろう。エリオットは自分のやってしまった過ちをひたすらに呪った。彼の隣に並んで歩いているのは、あの少年奴隷。身長はエリオットの胸ぐらいしかなく、間近で見るとより一層女のように華奢な体をしていた。

4御陵:2011/11/15(火) 17:47:44 HOST:wb005proxy04.ezweb.ne.jp
 彼は一言も言葉を発することもなく、ただ黙々とエリオットの隣から離れずついてきている。何か話題をと話しかけても、彼は反応を示さなかった。

 怪我など目立った外傷はないが、少しばかり汚れている服や髪を見て、なによりもまず宿でシャワーを浴びせることが優先だとエリオットは判断した。

 ほどなく見つけた宿で部屋を取り、黙ったままの少年を無理やり浴室へ放り込む。そしてエリオットは、彼がシャワーをしている間に近場の店で適当に服を購入して戻った。

 ちょうどその時、浴室からドアの開く音がしてエリオットはそちらに視線を走らせる。ベッドには少年の為に購入した服が並べられていた。

 少しして脱衣場から出てきた少年の髪が、綺麗な金髪だったことに驚く。バスローブから覗く透き通るような肌にエリオットは思わず息を飲んだ。

 少年はゆっくりとエリオットに近づく。何故か嫌な予感がして逃げるようにエリオットは後ろへ足を向けた。しかしベッドに行く手を阻まれて、そのまま倒れ込む。少年は黙ったままベッドに足をかけてエリオットを上から見下ろした。

「……ちょ、キミ……」
「……僕を買ったんでしょ?」

 冷や汗を流すエリオットを見下ろしながら少年は少し低めの声で尋ねた。

「たしかに、買いはしたが……これはどういう状況だろうか?」
「どういうって、主人への奉仕をしようと……」
「は!?いやいや、そんなの要らないから!」

 年下の子供に襲われかけている状況にエリオットは必死に抵抗と否定をした。すると少年は不可解そうに眉を寄せる。

「そういうつもりで買ったんじゃないの?」
「そういうつもりって、どういうつもりだよ!」
「だから……」
「言うな!言わんでいい!」

 とにかくこの状況下から今すぐ離れたい一心で、エリオットは喚いた。

5御陵:2011/11/23(水) 17:16:55 HOST:wb005proxy03.ezweb.ne.jp
「とにかく、俺にそんな趣味はないんだ」

 上に乗っている少年にエリオットは言い聞かせるように言った。すると彼は不可解そうな顔を浮かべる。それはそうだろう、彼は自分の仕事を全うしようと思っていたのだ。まさか拒絶されるとは思わなかっただろう。

「なら、なんで僕を買ったのさ。お兄さん」
「分からん」

 少年の問いにエリオットは至極真面目な顔をして答えた。エリオットの返答に目を丸くした少年は、やがて可笑しそうに肩を揺らして笑い始める。

「な、なんで笑う」

 ようやく退いてくれた少年の笑いに、不思議そうに上半身を起こす。仄かに照らす部屋の明かりの中で、ベッドから離れる少年の背中を目で追った。

「だって、まさか理由もないまま買われるなんて思わなかったからさ。お兄さん面白い人だね」

 エリオット自身も不思議なのだ。元々買うつもりなどなかったのに、こうして彼を買ったのが。

「それはどうも……」

 この年になって、可笑しな人のレッテルを貼られるとは……。エリオットは反論する気力を無くし脱力する。

「ねぇ、お兄さん。名前なんて言うの?」
「は?なんだ唐突に……」
「名前だよ。ずっとお兄さんと呼ぶのも悪くはないけどさ」
「エリオット。エリオット・クライブだ。お前は?」

 ベッドに置かれた買っておいた服に手を伸ばした少年は、エリオットの返しに笑顔を浮かべた。

「僕?奴隷に名前はないさ」
「……え?」

 服に腕を通しながら、少年がさらりと言うものだからエリオットは思わず自分の耳を疑った。

「奴隷は一番身分が低いからさ、名前なんて必要じゃないんだってさ」

 気にした素振りもなく少年は服を着る。驚くのはエリオットのほうだった。

「……しかし、親につけてもらった名があるだろう?」
「奴隷商に売るような親が子供に名前なんかつけるわけないでしょ」
「……」
「そんなに僕の名前が気になるならエリオがつけてよ」

 エリオットの隣に座って少年は笑った。それは期待が入り交じったもの。そんな素直な感情をぶつけられてエリオットは、どうしたらいいのか分からず苦笑いするしかなかった。


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